特許第6783046号(P6783046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783046
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   A61F13/496 100
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-190141(P2015-190141)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-63849(P2017-63849A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】巣山 潤之介
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−035022(JP,A)
【文献】 特開2002−035034(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0010450(US,A1)
【文献】 特開平09−010261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/496
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体を有する内装体と、
腹側部分、股間部分、及び背側部分を有する外装体と、
前記腹側部分の両側端部及び前記背側部分の両側端部が接合されて形成された一方のサイドシール部及び他方のサイドシール部と、
これらのサイドシール部の形成に伴って形成されたウエスト開口部並びに一方のレッグ開口部及び他方のレッグ開口部と、
が備わるパンツタイプ使い捨ておむつであって、
前記一方のサイドシールの上端部を軸支したことで、当該軸支部を中心に前記パンツタイプ使い捨ておむつが傾いた場合においても、前記他方のサイドシール部の外側端縁の傾き角が水平面に対して80°以上であり、
製品状態で、一方及び他方のサイドシール部における、下端部の外側が上端部内側に対して、20〜90mm幅方向外方に位置し、
前記吸収体は、吸収体の幅が前後方向両端部よりも前後方向中心部において狭まり、当該前後方向中心部において吸収体が積層された複数層構造を有し、吸収体の2〜16mmの前後方向中心部の厚さが、1〜8mmの前後方向両端部の厚さよりも厚く、
上下方向に関して、質量中心が距離的中心よりも所定長下方に位置している、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記一方のサイドシール部から前記一方のレッグ開口部の周縁に沿って前記股間部分に至り、当該股間部分を横断し、当該股間部分から前記他方のレッグ開口部の周縁に沿って前記他方のサイドシール部に至る湾曲伸縮部材が備わり、
この湾曲伸縮部材は、前記使い捨ておむつの下端縁から100mm以内の領域を通らない、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記湾曲伸縮部材は、幅方向中心から両外方にそれぞれ100mm以内の領域において複数の箇所で切断されている、
請求項2記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記湾曲伸縮部材の上下方向に関する伸長率が、100〜120%である、
請求項2又は請求項3に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記一方のサイドシール部から前記一方のレッグ開口部の周縁に沿って前記股間部分に至り、当該股間部分を横断し、当該股間部分から前記他方のレッグ開口部の周縁に沿って前記他方のサイドシール部に至る湾曲伸縮部材が備わり、
この湾曲伸縮部材は、前記使い捨ておむつの下端縁から100mm以内の領域において複数の箇所で切断されている、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パンツタイプ使い捨ておむつ(以下、「おむつ」ともいう。)としては、吸収体を有する内装体及び外装体を有し、外装体の両側端部が接合されて、ウエスト開口部及びレッグ開口部が形成されたものが存在する。また、この種のおむつには、身体へのフィット性を向上させるために、外装体に対して、ウエスト部弾性部材、腰部弾性部材、湾曲弾性部材等の弾性部材が伸長状態で固定されるのが一般的である(例えば、特許文献1、2等)。この弾性部材の固定位置、方法等は、日々改善されており、近年では、フィット性に極めて優れるパンツタイプ使い捨ておむつが開発されるに至っている。
【0003】
しかるに、この従来のおむつは、装着後のフィット性には優れるものの、装着自体には改善の余地があった。すなわち、装着を自身で行う場合において、両手での装着が困難な場合があるが、従来のおむつは、第三者、あるいは両手で装着するように設計されていたため、片手で装着するのが容易でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−206269号公報
【特許文献2】特開2010−142499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする主たる課題は、片手でも容易に装着することができるパンツタイプ使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
(手段1)
吸収体を有する内装体と、
腹側部分、股間部分、及び背側部分を有する外装体と、
前記腹側部分の両側端部及び前記背側部分の両側端部が接合されて形成された一方のサイドシール部及び他方のサイドシール部と、
これらのサイドシール部の形成に伴って形成されたウエスト開口部並びに一方のレッグ開口部及び他方のレッグ開口部と、
が備わるパンツタイプ使い捨ておむつであって、
前記一方のサイドシールの上端部を軸支したことで、当該軸支部を中心に前記パンツタイプ使い捨ておむつが傾いた場合においても、前記他方のサイドシール部の外側端縁の傾き角が水平面に対して80°以上である、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0007】
