(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部空間に連通する供給口、吐出口および排出口を有するノズルが装着箇所に着脱可能であり、前記装着箇所に取り付けられた前記ノズルの前記供給口から前記内部空間に塗布液を供給することで前記ノズルの前記吐出口から吐出される塗布液を対象物に塗布する塗布装置の前記装着箇所に取り付けられた前記ノズルの前記吐出口を封止した状態で、前記排出口から出て前記供給口に戻りフィルターを有さない第1循環系で前記塗布液より粘度の低い洗浄液を循環させる工程と、
前記第1循環系での前記洗浄液の循環によって洗浄された前記ノズルを前記装着箇所から取り外して、前記ノズルに対して所定作業を実行した後に、前記ノズルを前記装着箇所に取り付ける工程と、
前記所定作業が実行されて前記装着箇所に取り付けられた前記ノズルの前記吐出口を封止した状態で、前記排出口から出て前記供給口に戻るとともに前記排出口から前記供給口までの間にフィルターを有する第2循環系で前記洗浄液を循環させる工程と
を備えるノズル洗浄方法。
前記第1循環系での前記洗浄液の循環の後であって、前記ノズルを前記装着箇所から取り外す前に、前記第1循環系に気体を導入する工程をさらに備える請求項1または2に記載のノズル洗浄方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ノズルの分解清掃あるいはノズルの構成部品の調整等の所定作業(手作業)を実行するために、作業者がノズルを塗布装置から適宜取り外す場合がある。この際、上述のノズルの洗浄を行ってからノズルを取り外すことで、作業者は塗布液の付着量が少ない比較的清浄なノズルに対して所定作業を実行できる。しかしながら、このような所定作業の実行中には、パーティクルがノズルの内部空間(キャビティ)の内壁に付着しうる。そのため、ノズルの塗布装置への取り付け後に実行される塗布の際に、パーティクルが塗布液とともに吐出口から吐出され、対象物が汚染されるおそれがあった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、所定作業のために塗布装置から取り外されたノズルに付着したパーティクルを除去することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るノズル洗浄方法は、内部空間に連通する供給口、吐出口および排出口を有するノズルが装着箇所に着脱可能であり、装着箇所に取り付けられたノズルの供給口から内部空間に塗布液を供給することでノズルの吐出口から吐出される塗布液を対象物に塗布する塗布装置の装着箇所に取り付けられたノズルの吐出口を封止した状態で、排出口から出て供給口に戻る第1循環系で塗布液より粘度の低い洗浄液を循環させる工程と、第1循環系での洗浄液の循環によって洗浄されたノズルを装着箇所から取り外して、ノズルに対して所定作業を実行した後に、ノズルを装着箇所に取り付ける工程と、所定作業が実行されて装着箇所に取り付けられたノズルの吐出口を封止した状態で、排出口から出て供給口に戻るとともに排出口から供給口までの間にフィルターを有する第2循環系で洗浄液を循環させる工程とを備える。
【0007】
このように構成されたノズル洗浄方法では、ノズルの吐出口を封止した状態で、排出口から出て供給口に戻る第1循環系で洗浄液を循環させてから、ノズルが塗布装置の装着箇所から取り外される。これによって、作業者は塗布液の付着量が少ない比較的清浄なノズルに対して所定作業を実行できる。また、所定作業が実行されたノズルが塗布装置の装着箇所に取り付けられると、ノズルの吐出口を封止した状態で、排出口から出て供給口に戻る第2循環系で洗浄液を循環させる。したがって、第2循環系で循環する洗浄液によってノズルの内部空間からパーティクルを洗い流すことができる。しかも、第2循環系は排出口から供給口までの間にフィルターを有するため、洗い流されたパーティクルをフィルターで捕集して、このパーティクルがノズルの内部空間に再び戻るのを抑制できる。こうして、所定作業のために塗布装置から取り外されたノズルに付着したパーティクルを除去することが可能となっている。
【0008】
ちなみに、本発明では、ノズルを取り外す前のノズルの洗浄では、フィルターを有さない第1循環系で洗浄液を循環させているのに対し、ノズルを取り付けた後のノズルの洗浄では、フィルターを有する第2循環系で洗浄液を循環させる。このようにフィルターを使い分ける理由の一つは次の通りである。つまり、第1循環系での洗浄は、主としてノズルの内部空間の内壁等に固着した塗布液の成分を洗い流すために実行される。しかも、第1循環系での洗浄の実行タイミングは作業者による所定作業の実行前であるため、第1循環系にはパーティクルは存在せず、そもそもフィルターが必要でない。一方、第2循環系での洗浄は、主としてノズルの取り外しに伴ってノズルの内部空間の内壁等に付着したパーティクルを除去するために実行される。かかるパーティクルが洗浄液の循環に伴ってノズルの内部空間に戻ると、後の塗布が受ける影響は大きい。そこで、第1循環系での洗浄ではフィルターを用いないことでフィルターの消耗を抑えるとともに、第2循環系での洗浄ではフィルターを用いることでパーティクルを捕集することとしている。
【0009】
さらに、本発明では、ノズルの吐出口を封止しつつ洗浄液を循環させることでノズルの洗浄を行っており、換言すればノズル洗浄に洗浄液を循環利用している。したがって、洗浄液の消費を抑えることが可能となっている。
【0010】
そこで、第1循環系で循環させた洗浄液を第2循環系で循環させるように、ノズル洗浄方法を構成しても良い。このように第1循環系での洗浄と第2循環系での洗浄とで洗浄液を共用することで、洗浄液の消費をより効果的に抑えることが可能となる。
【0011】
