(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、配送物を配送する場合、配送物の配送元及び配送先の住所や氏名あるいは名称等の配送情報が記入された配送ラベルが用いられ、配送情報が記入された配送ラベルが配送物に貼付され、配送ラベルに記入された配送情報に従って配送物が配送先に配送されている。このような配送ラベルにおいては、配送物が配送先に配送された後に配送業者が持ち帰る配達票が分離可能に構成されたものが用いられている。この配送ラベルを用いた場合、配送物が配送先に配送されると、配達票に受領印が押下され、配達票が配送ラベルから分離されて配送業者によって持ち帰られることにより、配送物が配送先に配送されたことが管理される。
【0003】
上述したように配達票を配送物から分離できる配送ラベルとしては、例えば、表面基材の裏面に樹脂層を融着によって直接貼着するとともに、この樹脂層の裏面に粘着層を積層し、この粘着層によって配送物に貼付するものが考えられている。このような配送ラベルは、樹脂層が融着によって表面基材に貼着されていることによって表面基材と樹脂層とが剥離可能に接着された状態となっているため、配送物に貼付された後に、配送情報が記入された表面基材を樹脂層から剥離することで配送物から分離することができる。
【0004】
ところが、上記のように表面基材に樹脂層を直接貼着したものにおいては、表面基材と樹脂層とが剥離可能に接着された状態となっているものの、剥離可能な接着剤等を用いることなく樹脂層そのものを融着等の手段によって表面基材に直接貼着しているため、表面基材と樹脂層との貼着力の調整が困難である。そのため、表面基材と樹脂層との貼着力が弱いと、配送物の配送途中で表面基材が配送物から不用意に分離してしまい、また、表面基材と樹脂層との接着力が強いと、表面基材を配送物から分離しようとする際に表面基材が破れる虞があるとともに、表面基材が樹脂層から剥離された後に表面基材にカールが生じてしまうことになる。
【0005】
そこで、表面基材に樹脂層が擬似接着された構成において、表面基材と樹脂層との間に、樹脂を含有し、剥離力が互いに異なる2層の剥離層を介在させた積層ラベルが考えられており、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された積層ラベルにおいては、表面基材の下側の全面に剥離力が軽い第1の剥離層を積層し、この第1の剥離層の下側の全面に剥離力が重い第2の剥離層を積層し、この第2の剥離層の下側に樹脂層を積層し、それにより、表面基材の配送物からの不用意な分離を回避するとともに、表面基材を配送物からきれいに分離することができるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1に開示された積層ラベルにおいては、表面基材の下側の全面に第1の剥離層が積層され、この第1の剥離層の下側の全面に第2の剥離層が積層され、さらに、この第2の剥離層の下側の全面に樹脂層が積層された構成となっているため、この積層ラベルを使用するために、樹脂層の第2に剥離層との積層面とは反対側の面に接着された剥離紙を勢いよく剥離した場合、2つの剥離層が部分的に剥離し、その剥離部分がその後広がることにより2つの剥離層間に気泡が生じてしまう虞がある。そして、2つの剥離層がそれぞれ樹脂を含有したものであることから、生じた気泡が外部に抜けにくく、その後の使用状態に悪影響を及ぼすこととなってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、表面シートにフィルム層が積層され、表面シートの一部がフィルム層から剥離可能な積層ラベルにおいて、表面シートのフィルム層から剥離可能な領域にて不用意な層間剥離の発生や被着体からの剥離を回避できるとともに、表面シートのフィルム層から剥離可能な領域を被着体からきれいに分離することができる積層ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
互いに分離可能な第1及び第2の領域を具備する表面シートと、
前記表面シートの一方の面に積層されたフィルム層と、
前記フィルム層の前記表面シートとの積層面とは反対側の面に積層された粘着層と
、
前記フィルム層の前記表面シートとの積層面とは反対側の面に前記粘着層を介して剥離可能に接着された剥離紙とを有し、
前記表面シートのうち前記第2の領域は前記フィルム層に直接積層され、
前記表面シートのうち前記第1の領域と前記フィルム層との間に、前記第1の領域に積層された第1の剥離層と、
