(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物はブロー成形用に好適なものであり、ブロー成形としては、溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスに通し、押出して円筒状のパリソンを形成し、これを金型に挟んで内部に空気を吹き込むダイレクトブロー成形法、もしくは射出成形でパリソンを形成し、これを延伸ブロー成形する延伸ブロー成形法が挙げられるが、中でもダイレクトブロー成形法に好適なものである。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略すことがある)を共重合成分として特定量有するポリエステル樹脂(A)と、イソフタル酸(以下IPAと略すことがある)を共重合成分として特定量含有するポリエステル樹脂(B)を適量含有するものである。
【0012】
ポリエステル樹脂(A)について説明する。
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、CHDMを共重合成分として1〜15モル%含有するものであり、CHDMの共重合量は、中でも1〜8モル%であることが好ましい。CHDMを含有(共重合)することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐことができる。そして、得られるブロー成形体の耐衝撃性を向上させることができる。
CHDMの共重合量が上記の範囲外のものであると、結晶化速度の調整ができず、また、得られるブロー成形体の耐衝撃性を向上させることができない。
【0013】
ポリエステル樹脂(A)中のエチレングリコールの割合は、70〜99モル%であることが好ましく、中でも85〜99モル%であることが好ましい。エチレングリコールとCHDM以外のグリコール成分としては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ダイマージオールなどを挙げることができる。
【0014】
グリコール成分のエチレングリコールの割合が70モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し、非晶性のものとなりやすいため、好ましくない。エチレングリコールの割合が99モル%を超えると、CHDMの共重合量が少なくなるため、結晶化速度を調整することが困難となり、また得られるブロー成形体の耐衝撃性を向上させることが困難となる。
【0015】
ポリエステル樹脂(A)中の酸成分としては、テレフタル酸の割合が70モル%以上であることが好ましく、中でもテレフタル酸の割合は80モル%以上、さらには90モル%以上であることが好ましい。テレフタル酸の割合が70モル%未満であると、樹脂の結晶性が低下し、非晶性のものとなりやすい。
【0016】
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は、0.5〜1.3であることが必要であり、中でも0.8〜1.2であることが好ましい。極限粘度が0.5未満であると、得られる樹脂組成物の極限粘度が低くなりすぎ、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。また、成形体を得ることができたとしても耐衝撃性に劣るものとなる。一方、極限粘度が1.3を超えると、得られる樹脂組成物の極限粘度が高くなりすぎ、成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調や透明性が悪くなり、耐衝撃性も低下する。
【0018】
次に、ポリエステル樹脂(B)について説明する。
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としイソフタル酸を共重合成分として1〜15モル%含有するものであり、イソフタル酸の共重合量は、中でも1〜8モル%であることが好ましい。イソフタル酸を含有(共重合)することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐことができる。そして、ポリエステル樹脂(A)による耐衝撃性を向上させる効果をより優れたものにすることが可能となる。
イソフタル酸の共重合量が上記の範囲外のものであると、結晶化速度の調整ができず、また、耐衝撃性の向上効果をより優れたものにすることができない。
【0019】
ポリエステル樹脂(B)中のテレフタル酸の割合は、60〜99モル%であることが好ましく、中でもテレフタル酸の割合は85〜99モル%であることが好ましい。テレフタル酸の割合が60モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し、非晶性のものとなりやすい。一方、テレフタル酸の割合が99モル%を超えると、イソフタル酸の共重合量が少なくなるため、結晶化速度の調整ができず、また、耐衝撃性の向上効果をより優れたものにすることができない。
【0020】
ポリエステル樹脂(B)中のグリコール成分としては、エチレングリコールの割合が70モル%以上であることが好ましく、中でもエチレングリコールの割合は80モル%以上、さらには90モル%以上であることが好ましい。エチレングリコールの割合が80モル%未満であると、樹脂の結晶性が低下し、非晶性のものとなりやすい。
【0021】
エチレングリコール以外のグリコール成分としては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ダイマージオールなどを挙げることができる。
【0022】
ポリエステル樹脂(B)の極限粘度は、0.5〜1.3であることが必要であり、中でも0.8〜1.2であることが好ましい。極限粘度が0.5未満であると、得られる樹脂組成物の極限粘度が低くなりすぎ、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。また、成形体を得ることができたとしても耐衝撃性に劣るものとなる。一方、極限粘度が1.3を超えると、得られる樹脂組成物の極限粘度が高くなりすぎ、成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調や透明性が悪くなり、耐衝撃性も低下する。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比(A/B)を5/95〜40/60とすることが必要であり、中でも7/93〜30/70とすることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の割合が上記範囲よりも少ない場合、ポリエステル樹脂(A)を添加することによる、耐衝撃性の向上効果を奏することができない。一方、ポリエステル樹脂(A)の割合が上記範囲よりも多い場合、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを均一に混合させることが困難となり、成形性が悪くなる。例えばこの樹脂組成物を用いてブロー成形すると、厚さ斑の生じたブロー成形体となる。
