(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783054
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
F23R 3/04 20060101AFI20201102BHJP
F02C 7/04 20060101ALI20201102BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20201102BHJP
F04D 29/54 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
F23R3/04
F02C7/04
F01D25/00 H
F04D29/54 D
F04D29/54 F
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-254073(P2015-254073)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-115784(P2017-115784A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺内 晃司
(72)【発明者】
【氏名】上村 大助
(72)【発明者】
【氏名】久保 博史
(72)【発明者】
【氏名】阪井 直人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡允
(72)【発明者】
【氏名】石飛 悠希
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−223223(JP,A)
【文献】
特開昭51−129510(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0199684(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02706533(FR,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02757210(FR,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0257869(US,A1)
【文献】
特開2007−146838(JP,A)
【文献】
特開2000−314397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/04
F01D 25/00
F02C 7/04
F04D 29/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機で圧縮した圧縮ガスを燃焼器で燃焼させ、得られた燃焼ガスによりタービンを駆動するガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを前記燃焼器へ供給する圧縮ガス供給部と、
前記圧縮ガス供給部の上流側部分を形成するディフューザ内に配置されて、前記圧縮ガスを径方向に分流させる環状の分割ガイド体と、
前記分割ガイド体を、前記圧縮ガス供給部の内径側壁に支持するガイド支持体と、
を備え、
前記ガイド支持体は、前記ディフューザよりも下流側において前記内径側壁から径方向外側に突設されている、
ガスタービンエンジン。
【請求項2】
圧縮機で圧縮した圧縮ガスを燃焼器で燃焼させ、得られた燃焼ガスによりタービンを駆動するガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを前記燃焼器へ供給する圧縮ガス供給部と、
前記圧縮ガス供給部の上流側部分を形成するディフューザ内に配置されて、前記圧縮ガスを径方向に分流させる環状の分割ガイド体と、
前記分割ガイド体を、前記圧縮ガス供給部の内径側壁に支持するガイド支持体と、
を備え、
前記ガイド支持体は、前記ディフューザの下流側において前記内径側壁から径方向外側に突設されており、
前記燃焼器からの燃焼ガスを軸心方向後方の前記タービンに導出する遷移ダクトの径方向内方に、前記ガイド支持体が配置されているガスタービンエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載のガスタービンエンジンにおいて、前記ガイド支持体は、前記圧縮ガス供給部の内径側壁から径方向外方に突出する脚部と、前記分割ガイド体が取付けられる取付部とを有し、前記脚部は、前端から後方に向かって、当該ガスタービンエンジンの周方向に対する接線方向の幅が拡大する形状を有しているガスタービンエンジン。
【請求項4】
圧縮機で圧縮した圧縮ガスを燃焼器で燃焼させ、得られた燃焼ガスによりタービンを駆動するガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを前記燃焼器へ供給する圧縮ガス供給部と、