(手段2)
上下方向に関して、質量中心が距離的中心よりも所定長下方に位置している、
前記手段1のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0008】
(手段3)
前記一方のサイドシール部から前記一方のレッグ開口部の周縁に沿って前記股間部分に至り、当該股間部分を横断し、当該股間部分から前記他方のレッグ開口部の周縁に沿って前記他方のサイドシール部に至る湾曲伸縮部材が備わり、
この湾曲伸縮部材は、前記使い捨ておむつの下端縁から100mm以内の領域を通らない、
前記手段1又は前記手段2のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0009】
(手段4)
前記湾曲伸縮部材は、幅方向中心から両外方にそれぞれ100mm以内の領域において複数の箇所で切断されている、
前記手段3のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0010】
(手段5)
前記湾曲伸縮部材の上下方向に関する伸長率が、100〜120%である、
前記手段3又は前記手段4のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0011】
(手段6)
前記一方のサイドシール部から前記一方のレッグ開口部の周縁に沿って前記股間部分に至り、当該股間部分を横断し、当該股間部分から前記他方のレッグ開口部の周縁に沿って前記他方のサイドシール部に至る湾曲伸縮部材が備わり、
この湾曲伸縮部材は、前記使い捨ておむつの下端縁から100mm以内の領域において複数の箇所で切断されている、
前記手段1又は前記手段2のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0012】
(手段7)
前記吸収体の幅が、前後方向両端部よりも前後方向中心部において狭まり、
前記吸収体の目付けが、前記前後方向中心部≧前記前後方向両端部の関係を満たす、
前記手段1〜6のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0013】
(手段8)
前記一方のサイドシール部及び前記他方のサイドシール部は、それぞれ上端部よりも下端部が所定の寸法だけ幅方向外方に位置する、
前記手段1〜7のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0014】
(手段9)
前記所定長が、50mm以上である、
前記手段2のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0015】
(手段10)
前記吸収体の幅が、前後方向両端部よりも前後方向中心部において狭まり、
前記吸収体の目付けが、前記前後方向両端部よりも前記前後方向中心部において増え、
前記前後方向中心部の目付けが、200〜700g/m2で、
前記前後方向両端部の目付けが、100〜350g/m2である、
前記手段1〜9のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0016】
(手段11)
前記吸収体の幅が、前後方向両端部よりも前後方向中心部において狭まり、
前記吸収体の厚さが、前記前後方向両端部よりも前記前後方向中心部において厚くなり、
前記前後方向中心部の厚さが、2〜16mmで、
前記前後方向両端部の厚さが、1〜8mmである、
前記手段1〜10のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0017】
(手段12)
前記吸収体の幅が、前後方向両端部よりも前後方向中心部において広くなり、
前記前後方向中心部の幅が、150〜200mmで、
前記前後方向両端部の幅が、75〜100mmである、
前記手段1〜6のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0018】
(手段13)
前記所定の寸法が、20〜90mmである、
前記手段8のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0019】
(手段14)
前記外装体の腹側部分及び背側部分には、前記ウエスト開口部側端部において幅方向に延在するウエスト部伸縮部材と、このウエスト部伸縮部材の下方において幅方向に延在する腰部伸縮部材と、が備わり、
前記ウエスト部伸縮部材の伸長率が、255〜330%で、
前記腰部伸縮部材の伸長率が、200〜300%である、
前記手段8又は前記手段13のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0020】
(手段15)
前記内装体の内面両側端部に立体ギャザーが備わり、
この立体ギャザーの起立高さが、30mm以上である、
前記手段1〜14のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0021】
(手段16)
前記内装体は、透液性のトップシート及び不透液性のバックシートを有し、
こられのシート間に前記吸収体が介在されている、
前記手段1〜15のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0022】
(手段17)
前記一方のサイドシール部から前記一方のレッグ開口部の周縁に沿って前記股間部分に至り、当該股間部分を横断し、当該股間部分から前記他方のレッグ開口部の周縁に沿って前記他方のサイドシール部に至る湾曲伸縮部材が備わる、
前記手段1〜16のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0023】
(手段18)
前記湾曲伸縮部材は、上下方向に間隔をおいた複数本からなる、
前記手段17のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0024】
(手段19)
前記間隔が、4〜25mmである、
