(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記維持物質が、少なくとも0.01から10質量%の水溶性を有し、栄養素、タンパク質、ビタミン、成長因子、運動能力向上分子、阻害剤、アミノ酸源、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、金属イオン、有機酸、還元剤、キレート剤、酸化防止剤、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つから選択された少なくとも1つの維持物質を含む、請求項1または2記載の組成物。
前記非生分解性かつ水不溶性被包材コーティング中に0.001から10質量%の細孔形成剤を更に含み、該細孔形成剤の質量%が、前記被包材コーティングの100質量%に対する上乗せ添加に基づく、請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の様々な実施の形態を、もしあれば、図面を参照して、詳しく説明する。様々な実施の形態への言及は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、付随の特許請求の範囲によってしか限定されない。その上、本明細書に述べられたどの実施例も、限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の多くの可能な実施の形態のいくつかを単に述べたものである。
【0007】
実施の形態において、開示された組成物、およびその組成物を製造および使用する開示された方法は、例えば、下記に論じられるようなことを含む、1つ以上の有益な特徴または態様を提供する。請求項のいずれに列挙された特徴または態様も、概して、本発明の全ての面に適用できる。どの1つの請求項のどの列挙された1つまたは複数の特徴または態様も、どの他の請求項のどの他の列挙された特徴または態様と組み合わせても、または並び替えても差し支えない。
【0008】
定義
「成分(ingredient)」は、化学的起源または生物学的起源であるか否かにかかわらず、開示された持続放出製剤に使用できるどの化合物または構成成分(component)も称し、その製剤は、その後、細胞の成長または増殖、もしくは生物学的活性物質の細胞産生を継続または促進するために、細胞培養培地および培養基と接触させられる。「構成成分」、「栄養素」、「維持物質(sustenant)」、または「成分」は、置き換え可能に使用でき、全てが、そのような化合物を称する。細胞培養培地に使用できる成分の例としては、アミノ酸、塩、金属、糖、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質、および同様の物質、またはそれらの組合せが挙げられる。細胞のインビトロ(例えば、ガラス、プラスチックなどの中)またはエキソビボ(例えば、多細胞生物の外部またはそれから分離された細胞または組織)での培養を促進または継続できる他の成分は、特定の要求にしたがって、当業者が選択することができる。
【0009】
「半減期」は、ブドウ糖などの、製剤形態内に残る成分または維持物質の量が、崩壊が指数関数的ではなくても、半分に下落する任意の期間を称するために使用される。
【0010】
「含む」などの用語は、包括的であるが、限定的ではない、すなわち、包含的であるが排他的ではないことを意味する。
【0011】
例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、工程温度、工程時間、収率、流量、圧力、粘度、および同様の値、並びにそれらの範囲、または本開示の実施の形態を記載する際に用いられる、構成成分の寸法、および同様の値、並びにそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば、材料、組成物、複合体、濃縮物、構成部分、製造品、または使用製剤を調製するために使用される典型的な測定および取扱い手順により;これらの手順における不慮の誤りにより;製造、供給源、もしくは方法を実施するために使用される出発材料または成分の純度における違いにより;および同様の検討事項により生じ得る数量におけるばらつきを称する。「約」という用語は、特定の初期濃度または混合物を有する組成物または製剤の経時劣化のために異なる量、および特定の初期濃度または混合物を有する組成物または製剤の混合または処理のために異なる量も包含する。
【0012】
「随意的」または「必要に応じて」は、その後に記載された事象または状況が起こり得るか起こり得ないこと、およびその記載が、その事象または状況が生じる例および生じない例を含むことを意味する。
【0013】
実施の形態における「から実質的になる」は、例えば、
全組成物の100質量%に基づいて、60から96質量%の量の維持物質;1から20質量%の量のエチルセルロースまたは酢酸セルロース結合剤;および5から20質量%の量のエチルセルロース被包材コーティングを含む、エキソビボ細胞培養用持続放出組成物;および
ここに定義されるように、細胞培養物を持続放出組成物と接触させる工程を有してなる、水性培地中のエキソビボ細胞培養物に維持物質を持続的に提供する方法;
を称することができる。
【0014】
前記組成物、並びに本開示の組成物を製造する方法および使用する方法は、請求項に列挙された構成成分または工程に加え、その組成物の基本的性質および新規の性質に実質的に影響しない他の構成成分または工程、もしくは特定の装置または容器の形状、特定の添加剤または成分、特定の薬剤、特定の構造的材料または構成成分、特定のインキュベーションまたは培養条件、または同様の構造、材料、もしくは選択された工程変数などの製造方法および使用方法を含むことができる。
【0015】
名詞は、特に明記のない限り、少なくとも1つ、または1つ以上の対象を指す。
【0016】
当業者に周知の省略形が使用されることがある(例えば、時間の「h」または「hrs」、グラムの「g」または「gm」、ミリリットルの「mL」、室温の「rt」、ナノメートルの「nm」、および同様の省略形)。
【0017】
組成物、成分、添加剤、寸法、条件、および同様の属性に関して開示された特定の値および好ましい値、並びにそれらの範囲は、説明のためだけである;それらは、他の所定の値または所定の範囲内の他の値を排除するものではない。本開示の組成物および方法は、明示的または暗示的な中間値および中間範囲を含む、ここに記載された値、特定の値、より特定の値、および好ましい値の内の任意の値または任意の組合せを含み得る。
【0018】
ブドウ糖は、細胞培養物の積分生存細胞密度(IVCD)に対して直接影響する、バッチプロセスにおける増殖制限栄養源である。培地中のブドウ糖の開始濃度が低いと、培養物は、バッチプロセスの初期段階で栄養不足となり、それゆえ、IVCDが低くなる。バッチ培養の分野において、長期間に亘りブドウ糖を有効濃度に維持することが望ましい。この目的を達成するための方法の1つは、過剰なブドウ糖で培養を開始することであり、よって、ブドウ糖は代謝されるけれども、有効濃度を維持するのに十分な量がまだ残る。この手法において、バッチ培養の初期段階中にそのような過剰なブドウ糖を維持すると、大抵、細胞によるブドウ糖の利用効率が著しく低下し、これは転じて、乳酸濃度の増加と、最適範囲を下回るpHの低下をもたらす。そのような変化により、IVCDが減少してしまう。
【0019】
