(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783087
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
A45D40/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-150031(P2016-150031)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-15417(P2018-15417A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年2月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神村 千秋
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−169714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00−40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立姿勢に保持されたスクリューロッドを有するベース部材と、該スクリューロッドに係合される中皿と、該中皿をスクリューロッドとともに取り囲みその内側に内容物の充填空間を形成するケース本体とを備え、該スクリューロッドを該ベース部材を介して回転させることにより該中皿を該スクリューロッドの軸芯に沿いスライドさせて該充填空間内の内容物を該ケース本体の開放端より押し出す繰り出し容器であって、
前記ケース本体は、その末端部に、前記スクリューロッドの軸芯の周りに回動可能で、かつ、該ケース本体の末端に向けて押圧可能な操作体を備え、
該操作体は、内容物の繰り出しを意図しない初期姿勢においては前記ベース部材との連結が解除されているが、該ケース本体の末端に向けた押圧状態では該ベース部材につながり、かつ、その回動にて該スクリューロッドの回転を可能とする継手部材を有し、
前記ベース部材は、下向きに開放された凹部を有するベース本体と、ベース本体の下端に一体連結し、径方向外側に向けて延出するフランジから構成されており、
該凹部は、その内周壁に設けられた少なくとも1つの連係部を有し、
前記操作体の継手部材は、該継手部材の外周壁の周りに設けられ、該操作体の、前記ケース本体の末端へ向けた押圧にて該ベース本体の凹部の内周壁に設けられた連係部に係合可能な連係部を有し、
前記ベース部材のフランジと前記操作体の底壁部との相互間に、内容物の繰り出しを意図しない初期姿勢において前記操作体を前記ベース部材から離反させてその連結を解除する弾性部材を設けたことを特徴とする繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中皿をケース本体内でスライドさせることによって充填空間内の内容物をケース本体の開放端より適宜押し出すことができる繰り出し容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップクリームあるいはスティックタイプの糊等を内容物として充填する容器としては、ケース本体の下端部分に取り付けられた操作体(ダイヤル等)を回動させて内容物をケース本体の開放端から適宜押し出す繰り出し容器が適用されており、この点に関する先行文献としては、例えば特許文献1、特許文献2に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−231628号公報
【特許文献2】特開平11−286197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる容器は、ポケットや鞄、あるいはポーチ等に入れて持ち歩く際に、操作体が不用意に回動して内容物が繰り出されてしまう不具合を有している。
【0005】
また、この種の容器は、悪戯や間違い等、内容物の繰り出しを意図してないにもかかわらず繰り出されてしまう場合もあり、その解決が望まれていた。
【0006】
本発明の課題は、内容物の繰り出しを意図したとき(使用時)にのみ繰り出すことができる新規な繰り出し容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、起立姿勢に保持されたスクリューロッドを有するベース部材と、該スクリューロッドに係合される中皿と、該中皿をスクリューロッドとともに取り囲みその内側に内容物の充填空間を形成するケース本体とを備え、該スクリューロッドを該ベース部材を介して回転させることにより該中皿を該スクリューロッドの軸芯に沿いスライドさせて該充填空間内の内容物を該ケース本体の開放端より押し出す繰り出し容器であって、前記ケース本体は、その末端部に、前記スクリューロッドの軸芯の周りに回動可能で、かつ、該ケース本体の末端に向けて押圧可能な操作体を備え、該操作体は、内容物の繰り出しを意図しない初期姿勢においては、前記ベース部材との連結が解除されているが、該ケース本体の末端に向けた押圧状態では該ベース部材につながり、かつ、その回動にて該スクリューロッドの回転を可能とする継手部材を有し、前記ベース部材は、
