特許第6783077号(P6783077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783077
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20201102BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H01R13/64
   H01R13/639 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-118790(P2016-118790)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-224480(P2017-224480A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大石 浩三
(72)【発明者】
【氏名】宮川 知之
(72)【発明者】
【氏名】落合 和之
(72)【発明者】
【氏名】藤平 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松田 慎太郎
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−219256(JP,A)
【文献】 特開平09−245892(JP,A)
【文献】 特開平10−144399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40−13/533
H01R13/56−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型のアウターハウジング及び該アウターハウジングに収容されたインナーハウジングを有し、前記インナーハウジングに複数の第1端子が設けられた第1コネクタと、
前記アウターハウジングに挿入されるとともに、前記インナーハウジングが挿入される有底筒型のハウジングを有し、該ハウジングの底部内面に複数の第2端子が設けられた第2コネクタと、
前記アウターハウジングの内部に設けられ、前記インナーハウジングを前記アウターハウジングの前記ハウジングが挿入される開口端側に付勢する弾性部材と、
前記アウターハウジングの内面に設けられた突起と、
前記インナーハウジングの外面に設けられたリブと、
前記ハウジングの開口端に設けられ、前記第2コネクタが前記第1コネクタに嵌合する際、前記突起に当接して前記ハウジングの中心軸側へ弾性変形するロック部材と、を備え、
前記ロック部材は、穴部を有し、前記弾性変形したとき、先端部が前記リブに突き当たり前記弾性部材の付勢力に抗して前記インナーハウジングを係止する一方、前記穴部に前記突起が係合したとき、弾性復帰して前記インナーハウジングの係止を解除し、
前記インナーハウジングの係止が解除されたとき、前記インナーハウジングは前記弾性部材の付勢力で前記ハウジングの底部側へ移動して、前記第1端子と前記第2端子が互いに接続されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記インナーハウジングには、隣り合う少なくとも一対の前記第2端子の導通を検出して前記第1コネクタに対する前記第2コネクタの嵌合状態を検知する導電性の嵌合検知部材が設けられることを特徴とする請求項に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記アウターハウジングには溝部が形成され、前記インナーハウジングには前記溝部に係合して前記インナーハウジングの移動範囲を規制する係合突起が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2コネクタが前記第1コネクタに嵌合したとき、前記インナーハウジングの外面と前記ハウジングの内面との間にパッキンが介在していることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させることで、両コネクタが互いに接続されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コネクタはメス型コネクタとオス型コネクタとを備えている。メス型コネクタは、筒型のアウターハウジング及びそのアウターハウジング内に収容されたインナーハウジングを有し、インナーハウジングの端面には複数のメス端子が設けられている。また、オス型コネクタは有底筒型のハウジングを有し、このハウジングの内部底面に複数のオス端子が設けられている。
【0003】
そして、オス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させると、インナーハウジングの端面とハウジングの内部底面とが互いに密着して、メス端子とオス端子とが電気的に接続される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−180818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、メス型コネクタにおいて、アウターハウジングの内部にコイルスプリングが設けられ、このコイルスプリングによってインナーハウジングはアウターハウジングの開口端側(インナーハウジングが嵌合される側)へ付勢されている。そのため、オス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させるときには、コイルスプリングの付勢力に抗してオス型コネクタのハウジングをメス型コネクタのアウターハウジングに挿入し、同時にオス端子をメス端子に押し込まなければならない。