前記手段18のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0025】
(手段20)
前記外装体の腹側部分及び背側部分には、前記ウエスト開口部側端部において幅方向に延在するウエスト部伸縮部材が備わる、
前記手段1〜19のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0026】
(手段21)
前記外装体の腹側部分及び背側部分には、前記レッグ開口部側において幅方向に延在する腰部伸縮部材が備わる、
前記手段1〜20のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0027】
(手段22)
前記外装体が、少なくとも内側シート及び外側シートを含む複数枚の積層シートで形成されている、
前記手段1〜21のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0028】
(手段23)
前記湾曲伸縮部材、前記ウエスト部伸縮部材、及び前記腰部伸縮部材の少なくともいずれかは、前記内側シートと前記外側シートとの間に介在されている、
前記手段22のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0029】
(手段24)
前記吸収体の幅が、前後方向両端部よりも前後方向中心部において狭まる、
前記手段1〜23のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0030】
(手段25)
前記吸収体の目付けが、前記前後方向両端部よりも前記前後方向中心部において増える、
前記手段24のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0031】
(手段26)
前記吸収体の厚さが、前記前後方向両端部よりも前記前後方向中心部において厚くなる、
前記手段24又は前記手段25のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0032】
(手段27)
前記吸収体の幅が、前後方向両端部よりも前後方向中心部において広くなる、
前記手段1〜23のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0033】
(手段28)
前記内装体の内面両側端部に立体ギャザーが備わる、
前記手段1〜27のいずれかのパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0034】
(主な作用効果)
上記手段によると、おむつを装着するに際して、おむつを片手で掴んだ場合においても、おむつの傾きが小さくなるため、装着が容易となる。その具体的理由については、後述する。
【発明の効果】
【0035】
発明によると、片手でも容易に装着することができるパンツタイプ使い捨ておむつとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。
図3図1のIII−III断面図である。
図4図1のIV−IV断面図である。
図5】製品状態のパンツタイプ使い捨ておむつの正面図である。
図6】パンツタイプ使い捨ておむつを軸支(例えば、片手で保持)したときの正面図であり、(1)は本形態例、(2)は従来例である。
図7】製品状態のパンツタイプ使い捨ておむつの正面図の変形例である。
図8】吸収体の平面図の形態例である。
図9】吸収体の側面図の形態例である。
図10】製品状態のパンツタイプ使い捨ておむつの正面図の従来例である。
図11】パンツタイプ使い捨ておむつを説明する際に使用する「方向」の意味を説明するための図面であり、(1)は展開状態の場合、(2)は製品状態の場合に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、発明を実施するための形態を説明する。
なお、以下では、まず、おむつの全体構造、素材、等について説明し、その後に、片手持ちを可能とするための構造について説明する。
【0038】
(定義)
本明細書においては、以下のように定義する。
展開状態とは、腹側部分の両側端部及び背側部分の両側端部が接合される前、つまり、サイドシール部が形成される前のおむつの状態を意味する。例えば、図1図2の状態が展開状態である。
製品状態とは、腹側部分の両側端部及び背側部分の両側端部が接合された後、つまり、サイドシール部が形成された後のおむつの状態を意味する。例えば、図5図7の状態が製品状態である。
前後方向とは、図11の(1)に模式的に示すように、展開状態にあるおむつにおいて、腹側部分Fから股間部分Cを通り背側部分Bに向かう方向、あるいは背側部分Bから股間部分Cを通り腹側部分Fに向かう方向を意味する。同図中においては、前後方向を符号YDで示す。
上下方向とは、図11の(2)に模式的に示すように、製品状態にあるおむつにおいて、腹側部分Fや背側部分Bから股間部分Cに向かう方向、あるいは股間部分Cから腹側部分Fや背側部分Bに向かう方向を意味する。同図中においては、上下方向を符号ZDで示す。したがって、ウエスト開口部に近位する側が「上側」であり、ウエスト開口部から遠位する側が「下側」である。また、股間部分Cから腹側部分Fや背側部分Bに向かう方向が「上方」であり、腹側部分Fや背側部分Bから股間部分Cに向かう方向が「下方」である。
幅方向とは、展開状態においては前後方向YDに直交する方向、製品状態においては上下方向に直交する方向を意味する。図11の(1)及び(2)においては、幅方向を符号XDで示す。
幅方向内方とは、幅方向に関して中心に近付く方向を意味する。必要により、幅方向内側、あるいは単に内方ともいう。
幅方向外方とは、幅方向に関して中心から遠ざかる方向を意味する。必要により、幅方向外側、あるいは単に外方ともいう。
内面とは、装着者の肌に当接する側の面を意味する。必要により、表面、肌面ともいう。
外面とは、内面とは反対側の面を意味する。必要により、裏面、非肌面ともいう。
腹側部分とは、装着時に装着者の腹側に位置する部分であって、展開状態においては前後方向に関してサイドシール部が形成される部分に対応する部分、製品状態においては上下方向に関してサイドシール部が形成された部分に対応する部分を意味する。