前記第1の剥離層を構成する材料とは異なる材料から構成されることで前記第1の剥離層とは剥離力が異なり、前記第1の剥離層の前記第1の領域との積層面とは反対側の面に部分的に積層された第2の剥離層とを有する。
【0010】
上記のように構成された本発明においては、表面シートが、互いに分離可能な第1及び第2の領域を具備する構成において、表面シートのうち第1の領域とフィルム層とが、剥離力が互いに異なる第1及び第2の剥離層を介して積層されていることにより、第1の領域とフィルム層との貼着力の調整が容易となり、それにより、被着体からの不用意な剥離が回避されるとともに、被着体から第1の領域をきれいに分離することができる。さらにそのような構成において、第2の剥離層が第1の剥離層に部分的に積層されていることにより、第1の領域とフィルム層との間に剥離力が重い領域が部分的に存在し、それにより、第1の領域とフィルム層との間にて不用意な層間剥離が生じにくく、例え、使用時に、粘着層を介してフィルム層に剥離可能に貼着された剥離紙を剥離する際等にて、第1の剥離層とフィルム層との間の一部にて層間剥離が生じたとしても、第1の剥離層とフィルム層との層間においては、第2の剥離層が介在する部分と介在しない部分とで剥離力が異なることになるため、剥離力が重くなる領域にてその剥離部分の広がりが止まることとなり、第1の剥離層とフィルム層との間にて気泡が生じてしまうことが回避される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面シートが、互いに分離可能な第1及び第2の領域を具備し、第1の領域がフィルム層から剥離可能な構成において、第1の領域とフィルム層とが、剥離力が互いに異なる第1及び第2の剥離層を介して積層され、さらに、第2の剥離層が第1の剥離層に部分的に積層されていることにより、表面シートにフィルム層が積層され、表面シートの一部がフィルム層から剥離可能な積層ラベルにおいて、表面シートのフィルム層から剥離可能な領域にて不用意な層間剥離の発生や被着体からの剥離を回避できるとともに、表面シートのフィルム層から剥離可能な領域を被着体からきれいに分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の積層ラベルの実施の一形態を示す図であり(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図である。
図2は、
図1に示した配送ラベル1における伝票用紙10の裏面の構成を示す図である。
【0015】
本形態における積層ラベルは
図1に示すように、表面シートとなる伝票用紙10と、第1の剥離層となるシリコン層50aと、第2の剥離層となるニス層50bと、フィルム層30と、粘着層40と、剥離紙20とから構成されている。
【0016】
伝票用紙10は、長方形の感熱紙や上質紙からなり、第1の領域となる配達票11と、第2の領域となる貼付票12及びのし片13とがスリット14を介して分離可能に連接して構成されている。伝票用紙10の表面には、この配送ラベル1が貼付されて配送される配送物の配送先の住所や氏名あるいは名称、品名等の配送情報が印字あるいは記入される配送情報表示領域11a,12aが配達票11及び貼付票12となる領域にそれぞれ設けられており、配達票11となる領域の表面には、さらに、配送物の配送先にて受領印が押下される押印領域11bが設けられている。なお、配達票11と貼付票12及びのし片13とを分離可能とする切り離し線としては、スリット14に限らず、ミシン目や、特定の形状の切り込みが一方向に配列してなる、いわゆるジッパー等であってもよい。
【0017】
伝票用紙10の裏面には、配達票11となる領域のみに、シリコンが、例えば1〜10μmの厚さで塗布されることでシリコン層50aが積層されている。このシリコン層50aとしては、例えば、2アクリル酸ヘキサメチレンが10%、シリコンが5〜10%、感光性樹脂が1〜20%、感光性モノマーが40〜70%、光開始剤が1〜10%、その他添加剤が5%未満それぞれ含有されてなる紫外線硬化型インキを用いることができ、その一例としては、株式会社T&K TOKA製のベストキュアーUVコートニス/フレキソニスシリーズを用いることが考えられる。
【0018】
シリコン層50aの伝票用紙10との積層面とは反対側の面には、ニスが、例えば1〜5μmの厚さでパターン塗布されることでニス層50bが部分的に積層されている。このニス層50bとしては、例えば、固形パラフィンが1〜5%、シリカが0.1〜5%、感光性樹脂が1〜20%、感光性モノマーが30〜70%、光開始剤が5〜15%、その他添加剤が5%未満それぞれ含有されてなる紫外線硬化型インキを用いることができ、その一例としては、株式会社T&K TOKA製のUVハクリOPニスシリーズを用いることが考えられる。ニス層50bは、例えば、