持続する長期の栄養素送達系は、1975年に最初に開発された単層錠(elementary osmotic pump)原理の改良(Santus, G., Formulation Screening and optimization of elementary osmotic system, J. Control rel., 1995; 35:1lを参照のこと)に基づく。この単層錠は、他の浸透圧性薬剤の有無にかかわらず、水溶性栄養素を含有する単層錠核からなる。高分子コーティングからなる半透膜が、その錠核を取り囲む。高分子コーティング膜は、水および栄養素に対して半透過性であり、剛性でもあり、栄養素の放出過程で構造的完全性を維持することができる。その膜は、錠剤中への水の流入に対して透過性であり、反対側は、錠剤からの可溶性栄養素の流出に対して透過性である。そのような系を細胞培養に導入した場合、培地からの水は、膜を通って核中に連続的に吸着され得、浸透活性栄養素が溶解する。このように、浸透圧の勾配が生じ、その状況下で、栄養溶質は、長期間に亘り膜を通って連続的に送り出される。この過程は、錠核の全内容物が溶け、外部環境と内部核との間の浸透圧が平衡化するまで定速で継続する。この浸透作用は、Kedem−Kachalskyの式で記載することができる(Friedman, M.H., Principles and Models of Biological Transport, Springer, Berlin, 1986, Chapter 5, pp 105-133; Chapter 8, pp 201-205を参照のこと):
【0021】
式中、Cは溶質濃度であり、J
vは嵩体積フラックスであり、σは膜の反発係数であり、ωは溶質に関する膜の透過性であり、ΔΠは浸透圧差である。
【0022】
錠剤は異なる表面積(A)を有することがある、または膜は、異なる厚さ(h)を有し得るので、これらのパラメータを式に導入することが都合よい。浸透圧と比べると、静水圧は取るに足らないので、放出速度(Q)は、以下の式から計算することができる(Lindstedt, et al., Osmotic pumping from KCl tablets coated with porous and non-porous ethylcellulose, Int. J. of Pharm., 1991; 67: 21-27を参照のこと):
【0024】
式中、L
pは膜の透水率であり、D
sは拡散放出であり、σは、錠剤に入る水とそこから出る溶質の透過性の比を示し、ΔΠは先に定義したような浸透圧差である。透過係数(L
p)は、放出速度およびσを決定する。セルロース系材料について、放出速度およびσの両方は、例えば、ポロゲンの添加により、変えることができる。
【0025】
実施の形態において、随意的なポロゲン添加剤は、錠剤処方が、特定の細胞培養用持続放出栄養素または供給用途に使用するのに適するであろうように、維持物質の放出速度を遅くする目的のために、錠剤処方から完全に省くことができるであろう。
【0026】
実施の形態において、本開示は、エキソビボ細胞培養用持続放出組成物であって、
維持物質、および結合剤を含む混合物と、
ここに定義されたような、その混合物を被包する被包材コーティングと、
を有してなる組成物を提供する。
【0027】
実施の形態において、本開示は、エキソビボ細胞培養用持続放出組成物であって、全組成物の100質量%に基づいて、中間値および中間範囲を含んで、
60から96質量%の量の維持物質;1から20質量%の量の、エチルセルロース、酢酸セルロース、またはそれらの組合せなどの結合剤を含む混合物と、
混合物を被包する、1から20質量%の量の、エチルセルロースなどの、非生分解性(すなわち、細胞培養期間中に被包材の生分解性がないかまたは非常に遅い、例えば、15から20日後の生分解がない)かつ水不溶性被包材コーティングと、
を有してなる組成物を提供する。
【0028】
実施の形態において、前記組成物は、任意の適切な剤形、例えば、錠剤、ペレット、粉末、マイクロカプセル化粒子、および同様の剤形、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つであり得る。
【0029】
実施の形態において、前記維持物質は、少なくともある程度の水溶性を有し得る、例えば、水中0.01から10質量%の維持物質であり得、例えば、栄養素、タンパク質、ビタミン、成長因子、運動能力向上分子、阻害剤、アミノ酸、金属イオン、有機酸、還元剤、キレート剤、酸化防止剤、および同様の構成要素、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つから選択された少なくとも1つの維持物質成分を含み得る。
【0030】
実施の形態において、前記維持物質は、糖、アミノ酸源、またはそれらの混合物の内の少なくとも1つから選択することができる。
【0031】
実施の形態において、前記維持物質は、ブドウ糖、チロシン、Ala−Gluジペプチド、またはそれらの混合物の内のの少なくとも1つから選択することができる。
【0032】
実施の形態において、前記維持物質は、糖であり得る。
【0033】
実施の形態において、前記維持物質は、ブドウ糖、または類似の化合物、およびそれらの組合せであり得る。
【0034】
実施の形態において、前記結合剤および前記被包材は、例えば、同じか異なる化合物であり得る。実施の形態において、選択された化合物が同じ場合、その構造および性質は、同じか異なり得、例えば、同じか異なる分子量、同じか異なる水溶性、同じか異なるエトキシル化などを有し得る。実施の形態において、結合剤は、例えば、エチルセルロースであり得、被包材は、例えば、エチルセルロースであり得る。実施の形態において、被包材は、例えば、生分解性かつ水不溶性であり得る。実施の形態において、被包材は、例えば、水不溶性被包材化合物と水溶性被包材化合物の混合物であり得る。
【0035】
実施の形態において、前記被包材は、例えば、被包材コーティングの100質量%の上乗せ添加で0.001から10質量%で細孔形成剤をさらに含み得る。
【0036】
実施の形態において、前記被包材は、例えば、非生分解性かつ水不溶性被包材コーティング中に0.001から10質量%の上乗せ添加で細孔形成剤をさらに含み得、この細孔形成剤の質量%は、被包材コーティングの100質量%に対する上乗せ添加に基づく。
【0037】
本開示の実施例は、例えば、トルエン/エタノール80:20中の、48数%のエトキシ基および22センチポアズの粘度を有するエチルセルロースを示した。例えば、43から50%のエトキシ置換基を有するエチルセルロース製品が、市販されている。ヒドロキシ基をエトキシ基で置換する程度は、被包フイルムの透水性および機械的性質に影響し得る。例えば、重量平均分子量が50,000である酢酸セルロースを結合剤として使用することができる。
【0038】
実施の形態において、エチルセルロース結合剤、エチルセルロース被包材、またはその両方は、化学的に架橋していない。
【0039】
実施の形態において、エチルセルロースなどの結合剤は、随意的な可塑剤をさらに含んで差し支えない。
【0040】
実施の形態において、持続放出組成物はヒドロゲルを含まない。
【0041】
実施の形態において、持続放出組成物は、例えば、中間値と中間範囲を含む、約1から約20日、約1から約15日、約1から約12日、約1から約10日、約1から約5日の放出半減期を有し得る。
【0042】
実施の形態において、本開示は、水性培地中のエキソビボ細胞培養物に維持物質を持続的に提供する方法であって、
水性培地中の前記細胞培養物および開示された持続放出組成物を接触させる工程、
を有してなる方法を提供する。
【0043】
あるいは、実施の形態において、本開示は、水性培地中の細胞培養物および開示された持続放出組成物を接触させる工程を有してなる、開示された持続放出組成物を使用する方法を提供する。
【0044】
実施の形態において、前記エキソビボ細胞培養物は、浮遊細胞、接着細胞、共培養細胞、またはそれらの組合せを含む。
【0045】
実施の形態において、前記細胞培養物は哺乳類浮遊細胞を含む。