背側部分とは、装着時に装着者の背側に位置する部分であって、展開状態においては前後方向に関してサイドシール部が形成される部分に対応する部分、製品状態においては上下方向に関してサイドシール部が形成された部分に対応する部分を意味する。
股間部分とは、腹側部分と背側部分との間に位置する部分である。なお、股間部分の一部が装着者の腹部や背中を覆わないことまでをも意味するものではない。
伸長率とは、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、自然長が10cmのもの(弾性部材等)を15cmに伸ばした場合の伸長率は、150%である。
【0039】
(全体構造)
図1図5に示すように、本形態のおむつは、内装体10と、この内装体10の外面に固定された外装体4と、を有する。内装体10は、液透過性のトップシート1と、液不透過性のバックシート2と、これら1,2の間に介在された吸収体3と、を有する。外装体4は、バックシート2の外面全体を覆い、更にバックシート2の外周縁より外側(外方)まで延在している。外装体4は、装着者の腹側を覆う腹側部分Fと、股間部を覆う股間部分Cと、背中側を覆う背側部分Bと、に識別することができる。
【0040】
おむつを製造するにあたっては、例えば、内装体10及び外装体4をホットメルト等の接着剤によって接合し、一体化する。一体化した内装体10及び外装体4は、前後方向YDの中心線で折り畳む(谷折り)。そして、腹側部分Fの両側端部と、背側部分Bの両側端部とを、ホットメルト等の接着剤や、熱、超音波等による溶着、等によって接合する。この接合によって、おむつが展開状態から製品状態になり、図5に示すように、一対のサイドシール部(一方のサイドシール部及び他方のサイドシール部)7が形成される。このサイドシール部7は、上下方向ZDに延在し、腹側部分F及び背側部分Bの境界部分にもなる。サイドシール部7の形成に際しては、サイドシール部7の上端側にウエスト開口部WOが、サイドシール部7の下端側に一対のレッグ開口部(一方のレッグ開口部及び他方のレッグ開口部)LOが、それぞれ形成される。
【0041】
(トップシート)
トップシート1は、尿等の体液を透過する液透過性である。トップシート1は、例えば長方形状であり、吸収体3の外周縁より外側(外方)まで延在する。トップシート1は、吸収体3の両側端縁より外側に延在する部分が、バックシート2とホットメルト等の接着剤によって接合されている。トップシート1は、必要により、吸収体3の両側縁部を巻き込んで吸収体3の裏面側まで延在させることができる。
【0042】
トップシート1としては、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性(穴あき)プラスチックシート等を使用することができる。不織布の素材繊維としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等による合成繊維のほか、レーヨンやキュプラ等による再生繊維、綿等による天然繊維、等を使用することができる。不織布の加工方法としては、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法、等の公知の加工方法を採用することができる。
【0043】
トップシート1の繊維目付けは、例えば15〜30g/m2、好ましくは18〜28g/m2、より好ましくは20〜25g/m2である。トップシート1の厚みは、例えば0.05〜3.0mm、好ましくは0.1〜2.0mm、より好ましくは0.5〜1.5mmである。
【0044】
(バックシート)
バックシート2は、尿等の体液を透過しない液不透過性である。バックシート2は、例えば長方形状であり、吸収体3の外周縁より外側まで延在する。バックシート2は、吸収体3の両側端縁より外側に延在する部分が、トップシート1とホットメルト等の接着剤によって接合されている。
【0045】
バックシート2は、吸収体3が吸収した尿等の体液の裏面側への移動(通り抜け)を防止する機能を有する。したがって、バックシート2としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等の液不透過性のプラスチックフィルムを使用するのが好ましい。ただし、ムレ防止を考慮すると、遮水性(液不透過性)及び透湿性を有するシートを使用するのがより好ましい。遮水性及び透湿性を有するシートとしては、例えば、微多孔性シートを使用することができる。微多孔性シートは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成し、更に一軸又は二軸方向に延伸することで得ることができる。
【0046】
バックシート2の単位面積当たりの質量は、例えば13〜40g/m2、好ましくは13〜30g/m2、より好ましくは13〜25g/m2である。バックシート2の厚みは、例えば0.01〜0.1mm、好ましくは0.02〜0.07mm、より好ましくは0.03〜0.05mmである。
【0047】
(吸収体)
吸収体3は、尿等の体液を吸収する部材である。吸収体3は、前後方向YDの中心に位置している。吸収体3は、必要によりクレープ紙等の液透過性及び液保持性を有する包装材によって包むことができる。
【0048】
吸収体3としては、例えば、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、不織布、等を基本素材としつつ、必要に応じて高吸収性ポリマー等を混合したものを使用することができる。なお、吸収体3の詳細については、後述する。
【0049】
(立体ギャザー)
内装体10の内面両側端部には、それぞれ立体ギャザーRGが備わる。立体ギャザーRGは、脚周りにおいて尿等の体液が漏れるのを防止する機能を有する。
【0050】
立体ギャザーRGは、図3中に拡大して示すように、2枚のシートが積層されてなるギャザーシート5と、当該2枚のシート間に介在された弾性を有する細長状のギャザー伸縮部材5gと、を構成要素とする。
【0051】
