(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モデルが、前記均等化過程中に気体が前記制御チャンバから前記基準チャンバに移動する際に、前記導管内の等温過程をさらに想定する、請求項1に記載のシステム。
前記コントローラが、前記制御チャンバ内の断熱圧力均等化過程を想定するモデルを用いて、前記制御チャンバの推定容積に基づいてポリトロープ係数を計算するようにプログラムされている、請求項3に記載のシステム。
前記第3質量系が、構成要素容積に細分されるようにモデル化されており、第1構成要素容積が、前記制御チャンバの一部を占有しかつポリトロープ的にモデル化され、第2構成要素容積が、前記基準チャンバの一部を占有しかつ断熱的にモデル化され、第3構成要素容積が、前記導管を占有しかつ等温的にモデル化されている、請求項5に記載のシステム。
前記第3質量系が、構成要素容積に細分されるようにモデル化されており、前記制御チャンバの一部を占有する第1構成要素容積が、ポリトロープ的にモデル化され、前記基準チャンバの一部を占有する第2構成要素容積が、断熱的にモデル化され、前記導管を占有する第3構成要素容積が、等温的にモデル化されている、請求項9に記載のシステム。
前記所定関数が、前記制御チャンバ容積を既知の容積に設定し、前記制御チャンバおよび前記基準チャンバの前記既知の容積と、圧力の均等化の前および後の前記測定された第1圧力、第2圧力および第3圧力とに最も近く対応するポリトロープ係数を計算することによって求められ、前記計算が前記所定関数を生成するために複数回繰り返され、各回において、前記制御チャンバ容積を異なる既知の容積に設定することに対応し、新しい前記制御チャンバの既知の容積に最も近く対応する、更新済のポリトロープ係数を計算する、請求項13に記載のシステム。
前記関数が、格納されたルックアップテーブルに対応し、そこから、前記コントローラが、計算されている前記制御チャンバの前記容積に対応するポリトロープ係数を選択する、請求項14に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の態様について、腹膜透析システムに関して記載するが、本発明のいくつかの態様は、静脈内注入システムまたは体外血流システム等の注入システム、ならびに胃、腸管、膀胱、胸膜腔または他の体腔もしくは臓器腔のためのイリゲーションおよび/または流体交換システムを含む、他の医療用途に使用することができる。したがって、本発明の態様は、特に腹膜透析、または一般的に透析において使用することに限定されない。
APDシステム
図1は、本発明の1つまたは複数の態様を組み込むことができる自動腹膜透析(APD)システム10を示す。
図1に示すように、たとえば、この例示的な実施形態におけるシステム10は、透析液送達セット12(いくつかの実施形態では、使い捨てセットであり得る)と、送達セット12と相互作用して溶液容器20(たとえば、バッグ)によって提供される液体を圧送するサイクラ14と、APD処置を行うようにプロセスを管理する制御システム16(たとえば、プログラムされたコンピュータまたは他のデータプロセッサ、コンピュータメモリ、ユーザもしくは他のデバイスに情報を提供しかつそこから入力を受け取るインタフェース、1つもしくは複数のセンサ、アクチュエータ、リレー、空気圧式ポンプ、タンク、電源および/または他の好適な構成要素を含み、すなわち、
図1にはユーザ制御入力を受け取るわずかな数のボタンしか示さないが、制御システム構成要素に関するさらなる詳細については後述する)とを含む。この例示的な実施形態では、サイクラ14および制御システム16は、共通のハウジング82に関連づけられているが、2つ以上のハウジングに関連づけることができ、かつ/または互いに別個であり得る。サイクラ14は、テーブルトップまたは家庭に通常見いだされる他の比較的小さい表面の上で操作されるのに適した、小型の設置場所を有することができる。サイクラ14は、軽量かつ携帯可能であり、たとえば、ハウジング82の両側のハンドルを介して手で所持することができる。
【0069】
セット12は、この実施形態では、単回使用の使い捨て品であるように意図されているが、代わりに、1つまたは複数の再使用可能部品を有することができ、または全体として再使用可能であり得る。ユーザは、各APD治療セッションを開始する前に、たとえばサイクラ14の正面ドア141内にカセット24を取り付けることにより、セット12をサイクラ14に関連づけ、サイクラ14は、カセット24と相互作用して、セット12のさまざまなラインにおいて流体流を圧送し制御する。たとえば、APDを行うために、透析液を患者にかつ患者から圧送することができる。治療後、ユーザは、サイクラ14からセット12の構成要素のすべてまたは一部を取り外すことができる。
【0070】
本技術分野において既知であるように、使用する前、ユーザは、セット12の患者ライン34を、接続部36において自身の体内留置腹膜カテーテル(図示せず)に接続することができる。一実施形態では、異なるサイズの患者ライン34を有するもの等、1つまたは複数の異なるタイプのカセット24と動作するように、サイクラ14を構成することが
できる。たとえば、成人患者で使用されるサイズである患者ライン34を備えた第1タイプのカセット、および幼児または小児の使用のためのサイズである患者ライン34を備えた第2タイプのカセットと動作するように、サイクラ14を構成することができる。小児用患者ライン34は、ラインの容積を最小限にするように、成人用ラインより短くかつ内径を小さくすることができ、透析液のより制御された送達を可能にし、セット12が連続的な排液および充填サイクルで使用されるとき、比較的大量の使用済み透析液が小児患者に戻るのを回避するのに役立つ。サイクラ14のヒータ容器受入部分(この場合、トレイ)142の上に、ライン26によってカセット24に接続されるヒータバッグ22を配置することができる。サイクラ14は、新鮮な透析液を(カセット24を介して)ヒータバッグ22内に圧送することができ、それにより、ヒータトレイ142によって、たとえば、トレイ142に関連づけられた電気抵抗加熱素子によって、透析液を約37℃の温度まで加熱することができる。加熱された透析液は、ヒータバッグ22からカセット24および患者ライン34を介して患者に提供することができる。代替実施形態では、患者に向かう途中で、カセット24に入る際、またはカセット24から出た後、透析液をヒータトレイ142と接触する管に通すか、または(カセット24に設けることができる)直列流体ヒータに通すことによって、透析液を加熱することができる。使用済み透析液は、患者から患者ライン34を介してカセット24にかつ排液ライン28内に圧送することができ、排液ライン28は、排液ライン28の1つまたは複数の分岐を通る流れを制御する1つまたは複数のクランプを含むことができる。この例示的に実施形態では、排液ライン28は、排液ライン28を専用の排液受けに接続するコネクタ39と、試験または他の分析のために使用済み透析液のサンプルを取得する排出物サンプルポート282とを含むことができる。ユーザはまた、ドア141内に1つまたは複数の容器20のライン30を取り付けることができる。ライン30はまた、連続またはリアルタイム透析液調合システムに接続することも可能である。(ライン26、28、30、34は、要求に応じて、可撓性管および/または好適なコネクタならびに他の構成要素(ピンチ弁等)を含むことができる)。容器20は、注入する滅菌腹膜透析液、または他の物質(たとえば、サイクラ14が、水と混合し、または異なるタイプの透析液を混ぜることによって透析液を処方するために使用する物質)を収容することができる。カセット24のスパイク160にライン30を接続することができ、スパイク160は、
図1では取外し可能キャップによって覆われている。より詳細に後述する本発明の一態様では、サイクラ14は、自動的に、カセット24の1つまたは複数のスパイク160からキャップを取り外し、溶液容器20のライン30をそれぞれのスパイク160に接続することができる。この特徴は、非滅菌物品のスパイク160との接触の機会を低減させることにより、感染または汚染の可能性を低減させるのに役立つことができる。
【0071】
別の態様では、透析液送達セット12aは、カセットスパイク160を有していない場合がある。代わりに、1つまたは複数の溶液ライン30は、
図1Aに示すように、カセット24の入口ポートに永久的に取り付けることができる。この場合、各溶液ライン30は、溶液容器または透析液バッグ20に手動で接続するための(キャップ付き)スパイクコネクタ35を有することができる。
【0072】
さまざまな接続を行うことにより、制御システム16は、APD処置の典型的な一連の充填、滞留および/または排液サイクルを通してサイクラ14のペースを定めることができる。たとえば、充填段階中、サイクラ14は、1つまたは複数の容器20(または他の透析液供給源)から透析液を加熱するためにヒータバッグ22内に(カセット24によって)圧送することができる。その後、サイクラ14は、加熱した透析液をヒータバッグ22からカセット24を通して、患者ライン34を介して患者の腹膜腔内に注入することができる。滞留段階に続き、サイクラ14は、排液段階を開始することができ、排液段階の間、サイクラ14は、患者からライン34を介して(この場合もまたカセット24により)使用済み透析液を圧送し、使用済み透析液を、排液ライン28を介して近くのドレーン
(図示せず)内に排液する。
【0073】
サイクラ14は、溶液容器20および/またはヒータバッグ22がサイクラ14の上方の規定された頭高に配置されることが必ずしも必要ではなく、たとえば、サイクラ14は必ずしも重力流システムではないためである。代わりに、サイクラ14は、供給源溶液容器20がサイクラ14の上方、下方または同じ高さにあり、患者がサイクラの上方または下方にいる等であっても、重力流を模倣するか、または他の方法で透析液の流れを好適に制御することができる。たとえば、サイクラ14は、所与の処置の間に、固定の頭高を模倣することができ、または、サイクラ14は、処置中に透析液に加えられる圧力を増減させるように、有効頭高を変更することができる。サイクラ14はまた、透析液の流量も調整することができる。本発明の一態様では、サイクラ14は、充填動作または排液動作の患者の知覚を低減させるように、患者に提供されるかまたは患者から引き出されるときの透析液の圧力および/または流量を調整することができる。こうした調整は、単一の充填および/または排液サイクル中に行うことができ、または、異なる充填サイクルおよび/または排液サイクルにわたって調整することができる。一実施形態では、サイクラ14は、排液動作の最後の近くで患者から使用済み透析液を引き出すために使用される圧力を漸減させることができる。サイクラ14は、人為的な頭高を確立することができるため、患者の特定の生理機能または相対的な高さの変化と相互作用する柔軟性を有し、それに適合することができる。
カセット
本発明の一態様では、カセット24は、溶液供給ラインに対して別個に閉塞可能である患者ラインおよび排液ラインを含むことができる。すなわち、患者ラインへのかつ患者ラインからのセーフティクリティカルな流れは、たとえば、1つまたは複数の溶液供給ラインを通る流れを閉塞させる必要なしに、流れを停止するようにラインを挟むことによって、制御することができる。この特徴により、簡略化したオクルーダ装置を可能にすることができ、それは、患者の安全にほとんどまたはまったく影響を与えない他のラインを閉塞させることとは対照的に、2つのラインのみに関して閉塞を行うことができるためである。たとえば、患者または排液接続が分離された状況では、患者ラインおよび排液ラインを閉塞させることができる。しかしながら、溶液供給ラインおよび/またはヒータバッグラインは、流れるように開放したままであり、サイクラ14が次の透析サイクルの準備をすることができるようにすることができ、たとえば、患者ラインおよび排液ラインの別個の閉塞は、サイクラ14に対して、1つまたは複数の容器20からヒータバッグ22または他の溶液容器20に透析液を圧送し続けるのを可能にしながら、患者の安全を確保するのに役立つことができる。
【0074】
本発明の別の態様では、カセットは、カセットの1つの側または一部に患者ライン、排液ラインおよびヒータバッグライン、カセットの別の側または別の部分、たとえば、カセットの反対側に1つまたは複数の溶液供給ラインを有することができる。こうした配置により、上述したように溶液ラインに関して患者ライン、排液ラインまたはヒータバッグラインの別個の閉塞を可能にすることができる。カセットに取り付けられたラインをタイプまたは機能によって物理的に分離することにより、所定のタイプまたは機能のラインとの相互作用のより効率的な制御が可能になる。たとえば、こうした配置により、簡略化したオクルーダ設計を可能にすることができ、それは、カセットに通じるかまたはカセットからのすべてのラインよりこれらのラインのうちの1つ、2つまたは3つを閉塞させるために必要な力が小さくなるためである。別法として、この配置により、より詳細に後述するように、カセットに対する溶液供給ラインのより有効な自動接続を可能にすることができる。すなわち、溶液供給ラインおよびそれらのそれぞれの接続部が患者ライン、排液ラインおよび/またはヒータバッグラインから離れて配置されて、自動キャップ外しおよび接続装置は、カセットのスパイクからキャップを取り除くとともに、溶液供給ラインのキャップを取り除き、患者ライン、排液ラインまたはヒータバッグラインによる妨げなしにそ
れぞれのスパイクにラインを接続することができる。
【0075】
図2は、上述した本発明の態様を組み込んだカセット24の例示的な実施形態を示す。この実施形態では、カセット24は、略平面本体を有し、カセット本体の左端部のそれぞれのポートに、ヒータバッグライン26、排液ライン28および患者ライン34が接続され、カセット本体の右端部は、溶液供給ライン30を接続することができる5つのスパイク160を含むことができる。
図2に示す配置では、スパイク160の各々はスパイクキャップ63によって覆われ、スパイクキャップ63を取り除いて、それぞれのスパイクを露出させ、それぞれのライン30への接続を可能にすることができる。上述したように、ライン30を、たとえば透析での使用および/または透析液の処方のために、1つまたは複数の溶液容器または他の物質源に取り付け、サンプリングの目的で、または腹膜平衡試験(PET試験)のために、1つまたは複数の収集バッグに接続することができる。
【0076】
図3および
図4は、この例示的な実施形態におけるカセット24の組立分解図(それぞれ、斜視図および上面図)を示す。カセット24は、略平面形状を有する比較的薄く平坦な部材として形成され、たとえば、好適なプラスチックからモールドされ、押出成形されまたは他の方法で形成される構成要素を含むことができる。この実施形態では、カセット24は、カセット24に対するフレームまたは構造部材として機能するとともに、さまざまな流路、ポート、弁部分等を少なくとも部分的に形成するものとして機能するベース部材18を含む。ベース部材18は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)アクリル樹脂、または環状オレフィンコポリマー/超低密度ポリエチレン(COC/ULDPE)等の好適なプラスチックまたは他の材料からモールドするかまたは他の方法で形成することができ、比較的剛性があり得る。実施形態では、COC対ULDPEの比は、およそ85%/15%であり得る。
図3は、ベース部材18に形成されているヒータバッグ用のポート(ポート150)、排液用のポート(ポート152)および患者用のポート(ポート154)も示す。これらのポートの各々は、たとえば、外側リングまたはスカート158から延在する中心チューブ156、または中心チューブのみ等、任意の好適な方法で配置することができる。ヒータバッグライン26、排液ライン28および患者ライン34の各々に対する可撓性管は、中心チューブ156に接続し、存在する場合は外側リング158が係合することができる。
【0077】
ベース部材18の両側を、膜15および16、たとえば、たとえば、鋳造され、押出成形され、または他の方法で形成されるポリ塩化ビニル(PVC)から作製された可撓性ポリマーフィルムによって覆うことができる。別法として、たとえば、共押出成形可能接着剤(coextrudable adhesive)(CXA)によって合わせて保持される、ポリシクロヘキシレンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCE)および/またはULDPEの2つ以上の層のラミネートとして形成することができる。いくつかの実施形態では、膜厚さは、およそ0.002インチ〜0.020インチ厚さの範囲であり得る。好ましい実施形態では、PVC系膜の厚さは、およそ0.012インチ〜0.016インチ厚さの範囲、より好ましくはおよそ0.014インチ厚さであり得る。たとえばラミネートシート等、別の好ましい実施形態では、ラミネートの厚さは、およそ0.006インチ〜0.010インチ厚さの範囲、より好ましくはおよそ0.008インチ厚さであり得る。
【0078】
膜15および16はともに、カセット24の流路の一部を閉鎖するかまたは他の方法で形成するように機能することができるだけでなく、弁ポートを開放/閉鎖しかつ/またはカセット24内の流体を移動させるポンプダイヤフラム、隔壁または壁の一部として機能するように、移動させるかまたは他の方法で操作することも可能である。たとえば、膜15および16は、ベース部材18の上に配置して、カセット24から流体が漏れるのを防止するようにベース部材18の周縁部の周囲のリムに(たとえば、熱、接着剤、超音波溶
接または他の手段によって)封止することができる。膜15はまた、ベース部材18の他の内壁、たとえば、さまざまなチャネルを形成する内壁に接合することも可能であり、または、カセット24がサイクラ14に好適に取り付けられているとき、ベース部材18の壁および他の特徴と封止接触するように押圧することができる。したがって、膜15および16の両方を、ベース部材18の周縁リムに、たとえば、使用後にサイクラ14から取り外す際にカセット24からの流体の漏れを防止するのに役立つように封止することができるが、ベース部材18の他の部分には、接触せずに位置するように配置することができる。サイクラ14内に配置されたカセット24を、対向するガスケットまたは他の部材の間で圧搾することができ、それにより、膜15および16は、周縁部の内側の領域においてベース部材18と封止接触するように押圧され、それにより、チャネル、弁ポート等を互いから好適に封止する。
【0079】
膜15および16に対する他の構成も可能である。たとえば、膜16は、本体18に接合されるかまたは他の方法で一体化される剛性シート状の材料によって形成することができる。したがって、膜16は、必ずしも可撓性部材であるかまたは可撓性部材を含む必要はない。同様に、膜15は、その表面全体にわたって可撓性を有する必要はなく、代わりに、ポンプおよび/または弁動作を可能にするように1つまたは複数の可撓性部分と、たとえばカセット24の流路を閉鎖するために、1つまたは複数の剛性部分とを含むことができる。たとえば、サイクラ14が、カセット、制御弁およびポンプ機能等の通路を封止するために好適な部材を含む場合、カセット24は、膜16または膜15を含まない場合があることも可能である。
【0080】
本発明の別の態様によれば、膜15は、ベース18の対応するポンプチャンバ181のくぼみの形状に密に一致する形状を有するように形成されているポンプチャンバ部分151(「ポンプ膜」を含むことができる。たとえば、膜15は、ベース部材18のポンプチャンバくぼみに形状が一致する、熱成形された(または他の方法で成形された)ドーム状形状151を有する平坦部材として概して形成することができる。予備成形されたポンプチャンバ部分151のドーム状形状は、たとえば、
図5に示すタイプの真空成形型の上で膜を加熱し成形することによって構築することができる。
図5に示すように、型の壁に沿った孔の集まりを通して、真空を加えることができる。別法として、型の壁を、多孔質気体透過性材料から構築することができ、それにより、モールドされた膜の表面がより均一に平滑になる可能性がある。一例では、モールドされた膜シート15は、真空成形型に取り付けられている間、トリミングされる。そして、真空成形型は、トリミングされた膜シート15をカセット本体18に対して押圧し、それらを互いに接合する。一実施形態では、膜シート15、16は、カセット本体18に熱溶接される。このように、膜15は、ポンプチャンバ181に対して移動して、(たとえば、流体をポンプチャンバ181から圧送している間、
図4の実線に示すように)膜15が最大限ポンプチャンバ181内にかつ(場合によっては)スペーサ要素50と接触するように移動するときと、(たとえば、流体をポンプチャンバ181内に引き込むときに
図4に破線で示すように)膜15がポンプチャンバ181から最大限引き抜かれているときとの両方、膜15の伸張を必要とすることなく(または少なくとも膜15の最小限の伸張で)圧送作用をもたらすことができる。膜15の伸張を回避することは、シートの伸張による流体送達圧力の圧力サージまたは他の変化を防止するのに役立ち、かつ/または、ポンプ動作中の圧力変動を最小限にしようとするときにポンプの制御を簡略化するのに役立つことができる。(たとえば、伸張中に膜15の上にかけられる応力からもたらされる膜15の引裂きによる)膜15の破損の可能性の低減、および/またはより詳細に後述するように、ポンプ送達体積測定における正確さの向上を含む、他の利点をみつけることができる。一実施形態では、ポンプチャンバ部分151は、たとえば、ポンプチャンバ部分151が、ポンプチャンバ容積の約100%である容積を画定する場合、ポンプチャンバ181の約85%〜110%であるサイズを有する(たとえば、容積を画定する)ように形成することができ、ポンプチャンバ部分
151は、停止している間、応力を受けることなく、ポンプチャンバ181内にかつスペーサ50と接触して位置することができる。
【0081】
ポンプチャンバ内外の液体の充填および送達ストロークを発生させるために使用される圧力のより優れた制御を提供することには、いくつかの利点がある可能性がある。たとえば、排液サイクル中、ポンプチャンバが患者の腹膜腔から流体を引き出すとき、可能な最小の負圧をかけることが望ましい場合がある。患者は、治療の排液サイクル中、一部には充填ストローク中にポンプによって負圧がかけられているため、不快である可能性がある。充填ストローク中にかけられる負圧に対して予備成形膜が提供することができる追加の制御は、患者の不快を低減させるのに役立つことができる。
【0082】
カセットポンプチャンバの輪郭に対して予備成形されたポンプ膜を使用することにより、複数の他の利点を具現化することができる。たとえば、ポンプチャンバを通る液体の流量をより均一にすることができ、それは、ポンプストロークを通して一定の圧力または真空をかけることができ、それにより、液体の加熱を調節するプロセスを簡略化することができるためである。さらに、カセットポンプ内の温度変化による、膜を変位させる動力学とともに、ポンプチャンバ内の圧力を測定する正確さに対する影響を、より小さくすることができる。さらに、流体ライン内の圧力スパイクを最小限にすることができる。また、膜の制御(たとえば、空気圧)側において圧力変換器によって測定される圧力を、膜のポンプチャンバ側における液体の実際の圧力と相関させることを、より単純にすることができる。これにより、治療の前の患者および流体源バッグのより正確な頭高測定を可能にし、ポンプチャンバ内の空気を検出する感度を向上させ、容積測定の正確さを向上させることができる。さらに、膜を伸張させる必要をなくすことにより、より大きい容積を有するチャンバの構築および使用を可能にすることができる。
【0083】
この実施形態では、カセット24は、ベース部材18に形成されている複数のポンプチャンバ181を含むが、1つのポンプチャンバまたは3つ以上のポンプチャンバが可能である。本発明の態様によれば、ポンプチャンバ181の内壁はスペーサ要素50を含み、スペーサ要素50は、互いから間隔を空けて配置され、膜15の部分がポンプチャンバ181の内壁と接触するのを防止するのに役立つように、ポンプチャンバ18の内壁から延在している。(
図4における右側ポンプチャンバ181に示すように、内壁は、側部181aおよび底部181bによって画定されている。スペーサ50は、この実施形態では底部181bから上方に延在しているが、側部181aから延在するかまたは他の方法で形成されることが可能である。)膜15がポンプチャンバ内壁と接触するのを防止することにより、スペーサ要素50はデッドスペース(またはトラップ容積)を提供することが可能であり、それは、ポンプチャンバ181内の空気または他の気体を閉じ込めて、状況によってはポンプチャンバ181から気体が圧送されるのを抑制するのに役立つことができる。他の場合では、スペーサ50は、ポンプチャンバ181の出口へのガスの移動に役立つことができ、それにより、たとえばプライミング中、ポンプチャンバ181からガスを除去することができる。また、スペーサ50は、膜15がスペーサ要素50と接触するように押圧される場合であっても、膜15がポンプチャンバ内壁に付着するのを防止するのに役立ち、かつ/または流れがポンプチャンバ181を通って継続するのを可能にすることができる。さらに、スペーサ50は、シートが偶発的にポンプチャンバ内壁と非均一に接触する場合、ポンプチャンバの出口ポート(開口部187および/または191)の時期尚早な閉鎖を防止するのに役立つ。スペーサ50の構成および/または機能に関するさらなる詳細は、米国特許第6,302,653号明細書および同第6,382,923号明細書に提供されており、それらはともに、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
本実施形態では、スペーサ要素50は、ある種の「競技場座席」配置で配置され、それにより、スペーサ要素50は、同心楕円形パターンで配置され、スペーサ要素50の端部
は、ポンプチャンバ181の中心から距離が離れるほど内壁の底部181bからの高さが増大し、半楕円形ドーム形状領域(
図4において点線で示す)を形成する。スペーサ要素50の端部が、膜15のポンプチャンバ部分151が広がるように意図されたドーム状領域を画定する半楕円形領域を形成するように、スペーサ要素50を配置することにより、ポンプチャンバ181の意図されたストローク容積に対するいかなる低減も最小限にする所望の容積のデッドスペースを可能にすることができる。
図3(および
図6)に示すように、スペーサ要素50が配置されている「競技場座席」配置は、楕円形パターンの「通路」または破断部50aを含むことができる。破断部(または通路)50aは、流体がポンプチャンバ181から送達される際にスペーサ要素50の間の列(空隙またはデッドスペース)50b全体を通して等しい気体レベルを維持するのに役立つ。たとえば、スペーサ要素50が、破断部(もしくは通路)50a、または液体および空気がスペーサ要素50の間を流れるのを可能にする他の手段なしに、
図6に示す競技場座席配置で配置された場合、膜15は、ポンプチャンバ181の最外周縁部に位置するスペーサ要素50の上で底に達することができ、この最外スペーサ要素50とポンプチャンバ壁の側部181aとの間の空隙に存在するいかなる気体または液体も閉じ込める。同様に、膜15が任意の2つの隣接するスペーサ要素50の上で底に達した場合、要素50間の空隙内のいかなる気体および液体も閉じ込められることが可能である。こうした配置では、ポンプストロークの最後に、液体が外側の列に残る一方で、ポンプチャンバ181の中心にある空気または他の気体を送達することができる。スペーサ要素50の間の空隙の間に破断部(または通路)50aまたは他の流体連通手段を提供することは、ポンプストロープ中に空隙を通して等しい気体レベルを維持するのに役立ち、それにより、液体体積が実質的に送達されていない限り、空気または他の気体がポンプチャンバ181から出るのを阻止することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、スペーサ要素50および/または膜15は、膜15がスペーサ50に接触するように押圧されたときに、概して個々のスペーサ50に巻き付かないかもしくはその周囲で他の方法で変形しないか、または他の方法でスペーサ50の間の空隙に著しく延在しないように配置することができる。こうした配置により、1つまたは複数の個々のスペーサ要素50に巻き付くかまたは他の方法でその周囲で変形することによってもたらされる、膜15に対するいかなる伸張または損傷も低減させることができる。たとえば、この実施形態では、スペーサ50間の空隙のサイズを、その幅がスペーサ50の幅と略等しくするようにすることが有利であることも分かった。この特徴は、膜15が圧送動作中にスペーサ50に強制的に接触させられるとき、膜15の変形、たとえばスペーサ50の間の空隙内への膜のたるみを防止するのに役立つことが分かった。
【0086】
本発明の別の態様によれば、ポンプチャンバ181の内壁は、膜15のポンプチャンバ部分151が広がるように意図された空間、たとえば半楕円形またはドーム空間より大きいくぼみを画定することができる。こうした場合、ドーム状領域内に延在するのではなく、膜部分151が広がるように意図されたドーム状領域の下方に、1つまたは複数のスペーサ要素50を配置することができる。場合によっては、スペーサ要素50の端部は、膜15が広がるように意図されたドーム状領域の周縁部を画定することができる。膜部分151が広がるように意図されたドーム状領域の周縁部の外側に、またはそれに隣接してスペーサ要素50を配置することには、いくつかの利点があり得る。たとえば、1つまたは複数のスペーサ要素50を、可撓性部材が広がるように意図されたドーム状領域の外側にまたはそれに隣接するように配置することにより、上述したような、スペーサと膜との間のデッドスペースが提供されるとともに、ポンプチャンバ181の意図されたストローク容積に対するいかなる低減も最小限になる。
【0087】
ポンプチャンバ内のスペーサ要素50は、存在する場合、たとえば
図7に示すように、他の任意の好適な方法で配置することができることが理解されるべきである。
図7におけ
る左側ポンプチャンバ181は、
図6のものと同様に配置されたスペーサ50を含むが、ポンプチャンバ181のおよそ中心を通って垂直に延びる1つの破断部または通路50aのみがある。スペーサ50は、
図6のものと同様である凹状形状を画定するように配置することができ(すなわち、スペーサ50の頂部は、
図3および
図4に示す半楕円形上を形成することができ)、球形、箱状形状等を形成するため等、他の好適な方法で配置することができる。
図7における右側ポンプチャンバ181は、スペーサ50が、スペーサ50が垂直に配置され、スペーサ50間の空隙50bもまた垂直に配置されている実施形態を示す。左側ポンプチャンバと同様に、右側ポンプチャンバ181内のスペーサ50は、半楕円形、球形、箱状または他の任意の好適な形状のくぼみを画定することができる。しかしながら、スペーサ要素50は、固定の高さ、図示するものとは異なる空間的パターン等を有することができることが理解されるべきである。
【0088】
また、膜15自体が、スペーサ要素、またはスペーサ要素50に加えてもしくはその代わりに、リブ、出っ張り、タブ、溝、チャネル等の他の特徴を有することができる。膜15におけるこうした特徴は、膜15の付着等を防止するのに役立ち、かつ/または圧送作用中に移動するときにシートがどのように折り重なるかまたは他の方法で変形するかを制御するのに役立つ等、他の特徴を提供することができる。たとえば、膜15の出っ張りまたは他の特徴は、シートが一貫して変形するのに役立ち、繰り返されるサイクル中に同じ領域で折り重ならないようにすることができる。繰り返されるサイクルにおいて膜15を同じ領域で折り重ねることにより、その折り目領域において膜15が時期尚早に機能しなくなる可能性があり、したがって、膜15の特徴は、折り目が発生する方法および場所を制御するのに役立つことができる。
【0089】
この例示的な実施形態では、カセット24のベース部材18は、カセット24内で流体の移動を案内するように、複数の制御可能な弁機能、流体経路および他の構造を画定する。
図6は、ベース部材18のポンプチャンバ側の平面図を示し、それは
図3において斜視図にも示す。
図8は、ベース部材18の後側の斜視図を示し、
図9は、ベース部材18の後側の平面図を示す。ポート150、152および154の各々に対するチューブ156は、ベース部材18に形成されているそれぞれの弁ウェル183と流体連通している。弁ウェル183は、各弁ウェル183を包囲する壁によって、かつウェル183の周囲の壁との膜15の封止係合によって、互いから流体的に隔離されている。上述したように、膜15は、たとえばサイクラ14に装填されるとき、壁と接触するように押圧されることによって、各弁ウェル183の周囲の壁(およびベース部材18の他の壁)と封止係合することができる。膜15が弁ポート184と封止係合するように押圧されない場合、弁ウェル183内の流体は、それぞれの弁ポート184内に流れ込むことができる。したがって、各弁ポート184は、弁ポート184に関連づけられた膜15の一部を選択的に移動させることにより開閉することができる弁(たとえば、「ボルケーノ弁」)を画定する。より詳細に後述するように、サイクラ14は、膜15の一部の位置を選択的に制御することができ、それにより、カセット24内のさまざまな流体チャネルおよび他の経路を通る流れを制御するように、弁ポート(ポート184等)を開閉することができる。弁ポート184を通る流れは、ベース部材18の後側に至る。ヒータバッグおよびドレーンに関連する弁ポート(ポート150および152)の場合、弁ポート184は、ベース部材18の後側に形成された共通チャネル200に至る。弁ウェル183と同様に、チャネル200は、シート16によってカセット24の他のチャネルおよび経路から隔離され、チャネル200を形成するベース部材18の壁との封止接触をもたらす。患者ラインポート154に関連する弁ポート184の場合、ポート184を通る流れは、ベース部材18の後側の共通チャネル202に至る。共通チャネル200は、本明細書では上部流体バスとも呼ぶこともでき、共通チャネル202は、下部流体バスとも呼ぶこともできる
図6に戻ると、(
図6にキャップを外して示す)スパイク160の各々は、それぞれの弁ウェル185と流体連通し、弁ウェル185は、壁と、ウェル185を形成する壁との
膜15の封止係合とによって、互いから隔離されている。膜15がポート186と封止係合しない場合、弁ウェル185内の流体は、それぞれの弁ポート186内に流れ込むことができる。(この場合もまた、各弁ポート186の上の膜15の一部の位置は、弁ポート186を開閉するようにサイクラ14によって制御することができる。)弁ポート186を通る流れは、ベース部材18の後側にかつ共通チャネル202内に至る。したがって、本発明の一態様によれば、カセットは、カセットの共通のマニホールドまたはチャネルに接続される複数の溶液供給ライン(または、透析液を提供するための物質を提供する他のライン)を有することができ、各ラインは、共通のマニホールドまたはチャネルに対するラインとの間の流れを制御する対応する弁を有することができる。チャネル202内の流体は、下部ポンプ弁ウェル189(
図6を参照)に通じる開口部188によって、ポンプチャンバ181の下部開口部187内に流れ込むことができる。膜15のそれぞれの部分がポート190と封止係合するように押圧されない場合、下部ポンプ弁ウェル189からの流れは、それぞれの下部ポンプ弁ポート190を通過することができる。
図9に示すように、下部ポンプ弁ポート190は、ポンプチャネル181の下部開口部187と連通するチャネルに通じている。ポンプチャンバ181から出る流れは、上部開口部191を通過し、上部弁ポート192と連通するチャネルに入ることができる。上部弁ポート192からの流れは(膜15がポート192と封止係合していない場合)、それぞれの上部弁ウェル194内に、かつベース部材18の後側の共通チャネル200と連通している開口部193内に入ることができる。
【0090】
理解されるように、ポンプチャンバ181が、ポート150、152および154のうちの任意のものおよび/またはスパイク160のうちの任意のものとの間で流体を圧送することができるように、カセット24を制御することができる。たとえば、スパイク160のうちの1つにライン30によって接続される容器20のうちの1つによって提供される新鮮な透析液を、適切なスパイク160に対する適切な弁ポート186を開放する(かつ、場合によっては、他のスパイクに対する他の弁ポート186を閉鎖する)ことにより、共通チャネル202内に引き込むことができる。また、下部ポンプ弁ポート190を開放することができ、上部ポンプ弁ポート192を閉鎖することができる。その後、ポンプチャンバ181内の圧力を低下させるように、ポンプチャンバ181に関連づけられた膜15(すなわち、ポンプダイヤフラム151)の部分を(たとえば、ベース部材18およびポンプチャンバ内壁から離れるように)移動させることができ、それにより、流体を、選択されたスパイク160を通して、対応する弁ポート186を通して、共通チャネル181内に、開口部188を通して下部ポンプ弁ウェル189内に、(開放した)下部ポンプ弁ポート190を通して、下部開口部187を通してポンプチャンバ181内に引き込む。弁ポート186は、独立して動作可能であり、任意の所望の順序で、または同時に、スパイク160および関連する供給源容器20の任意の1つまたは組合せを通して、流体を引き込むオプションを可能にする。(当然ながら、流体を引き込むように1つのポンプチャンバ181のみが動作すればよい。他のポンプチャンバは、動作不能のままであり、適切な下部ポンプ弁ポート190を閉鎖することにより流れに対して封鎖されたままにすることができる。)
ポンプチャンバ181内の流体により、下部ポンプ弁ポート190を閉鎖することができ、上部ポンプ弁ポート192を開放することができる。膜15がベース部材18に向かって移動するとき、ポンプチャンバ181内の圧力が上昇する可能性があり、それにより、ポンプチャンバ181内の流体が、上部開口部191を通り、(開放した)上部ポンプ弁ポート192を通り上部ポンプ弁ウェル194内に、開口部193を通って共通チャネル200内に入る。適切な弁ポート184を開放することにより、チャネル200内の流体を、ヒータバッグポート150および/または排液ポート152に(かつ、対応するヒータバッグラインまたは排液ライン内に)送ることができる。このように、たとえば、容器20のうちの1つまたは複数内の流体を、カセット24内に引き込み、ヒータバッグ22および/またはドレーンに出るように圧送することができる。
【0091】
ヒータバッグ22内の流体を(たとえば、患者の体内に導入するためにヒータトレイの上で好適に加熱された後で)、ヒータバッグポート150用の弁ポート184を開放し、下部ポンプ弁ポート190を閉鎖し、上部ポンプ弁ポート192を開放することにより、カセット24内に引き込むことができる。ポンプチャンバ181に関連づけられた膜15の部分をベース部材18から離れるように移動させることにより、ポンプチャンバ181内の圧力を低下させることができ、それにより、流体流がヒータバッグ22からポンプチャンバ181内に入る。ヒータバッグ22からの加熱流体でポンプチャンバ181を充填した状態で、上部ポンプ弁ポート192を閉鎖することができ、下部ポンプ弁ポート190を開放することができる。加熱された透析液を患者に送るために、患者ポート154用の弁ポート184を開放することができ、スパイク160用の弁ポート186を閉鎖することができる。ポンプチャンバ181内の膜をベース部材18に向かって移動させることにより、ポンプチャンバ181内の圧力を上昇させることができ、それにより、流体が、下部ポンプ弁ポート190を通り、開口部188を通って共通チャネル202内に、患者ポート154用の(開放した)弁ポート184にかつそこを通って流れる。患者に対して所望の体積の加熱された透析液を運ぶために、この動作を好適な回数繰り返すことができる。
【0092】
患者から排液を行うとき、患者ポート154用の弁ポート184を開放することができ、上部ポンプ弁ポート192を閉鎖することができ、下部ポンプ弁ポート190を(スパイク弁ポート186を閉鎖した状態で)開放することができる。流体を患者ポート154からポンプチャンバ181内に引き込むように、膜15を移動させることができる。その後、下部ポンプ弁ポート190を閉鎖することができ、上部弁ポート192を開放させることができ、排液ポート152用の弁ポート184を開放することができる。そして、ポンプチャンバ181からの流体を、ドレーンもしくは収集容器内に廃棄するためにまたはサンプリングするために、排液ライン内に圧送することができる。(別法として、サンプリングまたは排液の目的で、1つまたは複数のスパイク160/ライン30に流体を送ることも可能である。)十分な透析液が患者から取り出されて、ドレーンに圧送されるまで、この動作を繰り返すことができる。
【0093】
ヒータバッグ22はまた、混合容器としての役割を果たすことも可能である。個々の患者に対する所定の治療要件に応じて、透析液または異なる組成物を有する他の溶液を、好適な溶液ライン30およびスパイク160を介してカセット24に連結することができる。測定された量の各溶液は、カセット24を用いてヒータバッグ22に追加し、マイクロプロセッサメモリに格納され制御システム16がアクセス可能な1つまたは複数の所定の処方に従って混合することができる。別法として、ユーザが、ユーザインタフェース144を介して所定の治療パラメータを入力することができる。透析液、またはスパイク160に接続された溶液容器のタイプに基づいて、適切な混合要件を計算するように、制御システム16をプログラムすることができ、その後、制御システム16は、混合と患者への処方された混合物の送達とを制御することができる。
【0094】
本発明の態様によれば、患者に注入されるかまたは患者から取り除かれる透析液にポンプによって加えられる圧力は、排液動作および充填動作中の圧力変動からもたらされる「強く引く」または「引っ張る」という患者の感覚を最小限にすることができるように制御することができる。たとえば、透析液を排液するとき、排液プロセスの最後の近くで、吸引圧力(または真空/負圧)を低下させることができ、それにより、透析液除去の患者の感覚が最小限になる。充填動作の最後に近づくとき、同様の手法を用いることができ、すなわち、充填の最後の近くで、送達圧力(または正圧)を低下させることができる。患者が治療の種々のサイクル中に流体移動に対して事実上敏感であることが分かった場合、種々の充填サイクルおよび/または排液サイクルに対して種々の圧力プロファイルを使用す
ることができる。たとえば、患者が覚醒しているときと比較して、患者が眠っているとき、充填サイクルおよび/または排液サイクル中に相対的に高い(または低い)圧力を使用することができる。サイクラ14は、たとえば、赤外線動き検知器を用いて、患者の動きが低減した場合に眠っていると推論するか、または血圧、脳波、もしくは睡眠を示す他のパラメータの検出された変化を用いて、患者の睡眠/覚醒状態を検出することができる。別法として、サイクラ14は、単純に患者に「眠っているか?」と「尋ね」、患者の応答(または応答なし)に基づいてシステム動作を制御することができる。
患者ライン状態検出装置
一態様では、患者ライン状態検出器は、患者ライン34等、患者への流体ラインが、患者に接続される前に適切にプライミングされるときを検出する。(患者ラインに関して流体ライン状態検出について記載するが、本発明の態様は、任意の好適な管セグメントもしくは他の導管の存在、および/または管セグメントもしくは他の導管の充填状態の検出を含むことが理解されるべきである。したがって、本発明の態様は、任意の好適な導管と管状体検出器を使用することができるため、患者ラインとの使用に限定されない。)いくつかの実施形態では、流体ライン状態検出器を用いて、流体ラインの患者接続端部の管セグメントの適切なプライミングを検出することができる。患者の血管内、体腔内、皮下、または別の器官内の体内留置カテーテルに、患者ライン34を接続することができる。一実施形態では、患者ライン34は、腹膜透析システム10の構成要素とすることができ、患者の腹膜腔に透析液を送達しかつそこから流体を受け取る。ラインの先端部の近くの管セグメントは、検出器のセンサ素子が位置するクレードル内に直立姿勢で配置することができる。
図10は、流体ライン状態検出器1000の例示的な構成の正面斜視図を示し、流体ライン状態検出器1000は、ハウジング82の左側外部に、たとえば正面ドア141の左側に、取り付けるかまたは他の方法でそこで露出させることができる。例示の目的で、流体ライン状態検出器について患者ライン状態検出器1000として記載する。患者ライン34は、好ましくは、患者に接続される前にプライミングされるべきであり、それは、そうでない場合、患者の体内に空気が送達される可能性があり、合併症の危険性が高まるためである。設定によっては、患者の腹膜透析カテーテルに接続される前に、患者ライン34内に最大1mLの空気が存在することが許容可能であり得る。後述する患者ライン状態検出器1000の例示的な構成は、概してこの基準を満たすかまたは超過し、それは、それらの検出器が、ライン34の適切に配置された管セグメント内の液体レベルを検出することができ、それにより、プライミング後に、ライン34の先端部に残る空気は、最大でも約0.2mLであるためである。
【0095】
一態様では、第1構成の患者ライン状態検出器1000は、ベース部材1002を含むことができる。ベース部材1002に取り付けられた(または一般にはともにモールドされた)患者ライン状態検出器ハウジング1006もある場合があり、それにより、検出器ハウジング1006は、ベース部材1002から外側に延在することができる。検出器ハウジング1006は、チューブまたはコネクタ保持チャネル1012を画定し、その中に、患者ライン34の先端部の近くの管セグメント34aまたはその関連するコネクタ36を配置することができる。ベース部材1002に面している検出器ハウジング1006の部分は実質的に中空とすることができ、その結果、検出器ハウジング1006の後方に開放空洞1008(
図11おおよび
図13に示す)に生成することができる。開放空洞1008は、管セグメント34aを配置することができるチャネル1012の隣におけるセンサ素子(
図13に示す1026、1028、1030および1032)の配置および位置決めに適応することができる。代替実施形態では、任意選択的に、ベース部材1002から外側に延在する安定化タブ1010もあり得る。安定化タブ1010は凹状外側形状を有することができ、それにより、患者ライン34が患者ライン状態検出器ハウジング1006内に配置されたときに、患者ラインコネクタ36の曲率に実質的に一致することができる。安定化タブ1010は、患者ライン34のプライミング中にコネクタ36が移動するのを防止するのに役立つことができ、それによってプライミングプロセスの正確さおよ
び効率を向上させる。検出器ハウジング1006は、概してチューブまたはコネクタ保持チャネル1012を画定するのに役立つ形状を有することができ、チューブまたはコネクタ保持チャネル1012はさらに、管セグメント34aからチューブコネクタ36への遷移に対応するように変化する寸法を有することができる。
【0096】
この例示的な実施形態では、チャネル1012は、患者ラインコネクタ36の形状に実質的に一致することができる。その結果、チャネル1012内に配置されたときのコネクタ36の一部を包含するように、チャネル1012は「U字型」であり得る。チャネル1012は、2つの別個の特徴、すなわちチューブ部分1014およびクレードル1016から構成することができる。別の態様では、チューブ部分1014をクレードル1016の下方に配置することができる。さらに、一対の側壁1018および後壁1020によって、クレードル1016を形成することができる。側壁1018の両方は、形状をわずかに凸状とすることができ、後壁1020は、概して平坦であり得るか、または他の方法でコネクタ36の隣接する部分の形状に概して一致する輪郭を有することができる。側壁1018の概して凸状の形状は、クレードル1016内に配置されたときの患者ラインコネクタ36を適所に係止するのに役立つ。
【0097】
患者ライン状態検出器1000の第1構成に対する例示的な実施形態では、患者ラインコネクタ36の領域36aは、チャネル1012の対向する後壁1020に対して固定して位置することができる概して平面の表面を有することができる。さらに、コネクタ36のこの領域は、反対側に凹部37を有することができ、それは、コネクタ36が検出器ハウジング1006内に配置されるときに、チャネル1012の対向する側壁1018に隣接して配置することができる。コネクタ36の側面に位置する隆起要素37aによって、凹部37を画定することができる。これらの凹部37のうちの1つが、
図10において部分的に見える。2つの側壁1018は、凹部37と係合し、クレードル1016内の適所にコネクタ36を係止するのに役立つ概して嵌合する形状(たとえば、凸形状等)を有することができる。これは、患者ライン34のプライミング中にコネクタ36および管セグメント34aが検出器ハウジング1006から不注意に取り外されるのを防止するのに役立つ。コネクタ36の隆起要素37aが、十分に可撓性がある材料(たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレンまたは他の同様のポリマー系材料等)から作製される場合、コネクタ36に対する閾値引張力は、コネクタ36および管セグメント34aを検出器ハウジング1006から解除することができる。
【0098】
別の態様では、空洞1012のチューブ部分1014は、管セグメント34aがコネクタ36に取り付けられる直前の時点で、管セグメント34aの大部分を包囲することができる。チューブ部分1014は、3つの構造、すなわち2つの側壁1018および後壁1020を用いて管セグメント34aの大部分を収容することができる。実施形態では、2つの側壁1018および後壁1020は、複数のLED(たとえば、
図13におけるLED1028、1030および1032等)からの光が、著しく遮られるかまたは拡散されることなく壁を通して向けられるのを可能にするように、透明または十分に半透明(たとえば、プレキシガラスから構築される)であり得る。壁1018のうちの1つに沿って、光学センサ1026(
図12に示す)も配置することができ、それは、LEDによって放出されている光を検出することができる。例示する実施形態では、LEDがハウジング内で配置された領域おいて、主検出器ハウジング1006内にスナップ式に嵌まるように、透明または半透明のプラスチックインサート1019を構成することができる。
【0099】
図12は、患者ライン状態検出器プリント回路基板1022に表面実装されたLED1028、1030および1032ならびに光学センサ1026がある斜視配置図を示す。
図13は、検出器回路基板1022に実装されたLED1028、1030および1032ならびに光学センサ1026の平面図を示し、そこでは、検出器回路基板1022は、
検出器ハウジング1006の後壁1020および側壁1018に隣接して配置することができる。
図14は、検出アセンブリ1000の組立分解斜視図であり、ハウジング1006に対するプリント回路基板1022および半透明または透明のプラスチックインサート1019の相対位置を示す。
【0100】
図11の例示的な実施形態も参照すると、検出器回路基板1022は、支持構造1004および内部開放空洞1008の上に配置することができ、内部開放空洞1008は、ベース部材1002から外側に延在する検出器ハウジング1006から形成されている。ベース部材1002が、支持構造1004に対して概して垂直であるように、ベース部材1002および支持構造1004を互いに取り付けることができ、または一般にはモールディングすることができる。この向きにより、概して、検出器回路基板1022の平面が、チャネル1012内に固定されたときに管セグメント34aの長軸に対して概して垂直であることが可能になる。検出器回路基板1022は、開放空洞1008の断面形状に概して一致することができ、後壁1020および側壁1018(
図10)によって形成されたチャネル1012の断面形状に概して一致する切取り部1024(
図12、
図13)も有することができる。そして、開放空洞1008内に検出器回路基板1022を配置することができ、検出器回路基板1022の管セグメント34aまたはコネクタ36との適切な位置合わせを確実にするために、切取り部1024は、検出器ハウジング1006の後壁1020および側壁1018に略隣接している。
【0101】
検出器回路基板1022は、回路基板1022に取り付けることができる複数のLEDおよび少なくとも1つの光学センサを含むことができ、一実施形態では、LEDおよび光学センサは、回路基板1022に表面実装することができる。一態様では、検出器回路基板1022は、第1LED1028、第2LED1030、第3LED1032および光学センサ1026を含むことができる。第1LED1028および第2LED1030は、チャネル1012の同じ側壁1018aを通して光を向けるように配置することができる。第1LED1028および第2LED1030によって放出される光は、概して平行方向に、それらが最も近い側壁1018aに対して概して垂直に向けることができる。チャネル1012の対向する側壁1018bに沿って、光学センサ1026を配置することができる。さらに、チャネル1012の後壁1020に沿って、第3LED1032を配置することができる。この例示的な実施形態では、LEDおよび光学センサ1026のこうした構成により、患者ライン状態検出器1000は、患者ライン34をプライミングする過程の間に3つの異なる状態、すなわち管セグメント34aまたはコネクタ36が略完全に流体で充填されている(プライミング済み状態)、管セグメント34aまたはコネクタ36が完全には充填されていない(非プライミング状態)、またはチャネル1012に管セグメント34aおよび/またはコネクタ36が存在しない(ライン不在状態)を検出することができる。
【0102】
たとえば腹膜透析システム10等の腹膜透析システムで使用される場合、このように検出器回路基板1022を構成することにより、PDサイクラコントローラシステム16に適切な制御信号を送信することができる。そして、コントローラシステム16は、ユーザに対し、ユーザインタフェース144を介して、腹膜透析カテーテルへの接続を行う前に、患者ライン状態検出器1000においてライン34の先端部を位置決めするように通知することができる。そして、コントローラは、患者ライン状態検出器1000内における管セグメント34aの配置をモニタリングすることができる。そして、コントローラは、続いて、ライン34のプライミングを指示し、ライン34がプライミングされるとプライミングの終了を指示し、その後、ユーザに対して、患者ライン状態検出器1000からライン34の先端部を分離し、それをユーザの腹膜透析カテーテルに接続するように指示することができる。
【0103】
LED1028、1030および1032ならびに光学センサ1026を回路基板1022に表面実装することは、装置に対する製造プロセスを単純化することができ、患者ライン状態検出器1000および回路基板1022が相対的に小さい空間を占有するのを可能にすることができ、LEDまたは光学センサの互いに対するまたはチャネル1012への移動から生じる可能性がある誤差を排除するのに役立つことができる。センサ構成要素の表面実装なしでは、装置の組立中、またはその使用中に、構成要素の位置ずれが発生する可能性がある。
【0104】
一態様では、LED1032の光軸(または中心光軸)は、光学センサ1026の光軸に対して斜角を形成することができる。例示する実施形態では、第1LED1028、第2LED103および光学センサ1026の光軸は、各々、互いにかつチャネル1012の後壁1020に対して概して平行である。したがって、LEDから光学センサ1026に向けられる光の量は、(a)チャネル1012内の半透明または透明の導管の存在もしくは不在、および/または(b)(たとえば、管セグメント34aであり得る)導管内の液体の存在に応じて変化する可能性がある。好ましくは、チャネル1012内の半透明または透明の管セグメント34aの存在によってLED1032によって放出される光の一部を屈折させるために、光学センサ1026から最も遠い側壁(たとえば、1018a)の近くに、LED1032を配置することができる。光学センサ1026から離れるかまたはそれに向かう屈折の程度は、管セグメント34aにおける流体の存在または不在によって決まる可能性がある。
【0105】
さまざまな実施形態では、光学センサ1026に対するLED1032の斜角により、チャネル1012に半透明または透明な導管を備えた、液体の存在または不在を判断するよりロバストなシステムが生成される。LED1032は、その光軸が、光学センサ1026の光軸に対して91°〜179°の任意の角度を形成することができるように、配置することができる。好ましくは、角度は、光学センサの光軸に対して約95°〜約135°の範囲内に設定することができる。より好ましくは、LED1032は、光学センサの光軸に対して約115°±5°の光軸を有するように設定することができる。
図13に示す例示的な実施形態では、光学センサ1026の光軸に対するLED1032の光軸の角度θは、およそ115°±5°に設定された。(この特定の実施形態における光学センサ1026の光軸は、後壁1020に対しておよそ平行であり、側壁1018bに対しておよそ垂直である。)光学センサ1026の光軸に対してLED1032の角度を付けることの利点は、約115°の角度で向けられたLED1032と、これに対する、光軸が、光学センサ1026の光軸に対して垂直または平行に向けられたLEDとを用いて、空気充填チューブセグメント(ドライチューブ)から流体充填チューブセグメント(ウェットチューブ)を識別する際に、光学センサ1026の性能を比較する一連の試験において確認された。その結果により、角度付きLEDベースシステムは、管セグメント34aにおける液体の存在または不在を識別するのによりロバストであることが分かった。角度付きLED1032を用いることにより、超えると空の管セグメント34aを確実に検出することができる、光学センサの信号強度閾値を選択することが可能であった。また、下回ると流体充填管セグメント34aを確実に検出することができる、光学センサ信号強度閾値を選択することも可能であった。
【0106】
図15は、患者ライン状態検出器1000が液体充填管セグメント34a(プライミング済み状態)と空の管セグメント34a(非プライミング状態)とを識別することができることを実証する試験結果のグラフを示す。その結果は、光学センサ1026の光軸に対して約115°の角度で向けられたLED1032(第3LED)と、光学センサ1026の光軸に対しておよそ平行に向けられたLED1030(第2LED)とに対して記録された。
図15においてプロットされた結果により、患者ライン状態検出器1000が、プライミング済み状態と非プライミング状態とを確実に区別することができることが実証
される。LED1030から受け取られる光に関連する相対信号強度がおよそ0.4以上であった場合、LED1032から受け取られた光信号のみを使用して、非プライミング状態対プライミング済み状態に対する上限信号検出閾値1027および下限信号検出閾値1029を決定することができた。上限閾値1027を用いて、非プライミング状態を識別することができ、下限閾値1029を用いて、プライミング済み状態を識別することができる。上限閾値1027より上に位置するデータ点は、空の管セグメント34a(非プライミング状態)に関連づけられ、下限閾値1029より下に位置するデータ点は、液体充填管セグメント34a(プライミング済み状態)に関連づけられる。これらの2つの閾値の間の相対的に狭い領域1031は、管セグメント34aのプライミング状態の評価が不確定である可能性がある、LED1032から受け取られた光に関連づけられた相対信号強度の範囲を画定する。LED1032から受け取られる光に関連づけられた信号強度がこの不確定範囲内にある場合はいつでも、ユーザに対して適切なメッセージを送信するように、コントローラ(たとえば、制御システム16等)をプログラムすることができる。たとえば、ユーザに対して、管セグメント34aおよび/またはコネクタ36が患者ライン状態検出器1000に適切に取り付けられているか否かを評価するように指示することができる。腹膜透析システムに関連して、光学センサ1026が、空の管セグメント34aに対応する信号を生成する場合、コントローラは、透析液で患者ライン34をプライミングし続けるようにサイクラに指示することができる。コントローラが、液体充填管セグメント34aに対応する信号を用いて、それ以上のプライミングを停止し、ユーザに対して、流体ライン34が透析カテーテルに接続される準備ができていることを指示することができる。
【0107】
実施形態では、サイクラコントローラは、プライミング処置の開始時、LEDのうちの1つからの受け取った信号を連続的にモニタリングすることができる。受け取った信号の変化を検出すると、コントローラは、LEDのすべてを用いる完全な測定を行うために、さらなる流体圧送を停止させることができる。受け取った信号が、十分に、ウェットチューブを示す範囲内にある場合、さらなるプライミングを停止させることができる。しかしながら、受け取った信号が、不確定領域1031内または「ドライ」領域内にある場合、サイクラは、圧送カセットによる患者ライン内への流体の一連の小さい漸増するパルスを命令し、流体の各パルスの後、LED信号強度を繰り返し読み取る。そして、センサのレベルにおいて流体充填ラインを示す読取が達成されるとすぐに、プライミングを停止させることができる。弁の短いパルスを命令して、圧力リザーバをポンプ作動チャンバまたは制御チャンバに接続することにより、流体の漸増パルスを達成することができる。別法として、コントローラは、ポンプ作動チャンバまたは制御チャンバに連続した圧力を加えることを命令し、ポンプの出口弁に対して、一連の流体パルスを生成するように短い時間開放して閉鎖するように命令することができる。
【0108】
図16は、光軸が光学センサ1026の光軸に対しておよそ垂直であるLED(LEDd)と比較したときの、角度付きLED1032(LEDc)の優位性を実証する試験結果のグラフを示す。この場合、LEDからの光に応答して光学センサ1026によって生成された相対信号強度が、LEDからの光に関連づけられた信号強度に対してプロットされた。液体充填済み(「プライミング済み」)管セグメント34aと空(「非プライミング」)管セグメント34aとの間の幾分かの分離が、約0.015のLED相対信号強度で明白であったが、この閾値に基づいて「プライミング済み」データ点から識別することができない実質的な数の「非プライミング」データ点1035が残った。一方、0.028〜0.03のLEDcからの光に関連づけられた相対信号強度1033は、「プライミング済み」管セグメント34a(プライミング済み状態)と「非プライミング」管セグメント34a(非プライミング状態)とを有効に識別することができる。したがって、角度付きLED(1032)は、直角に向けられたLEDより信頼性の高いデータを生成することができる。
【0109】
別の実施形態では、患者ライン状態検出器1000はまた、管セグメント34aがチャネル1012に存在するか否かを判断することができる。一態様では、第1LED1028および第2LED1030は、隣同士に配置することができる。一方のLED(たとえば、LED1028)は、その光軸がチャネル1012内の適切に位置決めされた半透明または透明の導管または管セグメント34aのおよそ中心を通過するように配置することができる。第2LED(たとえば、LED1030)は、その光軸がチャネル1012内の導管または管セグメント34aに対して中心から外れてわずかにシフトするように配置することができる。光学センサ1026がチャネル1012の反対側にある状態で、このように、チャネル1012の一方の側の中心に/中心から外れてLEDを対にすることにより、チャネル1012内に液体導管または管セグメント34aが存在するかまたは不在であるかを判断する信頼性が向上することが分かった。管セグメント34aが交互に、チャネル1012内に、不在である、存在するが適切に配置されていない、または存在し適切に配置された、一連の試験では、光学センサ1026によって第1LEDおよび第2LED1030から信号測定値が取得された。各LEDから受け取られた信号は、互いに対してプロットされ、その結果を
図17に示す。
【0110】
図17に示すように、管セグメント34aがチャネル1012(領域1039)に不在であった場合の大部分では、LEDaに起因する光学センサ1026によって受け取られた信号強度(LEDa受信強度)は、LEDaがチャネル1012内の任意の管の既知の不在状態で点灯された校正ステップ中にLEDaから受け取った信号強度と著しく異らないことが分かった。同様に、LEDbに関連づけられた信号強度(LEDb受信強度)は、LEDbがチャネル1012内の任意の管の既知の不在状態で点灯された校正ステップ中のLEDbとは著しく異ならないことが分かった。患者ライン状態検出器1000は、LEDaのその校正値に対する比およびLEDbのその校正値に対する比が、各々およそ1±20%である場合、チャネル1012内にチューブが存在しないと確実に判断することができる。好ましい実施形態では、閾値比は、1±15%に設定され得る。患者ライン状態検出器1000が腹膜透析サイクラとともに使用される実施形態では、
図17の領域1039内のLEDaおよびLEDbの値を使用して、たとえば、チャネル1012におけるチューブセグメント34aの不在を示すことができる。さらなる圧送動作を休止し、患者ライン状態検出器1000内の患者ライン34の先端部に適切に位置決めすることが必要であることを、ユーザインタフェース144を介してユーザに通知するように、サイクラコントローラをプログラムすることができる。
【0111】
上述した3つのLEDおよび光学センサ1026の構成および位置合わせは、広範囲の半透明性を有する半透明または透明の流体導管(たとえば、管セグメント34a)を用いて必要なデータを生成することができる。さらなる試験では、患者ライン状態検出器1000は、著しく異なる程度の半透明性を有する管のサンプルを用いて、流体導管内の空気から液体を識別するか、または流体導管の存在もしくは不在を識別するための信頼性の高いデータを提供することができることが分かった。それはまた、使用されているPVC管が、滅菌されていないかまたは滅菌されている(たとえば、EtOXで滅菌されている)かに関する信頼性の高いデータを提供することもできた。
【0112】
LEDから光学センサ1026によって取得された測定値は、管セグメント34aの状態を検出するために患者ライン状態検出器アルゴリズムへの入力として使用することができる。充填された管セグメント34a、空の管セグメント34aまたは不在の管セグメント34aを検出する以外に、アルゴリズムの結果は不確定である可能性があり、場合によっては、患者ライン状態検出器1000内の管セグメント34aの移動または不適切な位置決め、または場合によっては患者ライン状態検出器1000のチャネル1012内の異物の存在を示す。製造のばらつきにより、LEDからの出力および光学センサ1026の
感度が、種々のアセンブリ間で変化する可能性がある。したがって、患者ライン状態検出器1000の初期校正を行うことが有利である可能性がある。たとえば、以下の手順を用いて、LEDおよびセンサの校正値を得ることができる。
【0113】
(1)管セグメント34aが患者ライン状態検出器1000に装填されていないことを確実にする。
(2)光学センサ1026に対して以下の4つの異なる状態に関して問い合わせる。
【0114】
(a)LED点灯なし
(b)第1LED1028(LEDa)点灯
(c)第2LED1030(LEDb)点灯
(d)第3LED1032(LEDc)点灯
(3)「LED点灯なし」信号値を他の信号値の各々から減算して、それらの環境補正値を求め、「チューブなし」校正値としてこれらの3つの測定値を格納する。
【0115】
LEDおよびセンサに対する校正値が得られると、管セグメント34aの状態を検出することができる。この例示的な実施形態では、患者ライン状態検出器アルゴリズムは、以下のように試験において状態検出を行なう。
【0116】
(1)光学センサ1026に対して以下の4つの異なる状態に関して問い合わせる。
(a)LEDなし
(b)第1LED1028(LEDa)点灯
(c)第2LED1030(LEDb)点灯
(d)第3LED1032(LEDc)点灯
(2)「LED点灯なし」値を他の値の各々から減算して、それらの環境補正値を求める。
【0117】
(3)各LEDに関連づけられた試験値をそれらの対応する校正(「チューブなし」)値で除算することによって相対LED値を計算する。
結果
環境補正LEDa値が0.10未満である場合、検出器に異物がある可能性があり、または、不確定な結果がユーザに報告される可能性がある。
【0118】
環境補正LEDaおよびLEDb値がそれらのそれぞれの格納された校正(チューブなし)値の±15%の範囲内にある場合、管セグメントが検出器内に存在しないことをユーザに報告する。
【0119】
環境補正LEDb値がその格納された校正(チューブなし)値の約40%以上である場合、
(a)LEDcに関連づけられた信号を確認し、
(i)LEDcに関連づけられた環境補正信号がその校正(「チューブなし」)値の約150%以上である場合、管セグメントが空であることをユーザに報告する。
【0120】
(ii)LEDcに関連づけられた環境補正信号がその校正(「チューブなし」)値の約125%以下である場合、管セグメントが液体で充填されていることをユーザに報告する。
【0121】
(iii)上記以外、結果は不確定であり、その測定を繰り返すか(たとえば、管セグメントが移動中である可能性があり、凹凸がある可能性があり、または不明瞭である可能性がある)、または、検出器に適切に挿入されていることを確実にするように管セグ
メントを確認すべきであることをユーザに報告する。
【0122】
環境補正LEDb値がその格納された校正(「チューブなし」)値の約40%未満である場合、ドライチューブの存在を確定するためのLEDc閾値は、より大きくなる可能性がある。一実施形態では、たとえば、LEDcの空のチューブ閾値は、以下の関係に従うことが経験的に分かった([LEDcの空のチューブ閾値]=−3.75×[LEDb値]+3)。
【0123】
管セグメント34aが患者ライン状態検出器1000に搭載されたと判断されると、患者ライン状態検出器アルゴリズムは、以下を行なうことができる。
a)LEDが点灯なしであるか光学センサ1026に対して問い合わせ、これをLEDなし値として格納する。
【0124】
b)LEDcを点灯する。
c)光学センサ1026に対して問い合わせ、LEDなし値をLEDc値から減算し、これを初期値として格納する。
【0125】
d)圧送を開始する
e)光学センサ1026に対して問い合わせ、LEDなし値を次のLEDc値から減算する。
【0126】
f)この値が初期値の75%未満である場合、管セグメント34aが液体で充填されていると断定し、圧送を手薄し、上記の手順を用いて検出器状態を確認し、指示されたときに、ユーザに対してプライミングが完全したことを報告する。そうでない場合、問合せ、計算および比較を繰り返し続ける。一実施形態では、たとえば0.005〜0.01秒毎等、要求通りの頻度で問合せプロトコルを行なうように、システムコントローラをプログラムすることができる。実施形態では、問合せサイクル全体を、好都合に0.5秒毎に行うことができる。
【0127】
図18は、6つのサイクルに対するサンプル校正手順の結果を示す。ウェットチューブからドライチューブを識別する信号強度範囲(「ウェット/ドライ閾値」範囲)は、異なるサイクル間で変化することが留意される。(これらの範囲のばらつきは、さまざまな構成要素の製造、組立および位置決めのわずかなばらつきによる可能性がある。)したがって、校正において、各サイクラに対して、ウェットチューブによって生成されるデータ点からドライチューブによって生成されるデータ点を最適に分離するウェット/ドライ閾値信号強度範囲を割り当てることができる。
【0128】
図19は、患者ライン状態検出器1000の第2構成の斜視図を示す。さまざまな種類の患者ラインコネクタに対応するために、2つ以上の異なる患者ライン状態検出器構成が必要である場合がある。この例示的な実施形態では、第2構成の患者ライン状態検出器1000は、第1構成の患者ライン状態検出器1000とほとんど同じ構成要素を含むことができる。しかしながら、異なる種類のコネクタに対応するために、第2構成は、第1構成の患者ライン状態検出器1000で見いだされる安定化タブ1010ではなく、ハウジング1006の上方に隆起要素1036を含むことができる。隆起要素1036は、概して、標準的な患者ラインコネクタキャップまたはコネクタフランジの形状に一致することができる。
【0129】
本開示の態様によれば、検出器ハウジング1006は、チューブ部分1014を含まない場合がある。したがって、LEDおよび光学センサがチューブの一部ではなく半透明または透明の患者ラインコネクタ36の隣に配置され得るように、検出器回路基板1022
の配置を可能にするように、開放空洞1008を配置することができる。したがって、チャネル1012は、コネクタ36を通るLED光の透過に対応するように異なる形状とすることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、流体ライン検出器1000は、管のセグメントのプライミング状態を検出するために使用されるのではなく、単に1つまたは複数のLEDを使用して、流体ライン検出器1000においてラインセグメントの存在を検出することができる。ラインセグメントの存在および適切な設置は、上述した実施形態より少ないLEDを用いて判断することができる。
【0131】
他の実施形態では、別のタイプのセンサを用いて、流体ライン30または患者ライン34等の流体ラインに関連する1つまたは複数の関心のある状態を検出することができる。たとえば、流体ライン検出器1000は、電気もしくは磁気接点スイッチ、またはマイクロスイッチ等の物理的に作動するスイッチを含むことができる。流体ライン検出器1000は、こうしたスイッチの作動により、流体ラインコネクタ36または管セグメント34aの存在を検出することができる。いくつかの実施形態では、流体ライン検出器1000において2つ以上のこうしたスイッチを使用することができる。これによって幾分かの冗長性を提供することができ、またはこれを用いて、関心のある複数のラインセグメントが適切に設置されていることを検出することができる。実施形態では、たとえば、管セグメント34aがチャネル1012内に設置されたときに駆動されるように、チャネル1012にマイクロスイッチを配置することができる。別法としてまたはさらに、流体ラインコネクタ36が流体ライン検出器1000に配置されたときに駆動されるように、たとえば、クレードル1016内にマイクロスイッチを配置することができる。こうした実施形態では、サイクラコントローラ(たとえば、制御システム16)は、1つまたは複数のスイッチのすべてが、ラインおよび/またはコネクタが流体ライン検出器1000内に適切に設置されていることを示すまで、管のプライミングを可能にしない場合がある。
【0132】
別の実施形態では、流体ライン検出器1000は、スプリットリング共振器ベースのセンサを用いてチューブセグメントの存在および状態を検知することができる。こうした検出器は、たとえば、2014年7月25日に出願され、System,Method and Apparatus for Bubble Detection in a Fluid Line Using a Split−Ring Resonatorと題する米国特許出願第14/341,207号明細書に示されかつ記載されており、その出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
いくつかの実施形態では、流体ライン検出器1000のセンサは、流体ライン検出器1000に設置された流体ライン34のタイプ(たとえば、大人用サイズ対小児用サイズ、不透明対半透明等)を検出するように構成することができる。流体ラインコネクタ36および/または管セグメント34aは、たとえば、使用されているラインのタイプに応じて、異なる識別特徴(たとえば、異なる幾何学的形状)を有することができる。こうした識別特徴の存在または不在を検知することに基づいて、いずれのタイプのラインが存在するかを認識するように、流体ライン検出器1000のセンサを構成することができる。
【0134】
たとえば、流体ライン検出器1000がマイクロスイッチを使用するように構成されている場合、特定のタイプの流体ラインコネクタ36の存在を検出するようにスイッチを構成することができる。各タイプのラインにおける流体ラインコネクタ36は、異なる特徴(たとえば、異なる突起もしくは空隙、または異なるように配置された突起もしくは空隙)を含むことができる。流体ライン検出器1000に設置されると、流体ラインコネクタ36は、特定のタイプの流体ラインコネクタ36の存在を検出するために、所定のスイッチまたはスイッチ群を動かす可能性がある。スイッチの無効なまたは予期しない組合せが
駆動された場合、またはサイクラもしくは医療機器と使用するように意図された流体ライン形状に対応しないスイッチの組合せが駆動された場合、ユーザに対して不適合なまたは不適切なラインを通知するように、コントローラをプログラムすることができる。スイッチのこの配置を用いて、不適切に設置されたラインまたはコネクタを検出することも可能である。
【0135】
他の実施形態では、液体流がライン34の先端部の内腔内またはライン34の先端部におけるコネクタ36内で空気流に置き換わったときを検出することにより、流体ライン34の液体によるプライミングの完了を推断することができる。(重力によりまたは能動的な圧送により)所定の力を受けているときに、液体の流量をモニタリングすることにより、所与の内径の内腔内の空気と液体との間の流れに対する抵抗の差を検出することができる。内腔の内径は、空気流と液体流との識別を最適化するように選択することができる。大部分の場合、これは、流体ライン34または先端コネクタの端部の近くまたはその部分に流量制限部を導入することを含む。ライン34またはコネクタ36の先端部における適切に選択された流量制限部により、ライン34から出る比較的制限されない空気流が可能になるとともに、ライン34を通る液柱の進行を遅くするのに十分、液体流が妨げられる。この液体流抵抗の増大または制限ゾーンの前後の圧力降下の変化は、液体流路における流量計を使用することにより、または所定時間間隔にわたる上流のポンピングチャンバにおける液体の体積の変化を測定することにより、検出することができる。膜ベースの容積式ポンプが使用される実施形態では、ポンプの作動チャンバ内の圧力を(たとえば、ボイルの法則、または閉鎖空間における理想気体の他の圧力−体積関係を適用することによって)モニタリングすることにより、ポンピングチャンバ内の液体体積の変化の速度を計算することができ、作動チャンバ内の圧力は、ポンプのポンピングチャンバ内の圧力を示す。流体ラインから液体流データを受け取るか、またはポンピングチャンバ内の圧力変化を測定することによりポンピングチャンバから出る液体流を計算するコントローラは、液体流を所定値と比較することができる。別法として、コントローラは、液体流量の低下を計算し、流量の変化を予測知と比較して、流体ラインが液体でプライミングされたことを宣言することができる。
【0136】
流れが妨げられるゾーンは、狭窄部、障害物、部分的閉塞部または制限部(たとえば、オリフィス)を含むことができ、それは、空気の容易な通過を可能にするが、透析液等の液体の通過を妨げる。その特徴は、流体ラインの基端セクションにおける流体導管の断面積より小さい断面積を有する領域を含む、先端管または流体コネクタ36の短いセグメントを含むことができる。本明細書で用いる「制限部」は、流体導管における空気と液体とで区別をして流れに対する抵抗を増大させる任意の特徴を包含するように意図される。
【0137】
実施形態では、制限部は、流体ラインまたは関連するコネクタの先端部から取外し可能であり得る。たとえば、制限部は、流体ライン34のプライミング中に流体ライン34の適所に残る栓またはキャップに含めることができる。制限部は、たとえば、製造中に栓またはキャップの一部としてモールドすることができる。この制限部は、キャップの栓部分における凹部、空隙、チャネルまたは他の流路であり得る。キャップの栓部分を、流体導管内に直接、または取り付けられたコネクタ36の内腔内に、挿入することができる。別法として、栓またはキャップの栓部分は、流体導管または関連するコネクタ内腔の直径より小さい直径を有するようなサイズとすることができる。キャップが設置されると、栓部分は、流体導管の一部を閉塞して、栓の外面と導管の内壁との間に小さい間隙をもたらし、それにより、制限部を生成する。
【0138】
流体ライン34をプライミングするために流体を圧送するとき、流体は、空気が制限部を通って流体ライン34から出て自由に変位する際に、相対的に高い流量で移動する。液体が制限部に達するときのインピーダンスの上昇により、流量が低速になる。プライミン
グが発生する際に1つまたは複数のセンサから入力を受け取っているコントローラによって、流量をモニタリングすることができる。流量が低下すると、空気が、制限部を越えてラインから押し出され、所与の加えられた力が、このとき、液体を、制限部に押し通そうとしていることを推断することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、さらなるロジックを採用して、流体ラインにおける液体流量の低減に対する複数のあり得る原因を識別することができる。
