特許第6783013号(P6783013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783013歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783013
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   A61B5/11 230
   A61B5/11ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-522478(P2020-522478)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2018020839
(87)【国際公開番号】WO2019229903
(87)【国際公開日】20191205
【審査請求日】2020年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508090376
【氏名又は名称】リーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】森 政男
(72)【発明者】
【氏名】塚里 良美
(72)【発明者】
【氏名】安藤 道得
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−137228(JP,A)
【文献】 特開2011−112360(JP,A)
【文献】 特開2004−069468(JP,A)
【文献】 特開2005−049202(JP,A)
【文献】 大石 修士,レーザ反射強度を用いた距離画像の平滑化,情報処理学会 シンポジウム 画像の認識・理解シンポジウム(MIRU) 2011 [online],日本,情報処理学会,2011年 7月20日,第1頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の足圧を計測し、計測した足圧データを出力する足圧センサと、
水平方向に所定のピッチ角度で照射される検出波の反射状態に基づいて被検者の足位置を計測し、計測した足位置データを出力する足位置センサと、
前記足位置データに含まれるノイズデータを除去するとともに該ノイズデータが除去された足位置処理データを出力するフィルタ処理部、前記足圧センサから出力された前記足圧データと前記足位置処理データを計測時間に対応付けて記憶する記憶部、前記足圧データと前記足位置処理データに基づいて被検者の所定の歩行パラメータを演算する演算部を有する歩行解析装置と、を備える歩行計測システムにおいて、
前記フィルタ処理部は、
前記足位置データを直交座標系の座標データに変換する座標変換部と、
前記座標データを所定の有効桁数に近似化するデータ近似化部と、
該データ近似化部での近似化により、同一の座標値となる前記座標データを集積して一群データとするデータ集積部と、
前記一群データを構成する前記座標データを計数する座標データ計数部と、
前記足位置センサから計測対象物までの距離に応じて設定された所定の閾値よりも前記一群データを構成する前記座標データの数が少ない場合に、前記一群データをノイズと判定する第1の判定部と、を有する
歩行計測システム。
【請求項2】
前記フィルタ処理部は、
前記第1の判定部により前記閾値以上であると判定された一群データを構成する前記座標データを検出点座標として設定する検出点座標設定部と、
前記検出点座標の中から特定の座標を特定検出点座標として選択する特定検出点座標設定部と、
前記特定検出点座標を中心とした所定の判定領域を設定する領域設定部と、
前記判定領域内において、前記特定検出点座標の周囲に前記検出点座標が所定の数だけ存在する場合に、前記特定検出点座標を計測対象物であると判定する第2の判定部を有する
請求項1に記載の歩行計測システム。
【請求項3】
前記歩行計測システムは、水平方向に所定のピッチ角度で照射される検出波の反射状態に基づいて被検者の腰位置を計測し、計測した腰位置データを出力する腰位置センサを備え、
前記フィルタ処理部は、前記腰位置データに含まれるノイズデータ基づいて前記足位置データに含まれるノイズデータを特定する
請求項1に記載の歩行計測システム。
【請求項4】
前記演算部は、
被検者の歩行時における左右一方の足のn歩目(nは自然数)の所定の接地状態を前記足圧データに基づいて判定した時間に対応する前記記憶部に記憶された前記足位置処理データと、被検者の歩行時における左右他方の足の(n+1)歩目の所定の接地状態を前記足圧データに基づいて判定した時間に対応する前記記憶部に記憶された前記足位置処理データとに基づいて、被検者の歩幅を計測する歩幅計測部を含む
請求項1に記載の歩行計測システム。
【請求項5】
前記演算部は、
被検者の歩行時における左右一方の足のn歩目(nは自然数)の所定の接地状態を前記足圧データに基づいて判定した時間に対応する前記記憶部に記憶されている前記足位置処理データ、被検者の歩行時における左右他方の足の(n+1)歩目の所定の接地状態を前記足圧データに基づいて判定した時間に対応する前記記憶部に記憶されている前記足位置処理データ、及び被検者の歩行時における左右一方の足の(n+2)歩目の所定の接地状態を前記足圧データに基づいて判定した時間に対応する前記記憶部に記憶されている前記足位置処理データに基づいて、被検者のストライドを計測するストライド計測部を含む
請求項1に記載の歩行計測システム。
【請求項6】
前記演算部は、
被検者の歩行時における左右一方の足のn歩目(nは自然数)の所定の接地状態を前記足圧データに基づいて判定した時間に対応する前記記憶部に記憶された前記足位置処理データと、被検者の歩行時における左右他方の足の(n+1)歩目の所定の接地状態を前記足圧データに基づいて判定した時間に対応する前記記憶部に記憶された前記足位置処理データとに基づいて、被検者の歩隔を計測する歩隔計測部を含む
請求項1に記載の歩行計測システム。
【請求項7】
前記演算部は、
前記足圧データに基づいて、被検者の歩行時における左右一方の足と他方の足の接地、又は離地状態に基づいて計測対象領域における歩数を演算する歩数計測部を含む
請求項1に記載の歩行計測システム。
【請求項8】
計測対象領域において計測した被検者の足圧を示す足圧データを受信する足圧データ受信ステップと、
計測対象領域において計測した被検者の足位置を示す足位置データを受信する足位置データ受信ステップと、
前記足位置データに含まれるノイズデータを検出するノイズ検出ステップと、
前記足圧データ、及び検出され前記ノイズデータが除去された足位置処理データを計測時間に対応付けて記憶する記憶ステップと、
前記足圧データと前記足位置処理データに基づいて被検者の所定の歩行パラメータを演算する演算ステップと、をコンピュータに実行させる歩行計測プログラムにおいて、
