(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、平板状の被転写物、あるいは円筒状の被転写物に限られ、例えば被転写物が短径と長径との差が大きい楕円筒状の変形形状物等に適するものではなかった。すなわち、短径の部分から長径の部分へ、あるいは長径の部分から短径の部分へ回転してゆく課程において、転写版又は熱転写用のシリコンローラと被転写物の側面との間に作用する接圧が一定とはならず、結果として転写される文字等が部分的に欠損することによる転写ムラが発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、円筒状の側面を有する被転写物の場合は勿論のこと、楕円筒状の側面を有する被転写物に対しても転写ムラのない綺麗な転写を可能とするロール状刻印及びこれを用いた箔転写装置並びに箔転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また本発明の第
1の主たる手段は、
外周面に彫刻部が形成され
たラバーからなる円筒状の部材を、回転可能に軸支された円柱状の取付け治具の周囲に外挿して固定した状態で軸回りに回転駆動するロール状刻印と、ロール状刻印の周囲に対向配置されて回転するロール状刻印を加熱するヒーターと、被転写物を回転駆動可能に保持する回転移動治具と、ロール状刻印と回転移動治具との間に配置されて走行可能に設けられた長帯状の転写シートと、転写シートを走行方向に間欠的に巻き取る巻取モーターと、走行方向とは逆方向の張力を転写シートに付与可能とされたバックテンションモーターと、を有する箔転写装置であって、ロール状刻印又は回転移動治具が、被転写物の側面とロール状刻印の外周面との間の接圧を一定に維持しながら互いに接近する方向及び離間する方向に往復移動可能に設けられ
ると共に、進退自在に設けられたテンションガイドを、回転移動治具と回転移動治具の上流側に設けられた直近のガイド支柱との間から押し出して転写シートに強いテンションを付与する押出機が設けられていることを特徴とする、と云うものである。
【0010】
本発明の第
1の主たる手段では、円筒状の側面だけでなく、楕円筒状の側面を有する被転写物やその他の多角形状の側面を有する被転写物に対する転写を行える転写装置とし得る。
【0011】
また本発明の第
2の主たる手段は、少なくとも、
外周面に彫刻部が形成され
たラバーからなる円筒状の部材を、回転可能に軸支された円柱状の取付け治具の周囲に外挿して固定した状態で軸回りに回転駆動するロール状刻印と、ロール状刻印の周囲に対向配置されて回転するロール状刻印を加熱するヒーターと、被転写物を回転駆動可能に保持する回転移動治具と、ロール状刻印と回転移動治具との間に配置され且つ間欠的に走行可能に設けられた長帯状の転写シートと、転写シートを走行方向に間欠的に巻き取る巻取モーターと、
走行方向とは逆方向の張力を転写シートに付与可能とするバックテンションモーターと、を用いる箔転写方法であって、
巻取モーター
及びバックテンションモーターを非駆動状態に設定
して停止させると共に、ヒーターに対向配置されたロール状刻印を一定の速度で回転させて加熱する第1工程と、
回転を停止させてロール状刻印を所定の初期回転角度に位置決めする第2工程と、
被転写物の側面とロール状刻印の外周面とを圧接させ、これらの間に転写シートを挟み込む第3工程と、
圧接する状態を維持しながら被転写物を回転させると共に、被転写物の側面とロール状刻印の外周面との間の接圧が一定となるように被転写物の形状に倣いながらロール状刻印又は回転移動治具を互いに接近する方向及び離間する方向に往復移動させることにより、転写シートに積層された転写箔を被転写物の側面に転写する第4工程と、
巻取モーターを所定時間駆動して転写シートを走行させ、被転写物に巻き付いている転写シートを被転写物から剥離させる第5工程と、
第3工程の後に、バックテンションモーターを再駆動させ、転写シートに走行方向とは逆方向の張力を付与する工程と、
を有することを特徴とする、と云うものである。
【0012】
本発明の第
2の主たる手段では、円筒状の側面だけでなく、楕円筒状の側面やその他の多角形状の側面に対し、転写ムラや転写ズレがなく、高精度で綺麗な転写を達成し得る。
【0014】
特には、彫刻部が特に細かい文字等であっても、通常の文字等である場合同様、楕円筒状の側面を有する被転写物に対しても転写ムラのない綺麗な転写を実施し得る。
【0015】
また本発明は、上記手段に、ロール状刻印とヒーターとを一体的なユニットとして構成した、との手段を加えたものである。
【0016】
