(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該構造物は、前記床下換気口を開閉させることにより無駄な冷気流出と不要な熱気流入を防止し、居室内に良好な冷気溜りを形成するとともに、前記冷気溜り上層の暖気のみを排出する通気住宅であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の通気住宅102においては、湿度の制御がなされていないため、外気が低温であっても床下換気口113が開放され得る。このため、建物内に冷気溜りを形成するのには床下などの住宅内部の環境が悪化するなどのリスクがあった。
【0007】
たとえば、夏には外気が20℃以下の低温域になることがあるが、外気が20℃以下のときに床下換気口113を開放すると床下内の空気温度が低温化する。この場合、床下内の相対湿度が上昇して飽和水蒸気量に近くなる環境が生じ易くなり、床下の高湿化につながる。
【0008】
さらに、床下のコンクリート基礎やその他の建材の表面温度が露点温度を下回ると、建材の表面が湿る可能性がある。これを放置すれば、建材の表面が滴下し、結露のおそれが生じることになる。したがって、夏には外気が低温域である場合に床下換気口113を開放することは好ましくない。
【0009】
また、外気の湿度が最も高くなる梅雨時には、床下内の空気温度と床下の建材の表面温度がほぼ同程度であるため、低温域の外気を床下に導入すれば、床下の高湿化や建材の表面が結露するおそれがより高くなる。このため、梅雨時には、床下換気口113を開放するべきでない。さらに、春に床下換気口113を開放するのは床下を温める場合であり、冬には極力床下から熱が逃げないようにしたい。
よって、床下換気口113を開閉するタイミングは、湿度の特徴が異なる期間(以下、季節期間という。)ごとの湿度も考慮して制御するべきである。
【0010】
ここで、この問題を改善する手段としては、湿度計で外気の湿度を計測し、計測した湿度を用いて床下換気口113を制御することが考えられる。しかしながら、湿度計は温度計よりも耐久性が劣ることや、汚れると精度が低下するなどの問題がある。また、湿度計の場合、温度計のように簡単な掃除程度では足りず、こまめな点検・清掃が必要となるため、交換頻度を考慮すると費用負担も高額になってしまうため、精度よく使用し続けるのが困難である。
【0011】
さらに、湿度計で直接外気の湿度を計測した場合には、一時的な湿度変化、立地条件や設置方法による条件変化、夜間に相対湿度が上昇する昼夜の湿度変化などに左右され、適切に床下換気口113を制御することができないという問題が生じる。この問題は、床下換気口113以外の外気取り入れ口の制御にも当てはまる。
【0012】
このため、上述の通気住宅においては、湿度計で外気の湿度を計測して外気取り入れ口の開閉タイミングに反映させたとしても、湿度に応じて居住空間102内の環境を改善することができないという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、湿度計を用いずに、構造体内部の環境が悪化しないように、外気の湿度に応じて安定して継続的に構造物に外気を取り入れる制御装置および該制御装置を備えた構造物の通気方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の制御装置は、
構造物の内部空間に外気を通気させる開口部の開閉を制御する制御装置であって、
本日の日付を判定する日付判定部と、
前記構造物の位置する地域を特定する地域特定部と、
過去の気象データを基に算出された地域ごとの季節期間がプリセットされた季節期間
判定用データを記憶する情報記憶部と、
前記本日の日付、および
前記季節期間判定用データを用いて、
前記地域特定部によって特定された地域における現在の季節期間を判定する季節期間判定部と、
各地域の季節期間ごとの温度に関する情報である、前記構造物の内部温度、前記構造物内の建材表面温度、外気露点温度を含む過去の温度情報を記憶する温度記憶部と、
外気絶対湿度を記憶する湿度記憶部と、
外気温を計測する温度センサー
と、
前記温度センサーによって計測された
前記外気温
の他、前記地域特定部によって特定された地域の現在の季節期間における前記温度情報および
前記外気絶対湿度から導かれる外気露点温度の中の少なくとも一方を用いて、前記
開口部の開閉を制御する制御部と
を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の制御装置は、
前記制御部は、前記内部温度、前記建材表面温度、および前記温度記憶部に記憶されている外気露点温度もしくは前記外気絶対湿度から導かれる外気露点温度を用いて基準温度を決定し、