【0046】
実施の形態において、前記接触させる工程は、前記持続放出組成物を固体剤形として細胞培養物に添加する工程を有する。
【0047】
実施の形態において、前記細胞培養物は、足場の使用により浮遊して増殖した接着哺乳類細胞を含む。
【0048】
実施の形態において、前記足場は、例えば、マイクロキャリアであり得る。
【0049】
実施の形態において、前記エキソビボ細胞培養物は、三次元足場内で増殖した接着哺乳類細胞を含む。
【0050】
実施の形態において、前記三次元足場は、例えば、ゲルマトリクス、ナノ繊維、および同様の材料、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つであり得る。
【0051】
実施の形態において、前記細胞培養物および前記持続放出組成物を接触させる工程は、例えば、持続放出組成物を細胞培養物に添加することによって行うことができ、その場合、持続放出組成物は、接触される細胞培養物、例えば、培地のみまたは培地と細胞の組合せの質量に基づいて、中間値および中間範囲を含む、0.001から5質量%の量で存在する。
【0052】
実施の形態において、前記細胞培養物を前記持続放出組成物と接触させる工程は、例えば、中間値および中間範囲を含む、細胞接種を開始する時点(t=0)から1日、2日、5日、10日、15日、20日、またはそれより長い期間、および同様の期間で行うことができる。
【0053】
実施の形態において、前記持続放出組成物は、培養中の様々な時点で細胞培養系に導入することができる。導入時間および間隔は、例えば、中間値および中間範囲を含む、接種時(t=0)から1日、2日、5日、10日、15日、20日、またはそれより長い期間、および同様の期間であり得る。導入のタイミングは、例えば、特定の細胞培養物の代謝プロファイル、並びに選択した放出系の特定の組成および設計に依存し得る。一般に、開示された放出系は、生じるかもしれない細胞培養培地のどのような不足または不均衡も補うまたは防ぐために使用することができ、その不足分は、代謝プロファイルによって特定することができる。
【0054】
実施の形態において、維持物質は、例えば、ブドウ糖であり得、そのブドウ糖は、例えば、中間値および中間範囲を含む、1時間から360時間、1時間から240時間、1時間から120時間の期間に亘り、例えば、0.1から5グラム/リットル(g/L)の量で細胞培養物中の細胞に送達することができる。
【0055】
実施の形態において、本開示は、上述した持続放出組成物を製造する方法であって、
結合剤(例えば、エチルセルロース)、維持物質(例えば、ブドウ糖)、非水性溶媒(例えば、ジオキサン)、および随意的な可塑剤(例えば、セバシン酸ジアルキル)を含む液体混合物を形成する工程、例えば、結合剤(例えば、エチルセルロース)、随意的な可塑剤、および非水性溶媒を含む溶液を、維持物質(例えば、ブドウ糖)、結合剤(例えば、エチルセルロース)、および非水性溶媒の混合物と混ぜ合わせる工程、
前記液体混合物を固形に濃縮する工程、
その固形を圧縮剤形に必要に応じて圧縮するまたは固める工程、および
その固形を被包材(例えば、エチルセルロース)で被覆する工程であって、被覆により形成されたコーティングが、例えば、中間値および中間範囲を含む、0.1から20質量%、1から18質量%、5から15質量%、および同様の厚さまたは質量の固形の質量に対する相対的質量増加により測定した厚さまたは質量を有する、工程、
を有してなる方法を提供する。
【0056】
実施の形態において、本開示は、細胞培養方法、または開示された持続放出製剤を使用する方法であって、例えば、
持続放出ブドウ糖錠剤を浮遊細胞培養物に添加することなどの、エキソビボ細胞培養物と、開示された持続放出剤形の内の少なくとも1つとを接触させる工程、
を有してなる方法を提供する。
【0057】
実施の形態において、1から約100の錠剤またはそれより多くを、細胞培養培地、生存細胞培養物、またはそれらの組合せと接触させる、またはそれに添加する、例えば、1から5の錠剤を1から10リットルの細胞培養培地に添加することができる。
【0058】
実施の形態において、本開示は、例えば、エキソビボ細胞培養用途における、維持または栄養素送達の方法を提供する。その栄養素は、持続放出送達組成物または系から分配され、その組成物は、例えば、1から15日、またはそれより長い期間に亘り、比較的遅い速度で、例えば、長期間の場合、0.1から5g/L/日の放出速度で栄養素を放出する。
【0059】
実施の形態において、本開示は、高分子または結合剤がヒドロゲルを形成しないまたはヒドロゲルとして挙動しない、持続放出製剤を提供する。
【0060】
実施の形態において、開示された持続放出製剤は、基本培地中の細胞培養物と接触させることができる。
【0061】
基本培地
細胞培養培地は、例えば、水性であり得、「基本培地」を形成するために、例えば、脱イオン蒸留水の溶液中に多数の成分を含み得る。開示された方法にしたがって、どの基本培地を使用しても差し支えない。基本培地は、例えば、以下の成分の1つ以上を含み得る:アミノ酸、ビタミン、有機塩、無機塩、微量元素、緩衝塩、および糖。基本培地が、例えば、1種類以上のアミノ酸、1種類以上のビタミン、1種類以上の無機塩、硫酸アデニン、ATP、1種類以上の微量元素、デオキシリボース、エタノールアミン、D形ブドウ糖、グルタチオン、N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)、または1種類以上の両性イオン緩衝液、ヒポキサンチン、リノール酸、リポイド酸、インスリン、フェノールレッド、ホスホエタノールアミン、プトレシン、ピルビン酸ナトリウム、チミジン、ウラシル、およびキサンチンを含み得ることが好ましい。これらの成分は市販されている。
【0062】
開示の培地に含むことのできるアミノ酸成分の例としては、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−シスチン、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−バリンが挙げられる。
【0063】
本開示の培地に含むことのできるビタミン成分の例としては、アスコルビン酸マグネシウム塩、ビオチン、塩化コリン、D−パントテン酸Ca
++、葉酸、i−イノシトール、メナジオン、ナイアシンアミド、ニコチン酸、パラアミノ安息香酸(PABA)、ピリドキサール、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ビタミンA酢酸塩、ビタミンB
12およびビタミンD
2が挙げられる。
【0064】
本開示の培地に含むことのできる無機塩成分の例としては、CaCl
2、KCl、MgCl
2、MgSO
4、NaCl、NaHCO
3、Na
2HPO
4、NaH
2PO
4H
2O、およびクエン酸酸化鉄キレートまたは硫酸第一鉄キレートが挙げられる。
【0065】
本開示の培地に含むことのできる微量元素の例としては、バリウム、臭素、コバルト、ヨウ素、マンガン、クロム、銅、ニッケル、セレン、バナジウム、チタン、ゲルマニウム、モリブデン、ケイ素、鉄、フッ素、銀、ルビジウム、スズ、ジルコニウム、カドミウム、亜鉛およびアルミニウムのイオンが挙げられる。これらのイオンは、例えば、微量元素塩で提供できる。
【0066】
前記培地に必要に応じて含むことのできる追加の成分は、例えば、インスリン(特に、インスリン−Zn
++として)およびトランスフェリンである。これらの追加の成分は、典型的な生物学的または生理学的濃度で培地中に配合することができる。トランスフェリンの代替物として、鉄イオンまたはキレート(例えば、クエン酸酸化鉄キレートまたは硫酸第一鉄)を培地中に使用できる。動物またはヒト由来インスリンの代わりに、組換えインスリンまたは亜鉛系塩(例えば、ZnClなど)を使用できる。