ギャザーシート5は、バックシート2の裏面側から吸収体3の両側縁部を巻き込んで吸収体3の表面側まで延在する固定部分と、この固定部分から幅方向内方へ延在し、更に折返し部5Bで折り返されて幅方向外方へ延在する本体部分と、を有する。固定部分は、前後方向YDの全長が内装体10に固定されている。一方、本体部分は、前後方向YDの両端部(前後端部)のみが倒伏状態で内装体10に固定されて非起立部になっている。この非起立部間(前後方向YDの中心部)は、ギャザー伸縮部材5gの収縮力によって内装体10の表面から自由に起立する起立部である。なお、図3中に、起立状態にある立体ギャザーRGを二点鎖線で示す。ギャザーシート5の固定は、ホットメルト等の接着剤によって行うことができる。
【0052】
図示例のギャザーシート5は、図3中に拡大して示すように、1枚のシートが折り返されてなる2層構造になっている。ただし、ギャザーシート5は、2枚のシートが積層されてなる2層構造とすることや、3枚以上のシートが積層されてなる3層以上の複数層構造、1枚のシートのみからなる単層構造とすることもできる。
【0053】
ギャザーシート5としては、例えば、不織布(好ましくはスパンボンド不織布)、プラスチックフィルム、不織布及びプラスチックフィルムの積層シート、等を使用することができる。ただし、感触性の観点からは、撥水処理を施した不織布を使用するのが好ましい。
【0054】
ギャザーシート5の単位面積当たりの質量は、例えば13〜40g/m2、好ましくは13〜30g/m2、より好ましくは15〜25g/m2である。ギャザーシート5の厚みは、例えば0.1〜4.0mm、好ましくは0.2〜3.0mm、より好ましくは0.5〜2.0mmである。
【0055】
ギャザー伸縮部材5gは、前後方向YDに伸長した状態でホットメルト等の接着剤によってギャザーシート5に固定されている。ギャザー伸縮部材5gは、糸状、紐状、帯状等の細長状であり、所定の間隔をおいた複数本で構成している。ただし、ギャザー伸縮部材5gは、1本で構成しても、複数本を束にして構成してもよい。
【0056】
ギャザー伸縮部材5gを複数本で構成する場合、その数は、例えば2〜10本、好ましくは3〜8本、より好ましくは4〜6本である。また、ギャザー伸縮部材5gの配置間隔は、例えば2〜15mm、好ましくは3〜10mm、より好ましくは5〜8mmである。
【0057】
ギャザー伸縮部材5gは、天然ゴムのほか、例えば、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン系ゴム、ポリエチレン系ゴム、ポリスチレン系ゴム、スチレンブタジエン系ゴム、シリコン系ゴム、ポリエステル系ゴム等の合成ゴムで構成することができる。
【0058】
ギャザー伸縮部材5gの太さは、例えば400〜1500dtex、好ましくは500〜1200dtex、より好ましくは600〜1000dtexである。特に天然ゴムの場合は、0.1〜3mm、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは1〜3mmである。
【0059】
(外装シート)
外装シート4は、内側シート4A及び外側シート4Bが積層されてなる積層シートで形成されている。外装シート4は、トップシート1やバックシート2の外周縁(上下端縁及び両側端縁)よりも外側まで延在している。ただし、図3に示すように、内側シート4A及び外側シート4Bの両側端縁は一致しているが、図4に示すように、内側シート4A及び外側シート4Bの上下端縁は一致していない。外側シート4Bの上下端部は、内側シート4Aの上下端縁をそれぞれ巻き込むように折り返され、折返し部4Cが形成されている。したがって、内側シート4A及び外側シート4Bの両側端縁及び外側シート4Bの折返し縁が、おむつの外周縁を構成している。
【0060】
外装シート4としては、トップシート1と同様の不織布を使用することもできるが、スパンボンド不織布を使用するのが好ましい。外装シート4として不織布を使用することで、おむつの外面が布のような外観、肌触りになる。
【0061】
外装シート4は、3枚以上の複数枚のシートを積層して形成することや、バックシート2の形状を適宜変更したうえで省略することもできる。
【0062】
外装シート4の単位面積当たりの質量は、例えば13〜40g/m2、好ましくは15〜30g/m2、より好ましくは18〜25g/m2である。外装シート4の厚みは、例えば0.1〜4.0mm、好ましくは0.2〜3.0mm、より好ましくは0.5〜2.0mmである。
【0063】
外装体4の製造方法としては、特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報に記載の製造方法を採用することができ、この製造方法は、引用により本明細書に取り込まれる。
【0064】
(カバーシート)
内装体10の内面前後端部には、それぞれカバーシート6が備わる。幅方向XDに関しては、カバーシート6の両側端縁が、外装体4の両側端縁と一致している。他方、前後方向YDに関しては、カバーシート6が、折返し部4Cの内面(露出面)から内装体10の腹側部分F、又は背側部分Bと直接重なる位置まで延在している。カバーシート6は、折返し部4C及び内装体10にホットメルト等の接着剤によって接合されている。ただし、カバーシート6の前後方向中心側(股間部分Cに近位する側)端部に、ホットメルト等の接着剤によって接合されない非接合部分を設けることもできる。非接合部分は、内装体10から浮き上がり、尿等の体液が漏れるのを防止する防漏壁として機能する。
【0065】
カバーシート6は、必要により省略することもできる。この場合、外装体4の折返し部4Cを長くすることで、カバーシート6と同様の機能を得ることもできる。
【0066】
カバーシート6の単位面積当たりの質量は、例えば13〜40g/m2、好ましくは15〜30g/m2、より好ましくは18〜25g/m2である。カバーシート6の厚みは、例えば0.1〜4.0mm、好ましくは0.2〜3.0mm、より好ましくは0.5〜2.0mmである。
【0067】
(ウエスト部伸縮部材)
