特許第6783009号(P6783009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783009IL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR−T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783009
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】IL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR−T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/867 20060101AFI20201102BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20201102BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C12N15/867 ZZNA
   C12N15/13
   C12N15/62 Z
   A61K31/713
   A61P37/06
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-530056(P2019-530056)
(86)(22)【出願日】2017年11月13日
(65)【公表番号】特表2019-535302(P2019-535302A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(86)【国際出願番号】CN2017110654
(87)【国際公開番号】WO2018103502
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年6月4日
(31)【優先権主張番号】201611103319.2
(32)【優先日】2016年12月5日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519118463
【氏名又は名称】上海優▲か▼迪生物医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI UNICAR−THERAPY BIO−MEDICINE TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】祁 偉
(72)【発明者】
【氏名】兪 磊
(72)【発明者】
【氏名】康 立清
(72)【発明者】
【氏名】余 宙
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−522081(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105950662(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105950663(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105950664(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00−15/90
DDBJ/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR-T遺伝子組換えベクターであって、
配列番号1で示される目的菌株の大量増幅のためのアンピシリン耐性遺伝子含有AmpRに対応するヌクレオチド配列と、
配列番号2で示されるプラスミド複製のための原核レプリコンpUC Ori配列と、
配列番号3で示される真核細胞内における複製を増強するためのウイルスレプリコンSV40 Ori配列と、
配列番号11で示される遺伝子組換えの発現効率を増大させるためのeWPRE増強型ウッドチャックB型肝炎ウイルス転写後調節エレメントと、
配列番号12で示されるキメラ抗原受容体遺伝子の真核転写のためのヒトEF1αプロモーターと、
レンチウイルスパッケージングのためのレンチウイルスパッケージングのシスエレメントと、
配列番号21で示されるIL6RscFv1、または配列番号22で示されるIL6RscFv2、または配列番号23で示されるIL6RscFv3のヒトIL6Rに結合するヒト化一本鎖抗体に対応するヌクレオチド配列と、
配列番号25で示されるタンパク質の共転写発現のためのIRESリボソーム結合配列と、
配列番号26で示されるIL6シグナルペプチドに対応するヌクレオチド配列と、
配列番号27で示されるヒト由来抗体Fc断片に対応するヌクレオチド配列と、
および認識、伝達、開始が一体化した第二世代CARまたは第三世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体に対応するヌクレオチド配列と、
を含むことを特徴とするベクター。
【請求項2】
前記ヒトIL6Rに結合するヒト化一本鎖抗体は、対応するヌクレオチド配列が配列番号21で示されるIL6RscFv1であることを特徴とする請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記レンチウイルスパッケージングのシスエレメントは、第二世代のレンチウイルスベクターを使用し、配列番号5で示されるレンチウイルス5'末端LTR、配列番号6で示されるレンチウイルス3'末端自己不活性化LTR、配列番号7で示されるGagシスエレメント、配列番号8で示されるRREシスエレメント、配列番号9で示されるenvシスエレメント、配列番号10で示されるcPPTシスエレメントを含むことを特徴とする請求項1に記載のベクター。
【請求項4】
前記レンチウイルスパッケージングのシスエレメントは、第三世代のレンチウイルスベクターを使用し、配列番号5で示されるレンチウイルス5'末端LTR、配列番号6で示されるレンチウイルス3'末端自己不活性化LTR、配列番号7で示されるGagシスエレメント、配列番号8で示されるRREシスエレメント、配列番号9で示されるenvシスエレメント、配列番号10で示されるcPPTシスエレメント、および配列番号4で示されるRSVプロモーターを含むことを特徴とする請求項1に記載のベクター。
【請求項5】
前記認識、伝達、開始が一体化した第二世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体に対応するヌクレオチド配列は、配列番号13で示されるCD8 leaderキメラ受容体シグナルペプチドに対応するヌクレオチド配列、配列番号14で示されるCD19一本鎖抗体軽鎖VLに対応するヌクレオチド配列、配列番号15で示されるOptimal Linker Cに対応するヌクレオチド配列、配列番号16で示されるCD19一本鎖抗体重鎖VHに対応するヌクレオチド配列、配列番号17で示されるCD8 Hingeキメラ受容体ヒンジに対応するヌクレオチド配列、配列番号18で示されるCD8 Transmembraneキメラ受容体膜貫通領域に対応するヌクレオチド配列、配列番号19で示されるCD137キメラ受容体共刺激因子に対応するヌクレオチド配列、配列番号20で示されるTCRキメラ受容体T細胞活性化ドメインに対応するヌクレオチド配列を含む、又は、
前記認識、伝達、開始が一体化した第三世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体に対応するヌクレオチド配列は、配列番号13で示されるCD8 leaderキメラ受容体シグナルペプチドに対応するヌクレオチド配列、配列番号14で示されるCD19一本鎖抗体軽鎖VLに対応するヌクレオチド配列、配列番号15で示されるOptimal Linker Cに対応するヌクレオチド配列、配列番号16で示されるCD19一本鎖抗体重鎖VHに対応するヌクレオチド配列、配列番号17で示されるCD8 Hingeキメラ受容体ヒンジに対応するヌクレオチド配列、配列番号18で示されるCD8 Transmembraneキメラ受容体膜貫通領域に対応するヌクレオチド配列、配列番号19で示されるCD137キメラ受容体共刺激因子に対応するヌクレオチド配列、配列番号20で示されるTCRキメラ受容体T細胞活性化ドメインに対応するヌクレオチド配列、および配列番号28で示されるCD28キメラ受容体共刺激因子に対応するヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のベクター。
【請求項6】
前記eWPRE増強型ウッドチャックB型肝炎ウイルス転写後調節エレメントは、6つのヌクレオチドの突然変異を含み、g.396G>A、g.397C>T、g.398T>C、g.399G>A、g.400A>T、g.411A>Tであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のベクター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のIL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR-T遺伝子組換えベクターの構築方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(1)配列番号1で示されるアンピシリン耐性遺伝子含有AmpRに対応するヌクレオチド配列、配列番号2で示される原核レプリコンpUC Ori配列、配列番号3で示されるウイルスレプリコンSV40 Ori配列、レンチウイルスパッケージングのためのレンチウイルスパッケージングのシスエレメント、配列番号11で示されるeWPRE増強型ウッドチャックB型肝炎ウイルス転写後調節エレメントをレンチウイルス骨格プラスミドに組み込む;
(2)配列番号12で示されるヒトEF1αプロモーター、認識、伝達、開始が一体化した第二世代CARまたは第三世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体に対応するヌクレオチド配列を第二世代CARまたは第三世代CARの設計態様に組み立て、酵素切断、連結、組換え反応を経てレンチウイルス骨格プラスミドにクローニングし、第二世代CARまたは第三世代CARの設計の組換えレンチウイルスプラスミドを得る;
(3)ヒトIL6Rに結合するヒト化一本鎖抗体IL6RscFv1、IL6RscFv2、またはIL6RscFv3に対応するヌクレオチド配列、IRESリボソーム結合配列、IL6シグナルペプチドに対応するヌクレオチド配列およびヒト由来抗体Fc断片に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ組換えレンチウイルスプラスミドにクローニングし、IL-6R遮断組換えレンチウイルスプラスミドを得る;
(4)得られた組換えレンチウイルスプラスミドをそれぞれレンチウイルスパッケージングプラスミドpPac-GP、pPac-Rおよび膜タンパク質プラスミドpEnv-GとHEK293T/17細胞に共形質移入させ、HEK293T/17細胞において遺伝子の転写・発現を行わせた後、パッケージングに成功した組換えレンチウイルスベクターが細胞培養上清に放出され、組換えレンチウイルスベクターを含む上清液を収集する;
(5)得られた組換えレンチウイルス上清を吸引ろ過、吸着、溶離のカラム精製手段によって精製し、それぞれ組換えレンチウイルスベクターを得る。
【請求項8】
工程(3)により得られる組換えレンチウイルスプラスミドは、ヒトEF1αプロモーターによってCAR遺伝子全体の発現が開始し、CARタンパク質は細胞膜の表面に局在化し、CD19抗原を認識し、T細胞の増殖およびサイトカインの分泌を刺激し、下流シグナル経路の発現を活性化させ、scfv領域がCD19抗原に結合すると、シグナルがキメラ受容体を介して細胞内に伝達されることで、T細胞の増殖、サイトカインの分泌の増加、抗アポトーシスタンパク質の分泌の増加、細胞死亡の遅延、標的細胞の分解といった一連の生物学的効果が生じ、IRESリボソーム結合配列によってIL6RscFvとFcの融合タンパク質が共発現され、そしてIL6シグナルペプチドの誘導によって細胞外に分泌され、IL6Rとの結合によって、IL-6とIL6Rの結合が遮断されることで、IL6のシグナル経路を遮断して、CRSを抑制する効果を実現させる機能を有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(5)では、前記吸引ろ過ステップは、上清体積を200ml〜2000mlに、真空度を-0.5MPA〜-0.9MPAに抑え、穴詰まりによるベクターの損失を防ぎ、前記吸着ステップは、溶液のpH値を6〜8に抑え、pHの変化によるベクターの不活性化を防止し、前記溶離ステップは溶離液のイオン強度を0.5M〜1.0Mに抑え、イオン強度の変化による溶離の不完全またはベクターの不活性化を防ぐことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