前記外気温が前記基準温度以上である場合には前記開口部を開放し、前記外気温が前記基準温度未満である場合には前記開口部を閉鎖することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の制御装置は、
前記制御部が、前記現在の季節期間が梅雨であると判定した場合に、前記開口部を閉鎖することを特徴とする。
また、本発明の制御装置は、
前記制御部が、
前記現在の季節期間が夏であると判定した場合には、前記基準温度を前記温度記憶部に記憶されている外気露点温度もしくは前記外気絶対湿度から導かれる外気露点温度以上、且つ、前記内部温度または前記建材表面温度のいずれか低い温度以上に設定し、
前記現在の季節期間が秋であると判定した場合には、前記基準温度を前記温度記憶部に記憶されている外気露点温度もしくは前記外気絶対湿度から導かれる外気露点温度以上に設定することを特徴とする。
また、本発明の制御装置は、
前記制御部が、
前記現在の季節期間が夏であると判定した場合に、
前記外気温が前記内部温度以下であり、さらに前記建材表面温度が前記温度記憶部に記憶されている外気露点温度以下である場合には、前記開口部を閉鎖することを特徴とする。
また、本発明の制御装置は、
前記制御部が、
前記外気温が前記内部温度以下でない場合、および前記外気温が前記内部温度以下であっても前記建材表面温度が前記温度記憶部に記憶されている外気露点温度以下でない場合には、前記開口部を開放することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の制御装置は、
該構造物が住宅であり、前記開口部には、少なくとも床下換気口が含まれ、かつ前記制御部には、前記床下換気口の開閉を制御する床下開閉部が含まれ、
前記構造物の内部温度は、床下温度であり、前記構造物内の建材表面温度は、床下建材表面温度であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の制御装置は、
現在の環境情報を取得する環境情報取得部を備え、
前記床下開閉部は、前記環境情報取得部により所定の環境情報が取得された場合には、前記床下換気口を閉鎖することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の制御装置は、
前記所定の環境情報は、台風、雷雨、雹、集中豪雨、濃霧、黄砂、近隣からの煙、悪臭、浸水のおそれに関する情報であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の制御装置は、
前記季節期間判定部により判定された季節期間を2週間の範囲内で修正する修正部を備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の制御装置は、
該構造物は、前記床下換気口を開閉させることにより無駄な冷気流出と不要な熱気流入を防止し、居室内に良好な冷気溜りを形成するとともに、前記冷気溜り上層の暖気のみを排出する通気住宅であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の制御装置は、
前記床下換気口は、断熱された床下空間の換気を行うことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の制御装置は、
前記開口部は、居住空間の上方に形成された中空層に、該中空層から屋外への排気を行う電動ファンを併設した第1の外皮開口部と、
前記電動ファンを併設しない第2の外皮開口部と備えることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る構造物の通気方法は、
内部空間に外気を通気させる開口部を備えた構造物の通気方法であって、
本日の日付、および情報記憶部に記憶されている
過去の気象データを基に算出された地域ごとの季節期間がプリセットされた季節期間
判定用データを用いて、
前記構造物の位置する地域における現在の季節期間を判定する季節期間判定
ステップ、
温度センサーによって計測された外気温
の他、前記構造物の位置する地域における現在の季節期間の温度に関する情報である、前記構造物の内部温度、前記構造物内の建材表面温度、および外気露点温度を含む過去の温度情報、および
前記外気絶対湿度から導かれる外気露点温度の中の少なくとも一方に基づいて前記開口部
の開閉を行うことにより通気を制御する通気制御
ステップ