また、第1循環系での洗浄液の循環の後であって、ノズルを装着箇所から取り外す前に、第1循環系に気体を導入する工程をさらに備えるように、ノズル洗浄方法を構成しても良い。かかる構成では、第1循環系に導入された気体によって洗浄液を押し出してから、ノズルを取り外すことができる。その結果、作業者は、乾燥したノズルに対して所定作業を行うことができる。
【0012】
また、第2循環系での洗浄液の循環の後に、第2循環系に気体を導入する工程をさらに備えるように、ノズル洗浄方法を構成しても良い。かかる構成では、第2循環系に導入された気体によってノズルの内部空間の洗浄液を押し出すことができる。その結果、ノズルの内部空間に残る洗浄液が、後に実行される塗布液の塗布に影響することを抑制できる。
【0013】
また、塗布液はポリイミド前駆体および溶媒を含み、洗浄液は溶媒であるように、ノズル洗浄方法を構成しても良い。つまり、ポリイミド前駆体を含む塗布液は高い粘度を有するため、ノズルの内部空間の内壁に固着しやすい。したがって、特許文献1で記載されているような洗浄だけでは足りず、手作業による洗浄を行う必要性が高く、パーティクルの付着といった問題が発生しやすい。そこで、上述のように、ノズルの取り付け後に、フィルターを有する第2循環系で溶媒(洗浄液)を循環させることで、ノズルの内部空間からパーティクルを除去することが特に好適となる。
【0014】
本発明に係る塗布装置の第1態様は、内部空間に連通する供給口、スリット状の吐出口および排出口を有し、供給口から内部空間に供給された塗布液を吐出口から吐出するノズルと、ノズルを装着箇所で着脱可能に支持するノズル支持部と、排出口から出て供給口に戻る循環経路を構成する配管と、配管に設けられて塗布液より粘度の低い洗浄液を循環経路で循環させる送液部と、配管に対して着脱可能なフィルターとを有する洗浄液循環手段と、ノズルの吐出口を封止可能な封止手段とを備え、ノズルは、封止手段が吐出口を封止していない状態で吐出口から塗布液を吐出することで、対象物に塗布液を塗布し、洗浄液循環手段は、吐出口が封止手段により封止されるとともにフィルターが配管から取り外された状態で洗浄液を循環経路で循環させる動作と、吐出口が封止手段により封止されるとともにフィルターが配管に取り付けられた状態で洗浄液を循環経路で循環させる動作とを選択的に実行可能である。
【0015】
このように構成された塗布装置は、ノズル支持体の着脱位置に装着されたノズルから塗布液を吐出することで、対象物に塗布液を塗布する。つまり、ノズルは、その内部空間に連通する供給口およびスリット状の吐出口を有し、供給口から内部空間に供給された塗布液を吐出口から吐出する。さらに、ノズルは、その内部空間に連通する排出口を有し、洗浄液循環手段がノズルの供給口および排出口を介して洗浄液を循環させることでノズルを洗浄する。この洗浄液循環手段は、排出口から出て供給口に戻る循環経路を構成する配管と、この循環経路で洗浄液を循環させる送液部とを有し、フィルターが配管に着脱可能となっている。そして、洗浄液循環手段は、吐出口が封止手段により封止されるとともにフィルターが配管から取り外された状態で洗浄液を循環経路で循環させる動作を実行可能である。したがって、洗浄液循環手段がこの動作を実行してからノズルを塗布装置の装着箇所から取り外すことで、作業者は塗布液の付着量が少ない比較的清浄なノズルに所定作業を実行できる。また、洗浄液循環手段は、吐出口が封止手段により封止されるとともにフィルターが配管に取り付けられた状態で洗浄液を循環経路で循環させる動作を実行可能である。したがって、ノズルが塗布装置の装着箇所に取り付けられてから洗浄液循環手段がこの動作を実行することで、循環経路で循環する洗浄液によってノズルの内部空間からパーティクルを洗い流すことができる。しかも、循環経路にはフィルターが取り付けられているため、洗い流されたパーティクルをフィルターで捕集して、このパーティクルがノズルの内部空間に再び戻るのを抑制できる。こうして、所定作業のために塗布装置から取り外されたノズルに付着したパーティクルを除去することが可能となっている。
【0016】
本発明に係る塗布装置の第2態様は、内部空間に連通する供給口、スリット状の吐出口および排出口を有し、供給口から内部空間に供給された塗布液を吐出口から吐出するノズルと、ノズルを装着箇所で着脱可能に支持するノズル支持部と、排出口から出て供給口に戻る循環経路を構成する配管と、配管に設けられて塗布液より粘度の低い洗浄液を循環経路で循環させる送液部と、配管に対して取り付けられたフィルターとを有する洗浄液循環手段と、ノズルの吐出口を封止可能な封止手段とを備え、ノズルは、封止手段が吐出口を封止していない状態で吐出口から塗布液を吐出することで、対象物に塗布液を塗布し、循環経路は、排出口から出てフィルターを介さずに供給口に戻る第1経路と、排出口から出てフィルターを通過してから供給口に戻る第2経路とを有し、洗浄液循環手段は、吐出口が封止手段により封止された状態で洗浄液を第1経路で循環させる動作と、吐出口が封止手段により封止された状態で洗浄液を第2経路で循環させる動作とを選択的に実行可能である。
【0017】
このように構成された塗布装置は、ノズル支持体の着脱位置に装着されたノズルから塗布液を吐出することで、対象物に塗布液を塗布する。つまり、ノズルは、その内部空間に連通する供給口およびスリット状の吐出口を有し、供給口から内部空間に供給された塗布液を吐出口から吐出する。さらに、ノズルは、その内部空間に連通する排出口を有し、洗浄液循環手段がノズルの供給口および排出口を介して洗浄液を循環させることでノズルを洗浄する。この洗浄液循環手段は、排出口から出て供給口に戻る循環経路を構成する配管と、この循環経路で洗浄液を循環させる送液部とを有する。また、循環経路は、排出口から出てフィルターを介さずに供給口に戻る第1経路と、排出口から出てフィルターを通過してから供給口に戻る第2経路とを有する。そして、洗浄液循環手段は、吐出口が封止手段により封止された状態で洗浄液を第1経路で循環させる動作を実行可能である。