【0139】
制限部が(流体ラインの先端部、または取り付けられたコネクタ内に配置された)オリフィスである実施形態では、オリフィス開口部の断面積は、液体流に対する所望の量のインピーダンスを生成するように選択することができる。さらに、選択される圧送圧力は、空気を圧送するときの流量と液体を圧送するときの流量とが、検出可能に異なるように、選択することができる。
【0140】
流体ライン34が完全にプライミングされる箇所のわずかに上流に制限部を配置することが望ましい場合がある。これにより、コントローラが、液体流に対するインピーダンスが変化したか否かを判断している判断または認識期間中に、幾分かの液体が制限部を通って流れることができる。制限部から下流にライン容積があることにより、コントローラがプライミングの判断を行い、流体ポンプを停止する間、追加の液体を収容する流体バッファを提供し、したがって、流体ラインの先端部から出る液体のオーバーフローを防止するのに役立つ。好ましくは、液体流インピーダンスの変化に応答する圧送システムの遅延特性は、システムパラメータが選択されると、システムに対して経験的に確定される。これらのパラメータとしては、たとえば、ポンプによって加えられる力または圧力、圧送体積確定または流量測定の頻度、管の内径および長さ、流量制限部の特性、ならびにコントローラおよびポンプの応答時間を挙げることができる。システム特性が確定すると、オーバーフローを防止するために必要な制限後の管またはコネクタバッファ容積を、経験的に求めることができる。例示的な目的で、制限部を通る流量が30mL/分であり、かつコントローラおよびポンプがインピーダンス変化を認識してそれに応答するのに約5秒かかる場合、システムがインピーダンス変化に応答している間、約2.5mLのヒステリシス流体体積が移動する。こうした実施形態では、制限部を越えた下流容積は、およそ2.5mL、または2.5mLをわずかに超えるように設定することができる。これは、ラインをオーバープライミングして流体がラインをオーバーフローして漏れ出るようにすることなく、プライミング中に流体ライン34に残っている空気の量を最小限にするのに役立つような役割を果たすことができる。
【0141】
別法として、制限部は、インピーダンス変化が検出されている間に、制限流路容積が予期される流量に近づくのを可能にする距離、ライン軸に沿って延在することができる。この実施形態は、制限部が流体ラインキャップ内に含まれる場合に望ましい可能性がある。
【0142】
いくつかの実施形態では、空気透過性であるが実質的に液体不透過性である材料を使用して、液体流を制限することができる。こうした材料は、比較的無制限の空気の通過を可能にするが、液体の通過を制限するかまたは阻止することができる。この材料は、流体ライン34の端部に配置することができ、空気がライン34から圧送されるのを可能にするが、ライン34がプライミング状態に達したときのオーバーフローおよびこぼれを防止することができる。そして、たとえば、ユーザがラインのキャップをはずすと、流体ラインキャップとともに材料を取り除くことができる。いくつかの具体的な実施形態では、使用される材料は、Goretexまたは別の同様の材料(たとえば、微多孔性またはマクロ多孔性のいずれかであり得る通気性材料)であり得る。上述したように、液体が材料に達するときの流量の低下が、流体ライン34がプライミング状態に達したことを通知する。
【0143】
図20および
図21は、流体ラインキャップ5320、流体ライン34および流体ライ
ンコネクタ36の代表的な実施形態霊を示す。図示するように、制限部5322が、流体ライン34内に含まれている。他の例では、キャップ5320は、図示する制限部5322と同様の制限部を組み込んだ内面特徴を有することができる。この例では、制限部5322は、任意選択的に、制限部5322の下流に幾分かの流体ライン34容積があるように配置される。実施形態例における制限部5322は、断面積が低減した流体路の部分である。他の例では、制限部5322は、切り開かれた、穿孔された、または他の方法で液体の通過に対する抵抗を増大させる1つもしくは複数の細孔を有する、オリフィスまたは膜であり得る。
【0144】
図20に示すように、流体ライン34内の液体5324は、制限部5322にまだ達していない。この時点で、流体ライン34を通る流体(たとえば、空気および液体の層状柱)の流量は比較的高い可能性がある。空気柱が排出されると、流体ライン34内の液体5324は、制限部5322に達することになる。この時点で、インピーダンスの変化のために、流量が低下する。サイクラが、インピーダンスが変化したと判断する際、幾分かの液体5324は流れ続ける。検出されると、ラインを通る液体の流れを停止するように、サイクラをプログラムすることができる。この時点で、
図21に示すように、液体5324は、制限部5322の下流のライン34容積を含むライン34全体を実質的にプライミングしている。ユーザに対して、ライン34がプライミングされ、治療に備えてカテーテルまたは他のデバイスに接続する用意ができていることを通知するように、コントローラをプログラムすることができる。
【0145】
図22および
図23は、流体ライン34、流体ラインコネクタ36および流体ラインキャップ5320の別の実施形態霊を示す。図示するように、流体ライン34または流体ラインコネクタ36には制限部がない。流体ラインキャップ5320は、流体ライン34用の栓として作用し、制限部5322を含む。実施形態例では、制限部5322は、流体ラインキャップ5320の栓部分の周囲に凹状に設けられた、切欠き、溝またはチャネルを含むことができる。制限部5322は、空気がプライミング中に比較的わずかな抵抗でラインから出るように圧送されるのを可能にするが、空気柱が完全に放出されると、液体の流れを妨げるような、サイズとすることができる。コントローラは、ライン34がプライミングされていると判断すると、その後、ユーザに対して、ラインキャップ5320を取り除き、流体ラインコネクタ36を体内留置カテーテルまたは他の同様のデバイスに取り付けるように指示することができる。
【0146】
図22に示すように、流体ライン34内の液体5324は、制限部5322にまだ達していない。この時点で、流体ライン34を通る流体(気体に液体を足したもの)の流量は、比較的高い可能性がある。流体ライン34内の液体5324が制限部5322に達すると、制限部5322を通るガス流と液体流との間のインピーダンス変化のために、流量が低下する。コントローラが、インピーダンスが変化したと判断する際、幾分かの液体5324は流れ続ける。検出されると、コントローラは、ラインを通る液体5324の流れを停止する。この時点で、
図23に示すように、液体5324は、ライン34全体を実質的にプライミングしている。そして、コントローラは、ユーザに対して、ライン34がプライミングされ、ラインキャップ5320を取り除くことができることを通知することができる。キャップ5320が取り除かれると、圧送されたいかなる過剰な液体5324も、流体ラインキャップ5320の栓部分が以前占有していた流体ライン34の容積を充填することができる。別法として、キャップ5320が取り除かれたという信号をユーザから受け取るようにコントローラをプログラムすることができ、サイクラまたはポンプに対し、わずかな量の液体を、液体ライン34を下って前進させ、使用の前にライン34またはコネクタ36の先端部につぎ足すように、コントローラをプログラムすることができる。
【0147】
図24は、栓または栓部分5500を備えた流体ラインキャップ5320の代表的な例
を示す。図示するように、流体ラインキャップ5320は、流体ライン34の流体導管内に突出しその中にぴったり嵌まるようなサイズであり得る栓部分5500を含む。流体ラインキャップ5320の栓部分5500内に切欠きが設けられ、それは、流体ラインキャップ5320が流体ライン34またはラインコネクタ36の端部に設置されたときに制限部5322を生成する役割を果たす。図では、切欠きは、断面が実質的に三角形である。他の実施形態では、任意の好適な断面形状を使用することができる。たとえば、他の部分は中実である栓5500の長さを通る狭い内腔等、他の構成を使用することができる。また、
図24に示すように、流体流路内に延在する栓部分5500の端部は、任意選択的に丸くする(またはテーパ状にする)ことができる。これにより、流体ライン34上に流体ラインキャップ5320を配置するのを容易にすることができる。
【0148】
図25は、流体ラインキャップ5320の別の実施形態を示す。
図24と同様に、流体ラインキャップ5320は、栓部分5500を含み、それは、流体ライン34の流体導管内に突出しかつその中にぴったりと嵌まるようなサイズであり得る。
図25における制限部5322は、流体が、流体ライン34の流体導管から栓部分5500の内部を通り流体ラインコネクタ36の内部容積内に流れ込むのを可能にする流路である。
図26に、例としての流体ラインキャップ5320の長手方向平面における断面図を示す。流路の断面積は、流体ライン34流体導管の断面積より小さい。
【0149】
図27は、流体ライン34の流体ラインコネクタ36に設置された流体ラインキャップ5320の別の実施形態を示す。
図28に示すように、
図27の線28−28における断面、流体ラインコネクタ36は、流体ライン34の流体導管内に延在するセグメントを含む。流体ライン34のチューブを、流体ラインコネクタ36に固定する(たとえば、接着する、接合する、溶接する等)ことができる。流体ラインコネクタ36は、流体ライン34の流体導管から、流体ラインコネクタ36の一部として含まれるコネクタ取付具5502に通じる流路を含む。コネクタ取付具5502は、(たとえば、患者の体内留置カテーテルの)相補的なコネクタの協働する特徴と嵌合して、流体が部位(たとえば、腹膜腔または別の体腔)から送達されかつ/または引き出されるのを可能にすることができる。実施形態例では、ルアーロックが示されているが、多数の他の好適なコネクタまたは取付具のうちの任意のものを使用することができる。
【0150】
実施形態例におけるキャップは、栓部分5500を含む。栓部分5500は、流体ラインコネクタ36の流体経路内に延在するようなサイズである。実施形態例では、栓部分5500の直径は、流体ラインコネクタ36内の流路の直径より小さい。流体ラインキャップ5320の栓部分5500が流体ラインコネクタ36の流路内に設置されると、栓部分5500の外面と流路の内壁との間に小さい間隙が残る。したがって、栓部分5500は、流路の断面積を低減させる役割を果たし、制限部5322を生成する。
【0151】
上述したように、いくつかの実施形態では、栓部分5500の外面と流路の内壁との間の小さい間隙は、存在する必要はない。代わりに、栓部分5500は、流路にぴったりと嵌まることができる。流路の断面積を低減させかつ制限部を生成するように、栓部分5500の外面に切欠きを凹状に設けることができ、またはコネクタ内腔に挿入された他の部分は中実である栓が、制限された流路を生成するように狭い流路を含むことができる。
【0152】
一態様では、流路インピーダンスの変化は、ポンピングカセットからの圧送ストロークの進行中の流量推定値に基づいて判断することができる。さらに、ストローク容積推定値を用いて、ポンピングチャンバが空であることによる流量の変化と液体5324が流体ライン34の制限部5322に達することによる流量の変化とを識別することができる。ポンピングストロークの進行中の流量およびストローク容積の推定については、さらに後述する。
【0153】
いくつかの実施形態では、ストローク容積を推定するコントローラアルゴリズムを用いて、全チャンバが流体ラインに送達される前にストロークを停止することができる。すなわち、ポンプダイヤフラムがストローク終了に達するのを回避するように、プライミング中に部分送達ストロークを行うようにポンプに指示するように、コントローラをプログラムすることができる。これは、流量のいかなる低下も、ポンプダイヤフラムがポンプストローク終了において剛性ポンピングチャンバ壁に達することに起因しないことを確実にするのに役立つことができる。コントローラが、単位時間当たりに圧送される流体の体積が所定閾値を超えて低減したと判断すると、流体ライン34内の液体5324は、制限部5322に達したと想定することができ、ラインは、プライミングされたとみなすことができる。
【0154】
他の実施形態では、コントローラは、流量の不連続性が検出されるまで、ポンプに対して流体を圧送するように指示することができる。不連続性が検出された時点で、コントローラは、ポンピング装置(たとえば、サイクラ)に対して、複式ポンプカセットの別のポンプチャンバから少量の流体を送達するように試みるように指示することができる。流れの不連続性が、ポンプダイヤフラムがストローク終了に達したことによる場合、他のチャンバからの流れは、第1チャンバからの終了流量より大きいはずである。不連続性が、プライミングされたライン状態による場合、他のチャンバからの流量は、第1チャンバからの終了流量と同様となる。したがって、装置コントローラは、ラインがプライミングされたと判断することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、流体ライン34に対する名目内部管容積を求めることができる。そして、コントローラは、ライン34を下ってプライミングされた流体の体積が名目管容積の1つのチャンバ容積の範囲内になるまで、ポンプに対して、ライン34を下って流体を移動させるように指示することができる。ライン34の残りの容積が、フルポンプストロークの容積未満であると判断されると、コントローラは、次の流量不連続性を、プライミング済み状態を示すものとして登録することができる。
【0156】
ライン34の名目内部容積は、使用されているセットのタイプに基づいて求めることができる。たとえば、小児用セットは、成人用セットより小さい内部管容積を有することができる。いくつかの実施形態では、装置コントローラは、光学センサを介してこの情報を求めることができる。いくつかの実施形態では、セットは、ポンピング装置またはサイクラのカメラが読み取ることができるバーコードまたはデータマトリックスを含むことができ、符号化された情報により、コントローラは、設置されたセットのタイプを判断することができる。カメラからの入力を受け取るコントローラはまた、セットの一部の異なる特徴または幾何学的形状を検出することができる場合もある。たとえば、流体ラインコネクタ36は、上述したように流体ライン検出器1000によって検出可能な、一意の検出可能幾何学的形状を有することができる。別法として、ユーザは、ポンピング装置のユーザインタフェースにおいて、使用中の管またはポンプカセットのタイプに関する情報を手動で入力することができる。
ラインプライミング
ラインをプライミングするために必要な時間を低減させるために、重力に基づく流れが仕事を達成するのを可能にするのではなく、ポンピング装置がラインを能動的にプライミングすることが好ましい場合がある。標準的な手順である重量に基づくプライミングでは、ラインを通る流体流は、プライミング流体が保管されるリザーバの頭高によって決まる。プライミング中にラインを通る流体の流量は、プライミング流体リザーバの頭高が高くなると増大する。1つまたは複数のポンプを使用することによってラインを能動的にプライミングすることにより、リザーバが固定位置にあり続けながら、ポンピング装置またはサイクラがリザーバに対するさまざまな頭高をシミュレーションすることができる。流体
ポンプが、空気圧式に駆動されるポンピングチャンバを含む場合、膜を介してポンピングチャンバに加えられる空気圧の量により、プライミングリザーバを再配置することなく流量を所望の値に制御することができる。流体リザーバを再配置する必要をなくすことが、ポンピングまたは透析システムを小型に維持するのに役立ち、ユーザに対する設定の負担を低減し、流体ラインの比較的高速なプライミングを可能にする。
【0157】
ポンプカセットの流路およびチャンバが流体でプライミングされるべきであるいくつかの実施形態では、プライミングは2つ以上の段階で行うことができる。第1段階では、第2または後続する段階より低い有効頭高で(たとえば、低いポンプ圧でまたは受動的重力流により)ラインをプライミングすることができる。比較的高い流量の乱流により、ポンプカセットのさまざまな位置または凹部に気泡またはポケットが導入されるかまたは閉じ込められることになる可能性がある。この問題は、ポンプカセットを低速にプライミングすることができるようにし、その後、流体がカセットの下流の流体ラインに達するとより迅速なプライミングプロセスに進むことにより、緩和することができる。第1段階の長さは、試験を通して、またはプライミングリザーバからカセットまたは取り付けられた流体ラインに移動した流体体積の量の測定により、経験的に事前に確定することができる。
【0158】
気泡形成または閉じ込めの低減ことは、ラインプライミングセンサが気泡を検出し、コントローラに対してプロセスを停止しユーザ警告を発するように誘導することができることを含む、複数の理由のために望ましい。
【0159】
第1プライミング段階の持続時間は、使用されているカセットのタイプ(ポンプおよび弁の数、流路の複雑性)と、その内部流体路およびポンプチャンバの容積によって決まる可能性がある。好ましくは、プライミングは、流体が、カセットからの空気を底部から頂部に押しのけることができるように、かつ封入された空気の大部分またはすべてが、取り付けられた流体ライン内に押し込まれ、その後、雰囲気中に放出されることを確実にするように十分低速な流量で行われる。
【0160】
図29は、コントローラを使用して2つの段階を用いてカセットおよび取り付けられたラインのプライミングを制御することができる複数のステップを詳述するフローチャートを示す。例では、プライミングされるラインは、ポンプカセットから患者まで延在する患者ラインである。図示するステップは、他の流体ラインのプライミングに対して容易に一般化することができる。図示するように、ステップ5570において、サイクラは、流体を、カセットを通してライン内に重力供給することによって、患者ラインのプライミングを開始する。実施形態例では、プライミングリザーバはヒータバッグである。患者ラインとヒータバッグとの間に開放流路が生成されるようにカセットの弁を制御することにより、自由流を達成することができる。
【0161】
ステップ5570においてプライミング動作を開始すると、コントローラは、第1プライミング段階に対してタイマを始動することができる。第1プライミング段階の持続時間は、カセット内のいかなる空気もカセットから出て患者ライン内に流れ込んだことを確実にするのに十分であるように、試験を通して経験的に求めることができる。
図3に示すカセットの例を用いると、この持続時間は、1秒間〜3秒間の範囲であり得る。一実施形態では、タイマは、約1.6秒間に設定することができる。タイマを使用するのではなく、所定体積の流体がプライミングリザーバから運ばれたときの第1プライミング段階からの移行を使用する制御システム実施形態では、所定体積は、
図3に示すカセット例を考慮すると、およそ1ml〜3mlになる可能性がある。
【0162】
タイマが経過した(または、所定体積が運ばれた)とき、ポンピング装置またはサイクラはステップ5572に進み、能動的にラインのプライミングを開始することができる。
好ましくは、ステップ5572は、ステップ5570より高速な流量でラインをプライミングする。サイクラは、プライミングセンサが、ラインが完全プライミング状態に達したことを示すまで、患者ラインを能動的にプライミングし続けることができる。いくつかの実施形態では、その後、コントローラは、ユーザに対して、ユーザインタフェースにおいて、プライミングが完了し、プライミング済みラインが接続される用意ができていることを通知することができる。
溶液ラインオーガナイザ
図30、
図31および
図32は、それぞれ、未装填のオーガナイザ1038の正面の斜視図、未装填のオーガナイザ1038の背面の斜視図、および装填済みのオーガナイザ1038の斜視図を示している。この実施形態では、オーガナイザ1038は、適度に可撓性のある材料(たとえばPAXON AL55−003 HDPE樹脂等)から実質的に形成することができる。オーガナイザ1038をこの材料または別の比較的柔軟性のある高分子材料から形成することにより、溶液ラインまたは溶液ラインコネクタを取り付けかつ取り外すときのオーガナイザの1038の耐久性が向上する。
【0163】
サイクラハウジング82の外壁に、オーガナイザ1038を好都合に搭載しまたは取り付けることができる。オーガナイザ1038は、チューブホルダ部1040、基部1042およびタブ1044を含むことができる。チューブホルダ部1040、基部1042およびタブ1044はすべて、柔軟に接続することができ、同じHDPE系材料から実質的に形成することができる。チューブホルダ部1040は、概して矩形の形状を有することが可能であり、概して平坦な上縁部と、外側方向にわずかに湾曲させることができる下縁部とを含むことができる。チューブホルダ部1040は、チューブホルダ部1040の下縁部に沿って水平に延在する一連の凹状セグメント1046を含むことができる。凹状セグメント1046の各々は、一連の支持柱1048によって分離することができ、支持柱1048はセグメント1046の形状およびサイズを確定することも可能である。チューブホルダ部1040は、チューブホルダ部1040の上縁部に沿って水平に延在する隆起領域もまた含むことができる。隆起領域は、複数のスロット1050を含むことができる。スロット1050は、垂直向きに画定することができ、チューブホルダ部1040の上縁部から凹状セグメント1046の頂部に延在するる。スロット1050は、排液ライン28、溶液ライン30または患者ライン34の形状に一致するように、概して円筒形状を有することができる。スロット1050の深さは、スロット1050の開口部がスロット1050の内部領域よりも狭くなるようなものであり得る。したがって、ラインがスロット1050内に配置されると、それは適所に係止されるかまたはスナップフィットする。そして、ラインは、スロット1050から取り外されるために所定の最小の力を必要とする場合がある。これにより、ラインがオーガナイザ1050から不注意に取り外されないことが確実になる。
【0164】
一態様では、チューブホルダ部1040の上縁部に、タブ1044を柔軟に接続することができる。タブ1044は、概して長方形の形状を有することができる。別の実施形態では、タブ1044は、2つのわずかに大きい半径のコーナ部も有することができる。タブ1044はまた、2つの垂直に延在する支持柱1048を含むことができる。支持柱1048は、チューブホルダ部1040の上縁部に接続することができ、タブ1044内に上方方向に延在することができる。代替的な実施形態では、支持柱1048の長さおよび数は、タブ1044の所望の可撓性の程度に応じて変更することができる。別の態様では、タブ1044は、リブ付き領域1052を含むことができる。タブ1044およびリブ付き領域1052の目的は、ユーザがオーガナイザ1038を容易に把持することができることであり、それにより、ユーザは、容易に溶液ライン30を設置し、輸送し、またはオーガナイザ1038から取り外すことができる。また、タブ1044は、ラインを取外しオーガナイザ1038に装填するときのさらなる支持領域を提供する。
【0165】
別の態様では、基部1042は、チューブホルダ部1040の下縁部に柔軟性をもって接続されることが可能である。基部1042は、概して矩形の形状を有することができる。別の実施形態では、基部1042はまた、2つのわずかに大きい半径のコーナ部も含むことができる。基部1042は、細長い凹状セグメント1046を含むことができ、それは、凹状セグメント1046を包囲する支持リング1054によって画定され得る。支持柱1050、支持リング1054および隆起領域はすべて、オーガナイザ1038の背面に沿った一連の空隙1056を生成することができる(たとえば、
図31に示す)。
【0166】
図33および
図34は、それぞれ、オーガナイザクリップ1058の斜視図、およびオーガナイザクリップ受け1060の斜視図を示す。これらの例示的な実施形態では、クリップ1058は、たとえば、80ショアAデュロメータのウレタン等、比較的高いデュロメータのポリウレタンエラストマから作製することができる。代替的な実施形態では、クリップ1058は、クリップ1058内に配置されたときにオーガナイザ1038が基部1042に沿って屈曲しかつ枢動するのを可能にする、任意のタイプの可撓性および耐久性のある材料から作製することができる。クリップ1058は「U字形」とすることができ、正面部分よりわずかに高く延在する背面部分を含むことができる。さらに、クリップ1058の正面部分の上縁部に沿って延在するリップ1062があり得る。リップ1062は、クリップ1058の空洞内にわずかに延在している。クリップ1058の背面部分は、クリップ1058の背面部分に接続され(または背面部分から形成され)、クリップ1058の背面部分から離れるように延在する、複数のエラストマ製ペグ1064もまた含むことができる。ペグ1064は、円筒状部1066および円錐体1068の両方を含むことができる。円筒状部1066は、クリップ1058の背面部分に接続することができ、円錐体1068は、円筒状部1066の開放端部に取り付けることができる。ペグ1064により、クリップ1058をオーガナイザクリップ受け1060に、オーガナイザクリップ受け1060の複数の孔1070にペグ1064を係合させることによって、永久的に接続することができる。
【0167】
オーガナイザクリップ受け1060は、複数の面取りされたタブ1072を含むことができる。面取りされたタブ1072は、ペグ1064がオーガナイザクリップ受け1060と係合するtき、クリップ1058の背面部分の対応するスロットと嵌合することができる。面取りされたタブ1072がスロットと係合すると、それらはクリップ1058の背面部分を通して延在し、クリップ1058内に配置されるオーガナイザ1038を適所に保持するように係止機構として作用することができる。オーガナイザ1038がクリップ1058内に配置されるとき、面取り部1072は、隆起支持リング1054によって生成された、基部1042の背面の空隙1056に嵌まる。
図31を再び参照すると、かつ本開示の別の態様によれば、複数の傾斜部1074が、オーガナイザ1038の背面から外側に延在することができる。傾斜部1074は、概して傾斜した面として成形することができる。これにより、オーガナイザ1038は、クリップ1058内に配置されるときにサイクラ14から離れるように角度をなすことができ、それは、以前の設計に対する多数の利点を提供する。たとえば、この例示的な実施形態では、オーガナイザ1038の角度により、タブ1044およびオーガナイザ1038に接続されたライン(またはラインキャップ)のいずれも、蓋143が開閉されているときにヒータ蓋143をさまたげないことが確実になる。さらに、オーガナイザ1038の可撓性と結び付けて、サイクラ14に対するオーガナイザ1038の角度は、ともに、ユーザに対して、溶液ラインのコネクタ端部30aからではなく、底部から溶液ライン30を取り外させるようにする。好ましくは、ユーザは、コネクタ端部30aを把持することによって溶液ライン30を取り外すべきでなく、それは、そうする際に、ユーザが1つまたは複数のキャップ31を不注意に取り外す可能性があり、汚染および流出をもたらす可能性があるためである。オーガナイザ1038の別の利点は、オーガナイザが、色分けされた溶液ライン30を分離するのを補助することによって、ユーザが色分けされた溶液ライン30を正しい容器20に接続
するのに役立つということである。
ドアラッチセンサ
図35は、ドアラッチセンサセンブリ1076の斜視図を示す。この例示的な実施形態では、ドアラッチセンサセンブリ1076は、ドアラッチ1080に取り付けられるかまたは接続される磁石1078を含むことができ、それが噛合するベースユニット留め具1082を備えたラッチ位置に出入りするように枢動する際に、ドアラッチ1080とともに枢動することができる。センサ(
図35には示さず)は、ベースユニット留め具1082の近くの、サイクラ14のプロントパネル1084の後方に配置することができ、それによって、ドアラッチ1080がベースユニット留め具1082に係合する際に、磁石1078の存在を検出する。一実施形態では、センサは、アナログのホール効果センサであり得る。ドアラッチセンサセンブリ1076の目的は、ドア141が閉鎖されていることと、ドアラッチ1080が留め具1082と十分に係合して構造上正常な接続を確実にすることとの両方を確認することである。
図36は、ドアラッチセンサセンブリ1076の断面図を示す。センサ1079は、フロントパネル1084の後方の回路基板1077上に配置される。センサ1079は、好ましくは、磁石1078の動線から好ましくは軸外に向けられ、それは、この向きでは、センサ1079が、ドア141が閉鎖される際、フロントパネル1084に近づく際に磁石1078の種々の位置をより適切に分解することができるためである。
【0168】
一例では、ドア141は、ドアラッチ1080が留め具1082と少なくとも50%係合しているとき、十分に係合しているとみなすことができる。一実施形態では、ドアラッチ1080は、名目上およそ0.120インチ程度まで係合することができる。さらに、センサ1079は、ドアラッチ1080が留め具1082と十分に係合したときにのみ、ドア141の閉鎖を検知することができる。従って、センサ1082は、ドアラッチ1080がおよそ0.060インチ程度まで係合したときにのみ、ドア141の閉鎖を検出することができる。ドアラッチ1080用のこれらの係合閾値は、およそ、ドアラッチ1080と留め具1082との間の許容可能な係合に対する中間範囲に設定され得る。これは、時間、温度、および他の変動によってセンサドリフトを考慮することによってロバストな設計を確実にするのに役立つことができる。
【0169】
室温(およそ24℃)および異常に低温の温度(およそ−2℃〜9℃)の両方で多数の測定値を収集することによって、センサ1082のロバスト性を判断するように、試験を行った。室温測定値は、低温測定値よりも反復して高かったが、0インチ〜0.060インチの範囲の数パーセントの違いだけであった。
【0170】
一態様では、センサ1079の出力は、供給される電圧に出力特性が比例する可能性がある。したがって、供給電圧およびセンサ1079の出力の両方を測定することができる(供給電圧およびセンサ1079の出力がそれぞれDoor_LatchおよびMonitor_5V0で表わされる下記の式を参照)。そして、センサ1079の出力とともに供給電圧は、ともに、1/4抵抗分割回路を通過することができる。センサ1079の出力および供給電圧の分割により、安定した出力を生成することができる。この手順により、供給電圧が変動する場合であっても出力が安定したままであることを確実にすることができる。
【0171】
別の態様では、センサ1079は、正および負の両方の磁界に応答することができる。したがって、磁界がない場合、センサ1079は、供給電圧の半分を出力することができる。さらに、正の磁界は、センサ1079の出力を増大させる可能性がある一方で、負の磁界は、センサ1079の出力を低減させる可能性がある。センサ1079から出力の正確な測定値を得るために、磁石の極性を無視することができ、同時に供給電圧を補償することができる。以下の式を用いて、ラッチセンサ比を計算することができる。
【0172】
ラッチセンサ比=絶対値(VDoor_Latch/VMonitor_5V0)−noFieldRatio) (1)
ここで、noFieldRatioは、ドア141が完全に開放された状態で(VDoor_Latch/VMonitor_5V0)によって計算される。
【0173】
この式を用いると、
比=0.0は、磁界がないことを示し、
比>0.0は、幾分かの磁界を示す、方向は不特定。
【0174】
ドアラッチアセンブリ1076の係合の様々な位置で、センサ1079によって検出される磁界強度を校正するために、様々な厚さのシムを、ドア141の内側とフロントパネル1084との間で使用して、ラッチ1080と留め具1082との間の係合の程度を変更することができる。一実施形態では、このデータを用いて、シムありおよびシムなしで、他の実施形態では異なる厚さの幾つかのシムで、磁界強度比を展開することができる。一例では、ドアラッチセンサアセンブリ1076は、以下を行なうことによって、ドアラッチ1080が留め具1082に十分に係合しているか否かを判断する手順を完了することが可能である。
【0175】
nearRatioおよびfarRatioを計算する。
nearRatio=noShimRatio−(.025/.060)×(noShimRatio−withShimRatio) (2)
farRatio=noShimRatio−(.035/.060)×(noShimRatio−withShimRatio) (3)
実施形態では、ドアラッチセンサセンブリ1076は、校正ファイルにnoFieldRatio、nearRatioおよびfarRatioを保存することができる。そして、ドアラッチセンサアセンブリ1076は、校正ファイルからnoFieldRatio、nearRatioおよびfarRatioをロードすることができ、次いで、センサセンブリ1076は、センサ1079用のヒステリシス範囲としてnearRatioおよびfarRatioを使用することができる。そして、ドアラッチセンサアセンブリ1076は、ドア141が開放している初期条件で開始し、次いで、ラッチセンサ比を繰り返し演算することができる。ラッチセンサ比がnearRatioを超える場合、ドアラッチセンサセンブリ1076は、ラッチ状態を閉に変更し、ラッチセンサ比がfarRatio未満である場合には、ドアラッチセンサアセンブリ1076は、ラッチ状態を開に変更する。ドアラッチセンサアセンブリ1076に対する他の実施形態では、noShimRatioおよびwithShimRatioを平均することによって、校正データからmiddleRatioを計算することができる。この場合には、middleRatioを超える測定値は、ドアラッチ1080が係合していることを示し、middleRatio未満の測定値は、ドアラッチ1080が係合していないことを示す。
セット装填および動作
図37は、
図1のAPDシステム10の斜視図を示し、サイクラ14のドア141が開放位置まで下げられ、カセット24用の取付位置145および溶液ライン30のキャリッジ146を露出している(この実施形態では、ドア141は、ドア141の下部でヒンジによってサイクラハウジング82に取り付けられている)。セット12を装填するとき、カセット24は、膜15およびカセット24のポンプチャンバ側が上方に面する状態で取付位置145に配置され、ポンプチャンバと弁ポートに関連づけられた膜15の部分は、ドア141が閉鎖されたときに、サイクラ14の制御面148と相互作用することができる。取付位置145は、ベース部材18の形状と一致するような形状とすることができ、それにより、カセット24の取付位置145における適切な向きが確実になる。この例示的な実施形態では、カセット24および取付位置145は、カセット24を取付位置14
5に適切な向きで配置することをユーザに要求するか、または、ドア141が閉鎖しないように、大きい半径の単一のコーナを含む概して矩形の形状を有している。しかしながら、カセット24および/または取付位置145に対する他の形状または向きの特徴も可能であることが理解されるべきである。
【0176】
本発明の態様によれば、カセット24が取付位置145に配置されるとき、患者ライン34、排液ライン28およびヒータバッグライン26は、
図37に示すようにドア141のチャネル40を通して左側に通される。ガイド41または他の特徴を含むことができるチャネル40は、患者ライン34、排液ライン28およびヒータバッグライン26を保持することができ、それにより、オクルーダ147が、流れのためにラインを選択的に開閉することができる。ドア141が閉鎖すると、オクルーダ147は、患者ライン34、排液ライン28およびヒータバッグライン26のうちの1つまたは複数をオクルーダ止め具29に対して押し付けることができる。概して、サイクラ14が動作している(かつ適切に動作している)とき、オクルーダ147は、ライン34、28および26を通る流れを可能にすることができるが、サイクラ14の電源が落とされた(かつ/または適切に動作していない)とき、ラインを閉塞することができる。ラインの閉塞は、ラインを押圧するか、またはラインにおける流路を閉鎖するようにラインを挟むことによって行うことができる。好ましくは、オクルーダ147は、少なくとも患者ライン34および排液ライン28を選択的に閉塞することができる。
【0177】
カセット24が取り付けられ、ドア141が閉鎖されると、カセット24のポンプチャンバ側および膜15を、たとえば、空気袋、ばね、または取付位置145と制御面148との間でカセット24を圧迫する、取付位置145の後方のドア141の他の適切な構成によって、制御面148と接触するように押圧することができる。カセット24をこのように収容することにより、膜15および16を、壁およびベース部材18の他の特徴部と接触するように押圧することができ、それにより、要求に応じてカセット24のチャネルおよび他の流路を隔離する。制御面148は、可撓ガスケットまたは膜、たとえば、1枚のシリコーンゴム、または膜15に関連づけられた他の材料を含むことができ、膜15の一部を選択的に移動させて、ポンプチャンバ181の圧送作用とカセット24の弁ポートの開閉とをもたらすることができる。制御面148を、膜15のさまざまな部分に関連づけることができ、たとえば、互いに密着するように配置することができ、それにより、膜15の一部は、制御面148の対応する部分の移動に応じて移動する。たとえば、膜15および制御面148を互いに近接して配置することができ、制御面148に好適に配置された真空ポートを通じて、好適な真空(または周囲に対して低い圧力)を導入し、膜15と制御面148との間で維持することができ、それにより、膜15および制御面148は、弁ポートを開閉させ、かつ/または、少なくとも、圧送作用をもたらす移動を必要とする膜15の領域において、本質的に互いに貼り付けられる。別の実施形態では、膜15および制御面148を、互いに接着するか、または他の方法で好適に関連づけられることができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、ポンプチャンバおよび/または弁の上に重なる対応するカセット膜に面する制御面148またはガスケットの表面は、テクスチャ加工されるかまたは粗化されている。テクスチャ加工により、ガスケットが対応するカセット膜の表面に対して引っ張られるとき、ガスケットの表面に沿って水平にまたは接線方向に複数の小さい通路がもたらされる。これにより、テクスチャ位置においてガスケット表面とカセット膜表面との間において排気を促進することができる。それはまた、ガスケットと膜との間の空気の閉じ込められるポケットを最小限にすることにより、(たとえば、別の場所で記載したFMS手順における等)圧力−体積関係を用いて、ポンプチャンバ容積確定の正確さを向上させることも可能である。それはまた、ガスケットとカセット膜との間のあり得る空間内に漏れる可能性があるいかなる液体の検出も促進することができる。実施形態では、
ポンプ膜および弁膜の位置に対応するガスケットの部分を形成しない、ガスケット型の部分をマスクすることにより、達成することができる。その後、ガスケット型の非マスク部分に、Mold−Tech(登録商標)テクスチャ加工および化学彫刻プロセス等、化学彫刻プロセスを施すことができる。テクスチャ加工は、たとえば、サンドブラスト、レーザエッチング等、多数の他のプロセスのうちの任意のものにより、または放電加工を用いる型製造プロセスを用いることにより、達成することも可能である。
【0179】
カセット24が装填された状態でドア141を閉じる前に、1つまたは複数の溶液ライン30をキャリッジ146内に装填することができる。各溶液ライン30の端部は、キャップ31と、ラベルを付けるかまたは指標または識別子を取り付ける領域33とを含むことができる。たとえば、指標は、指標領域33でチューブにスナップ式にはまる識別タグであり得る。本発明の態様によれば、かつより詳細に後述するように、ライン30からキャップ31を取り外し、(ラインに関連づけられた溶液のタイプ、溶液の量等に関する表示を提供することができる)各ライン30用の指標を認識し、ライン30をカセット24のそれぞれのスパイク160に流体係合させるように、キャリッジ146、およびサイクラ14の他の構成要素を操作することができる。このプロセスは、自動的に、たとえば、ドア141が閉じられ、キャップ31およびスパイク160が、人による接触から保護された空間内に封入された後に、行うことができ、それにより、ライン30および/またはスパイク160を互いに接続するとき、それら2つの汚染の危険が低減する可能性がある。たとえば、ドア141が閉じられると、何の溶液がいずれのライン30に関連づけられるかを特定するために、(たとえば、好適な撮像装置およびソフトウェアベースの画像認識によって視覚的に、RFID技法等によって)指標領域33を評価することができる。指標領域33の指標によってライン30の特徴を検出することができることに関する本発明の態様は、ユーザがシステム動作に影響を与えることなくキャリッジ146の任意の位置にライン30を配置することを可能にする等の利点を提供することができる。すなわち、サイクラ14が溶液ラインの特徴を自動的に検出することができるため、システムが適切に機能するためにキャリッジ146の特定の位置に特定のラインが配置されることを確実にする必要はない。代わりに、サイクラ14は、いずれのライン30がどこにあるかを特定し、カセット24および他のシステムの特徴を適切に制御することができる。たとえば、1つのライン30および接続された容器は、たとえば、後の試験のために、使用済み透析液を受け入れるように意図される場合がある。サイクラ14がサンプル供給ライン30の存在を特定することができるため、サイクラ14は、適切なスパイク160およびライン30に使用済み透析液を送ることができる。上述したように、カセット24のスパイク160がすべて共通チャネルに供給するため、任意の特定のスパイク160からの入力を、弁および他のカセットの特徴を制御することによって、任意の所望の方法でカセット24に送ることができる。
【0180】
ライン30が取り付けられた状態で、
図37に示すようにキャリッジ146を左側に移動させることができ(この場合もまた、ドア141は閉じられている)、カセット24のスパイク160上のそれぞれのスパイクキャップ63上に、かつキャップストリッパ149に隣接して、キャップ31を配置する。キャップストリッパ149は、キャップ31と係合するために外側に(サイクラ14のハウジング内の凹部内からドア141に向かって)延在することができる。たとえば、キャップストリッパ149は、キャップ31の対応する溝と係合する5つのフォーク状要素を含むことができ、キャップストリッパ149がキャップストリッパ149に対するキャップ31の左右移動に抵抗することができる。キャップ31をキャップストリッパ149と係合させることによって、キャップ31は、対応するスパイクキャップ63を把持することも可能である。その後、キャップ31が対応するスパイクキャップ63と係合した状態で、キャリッジ146およびキャップストリッパ149は、右側に移動することができ、スパイクキャップ63を、対応するキャップ31と係合するスパイク160から取り外す。この構成の1つの考え得る利点は、溶液ライ
ン30が装填されない位置ではスパイクキャップ63が取り外されないことであり、それは、スパイクキャップ63を取り外すために、溶液ライン30からのキャップ31の係合が必要であるためである。したがって、溶液ライン30がスパイク160に接続されない場合、スパイク160上のキャップは、適所に残る。次いで、キャップストリッパ149は、キャリッジ146が右側への移動を続ける間、(たとえば、ストッパと接触することによって)右側への移動を停止することができる。その結果、キャリッジ146は、キャップストリッパ149に取り付けられたままのライン30の終端部をキャップ31から引っ張ることができる。キャップ31がライン30から取り外された状態で(かつ、スパイクキャップ63が依然としてキャップ31に取り付けられている状態で)、キャップストリッパ149は、この場合もまたサイクラ14のハウジングの凹部にキャップ31とともに後退することができ、スパイク160に向かうキャリッジ146およびライン30のキャップが外された端部の移動経路をあける。次いで、キャリッジ146、再度左側に移動し、ライン30の終端部をカセット24のそれぞれのスパイク160に取り付ける。この接続は、スパイク160がライン30の端部を貫通(そうでなければ端部は閉鎖されている)ことによって行うことができ、それぞれの容器20からカセット24への流体の流れが可能になる(たとえば、スパイクは、終端部の閉鎖した隔壁または壁を貫通することができる)。一実施形態では、壁または隔壁は、たとえば、PVC、ポリプロピレンまたはシリコーンゴム等の可撓性かつ/または自己封止材料から構築することができる。
【0181】
本発明の態様によれば、ヒータバッグ22を、蓋143を持ち上げることによって露出するヒータバッグ受入部(たとえば、トレイ)142内に配置することができる。この実施形態では、後述するように、サイクラ14は、ハウジング82に枢動可能に取り付けられたユーザまたはオペレータインタフェース144を含む。ヒータバッグ22がトレイ142内に配置することができるために、トレイ142から出て上方にインタフェース144を枢動させることができる。本技術分野において既知であるように、ヒータトレイ142は、ヒータバッグ22内の透析液を適温、たとえば、患者の体内に導入するのに適切な温度に加熱することができる。本発明の態様によれば、たとえば、熱を閉じ込めて加熱処理を速めるのに役立ち、かつ/または、加熱面等、ヒータトレイ142の比較的高温の部分を触ることまたは他の接触を防止するのに役立つように、トレイ142内のヒータバッグ22を配置した後、蓋143を閉鎖することができる。一実施形態では、蓋143を閉鎖位置に係止して、たとえば、トレイ142の一部が皮膚の火傷をもたらす可能性がある温度まで加熱される状況で、トレイ142の加熱部分に触れることを防止する。蓋143の開放を、たとえばロックによって、蓋143の下側の温度が好適に低い温度になるまで阻止することができる。
【0182】
本発明の別の態様によれば、サイクラ14は、サイクラ14のハウジングに枢動可能に取り付けられ、ヒータトレイ142内に下方に折り畳まれることが可能である、ユーザまたはオペレータインタフェース144を含む。インタフェース144が下方に折り畳まれた状態で、蓋143を閉鎖して、インタフェース144を隠しかつ/またはインタフェース144との接触を阻止することができる。インタフェース144は、ユーザにたとえばグラフィカルな形態で情報を表示し、かつユーザからたとえばタッチスクリーンおよびGUIを使用することによって入力を受け取るように構成することができる。インタフェース144は、ボタン、ダイヤル、つまみ、ポインティングデバイス等、他の入力デバイスを含むことができる。セット12が接続された状態で、かつ容器20が適切に配置された状態で、ユーザは、インタフェース144と対話して、サイクラ14に処置を開始させかつ/または他の機能を行なわせることができる。
【0183】
しかしながら、透析サイクルを開始する前に、セット12が(たとえば、製造工場での、または他の方法で、サイクラ14で使用されるようになる前の)予めプライミングされた状態で提供されない限り、サイクラ14は、カセット24、患者ライン34、ヒータバ
ッグ22等を少なくともプライミングしなければならない。プライミングは、カセット24から空気を取り除くように、ライン30を介して1つまたは複数の溶液容器20から液体を引き出し、カセット24のさまざまな経路を通じて液体を圧送するように、カセット24(すなわち、ポンプおよび弁)を制御する等、さまざまな方法で行なうことができる。たとえば、患者に送達する前に加熱するために、ヒータバッグ22に透析液を圧送することができる。カセット24およびヒータバッグライン26がプライミングされると、次に、サイクラ14は、患者ライン34をプライミングすることができる。一実施形態では、ライン34を適切なポートまたはサイクラ14の他の接続箇所に(たとえば、コネクタ36によって)接続し、カセット24が液体を患者ライン34に圧送するようにすることによって、患者ライン34をプライミングすることができる。患者ラインの端部に液体が到達したことを(たとえば、光学的に、伝導性センサによって等)検出し、したがって、患者ラインがプライミングされたことを検出するように、サイクラ14のポートまたは接続箇所を構成することができる。上述ように、種々のタイプのセット12が、異なるサイズの患者ライン34、たとえば、成人または小児サイズを有することができる。本発明の態様によれば、サイクラ14は、カセット24のタイプ(または少なくとも患者ライン34のタイプ)を検出し、それに従ってサイクラ14およびカセット24を制御することができる。たとえば、サイクラ14は、患者ライン34をプライミングするために必要とされる、カセット内のポンプによって送達される液体の体積を求め、この体積に基づいて患者ライン34のサイズを確定することができる。患者ラインのタイプを示す、カセット24、患者ライン34または他の構成要素上のバーコードまたは他の指標を認識する等、他の技法を使用することができる。
【0184】
図38は、サイクラ14のハウジング82から分離されたドア141の内側の斜視図を示す。この図は、指標領域33がキャリッジ146の所定のスロットに捕捉されるように、ドア141およびキャリッジ146の対応する溝内にライン30がどのように受け入れられるかを、より明白に示す。管がキャリッジ146に取り付けられたときに指標領域33の指標が適切に配置された状態で、リーダまたは他の装置は、たとえば、ライン30に接続された容器20中の透析液の種類、透析液の量、製作年月日、製造業者の身元等を表わす、指標のしるしを識別することができる。キャリッジ146は、キャリッジ146の上端部および下端部で一対のガイド130に取り付けられる(
図38には、下側ガイド130のみを示す)。このように、キャリッジ146は、ガイド130に沿ってドア141上を左から右に移動することができる。カセット取付位置145に向かって(
図38における右側に)移動するとき、キャリッジ146は、止め具131と接触するまで移動することができる。
【0185】
図39および
図40は、キャリッジ146の斜視図と、キャリッジ146内に装填された溶液ライン30の拡大斜視図とを示す。これらの例示的な実施形態では、キャリッジ146は、ガイド130に沿ってドア141上を移動ことができる。キャリッジ146は、5つのスロット1086を含むことができ、したがって、最大5つの溶液ライン30を支持することができる。各スロット1086は、3つの異なる部分、すなわち、溶液ライン部1088、ID部1090およびクリップ1092を含むことができる。溶液ライン部1088は、溶液ライン30がキャリッジ146に装填されたときに組織化されかつもつれていないままであり得るように、概して円筒形状の空洞を有することができる。クリップ1092は、溶液ライン部1088に対して、スロット1086の各々の反対側の端部に配置さすることができる。クリップ1092の目的は、溶液ライン30のコネクタ端部30aに配置された膜ポート1094用の安全なハウジングを提供し、溶液ライン30が処置中に移動することを防止することである。
【0186】
本開示の一実施形態では、クリップ1092は、半円形の形状を有することができ、2つの包囲する縁部領域よりもわずかに深く延在する中間領域を含むことができる。より深
い中間領域を含む目的は、膜ポートフランジ1096を収容することである。フランジ1096は、膜ポートの残りの部分よりも実質的に大きい半径を有する可能性がある。したがって、より深い中間領域は、より広いフランジ1096に嵌まるように設計され、2つの縁領域は、膜ポート1094が動かないように支持を提供する。さらに、深い中間領域は、半円形の反対側に配置された2つの切出し部1098を有することができる。切出し部1098は、フランジ1096の小さい部分が、クリップ1092に配置されたときに、切出し部1098の各々の中に延在するのを可能にするように、概して矩形の形状を有することができる。切出し部1098は、各切出し部1098の上縁部間の距離がフランジ1096の半径よりもわずかに小さくなるように形成され得る。したがって、フランジ1096をクリップ1092にスナップ式に嵌めるために、十分な大きさの力が必要である。また、2つの切出し部1098の上縁部間の距離がフランジ1096の半径よりも小さくなることを可能にすることは、処理中に溶液ライン30が不注意に取り外されないようにするのに役立つ。
【0187】
この例示的な実施形態では、キャリッジ146は、膜ポート1094のいかなる変形にも対抗することができるため、以前の設計と比較してより優れた性能を提供することができる。キャリッジ146は、フランジ1096の正面とスリーブの背面との間で膜ポート1094を延設するように設計されている。膜ポート1094が処置中に任意の箇所でさらに引き伸ばされる場合に、キャリッジ146の壁は、フランジ1096を支持することができる。
【0188】
本開示の別の態様によれば、溶液ライン部1088とクリップ1092との間に、ID部1090を配置することができる。ID部1090は、概して矩形の形状を有することができ、したがって、指標領域33において溶液ライン30上にスナップ式に嵌まることができる識別タグ1100を収容することができる。指標領域33は、キャリッジ146に取り付けられるとき、ID部1090内に嵌まるようなサイズでありかつそのように構成された環状の形状を有することができる。識別タグ1100は、各ライン30に関連づけられた溶液の種類、透析液の量、製作年月日、および製造業者の身元に関する表示を提供することができる。
図39に示すように、ID部1090は、ID部1090の底に刻印することができる2次元(2−D)バーコード1102を含むことができる。バーコード1102は、1辺につき10ブロックを有するデータマトリックスシンボルである場合があり、「空」のデータマトリックスコードを含む場合がある。バーコード1102は、キャリッジ146において、溶液ライン30がキャリッジ146内に装填されたときに識別タグ1100の真下に配置され得る。しかしながら、代替実施形態では、ステッカまたはレーザ彫刻を用いて、キャリッジ146のID部1090にバーコード1102を追加することができる。また、別の実施形態では、バーコード1102は、長さおよび幅の寸法が変化するとともに、1辺ごとのブロックの数が変化するデータマトリックスを含むことができる。
【0189】
しかしながら、この例示的な実施形態では、1辺についてのブロックの所定数と、各バーコード1102の所定の長さおよび幅とは、種種の条件下で最もロバストな設計を提供するように特に選択された。1辺ごとに10ブロックのみを使用することにより、バーコード1102がより大きいブロックを有することになる可能性があり、したがって、サイクラハウジング82の内部に存在する暗い条件下であっても、バーコード1102が容易に読取可能であることが確実になる。
【0190】
図41および
図42は、それぞれ、折り畳み式識別タグ1100の斜視図と、自動IDカメラ基板1106に実装された自動IDカメラ1104を含むキャリッジ駆動アセンブリ132の斜視図とを示す。本開示の態様によれば、識別タグ1100は、射出成形型から形成することができ、それは、次いで、指標領域33の周囲でスナップ式に嵌まるよう
に折り畳まれ得る。識別タグ1100は、丸い縁部を含むことができ、それは輸送中の溶液容器20への損傷を防止することができる。識別タグ1100は、ステッカによって追加することができる、1辺につき18ブロックとクワイエットゾーンとを備えた、8×8mmの2次元(2−D)データマトリックスシンボル1103もまた含むことができる。これらのデータマトリックスシンボル1103に含まれる情報は、カメラ1104から制御システム16に提供することができ、制御システム16は、画像解析による等、さまざまなプロセスを通して、しるしを取得することができる。したがって、自動IDカメラ1104は、正確に設置された溶液ライン30、不正確に設置されたライン30を収容するスロット1086、またはライン30が不在のスロットを検出することができる。正確に設置された溶液ライン30により、カメラ1104は、識別タグ1100に位置するデータマトリックスシンボル1103を検出することができ、溶液ライン30の不在により、カメラ1104は、膜ポート1094の真下でキャリッジ146に位置する「空」のデータマトリックスバーコード1102を検出することができ、不正確に装填された溶液ライン30は、「空」のデータマトリックスバーコード1102を閉塞し、その結果、そのスロットに対して、いかなるデータマトリックスも復号されないことになる。このように、カメラ1104は、キャリッジ146上のすべてのスロット1086におけるデータマトリックスを常に復号すべきであり、不正確に装填された溶液ライン30を明らかにする。
【0191】
この例示的な実施形態では、指標領域33に配置された識別タグ1100によって溶液ライン30の特徴を検出することができることは、ユーザが、システム動作に対して影響を与えることなくキャリッジ146の任意の位置にライン30を配置するのを可能にする等、利点を提供することができる。さらに、サイクラ14が溶液ラインの特徴を自動的に検出することができるため、システムが適切に機能するためにキャリッジ146における特定の位置に所定のライン30が配置されるのを確実にする必要はない。代わりに、サイクラ14は、いずれのライン30がどこにあるかを特定し、カセット24および他のシステムの特徴を適切に制御することができる。
【0192】
本開示の別の態様によれば、識別タグ1100は、カメラ1104によって復号されるためにキャリッジ駆動アセンブリ132内に面していなければならない。これを確実にするために、溶液ラインおよび識別タグ1100に対するホルダ上の溶液ライン受入構造は、相補的な位置合わせの特徴を有することができる。本明細書に記載するキャリッジ146の実施形態例を参照すると、キャリッジ146および識別タグは、相補的な位置合わせの特徴を有することができる。さらに、識別タグ1100を備える溶液ライン30は、クリーンフラッシュ透析機内にも嵌まるべきであり、したがって、識別タグ1100を備えた溶液ライン30は、0.53インチ径の円筒体内に嵌まるように構成され得る。実施形態では、位置合わせの特徴は、識別タグ1100における単純に平坦な底のビルと、キャリッジ146の整合するリブとであり得る。本開示の一実施形態では、ビルおよびリブは、わずかに干渉して、識別タグ1100の後部を上方に押し上げることができる。この構成は、わずかな量の位置ずれを生じさせる可能性があるが、他の軸の位置ずれを低減させる。最後に、識別タグ1100が適切に設置されることを確実にするために、キャリッジ駆動アセンブリ132の正面は、現在の状態のキャリッジ146および識別タグ1100の位置合せに対して約0.02インチのみの隙間で設計することができる。
【0193】
本開示の別の態様によれば、キャリッジ駆動アセンブリ132の背面に、自動IDカメラ基板1106を実装することができる。さらにカメラ基板1106に、自動IDカメラ1104を実装することができる。カメラ基板1106は、識別タグ1100から約4.19インチの箇所に配置することができる。しかしながら、代替実施形態では、いかなる深刻な結果もなしに、カメラ基板1106を後方に移動させることができる。キャリッジ駆動アセンブリ132の正面に、プラスチック窓1108を取り付けることも可能であり、それは、流体および指の進入も防止しながら、識別タグ1100が撮像されるのを可能
にすることができる。自動IDカメラ1104は、セキュリティ用途に使用されるもの等、任意のタイプのレンズであり得るカメラレンズ、または、IRフィルタを取り外したカメラ付き電話機用に意図されたレンズを含むことができる。本開示の態様によれば、カメラレンズは、小型、軽量、低価格および高画質から構成することができる。
【0194】
さらに、カメラ基板1106に、単一のSMD赤外線LED1110を取り付けることができる。それにより、LED1110は、カメラ1104がデータマトリックス1103を容易に複合することができるように識別タグ1100を照明することができる。サイクラハウジング82の内部の環境はほとんど光が存在しないため、識別タグ1100が照明されることは重要である。したがって、LED1110が識別タグ1100を照明することなしには、カメラ1104は、データマトリックスを複合することができない。さらに、識別タグ1100の正面に眩しい光を生成しないようにするために、カメラ1104から0.75インチ離れるようにLED1110を取り付けることができる。カメラ基板1106にFPGAを実装することも可能であり、それは、OV3640画像センサとVoyagerのUIプロセッサとの間の中継として作用することができる。プロセッサの仕事をより簡単にすることに加えて、このアーキテクチャは、他の任意のサイクラハードウェアまたはソフトウェアへの変更なしに、異なる画像センサを使用することを可能にすることができる。最後に、画像復号は、オープンソースパッケージのlibdmtxによって処理され、それは多数のプログラミング言語からアドレス指定可能であり、試験用のコマンドラインから実行することができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、カメラ1104に関連づけられたプロセッサは、キャリッジ146に設置された溶液ラインの指標領域33の外側のバーコード、データマトリックス等を復号することができる場合がある。たとえば、カメラ1104に関連づけられたプロセッサは、サイクラにセットが設置される前に、そのセットパッケージもしくはオーバーパックまたはセット自体の上の識別マークを復号することができる場合がある。たとえば、設定中、サイクラのユーザインタフェースは、ユーザに対して、セットパッケージを、窓1108等の窓の正面にまたは窓から所定距離離れて保持して、パッケージ上の識別マークが窓に面しているようにするように指示することができる。この位置で、識別マークは、カメラ1104の画像センサの視野内に入る。そして、カメラ1104は、パッケージを撮像することができ、カメラ1104に関連づけられたプロセッサが、識別マークを復号することができる。いくつかの実施形態では、識別マークが復号された後、ユーザインタフェースは、ユーザに対して、セットに関するさまざまな情報を確認するように促すことができる。
【0196】
セットまたはセットパッケージの上の識別マークに符号化された情報は、各溶液ラインに対する指標に含まれるものと同じである場合もあれば異なる場合もある。たとえば、セットパッケージ上の情報をログ記録の目的で格納することができる(たとえば、ロット番号識別等)。いくつかの実施形態では、セットパッケージから復号された情報を、溶液ラインに含まれる情報と比較して、情報が一致するかまたは対応するのを確実にすることができる。これは、装置が、ラインが正確に識別され、正確なセットが設置されたことを再確認するのを可能にする、何らかの冗長性を提供することができる。
【0197】
図43は、セットに対するパッケージ上の識別マークを読み取ることにより、サイクラに設置されるセットに関する情報を確定するために使用することができる複数のステップ例を詳述するフローチャートを示す。図示するように、ステップ5700において、ユーザに対して、サイクラ内のカメラの正面にセットパッケージを配置するように指示することができる。これは、サイクラのユーザインタフェースに表示するためにサイクラのプロセッサが生成するプロンプトを介して達成することができる。そして、サイクラは、ステップ5702において、セットパッケージまたはオーバーパックの上の識別マークの画像
を取り込むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザに対して、サイクラのユーザインタフェースと対話して、セットパッケージが適切に位置決めされたことをサイクラプロセッサに通知するように要求することができる。この対話により、プロセッサによって認識される信号を生成することができ、その後、プロセッサは、画像が取り込まれるように命令する。
【0198】
ステップ5704において、サイクラのプロセッサは、パッケージ上の指標を復号することができる。そして、ユーザは、ステップ5706においてサイクラ内にカセットを設置することができる。いくつかの実施形態では、ユーザがカセットを設置する前に、サイクラのユーザインタフェースは、ユーザに対して、ステップ5704においてセットが正確に識別されたことを確認するように要求する通知を表示することができる。一態様では、サイクラは、パッケージが、選択されたかまたはプログラムされた治療と適合しないカセットに対するものであると識別される場合にメッセージを表示することができる。
【0199】
セットが設置されると、サイクラ内のカメラは、ステップ5708において、セット上の1つまたは複数の識別マークを読み取ることができる。いくつかの実施形態では、ステップ5708で読み取られた識別マークは、セットの各溶液ライン上の識別タグ1100であり得る。サイクラのプロセッサは、ステップ5702およびステップ5708で収集された、セットに関する情報を比較して、ステップ5710において正確なセットが設置されたことを確実にすることができる。情報が一致しない場合、ステップ5712において、ユーザに対して通知することができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、可視光からの眩しい光の有害な影響を回避するために、識別タグ1100のデータマトリックス1103は、蛍光インクまたは染料を含むことができ、それは、その上に照射される第2波長またはスペクトルの光の吸収に応じて、第1波長またはスペクトルの光を放出する。こうした識別システムは、流体容器またはバッグが異なる組成物、使用期限の流体を有するか、または製造ロット番号を装置によって記録する必要がある、任意の流体処理医療機器において使用することができる。実施形態例では、自動腹膜透析装置において本システムを使用することができる。システムは、蛍光によって生成される画像を読み取るように構成された画像センサまたはカメラを備え、画像は、容器内の流体を特徴付ける符号化情報、すなわち、容器の寿命、そのロット番号等のパターンを含む。取付台、クレードルまたはキャリッジ1088内に、容器が取り付けられる流体ライン33を取り付けて、画像センサに対するその位置を固定することができる。流体ラインは、取付台の上または近くに、蛍光識別マーク1103が付与された取り付けられた識別タグ1100を有することができる。マークは、近くの発光体によって放出される非可視波長を有する光の吸収時に、符号化情報を含む光のパターンの蛍光を発する。符号化情報を含む画像パターンを表す電子信号を画像センサ基板1106から受け取るように適合されたコントローラに、画像センサを接続することができる。
【0201】
たとえば、データマトリックス1103は、超暴力的なスペクトルでの光を吸収するときに可視スペクトルで蛍光を発するインクまたは染料を含むことができる。データマトリックス1103を、こうしたインクまたは染料で印刷し、たとえばステッカとして識別タグ1100に付与することができる。識別タグ1100にデータマトリックス1103を取り付ける他の任意の好適な手段も使用することができる。画像センサに加えて、カメラ1104は、第2波長またはスペクトルの光をフィルタリングして除去するフィルタ(たとえば、UVフィルタ)を含むカメラレンズを含むことができる。カメラ基板1106に、第2波長またはスペクトルの光(たとえば、UV光)を生成するLED1110(たとえば、SMD LED)等の1つまたは複数の照明素子を取り付けるかまたは接続することができる。そして、LED1110は、識別タグ1100の上のデータマトリックス1103を照明することができる。こうした実施形態では、データマトリックス1103は
、第2波長またはスペクトルの光による照明に応答して、第1波長またはスペクトル(たとえば、可視スペクトル)の光を放出する。そして、カメラ1104は、データマトリックス1103を復号するために、第1波長の放出された光を受け取ることができる。上述したように、データマトリックス1103の復号を達成することができる。LEDからの反射光からの眩しい光の影響を、このように低減させることができ、それは、LEDの放出波長/スペクトルの光をフィルタリングによって除去するように、カメラ1104を構成することができるためである。
【0202】
図44は、識別タグ1100に蛍光材料でコードが印刷されているシステムの図を示す。図示するように、1つまたは複数のLED1110は、波長Aの光を用いて識別タグ1100を照明することができる。波長Bの蛍光によって生成される光は、カメラ1104によって受け取られる。上述したように、蛍光は可視スペクトルである可能性があり、LEDによって放出される波長は、紫外線光等の可視スペクトル外の波長である可能性がある。カメラ1104は、任意選択的に、LEDによって放出される波長をフィルタリングによって除去するするフィルタを含むことができる。
【0203】
各ラインの識別タグ1100が、カメラ1104によって撮像され、解析されると、サイクラのプロセッサは、結果を表示するユーザインタフェースに表示するための画像を生成することができる。ディスプレイは、識別された溶液に関するさまざまな特徴を示すことができる。他の実施形態では、ディスプレイは、治療中に使用されるようにプログラムされた溶液の特徴を開示し、これらの溶液がカメラによって検出されたか否かを示すことができる。コントローラが、画像認識を行うようにプログラムされ、溶液ラインキャップが、画像センサまたはカメラ1104の視野内にある実施形態では、結果の画面は、ラインが、キャップが嵌められた状態で検出されたかまたはキャップが外された状態で検出されたかを表示することができる。プログラムされた溶液のすべてが存在するとは限らないか、またはラインのキャップが外されている場合、ユーザが治療を続けるのを阻止し、必要な是正措置を画面に表示するように、コントローラをプログラムすることができる。画面はまた、任意選択的に、サイクラに設置されたセットのタイプ(たとえば、小児用、成人用、延長された患者ライン等)に関する情報を、こうした情報が収集された場合、表示することも可能である。好ましくは、いかなる溶液も無駄にしないように、溶液ラインをカセットに接続する前に、この措置が行われ、画面表示が示される。
【0204】
図45は、サイクラのユーザインタフェースに表示するために生成することができるスクリーンショット5630の例を示す。例としての画面5630は、識別タグ1100分析の結果を示す。例としての画面5630では、治療に使用されるようにプログラムされた溶液の特性が示されている。これらの特性としては、(限定されないが)透析液タイプまたは名称、透析液の濃度、透析液バッグの容積、透析液の浸透剤、他の組成情報(たとえば、緩衝剤情報、イオン含有量情報)、バッグタイプ等を挙げることができる。図示する特性は、サイクラが、家庭で使用されるように設定されるか、または透析病院で使用されるように設定される場合、異なる可能性がある。サイクラに対して許容される最大量より少ない溶液バッグが治療に使用されるためにプログラムされている場合、未使用の溶液ラインまたは溶液ラインキャップ位置に対して、「なし」、「溶液なし」等をラベル付けすることができる。
【0205】
例としての画面5630上に、複数のインジケータ5362を含めることも可能である。これらのインジケータ5632は、溶液がサイクラに設置されているものとして特定されたか否かをユーザに示す。たとえば、存在する場合、列挙された溶液タイプの隣のインジケータ5632にチェックマークが現れる場合がある。列挙された品目が検出されない場合、「X」が現れる場合がある。
【0206】
図45に示す例としての画面5630はまた、設置されたラインにおいてキャップが検出されたか否かを示す、各溶液に関連づけられたインジケータ5632も含む。上述したように、任意の好適な方法を用いて、キャップが嵌められたラインが検出されるかキャップが外されたラインが検出されるかを表示することができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、溶液ラインの先端部に配置するブレース、ブレース部材または補強材を含むことが望ましい場合がある。それは、ラインおよび/または取り付けられたコネクタの一部を包囲するように構成することができる。流体ラインの先端部を突き刺すように構成される任意の流体処理装置では、先端部は、好ましくは、中空スパイクの長手方向軸からずれて曲がらないように拘束されるべきである。場合によっては、流体ラインの先端部は、製造または滅菌中に変形している。他の場合では、流体ラインの可撓性により、突刺し処置が行われる際に曲がりやすくなる可能性がある。ブレースは、剛性があり、流体ラインの先端部分の上に取付可能であるように構成することができ、スパイクが流体ラインの隔壁または他の障壁を穿孔する位置においてまたはその近くで流体ラインを取り囲む。実施形態では、ブレースは、流体ラインの先端部を取り囲むように互いに結合するように配置された2つの剛性半部材を備える。この位置で流体ラインの周囲にクランプを形成するように、ブレースを配置することができ、クランプの内側の特徴は、流体ラインの外側の相補的な特徴と嵌合するように構成される。好ましくは、流体ラインの任意の既存の曲りを補正し、または突刺し装置の動作中に流体ラインが曲がらないように、流体ラインにブレースを付与することができる。好ましくは、流体ラインを囲むときのブレースの外面は、ブレースおよびその囲まれた流体ラインを、流体処理装置の流体ライン取付台、クレードルまたはキャリッジに取り付けることができるようにする形状、向きおよび特徴を有する。こうした流体処理装置の例として、流体ライン自動接続装置を有する腹膜透析サイクラを使用することができる。
【0208】
任意選択的に、溶液ライン用のブレースとして機能するように、識別タグ1100を構成することができる。ブレース部材は、溶液ライン隔壁が位置する溶液ライン(またはコネクタ)の終端部/先端部の一部を包囲し、拘束し、または支持する役割を果たすことができる。ブレースは、ラインの包囲された部分が、ブレースによって指示される向きから曲がるかまたは変形するのを防止する役割を果たす。ブレースはまた、ラインの先端部がサイクラのそのトラックまたはクレードルに確実に配置されるのを確実にするのにも役立つことができる。
【0209】
たとえば、製造中、溶液ラインが曲がるかまたは変形する場合、ブレースは、これを、ラインを適切な向きまたは形状に戻るように曲げることによって補正するのに役立つことができる。たとえば、それを用いて、溶液ラインの端部が予測可能な向きにあり(たとえば、カセットの対応するスパイクの長手方向軸と同軸であり)、サイクラがラインを突き刺しているかまたは他の方法で操作しているときに曲がるかまたは変形することが妨げられることを確実にするのに役立つことができる。ブレースはまた、ラインまたは封入された溶液の滅菌中に発生する可能性がある加熱中に、溶液ラインが曲がるかまたは変形するのを防止するのにも役立つことができる。
【0210】
溶液ラインの上でブレース部材を受け入れかつ支持するように、サイクラキャリッジを構成することができる。そして、キャリッジは、ブレース部材と協働して、溶液ラインが突き刺されるかまたは操作される際に、溶液ラインが特定のまたは規定された向きにあり、かつこの向きでとどまるのを確実にするさらなる補助を提供することができる。
【0211】
ブレースは、たとえば、囲まれたラインまたはコネクタの変形または曲がりを防止するのに十分な剛性を有する(射出成形されたかまたは他の)任意の好適なプラスチックから製造することができる。好ましくは、溶液ラインを作製するために使用された材料より耐
熱性の高い材料から作製される。ブレースの縁部は、好ましくは、輸送および出荷中にセットの損傷の可能性を制限するように輪郭が付けられている(鈍くなっているかまたは丸くなっている)。
【0212】
ブレースを、管またはコネクタの一部の周囲に合わせて接合することができる2つの別個の半体で構築することができる。より好都合には、ブレースの2つの部分を、一方の側のリビングヒンジによって接続することができ、溶液ラインまたはコネクタへのより容易な設置を可能にする。溶液ラインが溶液ライン膜または隔壁フランジ1096を含む実施形態では(たとえば、
図40を参照)、ブレースの内面は、フランジを受け入れるようなサイズである凹状領域を含むことができる。凹状領域は、より小さい径の溶液ラインを密に包囲するようなサイズである表面によって、各側に側面を接するようにモールディングすることができる。
【0213】
図46に示すように、溶液ライン30が、内部隔壁(
図46には示さず)が配置される溶液ライン30のセグメントの周囲に配置されている例としてのブレース5050とともに示されている。図示する例では、ブレース5050は、2つの半体を備え、ブレース5050が溶液ライン30の周囲で適所に折り曲げられるのを可能にするリビングヒンジ5052または材料の薄いブリッジを含むことができる。リビングヒンジ5052は、ブレース5050の一体部分としてモールディングすることができる。また
図46に示すように、ブレース5050は、溶液ライン30の外面の特徴と協働する内面5054を含むことができ、それにより、ブレース5050は、溶液ライン30およびその外部の特徴の周囲にぴったりと嵌まりかつそれらを包含することができる。したがって、溶液ライン30の周囲の適所にあるとき、ブレース5050は、望ましくない移動または変位に対して溶液ライン30の一部を実質的に拘束しかつ/または支持するように作用することができる。
【0214】
ここで
図47を参照すると、
図46に示す例としてのブレース5050の拡大図が示されている。
図47に示すように、ブレース5050は、そのリビングヒンジ5052の周囲で閉鎖されており、それにより、それは、略組み立てられたリング状形態にある。ブレース5050を1つまたは複数の結合機構で互いに固定することができる。たとえば、協働するスナップフィットまたは締まり嵌め機構により、ブレース5050を互いにスナップ式に嵌めることができる。別法として、ブレース5050の結合部分を、協働する摩擦嵌め機構によって互いに結合することができる。いくつかの実施形態では、糊または接着剤を使用して2つの半体を接合することができ、または、ブレースの外面の周囲のケーブルタイ状締結構成を同様に使用することができる。例では、ブレース5050の一方の側は、ブレース5050の対向する側の受け入れ構造のつめと係合する歯付突起を含むことができる。したがって、2つの半体が互いに結合されると、結合機構は、ユーザがブレース5050を囲まれたラインから取り除くのを阻止するラチェットとして作用する。したがって、ブレースに存在するいかなる識別タグも、その意図されたライン(および関連する溶液バッグ)から容易に分離することができない。この目標を達成するために、ブレース5050をそのそれぞれのラインから分離するのを困難にする他の任意の好適な結合構成もまた使用することができる。
【0215】
場合によっては、ユーザがブレース5050(または関連する識別タグ1100)を取り除くことができることが望ましい可能性があり、その場合、ブレース5050の構造に、永久的なまたは半永久的な結合機構は含まれない。たとえば、溶液ライン30用の識別マークを担持するアップリケまたはステッカを用いて、溶液ライン30の周囲でブレース5050の2つの半体を保持することができる。これにより、ユーザは、識別マークを破るかまたは剥離することにより、溶液ライン30からブレース5050(または他の識別タグ1100)を容易に取り除くことができる。
【0216】
図46および
図47に示すように、ブレース5050は表示面5056を含み、それは、いくつかの態様では、ブレース5050の2つの半体がその組立形態で互いに結合されたときに、識別マークまたはコードに対応するように実質的に平坦であり得る。この表示面5056は、識別マークを(たとえば、ステッカ等で)追加することができる表面としての役割を果たすことができる。識別マークはまた、表示面5056内にモールディング/エッチングするかまたはその上に塗ることも可能である。したがって、ブレース5050はまた、識別タグ1100として作用することができる。識別マークを担持する非平面(たとえば、湾曲)表示面5056もまた使用することができる。
【0217】
図示するように、
図46および
図47の表示面5056は、継ぎ目を含み、それは、ブレース5050の結合部分が表示面5056の中心領域で結合するためである。代替実施形態では、溶液ライン30の周囲でブレース5050を結合するときに生成される任意の継ぎ目が、表示面5056の妨げをもたらす可能性がないように、ブレース5050を構成することができる。これは、表示面に加えられる識別マークが継ぎ目によって影響を受けないことを確実にするのに役立つことができるため、望ましい場合がある。
【0218】
いくつかの実施形態では、ブレースの2つの部分が接合される方法は、識別特性を提供することができ、識別マークを不要にする。ブレースの2つの部分が接合される継ぎ目は、サイクラのイメージャによって検出することができる所定の幾何学的形状パターンまたは突起を有することができる。ブレース5050の結合された縁部の部分は、より大きいかまたは小さい量、突出するようにすることができ、かつ/または異なる形状を有することができる。異なる継ぎ目パターンを有するブレースを、所定タイプの溶液バッグに割り当てることができる。各溶液バッグは、一意の継ぎ目パターンを有することができる。