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る発明によれば、湿度計を用いずに、構造体内部の環境が悪化しないように、外気の湿度に応じて安定して継続的に構造物に外気を取り入れることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置について、制御装置が建物内外の温度差による自然通気により建物内に冷気溜りを形成する通気住宅に適用される場合を例に説明する。
図1は、実施の形態に係る通気住宅1を模式的に示した断面図である。ここで、
図1は、本発明の効力もっとも有効に発揮できる中間期から夏季の状態を示している。
【0031】
図1に示すように、通気住宅1は、コンクリート基礎20、壁を構成する外装材23、屋根を構成する外装材25を外部に備え、内装材26によって囲まれた居住空間2と、居住空間2以外の空間である中空層3を内部に備えている。
【0032】
また、通気住宅1は、コンクリート基礎20の外側に配置された断熱材21、壁を構成する外装材23の内側に配置された断熱材22、および屋根を構成する外装材25の内側に配置された断熱材24などの複数種類の断熱材を備えている。なお、断熱材としては、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ウレタンなどの発泡樹脂系断熱材およびグラスウール、ロックウールなど繊維系の部材が用いられる。
【0033】
ここで、断熱材22、24と外装材23、25との間には外側通気層27が設けられている。外側通気層27は、下端に設けられた開口部27a、および上端(棟部)に設けられた開口部27bを介して常時外気を流通させることが可能である。なお、外側通気層27の開口部は、さらに軒部分やその他の箇所に設けられていてもよい。
【0034】
また、コンクリート基礎20の外側上方には、床下換気口13が形成され、小屋裏には、排気ファンを併設した外皮開口部16aと、併設していない外皮開口部16bが配置されており、通気住宅1は、床下換気口13、外皮開口部16a、および外皮開口部16bを介して中空層3を外気と連通させている。ここで、外皮開口部16a、16bは、床下換気口13の開放時に温度差換気が発生しやすいように、高さ方向になるべく距離をおいて形成していることが好ましく、
図1では最上階の居住空間2の天井より上方の中空層3に形成されている。
【0035】
また、通気住宅1においては、床下換気口13、外皮開口部16a、16bおよび図示しない窓などを閉鎖した状態で隙間相当面積(C値)が5cm
2/m
2以下となるように、外壁、屋根、開口部周りの隙間を気密材で処理している。これにより、通気住宅1の建物としての気密性能を向上させることができる。なお、気密材としては、例えばポリエチレンシートや粘着テープ、合板が用いられる。また、隙間相当面積(C値)は、2cm
2/m
2以下であることが望ましく、1cm
2/m
2以下であればさらに望ましい。
【0036】
この場合、通気住宅1の気密等級はA−2等級(JIS A4706−1996)と同等以上が好ましく、A−4等級と同等以上の性能を満たすことができればさらに好ましい。また、床下換気口13は、内外の温度条件に応じてきめ細かく開閉させて冷気溜まりを効果的に形成することができるように、自動開閉に適した態様とするのが好ましい。
【0037】
また、通気住宅1の工法については、断熱材21、22、24が柱、梁、耐力合板などの構造体の外側に位置するようにした外張り工法が、中空層3を容易に確保可能であるという点で良好であるが、断熱材の厚みに中空層3を確保できる程度の余裕があれば、断熱材が構造体の内部に位置する充填断熱工法としてもよい。また、コンクリート基礎20部分の断熱材21は、省略することもできるが、
図1のように外気側または図示しない内側に設ければ、外部からの熱の影響をより少なくできる。
【0038】
図2は、実施の形態に係る床下換気口13を示す図である。床下換気口13は、
図2(A)、(B)に示すように、開閉板11、枠部分15、支持部材17、および支持部材17を介して開閉板11の回動を制御する床下開閉部33を備えている。ここで、
図2(A)に示すように、床下開閉部33が開閉板11を回動させ、開閉板11によって枠部分15の開口を塞いだ場合に床下換気口13が閉鎖され、
図2(B)に示すように、開閉板11によって枠部分15の開口を開いた場合に床下換気口13が開放される。
【0039】
なお、床下開閉部33としては、電動モーターの他、電磁弁またはバネなどの駆動装置を含む構成を採用することができる。