CRSを緩和する薬物の製造における請求項1〜6のいずれかに記載のベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学・生物の分野に属し、具体的には、ベクター、特に、IL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR-T遺伝子組換えベクターに関する。また、本発明は、当該ベクターの構築方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍免疫治療の論理的基礎は、免疫系が腫瘍関連抗原を認識し、生体を調節して腫瘍細胞を攻撃する(高度特異的な細胞溶解)能力を有することである。1950年代、BurnetとThomasは「免疫監視」理論を提出し、生体においてよく現れる突然変異した腫瘍細胞が免疫系によって認識されて排除されると考え、腫瘍免疫治療の論理的基礎を築いた[Burnet FM.Immunological aspects of malignant disease.Lancet,1967;1: 1171-4]。その後、様々な腫瘍免疫療法は、サイトカイン療法、モノクローナル抗体療法、養子免疫療法、ワクチン療法などを含め、次々と臨床に応用されてきた。
【0003】
2013年、より進んだ腫瘍免疫療法−CAR-T療法は臨床への応用に成功し、そしてそれまでになかった臨床の治療効果を示した。CAR-Tは、Chimeric Antigen Receptor T-Cell Immunotherapyの略で、キメラ抗原受容体T細胞療法である。CAR-T療法で臨床において最も進んでいるのはノバルティス社のCLT019で、CLT019によって再発・難治性急性リンパ性白血病患者を治療したところ、6か月の腫瘍無憎悪生存が67%に達し、その中で最も長かった奏効期間は2年超に達した。本社が中国上海にあるSHANGHAI UNICAR-THERAPY BIO-MEDICINE TECHNOLOGY CO. ,LTDは病院と提携し、計36例の再発・難治性急性リンパ性白血病患者を治療したところ、そのうち24例が治癒され、緩和の比率は66.6%に達した。これは抗癌研究における破壊的なブレークスルーである。CAR-T細胞療法は癌を治癒する可能性が最も高い手段の一つで、「Science」誌によって2013年度の科学技術の10大ブレークスルーの1位に選ばれた。
【0004】
CAR-T療法は、効果が顕著であるが、治療過程において一つの特殊な臨床症候群が現れ、臨床所見は発熱、低血圧、戦慄で、そして血清における一連のサイトカインレベルの顕著な向上に関連する神経系の症状が現れ、サイトカイン放出症候群(Cytokine Release Syndrome、CRS)と呼ばれる。その発生機序は、抗原がT細胞受容体に結合すると、T細胞が活性化され、そしてIL-6を含む一連のサイトカインを放出し、全身性の炎症反応につながるためで、IL-6シグナル経路は図1Aに示す。早急に治療されないと、肺部感染、凝血指標異常、肝機能異常、重要器官損傷を含む一連の症状につながり、ひいては肺水腫を引き起こし、患者が死亡する可能性がある。
【0005】
現在、臨床において抗ヒスタミン薬(例えば、クロルフェニラミン)またはコルチコステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン)を静脈注射することによって炎症反応を抑制するが、その分、CAR-T細胞の腫瘍に対する殺傷作用も抑制され、このような患者は再発率が高く、CAR-Tの治療効果に影響する。
【0006】
また、もう一つの可能な方案は市販品であるトシリズマブ(アクテムラ)でCRSの発生レベルを抑えるものである。トシリズマブはヒト化のIL-6受容体モノクローナル抗体(Tocilizumab)で、IL-6受容体に特異的に結合し、IL-6シグナルの伝達を遮断することによって、急性発作時の反応物の減少、ヘプシジンによる産物の低下、B細胞の活性化の減少、骨吸収と軟骨軟化の減少、およびT細胞のTh17細胞への分化に対する抑制につながることで、有効に炎症反応を抑える。しかし、トシリズマブを使用する費用は高く、10kg体重に対応する投与量のトシリズマブ1本は2000人民元で、成人の患者は通常毎回5本が必要で、一般的な家庭では負担しにくい。
【0007】
そのため、どのようにしてCAR-T治療の効果に影響せずに低コストの方法でCRSの発生を制御または緩和するかが、本分野の一つの技術的難題になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題の第一は、IL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR-T遺伝子組換えベクターを提供することである。まず、コストが節約され、抗体薬物を購入する高額費用が省かれる。次に、scFv遺伝子の体内輸送効率が低いという問題が回避される。第三に、レンチウイルスによって形質導入されたIL6R scFv遺伝子は、有効に細胞内におけるタンパク質翻訳系を利用し、大量に対応するIL6R scFvを発現し、体液循環を経由し、CAR-T治療の効果に影響せずに、優れたIL6Rブロッキング効果を実現させることができる。
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題の第二は、当該ベクターの構築方法を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題の第三は、当該ベクターの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するために、本発明の技術方案は、以下のものを使用する。
【0012】
本発明の第一の側面では、IL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR-T遺伝子組換えベクターであって、
配列番号1で示される目的菌株の大量増幅のためのアンピシリン耐性遺伝子含有AmpR配列と、
配列番号2で示されるプラスミド複製のための原核レプリコンpUC Ori配列と、
配列番号3で示される真核細胞内における複製を増強するためのウイルスレプリコンSV40 Ori配列と、
配列番号11で示される遺伝子組換えの発現効率を増大させるためのeWPRE増強型ウッドチャックB型肝炎ウイルス転写後調節エレメントと、
配列番号12で示されるキメラ抗原受容体遺伝子の真核転写のためのヒトEF1αプロモーターと、
レンチウイルスパッケージングのためのレンチウイルスパッケージングのシスエレメントと、
配列番号21で示されるIL6RscFv1、または配列番号22で示されるIL6RscFv2、または配列番号23で示されるIL6RscFv3であるヒトIL6Rのヒト化一本鎖抗体と、
配列番号25で示されるタンパク質の共転写発現のためのIRESリボソーム結合配列と、
配列番号26で示されるIL6シグナルペプチドと、
配列番号27で示されるヒト由来抗体Fc断片と、
認識、伝達、開始が一体化した第二世代CARまたは第三世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体と、
を含むベクターを提供する。
【0013】
本発明の好適な技術方案として、前記ヒトIL6Rのヒト化一本鎖抗体は、配列番号21で示されるIL6RscFv1である。
【0014】
前記レンチウイルスパッケージングのシスエレメントは、第二世代のレンチウイルスベクターまたは第三世代のレンチウイルスベクターを使用してもよいが、第三世代のレンチウイルスベクターが好ましい。前記第二世代のレンチウイルスベクターは、配列番号5で示されるレンチウイルス5'末端LTR、配列番号6で示されるレンチウイルス3'末端自己不活性化LTR、配列番号7で示されるGagシスエレメント、配列番号8で示されるRREシスエレメント、配列番号9で示されるenvシスエレメント、配列番号10で示されるcPPTシスエレメントを含む。前記第三世代のレンチウイルスベクターは、配列番号5で示されるレンチウイルス5'末端LTR、配列番号6で示されるレンチウイルス3'末端自己不活性化LTR、配列番号7で示されるGagシスエレメント、配列番号8で示されるRREシスエレメント、配列番号9で示されるenvシスエレメント、配列番号10で示されるcPPTシスエレメント、および配列番号4で示されるRSVプロモーターを含む。
【0015】
本発明の好適な技術方案として、前記認識、伝達、開始が一体化した第二世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体は、配列番号13で示されるCD8 leaderキメラ受容体シグナルペプチド、配列番号14で示されるCD19一本鎖抗体軽鎖VL、配列番号15で示されるOptimal Linker C、配列番号16で示されるCD19一本鎖抗体重鎖VH、配列番号17で示されるCD8 Hingeキメラ受容体ヒンジ、配列番号18で示されるCD8 Transmembraneキメラ受容体膜貫通領域、配列番号19で示されるCD137キメラ受容体共刺激因子、配列番号20で示されるTCRキメラ受容体T細胞活性化ドメインを含み、前記認識、伝達、開始が一体化した第三世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体は、配列番号13で示されるCD8 leaderキメラ受容体シグナルペプチド 、配列番号14で示されるCD19一本鎖抗体軽鎖VL、配列番号15で示されるOptimal Linker C、配列番号16で示されるCD19一本鎖抗体重鎖VH、配列番号17で示されるCD8 Hingeキメラ受容体ヒンジ、配列番号18で示されるCD8 Transmembraneキメラ受容体膜貫通領域、配列番号19で示されるCD137キメラ受容体共刺激因子、配列番号20で示されるTCRキメラ受容体T細胞活性化ドメイン、および配列番号28で示されるCD28キメラ受容体共刺激因子を含む。
【0016】
本発明の好適な技術方案として、前記eWPRE増強型ウッドチャックB型肝炎ウイルス転写後調節エレメントは、6つのヌクレオチドの増強突然変異、具体的には、g.396G>A、g.397C>T、g.398T>C、g.399G>A、g.400A>T、g.411A>Tを有する。
【0017】
本発明の第二の側面では、上記IL6RがブロッキングされたCRSを緩和するためのCAR-T遺伝子組換えベクターの構築方法であって以下の工程を含むベクターを提供する:
【0018】
(1)配列番号1で示されるアンピシリン耐性遺伝子含有AmpR配列、配列番号2で示される原核レプリコンpUC Ori配列、配列番号3で示されるウイルスレプリコンSV40 Ori配列、レンチウイルスパッケージングのためのレンチウイルスパッケージングのシスエレメント、配列番号11で示されるeWPRE増強型ウッドチャックB型肝炎ウイルス転写後調節エレメントをレンチウイルス骨格プラスミドに組み込む;
【0019】
(2)配列番号12で示されるヒトEF1αプロモーター、認識、伝達、開始が一体化した第二世代CARまたは第三世代CARを組み立てるためのキメラ抗原受容体を第二世代CARまたは第三世代CARの設計態様に組み立て、酵素切断、連結、組換え反応を経てレンチウイルス骨格プラスミドにクローニングし、第二世代CARまたは第三世代CARの設計の組換えレンチウイルスプラスミドを得る;
【0020】
(3)ヒトIL6Rのヒト化一本鎖抗体IL6RscFv1、IL6RscFv2、またはIL6RscFv3、IRESリボソーム結合配列、IL6シグナルペプチドおよびヒト由来抗体Fc断片をそれぞれ組換えレンチウイルスプラスミドにクローニングし、IL-6R遮断組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-IL6RscFv1、pCAR19-IL6RscFv2、またはpCAR19-IL6RscFv3を得る;