【0219】
望ましい場合、
図48および
図49に示すように、ブレース5050の表示面5056を継ぎ目なしにすることができる。図示するように、ブレース5050は、
図46および
図47に示すものと同様に構築され、ブレース5050が溶液ライン30の外面の周囲で折り曲げ得られるのを可能にするリビングヒンジ5052を含む。そして、ブレース5050上の1つまたは複数の結合機構5053の相互作用を介して、溶液ライン30の周囲の適所にブレース5050を固定することができる。この場合、識別マークまたはコードを担持するように意図された表示面5056は、単一部片のままであり、それにより、ブレースを開放することが、コードまたはマークの連続性を中断させない。
図49にもっともよく示すように、実施形態例は、協働するスナップフィット機構である結合機構5053を含む。ブレース5050の1つの嵌合面は、1つまたは複数(この例では2つ)の係止機構を備えた突起を含む。係止機構は、ブレース5050の対向する嵌合面の受入側の結合機構5053内への突出を誘導するのに役立つように、傾斜させることができる。実施形態例では、係止機構は、任意選択的に非解放式である。すなわち、突起の端部に実質的に垂直な留め具がある。受入側の結合機構内にスナップ式に嵌まると、この垂直留め具が、受入機構の内壁に対して当接し、結合機構5053の分離を困難にする。代替実施系他愛では、受入要素の当接壁から離れるように留め具に角度を付けることができ、2つの構成要素に好適な反らせ力を加えることにより2つの構成要素の分離を可能にする。
【0220】
ブレース5050の本体は、任意選択的に、溶液ライン30上の機構と相補的であるさらなる嵌合機構を含むことができ、それにより、ブレース5050を、溶液ライン30の上に1つの向きでのみ設置することができる。これにより、複数の溶液ライン30上の複数のブレース5050の表示面5056が、実質的に同じ平面に沿って向けられることを確実にすることができる。溶液ライン30およびブレース5050上に協働する結合機構を含むことは、同様に溶液ライン30の周囲の支持位置またはブレーシング位置にブレース5050さらに保持するのに役立つことができる。
【0221】
実施形態例では、かつ
図49にもっともよく示すように、表示面5056は、リング状ブレース5050本体の1/2から延在するフランジ状突出部または突起として形成される。ブレース5050が組み立てられるとき、表示面5056は、ブレース5050の反対側の半体の一部の上に張り出し、それにより、ブレース5050の結合または嵌合要素が、表示面5056の下で接合される。
【0222】
図示するように、ブレース5050の反対側の半体に、表示面5056の張出し部分に対する支持面5055を含めることができる。この支持面5055は、平坦な特徴部分5056が曲がるのを防止するのに役立つことができる。表示面5056に対して実質的に平行な平面にある平坦な表面または平坦部(plateau)を含むように、支持面5055を構成することができる。別法として、複数のスタンドオフを使用することができる。ブレース5050が組み立てられるとき、支持面5055は、表示面5056の張出し部分の下に配置される。
【0223】
図50および
図51に、ブレース5050の継ぎ目なしの表示面5056の別の例を示す。図示するように、ブレース5050は、ブレース5050が溶液ライン30の外面の周囲で折り畳まれるのを可能にするリビングヒンジ5052を含む。そして、ブレース5050の1つまたは複数の結合機構5053の相互作用を介して、溶液ライン30の周囲の適所にブレース5050を固定することができる。
図50および
図51における実施形態例では、結合機構5053はスナップフィット機構である。ブレース5050はまた、ブレース5050が組み立てられるときに表示面5056の張出し部分の下に配置される支持面5055を含む。いくつかの実施形態では、ブレース5050の表示面5056は、その外周部の少なくとも一部に沿って延在する隆起面またはリムを含むことができる。これは、識別マークがブレース5050に付与されるアップリケまたはステッカである状況に対して、ブレース5050の上にデータマトリックス1103、バーコード、QRコード(登録商標)または他の識別マークを配置するのに役立つことができる。
【0224】
図51にもっともよく示すように、ブレース5050はまた、ブレースがサイクラのホルダまたはクレードルに適切に位置するのを可能にする1つまたは複数の位置合せまたは保持機構も含むことができる。たとえば、ブレース5050は、キャリッジの相補的な結合機構と協働する1つまたは複数のブレース−キャリッジ結合機構5057を含むことができる。こうした機構は、キャリッジ内にブレース5050および関連する溶液ライン30を保持するのに役立つことができる。さらに、こうした機構5057は、ブレース5050および溶液ライン30がキャリッジ内に適切な向きで完全に取り付けられかつ適切に設置されるのを確実にするのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のブレース−キャリッジ結合機構5057は、キャリッジ内にスナップフィット係合で結合することができる。取付中の可聴または触知可能なクリック音が、ユーザに対し、ブレース5050がキャリッジ内に適切に配置されていることを知らせることができる。実施形態例では、ブレース−キャリッジ結合機構5057は、片持ち式突起として示されているが、他の好適な結合構成を使用することができる。たとえば、ブレース−キャリッジ結合機構5057は、摩擦嵌めまたは締り嵌め機構であり得る。好ましくは、結合構成は、ユーザがキャリッジから溶液ライン30を容易に取り外すことができるように、キャリッジにブレース5050の解除可能な結合を提供する。
【0225】
いくつかの代替実施形態では、ねじ等の1つまたは複数の締結具を用いて、溶液ライン30の周囲にブレース5050の一部を固定することができる。代替構成では、管セットの製造中に、単一切片のブレース5050を使用することも可能である。
【0226】
図52は、溶液ライン30の代表的な縦断面図を示し、溶液ライン30の周囲の適所に
あるブレース5050を示す。特に、プレース5050は、隔壁30bが位置する溶液ライン30の部分の周囲の適所にある。溶液ライン30のこの領域の周囲にブレース5050を配置することは、カセットと溶液ライン30との間の接続が試みられるときに、本来、隔壁30bのカセットスパイクとの位置ずれをもたらす、製造または滅菌中の溶液ライン30の歪みを防止するのに役立つ。さらに、ブレース5050は、スパイクから力を受けているとき、溶液ライン30の著しい曲げまたは変形を防止することができる。したがって、ブレース5050を含むことにより、サイクラのキャリッジ146が溶液ライン30をカセット24のスパイク上に押し付けるときに、隔壁30bを通る突刺しをより容易にすることができる。
図53は、周囲にブレースが設置される溶液ラインを受け入れるように構成された保持機構1092を含むキャリッジ146の実施形態例を示す。図示するように、
図53に示すキャリッジ146のクレードルまたはスロット1086は、
図39および
図40に示すようなID部1090を含まない。この場合、各ブレースに、セット構成要素用の識別マーク(たとえば、データマトリックス1103)を含めることができる。
【0227】
ここで
図54も参照すると、
図53の領域BQの詳細図が示されている。
図54に示す詳細図は、キャリッジ146の2つの例としての保持機構1092の拡大図を示す。図示するように、保持機構1092は、溶液ラインがキャリッジ146のスロット1086内に設置されるときにブレースを受け入れるようなサイズとすることができる。キャリッジ146の保持機構1092は、設置された溶液ラインの突刺し中にブレースを支持するのに役立つ支持機構を含む。したがって、保持機構1092は、溶液ラインが、溶液ラインの突刺し中に所望のまたは規定された位置合せされた状態にあることを確実にすることができる。保持機構は、ブレースとブレースが配置されるクレードルまたは凹部との間にスナップフィットを提供するクリップまたはクリップ部を備えることができる。
【0228】
具体的な実施形態では、保持機構1092は、支持機構または部材としての役割を果たす少なくとも1つの支持壁または肩部を含むことができる。
図53および
図54に示す実施形態例では、各保持機構1092に対して、第1支持壁5510aおよび第2支持壁5510bが含まれる。これらの支持壁5510a、5510bは、突刺し動作中にブレースに対して支持を提供するようにブレースの一部と相互作用することができるフランジとして示されている。たとえば、各支持壁5510a、5510bは、突刺し中にブレースの少なくとも1つの面と当接することができる。支持壁または肩部5510a、5510bはまた、キャリッジ146内のラインの設置中にスロット1086内に溶液ラインを適切に配置するのに役立つことも可能である。いくつかの実施形態では、ブレースは、キャリッジ146の支持壁5510a、5510bを受け入れるようなサイズである凹部または溝を含むことができる。
図51に示す例としてのブレース5050実施形態を用いて、
図53および
図54に示すキャリッジ146に設置されるときに第1支持壁または肩部5510aによって、ブレース5500の上流面5512を支持することができる。
図51における例としのブレース5050は、凹状部分5514を含む。ブレース5050の凹状部分5514は、ブレース5500が保持部材またはクリップ1092に設置されたときに、キャリッジ146の第2支持壁5510bが凹部内に捕捉されるようなサイズであり得る。そして、第2支持壁または肩部5510bによって、ブレース5050の下流面5516を支持することができる。キャリッジ146に設置された溶液ラインの突刺し中、力は、ブレース5050から支持壁5510a、5510bを通ってキャリッジ146まで伝達される。したがって、ブレース5050とキャリッジ146の支持壁5510a、5510bとの相互作用は、ラインの突刺し全体を通して溶液ラインを所望の位置合せで拘束するのに役立つことができる。
【0229】
図54にはまた、任意選択的なキャリッジ−ブレース結合機構5518も示す。こうし
た機構は、ブレース5050とともに溶液ラインを受け入れるように設計されたキャリッジ146に含めることができる。これらの機構5518は、ブレース5050に含まれる1つまたは複数の機構と協働することができ、それにより、ブレース5050は、スロットまたはクレードル1086の保持またはクリップ部1092内で、適所に結合されかつ保持される。これは、溶液ラインがキャリッジ146から不注意で外れないようにするのに役立つことができる。好ましくは、ブレースがキャリッジ−ブレース結合機構5518内に結合されるときに、可聴または触知可能効果がもたらされる。これは、ユーザに対して、ブレースがクレードルまたはスロット1086の保持またはクリップ部1092内に完全に取り付けられたことを警告することができる。
【0230】
実施形態では、キャリッジ−ブレース結合機構5518は、クレードルまたはスロット1086内に突出する突起であり、機構5518の位置における保持またはクリップ部1092の幅は、ブレース5050の幅よりわずかに小さい幅まで低減し、ブレース5050がクリップ部1092にスナップ式に嵌まることができる前に、ブレース−キャリッジ結合機構5057の幾分かの内側の偏向を必要とする。
【0231】
図54に示す実施形態例では、キャリッジ−ブレース結合機構5518を傾斜させるかまたは段状にすることができる。傾斜構成は、治療後に保持またはクリップ部1092からブレースを取り除くのを容易にすることができる。傾斜部の高さまたは勾配は、ユーザが保持またはクリップ部1092からブレースを取り除いているときに所望の程度の抵抗を提示するように選択される。
【0232】
図55に、キャリッジ146の別の実施形態例を示す。図示するように、
図55に示す例としてのキャリッジ146は、複数の溶液ラインクリップまたは保持要素5520を含む。図示するように、キャリッジ146の各スロット1086の溶液ライン部1088内に、溶液ライン保持要素5520が含まれる。溶液ライン保持要素5520は、溶液ラインを配置することができる受入構造として作用することができる。溶液ライン保持要素5520は、キャリッジ146のスロット1086内の適所に溶液ラインを保持するのに役立つ。さらに、溶液ライン保持要素5520は、溶液ラインが、キャリッジ146またはスロット1086の溶液ライン部1088から不注意で外れるのを防止するのに役立つように構成される。溶液ライン保持要素5520は、各溶液ライン部1088の一体的な連続部として示されているが、代替実施形態では、個々の構成要素としてキャリッジ146に組み立てることができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、トラックまたはキャリッジスロット1086内の捕捉された溶液ラインが外れることに対する非対称な抵抗を提供するように、溶液ライン保持要素5520を構成することができ、それにより、第1端部(たとえば、上流位置)から引っ張られるときに溶液ラインを取り除くために必要な力は、第2端部(たとえば、下流位置)から引っ張られる場合に溶液ラインを取り除くために必要な力より小さい。これは、突刺し中または治療中に、溶液ラインがキャリッジ146からまたはトラックから偶発的にまたは不注意で外れないことを確実にするのに役立つことができる。さらに、この構成により、ユーザは、治療が完了した後、ラインの第1(たとえば、上流)セグメントを引き寄せることにより、キャリッジ146から溶液ラインを比較的容易に取り除くことができる。引張方向は、概して、スロット1086の軸に対して鋭角である。概して、トラックまたはスロット1086内に位置する可撓性チューブセグメントのための保持部材5520は、チューブセグメントを配置することができる底部ウェルまたはチャネルと、チューブセグメントを挿入しまたは取り除くことができる頂部開口部とを有する、クリップを備えることができる。ウェルの頂部の近くの保持部材5520の内側に向けられた突起は、チューブセグメントを保持し、それが保持部材5520の頂部から滑り出るのを防止するのに役立つ。保持部材から所定の力を用いてチューブセグメントが取り除かれるのを可能に
するために、チューブセグメント捕捉部分に対して加圧するか、または突起をわずかに離れるように(たとえば、横方向に)反らさなければならない。チューブセグメントに対して垂直向きではなく、保持部材5520の第1面は、保持部材5520に入る際にチューブセグメントの第1部分から離れるように傾斜させることができる。これは、第1部分を引き寄せるときに、管セグメントを保持部材5520から取り除くために必要な力を低減させるという効果を有することができる。したがって、ユーザは、チューブセグメントの第1部分を把持することによって、保持部材5520からチューブセグメントを容易に取り除くことができ、保持部材5520の他方の側のチューブセグメントの第2部分に力が向けられる場合、チューブセグメントを取り除くためにより大きい力が必要である。好ましくは、自動接続装置を備えた腹膜透析サイクラでは、チューブセグメントの第2部分はカセットスパイクを受け入れ、チューブセグメントの第1部分は溶液バッグに通じる(すなわち、保持部材5520の上流にある)。
【0234】
ここでまた
図56を参照すると、
図55の領域BSの詳細図が示されている。
図56に示す詳細図は、キャリッジ146内に含まれる例としての溶液ライン保持要素5520の拡大図を示す。図示するように、溶液ライン保持要素5520は、溶液ライン部1088の壁からスロット1086内に内側に突出する。この例では、溶液ライン保持要素5520は、「U」字形状を有している。溶液ラインは、溶液ライン保持要素5520内にクリップ留めされかつそれによって保持されるとき、要素5520のクレードル部分5524の上に載る。
【0235】
図示するように、溶液ライン保持要素5520の側壁5526の間の距離は、側壁5526がキャリッジ146の上面5522に向かって延びるに従い逓減する。側壁5526の間の距離は、キャリッジ146の上面5522におけるまたはその近くの溶液ラインの直径より小さい可能性がある。別法として、側壁5526は、同様の効果を達成する段を含むことができる。
【0236】
溶液ラインが溶液ライン保持要素5520内に結合されると、ユーザに対して、溶液ライン保持要素5520の頂部において溶液ラインが側壁5526の間に嵌まるように溶液ラインを変形させるために十分な力を加えるように要求することができる。側壁5526がラインの上に張り出す程度によって、保持要素5520からラインを取り除くために必要な力の大きさが決まる。
【0237】
図56に示すように、溶液ライン保持要素5520の下流面または上流面のいずれかに、案内機構、輪郭または傾斜部を含めることができる。実施形態例では、溶液ライン保持要素5520の上流面に、案内機構が示されている。案内機構は、溶液ラインが容易に取り除かれるのを可能にする役割を果たすことができる。こうした案内機構はまた、溶液ラインクリップまたは保持機構5520内への溶液ラインの設置も容易にすることができる。
【0238】
図56に示す実施形態例では、案内機構は、各側壁5526の面取部または傾斜部として示されている。他の実施形態では、案内機構は、たとえば、隅肉、丸い縁部、じょうご形特徴部分、または各側壁5526に含まれる他の輪郭であり得る。
【0239】
いくつかの実施形態では、サイクラの物理的干渉要素は、ドア141が閉じられたときにキャリッジ146内に適切に取り付けられていない場合、溶液ライン30、そのコネクタ、そのキャップまたは関連するブレースと接触することができる。接触すると、この物理的干渉要素は、ドア141がユーザによって閉じられ続ける際に、溶液ライン30の進路を閉鎖することができる。この物理的干渉要素は、たとえば、ドアが閉じられるサイクラの部分に配置されるかまたはそこから突出することができる。実施形態では、干渉要素
は、ユーザがドア141を閉鎖位置に向かって枢動させ続ける際に、不適切に取り付けられた溶液ライン30を適切な取付位置になるように押圧することができるように配置することができる。物理的干渉要素は、たとえば、ドア141が閉じられるとき、それ自体と適切に取り付けられた溶液ラインまたはキャリッジ146との間に非常にわずかな量の隙間を可能とすることができる。いくつかの実施形態では、ドア141が閉鎖位置にあるとき、物理的干渉要素は、溶液ライン30がキャリッジ146内に適切に取り付けられている場合であっても、溶液ライン30、そのコネクタ、そのキャップまたは取り付けられたブレースの一部と接触しかつ/またはそれに加圧することができる。これは、溶液ラインがキャリッジ146内に適切に取り付けられているという追加の確実性を提供することができる。それはまた、溶液ライン30がキャリッジ146の取付位置になるように押圧され得ない場合に、ユーザがサイクラのドア141を完全に閉じることができないようにする。
【0240】
図57は、キャリッジ146および他の構成要素を含むサイクラの一部のクローズアップ断面図を示し、他の構成要素は、溶液ライン30からキャップ31を取り除き、各ライン30に対する指標を認識し、設置されたカセットのそれぞれのスパイクにライン30を流体的に係合させるように操作することができる。サイクラのドア141は、閉鎖位置で示されている。図示するように、
図57では、溶液ライン30は、キャリッジ146内の適所にある。実施形態例では、溶液ライン30は溶液ラインキャップ31を含み、それは、溶液ライン30のコネクタ端部30aの上に設置されている。溶液ライン30の一部の周囲の適所に、識別タグ1100が示されており、識別タグ1100を撮像するようにカメラ1104が配置されている。
【0241】
この例では、溶液ラインキャップ31は、
図57において物理的干渉要素としての役割を果たす窓1108の一部と接触している(任意選択的に、窓1108の一部によって加圧される)。実施形態では、溶液ラインキャップ31は、干渉要素(この場合、窓1108の一部)への損傷を回避するために十分、圧縮性でありかつ軟質である、エラストマ材料(シリコーン等)から作製される。こうした構成により、サイクラのドア141を閉じる作用により、溶液ライン30がキャリッジ146内の適切に取り付けられた位置に押圧されることを確実にすることができる。干渉要素の損傷を回避するために、溶液ラインキャップ31は、好ましくは、物理的干渉要素と接触する溶液ライン30の第1部分、または物理的干渉要素に対する原則的接触点である。
【0242】
ドア141を閉じてるときに、窓1108が物理的干渉を提供するものである場合、窓1108と溶液ライン30との間の第1または原則的接触点は、好ましくは、窓1108の縁部に向かうか、または他の方法で、窓の後方のカメラ1104の視野の周縁部または視野外にある。これにより、識別タグ1100のカメラ1104の視野を遮る領域における窓1108の摩耗またはすり減りのいかなる可能性も最小限にすることができる。
【0243】
窓1108に対する損傷のいかなる可能性もさらに最小限にするために、干渉接触点を任意選択的に面取りすることができる5560。この面取特徴部分5560は、ドア141が閉じられる際に、不適切に取り付けられた溶液ライン30が適切に取り付けられた位置に押しやられるときに、窓に対する損傷を防止するのに役立つことができる。面取特徴部分5560はまた、溶液ライン30が窓1108に引っかかるかまたは捕捉され、窓1108が損傷するのを防止するのにも役立つことができる。図示するように、窓1108のフレーム5562はまた、任意選択的に面取部5564を含むことができ、その面は、窓1108の面取特徴部分5560の面に対して実質的に平行に向けられる。面取部5564は、同様に、溶液ライン30の引っ掛かりまたは捕捉を防止するのに役立つことができ、窓に対する損傷を防止するのにも役立つことができる。代替実施形態では、面取特徴部分5560および/または面取部5564の代わりに丸い特徴部分を用いることができ
る。
【0244】
図58は、第1実施形態におけるキャリッジ駆動アセンブリ132の斜視図を示し、それは、キャリッジ146を移動させて、カセット上のスパイク160からキャップを取り外し、溶液ライン30上のキャップ31を取り外し、スパイク160にライン30を接続するように機能する。駆動要素133は、ロッド134に沿って左から右に移動するように構成される。この例示的な実施形態では、空気袋が、ロッド134に沿って駆動要素133の移動に動力を供給するが、モータ、油圧系等を含む、任意の適切な駆動機構を使用することができる。駆動要素133は、キャリッジ146上の対応するスロット146aと係合する前方に延在するタブ135を有する(キャリッジ146上の上部スロット146aを示す
図38を参照)。タブ135がスロット146aと係合することにより、駆動要素133がキャリッジ146をガイド130に沿って移動させることができる。駆動要素133は、窓136も含み、それを通して、CCDまたはCMOSイメージャ等の撮像デバイスが、キャリッジ146に取り付けたライン30上の指標領域33の指標の画像情報を取り込むことができる。指標領域33の指標に関する画像情報は、撮像装置から、たとえば画像解析によってしるしを取得することができる制御システム16に提供することができる。駆動要素133は、ロッド134に沿って左右の両方にキャップストリッパ149を選択的に移動させることができる。キャップストリッパ149は、空気圧式ブラダ等の別個の駆動機構を用いて、前後に延在している。
【0245】
図59は、キャリッジ駆動アセンブリ132の左側斜視図を示し、それは、キャップストリッパ149のストリッパ要素が、キャップストリッパ149のハウジング内の溝149aに沿って出入りして(ロッド134に対して概して垂直な方向に)移動するように、いかに配置されるかをより明白に示す。ストリッパ要素の半円形の切出し部の各々は、キャップ31が駆動要素133およびキャリッジ146によってストリッパ149の正面に適切に配置されるとき、前方に延在することによって、ライン30上のキャップ31の対応する溝と係合することができる。ストリッパ要素がキャップ31と係合した状態で、キャップストリッパ149は、駆動要素133が移動する際にキャリッジ146とともに移動することができる。
図60は、キャリッジ駆動アセンブリ132の部分背面図を示す。この実施形態では、駆動要素133は、第1空気袋137によってカセット24の取付位置145に向かって移動し、第1空気袋137は、駆動要素133を
図60における右側に移動させるように拡張する。駆動要素は、第2空気袋138によって左側に移動することができる。別法として、駆動要素133は、たとえば、ボールねじアセンブリ(キャリッジ駆動アセンブリがボールナットに取り付けられている)またはラック・ピニオンアセンブリ等の直線駆動ギヤアセンブリに結合された1つまたは複数のモータによって前後に移動することができる。キャップストリッパ149のストリッパ要素1491は、第3空気袋によって、または、別法として、上述したように、直線駆動アセンブリに結合されたモータによって、キャップストリッパハウジングを出入りして移動することができる。
【0246】
図61〜
図63Bは、キャリッジ駆動アセンブリ132およびキャップストリッパ149の別の実施形態を示す。
図61におけるキャリッジ駆動アセンブリ132の背面図に示すように、この実施形態では、駆動要素133は、ねじ駆動部機構1321によって左右に移動する。
図62におけるキャリッジ駆動アセンブリ132の右背面斜視図に示すように、ストリッパ要素は、空気袋139によって外側および内側に移動するが、上述したように他の構成も可能である。
【0247】
図63Aおよび
図63Bは、キャップストリッパ149のストリッパ要素1491に対する別の実施形態の左正面斜視図および右正面斜視図を示す。
図59に示す実施形態におけるストリッパ要素1491は、溶液ライン30のキャップ31と係合するように構成されたフォーク形状要素のみを備えていた。
図63Aおよび
図63Bの実施形態では、スト
リッパ要素1491は、フォーク形状要素60のみではなく、ストリッパ要素1491に枢動可能に取り付けられたロッカアーム61も含む。より詳細に後に説明するように、ロッカアーム61は、カセット24からのスパイクキャップ63の取外しに役立つ。ロッカアーム61の各々は、溶液ラインキャップ係合部分61aおよびスパイクキャップ係合部分61bを含む。ロッカアーム61は、通常、
図63Bにおけるロッカアーム61に示すようにスパイクキャップ係合部分61bがストリッパ要素1491の近くに配置されるように、移動するように付勢される。しかしながら、キャップ31が対応するフォーク形状要素60によって受け入れられると、溶液ラインキャップ係合部分61aは、キャップ31と接触し、それにより、
図63Aに示すように、ロッカアーム61が枢動して、スパイクキャップ係合部分61bがストリッパ要素1491から離れるように移動する。この位置によって、スパイクキャップ係合部分61bは、スパイクキャップ63、特に、スパイクキャップ63のフランジに接触することができる。
【0248】
図64は、ストリッパ要素1491の正面図と、
図65〜
図67に示すいくつかの断面図の位置とを示す。
図65は、ストリッパ要素1491の近くにスパイクキャップ63または溶液ラインキャップ31配置されていない、ロッカアーム61を示す。ロッカアーム61は、スパイクキャップ係合部分61bと透析液キャップ係合部分61aとの間のおよそ中間の箇所で、ストリッパ要素1491に枢動可能に取り付けられる。上述したように、ロッカアーム61は、通常、
図65に示すように左回りに回転するように付勢され、それにより、スパイクキャップ係合部分61bは、ストリッパ要素1491の近くに配置される。
図66は、ストリッパ要素1491が、フォーク形状要素60と係合する溶液ラインキャップ31がない場合にスパイクキャップ63に向かって前進する場合であっても、ロッカアーム61がこの位置(すなわち、スパイクキャップ係合部分61bがストリッパ要素1491の近くに位置している状態)を維持することを示す。その結果、ロッカアーム61は、溶液ラインキャップ31が存在しない限り、右回りに回転しないかまたはスパイクキャップ63と係合しない。したがって、溶液ラインキャップ31と係合しないスパイクキャップ63は、カセット24から取り外されない。
【0249】
図67は、溶液ラインキャップ31がフォーク形状要素60と係合し、ロッカアーム61の溶液ラインキャップ係合部分61aと接触する例を示す。これにより、ロッカアーム61が右回り方向に(図に示すように)回転し、スパイクキャップ係合部分61bがスパイクキャップ63と係合する。この実施形態では、部分61bの係合は、スパイクキャップ63の第2フランジ63aに隣接して部分61bを配置することを含み、それにより、ストリッパ要素1491が右側に(
図67に示されるように)移動するとき、スパイクキャップ係合部分61bは、第2フランジ63aと接触し、対応するスパイク160からスパイクキャップ63を引っ張るのに役立つ。溶液ラインキャップ31が、シリコーンゴム等の可撓性材料から作製され、それによって、スパイクキャップ63の返し部63cがキャップ31の孔31b(
図71を参照)を拡張し、キャップ31内の週方向内部溝または凹部によって捕捉されるのを可能にする。スパイクキャップ63の第1フランジ63bが、溶液ラインキャップ31の端部用の止め具として作用する。別の例では、スパイクキャップ63は、第1フランジ63bを含まない。キャップ31の孔31bにおける溝または凹部を画定する壁は、対称であるか、または、好ましくは非対称的に配置されて返し部63cの形状に一致することができる(キャップ31および溝または凹部の断面図については
図84を参照)。スパイクキャップ63の第2フランジ63aは、ロッカアーム61のスパイクキャップ係合部分61bが、必要な場合、スパイク160からスパイクキャップ63を解除するように追加の引張り力を提供するために係合する、歯として作用する。
【0250】
図68および
図69は、キャップストリッパ149のストリッパ要素1491に対する別の実施形態の2つの異なる斜視図を示す。
図59に示す実施形態におけるストリッパ要素1491は、溶液ライン30のキャップ31と係合するように構成されたフォーク形状
要素60を使用する。
図68に示す実施形態では、ストリッパ要素1491は、フォーク形状要素60を含むのみではなく、複数の検出要素1112および複数のロッカアーム1114をさらに含むことも可能である。検出要素1112およびロッカアーム1114は、ストリッパ要素1491に沿って垂直に延びる2つの平行な列に配置することができる。実施形態では、各縦列は、5つの個々の検出要素1112およびロッカアーム1114を含むことができ、そのそれぞれが、フォーク形状要素60の各々に対応した列に概して整列するように配置される。各検出要素1112は、対応するロッカアーム1114のうちの1つに機械的に接続されるかまたは連結され得る。さらに、各検出要素1112およびロッカアーム1114を備えるアセンブリは、各ロッカアーム1114が非係合位置に向かって付勢された状態を維持する付勢ばね(図示せず)と、フォーク形状要素60における溶液ラインキャップ31が接触しかつその存在によって移動する位置にある検出要素1112とを含むことができる。各検出要素1112は、フォーク形状要素60の対応する溶液ラインキャップ31と接触することによってストリッパ要素1491の後方に向かって変位し傾斜することができる。検出要素1112とロッカアーム1114との間の機械的な接続により、ロッカアーム1114は、溶液ラインキャップ31と検出要素1112との接触時にスパイクキャップ63に向かって枢動可能に回転するかまたは横方向に傾斜することができる。ロッカアーム1114は、スパイクキャップ63に向かって回転または傾斜する際、スパイクキャップ63の第2フランジ63aと係合することができ、ストリッパアセンブリがその対応するスパイクからスパイクキャップ63を取り外すのを可能にする。
【0251】
図70A〜
図70Cは、検出要素1112と溶液ラインキャップ31との間、およびロッカアーム1114とスパイクキャップ63との間の関係を示す。
図70Cは、スパイクキャップ63および溶液ラインキャップ31がない場合の検出要素1112およびロッカアーム1114を示す。
図70Bに示すように、溶液ラインキャップ31の外側フランジ31cは、検出要素1112と接触するように十分に大きい直径を有している。
図70Aに示すように、溶液ラインキャップ31がない場合、単にスパイクキャップ63のみが存在するだけでは、検出要素1112を変位させかつスパイクキャップ63から離れるように回転させるほど十分には、検出要素1112と接触しない。
図70Bに示すように、検出要素1112の変位は、スパイクキャップ63に向かってロッカアーム1114を回転または傾斜させ、最終的には、スパイクキャップ63のフランジ63aに隣接して位置する箇所まで回転または傾斜させる。
図70Aに示すように、ロッカアーム1114は、非展開位置にあるとき、スパイクキャップ63の第2フランジ63aの外周を所定量(たとえば、0.040インチ)だけあけることができる。ロッカアーム1114が展開位置に移動する時、その移動範囲は、確実な係合を確保するようにその対応するスパイクキャップ63に対してわずかな圧縮力を与えるように構成され得る。
【0252】
ロッカアーム1114がスパイクキャップ63のフランジ63aに隣接して配置されると、右側へのストリッパ要素1491の移動は、フランジ63aを介してスパイクキャップ63を係合させ、スパイクキャップ63をその対応するスパイク160から引っ張るのに役立つ。溶液ラインおよびそれに関連する溶液ラインキャップ31がない場合、ストリッパ要素1491は、対応するスパイクキャップ63を取り外さず、その関連するスパイク160が封止されたままにする。このように、カセットスパイク161は、使用する必要がある溶液ラインの数が最大数よりも少ないとき、最大数より少ない個数のカセットスパイク161にアクセスすることができる。
【0253】
図71は、キャップ31が取り外されている、溶液ライン30のコネクタ端部30aのクローズアップ組立分解図を示す。
図71では、キャップ31は、明確にするために
図72に示すもののようなフィンガプルリングなしに示されている。プルリングは、サイクラ14でのキャップ31の操作には存在する必要がない。しかしながら、それは、必要な場
合、オペレータが溶液ライン30の終端部からキャップ31を手動で取り外すことを可能にする際に有用である場合がある。この例示的な実施形態では、指標領域33の指標は、
図37および
図38に示すように取り付けられたときにキャリッジ146の対応するスロット内に嵌まるようなサイズでありかつそのように構成された環状形状を有する。当然ながら、指標は、任意の適切な形態であり得る。キャップ31は、コネクタ端部30aの最先端に上に嵌まるように構成され、それは、内部孔、シール、および/または、カセット24のスパイク160との漏れのない接続を可能にする他の特徴を有する。コネクタ端部30aは、キャップ31が取り外されている場合であっても、コネクタ端部30aからのライン30内の溶液の漏れを防止する貫通可能な壁または隔壁(図示せず、
図84の項目30bを参照)を含むことができる。コネクタ端部30aがカセット24に取り付けられたとき、スパイク160によって壁または隔壁に穴をあけることができ、ライン30からカセット24への流れを可能にする。上述したように、キャップ31は、キャップストリッパ149のフォーク形状要素60が係合する溝31aも含むことができる。キャップ31は、スパイクキャップ63を受け入れるように構成された孔31bをも含むことができる。孔31bおよびキャップ31は、キャップストリッパ149が溝31aと係合しかつスパイク160のスパイクキャップ63が孔31bに受け入れられた状態で、キャップ31がスパイクキャップ63を適切に把持することができ、それにより、キャリッジ146/キャップストリッパ149がカセット24からキャップ31を引き離すときに、スパイクキャップ63が、スパイク160から取り外されかつキャップ31によって支持されるように、構成することができる。この取外しは、上述したように、ロッカアーム61が第2フランジ63aまたはスパイクキャップ63の他の機構と係合することによって補助することができる。その後、キャリッジ146によってスパイク160に取り付けられたコネクタ端部30aおよびライン30から、キャップ31およびスパイクキャップ63を取り外すことができる。
溶液ラインコネクタヒータ
一実施形態では、溶液ライン30の指標領域33の近くに、コネクタヒータを設けることができる。コネクタヒータは、溶液ラインをカセット24のスパイク160に取り付けるために必要なキャリッジの力を制限するために、コネクタ端部30a、特に穴あけ可能な壁または隔壁30bの温度を制御することができる。溶液ラインの接続端部30aの穴あけ可能な壁または隔壁30bの硬さに影響を与えるのに、周囲温度(室温)の十分な変動がある可能性があり、堅さはさらに、溶液ライン30のコネクタ端部30aにスパイク160を接合する際のキャリッジ146の性能に影響を与える可能性がある。たとえば、低い周囲温度では、穴あけ可能な壁または隔壁30bの硬さが高いほど、スパイク160が穴をあけるために必要な力が大きくなる可能性がある。一方、高い周囲温度では、穴あけ可能な壁または隔壁は、スパイク160が接触するときに分離するのではなく変形するように軟質である可能性がある。
【0254】
コネクタ端部30aの温度は、複数の方法で制御することができ、それには、適切な位置に(たとえば、ドア141の位置2807またはその近くに)加熱素子を配置することと、コネクタ端部30aの温度をモニタリングする温度センサを設置することと、コントローラを用いて温度データを受け取り加熱素子の動作を調整することとを挙げることができる。温度は、ストリッパ要素1491またはキャリッジ146に取り付けられた温度センサ素子によって測定することができる。別法として、コネクタ端部30aの表面温度を測定するように調整された赤外線(IR)センサを用いて、コネクタ端部30aの温度を求めることができる。
【0255】
コントローラは、自動化コンピュータ300におけるソフトウェアプロセスであり得る。別法として、ハードウェアインタフェース310にコントローラを実装することができる。コントローラは、たとえば複数の方法のうちの1つで、抵抗ヒータに送られる電力を調整することができる。たとえば、コントローラは、抵抗ヒータへの電力の流れを調整す
ることができるMOSFETにPWM信号を送信することができる。コントローラは、複数のアルゴリズムを通して、測定温度を所望の温度に制御することができる。1つの例示的なアルゴリズムは、ヒータ電力を設定する、測定温度に対する比例−積分(PI)フィードバックループを含む。別法として、測定された周囲温度に基づいてヒータ電力を設定する開ループアルゴリズムにおいて、ヒータ電力を調整することができる。
【0256】
別の実施形態では、コネクタ端部30aの温度を、たとえば位置2807においてドア141に放射ヒータを取り付けることによって制御し、コネクタ端部に照準を定めることができる。別法として、たとえばドア141の位置2807に熱電素子を取り付けることによって、コネクタ端部の温度を制御することができる。熱電素子は、キャリッジ146に取り付けられたときにコネクタ端部の周囲の領域に加熱または冷却のいずれかを提供することができる。温度を所与の範囲内で維持するように、コントローラによって放射ヒータまたは熱電素子を調整することができる。コネクタ端部30aに対する好ましい温度範囲は、穴あけ可能な壁または隔壁を構成する材料によって決まり、経験的に確定することができる。一実施形態では、穴あけ可能な壁はPVCであり、好ましい温度範囲は、約10℃〜30℃、またはより好ましくは、約20℃〜30℃の温度範囲に設定される。
【0257】
実施形態では、ドアが閉じられた後に、かつ溶液ライン30がカセット24に取り付けられる前に、指標領域33の近くのコネクタヒータを使用することができる。コネクタ30aの近くの測定温度が好ましい範囲外である場合、自動化コンピュータ300またはコントローラは、コネクタヒータを有効にする。自動化コンピュータ300またはコントローラは、測定温度が好ましい範囲内になるまで、自動接続プロセスを遅らせることができる。自動接続プロセスが完了した後、コネクタヒータを無効にすることができる。
セット装填および動作
治療が完了するか、またはライン30および/またはカセット24がサイクラ14から取り外す用意ができると、ドア141を開くことができ、かつカセット24およびライン30がサイクラ14から取り外される前に、キャップ31および取り付けられたスパイクキャップ63を、スパイク160およびライン30に再び取り付けることができる。別法として、キャップ31および取り付けられたスパイクキャップ63を再び取り付けることなく、カセット24とライン30を備えた透析液容器とを、サイクラ14から一括して取り外すことができる。この手法の利点としては、取外しプロセスの簡略化と、不適切にキャップを再取付けするかまたは不適切にキャップを封止することによる、サイクラへののまたは周辺領域へのいかなる流体の漏れの可能性も回避することとが挙げられる。
【0258】
図72〜
図80は、ライン取付けおよび自動接続動作中のキャリッジ146、キャップストリッパ149、およびカセット24の斜視図を示す。ドア141および他のサイクラ構成要素は、明確にするために示していない。
図72では、キャリッジ146は、ドア141が
図8に示された位置で開いているかのように、下方に折り畳まれた位置で示されている。ライン30およびカセット24は、ドア141上に下げられるように配置される。
図73では、ライン30は、キャリッジ146内に装填され、カセット24は、取付位置145に装填される。この時点で、サイクラの動作準備をするために、ドア141を閉じることができる。
図74では、ドア141は閉じられている。ライン30上の指標領域33に位置する識別子または指標は、さまざまなライン特性を識別するために読み取ることができ、それにより、サイクラ14は、何の溶液がどのくらい装填されるか等を確定することができる。
図75では、キャリッジ146は、左側に移動し、ライン30のキャップ31をカセット24上の対応するスパイクキャップ63と係合させている。この動きの間、駆動要素133は、キャップストリッパ149と係合し、同様にキャップストリッパ149を左側に移動させる。しかしながら、キャップストリッパ149は、後退位置に残る。
図76では、キャップストリッパ149は、前方に移動して、フォーク形状要素60をキャップ31に係合させ、それにより、スパイクキャップ63に結合されているキャップ
31に係合する。存在する場合、ロッカアーム61は、スパイクキャップ63に対する係合位置に移動することができる。次に、
図77に示すように、キャリッジ146およびキャップストリッパ149は、カセット24の対応するスパイク160からキャップ31およびスパイクキャップ63を引っ張るように、カセット24から離れるように右側に移動する。存在する場合、ロッカアーム61が、カセット24からスパイクキャップ63を引っ張るのに役立つことができるのは、この動きの間である。
図78では、キャップストリッパ149は、右側へのその移動を停止しており、一方、キャリッジ146は、カセット24から離れるように移動し続ける。これにより、ライン30のコネクタ端部30aがキャップ31から引っ張られ、フォーク形状要素60によってキャップストリッパ149にキャップ31およびスパイクキャップ63が取り付けられたままになる。
図79では、キャップストリッパ149は、後退し、再びカセット24に向かって移動するためにキャリッジ146用の経路をあける。
図80では、キャリッジ146は、カセット24に向かって移動して、ライン30のコネクタ端部30aをカセット24の対応するスパイク160に係合させる。キャリッジ146は、サイクラ動作中にこの位置にあり続けることができる。治療が完了すると、
図72〜
図80に示す移動を逆に行って、スパイク160および溶液ライン30に再びキャップを嵌め、サイクラ14からカセット24および/またはライン30を取り外すことができる。
【0259】
サイクラを使用して新たな治療を開始するいかなる試みもなされる前に、キャップストリッパ149からすべてのキャップ31が取り外されたことを確認するように、サイクラを構成することができる。実施形態では、治療の最後にまたは新たな治療に先立つ起動期間中のいずれかにおいて、サイクラに新たなカセットまたは溶液ラインセットが設置される前に、これを行うことができる。別法としてまたはさらに、新たなカセットおよび溶液ラインセットの設置の後に、ただし好ましくはいずれのカセットスパイクキャップも溶液ラインキャップと係合する前に、残留キャップ検出手順を行うことができる。
【0260】
キャップ検出システムは、サイクラに取り付けられるときに、設置されたカセットおよび1つまたは複数の溶液ラインのセットが存在する平面に対してキャップストリッパの位置を検出する、センサを備える。キャップストリッパの前方または後方(すなわち、平面に向かうかまたは平面から離れる)移動は、位置センサ(たとえば、ホールセンサ)を用いてサイクラコントローラによってモニタリングすることができる。ユーザによってキャップストリッパから溶液ラインキャップ/スパイクキャップが取り外されていない場合、その存在が、キャップストリッパの完全な展開に対応する所定位置への平面に向かうキャップストリッパの移動を妨げる。キャップストリッパにキャップが存在することにより、平面に向かうキャップストリッパの完全な展開が妨げられ、コントローラは、ユーザに対して警告を発することができる。サイクラに1つまたは複数の溶液ラインが取り付けられている場合、干渉は、キャップストリッパの残っている1つまたは複数のキャップと溶液ラインの1つまたは複数のキャップとの間である可能性がある。サイクラに溶液ラインが取り付けられていない場合、コントローラは、キャップストリッパに対して、以下の箇所まで、平面に対して平行な方向に横方向に移動するように命令することができ、すなわち、キャリッジの隆起した特徴(たとえば、壁5510aまたは5510b)が、平面に向かうキャップストリッパの命令された移動の間にキャップストリッパにおけるいずれかの残りのキャップとの干渉を提供した箇所である。
【0261】
実施形態では、キャップストリッパ149に対する位置センサは、ドア141が閉じられるときキャップストリッパのキャリッジに向かう前方の展開の程度を検出するように構成される。ドア141が閉じられた後(
図74)、かつキャリッジ146のいかなる横方向の移動の前にも、サイクラコントローラは、キャップストリッパ149の前方展開を開始する。キャップストリッパ149の位置は、1つまたは複数の変位センサによって、または適切な位置に照準が合わせられたカメラによってモニタリングすることができる。た
とえば、キャップストリッパ149に埋め込まれるかまたは取り付けられた磁石を検知するように、1つまたは複数のホール効果センサを構成することができる。先行する取付操作からの1つまたは複数のキャップ31がキャップストリッパ149内に残っている場合、残りのキャップ31は、キャリッジ146の新たに設置された溶液ラインおよびキャップ31に対して押され、キャップストリッパ149が完全展開位置から変位するのを防止する。新たなカセットまたは溶液ラインセットが設置されていない場合、サイクラコントローラは、所定位置まで横方向にキャリッジ146の移動を指示することができ、その所定位置により、キャリッジ146のうちの1つまたは複数の特徴が、キャップストリッパ149の残留キャップ31に対して干渉要素として作用するが、キャップストリッパ149は、残留キャップ31を保持していない場合に完全に展開することができる。いくつかの実施形態では、自動接続プロセスを継続することができるために、キャップストリッパ149は所定閾値位置を越えて移動する必要がある場合がある。所定閾値位置は、残りのキャップ31が存在する場合にキャップストリッパ149の展開が妨げられる箇所を十分に超えるように、選択することができる。
【0262】
ホール効果センサは、キャップストリッパ149から保護され、分離され、仕切られ、または流体的に隔離された位置に設置することができるが、依然としてキャップストリッパ149上の磁石を検知することができる。
【0263】
キャップストリッパ149が膨張式空気袋によって展開される場合、任意選択的に、残りのキャップ31があるか確認するときに、空気袋を最大圧力まで膨張させることができない。代わりに、膨張圧は、キャップストリッパ149をキャリッジ146に向かって変位させるために十分であればよく、キャリッジに設置された溶液ラインキャップと実際に係合するために必要な圧力未満である。この圧力はたとえば、所定圧力である可能性があり、または可変であって、キャップストリッパ149を移動させるために必要なレベルに達する可能性がある。こうした実施形態では、位置センサが移動を検知すると、コントローラは、空気袋膨張を中止するかまたは膨張圧を制限することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、空気袋膨張圧が制限される前に、キャップストリッパ149に対して所定量だけ展開するように要求する場合がある。
【0264】
膨張式空気袋以外の機構を用いてキャップストリッパ149を移動させる実施形態では、この治療前キャップ検出試験中に展開機構によって加えられる力を制限するように、他の装置を導入することができる。たとえば、歯車およびモータアセンブリにトルクもしくは圧力センサまたは歪みゲージを接続して、アセンブリによって加えられる力を制限するようにコントローラに対して同様の情報をフィードバックすることができる。
【0265】
限定されないが、光学センサ、接触センサ(たとえば、マイクロスイッチ)、距離測定センサ等を含む、他の位置センサを使用することができる。他の実施形態では、サイクラは、検知要素1112(たとえば、
図68を参照)を使用して、キャップストリッパ149内にキャップ31が存在するか否かを判断することができる。カメラを用いて、形状、色、不透明度、光吸収または反射測定等、キャップストリッパ149上のキャップ31の特性を特定することができる。
【0266】
図81は、キャップストリッパ149における残りのキャップ31の存在を検出するために使用することができる複数のステップの例を詳述するフローチャートを示す。
図81に示すステップは、キャップストリッパ149を展開し、その変位をモニタリングすることによって、残りのキャップ31の存在を検出する。さらに、
図81に示すフローチャートは、サイクラにセットが設置された後に、キャップストリッパ149内にキャップ31が存在するか確認する。カセットおよび溶液ラインが設置される前にかつ/または設置された後に、試験を行うことができる。
【0267】
図示するように、ステップ5070において、ユーザは、キャリッジ146内に溶液ラインを配置し、サイクラのドアを閉じることができる。ステップ5072において、サイクラは、サイクラのドアが閉じられたことを記録することができる。サイクラは、ドアが閉じられたと記録した後、ステップ5074において、キャップストリッパ149をキャリッジ146に向かって展開することができる。
【0268】
新たなカセットおよび溶液ラインセットの設置の前に、この手順を行うことができる。こうした実施形態では、ステップ5070および5072を行わない場合がある。代わりに、キャリッジ149を所定位置まで横方向に移動させるステップを行うことができる。所定位置は、キャリッジ149がキャップを支持するキャップストリッパ149に対する干渉要素として作用するように、選択することができる。
【0269】
そして、サイクラは、キャップストリッパ149が所定閾値位置を越えて変位することができるか否かを確認することができる。キャップストリッパ149が所定位置を越えて変位することができない場合、ステップ5076において、ユーザに対して、キャップストリッパ149内に残っているキャップ31の存在を通知することができる。キャップストリッパ149が所定閾値を越えて変位することができる場合、サイクラは、ステップ5078において、溶液ライン接続プロセスの後のステップに進むことができる。このステップでは、サイクラは、たとえば、カセットスパイクキャップをキャリッジ内に設置された溶液ラインキャップに接続することができる。
図82は、サイクラのプロセッサによってサイクラのユーザインタフェースに表示されるように生成することができる例としてのスクリーンショット5590を示す。
図82に示す例としての画面5590は、たとえば、
図81のステップ5076において表示することができる。図示するように、例としての画面5590は、ユーザに対し、サイクラのキャップストリッパに溶液ラインキャップが存在することを通知する。画面5590はまた、キャップストリッパから溶液ラインキャップをいかに取り外すかに関する指示も含む。実施形態例では、指示はテキストでの指示であるが、他の実施形態では、指示は、テキスト、グラフィックおよび/またはアニメーションの任意の組合せを含むことができる。
【0270】
指示は、ユーザインタフェースのユーザ選択可能ボタン5592に関連づけることができる複数のステップに分割される。たとえば、サイクラのユーザインタフェースは、タッチスクリーンであり得る。ユーザは、画面5590上の選択可能なボタン5592のうちの1つを、触る、タップする、ダブルタップする等を行い、関連するステップをいかに行うかに関するより詳細な指示を得ることができる。たとえば、サイクラのプロセッサは、ユーザがボタン5592のうちの1つと対話したことを検出すると、追加の詳細とともに画面5590上に表示するためのメッセージを生成することができ、または追加の情報を含む新たな画面を表示することができる。別法として、サイクラのプロセッサは、ユーザがボタン5592のうちの1つと対話したことを検出すると、追加の詳細を提供する別の画面を表示するための生成することができる。
【0271】
画面5590はまた、次へボタン5594も含む。ユーザは、次へボタン5594と対話して、サイクラのプロセッサに対して、残留キャップがキャップストリッパから取り外されたことを通知することができる。いくつかの実施形態では、サイクラは、キャップがあるか再検査して、それらがキャップストリッパから取り外されたことを確認することができる。任意選択的に、サイクラプロセッサが、サイクラのドアが開かれかつ閉じられたことを検出するまで、次へボタンを無効にすることができる。
【0272】
図83は、サイクラのプロセッサによってサイクラのユーザインタフェースに表示するために生成することができる例としての画面5600を示す。
図83に示す例としての画
面5600は、たとえば、ユーザが、
図82において「溶液ラインキャップを取外し廃棄する」と表示されたボタン5592と対話することに応答して、表示することができる。例としての画面5600は、ユーザがステップをいかに完了することができるかを記述するテキストを含む。さらに、例としての画面5600は、サイクラ14のグラフィック5602を含む。グラフィック5602は、ユーザに対して、1つまたは複数の溶液ラインキャップ31が位置する場所を示すことができる。いくつかの実施形態では、画面5600は、任意選択的に、溶液ラインキャップ31をいかに取り外すかをユーザにデモンストレーションするアニメーションを含むことができる。
【0273】
キャップ31およびスパイクキャップ63の取外しをさらに例示するために、
図84は、ライン30の接続の5つの異なる段階でのカセット24の断面図を示す。上部スパイク160では、
図74におけるように、スパイクキャップ63は依然としてスパイク160上の適所にあり、溶液ライン30は、カセット24から離れて配置されている。頂部から下方の第2スパイク160では、
図75および
図76におけるように、溶液ライン30およびキャップ31は、スパイクキャップ63の上で係合する。この時点で、キャップストリッパ149は、キャップ31およびスパイクキャップ63と係合することができる。頂部から第3スパイク160では、溶液ライン30、キャップ31およびスパイクキャップ63は、
図77におけるように、カセット24から離れるように移動している。この時点で、キャップストリッパ149は、右側への移動を停止することができる。頂部から第4スパイク160では、溶液ライン30は、
図78におけるように、右側に移動を続け、ライン30からキャップ31を取り外す。キャップ31および63が後退すると、溶液ライン30は、
図80におけるように、左側に移動し、ライン30のコネクタ端部30aをスパイク160に流体接続する。
【0274】
キャリッジ146およびキャップストリッパ149がそれらの期待される位置まで完全に移動することを確かめるのに役立つように、さまざまなセンサを使用することができる。実施形態では、キャリッジ駆動アセンブリ132に、6つのホール効果センサ(図示せず)、すなわち、キャリッジ146用の4つおよびキャップストリッパ149用の2つを備えることができる。キャップストリッパ149が完全に後退したとき検出するように、第1キャップストリッパセンサを配置することができる。キャップストリッパ149が完全に拡張したときを検出するように、第2キャップストリッパセンサを配置されることができる。キャリッジ146が「ホーム」位置にある、すなわちカセット24およびライン30の装填を可能にする位置にあるときを検出するように、第1キャリッジセンサを配置することができる。キャリッジ146がスパイクキャップ63と係合する位置にあるときを検出するように、第2キャリッジセンサを配置することができる。ライン30からキャップ31を取り外す位置にキャリッジ146が到達したときを検出するように、第3キャリッジセンサを配置することができる。ライン30のコネクタ端部30aをカセット24の対応するスパイク160に係合させる位置にキャリッジ146が移動したときを検出するように、第4キャリッジセンサを配置することができる。他の実施形態では、単一のセンサを用いて、上述したキャリッジ位置の2つ以上を検出することができる。キャップストリッパおよびキャリッジセンサは、電子制御基板(「自動接続基板」)に入力信号を提供することができ、電子制御基板は、ユーザインタフェース144を介してユーザに所定の確認またはエラーコードを通信することができる。
【0275】
図69は、キャリッジ駆動アセンブリ132の代替実施形態の斜視図を示す。
図58に示す実施形態におけるキャリッジ駆動アセンブリ132は、駆動要素133、ロッド134、タブ135および窓136のみを含んでいた。
図69の実施形態では、キャリッジ駆動アセンブリ132は、駆動要素133、ロッド134、タブ135および窓136を含むだけでなく、縦列の自動IDビューボックス1116をさらに含むことができる。ビューボックス1116は、窓136に隣接して直接的に配置することができる。また、ビュ
ーボックス1116は、キャリッジ146がガイド130に沿って右または左のいずれかに移動するとき、キャリッジ146に位置する5つのスロット1086の各々の水平軸が、対応するビューボックス1116の中心を通るように配置し、かつそのような形状にすることができる。ビューボックス1116は、カメラ基板1106に取り付けられた自動IDカメラ1104が、溶液ラインをスパイクキャップ63に係合させる前に、溶液ラインキャップ31がライン30上に配置されているか否かを検出するのを可能にすることができる。別法として、いくつかの実施形態では、個々のビューボックスは不要である場合がある。代わりに、窓136を拡大して、単一の窓136を通してキャップ31を見ることができるようすることができる。溶液ライン30のキャップ31があるか確認することにより、ユーザがキャップ31を早期に取り外していないという確認を可能にすることができる。キャップ31の存在または不在が確定されると、カメラ1104は、電子制御基板(本明細書では自動接続基板とも呼ぶ)に、対応する入力信号を提供することができ、電子制御基板は、ユーザインタフェース144を介してユーザに、ライン30におけるキャップ31の存在に関する所定の確認またはエラーコードを通信することができる。
【0276】
本開示の別の態様によれば、キャリッジ駆動アセンブリ132は、自動接続基板1118を含むことができる。キャリッジ駆動アセンブリ132の頂部に自動接続基板1118を取り付けることができ、自動接続基板1118は、アセンブリ132の全長にわたって延在することができる。この例示的な実施形態では、自動接続基板1118にLED1120もまた実装することができる。LED1120は、フォーク形状要素60のすぐ上の固定位置に位置することができる。また、LED1120は、LED1120から放出される光がストリッパ要素1491にわたって下方に進むように向けることができる。本開示の別の態様によれば、キャリッジ駆動アセンブリ132は、流体基板1122もまた含むことができる。キャリッジ駆動アセンブリ132の底部に流体基板1122を取り付けることができ、流体基板1122もまた、アセンブリ132の長さにわたって延在することができる。この例示的な実施形態では、流体基板1122の、自動接続基板1118に実装されるLED1120のすぐ下の位置に、受光器1124(図示せず)を実装することができる。したがって、LED1120は、フォーク形状要素60にわたって光を放出することができ、光が受光器1124によって検出された場合、ストリッパ要素1491には溶液ラインキャップ31は残っていないが、光が受光器1124に向かう途中で遮られた場合、ストリッパ要素1491にキャップ31が残っている可能性がある。このLED1120および受光器1124の組合せにより、ユーザまたはサイクラ14によってストリッパ要素1491に不注意に残されている可能性があるキャップ31の検出が可能になる。本開示の態様によれば、流体基板1122は、キャリッジ駆動アセンブリ132の内部に存在する可能性があり、サイクラ14を故障させる可能性がある、湿度、湿気または他の液体を検出することも可能である。
【0277】
キャリッジ146がスパイクキャップ63と係合する力を、いくつのライン30が設置されているかに応じて調整する際に、利点があり得る。カセット24への接続を完了するために必要な力は、スパイクキャップ63に結合しなければならないキャップ31の数に応じて増大する。指標領域33でライン指標からの情報を検出し読み取る検出装置を用いて、駆動要素133に加えられる力を調整するのに必要なデータを提供することも可能である。力は、たとえば、第1空気袋137、またはモータ/ボールねじ等のリニアアクチュエータを含む、複数の装置によって生成することができる。ライン検出センサから入力を受け取り、適切な制御信号をリニアアクチュエータのモータ、または空気袋137の膨張を制御する空気圧弁のいずれかに送るように、電子制御基板(たとえば、自動接続基板等)をプログラムされることができる。コントローラ16は、駆動要素133の移動の程度または速度を、たとえば、リニアアクチュエータのモータに印加される電圧を調整することにより、または、空気袋137の膨張を制御する空気圧弁を調整することにより、制御することができる。
【0278】
本開示の態様によれば、キャリッジ駆動アセンブリ132が、膜ポートをスパイク160と係合させるために、キャリッジ146上に少なくとも550N(124lbf)の力を発生させることができることが必要な場合がある。この力は、カセット24の上に突き出る膜ポートの搬送方向において測定されるべきである。スパイク160上に滅菌PVC膜ポートを突き刺すために必要な最大力は、110Nであり得る。さらに、スパイク160上に滅菌JPOC膜ポートを突き刺すために必要な最大力は、110Nであり得る。これらの力要件により、キャリッジ駆動アセンブリ132が5つのJPOCポートを突き刺すことができることが確実になる。代替実施形態では、現挿入力に基づいて、PVCポートの力要件をさらに低下させることができる。
【0279】
ライン30上のキャップ31がカセット24のスパイク160上のキャップ63とともに取り外される本発明の態様は、動作の単純さに加えて、他の利点を提供することができる。たとえば、スパイクキャップ63がライン30上のキャップ31とのそれらの係合によって取り外されるため、キャリッジ146上の特定のスロットにライン30が取り付けられていない場合、その位置におけるスパイクキャップ63は取り外されない。たとえば、カセット24は5つのスパイク160および対応するスパイクキャップ63を含むが、サイクラ14は、サイクラ14に関連づけられた4本以下(さらには0本)のライン30で動作することができる。ライン30が存在しないキャリッジ146上のそれらのスロットには、キャップ31、したがって、その位置でスパイクキャップ63が取り外すことができる機構はない。したがって、所定のスパイク160にいずれのライン30も接続されない場合、そのスパイク160上のキャップ63は、カセット24の使用中に適所に残ることができる。これは、スパイク160における漏れおよび/またはスパイク160における汚染を防止するのに役立つことができる。
【0280】
図84におけるカセット24は、たとえば、
図3、
図4、および
図6に示す実施形態に示すものとは異なるいくつかの特徴を含む。
図3、
図4、および
図6の実施形態では、ヒータバッグポート150、排液ラインポート152および患者ラインポート154は、中心チューブ156およびスカート158を有するように構成される。しかしながら、上述しかつ
図84に示すように、ポート150、152、154は、中心チューブ156のみを含み、スカート158は含まない可能性がある。これもまた
図85に示す。
図85に示す実施形態は、左側ポンプチャンバ181の外面に形成された隆起リブを含む。隆起リブは、右側ポンプチャンバ181にも設けることができ、カセット取付位置145におけるドア141内の機構とのポンプチャンバ181の外壁のさらなる接触点に提供することができ、ドア141が閉鎖されたときに、制御面148に対してカセットを押圧する。隆起リブは必須ではなく、代わりに、ポンプチャンバ181は、
図85の右側ポンプチャンバ181に対して示すように、リブまたは他の特徴を有していない場合がある。同様に、
図3、
図4および
図6の実施形態におけるスパイク160は、スパイク160の基部にスカートまたは同様の特徴を含まないが、
図84における実施形態は、スカート160aを含む。これも
図85に示す。スカート160aとスパイク160との間の凹部のスパイクキャップ63の端部を受け入れるように、スカート160aを配置することができ、それは、スパイク160とスパイクキャップ63との間のシールを形成するのに役立つ。
【0281】
図84に示す別の本発明の特徴は、スパイク160を通るスパイク163の先端チップと内腔159との配置に関する。この態様では、スパイク160の先端チップは、スパイク160の幾何学中心に概して沿って延びるスパイク160の長手方向軸にまたはその近くに配置される。長手方向軸にまたはその近くにスパイク160の先端チップを配置することは、スパイク160を対応する溶液ライン30と係合させるときの位置決め公差を緩和するのに役立ち、ライン30のコネクタ端部30aにおける隔壁または膜30bをスパイク160が穿刺するのに役立つことができる。その結果、スパイク160の内腔159
は、たとえば、
図84に示しかつ
図86のスパイク160の端面図に示すように、スパイク160の底部の近くで、スパイク160の長手方向軸から概してずれて配置される。また、スパイク160の先端部は、スパイク160のより基端側の部分と比較して、幾分か直径が縮小している(この実施形態では、スパイク160は、実際には、本体18からスパイク160の長さの約2/3において直径の段階的変化がある)。先端部におけるスパイク160の直径の縮小は、スパイク160とライン30の内壁との間の隙間を提供することができ、したがって、隔壁30bに対して、スパイク160によって穴があけられるときに、スパイク160とライン30との間に配置されるように折り返すための空間が与えられる。(たとえば、
図87に示す)スパイク160上の段状の特徴160bは、隔壁30bがライン30の内壁に接続される位置においてライン30と係合するように配置することも可能であり、したがって、ライン30とスパイク160との間に形成されるシールが強化される。
【0282】
別の実施形態では、
図87に示すように、スパイク160からスパイクキャップ63を取り外すために必要な力を低減させるか、または、溶液ライン30のコネクタ端部30aに突き刺すために必要な力を低減させるように、スパイク160の基部160cの長さを短縮することができる。基部160cを短縮することにより、スパイク160とそのキャップ63との間、またはスパイク160とコネクタ端部30aの内面との間の摩擦接触の面積が低減する。さらに、スパイク160の基部におけるスカート160aの代わりに、個々のポスト160dを用いることができる。ポスト160dにより、スパイク160上にスパイクキャップ63を適切に取り付けることができるとともに、透析液送達セット12のパッケージの前または後の滅菌プロセス中にスパイク160の周囲の滅菌流体または気体のより完全な循環もまた可能にする。
【0283】
図87に示す実施形態をより完全に利用するために、
図88に示すスパイクキャップ64を使用することができる。スパイクキャップ64の基部上のスカート65が、
図87に示すスパイク160の基部のポスト160dの上にぴったりと嵌まるように構成される。さらに、スパイク160の基部の内周内の断続的なリブ66および67により、スパイクキャップ64とスパイク160の基部160cとの間がぴったりと嵌まることができるとともに、減菌気体または流体が、キャップが嵌められたスパイク160の基部にわたってより遠くに浸透することも可能になる。
図89に示すように、スパイクキャップ64の断面図では、3個1セットの内側リブ66,67,68は、スパイクキャップ64とスパイク160の基部160cとの間の滑り嵌めを提供するように使用されることが可能である。実施形態では、リブ66およびリブ67は、それらの周縁に沿って中断部または間隙66aおよび67aを有し、カセットの外部の気体または流体がスパイク160の基部160cの上に流れるのを可能にする。スパイクキャップ64とスパイク160の基部160cとの間の封止係合を形成するために、第3リブ68が、円周方向に手が加えられておらず、スパイク160の外面の残りの部分から基部160cを封止する。他の実施形態では、スパイクキャップ64内のリブに対して、円周方向にではなく長手方向に、または、スパイクキャップ64とスパイク160との間がぴったりはまるようにする他の任意の向きで、方向づけることができるとともに、リブはまた、外部気体または流体がスパイク160の基部160cの外側に接触することができるようにする。図示する実施形態では、たとえば、カセットを酸化エチレンガスに暴露することによって、カセット、スパイクキャップ、およびスパイク160の基部160cの大部分の外面を減菌することができる。段状の特徴160bおよびスパイク160の先端部の直径は、スパイクキャップ64の重なる部分の内径より小さいため、カセットの内部からスパイク内腔に入るいかなる気体または流体も、封止リブ68までスパイク160の外面に達することができる。したがって、カセットの流体通路に入る酸化エチレン等のいかなる減菌ガスも、スパイク160の外表面の残りの部分に達することができる。実施形態では、ガスは、たとえば、患者ライン34または排液ライン28の端部にいて、通気キャップを通してカセットに入ることができ
る。
【0284】
スパイクキャップ34は、スパイク160の端部と接触する3つ以上の中心合せリブ64Dを含む。リブ64Dは、スパイクキャップ34の主アクセスに沿って向けられ、スパイクキャップ34の閉鎖端部の近くに位置する。好ましくは、キャップ/スパイクの向きを拘束しすぎることなく、スパイクにおいてキャップの閉鎖端部を中心合せするために少なくとも3つのリブ63Dがある。スパイクキャップ64は、溶液キャップ31の孔31bへのスパイクキャップ34の貫通を容易にするように鈍いチップを備えたテーパ状端部を含む。テーパ状端部は、孔31bと位置がずれた場合にスパイクキャップ34を案内する。鈍いチップは、孔31bの内縁を捕らえ溶液キャップ材料内に食い込む可能性がある鋭利なチップとは異なり、溶液キャップ31の破損を回避する。対照的に、鈍いチップは、孔31bの縁部を越えて摺動することができる。カセット24およびライン30がサイクラ14に装填されると、サイクラ14は、流体を溶液ライン30からヒータバッグ22にかつ患者まで移動させるようにカセット24の動作を制御しなければならない。
図90は、カセット24内の流体圧送および流路をもたらすように(たとえば、
図6に示す)カセット24のポンプチャンバ側と相互作用するサイクラ14の制御面148の平面図を示す。停止しているとき、一種のガスケットとして記載することができ、シート状のシリコーンゴムを含むことができる制御面148は、概して平坦であり得る。弁制御領域1481は、たとえば、シート表面の中または上の刻み目、溝、リブまたは他の特徴によって制御面148に画定される(または画定されない)場合があり、シートの平面に対して概して横切る方向に移動可能であるように配置され得る。内側/外側に移動することによって、弁制御領域1481は、カセット24のそれぞれの弁ポート184、186、190および192を開閉し、したがってカセット24内の流れを制御するように、カセット24上の膜15の関連する部分を移動させることができる。2つのより大きな領域、すなわちポンプ制御領域1482は、ポンプチャンバ181と協働する膜15の関連する形状部分151を移動させるように、同様に移動可能であり得る。膜15の成形部分151のように、ポンプ制御領域1482は、制御領域1482がポンプチャンバ181内に拡張される際に、ポンプチャンバ181の形状に対応するような形状とすることができる。このように、ポンプ制御領域1482における制御シート148の部分は、ポンプ動作中に必ずしも引き伸ばされる必要がなく、または他の方法で弾性変形する必要はない。
【0285】
領域1481および1482の各々は、関連する真空または導出ポート1483を有することができ、それを使用して、たとえば、カセット24がサイクラ14内に装填され、ドア141が閉じられた後、カセット24の膜15とサイクラ14の制御面148との間に存在する可能性があるいかなる空気または他の流体のすべてまたは実質的にすべてをも取り除くことができる。これは、制御領域1481および1482との膜15の密な接触を確実にするのに役立ち、ポンプ動作および/またはさまざまな弁ポートの開/閉状態によって所望の体積の送達を制御するのに役立つことができる。真空ポート1482は、制御面148がカセット24の壁または他の比較的剛性のある特徴と接触するように王タスされない位置に形成される。たとえば、本発明の一態様によれば、カセットのポンプチャンバの一方または両方は、ポンプチャンバに隣接して形成された真空通気間隙領域を含むことができる。
図3および
図6に示すようなこの例示的な実施形態では、ベース部材18は、ポンプチャンバ181を形成する楕円形状のくぼみに隣接しかつその外側の真空通気ポート間隙または拡張機構182(たとえば、ポンプチャンバに流体接続される凹状領域)を含むことができ、それにより、ポンプ制御領域1482のための真空通気ポート1483が、妨げなしに、膜15と制御面148との間から(たとえば、膜15の破裂によって)いかなる空気または流体も取り除くことができる。拡張機構は、ポンプチャンバ181の外周部内に位置することも可能である。しかしながら、ポンプチャンバ181の外周部の外側に通気ポート機構182を配置するにより、液体を圧送するためにポンプチャンバ容積のより多くを確保することができ、たとえば、ポンプチャンバ181の最大設置面
積を、透析液を圧送するために使用することができる。好ましくは、拡張機構182は、ポンプチャンバ181に対して垂直方向に下方の位置に配置され、それにより、膜15と制御面148との間で漏れるいかなる液体も、可能な限り早急に真空ポート1483を通して引き出される。同様に、弁1481に関連づけられた真空ポート1483は、好ましくは、弁1481に対して垂直方向に下方の位置に配置される。
【0286】
図91は、制御面148の基部要素1480とその弁およびポンプ制御領域1481,1482との間の丸みのある遷移部を有するように、制御面148を構成しまたはモールディングすることができることを示す。基部要素1480から弁制御領域1481およびポンプ制御領域1482に遷移するように小さい半径であるように、接合部1491および1492をそれぞれモールディングすることができる。丸みのあるまたは滑らかな遷移部は、制御面148を構成する材料の早期の疲労および破損を防止するのに役立ち、その寿命を延ばすことができる。この実施形態では、真空ポート1483からポンプ制御領域1482および弁制御領域1481に至るチャネル1484は、遷移部の特徴に対応するように幾分か長くする必要がある可能性がある。
【0287】
カセット24の反対側の制御面148の側、たとえば、制御面148を形成するゴム製シートの背面において、空気圧および/または容積を制御することによって、制御領域1481および1482を移動させることができる。たとえば、
図92に示すように、制御面148の背面に、各制御領域1481、1482に関連して配置された制御チャンバまたはくぼみ171Aと、各制御領域1482に関連して配置されかつ互いから隔離された(または、望ましい場合は少なくとも互いから独立して制御することができる)制御チャンバまたはくぼみ171Bとを含む、嵌合または圧力送達ブロック170を接するように配置することができる。嵌合または圧力送達ブロック170の表面は、カセット24が、嵌合ブロック170が背面に接する制御面148に動作的に関連するように押圧されるとき、カセット24と嵌合インタフェースを形成する。したがって、嵌合ブロック170の制御チャンバまたはくぼみは、カセット24の相補的な弁またはポインピングチャンバに結合され、嵌合ブロック170に隣接する制御面148の制御領域1481および1482、ならびにカセット24に隣接する膜15の関連する領域(成形部分151等)を挟装する。空気または他の制御流体は、領域1481、1482に対する嵌合ブロック170の制御チャンバまたはくぼみ171A、171Bを出入りして移動することができ、それにより、要求に応じて制御領域1481および1482を移動させて、カセット24の弁ポートを開閉し、かつ/または、ポンプチャンバ181におけるポンプ作用を行う。
図92に示す1つの例示的な実施形態では、制御チャンバ171は、弁制御領域1481の各々の背面に接する円筒形状領域として配置され得る。制御チャンバまたはくぼみ171Bは、ポンプ制御領域1482の背面に接する楕円体、卵形体または半球体の空隙またはくぼみを含むことができる。各制御チャンバ171Aに対して、流体制御ポート173Aを設けることができ、それにより、サイクラ14は、弁制御チャンバ1481の各々における流体の体積および/または流体の圧力を制御することができる。各制御チャンバ171Bに対して、流体制御ポート173Cを設けることができ、それにより、サイクラ14は、容積制御チャンバ1482の各々における流体の体積および/または流体の圧力を制御することができる。
たとえば、嵌合ブロック170は、さまざまなポート、チャネル、開口部、空隙、および/または制御チャンバ171と連通して好適な空気圧/真空が制御チャンバ171に加えられるのを可能にする他の特徴を含む、マニホールド172と嵌合することができる。図示しないが、空気圧/真空の制御は、制御可能な弁、ポンプ、圧力センサ、アキュムレータ等を使用することにより、任意の好適な方法で行なうことができる。当然ながら、制御領域1481、1482は、重力ベースのシステム、液圧系統および/または機械的システム(リニアモータによる等)により、または、空気圧系統、液圧系統、重力ベースのシステムおよび機械的システムを含むシステムの組合せによる等、他の方法で、移動させる
ことができることが理解されるべきである。
【0288】
図93は、ポンピングカセットを動作させる流体流制御装置で使用され、かつ圧力分散マニホールド172およびサイクラ14の嵌合ブロック170として使用されるのに好適な、一体型圧力分散モジュールまたはアセンブリ2700の組立分解図を示す。
図94は、空気圧マニホールドまたはブロック、供給圧力用ポート、空気圧制御弁、圧力センサ、圧力送達または嵌合ブロック、ならびに、ポンピングカセット上のポンプおよび弁を作動させる可撓性膜を備える領域を含む制御面またはアクチュエータを備える、一体型モジュール2700の図を示す。一体型モジュール2700はまた、ポンピングカセットのポンピングチャンバ内に存在する流体の体積を求めるFMS容積測定プロセスのために、空気圧マニホールド内に基準チャンバも含むことができる。一体型モジュールはまた、真空ポート、ならびに、アクチュエータとポンピングカセットの可撓性ポンプおよび弁膜との間のインタフェースから流体トラップおよび液体検出システムまでの一組の通路またはチャネルも備えることができる。いくつかの実施形態では、空気圧マニホールドは、単一ブロックとして形成することができる。他の実施形態では、空気圧マニホールドは、互いに嵌合された2つ以上のマニホールドブロックから、ガスケットがマニホールドブロック間に配置されて形成することができる。一体型モジュール2700は、流体流制御装置において比較的小さい空間を占有し、マニホールドポートをポンピングカセットに嵌合する圧力送達モジュールまたはブロックの対応するポートに接続するチューブまたは可撓性導管の使用をなくす。他のあり得る利点もあるが特に、一体型モジュール2700は、腹膜透析サイクラの空気圧作動アセンブリのサイズおよび組立コストを低減させ、その結果、サイクラを小型にしかつ安価にすることができる。さらに、圧力分散マニホールドブロックの圧力または真空分散ポートと嵌合圧力送達ブロックの対応する圧力または真空送達ポートとの間の距離が短いことにより、ポートを接続する導管の剛性と合わせて、取り付けられたポンピングカセットの応答性とカセットポンプ容積測定プロセスの正確さとを向上させることができる。腹膜透析サイクラ14で使用される場合、実施形態では、金属圧力送達ブロックに直接嵌合する金属圧力分散マニホールドを備える一体型モジュールはまた、制御弁171Bとサイクラ14の基準チャンバ174との間のいかなる温度差も低減させることができ、それにより、ポンプ容積測定プロセスの正確さを向上させることができる。