図3は、通気住宅1の通気機能を制御する図示しない制御装置の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置52は、通気住宅1の環境を統括的に制御する制御部30を備えている。制御部30には、通気住宅1が建築されている地域を設定する地域設定部56、床下換気口13の近傍の外気温を計測する温度センサー32、カレンダー情報や後述する季節期間判定用データを記憶する情報記憶部58、床下換気口13の開閉を制御するのに必要な温度情報や基準温度(後述)等を記憶する温度記憶部59、後述する外気絶対湿度を記憶する湿度記憶部60、制御部30が設定した季節期間を変更するスキップスイッチ62、床下開閉部33、外皮開口部16aの排気ファンの運転を制御するファン制御部64、外皮開口部16bの開閉を制御する外皮開閉部66、居住空間2内の温度を居住者の好む任意の温度に設定する温度設定部68、タイマー70、ネットワークを介してwebサーバとの通信を行う通信部72が接続されている。
ここで、地域設定部56は、図示しない地域設定スイッチを居住者等が操作することによって通気住宅1が建築されている地域を設定する。
【0040】
また、情報記憶部58に記憶されている季節期間判定用データには、過去の気象データを基に算出された地域ごとの季節期間がプリセットされている。この季節期間判定用データにおいては、たとえば、地域が関東であれば、冬が11月15日〜4月10日の間、春が4月11日〜5月20日の間、梅雨が5月21日〜8月6日の間、夏が8月7日〜10月20日の間、秋が10月21日〜11月14日の間のように設定されている。なお、この関東の季節期間はあくまでも一例であり、他の期間を季節期間として適用しても構わない。
【0041】
図4は、温度記憶部59に記憶されている温度情報のイメージを示すグラフである。
図4に示すように、温度記憶部59には、過去の温度情報として、床下温度86、床下コンクリート表面温度88、外気温度90、外気露点温度92が記憶されている。これらの温度情報は地域によって値が異なるため、それぞれ地域ごとに記憶されている。なお、
図4に示す床下温度86、床下コンクリート表面温度88、外気温度90、外気露点温度92は、所定の期間(たとえば月や週など)の平均の年間推移を示すデータである。また、温度記憶部59には、床下換気口13を開閉する際の基準となる基準温度84が記憶されている。基準温度84については、別途後述する。
【0042】
ここで、床下温度86は、温度計を用いて実測された床下の温度のデータであり、主に温度センサー32によって計測された現在の外気温と比較して用いられる。また、外気温度90は、床下換気口13の近傍で計測された外気の温度である。また、床下コンクリート表面温度88は、床下温度86と地温を平均して得られた計算値であり、床下換気口13を閉鎖して床下への外気導入を防止するか否かを決定する際の指標として用いられる。また、外気露点温度92は、外気が飽和水蒸気量になる温度であり、床下コンクリート表面温度88と比較して用いられる。なお、床下温度86としては、実測値に代えて、たとえば理論的に求められる計算値等を用いてもよい。また、床下コンクリート表面温度88としては、計算値に限らず、たとえば実測値を使用してもよい。
【0043】
湿度記憶部60に記憶されている外気絶対湿度は、床下換気口13を開閉する際の基準となるパラメータであり、基準温度84を決定する際に用いられる。外気絶対湿度としては、月、周、旬等の平均絶対湿度から短い期間(たとえば、時間、分、秒等)を抽出したものが用いられる。ここ
で、
図5に示すグラフには、鹿児島県において計測されたある年の年間の大気中の絶対湿度の推移が示されている。
図5によれば、鹿児島県の場合、1月の絶対湿度が最も低く4g/kgDAであり、8月の絶対湿度が最も高く18g/kgDAである。このように、大気中の水蒸気量は季節によって変化するが、この変化はどの地域でも毎年ほぼ一定している。このため、地域と季節が認識できれば、その地域の年間を通じた大気中の絶対湿度
から外気露点温度を推測することが可能となる。よって、湿度計を用いることに代えて、季節期間判定用データを用いて通気住宅1の位置する地域の季節期間を判定し、判定された季節期間の温度情報を用いて床下換気口13
を開閉することにより、季節期間ごとの外気の湿度に応じた床下換気口13の制御が可能となる。
【0044】
次に、
図6のフローチャートを参照しながら、実施の形態に係る通気住宅1における床下換気口13の基本的な開閉処理について通気住宅1が関東に位置する場合を例に説明する。まず制御部30は、情報記憶部58に記憶されているカレンダーに基づいて本日の日付を認定する(ステップS1)。次に、制御部30は、季節期間判定用データを参照し、関東における現在の季節期間を判定する(ステップS2)。たとえば、本日の日付が6月1日あれば関東における現在の季節期間が梅雨であると判定し、本日の日付が8月10日であれば、関東における現在の季節期間が夏であると判定する。