下向きに開放された凹部を有するベース本体と、ベース本体の下端に一体連結し、径方向外側に向けて延出するフランジから構成されており、該凹部は、その内周壁に設けられた少なくとも1つの連係部を有し、前記操作体の継手部材は、該継手部材の外周壁の周りに設けられ、該操作体の、前記ケース本体の末端へ向けた押圧にて該ベース本体の凹部の内周壁に設けられた連係部に係合可能な連係部を有
し、前記ベース部材のフランジと前記操作体の底壁部との相互間に、内容物の繰り出しを意図しない初期姿勢において前記操作体を前記ベース部材から離反させてその連結を解除する弾性部材を設けたことを特徴とする繰り出し容器である。
【0008】
前記ベース部材と前記操作体との相互間には、内容物の繰り出しを意図しない初期姿勢において前記操作体を前記ベース部材から離反させてその連結を解除する弾性部材を設けるのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繰り出し容器によれば、操作体をケース本体の末端に向けた押圧状態で回動させたときにのみ操作体の継手部材がベース部材につながってスクリューロッドを回転させることができるため内容物が不用意に繰り出されることはない。
【0011】
また、本発明の繰り出し容器によれば、ベース部材と操作体との相互間には、内容物の繰り出しを意図しない初期姿勢において前記操作体を前記ベース部材から離反させてその連結を解除する弾性部材が配設されており、ベース部材には、少なくとも1つの連係部が、また、操作体には、ケース本体の末端へ向けた押圧状態において、該ベース部材の連係部に係合可能な連係部が設けられた構造からなっているため、簡単な構造でもって内容物の不用意な繰り出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にしたがう繰り出し容器の実施の形態を模式的に示した図(中心線を境に右側半分を断面で表示)である。
【
図2】(a)(b)は、
図1に示した繰り出し容器の要部拡大図である。
【
図3】
図1に示した繰り出し容器の使用状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう繰り出し容器の実施の形態を模式的に示した図である。本発明にしたがう繰り出し容器は、その構成部材の全てを合成樹脂で構成することを基本とするが、その全部もしくは一部分を金属製部材で構成してもよい。
【0014】
図における符号1は、スクリューロッド、2は、スクリューロッド1を起立姿勢に保持するベース部材である。ベース部材2は、下向きに開放された凹部dを有するベース本体2aと、ベース本体2aの下端に一体連結し、径方向外側に向けて延出するフランジ2bから構成されており、ベース本体2aの頂部中央にスクリューロッド1の下端が一体連結している。
【0015】
また、3は、内容物を保持する中皿である(内容物は、棒状部材が適用されるが図示はしていない)。中皿3は、スクリューロッド1のねじ部に係合するねじ部が形成された短尺の内筒3aと、後述するケース本体の内壁に摺動可能に接触する比較的長尺な外筒3bと、該内筒3aおよび外筒3bを相互に一体連結する底壁部3cから構成されており、外筒3bの外周壁には少なくとも1つの縦溝mが形成されている。
【0016】
4は、中皿3をスクリューロッド1とともに取り囲みその内側に内容物の充填空間Mを形成するケース本体である。ケース本体4は、上部、下部がそれぞれ開放された筒状体からなっており、その内周壁には、中皿3の外筒3bに設けられた縦溝mに適合する縦リブm1が形成されている。ケース本体4の縦リブm1に中皿3の縦溝mが適合することにより、該中皿3の回転が規制され、ケース本体4内で直接的にスライドできるようになっている。ケース本体4の上部の開放端4′が内容物の押し出し口を形成する。なお、中皿3の外筒3bに縦リブを設け、ケース本体4の内周壁に該縦リブに適合する縦溝を設けてもよい。
【0017】
また、5は、ケース本体4の末端部4aに設けられた操作体(袴部材)である。この操作体5は、ケース本体4の径とほぼ同等の径を有するディスク状の底壁部5aと、この底壁部5aの縁部に一体連結して立ち上がり、ケース本体4の末端部4aを取り囲む環状壁部5bからなるカップ型形状をなすものであって、スクリューロッド1の軸芯Pの周りに回動可能で、かつ、その押圧により該軸芯Pに沿ってスライド可能になっている。
【0018】
操作体5は、具体的には、ケース本体4の末端部4aに設けられた凸部4bと操作体5の環状壁部5bの内周壁に設けられた凸部5cを例えばアンダーカット嵌合させるものを適用することができる。かかる構造によれば、該操作体5をスクリューロッド1の軸芯Pの周りに回動させることができるだけでなく、該凸部4bの上部に位置する環状の凹部4c内で該凸部5cを上下に移動させることが可能になるため、操作体5をケース本体4の末端4a1に向けて押圧することができる。なお、操作体5の回動および押圧機構については、他の手段を用いることも可能であり、アンダーカット嵌合によるものに限定されることはない。