前記圧縮ガス供給部の上流側部分を形成するディフューザ内に配置されて、前記圧縮ガスを径方向に分流させる環状の分割ガイド体と、
前記分割ガイド体を、前記圧縮ガス供給部の内径側壁に支持するガイド支持体と、
を備え、
前記燃焼器からの燃焼ガスを軸心方向後方の前記タービンに導出する遷移ダクトの径方向内方に、前記ガイド支持体が配置されており、
前記ガイド支持体は、前記圧縮ガス供給部の内径側壁から径方向外方に突出する脚部と、前記分割ガイド体が取付けられる取付部とを有し、
前記脚部は、前端から後方に向かって、当該ガスタービンエンジンの周方向に対する接線方向の幅が拡大する先すぼまりの三角柱形状であるガスタービンエンジン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンエンジンにおいて、前記ディフューザは、前記内径側壁の前記圧縮機から連なる前方部分と、当該前方部分の径方向外方に配置されたディフューザ外径側壁との間に形成されており、前記ガイド支持体が、前記ディフューザ外径側壁から離間して設けられているガスタービンエンジン。
【請求項6】
圧縮機で圧縮した圧縮ガスを燃焼器で燃焼させ、得られた燃焼ガスによりタービンを駆動するガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを前記燃焼器へ供給する圧縮ガス供給部と、
前記圧縮ガス供給部の上流側部分を形成するディフューザ内に配置されて、前記圧縮ガスを径方向に分流させる環状の分割ガイド体と、
前記分割ガイド体を、前記圧縮ガス供給部の内径側壁に支持するガイド支持体と、
を備え、
前記ガイド支持体は、前記ディフューザの下流側において前記内径側壁から径方向外側に突設されており、
前記分割ガイド体が、後方から前記ガイド支持体を貫通して前記分割ガイド体にねじ込まれたねじ体によって前記ガイド支持体に取り付けられているガスタービンエンジン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のガスタービンエンジンにおいて、前記ガイド支持体が前記内径側壁に一体形成されているガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジン、特には圧縮機から燃焼器へ圧縮空気を供給する通路の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおいて、一般的に、圧縮機の出口にディフューザを設けることにより、圧縮空気の静圧を回復させ、圧縮空気が燃焼器へ流入するまでの圧力損失(主として動圧損失)を低減させている。圧縮空気の静圧を回復させるためには、ディフューザの空気流路の軸方向距離を長くとる構造が効果的であるが、その場合ガスタービンエンジン全体の軸方向サイズが増大する。そこで、ディフューザの空気流路を径方向に分割することにより、ガスタービンエンジンの大型化を抑制しながら効果的に圧力損失を低減することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、静圧回復率(ディフューザ入口に対する出口の静圧の上昇率)は、空気流の剥離が生じない範囲で、入口に対する出口の面積比に応じて大きくなる。空気流の剥離は、流路面積の単位長さ当たりの拡大量(流路拡大率)が小さいほど発生しにくい。ディフューザの空気流路を径方向に分割した場合、同一の流路を分割しない単一流路と比較して、分割された各流路の径方向寸法が小さくなるので、流路長さが同一であれば、流路拡大率が小さくなる。したがって、空気流の剥離が発生しにくくなるので、その分ディフューザの空気流路の出口と入口の面積比を増大させて、静圧回復率を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−223223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、ディフューザの空気流路を分割する分割体を、ガスタービンエンジンの他の構造体を支持する支柱であるストラットを介して軸方向後方から支持する場合、分割体およびその支持体の配置がストラットの位置によって制限されることになる。このような構造では、限られた空間内に多くの構成部品を配置する必要があるガスタービンエンジンにおいて、エンジンを構成する他の構成部品との位置関係をも考慮して分割体を配置し、圧力損失を十分に低減することが困難である。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、径方向に分割されたディフューザを有するガスタービンエンジンにおいて、分割体およびその支持体の配置の自由度を確保することにより、ガスタービンエンジンの大型化を抑制しながら、圧縮ガスの圧力損失を十分に低減できるガスタービンエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明に係るガスタービンエンジンは、圧縮機で圧縮した圧縮ガスを燃焼器で燃焼させ、得られた燃焼ガスによりタービンを駆動するガスタービンエンジンであって、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを前記燃焼器へ供給する圧縮ガス供給部と、前記圧縮ガス供給部の上流側部分を形成するディフューザ内に配置されて、前記圧縮ガスを径方向に分流させる環状の分割ガイド体と、前記分割ガイド体を、前記圧縮ガス供給部の内径側壁に支持するガイド支持体とを備えている。