【0006】
すなわち、特許文献1においては、オス型コネクタのハウジングをメス型コネクタのアウターハウジングに挿入する挿入力と、オス端子をメス端子に押し込む押し込み力とを同時に加えなければならないため、オス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させる際の操作力が過大になるという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、オス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させる際の操作力の低減を図ることのできるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、筒型のアウターハウジング及び該アウターハウジングに収容されたインナーハウジングを有し、インナーハウジングに複数の第1端子が設けられた第1コネクタと、アウタハウジングに挿入されるとともに、インナーハウジングが挿入される有底筒型のハウジングを有し、該ハウジングの底部内面に複数の第2端子が設けられた第2コネクタと、アウターハウジングの内部に設けられ、インナーハウジングをアウターハウジングのハウジングが挿入される開口端側に付勢する弾性部材と、を備え、第2コネクタが第1コネクタに嵌合する際に弾性部材の付勢力に抗してインナーハウジングの位置を係止させ、第2コネクタが第1コネクタに嵌合したときに弾性部材が弾性復帰することによりインナーハウジングがハウジングの底部側へ移動して、第1端子と第2端子が互いに接続されることを特徴とする。
【0009】
これによれば、第2コネクタを第1コネクタに嵌合させる際、第2コネクタのハウジングを第1コネクタのアウターハウジングに挿入させるタイミングと、第2端子と第1端子を互いに接続させるタイミングとを時間的にずらして行うことができる。その結果、第2コネクタを第1コネクタに挿入させる挿入力と、第1端子と第2端子を互いに接続させる力、例えば第2端子を第1端子に押し込む押し込み力とが同時に生じることがなく、第2コネクタを第1コネクタに嵌合させる際の操作力が過大になるのを回避することができる。
【0010】
具体的に、本発明は、筒型のアウターハウジング及び該アウターハウジングに収容されたインナーハウジングを有し、インナーハウジングに複数の第1端子が設けられた第1コネクタと、アウタハウジングに挿入されるとともに、インナーハウジングが挿入される有底筒型のハウジングを有し、該ハウジングの底部内面に複数の第2端子が設けられた第2コネクタと、アウターハウジングの内部に設けられ、インナーハウジングをアウターハウジングのハウジングが挿入される開口端側に付勢する弾性部材と、アウターハウジングの内面に設けられた突起と、インナーハウジングの外面に設けられたリブと、ハウジングの開口端に設けられ、第2コネクタが第1コネクタに嵌合する際、突起に当接してハウジングの中心軸側へ弾性変形するロック部材と、を備え、ロック部材は、穴部を有し、弾性変形したとき、先端部がリブに突き当たり弾性部材の付勢力に抗してインナーハウジングを係止する一方、穴部に突起が係合したとき、弾性復帰してインナーハウジングの係止を解除し、インナーハウジングの係止が解除されたとき、インナーハウジングは弾性部材の付勢力でハウジングの底部側へ移動して、第1端子と第2端子が互いに接続されることを特徴とする。
【0011】
この場合において、インナーハウジングには、隣り合う少なくとも一対の第2端子の導通を検出して第1コネクタに対する第2コネクタの嵌合状態を検知する導電性の嵌合検知部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
これによれば、隣り合う一対の第2端子の導通を嵌合検知部材が検出したとき、第1コネクタに対する第2コネクタの嵌合状態が完全であると判断することができる。
【0013】
また、アウターハウジングには溝部が形成され、インナーハウジングには溝部に係合してインナーハウジングの移動範囲を規制する係合突起が設けられていることが好ましい。
【0014】
これによれば、アウターハウジングの溝部にインナーハウジングの係合突起が係合して、インナーハウジングの移動範囲が規制されているので、インナーハウジングがアウターハウジングから外れるのを防ぐことができる。
【0015】
また、第2コネクタが第1コネクタに嵌合したとき、インナーハウジングの外面とハウジングの内面との間にパッキンが介在していることを特徴とする。
【0016】
これによれば、インナーハウジングの外面とハウジングの内面との間にパッキンが介在していることにより、第1端子や第2端子が設けられた部分への水の浸入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オス型コネクタ(第2コネクタ)をメス型コネクタ(第1コネクタ)に嵌合させる際の操作力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】オス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させたときの外観斜視図である。