【0021】
(4)得られた組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-IL6RscFv1、pCAR19-IL6RscFv2、またはpCAR19-IL6RscFv3をそれぞれレンチウイルスパッケージングプラスミドpPac-GP、pPac-Rおよび膜タンパク質プラスミドpEnv-GとHEK293T/17細胞に共形質移入させ、HEK293T/17細胞において遺伝子の転写・発現を行わせた後、パッケージングに成功した組換えレンチウイルスベクターが細胞培養上清に放出され、組換えレンチウイルスベクターを含む上清液を収集する;
【0022】
(5)得られた組換えレンチウイルス上清を吸引ろ過、吸着、溶離のカラム精製手段によって精製し、それぞれ組換えレンチウイルスベクターを得る。
【0023】
本発明の好適な技術方案として、工程(3)では、ヒトEF1αプロモーターによってCAR遺伝子全体の発現が開始し、CARタンパク質は細胞膜の表面に局在化し、CD19抗原を認識し、T細胞の増殖およびサイトカインの分泌を刺激し、下流シグナル経路の発現を活性化させ、scfv領域がCD19抗原に結合すると、シグナルがキメラ受容体を介して細胞内に伝達されることで、T細胞の増殖、サイトカインの分泌の増加、抗アポトーシスタンパク質の分泌の増加、細胞死亡の遅延、標的細胞の分解といった一連の生物学的効果が生じ、IRESリボソーム結合配列によってIL6RscFvとFcの融合タンパク質が共発現され、そしてIL6シグナルペプチドの誘導によって細胞外に分泌され、IL6Rとの結合によって、IL-6とIL6Rの結合が遮断されることで、IL6のシグナル経路が遮断され、CRSを抑制する効果を実現させる。
【0024】
本発明の好適な技術方案として、工程(5)では、前記吸引ろ過ステップは、上清体積を200ml〜2000mlに、真空度を-0.5MPA〜-0.9MPAに抑え、穴詰まりによるベクターの損失を防ぎ、前記吸着ステップは、溶液のpH値を6〜8に抑え、pHの変化によるベクターの不活性化を防止し、前記溶離ステップは溶離液のイオン強度を0.5M〜1.0Mに抑え、イオン強度の変化による溶離の不完全またはベクターの不活性化を防ぐ。
【0025】
本発明の第三の側面では、CRSを緩和する薬物の製造における上記ベクターの使用を提供する。
【0026】
従来技術と比較して、本発明は以下のような有益な効果を有する。
【0027】
本発明は、IL6シグナルペプチド、ヒトIL6Rの一本鎖抗体、IRESリボソーム結合配列、ヒト由来抗体Fc断片、ヒトEF1αプロモーター、CD8 leaderキメラ受容体シグナルペプチド 、CD19の1本鎖抗体軽鎖VL、Optimal Linker C、CD19の1本鎖抗体重鎖VH、CD8 Hingeキメラ受容体ヒンジ、CD8 Transmembraneキメラ受容体膜貫通領域、CD137キメラ受容体共刺激因子、TCRキメラ受容体T細胞活性化ドメインを組換えレンチウイルスベクターに組み込み、ヒトEF1αプロモーターによってCAR遺伝子全体の発現を開始させる。CARタンパク質は細胞膜の表面に局在化し、CD19抗原を認識し、T細胞の増殖およびサイトカインの分泌を刺激し、下流シグナル経路の発現を活性化させる。scfv領域がCD19抗原に結合すると、シグナルがキメラ受容体を介して細胞内に伝達されることで、T細胞の増殖、サイトカインの分泌の増加、抗アポトーシスタンパク質の分泌の増加、細胞死亡の遅延、標的細胞の分解などの一連の生物学的効果が生じる。IRESリボソーム結合配列によってIL6RscFvとFcの融合タンパク質が共発現され、そしてIL6シグナルペプチドの誘導によって細胞外に分泌され、IL6Rとの結合によって、IL-6とIL6Rの結合が遮断されることで、IL6Rのシグナル経路を遮断して、CRSを抑制する効果を実現させる。
【0028】
本発明で使用されるIL6Rの遮断手段は、第二世代または第三世代CARの設計案に使用することができる。第三世代CARの設計は第二世代の設計と比較して、CD28キメラ受容体共刺激因子(配列番号28)が加えられ、文献では、より強いシグナルの増幅作用を有することが報告されている[Eleanor J. Cheadleら, CAR T cells: driving the road from the laboratory to the clinic. Immunological Reviews 2014.Vol. 257: 91-106]。
【0029】
本発明で使用されるレンチウイルスベクターのカラム精製システム(図7に示す)は、本出願人により開発されたレンチウイルスの大規模生産プロセスである(すでに2016年3月17日に出願された「複製欠失性組換えレンチウイルスに基づくCAR-T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用」という発明特許で公開されている)。通常の超遠心法または高速遠心法は、遠心沈降原理でレンチウイルス粒子を分離するもので、不可避的に沈降係数が近い不純物が多く残り、後続の実験に不利な影響を与える。そして、管への仕込み過程が複雑で、操作が煩雑で、数回の容器の入れ替えは多くの汚染の可能性をもたらす。一方、本社によって開発されたレンチウイルスベクターのカラム精製プロセスは半自動化操作で、全部の過程がクラス100の実験エリアで完了し、人手による操作の煩雑さ、ミスおよび汚染の可能性を回避し、回収されるレンチウイルスベクターは内毒素、マイコプラズマ、宿主DNAの残留などの指標において完全に臨床の標準に達する。後続は全自動精製装置の開発が可能である。
【0030】
本発明で使用されるCAR設計案は、第二世代のレンチウイルスベクターの構造にも使用することができる(すでに2016年3月17日に出願された「複製欠失性組換えレンチウイルスに基づくCAR-T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用」という発明特許で公開されている)。第二世代と第三世代のレンチウイルスベクターの構造における違い(図2Bに示す)は、主に第三世代のレンチウイルスベクターでは、第二世代のベクターの5' LTRのU3領域をRSVプロモーターに変えることで、U3転写時のTatタンパク質に対する依存を無くし、レンチウイルスの構造遺伝子からTat配列を削除するだけでなく、レンチウイルスのゲノムの転写レベルと転写の持続性も向上させることができる。第二世代と第三世代のレンチウイルスベクターは主にゲノムの転写形態が違うため、本発明で使用されるCAR設計案は、この二つの世代のレンチウイルスベクターに使用することができる。本発明で使用されるベクター骨格は第三世代のレンチウイルスベクター(図2Aに示す)が好ましく(すでに2016年3月17日に出願された「複製欠失性組換えレンチウイルスに基づくCAR-T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用」という発明特許で公開されている)、3' SIN LTRはU3領域を除去し、レンチウイルスベクターが自己複製する可能性を無くし、安全性を大幅に向上させる。cPPTとWPREエレメントを加え、導入効率と遺伝子組換えの発現効率を向上させる。RSVプロモーターによってレンチウイルスベクターのパッケージング時のコアRNAの持続的で効率的な転写を保証する。ヒト自身のEF1αプロモーターを利用し、CAR遺伝子が人体内において長時間持続的に発現できるようにさせる。
【0031】
本出願人によって開発された第三世代のレンチウイルス骨格のプラスミド(すでに2016年3月17日に出願された「複製欠失性組換えレンチウイルスに基づくCAR-T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用」という発明特許で公開されている)は、増強されたWPREエレメントを使用し、ペンシルベニア大学のCarl H. Juneら(Porter DL, Levine BL, Kalos M, Bagg A, June CH. Chimeric antigen receptormodified T cells in chronic lymphoid leukemia.N Engl J Med 2011;365:725-33.)が使用するWPREエレメントと比較して、6つのヌクレオチドの増強突然変異(g.396G>A、g.397C>T、g.398T>C、g.399G>A、g.400A>T、g.411A>T)を有し、初期転写産物のポリアデノシン化を強化させ、細胞内におけるmRNAの含有量を増加させ、遺伝子組換えの発現効率を増大させる。
【0032】
本出願で使用されるLentivalパッケージングシステムは補助ウイルスのない4プラスミドパッケージングシステム(すでに2016年3月17日に出願された「複製欠失性組換えレンチウイルスに基づくCAR-T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用」という発明特許で公開されている)で、4種類のプラスミドをHEK293T/17細胞に共形質移入させることによって、組換えレンチウイルスベクターが生成する。組換え後のレンチウイルスベクターは複製欠陥型ベクターで、外来断片を宿主の遺伝子に組み込むことができ、使用は一回限りであり、複製と増殖はできず、安全性が大幅に向上する。
【0033】
本発明で使用されるのはIL-6Rに対する一本鎖抗体ブロッキングの技術で、一本鎖抗体(single chain antibody fragment、scFv)は、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域が15〜20のアミノ酸からなる短鎖ペプチド(リンカー)で連結して形成されている。scFvは好適にその抗原に対する親和活性を保ち、かつ分子量が小さい、貫通力が強い、そして抗原性が弱いといった特徴がある。本発明で使用されるヒトIL6R遮断一本鎖抗体の設計は、有効にT細胞で過剰発現して細胞外に分泌され、有効にIL-6とIL6Rの結合を遮断し、IL6シグナル経路の活性化を遮断することができ、T細胞殺傷実験において、QPCRによって検出したところ、有効にPBMCにおけるC反応性タンパク質のmRNAの転写レベルを抑制し、細胞培養上清におけるC反応性タンパク質の含有量を低下させ、IL-6R遮断効果評価実験では、本発明のベクターは体内でIL-6シグナル経路を抑制し、CRSの症状を軽減および緩和することができることが証明された。
【0034】
本発明で使用されるscFv断片および抗体Fc断片は、いずれもヒト化改造されたもので、有効に体内におけるヒト抗マウス抗体(Human anti-mouse antibodies、HAMA)の発生を減少させ、scFvの半減期および作用効果を向上させることができる。
【0035】
本発明で使用されるcscfv断片のリンカーの設計(すでに2016年3月17日に出願された「複製欠失性組換えレンチウイルスに基づくCAR-T遺伝子組換えベクターおよびその構築方法と使用」という発明特許で公開されている)は、顕著にサイトカインの分泌、CAR-T細胞の体外殺傷作用および臨床の治療効果を向上させることができる。
【0036】
本発明では、IL6R scFvの作用機序が採用される(図1Bに示す)。まず、コストが節約され、抗体薬物を購入する高額費用が省かれる。次に、scFv遺伝子の体内輸送効率が低いという問題が回避される。第三に、レンチウイルスによって形質導入されたIL6R scFv遺伝子は、有効に細胞内におけるタンパク質翻訳系を利用し、大量に対応するIL6R scFvを発現し、体液循環を経由し、優れたIL6Rブロッキング効果を実現させることができる。本発明では、一連のIL6R抗体の遺伝子配列、アミノ酸配列などの生物情報学における情報を選択し、IL6R scFvの重鎖および軽鎖の可変領域を予測し、IL6R scFvの組み合わせの二次構造およびその物理的・化学的性質を分析し、可溶性発現および間接ELISA法によってIL6R scFvの親和定数を測定し、その中から3本のscFvを選んで細胞機能レベルの検出を行った。最終的に最適な選択としてIL6RscFv1に決定し、将来的には臨床研究の段階に入ることが可能である。本発明の組換えレンチウイルスベクターの骨格は異なる治療性遺伝子を担持させて幅広く養子細胞治療の分野に使用し、IL6RをブロッキングするためにIL6R scFv遺伝子を担持させることができる。本発明の組換えレンチウイルスベクターはヒトT細胞におけるCD19キメラ抗原受容体の発現を実現させ、T細胞のCD19陽性細胞に対する殺傷作用を誘導して活性化し、臨床においてB細胞性白血病、Bリンパ腫および多発性骨髄腫の治療に使用することができる。ヒトT細胞においてインターロイキン-6受容体(IL-6R)のscFvを発現し、有効にIL6Rをブロッキングし、IL-6のシグナル経路を遮断し、臨床においてサイトカイン放出症候群CRSを緩和することができる。よって、本発明はCAR-T治療の効果に影響せずに低コストの方法でCRSの発生を制御または緩和し、本分野の技術的難題を解決し、かつ予想外の技術的効果を実現させることがわかる。