換言すれば、前記ガイド支持体は、前記内径側壁のみに支持されており、他の周辺部材、例えば前記ディフューザを形成するディフューザ外径側壁から離間して設けられている。
【0008】
この構成によれば、圧縮ガスを径方向に分流させる分割ガイド体を、圧縮ガス供給部を構成する内径側壁から支持するので、分割ガイド体およびその支持体の配置の自由度が確保される。したがって、圧縮ガスの圧力損失を効果的に低減するために、ガスタービンエンジンの他の構成部品との位置関係をも考慮して、分割ガイド体およびガイド支持体を配置することが可能になる。これにより、ガスタービンエンジンの大型化を抑制しながら、圧縮ガスの圧力損失を十分に低減することが可能となる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記燃焼器からの燃焼ガスを軸心方向後方の前記タービンに導出する遷移ダクトの径方向内方に、前記ガイド支持体が配置されていてもよい。この構成によれば、圧縮ガスが、遷移ダクトの径方向内方で、径方向に延びるガイド支持体によって、周方向に分流される。したがって、圧縮ガスを、遷移ダクトと内径側壁との間の狭い空間から複数の遷移ダクト間に均一に供給することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記ガイド支持体は、前記圧縮ガス供給部の内径側壁から径方向外方に突出する脚部と、前記分割ガイド体が取付けられる取付部とを有し、前記脚部は、前端から後方に向かって接線方向幅が拡大する形状、例えば、前方に向かって先すぼまりのほぼ三角柱形状を有していてもよい。この構成によれば、ガイド支持体による圧力損失を低減しつつ、圧縮ガスを周方向に分流させることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記分割ガイド体が、後方から前記ガイド支持体を貫通して前記分割ガイド体にねじ込まれたねじ体によって前記ガイド支持体に取り付けられていてもよい。この構成によれば、ねじ体に圧縮ガスが直接衝突しないので、ねじ体による圧力損失の発生を抑制しつつ、分割ガイド体とガイド支持体との組み立て作業が簡素化される。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記ガイド支持体が前記内径側壁に一体形成されていてもよい。この構成によれば、上記のような利点を有する圧縮機用ディフューザの部品点数が減少するとともに、これに伴って組み立て作業が簡素化される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る圧縮機用ディフューザによれば、ガスタービンエンジンの大型化を抑制しながら、圧縮ガスの圧力損失を十分に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧縮機用ディフューザを備えるガスタービンエンジンの概略構成を示す部分破断側面図である。
【
図2】
図1のガスタービンエンジンの圧縮機用ディフューザ周辺部分を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】
図1のガスタービンエンジンの圧縮機用ディフューザ周辺部分を示す正面図である。
【
図4】
図2の圧縮機用ディフューザに使用されるガイド支持体の脚部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスタービンエンジン(以下、単にガスタービンと称する。)GEの一部を破断した側面図である。ガスタービンGEは、外部から導入した空気Aを圧縮機1で圧縮して燃焼器3に導き、燃焼器3内で燃料Fを圧縮空気CAとともに燃焼させ、得られた高温高圧の燃焼ガスGによりタービン5を駆動する。本実施形態では、複数のキャン型の燃焼器3が、ガスタービンGEの周方向に沿って等間隔に配置されている。なお、以下の説明において、ガスタービンGEの軸心C方向における圧縮機1側を「前方」と呼び、タービン5側を「後方」と呼ぶ場合がある。実施形態を構成する要素の名称に付する「前」,「後」も同様の意味である。また、以下の説明において、「軸心方向」,「周方向」および「径方向」とは、特に示した場合を除き、ガスタービンGEの軸心C方向,周方向および径方向を意味する。
【0017】