図2に示すように、配達票11をフィルム層30から剥離する際の剥離開始端となる角部から、その角部に対向する角部に向かう方向を長辺とする複数の長方形が一定の規則で配列され、その長方形の内部に積層されている。これは、シリコン層50a上に、例えば50%の濃度のスクリーン印刷によってニス層50bを積層することで実現することが考えられる。この場合、配達票11となる領域の周縁部を除いた領域において、シリコン層50a上にニスがニス層50bのベースとしてその全面に極めて薄く塗布され、その上に、
図2に示すようなパターンでニスが塗布されてニス層50bが構成されることも考えられるが、ベースとなる部分は、パターンで塗布された部分に対してその厚さが極めて薄いため、シリコン層50a上にニス層50bが部分的に積層されたものと同等なものとなる。
【0019】
シリコン層50a及びニス層50bを上記のような構成とすることにより、ニス層50bの剥離力がシリコン層50aの剥離力よりも軽くなっている。
【0020】
フィルム層30は、オレフィン系樹脂等からなり、上述したようにシリコン層50a及びニス層50bが積層された伝票用紙10の裏面の全面に積層されている。それにより、伝票用紙10のうち配達票11においてはシリコン層50a及びニス層50bによって剥離可能にフィルム層30に貼着され、貼付票12及びのし片13においてはシリコン層50a及びニス層50bを介さずにフィルム層30に剥離困難に貼着されている。なお、剥離困難とは、伝票用紙10のうち貼付票12やのし片13をフィルム層30から人間の手によって剥離した場合に、伝票用紙10やフィルム層30自体が裂かれたり厚み方向に分割されたりする程度に強く貼着されていることである。このフィルム層30としては、その厚さが、坪量にて25±5g程度のものが考えられ、例えば、株式会社MORESCO製のモレスコメルトEP−80を用いることが考えられる。
【0021】
フィルム層30の裏面には、その全面に、粘着剤が、例えば5〜20μmの厚さで塗布されることで粘着層40が積層されている。この粘着層40としては、例えば、株式会社MORESCO製のモレスコメルトTN−567Zを用いることが考えられる。
【0022】
そして、フィルム層30の裏面に粘着層40によって剥離紙20が剥離可能に接着されている。剥離紙20は、例えば、グラシン紙の表面にシリコンが塗布されたものが考えられ、シリコンが塗布された面にフィルム層30が剥離可能に接着されることになる。
【0023】
以下に、上述した配送ラベル1の製造方法について説明する。
【0024】
図3は、
図1及び
図2に示した配送ラベル1が製造されていく様子を示す配送ラベル1の断面図である。
【0025】
図1及び
図2に示した配送ラベル1を製造する場合はまず、ウェブ状となった伝票用紙10がロールから引き出され、伝票用紙10の表面に、配送情報表示領域11a,12a及び押印領域11bを構成する枠等のプレ印刷が施される。
【0026】
次に、伝票用紙10の裏面のうち、配達票11となる領域の全面に、上述したような材料からなるシリコンが塗布されることによってシリコン層50aが積層される(
図3(a))。
【0027】
次に、シリコン層50aの伝票用紙10との積層面とは反対側の面の全面に、上述したような材料からなるニスが、
図2に示したようなパターンで塗布されることによってニス層50bが積層される(
図3(b))。
【0028】
次に、伝票用紙10のシリコン層50a及びニス層50bが積層された面において、配達票11、貼付票12及びのし片13に渡る全面に、上述したような材料からなる樹脂が塗布されることにより、フィルム層30が形成、積層される(
図3(c))。
【0029】
そして、フィルム層30が固化した後、フィルム層30の伝票用紙10、シリコン層50a及びニス層50bとの積層面とは反対側の面の全面に、粘着剤が塗布されることにより、粘着層40が積層される(
図3(d))。
【0030】
その後、フィルム層30に粘着層40を介して剥離紙20が剥離可能に接着される。また、伝票用紙10の配達票11と貼付票12との境界部分にスリット14が入れられる(
図3(e))。
【0031】
このようにして、伝票用紙10の裏面に、シリコン層50a、ニス層50b、フィルム層30及び粘着層40が積層され、粘着層40を介して剥離紙20が接着されてなるウェブ状の配送ラベル1が製造され、配送ラベルロールとして巻き取られて保管され、その後、配送ラベル1の使用時に単片状の配送ラベル1に断裁されることになる。
【0032】