前記ノイズ検出ステップは、
前記足位置データを直交座標系の座標データに変換する座標変換ステップと、
前記座標データを所定の有効桁数に近似化する近似化ステップと、
同一の座標値となる前記座標データを集積して一群データとする集積ステップと、
前記一群データを構成する前記座標データを計数する計数ステップと、
前記一群データを構成する前記座標データの数が所定の閾値よりも少ない場合に、前記一群データをノイズと判定する第1の判定ステップと、を有する
歩行計測プログラム。
【請求項9】
前記足位置データに含まれるノイズデータを除去するステップは、
前記第1の判定ステップにより前記閾値以上であると判定された前記一群データを構成する前記座標データを検出点座標として設定する検出点座標設定ステップと、
前記検出点座標の中から特定の検出点座標を特定検出点座標として選択する特定検出点座標設定ステップと、
前記特定検出点座標を中心とした所定の判定領域を設定する領域設定ステップと、
前記判定領域内において、前記特定検出点座標の周囲に前記検出点座標が所定の数だけ存在する場合に、前記特定検出点座標を計測対象物であると判定する第2の判定ステップと、を有する
請求項8に記載の歩行計測プログラム。
【請求項10】
計測対象領域において計測した被検者の足圧を示す足圧データを受信する足圧データ受信ステップと、
計測対象領域において計測した被検者の足位置を示す足位置データを受信する足位置データ受信ステップと、
前記足位置データに含まれるノイズデータを検出するノイズ検出ステップと、
前記足圧データ、及び検出され前記ノイズデータが除去された足位置処理データを計測時間に対応付けて記憶する記憶ステップと、
前記足圧データと前記足位置処理データに基づいて被検者の所定の歩行パラメータを演算する演算ステップと、を備える歩行計測方法において、
前記ノイズ検出ステップは、
前記足位置データを直交座標系の座標データに変換する座標変換ステップと、
前記座標データを所定の有効桁数に近似化する近似化ステップと、
同一の座標値となる前記座標データを集積して一群データとする集積ステップと、
前記一群データを構成する前記座標データを計数する計数ステップと、
前記一群データを構成する前記座標データの数が所定の閾値よりも少ない場合に、前記一群データをノイズと判定する第1の判定ステップと、を有する
歩行計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法に関する。詳しくは、被検者の歩行状態を正確に把握し、被検者の目標とする歩行運動に効率的に誘導することが可能な歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化に伴う脚力の衰え、病気や事故等によって歩行機能に障害が生じた被検者に対して、歩行機能を向上、回復、維持するための訓練の必要性が高まっている。このような被検者に対する歩行機能を回復させるための訓練として歩行訓練がある。
【0003】
従来より、歩行訓練においては、介助者により被検者の歩行姿勢を補助しながら歩行を行わせる方法や、平行に渡した2本の手すり(平行棒と呼ばれる)の間を掴まりながら自力で歩行する訓練などが一般的に行われてきた。
【0004】
しかし、このような介助者が補助をしつつ行う歩行訓練や平行棒を用いた歩行訓練では、訓練の評価、指導を行う理学療法士、医師などの医療スタッフは、ストップウォッチ、又はスケール、或いは歩数計等を用いて大まかな歩行速度や歩幅等の歩行パラメータを算出して評価を行うものであった。このような従来の方法においては、時々刻々と変化する被検者の歩行パラメータを直接的、かつ正確にリアルタイムで計測することはできず、医療スタッフが被検者の正確な歩行状態を把握したり、或いは治療効果の診断に利用する有効な情報を得ることができなかった。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、被検者の実際の歩行に即した正確な歩行速度、又は歩行距離を測定することが可能な測定装置が開示されている。具体的には、被検者の両足の一方に磁界発生手段を、他方に磁界発生手段からの磁界を検出する検出手段を装着して、当該検出データに基づいて両足が交差するときの交差速度を演算し、人の歩行速度をリアルタイムで計測することが可能なものとなっている。
【0006】
また、特許文献2には、被検者の足部に加速度センサを取り付け、この加速度センサで測定した加速度に基づき歩行速度、歩行時間、及び歩行距離を演算する演算装置が開示されている。具体的には、被検者の足部に取り付けた3軸の加速度センサによって測定された加速度に変化が生じた否かを測定し、加速度に変化が生じたことを検出した際の検出時間を歩行時間と推定する。そして、この推定された歩行時間と加速度センサから演算された歩行速度を乗算して歩行距離を演算することで、被検者の歩行速度、歩行時間、及び歩行距離をリアルタイムで計測することが可能なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004− 69468号公報
【特許文献2】特開2005− 49202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら前記特許文献1に開示の測定装置おいては、時々刻々と変化する歩行速度を計測することができるとしているが、特許文献1において演算される速度は両足部の交差速度である。通常、両足の交差速度と被検者の歩行速度とは異なる速度であるにも拘らず、特許文献1では両者を同一のものと捉え、両足部の交差速度を被検者の歩行速度として推定しているため、必ずしも被検者の正確な歩行速度を演算するものとはなっていない。
【0009】
また、前記特許文献2に開示の演算装置においては、例えば歩行速度は加速度センサにより測定された加速度を時間積分することにより算出されるが、加速度の積分演算過程では必然的に積分誤差が生じてしまう。そのため、前記特許文献2においても、必ずしも被検者の正確な歩行速度を演算するものとはなっていない。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、被検者の歩行状態を正確に把握し、被検者の目標とする歩行運動に効率的に誘導することが可能な歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の歩行計測システムは、被検者の足圧を計測し、計測した足圧データを出力する足圧センサと、水平方向に所定のピッチ角度で照射される検出波の反射状態に基づいて被検者の足位置を計測し、計測した足位置データを出力する足位置センサと、前記足位置データに含まれノイズデータを除去するとともに該ノイズデータが除去された足位置処理データを出力するフィルタ処理部、前記足圧センサから出力された前記足圧データと前記足位置処理データを計測時間に対応付けて記憶する記憶部、前記足圧データと前記足位置処理データに基づいて被検者の所定の歩行パラメータを演算する演算部を有する歩行解析装置とを備える。