上記手段では、常に回転するロール状刻印の側面に設けられた彫刻部を加熱することができるため、彫刻部に生じやすい温度ムラを抑制することができるため、より綺麗な転写を行うことを達成し得る。
【0017】
また本発明は、上記手段に、進退自在に設けられた支持アームの先端に設けたテンションガイドを備える押出機が設けられると共に、
第3工程が、支持アームを延ばしたテンションガイドで転写シートを押し出すことにより、転写シートに強いテンションを付与する工程を有する、との手段を加えたものである。
【0018】
上記手段では、転写シートにより強力なテンションが作用させて皺の発生を抑制することが可能となるため、より綺麗で正確な転写を達成し得る。
し得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記した構成を有することにより、円筒状の被転写物の場合は勿論のこと、楕円筒状、その他多角形状から成る被転写物の側面等に対しても転写ムラのない綺麗な転写を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の箔転写方法に用いる箔転写装置の概略構成を示す平面図、
図2は箔転写方法の一工程を示す平面図、
図3は箔転写方法の他の一工程を示す平面図、
図4は本発明であるロール状刻印の一実施例を示す斜視図、
図5は
図4に示すロール状刻印の正面図、
図6は
図5のロール状刻印によって転写された楕円筒状の被転写物を示し、Aは被転写物の平面図及びその正面図、Cは被転写物の平面図及びその側面図、
図7は本発明の他の実施例としてのロール状刻印あり、彫刻部を展開した状態を示す正面図、
図8は
図7のロール状刻印によって転写された楕円筒状の被転写物を示し、Aは被転写物の平面図及び正面図、Cは被転写物の平面図及び側面図である。
【0022】
図1に示すように、箔転写装置は、図示左端の上流側に巻出リール1が配置され、図示右端の下流側に巻取リール2が配置されている。巻取リール2は巻取モーター22の回転軸に軸支されており、巻出リール1はバックテンションモーター21の回転軸に図示しないクラッチ機構を介して軸支されており、これら巻出リール1と巻取リール2との間には後述する転写シート4が張設されている。そして、巻取モーター22を正転方向に間欠的に駆動させることにより、転写シート4を走行方向である上流側から下流側に向かって走行させることが可能となっている。またバックテンションモーター21を逆回転駆動させることにより、クラッチ機構を介して転写シート4に走行方向とは逆方向(上流方向)に作用する所定の張力(バックテンション)を与え、転写シート4に発生しやすい弛みを除去することが可能となっている。
【0023】
巻出リール1と巻取リール2との間には、ガイドローラー3Aやガイド支柱3Bなどからなる複数のガイド部材3が配置されており、転写シート4はこれらガイド部材3に補助されながら上流側から下流側(走行方向)に向かって走行可能に配置されている。
【0024】
転写シート4は、合成樹脂から成るベースフィルム上に金属箔等から構成される転写箔が蒸着等により積層された長帯状(テープ状ともいう。)のシートであり、多重に巻回されることにより構成されている。
【0025】
箔転写装置の中央部に設けられた左右のガイド支柱3B(ガイド部材3)の間には、円筒状からなるロール状刻印5が設けられており、このロール状刻印5の周囲には遠赤外線式のヒーター6が対向配置されている。
【0026】
図4に示すように、ロール状刻印5は、比較的硬度の大きいラバーからなる円筒状の部材であり、このロール状刻印5の外周面には、被転写物に対して転写を行うための文字等からなる彫刻部5a(
図4では、星形図形が縦横に配列された模様)が形成されている。
ロール状刻印5は図示しないサーボモーターの回転シャフトに対し、同じく図示しないワンウェイクラッチ機構を介して回転可能に軸支された円柱状の取付け治具7の周囲に外挿された状態で固定されており、サーボモーターの動力を受けたときには一定の速度で回転することが可能となっている。ロール状刻印5が一定の速度で回転することにより、ヒーター6で加熱されるロール状刻印5の彫刻部5aに生じやすい温度ムラが抑制され、ひいては転写ムラの発生を抑制することが可能となっている。尚、サーボモーターは図示しないコントローラに接続されており、コントローラはプログラムやタッチパネルからの入力に応じてロール状刻印5の回転の開始時間や停止時間のタイマー制御、ロール状刻印5の回転角度の調整等を制御すことが可能となっている。
【0027】
転写シート4を介してロール状刻印5と対向する位置には回転移動治具8が設けられている。回転移動治具8は、被転写物9を回転軸の先端に保持して軸回りに回転駆動させるモーター(図示せず)を搭載し、且つロール状刻印5に対して接近する方向及び離間する方向(前後方向ともいう)に移動自在に設けられている。