以下に、上述した配送ラベル1の使用方法及びその際の作用について説明する。
【0033】
図4は、
図1及び
図2に示した配送ラベル1が配送物に貼付されるまでの使用方法を説明するための図である。
【0034】
上述した配送ラベル1は、
図4(a)に示すように、配送情報表示領域11a,12aのそれぞれに、配送物の配送先の住所や氏名あるいは名称、品名等の配送情報11c,12cが印字または記入された後、配送物に貼付するために剥離紙20が剥離される。この際、配達票11を剥離しやすくするために、伝票用紙10とフィルム層30との間に、ニス層50bによって剥離力が軽い領域が部分的に存在していることで、剥離紙20を剥離した場合、フィルム層30とニス層50bとの間にて層間剥離となる剥離部分が生じてしまう虞がある。
【0035】
図5は、
図1及び
図2に示した配送ラベル1において剥離紙20を剥離する際に層間剥離が生じた場合の作用を示す断面図である。
【0036】
剥離紙20を剥離する際、勢いよく剥離紙20を剥離すると、
図5(a)に示すように、フィルム層30とニス層50bとの間にて層間剥離となる剥離部分60が生じてしまう場合がある。
【0037】
ところが、
図1及び
図2に示した配送ラベル1においては、ニス層50bがシリコン層50a上に部分的に積層されていることにより、剥離紙20を剥離する際に、フィルム層30とニス層50bとの間の一部に剥離部分60が生じたとしても、フィルム層30とシリコン層50aとの層間においては、ニス層50bが介在する部分と介在しない部分とで剥離力が異なることになるため、
図5(b)に示すように、ニス層50bが介在しないことで剥離力が重くなる領域にてその剥離部分60の広がりが止まることとなる。それにより、フィルム層30とシリコン層50aやニス層50bとの間にて気泡が生じてしまうことが回避されることになる。
【0038】
剥離紙20が剥離されると、フィルム層30に積層された粘着層40が表出し、
図4(b)に示すように、表出した粘着層40によって配送ラベルが被着体である配送物2に貼付される。配送ラベルが貼付された配送物2は、配送情報表示領域11a,12aに印字または記入された配送情報11c,12cに従って配送先に配送されていく。
【0039】
図6は、
図1及び
図2に示した配送ラベル1が配送物に貼付された後の使用方法を説明するための図である。
【0040】
図1及び
図2に示した配送ラベル1が貼付された配送物2が配送先に配送され、
図6(a)に示すように、配達票11に設けられた押印領域11bに受領印11dが押下された後、配達票11がフィルム層30から剥離されていく。配達票11はその裏面に積層されたシリコン層50a及びニス層50bによってフィルム層30から剥離可能となっているため、配達票11をフィルム層30から容易に剥離することができ、また、配達票11がスリット14によって貼付票12及びのし片13から分離可能となっているため、配達票11を貼付票12及びのし片13から分離することができる。それにより、
図6(b)に示すように、配達票11のみをフィルム層30から剥離することで配送ラベル1から分離して配送物2から剥離することができる。
【0041】
なお、ニス層としては、
図1及び
図2に示したもののように、配達票11を配送ラベル1から分離する際の分離開始端となる角部から、その角部に対向する角部に向かう方向を長辺とする複数の長方形が一定の規則で配列され、その長方形の内部に積層されたものに限らず、配達票11を配送ラベル1から分離する際の分離開始端となる角部から、その角部に対向する角部に向かう方向に延びた直線状に積層されたものであってもよく、また、これに直交する方向に延びた直線状に積層されたものであってもよい。さらに、一定の規則で並んだドット状に積層されたものであってもよく、また、ランダムに並んだ長方形等の所定の形状の内部に積層されたものであってもよい。
【0042】
また、本形態においては、伝票用紙10の配達票11となる領域の全面にシリコン層50aが積層され、シリコン層50aの伝票用紙10との積層面とは反対側の面にニス層50bが部分的に積層されているが、伝票用紙10の配達票11となる領域の全面にニス層50bが積層され、このニス層50bの伝票用紙10との積層面とは反対側の面にシリコン層50aが部分的に積層された構成としてもよい。
【0043】
また、本形態においては、ニス層50bの剥離力がシリコン層50aの剥離力よりも軽くなっているが、シリコン層50a及びニス層50bの厚さや、シリコン層50a及びニス層50bを構成する材料を調整したりすることで、ニス層50bの剥離力をシリコン層50aの剥離力よりも重くしてもよい。