【0012】
ここで、被検者の足圧を計測し、計測した足圧データを出力する足圧センサを備えることにより、計測された足圧データに基づいて被検者の歩行の際における足部の接地状態、及び足部の離地状態を判定することができるため、被検者の歩行状態を詳細に把握することができる。
【0013】
また、水平方向に所定のピッチ角度で照射される検出波の反射状態に基づいて被検者の足位置を計測し、計測した足位置データを出力する足位置センサを備えることにより、安価なシステムにより、被検者の歩行時の足位置を正確に把握することができる。
【0014】
また、足圧データと足位置データに基づいて被検者の歩行状態を解析する歩行解析装置を備えることにより、時々刻々と変化する被検者の歩行状態を足圧データと足位置データに基づいて正確に解析することができる。
【0015】
また、歩行解析装置は、足位置データに含まれるノイズデータを除去するとともにノイズデータを除去した足位置処理データを出力するフィルタ処理部を有することにより、足位置センサで計測された足位置データに含まれる計測対象物(被検者)とは無関係なノイズデータを検出、除去することで被検者の正確な足位置を検出することができる。
【0016】
また、歩行解析装置は、足圧センサから出力された足圧データと足位置処理データを、計測時間に対応付けて記憶する記憶部を有することにより、足圧データに基づく被検者の歩行時における足部の床面への接地状態と、足位置処理データに基づく被検者の歩行時における足位置を対応付けることができるため、被検者の歩行時における足部の歩行状態を正確に把握することができる。
【0017】
また、歩行解析装置は、足圧データと足位置処理データに基づいて被検者の所定の歩行パラメータを演算する演算部を有することにより、計測時間に対応付けられた足圧データと足位置処理データに基づいて、被検者の歩行状態を示す歩行パラメータを容易、かつ正確に演算することができる。
【0018】
また、フィルタ処理部は、足位置データを直交座標系の座標データに変換する座標変換部を含む場合には、足位置センサで計測された足位置データは、足位置センサと被検者との距離データとして出力されるが、これを座標変換により直交座標データに変換することができる。
【0019】
また、フィルタ処理部は、座標データを所定の有効桁数に近似化するデータ近似化部を含む場合には、座標変換部で直交座標データに変換された座標データを所定の有効桁数まで近似化することができる。
【0020】
また、フィルタ処理部は、データ近似化部での近似化により、同一の座標値となる座標データを集積して一群データとするデータ集積部を含む場合には、データ近似化部により近似化されて同一の座標値となった座標データを集積して、一つのまとまりのある一群データとすることができる。
【0021】
また、フィルタ処理部は、一群データを構成する同一座標からなる座標データ数を計数する座標データ計数部を含む場合には、一群データを構成する同一座標からなる座標データのデータ数を計数することで、一群データの大きさを把握することができる。
【0022】
また、フィルタ処理部は、足位置センサから計測対象物である被検者の足部までの距離に応じて設定された所定の閾値よりも一群データを構成する座標データの数が少ない場合に、一群データをノイズと判定する第1の判定部を含む場合には、座標データ計数部で計数した一群データに含まれる座標データの数に基づいて、足位置センサで計測された足位置データのうち、被検者の足部とは無関係な微小なノイズデータの有無を判定することができる。
【0023】
このとき、閾値は、足位置センサと計測対象物との距離に応じた値に設定される。具体的には、足位置センサは所定のピッチ角度で検出波が照射されるため、足位置センサから照射される計測対象物までの検出波の照射距離が長くなるにつれて、隣接する検出波の間隔が長くなるという特性を有する。そのため、例えば足位置センサから計測対象物までの距離が短い場合には閾値として小さな値を設定し、足位置センサから計測対象物までの距離が長い場合には閾値として大きな値を設定することで、足位置センサと計測対象物との距離差に基づく検出誤差を防止することができる。
【0024】
また、フィルタ処理部は、第1の判定部により閾値以上であると判定された一群データを構成する座標データを検出点座標として設定する検出点座標設定部を含む場合には、第1の判定部によりノイズデータでないと判定された一群データを構成する座標データを、被検者の足部の検出のための検出点座標として設定することができる。
【0025】
また、フィルタ処理部は、検出点座標の中から特定の検出点座標を特定検出点座標として選択する特定検出点座標設定部を含む場合には、例えば被検者の足部の検出に際しての中心座標となる検出点座標を特定検出点座標として設定することができる。
【0026】
また、フィルタ処理部は、特定検出点座標を中心とした所定の判定領域を設定する領域設定部を含む場合には、例えば判定領域として一般的な被検者の足部周りの大きさに基づいて判定領域を設定することができる。
【0027】
また、フィルタ処理部は、判定領域内において、特定検出点座標の周囲に検出点座標が所定の数だけ存在する場合に、特定検出点座標を計測対象物の一部であると判定する第2の判定部を含む場合には、特定検出点座標の周囲に検出点座標が所定の数だけ存在することにより一定の広がりを持ったデータ群が存在するものとして、当該データ群を被検者の足部の一部であると判定することができる。
【0028】
また、歩行計測システムは、水平方向に所定のピッチ角度で照射される検出波の反射状態に基づいて被検者の腰位置を計測し、計測した腰位置データを出力する腰位置センサを備え、フィルタ処理部は、腰位置データに含まれるノイズデータ基づいて足位置データに含まれるノイズデータを特定する場合には、足位置データと腰位置データの両方に基づいて計測対象物の周囲に存在するノイズデータを検出することができるため、ノイズデータの検出精度を高めることができる。
【0029】
また、演算部は、被検者の歩行時における左右両足の一方の足部のn歩目(nは自然数)の所定の接地状態を足圧データに基づいて判定した時間に対応する記憶部に記憶された足位置処理データと、被検者の歩行時における他方の足部の(n+1)歩目の所定の接地状態を足圧データに基づいて判定した時間に対応する記憶部に記憶された足位置処理データとに基づいて、被検者の歩幅を計測する歩幅計測部を含む場合には、足圧データと足位置処理データに基づき歩幅を計測するため、より正確な歩幅を計測することができる。