【0028】
そして、図示しないコントローラの制御により、回転移動治具8を前方に移動させることにより、被転写物9の側面をロール状刻印5に転写シート4を介して圧接させることが可能となっている。同時に、モーターを駆動させることにより、被転写物9を回転させることが可能となっている。よって、被転写物9を回転させながら被転写物9の形状に倣って回転移動治具8を前後方向に往復移動させることにより、楕円形状からなる被転写物9の側面に倣いながら全周に亘ってロール状刻印5に圧接させることができると共に、圧接時の接圧を一定に保つことが可能となっている。
【0029】
尚、
図1乃至
図3に示すように、回転移動治具8と図示左側のガイド支柱3Bとの間に、エアシリンダー又は油圧シリンダー等から成る押出機(アクチュエーター)10を配置しても良い。この押出機(アクチュエーター)10は水平に進退移動する支持アーム11を有し、この支持アーム11の先端には鉛直方向に延びる丸棒状のテンションガイド12が設けられている。
図2及び
図3に示すように、支持アーム11を突出させて、テンションガイド12の外周面で転写シート4を押圧すると、転写シート4により強力なテンションが作用して皺の発生を抑制することが可能となる。テンションガイド12の外周面は、転写シート4がスムーズに摺動できるようにすべく、研磨処理や化学的な表面処理が施されていることが好ましい。
【0030】
次に、上記箔転写装置を用いた箔転写方法について説明する。
(1)第1工程(初期状態)
図1に示すように、ロール状刻印5が一定の速度で回転させられており、ロール状刻印5の外周面に生じやすい温度ムラが抑制されている。
尚、巻取モーター22は非駆動状態(停止状態)にあり、バックテンションモーター21は駆動されて、転写シート4に発生しやすい弛みを除去している。また回転移動治具8は、ロール状刻印5から離れる後方の退避位置に移動させられた状態にある。
この第1工程(初期状態)において、楕円筒状の被転写物9が回転移動治具8に搭載されているモーターの回転軸の先端部に装着される。
【0031】
(2)第2工程(転写開始)
第2工程(転写開始)は、図示しないスタート用のスイッチをオンに設定することにより行う。
スイッチオンと同時に、サーボモーターの駆動が停止され、ロール状刻印5の回転を停止させて彫刻部5aが所定の停止位置に来るように制御される。これにより、被転写物9とロール状刻印5との相対的な位置決めが行われ、転写を被転写物9の彫刻部5aを所定の開始位置(又は初期回転角度)に設定することが可能となる。尚、ロール状刻印5の回転の停止は、サーボモーター自体を制御する方法以外に、ロール状刻印5に設けた位置決め用の部位(例えば
図4に示すボルト7aなど)を外部センサーで検知して停止させる方法であっても良い。
尚、上述したように、ロール状刻印5はサーボモーターの回転シャフトにワンウェイクラッチ機構を介して回転可能に軸支される構成であるため、ロール状刻印5の回転を停止させてからこのロール状刻印5に被転写物9が接触するまでの間にロール状刻印5が若干動いて位置ずれを起こす場合が想定されるが、その場合には回転シャフトに矯正用のテンションベルトを架けて位置ずれを防止するようにすると良い。あるいはタイミングを計りながら図示しないエアシリンダー等を介して回転シャフトや図示しないプーリー等を強制的にクランプすることにより、位置ずれを防止するようにしても良い。
【0032】
(3)第3工程
次に、
図2に示すように、回転移動治具8を後方の退避位置からロール状刻印5に接近する前方の圧接位置に移動させ、被転写物9の側面でロール状刻印5の外周面(彫刻部5a)を圧接し、被転写物9の側面とロール状刻印5の外周面との間に転写シート4を挟み込む。
尚、同時に、押出機(アクチュエーター)10の支持アーム11を突出させてテンションガイド12で転写シート4を押し出す工程を有すことが好ましい。本工程を実行することにより、転写シート4に強いテンションを作用させて皺の発生を抑制することが可能となる。
【0033】
(4)第4工程
次に、
図3に示すように、回転移動治具8に搭載されているモーターを駆動させて被転写物9を図示時計回りに回転させる。すると、転写シート4の転写箔のうち、ロール状刻印5の彫刻部5aと接した部分が被転写物9の側面に接着するため、被転写物9の回転に連動して転写シート4を上流側から下流側に向かって送ることができる。この際、回転移動治具8はコントローラの制御によって被転写物9の形状に倣いながら前後方向に往復移動させられる。これにより、被転写物9の側面とロール状刻印5の彫刻部5aとの間の接圧が一定に維持され、且つ転写シート4を介して被転写物9の回転力をロール状刻印5に伝達することができる。すなわち、被転写物9の図示時計回りの回転に連動してロール状刻印5を図示反時計回りに回転させることができる。よって、転写シート4に積層されている転写箔を、被転写物9の側面の全周に亘ってロール状刻印5に彫刻されている彫刻部5aのとおりに転写(熱転写)することができる。