【0024】
なお、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、質量割合の大きいポリエステル樹脂(B)をベース樹脂とし、ポリエステル樹脂(A)を顔料や他の添加剤等を添加したマスターバッチとすることが好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂(A)中に含有させる顔料や他の添加剤等としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ナフトール系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ジオキサジン系の有機顔料および酸化チタン、チタンイエロー、ベンガラ、群青、酸化クロム、モリブデンレッドなどの無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛などの分散助剤等が挙げられ、これらは組み合わせて複数種用いることもできる。
【0026】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物は、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸を有し、グリコール成分としてネオペンチルグリコール、エチレングリコールを有する非晶性ポリエステル樹脂(C)を含有することが好ましい。このような非晶性ポリエステル樹脂(C)を含有することによって、上記したような顔料や各種添加剤の分散性を向上させることができる。
【0027】
以下、非晶性ポリエステル樹脂(C)について説明する。
非晶性ポリエステル樹脂(C)は、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸を有し、グリコール成分としてネオペンチルグリコール、エチレングリコールを有するものである。酸成分中のテレフタル酸とイソフタル酸のモル比は、30/70〜70/30であることが好ましい。また、グリコール成分中のエチレングリコールとネオペンチルグリコールのモル比は、30/70〜70/30であることが好ましい。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂組成物における非晶性ポリエステル樹脂(C)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.2〜25質量部であり、中でも1〜15質量部であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂(C)の含有量が0.2質量部未満であると、樹脂組成物中に顔料や各種添加剤等を添加した際の分散性向上効果が乏しいものとなる。一方、25質量部を超えると、ブロー成形時にドローダウンが生じやすくなり、成形性に劣るものとなりやすい。
【0029】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、上記のようなポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を主成分とするものであり、樹脂組成物中の両樹脂の割合は、80質量%以上であることが好ましく、中でも90質量%以上であることが好ましい。
【0030】
そして、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.05〜1.0質量%含有することが好ましく、中でも0.1〜0.8質量%含有することが好ましい。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、ポリエステル樹脂の重合反応工程中に添加することが好ましい。重合反応工程中に添加することで、該化合物の一部がポリエステル樹脂中に共重合される。これにより、ポリエステル樹脂中に分子鎖の絡み合いが生じ、架橋に似た状態が生じるものと想定され、ポリエステル樹脂の溶融粘度を高くすることができる。
【0031】
また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1’−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、架橋に似た状態を生じやすく、コスト的にも有利であることから、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物中に、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を含有することによって、樹脂組成物の熱安定性が向上し、得られる成形体は、色調や透明性に優れたものとなる。
【0033】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が0.05質量%未満では、上記したような分子鎖の絡みが生じた樹脂組成物とならないため、樹脂組成物の溶融粘度を高くすることが困難となり、ブロー成形時のパリソンのドローダウンを防ぐことができない。さらには、樹脂組成物の熱安定性が向上せず、得られる成形体は耐熱性、色調や透明性に劣ったものとなる。
【0034】
一方、含有量が1.0質量%を超えると、成形時に押出しダイ出口での樹脂組成物の膨張が大きくなりすぎ、得られる成形体は表面が荒れて光沢感が損なわれたものとなる。また、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎ、成形時に成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調が悪くなる。さらに、熱安定性を向上させる効果は飽和し、コスト的に不利となる。
【0035】
そして、本発明のポリエステル樹脂組成物は、極限粘度が、0.7〜1.5であることが好ましく、中でも0.75〜1.3であることが好ましく、ダイレクトブロー成形用に用いる際には、0.9〜1.3であることが好ましい。なお、極限粘度は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0036】