【0067】
図面を参照すると、
図1Aおよび1Bは、それぞれ、徐放栄養素錠剤を図示し、特徴付ける従来技術の説明図(
図1A)、および開示された持続放出製剤を製造する方法を示す説明図(
図1B)を示している。
図1Aは、徐放栄養素錠剤を特徴付ける従来技術の説明図を示しており、ここで、Π
1およびΠ
2は、それぞれ、錠剤の内側と外側の浸透圧であり、P
1およびP
2は、それぞれ、錠剤の内側と外側の静水圧であり、C
sは、錠剤の内側の活性化合物の濃度である。
【0068】
図1Bは、開示された持続放出組成物または製剤を製造する例示の方法であって、例えば、容器内で、エチルセルロースなどの結合剤高分子溶液を、その高分子(110)を溶媒(130)中に溶かすことによって、調製するまたは混ぜ合わせる工程を有してなる方法を示す説明図を示している。その溶液に可塑剤を必要に応じて添加しても差し支えない(図示せず)。D(+)形ブドウ糖などの維持物質(120)および前記結合剤高分子溶液のスラリーは、維持物質、および上述した結合剤高分子溶液、並びに必要に応じて追加の溶媒を混合することによって、調製することができる。混ぜ合わされた混合物は、蒸発させ(140)、または多数の蒸発容器(100)に分割し、次いで、濃縮または蒸発(140)させて、溶媒のいくらかまたは全てを除去して、例えば、未被覆塊(150)を得ることができる。この未被覆塊(150)は、必要に応じて、例えば、未被覆錠剤(160)、ペレット、丸薬、ビーズ、または同様の剤形に機械的に圧縮するまたは固めるなどして、さらに処理(155)しても差し支えない。この未被覆錠剤をコーティングで被覆(165)して、被覆錠剤(170)を得ることができる。
【0069】
本開示の実施の形態において、持続放出送達を達成するために、乾燥状態で水溶性栄養素を含有する核錠にセルロースコーティングを施した。コーティングは、可塑剤で安定化されたセルロース高分子からなることができる。コーティングは、水溶液に不溶性である高分子セルロース材料、可塑剤、および水溶液中に溶けることができ、コーティングから溶け出て、コーティングの気孔率を増やす水溶性細孔形成剤(すなわち、ポロゲン;例えば、粒径が均一なショ糖などの糖)からなることができる。気孔率が制御されたコーティングは、核組成物溶液の水侵入部位および維持物質出口部位の両方の機能を果たす。コーティングに使用される適切なセルロース材料は、例えば、酢酸セルロースおよびエチルセルロースであった。しかしながら、結合剤または被包コーティングとして、幅広いセルロースエステル、セルロース混合エステル、およびセルロースエーテルも使用できる。セルロース高分子の弾性率を低下させて、コーティングの柔軟性を増加させ、打錠中にコーティングの構造的完全性を保護するために、可塑剤を必要に応じて使用することができる。高分子化学において公知の典型的な可塑剤を使用することができる。一例として、100質量%のエチルセルロースコーティングとの混合に、上乗せ添加で10質量%のセバシン酸ジブチル可塑剤を使用した。
【0070】
開示された持続放出系は、錠剤、ペレット、ビーズ、粉末、マイクロカプセル、および同様の剤形を含む様々な形状因子で製造することができる。例えば、様々な栄養素、ビタミン、または小分子を含有する錠剤またはビーズを配合し、製造できる。組成の異なる錠剤、または放出特性が異なる錠剤を混合すると、特定の細胞培養系の進行している栄養素要件を満たすことのできる統合持続放出系、例えば、迅速放出製剤または徐放製剤を構築することができるであろう。
【0071】
生物医学研究および医薬産業において、哺乳類細胞培養技術が広く使用されている。哺乳類細胞における組換えタンパク質の産生は、一般に、スケールアップを容易にするために、懸濁適合細胞を使用して行われる。実験室規模の現代の細胞培養は、主に、一般にバッチ培養として行われる振盪培養に基づいている、すなわち、栄養素は、培養の開始時に添加される。工業的流加過程と比べて、振盪培養は、低い体積細胞および生成物収率により特徴付けられる。振盪フラスコは、バイオプロセス開発のための限られた情報しか提供しない;培養パラメータは、大抵、流加様式で再び最適化され、これにより、時間と労務費が著しく増える。変わりやすい振盪培養とは対照的に、うまく制御されたバイオリアクタスケールの培養において、流加技術が主に適用される。何故ならば、栄養素および代謝産物の濃度、酸素レベル、バイオマス密度、および培地のpHに関するより良い工程管理が与えられるからである。バッチ培養における工程管理能力の欠如が、バッチ様式で実施した工程および培地の最適化の結果を、流加操作様式のより大規模の産生に直接変換できない主な理由である。これらの課題を克服するために、小型バイオリアクタまたは自動化技術(例えば、Legmann, R., et al., A predictive high-throughput scale-down model of monoclonal antibody production in CHO cells. Biotechnol Bioeng., 2009; 104; 1107-1120;Thomas, D., et al., A novel automated approach to enabling high-throughput cell line development, selection, and other cell culture tasks performed in Erlenmeyer (shake) flasks, J. Assoc. Lab Autom., 2008; 13: 145-151;Gryseels, T., Considering cell culture automation in upstream bioprocess development, Bioproc. Intl., 2008; 6: 12-16を参照のこと)を使用して、供給が自動化され、pHが制御された、高処理量の流加操作が可能になる。これらの技術は費用がかかるので、哺乳類細胞のプロセス開発において、業界および学究的世界に亘り主要な縮小基盤として、振盪フラスコが引き続き幅広く使用されている(Buhs, J., Introduction to advantages and problems of shaken cultures, Biochem. Eng. J., 2001; 7: 91-98を参照のこと)。
【0072】
主な課題は、小規模での流加原理(主に間欠投与により行われる)の適応だけでなく、より重要なことには、同時に高い細胞密度に到達することである。バッチプロセスにおいて、細胞密度は、増殖制限栄養源の濃度、培地のpH、および毒性代謝産物の濃度により決まる。このことによりジレンマが生じる:高い細胞密度は、炭素源として十分なブドウ糖が利用できるときしか得られない。同時に、ブドウ糖をボーラス添加すると、栄養素濃度が大きい一過性増加を生じ得、これにより、高いオスモル濃度および高い廃棄代謝産物濃度がもたらされ得る、例えば、高いブドウ糖濃度は、乳酸産生の増加およびpHの低下をもたらし得る(Zhou, W. C., et al., High viable cell concentration fed batch cultures of hybridoma cells through online nutrient feeding, Biotechnol Bioeng., 1995; 46: 579-587;Chee, F. W. D., et al., Impact of dynamic online fed-batch strategies on metabolism, productivity an N-glycosylation quality in CHO cell cultures, Biotechnol. Bioeng., 2005; 89: 164-177を参照のこと)。