したがって、洗浄液循環手段がこの動作を実行してからノズルを塗布装置の装着箇所から取り外すことで、作業者は塗布液の付着量が少ない比較的清浄なノズルに所定作業を実行できる。また、洗浄液循環手段は、吐出口が封止手段により封止された状態で洗浄液を第2経路で循環させる動作を実行可能である。したがって、ノズルが塗布装置の装着箇所に取り付けられてから洗浄液循環手段がこの動作を実行することで、第2経路で循環する洗浄液によってノズルの内部空間からパーティクルを洗い流すことができる。しかも、第2経路にはフィルターが設けられているため、洗い流されたパーティクルをフィルターで捕集して、このパーティクルがノズルの内部空間に再び戻るのを抑制できる。こうして、所定作業のために塗布装置から取り外されたノズルに付着したパーティクルを除去することが可能となっている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、所定作業のために塗布装置から取り外されたノズルに付着したパーティクルを除去することが可能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明に係る塗布装置を模式的に示す斜視図である。また、
図2は
図1に示す塗布装置を模式的に示す側面図である。さらに、
図3は
図1に示す塗布装置の各部の配置を概略的に示す上面図である。なお、
図1、
図2、
図3および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付するとともに、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、
図2および
図3では、ノズル支持体等の一部の構成を省略している。
【0021】
塗布装置1は、スリットノズル2を用いて基板3の表面31に塗布液を塗布するスリットコータと呼ばれる塗布装置である。塗布液は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を溶質として、NMP(N−メチル−2−ピロリドン:N-Methyl-2-Pyrrolidone)を溶媒としてそれぞれ含む。また、基板3は平面視で矩形状を有するガラス基板である。なお、本明細書中で、「基板3の表面31」とは基板3の両主面のうち塗布液が塗布される側の主面を意味する。
【0022】
塗布装置1は、基板3を水平姿勢で吸着保持可能なステージ4と、ステージ4に保持される基板3にスリットノズル2を用いて塗布処理を施す塗布処理部5と、スリットノズル2に対してメンテナンス処理を施すノズルメンテナンスユニット6と、マンマシンインターフェース7と、これら各部を制御する制御部100とを備える。
【0023】
ステージ4は略直方体の形状を有する花崗岩等の石材で構成されており、その上面(+Z側)のうち−Y側には、略水平な平坦面に加工されて基板3を保持する保持面41を有する。保持面41には図示しない多数の真空吸着口が分散して形成されている。これらの真空吸着口により基板3が吸着されることで、塗布処理の際に基板3が所定の位置に水平に保持される。なお、基板3の保持態様はこれに限定されるものではなく、例えば機械的に基板3を保持するように構成してもよい。また、ステージ4において保持面41が占有する領域より+Y側にはノズル調整領域RAが設けられており、このノズル調整領域RAに後述するノズルメンテナンスユニット6が配置されている。
【0024】
塗布処理部5は、スリットノズル2を支持するノズル支持体51を有する。このノズル支持体51は、ステージ4の上方でX方向に平行に延設された支持部材51aと、支持部材51aをX方向の両側から支持して支持部材51aを昇降させる2つの昇降機構51bとを有する。支持部材51aは、カーボンファイバ補強樹脂等で構成され、矩形の断面を有する棒部材である。この支持部材51aの下面はスリットノズル2の装着箇所510となっており、支持部材51aは装着箇所510にスリットノズル2を着脱可能に支持する。なお、スリットノズル2を支持部材51aの装着箇所510に着脱するための機構としては、ラッチあるいはネジ等の種々の締結機構を適宜用いることができる。
【0025】
2つの昇降機構51bは固定部材51aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータおよび及びボールネジ等を有する。これらの昇降機構51bにより、固定部材51aおよびそれに固定されたスリットノズル2が鉛直方向(Z方向)に昇降され、スリットノズル2の下端で開口する吐出口21と基板3との間隔、すなわち、基板3に対する吐出口21の相対的な高さが調整される。なお、固定部材51aの鉛直方向の位置は、例えば、図示を省略しているが、昇降機構51bの側面に設けられたスケール部と、当該スケール部に対向してスリットノズル2の側面等に設けられた検出センサとで構成されるリニアエンコーダにより検出できる。
【0026】
このように構成されたノズル支持体51は、
図1に示すように、ステージ4の左右両端部をX方向に沿って掛け渡された、保持面41を跨ぐ架橋構造を有している。塗布処理部5は、このノズル支持体51をY方向に移動させるスリットノズル移動部53を有する。スリットノズル移動部53は、架橋構造体としてのノズル支持体51とこれに支持されたスリットノズル2とを、ステージ4上に保持される基板3に対してY方向に沿って相対移動させる相対移動手段として機能する。具体的には、スリットノズル移動部53は、±X側のそれぞれにおいて、スリットノズル2の移動をY方向に案内するガイドレール52と、駆動源であるリニアモータ54と、スリットノズル2の吐出口21の位置を検出するためのリニアエンコーダ55とを有する。
【0027】