【0030】
また、演算部は、被検者の歩行時における一方の足部のn歩目(nは自然数)の所定の接地状態を足圧データに基づいて判定した時間に対応する記憶部に記憶されている足位置処理データ、被検者の歩行時における他方の足部の(n+1)歩目の所定の接地状態を足圧データに基づいて判定した時間に対応する記憶部に記憶されている足位置処理データ、及び被検者の歩行時における一方の足部の(n+2)歩目の所定の接地状態を足圧データに基づいて判定した時間に対応する記憶部に記憶されている足位置処理データに基づいて、被検者のストライドを計測するストライド計測部を含む場合には、足圧データと足位置処理データに基づきストライドを計測するため、より正確なストライドを計測することができる。
【0031】
また、演算部は、被検者の歩行時における一方の足部のn歩目(nは自然数)の所定の接地状態を足圧データに基づいて判定した時間に対応する記憶部に記憶された足位置処理データと、被検者の歩行時における他方の足部の(n+1)歩目の所定の接地状態を足圧データに基づいて判定した時間に対応する記憶部に記憶された足位置処理データとに基づいて、被検者の歩隔を計測する歩隔計測部を含む場合には、足圧センサで計測した足圧データから、歩行時における被検者の足部の床面への接地状況を把握できるとともに、床面への足部の接地状況に基づいた足位置処理データに基づき歩隔を計測するため、より正確な歩隔を計測することができる。
【0032】
また、演算部は、足圧データに基づいて、被検者の歩行時における左右一方の足と他方の足の接地、又は離地状態に基づいて計測対象領域における歩数を演算する歩数計測部を含む場合には、足圧センサで計測した足圧データに基づく被検者の足部の床面への接地、離地状態から被検者の歩数を正確に演算することができる。
【0033】
前記の目的を達成するために、本発明の歩行計測プログラム、及び歩行計測方法は、計測対象領域において計測した被検者の足圧を示す足圧データを受信する足圧データ受信ステップと、計測対象領域において計測した被検者の足位置を示す足位置データを受信する足位置データ受信ステップと、前記足位置データに含まれるノイズデータを検出するノイズ検出ステップと、前記足圧データ、及び検出された前記ノイズデータが除去された足位置処理データを計測時間に対応付けて記憶する記憶ステップと、前記足圧データと前記足位置処理データに基づいて被検者の所定の歩行パラメータを演算する演算ステップとを備える。
【0034】
ここで、計測対象領域において計測した被検者の足圧を示す足圧データを受信する足圧データ受信ステップを備えることにより、受信した足圧データに基づいて被検者の歩行の際における足部の接地状態、及び足部の離地状態を判定することができるため、被検者の歩行状態を正確に把握することができる。
【0035】
また、計測対象領域において計測した被検者の足位置を示す足位置データを受信する足位置データ受信ステップを備えることにより、受信した足位置データに基づいて被検者の歩行時の足位置を判定することができるため、被検者の歩行状態を正確に把握することができる。
【0036】
また、足位置データに含まれるノイズデータを検出するノイズ検出ステップを備えることにより、足位置データに含まれるノイズデータを検出し、計測対象物とは無関係なノイズデータを足位置データから除去することで、歩行パラメータの演算精度を高めることができる。
【0037】
足圧データ、及びノイズデータが除去された足位置処理データを計測時間に対応付けて記憶する記憶ステップを備えることにより、足圧データと足位置処理データが計測時間に対応付けて対のデータとして記憶することができる。
【0038】
また、足圧データと足位置処理データに基づいて被検者の所定の歩行パラメータを演算する演算ステップを備えることにより、計測時間に対応づけられて記憶部に記憶されている足圧データと足位置処理データに基づいて、被検者の歩行状態を示す歩行パラメータを演算するための演算精度を高めることができる。
【0039】
また、ノイズ検出ステップは、足位置データを直交座標系の座標データに変換する座標変換ステップを含む場合には、例えば距離データとして受信した足位置データを座標変換により直交座標データに変換することができる。
【0040】
また、ノイズ検出ステップは、座標データを所定の有効桁数に近似化する近似化ステップを含む場合には、座標変換ステップにより直交座標データに変換された座標データを所定の有効桁数まで近似化することができる。
【0041】
また、ノイズ検出ステップは、近似化ステップによる近似化により、同一の座標値となる座標データを集積して一群データとする集積ステップを含む場合には、近似化ステップにより近似化されて同一の座標値となった座標データを集積して、一つのまとまりのある一群データとすることができる。
【0042】
また、ノイズ検出ステップは、一群データを構成する同一座標からなる座標データ数を計数する計数ステップを含む場合には、一群データを構成する同一座標からなる座標データのデータ数を計数し、一群データの大きさを把握することができる。
【0043】
また、ノイズ検出ステップは、一群データを構成する座標データの数が所定の閾値よりも少ない場合に、一群データをノイズと判定する第1の判定ステップを含む場合には、一群データに含まれる同一座標からなる座標データのデータ数と所定の閾値を比較して、計測対象物とは無関係な微小なノイズデータの有無を判定することができる。
【0044】
また、ノイズ検出ステップは、第1の判定部により閾値以上であると判定された一群データを構成する座標データを検出点座標として設定する検出点座標設定ステップを含む場合には、第1の判定ステップによりノイズデータでないと判定された一群データを構成する同一座標値からなる座標データを、被検者の足部の検出のための検出点座標として設定することができる。
【0045】
また、ノイズ検出ステップは、検出点座標の中から特定の検出点座標を特定検出点座標として選択する特定検出点座標設定ステップを含む場合には、例えば計測対象物の中心座標となる検出点座標を特定検出点座標として設定することができる。
【0046】
また、ノイズ検出ステップは、特定検出点座標を中心とした所定の判定領域を設定する領域設定ステップを含む場合には、例えば判定領域として一般的な被検者の足部周りの大きさに基づいて判定領域を設定することができる。
【0047】