【0045】
ここで、関東における現在の季節期間が梅雨である場合(ステップS3:Yes)、制御部30は、床下開閉部33を介して床下換気口13を閉鎖し(ステップS7)、床下に外気を取り込まないようにする。梅雨は、床下温度と外気露点温度が最も近接する季節期間であることから、床下換気口13を閉鎖することにより、床下に結露を生じにくくすることができる。
【0046】
一方、判定した季節期間が梅雨でない場合(ステップS3:No)、たとえば関東における現在の季節期間が夏の場合、制御部30は、温度センサー32によって計測されている床下換気口13の近傍の現在の外気温を認識するとともに、温度記憶部59から関東における夏の床下温度86を読みだす。次に、制御部30は、現在の外気温が床下温度86以下であるか否かを判定する(ステップS4)。現在の外気温が床下温度86以下でない場合(ステップS4:No)、制御部30は、床下開閉部33を介して床下換気口13を開放し(ステップS5)、床下に外気を導入して熱籠りを緩和する。一方、現在の外気温が床下温度86以下である場合(ステップS4:Yes)、制御部30は、温度記憶部59から関東における夏の床下コンクリート表面温度88と外気露点温度92を読みだす。次に、制御部30は、床下コンクリート表面温度88が、外気露点温度92以下であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0047】
床下コンクリート表面温度88が、外気露点温度92以下でない場合(ステップS6:No)、制御部30は、床下開閉部33を介して床下換気口13を開放し(ステップS5)、床下に外気を導入する。一方、床下コンクリート表面温度88が、外気露点温度92以下である場合(ステップS6:Yes)、制御部30は、床下開閉部33を介して床下換気口13を閉鎖し(ステップS7)、床下に外気を取り込まないようにする。なお、
図4に示すグラフによれば、関東における夏の床下コンクリート表面温度88は、外気露点温度92よりも高いため、床下換気口13は開放される。
【0048】
これにより、外気によって床下が冷えすぎることがなくなり、床下の湿度を継続的に飽和水蒸気量に近づけないようにすることができる。したがって、基礎コンクリートを湿らせる恐れのある危険な外気を床下に充満させないようにすることができ、床下に結露が生じ難くすることができる。
【0049】
次に、温度記憶部59に記憶されている基準温度84について説明する。基準温度84は、床下温度86、床下コンクリート表面温度88、外気露点温度92、および外気絶対湿度の中の少なくとも一つを用いて決定される温度であり、地域ごとの季節期間に応じて床下換気口13を開閉する場合の指標として用いられる。床下開閉部33は、温度センサー32によって計測された現在の外気温が基準温度84以上である場合には、床下換気口13を開放し、現在の外気温が基準温度84未満である場合には、床下換気口13を閉鎖する。
【0050】
たとえば、温度記憶部59に記憶されている床下温度86、外気露点温度92、床下コンクリート表面温度88が、
図7に示すような温度であったとする。すなわち、床下温度86については、6月が20℃、7月が23℃、8月が26℃、9月が23℃であり、外気露点温度92については、6月が15℃、7月が21℃、8月が22℃、9月が18℃であり、床下コンクリート表面温度88については、6月が16℃、7月が21℃、8月が23〜24℃、9月が23℃であったとする。なお、8月の外気露点温度92の22℃は年間における最高値である。また、床下コンクリート表面温度88については、6月〜8月にかけて床下温度86よりも低くなるという特徴がある。また、床下温度86は常に外気露点温度92よりも高い。
【0051】
この場合、6月から9月の間においては、常に床下温度86が外気露点温度92よりも高いことから、この点に限っては床下換気口13を開放して外気を導入できそうにも思えるが、現在の外気温が床下温度86を下回る場合には、床下を冷やさないように、床下換気口13を閉鎖することを考慮する必要がある。また、現在の外気温が外気露点温度92を下回る場合には、継続的に床下の飽和水蒸気量に近づく恐れがあるため、床下換気口13を閉鎖して外気導入による結露のおそれを防止することを考慮する必要がある。また、現在の外気温が床下コンクリート表面温度88を下回る場合には、床下の基礎コンクリートの表面で滴下が生じて結露につながるおそれがあるため、床下換気口13を閉鎖することを考慮する必要がある。
【0052】