図2図1をSA−SA線を含む平面で切断して上部分を下側から見たときの図である。
図3】メス型コネクタにおいてインナーハウジングが収容されたアウターハウジングの外観斜視図である。
図4図3のSB−SB線に沿った断面図である。
図5】メス型コネクタにおけるインナーハウジングの外観斜視図である。
図6】ハウジングを含むオス型コネクタの外観斜視図である。
図7】実施例1においてオス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させる手順を示しており、(a)はオス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させる前の状態を示す図、(b)はロック部材が変形した様子を示す図、(c)はロック部材の穴部に突起が係合した様子を示す図、(d)はメス端子にオス端子が押し込まれた様子を示す図である。
図8】実施例2においてオス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させる手順を示しており、(a)はオス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させる前の状態を示す図、(b)はロック部材が変形した様子を示す図、(c)はロック部材の穴部に突起が係合した様子を示す図、(d)は嵌合検知部材がオス端子に接触した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用されるコネクタの実施形態を図面を参照して説明する。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
図1は、オス型コネクタをメス型コネクタに嵌合させたときの外観斜視図、図2は、図1をSA−SA線を含む水平面で切断して上の部分を下方側から見たときの図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、コネクタ10は、第1コネクタとしてのメス型コネクタ11と、第2コネクタとしてのオス型コネクタ12とを備えている。メス型コネクタ11は、アウターハウジング13及びアウターハウジング13内に収容されたインナーハウジン14を有している。
【0022】
アウターハウジング13は、図3に示すように、筒型形状を成しており、その一側(図において左側)に端部壁13Aが、他側(図において右側)に開口端13B(図4も参照)がそれぞれ形成されている。またアウターハウジング13は、図1に示すように、矢印A方向から見ると4つの角部が丸みを帯びた略矩形に形成されている。
【0023】
アウターハウジング13には一側の端部壁13Aに開口部13Cが形成されている。またアウターハウジング13には、他側の開口端13Bからインナーハウジング14が挿入されている(図2参照)。
【0024】
アウターハウジング13の上部壁13D及び端部壁13A(端部壁13Aのうち開口部13Cの上方部分)には2本のスリット13E,13Eがそれぞれ形成され、また端部壁13Aには2本のスリット13E,13Eの間に操作穴13Fが形成されている。ここで、上部壁13D及び端部壁13Aは板状を成しており、スリット13E,13Eは上部壁13Dや端部壁13Aを貫通して形成されている。このような構成により、人が指先を操作穴13Fに当ててスリット13E,13E間の部分を上方へ引き上げることにより、上部壁13D及び端部壁13Aのうちスリット13E,13E間の部分を上方へ変形させることができる。
【0025】
また、アウターハウジング13の左右両側の側部壁13G,13Gには、端部壁13Aに近い部分に溝部13H,13Hがそれぞれ形成され、これら溝部13H,13Hには、インナーハウジング14の左右両側に設けられた係合突起14A,14A(図2参照)がそれぞれ係合されている。
【0026】
ここで、図4は、図3のSB−SB線に沿った断面図である。図に示すように、アウターハウジング13の上部壁13Dの下面のうち、上記スリット13E,13E(図1及び図3参照)で挟まれた部分には1つの突起13Iが下方に突出して形成されている。この突起13Iの一側側面(図において右側側面)は、上部が開口端13Bに接近し、下部が開口端13Bから離れるよう斜めに形成されている。すなわち、突起13Iは開口端13Bに近い側に傾斜面13Jを有する。
【0027】
インナーハウジング14には、図5に示すように、その一側(図において左側)に円形穴を有する部分が連続して配置され、各円形穴にリード線が挿通されるリード線挿通部14Bが設けられている。またインナーハウジング14には、その他側(図において右側)に、前記リード線が接続され第1端子としての複数のメス端子20(図7参照)が取り付けられた端子取付部14Cが設けられている。なお、前記リード線はアウターハウジング13の端部壁13Aに形成された開口部13Cを通ってアウターハウジング13の外部へと繋げられる。
【0028】
端子取付部14Cの外周にはパッキン22(図7参照)が設けられ、このパッキン22はリード線挿通部14Bと端子取付部14Cとの間に設けられた板状のフランジ14Dにより位置決めされて保持される。
【0029】
フランジ14Dは、端子取付部14Cの外周全体に設けられてはおらず、端子取付部14Cの上面中央部に切り欠き部14Eが形成されている。そして、リード線挿通部14Bの上面には切り欠き部14Eに対向してリブ14Fが上方に突出して設けられている。リブ14Fには、ハウジング12Bのロック部材12A(図6参照)が変形したときに、そのロック部材12Aの先端部が突き当たる。