【0037】
本発明に係るIL-6R一本鎖抗体の発現カセットおよびその遺伝子発現産物は、CAR19-T(CD19-CAR-T)の急性Bリンパ性白血病(ALL)に対する治療においてCRSの症状の解消または軽減だけでなく、CAR-T治療によって、例えば、膵臓腺癌、脳膠細胞腫、骨髄腫などのすべての種類の腫瘍を治療する時に生じるCRS症状の緩和にも使用することができ、さらにほかの種類の治療によるCRSの緩和に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】本発明のIL-6シグナル経路の概略図である。
図1B】本発明のIL6R scFvの作用機序の概略図である。
図2】本発明のレンチウイルスベクターの構造の概略図である。ここで、図2Aは本発明で使用される第三世代のレンチウイルスベクターの構造の概略図で、図2Bは第二世代と第三世代のレンチウイルスベクターの構造の比較の概略図である。
図3】本発明の実施例1において本発明に係る組換えレンチウイルスベクターを構築するフロー図である。ここで、図(A)はレンチウイルス骨格プラスミドpLenti-3G Basic2の構造概略図で、図(B)はpCAR19-Basic2プラスミドの構造概略図で、図(C)はpCAR19-IL6RscFv1、pCAR19-IL6RscFv2、pCAR19-IL6RscFv3、pCAR19-scFv0プラスミドの概略図で、図(D)はレンチウイルスパッケージングプラスミドpPac-GPの構造概略図で、図(E)はレンチウイルスパッケージングプラスミドpPac-Rの構造概略図で、図(F)は膜タンパク質pEnv-Gの構造概略図である。
図4】本発明の実施例1におけるレンチウイルス骨格プラスミドpLenti-3G Basic2の酵素切断の予想および酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンである。図4Aはレンチウイルス骨格プラスミドpLenti-3G Basic2の酵素切断の予想概略図で、ここで、レーン1はpLenti-3G Basic2のCla I+BamH Iによる酵素切断の予想で、バンドは上から下の順に5854bpで、レーン2は1kb DNAラダーマーカーの予想で、バンドは上から下の順に10kb、8kb、6kb、5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、750bp、500bp、250bpである。図4Bはレンチウイルス骨格プラスミドpLenti-3G Basic2の酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンで、ここで、レーン1はpLenti-3G Basic2のCla I+BamH Iによる酵素切断の電気泳動の結果で、レーン2は1kb DNAラダーマーカーの電気泳動の結果である。
図5】本発明の実施例1における組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-Basic2の酵素切断の予想および酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンである。図5Aは組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-Basic2の酵素切断の予想図で、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーで、バンドは上から下の順に10kb、8kb、6kb、5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、750bp、500bp、250bpで、レーン2はpCAR19-Basic2のNde I+Hpa Iによる酵素切断の予想で、バンドは上から下の順に6511bp、2014bpである。図5Bは組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-Basic2の酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンで、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーの電気泳動の結果で、レーン2はpCAR19-Basic2のNde I+Hpa Iによる酵素切断の電気泳動の結果である。
図6】本発明の実施例1における組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-IL6RscFv1、pCAR19-IL6RscFv2およびpCAR19-IL6RscFv3の酵素切断の予想および酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンである。図6AはpCAR19-IL6RscFv1の酵素切断の予想図で、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーで、バンドは上から下の順に10kb、8kb、6kb、5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、750bp、500bp、250bpで、レーン2はpCAR19-IL6RscFv1のApaL Iによる酵素切断の予想で、バンドは上から下の順に4230bp、2137bp、1726bp、1246bp、1054bp、497bpである。図6BはpCAR19-IL6RscFv1の酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンで、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーの電気泳動の結果で、レーン2はpCAR19-IL6RscFv1のApaL Iによる酵素切断の電気泳動の結果である。図6CはpCAR19-IL6RscFv2の酵素切断の予想図で、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーで、バンドは上から下の順に10kb、8kb、6kb、5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、750bp、500bp、250bpで、レーン2はpCAR19-IL6RscFv2のKpn Iによる酵素切断の予想で、バンドは上から下の順に8335bp、2555bpである。図6DはpCAR19-IL6RscFv2の酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンで、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーの電気泳動の結果で、レーン2はpCAR19-IL6RscFv2のKpn Iによる酵素切断の電気泳動の結果である。図6EはpCAR19-IL6RscFv3の酵素切断の予想図で、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーで、バンドは上から下の順に10kb、8kb、6kb、5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、750bp、500bp、250bpで、レーン2はpCAR19-IL6RscFv3のPvu IIによる酵素切断の予想で、バンドは上から下の順に7703bp、2364bp、823bpである。図6FはpCAR19-IL6RscFv3の酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンで、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーの電気泳動の結果で、レーン2はpCAR19-IL6RscFv3のPvu IIによる酵素切断の電気泳動の結果である。図6GはpCAR19-scFv0の酵素切断の予想図で、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーで、バンドは上から下の順に10kb、8kb、6kb、5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、750bp、500bp、250bpで、レーン2はpCAR19-scFv0のSac IIによる酵素切断の予想で、バンドは上から下の順に5577bp、3835bp、895bp、347bpである。図6HはpCAR19-scFv0の酵素切断のアガロースゲル電気泳動パターンで、ここで、レーン1は1kb DNAラダーマーカーの電気泳動の結果で、レーン2はpCAR19-scFv0のSac IIによる酵素切断の電気泳動の結果である。
図7】本発明の実施例2におけるイオン交換クロマトグラフィーによる組換えレンチウイルスベクターの精製のフロー図である。
図8】本発明の実施例2における組換えレンチウイルスベクターの力価の検出結果の概略図である。
図9】本発明の実施例2における組換えレンチウイルスベクターの異なる精製手段におけるマイコプラズマの検出結果の概略図で、レーン1はDL2000マーカーで、バンドは上から下の順に2kb、1kb、750 bp、500 bp、250 bp、100bpで、レーン2は陽性対照で、レーン3は陰性対照で、レーン4はPBSで、レーン5は水で、レーン6はlvCAR19-IL6RscFv1で、レーン7はlvCAR19-IL6RscFv2で、レーン8はlvCAR19-IL6RscFv3で、レーン9はlvCAR19-scFv0である。
図10】本発明の実施例3におけるmRNA相対発現量の縦棒グラフである。ここで、図10AはRT-QPCRの結果の概略図で、CAR遺伝子がPBMC細胞内で効率的に転写されたことを示す。図10BはRT-QPCRの結果の概略図で、scFv遺伝子がPBMC細胞内で効率的に転写されたことを示す。
図11】本発明の実施例3におけるCARタンパク質の発現量のWB検出の図で、結果から、CARタンパク質がPBMC細胞内で効率的に発現されたことが示された。図11Aでは、Mはタンパク質マーカーで、レーン1はPBMC空細胞で、レーン2は対照ウイルスMOCKで、レーン3はlvCAR19-IL6RscFv1で、レーン4はlvCAR19-IL6RscFv2で、レーン5はlvCAR19-IL6RscFv3で、レーン6はlvCAR19-scFv0である。図11Bはβ-アクチンの内部参照バンドである。
図12】本発明の実施例3におけるscFvタンパク質の発現量のELISA検出の結果の図で、結果から、scFvタンパク質がPBMC細胞内で効率的に発現されたことが示された。
図13】本発明の実施例3において組換えレンチウイルスベクターで形質移入されたPBMCが、異なるエフェクター細胞対標的細胞比の条件において共培養され、24h後検出された標的細胞に対する殺傷の状況の概略図である。
図14】本発明の実施例3において異なるエフェクター細胞をそれぞれ標的細胞と共培養する条件において、12hのmRNA転写レベルの変化の様子の概略図である。
図15】本発明の実施例3において異なる群の上清で12h培養された後の、PBMCにおけるCRP mRNA転写レベルの変化の様子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。もちろん、本明細書に記載の特定の実施形態は例示の形で挙げられたもので、本発明の制限にならない。本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明の主な特徴は様々な実施形態に使用することができる。
【0040】
実施例1 組換えレンチウイルスベクターの構築
一.材料