極限粘度が0.7未満の場合は、樹脂組成物の粘度が低いため、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。一方、極限粘度が1.3を超える場合は、成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調や透明性が悪くなる。また、ブロー成形時に押出しダイ出口での樹脂組成物の膨張が大きくなる傾向があるため好ましくない。
【0037】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、カルボキシル末端基濃度が32当量/t以下であることが好ましく、中でも26当量/t以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂組成物のカルボキシル末端基濃度を32当量/t以下とすることによって、ブロー成形時に樹脂組成物の熱分解が生じることがなく、安定した成形が可能となる。また、リサイクル性にも優れたものとなる。
【0038】
カルボキシル末端基濃度が32当量/tを超える場合は、ブロー成形時の熱処理によって樹脂の熱分解が生じ、このため、パリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になったり、得られる成形体は厚みムラが生じたものとなりやすい。
【0039】
また、得られる成形体もカルボキシル末端基濃度が増加したものとなっているため、成形時に発生する端材もカルボキシル末端基濃度が高いものとなっている。このため、端材を再生材として再びブロー成形に供すると、ブロー成形時に樹脂組成物の熱分解が生じ、安定的な生産が困難となり、得られる成形体は厚みムラが生じたものとなる。
【0040】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物中には、ゲルマニウム化合物が、ポリエステル樹脂の酸成分1モルに対し5×10
−5モル〜3.0×10
−4モル含有されていることが好ましく、中でも6×10
−5モル〜2.0×10
−4モル含有されていることが好ましい。
ゲルマニウム化合物はポリエステル樹脂を得る際に重合触媒として使用されるものであり、ゲルマニウム化合物の含有量が5×10
−5モル未満であると、目標の重合度のポリエステル樹脂が得られない、あるいは、重合反応において重合時間が長くなり、その結果、得られるポリエステル樹脂の色調が悪くなる。一方、3.0×10
−4モルを超えても、重合触媒としての効果は飽和し、コスト的に不利となる。
【0041】
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド等が挙げられ、重合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0042】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法について説明する。ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)をそれぞれ得たのち、これらのポリエステル樹脂をブレンドする方法について説明する。
本発明におけるこれらのポリエステル樹脂は、エステル化反応、溶融重合反応及び固相重合反応工程を経て得られるものであることが好ましい。エステル化反応と溶融重合反応のみでは、目標の極限粘度のポリエステル樹脂を得ることが困難となりやすい。得られたとしても、溶融重合反応の反応時間が長くなり、得られるポリエステル樹脂組成物は色調が悪いものとなる。
【0043】
具体的には、例えば、次のような方法で製造することができる。
ポリエステル樹脂(A)は、酸成分としてテレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、グリコール成分としてエチレングリコール及びCHDMを所定の割合でエステル化反応器に仕込み、エステル化反応を行った後、重合反応器に移し、重合触媒や添加剤を添加し、溶融重合反応を行い、プレポリマーを得る。得られたプレポリマーを用いて、固相重合反応を行い、目標の極限粘度のCHDMを共重合したポリエステル樹脂(A)を得る。
【0044】
ポリエステル樹脂(B)は、酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、グリコール成分としてエチレングリコールを所定の割合でエステル化反応器に仕込み、所定の温度でエステル化反応を行った後、重合反応器に移し、重合触媒や添加剤を添加し、所定の温度で溶融重合反応を行い、プレポリマーを得る。得られたプレポリマーを用いて、固相重合反応を行い、目標の極限粘度のイソフタル酸を共重合したポリエステル樹脂(B)を得る。
【0045】
上記のようにして得られた2種類のポリエステル樹脂をブレンドする方法は、単軸あるいは二軸の押出機で温度250〜300℃の範囲で練り込む方法で行う。
【0046】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物として、非晶性ポリエステル樹脂(C)を含有する場合、ポリエステル樹脂(A)に非晶性ポリエステル樹脂(C)を添加した後、ポリエステル樹脂(B)を添加する製造方法が好ましい。
【0047】
このとき、ポリエステル樹脂(A)中には顔料や各種添加剤等が添加されていてもよく、また、マスターバッチとして使用する際には、顔料や各種添加剤が5〜60質量%となるように添加されていることが好ましく、中でも添加量は10〜50質量%であることが好ましい。そして、非晶性ポリエステル樹脂(C)をポリエステル樹脂(A)中に添加することで、ポリエステル樹脂(A)中の顔料や各種添加剤等の分散性が向上する。さらに、ポリエステル樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(C)を含有するマスターバッチをベース樹脂となるポリエステル樹脂(B)に添加する。このとき、非晶性ポリエステル樹脂(C)により、ポリエステル樹脂(A)中の顔料や各種添加剤等がポリエステル樹脂(B)中においても分散性よく分散される。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上記したように、ブロー成形に適したものであるが、本発明のポリエステル樹脂組成物は、射出成形や延伸法を採用することによっても、色調、透明性、耐衝撃性に優れた、射出成形体、シート、フィルム等の成形体を得ることができる。
【0049】
また、本発明の成形体がブロー成形体である場合、汎用のダイレクトブロー成形機や延伸ブロー成形機を用いて製造することが可能であり、成形機のシリンダー各部及びノズルの温度は、230〜280℃の範囲とするのが好ましい。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