2つのガイドレール52はそれぞれ、ステージ4のX方向の両端部に設けられ、ノズル調整領域RAおよび保持面41が設けられた区間を含むようにY方向に延設されている。そして、2つのガイドレール52がそれぞれ、2個の昇降機構51bの移動をY方向に案内する。また、2つのリニアモータ54はそれぞれ、ステージ4の両側に設けられ、固定子54aと移動子54bとを有するACコアレスリニアモータである。固定子54aは、ステージ4のX方向の側面にY方向に沿って設けられている。一方、移動子54bは、昇降機構51bの外側に固設されている。2個のリニアモータ54はそれぞれ、これら固定子54aと移動子54bとの間に生じる磁力によって、2個の昇降機構51bをY方向に駆動する。
【0028】
また、各リニアエンコーダ55はそれぞれ、スケール部55aと検出部55bとを有している。スケール部55aはステージ4に固設されたリニアモータ54の固定子54aの下部にY方向に沿って設けられている。一方、検出部55bは、昇降機構51bに固設されたリニアモータ54の移動子54bのさらに外側に固設され、スケール部55aに対向配置される。リニアエンコーダ55は、スケール部55aと検出部55bとの相対的な位置関係に基づいて、Y方向におけるスリットノズル2の吐出口21の位置を検出する。
【0029】
このように構成されたスリットノズル移動部53は、ノズル支持体51をY方向に駆動することで、ノズル調整領域RAの上方とステージ4上に保持される基板3の上方との間でスリットノズル2を移動させることができる。そして、塗布装置1は、スリットノズル2の吐出口21から塗布液を吐出しながらスリットノズル2を基板3に対して相対移動させることで、基板3の表面31に塗布層を形成する。なお、基板3の各辺の端部から所定の幅の領域(額縁状の領域)は、塗布液の塗布対象とならない非塗布領域となっている。したがって、基板3のうち、この非塗布領域を除いた矩形領域が、塗布液を塗布すべき塗布領域RTとなっている(
図3)。このため、スリットノズル2の移動区間のうち基板3の塗布領域RTの上方区間を移動する吐出口21から塗布液が吐出される。
【0030】
また、塗布装置1と外部搬送機構との基板3の受渡し期間(基板3の搬入・搬出期間)等のステージ4上で塗布処理が行われない期間には、スリットノズル2は、基板3の保持面41から+Y側に外れたノズル調整領域RAに待避する(
図1に示す状態)。そして、ノズル調整領域RAに位置するスリットノズル2に対して、ノズルメンテナンスユニット6が各種のメンテナンスを実行する。
【0031】
ノズルメンテナンスユニット6は、保持面41より遠い方から順にY方向に並ぶ待機ポット61、封止部材62およびノズル清掃装置63を有する。待機ポット61は洗浄液を貯留しており、スリットノズル2の下端部、すなわち吐出口21の周辺を洗浄液に浸す。したがって、スリットノズル2を待機ポット6に対向させることで、スリットノズル2の下端部に、乾燥した塗布液の成分が固着するのを抑制できる。封止部材62はスリットノズル2の下端部に下方から当接することでスリットノズル2の吐出口21を封止する。この封止部材62による吐出口21の封止によって、吐出口21からの塗布液の吐出が禁止される。この封止部材62は、洗浄液を用いてスリットノズル2を洗浄する後述の洗浄処理で主に用いられる。ノズル清掃装置63は、スリットノズル2の下端部、すなわち吐出口21の周辺に付着した塗布液を除去する。つまり、ノズル清掃装置63はスリットノズル2の下端部に応じた形状のスクレーパ631を有し、このスクレーパ631をスリットノズル2の下端部にX方向へ摺動させることで、スリットノズル2の下端部から塗布液をかき取る。
【0032】
図4はスリットノズルを模式的に示す斜視図であり、
図5は
図4のスリットノズルの分解構造を模式的に示す斜視図である。スリットノズル2は、2つのノズルボディ23、25と、これらノズルボディ23、25にY方向から挟まれるノズルシム27とを有する。ノズルボディ23、25はそれぞれX方向に同一の幅で延設され、YZ断面において台形状の下端部23a、25aと矩形状の上端部23b、25bとを有する。ノズルボディ23、25の内側(ノズルシム27側)の面はそれぞれZX平面に平行な平面である。一方、ノズルボディ23、25の下端部23a、25aの外側(ノズルシム27の逆側)の面はそれぞれ下方に向かうに連れてノズルシム27に近づくように傾斜する傾斜面である。したがって、ノズルボディ23、25の下端部23a、25aで構成されるスリットノズル2の下端部2a(ノズルリップ部)は下方へ先細りの形状を有する。
【0033】
また、ノズルボディ25の内側の面には、塗布液の流路Fが形成されている。この流路Fは、X方向に平行に延設された横孔部Faと、横孔部Faの中央からZ方向に平行に延設された縦孔部Fbとを有する。そして、横孔部FaのX方向の両端が、ノズルボディ25の両側面で開いてそれぞれ側面開口A1、A2を構成し、縦孔部Fbの上端が、ノズルボディ25の上面で開いて上面開口A3を構成する。
【0034】
ノズルシム27は、ノズルボディ23、25と同一の幅でX方向に延設された平板形状の上辺部271と、上辺部271の両端からZ方向下方に延設された平板形状の側辺部272とを有する。そして、上辺部271の下方であって側辺部272の間の領域がスリットノズル2のキャビティCVとして機能する。キャビティCVの上端を規定する上辺部271は流路Fの横孔部Faよりも上方に位置し、キャビティCVは流路Fの横孔部Faに連通する。また、キャビティCVの下端が外側に開いてスリット状の吐出口21を構成する。このキャビティCVは、X方向において塗布領域RT(
図3)と同一の幅を有する。このように、ノズルシム27は、吐出口21の塗布幅を規定する塗布幅規定部材として機能する。
【0035】
そして、塗布装置1は、塗布液や洗浄液といった処理液をスリットノズル2に供給するための処理液供給システムSを備える。
図6は塗布装置が備える処理液供給システムの第1例を模式的に示す図である。同図に示すように、処理液供給システムSは、スリットノズル2に処理液を供給する供給機構8と、スリットノズル2から処理液を排出する排出機構9とを備える。