1.レンチウイルス骨格プラスミドpLenti-3G Basic2、レンチウイルスパッケージングプラスミドpPac-GP、pPac-Rおよび膜タンパク質プラスミドpEnv-G、HEK293T/17細胞、相同組換え酵素はS&E (Shanghai) BIO-PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO.,LTD.によって提供された。
【0041】
2.プライマー:プライマーの設計原則に基づいてDNA断片と標的部位の増幅に必要なプライマーは上海生物社によって合成され、具体的には以下の通りである。
EF1α-F:5’-ATTCAAAATTTTATCGATGCTCCGGTGCCCGTCAGT-3’ (配列番号29)
EF1α-R:5’-TCACGACACCTGAAATGGAAGA-3’ (配列番号30)
CD8 leader-F:5’-GGTGTCGTGAGGATCCGCCACCATGGCCTTACCAGTGACCGC-3’
(配列番号31)
CD8 leader-R:5’-GTGTCATCTGGATGTCCGGCCTGGCGGCGTG-3’(配列番号32)
VL-F:5’-CACGCCGCCAGGCCGGACATCCAGATGACACAGACTACATC-3’(配列番号33)
VL-R:5’-TGTGATCTCCAGCTTGGTCC-3’(配列番号34)
OLC-VH-F:5’-CAAGCTGGAGATCACAGGTGGCGGTGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCG
GGTGGCGGCGGATCTGAGGTGAAACTGCAGGAGTCA-3’(配列番号35)
VH-R:5’-TGAGGAGACGGTGACTGAGGT-3’(配列番号36)
CD8 Hinge-F:5’-AGTCACCGTCTCCTCAACCACGACGCCAGCGCC-3’(配列番号37)
CD8 Hinge-R:5’-GTAGATATCACAGGCGAAGTCCA-3’(配列番号38)
CD8 Transmembrane-F:5’-CGCCTGTGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGC-3’(配列番号39)
CD8 Transmembrane-R:5’-TCTTTCTGCCCCGTTTGCAGTAAAGGGTGATAACCAGTG- 3’(配列番号40)
CD137-F:5’-AAACGGGGCAGAAAGAAACTC-3’(配列番号41)
CD137-R:5’-TGCTGAACTTCACTCTCAGTTCACATCCTCCTTCTTCTTC-3’(配列番号 42)
TCR-F:5’-AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCG-3’(配列番号43)
TCR-R:5’-GGAGAGGGGCGTCGACTTAGCGAGGGGGCAGGGC-3’(配列番号44)
IRES-F:5’-GCCCTGCCCCCTCGCTAAGCCCCTCTCCCTCCCC-3’(配列番号45)
IRES-R:5’- CCAGGGAGAAGGCAACTGGACCGAAGGCGCTTGTGGAGAAGGAGTTC
ATGGTGGCATTATCATCGTGTTTTTCAAAGGA -3’(配列番号46)
IL6Rs1-F:5’-GTTGCCTTCTCCCTGGGGCTGCTCCTGGTGTTGCCTGCTGCCTTCCCTG
CCCCAGACATCCAGATGACCCAGAG -3’(配列番号47)
IL6Rs1-R:5’- GCAGCTTTTCGGTTCTGAGGAGACTGTGACGAGGCT -3’(配列番号48)
IL6Rs2-F:5’-GTTGCCTTCTCCCTGGGGCTGCTCCTGGTGTTGCCTGCTGCCTTCCCTG
CCCCAGAAATTGTGATGACCCAGAG -3’(配列番号49)
IL6Rs2-R:5’-GCAGCTTTTCGGTTCGCTGCTCACGGTCACGGTGGT -3’(配列番号50)
IL6Rs3-F:5’- GTTGCCTTCTCCCTGGGGCTGCTCCTGGTGTTGCCTGCTGCCTTCCCTG
CCCCAGATATTCAGATGACCCAGAG -3’(配列番号51)
IL6Rs3-R:5’- GCAGCTTTTCGGTTCGCTGCTCACGGTCACGGTGGT -3’(配列番号52)
s0-F:5’- GTTGCCTTCTCCCTGGGGCTGCTCCTGGTGTTGCCTGCTGCCTTCCCTG
CCCCATTGTTCTGGATTCCTGCTTCCA -3’(配列番号53)
s0-R:5’- GCAGCTTTTCGGTTCTGCAGAGACAGAGACCAGAGT -3’(配列番号54)
Fc-F:5’- GAACCGAAAAGCTGCGATAAAAC -3’(配列番号55)
Fc-R:5’- CTAGCAATCTAGAGGTTATTTGCCCGGGCTCAGGCTCA -3’(配列番号56)
WPRE-QPCR-F:5’-CCTTTCCGGGACTTTCGCTTT-3’(配列番号57)
WPRE-QPCR-R:5’-GCAGAATCCAGGTGGCAACA-3’(配列番号58)
アクチン-QPCR-F:5’-CATGTACGTTGCTATCCAGGC-3’(配列番号59)
アクチン-QPCR-R:5’-CTCCTTAATGTCACGCACGAT-3’(配列番号60)
CAR-QPCR-F:5’-GACTTGTGGGGTCCTTCTCCT-3’(配列番号61)
CAR-QPCR-R:5’-GCAGCTACAGCCATCTTCCTC-3’(配列番号62)
IL6-QPCR-F:5’-GGATTCAATGAGGAGACTT-3’(配列番号63)
IL6-QPCR-R:5’-ATCTGTTCTGGAGGTACT-3’(配列番号64)
CRP-QPCR-F:5’- GACATTGGAAATGTGAACATGT-3’(配列番号65)
CRP-QPCR-R:5’- CACAGCTGGGGTTTGGTGA-3’(配列番号66)
Fc-QPCR-F:5’- GACATTGGAAATGTGAACATGT-3’(配列番号67)
Fc-QPCR-R:5’- CACAGCTGGGGTTTGGTGA-3’(配列番号68)
【0042】
3.配列番号12〜配列番号68で示されるDNA配列は、Generay Biotech Co, Ltd.によって合成され、かつオリゴヌクレオチドの乾燥粉末またはプラスミドの態様で保存する。
【0043】
4.ツール酵素Nde I、Hpa I、Pvu II、Sac II、ApaL I、BamH I、Kpn I、Cla I、T4 DNAリガーゼはいずれもNEB社から購入した。
【0044】
5.高正確性酵素PrimeSTAR、RNはTakara社から購入した。
【0045】
6.0.22μm〜0.8μm PESフィルターはmillipore社から購入した。
【0046】
7.プラスミド抽出キット、アガロースゲル回収キットはいずれもMN社から購入した。
【0047】
8.感受性細胞TOP10はtiangen社から購入した。
【0048】
9.NaCl、KCl、Na2HPO4.12H2O、KH2PO4、トリプシン、EDTA、CaCl2、NaOH、PEG6000はいずれも上海生工社から購入した。
【0049】
10.Opti-MEM、FBS、DMEM、1640、Pen-Srep、Hepesはinvitrogen社から購入した。
【0050】
11.ビオチン標識プロテインL(Biotinylated protein L)、プロテインG-HRP(proteinG-HRP)はGeneScript社から購入した。
【0051】
12.西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の二次抗体、DAB使用液はいずれも北京中杉金橋社から購入した。
【0052】
13. ECL+plusTM Western blotting systemはAmersham社から購入した。
【0053】
14.DNeasyキットは上海Generay社から購入した。
【0054】
15.リンパ球分離液は深センDakewe Biotech Co., Ltd.から購入した。
【0055】
16.フィコエリトリン(PE)結合ストレプトアビジンはBD Bioscience社から購入した。
【0056】
17.SA-HRP、TMB基質溶液、ELISA反応停止液は上海Yeasen社から購入した。
【0057】
18.マイコプラズマ検出キット、内毒素検出キット、CD19+K562細胞はS&E (Shanghai)社から購入した。
19.LDH検出キットはpromega社から購入した。
【0058】
二.組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0の構築方法
【0059】
図3に示すように、本発明に係る組換えレンチウイルスベクターの構築方法は以下の通りである。
【0060】
1.ヒトEF1αプロモーター、CD8 leaderキメラ受容体シグナルペプチド 、CD19の1本鎖抗体軽鎖VL、Optimal Linker C、CD19の1本鎖抗体重鎖VH、CD8 Hingeキメラ受容体ヒンジ、CD8 Transmembraneキメラ受容体膜貫通領域、CD137キメラ受容体共刺激因子、TCRキメラ受容体T細胞活性化ドメインをレンチウイルス骨格プラスミドpLenti-3G Basic2にクローニングし、組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-Basic2を得た後、scFv断片とFc断片をそれぞれpCAR19-Basic2に連結し、IL-6R遮断組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-IL6RscFv1、pCAR19-IL6RscFv2、pCAR19-IL6RscFv3および対照のpCAR19-scFv0を得た。
【0061】
(1) レンチウイルス骨格プラスミドpLenti-3G Basic2は制限酵素Cla IとBamH Iで二重酵素切断し、産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、5854bpの断片V1が確認され(図4に示す)、ゲルを切断してエッペンドルフ(Eppendorf)管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。

【0062】
(2) プライマーEF1α-FとEF1α-Rで合成された配列番号12を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 2min)×35サイクル、72℃ 10minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、1208bpの断片aが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。

【0063】
(3)CD8 leader-FとCD8 leader-Rで合成された配列番号13を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 30s)×35サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、101bpの断片bが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0064】
(4)プライマーVL-FとVL-Rで合成された配列番号14を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 30s)×35サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、336bpの断片cが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0065】
(5)プライマーOLC-VH-FとVH-Rで合成された配列番号16を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 30s)×35サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、421bpの断片dが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0066】