【0289】
図93に、一体型モジュール2700の組立分解図を提示する。嵌合ブロックまたは圧力送達ブロックに取り付けられたアクチュエータ面は、ガスケットまたは制御面148に類似しているかまたは等価であり、ガスケットまたは制御面148は、前後に移動して、ポンプカセット24の膜15を押すかまたは引き寄せることにより、流体を圧送しかつ/または弁を開閉するように配置された可撓性領域を含む。サイクラ14に関して、制御面148は、制御領域1481、1482の後方の制御容積171A、171Bに供給される正および負の空気圧によって駆動される。制御面148は、リップ2742によって嵌合ブロック170の正面の隆起面2744の上にぴったりと嵌まることにより、圧力送達ブロックまたは嵌合ブロック170に取り付けられる。嵌合ブロック170は、1つまたは複数の対応するポンプ制御面1482の卵形湾曲形状と整列しかつそれを支持して、ポンプ制御チャンバを形成する、1つまたは複数の表面くぼみ2746を含むことができる。表面くぼみがあってもなくても、同様の構成は、ポンピングカセットの1つまたは複数の弁を制御するために対応する制御面1481と整列するように弁制御領域171Aを形成する際に含めることができる。嵌合ブロック170は、制御流体または気体のポート173Cから背面全体ポンプ制御面1482までの流れを容易にするように、ポンプ制御面1482の後方の嵌合ブロック170のくぼみ2746の表面の溝2748をさらに含むことができる。別法として、溝2748を有するのではなく、くぼみ2746に粗化面または接線方向に多孔性の面を形成することができる。
【0290】
嵌合ブロック170は、圧力分散マニホールド172を制御面148に接続し、制御面
148のさまざまな制御領域に圧力または真空を送達する。嵌合ブロック170はまた、弁制御領域1481およびポンプ制御領域1482に圧力および真空を供給し、真空ポート1483およびポンプ制御容積171Bから圧力センサへの接続部に真空を供給する空気圧導管を提供するという意味で、圧力送達ブロックと呼ぶこともできる。ポート173Aは、制御容積171Aを圧力分散マニホールド172に接続する。ポート173Cは、ポンプ制御容積171Bを圧力分散マニホールド172に接続する。真空ポート1483は、ポート173Bを介して圧力分散マニホールド172に接続される。一実施形態では、ポート173Bは、制御面148を通過するように圧力分散ブロック170の表面の上方に延在して、制御面148をポート173B上に引っ張って流れを遮ることなく、ポート1483において真空を提供する。
【0291】
圧力送達ブロック170は、圧力分散マニホールド172の表面に取り付けられる。ポート173A、173B、173Cは、弁ポート2714に接続する、圧力分散マニホールド172の空気圧回路と整列する。一例では、圧力送達ブロック170は、圧力分散マニホールド172と嵌合し、それらの間に正面平形ガスケット2703が締め付けられる。ブロック170およびマニホールド172は、機械的に合わせて保持され、それは、実施形態では、ボルト2736または他のタイプの締結具を使用することによる。別の例では、平形ガスケット2703ではなく、圧力送達ブロック170または圧力分散マニホールド172のいずれかに、高コンプライアンス要素が配置されるかまたはモールドされる。別法として、接着剤、両面テープ、摩擦溶接、レーザ溶接または他の接合方法によって、圧力分散マニホールド172に圧力送達ブロック170を接合することができる。ブロックおよびマニホールド172は、金属またはプラスチックから形成することができ、材料に応じて接合方法は変わる。
【0292】
圧力分散マニホールド172は、空気圧弁2710用のポート、基準チャンバ174、流体トラップ1722および空気圧回路、または圧力リザーバ、弁の間の空気圧接続を提供する一体化モジュール2700接続部を含み、複数のカートリッジ弁2710を受け入れるポート2714を含む。カートリッジ弁2710は、限定されないが、弁制御容積171Aへの流れを制御するバイナリ弁2660と、ポンプ制御容積171Bへの流れを制御するバイナリ弁X1A、X1B、X2、X3と、空気袋2630、2640、2650および圧力リザーバ2610、2620への流れを制御するバイナリ弁2661〜2667とを含む。カートリッジ弁2710は、弁ポート2714内に押し込まれ、回路基板2712を介してハードウェアインタフェース310に電気的に接続される。
【0293】
圧力分散マニホールド172における空気圧回路は、正面および背面の溝またはスロット1721と、一方の面の溝1721を弁ポート2714、流体トラップ1722に、かつ対向する面の溝およびポートに接続するおよそ垂直な孔との組合せによって形成することができる。いくつかの溝1721は、基準チャンバ174に直接接続することができる。単一の垂直孔が、溝1721を、間隔が密でありかつ互い違いにされている複数の弁ポート174に接続することができる。溝1721が互いから、一例では、
図93に示すように正面平形ガスケット2703によって隔離されるとき、封止された空気圧導管が形成される。
【0294】
流体トラップ1722内の液体の存在は、一対の導電性プローブ2732によって検出することができる。導電性プローブ2732は、圧力分散マニホールド172の流体トラップ1722に入る前に、背面ガスケット2704、背面プレート2730および孔2750を通って摺動する。
【0295】
背面プレート2730は、基準容積174、圧力分散マニホールド172の背面の溝1721を封止し、圧力センサ2740用のポートならびに圧力および真空ライン2734
用のポートと、雰囲気2732への通気孔とを提供する。一例では、圧力センサは、単一基板2740にはんだ付けされ、かつ背面プレート2730の背面ガスケット2704に対してまとめて押圧される、ICチップであり得る。一例では、ボルト2736が、背面プレート2730、圧力分散マニホールド172および圧力送達ブロック170を締め付け、それらの間にガスケット2703、2702がある。別の例では、上述したように、圧力送達マニホールド172に背面プレート2730を接合することができる。
図95に、組み立てられた一体型モジュール2700を提示する。
【0296】
図95は、一体型マニホールド2700内の空気圧回路とマニホールドの外側の空気圧要素との概略図を提示する。ポンプ2600は、真空および圧力を生成する。ポンプ2600は、3方弁2664および2665を介して、通気孔2680と負圧または真空リザーバ2610および正圧リザーバ2620に接続されている。正圧リザーバ2620および負圧リザーバ2610内の圧力は、圧力センサ2678、2676によってそれぞれ測定される。ハードウェアインタフェース310は、ポンプ2600の速度および3方弁2664、2665、2666の位置を制御して、各リザーバ内の圧力を制御する。自動接続ストリッパ要素空気袋2630は、3方弁2661を介して、正圧ライン2622または負圧もしくは真空ライン2612のいずれかに接続されている。自動化コンピュータ300は、ストリッパ要素1461の位置を制御するように、弁2661の位置を命令する。オクルーダ空気袋2640およびピストン空気袋2650は、3方弁2662および2663を介して圧力ライン2622または通気孔2680のいずれかに接続されている。自動化コンピュータ300は、カセット24を制御面148に対して確実に係合させるようにドア141が閉じられた後に、ピストン空気袋2650を圧力ライン2622に接続するように、弁2663に命令する。オクルーダ空気袋2640は、弁2662および制限部2682を介して圧力ライン2622に接続されている。オクルーダ空気袋2640は、弁2662を介して通気孔2680に接続されている。オリフィス2682は、有利に、圧力ライン2622内の圧力を維持するために、オクルーダ147を後退させるオクルーダ空気袋2640の充填を遅らせる。圧力ライン2622内の高圧は、さまざまな弁制御面171Aおよびピストン空気袋2650がカセット24に対して駆動された状態で維持し、オクルーダ147が開放する際、患者との間の流れを阻止する。逆に、オクルーダ空気袋2640から通気孔2680へn接続は制限されず、そのため、オクルーダ147は迅速に閉鎖することができる。
【0297】
弁制御面1481は、弁制御容積171A内の圧力によって制御され、弁制御容積171A内の圧力は、3方弁2660の位置によって制御される。弁2660は、ハードウェアインタフェース310に送られる自動化コンピュータ300からのコマンドを介して個々に制御することができる。ポンプ制御容積171B内の圧送圧力を制御する弁は、2方弁X1A、X1Bによって制御される。弁X1A、X1Bは、一例では、自動化コンピュータ300によって命令される圧力に達するように、ハードウェアインタフェース310によって制御することができる。各ポンプ制御チャンバ171B内の圧力は、センサ2672によって測定される。基準チャンバ内の圧力は、センサ2670によって測定される。2方弁X2、X3は、それぞれ、基準チャンバ174をポンプ制御チャンバ171Bおよび通気孔2680に接続する。
【0298】
流体トラップ1722は、本明細書の別の場所で説明したように、動作中に真空ライン2612に対するものある。流体トラップ1722は、いくつかのラインによって、圧力送達ブロック170のポートに接続される。流体トラップ1722内の圧力は、背面プレート2730に取り付けられている圧力センサ2674によってモニタリングされる。
【0299】
治療の最後に、ドアを開く前または開いている間に、制御面148から膜15を分離するために、真空ポート1483を採用することができる。負圧源によって真空ポート14
83に提供される真空は、治療中に制御面148に対して膜15を封止係合させる。場合によっては、真空の印加が断続的である場合であっても、ドア141が開放位置に自由に回転するのを防止して、カセット膜15から制御面を分離するために、実質的な量の力が必要である可能性がある。したがって、実施形態では、圧力分散モジュール2700は、正圧源と真空ポート1483との間の弁付きチャネルを提供するように構成される。真空ポート1483において正圧を供給することは、制御面148から膜15を分離するのに役立つことができ、それにより、カセット24が制御面148からより容易に分離することができ、ドア141を自由に開くことができる。真空ポート1483に対する正圧を提供するように、自動化コンピュータ300によってサイクラにおける空気圧弁を制御することができる。マニホールド172は、この目的に対して専用の別個の弁付きチャネルを含むことができ、または別法として、特定の順序で操作される、既存のチャネル構成および弁を採用することができる。
【0300】
一例では、真空ポート1483を正圧リザーバ2620に一時的に接続することにより、真空ポート1483に正圧を供給することができる。真空ポート1483は、通常、治療中、マニホールド172における共通の流体接続チャンバまたは流体トラップ1722を介して真空リザーバ2610に接続される。一例では、コントローラまたは自動化コンピュータは、正圧リザーバと容積制御チャンバ171Bとの間の弁X1Bと、負圧リザーバと同じ容積制御チャンバ171Bとの間の弁X1Aとを同時に開放することができ、それにより、流体トラップ1722および真空ポート1483内の空気が加圧される。加圧空気は、真空ポート1483を通って膜15と制御面148との間に流れ、膜と制御面との間のいかなる真空結合も破断する。しかしながら、例示するマニホールドでは、キャップストリッパ149のストリッパ要素1491は、共通の流体収集チャンバ1722流体に正圧が供給されている間に拡張することができ、それは、ストリッパ空気袋2630は真空供給ライン2612に接続されているためである。この例では、後続するステップにおいて、流体トラップ1722を、新たに加圧される真空ラインから弁によってオフに調整することができ、正圧リザーバおよび真空リザーバを容積制御チャンバ171Bに接続する2つの弁X1A、X1Bを、閉鎖することができる。そして、真空ポンプ2600は、真空リザーバ2610および真空供給ライン2612内の圧力を低減させるように操作され、それにより、ストリッパ要素1491を引っ込めることができる。そして、制御面148からカセット24を取り外し、ストリッパ要素1491を後退させた後に、ドア141を開くことができる。
【0301】
本開示の態様によれば、膜15における漏れを検出するために、真空ポート1483を使用することができ、真空ポート1483に接続された導管またはチャンバ内の液体センサが、膜15が穿孔されているか、または他の方法で膜15と制御面148との間に液体が導入される場合に、液体を検出することができる。たとえば、真空ポート1483は、嵌合ブロック170における相補的な真空ポート173Bと整列し、それに封止して関連づけられることが可能であり、それにより、相補的な真空ポート173Bを、マニホールド172の共通の流体収集チャンバ1722に通じる流体通路1721と封止して関連づけることができる。流体収集チャンバ1722は入口を含むことができ、そこを通して、制御面148のすべての真空ポート1483に真空をかけ分散させることができる。流体収集チャンバ1722に真空をかけることにより、真空ポート173Bおよび1483の各々から流体を引き出すことができ、したがって、さまざまな制御領域において膜15と制御面148との間の任意の空間から流体が除去される。しかしながら、領域のうちの1つまたは複数に液体が存在する場合、関連する真空ポート1483は、真空ポート173B内にかつ、流体収集チャンバ1722に通じるライン1721内に液体を引き込むことができる。いかなるこうした液体も、流体収集チャンバ1722に集まり、1つまたは複数の好適なセンサ、たとえば、液体の存在を示すチャンバ1722内の導電率の変化を検出する一対の導電率センサによって検出することができる。この実施形態では、流体収集
チャンバ1722の底側にセンサを配置することができ、真空源は、チャンバ1722の上端においてチャンバ1722に接続する。したがって、液体が流体収集チャンバ1722内に引き込まれる場合、液体レベルが真空源に達する前に、液体を検出することができる。任意選択的に、真空源内に液体が入るのをさらに抵抗するのに役立つように、チャンバ1722への真空源接続箇所に、疎水性フィルタ、弁または他の構成要素を配置することができる。このように、液体によって汚染される危険性があるように真空源弁が配置される前に、コントローラ16によって液体漏れを検出しそれに対して作用する(たとえば、警告を発する、液体入口弁を閉鎖する、圧送動作を中止する)ことができる。
【0302】
図95に示す概略図例には、校正ポート2684が示されている。校正ポート2684を用いて、空気圧系統におけるさまざまな圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678を校正することができる。たとえば、校正ポート2684を介してサイクラの空気圧回路に圧力基準を接続することができる。圧力基準が接続された状態で、圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678のすべてを同じ流体体積に接続するように、空気圧系統の弁を作動させることができる。そして、圧力基準を用いて空気圧系統において既知の圧力を確立することができる。圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678の各々から圧力測定値を圧力基準の既知の圧力と比較することができ、それにしたがって、圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678を校正することができる。いくつかの実施形態では、圧力センサ2672、2674、2676、2677、2678のうちの選択された圧力センサを、グループでまたは個々に校正するために、基準の圧力に接続しかつ基準の圧力にすることができる。
【0303】
取外し可能なカセットにおいてダイヤフラムベースのポンプおよび弁を作動させるように構成される任意の流体処理装置(すなわち、ベースユニット)は、その空気圧(または液圧)カセットインタフェースを利用して、専用校正カセット(または「カセット固定具」)を介して校正基準圧力を受け取ることができる。校正カセットは、標準流体ポンピングカセットと同じ全体的な寸法を有することができ、それにより、カセットインタフェースまたはベースユニットの制御面との封止インタフェースを提供することができる。ポンプまたは弁領域のうちの1つまたは複数が、それが嵌合するインタフェースの対応する領域を連通するのを可能にすることができ、それにより、校正カセットを通して、ベースユニットの空気圧または液圧流路内に(たとえば、空気圧または液圧マニホールドを介して)、基準空気圧または液圧を導入することができる。
【0304】
たとえば、空気圧作動式腹膜透析サイクラでは、サイクラの空気圧回路に対して、サイクラのカセットインタフェースを通して直接アクセスすることができる。これは、たとえば、制御面148がカセット固定具に対してシールを生成するのを可能にする変更されたカセットまたはカセット固定具を用いて達成することができる。さらに、カセットインタフェースの真空ポート173Bを流体連通している少なくとも1つのアクセスポートを含むように、カセット固定具を構成することができる。(たとえば、制御面にスリットまたは細孔を有する実施形態では)真空ポートがない場合、代わりに、カセットインタフェースまたは制御面の真空通気孔機構と連通するようにアクセスポートを配置することができる。
【0305】
外部カセットポートから装置インタフェースに面するアクセスポートまで直接流路を有するように、カセット固定具(または校正カセット)を構築することができ、外部カセットポートは、圧力基準に接続するために利用可能である。上述したように、圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678のすべてまたはいくつかを、圧力分散マニホールドにおける空気圧制御弁を適切に作動させることにより、共通の容積に流体連通するように配置することができる。圧力基準を用いてその容積内で既知の圧
力を確立することができる。圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678の各々からの圧力測定値を圧力基準の既知の圧力を比較することができ、それに従って、圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678を校正することができる。
【0306】
圧力分散マニホールドのいくつかの実施形態では、圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678のすべてが、一度に共通の容積に接続されることが可能ではない場合がある。その場合、個々の圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678への流路は、すべてのセンサの校正を確実にするために、逐次開放される必要がある場合がある。さらに、校正されると、圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678のうちの1つまたは複数を用いて、ベースユニットまたはサイクラの圧力分散マニホールドにおいて圧力センサ2670、2672、2674、2676、2677、2678を校正することができることが留意されるべきである。先行して校正された1つまたは複数の圧力センサを、未校正圧力センサとの共通容積内に(たとえば、好適な弁作動を介して)配置することができる。共通容積の圧力は、校正された圧力センサを介して既知であり得る。未校正圧力センサの測定値を共通容積の既知の圧力を比較し、その後、それにしたがって校正することができる。
【0307】
図96は、カセット固定具4570の実施形態の概略図を示す。図示するように、カセット固定具4570は、上述した標準ポンプカセット24と同じ外形を有している。カセット固定具4570は、ベースユニットのカセットインタフェース(制御面)の対応する領域と整列するように、標準カセットの所定の弁またはポンプ領域に関連づけられたアクセスポート4572を含む。カセット固定具4570は、それ以外は、平坦な平滑インタフェース面を有することができ、それにより、制御面は、ベースユニットまたはサイクラに嵌合したときにそれに対して封止することができる。好ましくは、カセット固定具4570は、金属または他の硬質な堅い材料から形成される。圧力下での屈曲または変形に対する抵抗は、複数のサイクラの複数回の校正にわたる信頼性および一貫性を向上させるのに役立つことができる。図示するように、カセット固定具4570は、カセット固定具4570の面に凹状に設けられたアクセスポート4572を含む。アクセスポート4572は、カセット固定具4570から離れるように通じる管4574まで延在する流路4573と連通する。実施形態例では、基準圧力源4576に管を介して接続されるように、カセットの側にカセットポートまたは取付具を含めることができる。
【0308】
図97および
図98は、
図3に示すカセット24等、変更されたカセットから適合したカセット固定具4570の他の表現を示す。こうした例では、カセット固定具4570は、サイクラに設置されたときにサイクラの制御面またはカセットインタフェース148(たとえば、
図90を参照)に面するカセットの制御側から、シートまたは膜を除去するかまたはそれを含めないことによって、作製することができる。
図3を参照すると、たとえば、カセット24には膜15が含まれていない場合がある。したがって、カセット24を通してサイクラの空気圧回路に直接アクセスすることができる。別法として、カセット固定具4570を生成するように、カセットの一部のみにおいて膜またはシートを断続的にする(たとえば、除去する、穿孔する、スリット状にする等)ことができる。たとえば、カセット固定具4570のアクセスポート4572が位置する領域において、膜をこのように変更することができる。
【0309】
さらに、標準カセットの外部接続箇所のうちの1つまたは複数に管4574を取り付けて、カセット固定具4570の必要な流体連通路を生成することができる。外部接続箇所は、標準カセットの上に任意の管取付箇所を含むことができ、または校正手順において繰り返し使用するためにより頑強な取付具を備えることができる。
図3を参照すると、外部接続箇所は、カセットスパイク160および/またはポート150、152および154
を含むことができる。そして、他の外部接続箇所のすべてに対して、閉鎖し、栓をし、または他の方法で封止することができるように、カセットを変更することができる。
【0310】
上述したように、管4574は、圧力基準4576に接続路を提供するように、カセット固定具4570のアクセスポート4572に流体接続された流体流路4573からつながっている。アクセスポート4572は、カセット本体における既存の開口部または弁ポートであり得る。さらに、流体路4573は、アクセスポート4572から管4574またはカセット側の関連する取付具までの流体連通を可能にする、カセット本体の任意の既存の通路または通路の組合せであり得る。たとえば、流路4573は、1つもしくは複数の弁ポート、弁ウェル、ポンプチャンバおよび/またはカセット本体のチャネル、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0311】
一実施形態では、たとえば、制御チャンバ171Bの内壁は、
図92に示すようにポンプ制御領域1482に関連づけられた制御チャンバ171Bに対して、ポンプチャンバのスペーサ要素50に幾分か類似する隆起要素を含むことができる。これらの隆起要素は、平坦な特徴、リブ、または制御ポートを完全に後退した制御領域1482から引っ込んだ状態を維持する他の突出部の形態をとることができる。この構成により、制御チャンバ171Bにおいてより均一な圧力または真空の分散を可能にすることができ、制御面148によるいかなる制御ポートの時期尚早の閉塞も防止することができる。(少なくともポンプ制御領域における)予備成形された制御面148は、送達ストローク中はカセット24のポンプチャンバの内壁に対して、または充填ストローク中は制御チャンバ171の内壁に対して完全に拡張されるとき、著しい伸張力を受けない可能性がある。したがって、制御領域1482は、制御チャンバ171B内に非対称に拡張して、チャンバが完全に空にされる前に、制御チャンバの1つまたは複数のポートを時期尚早に閉鎖する可能性がある。制御チャンバ171Bの内面に、制御領域1482と制御ポートとの間の接触を防止する特徴があることは、制御領域1482が、充填ストローク中に制御チャンバ内壁と均一に接触することができることを確実にするのに役立つことができる。
【0312】
上で示唆したように、サイクラ14は、システムのさまざまな弁、圧力センサ、モータ等と電気的に通信するデータプロセッサを備えた制御システム16を含むことができ、好ましくは、所望の動作シーケンスまたはプロトコルに従ってこうした構成要素を制御するように構成されている。制御システム16は、指定されたタスクを実行する、適切な回路、プログラミング、コンピュータメモリ、電気的接続、および/または他の構成要素を含むことができる。システムは、制御面148の領域および他の空気圧作動構成要素の動作を制御するように、所望の空気または他の流体圧(大気圧もしくは他の何らかの基準を上回る正圧、または大気圧もしくは他の何らかの基準を下回る負圧もしくは真空)を発生させる、ポンプ、タンク、マニホールド、弁、または他の構成要素を含むことができる。制御システム16(またはその少なくとも一部)に関するさらなる詳細については後述する。
【0313】
1つの例示的な実施形態では、バイナリ弁によって、ポンプ制御チャンバ171B内の圧力を制御することができ、バイナリ弁は、たとえば、制御チャンバ171を好適な圧力/真空に露出させるように開放し、圧力/真空源を遮断するように閉鎖する。ポンプ制御チャンバ171B内の圧力を制御するように調整することができる鋸歯形状の制御信号を用いて、バイナリ弁を制御することができる。たとえば、ポンプ送達ストロークの間(すなわち、膜15/制御面148を移動させポンプチャンバ181から液体を押し出すように、ポンプ制御チャンバ171B内に正圧が導入されている)、制御チャンバ171B内に好適な圧力(たとえば、約70mmHg〜90mmHgの圧力)を確立するために比較的急速に開閉するように、鋸歯信号によってバイナリ弁を駆動することができる。制御チャンバ171B内の圧力が約90mmHgを超えて上昇する場合、より長期間、バイナリ
弁を閉鎖するように、鋸歯信号を調整することができる。制御チャンバ171B内で圧力が約70mmHg未満に低下する場合、制御チャンバ171内の圧力を上昇させるように、バイナリ弁に鋸歯制御信号を再び印加することができる。したがって、通常のポンプ動作中、バイナリ弁は、複数回開閉され、1回以上の延長期間、閉鎖することができ、それにより、液体がポンプチャンバ181から押し出されるときの圧力は、所望のレベルまたは範囲(たとえば、約70mmHg〜90mmHg)で維持される。
【0314】
いくつかの実施形態では、かつ本開示の態様によれば、たとえば、膜15がポンプチャンバ181のスペーサ50と接触するか、またはポンプ制御領域1482がポンプ制御チャンバ171Bの壁と接触するとき、膜15/ポンプ制御領域1482の「ストローク終了」を検出することが有用である場合がある。たとえば、圧送動作中、「ストローク終了」の検出は、(ポンプチャンバ181を充填するかまたはポンプチャンバ181から流体を押し出すように)新たなポンプサイクルを始動するために、膜15/ポンプ制御領域1482の移動を反転させるべきであることを示すことができる。ポンプ用の制御チャンバ171B内の圧力が、鋸歯制御信号によって駆動されるバイナリ弁によって制御される1つの例示的な実施形態では、ポンプチャンバ181内の圧力は、比較的高周波数で、たとえば、バイナリ弁が開閉される周波数またはその近くの周波数で変動する。制御チャンバ171B内の圧力センサがこの変動を検出することができ、この変動は、概して、膜15/ポンプ制御領域1482がポンプチャンバ181の内壁またはポンプ制御チャンバ171Bの壁と接触していないときに、相対的に高い振幅を有する。しかしながら、膜15/ポンプ制御領域1482がポンプチャンバ181の内壁、またはポンプ制御チャンバ171Bの壁と接触すると(すなわち、「ストローク終了」)、圧力変動は、概して、ポンプ制御チャンバ171B内の圧力センサによって検出可能であるように、減衰するかまたは他の方法で変化する。圧力変動のこの変化を用いて、ストローク終了を特定することができ、ポンプならびにカセット24および/またはサイクラ14の他の構成要素を、それにしたがって制御することができる。
【0315】
一実施形態では、制御チャンバ171Bにかけられる空気圧は、制御チャンバ171Bに接続された圧力変換器2672(
図37C)、および圧力リザーバ2620、2610と制御チャンバ171Bとの間の高速動作のバイナリ弁X1A、X1Bから信号を受け取るプロセッサによって、能動的に制御される。プロセッサは、制御容積171B内で所望の圧力を達成するように弁のデューティサイクルを変更する閉ループ比例または比例−積分フィードバック制御を含む種々の制御アルゴリズムを用いて、圧力を制御することができる。一実施形態では、プロセッサは、バンバン(bang−bang)コントローラと呼ばれることが多いオン−オフコントローラを用いて、制御チャンバ内の圧力を制御する。オン−オフコントローラは、送達ストローク中に制御容積171B内の圧力をモニタリングし、圧力が低い方の第1限界未満となると(制御容積171Bを正圧リザーバ2620に接続する)バイナリ弁X1Bを開放し、圧力が高い方の第2限界を超えると、バイナリ弁X1Bを閉鎖する。充填ストローク中、オン−オフコントローラは、圧力が第3限界より大きいとき、(制御容積171Bを負圧リザーバ2610に接続する)バイナリ弁X1Aを開放し、圧力が第4限界未満であるとき、バイナリ弁X1Aを閉鎖し、ここで、第4限界は第3限界より低く、第3限界および第4限界はともに、第1限界未満である。送達ストローク中および後続するFMS測定中等、経時的な圧力のプロットを
図114に示す。制御チャンバ圧力2300は、膜15が制御チャンバ171Bを横切って移動する際、低い方の第1限界2312と高い方の第2限界2310との間で振動する。膜15が移動を停止すると、圧力は、両限界の間の振動を停止する。膜15は、通常、カセットの競技場段50と接触するか、または制御チャンバ表面171Bと接触するとき、移動を停止する。膜15はまた、出口流体ラインが閉塞される場合も、移動を停止することができる。
【0316】
自動化コンピュータ(AC)300は、圧力信号を評価することによってストロークの終了を検出する。ストローク終了(EOS)を示す圧力振動の最後を検出する、多くのあり得るアルゴリズムがある。米国特許第6,520,747号明細書において「Detailed Description of the system and Method of Measuring Change Fluid Flow Rate」と題するセクション、および同第8,292,594号明細書においてストロークの終了を検出するためのフィルタリングについて記述するセクションにおいて、EOSを検出するアルゴリズムおよび方法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0317】
EOSを検出するアルゴリズムの一例、AC300は、圧力が、送達ストローク中に第1限界および第2限界を超える間、または充填ストローク中に第3限界および第4限界を超える間の時間を評価する。オン−オフコントローラは、充填ストロークまたは送達ストローク中に制御チャンバ容積が変化する際、圧力が2つの限界の間で振動するのに応答して、弁X1A、X1Bを開閉する。膜15がストローク終了で移動を停止すると、圧力がそれ以上一方または両方の限界を超えないように、圧力変化は著しく減少する。AC300は、圧力が交互の限界を超える間の時間を測定することによって、EOSを検出することができる。圧力が最後の限界を超えてからの時間が所定閾値を超える場合、AC300はEOSを宣言することができる。アルゴリズムは、AC300が限界超過の間の時間を測定しない初期段階をさらに含むことができる。
【0318】
別のアルゴリズム例では、AC300は、時間に対する圧力信号の微分を評価する。微分が最短時間に対して最小閾値未満のままである場合、AC300はEOSを宣言することができる。さらなる例では、最小閾値は、スロトーク中の平均圧力微分の絶対値の平均である。アルゴリズムは、一組のデータ点に対する曲線あてはめの傾き(時間に対する微分)を計算し、そこでは、データ点は、移動窓から取得される。そして、ストロークにわたって各傾きの絶対値を平均することにより、平均圧力微分の絶対値が計算される。EOSアルゴリズムの別の例では、AC300は、初期遅延後まで圧力データを含まない場合がある。AC300は、ストロークの初期の部分の間に時々発生する不規則な圧力トレースによる、不正確なEOS検出を回避するために、初期圧力データを無視する。別の例では、AC300は、ストロークの後の方の部分における圧力の2次微分が、最短時間、閾値未満のままであり、待ち時間が経過した後にのみ、EOSを宣言する。
【0319】
EOSを宣言する基準は、種々の圧送条件に対して最適化することができる。最適化されたEOS検出条件としては、2次圧力微分閾値、2次微分閾値未満であり続ける最最短時間、初期遅延の持続時間、および待機期間の長さが挙げられる。これらのEOS検出基準は、異なるように、たとえば、バッグ20、22からの充填ストローク、患者への送達ストローク、患者からの充填ストローク、およびバッグ20、22への送達ストロークに対して最適化することができる。別法として、各EOS検出基準は、制御チャンバ171B内の圧送圧力の関数であり得る。
オクルーダ
本発明の一態様では、1つまたは複数の可撓性ラインを開閉するオクルーダが、一対の対向する閉塞部材を含むことができ、それらは、ばね鋼から作製された平板(たとえば、板ばね)等の弾性要素として構成することがき、オクルーダを動作させるように閉塞部材の一方または両方に力を加えるように構成された力アクチュエータを有する。いくつかの実施形態では、力アクチュエータは、弾性要素間に配置された拡張可能または拡大可能な部材を備えることができる。拡張可能部材のサイズが低減した状態で、弾性要素は、平坦または略平坦な状態であり、ピンチヘッドに対して、ラインを閉鎖した状態で挟むように1本または複数のラインに係合させる。しかしながら、拡張可能部材が弾性要素を引き離すとき、弾性要素は、ピンチヘッドを曲げて引き戻す可能性があり、ラインを解放して、ラインを通る流れを可能にする。他の実施形態では、閉塞部材は、力アクチュエータによ
って加えられる力のレベルに対して本質的に剛性があるものとすることができる。いくつかの実施形態では、力アクチュエータは、一方または両方の対向する閉塞部材に力を加えて、閉塞部材間の距離を、それらが対向する領域の少なくとも一部で増加させ、可撓性管の開閉を行うことができる。
【0320】
患者ライン34および排液ライン28、ならびに/またはサイクラ14もしくはセット12の他のライン(たとえば、ヒータバッグライン26等)を閉鎖するかまたは閉塞するために使用することができるオクルーダ147の例示的な実施形態について、
図99は組立分解図を示し、
図100は部分的組立図を示す。オクルーダ147は、任意選択的なピンチヘッド161、たとえば、ドア141に対して押圧するようにチューブと接触し、チューブを閉鎖するように挟む、概して平坦な刃状要素を含む。他の実施形態では、ピンチヘッドの機能は、閉塞部材165の一方または両方の延在する縁部に置き換えることができる。ピンチヘッド161は、Oリングまたは他の部材等のガスケット162を含み、それは、ピンチヘッド161と協働して、たとえば、閉塞されたラインのうちの1つに漏れがある場合に、サイクラ14ハウジングへの流体(たとえば、空気または液体)の進入に抵抗するのに役立つ。ベローズガスケット162は、サイクラハウジングのフロントパネル、すなわち、ドア141を開けることによって露出するパネルに取り付けられたピンチヘッドガイド163に取り付けられ、ピンチヘッド161がそのピンチヘッドガイド163を貫通する。ピンチヘッドガイド163は、ピンチヘッド161の摺動に対する拘束および/または実質的な抵抗なしに、ピンチヘッド161がピンチヘッドガイド163を出入りして移動することを可能にする。枢動軸164は、例示的な実施形態では、各々がたとえば標準的なドアヒンジで見いだされるようなフック形状の枢動軸軸受を含む板ばね165を備える、一対の対向した閉塞部材を、ピンチヘッド161に取り付ける。すなわち、ピンチヘッド161上の軸ガイドの開口部と板ばね165上のフック形状の軸受によって形成された開口部とは、互いに位置合せされ、枢動軸164はそれらの開口部に挿入され、そのため、ピンチヘッド161および板ばね165は、互いに枢動可能に接続される。板ばね165は、鋼等の任意の好適な材料から作製することができ、応力をうけていないとき、概して平坦である配置することができる。板ばね165の反対側の端部は、同様のフック形状の軸受を含み、それは、第2枢動軸164によってリニアアジャスタ167に枢動可能に接続される。この実施形態では、力アクチュエータは、板ばね165間に配置された空気袋166を備え、空気袋166は、流体(たとえば、圧力下の空気)が空気袋に導入されたときに、枢動軸164間の領域で拡張して板ばね165を互いから押し離すことができるように、配置されている。感圧接着剤(PSA)テープによって、1つまたは複数の板ばね165に空気袋166を取り付けることができる。リニアアジャスタ167は、サイクラハウジング82に固定されている一方、ピンチヘッド161は浮遊することができるが、その移動は、ピンチヘッドガイド163によって案内される。リニアアジャスタ167は、その下端部にスロット孔を含み、アセンブリ全体が適所に調整されるのを可能にし、したがって、オクルーダ147がサイクラ14に設置されたときに、ピンチヘッドを適切に配置することを可能にする。ハウジング82に対するリニアアジャスタ167の位置を調整するのに役立つように、ターンバックル168または他の構成を使用することができる。すなわち、概して、板ばね165が互いの近くに配置されかつ空気袋166が実質的に空にされるかまたは大気圧にされた状態で、ピンチヘッド161が、チューブの切断、撚れまたは他の損傷なしにチューブに対して流れを閉鎖するように挟むように、患者ラインおよび排液ラインを好適に押圧するように、ピンチヘッド161を適切に配置する必要がある。リニアアジャスタ167のスロット開口部は、オクルーダ147のこの高精度の位置決めおよび適所における固定を可能にする。解除ブレード169によって提供されるようなオーバーライド解除装置が、任意選択的に板ばね165の間に配置され、より詳細に後述するように、板ばね165を押し離すように回転することができ、それにより、ピンチヘッド161をピンチヘッドガイド163内に引き戻す。たとえば、停電、空気袋166の故障、または他の状況の場合に、オクルーダ147を使用不可にす
るように、解除ブレード169を手動で操作することができる。
【0321】
オクルーダのいくつかの実施形態構成する際に有益な可能性があるいくつかの構成要素の追加の構成および記載は、米国特許第6,302,653号明細書に提供されている。板ばね165は、曲げ力に弾性的に抵抗し、かつ、所望の数の押し潰すことができるチューブを閉塞するように曲げ変位に応じて、十分な復元力を提供するのに十分な長手方向剛性(曲げに対する抵抗)を有する、任意の材料から構成することができる。例示的な実施形態では、各板ばねは、応力を受けていないとき、シートまたは板の形状で、本質的に平坦である。1つまたは複数の弾性閉塞部材(ばね部材)を利用する代替実施形態では、曲げ力に対して弾性的に抵抗し、所望の数の押し潰すことができるチューブを閉塞するように曲げ変位に応じて、十分な復元力を提供するのに十分な長手方向剛性(曲げに対する抵抗)を有する、任意の閉塞部材を利用することができる。好適であり得るばね部材は、当業者に明らかであるように、限定されないが、円筒状、角柱状、台形、正方形または矩形の棒またはビーム、I形ビーム、楕円形ビーム、椀状面等を含む、多種多様な形状を有することができる。当業者は、本教示および特定の用途の要件に基づいて板ばね165の適切な材料および寸法を容易に選択することができる。
【0322】
図101は、オクルーダ147の上面図を示し、空気袋166が収縮し、板ばね165が、互いの近くに位置して平坦または略平坦な状態である。この位置では、ピンチヘッド161は、ピンチヘッドガイドとサイクラ14のフロントパネル(すなわち、ドア141内側のパネル)から完全に拡張され、患者ラインおよび注入ラインを閉塞することができる。一方、
図102は、膨張した状態の空気袋166を示し、板ばね165は押し離され、それにより、ピンチヘッド161をピンチヘッドガイド163内に後退させる。リニアアジャスタ167は、サイクラハウジング82に対して適所に固定され、従って、ハウジング82のフロントパネルに対して固定されることに留意されたい。板ばね165が互いから離れるように移動する際、ピンチヘッド161は、フロントパネルに対して後方に移動し、それは、ピンチヘッド161が、ピンチヘッドガイド163を自由に出入りして移動するように配置されているためである。この状態は、ピンチヘッド161が患者ラインおよび排液ラインを閉塞するのを防止し、オクルーダ147がサイクラ14の通常動作中のままであるという状態である。したがって、上述したように、サイクラ14のさまざまな構成要素は、空気圧/真空を使用して動作することができ、たとえば、制御面148は、適切な空気圧/真空の駆動下で動作して、カセット24に対する流体圧送および弁動作をもたらすことができる。したがって、サイクラ14は、通常動作しているとき、システム動作を制御するだけでなく、空気袋166を膨張させて、ピンチヘッド161を後退させ、患者ラインおよび排液ラインの閉塞を防止するように、十分な空気圧をせいせいすることができる。しかしながら、システムシャットダウン、故障、障害または他の状態の場合に、空気袋166への空気圧を終了させることができ、それにより、空気袋166が収縮し、板ばね165がまっすぐになってピンチヘッド161を拡張してラインを閉塞する。図示する構成の1つのあり得る利点は、板ばね165の復元力が平衡し、それにより、ピンチヘッド161が、ピンチヘッドガイド163に対して移動するときに、概してピンチヘッドガイド163に拘束されない。さらに、板ばね165の対向する力は、アセンブリの枢動軸およびブッシングの非対称な磨耗の量を低減させる傾向がある。また、板ばね165がおよそ直線位置になると、板ばね165は、ピンチヘッド161の長さに概して沿った方向に力をかけることができ、その力は、板ばね165に対して空気袋166によってかけられる力よりも数倍大きく、それにより、板ばね165を互いから分離し、ピンチヘッド161を後退させる。さらに、板ばね165が平坦または略平坦な状態では、ピンチヘッド161によってかけえられる挟み力を克服するために、押し潰された管の中の流体によってかけられる必要がある力は、それらの端部においてかつ平坦にされた板ばねの平面に対して本質的に平行に板ばねに加えられたときに、必要な比較的に大きい力に達し、それにより、平坦にされた板ばねのカラム安定性を破壊することによって板ばねを座
屈させる。その結果、オクルーダ147は、故障の可能性が低減して、ラインを閉塞するのに非常に有効なものとすることができ、一方でピンチヘッド161を後退させるために空気袋166によって加える必要のある力が、比較的小さくなる。例示的な実施形態の2重の板ばね配置には、板ばねを曲げるために必要な任意の所与の力に対して、かつ/または、板ばねの任意の所与のサイズおよび厚さに対して、ピンチヘッドによって提供される挟み力を著しく増大させるというさらなる利点があり得る。
【0323】
いくつかの状況では、ラインに対するオクルーダ147の力は、比較的大きい場合があり、ドア141を開くのを困難にする場合がある。すなわち、ピンチヘッド161がラインに接触して閉塞しているとき、ドア141は、オクルーダ147の力に対向しなければならず、場合によっては、これにより、ドア141を閉鎖状態で維持するラッチを手で操作することが困難になるかまたは不可能になる可能性ある。当然ながら、サイクラ14が始動され、動作するための空気圧を生成している場合、オクルーダ空気袋166を膨張させ、オクルーダピンチヘッド161を後退させることができる。しかしながら、サイクラ14でのポンプ故障の等、場合によっては、空気袋166の膨張が不可能であるかまたは困難である可能性がある。ドアの開放を可能にするために、オクルーダ147は、手動解除機構を含むことが可能である。この例示的な実施形態では、オクルーダ147は、
図99および
図100に示すような解除ブレード169を含むことができ、それは、板ばね165間で回転移動するように枢動可能に取り付けられた一対の羽根を含む。停止しているとき、解除ブレードの羽根は、
図100に示すようにばねと整列することができ、オクルーダが通常動作するのを可能にする。しかしながら、板ばね165が平坦な状態にあり、ピンチヘッド161を手動で後退させる必要がある場合、たとえば、六角レンチまたは他の工具を解除ブレード169に係合させ、解除ブレード169を回すことによって、解除ブレード169を回転させることができ、それにより、羽根が板ばね165を押し離す。六角レンチまたは他の工具を、サイクラ14のハウジング82の開口部、たとえば、サイクラハウジング82の左側ハンドルくぼみの近くの開口部に挿入し、オクルーダ147を係合解除しかつドア141が開かれ得るように、操作することができる。
ポンプ送達体積測定
本発明の別の態様では、サイクラ14は、流量計、重量計、または流体体積もしくは重量の他の直接的な測定手段を使用することなく、システム10のさまざまなラインに送達される流体の体積を求めることができる。たとえば、一実施形態では、カセット24内のポンプ等のポンプが移動させる流体の体積は、ポンプを駆動するために使用される気体の圧力測定値に基づいて求めることができる。一実施形態では、体積の確定は、2のチャンバを互いから隔離し、隔離した2つのチャンバのそれぞれの圧力を測定し、(2つのチャンバを流体接続することにより)2つのチャンバ内の圧力が部分的にまたは実質的に等しくなるようにし、圧力を測定することによって行うことができる。測定した圧力と、チャンバのうちの一方の既知の容積と、均等化が断熱で生じるという想定とを使用して、他方のチャンバ(たとえば、ポンプチャンバ)の容積を計算することができる。一実施形態では、チャンバが流体接続された後で測定された圧力は、実質的には互いに等しくない可能性があり、すなわち、チャンバ内の圧力は、まだ完全には均等化していない可能性がある。しかしながら、後に説明するように、これらの実質的に等しくない圧力を用いて、ポンプ制御チャンバの容積を求めることができる。
【0324】
たとえば、
図103は、カセット24のポンプチャンバ181ならびに関連する制御構成要素、および流入路/流出路の概略図を示す。この例示的な例では、ヒータバッグ22と、ヒータバッグライン26と、カセット24を通る流路とを含むことができる液体供給源が、ポンプチャンバの上側開口部191に液体入力を提供するように示されている。液体出口は、この例では、ポンプチャンバ181の下側開口部187から液体を受け取るように示され、たとえば、カセット24の流路および患者ライン34を含むことができる。液体供給源は、たとえば、弁ポート192を含む弁を含むことができ、弁は、ポンプチャ
ンバ181との間の流れを可能にする/妨げるように、開閉することができる。同様に、液体出口は、たとえば弁ポート190を含む弁を含むことができ、弁は、ポンプチャンバ181との間の流れを可能にする/妨げるように、開閉することができる。当然ながら、液体供給源は、1つまたは複数の溶液容器、患者ライン、カセット24内の1つまたは複数の流路、または他の液体源等の任意の好適な構成を含むことができ、液体出口は、同様に、排液ライン、ヒータバッグおよびヒータバッグライン、カセット24内の1つまたは複数の流路、または他の液体出口等の任意の好適な構成を含むことができる。概して、ポンプチャンバ181(すなわち、
図103における膜14の左側)は、動作中に水または透析液等の非圧縮性の液体で充填される。しかしながら、初期動作中、プライミング中、または後述するような他の状況等のいくつかの状況では、ポンプチャンバ181内に空気または他の気体が存在する場合がある。また、ポンプの容積および/または圧力検出に関する本発明の態様は、カセット24のポンプ構成に関して記載されているが、本発明の態様は、任意の好適なポンプまたは流体移動システムで使用することができることが理解されるべきである。
【0325】
図103はまた、(互いに隣接する)膜15および制御面1482の右側に制御チャンバ171Bも概略的に示し、それは、上述したように、ポンプチャンバ181に対する制御面1482のポンプ制御領域1482に関連づけられた嵌合ブロック170Aにおける、空隙または他の空間として形成することができる。膜15/制御領域1482を移動させてポンプチャンバ181内の液体の圧送を行うように、好適な空気圧が導入されるのは、制御チャンバ171B内である。制御チャンバ171は、ラインL0と連通することができ、ラインは、別のラインL1と、圧力源84、たとえば、空気圧源または真空源と連通する第1弁X1とに分岐する。圧力源84は、ピストンポンプを含むことができ、そこでは、チャンバ内をピストンが移動して制御チャンバ171に送達される圧力が制御されるか、または、膜15/制御領域1482を移動させかつ圧送作用を行なうために好適な気体圧力を送達ように、異なるタイプの圧力ポンプおよび/またはタンクを含むことができる。ラインL0はまた、別のラインL2および基準チャンバ174(たとえば、後述する測定を行なうように好適に構成された空間)と連通する第2弁X2に通じることができる。基準チャンバ174はまた、通気孔または他の基準圧力(たとえば、大気圧源または他の基準圧力源)に通じる弁X3を有するラインL3と連通する。弁X1、X2およびX3の各々を、独立して制御することができる。制御チャンバおよび基準チャンバに関連づけられた圧力を測定するように、圧力センサを配置することができ、たとえば、1つのセンサを制御チャンバ171に、別のセンサを基準チャンバに配置することができる。これらの圧力センサは、任意の好適な方法で圧力を検出するように配置することができ、かつそのように動作することができる。圧力センサは、サイクラ14用の制御システム16、または、ポンプもしくは他の機構によって送達される体積を求める他の好適なプロセッサと連通することができる。
【0326】
上述したように、ポンプチャンバ181、液体供給源および/または液体出口の圧力を測定し、かつ/または、ポンプチャンバ181から液体供給源または液体出口に送達される液体の体積を測定するように、
図103に示すポンプ機構の弁および他の構成要素を制御することができる。体積測定に関して、ポンプチャンバ181から送達される流体の体積を求めるために使用される1つの技法は、2つの異なるポンプ状態にある基準チャンバ内の圧力に対する制御チャンバ171Bの相対圧力を比較することである。相対圧力を比較することにより、制御チャンバ171Bの容積の変化を求めることができ、それは、ポンプチャンバ181の容積の変化に対応し、ポンプチャンバ181から送達され/ポンプチャンバに受け入れられる体積を反映する。たとえば、ポンプチャンバ充填サイクル中に(たとえば、圧力源から開放した弁X1を通して負圧を加えることによって)制御チャンバ171B内の圧力が低下して、膜15およびポンプ制御領域1482を制御チャンバ壁の少なくとも一部と接触するように(または膜15/領域1482の別の好適な位置に)
引き込んだ後、圧力源から制御チャンバを隔離するように弁X1を閉鎖することができ、弁X2を閉鎖することができ、それにより、制御チャンバ171Bから基準チャンバを隔離する。弁X3を開放して、基準チャンバを大気圧に通気し、その後、閉鎖して、基準チャンバを隔離することができる。弁X1が閉鎖され、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力が測定されている状態で、次いで、弁X2を開放して、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力の均等化を開始させる。基準チャンバおよび制御チャンバの初期圧力を、基準チャンバの既知の容積と、均等化が開始された後(必ずしも完了している必要はない)で測定された圧力とともに使用して、制御チャンバの容積を求めることができる。ポンプ送達サイクルの最後に、シート15/制御領域1482がポンプチャンバ181のスペーサ要素50と接触するように押し込まれるとき、上記プロセスを繰り返すことができる。充填サイクルの最後の制御チャンバ容積を送達サイクルの最後の容積をと比較することにより、ポンプから送達された液体の体積を求めることができる。
【0327】
概念的には、(たとえば、弁X2を開放時の)圧力均等化プロセスは、断熱で、すなわち、制御チャンバおよび基準チャンバ内の空気その周囲環境の空気との間に熱伝導が発生することなく、生じるものとして見られる。その概念的な考えは、弁X2が閉鎖されるとき、最初に弁X2に仮想ピストンが位置し、弁X2が開放されるとき、仮想ピストンがラインL0またはL2中で移動して、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力を均等化させるというものである。(a)圧力均等化プロセスは比較的迅速に生じ、(b)制御チャンバおよび基準チャンバ内の空気は、濃度がおよそ同じである元素を有し、(c)温度が同様であるため、圧力均等化が断熱で生じるという想定は、容積測定にわずかな誤差しか導入しない可能性がある。また、一実施形態では、均等化が開始された後で得られた圧力は、実質的な均等化が生じる前に測定することができ、ポンプチャンバ容積を求めるために使用される初期圧力測定と最終圧力測定との間の時間がさらに短縮する。さらに、熱伝導を低減させるように、たとえば、膜15/制御面1482、カセット24、制御チャンバ171、ライン、基準チャンバ174等に対して低い熱伝導率の材料を使用することによって、誤差をさらに低減させることができる。
【0328】
弁X2が開放されかつ圧力が均等化する後まで、弁X2が閉じた状態の間に、断熱系が存在すると想定すると、以下の式があてはまる。
PV
γ=定数 (1)
式中、Pは圧力であり、Vは容積であり、γは定数(たとえば、気体が空気等の二原子の場合には約1.4)に等しい。したがって、弁X2が開放し圧力均等化が生じる前後の制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力および容積を関連づけるように、以下の式を書くことができる。
【0329】
PrVr
γ+PdVd
γ=定数=PfVf
γ (2)
式中、Prは、弁X2を開放する前の基準チャンバならびにラインL2およびL3の圧力であり、Vrは、弁X2を開放する前の基準チャンバならびにラインL2およびL3の容積であり、Pdは、弁X2を開放する前の制御チャンバならびにラインL0およびL1の圧力であり、Vdは、弁X2を開放する前の制御チャンバならびにラインL0およびL1の容積であり、Pfは、弁X2を開放した後の基準チャンバおよび制御チャンバの均等化した圧力であり、Vfは、制御チャンバ、基準チャンバ、ならびにラインL0、L1、L2、およびL3を含むシステム全体の容積であり、すなわち、Vf=Vd+Vrである。Pr、Vr、Pd、Pfおよびγは既知であり、Vf=Vr+Vdであるため、この数式を用いて、Vdについて解くことができる(ここでは、容積の値等を求める際の「測定された圧力」の使用について言及するが、こうした測定された圧力値は、必ずしもpsi単位等の任意の特定の形式である必要はないことが理解されるべきである)。代わりに、「測定された圧力」または「求められた圧力」は、電位、抵抗値、マルチビットのデジタル数字等、圧力を表す任意の値を含むことができる。たとえば、ポンプ制御チャンバ内の圧
力を測定するために使用される圧力変換器は、ポンプ制御チャンバ内の圧力を表すアナログの電位、抵抗、または他の表示を出力することができる。変換器からの生の出力は、測定された圧力、および/または変換器からのアナログ出力を使用して生成されたデジタル数字、変換器出力に基づいて生成されるpsiまたは他の値等、何らかの変更された形式の出力として使用することができる。同じことが、求められた容積等の他の値にも当てはまるが、必ずしも立方センチメートル等の特定の形式である必要はない。代わりに、求められた容積は、容積を表す任意の値を含むことができ、たとえば、たとえば立方センチメートルで実際の容積を生成するために使用することができる。
【0330】
ポンプによって送達される体積を求めるための流体管理システム(「FMS」)技法の実施形態では、弁X2の開放時の圧力均等化が断熱系で生じると想定される。したがって、以下の式3は、圧力均等化前後の基準チャンバシステムの容積の関係を与える。
【0331】
Vrf=Vri(Pf/Patm)
−(1/γ) (3)
式中、Vrfは、基準チャンバの容積、ラインL2およびL3の容積、ならびに開放後の弁X2の左または右に移動することができる「ピストン」の移動からもたらされる容積調整を含む基準チャンバシステムの最終(均等化後)容積であり、Vriは、「ピストン」が弁X2に位置する状態での基準チャンバならびにラインL2およびL3の初期(均等化前)容積であり、Pfは、弁X2が開放された後の最終均等化圧力であり、Patmは、弁X2開放前の基準チャンバの初期圧力(この例では大気圧)である。同様に、式4は、圧力均等化前後の制御チャンバシステムの容積の関係を与える。
【0332】
Vdf=Vdi(Pf/Pdi)
−(1/γ) (4)
式中、Vdfは、制御チャンバの容積、ラインL0およびL1の容積、ならびに開放後の弁X2の左または右に移動することができる「ピストン」の移動からもたらされる容積調整を含む制御チャンバシステムの最終容積であり、Vdiは、「ピストン」が弁X2にある位置する状態での制御チャンバならびにラインL0およびL1の初期容積であり、Pfは、弁X2が開放された後の最終圧力であり、Pdiは、弁X2開放前の制御チャンバの初期圧力である。
【0333】
基準チャンバシステムおよび制御チャンバシステムの容積は、弁X2が開放され、圧力を均等化した後で、同じ絶対量だけ変化するが、式5に示すように、符号が異なる(たとえば、弁X2が開放したときに容積の変化が「ピストン」の左または右への移動によってもたらされるためである)。
【0334】
ΔVr=(−l)ΔVd (5)
(基準チャンバおよび制御チャンバの容積の変化は、仮想ピストンの移動のみによるものであることに留意されたい。基準チャンバおよび制御チャンバは、通常条件下での均等化プロセス中に実際には容積が変化しない)。また、式3からの関係を用いて、基準チャンバシステムの容積変化は、以下の式から与えられる。
【0335】
ΔVr=Vrf−Vri=Vri(−1+(Pf/Patm)
−(1/γ))
(6)
同様に、式4を用いて、制御チャンバシステムの容積の変化は、以下の式から与えられる。
【0336】
ΔVd=Vdf−Vdi=Vdi(−1+(Pf/Pdi)
−(1/γ))
(7)
Vriが既知であり、PfおよびPatmが測定されるかまたは既知であるため、ΔVrを計算することができ、それは、式5によれば(−)ΔVdと等しいと想定される。し
たがって、Vdi(基準チャンバとの圧力均等化前の制御チャンバシステムの容積)は、式7を用いて計算することができる。この実施形態では、Vdiは、L0およびL1が固定および既知の量である、制御チャンバならびにラインL0およびL1の容積を表す。VdiからL0およびL1を減算して、制御チャンバのみの容積が得られる。上記式7を用いて、たとえば、(たとえば、充填サイクルの最後および排液サイクルの最後の)ポンプ動作の前(Vdi1)および後(Vdi2)の両方で、制御チャンバの容積の変化を求めることができ、したがって、ポンプによって送達される(またはポンプによって取り込まれる)流体の体積の測定値が提供される。たとえば、Vdi1が充填ストローク終了での制御チャンバの容積であり、Vdi2がそれに続く送達ストローク終了での制御チャンバの容積である場合、ポンプによって送達される流体の体積は、Vdi2からVdi1を減算することによって推定することができる。この測定は圧力に基づいて行われるため、体積の確定は、完全ポンプストロークに対するか部分的ポンプストロークに対するかに関わらず、ポンプチャンバ181内の膜15/ポンプ制御領域1482の略任意の位置に対して行うことができる。しかしながら、充填スロトーク端および送達ストローク終了で行われる測定は、ポンプ動作および/または流量への影響がほとんどまたはまったくなしに達成することができる。
【0337】
本発明の一態様は、制御チャンバに対して容積を求めることおよび/または他の目的に使用される圧力測定値を特定する技術を含む。たとえば、圧力センサを用いて、制御チャンバ内の圧力および基準チャンバ内の圧力を検出することができるが、検出された圧力値は、弁の開閉、制御チャンバへの圧力導入、基準チャンバの大気圧または他の基準圧力への通気等に応じて変化する可能性がある。また、一実施形態では、制御チャンバと基準チャンバとの間の圧力均等化前の時点から均等化後まで断熱系が存在すると想定されるため、時間的に近いタイミングで測定された適切な圧力値を特定することは、誤差を低減させるのを役立つことができる(たとえば、圧力測定で経過する時間が短いほど、システムで交換される熱の量を低減させることができるためである)。したがって、ポンプ等によって送達される体積を求めるために適切な圧力が使用されることを確実にするのに役立つように、測定された圧力値は、注意深く選択される必要がある可能性がある。
【0338】
上述したように、
図103のL3は、通気孔に通じる弁X3を有することができる。いくつかの実施形態では、この通気孔は、大気、または他の実施形態では、別の基準圧力と連通することができる。いくつかの実施形態では、制御チャンバを通気することができるように(たとえば、
図95を参照)、弁を介して制御チャンバ171Bにこの通気孔を接続することができる。従来の装置では、通気孔を用いて、制御チャンバ171Bを、充填ストロークの後の負圧から制御チャンバ171Bの正の加圧前の周囲圧力にしていた。これにより、制御チャンバ171Bは、圧力源84に接続される前により高い開始圧力になり、したがって、正圧源またはリザーバ84における圧力の消耗が最小限である。その結果、正圧リザーバに供給するポンプは、それほど頻繁に作動しないことが必要である。
【0339】
一方、その後、すでに正圧である制御チャンバ171Bを、FMS測定のために後にチャンバを正に再度加圧する前により低い圧力に通気することは、いくつかのシナリオでは有利である可能性があると判断された。この新たなステップは、圧力源84をその圧力設定値で維持するために追加の作業(たとえば、ポンプ実行時間)が必要であるが、(たとえば、関連するポンピングチャンバとの間に通じるラインが閉塞することによる、または部分的閉塞による)背圧からのいかなるあり得る望ましくない影響も軽減するのに役立つように、それを行うことができる。さらに、これは、体積(容積)測定および流体計算の全体的な正確さを向上させるのに役立つことができる。これに対する1つのあり得る理由は、ポンプチャンバ出口弁190(この場合は、空気圧作動式膜弁)は、制御チャンバ171Bが正に加圧されたままであるとき、効率的に閉鎖しない可能性があるということである。
【0340】
いくつかの実施形態では、サイクラ14の制御システム16は、送達されたかまたは充填された流体体積を求める測定を行う前に、制御チャンバ171Bを通気することができる。さらに、いくつかの実施形態では、サイクラ14の制御システム16は、設置されたカセット24に含まれる第2制御チャンバによって圧送動作を行う前に、第1制御チャンバ171Bを通気することができる。
【0341】
図103に示す実施形態例では、この通気または背圧逃しは、弁X2およびX3を開放し弁X1を閉鎖することによって達成することができる。したがって、基準チャンバ174を介して通気孔と連通するように、制御チャンバ171Bを配置することができる。他の実施形態では、当然ながら、通気孔とより直接連通するように、制御チャンバ171Bを配置することができる。たとえば、通気孔と直接連通している流体路に関連づけられた追加の弁を含めることができる。他の任意の好適な構成を使用することも可能である。
【0342】
いくつかの実施形態では、好適なまたは所定の期間、通気孔と流体連通するように制御チャンバ171Bを配置することにより、制御チャンバ171Bを通気することができる。他の実施形態では、制御チャンバ171Bの通気を制御するために、サイクラ14の制御システム16は、制御チャンバ171Bまたは基準チャンバ174の一方または両方に関連づけられた(または、たとえば圧力分散モジュール等、制御チャンバに流体的に接続可能な位置にある)圧力センサからのデータを使用することができる。こうした実施形態では、圧力センサからのデータを用いて、制御チャンバ171Bが十分に通気されたか否かを判断することができる。制御チャンバ171Bが十分に通気されたと判断されると、サイクラ14の制御システム16は、通気孔から制御チャンバ171Bを隔離するように適切な弁を閉鎖することができる。制御システム16が、制御チャンバ171Bが十分に通気されたと判断するために、制御チャンバ171Bの圧力は、必ずしも、通気孔の圧力と完全に均等化する必要はない。
【0343】
いくつかの実施形態では、制御チャンバ171B内の背圧を逃すために、代わりに、制御チャンバ171Bを、適切なまたは所定の期間、負圧源にさらすことができる。こうした実施形態では、圧力源84と連通するように制御チャンバ171Bを配置することができる。
図103に示す実施形態例では、これは、弁X1を開放し、少なくとも弁X3を閉鎖することによって、達成することができる。正に加圧された制御チャンバ171Bの場合、制御チャンバ171Bが接続される圧力源は、負圧源であり得る。いくつかの実施形態では、サイクラ14の制御システム16は、短期間、負圧源への弁を開放するのみである場合がある。短期間は、制御チャンバ171B内の圧力を、圧力源と均等化することができる前に所定値の所定範囲内(例では、これは、およそ大気圧であり得る)にするために十分な時間であり得る。他の実施形態では、同じ効果をもたらすように、弁X1を調整することができる。それが可変弁である場合、コントローラによってそのオリフィス開口部を調整することができ、バイナリ弁である場合、コントローラは、たとえばパルス幅変調を用いて、弁を横切る圧力送達の速度および大きさを調整することができる。
【0344】
説明のために、
図104は、弁X2の開放前の時点から、弁X2が開放されてチャンバ内の圧力を均等化させて幾分かの時間の後までの、制御チャンバおよび基準チャンバに対する例示的な圧力値のプロットを示す。この例示的な実施形態では、制御チャンバ内の圧力は、均等化前の基準チャンバ内の圧力よりも高いが、制御チャンバ圧力は、充填ストローク中および/または充填ストローク終了等、いくつかの構成における均等化前の基準チャンバ圧力よりも低い場合があることが理解されるべきである。また、
図104におけるプロットは、均等化圧力に印を付けた水平線を示すが、この線は明確にするためにのみ示されていることが理解されるべきである。均等化圧力は、概して、弁X2の開放前には知られることはない。この実施形態では、圧力センサは、制御チャンバおよび基準チャンバ
の両方に対して約2000Hzのレートで圧力を検出するが、他の適切なサンプリングレートを使用することができる。弁X2の開放前に、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力はおよそ一定であり、チャンバ内にはいかなる空気または他の流体も導入されていない。したがって、弁X1およびX3は、概して、弁X2の開放前に閉鎖される。また、ポンプチャンバ、液体供給源または液体出口における圧力変動の影響を阻止するために、弁ポート190および192等、ポンプチャンバ内に通じる弁を閉鎖することができる。
【0345】
最初に、測定された圧力データは、制御チャンバおよび基準チャンバに対する初期圧力、すなわちPdおよびPrを特定するように処理される。1つの例示的な実施形態では、初期圧力は、測定された圧力データで使用される10ポイントスライディングウィンドウの解析に基づいて特定される。この解析は、たとえば最小二乗法を用いて、各ウィンドウ(またはセット)内のデータに対する最良適合線を生成し、最良適合線の傾きを求めることを含む。たとえば、新しい圧力が制御チャンバまたは基準チャンバに対して測定されるたびに、最新の測定値および9個の先の圧力測定値を含むデータセットに対して、最小二乗適合線を求めることができる。このプロセスは、圧力データのいくつかのセットに対して繰り返すことができ、最小二乗適合線の傾きが最初に負(または非ゼロ)になり、後続のデータセットに対してさらに負の方に進み(またはゼロの傾きから逸脱し)続けるときに関して、判断を行うことができる。最小二乗適合線が好適な増加する非ゼロの傾きを有し始める点を用いて、チャンバの初期圧力、すなわち弁X2が開放される前の時点での圧力を特定することができる。
【0346】
一実施形態では、基準チャンバおよび制御チャンバに対する初期圧力値は、連続した5個のデータセットの最後にあると判断することができ、そこでは、それらのデータセットに対する最良適合線の傾きは、第1データセットから第5データセットまで増加し、第1データセットに対する最良適合線の傾きが、最初は非ゼロになる(すなわち、第1データセットに先行するデータセットに対する最良適合線の傾きが、ゼロであるかまたは十分に非ゼロではない)。たとえば、圧力センサは、弁X2が開放する前の時点で開始して、1/2ミリ秒毎に(または他のサンプリングレート)サンプリングすることができる。圧力測定値が行われる度に、サイクラ14は、先の9個の測定値とともに最新の測定値を取得し、セット内の10個のデータ点に対する最良適合線を生成することができる。次の圧力測定値を取得する際に(たとえば、1/2ミリ秒後)、サイクラ14は、9個の先の測定値とともに測定値を取得し、再度、セット内の10点に対する最良適合線を生成することができる。このプロセスを繰り返すことができ、サイクラ14は、1セット10個のデータ点に対する最良適合線の傾きが最初に非ゼロになる(または他の方法で、好適に傾斜する)とき、たとえば、10個のデータ点の5個の後続のセットに対する最良適合線の傾きが後のデータセット各々に応じて増大することを確定することができる。使用する所定の圧力測定値を特定するために、1つの技法は、制御チャンバまたは基準チャンバに対する初期圧力、すなわちPdまたはPrとして使用される測定値として、第5データセット(すなわち、最良適合線が一貫した傾きで増大していることが分かり、第1測定値が時間的に最も早く取得された圧力測定値である、第5データセット)の中の第3測定値を選択することである。この選択は、経験的方法を使用して、たとえば、圧力測定値をプロットし、次いで、圧力が均等化プロセスを開始した時点を最適に表わす点を選択することにより、選択された。当然ながら、適切な初期圧力を選択するために他の技法を使用することができる。
【0347】
1つの例示的な実施形態では、選択されたPdおよびPrの測定が行われた時点が、所望の時間閾値内、たとえば、互いの1〜2ミリ秒以内にあったことを、確認することができる。たとえば、上述した技法を用いて、制御チャンバ圧力および基準チャンバ圧力が解析され、圧力均等化が開始される直前に圧力測定値(したがって、時点)が特定される場合、圧力が測定された時点は、互いに比較的接近しているべきである。そうでなければ、
圧力測定値の一方または両方を無効にする誤差または他の障害条件があった可能性がある。PdおよびPrが発生した時点が適切に互いに接近していることを確認することによって、サイクラ14は、初期圧力が適切に特定されたと確認することができる。
【0348】
チャンバに対する測定された圧力を用いてポンプチャンバ容積を確実に求めることができるように、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力が均等化したときを特定するために、サイクラ14は、制御チャンバおよび基準チャンバの両方に対する圧力測定値からの一連のデータ点を含むデータセットを解析し、データセットの各々に対する最良適合線を(たとえば、最小二乗法を使用して)求め、制御チャンバ用のデータセットおよび基準チャンバ用のデータセットに対する最良適合線の傾きが、最初に適切に互いに類似する、たとえば、傾き両方ともゼロに近いかまたは互いの閾値内にある値を有するときを特定することができる。最良適合線の傾きが類似するかまたはゼロに近いとき、圧力は、均等化したと判断することができる。いずれかのデータセット用の第1圧力測定値を、最終均等化圧力、すなわちPfとして使用することができる。1つの例示的な実施形態では、圧力均等化が、弁X2が開放された後、概して約200ミリ秒〜400ミリ秒以内に発生し、均等化の大部分が、約50ミリ秒以内に発生したことが分かった。したがって、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力は、弁X2が開放される前の時点から均等化が達成される時点まで、均等化処理全体の間におよそ400回〜800回以上の回数、サンプリングすることができる。
【0349】
場合によっては、代替的なFMS技法を用いて、制御チャンバ容積測定の正確さを向上させることが望ましい場合がある。圧送されている液体と制御チャンバ気体と基準チャンバ気体との間の温度の実質的な差は、圧力均等化が断熱的に発生するという想定に基づいた計算に著しい誤差を導入する可能性がある。制御チャンバと基準チャンバとの間の十分な圧力均等化まで圧力測定を行なうのを待機することは、過剰な量の熱伝達を発生させる可能性がある。本発明の一態様では、互いに実質的に同等でない、すなわち、完全な均等化が発生する前に測定される、ポンプチャンバおよび基準チャンバの圧力値を用いて、ポンプチャンバ容積を求めることができる。
【0350】
一実施形態では、弁X2の開放から完全な圧力均等化を通して均等化期間全体にわたってチャンバ圧力を測定し、断熱計算に対する均等化期間中にサンプリング点を選択することによって、熱伝達を最小限にすることができ、断熱演算誤差を低減させることができる。APDシステムの一実施形態では、制御チャンバと基準チャンバとの間の完全な圧力均等化の前に取得される、測定されたチャンバ圧力を用いて、ポンプチャンバ容積を求めることができる。一実施形態では、これらの圧力値は、チャンバが最初に流体的に接続され、均等化が開始されてから約50ミリ秒後に測定することができる。上述したように、一実施形態では、完全な均等化は、弁X2が開放されてから約200ミリ秒〜400ミリ秒後に発生する可能性がある。したがって、測定された圧力は、弁X2が開放された(または、均等化が開始された)後の時点で取得することができ、それは、均等化期間全体の約10%〜50%以下である。言い換えれば、測定された圧力は、圧力均等化の50%〜70%が発生した時点で取得することができる(すなわち、基準チャンバおよびポンプチャンバ圧力は、初期チャンバ圧力と最終均等化圧力との間の差の約50%〜70%変化した。コンピュータ対応のコントローラを用いて、均等化期間中に、制御チャンバおよび基準チャンバ内の実質的な回数の圧力測定を行い、格納し、解析することができる(たとえば、40回〜100回の個々の圧力測定)。均等化期間の最初の50ミリ秒間にサンプリングされた時点のうち、断熱計算を行なうための理論上最適化されたサンプリング点がある(たとえば、最適化されたサンプリング点が、弁X2が開放して約50ミリ秒後で発生する、
図104を参照されたい)。最適化されたサンプリング点は、2つのチャンバの気体体積間の熱伝達を最小限にするように、弁X2の開放の後の十分に早い時点で発生するが、圧力センサの特性と弁作動の遅延とによる圧力測定の著しい誤差を導入するほど早い時
点では発生しない。しかしながら、
図104に示すように、ポンプチャンバおよび基準チャンバに対する圧力は、この時点では互いに実質的に同等ではない可能性があり、したがって、均等化は完了していない可能性がある。(場合によっては、弁X2の開放の直後に確実な圧力測定値を取得することが技術的に困難である可能性があり、それは、たとえば、圧力センサの固有の不正確さ、弁X2を完全に開放するために必要な時間、および、弁X2の開放の直後の制御チャンバまたは基準チャンバの一方の圧力の急激な初期変化等のためである)。
【0351】
圧力均等化の間、制御チャンバおよび基準チャンバに対する最終圧力が同じでないとき、式2は以下のようになる。
PriVri
γ+PdiVdi
γ=定数=PrfVrf
γ+PdfVdf
γ
(8)
式中、Pri=弁X2を開放する前の基準チャンバ内の圧力、Pdi=弁X2を開放する前の制御チャンバの圧力、Prf=最終基準チャンバ圧力、Pdf=最終制御チャンバ圧力である。
【0352】
最適化アルゴリズムを用いて、ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が均等化期間にわたって最小化(または所望の閾値未満に)される圧力均等化期間中の時点を選択することができる。(断熱過程では、この差は、式5によって示すように、理想的にはゼロであるべきである。
図104では、ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が最小化される時点は、50ミリ秒の線で発生し、そこには「最終圧力が特定された時点」とマークされている)。最初に、制御チャンバおよび基準チャンバから、弁X2の開放と最終圧力均等化との間の複数点j=1〜nにおいて、圧力データを収集することができる。Vri、すなわち、圧力均等化前の基準チャンバシステムの固定容積は既知であるため、Vrj(弁X2が開放された後のサンプリング点jでの基準チャンバシステム容積)に対する後続の値は、均等化曲線に沿った各サンプリング点Prjで式3を用いて計算することができる。Vrjのこうした値の各々に対して、ΔVdに対する値は、式5および式7を用いて計算することができ、それにより、Vrjの各値は、Vdij、Vdiに対する推定値、圧力均等化前の制御チャンバシステムの容積をもたらす。Vrjの各値およびVdijのその対応する値を用いて、かつ、式3および式4を用いて、均等化曲線に沿った各圧力測定点において、ΔVdおよびΔVrの絶対値の差を計算することができる。これらの差の二乗の和は、Vrjの各値およびその対応するVdijに対する圧力均等化の間のVdiの計算値における誤差の測定値を提供する。|ΔVd|および|ΔVr|の二乗差の最小和をもたらす基準チャンバ圧力をPrf、その関連する基準チャンバ容積をVrfとして示すと、Vrfに対応するデータ点PrfおよびPdfを用いて、Vdiの最適化された推定値、すなわち制御チャンバシステム初期容積を計算することができる。
【0353】
PdfおよびPrfに対する最適化された値を補足する均等化曲線上場所を求める1つの方法は、以下の通りである。
1)制御チャンバおよび基準チャンバから、弁X2を開放する直前に開始し、PrおよびPdが等しい値に近づいている状態で終了する一連の圧力データセットを収集する。Priが、捕捉された最初の基準チャンバ圧力である場合には、
図104における後続するサンプリング点は、Prj=Pr1,Pr2,...Prnと称される。
【0354】
2)式6を用いて、Priの後の各Prjについて、対応するΔVrjを計算する(ここで、jは、Priの後のj番目の圧力データ点を表す)。
ΔVrj=Vrj−Vri=Vri(−1+(Prj/Pri)
−(1/γ))
3)こうしたΔVrj各々について、式7を用いて、対応するVdijを計算する。
たとえば、
ΔVr1=Vri*(−1+(Pr1/Pri)
−(1/γ))
ΔVd1=−ΔVr1
したがって、
Vdi1=ΔVd1/(−1+(Pd1/Pdi)
−(1/γ))
・
・
Vdin=ΔVdn/(−1+(Pdn/Pdi)
−(1/γ))
圧力均等化の間に、1セットのn個の制御チャンバシステム初期容積(Vdi1〜Vdin)を、基準チャンバ圧力データ点のセットPr1〜Prnに基づいて計算し、このとき、圧力均等化期間全体にわたる制御チャンバシステム初期容積(Vdi)の最適化された測定値をもたらす時点(f)を選択することができる。
【0355】
4)式7を用いて、Vdi1〜Vdinの各々について、時点k=1〜nに対する制御チャンバ圧力測定値Pdを用いてすべてのΔVdj,kを計算する。
Pr1に対応するVdiに対して、
ΔVd1,1=Vdi1*(−1+(Pd1/Pdi)
−(1/γ))
ΔVd1,2=Vdi1*(−1+(Pd2/Pdi)
−(1/γ))
・
・
・
ΔVd1,n=Vdi1*(−1+(Pdn/Pdi)
−(1/γ))
・
・
・
Prnに対応するVdiに対して、
ΔVdn,l=Vdin*(−1+(Pd1/Pdi)
−(1/γ))
ΔVdn,2=Vdin*(−1+(Pd2/Pdi)
−(1/γ))
・
・
・
ΔVdn,n=Vdin*(−1+(Pdn/Pdi)
−(1/γ))
5)ΔVrおよびΔVdj,kの絶対値間の二乗誤差和を取る。
【0356】
【数1】
[この文献は図面を表示できません]