その上、組換え抗体の糖化は、培地中でブドウ糖濃度を低レベルに制御することによって、制御できるであろう(Yuk, I. H., et al., Controlling glycation of recombinant antibody in fed-batch cell cultures, Biotechnol. Bioeng., 2011; 108; 2600-2610を参照のこと)。細胞によるブドウ糖利用の主要経路は、解糖である。腫瘍由来細胞株は、一般に、エネルギー需要に基づいて、解糖流量を制御する能力を失う(Eigenbrodt, E., et al., New perspectives on carbohydrate metabolism in tumor cells, R. Brietner (ed.), Regulation of Carbohydrate Metabolism, Vol. 2., CRC Press, Boca Raton, Floridaを参照のこと)。その結果、解糖は、細胞外増殖培地中のブドウ糖の濃度により制御される。バッチ細胞培養において、ブドウ糖は、大抵、血流中に見られる(5mM以下)よりも著しく高い濃度(50mMまで)で存在する。CHO(チャイニーズハムスターの卵巣)細胞の生存能力の低下は、高レベルの毒性代謝産物のメチルグリオキサルにより生じ、このメチルグリオキサルは、高いブドウ糖濃度での解糖の副産物として産生される(Chaplen, F. W. R., et al., Evidence of high levels of methylglyoxal in cultured Chinese hamster ovary cells, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998; 95:5533-5538;Roy, B. M., et al., Toxic concentrations of methylglyoxal in hybridoma cells culture, Cytotechnology, 2005; 46: 97-107を参照のこと)。
【0073】
細胞培養培地中の高いブドウ糖濃度により生じるこれらの問題を解決するまたは緩和するために、高密度培養のための連続的な基質送達源の必要性が高まっている。微生物培養の一例が、EnBase(商標)であり、これは、開発され、今では微生物の培養に商業的に利用できる酵素的に制御されたブドウ糖送達系である(Panula-Perala, J., et al., Enzyme controlled glucose auto-delivery for high cell density cultivations in microplates and shake flasks, Microbial Cell factories, 2008; 7:31を参照のこと)。「EnBase」は、ブドウ糖を生成するための炭素源としてグリコアミラーゼ/デンプンを使用する。細胞培養培地においてグリコアミラーゼを使用すると、哺乳類細胞に制限が課せられる。あるいは、振盪フラスコ中でのH.polymorphaの培養のための徐放技法として、ポリジメチルシロキサン樹脂中に埋め込まれたブドウ糖が使用されてきた(Jeude, M., et al., Fed-Batch Mode in Shake Flasks by Slow-Release Technique, Biotechnology and Bioengineering, 2006; 95を参照のこと;kuhner.comでFeedBeadsとして市販されている)。この文献から、PDMSは、細胞培養培地中のタンパク質に対して高い非特異的結合能力を有し、それゆえ、哺乳類細胞の培養用途にとって望ましくないことが公知である。しかしながら、哺乳類細胞の培養のために、ヒドロゲルに基づくブドウ糖送達系の使用が開発された(Hedge, S., et al., Controlled release of nutrients to mammalian cell culture in shake flasks, Biotechnol. Prog., 2012; 28: 1を参照のこと)。この系は、被包されたブドウ糖粉末を有するHEMA:EGDMAヒドロゲルディスクに基づく。未反応の残留モノマーのために、そのような系では、細胞毒性を緩和するために、ヒドロゲルを大々的に洗浄する必要がある。
【0074】
「Sustained Release of Nutrients In Vivo」と題する、2013年10月22日にSexton等に発行された米国特許第8563066号明細書には、長期間に亘り持続可能な時間制御様式でインビボに送達される栄養組成物が、向上した運動能力、増加した手/目の協調、および目の前の作業への集中を与えることが述べられている。その組成物は、(a)1種類以上の栄養補助剤、および(b)(a)の1種類以上の栄養補助剤を被包する1種類以上のヒドロゲル微小粒子を含む水性懸濁液を含むことができ、ここで、この1種類以上のヒドロゲル微小粒子は、(i)1から1000マイクロメートルの直径を有し;(ii)非毒性であり、架橋されており、インビボで時間制御され持続した様式で被包された1種類以上の栄養補助剤を放出する1種類以上の化合物を含み;(iii)ペーハー感受性であり、ヒドロゲル微小粒子の1種類以上の化合物がpH1〜3で膨潤せず;(iv)温度感受性であり、ヒドロゲル微小粒子の1種類以上の化合物が水溶液中でより低い臨界溶液温度を有する。栄養補助剤の時間制御され持続した放出に関する(b)(ii)における1種類以上の化合物は、生分解性高分子、生体接着剤、結合剤、またはその組合せであり得る。生分解性高分子および結合剤は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド・グリコリド共重合体)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルの共重合体、生分解性ポリウレタン、多糖類およびポリエーテルとの多糖類共重合体の1種類以上であり得る。Sextonは、マイクロスフェアは栄養化合物の混合物を含有することができ、マイクロスフェアは、一定期間に亘り放出される生分解性材料からなることも述べている。例えば、栄養素を最初に一気に供給して、個体にエネルギーまたは栄養素の即時貯留部を提供するために、栄養化合物は、そのように配合され、様々な炭水化物、アミノ酸、電解質、ビタミンなどを様々な比率で含有することができる。第2の群は、異なる比率の炭水化物:アミノ酸:ビタミンなど、または栄養素の持続的放出を維持するためにより長い期間に亘り放出される厳密に異なるまたは類似の炭水化物を含有し得る。マイクロスフェア中の栄養素の配合および放出タイミングは、活動の種類、個人、年齢、体重および栄養必要量に応じて変えることができる。例えば、マラソン走者(長期間に亘り持続する栄養分)は、短距離走者(一気の栄養分)とは異なる栄養必要量を有するであろう。
【0075】
一般問題として、生分解の生成物は、一般に、インビボまたはエキソビボ細胞培養において望ましくない。実施の形態において、本開示に使用するために選択されるコーティング高分子、結合剤、またはその両方は、その場で(すなわち、細胞培養物内および細胞培養中)容易には生分解しない。例えば、エチルセルロースのMSDSは、ことによると有害な短期分解生成物はありそうにないが、長期分解生成物は生じるかもしれず、生分解の生成物の毒性はより毒性が強いことを示している。
【0076】