なお、基準温度84を決定する際には、床下温度を下げないこと、基礎コンクリートを湿らせないこと、危険な外気を充満させないこと、7月の基準温度84については高湿化する8月に備えること、などに留意する。また、基準温度84を決定する際には、必要に応じて湿度記憶部60に記憶されている外気絶対湿度を使用する。
【0053】
次に、基準温度84を決定する際の具体例について各月ごとに説明する。6月の場合、
図7に示すように、外気露点温度92と床下コンクリート表面温度88が近似しており、床下に外気を導入すること自体が好ましくない。このため、常に床下換気口13が閉鎖されるように基準温度84を設定する。
【0054】
7月の場合、
図7に示すように、床下温度86が外気露点温度92よりも高いものの、
図8に示すように、外気露点温度92と床下コンクリート表面温度88が近いため、基礎コンクリートを冷やすことは好ましくない。また、床下に外気を充満させることも危険なため、21℃を基準温度84とすることが考えられる。ただし、7月の場合、すぐに8月になって外気露点温度92が上昇すると、7月の床下温度86や床下コンクリート表面温度88との差が小さくなる恐れがあるので、基準温度84は安全をみて8月同等の24℃に設定する。
【0055】
この場合、
図8に示すように、日中に現在の外気温93が上昇して24℃を超えると制御部30は、床下開閉部33を介して床下換気口13を開放する。午後になり現在の外気温93が下降して24℃以下になると制御部30は、再び床下換気口13を閉鎖する。
【0056】
8月の場合、
図7に示すように、7月と同様に床下温度86は外気露点温度92よりも高い。しかし、
図9に示すように、8月になると外気露点温度92が上昇するため、基礎コンクリートを冷やさないように、基準温度84を24℃に設定する。床下換気口13の開閉処理については、7月の場合と同様である。
【0057】
9月の場合、
図7に示すように、7、8月と同様に床下温度86は外気露点温度92よりも高い。しかし、
図10に示すように、9月になると、冬型の気圧配置に近づいて外気の乾燥が進むため床下が高湿化する恐れは小さくなるものの、低温の外気が長時間床下に充満することは好ましくない。よって、基準温度84を18℃に設定する。床下換気口13の開閉処理については、7、8月の場合と同様である。
【0058】
この実施の形態の通気住宅1に配置された制御装置52によれば、湿度計を用いることに代えて、季節期間判定用データを用いて通気住宅1の位置する地域の季節期間を判定し、さらに季節期間の温度情報と温度センサー32によって計測された外気温とを用いて床下換気口13の開閉を制御することにより、各地域の季節期間ごとの外気の湿度に対応させて安定して継続的に外気を取り入れ、湿度によって構造体内部の環境が悪化しないようにすることができる。
たとえば、春には床を温め、梅雨には床下を保温し、夏には床下を冷やさず、秋には乾燥空気を長時間導入して排湿または低湿化を促進することができる。
【0059】
また、不安定で長期耐久性の劣る湿度センサーに代えて制御装置52を用いることにより、外気の湿度に応じた床下換気口13の開閉制御を低コストで実現することができる。
【0060】
なお、上述の実施の形態において、悪天候や大気の条件が悪い場合などに床下換気口13を閉鎖し、外気を取り込まないようにしてもよい。たとえば、制御部30は、通信部72を介して、ネットワーク上に台風、雷雨、雹、集中豪雨、濃霧、黄砂、近隣からの煙、悪臭、浸水のおそれに関する情報などが掲載されているか否かをリアルタイムでチェックする。そして、これらの情報が取得された場合、制御部30は、床下換気口13を閉鎖する。なお、ネットワークには、たとえば、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなどが含まれる。これにより、的確に構造体内部の環境悪化を防止することができる。
【0061】
同様に、夏に気温が急激に低下した場合にも、床下換気口13を閉鎖してもよい。ここで、気温の急激な低下については、たとえば、所定の時間内に気温が一定の温度以上低下したか否かによって判定する。
【0062】
なお、上述の実施の形態において、季節期間判定用データに、スキップスイッチ62により変更できる2週間程度の季節期間が含まれていてもよい。本発明のように、季節期間の判定に過去の気象情報を使用する場合、年によって異なる季節変化の違いに配慮して通気制御することには困難を伴う。特に、最も湿度に留意する必要がある梅雨や夏においては、外気の湿度の影響を安全側に判断できるようにする必要がある。かかる問題は、季節期間判定用データにおいて、季節期間を変更することが可能な期間を2週間程度設けることで解決することが可能である。