(6)CD8 Hinge-FとCD8 Hinge-Rで合成された配列番号17を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 30s)×35サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、147bpの断片eが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0067】
(7)CD8 Transmembrane-FとCD8 Transmembrane-Rで合成された配列番号18を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 30s)×35サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、100bpの断片fが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0068】
(8)プライマーCD137-FとCD137-Rで合成された配列番号19を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 30s)×35サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、142bpの断片gが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0069】
(9)プライマーTCR-FとTCR-Rで合成された配列番号20を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 30s)×35サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、355bpの断片hが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0070】
(10)DNA断片b、c、dを1μlずつ鋳型とし、表3におけるシステムを使用し、プライマー以外のものをエッペンドルフ管に入れ、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、60℃ 10s、72℃ 30s)×6サイクルで、プライマーCD8 leader-F/VH-Rを入れ、サイクル条件は(98℃ 10s、60℃ 10s、72℃ 40s)×24サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、814bpの断片iが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。

【0071】
(11)DNA断片e、f、g、hを1μlずつ鋳型とし、表3におけるシステムを使用し、プライマー以外のものをエッペンドルフ管に入れ、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、60℃ 10s、72℃ 30s)×6サイクルで、プライマーCD8 Hinge-F/TCR-Rを入れ、サイクル条件は(98℃ 10s、60℃ 10s、72℃ 30s)×24サイクル、72℃ 5minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、704bpの断片jが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0072】
(12)DNA断片V1、a、i、jを総体積5μlかつモル比1:1:1:1の比率でエッペンドルフ管に入れ、相同組換え酵素反応液15μlを入れ、均一に混合した後42℃で30分間インキュベートし、氷の上に移して2〜3分間置き、反応液を50μlのTOP10に入れ、軽く回転させて均一に内容物を混合し、氷の中に30分間置き、管を42℃に加熱しておいた恒温水浴鍋に入れて90秒加熱刺激し、すぐに管を氷浴に移し、細胞を2〜3分間冷却し、各管にLB培養液を900μlずつ入れた後、管を37℃のシェーカーに移し、1時間インキュベートして細胞を回復させ、100μlの形質転換菌をAmp LB寒天プレートに塗布し、逆さまに置き、恒温インキュベーターで37℃で16時間培養した。
【0073】
クローンを選んで集落のPCR同定を行い、正確と同定されたクローンは組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-Basic2であり、正確なクローンに対して酵素切断の同定を行った(図5に示す)。
【0074】
(13)組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-Basic2は制限酵素Sal IとNhe Iで二重酵素切断し、産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、8491bpの断片V2が確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ(Eppendorf)管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0075】
(14)プライマーIRES-FとIRES-Rで合成された配列番号25を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 2min)×35サイクル、72℃ 10minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、605bpの断片kが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0076】
(15)プライマーIL6Rs1-FとIL6Rs1-Rで合成された配列番号21を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 2min)×35サイクル、72℃ 10minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、754bpの断片lが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0077】
(16)プライマーIL6Rs2-FとIL6Rs2-Rで合成された配列番号22を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 2min)×35サイクル、72℃ 10minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、777bpの断片mが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0078】
(17)プライマーIL6Rs3-FとIL6Rs3-Rで合成された配列番号23を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 2min)×35サイクル、72℃ 10minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、774bpの断片nが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0079】
(18)プライマーs0-Fとs0-Rで合成された配列番号24を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 2min)×35サイクル、72℃ 10minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、729bpの断片oが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0080】
(19)プライマーFc-FとFc-Rで合成された配列番号27を鋳型とし、表2におけるシステムを使用し、PCRサイクル条件は98℃ 3min、(98℃ 10s、55℃ 15s、72℃ 2min)×35サイクル、72℃ 10minであった。産物を1.5%のアガロースゲル電気泳動を行ったところ、726bpの断片pが確認され、ゲルを切断してエッペンドルフ管に収集し、MN社のアガロースゲル回収キットによって対応する断片を回収し(表1に示す)、そして産物の純度と濃度を測定した。
【0081】
(20)DNA断片(V2、k、l、p)、(V2、k、m、p)、(V2、k、n、p)、(V2、k、o、p)をそれぞれ総体積5μlかつモル比1:1:1:1の比率でエッペンドルフ管に入れ、相同組換え酵素反応液15μlを入れ、均一に混合した後42℃で30分間インキュベートし、氷の上に移して2〜3分間置き、反応液を50μlのTOP10に入れ、軽く回転させて均一に内容物を混合し、氷の中に30分間置き、管を42℃に加熱しておいた恒温水浴鍋に入れて90秒加熱刺激し、すぐに管を氷浴に移し、細胞を2〜3分間冷却し、各管にLB培養液を900μlずつ入れた後、管を37℃のシェーカーに移し、1時間インキュベートして細胞を回復させ、100μlの形質転換菌をAmp LB寒天プレートに塗布し、逆さまに置き、恒温インキュベーターで37℃で16時間培養した。クローンを選んで集落のPCR同定を行い、正確と同定されたクローンは組換えレンチウイルスプラスミドpCAR19-IL6RscFv1、pCAR19-IL6RscFv2、pCAR19-IL6RscFv3および対照のpCAR19-scFv0であり、正確なクローンに対して酵素切断の同定を行った(図6に示す)。
【0082】
2.組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0のパッケージング
(1)完全培地:加熱しておいた新鮮な培地を取り、10%FBS +5ml Pen-Srepを入れ、上下反転で均一に混合した。
【0083】
(2)1XPBS溶液:NaCl 8g、KCl 0.2、Na2HPO4・12H2O 3.58g、KH2PO4 0.24gを秤量して1000mlビーカーに置き、900mlのMilli-Qグレードの超純水を入れて溶解させ、完全に溶解した後、1000mlメスシリンダーで容積を1000mlにし、121℃の高温で20min湿熱滅菌した。
【0084】
(3) 0.25%トリプシン溶液: トリプシン 2.5g、EDTA 0.19729gを秤量して1000mlビーカーに置き、900mlの1×PBSを入れて溶解させ、完全に溶解した後、メスシリンダーで容積を1000mlにし、0.22μMのろ過除菌し、長期的な使用の場合-20℃冷蔵庫で保存する。
【0085】
(4)0.5M CaCl2溶液:36.75g CaCl2を秤量して400mlのMilli-Qグレードの超純水に溶解した。Milli-Qグレードの超純水で総体積を500mlにし、均一に混合した。0.22μmのろ過除菌し、分注して50ml遠心管に保存し、各管45mlずつとして、4℃で保存した。
【0086】
(5)2×HBS溶液:4.09g NaCl、0.269g Na2HPO4、5.96g Hepesを秤量して、400ml Milli-Qグレードの超純水に溶解した。pH計を較正した後、2M NaOH溶液でHBS溶液のpHを7.05に調整した。各瓶のHBSのpHの調整に消費した2M NaOHは3ml程度であった。
【0087】
(6)液体窒素タンクから冷凍保存したHEK293T/17細胞を取り出し、すぐに37℃水浴に移し、1〜2min後クリーンベンチに移し、無菌操作で冷凍保存管における液体を全部10cm2培養シャーレに移し、8mL/10cm2シャーレまで10%FBS含有DMEMを追加し、24h後顕微鏡で細胞を観察し、細胞が80%コンフルエントを超えたら継代を行った。
【0088】
(7)細胞状態が良く、汚染のないHEK293T/17細胞を選び、2〜6個の培養シャーレを一組として、細胞をトリプシンで消化した後、電動ピペットで4〜12mlの完全培地を吸い取り、培養シャーレが乾燥しないようにそれぞれ消化された培養シャーレに2ml入れた。1mlピペットですべての細胞を吹き混ぜて単細胞懸濁液とし、培地瓶に移した。
(8)上記2〜6個の培養シャーレにおける残留細胞を培地瓶に移し、培地でもう一回培養シャーレを洗った。
【0089】