【0034】
例えば、ロール状刻印5に彫刻されている彫刻部5aが
図4及び
図5に示すような多数の星形を縦横に整列させてなる模様から構成される場合には、被転写物9の側面には
図6A及びBに示すように多数の星形の模様を綺麗に転写することができる。また
図7に示すように、ロール状刻印5に彫刻されている彫刻部5aが
図6Aに示すような文字から構成される場合には、被転写物9の側面には
図8A及びBに示すように文字を正確に転写することができる。すなわち、楕円筒状の側面を有する被転写物9に対しても転写ムラのない綺麗で正確な転写を実現することができる。
【0035】
(5)第5工程
転写箔は被転写物9の側面に部分的に接着するため、転写シート4は被転写物9の回転にしたがって被転写物9の側面に一時的に巻き付くことがある。そこで、タイマー制御により巻取モーター22を所定時間だけ駆動させ、転写シート4を下流側に向かって強制的に走行させる。これにより、被転写物9の側面に巻き付いている転写シート4を巻取リール2で巻き取り、転写シート4を被転写物9の側面から剥離させることができる。
そして、上記第1乃至第5工程を繰り返すことにより、被転写物に対して連続的な転写を行うことができる。
【0036】
(6)彫刻部が特に細かい文字等である場合について
ところで、ロール状刻印5の彫刻部5aが、特に細かい文字等である場合においては、バックテンションが作用している状態の転写シート4に被転写物9の側面を押し当ててロール状刻印5に圧接すると、被転写物9の側面に充分な押圧がかからず、転写された文字等に部分的な欠損や皺が発生したり、ロール状刻印5の彫刻部5aが損傷したりする虞がある。
そこで、ロール状刻印5の彫刻部5aが特に細かい文字等である場合には、ロール状刻印5の回転停止と共に、バックテンションモーターをも停止させた状態に設定し、被転写物9の側面をロール状刻印5に圧接させ、その後にバックテンションモーターの停止を解除し、バックテンションを復帰させる方法が好ましい。
すなわち、上記第1工程(初期状態)において、巻取モーターのみならず、バックテンションモーターをも非駆動状態(停止状態)に設定する(バックテンションレススタート)。
【0037】
続く上記第2工程、第3工程の後、バックテンションモーターの停止を解除して再駆動させ、転写シート4に所定の張力(バックテンション)を付与して転写シート4に発生している弛みを解消させる(バックテンション復帰)。
さらに押出機(アクチュエーター)10の支持アーム11を突出させてテンションガイド12で転写シート4を押し出し、転写シート4にされに強いテンションを作用させて皺の発生を抑制する。
続いて、上記第4工程及び第5工程を行うことにより、彫刻部5aが特に細かい文字等であっても、通常の文字等である場合同様、楕円筒状の側面を有する被転写物9に対しても転写ムラのない綺麗な転写を実現することができる。
【0038】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0039】
例えば、上記においては、回転移動治具8が前後方向に移動する場合を示して説明したが、本発明上記実施例に限定されるものではなく、ロール状刻印5が前後方向に移動する構成とすることもできる。この場合には回転移動治具8は被転写物9を回転させる機能のみを備えることになる。またこの場合には、上記第4工程を、回転移動治具8が被転写物9を回転させると共に、ロール状刻印5が被転写物9を圧接する状態を維持しつつ被転写物9の形状に倣いながら前後方向(接近する方向及び離間する方向)に往復移動することにより、転写シート4に積層された転写箔が被転写物9の側面に転写されるという工程とすればよい。
尚、ロール状刻印5とヒーター6とを一体的なユニットUとして構成し、上述のコントローラの制御によってユニットUが被転写物9の形状に倣いながら前後方向に往復移動するようにすると、常にロール状刻印5の彫刻部5aに生じやすい温度ムラを抑制することができる点で好ましい。
【0040】
また上記実施例では、被転写物の例として楕円筒状の側面に転写する場合を示して説明したが、真円筒状の側面に転写する場合は勿論であり、回転移動治具8又はロール状刻印5、あるいはユニットUが被転写物9の形状に倣うように前後方向に往復移動する工程を有する限り、多角形状等その他の変形形状から成る被転写物の側面に転写する場合も同様である。