【0030】
また、リード線挿通部14Bの左右下部にはコイルスプリング挿入部14G,14Gが設けられ、これらコイルスプリング挿入部14G,14Gには弾性部材としてのコイルスプリング15,15(図2参照)が挿入される。コイルスプリング15,15は、図2に示すように、一端がアウターハウジング13の端壁部13Aに、他端がコイルスプリング挿入部14G,14Gの底面にそれぞれ支持されている。
【0031】
図6は、オス型コネクタ12の外観斜視図である。オス型コネクタ12は、有底筒型形状のハウジング12Bを有している。ハウジング12Bは、その一側(図において左側)に開口端12Cが、他側(図において右側)に端部壁12D(図2及び図7参照)がそれぞれ設けられている。また、ハウジング12Bは、矢印B方向から見ると4つの角部が丸みを帯びた矩形に形成されている。図1及び図2に示すように、オス型コネクタ12はメス型コネクタ11に嵌合され、このとき、ハウジング12Bの開口端12Cはアウターハウジング13の開口端13Bに挿入されるとともに、ハウジング12Bの開口端12Cにはインナーハウジング14が挿入される。
【0032】
図6に示すように、ハウジング12Bの上部壁12Eには、開口端12Cまで達する2本のスリット12F,12Fがそれぞれ形成されている。ここで、上部壁12Eは板状を成しており、スリット12F,12Fは上部壁12Eを貫通して形成されている。このような構成により、スリット12F,12Fの部分は下方に容易に弾性変形することが可能となる。なお、スリット12F,12Fで挟まれた部分はロック部材12Aを構成している。
【0033】
ロック部材12Aにはその略中央部分に穴部としての貫通穴12Gが形成されており、この貫通穴12Gは、アウターハウジング13の上部壁13Dの下面に形成された突起13Iに対応して設けられている。つまり、貫通穴12Gに突起13Iが係合可能となっている。
【0034】
また、ハウジング12Bの端部壁12Dの内面(ハウジング12Bの底面)には、第2端子として複数のオス端子21(図7参照)が設けられている。
【0035】
次に、本実施例の作用について図7を参照しながら説明する。
【0036】
先ず、同図(a)に示すように、メス型コネクタ11にはアウターハウジング13の内部にインナーハウジング14が収納されている。そして、アウターハウジング13の開口端13Bに、オス型コネクタ12のハウジング12Bの開口端12Cが対向するようにオス型コネクタ12を配置する。
【0037】
次に、同図(b)に示すように、オス型コネクタ12をコイルスプリング15,15の付勢力に抗してメス型コネクタ11に挿入する。このとき、アウターハウジング13に設けられた突起13Iがハウジング12Bのロック部材12Aに当接し、ロック部材12Aをハウジング12Bの中心軸側へ変形させる。この場合、突起13Iの側部が傾斜面13J(図4参照)になっているので、ロック部材12Aは突起13Iに容易に乗り上げることができる。
【0038】
なお、同図(b)の状態は半嵌合状態であるから、オス型コネクタ12の挿入を解くと、オス型コネクタ12はコイルスプリング15,15の付勢力で押し戻され、メス型コネクタ11から外れてしまう。
【0039】
上記のようにロック部材12Aが変形すると、ロック部材12Aの先端部が、インナーハウジング14の外面に設けられたリブ14Fに突き当たって、その位置にインナーハウジング14を一旦係止させる。
【0040】
さらにオス型コネクタ12を挿入していくと、同図(c)に示すように、ハウジング12Bのロック部材12Aの貫通穴12Gの位置がアウターハウジング13の突起13Iに一致するので、ロック部材12Aは弾性復帰し、貫通穴12Gに突起13Iが係合する。これにより、オス型コネクタ12は、メス型コネクタ11に嵌合される。
【0041】
このとき、ロック部材12Aによるインナーハウジング14の係止状態が解除されるので、インナーハウジング14は、同図(d)に示すように、コイルスプリング15,15が弾性復帰するときの付勢力によってハウジング12Bの端部壁12D側(つまりハウジング12Bの底部側)へ移動する。このようにインナーハウジング14がハウジング12Bの底部側へ移動することで、インナーハウジング14内のメス端子20にハウジング12B底部のオス端子21が押し込まれる。すなわち、メス端子20とオス端子21が互いに接続される。なお、図7において、メス端子20及びオス端子21は紙面垂直方向に複数個並んで設けられている。
【0042】
本実施例によれば、オス型コネクタ12をメス型コネクタ11に嵌合させる際に、オス型コネクタ12のハウジング12Bをメス型コネクタ11のアウターハウジング13に挿入させるタイミングと、オス端子21をメス端子20に押し込むタイミングが時間的にずれて行われるので、メス型コネクタ11に対するオス型コネクタ12の挿入力と、メス端子20に対するオス端子21の押し込み力とが同時に生じることがなく、その結果、オス側コネクタ12をメス型コネクタ11に嵌合させる際の操作力を低減させることができる。
【0043】
また、本実施例においては、アウターハウジング13に溝部13H,13Hが、インナーハウジング14に溝部13H,13Hに係合する係合突起14A,14Aがそれぞれ形成されているので、溝部13H,13Hによって係合突起14A,14Aの移動範囲を規制することで、コイルスプリング15,15によって付勢されたインナーハウジング14がアウターハウジング13から外れるのを防ぐことができる。