【0063】
ここで、具体的なケースとして、梅雨に床下換気口13の開閉を制御する場合を例に説明する。例えば、季節期間判定用のデータの梅雨入りの時期をその地域の過去の最も早い日付に設定し、梅雨明けの時期をその地域の過去の最も遅い日付に設定したとする。ここで、地域が関東に設定されていれば、梅雨の季節期間は最長5月21日〜8月6日となる。
【0064】
この場合、梅雨の季節期間が非常に長く設定されるため、梅雨の最中に湿度に留意した通気制御を行うことの確実性は向上する。一方で、本来、春や夏の湿度に応じて外気を取り入れるべき時季には床下換気口13を閉鎖することとなり、かえって居住空間2の快適性を損ねてしまう。
【0065】
そこで、居住者によるスキップスイッチ62の操作や外部情報を用いて、季節期間判定用データで設定されている季節時期のはじめや終わりを2週間程度ずらすことができるようにすることで、梅雨入りや梅雨明けなどの季節期間の変わり目における通気制御を居住者の季節感に合わせて修正することが可能となる。これにより、季節期間ごとの湿度や外部温度に応じて適切に外気を取り入れることができ、快適な居住空間2を提供することができる。
【0066】
なお、スキップスイッチ62により季節期間を2週間程度変更する場合の具体例について、以下に追記する。たとえば、地域が関東に設定されている場合、冬の終盤である3月28日〜4月10日の間は、居住者はスキップスイッチ62を操作して季節期間を春に先送りする。また、梅雨のはじめの5月21日〜6月3日の間には、季節期間を春に戻し、梅雨の終盤の7月24日〜8月6日の間には、季節期間を夏に先送りし、夏の終盤の10月7日〜10月20日の間には、季節期間を秋に先送りし、秋の終盤の11月1日〜11月14日の間には、季節期間を冬に先送りする。
【0067】
また、上述の実施の形態において、温度設定部68により温度を設定してもよい。ここでたとえば、居住者が温度設定部68により冷房温度として28℃を設定した場合、制御部30は、外気温が28℃以上であれば床下開閉部33を介して床下換気口13を閉鎖し、外皮開口部16a、16bよりも下方の中空層3を非通気にして冷気溜りを形成する。一方、外気温が28℃未満であれば床下換気口13を開放し、床下換気口13よりも上方の中空層3に外気を通気させて冷却する。さらに、外気温が夏の基準温度84を下回った場合には、制御部30は、再び床下換気口13を閉鎖して床下に高湿化した低温の外気を取り込まないようにし、床下の結露を防止する。
【0068】
また、上述の実施の形態において、タイマー70を用いて床下換気口13の開閉時間を行うようにしてもよい。たとえば、夏季において、タイマー70を7:00〜18:00を昼間と設定し、それ以外の時刻を夜間と設定する。この場合、制御部30は、昼間において床下換気口13を閉鎖し、外皮開口部16a、16bよりも下方の中空層3を非通気にして冷気溜りを形成する。一方、夜間になると床下換気口13を開放し、床下換気口13よりも上方の中空層3に外気を通気させて冷却する。なお、この場合においても、外気温が夏の基準温度84を下回った場合には、床下換気口13を閉鎖して床下に高湿化した低温の外気を取り込まないようにする。
【0069】
また、上述の実施の形態において、将来的には、実測された外気温、湿度、床下温度を総合的に判断することにより、さらに最適な基準温度84を導くことが可能となることが想定される。
【0070】
また、上述の実施の形態において、床下コンクリート表面温度88に代えて、コンクリート以外の他の床下の建材の表面温度が温度情報として温度記憶部59に記憶されていてもよい。
【0071】
また、上述の実施の形態においては、床下換気口13の開閉を制御する場合を例に説明しているが、ファン制御部64による排気ファンの運転や、外皮開閉部66による外皮開口部16bの開閉を、床下換気口13と同様に、その地域の季節期間の温度情報、外気絶対湿度、外気温を用いて行うようにしてもよい。なお、この場合、温度センサー32は、外皮開口部16a、16b近傍の温度を計測できるようにしてもよい。
【0072】
また、上述の実施の形態においては、湿度計を用いることに代えて制御装置52を通気住宅1に設置した場合を例に説明しているが、必ずしも通気住宅でなく、たとえば、通常の住宅、船や飛行機などの構造体にも制御装置52を設置してもよい。この場合においても、季節期間ごとの外気の湿度に応じた通気を行うことにより、適切に室内や構造体内部の環境改善を図ることができる。なお、構造物に床下が存在しない場合、制御部30は、温度情報として、床下温度86、床下コンクリート表面温度88に代えて、構造物の内部温度、構造物内の建材表面温度を用いて開口部の開閉を制御してもよい。