また、ノイズ検出ステップは、判定領域内において、特定検出点座標の周囲に検出点座標が所定の数だけ存在する場合に、特定検出点座標を計測対象物であると判定する第2の判定ステップを含む場合には、特定検出点座標の周囲に検出点座標が所定の数だけ存在することにより、一定の広がりを持ったデータ群が存在するものとして、当該データ群を被検者の足部の一部であると判定することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法は、被検者の歩行状態を正確に把握し、被検者の目標とする歩行運動に効率的に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の実施形態に係る歩行計測システムの全体ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る歩行計測システムにおいて、被検者の足部に装着する足圧センサを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る筐体部を示す図であり、(a)は完成図、(b)は分解図である。
図4】本発明の実施形態に係る歩行計測システムを使用する計測領域を示す概念図である。
図5】歩行パラメータの説明図である。
図6】本発明の実施形態に係るフィルタ処理部のブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係る演算部のブロック図である。
図8】歩行解析装置の処理フローを示す図である。
図9】歩行解析装置におけるフィルタ処理部の処理フローを示す図である。
図10】フィルタ処理部における処理内容を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0051】
[歩行計測システム]
まず、本発明に係る歩行計測システム1の全体構成を示すブロック図について図1を用いて説明する。歩行計測システム1は、図1に示すように、被検者Sの足部に装着して歩行時における足圧を計測する足圧センサ2、所定のピッチ角度で照射された検出波の反射状態に基づいて被検者Sの足部の位置を計測する足位置センサ3、腰部の位置を計測する腰位置センサ4、足圧センサ2で計測された足圧データ、足位置センサ3で計測された足位置データ、及び腰位置センサ4で計測された腰位置データをそれぞれ送受信する無線通信部5、被検者Sの所定の歩行パラメータを演算し出力する歩行解析装置6、及び歩行解析装置6による演算結果を表示するための表示部7から主に構成されている。
【0052】
[足圧センサ]
足圧センサ2は、図2に示すように、被検者Sが歩行に際して使用する靴に装着する中敷21、中敷き21の踵部から足先部の範囲に分散配置された荷重センサ22、被検者Sの足首に装着する装着具23、荷重センサ22から出力される荷重信号を無線用の送信信号に変換して無線通信部5に向けて送信する電装部24から構成されており、被検者Sの歩行中の足圧データに基づき立脚、遊脚等の歩行状態をリアルタイムで測定することが可能となっている。なお、足圧センサ2のさらに詳細な説明については、本出願人が過去に出願の特開2014−45885号公報において記載されているため、ここではその説明を省略する。
【0053】
ここで、必ずしも、足圧センサ2は、図2に示す形態のものである必要はない。例えば、足圧センサ2と歩行解析装置6は無線ではなく有線で接続されていてもよい。また、足圧センサ2は被検者の靴に装着する必要はなく、被検者Sの足部を中敷21に載置した状態で歩行、測定するように構成してもよい。
【0054】
[筐体部]
本発明の実施形態に係る足位置センサ3、腰位置センサ4、無線通信部5、及び歩行解析装置6等は、図3に示すように筐体部8内に内蔵されている。筐体部8は、ベース部81とベース部81の略中心から鉛直上方に延出するポール部82から主に構成され、ベース部81とポール部82はカバー部83により被覆されている。
【0055】
ポール部82には足位置センサ3、腰位置センサ4、及び被検者Sの歩行状態を動画撮影するための撮像装置9がポール部82の所定の高さ位置において上下方向に位置調整可能な調節機構により固定されている。従って、これら足位置センサ3、腰位置センサ4、及び撮像装置9は、被検者の体格に応じて適切な計測位置に調節して利用することができる。また、ベース部81には筐体部8に電源を供給する電源部84、歩行解析装置6、各センサで計測されたデータを受信するとともに歩行解析装置6での演算結果を表示部7に出力する無線通信部5を有している。
【0056】
カバー部83には、足位置センサ3、及び腰位置センサ4の高さ位置に対応して透明なセンサ窓83a、83bを有しており、このセンサ窓83a、83bを通して測定領域M内に向けて検出波が照射可能となっている。また、撮像装置9の高さ位置には、円形状の撮像窓83cが取り付けられており、撮像装置9はこの撮像窓83cを通して被検者Sの歩行状態を撮像が可能となっている。
【0057】
ここで、必ずしも、足位置センサ3、腰位置センサ4、及び歩行解析装置6等は筐体部8にて一体化されている必要はない。例えば、足位置センサ3、腰位置センサ4、及び歩行解析装置6はそれぞれが別体で構成されていてもよい。但し、足位置センサ3、腰位置センサ4、及び歩行解析装置6が一体化されていることにより、計測に際しては筐体部8を所定の場所に設置すれば計測を開始することができるため、計測に際しての準備工数を削減することがきる。
【0058】
また、必ずしも、腰位置センサ4を有している必要はない。被検者Sの歩行時における足位置を把握することができればよいため、少なくとも足位置センサ3のみを有していればよい。但し、腰位置センサ4を有することにより、後述するフィルタ処理部61によるフィルタ処理において、足位置センサ3と腰位置センサ4の両方に基づいてノイズデータを検出することができるため、足位置センサ3で検出した被検者Sの足位置データの信頼性を高めるという観点では腰位置センサ4を有していることが好ましい。
【0059】
また、必ずしも、各センサで計測された計測データ、及び歩行解析装置6での演算結果は、無線通信部5にて無線通信により送受信される必要はない。例えば無線通信に代えて、有線通信によっても実現可能である。
【0060】
また、必ずしも、被検者Sの歩行状態を動画撮影するための撮像装置9を有している必要はない。但し、撮像装置9を有することにより、被検者Sの歩行状態を動画像により確認することができるため、リハビリに際してのフィードバックを効率的に行うことができる。
【0061】
[足位置センサ、腰位置センサ]
足位置センサ3、及び腰位置センサ4は、各高さ位置において、床面に水平方向に沿って被検者Sに対して検出波(レーザ)を照射し、照射した検出波の被検者Sからの反射時間から足位置センサ3、又は腰位置センサ4と被検者Sとの距離を計測するレーザレンジファインダ(以下、「LRF」という。)が用いられる。
【0062】