【0036】
供給機構8は、塗布装置1に付設された貯留タンクである塗布液供給源U1および洗浄液供給源U2にそれぞれバルブV1、V2を介して接続された脱気タンク81を有する。この脱気タンク81は、塗布液供給源U1から供給された塗布液あるいは洗浄液供給源U2から供給された洗浄液を一時貯留するものであり、塗布液中あるいは洗浄液中の溶存気体を除去する。なお、洗浄液は、塗布液の溶媒であるNMPであり、塗布液よりも低い粘度を有する。この洗浄液は、後述するスリットノズル2の洗浄処理で主に用いられる。
【0037】
この脱気タンク81には、バルブV3を介してエア供給源U3(用力)が接続されている。したがって、制御部100は、バルブV1を開いて脱気タンク81に塗布液を貯留してからバルブV3を開いて脱気タンク81内にエアを圧送することで、脱気タンク81の出力部811から塗布液を圧出できる。また、制御部100は、バルブV2を開いて脱気タンク81に洗浄液を貯留してからバルブV3を開いて脱気タンク81内にエアを圧送することで、脱気タンク81の出力部811から洗浄液を圧出できる。
【0038】
また、供給機構8は、脱気タンク81の出力部811に配管P1によって接続されたポンプ82を有する。このポンプ82は例えばチューブポンプ等の定量吐出ポンプである。ポンプ82の入力部821と脱気タンク81の出力部811とが配管P1により接続され、ポンプ82は、脱気タンク81から配管P1に圧出された処理液を、入力部821から吸い込んで出力部822から出力する。
【0039】
さらに、供給機構8はマニホールド83を有し、このマニホールド83の入力部831がポンプ82の出力部822に配管P2により接続されている。また、マニホールド83が有する2個の出力部832、833のうち、出力部832がスリットノズル2の側面開口A1にバルブV4を介して配管P3により接続されている。したがって、制御部100は、バルブV4を開いた状態でポンプ82を稼働させることで、マニホールド83を介して処理液をスリットノズル2に供給できる。
【0040】
また、供給機構8では、配管P1に圧力ゲージG1が取り付けられるとともに、マニホールド83に圧力ゲージG2が取り付けられる。圧力ゲージG1は、ポンプ82の入力側の負圧レベルを監視するために設けられ、圧力ゲージG2は、ポンプ82の出力側の正圧レベルを監視するために設けられている。つまり、制御部100は、これら負圧レベルあるいは正圧レベルがそれぞれの閾値より大きくなると、ポンプ82の回転速度を低下させることで、ポンプ82にかかる負荷を抑える。
【0041】
排出機構9は、スリットノズル2から排出された処理液を一時貯留するリサイクルタンク91を有する。リサイクルタンク91は、スリットノズル2の側面開口A2にバルブV5を介して配管P4により接続されるとともに、スリットノズル2の上面開口A3にバルブV6を介して配管P5により接続される。なお、配管P4、P5のバルブV5、V6よりリサイクルタンク91側の一部は共通化されている。したがって、制御部100は、バルブV5、V6を開くことで、スリットノズル2の側面開口A2および上面開口A3から排出された処理液を、リサイクルタンク91に排出することができる。
【0042】
また、リサイクルタンク91には、バルブV7を介してエア供給源U4(用力)が接続されている。したがって。制御部100は、バルブV7を開いてリサイクルタンク91内にエアを圧送することで、リサイクルタンク91の出力部911から処理液を圧出できる。また、リサイクルタンク91の出力部911は、供給機構8の配管P1に切換バルブV8を介して配管P6により接続されている。切換バルブV8は、2個の出力部v81、v82のうち一方を選択的に開く三方弁である。これら出力部v81、v82のうち、出力部v81が供給機構8の配管P1に接続され、出力部v82がドレインへ接続されている。したがって、制御部100は、切換バルブV8の出力部v81を開くことで、リサイクルタンク91から配管P6へ圧出された処理液を、供給機構8の脱気タンク81に戻すことができる一方、切換バルブV8の出力部v82を開くことで、この処理液をドレインから廃棄することができる。
【0043】
このように、処理液供給システムSでは、スリットノズル2の側面開口A2および上面開口A3から出た処理液をスリットノズル2の側面開口A1へ戻す循環経路CR(循環系)が配管P1〜P6によって構成されている(つまり、
図6において時計回りに処理液を循環させる循環経路CR(循環系)が構成されている)。また、配管P6にはフィルター10が着脱可能に取り付けられており、フィルター10を配管P6から取り外すことで、フィルター10を有さない第1循環系(循環経路CR)を構成できるとともに、フィルター10を配管P6に取り付けることで、フィルター10を有する第2循環系(循環経路CR)を構成できる。
【0044】
また、処理液供給システムSは、マニホールド83の出力部833とリサイクルタンク91とをバルブV9を介して接続する配管P7を有する。なお、配管P7のバルブV9よりリサイクルタンク91側の一部は、配管P4、P5のバルブV5、V6よりリサイクルタンク91側の一部と共通化されている。
【0045】
そして、制御部100は、基板3に塗布液を塗布する際には、バルブV5およびバルブV6を閉じた状態で、スリットノズル2の側面開口A1に塗布液を供給する。これによって、スリットノズル2では、側面開口A1から供給された塗布液が流路FからキャビティCVに広がり、吐出口21から吐出される(塗布処理)。
【0046】
また、制御部100は、塗布装置1が長期間の停止状態から稼働を再開するような場合には、バルブV1、V2を閉じた状態でバルブV3を開くことで、脱気タンク81に残留する塗布液を配管P1に排出する。制御部100はこれと並行して、バルブV4〜V6を閉じつつバルブV9を開いた状態でポンプ82を稼働させることで、配管P1からマニホールド83に到達した塗布液を、配管P2、P7を介してリサイクルタンク91に送る。さらに、制御部100は、バルブV7を開きつつ切換バルブV8の出力部v82を開くことで、脱気タンク81に送られてきた塗布液をドレインから廃棄する。