【0044】
さらに、本実施例においては、オス型コネクタ12がメス型コネクタ11に嵌合したときに、メス型コネクタ11のインナーハウジング14の外面とオス型コネクタ12のハウジング12Bの内面との間にはパッキン22が介在しているので、メス端子20やオス端子21が設けられた部分への水の浸入を防ぐことができる。
【0045】
また、本実施例においては、アウターハウジング13の端部壁13A及び上部壁13Dにスリット13E,13Eを設け、さらに端部壁13Aのうちスリット13E,13E間に操作穴13Fを設けたので、人が指先を操作穴13Fに当ててスリット13E,13E間の部分を上方へ引き上げることにより、上部壁13Dのうちスリット13E,13E間の部分だけを上方へ変形させることで、オス型コネクタ12をメス型コネクタ11から容易に取り外すことができる。
【0046】
(実施例2)
次に、実施例2について図8を参照しながら説明する。
【0047】
本実施例では、メス型コネクタ11のインナーハウジング14に、隣り合う少なくとも一対のオス端子21の導通を検出して、メス型コネクタ11に対するオス型コネクタ12の嵌合状態を検知する導電性の嵌合検知部材25が設けられている。なお、嵌合検知部材25は金属製のばね状部材で形成されている。
【0048】
先ず、同図(a)に示すように、メス型コネクタ11にはアウターハウジング13の内部にインナーハウジング14が収納されている。そして、アウターハウジング13の開口端13Bに、オス型コネクタ12のハウジング12Bの開口端12Cが対向するようにオス型コネクタ12を配置する。
【0049】
次に、同図(b)に示すように、オス型コネクタ12をコイルスプリング15,15の付勢力に抗してメス型コネクタ11に嵌合させる。このとき、アウターハウジング13に設けられた突起13Iがハウジング12Bのロック部材12Aに当接し、ロック部材12Aをハウジング12Bの中心軸側へ変形させる。
【0050】
ロック部材12Aが変形すると、ロック部材12Aの先端部が、インナーハウジング14の外面に設けられたリブ14Fに突き当たって、その位置にインナーハウジング14を一旦係止させる。
【0051】
さらにオス型コネクタを挿入すると、同図(c)に示すように、ハウジング12Bのロック部材12Aの貫通穴12Gの位置がアウターハウジング13の突起13Iに一致するので、ロック部材12Aは弾性復帰し、これにより貫通穴12Gに突起13Iが係合する。
【0052】
ロック部材12Aが弾性復帰すると、ロック部材12Aによるインナーハウジング14の係止状態が解除され、インナーハウジング14は、同図(d)に示すように、コイルスプリング15,15の付勢力でハウジング12Bの端部壁12D側(つまりハウジング12Bの底部側)へ移動する。
【0053】
このようにインナーハウジング14がハウジング12Bの底部側へ移動することで、インナーハウジング14内のメス端子20にハウジング12Bのオス端子21が押し込まれる。
【0054】
この場合、オス端子21のうち隣り合う一対のオス端子21に外部から電圧をかけておき、当該一対のオス端子21をインナーハウジング14側の嵌合検知部材25に押し込んだとき、両オス端子21間に電流が流れるか否か検出する。電流が流れれば、一対のオス端子21が導電性の嵌合検知部材25に完全に接触したことを示しており、メス型コネクタ11に対するオス型コネクタ12の嵌合状態が完全であると判断できる。
【0055】
なお、本実施例では、隣り合う一対のオス端子21に外部から電圧をかけておいたが、これに限らず、隣り合わなくとも2本のオス端子21に電圧をかけておき、これらのオス端子21間の導通を嵌合検知部材25で検出するようにしてもよい。
【0056】
以上、本発明の各実施例を図面により詳述してきたが、上記各実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0057】
例えば、上記各実施例においては、ロック部材12Aが一対のスリット13E,13E間に形成されていたが、これに限らず、ロック部材12Aは、アウターハウジング13の端部壁13Aより前方へ突出して設けられたものでもよい。
【0058】
また、上記各実施例においては、インナーハウジング14にメス端子20が、ハウジング12Bにオス端子21がそれぞれ設けられていたが、インナーハウジング14にオス端子21を、ハウジング12Bにメス端子20をそれぞれ設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 コネクタ
11 メス型コネクタ(第1コネクタ)
12 オス型コネクタ(第2コネクタ)
12A ロック部材
12B ハウジング
12C 開口端
12D 端部壁
12E 上部壁
12F スリット
12G 貫通穴(穴部)
13 アウターハウジング
13A 端部壁
13B 開口端
13C 開口部
13D 上部壁
13E スリット
13F 操作穴
13H 溝部
13I 突起
14 インナーハウジング
14A 係合突起
14D フランジ
14F リブ
15 コイルスプリング(弾性部材)
20 メス端子(第1端子)
21 オス端子(第2端子)
22 パッキン
25 嵌合検知部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8