前記と同様の方法で測定した。
(b)共重合成分の共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量
得られた樹脂組成物を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合量と含有量を求めた。
【0051】
(c)ダイレクトブロー成形性
得られた中空容器1(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
(d)ダイレクトブロー成形体のリサイクル性
得られた中空容器1を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂組成物50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器2を得た。得られた中空容器2(サンプル数100本)につき、(c)と同様にして成形性を評価した。
【0052】
(e)ダイレクトブロー成形体の色調
得られた中空容器1と(d)で得られた中空容器2からそれぞれ切り出してサンプル片(20個)を作成し、日本電色工業社製の色差計ND−Σ80型を用いて、サンプル片の色調を測定した。色調の判定はハンターのLab表色計で行い、b値を測定し、n数20の平均値とした。なお、b値が2.0以下を色調良好であると判定した。
(f)ダイレクトブロー成形体のヘーズ
得られた中空容器1と(d)で得られた中空容器2からそれぞれ切り出してサンプル片(20個)を作成し、濁度を日本電色工業社製の濁度計 MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数20の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、5%以下であれば透明性に優れていると判定した。
(g)ダイレクトブロー成形体の耐衝撃性
(c)成形性の評価にて、合格となった中空容器1(サンプル数100本)と、(d)で得られた中空容器2であって、(c)成形性の評価にて合格となった中空容器2(サンプル数100本)に、水道水340mlを充填し、室温下にて、Pタイル上に、200cmの高さから、成形体の底面を下向き、側面を下向きにして成形体を1回ずつ落下させた。このとき割れなかった成形体の本数で耐衝撃性を評価した。なお、割れなかった成形体の本数が95本以上を合格と判定した。
【0053】
(h)延伸ブロー成形性
得られた中空容器3(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
(i)延伸ブロー成形体のリサイクル性
得られた中空容器3を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂組成物50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にして延伸ブロー成形を行い、中空容器4を得た。得られた中空容器4(サンプル数100本)につき、(c)と同様にして成形性を評価した。
【0054】
(j)延伸ブロー成形体の色調
得られた中空容器3と(i)で得られた中空容器4からそれぞれ切り出してサンプル片(20個)を作成し、日本電色工業社製の色差計ND−Σ80型を用いて、サンプル片の色調を測定した。色調の判定はハンターのLab表色計で行い、b値を測定し、n数20の平均値とした。なお、b値が2.0以下を色調良好であると判定した。
(k)延伸ブロー成形体のヘーズ
得られた中空容器3と(i)で得られた中空容器4からそれぞれ切り出してサンプル片(20個)を作成し、濁度を日本電色工業社製の濁度計 MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数20の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、5%以下であれば透明性に優れていると判定した。
(l)延伸ブロー成形体の耐衝撃性
(h)の成形性の評価にて、合格となった中空容器3(サンプル数100本)と、(i)で得られた中空容器4であって、(i)の成形性の評価にて合格となった中空容器4(サンプル数100本)に、水道水340mlを充填し、室温下にて、Pタイル上に、200cmの高さから、成形体の底面を下向き、側面を下向きにして成形体を1回ずつ落下させた。このとき割れなかった成形体の本数で耐衝撃性を評価した。なお、割れなかった成形体の本数が95本以上を合格と判定した。
【0055】
実施例1
〔ポリエステル樹脂(A)〕
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物90.2質量部を重合反応器に仕込み、続いて、CHDM4.22質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.018質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤〔ADEKA社製「アデカスタブAO-60」:テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)〕0.09質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。
このプレポリマーの極限粘度は、0.72であった。このプレポリマーを150℃で5時間予備乾燥した後、窒素気流中で210℃、15時間固相重合し、表1に示す組成、極限粘度のポリエステル樹脂(A)を得た。
【0056】
〔ポリエステル樹脂(B)〕
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
別のエステル化反応缶に、イソフタル酸(IPA)とエチレングリコールとからなるスラリー(IPA/EGモル比=1/3.1)を仕込み、温度200℃で3時間エステル化反応を行い、イソフタル酸とエチレングリコールの反応溶液を得た。
TPAとEGの反応生成物86.2質量部を重合反応器に仕込み、続いて、イソフタル酸とエチレングリコールの反応溶液9.2質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.018質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤〔ADEKA社製「アデカスタブAO-60」:テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)〕0.18質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。