本実施形態では、圧縮機1として軸流型のものを用いている。この軸流型の圧縮機1は、ガスタービンGEの回転部分を構成するロータ7の外周面に配置された多数の動翼11と、ハウジング13の内周面に多数配置された静翼15との組み合わせにより、外部から吸入した空気Aを圧縮する。圧縮機1で圧縮された圧縮空気CAは、圧縮機1の下流端部に接続する圧縮ガス供給部17を介して燃焼器3に供給される。燃焼器3で発生した高温高圧の燃焼ガスGは、タービン5に送られる。
【0018】
図2に示すように、圧縮ガス供給部17は、その上流部分を形成するディフューザ19と、ディフューザ19の下流に位置してディフューザ19を通過した圧縮空気CAを燃焼器3に導くチャンバ21とを有する。ディフューザ19は、圧縮機1の出口1aから吐出された圧縮空気CAを軸心方向後方へ導く。ディフューザ19は、圧縮機出口1aに連なるディフューザ19の入口から後方に向かうにしたがって、次第に流路面積が拡大する流路を有している。圧縮機出口1aから吐出された圧縮空気CAは、ディフューザ19を通過することにより、静圧が回復される。
【0019】
本実施形態では、圧縮ガス供給部17の内径側壁23の圧縮機1から連なる前方(上流側)部分と、内径側壁23の前方の径方向外方に設けられた筒状のディフューザ外径側壁25との間に、ディフューザ19が形成されている。内径側壁23は、圧縮ガス供給部17の供給通路を、これより径方向内方に配置される、ガスタービンGEの構成部材(例えばロータ7)の収容空間から隔てる円筒状の壁である。本実施形態では、内径側壁23は、圧縮機出口1aに連なる前記前方部分である前方内径壁部23aと、前方内径壁部23aの後端に連なる後方内径壁部29とで形成されている。
【0020】
一方、ディフューザ外径側壁25は、前方から後方へ向かうに従って拡径となる筒状に形成されている。より詳細には、図示の例では、ディフューザ外径側壁25は、その前部25aと後部25bとで、周壁の軸心方向に対する傾斜角度が異なっている。具体的には、ディフューザ外径側壁25は、ディフューザ外径側壁25の前部25aが軸心Cに対してより小さい傾斜角度を有し、後部25bがより大きい傾斜角度を有するように形成されている。ディフューザ外径側壁25は、その後端が、内径側壁23の前方内径壁部23aの後端よりも前方位置となるように配置されている。
【0021】
チャンバ21は、ガスタービンGE全体のケーシングの一部を構成する、圧縮ガス供給部17のディフューザ19の径方向外方に設けられたチャンバケーシング37と、ディフューザ外径側壁25とによって形成されている。
【0022】
圧縮ガス供給部17には、内径側壁23から径方向に突設された複数の補強用のストラット41が設けられている。複数のストラット41は、周方向に互いに離間して配置されている。各ストラット41は、例えば、圧縮ガス供給部17の周辺に配置されるガスタービンGEの構成部品の支持に使用される。本実施形態では、各ストラット41は、圧縮ガス供給部17のディフューザ外径側壁25を支持している。図示の例では、より具体的には、各ストラット41は、内径側壁23の後方内径壁部23bから径方向外方前側へ傾斜するように突設されている。
【0023】
なお、これらディフューザ19およびチャンバ21を形成する部材の詳細な構造、例えば部材間の連結態様等は、図示の例に限定されない。
【0024】
圧縮ガス供給部17のディフューザ19には、環状の分割ガイド体45が設けられている。分割ガイド体45は、圧縮機1から吐出された圧縮空気CAを径方向に分流させる。図示の例では、分割ガイド体45は、径方向に分割された内側分割通路47および外側分割通路49に分流させる。具体的には、分割ガイド体45は、その前部の断面が、前端から後方に向かって径方向幅が拡大する形状を有している。したがって、分割ガイド体45の前端45aに衝突した空気流は、径方向外方と内方とに分流する。図示の例では、分割ガイド体45は、その前部の断面が、前端45aを一つの頂点とする三角形状を有している。
【0025】
分割ガイド体45は、ガイド支持体51によって圧縮ガス供給部17の内径側壁23、つまり内側分割通路47の内径側壁23に支持されている。図示の例では、複数(この例では6つ)のガイド支持体51が、内径側壁23から径方向外方に突設されている。図示の例では、ガイド支持体51は、内径側壁23の後方内径壁部23bの前端部から径方向外方に突設されている。つまり、ガイド支持体51は、ディフューザ19の下流(後方)に設けられている。また、本実施形態では、各ガイド支持体51は内径側壁23に一体形成されている。ガイド支持体51を内径側壁23と別体に形成してもよいが、一体的に形成することにより、圧縮機用圧縮ガス供給部17の部品点数が減少するとともに、組み立て作業が簡素化される。なお、
図2では、説明の便宜のため、ガスタービンGEの軸心線Cの上側にはガイド支持体51を含む断面を示し、下側にはストラット41を含む断面を示している。
【0026】