外装体4の腹側部分F及び背側部Bには、ウエスト開口部側端部(ウエスト開口部WOに近位する側の端部)において幅方向XDに延在するウエスト部伸縮部材6gが備わる。このウエスト部伸縮部材6gは、外側シート4Bと折返し部4Cとの間に介在されている。ただし、必要により、外側シート4Bと内側シート4Aとの間に介在させることもできる。ウエスト部伸縮部材6gは、幅方向YDに伸長した状態でホットメルト等の接着剤によって外装シート4(外側シート4B及び/又は折返し部4C)に固定されている。
【0068】
ウエスト部伸縮部材6gは、上下方向ZDに関して、一対のサイドシール7間に位置している。このウエスト部伸縮部材6gは、後述する腰部伸縮部材4gと共に腰周りにおけるフィット性を高めるものであるが、おむつが片手持ち装着に適するものとなるようにするための部材として機能させることができる。
【0069】
ウエスト部伸縮部材6gは、糸状、紐状、帯状等の細長状であり、上下方向ZD(前後方向YD)に所定の間隔をおいた複数本で構成している。ただし、ウエスト部伸縮部材6gは、1本で構成しても、複数本を束にして構成してもよい。ウエスト部伸縮部材6gを複数本で構成する場合、その数は、例えば2〜10本、好ましくは3〜8本、より好ましくは5〜8本である。また、上下方向ZD(前後方向YD)に関する配置間隔(前記所定の間隔)は、例えば3〜30mm、好ましくは4〜15mm、より好ましくは7〜15mmである。
【0070】
ウエスト部伸縮部材6gは、ギャザー伸縮部材5gで例示したのと同様の素材で構成することができる。ウエスト部伸縮部材6gの太さは、例えば400〜1500dtex、好ましくは500〜1200dtex、より好ましくは600〜1000dtexである。特に天然ゴムの場合は、0.1〜3mm、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは1〜3mmである。
【0071】
(腰部伸縮部材)
外装体4の腹側部分F及び背側部Bには、ウエスト部伸縮部材6gの下方において幅方向XDに延在する腰部伸縮部材4gが備わる。この腰部伸縮部材4gは、外側シート4Bと内側シート4Aとの間に介在されている。腰部伸縮部材4gは、幅方向XDに伸長した状態でホットメルト等の接着剤によって外装シート4(外側シート4B及び/又は内側シート4A)に固定されている。
【0072】
腰部伸縮部材4gは、ウエスト部伸縮部材6gと上下方向ZD(前後方向YD)に間隔をおいて単に並ぶだけであるとして、両者を明確に区別できないもとしてもよい。ただし、ウエスト部伸縮部材6gのみだけではなく、腰部伸縮部材4gも、上下方向ZDに関して、一対のサイドシール7間に位置させるのが好ましい。この腰部伸縮部材4g及びウエスト部伸縮部材6gは、腰周りにおけるフィット性を高めるものであるが、後述するように、おむつが片手持ち装着に適するものとなるようにするための部材として機能させることができる。
【0073】
腰部伸縮部材4gは、糸状、紐状、帯状等の細長状であり、上下方向ZD(前後方向YD)に所定の間隔をおいた複数本で構成している。ただし、腰部伸縮部材4gは、1本で構成しても、複数本を束にして構成してもよい。腰部伸縮部材4gを複数本で構成する場合、その数は、例えば2〜10本、好ましくは3〜8本、より好ましくは5〜8本である。また、上下方向ZD(前後方向YD)に関する配置間隔(前記所定の間隔)は、例えば2〜15mm、好ましくは4〜10mm、より好ましくは4〜8mmである。
【0074】
腰部伸縮部材4gは、ギャザー伸縮部材5gで例示したのと同様の素材で構成することができる。腰部伸縮部材4gの太さは、例えば400〜1500dtex、好ましくは500〜1200dtex、より好ましくは600〜1000dtexである。特に天然ゴムの場合は、0.1〜3mm、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは1〜3mmである。
【0075】
(湾曲伸縮部材)
外装体4の腹側部分F及び背側部Bには、湾曲伸縮部材7gが備わる。この湾曲伸縮部材7gは、一方のサイドシール部7からその下方に位置する一方のレッグ開口部LOの周縁に沿って股間部分Cに至り、当該股間部分Cを横断し、当該股間部分Cから他方のレッグ開口部LOの周縁に沿ってその上方に位置する他方のサイドシール部7に至る湾曲形状をなしている。この湾曲伸縮部材7gは、脚周りにおけるフィット性を高めるものであるが、後述するように、おむつが片手持ち装着に適するものとなるようにするための部材として機能させることができる。
【0076】
湾曲部伸縮部材7gは、糸状、紐状、帯状等の細長状であり、上下方向ZD(前後方向YD)に所定の間隔をおいた相互に交差しない複数本で構成している。ただし、湾曲伸縮部材7gは、1本で構成しても、複数本を束にして構成してもよい。湾曲伸縮部材7gを複数本で構成する場合、その数は、腹側部分F及び背側部分Bそれぞれにおいて、例えば2〜10本、好ましくは3〜8本、より好ましくは3〜6本である。また、上下方向ZD(前後方向YD)に関する配置間隔(前記所定の間隔)は、例えば4〜25mm、好ましくは6〜20mm、より好ましくは8〜15mmである。
【0077】
湾曲伸縮部材7gは、ギャザー伸縮部材5gで例示したのと同様の素材で構成することができる。湾曲伸縮部材7gの太さは、例えば400〜1500dtex、好ましくは500〜1200dtex、より好ましくは600〜1000dtexである。特に天然ゴムの場合は、0.1〜3mm、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは1〜3mmである。
【0078】
湾曲伸縮部材7gは、必要により、内装体10と重なる部分において、複数の箇所で切断することができる。この切断により、湾曲伸縮部材7gの収縮力が内装体10に作用しなくなり、内装体10の不必要な縮こまりを防止することができる。ただし、後述するように、この切断を工夫することで、おむつを片手持ち装着に適するものとすることができる。なお、前述した腰部伸縮部材4gも内装体10と重なる部分を複数の箇所で切断することができるが、本形態では採用していない。
【0079】
湾曲伸縮部材7gを内装体10上で切断し不連続化する方法としては、特開2002−35029号公報や、特開2002−178428号公報、特開2002-273808号公報に記載の切断方法を採用することができ、この切断方法は、引用により本明細書に取り込まれる。