【0357】
[S1は、第1データ点Pr1を用いてVr1およびΔVrからVdi、すなわち、制御チャンバシステムの初期容積を求めるときの、均等化期間中のすべてのデータ点にわたって、|ΔVd|−|ΔVr|の二乗誤差和を表す。]
【0358】
【数2】
[この文献は図面を表示できません]
【0359】
[S2は、第2データ点Pr2を用いてVr2およびΔVrからVdi、すなわち、制御
チャンバシステムの初期容積を求めるときの、均等化期間中のすべてのデータ点にわたって、|ΔVr|−|ΔVd|の二乗誤差和を表す。]
【0360】
【数3】
[この文献は図面を表示できません]
【0361】
6)次いで、ステップ5から最小二乗誤差和S(または所望の閾値未満の値)を生成するPr1とPrnとの間のPrデータ点は、選択されたPrfとなり、そこから、Pdf、およびVdiの最適化された推定値、すなわち、制御チャンバ初期容積を求めることができる。この例では、Pdfが、Prfと同時にまたは略同時に発生する。
【0362】
7)制御チャンバ容積の推定値が望まれるときにはいつでも、上記手続きを適用することができるが、好ましくは各充填ストローク終了および各供給ストローク終了に適用されることができる。充填ストロークの終了での最適化されたVdiと、対応する送達ストロークの終了での最適化されたVdiとの間の差を用いて、ポンプによって送達される液体の体積を推定することができる。
空気検出
本発明の別の態様は、ポンプチャンバ181内の空気の存在と、存在する場合は、存在する空気の体積とを判断することを含む。こうした判断は、たとえば、カセット24から空気を除去するようにプライミング手順が適切に行なわれたことを確実にするのに役立ち、かつ/または、空気が患者に送達されないことを確実にするのに役立つために重要である可能性がある。いくつかの実施形態では、たとえば、ポンプチャンバ181の底部の下部開口部187を通して患者に流体を送達するとき、ポンプチャンバに閉じ込められた空気または他の気体は、ポンプチャンバ181内に残る傾向がある可能性があり、その気体の体積がポンプチャンバ181の有効デッドスペースの容積よりも大きくない限り、患者に圧送されることが阻止される。後述するように、本発明の態様に従って、ポンプチャンバ181に含まれる空気または他の気体の体積を求めることができ、気体の体積がポンプチャンバ181の有効デッドスペースの容積よりも大きくなる前に、ポンプチャンバ181から気体をパージすることができる。
【0363】
ポンプチャンバ181内の空気の量の判断は、充填ストロークの終了に行うことができ、したがって、圧送プロセスを中断することなく行なうことができる。たとえば、膜15およびポンプ制御領域1482がカセット24から引き離され、それにより、膜15/領域1482が制御チャンバ171の壁と接触することになる充填ストロークの終了では、弁X2を閉鎖することができ、たとえば、弁X3を開放することによって、基準チャンバを大気圧に通気することができる。その後、弁X1およびX3を閉鎖することができ、弁X2において仮想「ピストン」が固定される。次いで、弁X2を開放することができ、制御チャンバの容積を求めるように圧力測定を行なう場合に上述したように、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力を均等化することができる。
【0364】
ポンプチャンバ181内に気泡がない場合、基準チャンバシステムの既知の初期容積と基準チャンバの初期圧力とを使用して求められた、基準チャンバの容積の変化、すなわち、仮想「ピストン」の移動による変化は、制御チャンバシステムの既知の初期容積と制御チャンバ内の初期圧力とを用いて求められた制御チャンバの容積の変化と等しくなる。(制御チャンバの初期容積は、膜15/制御領域1482が制御チャンバの壁と接触しているか、または、ポンプチャンバ181のスペーサ要素50と接触している状態で既知であり得る。)しかしながら、ポンプチャンバ181内に空気が存在する場合、制御チャンバ
の容積の変化は、実際には、制御チャンバ容積とポンプチャンバ181内の気泡との間で分散される。その結果、制御チャンバシステムの既知の初期容積を用いる、計算された制御チャンバに対する容積の変化は、基準チャンバに対する計算された容積の変化と等しくはならず、したがって、ポンプチャンバ内の空気の存在が通知される。
【0365】
ポンプチャンバ181内に空気がある場合、制御チャンバシステムの初期容積Vdiは、実際には、式9に示すように、制御チャンバならびにラインL0およびL1の容積の和(Vdfixと呼ぶ)+ポンプチャンバ181内の気泡の初期体積(Vbiと呼ぶ)に等しい。
【0366】
Vdi=Vbi+Vdfix (9)
充填ストロークの終了において膜15/制御領域1482が制御チャンバの壁に対して押圧された状態で、たとえば、制御チャンバ壁の溝または他の特徴の存在、ならびに、ラインL0およびL1の容積(合わせてVdfix)による、制御チャンバ内の任意の空気空間の容積は、きわめて正確に知ることができる。(同様に、膜15/制御領域1482がポンプチャンバ181のスペーサ要素50に対して押圧された状態で、制御チャンバならびにラインL0およびL1の容積を正確に知ることができる)。充填ストロークの後、制御チャンバシステムの容積は、正圧の制御チャンバプリチャージを用いて試験される。この試験された容積と充填ストロークの終了での試験された容積との間のいかなる相違も、ポンプチャンバ内の空気の体積を示すことができる。式9から式7に代入して、制御チャンバの容積の変化ΔVdが、以下の式によって与えられる。
【0367】
ΔVd=(Vbi+Vdfix)(−1+(Pdf/Pdi)
−(1/γ)) (10)
ΔVrは式6から計算することができ、式5から、ΔVr=(−1)ΔVdであることが分かるため、式10は、以下のように書き換えることができる。
【0368】
(−l)ΔVr=(Vbi+Vdfix)(−1+(Pdf/Pdi)
−(1/γ))(11)
そして、再び、以下のように書き換えることができる。
【0369】
Vbi=(−1)ΔVr/(−l+(Pdf/Pdi)
−(1/γ))−Vdfix(12)
したがって、サイクラ14は、式12を用いて、ポンプチャンバ181内に空気があるか否か、かつ泡のおよその体積を求めることができる。この気泡体積の計算は、たとえば、(式6から求められるような)ΔVrおよび(Vdi=Vdfixを用いて式7から求められるような)ΔVdの絶対値が、互いに等しくないことが分かった場合に、行なうことができる。すなわち、ポンプチャンバ181内に空気が存在しない場合、VdiはVdfixと等しくなるべきであり、したがって、Vdiの代わりにVdfixを用いて式7から与えられるΔVdの絶対値は、ΔVrと等しくなる。
【0370】
充填ストロークが完了した後、かつ、上述した方法にしたがって空気が検出される場合、空気が膜15のポンプチャンバ側に位置しているかまたは制御側に位置しているかを判断するのは困難である可能性がある。圧送されている液体中に気泡が存在する可能性があり、または、不完全なポンプストロークおよび不完全なポンプチャンバの充填をもたらした圧送中の状態(たとえば、閉塞等)により、ポンプダイヤフラム15の制御(空気圧)側に残留空気がある可能性がある。この時点で、負圧のポンプチャンバプリチャージを用いる断熱FMS測定を行うことができる。このFMS容積が正圧のプリチャージを伴うFMS容積と一致する場合、膜は、両方向に自由に移動することができ、それは、ポンプチャンバが(場合によっては、たとえば閉塞により)単に部分的に充填されていることを示
唆する。膜15/領域1482が制御チャンバの内壁に接触したときに、負圧のポンプチャンバプリチャージFMS容積の値が名目制御チャンバ空気体積と等しい場合、可撓性膜のポンプチャンバ側の流体中に気泡があると断定することが可能である。
ポンプ送達容積測定のためのポリトロープFMS
FMSの概論
本開示の別の態様では、
図1のサイクラ14は、流量計、重量計、または流体の体積もしくは重量の他の直接的な測定法を使用することなく、システム10のさまざまなラインにおいて送達される流体の体積を求めることができる。たとえば、一実施形態では、カセット24を含む空気圧駆動式ダイヤフラムポンプ等のダイヤフラムポンプによって移動する流体の体積は、ポンプを駆動するために使用される気体の圧力測定値に基づいて求めることができる。
【0371】
一実施形態では、体積の確定は、本明細書では2チャンバ流体測定システム(2チャンバFMS)プロセスと呼ぶプロセスによって達成される。ダイヤフラムポンプによって圧送される流体の体積は、ダイヤフラムの一方の側における空気圧チャンバの容積の変化から計算することができる。空気圧チャンバの容積は、各充填ストロークおよび送達ストロークの終了時に測定することができ、後続する測定値の間の容積の差が、ポンプによって移動する流体の体積である。
【0372】
空気圧チャンバまたは第1チャンバの容積は、ダイヤフラムポンプ内外の液体弁を閉鎖することと、既知の容積の第2チャンバ(基準チャンバ)から第1チャンバを隔離することと、第1チャンバを第1圧力にプリチャージする一方で、第2チャンバを第2圧力にプリチャージし、その後、2つのチャンバを流体的に接続することと、圧力が均等化する際に各チャンバ内の少なくとも初期圧力および最終圧力を記録することとを含む、2チャンバFMSプロセスによって測定される。第1チャンバの容積は、少なくとも初期圧力および最終圧力と第2チャンバの既知の容積とから計算することができる。
【0373】
第1チャンバが、第2チャンバ内の圧力を上回る圧力にプリチャージされる場合、2チャンバFMSプロセスは、正圧FMSまたは+FMSと呼ばれる。第1チャンバが、第2チャンバ内の圧力を下回る圧力にプリチャージされる場合、2チャンバFMSプロセスは、負圧FMSまたは−FMSと呼ばれる。ここで
図105を参照すると、第1チャンバは制御チャンバ6171であり、第2チャンバは基準チャンバ6212である。
【0374】
第1チャンバ容積を計算するアルゴリズムの形式は、第1チャンバおよび第2チャンバと2つのチャンバを接続する流体ラインとの熱伝達特性によって決まる可能性がある。均等化中の構造と気体との間の熱伝達量は、均等化中およびその後の第1チャンバ内および第2チャンバ内両方の圧力に影響を与える。均等化中、圧力が高い方のチャンバ内の気体は、他方のチャンバに向かって膨張する。この膨張気体は、より低い温度まで温度が低下し、したがってより低い圧力になる。膨張ガスの温度低下および圧力の喪失は、より高温の構造からの熱伝達によって減速されるかまたは低減する可能性がある。同時に、最初は低圧であるチャンバ内の気体は、均等化中に圧縮される。この圧縮ガスの温度は、圧力とともに上昇する。圧縮ガスの加熱および圧力の上昇は、より低温の構造からの熱伝達によって減速されるかまたは低減する可能性がある。
【0375】
構造(チャンバ壁、チャンバ内の固体材料)と気体との間の熱伝達の相対的な重要性は、チャンバの平均水力直径、気体の熱拡散率、および均等化過程の持続時間の関数である。一例では、2つの容積は、膨張過程および圧縮過程を等温であるものとしてモデル化することができるように、圧力均等化中に各チャンバ内で気体温度が一定であるように十分な表面積および熱質量を提供する、フォームまたは他のマトリックス等の熱吸収材料で充填される。別の例では、2つのチャンバは、ごくわずかな熱伝達を提供するようなサイズ
および形状であり、そのため、膨張過程および圧縮過程は、断熱的であるものとしてモデル化することができる。別の例では、制御チャンバ6171の形状およびサイズは、測定毎に変化する。充填ストローク後の測定において、制御チャンバ6171が小さく、かつ気体のすべてがチャンバ壁6170または膜6148の比較的近くである場合、気体と構造との間の熱伝達は著しい。送達ストロークの後の測定では、制御チャンバ6171は大きくかつ開放しており、そのため、気体の多くが、チャンバ壁6170またはダイヤフラム6148から比較的隔離され、気体への熱伝達はごくわずかである。部分ストロークの後の測定では、構造と気体との間の熱伝達は著しいが、一定温度を確実にするほど十分ではない。これらのすべての測定において、膨張過程および圧縮過程は、ポリトロープとしてモデル化することができ、熱伝達の相対的な重要性は、測定毎に変化する可能性がある。ポリトロープモデルは、すべての幾何学的形状に対して均等化プロセスを正確にモデル化し、第1チャンバおよび第2チャンバ内の異なるレベルの熱伝達の影響を取り込むことができる。均等化プロセスのより詳細なモデルは、第2チャンバの圧力および容積の知識から第1チャンバの容積をより正確に求める。
【0376】
このセクションは、ポリトロープ2チャンバFMSプロセスに対して第1チャンバ6171の容積を計算するアルゴリズムについて記載する。第1サブセクションは、容積、圧力源、弁および圧力センサの例示的な配置に対して2容積FMSまたは2チャンバFMSプロセスについて記載する。次のサブセクションは、+FMSプロセスからのデータに対するポリトロープFMSアルゴリズムについて概念的に記載し、その後、圧力データから第1容積を計算する正確な式を提示する。次のサブセクションは、−FMSプロセスからのデータに対するポリトロープFMSアルゴリズムの概念および式を提示する。最後のサブセクションは、いずれかの式のセットを用いて第1チャンバ6171の容積を計算するプロセスを提示する。
【0377】
記載されているモデルは、空気圧作動式ダイヤフラムポンプを用いる任意のシステムまたは装置に適用することができる。システムの構成要素は、流体源または流体宛先のいずれかへの弁付き接続部を備えた少なくとも1つのチャンバ入口または出口を有するダイヤフラムポンプと、流体送達または充填のためにポンプチャンバに正圧または負圧を提供する、ダイヤフラムによってポンプチャンバから分離された空気圧制御チャンバであって、既知の容積の基準チャンバと正圧源または負圧源とに対する弁付き接続部を有する空気圧制御チャンバとを含み、コントローラが、システムの弁を制御し、制御チャンバおよび基準チャンバ内の空気圧をモニタリングする。
図105に、システムの例を概略的に示すが、入口、出口、ならびに流体および空気圧導管および弁の具体的な構成は、この例示から幾分か変更することができる。以下の記述は、例として腹膜透析サイクラおよびポンプカセットを用いるが、本発明は、この特定の適用に決して限定されない。
2チャンバFMSプロセス用のハードウェア
ここで
図105を参照すると、
図105は、2チャンバFMSプロセスに関与するサイクラおよびカセット624の要素を概略的に提示する。カセット624は、2つの液体弁6190、6192を含み、それらは、液体供給源6193および液体出口6191に流体的に接続されている。カセット624は、可変液体体積ポンプチャンバ6181が、制御チャンバ6171から可撓性膜6148によって分離されている、ダイヤフラムポンプを含む。制御チャンバ6171の容積は、膜6148およびチャンバ壁6170によって画定される。制御チャンバ6171は、上述した未知の容積の第1チャンバである。
【0378】
制御ライン6205もまた接続弁6214に通じ、接続弁6214は、基準ライン6207および基準チャンバ6212(たとえば、後述する測定を行うように好適に構成された空間)と連通する。基準チャンバ6212は、上述した既知の容積を有する第2チャンバである。基準チャンバ6212はまた、大気圧への通気孔6226に通じる第2弁6216を有する出口ライン6208と連通する。別の例では、通気孔6226は、1つまた
は複数の空気圧ポンプ、圧力センサおよびコントローラによって所望の圧力に制御されるリザーバであり得る。弁6220、6214および6216は、コントローラ61100によって独立して制御することができる。
【0379】
圧力源6210は、ライン6209および6205を介して制御チャンバ6171に選択的に接続される。圧力源6210は、1つまたは複数の空気圧ポンプによって、指定された異なる圧力に保持される、1つまたは複数の別個のリザーバを含むことができる。各空気圧ポンプは、コントローラ61100により、圧力センサによって測定される各リザーバ内の指定された圧力を維持するように制御することができる。第1弁6220が、圧力源6210と制御チャンバ6171との間の流体接続を制御することができる。コントローラ61100は、圧力源6210におけるリザーバのうちの1つをライン6209に選択的に接続して、圧力センサ6222によって測定される制御チャンバ内の圧力を制御することができる。いくつかの例では、コントローラ1100は、APDサイクラにおけるより大きい制御システムの一部であり得る。
【0380】
制御チャンバ6171は、ライン6204を介して制御圧力センサ6222に接続されている。ライン6203を介して基準チャンバ6212に、基準圧力センサ6224を接続することができる。圧力センサ6222、6224は、日本国のフリースケールセミコンダクタ(Freescale Semiconductors)製のMPXH6250A等、絶対圧力を測定する電気機械圧力センサであり得る。制御圧力センサ6222および基準圧力センサ6224は、コントローラ61100に接続されており、コントローラ61100は、後続する容積計算のために制御圧力および基準圧力を記録する。別法として、圧力センサ6222、6224は、周囲圧力に対する制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力を測定する相対圧力センサである場合があり、コントローラ61100は、周囲圧力を測定する絶対圧力センサを含むことができる。コントローラ61100は、センサ6222、6224および絶対周囲圧力センサからの相対圧力信号を結合して、制御チャンバ6171および基準チャンバ6212内の絶対圧力をそれぞれ計算することができる。
【0381】
2チャンバFMSプロセスを実行し、制御チャンバ6171内および基準チャンバ6212内の結果としての圧力を測定して、制御チャンバ6171の容積を計算するように、コントローラ61100によって、
図105に示すFMSハードウェアの弁および他の構成要素を制御することができる。コントローラ61100は、単一のマイクロプロセッサまたは複数のプロセッサであり得る。一例では、圧力信号は、A−D基板によって受け取られ、61100コントローラに渡される前にバッファリングされる。別の例では、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が、コントローラ61100と弁およびセンサとの間のすべてのI/Oを処理することができる。別の例では、FPGAは、圧力データをフィルタリングし、格納し、かつ/または処理して、制御チャンバの容積を計算することができる。
APDサイクラにおける2チャンバFMSプロセス
ここで
図106における圧力対時間プロットと
図105の要素とを参照する。例示的な圧送および測定プロセスが、時間に対する制御チャンバ圧力6300および基準チャンバ圧力6302のプロットに記載されている。上述したように、入口弁6192を閉鎖し出口弁6190を開放した後、チャンバ圧力は、送達ストローク6330中に流体をポンプチャンバ6181から押し出す正圧弁6305に対して制御される。送達ストローク6330の終了時、出口流体弁は閉鎖され、+FMSプロセスが発生して、制御チャンバ6171の容積を測定することができる。別の場所に記載するようなFMSプロセスは、制御チャンバ圧力6330をプリチャージ圧力6307にすることと、圧力安定化期間6338とそれに続く均等化プロセス6340を可能にすることから構成することができる。他の例では、制御チャンバ圧力6330を、プリチャージ圧力6307まで上昇する前に、
略大気圧に戻すことができる。均等化プロセス6340の終了時、基準チャンバ圧力6302および場合によっては制御チャンバ圧力6300を略大気圧値に戻すことができる。
【0382】
充填ストローク6320は、入口弁6192を開放した後に発生し、制御チャンバ圧力6300を負圧6310にし、一方で、基準チャンバは略大気圧、または測定された一定圧力のままである。負圧は、流体をポンプチャンバ6181内に引き込む。充填ストローク6320の終了時、入口弁6192が閉鎖され、+FMSプロセスが発生して、制御チャンバ6171の容積を求めることができる。いくつかの実施形態では、+FMSプロセスの後に−FMSプロセスが発生することができる。−FMSプロセスは、制御チャンバを負圧6317にプリチャージして、圧力安定化6342および最終的に均等化プロセス6345を可能にすることを含むことができる。−FMSプロセスから求められる制御チャンバ容積を、+FMSプロセスから求められる制御チャンバ容積と比較して、ポンプチャンバ6181内に、ある体積の空気または気体があるか否かを判断することができる。(たとえば、ポンプチャンバが、ポンプチャンバ剛性壁の上のリブまたはスタンドオフを備えるエアトラップを含む場合、空気は、スタンドオフの間に蓄積する可能性があり、完全可動域にあるダイヤフラムは、スタンドオフによって圧縮することを防止することができ、空気は、+FMSプロセスのみでは検出することができない。)一例では、−FMSプロセスは、送達ストローク6330の後に発生する。
【0383】
図107のフローチャート、
図105の要素、および
図108A、
図108Bの圧力対時間プロットを参照することにより、+FMSプロセスおよび−FMSプロセスについてより詳細に記載する。2チャンバFMSプロセスは、ステップ6410で開始し、そこでは、膜6148の位置が固定される。両液圧弁6190、6192を閉鎖することにより、膜6148の位置を固定することができる。いくつかの例では、液体に気泡が存在する場合、制御チャンバ圧力が変化する際に、膜6148の位置は変化する。しかしながら、液圧弁6190、6192の間の非圧縮液体の体積は固定である。2チャンバFMSプロセスは、概して、膜6148の両側の空気または気体の体積を測定し、そのため、膜6148の液体側におけるポンプチャンバ6181内の気泡は、制御チャンバ6171の測定された容積内に含まれる。
【0384】
ステップ6412において、制御チャンバ6171は、接続弁6214を閉鎖することにより、基準チャンバ6212から流体的に隔離される。そして、ステップ6412において、基準チャンバ6212および制御チャンバ6171は、互いに流体的に隔離される。実施形態では、ステップ6424において、第2弁6216を開放することにより、基準チャンバ6212は通気孔6226に接続される。コントローラ61100は、基準圧力センサ6224が、基準圧力が周囲圧力に達したことを示すまで、第2弁6216を開放したまま保持する。別法として、コントローラ61100は、基準圧力センサ6224によって測定される、基準チャンバ6212内の所望の初期基準圧力に達成するように、第2弁6216を制御することができる。別法として、接続弁6214を閉鎖することができ、FMSプロセスが開始する前に、第2弁6216が開放する。ステップ6428において、基準チャンバ6212内の所望の圧力が達成されると、第2弁6216は閉鎖され、それにより、基準チャンバ6212が流体的に隔離される。制御チャンバステップ6414および6418と同時に発生するように、基準チャンバステップ6424および6428をプログラムすることができる。
【0385】
ステップ6414において、制御チャンバ6171は、第1弁6220を開放することにより制御チャンバ6171を圧力源6210に接続することによって、所望の圧力に加圧される。コントローラ61100は、圧力センサ6222によって制御チャンバ6171内の圧力をモニタリングし、所望のプリチャージ圧力に達するように第1弁6220を制御する。所望のプリチャージ圧力は、基準チャンバ6212の初期基準圧力を著しく上
回るか、または初期基準圧力を著しく下回ることができる。一例では、制御チャンバ6171は、+FMSプロセスの場合、基準圧力のおよそ40kPa上回る圧力までプリチャージされる。別の例では、制御チャンバ6171は、−FMSプロセスの場合、基準圧力をおよそ40kPa下回る圧力までプリチャージされる。他の実施形態では、プリチャージ圧力は、初期基準圧力の10%〜180%の範囲内の任意の圧力であり得る。
【0386】
コントローラ61100は、ステップ6418において第1弁6220を閉鎖し、圧力センサ6222によって制御チャンバ6171内の圧力をモニタリングする。制御チャンバ6171内の圧力は、ステップ6418の間、気体が制御チャンバ壁6170および膜6148と熱的に均等化するために、周囲圧力に向かって移動することができる。ステップ6418中の圧力の大きい変化は、測定を無効にする空気または液体の漏れを示す場合がある。圧力変化の速度が所定の許容可能な速度を超える場合、2チャンバFMSプロセスを中止することができ、または制御チャンバ6171の計算された容積を廃棄することができる。加圧ステップ6414からの遅延の後に、圧力変化の速度を検査して、制御チャンバ6171内の気体が制御チャンバ6171の境界6172、6148との熱平衡に近づくのを可能にすることができる。一例では、ステップ6418中の圧力変化の最大許容可能速度は、12kPA/秒である。圧力変化の速度がこの所定値を超える場合、2チャンバFMSプロセスを中止して再開することができる。別の実施形態では、圧力変化の最大許容可能速度は、計算された制御チャンバ容積の関数であり、すなわち、それに基づいて変化する。一例では、最大許容圧力変化は、25ml容積の場合は3kPA/秒、2ml容積の場合は25kPA/秒である。一例では、制御チャンバ6171の計算された容積にもたらされる漏れ速度に関わらず、FMSプロセスを完了するように行うことができる。圧力変化の測定された速度が、計算された制御チャンバ容積に対する許容可能限界を超える場合、計算された容積を廃棄することができ、FMSプロセスを再開することができる。
【0387】
ステップ6432において、コントローラ61100が、2つのチャンバ間の接続弁6214を開放すると、制御チャンバ6171および基準チャンバ6212は流体的に接続される。コントローラ61100は、制御チャンバ6171および基準チャンバ6212内の圧力が均等化する際、圧力センサ6222、6224によって、各チャンバ内の圧力をモニタリングする。コントローラ61100は、ステップ6432において、初期圧力対と均等化の最後における少なくとも1つの圧力対とを記録することができる。圧力対は、およそ同時に記録された、制御圧力センサ6222からの信号と、基準圧力センサ6224からの信号とを指す。ステップ6432は、接続弁6214が開放する直線の期間から、制御チャンバ6171および基準チャンバ6212内の圧力が略等しい時点までおよぶ。
【0388】
ステップ6436において、2チャンバFMSプロセスは完了し、そこで、記録された圧力の対を用いて、制御チャンバ6171の容積が計算される。制御チャンバ6171容積の計算については詳細に後述する。
【0389】
+FMSプロセスは、
図108Aにおいて圧力対時間プロットとして概略されている。
図107におけるステップの参照番号に対応する参照番号が、
図108Aにおいてそれらのステップが示される場所を示すために含まれている。制御チャンバ6171の圧力は、線6302としてプロットされている。基準チャンバの圧力は、線6304としてプロットされている。
図107のステップ6410、6412、6424、6428が完了した後に、圧力対時間プロットが開始する。この時点で、基準チャンバ6212内の圧力は、所望の基準圧力6312にある。制御チャンバ6171内の圧力は、任意圧力6306で開始し、ステップ6414の間、プリチャージ圧力6316まで上昇する。任意圧力6306は、先の圧送動作の終了時の制御チャンバ6171の圧力である可能性がある。別の
実施形態では、任意圧力6306は大気圧であり得る。ステップ6418の間、制御チャンバ圧力6302は低下する可能性がある。ステップ6432において、制御チャンバ圧力6302および基準チャンバ圧力6304は、平衡圧力6324に向かって均等化する。
【0390】
−FMSプロセスは、
図108Bにおいて圧力対時間プロットとして概略されている。制御チャンバ6171(
図105)の圧力は、線6302としてプロットされている。基準チャンバ6312(
図105)の圧力は、線6304としてプロットされている。水平時間軸は、
図107における同じ参照番号で識別されるプロセスステップに対応する期間で分割されている。圧力対時間プロットは、基準チャンバ6212内の圧力(線6302が所望の基準圧力6312であり、制御チャンバ6171内の圧力(線6304)が任意圧力であるときに開始する。ステップ6414の間、制御チャンバ圧力6302は、負のプリチャージ圧力6317まで低下する。制御チャンバ圧力6302は、ステップ6418の間、ステップ6414の急な膨張によって冷却される気体が制御チャンバ壁6172、6148によって加熱される際に、上昇する可能性がある。ステップ6432において、制御チャンバ圧力6302および基準チャンバ圧力6304は、平衡圧力6324に向かって均等化する。
ポリトロープ+FMSアルゴリズム
ここで
図105を参照すると、例示の目的で、均等化プロセスは、3つの別個の構造、すなわち制御チャンバ6171、基準チャンバ6212、および2つのチャンバ6171、6212を接続するマニホールド通路6204、6205、6207、6209の流体容積を含む。一例では、各構造は、著しく異なる水力直径を有し、したがって、構造と気体との間の異なるレベルの熱伝達を有する。この例では、基準チャンバ6212は、水力直径が3.3cmであるおよそ立方形状を有している。およそ30マイクロ秒の均等化プロセス中の熱伝達は極めてわずかであり、基準チャンバ6212容積内の気体は、断熱的に圧縮される可能性があり、そのようにモデル化することができる。対照的に、例示的な構造では、マニホールド通路6204、6205、6207、6209は、およそ0.2cmの水力直径を有し、それは、基準チャンバ6212容積の水力直径の約15分の1である。マニホールド通路6204、6205、6207、6209内の熱伝達は高く、これらの通路6204、6205、6207、6209を通過する気体は、およそマニホールド壁の温度で等温的に圧縮または膨張する可能性がより高い。この例での制御チャンバ6171の水力直径は、充填ストロークの終了時にポンピングチャンバ6181が液体で満杯であり、かつ制御チャンバ6171が最小容積であるとき、およそ0.1cmの最小の値を有する。この例での制御チャンバ6171の水力直径は、ポンピングチャンバ6181が液体を送達し、制御チャンバ6171が最大容積であるとき、およそ2.8cmの最大値を有する。制御チャンバ6171内の気体の膨張は、制御チャンバ6171のサイズによって変化するポリトロープ係数によってより適切にモデル化することができる。制御チャンバ6171容積が最小であり、かつ膨張過程が略等温的となる場合、ポリトロープ係数はおよそ1に設定することができる。制御チャンバ6171が最大であり、かつ膨張過程が略断熱的である場合、ポリトロープ係数は、およそ比熱比(cp/cv)に設定することができ、それは、空気の場合は1.4に等しい。部分ストローク時の2チャンバFMS測定の場合、膨張過程は、著しい熱伝達をともなって発生するが、それは等温的であるほど十分ではない。部分ストローク時の測定の場合、ポリトロープ係数は、1〜1.4の値に設定することができる。制御チャンバ6171の容積がこの解析の未知の量であるため、制御チャンバ6171に対するポリトロープ係数は、制御チャンバ6171容積の推定値に基づくことができる。
【0391】
ここで
図109Aを参照すると、制御チャンバ6510、基準チャンバ6520およびマニホールドライン6530、6531の構造内の気体は、構造6510、6520、6530、6531を通して混合しないが、膨張し、収縮しかつ移動する3つの気体質量6
512、6532、6522としてモデル化することができる。概念的に、モデル化の目的で、これらの質量6512、6532、6522は、各々、移動し、サイズを変更し、構造とエネルギーを交換することができる閉鎖系であるが、質量は、閉鎖系に入ることも閉鎖系から出ることもできない。閉鎖系モデルは、熱力学および流体力学において十分に理解される概念である。これらの質量はまた、制御チャンバ系5612、基準チャンバ系6522およびマニホールドまたは相互接続ライン系6532と呼ぶことも可能である。
【0392】
3つの質量6512、6532、6522の熱力学的モデルに基づいて、測定された制御チャンバ6510および基準チャンバ6520の圧力から、制御チャンバ6510の容積を計算することができる。制御チャンバ質量または気体6512は、均等化プロセスの終了時に制御チャンバ6510を占有する気体である。基準チャンバ気体6522は、均等化プロセスの開始時に基準チャンバ6520を占有する気体である。マニホールド気体6532は、制御チャンバ気体と基準チャンバとの間の接続導管を含む、制御チャンバ気体6512と基準チャンバ気体6522との間の構造の平衡状態を満たす。
【0393】
そして、3つの閉鎖系に対する初期状態、圧力対、熱伝達想定、および一定総容積の制約から、3つの閉鎖系6512、6532、6522の容積および温度を計算することができる。圧力均等化は、各容積6510、6520、6530、6531に対する異なるポリトロープ係数を用いて、各々における熱伝達の相対的重要性を取り込むことによってモデル化することができる。3つの系6512、6532、6522に対する理想気体およびポリトロープ過程式を結合し配列して、制御チャンバ6510の容積を計算することができる。以下の段落は、FMSプロセスの圧力均等化ステップ(
図107および
図108Aの6432を参照)中に測定された圧力に基づく制御チャンバ6510容積の計算を可能にする式の1つまたは複数のセットの導出について記載する。
+FMSに対する閉鎖系の説明
図109Aにおける上方の像は、+FMSプロセスにおける圧力均等化の開始時の3つの閉鎖系6512、6532、6522の位置を提示する。下方の像は、圧力均等化の終了時の3つの閉鎖系6512、6532、6522の位置を提示する。均等化プロセス中、閉鎖系6512、6532、6522の位置は、
図109Aに提示する2つの極値の間にある。例として、制御チャンバ系6512および基準チャンバ系6522のいずれも、それらのそれぞれの構造を満たさない。以下の段落は、閉鎖系6512、6532、6522をより詳細に提示する。
【0394】
制御チャンバ気体系6512は、圧力均等化後に制御チャンバ6510を充填する気体である。圧力均等化の前、制御チャンバ気体系6512は、最終均等化圧力より高く、したがって制御チャンバ6510全体を占有しない、プリチャージ圧力に圧縮される。制御チャンバ気体系6512は、+FMSプロセスの圧力均等化の間、ポリトロープ過程において膨張しているものとしてモデル化することができ、そこでは、圧力および容積は、以下の式によって関連づけられる。
【0395】
p
fV
ccnCC=定数
式中、p
fは均等化圧力であり、V
ccは制御チャンバ6510の容積であり、nCCは制御チャンバ6510に対するポリトロープ係数である。
【0396】
基準気体系6522は、均等化前の基準容積6520全体を占有する気体である。基準気体系6522は、制御チャンバ6510内のより高い圧力の気体が膨張し、マニホールド気体系6532を基準チャンバ6520内に押し込む際に、圧縮される。
図93に示す一例では、(
図93において174として示す)基準チャンバは、圧力均等化の間の圧縮過程または膨張過程を断熱的としてモデル化することができるように十分に開放しているかまたは内部特徴/要素がない。この場合、ポリトロープ係数(n)は、およそチャンバ
内に存在する気体の比熱比に等しく設定することができる。基準チャンバ気体6522の圧力および容積は、以下の式によって関連づけられる。
【0397】
p
R0V
RefnR=定数
式中、p
R0は初期基準圧力であり、V
Refは基準チャンバの容積であり、nRは、基準チャンバ内の気体に対する比熱比である(nR=1.4空気)。別の例では、チャンバ6520が、近等温膨張を提供する、連続気泡フォーム、ワイヤメッシュ、粒子等の熱吸収材料で少なくとも部分的に充填されている場合、基準チャンバに対するポリトロープ係数(nR)は、およそ1.0の値を有する可能性がある。
【0398】
+FMSプロセスでは、導管またはマニホールド気体系6532は、均等化の前に、相互接続容積6530、6531および制御チャンバ6510の一部6534の容積すべてを占有する。均等化後、導管気体系6532は、相互接続容積6530、6531および基準容積6520の一部を占有する。相互接続容積6530の弁6540の制御チャンバ側に存在する導管気体系6532の部分には、本明細書では、6533と表記されている。相互接続容積6531の弁6540の基準チャンバ側に存在する導管気体系6532の部分は、6535と称する。均等化前に制御チャンバ6510内に存在する導管気体系6532の部分には、本明細書では、6534と表記されている。均等化後に基準チャンバ6520内に存在する導管気体系6532の部分は、6536と称する。
【0399】
一例では、相互接続容積6530および6531は、狭い通路である可能性があり、それは、高い熱伝達を提供し、かつ容積6530および6531内の導管気体系6532が通路の固体の境界または壁の温度に近いことを確実にする。相互接続容積6530、6531またはマニホールド通路を包囲する構造の温度は、本明細書では壁温度(T
w)と呼ぶ。別の例では、容積6530、6531内の導管気体系6532の温度は、一部には、壁温度の関数である。制御チャンバ6534内の導管またはマニホールド気体系の部分は、制御チャンバ気体系6512と同じ温度でモデル化することができる。導管気体系6534の制御チャンバ部分は、制御チャンバ気体系6512と同じように膨張し、制御チャンバ気体系6512と同じ温度を有するものと考えることができる。基準チャンバ6536内のラインまたはマニホールド気体系の部分は、一部には壁温度の関数である温度によってモデル化することができる。別の例では、導管気体系6536の基準チャンバ部分は、基準チャンバ6520の境界と熱的に相互作用しないものとしてモデル化することができ、それにより、導管気体系部分6536の温度は、壁温度および基準チャンバ6520圧力の関数である。
【0400】
このセクションにおける式は、以下の命名法を使用する。
変数
γ:比熱比
n:ポリトロープ係数
p:圧力
V:容積
T:温度
上付き文字:
n:ポリトロープ係数
nCC:制御チャンバに対するポリトロープ係数
nR:基準チャンバに対するポリトロープ係数
下付き文字:
c:制御チャンバ系
CC:物理的制御チャンバ
f:均等化の終了時の値
i:i番目の値
IC:物理的相互接続容積またはマニホールド通路
IC_R:弁の基準チャンバ側における物理的相互接続容積
IC_CC:弁の制御チャンバ側における物理的相互接続容積
l:ラインまたは相互接続/マニホールド系
0:均等化の開始時の値
pmp:ポンプ
r:基準系
Ref:物理的基準チャンバ
w:相互接続容積の壁
制御チャンバ6510に対する式は、
図109Aにおける3つの別個の質量系の概念的モデルから、制御チャンバ質量6510、基準チャンバ質量6520および相互接続容積質量6530、6531の総容積が一定であると理解することにより、導出することができる。この関係は、以下のように、圧力均等化の開始から終了まで各i番目の値のセットに対してゼロである各閉鎖系6512、6522、6532の容積変化の和として表すことができる。
0=制御チャンバ質量の容積変化+相互接続質量の容積変化+基準チャンバ質量の容積変化
0=ΔV
ci+ΔV
ri+ΔV
li (13)
式中、ΔV
ci、ΔV
ri、ΔV
liのi番目の値は、同じ時点におけるこれらの値を表す。ポリトロープ過程および理想気体の法則の圧力/容積関係に基づいて、制御チャンバ気体系の容積変化(ΔV
ci)、基準気体系の容積変化(ΔV
ri)および導管気体系の容積変化(ΔV
li)に対して、式を展開することができる。制御チャンバ気体系6512のi番目の容積変化に対する式は、制御チャンバ質量6512のi番目の容積から均等化の開始時における制御チャンバ質量6512の容積を減じた値に等しい。時点iにおける制御チャンバ質量6512の容積は、以下のように、制御チャンバ6510の容積に、時点iにおける制御チャンバ6510圧力に対する最終制御チャンバ6510圧力の比を1/制御チャンバ6510のポリトロープ係数で累乗した値を乗じることから計算される。
制御チャンバ質量の現容積変化=制御チャンバ質量の現容積−制御チャンバ質量の初期容積
【0401】
【数4】
[この文献は図面を表示できません]
【0402】
基準気体系容積変化(ΔV
r)に対する式は、ポリトロープ過程に対する圧力/容積関係から導出される。基準チャンバ気体系6522のi番目の質量変化に対する式は、基準チャンバ質量6522のi番目の容積から均等化の開始時の基準チャンバ質量6522の容積を減じた値に等しい。時点iにおける基準チャンバ質量6520の容積は、以下のように、基準チャンバ6520の構造上の容積に、時点iにおける基準チャンバ6520圧力に対する初期基準チャンバ6520圧力の比を1/基準チャンバ6520のポリトロープ係数で累乗した値を乗じることから計算される。
基準チャンバ質量の現容積変化=基準チャンバ質量の現容積−基準チャンバ質量の初期容積
【0403】
【数5】
[この文献は図面を表示できません]
【0404】
相互接続気体系6532の容積変化(ΔV
l)に対する式は、系の一定質量気体から導出される(V*ρ=一定)。導管気体系6532のi番目の容積変化に対する式は、系の現質量から相互接続気体系6532の最初の容積を減じた値に等しい。相互接続またはライン気体系6532の現容積は、初期質量に、系の現密度に対する初期密度の比を乗じたものである。相互接続気体系6532の初期容積は、以下のように、
図109Aの上方の像に描かれている容積6534、6533および6535の和である。
相互接続質量の現容積変化=相互接続質量の現容積+相互接続質量の初期容積
【0405】
【数6】
[この文献は図面を表示できません]
【0406】
密度項ρ
l0、ρ
liは、均等化の開始時および均等化の間のいずれかの時点iでの導管気体系における気体の平均密度である。導管気体系6532は、異なる温度および圧力としての気体を含む。導管気体系6532は、6534と表記されている容積内の制御チャンバ6510内の容積内の気体と、6533と表記されている弁6540の制御チャンバ側のマニホールド通路内の気体と、6535と表記されている弁6540の基準チャンバ側におけるマニホールド通路内の気体と、6536と表記されている基準チャンバ内の気体とを含む。
【0407】
これらの4つの式を結合して、以下のように、圧力均等化の開始時における測定された圧力の対(P
CC 0、P
Ref 0)と、均等化中の任意の時点での測定された圧力の対(P
CC i,P
Ref i)と、均等化のおよそ終了時における制御チャンバ6510圧力(P
CCf)と、基準チャンバの一定容積(V
Ref)および相互接続容積(V
IC)との関数として、制御チャンバ6510の容積(V
CC)に対する式を展開することができる。
【0408】
【数7】
[この文献は図面を表示できません]
【0409】
式中、マニホールドまたはライン系6532の密度(ρ
l 0、ρ
l i)は、後述するように関連する温度とともに、初期圧力対(P
CC 0、P
Ref 0)および均等化中の任意の圧力対(P
CC i,P
Ref i)を用いて評価される。
【0410】
式(16)における導管気体系の密度(ρ
l 0、ρ
l i)は、各物理的容積(すなわち、制御チャンバ6510、基準チャンバ6520および相互接続容積6530、6531)に対して容積−加重平均密度から計算することができる。
【0411】
【数8】
[この文献は図面を表示できません]
【0412】
式中、Rは空気に対する普遍気体定数であり、温度T
IC_CC、T
IC_R、T
lrは、一部には、相互接続容積壁の温度の関数であり得る。別の例では、温度T
IC_CC、T
IC_R、T
lrは、一部には相互接続容積壁の温度および制御チャンバの気体温度(T
CCi)の関数であり得る。別の例では、温度T
IC_CC、T
IC_R、T
lrは、相互接続壁温度(T
w)であり得る。別の例では、温度は、制御チャンバ温度(T
CCi)であり得る。ΔV
riの値は、式(14)から計算される。ΔV
cf−ΔV
ciの値は、6534の容積であり、以下のように計算される。
【0413】
【数9】
[この文献は図面を表示できません]
【0414】
圧力均等化の前の導管気体系6532の密度は、各物理的容積(すなわち、制御チャンバ6510および相互接続容積6530、6531)に対する容積−加重平均密度である(18)と同様の式から計算することができる。
【0415】
【数10】
[この文献は図面を表示できません]
【0416】
式(18)で使用された制御チャンバ気体系容積の変化(ΔV
cf)は、以下のように、制御チャンバ6510の物理的容積に、量1から、初期制御チャンバ圧力に対する最終制御チャンバ圧力の比に1/制御チャンバのポリトロープ係数を乗算した値を減じた値を
乗じることから計算される。
【0417】
【数11】
[この文献は図面を表示できません]
【0418】
密度比(ρ
l 0/ρ
l f)が圧力比(P
l 0/P
l f)に等しいように、導管気体系6532に対する一定温度を想定することにより、制御チャンバ6510容積の推定値を導出することができる。推定をさらに簡略化するために、ポリトロープ係数の代わりに、比熱比(γ)が用いられる。このより簡略化した式では、制御チャンバ6510容積は、圧力均等化の開始時の測定された圧力対(P
CC 0、P
Ref 0)および均等化の終了時の測定された圧力対(P
CC f、P
Ref f)と、基準チャンバの一定容積(V
Ref)および相互接続容積(V
IC)との関数である。
【0419】
【数12】
[この文献は図面を表示できません]
【0420】
3つの閉鎖系6512、6522、6532内の気体は、理想気体としてモデル化することができ、そのため、以下のように、初期状態および新たな圧力または容積から温度を求めることができる。
【0421】
【数13】
[この文献は図面を表示できません]
【0422】
制御チャンバ内の気体の初期温度(T
CC0)は、相互接続容積壁の温度と、プリチャージ圧力6316(
図108A)と、プリチャージの直前の制御チャンバ6510内の圧力6306とから計算することができる。制御容積内のガスのプリチャージ圧力への圧縮は、ポリトロープ過程としてかつ式(23)における理想気体の法則を用いてモデル化することができる。プリチャージの前の制御チャンバ6510圧力6306は、本明細書では圧送圧力(Ppmp)と呼ぶ。
【0423】
【数14】
[この文献は図面を表示できません]
【0424】
膨張中の第iステップにおける制御チャンバ6510内の気体の温度(T
CCi)は、
以下のように、式(23)を用いて、初期制御チャンバ6510温度と、プリチャージ圧力6316(
図108A)と、i番目の制御チャンバ6510圧力(P
CCi)とから計算することができる。
【0425】
【数15】
[この文献は図面を表示できません]
【0426】
式14、17、19、21、25で使用される制御チャンバ気体系に対するポリトロープ係数の値(nCC)は、制御チャンバ6510の容積によって変化し、小さい容積に対するおよそ1から大きい容積に対するおよそ比熱比までの範囲であり得る。空気および主に二原子分子の他の系に対する比熱比は、1.4である。一例では、(+FMSの場合の)nCCの値は、以下のように、推定された制御チャンバ容積(式22)の関数として表すことができる。
【0427】
nCC=1.4−3.419×10
−5(23.56−V
CCEst)
3.074 (26)
制御チャンバの容積(V
CC)とポリトロープ係数(nCC)との関係を求める方法については、以下のセクションに記載する。
ポリトロープ−FMSアルゴリズム
上述した+FMSアルゴリズムに類似する−FMSアルゴリズムを展開して、
図105における制御チャンバ6171の容積を−FMSプロセスに対する制御チャンバ6171および基準チャンバ6212の圧力から計算することができる。−FMSプロセスでは、第1チャンバ(たとえば、6171)は、既知の第2チャンバ(たとえば、6212)より低い圧力にプリチャージされる。
【0428】
ここで
図109Bを参照すると、制御チャンバ6510、基準チャンバ6520およびマニホールドライン6530、6531の構造内の気体は、構造6510、6520、6530、6531を通して混合しないが、膨張し、収縮しかつ移動する3つの気体質量6512、6532、6522としてモデル化することができる。3つの質量6512、6522、6532の熱力学的モデルに基づいて、測定された制御チャンバ6510および基準チャンバ6520の圧力から、制御チャンバ6510の容積を計算することができる。−FMSアルゴリズムでは、制御チャンバ質量6512は、均等化プロセスの開始時に制御チャンバ6510を占有する気体である。基準チャンバ質量6522は、均等化プロセスの終了時に基準チャンバ6520を占有する気体である。マニホールド気体6532は、制御チャンバと基準チャンバとの間の接続導管を含む、制御チャンバ気体6512と基準チャンバ気体6522との間の構造の平衡状態を満たす。
【0429】
そして、3つの概念的閉鎖系6512、6532、6522の容積および温度を、3つの閉鎖系6512、6532、6522に対する初期状態、圧力対、熱伝達想定および一定総容積の制約から計算することができる。圧力均等化は、各容積6510、6520、6530、6531に対する異なるポリトロープ係数を用いて、各々における熱伝達の相対的重要性を取り込むことによってモデル化することができる。3つの系6512、6522、6532に対する恒量、理想気体およびポリトロープ過程式を結合し配列して、制御チャンバ6510の容積を計算することができる。以下の段落は、−FMSプロセスの圧力均等化ステップ中に測定された圧力に基づく制御チャンバ6510容積の計算を可能にする式の1つまたは複数のセットの導出について記載する。
−FMSに対する閉鎖系の説明
図109Bにおける上方の像は、−FMSプロセスにおける圧力均等化の開始時の3つの閉鎖系6512、6522、6532の位置を提示する。下方の像は、圧力均等化の終了時の3つの閉鎖系6512、6522、6532の位置を提示する。均等化プロセス中、閉鎖系6512、6522、6532の位置は、
図109Bに提示する2つの極値の間にある。例として、制御チャンバ系6512および基準チャンバ系6522のいずれも、それらのそれぞれの構造を満たさない。以下の段落は、閉鎖系をより詳細に提示する。
【0430】
−FMSアルゴリズムにおける制御チャンバ気体系6512は、圧力均等化前に制御チャンバ6510を充填する気体である。圧力均等化中、最初に高い方の圧力基準チャンバ気体系6522が、膨張し、マニホールド気体系6532を制御チャンバ6510内に押し込む際、制御チャンバ気体系6512は圧縮される。制御チャンバ気体系6512は、−FMSプロセスの圧力均等化中、ポリトロープ圧縮によってモデル化することができ、そこでは、圧力および容積は、以下の式によって関連づけられる。
【0431】
p
0V
ccnCC=定数
式中、p
0は制御チャンバ6510内の初期圧力であり、V
ccは制御チャンバ6510の容積であり、nCCは制御チャンバ6510に対するポリトロープ係数である。
【0432】
−FMSアルゴリズムにおける基準気体系6522は、均等化後の基準容積6520全体を占有する気体である。基準気体系6522は、均等化中、基準チャンバ6520内のより高い圧力の気体が、マニホールド気体系6532を基準チャンバ6520から押し出して制御チャンバ6510に向かわせる際、膨張する。
図93に示す一例では、(
図93において174と表記されている)基準チャンバは、圧力均等化中の圧縮または膨張過程を断熱的としてモデル化することができるように十分に開放しているかまたは内部特徴/要素がなく、そのため、ポリトロープ係数(nR)は、およそチャンバ内に存在する気体の比熱比に等しく設定することができる。基準チャンバ気体6522の圧力および容積は、以下の式によって関連づけられる。
【0433】
p
R0V
RefnR=定数
式中、p
R0は初期基準圧力であり、V
Refは基準チャンバの容積であり、nRは、基準チャンバに対する比熱比である(nR=1.4空気)。別の例では、基準チャンバ6520が、近等温膨張を提供する、連続気泡フォーム、ワイヤメッシュ、粒子等の熱吸収材料で充填されている場合、基準チャンバに対するポリトロープ係数(nR)は、およそ1.0の値を有する可能性がある。
【0434】
−FMSプロセスでは、導管またはマニホールド気体系6532は、均等化の前に、相互接続容積6530、6531および基準チャンバ6520の一部6536の容積すべてを占有する。均等化後、導管気体系6532は、相互接続容積6530、6531および制御チャンバ6510の一部6534を占有する。相互接続容積6530の弁6540の制御チャンバ側に存在する導管気体系6532の部分には、本明細書では、6533と表記されている。相互接続容積6531の弁6540の基準チャンバ側に存在する導管気体系6532の部分は、6535と称する。制御チャンバ6510内に存在する導管気体系6532の部分には、本明細書では、6534と表記されている。基準チャンバ6520内に存在する導管気体系6532の部分は、6536と称する。
【0435】
一例では、相互接続容積6530および6531は、狭い通路である可能性があり、それは、高い熱伝達を提供し、容積6530および6531内の導管気体系6532が通路の固体の境界または壁の温度に近いことを確実にする。相互接続容積6530、6531またはマニホールド通路を包囲する構造の温度は、本明細書では壁温度(T
w)と呼ぶ。別の例では、容積6530、6531内の導管気体系6532の温度は、一部には壁温度
の関数である。制御チャンバ6534内の導管気体系の部分は、制御チャンバ気体系6512と同じ温度でモデル化することができる。導管気体系6534の制御チャンバ部分は、制御チャンバ気体系6512と同じように膨張し、制御チャンバ気体系6512と同じ温度を有するものと考えることができる。基準チャンバ6536内のラインまたはマニホールド気体系の部分は、一部には壁温度の関数である温度によってモデル化することができる。別の例では、導管気体系6536の基準チャンバ部分は、基準チャンバ6520の境界と熱的に相互作用しないものとしてモデル化することができ、それにより、基準チャンバにおける導管気体系部分6536の温度は、壁温度および基準チャンバ6520圧力の関数である。
【0436】
このセクションにおける式は、以下の命名法を使用する。
変数
γ:比熱比
n:ポリトロープ係数
p:圧力
V:容積
T:温度
上付き文字:
n:ポリトロープ係数
nCC:制御チャンバに対するポリトロープ係数
nR:基準チャンバに対するポリトロープ係数
下付き文字:
c:制御チャンバ系
CC:物理的制御チャンバ
f:均等化の終了時の値
i:i番目の値
IC:物理的相互接続容積またはマニホールド通路
IC_R:弁の基準チャンバ側における物理的相互接続容積
IC_CC:弁の制御チャンバ側における物理的相互接続容積
l:ラインまたはマニホールド/相互接続系
0:均等化の開始時の値
pmp:ポンプ
r:基準系
Ref:物理的基準チャンバ
w:相互接続容積の壁温度
制御チャンバ6510に対する式は、
図109Bにおける3つの別個の質量系の概念的モデルから、制御チャンバ質量6512、基準チャンバ質量6522および相互接続容積質量6532の総容積が一定であると理解することにより、導出することができる。この関係は、以下のように、圧力均等化の開始から終了まで各i番目の値のセットに対してゼロである各閉鎖系6512、6522、6532の容積変化の和として表すことができる。
0=制御チャンバ質量の容積変化+相互接続質量の容積変化+基準チャンバ質量の容積変化
0=ΔV
ci+ΔV
ri+ΔV
li (13)
式中、ΔV
ci、ΔV
ri、ΔV
liのi番目の値は、同じ時点におけるこれらの値を表す。ポリトロープ過程および理想気体の法則の圧力/容積関係に基づいて、制御チャンバ気体系の容積変化(ΔV
ci)、基準気体系の容積変化(ΔV
ri)および導管気体系の容積変化(ΔV
li)に対して、式を展開することができる。制御チャンバ気体系6512のi番目の容積変化に対する式は、制御チャンバ質量6512のi番目の容積から均等化の開始時における制御チャンバ質量6512の容積を減じた値に等しい。時点iにおけ
る制御チャンバ質量6512の容積は、以下のように、制御チャンバ6510の容積に、時点iにおける制御チャンバ6510圧力に対する最終制御チャンバ6510圧力の比を1/制御チャンバ6510のポリトロープ係数で累乗した値を乗じることから計算される。
制御チャンバ質量の現容積変化=制御チャンバ質量の現容積−制御チャンバ質量の初期容積
【0437】
【数16】
[この文献は図面を表示できません]
【0438】
基準気体系容積変化(ΔV
r)に対する式は、ポリトロープ過程に対する圧力/容積関係から導出される。基準チャンバ気体系6522のi番目の質量変化に対する式は、基準チャンバ質量6522のi番目の容積から均等化の開始時の基準チャンバ質量6522の容積を減じた値に等しい。時点iにおける基準チャンバ質量6520の容積は、以下のように、基準チャンバ6520の構造上の容積に、時点iにおける基準チャンバ6520圧力に対する初期基準チャンバ6520圧力の比を1/基準チャンバ6520のポリトロープ係数で累乗した値を乗じることから計算される。
基準チャンバ質量の現容積変化=基準チャンバ質量の現容積+基準チャンバ質量の初期容積
【0439】
【数17】
[この文献は図面を表示できません]
【0440】
相互接続気体系6532の容積変化(ΔV
l)に対する式は、系の一定質量気体から導出される(V*ρ=一定)。導管またはマニホールド気体系6532のi番目の質量変化に対する式は、系6532の現質量から系6532の最初の質量を減じた値に等しい。相互接続またはマニホールド気体系6532の現質量は、初期質量に、系6532の現密度に対する初期密度の比を乗じたものである。相互接続気体系6532の初期容積は、以下のように、
図109Bに描かれている容積6534、6533および6535の和である。
相互接続質量の現容積変化=相互接続質量の現容積+相互接続質量の初期容積
【0441】
【数18】
[この文献は図面を表示できません]
【0442】
密度項ρ
l0、ρ
liは、均等化の開始時および均等化中のいずれかの時点iでの導管気体系における気体の平均密度である。導管気体系6532は、異なる温度および圧力としての気体を含む。導管気体系6532は、6534と表記されている容積内の制御チャンバ6510内の容積内の気体と、6533と表記されている弁6540の制御チャンバ側のマニホールド通路内の気体と、6535と表記されている弁6540の基準チャンバ側におけるマニホールド通路内の気体と、6536と表記されている基準チャンバ内の気
体とを含む。
【0443】
これらの4つの式を結合して、以下のように、圧力均等化の開始時における測定された圧力の対(P
CC 0、P
Ref 0)と、均等化中の任意の時点での測定された圧力の対(P
CC i,P
Ref i)と、均等化のおよそ終了時における基準チャンバ6520圧力(P
Ref f)と、基準チャンバの一定容積(V
Ref)および相互接続容積(V
IC)との関数である、制御チャンバ6510の容積(V
CC)に対する式を展開することができる。
【0444】
【数19】
[この文献は図面を表示できません]
【0445】
式中、ライン系6532の密度(ρ
l 0、ρ
l i)は、後述するように関連する温度とともに、初期圧力対(P
CC 0、P
Ref 0)および均等化中の任意の圧力対(P
CC i,P
Ref i)を用いて評価される。
【0446】
式(29)における導管気体系の密度(ρ
l 0、ρ
l i)は、各物理的容積(すなわち、制御チャンバ6510、基準チャンバ6520および相互接続容積6530、6531)に対して容積−加重平均密度から計算することができる。
【0447】
【数20】
[この文献は図面を表示できません]
【0448】
式中、Rは空気に対する普遍気体定数であり、温度T
IC_CC、T
IC_R、T
lCは、一部には相互接続容積壁の温度の関数であり得る。別の例では、温度T
IC_CC、T
IC_R、T
lCrは、一部には相互接続容積壁の温度および基準チャンバの気体温度(T
Refi)の関数であり得る。別の例では、温度T
IC_CC、T
IC_R、T
lCは、相互接続壁温度(T
w)であり得る。別の例では、温度は、基準チャンバ温度(T
Ref i)であり得る。
【0449】
式(31)に対するΔV
cfの値は、式(27)から計算され、最終制御チャンバ圧力(P
CCf)はP
CCiに使用され、V
CC EstはV
CCに使用される。
式(31)に対するΔV
riの値は、式(28)から計算される。
【0450】
圧力均等化の前の導管気体系6532の密度は、各物理的容積(すなわち、制御チャンバ6510および相互接続容積6530、6531)に対する容積−加重平均密度である式(31)と同様の式から計算することができる。
【0451】
【数21】
[この文献は図面を表示できません]
【0452】
密度比(ρ
l 0/ρ
l f)が圧力比(P
l 0/P
l f)に等しいように、導管またはマニホールド気体系6532に対する一定温度を想定することにより、制御チャンバ6510容積の推定値を導出することができる。推定をさらに簡略化するために、ポリトロープ係数の代わりに、比熱比(γ)が用いられる。このより簡略化した式では、−FMSプロセスにおける制御チャンバの容積(V
CC)は、3つの圧力(すなわち、圧力均等化の開始時の測定された圧力対(P
CC 0、P
Ref 0)および単一の均等化圧力(P
f))とともに、基準チャンバの一定容積(V
Ref)および相互接続容積(V
IC)と、基準チャンバに対するポリトロープ係数(nR)および制御チャンバに対するポリトロープ係数(nCC)との関数として表すことができる。
【0453】
【数22】
[この文献は図面を表示できません]
【0454】
3つの閉鎖系6512、6522、6532内の気体は、理想気体としてモデル化することができ、そのため、以下のように、初期状態および新たな圧力または容積から温度を求めることができる。
【0455】
【数23】
[この文献は図面を表示できません]
【0456】
制御チャンバ内の気体の初期温度(T
CC 0)は、相互接続容積壁の温度と、プリチャージ圧力6316(
図108B)と、プリチャージの直前の制御チャンバ6510内の圧力6306(
図108Bを参照)とから計算し、それをポリトロープ過程としてかつ式(23)における理想気体の法則を用いてモデル化することができる。プリチャージの前の制御チャンバ圧力6306は、本明細書では圧送圧力(Ppmp)と呼ぶ。
【0457】
【数24】
[この文献は図面を表示できません]
【0458】
制御チャンバ気体系に対するポリトロープ係数の値(nCC)は、制御チャンバ6510の容積によって変化し、小さい容積に対するおよそ1から大きい容積に対するおよそ比熱比までの範囲であり得る。空気および主に二原子分子の他の系に対する比熱比は、1.4である。一例では、−FMSの場合のnCCの値は、以下のように、推定された制御チャンバ容積(式21)の関数として表すことができる。
【0459】
nCC=1.507−1.5512×10
−5(23.56−V
CC Est)
3.4255 (34)
制御チャンバの容積(V
CC)とポリトロープ係数(nCC)との関係を求める方法については、以下のセクションで記載する。
ポリトロープ係数n
CCを求める
ポリトロープ係数n
CCの値は、経験的にまたは解析的に求めることができる。可能な理解において、ポリトロープ係数は、構造との熱伝達による気体のあり得る温度を、圧力変化によってもたらされる温度変化と比較する。ポリトロープ係数の値は、圧力変化、圧力変化の速度、ならびに気体体積の形状およびサイズによって変化する可能性がある。
【0460】
一実施形態では、ポリトロープ係数n
CCは、既知の容積を用いて制御チャンバ6171(
図105)を生成し、+FMSプロセスまたは−FMSプロセスを実行して、均等化中に制御チャンバおよび基準チャンバの圧力を記録することによって、実験的に求められる。式(17)、(18)、(20)を含むポリトロープ+FMSアルゴリズムは、制御チャンバに対するポリトロープ係数(n
CC)の値を解くために、圧力測定値のセットおよび既知の制御チャンバ容積(V
CC)に適用される。ポリトロープ係数を求めるこのプロセスは、充填ストロークの後の制御チャンバ6171の典型である1.28mlから、送達ストロークの後の制御チャンバ6171の典型である23.56mlの範囲のいくつかの異なる容積に対して繰り返された。n
CCの確定の正確さを向上させるために、各容積に対して何回か、FMSプロセスを繰り返すことができる。+FMSプロセスに対するこの実験的確定の一例を
図110Aに示し、そこでは、6つの異なる容積に対して式(22)によって計算されるように、制御チャンバの推定された容積(V
CC Est)に対して、n
CCの値がプロットされている。データに指数方程式をあてはめて、推定された容積制御チャンバに関してポリトロープ係数を表す式(26)を生成した。
図110Aにおけるプロットは、単純な式によってデータをより適切にあてはめるために、値1.4−n
CC対23.56−V
CC Estをプロットしている。
【0461】
同様に、既知の制御チャンバ容積に−FMSプロセスを適用し、均等化中に制御チャンバおよび基準チャンバの圧力を記録することによって、−FMSに対するポリトロープ係数(n
CC)を求めることができる。式(30)、(31)、(32)を含むポリトロープ−FMSアルゴリズムは、制御チャンバに対するポリトロープ係数(n
CC)の値を解くために、圧力測定値のセットおよび既知の制御チャンバ容積(V
CC)に適用される。ポリトロープ係数を求めるこのプロセスは、いくつかの異なる容積に対して繰り返された。−FMSプロセスに対するn
CCに対する結果としての値の例を
図110Bに示し、そこでは、6つの異なる容積に対して式(33)によって計算されるように、制御チャンバの推定された容積(V
CC Est)に対して、n
CCの値がプロットされている。データに指数方程式をあてはめて、推定された容積制御チャンバ(V
CC Est)に関して
ポリトロープ係数(n
CC)を表す式(34)を生成した。
図110Bにおけるプロットは、単純な式によってデータをより適切にあてはめるために、値1.507−n
CC対23.56−V
CC Estをプロットしている。
【0462】
一実施形態では、取付プレート170(
図92)の正面に機械加工された容積を取り付けることにより、一定の既知の制御チャンバ容積が生成され、それにより、機械加工された容積は、取付プレートに封止され、制御チャンバを圧力源および圧力センサに接続するポート173Cを覆う。
VCCに対するポリトロープFMS校正手続き
ここで
図111および
図112を参照すると、
図111および
図112は、2チャンバFMSプロセスおよびポリトロープFMSアルゴリズム中に記録された圧力データから制御チャンバの容積を計算するフローチャートを提示する。
図111のフローチャートは、制御チャンバ(V
CC)の容積を計算するために必要な圧力データが最小限である比較的単純なプロセスを提示する。
図112のフローチャートは、均等化プロセス中に複数の圧力対を必要とする、制御チャンバ(V
CC)の容積をより正確に計算するより複雑な計算について記載する。
【0463】
図111に提示する単純なポリトロープFMS計算手続きは、プロセッサまたはコントローラによって実行され、上述した+FMSプロセスまたは−FMSプロセスのいずれかを完了することと、均等化プロセス中に記録された複数の圧力対をメモリに格納することとを含むステップ6400で開始する。ステップ6614において、コントローラは、複数の圧力対を解析して、均等化プロセスが開始したときの制御チャンバ圧力および基準圧力として初期制御チャンバ圧力(P
CC 0)および初期基準圧力(P
Ref 0)を特定する。均等化の開始または初期圧力を特定する方法または手続きについては、ポンプ送達容積測定と題する先のセクションに記載されており、そこでは、初期制御チャンバ圧力および基準チャンバ圧力はPdおよびPrと称される。ステップ6618において、コントローラは、複数の圧力対を解析して、制御チャンバ圧力および基準チャンバ圧力が、略均等化され、または十分低い割合で変化しているとき、最終制御チャンバ圧力(P
CC f)および最終基準圧力(P
Ref f)を特定する。制御チャンバ圧力および基準チャンバ圧力が略均等化したときを特定する1つまたは複数の方法については、ポンプ送達体積測定と題する先のセクションに記載されている。
【0464】
別法として、FMSプロセス6400中、制御チャンバおよび基準チャンバに対する初期圧力および最終圧力を特定するステップ6614および6618が発生する場合がある。コントローラまたはFPGAプロセッサは、初期圧力および最終圧力を特定し、それらの値のみを格納することができる。一例では、初期圧力は、接続弁が開放するときの制御チャンバ圧力および基準圧力である可能性があり、最終圧力は、均等化の後に基準チャンバおよび制御チャンバを通気するように第2弁が開放するときの制御チャンバ圧力および基準圧力である可能性がある。
【0465】
ステップ6620において、+FMSプロセスの場合は式(22)、−FMSの場合は式(34)を用いて、初期圧力および最終圧力から制御チャンバの容積が推定される。ステップ6641において、+FMSプロセスの場合、式(26)において制御チャンバ容積の結果として推定値(V
CC Est)を用いて、制御チャンバに対するポリトロープ係数(n
CC)が計算される。このポリトロープ値(n
CC)および推定された容積(V
CC Est)は、初期圧力および最終圧力の対とともに、+FMSプロセスの場合は式(17)、(18)、(19)に供給され、制御チャンバ容積(V
CC)が計算される。−FMSプロセスの場合、ステップ6641において、式34を用いてポリトロープ係数(n
CC)が計算され、制御チャンバ容積(V
CC)が式(30)、(31)、(32)を用いて計算される。
【0466】
図105におけるコントローラ61100等のプロセッサは、格納された圧力対に対してステップ6614〜6618(
図111)を実行することができる。代替実施形態では、プロセッサ61100は、圧力均等化の間、圧力対を格納することなくステップ6614およびステップ6618を実行することができる。
【0467】
図112に、制御チャンバ容積(V
CC)のより複雑な計算について記載する。FMSを計算し6400、初期制御チャンバ圧力(P
CC 0)および基準チャンバ圧力(P
Ref 0)を特定し6614、最終制御チャンバ圧力(P
CCf)および最終基準チャンバ圧力(P
Ref f)6618を特定し、制御チャンバ容積(V
CC Est)6620を推定する初期ステップは、
図111に対して上述したものと同じである。
【0468】
ステップ6624、6628、6630および6640は、ポンプ送達体積測定と題するセクションにおいて上述した計算ステップと同様であるが、制御チャンバ容積(V
CC)の計算が、+FMSプロセスの場合は式(17)、(18)、(19)に基づき、−FMSプロセスの場合は式(30)、(31)、(32)に基づくことが異なる。ステップ6624において、制御チャンバ圧力(P
CC i)および基準チャンバ圧力(P
r i)の圧力対が、補間によって先の後続する圧力対と相関されて、厳密に同時に発生した圧力対(P
CC i*、P
r i*)が計算される。他の実施形態では、ステップ6624はスキップされ、後続する計算は、未補正圧力対(P
CC i、P
r i)を使用する。ステップ6628において、各圧力対に対して、制御チャンバ容積(V
CC)が計算される。ステップ6630、6640において、ポンプ送達体積測定と題するセクションに記載する最適化アルゴリズムが実行されて、最適最終圧力対(P
CC f、P
Ref f)および結果としての制御チャンバ容積(V
CC)が特定される。
【0469】
代替実施形態では、
図105においてコントローラ61100とは別個のプロセッサにおいて、
図111、
図112に記載されている計算を実行することができる。計算は、たとえば、FPGAにおいて実行することができ、FPGAもまた、アクチュエータ、弁および圧力センサからの入出力信号を処理する。
ポリトロープFMSアルゴリズムによる空気検出
ここで
図103を参照すると、本発明の別の態様は、ポンプチャンバ181内の空気の存在、および存在する場合、存在する空気の体積の確定を含む。こうした確定は、たとえば、カセット24から空気を除去するためにプライミング手順が適切に行われることを確実にするのに役立ち、かつ/または空気が患者に送達されないことを確実にするのに役立つように、重要である可能性がある。いくつかの実施形態では、たとえば、ポンプチャンバ181の底部の下部開口部187を通して患者に流体を送達するとき、ポンプチャンバに閉じ込められた空気または他の気体は、ポンプチャンバ181内に残る傾向がある可能性があり、気体の体積がポンプチャンバ181の有効デッドスペースの容積より大きくない限り、患者に圧送されることが阻止される。後述するように、本発明の態様に従って、ポンプチャンバ181内に収容された空気または他の気体の体積を求めることができ、気体の体積が、ポンプチャンバ181の有効デッドスペースの容積より大きくなる前に、ポンプチャンバ181から気体をパージすることができる。
【0470】
充填ストロークの終了時、ポンプチャンバ181内の空気の量の確定を行うことができ、したがって、それは、圧送プロセスを妨げることなく行うことができる。たとえば、膜15およびポンプ制御領域1482が制御チャンバ172の壁と接触するように、膜15/領域1482がカセット24から離れるように引っ張られる充填スロトークの終了時。
図107に記載したような+FMS手続きを実行して、上述したように、圧力均等化を測定し、制御チャンバ171(
図11)の見かけの容積を計算することができる。しかしながら、膜がスペーサ50から離れている場合、充填ストロークの後の+FMS手続きはま
た、膜15の液体側におけるあらゆる気体または気泡の体積も測定する。
【0471】
膜15が制御チャンバ壁172に接しているときの制御チャンバの容積は、概して、設計および製造プロセスに基づいて既知である。この最小制御チャンバ容積はV
CC Fixである。充填コマンドの終了時に+FMS手続きの間に測定された制御チャンバ容積は、V
CC+である。測定された制御チャンバ容積(V
CC+)がV
CC Fixより大きい場合、制御システム66またはコントローラ1100は、制御チャンバ容積(V
CC−)を計算する−FMS手続きを命令することができる。−FMS手続きが、実質的に+FMSと同じ制御チャンバ容積を与える場合、コントローラは、充填ラインが閉塞されていることを認識することができる。別法として、−FMS手続きがより小さい制御チャンバ容積を生成する場合、コントローラは、以下のように、気泡の和のサイズ(V
AB)として差を認識する。
【0472】
V
AB=V
CC+−V
CC− (30)
膜15がスペーサ50に接しているとき、送達ストロークの終了時、同様の方法を使用することができる。+FMS手続きは、膜15がスペーサ50に接しているとき、液体における空気の体積を測定するのではなく、制御チャンバ171内の空気の体積のみを測定する。しかしながら、−FMS手続きは、スペーサ50から離れるように膜を引っ張り、膜15のドライ側(すなわち、制御チャンバ171)および液体側(ポンプチャンバ181)における空気の体積を測定する。したがって、送達ストロークの終了時、液体における空気の体積(V
AB)もまた求めることができる。
【0473】
V
AB=V
CC−−V
CC+ (31)
空気校正
本開示のさらなる態様は、FMSプロセスに関連づけられた圧力測定とは無関係に圧力測定を用いる制御チャンバ容積6171(
図105)の直接測定により、−FMSプロセスおよび+FMSプロセスを校正する方法を含む。2チャンバFMSプロセスを校正するこの方法は、本明細書では空気校正方法と呼ぶ。このセクションにおけるハードウェアの言及は、
図105に向けられるが、等価なハードウェアコンポーネント他の空気圧作動式ダイヤフラムポンプにも等しく適用される。空気校正方法は、限定されないが、制御チャンバ容積の全範囲にわたり2チャンバFMS方法の正確さを向上させ、基準チャンバ6212に対する名目容積(V
Ref)および相互接続容積6204、6205、6207、6209の容積(V
IC)の使用を可能にすることを含む、複数の利点を提供する。本方法はまた、基準チャンバ6212および相互接続容積6204、6205、6207、6209の実際の容積と名目容積との差の補償も可能にする。本方法はまた、制御チャンバ6171、基準チャンバ6212および相互接続容積6204、6205、6207、6209を含む2チャンバFMSハードウェアの種々の容積における実際の熱伝達と想定された熱伝達と差の補償も可能にする。
【0474】
空気校正方法は、制御チャンバ6171圧力測定値を押しのけられた液体の測定値と結合して、制御チャンバ壁6172と触れるときとカセット624のスペーサ650と接触するときとの間のいくつかの膜6148位置において、制御チャンバ6171の容積を測定する。制御チャンバ容積のこれらの測定値(VCIso)は、制御チャンバ容積に対するFMS校正値(VFMS i)と比較されて、計算されたFMS容積各々(VFMS i)に対する校正係数(CCal i)が計算される。そして、CCal i値対VFMS i値のプロットに校正式をあてはめることができる。そして、校正式を用いて、制御チャンバ容積計算の正確さを向上させることができる。空気校正方法は、+FMSプロセスおよび−FMSプロセスの両方に適用することができ、各々に対して別個の校正式をもたらすことができる。
+FMSの場合の空気校正
図113におけるフローチャート6700は、空気校正方法の例を記載している。空気校正に対するハードウェア設定は、液体でプライミングされる空気圧駆動式ポンプと、(
図105において液体出口6191と表記されている)重量計またはメスシリンダに配管された出口とを含む。ハードウェア設定はまた、制御容積またはチャンバ6171、圧力センサ6222、6224、複数の弁6214、6220および基準容積またはチャンバ6212等、2チャンバFMSハードウェアも含む。空気圧弁6214、6220に命令し、圧力センサ6222、6224からの圧力を記録し、2チャンバFMS手続きおよび計算を実行するコントローラ61100もまた含まれている。
【0475】
ハードウェア設定の一例は、
図10に示す、カセット24およびカセット24が設置されるAPDサイクラ14の組合せである。この例では、カセット24の出力は、重量計、メスシリンダまたは他の流体測定装置に配管される。
【0476】
再び
図113と
図105におけるハードウェア関連を参照すると、第1ステップ6705は、ポンプまたはカセット624および出力ラインを液体でプライミングする。プライミングはまた、ポンプチャンバ6181に流体を充填する。
【0477】
サイクル6710に対して括弧によって示すように、手続きは、空気校正方法の間、ステップ6715〜6740を通して複数回、循環する。空気校正サイクル6710の第1ステップは、i=1の場合に制御チャンバ容積(VFMSi)の暫定的な測定値を生成する+FMSプロセス6715を完了する。空気校正手続きは、ステップ6715において代替的に使用することができる他の容積測定技法に対して、等しく適用される。ステップ6720において、制御チャンバ6171内の圧力は、第1弁6220を制御し、気体がチャンバ壁6172およびガスケット6148と熱平衡になるのを可能にするように、所定期間気体を保持することにより、およそP1まで上昇する。一例では、圧力は、15秒〜30秒間、P1で保持される。別の例では、圧力はP1まで上昇し、空気圧弁6220は閉鎖され、制御チャンバ6171内の気体は、壁6172、6148と熱平衡状態になる。弁6220および6214を閉鎖することにより、制御チャンバ6171は隔離される。ステップ6720の終了時の圧力は、Pliに記録される。
【0478】
ステップ6725において、カセット624の液圧弁6190が解放されるかまたは開放され、それにより、制御チャンバ6171内の圧力が、液圧弁6190を通って(
図105において出気体出口6191と表記されている)重量計の上に流体を押し出すことができる。ステップ6730において、制御チャンバ6171内の気体または空気が、ポンプ側6181の液体との圧力平衡に達し(それは迅速に発生する)、制御チャンバ壁6172、6148と熱平衡状態になり(それには数秒間かかる可能性がある)ように、液圧弁6190は十分長く開放して保持される。一例では、液圧弁は、15秒間〜30秒間開放して保持される。ステップ6735において、制御チャンバ6171内の圧力はP2iにおいて記録され、重量計の変化はM
iで記録される。そして、液圧弁6190は閉鎖される。
【0479】
ステップ6740において、以下のように、第1圧力および第2圧力(P1i、P2i)ならびに押しのけられた液体質量(M
i)から、校正係数(CCal)が計算される。
【0480】
【数25】
[この文献は図面を表示できません]
【0481】
式中、V
CIso iは、以下のように、i番目の位置における制御チャンバの等温確定容積であり、
【0482】
【数26】
[この文献は図面を表示できません]
【0483】
式中、ρはカセット624内の液体の密度であり、V
FMS iは、+FMSプロセスに対して式(17)、(18)、819)毎に計算される。