(9)培地瓶の蓋をし、上下反転を10回程度行い細胞懸濁液を十分に混合し、細胞を8〜24個の10cm2培養シャーレに継代し、各シャーレの細胞密度は約4 × 106個/10ml完全培地程度であった。細胞密度が予想と大きく違ったら、細胞をカウントした後、4×106個/シャーレの量で接種した。
【0090】
(10)6個の培養シャーレをひと重ねにし、上下のシャーレの間のマッチングを維持するように注意した。培養シャーレを左右、前後に数回振とうし、細胞を十分に分散させた後、5% CO2インキュベーターに入れた。残留細胞に対して同様の処理を行った。
【0091】
(11)継代された細胞をチェックしたところ、細胞は70〜80%コンフルエントで、輪郭がふっくらとし、付着が良く、細胞培養シャーレに均一に分布していた。
【0092】
(12)細胞の液置換を行い、培地を新鮮な完全培地に替え、各シャーレに9mlずつ、そしてインキュベーターのCO2濃度設定値を8%に上げた。
【0093】
(13)N+0.5になるようにDNA/CaCl2溶液を調製した。各シャーレのHEK293T/17細胞のプラスミド形質移入量は、組換えレンチウイルスプラスミド(20μg)、pPac-GP(15μg)、pPac-R(10μg)、pEnv-G(7.5μg)のような比率とした。新たな5ml遠心管を取り、0.5M CaCl2:0.25ml、組換えレンチウイルスプラスミド20μg:pPac-GP 15μg:pPac-R 10μg:pEnv-G 7.5μgを入れ、0.5mlに超純水を追加して蓋をし、十分に混合した。
【0094】
(14)5ml遠心管をもう1本取り、0.5mlのDNA/CaCl2溶液を入れた。ボルテックス振とう機を開け、片手で5ml遠心管の上端を持ち、管底を振とうヘッドに当て、液体を管壁に分散させて流動させ、もう一方の手で1mLピペットを持ち、0.5mLの2×HBS溶液を吸い取り、ゆっくり遠心管に滴下し、半分間で滴下が完了するように流速をコントロールした。2×HBSを入れた後、続けて5秒振とうし、振とうを止め、そのまま形質移入しようとする細胞に入れた。
【0095】
(15)一つのシャーレの細胞を取り、カルシウム形質移入試薬がシャーレ全体に分布するように、遠心管中の1mLのカルシウム形質移入液をそれに滴下した。
【0096】
(16)カルシウム形質移入液を入れた後、シャーレの蓋に印をつけ、培養シャーレをもう一台の5% CO2インキュベーターに置いた。培養シャーレを水平に置き、重ねたシャーレが6個を超えないようにした。5% CO2インキュベーターに置いた(6〜8 h)。
(17)一台目のインキュベーターのCO2濃度設定値を5%に戻した。
【0097】
(18)24時間後、細胞の状態をチェックした。細胞は80〜85%コンフルエント程度で、状態が良かった。培地を吸い取り、10 mLの新鮮なDMEM完全培地に替えた。
【0098】
(19)48時間後、形質移入の効率を観察した。ほとんどの細胞がまだ付着していた。95%超の細胞に緑色蛍光が付いたことがわかった。同一のウイルスパッケージング上清液を合わせ、培養シャーレに続けて10 mLの新鮮な培地を添加した。
【0099】
(20)72時間後、もう一回同一のウイルス上清液を合わせ、2回収集されたウイルスを合わせてもよく、培養シャーレを捨てた。この時収集された上清に組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0が含まれていた。
【0100】
実施例2 組換えレンチウイルスベクターの濃縮と検出
一.イオン交換クロマトグラフィーによる組換えレンチウイルスベクターの精製(図7に示す):
(1)収集された上清液をThermo真空ポンプで、0.22μm〜0.8μmのPESフィルターで吸引ろ過し、不純物を除去した。
【0101】
(2)1:1〜1:10の比率で上清に1.5M NaCl 250 mM Tris-HCl(pH 6-8)を入れた。
【0102】
(3)2本のイオン交換カラムを直列に設置し、4ml 1M NaOH、4ml 1M NaCl、5ml 0.15M NaCl 25 mM Tris-HCl(pH 6〜8)溶液を順にカラムを通過させた。
【0103】
(4)工程2で得られた溶液をペリスタポンプで1〜10ml/minの速度でイオン交換カラムに仕込んだ。
【0104】
(5)上清液が全部カラムを通った後、10ml 0.15M NaCl 25 mM Tris-HCl(pH 6〜8)溶液で1回洗浄した。
【0105】
(6)仕込み量に応じて1〜5ml 1.5M NaCl 25 mM Tris-HCl(pH 6〜8)で溶離させ、溶離液を収集した。
【0106】
(7)溶離液を25〜50μl/管で分け、-80℃冷蔵庫で冷凍保存し、長期間保存した。
【0107】
二.力価の測定:
(1)24ウェルプレートを取って293T細胞を接種した。各ウェルの細胞は5×104個で、加えられた培地の体積は500μlで、異なる種類の細胞の生長速度には差異があり、ウイルス感染時の細胞融合率は40%〜60%であった。
【0108】
(2)3本の無菌エッペンドルフ管を用意し、各管に90μlずつ新鮮な完全培地(高糖DMEM+10%FBS)を入れて細胞を接種してから24時間後、2つのウェルの細胞を血球計算板でカウントし、感染時の細胞の実際の数を確認し、Nと記録した。
【0109】
(3)測定されるウイルス原液10μlを1本目の管に入れ、軽く均一に混合した後、10μl取って2本目の管に入れ、さらに順に最後の管まで操作した。最終体積が500μlになるように、各管に410μlの完全培地(高糖DMEM+10%FBS)を入れた。
【0110】
(4)感染開始から20時間で、培養上清を除去し、500μlの完全培地(高糖DMEM+10%FBS)に替え、5%CO2で続けて48時間培養した。
【0111】
(5)72時間後、蛍光発現状況を観察し、正常の場合、蛍光細胞数が希釈倍数の増加につれて減少し、そして写真撮影した。
【0112】
(6)0.2mlの0.25%トリプシン-EDTA溶液で細胞を消化し、37℃で1分間置いた。培地で細胞の面全体を吹き洗い、遠心で細胞を収集した。DNeasyキットの説明に従ってゲノムDNAを抽出した。各サンプル管に200μlの溶離液を入れてDNAを洗い落として定量した。
【0113】
(7)目的DNA検出qPCRmix総管Iを用意した(QPCRプライマー配列は配列番号57−配列番号58):
2×TaqMan Master Mix 25 μl × n
フォワードプライマー(100 pmol ml-1) 0.1μl × n
リバースプライマー(100 pmol ml-1) 0.1μl × n
プローブ(100 pmol ml-1) 0.1μl × n
H2O 19.7μl × n
【0114】
n = 反応数。例えば、総反応数が40の場合、1ml 2× TaqMan Universal PCR Master Mix、4μl フォワードプライマー、4μl リバースプライマー、4μl プローブおよび788μl H2Oを混合する。振とう後、氷の上に置いた。
【0115】
(8)内部参照DNA検出qPCRmix管IIを用意した(QPCRプライマー配列は配列番号59−配列番号60):
2×TaqMan Master Mix 25 μl × n
10×RNasePプライマー/プローブミックス 2.5 μl × n
H2O 17.5μl × n
【0116】
n = 反応数。例えば、総反応数が40の場合、1ml 2× TaqMan Universal PCR Master Mix、100μl 10×RNasePプライマー/プローブミックスおよび700μl H2Oを混合する。振とう後、氷の上に置いた。
【0117】
(9)冷却しておいた96ウェルPCRプレートにPCR系を構築した。総管Iからそれぞれ45μl取ってA〜Dの各列のウェルに入れ、総管IIからそれぞれ45μl取ってE〜Gの各列のウェルに入れた。
【0118】
(10)それぞれ5μlのプラスミド標準品および被験サンプルのゲノムDNAをA〜Dの列に入れ、各サンプルは1回繰り返した。別に1つのウェルに5μlの水を入れて無鋳型対照(no-template control)とした。
【0119】
(11)それぞれ5μlのゲノム標準品および被験サンプルのゲノムDNAをE〜Gの列に入れ、各サンプルは1回繰り返した。別に1つのウェルに5μlの水を入れて無鋳型対照(no-template control)とした。
【0120】
(12)使用された定量PCR装置はABI PRISM 7500定量システムであった。サイクル条件は、50℃ 2分、95℃ 10分、さらに95℃ 15秒、60℃ 1分の40サイクルとした。
【0121】
データ分析:測定されたDNAサンプルに組み込まれたレンチウイルスベクターのコピー数をゲノム数で表記し、各ゲノムに組み込まれたウイルスのコピー数を得た。
【0122】
力価(integration units per ml,IU ml-1)の計算公式は以下の通りである。
IU ml-1 = (C ×N× D×1000)/V
ただし、
C = 1ゲノムあたりに組み込まれたウイルスのコピー数
N = 感染時の細胞数(約1×105
D = ウイルスベクターの希釈倍数
V = 入れた希釈ウイルスの体積数
【0123】
(13)組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0の力価の結果(図8に示す)
【0124】
三.内毒素の測定:
(1)内毒素使用標準品は15EU/本であった。
【0125】
(2)ライセート試薬の感度はλ=0.25EU/ml、0.5ml/管であった。
【0126】
(3)内毒素標準品の希釈:内毒素標準品1本を取り、それぞれBET水で比率に従って4λと2λの溶解に希釈し、密封膜で封じ、15min振とうして溶解させた。希釈時、毎回の希釈はボルテックスミキサーで30s均一に混合した。
【0127】
(4)仕込み:ライセート試薬を数本取り、1本あたりBET水0.5mlを入れて溶解し、それぞれ数本の内毒素試験管に0.1ml/管で分注した。そのうち、2本は陰性対照管で、BET水0.1mlを入れた。
【0128】
2本は陽性対照管で、濃度2λの内毒素使用標準品溶液0.1mlを入れた。
【0129】
2本はサンプル陽性対照管で、0.1mlの2λ内毒素標準品を含有するサンプル溶液(20倍に希釈された被験サンプル1ml + 4λの内毒素標準品溶液1ml=2mlの2λ内毒素標準品を含有する40倍に希釈されたサンプル)を入れた。
【0130】
サンプル管に0.1mlのサンプルを入れ、希釈比率は表5に示し、37±1℃水浴(またはインキュベーター)で60±1min保温した。

【0131】
(5)組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0の内毒素の検出結果(表6に示す)であり、内毒素は0〜2.5 EU/mLの間で、以下の要求に合うものであった。

【0132】
四.マイコプラズマの測定と比較:
(1)実験前の3日は、細胞サンプルを無抗生物質培地で培養した。
【0133】
(2)1mlの細胞懸濁液(細胞数は1×105よりも大きい)を収集し、1.5ml遠心管に入れた。
【0134】
(3)13000×gで1min遠心し、沈殿を収集し、培地を捨てた。
【0135】
(4)500μlのPBSをピペットチップで吹き吸いをするかボルテックス振とうし、沈殿を再懸濁させた。13000×gで5min遠心した。
【0136】
(5)工程4を1回繰り返した。
【0137】
(6)50μlの細胞分解緩衝液を入れ、ピペットチップで吹き吸いをし、十分に混合した後、55℃の水浴で20minインキュベートした。
(7)サンプルを95℃で5min加熱した。
【0138】
(8)13000×gで5min遠心した後、5μl上清を鋳型として取った。25μlPCR反応系は、ddH20 6.5μl、Myco Mix 1μl、2x Taq Plus Mix Master (Dye Plus) 12.5μl、鋳型5μlで、PCRサイクル条件は、95℃ 30s、(95℃ 30s、56℃ 30s、72℃ 30s)×30サイクル、72℃ 5minであった。
【0139】
(9)マイコプラズマの検出結果(図9に示す)から、組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0はいずれもマイコプラズマを含まなかったことが示された。
【0140】
実施例3 組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0の機能検出
