特許第6783088号(P6783088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783088
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】センサケース
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20201102BHJP
   B60C 23/04 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B60C19/00 B
   B60C23/04 110A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-150531(P2016-150531)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-16278(P2018-16278A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】真砂 剛
(72)【発明者】
【氏名】林 一夫
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/067580(WO,A1)
【文献】 特開2004−330842(JP,A)
【文献】 特開2014−122023(JP,A)
【文献】 特開2005−348032(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102014213060(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−23/202
B60C23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にタイヤの情報を取得するためのセンサが収納されたセンサケースであって、
前記タイヤの内面もしくは当該センサケースを前記タイヤの内面に装着するための台座に取付けられる底面を有する下側部材と、
前記下側部材の前記底面とは反対側の面である上面から前記底面とは反対に突出する、幅が前記下側部材の幅よりも小さな上側部材とを備え、
前記下部材の側面が幅方向外側に凸な曲面から形成され、
前記上側部材の側面と前記上側部材の前記底面とは反対側の面である頂面とが、前記頂面に接する曲面により接続され
前記下側部材の側面と前記底面とが、前記底面に接する曲面により接続され、
前記下側部材の側面と前記上面とが、前記上面に接する曲面により接続されていることを特徴とするセンサケース
【請求項2】
前記上側部材が、球体の一部、もしくは、回転楕円体の一部であることを特徴とする請求項1に記載のセンサケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にタイヤの情報を取得するためのセンサが収納されたセンサケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサ、温度センサ、加速度センサ等のセンサと、電池又は発電素子と、無線機とを一体化したセンサモジュールを収納したセンサケースを、ゴム製の台座を介してタイヤの内面に装着し、タイヤ内圧などの走行中のタイヤの状態を検出するとともに、検出されたセンサ情報を車両側に送信する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−160512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤ内面には走行中に繰り返し歪みが発生するため、台座とタイヤ内面間の接着層に亀裂が入って、センサケースと台座とがタイヤ内面から脱落したり、台座の収納部と底面との間に亀裂が入って、センサケースが台座から外れてしまう場合がある。
図8に示すように、センサケース50が台座20から外れてタイヤ30の内面に衝突したり、タイヤ30の内面を転がったりすると、センサケース50の角部50Kがタイヤ30の内面に接触するため、図9(a)に示すように、タイヤ30の内面であるインナーライナー31のリッジ部31Rが削れたり、図9(b)に示すように、削れがない部分でも擦れた跡ができるなど、タイヤ30の内面が傷ついてしまうといった問題点があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤ内面もしくは台座から外れてタイヤ内面を転がっても、タイヤ内面が傷つかない形状のセンサケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部にタイヤの情報を取得するためのセンサが収納されたセンサケースであって、前記タイヤの内面もしくは当該センサケースを前記タイヤの内面に装着するための台座に取付けられる底面を有する下側部材と、前記下側部材の前記底面とは反対側の面である上面から前記底面とは反対に突出する、幅が前記下側部材の幅よりも小さな上側部材とを備え、前記下部材の側面が幅方向外側に凸な曲面から形成され、前記上側部材の側面と前記上側部材の前記底面とは反対側の面である頂面とが、前記頂面に接する曲面により接続され、前記下側部材の側面と前記底面とが、前記底面に接する曲面により接続され、前記下側部材の側面と前記上面とが、前記上面に接する曲面により接続されていることを特徴とする。