このLRFを用いた計測領域Mの模式図を図4に示す。本発明の実施形態において使用したLRFとしては、側域角度(視野角度)が240deg、角度分解能が0.36degであり、半径(R)が約3.5mの範囲以内で計測可能である。なお、足位置センサ3、及び腰位置センサ4の床面からの高さ位置は、前記した通り被検者Sの体格に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、本発明の実施形態においては、足位置センサ3は被検者Sの足首から膝下付近に検出波が照射されるように床面から略18cmの高さ位置に設置し、腰位置センサ4は被検者Sの腰位置部分に検出波が照射されるように床面から略80cmの高さ位置に設置した。
【0063】
ここで、必ずしも、LRFは前記した仕様に限定されるものではなく、例えば測定環境に応じて種々のものを使用することができる。
【0064】
また、必ずしも、足位置センサ3の照射範囲として被検者Sの足首から膝下部分、腰位置センサ4の照射範囲として被検者の腰位置部分に検出波が照射される必要はない。例えば、足位置センサ3の検出波の照射範囲として、被検者Sの左右両足部を識別できる部分であれば、何れの部位に照射されてもよい。また、腰位置センサ4の検出波の照射範囲として、被検者Sの胴体部を識別できる部分であれば、何れの部位に照射されてもよい。
【0065】
また、必ずしも、センサとしてLRFを使用する必要はなく、被検者Sの足位置、及び腰位置を計測可能な装置であれば、どのような種類の計測装置を使用してもよい。
【0066】
計測に際しては、被検者Sは、「START」位置から歩行を開始すると、足圧センサ2による足圧の測定が開始され、足圧データが無線信号を通じて無線通信部5に送信される。また、被検者Sが計測領域M内に進入すると、足位置センサ3、及び腰位置センサ4による足位置と腰位置の計測が開始され、足位置データ、及び腰位置データが無線信号を通じて無線通信部5に送信される。被検者Sが、計測領域Mから退避すると、足位置センサ3、及び腰位置センサ4による測定は終了するが、引き続き足圧センサ2による測定は継続される。そして、被検者Sが「FINISH」の位置に到達すると全ての計測が終了する。
【0067】
[歩行解析装置]
歩行解析装置6は、足圧センサ2で計測された足圧データ、足位置センサ3で計測された足位置データ、及び腰位置センサ4で計測された腰位置データに基づいて被検者Sの歩行状態を示す歩行パラメータを演算する汎用のコンピュータであり、図1のブロック図に示すようにフィルタ処理部61、記憶部62、及び演算部63から主に構成され、これらは内部バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0068】
[フィルタ処理部]
フィルタ処理部61は、足位置センサ3、及び腰位置センサ4で計測され、無線通信部5で受信した足位置データと腰位置データのうち、歩行する被検者Sとは関係のないノイズデータ(例えば歩行の際に使用する杖や微小なノイズデータ等)を検出し、除去するものであり、図6に示すように座標変換部61a、データ近似化部61b、データ集積部61c、座標データ計数部61d、第1の判定部61e、検出点座標設定部61f、特定検出点座標設定部61g、領域設定部61h、第2の判定部61iから構成されている。なお、このフィルタ処理部61の処理フローについては後述する。
【0069】
[記憶部]
記憶部62は、足圧センサ2で計測された足圧データ、及び足位置センサ3で計測された足位置データであって前記したフィルタ処理部61でフィルタ処理された足位置データ(以後、「足位置処理データ」という。)を計測時刻に関連付けて格納するものであり、例えばハードディスクドライブや不揮発性メモリー等の公知の記憶装置から構成される。なお腰位置センサ4で計測された腰位置データは、前述したフィルタ処理部61におけるノイズデータの除去処理においてのみ使用されるものであって、この記憶部62には記憶されない。
【0070】
[演算部]
演算部63は、記憶部62に記憶されている足圧データ、及び足位置処理データに基づいて、被検者Sの歩行状態を示す各パラメータを演算するための各プログラムとして、図7に示すように、歩行状態演算部63a、歩幅演算部63b、ストライド演算部63c、歩隔演算部63d、歩数演算部63e、歩行周期演算部63f、歩速演算部63g、歩調演算部63hが格納されている。なお、演算部63で演算される代表的な歩行パラメータである歩幅L1、ストライドL2、歩隔Wの一般的な定義については図5(a)に記載の通りである。
【0071】
[歩行状態演算部]
歩行状態演算部63aは、記憶部62に記憶されている足圧データに基づいて被検者Sの左右一方、及び他方の足部の床面への接地、又は離地のタイミングを判定する。即ち、この歩行状態演算部63では、被検者Sの歩行時における踵が接地する踵接地時刻、足裏面の全体が接地する全接地時刻、足先が床面から離れる離地時刻のぞれぞれの情報が足圧データに基づいて取得され、被検者Sの歩行時における立脚期P1、両足支持期P2、及び遊脚期P3(図5(b))を判定することができる。
【0072】
[歩幅演算部]
歩幅演算部63bは、歩行状態演算部63aで演算された被検者Sの足部の接地状態、離地状態と足位置処理データに基づいて、左右一方の踵の接地から、他方の踵が接地するまでの歩行進行方向の距離である歩幅L1が演算される。即ち、計測領域M内を歩行する被検者Sの一方の足のn歩目(nは自然数である)の踵の接地状態とその時刻に対応する足位置処理データ、及び他方の足の(n+1)歩目の踵の接地状態とその時刻に対応する足位置処理データに基づいて歩幅L1が演算される。
【0073】
[ストライド演算部]
ストライド演算部63cは、歩行状態演算部63aで演算された被検者Sの足部の接地状態、離地状態と足位置処理データに基づいて、左右一方の踵の接地から、その一方の踵が再び接地するまでの距離であるストライドL2が演算される。即ち、計測領域M内を歩行する被検者Sの一方の足のn歩目の踵の接地状態とその時刻に対応する足位置処理データ、他方の足の(n+1)歩目の踵の接地状態とその時刻に対応する足位置処理データ、さらに一方の足の(n+2)歩目の踵の接地状態とその時刻に対応する足位置処理データに基づいてストライドL2が演算される。
【0074】
[歩隔演算部]
歩隔演算部63dは、歩行状態演算部63aで演算された被検者Sの足部の接地状態、離地状態と足位置処理データに基づいて、左右一方の踵の接地位置と、他方の踵の接地位置の幅方向の距離である歩隔Wが演算される。即ち、計測領域M内を歩行する被検者Sの一方の足のn歩目の踵の接地状態とその時刻に対応する足位置処理データ、他方の足の(n+1)歩目の踵の接地状態とその時刻に対応する足位置処理データに基づいて歩隔Wが演算される。
【0075】
ここで、必ずしも、歩幅演算部63b、ストライド演算部63c、歩隔演算部63dで使用される足圧データ、及び足位置処理データとして、被検者Sの踵の接地状態のデータを使用する必要はなく、足部における所定の接地状態であればどのようなデータを用いてもよい。例えば、足裏の全体が接地した全接地状態の足圧データと時間的に対応する足位置処理データに基づき演算することも可能である。