【0080】
腹側部分Fの湾曲伸縮部材7g及び背側部分Bの湾曲伸縮部材7gは、相互に交差させることもできるが、相互に交差させない方が好ましい。この点は、片手持ち装着に係る構成であるので、後で詳説する。
【0081】
湾曲伸縮部材7は、その全体が湾曲していなくてもよく、部分的に直線状の部分を有していてもよい。
【0082】
(特徴的構造)
次に、以上のおむつについて、片手持ちを可能とするための構造について説明する。
図6に、一方のサイドシール7の上端部を軸支したことで、当該軸支部を中心におむつが傾いた場合(状態)を示した。図6の(1)が本形態例であり、図6の(2)が従来例である。本形態例においては、他方のサイドシール部7の外側端縁7yの水平面に対する傾き角αが、従来のおむつの場合の傾き角βよりも大きくなり、80°以上、好ましくは85°以上、より好ましくは90°以上である。傾き角αが大きいと、ウエスト開口部WOの水平方向の長さ(水平長さ)D3が長くなるため、ウエスト開口部WOに脚を入れ易くなり、おむつの装着が容易になる。
【0083】
ここで、傾き角αや傾き角βを規定する前提とする軸支とは、サイドシール部7の上端部(外側端縁7yから5mm、上端縁から5mm)に直径1mmの針を刺し、おむつを回動自在に保持することを意味するものとする。
【0084】
傾き角αを大きくするためには、例えば、図5に示すように、上下方向ZDに関して、質量中心Mが距離的中心L1よりも所定長D1下方に位置するようにおむつを設計するとよい。なお、質量中心Mとは、おむつの質量分布の平均的位置にある点である。また、距離的中心L1とは、製品状態にあるおむつの上端縁及び下端縁を結ぶ最短の線の中心である。
【0085】
所定長D1は、例えば50mm以上、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上である。所定長D1が短くなると傾き角αは小さくなり、所定長D1が長くなると傾き角αは大きくなる。したがって、所定長D1を長くする、つまり、質量中心Mを可及的に下方に位置させることで、傾き角αが多くなり、片手持ち装着が容易なおむつになる。ただし、所定長D1を長くし過ぎると、おむつの全体バランスが崩れ、例えば、股間部分Cのフィット性が劣ることになる。
【0086】
所定長D1を長くするためには、例えば、図7に示すように、湾曲伸縮部材7gが、製品状態にあるおむつの下端縁から100mm以内の領域(上下方向YDに関して、符号D5で示す範囲の領域。以下、「不存在領域」ともいう。)、好ましくは150mm以内の領域、より好ましくは200mm以内の領域を通らないように設計するとよい。このように湾曲伸縮部材7gが不存在領域を通らないように設計すると、当該不存在領域に位置するおむつ下端部の上下方向ZDの収縮が抑えられ、おむつの質量中心Mが下方に位置するようになる。
【0087】
このように湾曲伸縮部材7gの不存在領域を設ける場合においては、湾曲伸縮部材7gを、幅方向中心L2から両外方にそれぞれ100mm以内の領域(幅方向XDに関して、符号D6で示す範囲の領域。以下、「切断領域」ともいう。)、好ましくはそれぞれ150mm以内の領域、より好ましくはそれぞれ200mm以内の領域において複数の箇所で切断するとより好ましいものとなる。この切断によっておむつの上下方向ZDの収縮が一段と抑えられ、おむつの質量中心Mがより下方に位置するようになる。また、この切断によって吸収体3の縮こまり等も防止される。
【0088】
前述したように湾曲伸縮部材7gは延在方向に伸長した状態で外装体4に固定しているが、この固定は、上下方向ZDに関する伸長率(延在方向に関する伸長率とは異なる)が100〜120%となるように行うのが好ましく、100〜110%となるように行うのがより好ましく、100〜105%となるように行うのが特に好ましい。湾曲伸縮部材7gの上下方向YDに関する伸長率を120%以下にすることで、おむつの上下方向ZDの収縮が一段と抑えられ、おむつの質量中心Mがより下方に位置するようになる。
【0089】
一方、図5に示すように、湾曲伸縮部材7gが不存在領域を通るように設計する場合においては、当該不存在領域において、つまり製品状態にあるおむつの下端縁から100mm(好ましくは150mm、より好ましくは200mm)以内の領域において、湾曲伸縮部材7gを複数の箇所で切断するとよい。この切断によっても、おむつの上下方向ZDの収縮が抑えられ、おむつの質量中心Mがより下方に位置するようになる。
【0090】
以上のように湾曲伸縮部材7gの不存在領域を設けたり、湾曲伸縮部材7gを切断したりして質量中心Mを下方に位置させる場合は、前述した立体ギャザーの起立高さD2(図3参照)を通常より高くするのが好ましい。具体的には、起立高さD2を、好ましくは30mm以上、より好ましくは40mm以上、特に好ましくは50mm以上とする。起立高さD2を高くすることで、尿等の体液が脚周りから漏れるのを確実に防止することができる。なお、起立高さD2の上限値は、例えば60mmである。
【0091】
所定長D1を長くするためには、更に図8に示すように、吸収体3の幅が前後方向両端部3Bよりも前後方向中心部3Aにおいて狭まり、吸収体3の目付けが前後方向両端部3Bよりも前後方向中心部3Aにおいて増えるように設計してもよい。この場合、前後方向中心部3Aの幅は、好ましくは85〜120mm、より好ましくは85〜110mm、特に好ましくは85〜100mmである。また、前後方向両端部3Bの幅は、好ましくは150〜200mm、より好ましくは170〜200mm、特に好ましくは190〜200mmである。さらに、前後方向中心部3Aの目付けは、好ましくは200〜700g/m2、より好ましくは250〜650g/m2、特に好ましくは300〜600g/m2である。また、前後方向両端部3Bの目付けは、好ましくは100〜350g/m2、より好ましくは125〜325g/m2、特に好ましくは150〜300g/m2である。製品状態のおむつにおいては、吸収体3の前後方向中心部3Aよりも吸収体3の前後方向両端部3Bが、相対的に上側に位置する。逆に、吸収体3の前後方向両端部3Bよりも吸収体3の前後方向中心部3Aが、相対的に下側に位置する。したがって、吸収体3の目付けが前後方向両端部3Bよりも前後方向中心部3Aにおいて増えるように設計すると、おむつの質量中心Mがより下方に位置するようになる。