このように、センサケースがタイヤ内面もしくは台座から外れて、タイヤ内面を転がる際に、タイヤ内面との接触する箇所を曲面としたので、タイヤ内面が傷つくことを防ぐことができる。また、センサケースが、台座ごとタイヤ内面から外れてタイヤ内面を転がった場合も、上記と同様の理由で、タイヤ内面が傷つくことはない。
また、前記下側部材の側面と前記底面とを、前記底面に接する曲面により接続し、前記下側部材の側面と前記上面とを、前記上面に接する曲面により接続したので、センサケースがタイヤ内面に衝突した場合でも、タイヤ内面が傷つくことを防ぐことができる。
また、前記上側部材を、球体の一部、もしくは、回転楕円体の一部としたので、センサケースを小型化できる。なお、上側部材を、球体もしくは回転楕円体の2/3以上とすれば、センサケースを更に把持し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係るセンサケースを示す図である。
図2】本実施の形態に係るゴム台座付きセンサケースの断面図である。
図3】台座から外れたセンサケースとタイヤ内面との接触状態を示す模式図である。
図4】センサケースの脱落によるタイヤ内面への影響を把握するための試験方法(ドラム試験)を示す図である。
図5】ドラム試験の結果を示す図である。
図6】本発明によるセンサケースの他の例を示す図である。
図7】本発明によるセンサケースの他の例を示す図である。
図8】センサケースの脱落状態を示す模式図である。
図9】センサケースの脱落によるタイヤ内面の損傷例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明によるセンサケース10を示す図で、図2は、ゴム台座20に取付けられたセンサケース(以下、ゴム台座付きセンサケース10Gという)の断面図である。
センサケース10は、ゴム台座20内に収納される収納部11と、収納部11から突出するように形成された把持部12と、センサモジュール13とを備える。
センサモジュール13は、タイヤ内の温度、圧力、振動等を計測するためセンサ14と、電源としての発電素子15と、センサ14で検出したデータを送信するための無線機16とを一体化したもので、収納部11及び把持部12の少なくとも一方に内蔵される。
以下、把持部12の突出方向を上側、把持部12の突出方向とは反対方向を下側、同図の左右方向を幅方向という。下側がゴム台座付きセンサケース10Gの装着時におけるタイヤ30の内面(ここでは、インナーライナー31)側である。
本例のセンサケース10は、収納部11の最大幅が把持部12の幅よりも大きく形成されている。すなわち、収納部11が本発明の下側部材に相当し、把持部12が上側部材に相当する。
以下、収納部11の上側の面を上面11a、下側の面を底面11b、把持部12の上面を頂面12a、把持部12の下面を接続面12bという。
【0009】
下側部材である収納部11は、図1の右側の図に示すように、角丸長方形(トラック状の図形)の半分を、中心軸Jを中心に回転させた回転体により構成される。したがって、収納部11の上面11aと底面11bとは平面で、側面11cは、中心軸Jを通る平面で切ったときの形状が半円である幅方向外側に凸な曲面となる。
すなわち、センサケース10の収納部11では、収納部11の側面11cと上面11aとが、上面11aに接する曲面11pにより接続され、側面11cと底面11bとが、底面11bに接する曲面11qにより接続され、かつ、側面11cの最大幅部が幅方向外側に凸な曲面11rから形成されている。
一方、上側部材である把持部12では、矩形状の図形の左上部が、円周角が90°の円弧状とした図形を、中心軸Jを中心に回転させた回転体により構成される。したがって、把持部12の頂面12aと接続面12bとは平面で、円柱状の側面12cと頂面12aとは、頂面12aに接する曲面である円周角が90°の円弧を中心軸J周りに回転させ曲面12pにより接続されることになる。
【0010】
ゴム台座20は、センサケース10の収納部11を挿入するための開口部21と、センサケース10の収納部11を収納する収納凹部22とを有するゴム製の部材で、タイヤ30のインナーライナー31に接着される平板状の底部23と、底部23と開口部21とを繋ぐ側壁部24とを備える。