「Cell Culture Hydrogel With pH Indicator」と題する米国特許出願公開第2009/0190135号明細書には、細胞培養における条件を維持し、細胞培養における条件を測定するための装置、組成物および方法が述べられている。特に、この発明は、細胞培養物中のブドウ糖およびpHレベルを最適に近いレベルに維持するいくつかの非侵襲性技法のためのヒドロゲル材料、装置および方法、並びに細胞培養物中のpHレベルの非侵襲性測定を提供する。
【0077】
現在開示されている持続放出系は、細胞培養に関して完全に生体適合性である。エチルセルロースまたは酢酸セルロースなどのセルロースエーテルまたはセルロースエステルは、例えば、維持物質または栄養素放出剤形を製造するために使用することができる。セルロースエステルは、乳化剤として食品産業に、薬物コーティングおよび製剤として医薬産業に広く使用されており、このエステルは、インビボの使用についてFDAで承認されている。
【0078】
開示された製剤からの拡散放出は、フィックの第1法則:
【0080】
にしたがうと考えられる。一定撹拌条件下での持続放出中、放出は、バルク溶液中に放出される化合物の濃度(C)に直接関連し、Jは拡散束であり、Dは拡散係数であり、dC/dxは、錠核の内部の濃度変化に関連する。錠核内部の放出化合物の有限供給のために、拡散放出速度論は、一次であろう。浸透圧放出について、速度論は、
図4に示されるデータに観察されるように、ゼロ次であろう。
【0081】
実施の形態において、本開示は、哺乳類エキソビボ細胞培養用途のための栄養素送達系を提供する。一般に、この栄養素送達系は、哺乳類細胞培養培地中への、例えば、ブドウ糖または他の必須栄養素、ビタミン、および分子の送達に使用することができる。実施の形態において、その送達系は、半透過性コーティングを有する栄養素錠剤であり得る。そのようなコーティングは、例えば、透水性であるエチルセルロースまたは酢酸セルロースフイルムからなり得る。放出速度論は、錠剤のコーティングの厚さによって制御できる。制御放出は、被包された化合物を有する錠剤の内部の浸透圧の違い、および錠剤を取り囲む細胞培養培地の違いによって達成することができる。哺乳類細胞培養物中に栄養素を持続して長期に送達する能力により、生存率または積分生存細胞密度が増加し、これは、
【0083】
にしたがうバッチ細胞培養系中の生成物力価と強く相関し、式中
[MAb]は抗体濃度(mg/mL)であり、
q
MAbは特異的抗体産生速度(mg/細胞/日)であり、
X
vは、生存細胞濃度(細胞/mL)である。
【0084】
実施の形態において、開示された持続放出のための系および方法は、例えば、以下の内の1つ以上により利益がもたらされる:
放出可能な内容物(例えば、栄養素)は、数週間までなどの、長期間に亘りゼロ次速度論で放出することができる;
コーティング膜の水和度を変えることによって、その系に栄養素放出の時間のずれを導入することができる;
例えば、核錠およびコーティングの以下のパラメータの1つ以上によって、栄養素の放出速度論を制御することができる:膜厚;浸透圧;膜の種類と膜厚;可塑剤の種類と量;および細孔形成剤;
開示された細胞培養系において長期間に亘り生理的に適切なレベルで栄養素濃度を維持すると、汚染物質への暴露も制限しながら、積分生存細胞密度およびタンパク質力価が増加する;
多層核錠は、異なる栄養素、ビタミン、および増殖栄養補助剤を含み得る;
核錠組成物を層化させると、細胞成長および増殖の様々な段階に相関する各構成成分の放出時点を制御することができる;
栄養素組成が異なるまたは放出特徴(例えば、放出遅延時間、放出速度論)が異なる錠剤またはビーズの混合物を、エキソビボ細胞培養用途に使用することができる;
ビーズ、錠剤、ペレット、および同様の剤形の混合物を使用すると、異なる栄養素の制御放出を提供でき、培養が進行するにつれて放出特性を調節することもできる。例えば、実施例5を参照のこと。ここには、培養液中のブドウ糖の開示された制御または持続放出が、継続栄養素源を提供することにより、培養液中の細胞の生存能力および増殖を維持する;
本発明の持続放出製剤からの化合物の放出は、例えば、撹拌条件、細胞密度、pH、または培地組成などの外部要因とは関係ない;
バッチ培養に本開示の徐放系を適用すると、大規模の流加またはかん流操作で達成されるものに厳密に似た細胞培養条件が提供される。
【実施例】
【0085】
以下の実施例は、エチルセルロースコーティングを有し、浮遊細胞培養環境中にブドウ糖の制御または持続放出を与える、例示の維持物質または栄養素持続送達錠剤組成物の調製を示す。
【0086】
実施例1
ブドウ糖を含有する未被覆核錠の調製
1,4−ジオキサン中に8.83w/w%で溶かしたエチルセルロース(48%エトキシ、Aldrichカタログ番号200697)により、エチルセルロース溶液を調製した。この溶液に0.88w/w%で可塑剤のセバシン酸ジブチル(Aldrichカタログ番号84840)を加えた。11.9gのブドウ糖、6.2gの上記エチルセルロース溶液、および5.16gの1,4−ジオキサンを混合することによって、D(+)形ブドウ糖およびエチルセルロース溶液のスラリーを調製した。この混ぜ合わせた混合物を小カップ(直径6mm、高さ10mm)に分けた。これらのアリコートの質量は、0.3から0.6gに及んだ。室温で溶媒を蒸発させた後、結合剤として10w/w%のエチルセルロースを有する固形ブドウ糖錠剤が得られた。あるいは、核錠生産に医薬産業で既知のプロセスを使用しても差し支えない。これらのプロセスの例としては、湿式造粒法または乾式造粒法、およびその後の粉末の固形剤への必要に応じての圧縮が挙げられる。
【0087】
エチルセルロースは、繰り返しブドウ糖単位のヒドロキシル基のいくつかがエチルエーテル基に転化されているセルロースの誘導体である。エチル基の数は、製造業者およびグレードに応じて様々であり得る。
【0088】
【化1】
【0089】
これは、薄膜被覆材料として商業用途に主に使用されている。エチルセルロースは、乳化剤(例えば、E462)として食品添加物に使用されている。Aqualon(商標)エチルセルロース製品は、Ashlan,Inc.から市販されている。「Aqualon」ECは、幅広い有機溶媒中に可溶性である。「Aqualon」ECは、錠剤の1種類以上の活性成分が他の材料とまたは互いに反応するのを防ぐために、それらを被覆するために使用できる。「Aqualon」ECは、アスコルビン酸などの酸化し易い物質の変色を防ぐことができ、圧縮されやすい錠剤および他の剤形の造粒を可能にする。「Aqualon」ECは、微小粒子、ペレット、および錠剤のコーティングによく使用される持続放出膜コーティングを調製するために水溶性構成成分と組み合わせて、またはそのままで使用できる。
【0090】
圧粉性(compactibility)が改善され(高いエトキシル含有量および低粘度)、粉体流が良好な、改良型圧縮性グレードの「Aqualon」T10ECが入手できる。「Aqualon」ECのPHARMグレードは、国民医薬品集のモノグラフ要件に準拠している。医薬コーティングの被覆業務または被覆混合物も提供する他の企業の例としては、デラウェア州、ニューワーク所在のFMC BiopolymerからのAquacoat ECD;およびカリフォルニア州所在のColorconからのOpadryが挙げられる。
【0091】
Dow Chemicalから入手できるETHOCEL(商標)プレミアムエチルセルロース高分子製品は、広範囲の医薬用途に承認された水不溶性高分子であり、持続放出固形製剤に使用される。
【0092】
比較実施例2
未被覆錠剤からのブドウ糖の放出
様々な質量の錠剤について、未被覆錠剤からのブドウ糖の放出を試験した。各錠剤を、30mLのイーグル最小必須培地(EMEM)の細胞培養培地が入った125mLの細胞培養三角フラスコに入れた。フラスコを周囲空気条件下の37℃で120rpmで振盪した。100%の放出が生じるまで、ブドウ糖濃度を定期的に測定した。ブドウ糖放出データが