膜6148がポンプ容積またはチャンバ6181の反対側に達し、スペーサ650と接触するまで、サイクル5610を複数回繰り返すことができる。ステップ6745において、FMS確定容積CCal(VVMS)の関数としての校正係数に対する式が、データにあてはめられる。ここで、すべてのあり得る容積に対して制御チャンバ6171容積のより正確な測定値を得るために、以下のように、先のセクションで記載した制御チャンバ6171の容積に対するFMS計算の出力を補正することができる。
【0484】
V
CC=V
FMS・C
cal(V
FMS) (37)
−FMSの場合の空気校正
−FMSプロセスの場合もまた、
図113に記載する空気校正手続きによって校正係数を得ることができる。−FMS空気校正方法では、ポンプチャンバ6181および重量計(たとえば、液体出口6191)への流体ラインがプライミングされ(ステップ6705)、重量計上の容器に部分的に液体が充填される。ステップ6715において、−FMSプロセスが完了して、式(30)、(31)、(32)を用いて制御チャンバ6171容積の−FMS測定値(VFVMS i)がもたらされる。ステップ6720において、制御チャンバ6171の圧力が、周囲圧力より十分低い圧力P1にチャージされる。ステップ6725において、制御チャンバ6171内の低い圧力が、ポンプチャンバ6181内にかつ重量計の容器から流体を引き出す。ステップ6730〜ステップ6745は、+FMS空気校正手続きに対して上述したものと同じである。−FMS計算容の関数としての校正係数積CCal(VFMS)に対する結果としての式を、−FMS結果に適用することができる。
さらに高精度な空気校正
V
CISO i−1の値およびV
CISO i+1の値を考慮することにより、V
CISO i値の正確さをさらに向上させることができる。
図113に記載した手続きは、制御チャンバ6171容積を逐次求め、それにより、それらの値が関連するようにすることができる。したがって、V
CISO iの値を、i−1番目の位置からi番目の位置へ、i+1番目の位置へ等、平滑に変化するように期待することができる。近くの結果に対するこの依存性は、ポンプによって移動する液体の体積がわずかであるため正確に測定することがより困難である、最大値および最小値において特に有用である。いかなる制御チャンバ容積(VCIso i)の値も、以下のように、先の制御チャンバ容積(V
CIso
i−1)に押しのけられた液体体積を足したもの、続く制御チャンバ体積(V
CIso
い+1)から押しのけられた液体体積を引いたものを含む、2つの他の独立した測定値によって表すことができる。
【0485】
V
CIso i=V
CIso i−1+ρ・m
i−1=V
CIso i=V
CIso i+1−ρ・m
i+1
したがって、VCIsoの値を、隣接する値および押しのけられた体積(ρ・m
i−1
)と平均することによりより高精度にすることができる。
【0486】
【数27】
[この文献は図面を表示できません]
【0487】
結果としての平均された値V
CIso i,1を、式(38)の右辺に挿入することにって再度平均して、V
CIso i,2をもたらすことができる。V
CIso iの値が変化を止めるかまたはある値に収束するまで、この反復的平均プロセスを続けることができる。
【0488】
このプロセスは、第1容積と最後の容積とに対してわずかに異なり、それは、1つの辺にのみ値があるためである。第1容積V
CIso1,1および最後の容積V
CIso N,1を平均する式は以下の通りである。
【0489】
【数28】
[この文献は図面を表示できません]
【0490】
この場合もまた、結果としての平均値V
CIso 1,1およびV
CIso N,1を式(39)(40)の右辺に挿入して、V
CIso 1,2およびV
CIso N,2を計算することができる。V
CIso 1およびV
CIso Nの値が変化を止めるかまたはある値に収束するまで、この反復的平均プロセスを続けることができる。V
CIso 1およびV
CIso Nの初期値が疑わしいかまたは信頼性が低いと認められる場合、以下のように、V
CIso 1,2およびV
CIso N,2の初期値を、それらのより信頼性の高い近傍値に基づいて設定することができる。
【0491】
V
CIso 1,1=(V
CIso 2−ρ・m
2)
V
CIso N,1=(V
CIso N−1−ρ・m
N−1)
そして、V
CIso 1,2およびV
CIso N,2に対する後続する平均は、上述したように進行することができる。
実質的に瞬時のまたは連続的な流量およびストローク容積推定
いくつかの実施形態では、圧送ストロークが発生している間、ダイヤフラムポンプのポンプチャンバへのまたはポンプチャンバからの流量、および/またはポンプチャンバのストローク容積(すなわち、ダイヤフラムがポンプチャンバを横切った程度)を推定することができる。これは、ダイヤフラムポンプの流体送達ストローク中に、または流体充填ストローク中に達成することができる。これらの推定値は、ポンプストロークの進行中、コントローラ解析に対して十分なデータが収集されると入手可能である可能性があり、それにより、コントローラは、連続的に更新される圧力情報に対して作用して、ポンピングチャンバを出入りして移動する流体の累積的体積を計算することができる。こうしたリアル
タイム情報は、ストロークの終了を早期に判断するのに役立つことができ、行われる部分ストロークの数を低減させることができ、わずかな体積または増分の流体のより正確な送達を可能にすることができ、厳密な目標流体体積をより効率的に送達することができ、閉塞および他の流量低減状態の早期の検出を可能にすることができるとともに、流体ライン等のプライミングに役立つことができる。この情報はまた、ポンピングカセットを通る流体スループットを増大させるのにも役立つことができる。
【0492】
ポンプストローク中の流量およびストローク容積またはストロープ進行の推定は、ポンプストロークが進行している間に制御チャンバ内の圧力減衰をモニタリングすることによって達成することができる。圧力減衰の速度をモニタリングすることから生成されるデータは、コントローラが、ポンピングチャンバを通る流体流量を求めるために使用することができる。ポンプストローク中の圧力減衰は、ポンピングチャンバが流体で満たされるかまたは流体が空けられる際の制御チャンバの容積の変化を示すため、ポンプストロークの過程にわたってこの減衰をモニタリングすることにより、コントローラは、発生時にストローク容積を推定することができる。
【0493】
オン/オフ、バイナリまたは「バンバン」圧力コントローラが使用される実施形態では、圧力コントローラは、圧送中に所望の圧力を維持するために、制御チャンバを圧力リザーバに接続し分離するように弁を繰り返し作動させる必要がある場合がある。たとえば、送達ストローク中、流体がポンピングチャンバから圧送される際、関連する制御チャンバの容積が増大する。これにより、制御チャンバの圧力が減衰することになる。ポンピングチャンバを充填するように負圧を加えるか、またはポンピングチャンバから流体を排出するように正圧を加えて、プロセスまたはアルゴリズムを用いることができる。本明細書で用いる「圧力減衰」という用語は、測定されている実際の圧力の絶対値の減衰(すなわち、正圧が加えられる場合は周囲圧力に向かう低下、または負圧が加えられる場合は周囲圧力に向かう上昇)を指すように意図される。制御チャンバ内の圧力が許容圧力範囲外になると、圧力コントローラは、弁を圧力リザーバに開放することによって制御チャンバ圧力を調整することができる。許容圧力範囲は、圧力設定値の範囲内にあり得る。この圧力調整または維持は、制御チャンバ圧力をおよそ所望の値にかつ/または許容範囲内に戻るようにするために十分な期間、好適な圧力源にチャンバを接続することを含むことができる。圧力は、この場合もまた、流体がポンピングチャンバにまたはポンピングチャンバから送達されるに従って減衰し、再加圧が再度必要になる。このプロセスは、ストロークの終了に達するまで継続する。
【0494】
再加圧を繰り返すことにより、事実上、実質的に鋸歯に見える圧力調整波形が生成される。上述したような圧力調整波形を示すプロット例を、
図114に示す。図示するように、波形は、下限圧力閾値2312と上限圧力閾値2310との間で振動する。ストロークが進行するにしたがって圧力は減衰し(データ点2302〜2304を参照)、流体はポンピングチャンバから出て、制御チャンバの容積が変化する。
図114のプロット例では、流体がダイヤフラムポンプのポンピングチャンバから出て宛先に圧送される際、制御チャンバ容積は拡張している。圧力減衰が横ばい状態になるとき2305、ストローク終了が示され、その時点で、チャンバ容積を固定し(すなわち、ポンピングチャンバへの入口流体弁および出口流体弁を閉鎖し)、既知の基準容積の圧力によってチャンバ圧力を均等化する2332ことにより、FMS容積確定を行うことができる。
【0495】
各圧力減衰は、ポンプストロークの過程の間に制御チャンバの容積がおよそ既知であり得るように、モニタリングすることができる。この情報により、チャンバの初期容積と比較した場合に発生したポンプストローク容積の量を求めることができる。ポンピングチャンバの初期容積は、たとえば、ストローク前FMS測定を行うことによって求めることができる。この方法は、概して、閉鎖チャンバの容積を、既知の容積および圧力の基準チャ
ンバと連通したときのその圧力の変化をモニタリングすることによって求めることを含む。この確定は、ポンプの制御チャンバの一定容積を確保するようにポンピングチャンバの流体入口出口弁を閉鎖することと、その後、基準チャンバに制御チャンバを接続することとを含む。系の熱伝達特性および動力学に応じて、過程を等温または断熱としてモデル化することができる。系はまた、測定の正確さを最適にするためにポリトロープ過程としてモデル化することも可能である。制御チャンバの初期容積を求める他の方法を使用することができる。たとえば、初期制御チャンバ容積が、実質的に、圧送システムのチャンバの測定中に物理的に測定された制御容積であると想定するように、コントローラをプログラムすることができる。この想定は、たとえば、コントローラが先行するストローク終了状態に完全に達したと計算したときに採用することができる。
【0496】
ポンプストローク中のダイヤフラムポンプの制御チャンバおよびポンピングチャンバにおけるリアルタイムのまたは連続した容積変化の確定は、先に開示した圧力ベースの容積確定とは、流体入口または出口入口が開放したままであって、流体がポンピングチャンバに流入しまたはポンピングチャンバから流出し続けるのを可能にするという点で、実質的に異なる。さらに、既知の容積および圧力の基準チャンバは不要である。制御チャンバ/基準チャンバ均等化プロセス(「2チャンバ」FMS)からこのプロセスを識別するために、本明細書に記載する連続測定プロセスは、「1チャンバ」FMSとみなすことがより適切であり得る。ポンピングチャンバが入口流体ラインまたは出口流体ラインに対して開放したままであるが、関連する制御チャンバは、閉鎖系を維持し、それにより、初期容積が既知となると第2容積を求めることができる。制御容積が気体源またはシンクから隔離されている(すなわち、制御容積の質量に変化がない)間、圧力データが繰り返しサンプリングされる。これらの状況の下で、ポリトロープ過程を用いるアルゴリズムに基づくコントローラの計算は、より正確な結果を提供することができる。この方法は、今になって実現可能であり、それは、迅速なデータ収集および計算が可能な電子プロセッサが今では利用可能であるためである。たとえば、高速特定用途向け集積回路を採用することができ、または好ましくは、FPGAデバイスが、今ではこのタスクに専用とすることができ、主システムプロセッサから、その計算資源を共有しその効率を低下させなければならないという負担を軽減する。いくつかの実施形態では、ポンプストローク中にオンザフライまたはリアルタイム容積測定を行いながら、他のタスクに対して幾分かの資源を維持するために必要な時間ブロックに対して、十分にロバストなFPGAが再構成可能または再プログラミング可能であり得る。リアルタイムまたはオンザフライ容積測定は、制御チャンバ圧力またはポンピングチャンバ圧力を調整するために使用される供給弁の閉鎖と開放との間の2つの時点で、制御チャンバの容積を見付けることによって達成することができる。2つの時点の間の容積差により、コントローラは、比較的リアルタイムの流量を推定することができる。
【0497】
図114に示すように、高速コントローラは、一連の圧力データ点2302、2303、2304を収集することができ、それらの各々により、コントローラは、各点に関連づけられたチャンバ容積変化を連続して計算することができる。コントローラが、制御チャンバの開始容積を求めたと想定すると、後続する圧力減衰点における容積の変化を計算することができる。そして、たとえば点2303における終了容積を計算するために点、点2302に関連づけられた終了容積を2303における開始容積として使用することができ、以下続く。
【0498】
図115は、トレースが、制御チャンバ内の圧力とそのチャンバからの推定された圧送体積とを表す、例としてのグラフ5700を示す。体積推定トレース5702は、圧力トレース5704の各圧力減衰5708時に圧力データ点をサンプリングすることによって生成される。上述したように、コントローラは、2つの圧力データ点の間の圧力差を使用して、関連づけられたポンピングチャンバ内で押しのけられた容積を求めることができる
。そして、コントローラは、ポンピングチャンバを出入りして移動した流体の累積体積を計算することができる。さらなる圧力減衰5708および再加圧事象5706が発生するに従い、体積推定トレース5704によって示される累積体積が増大する。プロセッサは、データ点を迅速にサンプリングし解析することができるため、例としてのグラフ5700に示すように、体積推定値を連続的に更新することができる。その結果、ストロークが進行している間に、ポンピングチャンバにまたはポンピングチャンバから送達される体積を正確に推定することができる。この推定値は、流体の圧送を停止させることなく、かつ基準チャンバを使用することなく生成される。
【0499】
ポンプストローク全体を通して制御(またはポンピング)チャンバの圧力減衰をモデル化するために、あらゆる好適な数学的方法を使用することができる。しかしながら、ポンプストロークの1つの時点における圧力減衰曲線が、ポンプストローク中の別の時点における圧力減衰曲線に極めて類似するように見えるが、ポンピングチャンバにおける容積変化の異なる量を表す可能性があることが理解されるべきである。ポリトロープモデルを使用することによりポンプストローク中の圧力減衰曲線を解析するようにコントローラをプログラムすることは、容積変化のこれらのあり得る差を解くのに役立つことができる。
【0500】
1チャンバFMS(ポリトロープモデルを用いて制御チャンバまたはポンピングチャンバにおけるリアルタイムなまたは連続的な容積変化を計算する)は、ポンプ制御チャンバを圧力リザーバ(正圧または負圧)に接続するバイナリオリフィス弁または可変オリフィス弁のいずれかを用いるシステムにおいて実現可能であり得る。いずれかのタイプの弁が閉鎖されている時間(ただし、この期間は、可変弁が使用される場合よりはるかに短い可能性がある)、圧力データを収集し解析することができる。いずれの場合も、流体が出ていく間の圧力減衰(または、流体が入ってくる間の圧力上昇)をサンプリングすることができ、容積変化を計算することができ、プロセスを繰り返して、リアルタイム容積変化データを提供することができる。以下の説明では、制御チャンバまたはポンプチャンバ内の圧力を調整するためにバイナリ弁を用いるシステムに対して、ポリトロープモデリング過程が適用される。この説明は、他のタイプの弁および圧力調整プロトコルに適用される。
【0501】
概して、流体ポンピングチャンバが可撓性ダイヤフラムによって制御チャンバから分離されている任意の気体駆動式(たとえば、空気駆動式)ダイヤフラムポンプに対して、1チャンバFMSプロトコルを適用することができる。ポンプストローク中、流体がポンピングチャンバに入るかまたはポンピングチャンバから出る際、コントローラが、制御チャンバおよびダイヤフラムに送達される圧力を調整するため、制御チャンバは、少なくともその時間の一部において、閉鎖系となる。制御チャンバ内の圧力が高い閾値に達するかまたはそれを超えると、制御チャンバを圧力源に接続する弁が閉鎖する。ポンピングチャンバ内外の流体移動から圧力が減衰すると、弁は再度(完全にまたは部分的に)開放し、ポンプストローク中、空気が入ってくるか又は出ていくことに対して制御チャンバが閉鎖される交互の期間がもたらされる。制御チャンバが隔離されるこれらの段階中、圧力の変化は、制御チャンバ、したがってポンピングチャンバの容積の変化を反映する。圧力減衰期間の開始時における初期容積は、先の測定値から既知となるかまたは推定されなければならない。そして、終了容積が、初期容積と終了容積との間の測定圧力差から計算することができる。そして、制御チャンバ隔離段階中に圧力がさらに減衰するため、次の計算に対する初期容積として、終了容積を使用することができる。このように、コントローラは、ポンプストロークの圧力減衰段階中に圧力測定値を迅速に収集して、ポンピングチャンバの容積の変化を略連続的に計算することができ、したがって、ポンプに入るかまたはポンプから出る瞬間的な流体流量を推定することができる。閉鎖系における気体の圧力と体積との間の関係は、理想気体の挙動を記述する標準方程式によって制御され、計算においてポリトロープ過程を想定することは最適である可能性があり、そこでは、ポリトロープ係数は、1とポンプで使用される気体の比熱比を表す値(その気体に対する断熱係数)との
間で変化する可能性がある。
【0502】
ポリトロープ係数は、以下の式によって制御される。
PV
n=定数
式中、Pは圧力であり、Vは容積であり、ポリトロープ指数「n」は、1とγ(γは1.4であり、空気を含む大部分の気体に対して断熱系を記述する係数である)との間の数である。式の右辺は定数であるため、2つの連続した時点を比較することができる。2つの連続した時点を比較するために、以下の式を採用することができる。
【0503】
【数29】
[この文献は図面を表示できません]
【0504】
式中、P
tは時点tにおける圧力であり、V
tは時点tにおける容積であり、P
t−1は時点t−1における圧力であり、V
t−1は時点t−1における容積である。
V
tを解くために式を再配置し、簡略化して以下の式をもたらす。
【0505】
【数30】
[この文献は図面を表示できません]
【0506】
上記式に示すように、チャンバの現容積V
tは、先行する時間間隔の終了時の容積が求められた場合に求めることができる。そして、この容積を用いて、望ましい場合はストローク容積を求めることができる。さらに、V
tとV
t−1との間の時間の長さを追跡することにより、その期間にわたる流量を求めることが可能である。連続的に対にされた圧力データ値を用いて複数の流量確定値を平均することにより、ポンプストロークの一部にわたる平均流量を求めることができる。さらに、制御チャンバの開始容積および名目終了容積が既知であることにより、ポンプストロークを完了するために必要な時間の長さを独立して求めることができる。例では、データサンプルセットは、10ミリ秒毎に収集することができ、20データサンプルを含むことができる。こうした実施形態では、V
tとV
t−1との間の時間の長さは0.5ミリ秒となる。好ましいデータサンプリングレートは、特に、ポンプストロークの予測される持続時間、コントローラによって観察される圧力減衰速度、圧力信号に関連づけられた測定誤差または雑音の程度、ならびにコントローラのサンプリング速度および処理能力(たとえば、専用FPGAが使用されているか否か)によって決まる。
【0507】
いくつかの実施形態では、コントローラは、サンプリングされた各データ点において容積データを計算することができる。これには、測定点の間の熱伝達の影響を最小限にするという利点がある。一方、測定中の信号雑音は、実際の容積の変化に対して正確さの低い計算をもたらす可能性がある。別の実施形態では、プロセッサは、熱伝達が許容可能なレ
ベルであると推定される期間内で圧力データ点のセットをサンプリングすることができ、圧力データセットを、プロセッサによってフィルタリングするかまたは平滑化することができ、その後、その期間の最後に、初期平滑化圧力測定値および最終平滑化圧力測定値を用いて最終容積が計算される。したがって、測定の正確さに対する信号雑音の影響を低減させることができる。
【0508】
圧送ストローク中、圧力データ収集が可能ではないかまたは勧められない期間がある。たとえば、圧力供給源が開放しており、ポンプチャンバ圧力が急上昇しているとき、流体のポンピングチャンバへの流入または流出が続く。最初の近似として、この短い期間中の流体流量は、圧力供給弁の開放の直前に測定された流量からおよそ変化しないままであると想定することができる。そして、このように推定された容積変化は、最後に測定された圧力データ点を表す容積に加算して、次に測定される圧力データ点に対する初期容積に達することができる。さらに、ストローク中、圧力データ点が無視される可能性がある規定された時点があり得る。たとえば、データサンプリングレートに応じて、加圧事象の間に圧力上昇の直前の圧力情報は不正確である可能性がある。加圧事象の直後のデータ点に対してもまた、幾分かのエイリアシングが存在する可能性がある。実施形態では、加圧事象の前および後の所定期間内にコントローラによって収集されるデータ点を廃棄するかまたは無視して、流量確定プロセスの正確さをさらに向上させることができる。
【0509】
圧力データ収集および解析にFPGAを使用する実施形態では、下位のサンプリングレートから生じる問題は、それほど重要ではない可能性がある。いくつかの実施形態では、FPGAはまた、圧送システムにおける関連する弁を制御するための資源容量を有することも可能である。圧力供給弁を制御することにより、FPGAは、圧力データのサンプリングをより効率的に予定することができる可能性がある。事象の同期化を改善することができ、データサンプリングによるエイリアシング問題を低減させることができる。
【0510】
ポンプストロークの開始時に、いくつかの推定も行うことができる。第1圧力減衰事象の前に、ポンピングチャンバ内へのまたはポンピングチャンバから出るわずかな量の流体移動が存在する可能性がある。慣性力が初期流体流を制限する可能性があるが、圧力減衰中の第1データサンプリング点の前に初期流体流および容積変化を推定するようにコントローラをプログラムすることができる。こうした推定により、ストロークの開始時に圧力減衰情報が入手できない間に、チャンバ容積の変化の推定を可能にすることができる。ストロークの開始時に移動したと推定される流体の量は、制御チャンバおよびポンピングチャンバに加えられる圧送圧力によって決まる可能性がある。加えられた圧力の値に基づいて所定体積の流体移動を含むように、コントローラをプログラムすることができる。別法として、推定された流量を求めるために、複数のデータ点がサンプリングされた後、その流量を用いて、データが入手可能でなかった間に移動した体積に対して外挿することができる。たとえば、その期間にわたる流量が、現時点で推定される流量に実質的に等しかったと想定することができる。そして、流量が一定であるというこの推定を用いて、データが入手可能でなかった期間にわたって移動した体積の推定値を求めることができる。
【0511】
図116は、ポンプストローク中に制御チャンバ容積変化を推定するために使用することができる複数のステップの例を詳述するフローチャートを示す。図示するように、ステップ5200においてフローチャートは開始し、そこでストローク前FMS測定が行われ、それは、実施形態では、ポンピングチャンバおよび制御チャンバの容積を固定することと、制御チャンバ圧力を測定することと、基準容積チャンバと圧力を均等化することとを含む。この測定は、開始制御チャンバ容積測定値を提供することができる。別法として、コントローラが、ポンピングチャンバの先行するストローク終了が完全に完了したと計算した場合、コントローラによって、開始制御チャンバ容積は、一定かつ既知の量であると想定することができる。そして、ステップ5202において、ポンプストロークを開始す
ることができる。ステップ5204において、ストロークが流体を押しのけ、流体をポンピングチャンバ内にまたはポンピングチャンバから移動させる際に、制御チャンバ圧力減衰(または、圧力の絶対値の減衰)をモニタリングすることができる。いくつかの具体的な実施形態では、各減衰曲線に沿って複数のデータ点をサンプリングすることができ、上述した数学的モデルを用いて、ポンプストロークが進行するに従い制御チャンバ容積の変化を求めることができる。データ点および容積情報は、メモリ5208に保存することができる。
【0512】
ストロークの終了が検出されないと想定して、制御チャンバ内の圧力が所定範囲外になる(たとえば、所定圧力値未満になる)と、ステップ5210を実行することができる。ステップ5210では、圧力コントローラは、制御チャンバに対する圧力維持を行って(すなわち、制御チャンバを再加圧して)制御チャンバ圧力をおよそ(たとえば、その範囲の高い圧力限界またはその近くであり得る)所定所望値に戻すことができる。ステップ5210を完了した後、収集されたデータを再度メモリ5208に保存しながら、ステップ5204を繰り返すことができる。これは、ストローク終了状態が検出されるまで続けることができる。(ストロークの終了の検出については別の場所に記載している。)
ストローク終了状態が検出される場合、ステップ5212において、(制御気体圧力を測定することによって容積を求める)ストローク後FMS測定を行うことができる。この測定値をステップ5200からの測定値と比較して、ストローク中に移動した総体積を確認しかつ/またはより精密に求めることができる。さらに、このストローク後FMS測定値は、そのポンプチャンバによって行われる次のストロークに対する開始制御チャンバ容積測定値としての役割を果たすことができる。
【0513】
ポンプがそのポンプストロークを完全に完了したと判断する他の手段を使用することができる。そうする場合、その後、その判断の結果を用いて、コントローラを、次のポンプストロークに対する制御チャンバの開始容積に初期化することができる。圧力測定による容積確定以外の方法を用いて、ポンプストロークが完全に完了したか否かに関わらず、制御チャンバおよびポンピングチャンバの最終容積を評価することができる。しかしながら、最終チャンバ容積が求められ、その後、その値を用いて、コントローラを次のポンプストロークに対するチャンバの開始容積に初期化することができる。
【0514】
上述した数学的モデルのポリトロープ係数「n」を、所定値で初期化することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、係数を1.4または(空気に対する断熱過程を表す)γに設定することができる。初期化値は、実施形態、制御流体のタイプまたは意図された流量によって異なる可能性がある。たとえば、相対的に高速な流量の実施形態は、断熱系としてより適切にモデル化することができ、より低速な流量の実施形態は、等温系としてより適切にモデル化することができる。
【0515】
そして、複数のポンプストロークにわたって、計算されたリアルタイム流量とストローク終了時の測定された最終容積変化との間のより大きい合致をもたらす値に、係数を調整することができる。これは、任意の好適なソフトウェアアルゴリズムを用いて1つまたは複数のポンプストロークにわたって収集されたフィードバックを用いることにより、または比例コントローラもしくはPIDコントローラ等のコントローラを用いることにより、行うことができる。フィードバックは、ストローク前FMS測定およびストローク後FMS測定の比較によって求められる計算された送達済み体積の形態であり得る。最終FMS測定容積と、「n」に対する現行値を用いて求められた、推定されたリアルタイム容積変化とを比較することができる。それらの容積が、所定量を超えて異なる場合、「n」に対する値を調整することができる。そして、新たな係数値を保存し、次のポンプストロークに対する初期値として使用することができる。例では、いくつかのポンプストロークにわたって収集されたデータを用いて、係数「n」を調整することができる。たとえば、複数
のストロークに対して移動した最終(たとえば、FMS測定)容積をもたらした「n」の値を、合わせて平均することができる。周囲条件の著しい変化(たとえば、流体または環境の温度の変化)がない場合、平均または他の数値フィルタリング手続きにより、正確な流量およびストローク容積測定値を生成するために必要な時間を短縮することができ、それは、コントロータに対して、ストローク前FMS測定値およびストローク後FMS測定値の繰返しの比較を行わせる必要がない可能性があるためである。
【0516】
図117は、上述したように数学的モデルの係数を調整する複数のステップの例を概説するフローチャートを示す。図示するように、ステップ5220において、ストローク前FMS測定を行って、制御チャンバに対する開始容積を求めることができる。そして、ステップ5222において、ストロークを開始することができる。ステップ5224において、圧力調整波形における圧力減衰をモニタリングすることができる。事前に定義された初期指数係数値とともに数学的圧力−容積モデル例を用いて、制御チャンバの容積変化を求めることができる。ストロークが完了すると、ステップ5226において、ストローク後FMS測定を行って、ストローク終了制御チャンバ容積を求めることができる。ステップ5228において、ステップ5220および5226からの容積測定値を比較して、ストロークに対する総制御チャンバ容積変化を求めることができる。この比較に基づいて係数を調整して、必要な場合は2つの最終値を整合させることができる。たとえば、FMS測定値を用いることによって見つけられる容積変化をもたらした値に、係数を調整することができる。
【0517】
上述したように、ストロークが進行している際の流量推定値は、限定されないが、閉塞の検出、低流量状態または流れなし状態の検出、ストローク終了の検出、流体ラインプライミング状態の検出等を含む複数の目的に使用することができる。流量推定値をモニタリングして、ストローク終了状態が存在する可能性があるか否かを判断することができる。たとえば、リアルタイム流量が事前に定義された閾値(たとえば、15mL/分)未満に低下した場合、ポンプストロークが完全に完了した(すなわち、ポンプの物理的限界を考慮して、最大体積の流体が移動した)ことを示す可能性がある。流量推定値が事前に定義された閾値未満に低下した場合、チャンバに対してFMS測定を実行することができ、送達された体積を確認することができる。FMS測定により、ストロークの終了に達したと判断される場合、チャンバは、次の圧送動作(またはポンプストローク)に移ることができる。ストローク終了状態に達していない場合、コントローラは、たとえば、ポンプストロークを再開しようと試みることを含む複数の動作を行うことができる。別法として、流量低減状態の検出は、流体ライン閉塞を示す可能性があり、閉塞警告または警報をトリガすることができ、または、流体押戻しを試みて閉塞が存在するか否かを判断することができる。
【0518】
いくつかの実施形態では、作動可能(arming)ルーチン(ソフトウェアトリガ)があるようにコントローラをプログラムして、コントローラがストローク終了状態を時期尚早に宣言しないようにすることができる。これは、ストローク終了確定の間違ったトリガを回避するのに役立つことができる。たとえば、ストロークの開始時に蓄積圧力データがないことにより、流量確定に対する信号雑音の影響が増大する可能性がある。例では、ポンプストロークの始動後に所定期間が経過した後にのみトリガが作動可能となるように、コントローラをプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、ソフトウェアトリガは、所定流量値の達成であり得る。または、コントローラが、所定体積の流体が移動したと推定した後に、トリガを作動可能とすることができる。ストローク終了状態が検出される前にストローク終了検出トリガが作動可能となることが必要であることは、行われる部分ストロークの数を低減させるのに役立つことができ、ポンピングカセットを通して流体のスループットを増大させるのに役立つことができる。作動可能基準に達せず、ストロークの終了が決して検出されないシナリオを防止するのに役立つために、ストローク
が所定時間進行した後に、トリガを作動可能とすることができる。他の実施形態では、作動可能基準が満たされることなくストロークの開始以来所定期間が経過した後、ストロークの終了を自動的にトリガすることができる。
【0519】
図118は、リアルタイム流量推定値に基づいてストロークの終了を検出する複数のステップ例を概説するフローチャートを示す。図示するように、ステップ5240において、ストローク前測定を行うことにより、制御チャンバの開始容積を求めることができる。そして、ステップ5242において、ポンプストロークが開始する。ストロークが進行するに従い、ステップ5244において、制御チャンバ圧力調整または維持波形における圧力減衰がモニタリングされる。圧力減衰に基づいて、流量が推定される。ストローク終了作動可能基準が満たされると、コントローラは、流量が予め確立されたかまたは所定の流量を超えたか否かを判断する。流量が所定流量を超えた場合、ステップ5246において、ポンプストロークは続き、ステップ5244において、流量推定が続く。流量が所定流量未満に低下した場合、ステップ5248において、ストロークは終了に達した可能性があり、ストローク終了FMS測定を行って制御チャンバ容積を求めることができる。
【0520】
いくつかの実施形態では、ストロークの進行にわたる制御チャンバ容積変化の推定値を用いて、ストロークを完了するために必要な時間の長さを予測することができる。名目のまたは予測されたストロークの終了容積は既知であり、制御チャンバ容積変化を用いて流量を求めることができるため、コントローラは、この情報を用いて、ストローク全体がどれくらいかかるべきであるかを推定することができる。それに対応して、コントローラは、ストロークの残りの部分を完了するためにどれくらいの時間が必要であるかを推定値を計算することができる。予測されたストローク終了時間に達すると、ストロークを停止することができ、FMS測定を行うことができる。FMS測定値が、ストロークが部分ストロークであることを示す場合、複数の動作を行うことができる。いくつかの実施形態では、サイクラは、ストロークの再試行を試みることができる。別法として、流量低減状態のコントローラによる検出は、閉塞警告または警報を示すものであり得るか、または押戻しの試みを行って、ライン終了閉塞を緩和することができるか否かを判断することができる。
【0521】
図119は、ストロークを完了するために必要な時間を予測することによってストロークの終了を判断するために使用することができる複数のステップ例を概説するフローチャートを示す。図示するように、ステップ5250において、ストローク前FMS測定を行って、制御チャンバの開始容積を求めることができる。ステップ5252においてストロークが開始される。ストロークが開始すると、ステップ5254において、ストロークタイマを始動させることができる。ストロークが進行するに従い、ステップ5256において、制御チャンバに対する圧力調整または維持波形における圧力減衰がモニタリングされる。これを用いて、制御チャンバ容積および流量を推定することができる。そして、ステップ5258において、これらの推定値を用いて、推定ストローク時間を予測することができる。現チャンバ容積と予測されたストローク終了チャンバ容積との差を見付けることにより、推定ストローク時間を計算することができる。そして、推定された流量を用いて、ストロークを完了するために必要な時間の長さを見付けることができる。推定されたストローク終了時間が、経過したストローク時間より長い場合、ステップ5256、5258および5260を繰り返すことができる。推定されたストローク終了時間が実際の経過したストローク時間以下である場合、コントローラは、ストローク終了状態を宣言することができる。ステップ5262において、ストロークは終了し、FMS測定を行って、制御チャンバのストローク後容積を求めることができる。いくつかの実施形態では、所定の長さのストローク時間が残るか、または所定量のストローク容積が発生するまで、残りのストローク時間推定を行うことができる。時間が経過するまで、コントローラはストロークを続け、その後、ステップ5262を行うことができる。
【0522】
上述した例示的な数学的モデルによって提供されるリアルタイム流量推定が利用可能であることにより、同様に流量低減状態の早期の検出を可能にすることができる。コントローラにストロークが終了するのを待たせ、容積測定を行い、その測定値を先の測定値と比較する代わりに、予測された流量閾値未満であるリアルタイム流量に応答するように、コントローラをプログラムすることができる。その時点でポンプストロークを停止して、流量推定値を確認するようにより精密な容積測定を(たとえば、FMS測定を介して)行うように、コントローラをプログラムすることができる。したがって、流量低減によってもたらされる延長した圧送ストロークを完了する必要なしに、流量低減状態を検出することができる。これは、時間を節約することができ、患者の不快感を低減させることができ、ポンピングカセットの全体的な流体スループットを増大させるのに役立つことができる。それはまた、治療が、排液段階の最後から次のサイクルの充填段階まで迅速に移行することができるようにすることも可能である。この効率の向上により、より長い治療時間を滞留に割り当てることができる。一例では、流量推定値が50mL/分の閾値未満であるときに流量低減状態を宣言するように、コントローラをプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、流量低減状態が宣言される前に、流量は、所定期間(たとえば、30秒間)、閾値未満であり続けなければならない場合がある。
【0523】
任意選択的に、異なる流量閾値によって定義される複数の流量低減状態分類法があり得る。たとえば、低い流量閾値(たとえば、<50mL/分)に加えて、低い流量閾値より低く(たとえば、<15mL/分)設定される「流れなし」閾値を認識するように、コントローラをプログラムすることができる。
【0524】
図120は、ポンプストローク中に流量低減状態を検出するために使用することができる複数のステップ例を概説するフローチャートを示す。図示するように、ステップ5270において、ストローク前FMS測定を行って、制御チャンバの開始容積を求めることができる。そして、ステップ5272においてストロークが開始される。ステップ5274において、圧力調整または維持波形における圧力減衰をモニタリングすることができ、それにより、リアルタイム制御チャンバ容積変化および流量を推定することができる。流量が、所定期間、所定流量を超える限り、コントローラはポンプストロークを続ける。ステップ5274に記載したように、コントローラは、圧力減衰波形をモニタリングし続ける。ストロークの終了に達した場合、ステップ5276においてストローク終了FMS測定を行って、ストローク終了制御チャンバ容積を求めることができる。コントローラが、流量が所定期間、所定流量未満であると判断した場合、ステップ5278においてFMS測定を行って、流量低減状態が存在することを確認することができる。流量低減状態が確認されない場合、ストロークは続くことができ、コントローラは、ステップ5274において上述したように、制御チャンバ圧力調整または維持波形に基づいて、流量を計算し続ける。
【0525】
ステップ5278において、FMS測定によって流量低減状態が確認された場合、ステップ5280において、流量低減または閉塞通知、警告または警報をユーザに送信することができる。これは、ユーザインタフェースを介して行うことができ、可聴メッセージまたは音声、振動表示等によって達成することができる。サイクラコントローラによって生成される応答は、検出される流量によって決まる可能性がある。閉塞が存在することを示す前に、流体リザーバ(または、流体ラインに応じて、腹膜腔内)への流体の押戻しをトリガすることができる。押戻しの試みが不成功である場合、コントローラは、閉塞警告を発することができる。
【0526】
いくつかの実施形態では、流量低減状態が検出された場合、サイクラコントローラは、圧送動作(たとえば、排液段階)に対する目標体積が達成されたか否か(たとえば、腹膜
排液の完了)を確認することができる。目標体積以上が移動した場合、コントローラは、圧送動作が完了したことを宣言することができる。いくつかの実施形態では、装置コントローラは、流体リザーバ(たとえば、溶液バッグ、ヒータバッグまたは患者の腹膜)が実質的に空であることを確実にするために、最低限の規定された時間が経過していることを要求することができる。
【0527】
ポンプストローク中の流体流のリアルタイム測定により、フルポンプストローク容積未満、またはフルポンプストローク容積の整数倍の所定流体体積送達を目標とすることができる。圧力測定を通して推定されたチャンバ容積変化が、目標体積が送達されたかまたは引き出されたことを示すときに、ストロークを終了するようにコントローラをプログラムすることができる。これが発生すると、コントローラは、FMS測定を開始して、目標体積に実際に達したことを確認することができる。リアルタイム流体流測定により、複数回FMS測定を行う必要をなくすことができる一方で、目標体積を超過するのを回避するように小さい容積の部分ストロークを繰り返し行うことができる。こうした目標設定方式は、目標体積に近づくが超過しないで費やされる時間の長さが、本来、圧送動作における比較的長い時間をとる小児科用途において特に望ましい場合がある。
【0528】
図121は、流体の目標体積が移動したときを判断するために使用することができる複数のステップ例を概説するフローチャートを示す。図示するように、ステップは、ストローク中の圧力減衰の測定値に基づいて、推定された、移動した体積を利用して、目標体積が達成されていると推定されたときにストロークを終了する。ステップ5290において、圧送動作が開始する。この動作は、たとえば、腹膜透析サイクルに対する充填段階であり得る。圧送動作が開示すると、FMS測定を行うことができ、ステップ5292に示すように、ポンプストロークが開始される。ストローク中、ステップ5294において、圧力調整または維持波形における圧力減衰をモニタリングすることができる。これにより、ストロークが進行するに従い、容積および流量の推定が可能になる。ステップ5296において、ストロークが終了することができ、ストローク後FMS測定を行うことができる。サイクラコントローラは、計算された溶液体積を追跡して、目標体積と圧送動作中に送達された流体の総体積との差が全ポンプチャンバ体積より大きいか否かを確かめる。大きい場合、コントローラは、ステップ5297において、続けて次のポンプストロークを命令する。目標体積と圧送された総体積との差が、1つの全ポンプチャンバの体積未満となるまで、ステップ5294、5296および5297を繰り返すことができる。その容積未満となった時点で、ステップ5298において、別の全チャンバ体積の送達により目標体積が超過された場合、ステップ5298が行われる。
【0529】
ステップ5298において、圧送動作のための総送達体積と圧送動作に対する目標体積との差として、目標設定トリガを設定することができる。そして、ステップ5300において、コントローラが、圧力減衰測定を通して目標体積に達したことを計算するまで、ポンプストロークは続けることができる。計算した時点で、ステップ5302を行うことができ、そこでは、ストロークは終了し、FMS測定を行って、目標体積の流体が移動したことを確認することができる。
【0530】
ポンプストローク中に圧力減衰曲線から推定された流量を計算することにより、コントローラは、所定流体体積をより精密に送達するために、1つまたは複数の弁を事前に閉鎖することも可能である。すなわち、コントローラコマンドと弁の機械的応答との間に遅延を考慮して、目標体積が送達される前に弁を閉鎖することができる。そして、弁を物理的に閉鎖するために必要な期間中発生する流れにより、目標体積を実質的に満たすことができる。特に、コントローラは、弁を物理的に閉鎖するために必要な時間の長さを推定することができる。いくつかの実施形態では、この推定値は事前プログラムされた値であり得る。たとえば、特定の弁の構成に対して、応答遅延はおよそ100ミリ秒であり得る。流
量のリアルタイム計算に基づいて、弁応答遅延中に移動した流体の体積を推定することができる。この流体の量を目標体積から減じて、弁閉鎖トリガ体積をもたらすことができる。弁閉鎖トリガ体積が満たされると、サイクラコントローラは、弁に対して閉鎖するように命令することができる。
推定された流量および推定されたストローク容積を用いる流体ラインプライミング状態
いくつかの実施形態では、ストローク中に計算された流量と推定されたストローク容積とを用いて、流体ラインのプライミング状態を判断することができる。
図20〜
図28に関連して上述したように、患者ラインは、空気の流れに対して比較的わずかなインピーダンスを示すが、異なる流体、たとえば透析液等の液体の流れに対して比較的高度なインピーダンスを示す特徴部分(たとえば、オリフィス等の制限部)を含むことができる。この特徴部分は、ラインの終端下流端部に対して基端側にまたはその端部に位置することができる。特徴部分は、流体ラインの主要部分における流体導管の断面積より小さい断面積を有する流路を有することができる。液体がその特徴部分に達すると、流れは速度を落とし、これは、ポンプストローク中に行われる流量推定に反映される(すなわち、圧力減衰曲線はより浅い減少を示す)。流量をモニタリングすることができ、流量が、制限された流量まで低減するか、または制限された流量の範囲内まで低減したと判断された場合、コントローラは、ライン内の流体が制限部に達したと宣言することができる。ストローク容積推定はまた、流量の変化が、ストローク終了状態または液体流が特徴部分によって妨げられることによるか否かを判断する際にも有用であり得る。インピーダンス特徴部分は、ラインの端部の近くに配置することができ、それにより、液体が特徴部分に達したことが検出されると、ラインはプライミングされるべきであると判断することができる。
【0531】
ライン内のインピーダンス変化を検出することには、他の用途があり得る。たとえば、流量制限部を用いて、制限部を通過して流れる流体が、組成、密度、粘度等が変化したときを検出することができる。こうした実施形態では、インピーダンス制限部は、導管内の関心位置に配置することができる。導管を通る流量をモニタリングして、異なる特性または特徴の組成物または流体が制限部に達するときの流れの変化を検出することができる。
【0532】
図122は、圧力減衰曲線の傾きをモニタリングし、流量を計算し、またはストローク容積を推定することにより、患者ラインがプライミングされたことを検出する方法を概説するフローチャートを示す。フローチャート例では、単に例示の目的で、流体ラインのプライミングのための送達ストロークが示されている。チャンバがそのストロークを終了した後、そのチャンバは、充填ストロークを行い、再充填されると想定することができる。フローチャートはまた、各チャンバが充填状態にあって開始する。
【0533】
ステップ5330においてラインのプライミングが開始される。これは、ステップ5332において、ストローク前FMS測定を行うことと、ストロークを開始することを含むことができる。ストロークが進行している際に、ステップ5334は発生することができる。ステップ5334において、圧力維持波形における圧力減衰をモニタリングすることができ、それにより、流量およびストローク容積計算または推定を行うことができる。流量が、患者ライン内の液体が制限部に達したことを示す場合、ステップ5336において、ユーザに対して、ラインがプライミングされたことを通知することができる。
【0534】
流量が、制限部に達したことを示さない場合、ストローク容積閾値に達するまで、ストロークは続けることができる。ストローク容積推定値が、ストローク容積閾値に達したことを示すと、ステップ5338において、ストロークを終了することができ、ストローク後FMS測定を行うことができる。ストローク容積閾値は、全チャンバ体積を送達するために必要な容積未満であるように設定することができる。したがって、患者ラインがプライミングされるとき、部分ストロークを意図的に送達することができる。これにより、検出された流量の低下が、ストローク終了状態に達したことに起因しないことが確実になる
。ステップ5338におけるストローク後FMS測定が終了すると、ステップ5340において次のポンプストロークが開始することができる。単一ポンプシステムでは、コントローラは、ポンピングチャンバを流体で再充填するようにポンプ充填動作を命令することができる。複式ポンプシステムでは、コントローラは、第2ポンプに対して、そのポンプチャンバからの流体の送達を開始するように交互に命令することができる。図示するように、次のストロークが開始した後、フローチャートはステップ5334にリセットする。ストローク中、流量およびストローク容積はこの場合もまた推定される。サイクラは、流量が、ラインがプライミングされたことを示すまで、ポンプストロークを行い続けることができる。
【0535】
図123は、流量を計算することによって、患者ラインがプライミングされたことを検出するために使用されるステップを概説するフローチャートを示す。チャンバは、そのストロークを終了した後、充填ストロークを行い、再充填される。フローチャートによって示されるステップは、各チャンバが充填状態にあって開始するように想定される。
【0536】
ステップ5354において、コントローラが流量を計算するために、圧力調整または維持波形における圧力減衰をモニタリングすることができる。流量の速度が低下したと判断されると、ステップ5356において、現ストロークを終了することができ、ストローク後FMS測定を行うことができる。そして、ステップ5358において、次の圧送ストロークを開始することができる。
図123における実施形態例では、5358における後続する圧送ストロークは、多チャンバポンピングカセットにおける別のポンピングチャンバから送達される。ステップ5360において、圧力維持波形における圧力減衰をモニタリングすることができ、それにより、コントローラは、スロトーク中に流量を計算することができる。このストロークの開始時の流量推定値が、低速または低い流量状態を示す場合、コントローラは、ラインがプライミングされていると宣言することができる。好ましくは、この判断は、ラインが実際に十分にプライミングされている場合に圧送される流体の量を最小限にするように、短時間で行われる。ステップ5362において、ストロークが終了し、FMS測定を行うことができる。そしてステップ5364において、ユーザに対して、ラインがプライミングされたことを通知することができる。
【0537】
流量が低速ではなくかつ低くない場合、コントローラは、先の流量の低減が、ストローク終了状態に達しているためであったと結論付けることができる。この場合、フローチャートはステップ5354に戻り、ストロークは継続し、制御チャンバに対する圧力維持波形における圧力減衰がモニタリングされ続ける。流量推定が行われ続け、フローチャートにおいて概説されるステップは、ラインがプライミングされたと判断されるまで、上述したように繰り返すことができる。
【0538】
図124は、流体の目標送達体積を設定することにより、患者ラインがプライミングされたことを検出するステップを概説するフローチャートを示す。この体積は、セットに含まれる患者ラインの名目内部容積に等しいように設定することができる。ステップ5372において、ストローク前FMS測定を行うことができ、ストロークを開始することができる。ステップ5374において、ポンプストローク中の圧力維持波形における圧力減衰をモニタリングすることができ、それにより、流量推定およびストローク容積推定を行うことができる。いくつかの実施形態では、ステップ5374は任意選択的であり得る。ストロークが送達されると、ストロークを終了することができ、ストローク後FMS測定を行うことができる。流体の目標体積と送達された流体の総体積との差が、ポンプチャンバの全体積より大きい場合、ステップ5378を行うことができ、次の圧送ストロークが開始する。図示するように、送達ストロークが進行している間、ステップ5374を繰り返すことができる。
【0539】
ストロークが完了した後、流体の目標体積と送達された流体の総体積との差が、全ポンピングチャンバの体積未満である場合、サイクラは、ステップ5380において次の送達圧送ストロークに進むことができる。推定された流量が、速度が低下したように観察されると、コントローラは、ラインがプライミングされるべきであると宣言することができる。ステップ5384において、ストロークを終了することができ、FMS測定を行うことができる。そして、ステップ5386において、ユーザに対し、ラインがプライミングされたことを通知することができる。
【0540】
いくつかの実施形態では、コントローラは、第2ポンプに対するラインを弁で調整し、ポンプストロークを開始するように第2ポンプに命令することによって、ラインがプライミングされたことを確認することができる。第2ポンプストローク中の圧力減衰が、第1ポンプと同様の流量低減を示す場合、コントローラは、ラインが実際にプライミングされたことを宣言することができる。
セット識別
いくつかの実施形態では、コントローラが計算した流量と推定されたストローク容積とを用いて、サイクラにいずれのタイプの流体ラインセットが設置されているかを判断することができる(流体ラインセットのタイプは、管長、直径、滴下チャンバのサイズおよび数のばらつきにより、総容積が異なる可能性がある)。コントローラはまた、同じ手続きを用いて、流体セットに関する先に収集された情報をクロスチェックすることも可能である。この情報は、サイクラのユーザインタフェースを介して、ユーザ入力を通して収集することができる。さらに、いくつかの実施形態では、コントローラは、バーコード、データマトリックスもしくは他の識別マークを読み取るように構成された入力デバイスまたはセンサを用いることにより、この情報を収集することができる。
【0541】
事前設定された圧送圧力を用いて、こうした判断に対して流量を計算するときにラインを通して流体を圧送することができる。流量の低下は、より小さい直径のライン、またはより長いラインを示す。このように、コントローラは、たとえば、医療機器に、成人用セットが設置されているか(より小さい流体導管を有する)小児用セットが設置されているかを判断することも可能である。この判断は、医療機器がセットの患者ラインをプライミングしているときに行うことができる。医療機器は、たとえば、ラインをプライミングするために圧送された体積の量をモニタリングすることにより、長さの異なるラインを備えたセットを識別することができる。長いライン(たとえば、延長部を含むセット)は、短いラインより大きいプライミング体積を必要とする。いくつかの実施形態では、流量データおよびプライミング体積データを合わせて解析して、セットタイプを識別することができる。機器にいずれのセットが設置されているかを判断するために、流量データおよびプライミング体積データを、医療機器で使用することができる複数の異なるセットからの予測された値のリストと比較することができる。
【0542】
図125は、医療機器(腹膜透析サイクラ等)に1つまたは複数の異なるセットのうちのいずれのセットが設置されたかを識別するために、サイクラが使用することができる複数のステップ例を概説するフローチャートを示す。
図125に示す実施形態例では、この判断は、セットに含まれるライン(たとえば、患者ライン)のプライミング中に行われる。ステップ5580においてラインがプライミングされる際、ステップ5584および5582において、それぞれ、プライミング中の流量およびプライミング中にラインに送達された体積がモニタリングされる。上述したように、異なるセットの間の流量のばらつきが設置されたセットのタイプに起因することを確実にするのに役立つように、所定の圧送圧力を用いることができる。
【0543】
医療機器は、本明細書に記載するもののうちの任意のもの等のプライミングセンサによって、ラインのプライミング状態を検出することができる。プライミングが終了すると、
コントローラは、ステップ5586において、プライミングされた流量および体積を、医療機器に設置されることが可能な種々のセットに対する予測された値の格納されたリストと比較することができる。いくつかの実施形態では、これらの予測値は、製造時に経験的に求めることができる。任意選択的に、セットの各々に対してある範囲の値を列挙することができる。ステップ5588において、セットタイプが識別される。これは、このリストにおけるいずれのセットタイプが、プライミング中の観察された流量およびプライミング体積値に最も近いかを判断することによって行うことができる。ステップ5588において識別されたセットタイプが、そのセットに関する先に収集されたデータと一致しない場合、コントローラは、ユーザに通知することができる。この通知は、ユーザインタフェースにおける視覚的通知を含むことができ、それには、可聴音声または警告が伴うことも可能である。
【0544】
さらに、そのセットに関して(たとえば、セット上のマークもしくはしるしから、または治療プログラムから)他のデータが収集された場合、それを用いて、ステップ5588において識別されたセットタイプが予測されたセットタイプであることを確認することができる。ステップ5588において識別されたセットタイプが、他の先に収集されたセットに関連するデータと一貫しない場合、ステップ5589を行うことができ、コントローラは、ユーザに対する通知を生成することができる。
頭高検出
いくつかの状況では、カセット24またはシステムの他の部分に関する患者の高さ位置を確定することが有用である場合がある。たとえば、透析患者は、いくつかの状況では、充填または排液動作中に、流体が患者の腹膜腔に流入するかまたは腹膜腔から流出することによる「強く引く」または他の動きを感じる場合がある。この感覚を低減させるために、サイクラ14は、充填および/または排液動作中に患者ライン34に加えられる圧力を低下させることができる。しかしながら、患者ライン34に対する圧力を適切に設定するために、サイクラ14は、サイクラ14、ヒータバッグ22、ドレイン、またはシステムの他の部分に対する患者の高さを確定することができる。たとえば、充填動作を行なっているとき、患者の腹膜腔がヒータバッグ22またはカセット24の5フィート上方に配置される場合、サイクラ14は、患者ライン34において透析液を送達するために、患者の腹膜腔がサイクラ14の5フィート下方に配置される場合よりも高い圧力を使用する必要がある可能性がある。この圧力は、たとえば、所望の目標ポンプチャンバ圧力を達成するために、可変時間間隔でバイナリ空気圧供給源弁を交互に開閉することによって、調整することができる。たとえば、ポンプチャンバ圧力が所定量だけ目標圧力を下回るとき、弁を開放した状態で維持し、ポンプチャンバ圧力が所定量だけ目標圧力を上回るとき、弁を閉鎖した状態で維持するように時間間隔を調整することによって、平均の所望の目標圧力を維持されることができる。ポンプチャンバの充填時間および/または送達時間を調整することにより、完全なストローク容積の送達を維持するようないかなる調整も行うことができる。可変オリフィスの供給源弁が使用される場合、目標ポンプチャンバ圧力は、弁が開閉される間隔のタイミングを調整するのに加えて、供給源弁のオリフィスを変化させることによって達することができる。患者の姿勢を調整するために、サイクラ14は、流体の圧送を一瞬停止して、患者ライン34を、(たとえば、カセット24における好適な弁ポートを開開放することにより)カセットにおける1つまたは複数のポンプチャンバ181と開放した流体連通状態のままにすることができる。しかしながら、ポンプチャンバ181用の上部弁ポート192等の他の流体ラインを閉鎖することができる。この状態では、ポンプのうちの1つに対する制御チャンバ内の圧力を測定することができる。本技術分野において周知であるように、この圧力は、患者の「頭」の高さに相関し、サイクラ14が患者への流体の送達圧力を制御するために使用することができる。同様の手法を用いて、(一般に既知となる)ヒータバッグ22および/または溶液容器20の「頭」高を求めることができき、それは、これらの構成要素の頭高は、好適な方法で流体を圧送するために必要な圧力に対して影響を与える可能性があるためである。
サイクラのノイズ低減特徴
本発明の態様によれば、サイクラ14は、動作中にかつ/またはアイドル状態にあるとき、サイクラ14によって発生するノイズを低減させる1つまたは複数の特徴を含むことができる。本発明の一態様では、サイクラ14は、サイクラ14のさまざまな空気圧系統を制御するために使用される圧力および真空の両方を発生させる単一のポンプを含むことができる。一実施形態では、ポンプは、圧力および真空の両方を同時に発生させることができ、それにより、全体的な実行時間を短縮し、ポンプをより低速に(したがって、より静かに)運転するのを可能にする。別の実施形態では、空気ポンプの始動および/または停止を、一定の割合で増減させることができ、たとえば、始動時のポンプ速度または出力を増加させ、かつ/または、運転停止時のポンプ速度または出力を減少させる。この構成は、空気ポンプの始動および停止に関連する「オン/オフ」ノイズを低減させるのに役立つことができ、そのため、ポンプノイズはそれほど顕著ではない。別の実施形態では、空気ポンプは、目標出力圧力または体積流量に近づくとき、低いデューティサイクルで動作することができ、それにより、空気ポンプは、運転が止められ、短時間後にオンにされる場合とは対照的に、動作し続けることができる。その結果、空気ポンプのオン・オフのサイクルの繰返しによってもたらされる中断を回避することができる。
【0545】
図126は、サイクラ14の内部の斜視図に示し、ハウジング82の上部が取り外されている。この例示的な実施形態では、サイクラ14は、単一の空気ポンプ83を含み、それは、遮音筺体内に収容された実際のポンプおよびモータ駆動部を含む。遮音筺体は、金属製またはプラスチック製のフレーム等の外側シールドと、外側シールド内の、モータおよびポンプを少なくとも部分的に包囲する遮音材料とを含む。この空気ポンプ83は、空気圧および真空を同時に、たとえば、一対のアキュムレータタンク84に提供することができる。タンク84のうちの1つは、正圧の空気を貯蔵し、他方のタンクは、真空を貯蔵する。サイクラ14の構成要素に供給される空気圧/真空を提供しかつ制御するように、タンク84に好適なマニホールドおよび弁の構成を結合することができる。
【0546】
本発明の別の態様によれば、オクルーダ等、サイクラ動作中に比較的一定の圧力または真空の供給を必要とする構成要素は、少なくとも比較的長い時間、空気圧/真空源から隔離することができる。たとえば、サイクラ14におけるオクルーダ147は、患者ラインおよび排液ラインは、流れに対して開放したままであるように、概して、オクルーダの空気袋166内に一定の空気圧を必要とする。サイクラ14が電源故障等なしに適切に動作し続ける場合、空気袋166は、システム動作の開始時に一度膨張し、動作停止まで膨張し玉まであり得る。本発明者らは、いくつかの状況において、空気袋166等の比較的静的な空気式装置は、「きしむ」か、または他の方法で、供給された空気圧のわずかな変動に応じてノイズを発生する可能性があることを認識した。こうした変動により、空気袋166のサイズがわずかに変化する可能性があり、それにより、関連する機械部品移動し、ノイズを発生させる可能性がある。空気袋166および同様の空気圧式動力要件を有する他の構成要素の態様によれば、空気袋または他の空気圧式構成要素内の圧力変動を低減させ、したがって、圧力変化の結果として生成される可能性があるノイズを低減させるように、たとえば、弁を閉鎖することによって、空気ポンプ83および/またはタンク84から隔離することができる。空気圧供給源から隔離することができる別の構成要素は、ドア141におけるカセット取付位置145の空気袋であり、それは、ドア141が閉じられると、制御面148に対してカセット24を押圧するように膨張する。要求に応じて、他の適切な構成要素を隔離することができる。
【0547】
本発明の別の態様によれば、空気圧式構成要素が駆動される速度および/または力は、構成要素の動作によって生成されるノイズを低減するように制御することができる。たとえば、カセット24の弁ポートを開閉するようにカセット膜15の対応する部分を動作させる弁制御領域1481の移動により、膜15がカセット24を打ち(slap)かつ/
またはカセットからから離れる際の「ポップ」ノイズがもたらされる可能性がある。こうしたようなノイズは、たとえば、制御領域1481を移動させるために使用される空気の流量を制限することにより、弁制御領域1481の動作速度を制御することによって、低減させることができる。たとえば、関連する制御チャンバに通じるライン内に好適に小さいサイズのオリフィスを設けることによって、または他の方法で、空気流を制限することができる。
【0548】
サイクラ14のマニホールドにおいて1つまたは複数の空気圧供給源弁の作動に対してパルス幅変調(PWM)を適用するようにもまた、コントローラをプログラムすることができる。カセット24のさまざまな弁およびポンプに送達される空気圧は、カセット24における弁またはポンプの作動の期間中に、関連するマニホールド供給源弁を繰り返し開閉させることによって、制御することができる。そして、膜15/制御面148に対する圧力の上昇率または下降率は、作動期間中の特定のマニホールド弁の「オン」部分の持続時間を調整することによって制御することができる。マニホールド供給源弁にPWMを適用するさらなる利点は、より高価ででありかつ信頼性が低い可能性がある可変オリフィス供給源弁ではなく、バイナリ(オン−オフ)供給源弁のみを用いて、カセット24の構成要素に可変空気圧を送達することができるということである。
【0549】
本発明の別の態様によれば、1つまたは複数の弁要素の移動は、弁の循環運動によって発生するノイズを低減させるように好適に減衰させることができる。たとえば、流体(強磁性流体等)に対して、高周波電磁弁の弁要素を提供して、要素の動作を減衰させ、かつ/または、開位置と閉位置との間の弁要素の移動によって発生するノイズを低減させることができる。
【0550】
別の実施形態によれば、空気圧制御ライン通気孔を互いに接続し、かつ/または、共通の遮音空間に導くことができ、それにより、空気圧または真空の解放に関連するノイズを低減させることができる。たとえば、オクルーダの空気袋166が通気されて、板ばね165(例えば、
図99参照)が互いに向かって移動し、1つまたは複数のラインを閉塞することが可能になると、解放される空気圧は、解放に関連するノイズがより容易に聞こえる可能性がある空間に解放されるのとは対照的に、遮音筺体内に解放することができる。別の実施形態では、空気圧を解放するように構成されたラインを合わせて、空気真空を解放するように構成されたラインと接続することができる。(周囲環境、アキュムレータ等への通気孔を含む可能性がある)この接続により、圧力/真空解放によって発生するノイズをさらに低減させることができる。
制御システム
図1に関して記載した制御システム16は、透析治療を制御し、透析治療に関する情報を通信する等、複数の機能を有している。これらの機能は、単一のコンピュータまたはプロセッサによって処理することができるが、それらの機能の実施が物理的にかつ概念的に分離された状態で維持されるように、異なる機能に対して異なるコンピュータ使用することが望ましい場合がある。たとえば、1台のコンピュータを使用して透析機類を制御し、別のコンピュータを使用してユーザインタフェースを制御することが望ましい場合がある。
【0551】
図127は、制御システム16の例示的な実施態様を例示するブロック図を示し、そこでは、制御システムは、透析機類を制御するコンピュータ(「自動化コンピュータ」300)と、ユーザインタフェースを制御する別個のコンピュータ(「ユーザインタフェースコンピュータ」302)とを備える。後述するように、セーフティクリティカルなシステム機能は、自動化コンピュータ300上でのみ実行することができ、それにより、ユーザインタフェースコンピュータ302は、セーフティクリティカルな機能の実行から隔離される。
【0552】
自動化コンピュータ300は、透析治療を実施する弁、ヒータおよびポンプ等のハードウェアを制御する。さらに、自動化コンピュータ300は、本明細書においてさらに記載するように、治療の順序付けをし、ユーザインタフェースの「モデル」を維持する。図示するように、自動化コンピュータ300は、コンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ304、フラッシュディスクファイルシステム306、ネットワークインタフェース308およびハードウェアインタフェース310を備える。ハードウェアインタフェース310は、センサ/アクチュエータ312に結合される。この結合により、自動化コンピュータ300が、センサを読み取り、APDシステムのハードウェアアクチュエータを制御して治療動作をモニタリングしかつ実行することができる。ネットワークインタフェース308は、ユーザインタフェースコンピュータ302に自動化コンピュータ300を結合するインタフェースを提供する。
【0553】
ユーザインタフェースコンピュータ302は、ユーザならびに外部デバイスおよびエンティティを含む外部世界とのデータ交換を可能にする構成要素を制御する。ユーザインタフェースコンピュータ302は、コンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ314、フラッシュディスクファイルシステム316およびネットワークインタフェース318を備え、それらは各々、自動化コンピュータ300上のそれらの相当物と同じかまたは同様であり得る。Linux(登録商標)オペレーティングシステムは、自動化コンピュータ300およびユーザインタフェースコンピュータ302の各々で実行することができる。自動化コンピュータ300のCPUとして使用され、かつ/または、ユーザインタフェースコンピュータ302のCPUとして使用されるのに好適であり得る例示的なプロセッサは、Freescale社のPowerPC5200B(登録商標)である。
【0554】
ネットワークインタフェース318を介して、ユーザインタフェースコンピュータ302を自動化コンピュータ300に接続することができる。自動化コンピュータ300およびユーザインタフェースコンピュータ302の両方を、APDシステムの同一のシャーシ内に含めることができる。別法として、一方もしくは両方のコンピュータまたは前記コンピュータの一部(たとえば、ディスプレイ324)を、シャーシの外側に配置することができる。自動化コンピュータ300およびユーザインタフェースコンピュータ302は、広域ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、バス構造、無線接続、および/または他の何らかのデータ転送媒体によって結合することができる。
【0555】
ネットワークインタフェース318を用いて、インターネット320および/または他のネットワークにユーザインタフェースコンピュータ302を結合することも可能である。こうしたネットワーク接続を用いて、たとえば、診療所または臨床医への接続を開始し、リモートデータベースサーバに治療データをアップロードし、臨床医から新しい処方箋を取得し、アプリケーションソフトウェアをアップグレードし、サービスサポートをしゅとくし、供給品を要求し、かつ/または、保守に使用するためにデータをエクスポートすることができる。一例によれば、コールセンタの専門家は、ネットワークインタフェース318を通じてインターネット320上の警報ログおよび透析機構成情報にリモートでアクセスすることができる。望ましい場合は、ユーザインタフェースコンピュータ302は、接続が遠隔の開始プログラムによってではなく、単にユーザによってまたは他の方法でシステムによってローカルに開始することができるように構成することができる。
【0556】
ユーザインタフェースコンピュータ302は、
図37に関して記載したユーザインタフェース144等のユーザインタフェースに結合されるグラフィックインタフェース322もまた備える。1つの例示的な実施態様によれば、ユーザインタフェースは、液晶ディスプレイ(LCD)を含み、かつタッチスクリーンに関連づけられた、ディスプレイ324を備える。たとえば、LCDの上にタッチスクリーンを重ねることができ、それにより、
ユーザは、指またはスタイラス等でディスプレイに触れることによって、ユーザインタフェースコンピュータ302に入力を与えることができる。ディスプレイはまた、特に、音声プロンプトおよび録音された発話を再生することができる音声システムに関連づけることも可能である。ユーザは、自身の環境および選好に基づいてディスプレイ324の明るさを調整することができる。任意選択的に、APDシステムは、光センサを含むことができ、光センサによって検出される周辺光の量に応じて、ディスプレイの明るさを自動的に調整することができる。
【0557】
ディスプレイの明るさは、2つの異なる条件、すなわち、高い周辺光および低い周辺光についてユーザが設定することができる。光センサは、周辺光のレベルを検出し、制御システム16は、測定された周辺光に基づいて、ディスプレイの明るさを高い周辺光または低い周辺光のいずれかに対して予め選択されたレベルに設定する。ユーザは、各条件に対して1〜5の値を選択することにより、高い周辺光および低い周辺光に対して明るさのレベルを選択することができる。ユーザインタフェースは、各条件に対するスライダバーであり得る。別の例では、ユーザは、数を選択することができる。制御システムは、ディスプレイの光のレベルに一致するようにボタンの光のレベルを設定することができる。
【0558】
ディスプレイ324のLCDディスプレイおよび/またはタッチスクリーンは、欠陥を発生する場合があり、その場合、それらは、表示せずかつ/または正確に応答しない。その原因の1つの理論(ただし唯一の理論ではない)は、ユーザから画面への静電気放電であり、それは、LCDディスプレイおよびタッチスクリーン用のドライバのメモリの値を変化させる。ソフトウェアが、UICエグゼクティブ354を処理するか、またはACエグゼクティブ354が、タッチスクリーンおよびLCDディスプレイ用のドライバの定数メモリレジスタをチェックする低優先度サブプロセスまたはスレッドを含む場合がある。スレッドが、メモリレジスタにおける定数値のうちのいずれかが、ユーザインタフェースコンピュータ302または自動化コンピュータ300の別の場所に格納された定数値と異なることを見つけた場合、そのスレッドは、LCDディスプレイおよび/またはタッチスクリーン用のドライバを再初期化する別のソフトウェアプロセスを呼び出す。一実施形態では、LCDディスプレイは、
セイコーエプソン(Seiko Epson
) S1d13513チップによって駆動され、タッチスクリーンは、Wolfson Microelectronics
WM97156チップによって駆動される。定数レジスタ値の例としては、限定されないが、画面上に表示されるピクセルの数、表示される色の数が挙げられる。
【0559】
さらに、ユーザインタフェースコンピュータ302は、USBインタフェース326を備える。USBフラッシュドライブ等のデータ記憶デバイス328は、USBインタフェース326を介してユーザインタフェースコンピュータ302に選択的に結合され得る。データ記憶デバイス328は、患者特定データを格納するために使用される「患者データキー」を含むことができる。透析治療および/または調査質問(たとえば、体重、血圧)からのデータは、患者データキーに記録することができる。このように、患者データは、USBインタフェース326に結合されたときはユーザインタフェースコンピュータ302によってアクセス可能であり、インタフェースから取り外されたときは携帯可能であり得る。患者データキーは、サイクラスワッピング中に1つのシステムまたはサイクラから別のシステムまたはサイクラにデータを転送し、臨床ソフトウェアからシステムに新しい治療およびサイクラ構成データを転送し、システムから臨床ソフトウェアに治療履歴および装置履歴情報を転送するために使用することができる。例示的な患者データキー325を、
図128に示す。
【0560】
図示するように、患者データキー325は、コネクタ327と、コネクタに結合されたハウジング329とを備える。患者データキー325は、任意選択的に専用USBポート331に関連づけることができる。ポート331は、(たとえば、APDシステムのシャ
ーシ内の)凹部333と、凹部内に配置されるコネクタ335とを備える。凹部は、ポート331に関連づけられたハウジング337によって少なくとも部分的に画定され得る。患者データキーコネクタ327およびポートコネクタ335は、選択的に互いに電気的にかつ機械的に結合されるように適合される。
図128から理解することができるように、患者データキーコネクタ327およびポートコネクタ335が結合されると、患者データ記憶デバイス325のハウジング329は、凹部333内に少なくとも部分的に受け入れられる。
【0561】
患者データキー325のハウジング329は、それが関連づけられるポートを示す視覚的手掛かりを含み、かつ/または、正しくない挿入を防止するような形状であり得る。たとえば、ポート331の凹部333および/またはハウジング337は、患者データキー325のハウジング329の形状に対応した形状を有することができる。たとえば、各々、非矩形形状を有するか、または、
図128に示すように上部刻み付けを備えた楕円形形状等の不規則な形状を有することができる。ポート331の凹部333および/またはハウジング337ならびに患者データキー325のハウジング329は、それらの関連づけを示すためのさらなる視覚的手掛かりを含むことができる。たとえば、各々、同一材料から形成され、かつ/または、同一もしくは同様の色および/もしくはパターンを有することができる。
【0562】
さらなる実施形態では、
図129に示すように、患者データキー325のハウジング329は、キー325の上ではねる可能性があるいかなる液体もコネクタ327から離れるようにかつハウジング329の反対側の端部に向かって運ぶように、コネクタ327から離れる方向に傾斜するように構成され、そこでは、ハウジング329の孔339は、患者データキー325およびそのポートコネクタ335との継手から液体を排液するのに役立つことができる。
【0563】
一実施形態では、ポート331および凹部333は、
図35に示すようにサイクラ14のフロントパネル1084に位置する。ドア141が閉じられ、治療が開始される前に、患者データキー325はポート331内に挿入される。ドア141は、ドア141が閉じられるときに患者データキー325を収容する第2凹部2802を含む。患者データキー325をドア141の後方に配置することにより、すべての治療データをPDKに記録することができることが確実になる。この位置により、ユーザが治療の途中でキーを取り外すことが防止される。
【0564】
別法としてまたはさらに、患者データキー325は、APDシステムが、患者データキーが期待されたタイプおよび/または製造元のものであることを確認するために読取可能な、確認コードを含むことができる。こうした確認コードは、患者データキー325のメモリに格納され、APDシステムのプロセッサが、患者データキーから読み取りかつ処理することができる。別法としてまたはさらに、こうした確認コードを、たとえば、バーコードまたは数値コードとして、患者データキー325の外側に含めることができる。この場合、コードは、カメラおよび関連するプロセッサ、バーコードスキャナ、または別のコード読取デバイスによって読み取ることができる。
【0565】
システムの電源が入れられたときに患者データキーが差し込まれていない場合、キーの挿入を要求する警告を生成することができる。しかしながら、システムは、それが事前に構成されている限り、患者データキーなしで実行することができる可能性がある。したがって、自身の患者データキーを喪失した患者は、交換キーを取得することができるようになるまで治療を受けることができる。データを、患者データキーに直接格納するか、または、ユーザインタフェースコンピュータ302に格納した後に患者データキーに転送することができる。データはまた、患者データキーからユーザインタフェースコンピュータ3
02に転送することも可能である。
【0566】
さらに、USBインタフェース326を介してユーザインタフェースコンピュータ302にUSB Bluetooth(登録商標)アダプタ330を結合して、たとえば、デ
ータが近くのBluetooth対応装置と交換されるのを可能にすることができる。たとえば、APDシステムの付近にあるBluetooth対応体重計は、USB Bluetoothアダプタ330を使用してUSBインタフェース326を介してシステムに患者の体重に関する情報を無線で転送することができる。同様に、Bluetooth対応血圧計カフは、USB Bluetoothアダプタ330を使用してシステムに患者の血圧に関する情報を無線で転送することができる。Bluetoothアダプタは、ユーザインタフェースコンピュータ302に内蔵されることができ、または、外部にあり得る(たとえば、Bluetoothドングル)。
【0567】
USBインタフェース326は、いくつかのポートを備えることができ、これらのポートは、異なる物理位置を有し、かつ異なるUSB装置に使用され得る。たとえば、患者データキー用のUSBポートを透析機の表面からアクセス可能にすることが望ましい可能性があり、別のUSBポートを透析機の背面に設けてその後面からアクセス可能とすることができる。Bluetooth接続用のUSBポートは、シャーシの外側に含めるか、または、代わりに、たとえば、透析機の内部もしくはバッテリドアの内側に配置することができる。
【0568】