側壁部24は、中心軸Jに平行な面で切ったときの断面形状が角丸長方形である回転体形状の凹部を有する筒状の部材で、その外周面は、底部23側に行くにしたがって、中心軸Jから遠ざけるように形成されている。側壁部24の内壁面と底部23の内壁面とにより、センサケース10の収納部11と同形の収納凹部22が形成される。
【0011】
本発明のセンサケース10は、上記の形状を有するので、例えば、台座20の底部23と側壁部24との間に亀裂が入るなどして、センサケース10が台座20から外れて、タイヤ30内面を転がった場合でも、図3に示すように、センサケース10の、タイヤ30の内面であるインナーライナー31の表面と接触する部分(11p,11q,11r,12p)が全て曲面であるので、タイヤ30の内面に擦れた跡ができたり、タイヤ30の内面が削れたりすることがない。すなわち、本発明のセンサケース10を用いれば、センサケース10が台座から外れてタイヤ内面を転がっても、タイヤ30の内面が傷つくことを防ぐことができる。
なお、センサケース10が台座20ごとタイヤ内面外れてタイヤ内面を転がった場合でも、台座20から露出している把持部12は、円柱状の側面12cと頂面12aとが、頂面12aに接する曲面12pにより接続されているので、タイヤ30の内面が傷つくことはない。
【0012】
[実施例]
図4に示すように、本発明によるセンサケース10を挿入した台座20を、タイヤ内面に接着材で固定した後、ドラム40にタイヤ30を押付けながら、速度;60[km/h]にてタイヤ30を回転させるドラム試験を行い、5000[km]走行後のインナーライナーの表面状態を調べた。
なお、タイヤサイズは195/65R15で、内圧:230[kPa]、荷重;615[kg]で試験を行った。
本発明によるセンサケース10は、図1に示したものである。また、比較のため、把持部12を円柱状としたセンサケース50についても同様の試験を行った(比較例)。
なお、センサケースの重量は20gで、台座20の側壁部24の高さを半分にするなどして、センサケース10,50が台座20から外れやすい状態で試験を行った。なお、台座20の底部23と側壁部24との間に予め切り込みを入れることで、センサケース10,50が台座20から外れやすい状態にしてもよい。
試験結果を図5(a),(b)に示す。
(a)図は、本発明によるセンサケース10の試験結果で、(b)図は、把持部12を円柱状としたセンサケース50の試験結果である。
図5(a)に示す本発明によるセンサケース10では、インナーライナー表面に削れや擦れ跡がみられないのに対して、図5(b)に示す比較例では、インナーライナーのリッジ部が回転方向に削れられてしまっているだけでなく、削れがみられない部分でも擦れた跡がみられた。
これにより、センサケースのタイヤ内面との接触する部分を曲面とすれば、センサケースが台座から外れてタイヤ内面を転がっても、タイヤ内面が傷つくことを防ぐことができることが確認された。
【0013】
以上、本発明を実施の形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲からかである。
【0014】
例えば、前記実施の形態では、センサケース10が台座20に装着されている場合について説明したが、センサケース10をタイヤ内面に接着した場合でも、センサケース10を本発明の形態とすれば、センサケース10がタイヤ内面から外れて、タイヤ内面を転がった場合も、タイヤ内面が傷つくことはないことはいうまでもない。
なお、前記実施の形態では、図6(a)に示すように、把持部12の側面12cと頂面12aとを、側面12cと頂面12aとに接する、円周角が90°の円弧状の断面を有する接続する曲面12pにより接続させたが、図6(b)に示すように、曲面12pの頂面12aとの接続点における接線Aの傾きと、頂面12aの曲面12pとの接続点における接線Bの傾きとが完全に一致しなくてもよく、2つの接線A,Bのなす角度θが0°〜15°の範囲内であればよい。
また、前記実施の形態では、上側部材である把持部12を円柱状とし、円柱状の側面12cと頂面12aとを曲面により接続させたが、図7(a),(b)に示すように、球体の一部とすれば、センサケース10を更に小型化できる。
また、図7(c),(d)に示すように、上側部材を、球体もしくは回転楕円体の2/3以上とすれば、センサケースを更に把持し易くすることができる。
【符号の説明】
【0015】
10 センサケース、20 ゴム台座、10G ゴム台座付きセンサケース、
11 収納部、12 把持部、13 センサモジュール、14 センサ、
15 発電素子、16 無線機、30 タイヤ、31 インナーライナー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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