このプレポリマーの極限粘度は、0.72であった。このプレポリマーを150℃で5時間予備乾燥した後、窒素気流中で210℃、15時間固相重合し、表1に示す組成、極限粘度のポリエステル樹脂(B)を得た。
【0057】
〔ポリエステル樹脂組成物〕
上記の2種類のポリエステル樹脂を乾燥させた後、二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS)に、質量比(A/B)=10/90で投入し、温度280℃にて練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
〔ブロー成形体〕
そして、上記で得られたポリエステル樹脂組成物を用い、乾燥させた後、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用いて、押出温度270℃、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで成形し、350ccの中空容器1(ダイレクトブロー成形体)を得た。
また、上記で得られたポリエステル樹脂組成物を用い、乾燥させた後、射出成型機(日精エーエスビー社製、ASB−50TH型)を用いて、シリンダー各部およびノズル温度を260℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間10秒、冷却時間10秒、金型温度15℃に設定してプリフォームを成形した。次いで、このプリフォームを100℃雰囲気下、ブロー圧力2MPaで延伸ブロー成形し、胴部の平均肉厚300μm、内径3.5cm、高さ15cmの円筒状のボトル(内容積150ccの中空容器3;延伸ブロー成形体)を得た。
【0058】
実施例2〜6、比較例1〜3
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比(A/B)を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形を行い、中空容器1及び中空容器3を得た。
【0059】
実施例7〜10
ポリエステル樹脂(A)のCHDMの共重合量、またはポリエステル樹脂(B)のイソフタル酸の共重合量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして重合反応を行い、それぞれ表1に示す極限粘度を有するポリエステル樹脂(A)と(B)を得た。次に、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比(A/B)を表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形を行い、中空容器1及び中空容器3を得た。
【0060】
実施例11
〔非晶性ポリエステル樹脂(C)〕
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
別のエステル化反応缶に、イソフタル酸(IPA)とエチレングリコールとからなるスラリー(IPA/EGモル比=1/3.1)を仕込み、温度200℃で3時間エステル化反応を行い、イソフタル酸とエチレングリコールの反応溶液を得た。
TPAとEGの反応生成物38.6質量部を重合反応器に仕込み、続いて、イソフタル酸とエチレングリコールの反応溶液32.3質量部、ネオペンチルグリコール(NPG)を23.5質量部、重合触媒としてテトラブチルチタネート0.026質量部をそれぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度240℃で3時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た後、ネオペンチルグリコールを3.6質量部加え、温度240℃で1時間、B反応を行い、表1に示す組成、極限粘度0.53の非晶性ポリエステル樹脂(C)を得た。
〔ポリエステル樹脂組成物〕
この非晶性ポリエステル樹脂(C)を用い、実施例1で得たポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、3.0質量部を二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS)で投入し、温度280℃にて練り込み、ポリエステル樹脂(A+C)を得た。
さらに、得られたポリエステル樹脂(A+C)を実施例1と同様のポリエステル樹脂(B)に対し(A+C)/(B)=10/90となる質量比で実施例1と同様に練りこんだ。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形及び延伸ブロー成形を行い、中空容器1及び中空容器3を得た。
【0061】
実施例1〜11及び比較例1〜3で得られたポリエステル樹脂組成物の組成、極限粘度、成形性・リサイクル性の評価及び成形体(中空容器1、2、3、4)の色調、ヘーズ、耐衝撃性の評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から明らかなように、実施例1〜11で得られたポリエステル樹脂組成物は、特定の組成と極限粘度を満足する2種類のポリエステル樹脂を特定量含有する物であったため、熱安定性に優れており、結晶化による白化の問題が生じることなく、操業性よくダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形を行うことができた。そして、得られたダイレクトブロー成形体(中空容器1)及び、延伸ブロー成形体(中空容器3)は厚さ斑のない均一な厚みを有するものであり、着色がなく色調に優れ、透明性が良好なものであり、さらに、耐衝撃性も優れたものであった。
また、中空容器1及び中空容器3を粉砕したものを未成形のポリエステル樹脂組成物とともに用いてリサイクル使用した場合の成形性にも優れており、中空容器1、3と遜色のない、厚み斑がなく、色調、透明性、耐衝撃性に優れた成形体(中空容器2、4)を得ることができた。
【0064】
一方、比較例1、2で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)の含有量が少ないため、耐衝撃性に劣るものであった。比較例3で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)の含有量が多くなりすぎたため、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを均一に混合させることができず、成形性が悪くなり、得られた成形体(中空容器1、2、3、4)は、厚さ斑の生じたものとなった。