【0047】
さらに、制御部100は、塗布処理を行っていない期間に、
図7に示すノズル洗浄処理を実行する。ここで、
図7は塗布装置で実行されるノズル洗浄処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、塗布処理の終了後にノズル洗浄処理を開始する場合を例に説明する。したがって、ノズル洗浄処理の開始前では、バルブV4のみが開いており、その他のバルブV2〜V7、V9は閉じており、切換バルブV8では出力部v81が開いている。また、ポンプ82は停止している。
【0048】
図7のフローチャートが開始されると、スリットノズル2は封止部材62の上方に移動され、スリットノズル2の吐出口21が封止部材62により封止される(ステップS101)。続いて、バルブV3が開かれるとともに、バルブV5、V6が開かれる。これによって、塗布液供給源U1から脱気タンク81への塗布液の供給が停止した状態で、脱気タンク81へのエアの圧送が実行されるため、配管P1〜P3およびスリットノズル2内に残存していた塗布液は、配管P4、P5を介してリサイクルタンク91へ送られる(ステップS102)。これと並行して、バルブV7が開かれるとともに、切換バルブV8の出力部v82が開かれ、リサイクルタンク91に送られてきた塗布液は、ドレインから廃棄される。
【0049】
続いて、第1循環洗浄処理が実行される(ステップS103)。具体的には、ポンプ82の稼働が開始されるとともにバルブV2が開かれて、洗浄液供給源U2からの洗浄液が、配管P1〜P3を介してスリットノズル2の側面開口A1に供給される。そして、スリットノズル2では、側面開口A1から洗浄液が流路FおよびキャビティCVに流入する。この際、吐出口21は封止されているため、流入した洗浄液は側面開口A2および上面開口A3から流出し、配管P4、P5を介してリサイクルタンク91に送られる。これと並行して、切換バルブV8の出力部v81が開かれ、リサイクルタンク91に到達した洗浄液は、配管P6を介して配管P1に戻る。こうして、フィルター10を有さない循環経路CR、すなわち第1循環系で循環する洗浄液によって、スリットノズル2の流路FおよびキャビティCVを洗浄することができる。
【0050】
この第1循環洗浄処理が完了すると、ポンプ82を停止するとともにバルブV2、V7を閉じて、循環経路CRを循環していた洗浄液をリサイクルタンク91に回収しつつ、エア供給源U3から配管P1〜P5にエア(ドライエア)を導入する(エアパージ)。そして、バルブV3が閉じられてエアパージが停止してから、マンマシンインターフェース7がスリットノズル2の取り外しが可能になったことを報知する表示を行う(ステップS105)。
【0051】
これを受けて、作業者はスリットノズル2をノズル支持体51の装着箇所510から取り外し、このスリットノズル2に所定の手作業(所定作業)を実行する(ステップS106)。この手作業の内容は例えば、スリットノズル2を各パーツ21、23、25に分解して、それぞれを洗浄する分解洗浄作業や、次に実行する塗布処理での塗布領域RTに応じてノズルシム27を交換するシム交換作業が挙げられる。スリットノズル2への手作業が完了すると、作業者は、このスリットノズル2をノズル支持体51の装着箇所510に取り付ける(ステップS107)。スリットノズル2を取り付けた旨を作業者がマンマシンインターフェース7に入力すると、マンマシンインターフェース7が循環経路CRへのフィルター10の取り付けを要求する表示を行う(ステップS108)。
【0052】
フィルター10を取り付けた旨を作業者がマンマシンインターフェース7に入力すると、第2循環洗浄処理が実行される(ステップS109)。具体的には、ポンプ82の稼働が開始されるとともに、バルブV7が開かれて、リサイクルタンク91に回収されていた洗浄液が配管P6、P1〜P3を介してスリットノズル2の側面開口A1に供給される。そして、スリットノズル2では、側面開口A1から洗浄液が流路FおよびキャビティCVに流入する。この際、吐出口21は封止されているため、流入した洗浄液は側面開口A2および上面開口A3から流出し、リサイクルタンク91に送られる。こうして、フィルター10を有する循環経路CR、すなわち第2循環系で循環する洗浄液によって、スリットノズル2の流路FおよびキャビティCVを洗浄することができる。
【0053】
この第2循環洗浄処理が完了すると、切換バルブV8の出力部v82を開いて、リサイクルタンク91に戻ってきた洗浄液をドレインから廃棄する。続いて、ポンプ82を停止するとともに切換バルブV8の出力部v81を開いて、エア供給源U4から配管P6、P1〜P5にエア(ドライエア)を導入(パージ)する(ステップS110)。続いて、マンマシンインターフェース7が循環経路CRからのフィルター10の取り外しを要求する表示を行う(ステップS111)。そして、フィルター10を取り外した旨を作業者がマンマシンインターフェース7に入力すると、バルブV7を閉じつつ、バルブV1、V3を開くことで配管P1〜P5およびスリットノズル2に塗布液を充填する(ステップS112)。
【0054】
以上に説明したように、