図2に示されている。
図2は、様々な質量の未被覆核錠(対照)からの細胞培養培地中へのブドウ糖放出を示している:0.1542g(200)、0.20645g(210)、0.2335g(220)、および0.2575g(240)。
図3は、グラムで表された元の錠剤の質量から放出されたブドウ糖(対照)の依存性を示している。ラインフィットは、y=0.029x+0.1144、およびR
2=0.9588であった。放出されたブドウ糖の質量は、元の錠剤の質量と比べて直線関係にある。これは、元の錠剤の質量を制御することにより、細胞培養中に全ブドウ糖をどれだけ培地中に放出できるかを選択することができることを意味する。
図3からのデータは、未被覆錠剤は、細胞培養培地中のインキュベーションの最初の5時間でそのブドウ糖の全てを放出したことを示す。そのような迅速放出の速度論は、未被覆錠剤マトリクス(すなわち、混合剤中のエチルセルロース)からのブドウ糖の単純な溶解に基づく。
【0093】
実施例3
ブドウ糖を含有する被覆核錠の調製
放出速度論を制御可能に遅くするために、核錠にエチルセルロース膜または被包コーティングで被覆した。例えば、1,4−ジオキサン中にエチルセルロース/セバシン酸ジブチル8.8%/0.88%w/wの溶液中に核錠を単に浸漬し、室温で溶媒を蒸発させることによって、エチルセルロース膜コーティングを得た。あるいは、錠剤床または流動床を回転させることなどの、医薬産業により広く使用されているどの被覆方法および装置を使用して、固形剤を被覆しても差し支えない。被覆錠剤を圧縮し、安定化させるために、それらを、例えば、2時間に亘り60℃で乾燥させた。浸漬被覆法により、コーティング厚が様々に異なる錠剤を調製した。コーティング厚は、被覆手順後の錠剤の質量の百分率として評価し、例えば、全錠剤質量の9から14%の増加に及んだ。
【0094】
実施例4
被覆錠剤からのブドウ糖放出の測定
125mLの振盪フラスコ中、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)緩衝液組成物(0.2g/LのCaCl
2(無水)、0.18g/LのMgSO
4(無水)、0.38g/LのKCl、2.84g/LのNaHCO
3、6.7g/LのNaCl、0.071g/LのNaH
2PO
4)に相当する緩衝液30mL中において、周囲空気条件下の37℃で、120rpmで錠剤をインキュベーションすることによって、被覆錠剤からのブドウ糖放出特性を得た。異なる厚さのエチルセルロース膜で被覆された錠剤に関するブドウ糖放出の速度論が、
図4に示されている。
図4は、3つの異なる厚さのエチルセルロースコーティングまたは外層を有する被覆ブドウ糖錠剤からのブドウ糖放出速度論を示している。錠剤からのブドウ糖の初期放出は、それぞれ、9質量%(400)、13質量%(410)、および14質量%(420)のコーティングに関して、1日と2日だけ遅れている。異なる錠剤バッチでコーティングの厚さを変えることにより、配合者は、細胞培養環境中へのブドウ糖の放出速度論を容易に制御することができる。細胞培養培地中のブドウ糖濃度は、GlucCell Glucose Monitoring System(ジョージア州、アトランタ所在のCESCO BioProducts)により測定した。あるいは、ブドウ糖は、NOVA BioProfile Biochemical Analyzerにより測定しても差し支えない。
【0095】
実施例5
対照錠剤および持続放出錠剤と接触した細胞培養
開示されたブドウ糖放出錠剤に関する予備エキソビボ細胞培養実験をCHO5/9α細胞株に行った。CHO5/9α細胞を125mLの振盪フラスコ(Corning 430421)中の30mLのCD−OPTI−CHO培地(Life Technologies番号12681−011)中に200K/mLで播種した。細胞は、細胞培養インキュベータ内において120rpm、37℃、95%RHおよび5%のCO
2で培養した。ブドウ糖錠剤を培養の開始時(t=0)に加え、細胞を、培地を交換せずに10日間に亘り培養した。3日後から毎日、細胞数および細胞生存率をモニタした。対照培養フラスコ(すなわち、通常の培地、錠剤なし)および被覆ブドウ糖錠剤を収容したフラスコの結果が、
図5および6に示されている。その結果は、持続放出ブドウ糖錠剤の存在下で、バッチ培養の生存率およびIVCCの両方が著しく改善されたことを示している。
【0096】
図5は、3から10日の細胞培養期間に亘る、開示された制御放出または持続放出錠剤の存在下(すなわち、ブドウ糖510)および不在下(すなわち、対照500)でのバッチ培養における細胞生存率(相対パーセント)を示している。
【0097】
図6Aおよび6Bは、それぞれ、通常の培養対照(600)(
図6A)および(620)(
図6B)と比べた1つのブドウ糖放出錠剤(610)および(630)が補給された培養に関する生存細胞数(M/mL)および積分生存細胞数、すなわち、百万の細胞数(M)/日/mL(M/日/mL)を示している。
【0098】
実施例6
グルタミン前駆体のAla−Gluジペプチドを含有する被覆核錠の調製
グルタミンは、細胞培養培地における必須の窒素源である。培養条件下で、グルタミンは自発的に分解して、細胞培養培地中の高レベルのアンモニアに寄与する。毒性に寄与するアンモニアを減少させるために、細胞培養培地において、グルタミンをAla−Gluジペプチド(アミノ酸源、アミノ酸前駆体(pro-amino acid)、またはグルタミン前駆体(pro-glutamine))で置き換えることがある。Ala−Gluジペプチド(Sigma番号A8185)で栄養素放出錠剤を調製して、それを細胞培養培地中に徐々に導入した。錠剤の核は、粉末圧縮により形成した。この粉末組成は、77.6質量%のAla−Gluジペプチド、20.8質量%の微結晶性セルロース(Sigma番号310697)、および1.6%のステアリン酸マグネシウム(Sigma番号26454)であった。Life Technologiesにより供給されたまま1倍の濃度で使用したダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)培地(カタログ番号14190)中に異なる錠剤コーティング厚(4mg(菱形)および9mg(正方形))を有する錠剤からのAla−Gluジペプチドの放出特性が、
図7に示されている。錠剤は、被覆の前後に計量した。前後の重量差は、被覆錠剤の表面上のコーティングの量を提供する、すなわち、より重い質量は、より多いコーティング材料が錠剤表面にあったことを意味する。エチルセルロースの密度は1.14g/mLであった。未被覆錠剤の寸法および被覆後の質量増加を使用して、コーティングの厚さを計算することができる。この実施例において、錠剤の形状は、半径4.8mm、高さ2.6mmの円筒形またはディスク形である。4mgのコーティングについて、コーティング厚は約0.0015mmであり、9mgのコーティングについて、コーティング厚は0.029mmであった。
【0099】
実施例7
対照錠剤および持続放出錠剤と接触した細胞培養によるタンパク質産生
開示されたブドウ糖放出錠剤およびAla−Gluジペプチド放出錠剤に関する予備エキソビボ細胞培養実験をCHO5/9α細胞株に行った。CHO5/9α細胞を125mLの振盪フラスコ(Corning 430421)中の30mLの1:1のCD−OPTI−CHO培地(Life Technologies番号12681−011)およびF12ブドウ糖不含有培地(Mediatechによる注文製造)中に200K/mLで播種した。細胞は、細胞培養インキュベータ内において120rpm、37℃、95%RHおよび5%のCO