上述したように、セーフティクリティカルな意味合いを有する可能性がある機能は、自動化コンピュータにおいて隔離することができる。セーフティクリティカルな情報は、APDシステムの動作に関係する。たとえば、セーフティクリティカルな情報は、治療を実施またはモニタリングするAPD手続きおよび/またはアルゴリズムの状態を含むことができる。非セーフティクリティカルな情報は、APDシステムの動作に本質的ではない画面表示の視覚的表現に関する情報を含むことができる。
【0569】
自動化コンピュータ300上でセーフティクリティカルな意味合いを有する可能性がある機能を隔離することにより、ユーザインタフェースコンピュータ302は、セーフティクリティカルな動作の処理から解放され得る。したがって、ユーザインタフェースコンピュータ302で実行するソフトウェアの問題またはそのソフトウェアに対する変更は、患者に対する治療の送達に影響を与えることがない。ユーザインタフェースビューを展開するために必要な時間を短縮するために、ユーザインタフェースコンピュータ302によって使用することができるグラフィカルライブラリ(たとえば、Trolltech社のQt(登録商標)ツールキット)の例を考える。これらのライブラリは、自動化コンピュータ300のものとは別個のプロセスおよびプロセッサによって所例されるため、自動化コンピュータは、システムの残りの部分(セーフティクリティカルな機能を含む)に影響を当てあえる可能性がある、ライブラリ(同じのプロセッサまたはプロセスによって処理される場合)のあらゆる潜在的な欠陥から保護される。
【0570】
当然ながら、ユーザインタフェースコンピュータ302は、ユーザに対するインタフェースの提示を担当するが、たとえばディスプレイ324を介して、ユーザインタフェースコンピュータ302を使用してユーザがデータを入力することも可能である。自動化コンピュータ300の機能とユーザインタフェースコンピュータ302の機能との間の隔離を維持するために、ディスプレイ324を介して受け取られるデータは、解釈さえるために自動化コンピュータに送り、表示するためにユーザインタフェースコンピュータに戻すことができる。
【0571】
図127は2つの別個のコンピュータを示すが、セーフティクリティカルな機能の格納
および/または実行の、非セーフティクリティカルな機能の格納および/または実行からの分離は、CPU/メモリコンポーネント304および314等の別個のプロセッサを含む単一のコンピュータを有することによって提供することができる。したがって、別個のプロセッサまたは「コンピュータ」を提供することは必要ではないと認識されるべきである。さらに、別法として、単一のプロセッサを用いて、上述した機能を行うことができる。この場合、透析機類を制御するソフトウェアコンポーネントの実行および/または格納を、ユーザインタフェースを制御するものから機能的に隔離することが望ましい場合があるが、本発明はこれに関して限定されない。
【0572】
システムアーキテクチャの他の態様はまた、安全の問題に対処するように設計することも可能である。たとえば、自動化コンピュータ300およびユーザインタフェースコンピュータ302は、各コンピュータのCPUによって有効化または無効化することができる「安全ライン」を含むことができる。安全ラインは、APDシステムのセンサ/アクチュエータ312のうちの少なくともいくつかを有効にするのに十分な電圧(たとえば、12V)を発生させる電圧源に結合することができる。自動化コンピュータ300のCPUおよびユーザインタフェースコンピュータ302のCPUの両方が安全ラインにイネーブル信号を送ると、電圧源によって発生する電圧は、センサ/アクチュエータに送られ、いくつかの構成要素を作動させかつ無効にすることができる。その電圧は、たとえば、空気圧弁およびポンプを作動させ、オクルーダを無効にし、ヒータを作動させることができる。一方のCPUが安全ラインにイネーブル信号を送るのを止めたとき、電圧経路を(たとえば、機械的リレーによって)遮断して、空気圧弁およびポンプの作動を停止し、オクルーダを有効にし、ヒータの作動を停止することができる。このように、自動化コンピュータ300またはユーザインタフェースコンピュータ302の一方が必要とみなすとき、流体路から患者を迅速に隔離することができ、加熱および圧送等の他の活動を停止することができる。各CPUは、セーフティクリティカルなエラーが検出されるか、または、ソフトウェアウォッチドッグがエラーを検出するとき等、任意の時点で安全ラインを無効にすることができる。無効にされると、自動化コンピュータ300およびユーザインタフェースコンピュータ302の両方がセルフテストを完了するまで、安全ラインを再び有効することができないように、システムを校正することができる。
【0573】
図130は、ユーザインタフェースコンピュータ302および自動化コンピュータ300のソフトウェアサブシステムのブロック図を示す。この例では、「サブシステム」は、関連するシステム機能の所定のセットに割り当てられたソフトウェア、場合によっては、ハードウェアの集まりである。「プロセス」は、独立した実行ファイルとすることができ、それは、それ自体の仮想アドレス空間中で実行し、プロセス間通信機能を用いて他のプロセスにデータを渡す。
【0574】
エグゼクティブサブシステム332は、自動化コンピュータ300のCPUおよびユーザインタフェースコンピュータ302のCPUで実行しているソフトウェアの実行のインベントリを作成し、実行を確認し、開始し、モニタリングするために使用されるソフトウェアおよびスクリプトを含む。カスタムエグゼクティブプロセスは、上述したCPUの各々で実行される。各エグゼクティブプロセスは、それ自体のプロセッサにソフトウェアをロードしかつそれをモニタリングし、他のプロセッサ上のエグゼクティブをモニタリングする。
【0575】
ユーザインタフェース(UI)サブシステム334は、ユーザおよび診療所とのシステム対話を処理する。UIサブシステム334は、「モデル・ビューコントローラ」設計パターンに従って実施され、データの表示(「ビュー」)をそのデータ自体(「モデル」)から分離する。特に、システム状態およびデータ変更機能(「モデル」)およびサイクラ制御機能(「コントローラ」)は、自動化コンピュータ300上のUIモデルおよびサイ
クラコントローラ336によって処理され、サブシステムの「ビュー」部分は、UIコンピュータ302上でUIスクリーンビュー338によって処理される。ログ閲覧またはリモートアクセス等のデータ表示およびエクスポート機能は、全体的にUIスクリーンビュー338によって処理され得る。UIスクリーンビュー338は、ログ閲覧および臨床医インタフェースを提供するもの等、追加のアプリケーションをモニタリングしかつ制御する。これらのアプリケーションは、UIスクリーンビュー338によって制御されるウィンドウ中で生成され、それにより、警告、警報またはエラーの場合に、UIスクリーンビュー338に制御を返すことができる。
【0576】
治療サブシステム340は、透析治療の送達を指示し、そのタイミングを調整する。それはまた、処方箋を確認し、処方箋、時間および利用可能な流体に基づいて治療サイクルの回数および持続時間を計算し、治療サイクルを制御し、供給バッグ内の流体を追跡し、ヒータバッグ内の流体を追跡し、患者の体内の流体の量を追跡し、患者から取り除かれた限外ろ過の量を追跡し、警告または警報状態を検出することを担当することができる。
【0577】
透析機制御サブシステム342は、透析治療を実施するために使用される透析機類を制御し、治療サブシステム340によって呼び出されたときに、高レベルな圧送および制御機能を調整する。特に、透析機制御サブシステム342によって以下の制御機能を実行することができる。すなわち、エアコンプレッサ制御、ヒータ制御、流体送達制御(圧送)および流体体積測定である。透析機制御サブシステム342は、後述するI/Oサブシステム344によってセンサの測定値も信号で通信する。
【0578】
自動化コンピュータ300のI/Oサブシステム344は、治療を制御するために使用されるセンサおよびアクチュエータへのアクセスを制御する。この実施態様では、I/Oサブシステム344は、ハードウェアへの直接アクセスが可能な唯一のアプリケーションプロセスである。したがって、I/Oサブシステム344は、他のプロセスが、ハードウェア入力の状態を取得し、ハードウェア出力の状態を設定するのを可能にする、インタフェースを公開する。
FPGA
いくつかの実施形態では、
図132におけるハードウェアインタフェース310は、機械制御機能の定義されたセットを実行し、さらなる安全性の層をサイクラコントローラ16に提供することができる、自動化コンピュータ300およびユーザインタフェース302とは別のプロセッサであり得る。フィールドログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の第2プロセッサが、いくつかの計算タスクを自動化コンピュータ300からハードウェアインタフェース310(たとえば、FPGA)に移動させることによって、サイクラ14の応答性および速度を向上させることができ、それにより、自動化コンピュータ300はより多くの資源を流体管理および治療制御にあてることができ、それは、これらは資源集約的な計算を含むためである。ハードウェアインタフェース310は空気圧弁を制御でき、さまざまなセンサからのデータを記録し、一時的に格納することができる。ハードウェアインタフェース310による弁、圧力レベルおよびデータ記録のリアルタイム制御により、自動化コンピュータ300は、コマンドを送り、データを受け取ることができる(自動化コンピュータ300で実行しているソフトウェアプロセスまたは機能が、それらに対して用意ができたとき)。
【0579】
ハードウェアインタフェースプロセッサ310は、有利には、(限定されないが)腹膜透析サイクラ14を含む任意の医療流体送達装置に実装することができ、そこでは、1つまたは複数のポンプ、および流体の1つまたは複数の供給源容器(たとえば、透析液バッグ、または注入すべき流体を収容するヒータバッグ)からの1つまたは複数の弁の構成によって、流体が患者またはユーザに圧送される。それはまた、患者またはユーザからの流体を容器(たとえば、排液バッグ)まで圧送するように構成された流体送達装置(たとえば、腹膜透析サイクラ)に実装することも可能である。メインプロセッサは、所定の機能(たとえば、透析液バッグからヒータバッグへの圧送、ヒータバッグからユーザへの圧送
、またはユーザから排液容器への圧送)を行い、1つの位置から次の位置へ圧送される流体の体積を監視するように、ポンプおよび弁の適切な順序およびタイミングの制御に対して専用であり得る。二次(ハードウェアインタフェース)プロセッサ(たとえば、FPGA)は、対応して、連続した一定速度(たとえば、約100Hzまたは200
0Hz)でさまざまなセンサ(たとえば、ポンプに関連づけられた圧力センサ、または加熱システムに関連づけられた温度センサ)から受け取られるデータを収集しかつ格納し、メインプロセッサによって要求されるまでデータを格納することに専用であり得る。二次プロセッサはまた、メインプロセッサで発生するいかなるプロセスからも独立した速度で、またはスケジュールで、ポンプの圧送圧力を制御することも可能である。他の機能(後記参照)に加えて、二次プロセッサは、メインプロセッサからのコマンドに基づいて個々の弁を開開閉することも可能である。
【0580】
一例では、ハードウェアインタフェース310は、限定されないが以下を含む複数の機能を実行するプロセッサであり得る。
・予測可能であり、かつ高分解時間ベースに基づいた空気圧式圧力センサデータの収集、・自動化コンピュータ300によって要求されるまでのタイムスタンプでの圧力データの格納、
・その自動化コンピュータ300から受け取ったメッセージの確認、
・1つまたは複数の空気圧弁2660〜2667の自動制御の提供、
・ピック・アンド・ホールド(Pick&Hold)機能を提供し、かつ/または電流フィードバックによりいくつかの弁を制御する、可変パルス幅変調(PWM)デューティサイクルでのいくつかの弁の制御、
・弁の組合せ、最大圧力および温度ならびに能力の自動化されかつ冗長な安全性検査の提供、
・必要に応じてサイクラ14をフェールセーフモードにする、他のコンピュータ300、302からの独立性、
・サイクラ14でのボタンの状態のモニタリングおよびボタン照明のレベルの制御、
・自動接続ねじ駆動機構1321の制御および自動接続位置検知のモニタリング、
・溶液キャップ31および/またはスパイクキャップ63の存在の検出、
・空気圧式ポンプの制御、
・プライミングセンサLEDおよび検出器の制御、
・過電圧の検出および過電圧を検出するハードウェアの試験、
・1つまたは複数の流体検出器の制御およびモニタリング、
・ドア141のラッチ1080および近接センサ1076のモニタリング、
・システムレベルでの臨界電圧のモニタリング。
【0581】
ハードウェアインタフェース310は自動化コンピュータ300およびユーザインタフェース302のプロセッサとは別個のプロセッサ、A/D変換器および1つまたは複数のIO基板を備えることができる。別の実施形態では、ハードウェアインタフェースはFPGA(フィールドプログラマブレゲートアレイ)からなる。一実施形態では、FPGAはカリフォルニア州(California)のXilinx Inc.製の400Kゲートおよび256ボールパッケージでのSPARTAN(登録商標)3Aである。ハードウェアインタフェース310は、制御CPU機能のうちの多くについて独立した安全性モニタとして動作するように採用されるインテリジェントエンティティである。ハードウェアインタフェースまたは制御CPUのいずれかが一次コントローラとしての役割を果たし、他方がモニタとしての役割を果たす、いくつかのセーフティクリティカル動作がある。
【0582】
ハードウェアインタフェース310は、限定されないが、以下を含む以下の自動化コン
ピュータ300の機能を監視する役割を果たす。
・自動化コンピュータ300から受け取られているシステム制御データの完全性のモニタリング、
・治療中の患者の危険性をもたらす可能性がある組合せについての命令された弁の構成の評価、
・過剰に高いかまたは低い温度についての流体およびパンの温度のモニタリング、
・過電圧モニタのモニタリングおよび試験、および
・自動化コンピュータ300がハードウェアインタフェースから戻された重要なデータを確認する手段の提供。
【0583】
図131は、自動化コンピュータ300、UIコンピュータ302およびハードウェアインタフェースプロセッサ310の一構成の概略図である。ハードウェアインタフェース310は、通信ラインを介して自動化コンピュータ300に接続されており、サイクラ14内のセンサおよびアクチュエータ312に接続している。電圧源2500が、コンピュータ300、302、310のうちの任意のものが有効または無効にすることができるセーフティクリティカルアクチュエータのための電力を提供する。セーフティクリティカルアクチュエータは、限定されないが、空気圧弁、空気圧式ポンプ、およびヒータ回路上の安全リレーを含む。空気圧系統は、電源が切られたときに安全な状態であるように構成されている。空気圧安全状態は、患者に対するライン28、34を閉塞すること、制御チャンバ171を隔離すること、および/またはカセット24上のすべての弁184、186、190、192を閉鎖することを含むことができる。ヒータ回路2212における安全リレー2030は開放しており、リレーの電源を切られたときに電気的な加熱を防止する。各コンピュータ300、302、310は、各々、弁、ポンプおよび安全リレーへの電力を中断することができる別個の電気的スイッチ2510を制御する。3つのコンピュータのうちのいずれかが障害状態を検出した場合、それは、3つのスイッチ2510のうちの1つを開放することによって、サイクラ14をフェールセーフ状態にすることができる。電気的スイッチ2510は、UIコンピュータ302および自動化コンピュータ300それぞれにおける安全性エグゼクティブプロセス352、354によって制御される。
【0584】
図132は、ハードウェアインタフェース310と、さまざまなセンサと、空気圧弁と、バッグヒータと、自動化コンピュータ300との間の接続の概略図である。ハードウェアインタフェース300は、パルス幅変調DC電圧を介して、空気圧弁2660〜2667の各々および空気圧式ポンプまたはコンプレッサ2600を制御する。
図132は、空気圧弁2660〜2667、ポンプ2600およびヒータ安全リレー2030へ電力を供給する安全ライン2632の代替実施形態を提示し、そこでは、単一のスイッチ2510が、3つのコンピュータ300、302、310に接続されたANDゲート2532によって駆動される。プライミングセンサはハードウェアインタフェース310によって制御されかつモニタリングされる。ボタンLEDの明るさは、PWM電圧を介してハードウェアインタフェース310によって制御される。
【0585】
図132に列挙されたボタン、圧力センサ、温度センサおよび他の要素からのデータ信号は、ハードウェアインタフェース310によってモニタリングされ、データは、自動化コンピュータ300によって呼び出されるまでバッファメモリに格納される。デジタル入力は、ハードウェアインタフェース310に直接に接続される。圧力センサ、温度センサ、電流センサ等からのアナログ信号は、アナログ・デジタル変換器(ADC)基板に接続され、ADC基板は、アナログ信号をデジタル値に変換し、デジタル値をスケーリングおよび/またはオフセットすることができる。ADCの出力はSPIバスによってハードウェアインタフェース310に通信される。データは一定速度でバッファに記録されかつ格納される。圧力リザーバおよび流体トラップに関する圧力データ、温度測定値および電流測定値を含むデータ信号のうちのいくつかは、比較的低速で記録される可能性がある。低
速データは100Hzで記録される可能性である。断熱FMS容積測定アルゴリズムは、規則的な間隔で記録される高速圧力データを用いて改善することができる。好ましい実施形態では、制御容積171および基準チャンバ174のセンサからの圧力データは、2000Hzで記録される。データは、タイムスタンプと共にランダムアクセスメモリ(RAM)に格納することができる。データ収集の速度は、好ましくは、自動化コンピュータ300から、かつハードウェアインタフェースのプロセスまたはサブルーチンから独立して進行することができる。データは、プロセスがその値を呼び出すとき、自動化コンピュータ300に報告される。
【0586】
ハードウェアインタフェース310から自動化コンピュータ300の間のデータの転送は、データパケットが、受信側コンピュータによって使用されるために確認され、その後受け入れられる前に、転送されバッファに格納される、2ステッププロセスで発生する可能性がある。一例では、送信側コンピュータは、第1データパケットを送信し、その後、第1データパケットに対する巡回冗長検査(CRC)値の第2の送信を行う。受信側コンピュータは、第1データパケットをメモリバッファに格納し、新しいCRC値の第1データパケットを計算する。そして、受信側コンピュータは、新しく計算されたCRC値を、受け取ったCRC値と比較し、2つのCRC値が合致する場合に第1データパケットを許容する。巡回冗長検査(CRC)は、生データに対する偶発的な変化を検出するためにデジタルネットワークおよび記憶デバイスにおいて通常用いられる、誤り検出符号である。これらのシステムに入るデータのブロックは、それらの内容の多項式の除法の剰余に基づいて、添付された短い検査値を獲得し、取得時、計算が繰り返され、検査値が合致しない場合は、想定されるデータ破損に対して補正措置を行うことができる。CRC値が合致しない場合、データは自動化コンピュータとハードウェアインタフェースとの間で転送されない。複数の連続データパケットがCRC試験に失敗する場合、受信側コンピュータは警報を発信し、安全ライン2632の電源を切ることよって、透析機をフェールセーフ状態にすることができる。一例では、警報状態は、第3の連続的に失敗したCRC検査の際に発生する。
【0587】
自動化コンピュータ300はコマンドを通過させて、選択された弁を開放し、指定された容積における指定された圧力をハードウェアインタフェース300に対して設定する。そして、ハードウェアインタフェース310は、PWM電圧を各弁に提供することによって弁の位置を制御する。弁が最初に高い電圧または電流で駆動され、次いで、より低い電圧または電流で適所に保持される、ピック・アンド・ホールドアルゴリズムでの要求通りに、ハードウェアインタフェース310は弁を開放する。弁のピック・アンド・ホールド動作は、有利には、消費電力を低減させ、サイクラ14内部の放熱のレベルを低下させることができる。
【0588】
ハードウェアインタフェース310は、指定された容積内の圧力を、指定された容積での測定された圧力に基づいて、指定された容積と適切な圧力リザーバとの間の弁を開閉することによって制御する。ハードウェアインタフェース310はまた、圧力リザーバ内の圧力を、圧力リザーバにおける測定された圧力に基づいて、空気圧式ポンプと圧力リザーバのうちの1つとの間の弁を開閉することにより制御することができる。指定された容積は、制御チャンバ171、基準容積174、流体トラップ、ならびに正圧リザーバおよび負圧リザーバの各々を含むことができる。ハードウェアインタフェース310は、限定されないが、オン−オフ制御、またはPWM信号での弁の比例制御を含む複数の制御方式を介して、これらの指定された容積の各々における圧力を制御することができる。一例では、上述したように、ハードウェアインタフェース310は、第1限界および第2限界を設定し、圧力が第2の上限を超えたときは弁を閉鎖し、圧力が第1の下限未満であるときは弁を開放する、時々はバンバンコントローラと呼ばれる場合があるオン−オフコントローラを実装する。別の例では、ハードウェアインタフェース310は、指定された容積と両
方の圧力リザーバとの間の弁を作動させて、所望の圧力を達成することができる。他の例では、自動化コンピュータ300は1つまたは複数の弁を指定し、所定の弁に対して、指定されたセンサによって測定される圧力を制御するように命令することができる。
【0589】
ハードウェアインタフェース310は、自動接続キャリッジの位置および動作を制御する。自動接続キャリッジ146の移動および位置決めは、キャリッジ146の測定された位置に基づいてハードウェアインタフェースによってリアルタイムで制御される。自動化コンピュータ300はキャリッジに対して特定の機能または位置を命令することができる。ハードウェアインタフェース310は、自動化コンピュータ300のメモリまたは処理に負荷をかけることなく、命令された機能を実行する。キャリッジ146の位置決めは、位置センサからのフィーバックループで制御される。さらに、上述したように、FPGAは、検出素子1112によって溶液キャップ31および/またはスパイクキャップ63の存在を検出する。別法として、キャップ31および/またはスパイクキャップ63の存在は、限定されないが、ビジョンシステム、溶液キャップおよび/またはスパイクキャップ63によって閉鎖される可能性がある光学センサ、またはたとえば、ストリッパ要素1491におけるマイクロスイッチを含む、さまざまな検出技術によって検出することができる。
【0590】
ハードウェアインタフェース310は、自動化コンピュータ300またはユーザインタフェースコンピュータ302から独立して安全機能を実施することができる。安全ライン2632を無効にし、かつ/または安全性エグゼクティブ352、354に対する警報を通知するハードウェアインタフェース310の独立した動作により、安全でない状態が発生する可能性がさらに低減する。ハードウェアインタフェース310は、任意の時点において、規定された弁の組合せについて、警報を送り、かつ/または安全ライン2632の電源を切ることができる。許可されていない弁の位置に基づいてサイクラ電源を切ることにより、患者が保護され、(必要な場合はリセットの後に)治療を完了する可能性が維持される。ハードウェアインタフェース310は、ヒータパンおよび/またはバッグボタンにおける過剰な温度、制御チャンバまたはリザーバ内の過剰な圧力を含む安全でない状態において、警報を発し、安全ラインの電源を切ることも可能である。ハードウェアインタフェースは、水または他の液体が流体トラップ内で検出されるとき、警報を発し、安全ラインの電源を切ることができる。
ヒータ制御システム
(限定されないが)デュアル電圧ヒータ制御システムならびにヒータ漏電最適化および安全システムを含む、ヒータ制御システムの以下の説明は高電圧(たとえば、ライン電圧)でヒータを作動させる任意の装置に適用することができる。たとえば、これらのヒータ制御システムは、目下開示されている腹膜透析サイクラに組み込むことができる。さらに、それらは、米国特許第5,350,357号明細書、同第5,431,626号明細書、同第5,438,510号明細書、同第5,474,683号明細書および同第5,628,908号明細書に開示されている腹膜透析システム、または米国特許第8,246,826号明細書、同第8,357,298号明細書、同第8,409,441号明細書および同第8,393,690号明細書に開示されている血液透析システム等、任意の血液透析システムに組み込むことができる。
【0591】
上述した制御システムを用いて、患者に送達される溶液が所定の温度の範囲内に維持されるのを確実にすることができる。治療プロセス中、サイクラ14は、ヒータバッグライン26を介して、接続された透析液容器20からの溶液でヒータバッグ22を充填する。ヒータバッグ22は、電気抵抗ヒータを含むことができるヒータパン142の上に載っている。断熱カバー143でヒータバッグ22を覆うことができる。ヒータコントローラは、患者に溶液を送達する前に溶液の温度を所望の設定値に制御するために、ヒータパン142に送達される熱エネルギーを制御するように機能する。患者を傷つけるかあるいは患
者に不快感をもたらすか、または低体温または高体温をもたらすことを回避するために、溶液温度は、患者の腹腔に送達される前に安全範囲内にあるべきである。ヒータコントローラはまた、ヒータパンの温度を、触れて安全な温度に制限することも可能である。ヒータコントローラは、最も効果的な治療を確実にするために、溶液を適時に許容可能な温度の範囲内に加熱しかつ維持するように構成される。
【0592】
図133は、溶液ヒータシステム500の例示的な実施形態の概略図である。この例では、溶液ヒータシステム500は、サイクラ14のハウジング82内に配置される。ハウジングは、ハウジング82の頂部に取り付けることができる断熱蓋143を含む。したがって、ハウジング82およびヒータ蓋143は、溶液ヒータシステム500の構成要素を収容する役割を果たす領域を画定することができる。溶液ヒータシステムは、以下の要素を含むことができる。すなわち、ハウジング82、ヒータ蓋143、ヒータパン22、ヒータ要素508、ヒータ温度センサ504、ボタン温度センサ506、断熱リング507およびヒータ制御電子回路50である。ヒータパン142は、ハウジング82の内部に配置され、ヒータトレイ142の上部に配置されるときに、ヒータバッグ22を収容することができる。好ましくは、バッグ内の流体がバッグ内の流体の量に関わらず入口/出口と常に接触していることを確実とするのに役立つように、ヒータバッグの入口および/または出口をつるされた位置に配置するように、ヒータパン142は傾けられる。実施形態では、ヒータパン142の床に沿って配置された最大6またはそれより多くのヒータパン温度センサ504(
図133には、1つの例示的なヒータパン温度センサ504のみを示す)があり得る。さらに、ヒータパン142内に配置されたボタン温度センサ506があり得る。バッグ内の流体または透析液の温度の近似を提供するために、ボタンセンサ506は、断熱リング507によってヒータパン142から熱的に隔離されながら、ヒータバッグと十分に熱的に接触するように配置される。別の実施形態では、ボタンセンサ506は、アルミニウムボタン上に取り付けられた一対のサーミスタを備えることができる。アルミニウムボタンは、たとえば、LEXAN(登録商標)3412Rプラスチックまたは別の低熱伝導材料から作製された断熱リングによって熱的に隔離される。ヒータバッグが満杯のおよそ1/3未満であるときにヒータバッグ内の流体の温度をより適切に測定するために、流体ラインがヒータバッグ22に接続するトレイの端部の近くに、ボタン温度センサ506を配置することができるボタンセンサ506はまた、流体または透析液温度センサと呼ぶことも可能である。ヒータパン142の下に、パンの上端の方により向けて配置された、複数のヒータ要素508もある場合があり、バッグセンサは、バッグ内の流体温度のより正確な読取りを提供し、かつヒータ要素508によって比較的影響を受けないために、パンのつるされた部分により向けられるように配置されている。ヒータ要素508の熱出力は、ヒータバッグ内の所望の流体温度を達成するように、ヒータ制御電子回路505によって制御することができる。ヒータ制御電子回路505は、限定されないが、パルス幅変調(PWM)信号(
図134に表すPWM信号511)を生成するヒータ制御モジュール509を含むことが可能である。入出力(IO)サブシステム344における電気的ハードウェアは、PWM信号511に基づいて、電力をヒータ要素508に接続し、IOサブシステム344のハードウェアは、ヒータパン温度センサ504およびボタン温度センサ506の出力を読み取る。PWM信号511は、ヒータ要素508の各々に供給される電力を制御することができ、その結果、溶液ヒータシステム500は、次いで、ヒータバッグ22をユーザが設定可能な快適温度まで加熱することができ、この温度は、好ましい安全温度範囲内に制御することができる。溶液ヒータシステム500は、ヒータパン142の表面温度を、触れて安全な温度に限定することも可能である。ヒータ制御回路505のハードウェア部品は、コントローラ16の一部であり得る。ヒータパン142およびヒータバッグ22をサイクラ12の電子部品および空気圧式構成要素から熱的に隔離するように機能する、ヒータ要素508の下方に配置された断熱材510もあり得る。さらに、ヒータ蓋143は、ヒータバッグ22を周囲環境から隔離することができる。したがって、溶液ヒータシステム500は、ボタン温度センサ506によって測定される、ヒ
ータバッグ22内部の溶液温度を、可能な限り迅速に所望の流体設定値温度550(
図135参照)にし、治療サイクルの残りを通じてその所望の流体設定値温度550を維持するように構成することができる。いくつかの実施形態では、温度センサは、ハードウェアインタフェース310に接続する。同じのハードウェアインタフェース310が、ヒータを無効にする安全リレーを制御することが可能である。
【0593】
いくつかの実施形態では、ヒータ要素は、スイッチの温度が第1所定値を超えると開放する熱スイッチを含むことができる。スイッチの温度が第2のより低い所定値未満に低下すると、スイッチは再度閉鎖する。熱スイッチは、ヒータ要素に直接組み込むことができ、またはヒータ要素の外側に、もしくはヒータパン上に取り付けることができる。熱スイッチは、安全でないパン温度に対して保護する追加の層を提供する。
【0594】
別の例では、熱スイッチは、ワンタイムヒュージブルリンクを備えた温度ヒューズであり得る。切れた温度ヒューズを交換するためにサービスコールが必要となり、これは、治療を再開する前に、サイクラ14を検査し、かつ/または試験する機会を有利に提供することができる。
図134はヒータ制御サブシステムのソフトウェアコンテキストの概略ブロック図を示す。実施形態では、ヒータ制御回路505のロジックは、APDシステムのソフトウェアアーキテクチャにおいて透析機制御サブシステム342のヒータ制御モジュール509として実装することができる。ヒータコントローラソフトウェアは、後述するように、コントローラ16(
図127)において実装することができる。さらに、治療サブシステム340は、ヒータバッグ容積およびボタン温度センサ506に対する設定値等の情報を、透析機制御サブシステム342に供給することができる。ヒータ要素508は、治療サブシステム340によって有効にすることができる。透析機制御サブシステム342はまた、透析機制御サブシステム342の下方に位置するI/Oサブシステム344から温度値を読み取ることも可能である。さらに、ヒータコントローラ509は、PWM信号511を出力することができ、PWM信号511は、さらに、ヒータ要素508に供給される電力を制御することができる。
【0595】
実施形態では、透析機制御サブシステム342は、I/Oサブシステム344を処理し、変数を更新し、状態を検出するように定期的に(たとえば、およそ10ミリ秒毎に)呼び出すことができる。透析機制御サブシステム342は、更新された信号をヒータ制御モジュール509に定期的に(たとえば、およそ10ミリ秒毎に)送ることも可能である。更新された信号は、ヒータバッグ容積、ヒータパン温度515、ボタン温度517、設定値温度550およびヒータ有効化機能を含むことができる。ヒータ制御モジュールは、これらの信号の一部またはすべてを連続的に平均することができるが、より低い頻度では(たとえば、2秒毎に)単にその出力511を計算および更新することができる。
【0596】
別の態様では、溶液ヒータシステム500は、ヒータバッグ22内の溶液温度を、所望の流体設定値温度550の所与の範囲内に制御できることができる(
図134および
図139〜
図141を参照)。さらに、溶液ヒータシステム500は、周囲温度(たとえば、およぼ5℃〜およそ37℃)、バッグ充填容積(たとえば、およそ0mL〜およそ3200mL)、および容積容器20の温度(たとえば、およそ5℃〜およそ37℃)の比較的広い範囲等、種々の異なる動作条件下で予め定義された仕様内で機能するように設計されている。さらに、ヒータバッグ22内の溶液と補充サイクル中に導入された溶液とが異なる温度である可能性がある場合であっても、溶液ヒータシステム500は仕様内で機能することができる。溶液ヒータシステム500はまた、公称電圧の±10%程度に変動するヒータ供給電圧にて仕様内で機能するようにも設計されている。
【0597】
溶液ヒータシステム500は、非対称システムであるとみなすことができ、そこでは、溶液ヒータシステム500は、ヒータ要素508によって透析液温度を上昇させることが
できるが、ヒータバッグ22内の溶液温度を低下させるためには、自然対流に依存する。熱損失は、断熱材510および断熱カバー143によってさらに制限することができる。1つのあり得る結果は、温度オーバシュートの場合に、ヒータバッグが低速に温度を低下させる一方で、APDシステム10は患者充填を遅延させることができるということである。ヒータパン142上にヒータ要素を配置するあり得る結果は、ヒータパン142が、加熱プロセス中のヒータバッグ22の温度よりも実質的に高い温度である可能性があるということである。ボタン温度センサ506によって記録されるヒータバッグ温度に対する単純なフィードバック制御は、ヒータパンにおけるより高い温度での熱エネルギーによってヒータバッグ22が所望の設定値温度550よりオーバシュートするのを回避するように、十分速やかにヒータの電源を切ることができない可能性がある。別法として、ヒータ508を制御して、ヒータバッグ温度がオーバシュートしないようにするヒータパン温度504を達成することにより、ヒータシステムが低速になり、したがって、治療が遅延する可能性がある。
【0598】
ヒータバッグ内の溶液がオーバシュートなしに設定値温度550に達する時間を最小限にするために、ヒータ制御モジュールは、一部にはヒータパン142、ヒータバッグ22およびヒータバッグ22内の流体の平衡温度を制御することによって、ヒータバッグ内の所望の流体温度を達成するようにヒータ要素508の電力を変化させる制御ループを実施することができる。一実施形態では、比例積分(PI)コントローラが、ヒータバッグ22およびヒータパン142の温度ならびにヒータバッグ内の溶液の体積の関数である平衡温度532を制御する。平衡温度は、ヒータバッグ22およびヒータパン142内の溶液が、ヒータの電源を切りかつそれら2つの構成要素が平衡に達するようにした場合に、到達する温度であると理解することができる。平衡温度は、各々の熱体積によって重み付けされた、ヒータパン142に対する目標温度および溶液充填ヒータバッグの測定された温度の加重平均としても理解することができる。平衡温度は、測定されたヒータパン温度および溶液温度の加重平均として計算することも可能であり、そこでは、温度は、それらのそれぞれの熱体積によって重み付けされる。実施形態では、ヒータパンおよびヒータバッグ内の流体の加重平均温度は、目標ヒータパン温度にヒータパンの熱体積を掛け、これに、流体温度にヒータバッグ内の流体の熱体積を掛けたものを足した和として計算することができ、ここで、和は、ヒータパンの熱体積にヒータバッグ内の流体の熱体積を足した和で割る。ヒータパンおよび流体の加重平均に対して、別法として、ヒータパンおよびバッグ内の流体の質量、またはヒータパンの容積およびバッグ内の流体の体積によって重み付けすることができる。
【0599】
平衡温度の制御は、たとえば、比例、積分および/または微分コントローラを用いる単一のフィードバックループ、ならびに入れ子型ループ等、複数の制御方式を用いて実施することができる。カスケード型入れ子型制御ループを用いる制御方式の一実施形態は
図135に示す。外側ループコントローラ514は、内側ループコントローラ512に供給されるヒータパン設定値温度527を変化させることによって、ボタン温度センサ506によって測定されるヒータバッグ温度を流体設定値温度550に制御することができる。別法として、外側ループコントローラ514は、ヒータパン設定値温度527を変化させることによって、ヒータバッグ22、流体およびヒータパン142の平衡温度を流体設定値温度550に制御することができる。ヒータバッグ22および流体の温度は、ボタン温度センサ506によって測定することができ、ヒータパン温度は、ヒータパン温度センサ504のうちの1つまたは複数によって測定することができる。外側ループコントローラは、以下の要素のうちの1つまたは複数を含むことができる。すなわち、比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラ、飽和限界、アンチワインドアップロジックおよび0次ホールドロジック要素である。
【0600】
内側ループコントローラ512は、ヒータ要素508の熱出力を変化させることにより
、ヒータパン温度をヒータパン設定値温度527に制御することができる。パンの温度は、ヒータパン温度センサ504のうちの1つまたは複数によって測定することができる。内側ループコントローラは、以下の要素のうちの1つまたは複数を含むことができる。すなわち、比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラ、飽和限界、アンチワインドアップロジックおよび0次ホールドロジック要素である。
【0601】
ヒータ制御モジュール509の例示的な実施態様は、比例積分微分(PID)コントローラとカスケード結合されたPI調節器を利用する。
図135の実施形態では、PID内側ループコントローラ512は、ヒータパン142の温度を制御することができ、PI外側ループコントローラ514は、ヒータパン温度センサ504およびボタン温度センサ506によって測定される、ヒータバッグ、ヒータバッグ内の流体およびヒータパンの平衡温度を制御することができる。ループコントローラ514は、溶液ヒータシステム500による所望の流体設定値550のいかなるオーバシュートも、後述するようにロジック制御型積分器によって最小限にすることがでできるという点で、標準PI調節器とは異なる。実施形態では、ヒータパン温度信号515およびボタン温度センサ(ヒータバッグ)信号517は、比較的高いフレームレート(たとえば、フル100Hzフレームレート)で一対の制御フィルタ519を通してローパスフィルタ処理され、一方、ヒータ制御モジュール509は、より低いレート(たとえば、1/2Hzのレート)でヒータの出力を変化させることが可能である。
【0602】
図136は、内側ループコントローラ512(ヒータパンコントローラ)の一実施形態の概略図を示す。この実施形態では、内側ループコントローラ512は、限定されないが、差分素子519を含む標準PID調節器を用いて、温度誤差を生成し、比例利得素子522を用いて、PWM信号511を生成する。内側ループコントローラ512は、オフセット誤差を低減させる離散時間積分器516さらに含むことができる。内側ループコントローラ512は、内側ループコントローラ512の出力が飽和すると、温度誤差が長時間存在することによるオーバシュートを最小限にする、アンチワインドアップロジック素子518も含むことができる。内側ループコントローラ512は、ヒータパンの実際の温度515に作用してヒータの応答性を向上させる、離散微分項520をさらに含むことができる。内側ループコントローラ512は、最大および/または最小の許容されたヒータコマンドまたはPWM信号511を設定する飽和限界素子521をささらに含むことができる。内側ループコントローラ512は、およそ2秒毎に発生するコントローラの計算の間でPWM信号511を一定に保持する、0次ホールドロジック523をさらに含むことができる。
【0603】
図137は、外側ループコントローラ514(ボタン温度センサコントローラ)の概略図を示す。この例では、外側ループコントローラ514は、差分素子531、積分器534および比例利得素子526を含むことができる変更されたPI型調節器を利用する。外側ループコントローラ514は、ヒータ制御モジュール509におけるロジックによって積分器のスイッチが入れられるかまたは切られるのを可能にする、積分器切換えロジック522および対応するスイッチ529をさらに含むことができる。外側ループコントローラ514は、外側ループコントローラ514の応答性を向上させる、コマンドフィードフォワード524をさらに含むことができる。外側ループコントローラ514は、ボタン温度センサ目標温度517とヒータパン目標温度527との加重組合せに作用する、比例フィードバック項526をさらに含むことができる。結果としての測定値は、上述したような平衡温度532である。外側ループコントローラ514は、飽和限界素子521および/またはローパスフィルタ542をさらに含むことができる。外側ループ内の飽和限界素子521は、最大の許容された目標パン温度527を設定する。ローパスフィルタ542は、溶液ヒータシステム500の帯域幅の外側の周波数で過渡制御信号をフィルタリングによって除去するように設計することができる。
【0604】
外側ループコントローラ514における積分素子534は、以下の条件のうちのいくつかまたはすべてが存在するとき、スイッチ529によってオンにすることができる。すなわち、ボタン温度517の変化の速度が所定閾値未満であり、ボタン温度517が流体設定値温度550の所定の度数内にあり、またはバッグの容積が所定の最小値よりも大きく、コントローラ512、514の何れも飽和されていない。平衡温度フィードバックループは、溶液ヒータシステム500の過渡挙動を制御することができ、包囲している周囲温度が通常〜上昇範囲にあるときに優位であり得る。積分器516の動作は、相対的に低音の環境においてのみ重要である可能性があり、その結果、平衡時に、ボタンセンサ実温度517とヒータパン実温度515との間の実質的な温度差がもたらされる可能性がある。フィードフォワード項524は、ヒータパン目標温度527まで流体設定値温度550を通過することができる。この動作は、ゼロの代わりに流体設定値温度550でヒータパン目標温度527を始動させ、それにより、溶液ヒータシステム500の過渡応答が向上する。
【0605】
ヒータモジュール509は、ヒータパン実温度515が所定閾値(この閾値は、最大の許容されたヒータパン目標温度527よりもわずかに高いように設定することができる)を超える場合、PWM信号511をオフにするチェック部も含むことができる。このチェック部は、通常動作下ではトリガされる可能性はなく、ヒータパン142の温度が所定の最大値にある間に、ヒータバッグ22が取り除かれた場合、トリガされ得る。
【0606】
PIコントローラ514は、平衡温度532に作用する比例項を含むことができる。平衡温度は、ヒータ508の電源がオフにされ、かつヒータパン142および溶液充填ヒータバッグ22が平衡となることができる場合にもたらされる、ボタンセンサ506によって測定されるヒータバッグ温度である。平衡温度は、制御容積解析546におけるヒータパン142およびヒータバッグ22の概略ブロック図を示す
図138を参照することによって、よりよく理解することができる。制御容積解析546は、平衡温度532を求めることができるモデル環境を示す。この例示的な実施形態では、溶液ヒータシステム500は、少なくとも2つの熱質量、すなわちヒータパン142およびヒータバッグ22を備えることができる、制御容積548としてモデル化することができる。制御容積548の境界は、熱伝達がヒータパン142とヒータバッグ22との間のみである、完全な断熱材として機能するように想定することができる。このモデルでは、ヒータ要素508を介して熱エネルギー549をシステムに加えることができるが、熱エネルギーは、ヒータパン142およびヒータバッグ22から取り除かれない場合がある。このモデルでは、溶液ヒータシステム500におけるように、ヒータパン142およびヒータバッグ22が平衡となるに従い、ヒータバッグ22がその目標温度に到達するのに、ちょうど十分であるようにヒータパン142を加熱することが望ましい。したがって、以下のように、平衡温度532はヒータバッグ22の初期温度およびヒータパン142の初期温度の関数として計算することができる。
【0607】
E=M
pc
pT
p+V
bρ
bc
bT
b=(M
pc
p+V
bρ
bc
b)T
e
式中、M
p、c
pは、ヒータパン142の質量および比熱であり、V
p、ρ
b、c
bは、バッグ内の溶液の体積、密度および比熱であり、T
pおよびT
bは、それぞれ、ヒータパン515およびボタン517の温度である。以下のように、平衡温度について解くことにより、パンおよびボタン温度の線形組合せが得られる。
【0608】
T
e=cT
b+(1−c)T
p
式中、
【0609】
【数31】
[この文献は図面を表示できません]
【0610】
定数cは平衡定数であり、kは、溶液に対するヒータパンの熱体積比である。添字bは、ヒータバッグ22内の溶液を示す一方で、ρはヒータパン142を示す。
このモデルでは、初期過渡状態の間にヒータモジュール509が平衡温度532を制御するのを可能にすることにより、ヒータバッグ22の迅速な加熱が可能となる一方で、ヒータパン実温度515が、熱オーバシュートを防止するように十分早期に低下することができる。cパラメータを経験的に求めることができる。ヒータモジュール509は、所望の設定値550に到達するのに必要な全エネルギーを過小に見積もるように、cを測定された値より大きい値に設定することができ、溶液ヒータシステム500の熱オーバシュートをさらに制限する。
【0611】
図139は、通常の条件下で作動する開示された実施形態の溶液ヒータシステム500の性能をグラフにより示す。ヒータパンセンサ504、ボタン温度センサ506およびさらなる温度プローブの測定された温度が、時間に対してプロットされている。流体温度プローブは、制御方式を確認する実験設定の一部であった。流体プローブ温度は、線552として示されている。ボタン温度は、線517として示されており、ヒートパン温度は、線515として示されている。線550は、ボタン温度センサ506に対する目標温度である。この試験の開始時、ヒータバッグは実質的に空であり、ヒータは電源がオフであり、流体は移動しておらず、それにより、すべての温度は公称値にある。時点T=1において、25℃の流体が、ヒータバッグ22内に流れ込み始め、プローブおよびボタン温度552、517を低下させる一方で、ヒータが、電源がオンになり、ヒータパン温度515を上昇させる。通常の動作下では、平衡温度532の比例制御は、ヒータバッグ22内の溶液を所望の流体設定値温度550に近い温度まで加熱するのに十分であり得る。したがって、
図139では、溶液ヒータシステム500は有効に機能し、ヒータパン実温度515、ボタンセンサ実温度517およびプローブ温度552は、すべて、およそ50分以内に流体設定値温度550に収束する。
【0612】
図140は、周囲温度が35℃である高温環境で作動させる溶液ヒータシステム500の性能をグラフで示す。上述したように、試験は、ヒータバッグが実質的に空である状体で開始する。流体が流れを開始し、ヒータの電源がオンとなると、プローブ温度552およびボタン温度517は低下し、ヒータパン温度515は上昇する。高温環境では、溶液ヒータシステム500は、通常の条件と実質的に同様に機能する。したがって、平衡温度532の比例制御は、この場合もまた、ヒータバッグ22内の溶液を所望の流体設定値温度550近くの温度まで加熱するのに十分あり得る。
図139では、溶液ヒータシステム500は有効にかつ所望の仕様内で機能し、ヒータパン実温度515、ボタンセンサ実温度517およびプローブ温度552は、すべて、およそ30分以内に所望の設定値温度550に収束する。
【0613】
図141は、周囲温度が10℃でありかつ供給源流体が5℃である場合に低温環境で作動させる溶液ヒータシステム500の性能をグラフで示す。上述したように、試験は、ヒータバッグが実質的に空である状態で開始する。流体が流れ開始し、かつヒータの電源がオンとなると、プローブ温度552およびボタン温度517は低下し、ヒータパン温度515は上昇する。低温環境では、所望の流体設定値温度550を平衡温度532と等しく設定することにより、ボタンセンサ506の温度に定常状態誤差がもたらされるか可能性がある。低温環境での熱損失は、熱平衡中にヒータパン142とボタンセンサ506との
間の大きな温度差を必要とする可能性がある。平衡温度532は、ヒータパン142およびボタンセンサ506の加重和であるため、ヒータパン142の温度が平衡時に所望の流体設定値温度550を上回る場合、ボタンセンサ506の温度は流体設定値温度550未満である可能性がある。これは、平衡温度532が流体設定値温度550と等しい場合であっても発生する可能性がある。この定常状態誤差を補償するために、ボタンセンサ506の温度誤差に作用する外側PIコントローラ514に積分項を追加することができる。積分器538は、以下の条件のうちの1つまたは複数が満足されるとオンとすることができる。すなわち、ボタンセンサ506の温度の一次導関数が低く、ボタンセンサ506が流体設定値温度550に近くかつヒータバッグ22の容積が最小閾値を超え、内側PIDループ512または外側PIコントローラ514のいのいずれも飽和されていない。この例示的な実施形態では、積分項の切換えにより、通常動作作中に積分器538の影響を最小限にすることができ、温度過渡状態の間に積分によってもたらさるオーバシュートを最小限にすることも可能である。したがって、
図141では、溶液ヒータシステム500は、有効にかつ所望の仕様内で機能し、ヒータパン実温度515、ボタンセンサ実温度517およびプローブ温度552は、すべて、およそ30分以内に流体設定値温度550に収束する。
【0614】
要約すると、開示した温度コントローラは、2つ構成要素システムの優れた熱制御を達成することができ、そこでは、第1構成要素の質量が経時的に変化し、第2構成要素がヒータまたはクーラを含み、両方の構成要素は断熱容積内にある。この熱制御は、平衡温度を制御することによって達成することができる。温度コントローラは、両方の構成要素の温度ならびに可変構成要素の質量を求める。温度コントローラは、第2構成要素の加熱または冷却を変化させて、平衡温度を所望の設定値温度にする。平衡温度は、2つの構成要素の熱体積加重平均温度である。コントローラは、比例フィードバックループを用いて、平衡温度を制御することができる。
【0615】
温度コントローラはまた、設定値温度と第1構成要素の温度との間の差に応答する積分項も含むことができる。積分項は、任意選択的に、以下の条件のうちのいくつかまたはすべてが満足されるとオンにすることができる。
・第1構成要素の温度変化の速度が低い、
・第1部分の温度が設定値温度に近い、
・第1部分の容積が何らかの最小レベルを超える、
・制御出力信号が飽和しない。
【0616】
温度コントローラは、設定値温度を比例および積分項の出力に加えるフィードフォワード項も含むことができる。
さらに、温度コントローラは、外側ループコントローラが、少なくとも平衡温度に対する比例制御項を含みかつ内側コントローラに対する設定値温度を出力する、カスケード温度コントローラの外側ループコントローラであり得る。内側コントローラは、ヒータ要素またはクーラ要素を備えた第1構成要素の温度を、外側コントローラによって生成される設定値温度に制御する。
ユニバーサル電源
本開示の態様によれば、APDシステム10はユニバーサル電源を含むことができ、ユニバーサル電源は、サイクラ14における電気機械要素および電子回路のうちのいくつかまたはすべてに対して、ライン電圧をDC電圧の1つまたは複数のレベルに変換し、ヒータパン142用の電気ヒータにAC電力を提供する。サイクラ14における電気機械要素は、空気圧弁、電気モータおよび空気圧ポンプを含むことができる。サイクラ14における電子回路は、制御システム16、ディスプレイ324およびセンサを含むことができる。AC電力は、ヒータコントローラに供給されて、ヒータトレイ142上のヒータバッグ22ないの溶液の温度を、ユーザ/患者に溶液を送達する前に所望の設定値に制御する。
ユニバーサル電源は、2つ(またはそれより多くの)ヒータ要素の構成を変化させて、ACライン電圧の2つの範囲、たとえば、110Vrms±10Vrmsの第1の範囲、および220Vrms±20Vrmsの第2の範囲に対応する。この構成は、複数の異なる国においてAPDシステム10の使用に対応するように意図される。治療セッションの開始中、APDサイクラ14は、ヒータバッグライン26を介して、接続された溶液容器20からの溶液でヒータバッグ22を充填する。代替実施形態では、溶液の予め充填されたバッグを治療の開始時にヒータパン142の上に配置することができる。
PWMヒータ回路
APDサイクラにおけるヒータコントローラは、ヒータパン142に取り付けられた
ヒータ要素に送達される電力を調整する。APDサイクラは、世界中のさまざまな場所で使用することができ、100Vrms〜230Vrmsの電力を供給するAC電源に差し込むことができる。ヒータコントローラおよび回路は、十分なヒータ電力を供給し続け、かつ複数の方法でヒューズを飛ばすこともヒータ要素を損傷することもなく、種々のAC電圧に適合することができる。
【0617】
ヒータ回路の一実施形態を
図142に提示し、そこでは、パルス幅変調器(PWM)ベースの回路2005が、AC電源2040の1つのリードとヒータ素子2000との間に接続されたパルス幅変調(PWM)素子2010により、ヒータパン142の温度を制御する。コントローラ2035はリレー2030およびPWM素子2010に動作可能に接続されている。コントローラ2035は、電圧検出部2020および温度センサ2007に問い合わせることにより、ヒータの動作をモニタリングする。コントローラ2035は、PWM素子2010への信号を介してヒータ2000に送達された電力の量を調整することができる。PWMまたはパルス幅変調素子は、一定期間の0%〜100%の幾分かは閉鎖されている。PWM素子2010が、時間の0%閉鎖されているとき、いかなる電気エネルギーもヒータ2000まで流れない。PWM素子が100%閉鎖されているとき、ヒータはAC電源2040に連続的に接続されている。コントローラ2035は、PWM素子2010を0%〜100%(両端値を含む)の値の範囲に設定することにより、ヒータ2000によって消失された電力の量を調整することができる。
【0618】
PWM素子2010は、大きな電流に対して1秒当たり複数回オン・オフを切り替える。PWM素子2010は、典型的には、何らかの種類の固体リレー(SSR)である。AC電圧のためのSSRは、典型的には、電源スイッチを制御するトリガ回路を含む。トリガ回路は、たとえば、リードリレー、変圧器または光カプラであり得る。電源スイッチは、シリコン制御整流器(SCR)またはTRIACであり得る。SCRまたはTRIACはサイリスタとも呼ばれる。SSRの一例は、Crydom Inc.によるMCX240D5(登録商標)である。
【0619】
一例では、コントローラ2035は、温度センサ2007によって測定されるヒータパン142の温度を制御するために、PWM素子値を調整することができる。別の例では、コントローラ2035は、ヒータバッグ22内の流体の温度を制御するように、PWM素子値を調整することができる。別の例では、コントローラ2935は、ヒータ電力の固定スケジュールを提供するように、PWM素子2010を制御することができる。コントローラ2035は、ヒータ回路を開放し、ヒータ2000への電力の流れを停止する、安全リレー2030に命令することができる。安全リレー2030は、コントローラ2035とは独立して安全回路を提供するために、別個のコントローラ(図示せず)によって制御することができる。
【0620】
PWMベースの回路2005は、AC電源2040で電圧を示す信号をコントローラ2035に提供する、電圧検出素子2020を含むことができる。一例では、電圧検出素子2020は、AC電源2040前後のAC電位を測定することができる。別の例では、電
圧検出素子2020は、ヒータ2000を通る電流の流れを測定することができる。コントローラ2035は、ヒータ素子2000、PWM素子2010信号および測定された電流の既知の抵抗から、AC電源の前後の電圧を計算することができる。
【0621】
PWMベースの回路2005は、種々のAC電源電圧に対応するように、PWM素子2010の最大許容デューティサイクルを変化させることができる。ヒータ素子2000は、最低のあり得るAC電圧で最大必要電力を提供するように設計することができる。コントローラは、AC電源における電圧の範囲に対する一定の最大ヒータ電力を提供するように、PWM素子2010のデューティサイクルを変化させることができる。たとえば、110ボルトACラインからヒータ2000に供給される電圧は、100%デューティサイクルにて供給することができ、PWM素子2010が25%に設定されている場合、同じ量の電力を、220ボルトACラインからヒータ2000に送達することができる。ヒータパン142の温度を制御するように、PWM素子2010のデューティサイクルを、最大値未満にさらに低下させることができる。
【0622】
ヒータ素子2000およびヒータパン142の温度は、素子およびヒータパンの熱質量の関数である時定数に対する平均ヒータ電力によって制御することができる。平均ヒータ電力は、比較的一定であるヒータの抵抗、およびヒータ素子2000の前後のrms電圧から計算することができる。実際的なサイズのヒータでは、PWM周波数はヒータシステムの時定数よりはるかに高速であり、そのため、ヒータ素子の前後の有効電圧は、単に、PWMデューティサイクルにrms電圧を掛けたものである。
【0623】
図142の回路のヒータパン温度を制御するための一方法は、コントローラ2035に対して、2020における測定された電圧に基づいて最大PWMデューティサイクルを設定するように指示することができる。最大デューティサイクルは、所望の最大ヒータ電力、ヒータ素子2000の既知の抵抗、および測定された電圧から計算することができる。計算の1つのあり得る例は以下の通りである。
【0624】
PWM
MAX=(P
MAX*R
HEATER)
0.5/V
rms
式中、PWM
MAXは最大許容PWMデューティサイクルであり、P
MAXは最大ヒータ電力であり、R
HEATERはヒータ素子2000の公称抵抗であり、V
rmsは電圧検出部2020によって測定される供給電圧である。計算の別の例は以下の通りである。
【0625】
PWM
MAX=P
MAX/(I
2*R
HEATER)
式中、Iは、電圧が印可されるときのヒータを通る電流である。コントローラ2035は、最大PWMデューティサイクルを設定した後に、次いで、温度センサ2007によって測定されるヒータパン142の温度を制御するように、PWM素子2010のPWMデューティサイクルを変化させる。コントローラは、たとえば、PIDフィードバックループ、またはPIフィードバックシステムを含む多数の方法で所望の温度を達成するように、PWM素子を制御することができる。
【0626】
代替方法および構成では、PWM回路2005は、電圧検出部2020を含んでいない。この代替方法では、コントローラ2035は、温度センサ2007によって測定される所望のヒータパン温度を達成するように、PWM素子2010のPWMデューティサイクルを変化させる。コントローラ2035は、最小PWMデューティサイクルで加熱サイクルを開始し、温度センサが所望の温度をコントローラ2035に報告するまでPWMデューティサイクルを増大させる。PWM速度の上昇の割合は、ヒューズ2050をトリップさせて飛ばす可能性がある過剰な電流を回避するように、制限されるかまたは制御される。コントローラ2035は、別法として、フィードバック計算においてPWMデューティサイクル増大の速度を制限するように小さな利得を用いることができる。別法として、コ
ントローラはフィードフォワード制御を用いて、PWMデューティサイクル増大の速度を制限することができる。
デュアル電圧ヒータ回路
ヒータの抵抗を変化させるデュアル電圧ヒータ回路2012の例を、
図143において概略ブロック図として示す。
図143のブロック図は、110Vrmsおよび220Vrmsの2つの標準AC電圧に対するおよそ一定のヒータ電力を提供する、デュアル電圧ヒータ回路2012の一例を提示する。デュアル電圧ヒータ回路2012は、ヒータを再構成することによって最大電流を制限し、それにより、回路2005におけるようなPWM素子のデューティサイクルを設定するソフトウェアのエラーに対して感受性が低くなる。回路2012は、PWM素子2010を通る最大の電流の流れを低下させ、それにより、より小型かつより安価なSSRが可能になる。回路2012におけるヒータ構成の選択は、ヒータ調整から分離されて、制御および信頼性を向上させる。ヒータ電力を調整するPWM素子2010A、2010Bは、典型的には、典型的には故障時閉の状態にあり、したがって最大電力を提供する、SSRである。ヒータ選択リレー2014は、高いサイクル用途に対して理想的よりは劣るが、典型的には、一部には電気機械式リレーが故障時開である傾向があるため、セーフティクリティカル回路に対して好ましい可能性がある。プロセッサによるヒータ構成の選択により、ヒータ構成のさらなる制御が可能になる。
【0627】
場合によっては電圧降下によるAC電源電圧変動の場合、コントローラは、好ましくはヒータ構成を一定に保持する。対照的に、瞬時の電圧に基づいてヒータ構成を自動的に変化させる回路は、ヒータ構成の間で変動する可能性がある。この結果、回路が、一時的により低いレベルからその元のレベルに戻るライン電圧に十分高速に応答しない場合は、高い電流の流れがもたらされる可能性がある。これは、電圧変動に応答するためにハードウェア対応回路のみが使用される場合に、問題である可能性が高い。入力電圧変動のあり得る原因を解析するため、またはある期間にわたって平均されるヒータを通る測定された電流の流れのみに応答するために、プログラマブルコントローラが使用される場合、より効率的かつ信頼性の高い解を得ることができる。実施形態では、プロセッサは、ヒータ構成(並列または直列)を選択する際にユーザまたは患者からの入力を受け取り、デュアル電圧ヒータ回路2012は、変動するライン電圧に応答して構成の間で自動的に切り替わらない。別の実施形態では、プロセッサは、全出力で直列の構成(すなわち、より高抵抗の構成)で電流の流れを測定し、治療の開始時にAC電源電圧に適切なヒータ構成を選択し、治療が続く間、構成を変化させない。
【0628】
デュアル電圧ヒータ回路2012は、ヒータ素子2001、2002を備えることができ、それらは、AC電源2040において2つの異なる電圧に対して同一のヒータ電力を提供するように、互いに並列または直列に接続することができる。各ヒータ素子2001、2002は、1つまたは複数のヒータ下位素子を備えることができる。ヒータ素子2001、2002の電気抵抗は好ましくはおよそ等しい。コントローラ2035は、電流検知部2022から信号を受け取り、ヒータ素子2001、2002を直列または並列に接続させるようにヒータ選択リレー2014を制御することができる。コントローラ2035は、種々のAC電源電圧からもたらされる電流の流れを制限するように、2つのヒータ素子の電気的構成を変化させることができる。電流検知部2022の一例は、Acme Electric製の電流検知変圧器AC−1005である。
【0629】
ヒータ素子2001、2002における電力は、温度センサ2007によって測定される所望の温度を達成し、または上述したように他の制御目標を達成するように、コントローラ2035によって制御されるPWM素子2010A、2010Bにより、さらに調整することができる。PWM素子2010A、2010Bは、Crydom Inc.によるMCX240D5(登録商標)等の固体リレーであり得る。安全リレー2030は、ヒータ素子2001、2002をAC電源2040から分離するように構成することができ
る。安全リレー2030は、コントローラ2035または別のプロセッサもしくは安全回路(図示せず)によって制御することができる。
【0630】
安全リレー2030およびヒータ選択リレー2014は、固体または電気機械式リレーであり得る。好ましい実施形態では、安全リレー2030および/またはヒータ選択リレー2014は、電気機械式リレーである。電気機械式リレーの一例はOMRON ELECTRONIC COMPONENTS製および他の製造業者製のG2AL−24−DC12リレーである。電気機械式リレーは、セーフティクリティカル回路に対して好ましいことが多く、それは、それらが、固体リレーよりもロバストであり信頼性が高いと考えられ、かつ故障時開の傾向があるためである。それらはまた、コントローラソフトウェアにおけるさまざまな障害に対して感受性がより低い可能性がある。
【0631】
一例では、ヒータ選択リレー2014は、出力がヒータ素子2001、2002に接続する、二極双投リレーを備える。非通電状態であるヒータ選択リレー2014は、ヒータ素子2001、2002を直列に接続し、それにより、電流は一方の素子を通った後、他方の素子を通って流れる。直列構成は、一回路例では、以下によって達成することができる。すなわち、ヒータ素子2001の第1端部を、PWM素子2010Aを介してL1回路2041に接続し、ヒータ素子2001、2002の接合された端部を、第1極2014Aを介して開回路に接続し、ヒータ素子2002の第2端部を、第2極2014Bを介してL2回路2042に接続する。通電状態では、ヒータ選択リレー2014は、ヒータ素子を並列に接続し、それにより、およそ半分の電流が、各PWMおよびヒータ素子を通って流れる。並列構成は、同じ回路例において以下によって達成することができる。すなわち、ヒータ素子2001の第1端部を、PWM素子2010Aを介してL1回路2041に接続し、ヒータ素子2002の第2端部を、PWM素子2010Bを介してL1回路2041に接続し、ヒータ素子2001、2002の接合された端部を、第1極2014Aを介してL2回路2042に接続する。好ましい回路は、電源が切られた状態でヒータ素子2001、2002を直列に接続し、それは、より高い電圧AC電源に接続された場合、結果としてのより高い抵抗は電流の流れを制限し、ヒューズ2050の過負荷または加熱素子2001、2002の過熱を回避するため、それがより安全な構成であるためである。
【0632】
ヒータ構成を変化させることによってヒータの有効抵抗を変化させるヒータ回路2112の別の例を、
図144において概略ブロック図として示されている。ヒータ回路2112は、(
図143に示す)ヒータ回路2012と同様であるが、L1電源回路およびL2電源回路が壁ソケットにおいて反転された場合に、ヒータ回路2112がより良好な漏れ電流保護を提供することが異なる。L1電源回路およびL2電源回路の反転は、ヒータ回路に電力を供給する建物において電力が間違って配線されている場合にあり得る。住居用の建物での配線は、すべての電気系統が資格を持った人によって設置されかつ保守される病院ほど、信頼性が高くない可能性がある。
【0633】
ヒータ回路2112におけるPWM素子2010A、2010Bと、公称L1回路2041と、ヒータ素子2001、2002と、ヒータ選択リレー2014と、公称L2回路2042との間の電気的構成要素および接続は、壁ソケットの極性に関わらず漏れ電流を最小限にするように配置される。
図144に示すような非通電状態では、ヒータ選択リレー2014は、ヒータ素子2001、2002を直列にPWM素子2010Aと接続する。ヒータ素子を直列に接続する1つの可能な回路は以下を含む。すなわち、PWM素子2010Aを介してL1回路2041に接続されたヒータ素子2001の第1端部、第1極2014A、L1 2014Cおよび第2極2014Bを介してヒータ素子2002の第1端部に接続されたヒータ素子2001の第2端部、およびPWM素子2010Bを介してL2回路2042に接続されたヒータ素子2002の第2端部である。通電状態では、
ヒータ素子2001、2002およびPWM素子2010A、2010Bは、並列に接続される。通電状態では、ヒータ選択リレー2014は、回路2122においてヒータ素子を並列に接続し、それにより、およそ半分の電流が、各PWMおよびヒータ素子を通って流れる。2つのヒータおよびPWM素子を並列に接続するため1つのあり得る回路は、以下を含む。すなわち、PWM素子2010Aを介してL1回路2041に接続されたヒータ素子2001の第1端部、第1極2014Aを介してL2回路に接続されたヒータ素子2001の第2端部、ヒータ素子2002の第1端部は、第2極2014Bを介してL1回路2041に接続され、ヒータ素子2002の第2端部は、PWM素子2010Bを介してL2回路2042に接続される。安全リレー2030は、L2回路2042に位置し、障害が発生した場合に開放することによって電流の流れなしのフェールセーフ状態をもたらす。安全リレーの制御については後述する。コントローラ2035は、電流検知部2022によって測定される電流の流れを、ヒューズ2050、ヒータ素子2001、2002、PWM素子2010A、2010Bに対する定格電流未満のレベルまで制限するように、ヒータ構成を制御し、全ヒータ電力を制限する。コントローラ2035は、センサ2007によって測定されるヒータパン142の温度を制御するように、PWM素子2010A、2010Bのデューティサイクルを変化させる。
デュアル電圧ヒータ回路の実施態様
本発明の一実施形態の回路
図2212を
図145に示し、これは、
図143におけるヒータ回路2012と等価である。回路2212では、リレーコイル2014Dが非通電状態であるとき、ヒータ素子2001、2002はヒータ選択リレー2014によって直列に接続される。コントローラ(図示せず)は、トランジスタスイッチ2224Aを閉鎖するノード2224において信号を供給し、VsDC電力2214を用いてリレーコイルに通電することによって、ヒータ素子2001、2002およびPWM素子2010A、2010Bを並列に接続する。コントローラは、ノード2220における信号を介し、かつVsupply2210で電力が供給されるPWM素子2010A、2010Bのデューティサイクルを変化させることによって、ヒータ電力を調整する。電流の流れは電流検知部2022で測定される。安全リレー2030は通常開放している。安全リレー2030は、コントローラとは別個のFPGA基板によって制御することができる。FPGA基板は、ヒータパン温度ならびに電流検知およびいくつかの他のパラメータを含むAPDサイクラの動作をモニタリングする。FPGA基板は、ノード2228において信号を取り除くことにより、リレーを開放することができる。安全リレーコイル2030Dには、Vsafety2218によって電力が供給される。
【0634】
一例では、電圧を供給するVsupply2210、Vs2214、Vsafety2218は同じ電圧源であり得る。別の例では、各電圧源は、安全性を追加するために、ヒータ回路の追加の動作制御を提供するように制御可能である。一例では、Vsafety2218は、APDサイクラ14における複数のプロセッサによって制御され得る。プロセッサのうちのいずれかがエラーを検出して機能しなくなる場合、Vsafety回路が開放され、安全リレー2030が開放され、ヒータ電力はオフにされる。
デュアル電圧ヒータ回路の動作
典型的なデュアル電圧シナリオでは、ユーザは、110ボルト環境または220ボルト環境のいずれかで(すなわち、大部分の場合、装置が露出される可能性がある電圧の100%の差)腹膜透析システムを使用したい場合がある。しかしながら、より一般的には、デュアル電圧ヒータ回路は、第1電圧とそれより高い第2電圧とを使用することができる任意のシナリオに対して構成することができる。回路切替えシステムは、コントローラが、ヒータに印可されている第1電圧または第2電圧からもたらされる電流の流れを識別することができることによってのみ、制限される。システムの要素は、ヒータ選択リレーによって第2ヒータ素子に接続された第1ヒータ素子を備えるヒータを含むことができ、ヒータ選択リレーは、第1ヒータ素子を第2ヒータ素子と直列にまたは並列に接続するように構成される。電流検知素子が、ヒータを通る電流の流れを測定するように構成される。
そして、電流検知素子から電流の流れ情報を受け取り、最適な程度のヒータ機能および応答性を提供するために予め確定された伝流の流れにより密に近似するように、並列構成または直列構成のいずれかに切り替わるように、ヒータ選択リレーに命令するように、コントローラを構成することができる。大部分の場合、最初の使用に対して、ヒータ選択リレーが直列構成にあるデフォルトモードでサイクラを始動させることがより安全である可能性がある。
【0635】
ヒータ回路は、損害を与える電流がヒータ素子2001、2002またはヒューズ2050を通って流れるのを可能とすることなく、適切なヒータ電力を提供するように操作される。ヒータ回路2212は、治療がAPDサイクラ14で実行される前に構成することができ、AC電源における電圧変化に関わらず動作中に変更されない可能性がある。(
図127における)制御システム16は、ヒータ選択リレー2014が非通電状態でヒータ制御回路2212を起動し、そのため、ヒータ素子は直列に接続されて、電流を最小限にする。起動処理の一部として、自動化コンピュータ300におけるソフトウェアは、PWM素子2010A、2010Bに対して100%デューティサイクルまで命令することによってヒータの電流の流れ試験を行うことができ、結果としての試験電流は、電流検知部2022によって測定され、自動化コンピュータ300に通信される。PWM素子2010のデューティサイクルは、電流の流れ試験の後にゼロにリセットされ得る。
【0636】
一方法例では、自動化コンピュータ300は、所定値に対して、測定された試験電流を評価する。測定された試験電流が所与の値を上回る場合、自動化コンピュータ300はADPサイクラ起動手続きを進める。測定された試験電流値が、その同じ所与の値未満である場合、自動化コンピュータ300は、ヒータ選択リレーに通電して、ヒータ素子2001、2002を並列に再構成する。電流の流れ試験が繰り返され、新しい測定された試験電流が所定値を上回る場合、自動化コンピュータ300はADPサイクラ起動手続きを進める。並列ヒータ素子による電流の流れ試験からの測定された試験電流が所定の値より未満である場合、自動化コンピュータ300は、ユーザインタフェースコンピュータ302にエラーを通信する。
【0637】
別法として、自動化コンピュータ300は、測定された試験電流およびヒータ素子構成に基づいて試験電圧を計算することができる。試験電圧が180Vrms〜250Vrmsの範囲である場合、自動化コンピュータ300はADPサイクラ起動手続きを進める。試験電圧が90Vrms〜130Vrmsの範囲である場合、自動化コンピュータ300は、ヒータ選択リレーに通電して、ヒータ素子2001、2002を並列に再構成し、電流の流れ試験を繰り返し、試験電圧を再計算する。試験電圧が90Vrms〜130Vrmsの範囲である場合、自動化コンピュータ300は、ユーザインタフェースコンピュータ302にエラーを通信しない場合、ADPサイクラ起動手続きを進める。
【0638】
別の方法例では、自動化コンピュータ300は、直列に構成されたヒータ素子での測定された試験電流を、電流値の直列低範囲および直列高範囲と比較する。直列低範囲は、直列に配置されたヒータ素子を通って流れる低いAC電圧と一致する。直列高範囲は、直列に配置されたヒータ素子を通って流れる高いAC電圧と一致する。例示的な実施形態では、低いAC電圧は100V〜130Vのrms値を含み、高いAC電圧は200V〜250Vのrms値を含む。
【0639】
測定された試験電流が低範囲および高範囲の外にある場合、自動化コンピュータ300は、ヒータ回路が破壊されていると判断し、ユーザインタフェースコンピュータ302にエラーを通信することができる。測定された試験電流が高範囲内にある場合、ヒータ構成は変更されないままであり、APDサイクラ14の起動は継続することができる。測定された試験電流が低範囲内にあり、かつヒータ素子が直列に配置される場合、自動化コンピ
ュータ300は、ノード2224における信号を介してヒータ選択リレー2014に通電することによって、ヒータ素子2001、2002を並列配置に再構成することができる。自動化コンピュータ300は、ハードウェアインタフェース310に送られるコマンドを介してヒータ選択リレー2014を制御し、ハードウェアインタフェース310は、それにより、ヒータ選択リレー2014を作動させる信号を提供する。
【0640】
自動化コンピュータ300は、PWM素子2010A、2010Bに対して100%デューティサイクルまで再度命令し、電流検知部2022で電流の流れを測定することによって、ヒータ素子を並列配置に再構成した後に、電流の流れ試験を繰り返すことができる。測定された試験電流を、電流値の並列低範囲に対して評価することができる。測定された試験電流が並列低範囲値内である場合、ADPサイクラ起動手続きを進める。新たに測定された試験電流が並列低範囲値外である場合、自動化コンピュータ300はユーザインタフェースコンピュータ302にエラーを通信する。
【0641】
ヒータ選択リレー2014が切り替えられる間に、安全リレー2030に対してノード2228における信号を介して開放するように命令するように、ハードウェアインタフェース310で実装されるFPGAコントローラをプログラムすることができる。安全リレー2030は、ヒータ選択リレー2014が開閉される度に開放されて、ヒータ選択リレー2014内で一方の極から他方の極への短絡を防止することができる。
ユーザ入力によるデュアル電圧ヒータ回路の動作
代替実施形態では、ヒータ素子2001、2002を再構成する前に、自動化コンピュータ300はユーザの介入を要求する場合がある。ユーザ入力の要求により、本発明の一実施形態の価値のある安全性特徴が提供される。
図146は、利用可能なAC電圧に対してヒータ素子を適切に構成する際にユーザを含める方法2240を例示する論理フローチャートを示す。ステップ2241において、(
図127における)制御システム16は、ヒータ選択リレー2014が非通電状態で、ヒータ制御回路2212(
図145)を起動し、そのため、ヒータ素子は、直列に接続されて、電流を最小限にする。設定2242において、自動化コンピュータ300は、PWM素子2010A、2010Bに対して100%デューティサイクルまで命令し、電流は電流検知部2022によって測定され、測定された試験電流はプロセッサに通信される。PWM素子2010のデューティサイクルは、試験電流が測定された後に、ゼロにリセットされ得る。ステップ2244において、自動化コンピュータ300は、測定された試験電流を第1範囲と比較する。ステップ2245において、測定された試験電流が第1範囲内にある場合、ヒータ構成は正しく、ステップ2254にいて、APD動作は進行する。代替実施形態において、方法2240はステップ2245Aを含み、そこでは、ユーザインタフェースコンピュータ302が、ステップ2245から進む前に、自動化コンピュータ300が測定された試験電流およびヒータ構成から判断したAC電源電圧を確認するように、ユーザに対して要求する。ユーザがAC電圧レベルを確認しない場合、方法2240はステップ2252まで進み、エラーを表示する。
【0642】
ステップ2246において、測定された電流が第2範囲の外にある場合、方法2240は、ステップ2252においてエラーを表示し、そうでない場合、方法2240はステップ2247まで進む。ステップ2247において、ユーザが低いAC電圧を確認する場合、ステップ2248においてヒータ構成が変更され、そうでない場合、方法2240はステップ2252においてエラーを表示する。ステップ2248において、自動化コンピュータ300は、ノード2224における信号を介してヒータ選択リレー2014に通電することによって、ヒータ素子2001、2002を並列配置に再構成する。ステップ2248においてヒータ素子を再構成した後、方法2240はステップ2242においてヒータを再試験し、方法2240の論理フローチャートを続ける。
【0643】
代替実施形態、ユーザまたは患者は、制御システム16のメモリにAC電圧を高いかまたは低いものとして格納することができ、それにより、自動化コンピュータ300は、各治療においてユーザまたは患者に対して、AC電圧を確認するように問い合わせる必要はない。