【0092】
なお、前後方向中心部3Aとは、吸収体3を前後方向に3等分した場合に、中心部に位置する部分を意味するものとする。また、前後方向両端部3Bとは、吸収体3を前後方向に3等分した場合に、前後端部に位置する部分を意味するものとする。そして、吸収体3の幅や目付は、各部分3A,3Bにおける平均値を意味するものとする。
【0093】
吸収体3の幅が前後方向両端部3Bよりも前後方向中心部3Aにおいて狭まるように設計する場合においては、以上のように目付けを変化させることに替えて、図9に示すように、吸収体3の厚さが前後方向両端部3Bよりも前後方向中心部3Aにおいて厚くなるように設計してもよい。この場合、前後方向中心部3Aの厚さは、好ましくは2〜16mm、より好ましくは2〜12mm、特に好ましくは2〜8mmである。また、前後方向両端部3Bの厚さは、好ましくは1〜8mm、より好ましくは1〜6mm、特に好ましくは1〜4mmである。このように吸収体3の厚さが前後方向中心部3Aにおいて厚くなるように設計しても、おむつの質量中心Mがより下方に位置するようになる。
【0094】
吸収体3の厚さを厚くするにあたっては、吸収体3の前後方向中心部3Aを、例えば、上層吸収体及び下層吸収体が積層された2層構造、又は3層以上の吸収体が積層された複数層構造とすること等が考えられる。
【0095】
一方、所定長D1を長くするためには、図8の(2)に示すように、吸収体3の幅が、前後方向両端部3Bよりも前後方向中心部3Aにおいて広くなるように設計してもよい。この場合、前後方向中心部3Aの幅は、好ましくは150〜200mm、より好ましくは170〜200mm、特に好ましくは190〜200mmである。また、前後方向両端部3Bの幅は、好ましくは75〜100mm、より好ましくは85〜100mm、特に好ましくは95〜100mmである。このように吸収体3の幅が前後方向中心部3Aにおいて広くなるように設計しても、おむつの質量中心Mがより下方に位置するようになる。なお、この吸収体3の幅は、前述したように、各部分3A,3Bにおける平均値を意味するものとする。
【0096】
以上は、質量中心Mを下げるという観点からの設計であるが、おむつの装着を容易にする方法としては、おむつの形状を変化させるという設計方法もある。
すなわち、図5に示すように、一方のサイドシール部7の上端部よりも下端部が、所定の寸法D7だけ幅方向外方に位置するように設計する。また、これに替えて、又はこれと共に他方のサイドシール部7の上端部よりも下端部が、所定の寸法D7だけ幅方向外方に位置するように設計する。この形態によると、図6に示すように、ウエスト開口部WOの真下に位置するサイドシール部7(以下、このウエスト開口部WOの真下に位置するサイドシール部7を「足引掛り部」ともいう。)の幅方向の長さ(掛り長)D4が短くなる。この足引掛り部は、おむつを装着しようとウエスト開口部WOから足を入れた際に足が引っ掛かる部位である。したがって、足引掛り部の幅方向の長さD4を短くすることでおむつの装着が容易になる。
【0097】
所定の寸法D7は、好ましくは20〜90mm、より好ましくは30〜90mm、特に好ましくは40〜90mmである。所定の寸法D7が短過ぎると、脚引掛り部の幅方向の長さD4を十分に短くすることができない。他方、所定の寸法D7が長過ぎることは、一方のサイドシール部7と他方のサイドシール部7との離間幅が、上端部において短過ぎ、又は下端部において長過ぎるとことを意味し、おむつのフィット性に問題が生じるおそれがある。
【0098】
以上のように、サイドシール部7の上端部よりも下端部が幅方向外方に位置するようにする方法としては、図1に示すように、展開状態にある外装体4の腹側部分F及び背側部分Bの幅が股間部分Cに向かうにしたがって広くなるように設計する方法がある。つまり、外装体4の切出し(カット)形状を設計する方法である。
【0099】
また、このような切出し形状の設計に替えて、又は共にウエスト部伸縮部材6g及び腰部伸縮部材4gの伸長率を設計する方法がある。具体的には、ウエスト部伸縮部材6gの伸長率を、好ましくは255〜330%、より好ましくは265〜315%、特に好ましくは275〜300%とする。また、腰部伸縮部材4gの伸長率を、好ましくは200〜300%、より好ましくは200〜275%、特に好ましくは200〜250%とする。このような伸長率とすることで、製品状態においては、サイドシール部7の上端部よりも下端部が幅方向外方に位置するようになる。ただし、ウエスト部伸縮部材6gの伸長率が高過ぎると、ウエスト開口部WOが狭過ぎ、窮屈なおむつになるおそれがある。他方、腰部伸縮部材4gの伸長率が低過ぎると、レッグ開口部LOにおけるフィット性に問題が生じるおそれがある。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつとして、特に片手で装着が可能なパンツタイプ使い捨ておむつとして利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…トップシート、2…バックシート、3…吸収体、3A…前後方向中心部、3B…前後方向両端部、4…外装シート、4A…内側シート、4B…外側シート、4g…腰部伸縮部材、5…ギャザーシート、5g…ギャザー伸縮部材、6…カバーシート、6g…ウエスト部伸縮部材、7…サイドシール部、7g…湾曲伸縮部材、7y…外側端縁、10…内装体、B…背側部分、C…股間部分、D1…所定長、D2…起立高さ、D3…水平長さ、D4…掛り長、D5…(不存在領域の長さ)、D6…切断領域、D7…所定の寸法、F…腹側部分、L1…距離的中心、L2…幅方向中心、LO…レッグ開口部、M…質量中心、RG…立体ギャザー、WO…ウエスト開口部、XD…幅方向、YD…前後方向、ZD…上下方向、α…傾き角、β…傾き角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11