複数のガイド支持体51は、周方向に互いに等間隔に離間して配置されている。ガイド支持体51の軸心方向および周方向の配置について、以下に詳細に説明する。
【0027】
各ガイド支持体51は、
図3に示すように、燃焼器3で生成された高温の燃焼ガスGを軸心方向後方のタービン5に導出する遷移ダクト53と同一の周方向位置で、その径方向内方に配置されている。燃焼器3の遷移ダクト53は、
図1に示す燃焼室30を形成する燃焼筒31の下流に接続されており、燃焼室30からの燃焼ガスGをタービン5に供給する。この遷移ダクト53は、燃焼ガスGの流路を内部に形成する遷移ダクト本体54と、その外周を隙間を介して覆うダクトカバー55とを有している。
【0028】
図4は、周方向に複数並べて配置されている遷移ダクト53のうちの1つを省略して示す後方斜視図である。同図に示すように、ダクトカバー55には、そのほぼ全面に渡って、圧縮空気CAを燃焼器3内へ導入するための多数の空気導入孔57が形成されている。つまり、ダクトカバー55は、圧縮空気CAを燃焼器3内へ導入する空気導入部材として機能する。なお、ダクトカバー55の空気導入孔57から導入された空気は、遷移ダクト53本体の表面を冷却する冷却媒体としても利用される。このような構成を有する遷移ダクト53の、ガスタービンエンジンの径方向内方となる周方向および軸心方向に重なる位置に、各ガイド支持体51が配置されている。
【0029】
また、本実施形態では、ストラット41は、隣接する2つの燃焼器3の中間位置となる周方向位置に配置されている。したがって、周方向に隣接する2つのストラット41の間の周方向位置に各ガイド支持体51が配置されている。また、
図2に示すように、ストラット41は、ストラット41の少なくとも一部分が、周方向から見て燃焼器3の遷移ダクト53と重なるように配置されている。換言すれば、ストラット41は、遷移ダクト53の周方向側面(周方向を向く面)53aの近傍に位置している。
【0030】
このように構成された圧縮ガス供給部17のディフューザ19は、フロントディフューザ部61およびリアディフューザ部63を有している。さらに、リアディフューザ部63の後方に、ディフューザ後方部65が設けられている。フロントディフューザ部61は、内径側壁23の前方内径壁部23aとディフューザ外径側壁25の前部との間に形成された部分であり、ディフューザ入口から分割ガイド体45の前端までの軸方向範囲の部分であるメイン通路67を有する。リアディフューザ部63は、内径側壁23の前方内径壁部23a、ディフューザ外径側壁25の後部およびこれらの間に位置する分割ガイド体45によって形成された内側分割通路47および外側分割通路49を有する部分であり、分割ガイド体45の軸方向範囲に相当する軸方向範囲の部分である。ディフューザ後方部65は、内径側壁23の後方内径壁部23bの径方向外方に形成された部分であり、内側分割通路47の下流に連なる後方通路69を有する。
【0031】
ガイド支持体51は、圧縮ガス供給部17の内径側壁23から径方向外方に突出する脚部51aと、分割ガイド体45が取付けられる取付部51bとを有している。
図4に示すように、脚部51aは、前端から後方に向かって、周方向に対する接線方向幅が拡大する形状を有している。図示の例では、脚部51aは、接線方向を向く2つの側面51aaを有しており、これら2つの側面51aaが後方に向かって次第に離間する形状を有している。より具体的には、図示の例では、脚部51aは、前方に向かって先すぼまりのほぼ三角柱形状を有している。
【0032】
また、本実施形態では、分割ガイド体45は、後方からガイド支持体51の取付部51bを貫通して分割ガイド体45にねじ込まれたねじ体71によって、ガイド支持体51の取付部51bに取り付けられている。分割ガイド体45のガイド支持体51への取付け態様は、この例に限定されず、例えば、分割ガイド体45をガイド支持体51の頂部(径方向外方を向く部分)に重ねた状態で、径方向外方から分割ガイド体45を貫通してガイド支持体51にねじ込まれたねじ体によって取り付けられてもよい。もっとも、上述のように後方からねじ体71をねじ込む取付構造とすることにより、ねじ体71に圧縮空気CAが直接衝突することが回避されるので、ねじ体71による圧力損失の発生を抑制しつつ、分割ガイド体45とガイド支持体51との組み立て作業が簡素化される。
【0033】
次に、このように構成されたガスタービンGEの圧縮ガス供給部17の作用を説明する。
【0034】