2で培養した。ブドウ糖含有錠剤またはブドウ糖およびAla−Glu含有錠剤を培養の開始時(t=0)に加え、細胞を、培地を交換せずに15日間に亘り培養した。3日後から毎日、細胞数および細胞生存率をモニタした。細胞培養培地を、排泄タンパク質(M−CSF、ミクロ相コロニー刺激因子)の濃度について分析した。対照培養フラスコ(すなわち、通常の培地、錠剤なし、および培養の4日目に2.5g/Lのブドウ糖を手作業で補給した通常の培地)、並びに被覆ブドウ糖含有錠剤または被覆されたブドウ糖およびAla−Glu含有錠剤を収容したフラスコの結果が、
図8に示されている。その結果は、持続放出錠剤の存在下で、タンパク質力価が著しく改善されたことを示している。
【0100】
実施例8
溶解度が低い化合物を含有する被覆核錠の調製
チロシンは、流加CHO培養のための供給物添加過程における「問題のある」アミノ酸の内の1つである。その問題は、過程にやさしいpHでのチロシンの不十分な溶解度から生じる。したがって、チロシンは、開示された制御放出栄養素送達系の利益を実証するために選択した。27質量%のチロシン、55質量%のブドウ糖、15.5質量%のセルロース、および2質量%のステアリン酸マグネシウムを含有する核錠を調製した。この核錠に、1,4−ジオキサンおよびn−ブチルアルコールの1:1の混合物中の5w/w%のエチルセルロースの被包材混合物を吹き付け塗りした。この混合物は、粒径が50マイクロメートル以下の0.01質量%の重炭酸ナトリウム粒子の懸濁液も含有していた。重炭酸ナトリウム粒子は、コーティング材料中の細孔形成剤として機能して、被包材コーティングを通るチロシンの放出を促進した。一般に、細孔形成剤は、放出すべき維持物質化合物が低い溶解度または低い浸透圧を有する場合に被包コーティングに加えることができる。細孔形成剤は、そのような化合物の放出速度を上昇させることができる。チロシン放出の結果が、
図9に示されている。
図9の上側の点線は、25℃での水中のチロシンの溶解限度を示している。青色の線は、OpticCHO培地中のチロシンの濃度を示している。
図9の下側の点線は、OpticCHO培地中のチロシンの元の濃度を示している。
図9は、開示された制御放出技術により、生理学的に適切な濃度範囲で10日間に亘り線形チロシン放出特性を送達できることを示している。
【0101】
本開示は、様々な特定の実施の形態および技法に関して記載してきた。しかしながら、本開示の範囲内にありながら、多くの改変および変更が可能であることが理解されよう。
【0102】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0103】
実施形態1
エキソビボ細胞培養用持続放出組成物において、全組成物の100質量%に基づいて、
混合物であって、
60から96質量%の量の維持物質と、
1から20質量%の量の非生分解性結合剤と、
を含む混合物、および
1から20質量%の量の、前記混合物を被包する非生分解性かつ水不溶性被包材コーティング、
を有してなる組成物。
【0104】
実施形態2
錠剤、丸薬、ペレット、粉末、マイクロカプセル化粒子、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つの剤形を有する、実施形態1に記載の組成物。
【0105】
実施形態3
前記維持物質が、少なくとも0.01から10質量%の水溶性を有し、栄養素、タンパク質、ビタミン、成長因子、運動能力向上分子、阻害剤、アミノ酸源、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、金属イオン、有機酸、還元剤、キレート剤、酸化防止剤、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つから選択された少なくとも1つの維持物質を含む、実施形態1または2に記載の組成物。
【0106】
実施形態4
前記維持物質が、糖、アミノ酸源、またはそれらの混合物の内の少なくとも1つから選択される、実施形態1から3いずれか1つに記載の組成物。
【0107】
実施形態5
前記維持物質が、ブドウ糖、チロシン、Ala−Gluジペプチド、またはそれらの混合物の内の少なくとも1つから選択される、実施形態1から4いずれか1つに記載の組成物。
【0108】
実施形態6
前記結合剤および前記被包材が、同じ化学物質であり、同じか異なる分子量を有する、実施形態1から5いずれか1つに記載の組成物。
【0109】
実施形態7
前記結合剤、前記被包材、またはその両方が、化学的に架橋しておらず、該結合剤が可塑剤をさらに含む、実施形態1から6いずれか1つに記載の組成物。
【0110】
実施形態8
ヒドロゲルを含まない、実施形態1から7いずれか1つに記載の組成物。
【0111】
実施形態9
1から15日の放出半減期を有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の組成物。
【0112】
実施形態10
水性培地中のエキソビボ細胞培養物に維持物質を持続的に提供する方法であって、
前記細胞培養物および実施形態1に記載された持続放出組成物を接触させる工程、
を有してなる方法。
【0113】
実施形態11
前記細胞培養物は、浮遊細胞、接着細胞、共培養細胞、またはそれらの組合せ、および基本培地を含む、実施形態10に記載の方法。
【0114】
実施形態12
前記細胞培養物は、哺乳類浮遊細胞および基本培地を含む、実施形態10または11に記載の方法。
【0115】
実施形態13
前記接触させる工程が、前記持続放出組成物を固体剤形として前記細胞培養物に添加する工程を有する、実施形態10から12いずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態14
前記細胞培養物が、足場が存在する基本培地中において浮遊して増殖した接着哺乳類細胞を含む、実施形態10から13いずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態15
前記足場がマイクロキャリアである、実施形態14に記載の方法。
【0118】
実施形態16
前記細胞培養物が、三次元足場内で増殖した基本培地中の接着哺乳類細胞を含む、実施形態10から15いずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態17
前記三次元足場が、ゲルマトリクス、ナノ繊維、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つである、実施形態16に記載の方法。
【0120】
実施形態18
前記細胞培養物および前記持続放出組成物を接触させる工程が、前記持続放出組成物を前記細胞培養物に添加することによって行われ、該持続放出組成物が、接触される前記細胞培養物の全質量に基づいて、0.001から5質量%の量で存在する、実施形態10から17いずれか1つに記載の方法。
【0121】
実施形態19
前記細胞培養物を前記持続放出組成物と接触させる工程が、細胞接種を開始する時点(t=0)から15日まで行われる、実施形態10から18いずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態20
前記維持物質がブドウ糖であり、該ブドウ糖が、1時間から240時間の期間に亘り、0.1から5グラム/リットル(g/L)の量で前記細胞培養物中の細胞に持続送達される、実施形態10から19いずれか1つに記載の方法。
【0123】
実施形態21
前記非生分解性かつ水不溶性被包材コーティング中に0.001から10質量%の細孔形成剤を更に含み、該細孔形成剤の質量%が、前記被包材コーティングの100質量%に対する上乗せ添加に基づく、実施形態1に記載の組成物。