【0073】
また、上述の実施の形態においては、カレンダー情報や季節期間判定用データが予め情報記憶部58に記憶されている場合を例に説明しているが、通信部72を介してカレンダー情報や季節期間判定用データをその都度取得するようにしてもよい。また、床下温度86、床下コンクリート表面温度88、外気露点温度92などの温度情報や外気絶対湿度についても通信部72を介して取得するようにしてもよい。
【0074】
また、上述の実施の形態において、床下換気口13は、必ずしも
図2に示す態様に限定されない。たとえば、
図11(A)、(B)に示すように、筒状部材40を備え、筒状部材40の内部に、気密材42、開閉弁41、および開閉弁41の軸部分43が配置されている。ここで、気密材42は、筒状部材40の内周に沿って環状に配置されている。また、開閉弁41は、軸部分43によって回動可能に支持されており、
図11(B)に示す気密材42と接触することにより床下換気口13を閉鎖し、気密材42から離れることで床下換気口13を開放する。
【0075】
また、床下換気口13は、開閉弁41の回動を制御する床下開閉部33を備えている。床下開閉部33としては、電動モーターの他、電磁弁またはバネなどの駆動装置を含む構成が採用することができる。
【0076】
また、
図12(A)、(B)に示すように、開閉弁41が軸部分43とともに回転して閉鎖可能な構成であってもよい。この場合、床下開閉部33は、電動モーターなどの駆動装置を一体に組み込まず、床下換気口13から離れた電動モーターを用いて、ワイヤーなどで軸部分43を回転させるなどして、複数の床下換気口13の自動開閉を行うことも可能である。
【0077】
また、床下開閉部33は、自動開閉の制御が可能なものであれば必ずしも上述の実施の形態に示したものに限定されず、たとえば、電動によらず、空気圧を利用して開閉を制御するものでもよい。
【0078】
また、上述の実施の形態において、床下換気口13の外側または内側に、断熱気密性を有する手動開閉扉を設けてもよい。そして、冬季は手動開閉扉を閉め、その他の季節期間は、手動開閉扉を開放し、床下換気口13を自動開閉させる。この場合、床下換気口13の断熱気密性能を必要としない。
【0079】
また、上述の実施の形態における外皮開口部16bは、通常の場合、中間期から夏季には開放とし、冬季は閉鎖されて用いられるが、通気住宅1が気密性能を有するのであれば手動で開閉できるようにしてもよい。開閉方法は、床下換気口13の制御部30を用いてもよく、遠隔操作による開閉機能のみによって操作が可能なものでもよい。
【0080】
また、上述の実施の形態において、制御部30が、報知部を備え、床下換気口13の外側または内側に備えられた手動開閉扉や外皮開口部16b、その他の窓など、床下換気口13以外の開口部が開閉された場合にその旨を報知するようにしてもよい。なお、報知部としては、音声を発信するアラームなどが含まれる。
【0081】
また、上述の実施の形態において、地域によっては、春・梅雨・夏・秋・冬の5つの時季以外に、秋雨、霧などの他の時季を季節期間に設定してもよい。これにより、湿度に特徴のある時期をより明確に季節期間に反映させることができる。
【0082】
また、上述の実施の形態において、季節期間判定用データ、温度情報、基準温度84、外気絶対湿度は同一の記憶部に記憶されていてもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態において、外皮開口部16aは、排気ファンを運転した状態で中空層3の空気を外部に排出する。また、外皮開口部16bは、床下換気口13を開放した場合には外気の給気口となり、床下換気口13を閉鎖した場合には排気口に切り替えられる。すなわち、外皮開口部16aの排気ファンを運転したまま床下換気口13を閉鎖すると、中空層3の内部に負圧が生じ、外皮開口部16bから外気を給気することが可能となる。一方、外皮開口部16aの排気ファンを運転したまま床下換気口13を開放すると、中空層3の内部に十分な外気が導入される。ここで、中空層3の内部の圧力が建物外部に対し正圧となる場合、外皮開口部16bも外皮開口部16aと同様に排気口となる。
【0084】
このため、外皮開口部16bが給気口となった時は、暖気が溜まりやすい小屋裏などの上部の中空層3に外気を直接導入することができる。これにより、中空層3の温度改善が容易になるとともに、下層の中空層3の冷気溜りの温度上昇を防ぐことも可能となる。また、外皮開口部16bが排気口となった時は、床下からの外気導入量を増やすことが可能となり、より効率よく冷気を形成することが可能となる。