一.CAR遺伝子の細胞レベルの発現検出:
(1)組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0および対照ウイルスMockをPBMC細胞に感染させた後、細胞を収集してRT-PCRによってCAR遺伝子およびscFv遺伝子のmRNA転写レベルの検出を行った。CAR遺伝子およびscFv遺伝子の発現を検証したが、CAR遺伝子およびscFv遺伝子のmRNA転写レベルが向上すると、CAR遺伝子およびscFv遺伝子の転写レベルの発現に成功したことになる。
【0141】
(2)組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0および対照ウイルスMockをPBMC細胞に感染させた後、細胞を収集してウエスタンブロットによってCARのタンパク質発現レベルの検出を行った。CAR遺伝子の発現を検証したが、CARのタンパク質発現レベルが向上すると、CAR遺伝子の翻訳レベルの発現に成功したことになる。
【0142】
(3)組換えレンチウイルスベクターlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0および対照ウイルスMockをPBMC細胞に感染させた後、細胞培養上清を収集してELISAによってscFvタンパク質の発現レベルの検出を行った。scFv遺伝子の発現を検証したが、scFvのタンパク質発現レベルが向上すると、scFv遺伝子の翻訳レベルの発現に成功したことになる。
【0143】
(4)それぞれMOI=15のlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0および対照ウイルスMockで細胞に感染させ、48h後6ウェルプレートにおける細胞の全RNAおよび全タンパク質を抽出してそれぞれ蛍光定量PCR実験とイムノブロット実験を行った。具体的な工程:6ウェルプレートの4つのウェルをコーティングし、各ウェルに対応するPSBとRNを入れ、4℃で一晩放置した。12時間後MOI=15でウイルスをコーティングし、37℃のインキュベーターで5h置いた。6ウェルプレートを取り出し、ウイルス上清を捨て、PBSで2回洗浄し、1×106/ウェルでPBMC(リンパ球分離液でヒト血から分離されたもの)をコーティングし、500μlの培地(10%血清、20U/ml IL-2、ポリブレン 8μg/mlを含有する)を入れた。20min静置し、1000g、20℃で30min遠心し、37℃で48h培養した。
【0144】
(5)Trizol法によって6ウェルプレートにおけるPBMC細胞の全RNAを抽出し、逆転写でcDNAを増幅し、CAR遺伝子のQPCRプライマー(配列は配列番号61−配列番号62)およびscFv遺伝子のQPCRプライマー(配列は配列番号67−配列番号68)で蛍光定量PCR実験を行った。反応系を表7に示す。内部参照のアクチンを対照群とし、そのmRNAの転写状況を検証した。

【0145】
(6)ウエスタンブロット(Western Blot):ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってPBMCから抽出された全タンパク質を分子量によって分離した。湿式転写(4℃、400 mA、120min)によって、タンパク質をPVDF膜に移した。ブロッキング液(5%脱脂牛乳含有TBST溶液)で室温でPVDF膜を1hブロッキングし、ブロッキング液で1:1000でBiotinylated protein Lを希釈した後、ブロッキングされたPVDF膜を室温でインキュベートして4℃で一晩放置した。TBSで膜を10 minずつ3回洗浄した。ブロッキング液で1:500で対応するSA-HRPを希釈し、室温でPVDF膜を2hインキュベートし、TBSTで膜を10minずつ3回洗浄した。Amersham社のECL+plusTM Western blotting systemキットによって呈色させた。X線で現像してバンドを示すフィルムを得た。
【0146】
(7)酵素結合免疫吸着測定(Enzyme Linked ImmunoSorbent Assay、ELISA)は1:2、1:5、1:10で希釈された細胞培養上清を96ウェルプレートに被覆させ、同時に陰性対照、陽性対照およびブランクウェルを設け、4℃で一晩行った翌日、3回洗浄し、反応ウェルに、新鮮な1:10000で希釈されたプロテインG-HRPを0.1ml入れ、37℃で30〜60分間インキュベートし、洗浄し、最後に1回純水で洗浄した。各反応ウェルにTMB基質溶液を0.1ml入れ、37℃で10〜30分間インキュベートした。各反応ウェルにELISA反応停止液を0.05ml入れた。マイクロプレートリーダーで、405nmにおいて、各ウェルのOD値を測定した。
【0147】
(8)RT-QPCR検出から、組換えレンチウイルスベクターでPBMCを感染させた後のCAR遺伝子およびscFv遺伝子の転写レベルは空細胞よりも顕著に向上した(図10に示す)ことがわかり、CAR遺伝子およびscFv遺伝子の転写レベルの発現に成功したことが示された。
【0148】
(9)ウエスタンブロット(Western Blot)の結果から、組換えレンチウイルスベクターでPBMCを感染させた後のCARタンパク質の発現レベルは対照ウイルスMOCKと空細胞よりも顕著に向上した(図11に示す)ことがわかり、CAR遺伝子の翻訳レベルの発現に成功したことが示された。
【0149】
(10)酵素結合免疫吸着測定(ELISA)の結果から、組換えレンチウイルスベクターでPBMCを感染させた後のscFvタンパク質の発現レベルは対照ウイルスMOCKと空細胞よりも顕著に向上した(図12に示す)ことがわかり、scFv遺伝子の翻訳レベルの発現に成功したことが示された。
【0150】
二.細胞殺傷実験の効果の評価。
(1)それぞれCD19+K562細胞とPBMC細胞を培養した。
【0151】
(2)実験開始前の4日は、それぞれMOI=15のlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0のウイルスでPBMC細胞に感染させ、72-96h培養した後、実験を開始した。
【0152】
(3)標的細胞(CD19+K562)4×105細胞とエフェクター細胞(lvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0でそれぞれ形質移入されたPBMC細胞)2.8×106細胞を収集し、800gで6min遠心し、上清を捨てた。
【0153】
(4)1mlの1×PBS溶液でそれぞれ標的細胞とエフェクター細胞を再懸濁させ、800gで6min遠心し、上清を捨てた。
【0154】
(5)工程(3)を1回繰り返した。
【0155】
(6)700μlの培地(1640培地+10% FBS)でエフェクター細胞を再懸濁させ、2mlの培地(1640培地+10% FBS)で標的細胞を再懸濁させた。
【0156】
(7)エフェクター細胞対標的細胞比が1:1、5:1、10:1の実験ウェルを設け、そして対照群を設け、各群に3つの重複ウェルを設けた。
【0157】
(8)250×gで5minプレート遠心した。
【0158】
(9)37℃、5%CO2インキュベーターで24時間培養した。
【0159】
(10)250×gで5minプレート遠心した。
【0160】
(11)各ウェルの50μl上清を取って新たな96ウェルプレートに入れ、そして各ウェルに50μlの基質溶液を入れた(光を避けた操作)。
【0161】
(12)光を避けて25分間インキュベートした。
【0162】
(13)各ウェルに50uLの停止液を入れた。
【0163】
(14)マイクロプレートによって490nmにおける吸光度を検出した。
【0164】
(15)3つの重複ウェルの平均値を取った。すべての実験ウェル、標的細胞ウェルおよびエフェクター細胞ウェルの吸光値から培地の背景吸光値の平均値を引いた。標的細胞の最大値の吸光値から体積で較正された対照吸光値の平均値を引いた。
【0165】
(16)工程15で得られた較正された値を以下の公式に代入し、各エフェクター細胞対標的細胞比による細胞毒性百分率を計算した結果は図13に示すように、lvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0組換えレンチウイルスベクターで形質移入されたPBMC細胞はいくつかのエフェクター細胞対標的細胞比の条件で殺傷効率がPBMC空細胞および対照ウイルスよりも顕著に高く、scFv遺伝子の発現のCAR遺伝子の機能に対する影響が小さいことが示された。
殺傷効率= (実験ウェル−エフェクター細胞ウェル−標的細胞ウェル)/(標的細胞最大ウェル−標的細胞ウェル)×100%
【0166】
三.IL-6R遮断効果の評価(IL-6 およびCRPのmRNA転写レベル)
(1)それぞれCD19+K562細胞とPBMC細胞を培養した。
(2)実験開始前の4日は、それぞれMOI=15のlvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0のウイルスでPBMC細胞に感染させ、72-96h培養した後、実験を開始した。
【0167】
(3)標的細胞(CD19+K562)4×105細胞とエフェクター細胞(lvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0でそれぞれ形質移入されたPBMC細胞)2.8×106細胞を収集し、800gで6min遠心し、上清を捨てた。
【0168】
(4)1mlの1×PBS溶液でそれぞれ標的細胞とエフェクター細胞を再懸濁させ、800gで6min遠心し、上清を捨てた。
【0169】
(5)工程(4)を1回繰り返した。
【0170】
(6)700μlの培地(1640培地+10% FBS)でエフェクター細胞を再懸濁させ、2mlの培地(1640培地+10% FBS)で標的細胞を再懸濁させた。
【0171】
(7)エフェクター細胞対標的細胞比が10:1の実験ウェルを設け、そして対照群を設けた。
【0172】
(8)250×gで5minプレート遠心した。
【0173】
(9)37℃、5%CO2インキュベーターで12時間まで共培養し、1000×gで2minプレート遠心し、細胞を収集して全mRNAを抽出し、cDNAを逆転写し、IL-6のmRNA転写レベルを検出した。
【0174】
(10)上清にブランクPBMC細胞を入れ、37℃、5%CO2インキュベーターで24時間まで共培養し、1000×gで2minプレート遠心し、細胞を収集して全mRNAを抽出し、cDNAを逆転写し、CRPのmRNA転写レベルを検出した。
【0175】
(11)IL-6遺伝子のQPCRプライマー(配列は配列番号63−配列番号64)およびCRP遺伝子のQPCRプライマー(配列は配列番号65−配列番号66)で蛍光定量PCR実験を行った。反応系を表6に示す。内部参照のアクチンを対照群とし、そのmRNAの転写状況を検証した。
【0176】
(12)RT-QPCR検出の結果から、lvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0で形質移入されたPBMCを標的細胞とインキュベートした後、IL-6遺伝子のmRNAレベルがMock群および空細胞群と比較して顕著に上昇し、lvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0の4群の間でIL-6遺伝子のmRNAレベルがあまり変わらないことが示された(図14に示す)が、その後、異なる群の上清で培養されたPBMC細胞におけるCRP遺伝子のmRNAレベルを検出したところ、lvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFv3、lvCAR19-scFv0の3群は対照ウイルスlvCAR19-scFv0群と比較してCRPのmRNA転写レベルが顕著に低下し、中でもlvCAR19-IL6RscFv1群のCRP遺伝子の転写mRNAレベルの低下が最も顕著であったことがわかり(図15に示す)、lvCAR19-IL6RscFv1、lvCAR19-IL6RscFv2、lvCAR19-IL6RscFvの3群はいずれも有効にIL-6シグナル経路を遮断し(中でもlvCAR19-IL6RscFv1のIL-6シグナル経路を遮断する効果が最も顕著であった)、そして臨床において有効にCRSを緩和することができることが示された。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]