図7に示すノズル洗浄処理(ノズル洗浄方法)では、スリットノズル2の吐出口21を封止した状態で、側面開口A2および上面開口A3から出て側面開口A1に戻る第1循環系で洗浄液を循環させてから(第1循環洗浄処理)、スリットノズル2が塗布装置1の装着箇所510から取り外される。これによって、作業者は塗布液の付着量が少ない比較的清浄なスリットノズル2に対して所定の手作業を実行できる(ステップS106)。また、手作業が実行されたスリットノズル2が塗布装置1の装着箇所510に取り付けられると、スリットノズル2の吐出口21を封止した状態で、側面開口A2および上面開口A3から出て側面開口A1に戻る第2循環系で洗浄液を循環させる(第2循環洗浄処理)。したがって、第2循環系で循環する洗浄液によってスリットノズル2の流路FおよびキャビティCVからパーティクルを洗い流すことができる。しかも、第2循環系は側面開口A2および上面開口A3から側面開口A1までの間にフィルター10を有するため、洗い流されたパーティクルをフィルター10で捕集して、このパーティクルがスリットノズル2の流路FやキャビティCVに再び戻るのを抑制できる。こうして、手作業のために塗布装置1から取り外されたスリットノズル2に付着したパーティクルを除去することが可能となっている。
【0055】
ちなみに、この実施形態では、スリットノズル2を取り外す前のスリットノズル2の洗浄(第1循環洗浄処理)では、フィルター10を有さない第1循環系で洗浄液を循環させているのに対し、スリットノズル2を取り付けた後のスリットノズル2の洗浄(第2循環洗浄処理)では、フィルター10を有する第2循環系で洗浄液を循環させる。このようにフィルター10を使い分ける理由の一つは次の通りである。つまり、第1循環系での洗浄は、主としてスリットノズル2の流路FおよびキャビティCVの内壁等に固着した塗布液の成分(溶質)を洗浄液(溶媒)で洗い流すために実行される。しかも、第1循環系での洗浄の実行タイミングは作業者による所定作業の実行前であるため、第1循環系にはパーティクルは存在せず、そもそもフィルター10が必要でない。一方、第2循環系での洗浄は、主としてスリットノズル2の取り外しに伴ってスリットノズル2の流路FおよびキャビティCVの内壁等に付着したパーティクルを除去するために実行される。かかるパーティクルが洗浄液の循環に伴ってスリットノズル2の流路FおよびキャビティCVに戻ると、後の塗布処理が受ける影響は大きい。そこで、第1循環系での洗浄(第1循環洗浄処理)ではフィルター10を用いないことでフィルター10の消耗を抑えるとともに、第2循環系での洗浄(第2循環洗浄処理)ではフィルター10を用いることでパーティクルを捕集することとしている。
【0056】
また、この実施形態では、塗布液より粘度の低い洗浄液を循環経路CRで循環させている。したがって、比較的目の細かいフィルター10を用いることができ、フィルター10によってパーティクルを効率的に捕集することが可能となっている。
【0057】
さらに、この実施形態では、スリットノズル2の吐出口21を封止しつつ洗浄液を循環させることでスリットノズル2の洗浄を行っており、換言すればノズル洗浄に洗浄液を循環利用している。したがって、洗浄液の消費を抑えることが可能となっている。
【0058】
さらには、第1循環洗浄処理(ステップS103)で循環させた洗浄液を、第2循環洗浄処理(ステップpS109)で循環させている。このように第1循環洗浄処理での洗浄と第2循環洗浄処理での洗浄とで洗浄液を共用することで、洗浄液の消費をより効果的に抑えることが可能となっている。
【0059】
また、第1循環洗浄処理(ステップS103)の後であって、スリットノズル2を装着箇所510から取り外す前に、循環経路CRにドライエアを導入するステップS104を備える。かかる構成では、循環経路CRに導入された気体によってスリットノズル2の流路FおよびキャビティCVの洗浄液を押し出してから、スリットノズル2を取り外すことができる。その結果、作業者は、乾燥したスリットノズル2に対して手作業を行うことができる。
【0060】
また、第2循環洗浄処理の後に、循環経路CRにドライエアを導入するステップS110を備える。かかる構成では、循環経路CRに導入されたドライエアによってスリットノズル2の流路FおよびキャビティCVの洗浄液を押し出すことができる。その結果、スリットノズル2の流路FおよびキャビティCVに残る洗浄液が、後に実行される塗布処理に影響することを抑制できる。
【0061】
また、この実施形態では、塗布液はポリイミド前駆体および溶媒を含み、洗浄液は塗布液の溶媒である。このようにポリイミド前駆体を含む塗布液は高い粘度を有するため、スリットノズル2の流路FおよびキャビティCVの内壁に固着しやすい。したがって、特許文献1で記載されているような洗浄だけでは足りず、手作業による洗浄を行う必要性が高い。そのため、手作業の際にパーティクルが付着するといった問題が発生しやすい。そこで、
図7に示したように、スリットノズル2の取り付け後に、フィルター10を有する循環経路CR(第2循環系)で洗浄液(溶媒)を循環させることで、スリットノズル2の流路FおよびキャビティCVからパーティクルを除去することが特に好適となる。
【0062】
図8は塗布装置が備える処理液供給システムの第2例を模式的に示す図である。以下では、
図6に示した第1例との差異点を中心に説明することとし、共通点については相当符号を付して適宜説明を省略する。ただし、第1例と共通する構成を備えることで、第1例と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0063】
図8の第2例が
図6の第1例と異なるのは、循環経路CRの構成である。つまり、第2例の循環経路CRでは、切換バルブV8とフィルター10との間で切換バルブV10が配管P6に取り付けられている。この切換バルブV10は、2個の出力v101、v102のうち一方を選択的に開く三方弁である。そして、切換バルブV10の2個の出力v101、v102のうち、出力v101がフィルター10の出力側に配管P8により接続され、出力v102がフィルター10の入力側に接続されている。
【0064】