【0076】
[歩数演算部]
歩数演算部63eは、歩行状態演算部63aで演算された被検者Sの左右一方の足と他方の足の接地状態と離地状態に基づいて計測領域M内での歩数Nが演算される。なお、歩数Nの演算に際しては、例えば足位置処理データに基づき、被検者Sの足位置の時間的変化に基づき歩数Nを演算するようにしてもよい。
【0077】
[歩行周期演算部]
歩行周期演算部63fは、1ストライドに要する時間である1歩行周期C1を演算するものであり、ストライド演算部63cで演算されたストライドL2と計測時間に基づいて演算することができる。
【0078】
ここで、必ずしも、1歩行周期C1は、ストライド演算部63cで演算されたストライドL2と計測時間に基づいて演算する必要はない。例えば、歩行状態判定部63aでの被検者Sの歩行時における立脚期P1、及び遊脚期P3の判定結果と、それに伴う時間データに基づき演算するようにしてもよい。
【0079】
[歩速演算部]
歩速演算部63gは、ストライド演算部63cで演算されたストライドL2と歩行周期演算部63fで演算された1歩行周期C1に基づいて歩速Vが演算される。
【0080】
ここで、必ずしも、歩速Vは、ストライドL2と1歩行周期C1に基づいて演算される必要はなく、例えば歩幅L1と歩幅L1に要する時間との関係から演算するようにしてもよい。
【0081】
[歩調演算部]
歩調演算部63hは、1分間当たりの歩数Nを示す歩調C2を演算するものであり、歩数演算部63eで演算された歩数Nと計測時間に基づいて演算される。
【0082】
以上が、本発明の実施形態の演算部63で演算される代表的な歩行パラメータであるが、演算部63で演算される歩行パラメータとしては必ずしもこれらに限定されるものではない。その他の歩行パラメータとして、例えば歩行時の被検者Sの足部の移動方向を示す足移動方向や、床面に接地した際の足部の向きを示す足角度等を演算することも可能である。また、前記した各歩行パラメータのうち被検者Sに必要なパラメータのみを指定して演算するようにしてもよい。
【0083】
[表示部]
表示部7は、演算部63による歩行パラメータの演算結果を表示するものであり、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末から構成され、これらパーソナルコンピュータやタブレット端末内のメモリー内に演算結果を記憶させる等して各被検者Sのデータ管理を容易に行うことができる。
【0084】
[歩行解析プログラム]
次に図8を用いて、歩行解析システム1における全体的な処理フローについて説明する。
【0085】
<STEP1:被検者の歩行判定>
歩行解析システム1が起動されると、先ずはシステム全体が初期化され、その後、計測領域M内を被検者Sが歩行しているか否かが判定される。
【0086】
<STEP2:計測開始>
被検者Sが計測領域M内に入ると、足圧センサ2、足位置センサ3、及び腰位置センサ4により、被検者Sの歩行状態の計測が開始される。なお、前記した通り、足圧センサ2による計測は、計測領域Mの前後においても継続的に測定が行われ、撮像装置9による動画像の撮影も、被検者Sの計測領域M内の歩行の有無にかかわらず開始するようにしてもよい。
【0087】
<STEP3:データの受信>
歩行状態の被検者Sの計測が開始されたら、足圧センサ2で計測された足圧データ、足位置センサ3で計測された足位置データ、及び腰位置センサ4で計測された腰位置データはそれぞれ無線信号により無線通信部5に送信される。
【0088】
<STEP4:フィルタ処理>
無線通信部5で受信した各計測データのうち、足位置データ、及び腰位置データは、フィルタ処理部61を通過し、データ内に含まれるノイズデータを検出し、除去する処理が行われる。
【0089】
<STEP5:データの記憶>
足圧センサ2で計測された足圧データ、及びフィルタ処理部61でノイズデータが除去された足位置処理データは、計測時間に対応づけて記憶部62に記憶される。
【0090】
<STEP6:演算処理>
記憶部62に記憶された足圧データ、及び足位置処理データに基づいて、前記した通り演算部63にて各種の歩行パラメータが演算される。
【0091】
<STEP7:演算結果の出力>
演算部63による歩行パラメータの演算結果は、パーソナルコンピュータ、又はタブレット端末等の表示部7を介して表示されるとともに、演算結果はこれらパーソナルコンピュータ、又はタブレット端末のメモリー内で管理される。
【0092】
[フィルタ処理プログラム]
次に、図9を用いてフィルタ処理部61におけるフィルタ処理フローを説明する。なお、足位置データと腰位置データは同一の処理フローであるため、以下の処理フローでは足位置データのフィルタ処理について主に説明する。
【0093】
<STEP411:足位置データの受信>
足位置センサ3で一度の走査により計測された足位置データは、無線通信部5を介してフィルタ処理部61に送信される。なお、前記した通り、本発明の実施形態において使用したLRFとしては、側域角度(視野角度)が240deg、角度分解能が0.36degであるため、足位置センサ3の一度の走査により667個(=240deg/0.36deg)の足位置データが取得される。一方、このうち必要な視野データとしては、被検者Sが歩行する計測領域M内でのデータであるため、足位置センサ3を基準として側域角度180degの領域における足位置データのみを対象とすればよい。従って、実際にフィルタ処理部61でのフィルタ処理に使用する足位置データとしては、500個(=180deg/0.36deg)の足位置データが対象となる。
【0094】
<STEP412:足位置データの直交座標系への座標変換>
足位置センサ3で計測された足位置データは、足位置センサ3と被検者Sとの距離データであるが、これを座標変換部61aにおいて三角関数処理によりxy直交座標系の座標データに変換して各足位置データに応じた座標データを得る。
【0095】
<STEP413:座標データの近似化>
座標変換された各座標データについて、データ近似化部61bにより座標データの近似化を行う。具体的には、「mm単位」の各座標データを除算することにより「cm単位」に単位変換した座標データについて、所定の有効桁数(例えば有効数字2桁であるがこれに限定されるものではない。)に近似化処理する。
【0096】
<STEP414:座標データの集積>
座標データの近似化により、所定の領域内(例えば10mm×10mmの座標領域内)において、同一の座標値となる座標データについて、データ集積部61cで一群データとして集積する。
【0097】
<STEP415:座標データの計数>