【0019】
また、6は、ケース本体4の内周壁の下部に設けられ、内側に向けて延出する環状の張り出し部材である。この張り出し部材6は、ベース部材2をケース本体4に回転可能に抜け止め保持する機能を有するものであり、その内側先端部6aがベース本体2aの上部に設けられた凸部2a1の下端に位置し、その下端部の凸部6bがフランジ2bの上面に当接している。
【0020】
また、7は、操作体5の底壁部5aの上面中央部に設けられた円柱状の継手部材である。この継手部材7は、ベース本体2aに設けられた凹部dへの嵌り込みを可能とする径を有している。
【0021】
8は、ベース本体2aの凹部dの内周壁に設けられた複数本の連係部(縦リブ)、9は、継手部材7の外周壁の周りに設けられた複数本の連係部(溝部)である。連係部(溝部)9は、操作体5をケース本体4の末端4a1へ向けて押圧することにより連係部(縦リブ)8に係合するものであって、その係合状態を維持したまま操作体5を回動させることにより、ベース部材2およびこれにつながるスクリューロッド1をケース本体4内で回転させることができるようになっている。
【0022】
なお、本発明においては、連係部8、連係部9については、縦リブと溝部を用いた場合を例として説明したが、連係部8を溝部に、また、連係部9を縦リブとしてもよいし、連係部8、連係部9のいずれをもリブ状部材で構成し、これらを相互に当接させてベース部材2を回転させる等、他の係合手段を適用することも可能であり、この点については限定されない。
【0023】
また、符号10は、ベース部材2のフランジ2bと操作体5の底壁部5aとの相互間に設けられた弾性部材である。この弾性部材10は、内容物の繰り出しを意図しない
図1に示すような初期姿勢では、その付勢力(反発力)により操作体5の継手部材7をベース部材2から離反させる向きに押しやっており(ベース部材2と操作体5との連結が解除されている)、これにより、操作体5が不用意に回動することがあっても操作体5のみを空回りさせて内容物が繰り出されることがないようになっている。
【0024】
弾性部材10は、ここでは、
図2に示すように、ベース本体2aの凹部dを挟む対向位置にフランジ2bから固定部10aを介して設置された片持ち支持になる一対の板ばねを用いたものを例として示したが、該弾性部材10は、スプリングタイプの弾性部材等、上下に変形可能な構造のものであればどのような形態のものを適用してもよい。また、弾性部材10の固定部10aは、操作体5の底壁部5aに設けることもできる。さらに、弾性部材10は、ベース部材2または操作体5とは別体構造とし、ベース部材2(ベース本体2a)と操作体5の相互間に介在させてもよい。
【0025】
また、11は、ケース本体4の上部に着脱自在に嵌合して開放端4′を密閉するキャップである。キャップ11は、アンダーカット嵌合するものやねじ係合するものが適用される。
【0026】
本発明にしたがう繰り出し容器においてケース本体4内の内容物を繰り出すには、キャップ11を取り外したのち、
図3に示すように、操作体5をケース本体4の末端4a1に向けて押圧し、その状態を維持したまま該操作体5を、スクリューロッド1の軸芯Pの周りに回動させればよい。そうすると、スクリューロッド1は、ベース部材2を介して回転し、該スクリューロッド1に係合する中皿3はその軸芯Pに沿い開放端4′へ向けてスライドすることとなり、充填空間内の内容物がケース本体4の開放端4′より押し出される。なお、操作体5の押圧に際しては、底壁部5aをケース本体4の末端4a1に接触させてもかまわない。
【0027】
本発明にしたがう繰り出し容器は、内容物の繰り出しを意図しない初期姿勢では、ベース部材2と操作体5とが切り離された状態にあるため、操作体5が単に回動しただけでは、内容物が繰り出されることはなく、内容物の不用意な繰り出し、悪戯等による繰り出しを確実に防止することができる。
【0028】
また、本発明にしたがう繰り出し容器は、操作体5に付加した押圧力を解除すると弾性部材10の付勢力により操作体5の凸部5cがケース本体の凸部4bの嵌合位置に戻るため、ベース部材2と操作体5との連結を確実に解除することができ、連結の解除をし忘れることがない利点を有している。なお、操作体5を押圧した際に連係部8と連係部9が係合をし始める位置については適宜設定される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、内容物の意図しない繰り出しを確実に回避し得る繰り出し容器が提供できる。
【符号の説明】
【0030】
1 スクリューロッド
2 ベース部材
2a ベース本体
2b フランジ
3 中皿
3a 内筒
3b 外筒
3c 底壁部
4 ケース本体
4′ 開放端
4a 末端部
4b 凸部
4c 凹部
5 操作体
5a 底壁部
5b 環状壁部
5c 凸部
6 張り出し部材
6a 内側先端部
6b 凸部
7 継手部材
8 連係部(縦リブ)
9 連係部(溝部)
10 弾性部材
10a 固定部
11 キャップ
d 凹部
m 縦溝
M 充填空間
m1 縦リブ
P 軸芯