したがって、切換バルブV10の出力v101が開かれると、リサイクルタンク91から配管P6に圧出された処理液は、フィルター10をバイパスして供給機構8の配管P1に戻る。一方、切換バルブV10の出力v102が開かれると、リサイクルタンク91から配管P6に圧出された処理液は、フィルター10を通過してから供給機構8の配管P1に戻る。このように、循環経路CR(循環系)は、スリットノズル2の側面開口A2および上面開口A3から出てスリットノズル2の側面開口A1に戻る経路として第1経路CR1および第2経路CR2を有する。ここで、第1経路CR1は、スリットノズル2の側面開口A2および上面開口A3から出てフィルター10を介さずに(バイパスして)スリットノズル2の側面開口A1に戻る経路であり、第2経路CR2は、スリットノズル2の側面開口A2および上面開口A3から出てフィルター10を通過してからスリットノズル2の側面開口A1に戻る経路である。
【0065】
かかる構成の処理液供給システムSでは、フィルター10を着脱するかわりに、切換バルブV10の出力を出力v101と出力v102との間で切り換えることで、
図7のノズル洗浄方法を実行することができる。つまり、ステップS103の第1循環洗浄処理では、切換バルブV10の出力v101を開くことで、第1経路CR1で洗浄液を循環させる。これによって、フィルター10を有しない第1循環系で洗浄液を循環させて、スリットノズル2の流路FおよびキャビティCVを洗浄できる。また、ステップS109の第2循環洗浄処理では、切換バルブV10の出力v102を開くことで、第2経路CR2で洗浄液を循環させる。これによって、フィルター10を有する第2循環系で洗浄液を循環させて、スリットノズル2のキャビティCVを洗浄できる。
【0066】
図9は塗布装置が備える処理液供給システムの第3例を模式的に示す図である。以下では、
図6に示した第1例との差異点を中心に説明することとし、共通点については相当符号を付して適宜説明を省略する。ただし、第1例と共通する構成を備えることで、第1例と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0067】
図9の第3例が
図6の第1例と異なるのは、バルブV4とスリットノズル2の側面開口A1との間において、配管P3がスリットノズル2の側面開口A2に配管P9によって接続されている点である。また、第1例で設けられていたバルブV5および配管P4は、第3例では存在しない。つまり、マニホールド83の出力部832から出力された塗布液は、バルブV4を介して、側面開口A1および側面開口A2に供給される。したがって、塗布処理の実行時のスリットノズル2では、側面開口A1および側面開口A2から流路Fに流入した塗布液がキャビティCVに広がって、吐出口21から吐出される。一方、
図7の第1循環洗浄処理(ステップS103)あるいは第2循環洗浄処理(ステップS109)の実行時のスリットノズル2では、側面開口A1および側面開口A2から流路Fに流入した洗浄液が上面開口A3から排出される。
【0068】
以上のように上記実施形態では、塗布装置1が本発明の「塗布装置」の一例に相当し、スリットノズル2が本発明の「ノズル」の一例に相当し、吐出口21が本発明の「吐出口」の一例に相当し、第1例(
図6)の側面開口A1、第2例(
図8)の側面開口A1、第3例(
図9)の側面開口A1および側面開口A2がそれぞれ本発明の「供給口」の一例に相当し、第1例(
図6)の側面開口A2、上面開口A3、第2例(
図8)の側面開口A2、上面開口A3および第3例(
図9)の上面開口A3がそれぞれ本発明の「排出口」の一例に相当し、流路FおよびキャビティCVが本発明の「内部空間」の一例に相当し、ノズル支持体51が本発明の「ノズル支持部」の一例に相当し、装着箇所510が本発明の「装着箇所」の一例に相当し、処理液供給システムSが本発明の「洗浄液循環手段」の一例に相当し、循環経路CRが本発明の「循環経路」の一例に相当し、第2例(
図8)の第1経路CR1が本発明の「第1経路」の一例に相当し、第2経路CR2が本発明の「第2経路」の一例に相当し、配管P1〜P6が本発明の「配管」の一例に相当し、ポンプ82が本発明の「送液部」の一例に相当し、フィルター10が本発明の「フィルター」の一例に相当し、封止部材62が本発明の「封止手段」の一例に相当し、基板3が本発明の「対象物」の一例に相当し、ドライエアが本発明の「気体」の一例に相当する。
【0069】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、第1循環洗浄処理(ステップS103)で利用した洗浄液を第2循環洗浄処理(ステップS109)で再利用している。しかしながら、第1循環洗浄処理で利用した洗浄液を第1循環洗浄処理の終了後に廃棄して、第2循環洗浄処理では新たな洗浄液を利用しても良い。
【0070】
また、循環経路CRで塗布液や処理液を循環させる駆動源であるポンプ82の具体的構成は種々考えられる。そこで、上述に例示したチューブポンプ以外の種類のポンプをこの駆動源として用いても良い。
【0071】
また、ステップS104、S110で循環経路CRに導入される気体の種類はドライエアに限られず、例えば窒素等でも良い。
【0072】
また、洗浄液として利用できる液体は、塗布液の溶媒、すなわちNMPに限られない。したがって、例えばシンナー等の他の液体を洗浄液として用いても良い。
【0073】
また、塗布液として利用できる液体は、ポリイミド前駆体とNMPとを含むものに限られない。したがって、耐エッチング被膜なるフォトレジスト液、カラーフィルター用フォトレジスト液、シリコン、ナノメタルインクまたは導電性材料を含むスラリー(ペースト)等、種々の塗布液を用いることが可能である。
【0074】
さらに、塗布対象となる基板3についても、液晶表示装置用ガラス基板、半導体基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルター用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板等の精密電子装置用基板、矩形ガラス基板、フィルIム液晶用フレキシブル基板、有機EL用基板等の種々の基板を用いることができる。