座標データ計数部61dにより、各一群データを構成する座標データの数を計数する。
【0098】
<STEP416:閾値の設定>
図4に示すように、所定のピッチ角度で検出波が照射される足位置センサ3は、足位置センサ3から遠ざかるに従い、隣り合う検出波の間隔が広くなる。そのため、各一群データを構成する座標データの数が同じ場合でも、足位置センサ3からの距離に応じてそのデータ密度は異なるものとなるため、座標データと足位置センサ3の距離を考慮する必要がある。そのため、ここでは、座標データと足位置センサ3の距離に応じて、ノイズ判定のための閾値が設定される。
【0099】
具体的には、一群データを構成する座標データが、足位置センサ3から所定の近距離にある場合には閾値T1aとして小さな値を設定し、足位置センサ3から所定の遠距離にある場合には閾値T1cとして大きな値を設定し、さらに足位置センサ3から所定の中距離にある場合には、閾値T1bとして、閾値T1aと閾値T1cの中間値に設定することができる。
【0100】
<STEP417:ノイズ判定>
第1の判定部61eにより、座標データ計数部61dで計数した各一群データを構成する座標データ数と、座標データと足位置センサ3までの距離に応じて設定された閾値T1a、T1b、T1cに基づいて、一群データが微小なノイズデータであるか否かの判定を行う。一群データを構成する座標データ数が、これら閾値T1a、T1b、T1cよりも少ない場合には、当該一群データは計測対象物(被検者S)とは無関係な微小ノイズであると判定し、座標データは削除され(STEP418)、以後の演算処理には利用されない。
【0101】
一方、一群データを構成する座標データ数がこれら閾値T1a、T1b、T1c以上である場合には、当該一群データは一定の大きさを有し被検者Sの足部である可能性が高いと判断することができる。そして、閾値T1a、T1b、T1c以上であると判定された座標データは以後の第2の判定部61iによる被検者Sの足部の検出における演算処理に使用される。
【0102】
ここで、必ずしも、足位置センサ3からの離間距離に応じて閾値としてT1a、T1b、T1cのように3段階に設定する必要はなく、例えば2段階、或いは4段階以上となるように設定してもよく、その範囲は適宜変更することができる。
【0103】
<STEP421:検出点座標の設定>
第1の判定部61eにより所定の閾値以上であると判定された一群データは、検出点座標設定部61fにより、当該一群データを構成する同一座標からなる座標データを検出点座標として設定する。
【0104】
<STEP422:特定検出点座標の設定>
検出点座標設定部61fにより設定された検出点座標の集合データの中から、特定検出点座標設定部61gにより特定の検出点座標である特定検出点座標を選択する。
【0105】
<STEP423:特定検出点座標を中心とした判定領域の設定>
特定検出点座標設定部61gで選択された特定検出点座標を中心として、領域設定部61hにより所定の判定領域を設定する。具体的には、図10に示すように、検出点座標がプロットされた直交座標系上の所定の領域内において、特定検出点座標(xi、yi)を中心とした周辺領域として座標(xi+a、yi)、(xi−a、yi)、(xi、yi+a)、(xi、yi−a)を定義する(aは定数)。
【0106】
なお、aは検出対象となる被検者Sの平均的な足首周りの大きさとして所定の値を設定することができ、本発明の実施形態においては「a=5cm」に設定したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、被検者Sの足首の大きさに応じて適宜変更することができる。なお、腰位置センサ4で腰位置周りのノイズデータの検出を行う場合には、例えば「a=40cm」程度の値を設定する。
【0107】
<STEP424:足部判定>
領域設定部61hで設定した座標(xi+a、yi)、(xi−a、yi)、(xi、yi+a)、(xi、yi−a)上において、検出点座標の存在の有無を確認し、検出点座標が所定の閾値T2以上(例えば3個以上)存在する場合には、第2の判定部61iは、特定検出点座標を中心として一定の広がりのある集合データとして、該特定検出点座標データは被検者Sの足部であると判定する。
【0108】
一方、検出点座標が所定の数よりも少ない場合には、第2の判定部61iは、特定検出点座標を中心として一定の広がりを持たないデータとして、該特定検出点座標データは被検者Sの足部よりも一回り小さな物体(例えば被検者Sが歩行の際に携帯する杖等)であるとして、被検者Sの足部以外の検出物であると判定する。
【0109】
第2の判定部61iで被検者Sの足部の一部であると判定された特定検出点座標は、処理時間に関連付けて足圧データとともに足位置処理データとして記憶部62に送信され、演算部63での歩行パラメータの演算に使用される。一方、第2の判定部61iで被検者Sの足部以外の物体であると判定された場合には、歩行パラメータの演算には関係しないデータであるため、消去(STEP425)、或いは記憶部62への送信が行われない。
【0110】
以上、足位置データのノイズ処理フローについて説明したが、腰位置センサ4で取得される腰位置データについても同様な処理フローにより行われ、腰位置センサ4で計測された腰位置データのうち、腰位置周りに存在する不要なノイズデータの抽出と除去が行われる。なお、前記した通り、腰位置データは直接的には歩行パラメータの演算に使用されるものではなく、このフィルタ処理部61でのフィルタ処理フローにおいて、足位置データの信頼性を高めるために使用されるものである。
【0111】
以上、本発明に係る歩行計測システム、歩行計測プログラム、及び歩行計測方法は、被検者の歩行状態を正確に把握し、被検者の目標とする歩行運動に効率的に誘導することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0112】
1 歩行計測システム
2 足圧センサ
3 足位置センサ
4 腰位置センサ
5 無線通信部
6 歩行解析装置
61 フィルタ処理部
61a 座標変換部
61b データ近似化部
61c データ集積部
61d 座標データ計数部
61e 第1の判定部
61f 検出点座標設定部
61g 特定検出点座標設定部
61h 領域設定部
61i 第2の判定部
62 記憶部
63 演算部
63a 歩行状態演算部
63b 歩幅演算部
63c ストライド演算部
63d 歩隔演算部
63e 歩数演算部
63f 歩行周期演算部
63g 歩速演算部
63h 歩調演算部
7 表示部
8 筐体部
81 ベース部
82 ポール部
83 カバー部
83a、83b センサ窓
83c 撮像窓
84 電源部
9 撮像装置
S 被検者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10