圧縮機出口1aから吐出された圧縮空気CAは、圧縮ガス供給部17のディフューザ19に流入し、ディフューザ19からチャンバ21を通って燃焼器3の空気導入孔57へ導入される。ディフューザ19の、メイン通路67から内側分割通路47および外側分割通路49までの部分は、圧縮空気流の進行方向である軸心方向後方へ向かって、流路面積が次第に拡大するように形成されているので、圧縮空気CAの静圧が回復される。特に、ディフューザ19のリアディフューザ部63では、分割ガイド体45によって圧縮空気CAの流路が径方向に分割されているので、同一の流路長さを有する単一流路と比較して、大きな静圧回復率を得ることができる。さらに、圧縮ガス供給部17には、後方内径壁部23bに形成された径方向内方に凹む凹部を有するディフューザ後方部65が設けられているので、内側分割通路47を通る圧縮空気CAは、前記凹部の比較的広い空間に流入して、さらに静圧が回復される。このように、分割ガイド体45を支持するガイド支持体51を圧縮ガス供給部17の内径側壁23に設けたことにより、分割ガイド体45の後方の空間をも有効に利用して、大きな静圧回復率を得ることが可能になる。
【0035】
また、ガイド支持体51を圧縮ガス供給部17の内径側壁23から突設しているので、ガイド支持体51は、
図5に示すように、内側分割通路47を通過する圧縮空気CAを周方向に分流させる周方向分流体としても機能する。したがって、圧縮機1からの圧縮空気CAは、一部が
図2の外側分割通路49から
図3の遷移ダクト53の内径側側面53bに到達するとともに、他の一部が内側分割通路47から周方向に分流して遷移ダクト53の周方向両側面53aから外径側側面53cに均一に到達する。このようにして、圧縮空気CAを、遷移ダクト53と内径側壁23との間の狭い空間から複数の遷移ダクト53間に均一に供給することができる。圧縮空気CAは、遷移ダクト53の表面に設けられた多数の空気導入孔57から燃焼器3内へ流入するので、圧縮ガスCAの流れが遷移ダクト53の全面に均一に供給されて燃焼器3内へ導入されることにより、極めて効果的に圧力損失を低減することが可能になる。特に、本実施形態では、
図5に示すように、ガイド支持体51の脚部51aが、前端から後方に向かって接線方向幅が拡大する形状である前方に向かって先すぼまりのほぼ三角柱形状を有しているので、ガイド支持体51による圧力損失を低減しつつ、圧縮空気CAを周方向に分流させることができる。
【0036】
しかも、
図2から明らかなように、ガイド支持体51は、内径側壁23のみによって支持されており、ディフューザ外径側壁25やストラット41等の周辺の部材とは別体に形成され、かつこれらの部材から離間して設けられている。これにより、周方向分流体としてのガイド支持体51の配置の自由度が確保される。なお、図示の例では、ガイド支持体51をディフューザ19の後方に配置したが、ガイド支持体51をディフューザ19内に配置してもよい。
【0037】
さらに、
図3に示すように、本実施形態では、周方向に隣接する2つのストラット41の間の周方向位置に燃焼器3の遷移ダクト53が配置されており、この遷移ダクト53の径方向内方に、ガイド支持体51が配置されているので、ガイド支持体51によって周方向に分流された圧縮空気CAが、遷移ダクト53の周方向両側面53aの近傍に位置するストラット41によって、遷移ダクト53の方向へガイドされる。これにより、一層効果的に圧力損失を低減することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係るガスタービンGEでは、圧縮ガスを径方向に分流させる分割ガイド体45を、圧縮ガス供給部17を構成する内径側壁23から支持するので、分割ガイド体45の周方向および軸心方向の配置の制限が少なくなり、分割ガイド体45およびガイド支持体51の配置の自由度が確保される。したがって、圧縮空気CAの圧力損失を効果的に低減するために、ガスタービンエンジンの他の構成部品(上記の例では、燃焼器3の遷移ダクト53やストラット41等)との位置関係をも考慮して、分割ガイド体45およびガイド支持体51を配置することが可能になる。これにより、ガスタービンエンジンの大型化を抑制しながら、圧縮空気の圧力損失を十分に低減することが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態では、1つの分割ガイド体45によって圧縮空気CAを径方向内外の2つの分割通路(1つの内側分割通路47と1つの外側分割通路49)に分流させる構成例を示したが、複数の分割ガイド体45を径方向に並べて配置し、3つ以上の分割通路(1つの内側分割通路47と複数の外側分割通路49)に分流させる構成としてもよい。また、本実施形態では、ガスタービンGEとして、空気を作動ガスとするガスタービンエンジンを例として説明したが、メタンガスのような空気以外の作動ガスを使用するガスタービンエンジンであってもよい。
【0040】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 圧縮機
3 燃焼器
5 タービン
17 圧縮ガス供給部
19 ディフューザ
23 圧縮ガス供給部の内径側壁
25 ディフューザ外径側壁
41 ストラット
45 分割ガイド体
47 内側分割通路
49 外側分割通路
51 ガイド支持体
51a ガイド支持体の脚部
51b ガイド支持体の取付部
53 遷移ダクト
CA 圧縮空気(圧縮ガス)
GE ガスタービンエンジン