図147は、AC電圧値が制御システム16のメモリに格納される方法2260を例示する論理フローチャートを示す。ステップ2241〜2246は、上述した方法2240と同じである。ステップ2249において、メモリに対して、格納されたAC電圧値について問合せがなされる。格納されたAC電圧値が低い場合、方法2260はステップ2248に進み、ヒータ素子を並行配置に再構成する。格納されたAC電圧が高いかまたはゼロである場合、ユーザインタフェースコンピュータ302は、低いAC電源電圧を確認するようにユーザに問い合わせることができる。ユーザが低いAC電圧を確認した場合、方法2260はステップ2248に進み、ヒータ素子を並行配置に再構成する。ステップ2248はまた、格納されたAC電圧を低く設定することも含むことができる。ステップ2248においてヒータ素子を再構成した後、方法2260はステップ2242においてヒータを再試験し、方法2260の論理フローチャートを続ける。
【0644】
一例では、方法2260はステップ2245Aを含むことができ、それは、試験電圧をメモリから読み出すか、または測定された試験電流およびヒータ構成から計算し、次いで、ユーザインタフェースコンピュータ302に対して試験電圧を確認するようにユーザに要求する。本方法は、2245と2246との間にステップを含むことができ、そこでは、ヒータが並列配置に再構成され、かつ電流が高い範囲内にない場合、方法はステップ2252に進み、APDサイクラ14の電源を遮断する。
【0645】
方法2240,2260は、複数の異なる方法によって、測定された試験電流を評価することができる。好ましい方法については上述しており、代替例は、後述するようなものである。ステップ2245における第1範囲は、現ヒータ素子構成に対する所望の量の最大ヒータ電力を提供する、電流レベルの範囲であり得る。別法として、ステップ2245は、測定された試験電流およびヒータ素子構成から試験電圧を計算し、試験電圧が以下のヒータ構成に対して正しいか否かを評価することができる。すなわち、並列構成に対しておよそ110Vrms、および直列構成に対しておよそ220Vrmsである。別法として、ステップ2245は、測定された試験電流が所与の所定値を上回るか否かを試験することができる。ステップ2246における第2範囲は、直列構成でのおよそ110Vrmsに対応する電流値の範囲であり得る。別法として、ステップ2246は、測定された試験電流およびヒータ素子構成から試験電圧を計算し、試験電圧が直列構成に対しておよそ110Vrmsであるか否かを評価することができる。別法として、ステップ2246は、測定された試験電圧が所与の所定値未満であるか否かを評価することができる。
【0646】
別の実施形態では、方法2260における選択されたAC電圧値を、予測される使用位置に基づいて工場または流通センタにおいて予めロードすることができる。たとえば、APDサイクラが米国、カナダまたは日本で用いられる場合、AC電圧値は低いように選択され得る。別の例では、APDサイクラが欧州またはアジアで用いられる場合、AC電圧値は高い方に選択され得る。
【0647】
透析機が所与の地域で動作することが予測される場合、このデータベースは、工場において透析機にロードされるか、または動作する場所で初期設定中に技術者によってロードされる地域電圧と同程度に単純であり得る。これらの地域AC電圧値の規定は、手動で、メモリスティックもしくは同様のデバイスを用いて、個人データキー(PDK)、コンパクトディスク、バーコードリーダを用いて、Ethernet(登録商標)または無線接続を用いてワールドワイドウェブで、または当業者には明らかな他のデータ転送機構を用いて、入力することができる。他の実施形態では、地域電圧のセット制御システム16がアクセスすることができ、それを用いて、ユーザのいる地域における典型的な動作電圧を
ユーザに知らせることができる。一実施形態では、ステップ2247においてユーザ入力を受け入れて先の設定から電圧を変化させる前に、ユーザに対して、地域の典型的な電圧を通知し、したがって、地域電圧の値に精通していないユーザに対して、電圧不適合性に対してセーフガードを提供するように自身の現在地を知ることのみが要求される。
【0648】
別の実施形態では、APDサイクラ14に、その現在地を確定する機構、たとえば、GPSトラッカ、Ethernet接続および接続場所確定する機構、またはユーザインタフェース302を用いて国または大陸等の現在地を入力することができるモードが備えられる。実施形態では、直列ヒータ構成で起動し、電流の流れ試験を行った後、ユーザに対して、自身の現在地に関して単に問い合わせることができ、その問合せに対する応答が測定された試験電流およびヒータ構成に関連する電圧、ならびにその地域に対する典型的な電圧の両方に一致する場合、処理を進めることができる。
【0649】
本発明の一実施形態では、手動スイッチ(図示せず)、または別法としてロジックスイッチを用いて、APD機を使用に適した安全な電圧に設定する。瞬時電圧が測定され、所定の値としてまたはカテゴリ記述子として、この測定値がユーザに表示される。ユーザは、測定された電圧がその時点で構成されている透析機に対して安全な動作範囲内にあると応答しなければならず、または別法として、電力が加熱素子まで流される前に、透析機の構成を変更することによって応答しなければならない。構成は、たとえば、ユーザインタフェースコンピュータ302を介して電子的に変更することができ、またはスイッチを入れるか又は切ることによって手動で行うことができる。
【0650】
本発明の別の実施形態では、整流器が、あらゆる入ってくる交流(AC)を単一の直流(DC)に変換する。ヒータ回路は、
図140におけるヒータ回路2005に類似しているが、電圧検出2020素子が、AC電圧を選択されたDC電圧に整流するユニバーサルDC電源に置き換えられていることが異なる。ヒータ素子2001、2002に供給される電力は、整流器におけるPWM素子によって、または別個のPWM素子2030によって調整することができる。ヒータ回路は、安全リレー2010を含むことができる。単一の電圧DC電源により、1つのヒータ構成の使用が可能になる。この実施形態におけるPWM素子は、1つまたは複数のIGBTまたはMOSFETスイッチと、および関連する電気的ハードウェアとを備えることができる。好ましい実施形態では、入ってくる交流は、12V〜48Vの範囲の直流に変換される。
【0651】
別の実施形態では、ヒータ素子2000は正温度係数(PTC)素子を備えることができ、それは、それ自体が、熱の消失を制限する。PTC素子の内部電気抵抗は、温度によって上昇し、そのため、電力レベルは自己制御式である。PTCヒータ素子は、110Vrms〜220Vrmsの電圧で作動するように規格されたSTEGO等の会社から市販されている。PTC加熱素子を採用するヒータ回路は、電圧検出素子2020が取り除かれたヒータ回路2005に類似する。ヒータ電力は、Triacを用いてPWM素子2010によって制御される。
さらなるヒータ回路実施形態
デュアル電圧ヒータ回路の別の実施形態では、ヒータ素子は、スイッチを調整することにより、AC電源の両ラインから分離される。この実施形態はまた、第1コントローラおよび第2コントローラが調整スイッチを有効にするときにのみ調整スイッチを閉鎖するAND回路も備えることができる。第1コントローラは、ヒータ素子に送達される電力を制御するために、調整スイッチにPWM信号を送出することができる。第2コントローラは、PDシステムが許容可能に動作している場合に、調整スイッチを有効にすることができる。第2コントローラは、警告もしくは警報または安全でない状態が存在する場合に、調整スイッチを無効にすることができる。調整スイッチの制御を可能にするAND回路は、別個の安全リレーを不要にする。この実施形態では、コントローラからの信号によって制
御することができる電圧セレクタスイッチか、またはユーザによって制御される外部スイッチか、または手動で切り替えるためのジャンパスイッチを含むことができる。
【0652】
図148は、自動腹膜透析機等、任意の流体処理装置に含めることができる例としてのヒータ回路2930を示す。
図148に示す例としてのヒータ回路2930は、およそ同じ熱出力を依然として生成しながら、複数の電圧で動作するように構成され得る適合的または再構成可能ヒータ素子2917を含む。さらに、ヒータ回路2930は、ラインおよび中性線が壁ソケットにおいて反転されるときであっても、強化された漏れ保護を提供する。
【0653】
図示するように、
図148におけるヒータ回路2930は、コントローラ2904を含む。コントローラ2904は、ヒータ回路2930のさまざまな構成要素を制御することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ2904は、1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。たとえば、コントローラ2904は、制御プロセッサと、制御プロセッサから独立した安全プロセッサとを含むことができる。
【0654】
コントローラ2904は、ヒータ素子2917にAC電源2900のライン端部を選択的に接続し、ヒータ素子2917を通る電流の流れを可能にすることにより、ヒータパン2914の温度を制御することができる。実施形態例では、ヒータ素子2917は、2つの抵抗素子2918A、2918Bのセットを含む。他の実施形態では、ヒータ素子2917は、3つ以上の抵抗素子、または抵抗素子のさらなるセットを含むことができる。さらに、各抵抗素子は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の下位素子を含むことができる。
【0655】
図示するように、ヒータ素子2917の抵抗素子2918A、2918Bの構成は、ヒータ選択リレー2920によって変更可能である。ヒータ選択リレー2920は、コントローラ2904からの信号によって制御することができる。
図148における実施形態例では、ヒータ選択リレー2920は、二極双投リレーとして示されている。ヒータ選択リレー2920は、電気機械式リレーであるかまたは固体リレーであり得る。ヒータ選択リレー2920は、比較的低頻度に(たとえば、起動時のみ)切り替えられるため、電気機械式リレーを使用することが望ましい可能性がある。
【0656】
非導通状態(
図148に示す)では、ヒータ選択リレー2920は、ヒータ素子2917を、その抵抗素子2918A、2918Bが互いに直列であるように構成することができる。この構成は、より高抵抗な構成であり、AC電源2900がより高電圧(たとえば、230V)で装置に電力を供給しているときに使用することができる。他の実施形態では、これは、装置の起動時の安全性の理由のためにデフォルト構成であり得る。
【0657】
好ましくは、ヒータ選択リレー2920の非導通状態は、抵抗素子2918A、2918Bを直列にするように構成される。この直列構成は、起動時、入ってくるAC電源2900電圧が既知でなく、測定されず、または事前設定されていない可能性があるため、抵抗素子2918A、2918Bを通る電流の流れを最も制限するものである。ヒータ回路2930のコントローラ2904が、装置の電源が入れられた後、ヒータ素子2917の適切な構成を(供給源の測定を通して、またはユーザの問い合わせを通して、または使用時の電気プラグの形状または構成の検出を通して)確定するように構成されている場合、抵抗素子2918A、2918Bのセットは、好ましくは装置に電源が入れられたときに直列であるように構成される。
【0658】
図示するように、ヒータ回路2930は、電流検知素子2906を含む。こうした素子を用いて、ヒータ素子2917を通る電流の量を求めることができる。
電流検知素子2906からの信号は、コントローラ2904に提供することができる。いくつかの実施形態では、電流検知素子2906からの信号を、増幅またはフィルタリングの目的で、種々のタイプの回路を通るように送ることができる。
【0659】
ヒータ素子2917を通る電流の量に応じて、ヒータ選択リレー2920の構成を変更することができる。いくつかの実施形態では、電流検知素子2906が所定閾値未満の電流の流れを検出した場合、ヒータ選択リレー2920は、ヒータ素子2917の構成を変更することができる。電流検知素子2906が、所定閾値を上回る電流の流れを検出した場合、ヒータ選択リレー2920は、ヒータ素子2917をその現構成で維持することができる。
【0660】
いくつかの実施形態では、さらなる閾値を採用することができる。たとえば、電流の流れなし閾値、または並列構成障害閾値があり得る。こうした直列障害または電流なし閾値を用いて、たとえばヒータ素子2917がオンであるように命令されたとき、障害状態を検出することができる。たとえば、温度ヒューズが飛んだシナリオでは、開回路が存在する可能性があり、いかなる電流もヒータ素子2917を通って流れない可能性がある。電流の流れが、電流の流れなし閾値未満であると判断された場合、ヒータ選択リレー2920をその現構成で維持することができ、コントローラ2904は、ヒータ素子2917を無効にすることができる。さらに、こうしたシナリオでは、装置は、ユーザに対して、障害状態が存在することを通知することができる。ヒータ素子2917が並列で構成され、抵抗素子2918A、2918Bのうちの一方が機能していない(たとえば、その温度ヒューズが飛んだ)シナリオを検出するように、並列構成障害閾値を設定することができる。電流検知素子2906がこうした状況を示す電流を検出した場合、装置は、ユーザに対して、障害状態が存在することを通知することができる。いくつかの実施形態では、任意選択的に、治療を続けることができる。この場合、ユーザに対して、ヒータバッグ内の流体が単一抵抗素子2918A、2918Bのみで加熱されるためにより長い時間がかかるため、治療が、より少ないサイクルを含む可能性があることを示すことができる。
【0661】
代替実施形態では、コントローラ2904が、上述したロジックのうちの任意のもの等、他のロジックを採用して、ヒータ選択リレー2920がヒータ素子2917構成を変更するべきときおよび場合を判断することができる。
【0662】
好ましくは、ヒータ素子は、装置に電源が入れられる毎に1回のみ、コントローラによって再構成することができる。さらに、コントローラ2904は、好ましくは、ヒータ選択リレー2920を切り替えるときにヒータ素子2917を無効にすることができる。
図148に示す実施形態例では、これは、たとえば、パルス幅変調素子2908、2910を両方ともオフに切り替えることによって達成することができる。
【0663】
他の用途に対して、電流検知素子2906を有利に使用することも可能である。起動時にまたは治療前の間に、電流検知素子2906を使用して、ヒータ素子2917/ヒータ回路2930が適切に機能しているか否かを評価することができる。たとえば、ヒータ素子2917に対するイネーブル信号がオンで張り付くことがないことを確実にするために、コントローラは、ヒータ素子2917に対して100%デューティサイクルで動作するように命令しながら、イネーブル信号をオフに設定することができる。イネーブル信号が使用される実施形態では、イネーブル信号がオフに設定されると、ヒータ素子2917は、命令されたデューティサイクルに関わらず、電力が供給されるべきではない。加熱が発生しているか否かを判断するために、ヒータパン2914に関連づけられた1つまたは複数の温度センサからの温度線がデータをモニタリングする代わりに、電流検知素子2906をモニタリングすることができる。電流がヒータ素子2917を通って流れている場合、障害状態が存在すると判断することができる。これにより、こうした障害が存在するか
否かの信頼性の高い判断を迅速に行うことができる。温度センサに頼る場合、試験中、ヒータパン2914がウォームアップするための時間が割り当てられなければならない。こうしたウォームアップ時間は、代わりに電流検知素子2917がモニタリングされる場合、不要である。たとえば、起動中に、コントローラ2904がヒータ素子2917に対して電力が供給されるように命令するときにヒータ素子2917が電流を引き込むと判断するためにもまた、電流検知素子2906を使用することができることを留意するべきである。ヒータ素子2917に対して電力が供給されるように命令されるときに、ヒータ素子2917が電流を引き込まない場合、障害状態を通知することができる。上記障害が確定されると、ユーザに対して、障害状態が存在することを通知することができる。
【0664】
ヒータ素子2917を再構成することができないか、または(たとえば、回路基板のジャンパによって)手動でしか再構成することができない実施形態では、ヒータ回路2930に電流検知素子2906を含めることもまた有利であり得る。たとえば、電流検知素子2906をモニタリングして、AC電源2900が構成に対して意図された電圧を供給していることを確実にすることができる。電流検知素子2906が、AC電源2900が意図された電圧でないことを示す場合、ユーザに通知するように装置を構成することができ、装置は、AC電源2900電圧に応じて、ヒータ素子2917への電力を遮断することができる。たとえば、ヒータ素子2917が120V動作に対して構成されている場合、電流検知委素子2906をモニタリングして、電流の流れが、AC電源2900が230Vを供給していることを示さないと判断することができる。電流検知素子2906が、120Vに対して構成されたヒータ素子2917が230V AC電源2900から電力を受け取っていることを検出する場合、コントローラ2904によってヒータ素子2917を無効にすることができる。さらに、装置は、ユーザに対して(ユーザインタフェースを介して)装置が正しくない電源電圧に接続されていることを通知することができる。
【0665】
ヒータ素子2917が230Vで動作するように構成されている場合、電流検知素子2906をモニタリングして、電流の流れが、AC電源2900が120Vを供給していることを示さないと判断することができる。電流検知委素子2906が、230Vに対して構成されたヒータ素子2917が120V AC電源2900から電力を受け取っていることを検出する場合、装置は、ユーザに対して(たとえば、ユーザインタフェースを介して)装置が正しくない電源電圧に接続されていることを通知することができる。このシナリオでは、ユーザは、治療を続けることができるが、ヒータ素子2917が、ヒータ素子2917がその意図されたAC電源2900電圧にあった場合ほど迅速にヒータバッグ内の流体を加熱することができない可能性があるため、ユーザに提供される通知は、ユーザに対して、治療がより少ないサイクルを含む可能性があることを知らせることができる。
【0666】
上述したように、コントローラ2904は、AC電源2900をヒータ素子2917に選択的に接続し、ヒータ素子2917を通る電流の流れを可能にすることにより、ヒータパン2914の温度を制御することができる。実施形態例では、この選択的な接続は、パルス幅変調素子(たとえば、固体リレー)2908、2910を用いて確立することができる。パルス幅変調素子2908、2910は、1秒間に複数回、大きい電流の流れのオン/オフを切り替えることができる任意の好適なタイプのスイッチであり得る。好ましい実施形態では、パルス幅変調素子2908、2910は固体リレーである。ここうした実施形態では、パルス幅変調素子2908、2910は、具体的には、TRIAC、すなわちシリコン制御整流器の好適な配置であり得る。好ましくは、トリガ回路とパルス幅変調素子2908、2910との間の結合の程度は最小限にするべきである。いくつかの実施形態では、光カプラを使用することができる。こうした実施形態では、パルス幅変調素子2908、2910の各々は、感光ダイオードを含むことができ、LEDを照明する調整回路によって制御することができる。
【0667】
コントローラ2904によってパルス幅変調素子2908、2910に印可される信号は、パルス幅変調素子2908、2910のデューティサイクルを制御することができる。パルス幅変調素子2908、2910のデューティサイクルを変更することにより、コントローラ2904は、ヒータ素子2917がオンでありヒータパン2914を加熱している時間の長さを定義することができる。コントローラ2904は、ヒータパン2914に関連づけられた複数のセンサ2916A、2916Bからのフィードバックに基づいて、パルス幅変調素子2908、2910を調整することができる。実施形態例では2つのセンサ2916A、2916Bが示されているが、さまざまな実施形態は、より多いかまたは少ないセンサを含むことができる。さらにまたは別法として、コントローラ2904は、電流検知素子2906からの情報を用いて、パルス幅変調素子2908、2910のデューティサイクルを制御することができる。さまざまな実施形態では、コントローラ2904は、本明細書に記載するロジックのうちの任意のものを採用して、ヒータパン2914の温度またはパルス幅変調素子2908、2910のデューティサイクルを制御することができる。
【0668】
複数のセンサ2916A、2916Bは、熱電対もしくはサーミスタまたは他の好適な温度センサ等の温度センサを含むことができる。こうした実施形態では、複数のセンサ2916A、2916Bは、ヒータパン2914の温度に関連する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、こうしたセンサ2916A、2916Bは、ヒータパン2914の上に載っている物体(たとえば、透析液バッグまたはリザーバ)の温度を測定するように配置することができる。こうした実施形態では、ヒータパン2914からセンサを、実質的に熱的に隔離することができる。いくつかの実施形態では、センサ2916A、2916Bのうちの1つまたは複数を、ヒータパン2914の上の物体の温度を測定するように配置することができ、センサ2916A、2916Bのうちの1つまたは複数を、ヒータパン2914自体の温度を測定するように構成することができる。いくつかの具体的な実施形態では、5つのセンサが、ヒータパン2914の上の物体の温度を測定することができ、2つのセンサを用いて、ヒータパン2914の上の物体の温度を測定することができる。こうした実施形態では、ヒータパン2914の上の物体の温度を測定するセンサからの温度データは、ヒータパン2914の温度を制御する制御ループ内に供給することができる。いくつかの実施形態では、制御ループを用いて、ヒータパン2914に対する目標温度を設定することができる。
【0669】
複数のセンサ2916A、2916Bは、いくつかの実施形態では圧力センサを含むことができる。こうした実施形態では、1つまたは複数の圧力センサは、ヒータパン2914の上に載っている物体(透析液バッグまたはリザーバ)の重量に関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、複数のセンサ2916A、2916Bは、ヒータパン2914の上に載っている物体(たとえば、透析液バッグまたはリザーバ)に入りかつ/またはそこから出る流体流をモニタリングするように構成された1つまたは複数のセンサを含むことができる。
【0670】
実施形態例では、コントローラ2904は、ヒータパン2914の上に載っている透析液リザーバ内の透析液を加熱するように、パルス幅変調素子2908、2910を調整することができる。コントローラ2904は、透析液を所定温度範囲内に加熱するロジックを採用することができる。コントローラ2904は、複数のセンサ2916A、2916Bからのフィードバックを使用して、好ましくは、受容者の体温を著しく上昇または低下させないように選択された、所定温度範囲内への透析液の加熱を制御することができる。適切な範囲の選択は、加熱され注入される流体の質量または体積によって決まり、そのいずれかまたは両方を、測定し計算に含めて、適切な温度範囲を求めることができる。たとえば、透析リザーバの重量をモニタリングする圧力センサから、流体の質量を計算することができ、膜ベースのポンプにおける圧力−容積関係のFMS測定値から、注入される流
体の体積を求めることができる。
【0671】
図148に示すヒータ回路2930はまた、複数の安全リレー2912A、2912B、ならびに1つまたは複数のヒューズ(もしくは回路ブレーカ)2902も含むことができる。安全リレー2912A、2912Bは、図示するようにコントローラ2904によって制御することができ、またはコントローラ2904とは無関係の別個のコントローラによって制御することができる。障害状態が検出された場合に、回路を開放するように、安全リレー2912A、2912Bを切り替えることができる。安全リレー2912A、2912Bは、任意の好適な種々のリレー、たとえば固体リレーまたは電気機械式リレーであり得る。いくつかの実施形態では、パルス幅変調素子2908、2910が、安全リレー2912A、2912Bの役割も果たすことができる。すなわち、パルス幅変調素子2908、9210および安全リレー2912A、2912Bは、別個の構成要素である必要はない。1つまたは複数のヒューズ2902は、さらに、障害状態が発生した場合にヒータ回路2930を保護する役割を果たすことができる。ヒューズ2902に過剰な量の電流が流れた場合、ヒューズ2902は、トリップするかまたは飛んで、ヒータ回路2930を高電流から保護することができる。いくつかの実施形態では、公称活線および公称中性線の各々は、別個のヒューズ2902を含むことができる。
【0672】
図148におけるヒータ回路2930はまた、接触または漏れ電流を最小限にするように配置される。ヒータ回路2930は、外線および中性線が壁ソケットにおいて反転される場合であっても、接触または漏れ電流から保護されるように配置される。図示するように、実施形態例では、ヒータ素子2917とヒータパン2914との間に容量結合がある可能性がある。
図148に示す実施形態例では、この容量結合は、コンデンサ2926によって示されている。この容量結合により、幾分かの量の接触または漏れ電流が存在する可能性がある。漏れ電流を制限するために、加熱素子2917とヒータパン2914との間に、好適な断熱材または断熱層(図示せず)を設けることができる。断熱材は、誘電率が低く絶縁耐力が高いあらゆる好適な断熱材料から選択することができる。筐体および任意のコーティングに対する材料選択は、漏れ電流を最小限にするのに役立つように選択することができることも留意されるべきである。
【0673】
さらに、接触または漏れ電流の低減に役立つように、安全リレー2912A、2912Bおよびパルス幅変調素子2908、2910の配置および後続する制御を構成することができる。ヒータ素子2917がより高電圧であるとき、ヒータ素子2917とヒータパン2914との間の漏れ電流が高くなる。したがって、ヒータ素子2917がAC電源2900のフル電圧のままである状況に対して保護することが望ましい場合がある。こうしたシナリオは、ヒータ素子2917が、オンでない(すなわち、電流を流していない)ときにAC電源2900に接続される場合に発生する可能性がある。一対の安全リレーが、ヒータが使用されていないときにAC電源電圧がヒータ素子に達するのを防止するのに有効である可能性がある。しかしながら、PWM信号を用いるヒータの動作中、ヒータ素子は、AC電源接続の極性に応じて、PWM信号の「オフ」段階の間にAC電源電圧にさらされる可能性がある。固体リレー(またはPMW素子)を(たとえば、220ボルトシステムにおける)AC電源の第1極および第2極の両方に、または(たとえば、110ボルトシステムにおける)AC電源の外線および中性線の両方に接続することにより、両固体リレーに同じPWM信号を命令することによって、AC電源接続の極性に関わらず、PWM信号の「オフ」段階がヒータ素子をAC電源電圧から確実に隔離することが有効に確実になる。デュアル固体リレー配置を用いて、高電圧によって電力が供給されかつ一連のオン−オフ(PWM等)信号によって制御される負荷を有する任意の装置(たとえば、ヒータまたはモータ)によって、接触または漏れ電流をより全般的に低減させることができる。高電圧源の各極に接続されかつ同じ制御信号を受け取る固体リレーは、高電圧源によって電力が供給される装置の接触または漏れ電流を有効に低減させることができる。
【0674】
典型的な110ボルトシステムにおいてこれが発生する可能性がある状況としては、公称中性線がAC電源2900によって提供される電気に対する閉鎖戻り経路を提供する場合が挙げられる。これは、公称中性線がパルス幅変調素子2908、2910を含まない場合に発生する可能性がある。これはまた、公称中性線におけるパルス幅変調素子2908、2910が、100%デューティサイクルに調整される場合も発生する可能性がある。これらのシナリオにおいて、複数の外線および中性線が壁コンセントにおいて反転される場合、ヒータ素子2917がオフであるとき、ヒータ素子2917は、AC電源2900のフル電圧のままになる。
【0675】
ヒータ回路2930の外線および中性線の両方の脚に(または、たとえば、AC電源の第1極および第2極の両方に)パルス幅変調素子2908、2910を配置することにより、こうしたシナリオを阻止することができ、したがって、ヒータ素子2917、したがってヒータパン2914の容量結合による漏れ電流を最小限にすることができる。図示するように、コントローラ2904は、パルス幅変調素子2908、2910の各々に同じ制御信号を送信するように構成することができる。したがって、パルス幅変調素子2908、2910を、同じデューティサイクルで互いに直列に並んで作動させることができる。このように、外線および中性線の極性が反転した場合であっても、ヒータ素子2917がフルAC電源2900電圧のままであることを防止することができる。パルス幅変調素子2908、2910をこのように制御することにより、パルス幅変調素子2908、2910のうちの一方がアクティブ状態であり他方がそうでないシナリオが防止される。したがって、ヒータ素子2917を、フルAC電源2900電圧のままであることを阻止することにより、漏れ電流を最小限にするヒータ回路2930は、コントローラ2904、ヒータ素子2917、パルス幅変調素子2908、2910およびAC電源2900を含むことができる。ヒータ回路2930はまた、他の機能も有することができ、
図148に示すように他の任意選択的な追加の構成要素を含むことができる。
【0676】
図148に示すように、安全リレー2912Aおよび2912Bは、コントローラ2904(または、コントローラ2904から独立した追加のただし図示しないコントローラ)によって直列に並んで作動させることができる。これは、たとえば、パルス幅変調素子2908、2910が閉鎖位置で機能しなくなる状況を支援するのに役立つことができる。
【0677】
図149は、経時的なヒータ素子からヒータパンへの漏れ電流を示す例としてのグラフ2950を示す。図示するように、加熱は、約50秒で開始する。このグラフ2950は、公称中性線がAC電源からの電力のための閉鎖戻り経路を提供し、回路の極性が反転している状況における、経時的な漏れ電流をプロットしている。すなわち、公称中性線は、実際には、外線または活線である。図示するように、漏れ電流は、およそ68マイクロアンペアで開始し、およそ65秒で73マイクロアンペアまで上昇し、次に、コントローラは、ヒータ回路のPWMを開始し、それにより、ヒータがオンであるときのおよそ70マイクロアンペアの低い値とヒータがオフであるときのおよそ90マイクロアンペア〜100マイクロアンペアとの間で、漏れ電流が変動する結果となる。これは、ヒータが比較的高いAC電源電圧(たとえば、230V)のままであり得るためである。ヒータがオンにされると、ヒータ素子の抵抗素子の前後の電圧降下により、ヒータ素子とヒータパンとの間の容量結合を通過する電流の量が低減し、したがって、漏れ電流が低下する。図示するように、
図149における例としてのグラフ2950において、漏れ電流は、ヒータがオフであるときは約100μA〜90μAであり、ヒータがオンであるときは約70μA〜65μAである。
【0678】
図150は、経時的なヒータ素子からヒータパンへの漏れ電流を示す別の例としてのグ
ラフ2960を示す。この場合もまた、加熱は約50秒で開始する。このグラフ2960は、
図148に関連して上述したように、公称活線および公称中性線が直列で調整される状況における、経時的な漏れ電流をプロットしている。図示するように、グラフ2960における漏れ電流は、およそ65マイクロアンペアで開始し、コントローラがヒータのPMWを開始するとき、およそ65秒においておよそ70マイクロアンペアまで増大する。そして、漏れ電流は、ヒータがオフである間、約44μAに降下し、ヒータがオンとなると、およそ65マイクロアンペア〜70マイクロアンペアに戻る。ヒータがオンにされるとき、漏れ電流はグラフ2950(
図149)と略同じである。しかしながら、
図150では、ヒータがオフにされると、漏れ電流は44μAであり、それは、グラフ2950のものより著しく低い。
【0679】
図151は、ヒータ回路2932の例を示し、そこでは、PWM素子または固体リレー2908、2910が、AC電源からの各ラインにおいて、ヒータ電力がオフである間はヒータ素子を十分に隔離し、ヒータ素子への容量結合を受ける可能性があるヒータトレイ2914への漏れ電流を低減させるように、配置されている。PWM素子2908、2910は、コントローラ2904および安全コントローラ2934の両方によって制御される。各PWM素子2908、2910は、AND回路(
図151には示さず)から制御信号を受け取り、AND回路は、さらに、コントローラ2904からかつ安全コントローラ2934から制御信号を受け取る。AND回路は、コントローラ2904および安全コントローラ2934の両方からイネーブルコマンドを受け取るときにのみ、PWM素子2908、2910にイネーブルまたは「オン」信号を出力する。上記安全システムの実施に対して、
図151に示すすべての構成要素が必要であるとは限らない。ヒューズ2902、PWM素子2908、2910、電流検知部2906、ヒータ選択リレー2920、ヒータ2917、ヒータ素子2918A、2918B、温度センサ2819A、2916Bおよびヒータトレイ2914を含むヒータ回路2932の構成要素については、より詳細に上述している。
【0680】
図151Aは、ヒータ回路2932の別の例を示す。図示するヒータ回路2932Aは、
図151に示すものに類似している。ヒータ回路2932Aは、第1コントローラ2931および第2コントローラ2933を含む。PWM素子2908、2910は、第1コントローラ2931および第2コントローラ2933の両方によって制御される。各PWM素子2908、2910は、ゲート回路(
図151Aには示さず)から制御信号を受け取り、ゲート回路は、さらに、第1コントローラ2931からかつ第2コントローラ2933から制御信号を受け取る。ゲート回路は、第1コントローラ2931および第2コントローラ2933の両方からイネーブル信号を受け取るときにのみ、PWM素子2908、2910にイネーブルまたは「オン」信号を出力する。
【0681】
図151Aにはまた、安全電圧源2937も示されている。実施形態では、安全電圧源2937からの電圧は、PWM素子2908、2910がヒータ2917への電流の流れを可能にするために必要である可能性がある。いくつかの実施形態では、ゲート回路はまた、PWM素子2908、2910がヒータ2917への電流の流れを可能にするために、安全電圧源2937からの電圧を必要とする可能性がある。安全電圧源2937は、実施形態例におけるように、第1プロセッサ2931または第2プロセッサ2933のいずれかによって制御することができる。任意選択的に、安全電圧源2937は、代わりにまたはさらに、専用ハードウェアコンポーネント2939によって制御することができる。このコンポーネント2939は、たとえば、過電圧状態をモニタリングすることができる。専用ハードウェアコンポーネント2939は、PWM素子2908、2910がヒータ2917への電流の流れを可能にしないように、安全電圧源2937を制御することができる。たとえば、専用ハードウェアコンポーネント2939によって過電圧状態が検出された場合、安全電圧源2937は、PWM素子2908、2910がヒータ2917への
電流の流れを可能にしないように制御することができる。
【0682】
図152〜
図157は、
図148に示す回路2930の具体的な例を示す。こうした回路は、ヒータ素子を通る検知された電流の流れに基づいて、ヒータ素子の構成を切り替えることができる。具体的な回路例はまた、ヒータ素子の公称活線側とともにヒータ素子の公称中性側にパルス幅変調素子を設け、各々を互いに直列で制御することにより、漏れ電流を最小限にするようにも構成することができる。AC電源が公称220VAC〜230VACを送達する場合、「中性線」は第2活線であり、公称「活線」によって供給される交流電圧と位相がずれた交流電圧を提供する。本明細書において、ヒータの中性線または中性側は、120VAC電源の中性側に、または220VAC〜230VAC電源の異相側に接続されたワイヤまたはヒータを指す。
【0683】
図152は、回路例に対するAC電源入力2990を示す。トレース3000および3002は、回路の、ここではL1およびL2として示す外線および中性線を表す。実施形態例では、Line(外線)/Hot(活線)およびReturn(帰線)/Neutral(中性線)の代わりにL1およびL2の手法を用いて、回路の漏れ電流特性がL1およびL2の極性とは無関係であることを強調する。ここで
図153も参照すると、図示するように、AC電源入力2990は、回路のACスイッチ2292に接続されている。実施形態例では、この接続は、3008におけるAC L1スイッチ極と3010におけるAC L2スイッチ極とによって行われる。AC L2スイッチout3012は、電源スイッチ2992を回路例のヒータ回路構成2994(
図154参照)の一端に接続する。AC L1スイッチout3014は、電源スイッチ2992を回路例のヒータ回路構成2994の他端に接続する。
【0684】
図154に示すように、AC L1スイッチout3014およびAC L2スイッチout3012の両方は、それぞれ、パルス幅変調素子3013および3015に接続されている。実施形態例では、パルス幅変調素子3013および3015は固体リレーである。いくつかの実施形態では、パルス幅変調素子3013および3015は、ゼロクロスオーバスイッチング特性を有する固体リレーであり得る。具体的には、実施形態例では、パルス幅変調素子は、シリコン制御整流器である。他の実施形態では、他のタイプのリレーを用いることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、パルス幅変調素子3013および3015はTRIACであり得る。
【0685】
実施形態例では、3071からの安全電圧が、パルス幅変調素子(固体リレー)3013および3015に接続されて示されている。
図151Aに関連して上述したように、安全電圧は、安全電圧源2939(
図151Aを参照)から提供することができる。安全電圧の存在は、パルス幅変調素子(固体リレー)3013および3015がヒータ素子3019への電流の流れを可能にするために必要である可能性がある。フェールセーフ状態では、ヒータシステムのプロセッサ(たとえば、
図151Aのプロセッサ2933)または専用ハードウェアコンポーネント(
図151Aの2939を参照)が、安全電圧がパルス幅変調素子3013および3015に達するのを防止することができる。
【0686】
パルス幅変調素子(固体リレー)3015は、ヒータAC L1 3016を介して加熱素子3019に接続される。ヒータAC L1 3016は、加熱素子3019に向かう途中、電流検知素子3017を通過することができる。電流検知素子3017は、加熱素子3019を通る電流の流れを検知するように構成することができる。いくつかの実施形態では、電流検知素子3017は電流検知変圧器であり得る。電流検知素子3017および関連する構成要素については、本明細書において後にさらに記載する。パルス幅変調素子3015は、ヒータ制御部A3050を通して送られる信号によって、アクティブ(オン)状態と非アクティブ(オフ)状態との間で調整することができる。この信号につい
てもまた、本明細書において後述する。
【0687】
パルス幅変調素子3015はまた、ヒータAC L1 3016を介してヒータ構成リレー3026に接続されている。実施形態例では、ヒータ素子3019は、直列にまたは並列に配置することができる抵抗素子の少なくとも1つのセットからなるヒータ素子である。実施形態例では、ヒータ構成リレー3026は電気機械式リレーである。他の実施形態では、ヒータ構成リレー3026は、他の任意の好適なタイプのリレーであり得る。図示するように、ヒータ素子3019は、直列動作するように構成される。直列構成では、ヒータAC L1 3016は、ヒータ構成リレー3026の構成3028Bを通してヒータ素子3019に接続しないが、図示するように、ヒータ素子3019の一端に直接接続される。並列構成では、ヒータ構成リレー2026の両構成スイッチ3028Aおよび3028Bは、対向する位置にある。この位置では、ヒータAC L1 3016は、ヒータ素子3019の一端に直接接続され、ヒータ構成リレー3026およびヒータAC L1/L2 3024を通して加熱素子3019の別の端部に接続されている。
【0688】
実施形態例では、直列構成で示すように、パルス幅変調素子3013は、以下を通してヒータ素子3019に接続される。すなわち、AC L2スイッチ3032、(構成スイッチ3028Bを介して)ヒータ構成リレー3026、およびヒータAC L1/L2 3024である。ヒータ素子3019が並列で構成される場合、パルス幅変調素子3013は以下を通して加熱素子3019に接続される。すなわち、AC L2スイッチ3032、(構成スイッチ3028Aを介して)ヒータ構成リレー3026およびヒータAC L2 3020である。パルス幅変調素子3013は、ヒータ制御部B 3058を通して送られる信号によって、アクティブ(オン)と非アクティブ(オフ)との間で調整することができる。この信号については、本明細書において後述する。
【0689】
実施形態例では、ヒータ構成リレー2026の構成スイッチ3028Aおよび3028Bの位置は、構成選択部3078を通して送られる信号を介して制御することができる。別法として、いくつかの実施形態では、構成は、手動構成選択部3080を通して手動で設定することができる。たとえば、構成を選択するために、複数のピンの上にジャンパボックスを手動で配置することができる。選択される構成に応じて、ヒータ構成リレー2026の構成スイッチ3028Aおよび3028Bを、ヒータ構成リレー3026のコイル3082に通電するか否かによって、適切に配置することができる。構成信号は、構成選択部3078および手動構成選択部3080を通して送られる構成信号については、本明細書においてさらに後述する。
【0690】
図155は、
図152から
図157に図示する回路で使用することができる、調整回路もしくはゲート回路、または「AND」回路の例を示す。図示するように、
図155に示す調整回路例は、電流制御式スイッチであり得る複数のスイッチを含む。AND回路は、コントローラおよび安全プロセッサにそれぞれ接続されている3040においてかつ3042において正の電圧が印可されるとき、3071から3050を通して電圧の接地経路を提供するように構成される。AND回路は、制御プロセッサの他方がイネーブル信号を供給している場合にのみ、供給コントローラ(たとえば、
図151のコントローラ2904または安全コントローラ)からPWM信号をPWM素子3015(
図154)に渡す役割を果たす。例では、AND回路は、安全プロセッサ2934(
図151)がイネーブル信号を出力している場合にのみ、供給コントローラ(たとえば、
図151のコントローラ2904または安全コントローラ2934)からPWM信号をPWM素子3015(
図154)に渡す役割を果たす。図示するように、スイッチは3つのトランジスタ3044、3046および3048を備え、それらはたとえばMOSFETであり得る。付随するプルアップ抵抗器およびプルダウン抵抗器も含まれる。実施形態例では、トランジスタ3046および3044は、制御プロセッサおよび安全プロセッサ(いずれも図示せず)から
の信号によってそれぞれ制御される。したがって、ヒータ素子3019(
図154を参照)が、トランジスタ3048を通してヒータ制御部A3050(同様に
図154を参照)を介してオンに切り替えられるために、制御部および安全プロセッサの両方が協働して、ヒータ素子3019に電源を入れるべきであることを命令しなければならない。制御プロセッサからの信号は、制御プロセッサヒータ信号ライン3040を通って調整回路内に進むことができる。安全プロセッサからの信号は、安全プロセッサ信号ライン3042を通って調整回路内に進むことができる。
【0691】
制御プロセッサおよび安全プロセッサからの信号は、センサデータを組み込むロジックに基づくことができる。たとえば、制御プロセッサおよび安全プロセッサは、ヒータ素子に関連づけられた温度センサ等、1つまたは複数のセンサからのデータを用いて、ヒータ素子がオンであるべきかまたはオフであるべきときを判断することができる。ヒータ素子の制御に使用することができる種々のタイプの制御ロジックについては、本明細書の別の場所に記載されている。
【0692】
いくつかの実施形態では、制御プロセッサおよび安全プロセッサは、それらのそれぞれのトランジスタ3046および3044に同じ信号を送ることができる。いくつかの実施形態では、制御プロセッサおよび安全プロセッサは、それらのそれぞれのトランジスタ3046および3044に異なる信号を送ることができる。具体的な実施形態では、制御プロセッサ(または別法として安全プロセッサ)は、トランジスタ3046にイネーブル信号を送ることができる。他方のプロセッサは、パルス幅変調信号をトランジスタ3044に送ることができる。トランジスタ3048は、イネーブル信号およびパルス幅変調信号の両方が、ヒータ素子3019に電源を入れるべきであると命令したときに、ヒータ素子3019(
図154を参照)がオンに切り替えることができる。パルス幅変調(PWM)素子3015(
図154を参照)は、この例では、PWMを行っているプロセッサによってトランジスタ3044に印可されるパルス幅変調信号によって有効に調整される。この構成により、プロセッサが矛盾するコマンドを発行する場合、すなわち障害状態において、パルス幅変調素子3015(
図154を参照)は、ヒータ素子3019を通る電流の流れを可能にしないことも確実になる。
【0693】
図156は、
図152から
図157に示す回路例で用いることができる、調整回路もしくはゲート回路または「AND」回路を示す。図示するように、
図156に示す調整回路例は、
図155に示すものに類似している。AND回路は、コントローラおよび安全プロセッサにそれぞれ接続されている3040においてかつ3042において正の電圧が印可されるとき、PWM素子3013(
図154)に、3071から3058を通る電圧の接地経路を提供するように構成される。AND回路は、制御プロセッサの他方がイネーブル信号を供給している場合にのみ、供給コントローラ(たとえば、
図151のコントローラ2904または安全コントローラ2934)からPWM信号をPWM素子3013(
図154)に渡す役割を果たす。例では、AND回路は、安全プロセッサ(
図151)がイネーブル信号を出力している場合にのみ、供給コントローラ(たとえば、
図151のコントローラ2904または安全コントローラ2934)からPWM信号をPWM素子3013(
図154)に渡す役割を果たす。調整回路は、3つのトランジスタ3052、3054および3056を含み、それらは、たとえばMOSFETであり得る。付随するプルアップ抵抗器およびプルダウン抵抗器もまた含まれる。実施形態例では、トランジスタ3054および3052は、それぞれ、制御プロセッサおよび安全プロセッサ(いずれも図示せず)からの信号によって制御される。したがって、ヒータ素子3019(
図154を参照)が、トランジスタ3056を通してヒータ制御部B3058(同様に
図154を参照)を介してオンに切り替えられるために、制御プロセッサおよび安全プロセッサの両方が協働して、ヒータ素子3019に電力を供給すべきであることを命令しなければならない。制御プロセッサからの信号は、制御プロセッサヒータ信号ライン3040を通って調整回
路内に進むことができる。安全プロセッサからの信号は、安全プロセッサ信号ライン3042を通って調整回路内に進むことができる。
【0694】
実施形態例では、
図156における制御プロセッサヒータ信号ライン3040および安全プロセッサ信号ライン3042を制御するために印可される信号は、
図155においてプロセッサヒータ信号ライン3040および安全プロセッサ信号ライン3042を制御するために印可される信号と同一であり得る。すなわち、両パルス幅変調素子3013および3015(
図154を参照)は、いくつかの実施形態では、同じデューティサイクルで直列に並んでパルス幅変調することができる。したがって、
図152に示す回路におけるL1およびL2の極性に関わらず、ヒータ素子3019が電源電圧で保持される状態にはならない。ヒータ素子3019は、「オン」状態ではないとき、電源電圧源に接続されない。これはまた、ヒータ素子3019の構成とは無関係に当てはまることが留意されるべきであり、すなわち、ヒータ素子3019は、直列で構成されても並列で構成されても、電源電圧であり続けることはない。
【0695】
いくつかの実施形態では、単一の調整回路のみがあり得る。こうした実施形態では、調整回路の第3トランジスタ(3048または3056)が、両パルス幅変調素子3013および3015(
図154を参照)の状態を制御することができる。さらに、
図155および
図156に示す調整回路を用いて、パルス幅変調素子3013および3015を、必要な場合にそれらが安全リレーとして機能するように、制御することができる。たとえば、障害状態が検出される場合、一方または両方のプロセッサによって送られる制御信号は、パルス幅変調素子3013および3015がオフまたは非アクティブ状態になるように命令することができる。
【0696】
図155および
図156の両方において、3045からの安全電圧は、ゲート回路に接続されているように示されている。
図151Aに関連して上述したように、安全電圧は、安全電圧源2939(
図151Aを参照)から提供することができる。実施形態では、安全電圧の存在は、ゲート回路が、パルス幅変調素子(固体リレー)3013および3015(
図154を参照)がヒータ素子3019への電流の流れを可能にすることができるために必要であり得る。フェールセーフ状態では、ヒータシステムのプロセッサ(たとえば、
図151Aのプロセッサ2933)または専用ハードウェアコンポーネント(
図151Aの2939を参照)が、安全電圧がゲート回路に達するのを阻止することができる。
【0697】
図157は、電流検知素子3017(
図154を参照)を含むヒータ回路の実施形態に含めることができる回路例を示す。
図157に示す回路例を用いて、電流検知素子3017からの信号を処理しフィルタリングすることができる。図示するように、電流検知素子3017からの信号は、トレース3070および3074によって運ぶことができる。この信号は、好適な整流器3073を介して整流され得る。
図157における例としての整流器3073は、4倍(quadruple)ショットキーバリアダイオードとして示されている。電圧制限素子3072もまた含まれる。実施形態例では、電圧制限素子3072は、ツェナーダイオードとして示されている。実施形態例では、信号は、ユニティゲイン増幅器3075を通過する。信号はまた、ローパスフィルタ3077にもかけられることができ、ローパスフィルタ3077は、整流されたAC信号を平滑にする役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、増幅するために、演算増幅器に信号を通すことができる。一例では、演算増幅器3079のゲインは、およそ4.4に設定することができる。図示するように、実施形態例では、その後、信号は、さらなるローパスフィルタ3081を通過することができる。そして、信号は、トレース3076を介してコントローラ(図示せず)に供給することができる。
【0698】
さまざまな実施形態において、信号は、異なる程度の増幅およびフィルタリングを受け
る可能性がある。たとえば、いくつかの実施形態では、信号は、さらなるフィルタリングを受ける可能性がある。いくつかの実施形態では、別個の回路基板(たとえば、コントローラが存在する基板)における信号に対してさらなるフィルタリング、増幅等を行うことができる。好ましくは、信号が飽和しないように、構成要素が選択される。特に、構成要素は、好ましくは、信号が、回路にもたらされる可能性がある予期される最高電流で飽和しないように選択される。
【0699】
コントローラ(図示せず)は、トレース3076からの信号を用いて、ヒータ素子3019がいかに構成されるべきであるかに関する判断を行うことができる。そして、コントローラは、この判断に基づいて、ヒータ構成リレー3026(
図154を参照)にコマンド信号を送ることができる。上述したように、この信号は、構成選択部3078トレースを通して送ることができる。
データベースおよびインタフェースシステム
図130を参照すると、同様にユーザインタフェースコンピュータ302上のデータベースサブシステム346は、透析機、患者、処方箋、ユーザ入力および治療履歴の情報の内蔵記憶に使用されるデータベースにすべてのデータを格納し、そうしたデータベースからすべてのデータを取り出す。これは、こうした情報がシステムによって必要とされるときに共通のアクセスポイントを提供する。データベースサブシステム346によって提供されるインタフェースは、いくつかのプロセスによってそれらのデータ格納の必要に対して使用される。データベースサブシステム346は、データベースのファイルメンテナンスおよびバックアップも管理する。
【0700】
UI画面ビュー338は、治療履歴データベースをブラウズするために治療ログエリアプリケーションを呼び出すことができる。このアプリケーション(これは、別法として複数のアプリケーションとして実施することができる)を使用して、ユーザは、自身の治療履歴、自身の処方箋、および/または履歴上の透析機状態情報をグラフィカルに見直すことができる。アプリケーションは、データベースサブシステム346にデータベースクエリを送信する。アプリケーションは、患者が透析されている間、透析機の安全な動作を妨げることなく実行することができる。
【0701】
リモートアクセスアプリケーション(これは、単一のアプリケーションまたは複数のアプリケーションとして実施することができる)は、遠隔システム上の解析および/または表示用の治療および透析機診断データをエクスポートする機能を提供する。治療ログクエリアプリケーションは、要求された情報を取り出すために使用することができ、データは、転送用のXML等の透析機の中立的なフォーマットに再フォーマットすることができる。フォーマットされたデータは、メモリ記憶デバイス、直接ネットワーク接続、または他の外部インタフェース348によって外部に転送することができる。ネットワーク接続は、ユーザによる要求に応じて、APDシステムによって開始することができる。
【0702】
サービスインタフェース356は、治療が進行していないときに、ユーザが選択することができる。サービスインタフェース356は、1つまたは複数の専用アプリケーションを備えることができ、それらは、試験結果をログ記録し、たとえば、診断センタにアップロードすることができる試験レポートを任意選択的に生成する。メディアプレーヤ358は、たとえば、ユーザに提示される音声および/または映像を再生することができる。
【0703】
1つの例示的な実施態様によれば、上述したデータベースは、SQLite(登録商標)、すなわち、内蔵型であり、サーバ不要であり、ゼロコンフィギュレーションであるトランザクションSQLデータベースエンジンを実装するソフトウェアライブラリを使用して実装される。
【0704】
エグゼクティブサブシステム332は、2つのエグゼクティブモジュール、すなわち、ユーザインタフェースコンピュータ302上のユーザインタフェースコンピュータ(UIC)エグゼクティブ352、および自動化コンピュータ300上の自動化コンピュータ(AC)エグゼクティブ354)を実施する。各エグゼクティブは、オペレーティングシステムがブートされた後で実行するスタートアップスクリプトによって開始され、それが開始するプロセスのリストを含む。エグゼクティブは、それらのそれぞれのプロセスリストを調べるため、各プロセスイメージは、プロセスが開始される前にファイルシステムのその完全性を保証するために確認される。エグゼクティブは、各子プロセスをモニタリングして、各々が予期されるように開始することを確実にし、たとえば、Linux親−子プロセス通知を使用して、子プロセスが実行する間、それらをモニタリングし続ける。子プロセスが終了するかまたは失敗したとき、エグゼクティブは、(UIビューの場合のように)それを再始動するか、または、システムをフェールセーフモードにして透析機が安全な方法で動作することを確実にする。エグゼクティブプロセスはまた、透析機が電源を切られているときに、オペレーティングシステムをクリーンにシャットダウンすることも担う。
【0705】
エグゼクティブプロセスは、互いに通信して、それらがさまざまなアプリケーションコンポーネントのスタートアップおよびシャットダウンを調整するのを可能にする。ステータス情報は、2つのエグゼクティブ間で定期的に共有され、プロセッサ間のウォッチドッグ機能をサポートする。エグゼクティブサブシステム332は、安全ラインの有効化または無効化を担う。UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354の両方が安全ラインを有効にしたときに、ポンプ、ヒータおよび弁は作動することができる。それらのラインを有効にする前に、エグゼクティブは、各ラインを独立して試験して、適切な動作を確実にする。さらに、各エグゼクティブは、他の安全ラインの状態をモニタリングする。
【0706】
UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354は、協働して、ユーザインタフェースコンピュータ302と自動化コンピュータ300との間の時間を同期させる。時間基準は、スタートアップ時にアクセスされるユーザインタフェースコンピュータ302上のバッテリバックアップのリアルタイムクロックを介して構成される。ユーザインタフェースコンピュータ302は、リアルタイムクロックに対して自動化コンピュータ300のCPUを初期化する。その後、各コンピュータ上のオペレーティングシステムは、自身の内部時間を維持する。エグゼクティブは、協働して、パワーオンセルフテストを定期的に実行することによって計時を十分に確実にする。自動化コンピュータの時間とユーザインタフェースコンピュータの時間との間の差が、所与の閾値を超えた場合、警告を生成することができる。
【0707】
図158は、APDシステムのさまざまなサブシステムとプロセスとの間の情報の流れを示する。上述したように、UIモデル360およびサイクラコントローラ362は、自動化コンピュータ上で実行する。ユーザインタフェースの設計は、UIビュー338によって制御される画面表示を、サイクラコントローラ362によって制御される画面間の流れと、UIモデル360によって制御される表示可能なデータ項目とから分離する。これにより、表示画面の視覚的な表現を、基礎をなす治療ソフトウェアに影響を与えることなく変更することができる。治療の値および状況はすべて、UIモデル360に格納され、セーフティクリティカルな治療機能からUIビュー338を隔離する。
【0708】
UIモデル360は、システムおよび患者の現状態について記述する情報を集約し、ユーザインタフェースを介して表示することができる情報を維持する。UIモデル360は、オペレータに現時点では見えないかまたは他の方法で認識可能でない状態を更新することができる。ユーザが新たな画面に進むとき、UIモデル360は、新たな画面およびそ
の内容に関する情報をUIビュー338に提供する。UIモデル360は、インタフェースを露出させて、UIビュー338または他の何らかのプロセスが現ユーザインタフェース画面および表示すべき内容について照会できるようにする。したがって、UIモデル360は、リモートユーザインタフェースおよびオンラインアシスタンス等のインタフェースがシステムの現動作状態を取得することができる共通点を提供する。
【0709】
サイクラコントローラ362は、オペレータ入力、時間および治療層状態に基づいてシステムの状態に対する変更を処理する。許容可能な変更は、UIモデル360において反映される。サイクラコントローラ362は、治療層コマンド、治療ステータス、ユーザ要求、およびタイミングが調整されたイベントを調整する階層的状態機械として実装され、UIモデル360の更新を介してビュー画面制御を提供する。サイクラコントローラ362はまた、ユーザ入力を有効にする。ユーザ入力が許容された場合、ユーザ入力に関する新たな値が、UIモデル360を介してUIビュー338に反映される。治療プロセス368は、サイクラコントローラ362に対するサーバとして作用する。サイクラコントローラ362からの治療コマンドは、治療処理368によって受け取られる。
【0710】
UIコンピュータ302上で実行するUIビュー338は、ユーザインタフェース表示画面を制御し、タッチスクリーンからのユーザ入力に応答する。UIビュー338は、ローカル画面状態を追跡し続けるするが、透析機の状態情報を維持しない。透析機状態および表示されるデータ値は、それらがユーザによって変更されている最中でない限り、UIモデル360から供給される。UIビュー338は、終了し再開された場合、現データを有する現状態に対する基礎画面を表示する。UIビュー338は、UIモデル360から画面のどのクラスを表示すべきかを判断し、それは、UIビューに画面の提示を残す。ユーザインタフェースのセーフティクリティカルな態様はすべて、UIモデル360およびサイクラコントローラ362によって処理される。
【0711】
UIビュー338は、ユーザインタフェースコンピュータ302に他のアプリケーション364をロードしかつそれらを実行することができる。これらのアプリケーションは、非治療制御タスクを実行することができる。例示的なアプリケーションとしては、ログビューア、サービスインタフェース、およびリモートアクセスアプリケーションが挙げられる。UIビュー338は、UIビューによって制御されるウィンドウ内にこれらのアプリケーションを配置し、それにより、UIビューがステータス、エラーおよび警告画面を必要に応じて表示することができる。いくつかのアプリケーションは、能動的療法中に実行することができる。たとえば、ログビューアは、能動的療法中に実行することができるが、サービスインタフェースおよびリモートアクセスアプリケーションは、一般に実行することができない。UIビュー338に従属するアプリケーションが実行しており、進行中の治療がユーザの注意を必要とするとき、UIビュー338は、アプリケーションを停止し、画面および入力の機能の制御を取り戻すことができる。停止されたアプリケーションは、UIビュー338が再開するかまたは中止することができる。
【0712】
図159は、
図130に関して記載した治療サブシステム340の動作を例示する。治療サブシステム340の機能は、3つのプロセス、すなわち、治療制御、治療計算および溶液管理にわたって分割される。これにより、機能分解、試験の容易さおよび更新の容易さが可能になる。
【0713】
治療制御モジュール370は、そのタスクを達成するように、治療計算モジュール372、溶液管理モジュール374および透析機制御サブシステム342(
図130)のサービスを使用する。治療制御モジュール370の責務には、ヒータバッグ内の流体体積を追跡すること、患者体内の流体体積を追跡すること、患者排液体積および限外ろか液を追跡すること、サイクル体積を追跡およびログ記録すること、治療体積を追跡およびログ記録
すること、透析治療(排液−注入−滞留)の実行を調整すること、および治療セットアップ動作を制御することが挙げられる。治療制御モジュール370は、治療計算モジュール370によって指図されるように治療の各段階を実行する。
【0714】
治療計算モジュール370は、腹膜透析治療を構成する排液−充填−滞留サイクルを追跡しおよび再計算する。患者の処方箋を用いて、治療計算モジュール372は、サイクルの数、滞留時間、および必要な溶液の量(総治療体積)を計算する。治療が進むと、これらの値のサブセットが、実際の経過時間を考慮して再計算される。治療計算モジュール372は、治療シーケンスを追跡し、要求されたときに、治療段階およびパラメータを治療制御モジュール370に渡す。
【0715】
溶液管理モジュール374は、溶液供給バッグの配置をマッピングし、各供給バッグ内の容積を追跡し、容積データベース中の処方に基づいて透析液の混合を命令し、要求された体積の混合液または非混合液のヒータバッグへの移送を命令し、透析液処方および利用可能なバッグ容積を使用して利用可能な混合液の体積を追跡する。
【0716】
図160は、治療の初期の「補充」および「透析」部分の間の、上述した治療モジュールプロセスの例示的な相互作用を描くシーケンス図を示す。例示的な初期補充プロセス376中、治療制御モジュール370は、治療計算モジュール372から最初に充填するための用の溶液IDおよび体積をフェッチする。溶液IDは、患者ラインのプライミングおよび最初の患者充填に備えて、ヒータバッグを溶液で充填する要求とともに、溶液管理モジュール374に渡される。溶液管理モジュール374は、ヒータバッグへの溶液の圧送を開始するために要求を透析機制御サブシステム342に渡す。
【0717】
例示的な透析処理378の間、治療制御モジュール370は、一度に1サイクル(初期排液、充填、滞留−補充、および排液)を実行し、治療計算モジュール372の制御下でこれらのサイクルを順番に行う。治療中、治療計算モジュール372は、実際のサイクルタイミングで更新され、それにより、必要な場合に治療の残りの部分を再計算することができる。
【0718】
この例では、治療計算モジュール372は「初期排液」としての段階を指定し、治療制御モジュールは、透析機制御サブシステム342に対して要求する。治療計算モジュール372によって指定される次の段階は「充填」である。その命令は、透析機制御サブシステム342に送られる。治療計算モジュール372は、治療制御モジュール370によって再び呼び出され、それは、「滞留」段階の間にヒータバッグに流体を補充することを要求する。溶液管理モジュール374は、透析機制御サブシステム342を呼び出すことによってヒータバッグ内の流体を補充するために、治療制御モジュール370によって呼び出される。治療制御モジュール370が、次の段階を得るように治療計算モジュール372を呼び出すことで、処理が継続する。これは、段階がなくなるまで繰り返され、治療は完了する。
ポンプモニタ/Mathリピータ
ポンプモニタ/Mathリピータプロセスは、安全エグゼクティブ354とは別個の自動化コンピュータ300で実行するソフトウェアプロセスまたは機能である。ポンプモニタ/Mathリピータプロセスは、独立して実行する2つの別々のスレッドまたはサブ機能で実施される。本明細書においてMRスレッドと呼ぶmathリピータスレッドは、FMS計算の結果を確認する。PMスレッドと呼ぶポンプモニタスレッドは、透析機プロセス342からのルーチンステータスメッセージで提供される情報から関連するエンドポイントにわたる正味の流体および空気の流れをモニタリングする。関連するエンドポイントとしては、限定されないが、5つのあり得るバッグスパイク、ヒータバッグ、患者ポートおよび排液ポートを挙げることができる。PMスレッドはまた、IOサーバプロセスから
の情報を介してヒータパン温度もモニタリングする。流体流、空気流または温度に対する予め規定された限界を超えた場合、PMスレッドは安全エグゼクティブ354に警報を通信する。
【0719】
MRスレッドは、高速圧力データを受け入れ、上述したFMS計算を繰り返して、押しのけられた流体体積を再計算する。MRスレッドは、その再計算された流体体積を透析機プロセス342によって計算された体積と比較し、メッセージを安全エグゼクティブに送る。別の例では、MRスレッドは、2つの流体体積値が一致しない場合、エラー状態を宣言する。
【0720】
PMスレッドは、サイクラ14の機能に対する安全チェックとして圧送プロセスのいくつかの態様をモニタリングする。PMスレッドは、ハードウェアインタフェース310が、透析機サブシステム342による命令されたポンプ作用に対応しない弁の開放を通知する場合、無効なポンプ動作エラー状態を宣言する。無効な弁状態の例は、ポンプがアイドルモードにあった間に、いずれかのポート弁186、184(
図6)が開放している場合である。カセットにおける弁の状態は、ハードウェアインタフェース310によって通電される対応する空気圧弁2710の状態にマッピングされる。無効な弁状態の別の例は、指定された流体の供給源またはシンクに対応しない開放したポート弁184、186である。
【0721】
ヒータボタン温度センサ506が所与温度未満を報告する間に過剰な流体が患者に圧送される場合、PMスレッドはエラー状態を宣言する。好ましい実施形態では、ボタン温度が32℃未満である間に、50mlを超える流体が患者に圧送される場合、PMスレッドはエラー状態を宣言する。
【0722】
PMスレッドは、患者に圧送される流体の量に対して数値アキュムレータを維持する。患者に圧送される流体の全体積が指定量を超える場合、PMスレッドはエラーを宣言する。指定量は、処方情報において定義することができ、1チャンバ容積またはおよそ23mlに等しい追加の体積を含むことができる。
【0723】
PMスレッドは、各バッグから取得される空気に対するFMS方法によってポンピングチャンバ内で測定された空気の量に対して、数値アキュムレータを維持する。いずれかのバッグからの空気の総量がそのバッグに対する空気の最大許容体積を超える場合、PMスレッドはエラーを宣言する。好ましい実施形態では、ヒータバッグに対する最大許容空気体積は350mlであり、供給バッグに対する最大許容空気体積は200mlである。バッグからの大きい空気体積は、それが雰囲気への漏れを
有する可能性があることを示す。ヒータバッグに対する最大許容空気体積は、流体が加熱されるときのガス抜けを考慮するには大きすぎる場合がある。
警告/警報機能
APDシステムにおける状態またはイベントが、ログ記録され、もしくはユーザに表示され、または両方の警告および/または警報をトリガする場合がある。これらの警告および警報は、ユーザインタフェースサブシステムに存在するユーザインタフェース構成体であり、システムの任意の部分で発生する状態によってトリガされる場合がある。これらの状態は3つのカテゴリ、すなわち(1)システムエラー状態、(2)治療状態および(3)システム動作状態にグループ化することができる。
【0724】
システムエラー状態は、ソフトウェア、メモリ、またはAPDシステムのプロセッサの他の態様において検出されるエラーに関する。これらのエラーは、システムの信頼性に問題を生じさせ、「復帰不可能」とみなされる場合がある。システムエラー状態は、表示されるかまたは他の方法でユーザに知らされる警報をもたらす。警報はまた、ログ記録する
ことができる。システムエラー状態の場合、システムの完全性を保証することができないため、システムは、フェールセーフモードに入り、そこでは、本明細書に記載する安全ラインに無効にされる。
【0725】
図130に関連して記載した各サブシステムには、それ自体のシステムエラーのセットを検出する責務がある。サブシステム間のシステムエラーは、ユーザインタフェースコンピュータエグゼクティブ352および自動化コンピュータエグゼクティブ354によってモニタリングされる。システムエラーが、ユーザインタフェースコンピュータ302上で実行しているプロセスに起因する場合、システムエラーを報告しているプロセスは終了する。UI画面ビューサブシステム338が終了する場合、ユーザインタフェースコンピュータエグゼクティブ352は、たとえば、最大3回までそれを再起動しようと試みる。UI画面ビュー338の再起動に失敗し、治療が進行中である場合、ユーザインタフェースコンピュータエグゼクティブ352は、透析機をフェールセーフモードに移行させる。
【0726】
システムエラーが自動化コンピュータ300上で実行しているプロセスに起因する場合、そのプロセスは終了する。自動化コンピュータエグゼクティブ354は、プロセスが終了したことを検出し、治療が進行中である場合は安全な状態に移行する。
【0727】
システムエラーが報告されると、たとえば、視覚的および/または音声のフィードバックでユーザに通知するともに、そのエラーをデータベースにログ記録する試みがなされる。システムエラー処理は、エグゼクティブサブシステム332においてカプセル化されて、復帰不可能イベントの一様な処理を確実にする。UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354のエグゼクティブプロセスは、互いにモニタリングし、それにより、一方のエグゼクティブプロセスが治療中に機能しなくなった場合に、他方のエグゼクティブが透析機を安全な状態に移行させる。
【0728】
「治療状態」は、治療が許容可能な境界を越えることに関連づけられたステータスまたは変数によってもたらされる。たとえば、治療状態は、境界外センサ測定値によってもたらされる可能性がある。これらの状態は、警告または警報に関連づけられ、その後、ログ記録され得る。警報は、重大なイベントであり、一般に即時の措置を必要とする。警報は、状態の重大度に基づいて、たとえば、低、中、または高として優先順位づけすることができる。警告は、警報ほど重大ではなく、一般には、治療の喪失または不快以外の、いかなる危険も関連づけられていない。警告は、3つのカテゴリ、すなわちメッセージ警告、エスカレート警告、およびユーザ警告のうちの1つに分類される可能性がある。
【0729】
警報または警告状態をもたらす可能性がある治療状態の検出に対する責務は、UIモデルと治療サブシステムとの間で共有される。UIモデルサブシステム360(
図158)には、治療前および治療後の警報および警告条件の検出の責務がある。治療サブシステム340(
図130)には、治療中の警報および警告条件を検出する責務がある。
【0730】
治療状態に関連づけられた警告または警報の処理に対する責務もまた、UIモデルと治療サブシステムとの間で共有される。治療前および治療後、UIモデルサブシステム360には、警報または警告を処理する責務がある。治療セッション中、治療サブシステム340には、警報または警告状態を処理し、警報または警告条件が存在することをUIモデルサブシステムに通知する責務がある。UIモデルサブシステム360には、警告をエスカレートさせる責務、および、警報または警告条件が検出されたときに、ユーザに視覚的および/または音声のフィードバックを提供するように、UIビューサブシステム338と協働する責務がある。
【0731】
「システム動作状態」には、警告または警報が関連づけられていない。これらの状態は
、システム動作の記録を提供するように単にログ記録される。聴覚的または視覚的なフィードバックを提供する必要はない。
【0732】
上述したシステムエラー状態、治療状態、またはシステム動作状態に応じて講じることができる措置は、その状態を検出したサブシステム(または層)によって実施され、それは、そのステータスをより高位のサブシステムに送る。この状態を検出したサブシステムは、状態をログ記録し、状態に関連づけられた任意の安全考慮事項に注意することができる。これらの安全考慮事項は、以下のうちの任意の1つまたは組合せを含むことができる。すなわち、治療を中断してオクルーダを作動させるすること、安全ラインを停止させてオクルーダを閉鎖し、ヒータの電源を切り、弁から動力を取り除くこと、および、システムがサービスに戻ることを要求するパワーサイクルの後であっても、サイクラが治療を実行するのを防止することである。UIサブシステム334には、自動的にクリアすることができる状態(すなわち、非ラッチ状態)と、ラッチされ、単にユーザ対話によってクリアすることができるユーザ復帰可能状態とに対する責務があり得る。
【0733】
各状態は、ソフトウェアが状態の重大度に応じて作用するのを可能にするいくつかの情報を含むように定義することができる。この情報は、数値識別子を含むことができ、それは、ルックアップテーブルと組み合わせて、優先順位、エラーの記述的な名称(すなわち、状態名)、状態を検出したサブシステム、どのステータスまたはエラーがその状態をトリガするかの記述、および、その状態が上述した1つまたは複数の行為を実施するか否かに対するフラグを規定するように使用することができる。
【0734】
状態は、優先順位でランク付けすることができ、それにより、複数の状態が発生したとき、優先順位が高い方の状態を最初に処理することができる。この優先順位ランク付けは、状態が治療の管理を止めるか否かに基づくことができる。治療を止める状態が発生した場合、この状態は、ステータスを次のより高位のサブシステムに中継する手続きを取る。上述したように、状態を検出するサブシステムは、状態を処理し、上方のサブシステムにステータス情報を送る。受け取られたステータス情報に基づいて、上位サブシステムは、異なる行為およびそれに関連づけられた異なる警告/警報を有する可能性がある異なる状態をトリガすることができる。各サブシステムは、新たな状態に関連づけられた任意の追加の行為を実施し、上方のサブシステムにステータス情報を渡す。1つの例示的な実施態様によれば、UIサブシステムは、所与の時点で1つの警告/警報のみを表示する。この場合、UIモデルは、それらの優先順位によってアクティブなイベントをすべてソートし、最優先イベントに関連づけられた警告/警報を表示する。
【0735】
重大度、あり得る損害、およびその損害の兆候に基づいて、警報に優先順位を割り当てることができる。以下の表1は、この方法で優先順位をいかに割り当てることができるかの例を示す。
【0736】
【表1】
[この文献は図面を表示できません]
【0737】
表1に関連して、あり得る損害の兆候は、傷害が発生するときを指し、それが現れるときを指すものではない。「即時」として示す兆候がある、あり得る損害は、手動の是正措置では通常十分でない時間内に発展する可能性がある損害を示す。「迅速」として示す兆候がある、あり得る損害は、手動の是正措置に通常十分な時間内に発展する可能性がある損害を示す。「遅延」とし示す候がある、あり得る損害は、「迅速」の下で与えられるよりも長い、特定できない時間内に発展する可能性がある損害を示す。
【0738】
図161〜
図166は、タッチスクリーンユーザインタフェースに表示することができる警告および警報に関する例示的な画面ビューを示す。
図161は、警報の第1画面を示し、それは、略
図380と、ユーザに対して自身の移送セットを閉鎖するように指示するテキスト382とを含む。この画面は、視覚的な警告384を含み、音声警告にも関連づけられている。音声警告は、タッチスクリーンの「音声オフ」オプション386を選択することによってオフにすることができる。ユーザは、移送セットを閉鎖すると、タッチスクリーン上の「確認」オプション388を選択する。
図162は、ユーザに対して自身の移送セット閉鎖するように指示する同様の警報画面を示す。この場合、排液が停止されたことの表示390と、「治療終了」を選択する指示392とが提供されている。
【0739】
上述したように、警告は、一般には、治療の喪失または不快以外の危険性には関連づけられていない。したがって、警告によって、治療を中断する場合もあれば中断しない場合もある。警告は、イベントがクリアした場合に警告が自動的にクリアするような「自動復帰可能」であるか、または、警告をクリアするためにユーザインタフェースとのユーザ対話が必要であるような「ユーザ復帰可能」であり得る。音量をある範囲内で変化させることができる可聴警告プロンプトを用いて、警告に対してユーザの注意を引くことができる。さらに、情報または指示をユーザに対して表示することができる。こうした情報または指示をユーザが見ることができるように、警告中は、ユーザインタフェースの自動輝度調整機能は、警告中に無効にすることができる。
【0740】
ユーザの不安の程度を低減させるために、警告は、警告がどれくらい重要であるか、および、ユーザの応答がどれくらい迅速に必要であるかに基づいて、種々のタイプに分類することができる。3つの例示的なタイプの警告は、「メッセージ警告」、「エスカレート
警告」および「ユーザ警告」である。これらの警告は、情報がどのようにユーザに視覚的に提示されるか、および、可聴プロンプトがどのように使用されるかに基づいて、異なる特性を有する。
【0741】
「メッセージ警告」は、ステータス画面の最上部に現われる可能性があり、ユーザ対話が必要でない場合は情報目的で使用される。警告をクリアするためにいかなる措置も講じる必要がないため、可聴プロンプトは、一般には、患者の邪魔をし、場合によっては患者を起こことがないように使用される。しかしながら、任意選択的に可聴警告を提示することができる。
図163は、例示的なメッセージ警告を示す。特に、
図163は、透析液が所望の温度または範囲未満であるときにユーザに通知するために使用することができる温度不足メッセージ警告394を示す。この場合、ユーザは、いかなる措置も講ずる必要はないが、透析液が加熱されている間、治療が遅れることになると通知される。患者がさらなる情報を望む場合には、タッチスクリーン上で「ビュー」オプション396を選択することができる。これにより、
図164に示すように、警告に関するさらなる情報398画面上に現われる。メッセージ警告はまた、ユーザが修正しようとしている低流量イベントがあるときにも使用することができる。この場合、ユーザがその問題を解決したか否かについてユーザにフィードバックを提供するように、低流量イベントがクリアされるまで、メッセージ警告を表示することができる。
【0742】
「エスカレート警告」は、耳障りでない方法で、措置を講ずるようにユーザを促すように意図されている。エスカレート警告中、タッチスクリーン上に視覚的なプロンプトを表示することができ、可聴プロンプトを(たとえば、1回)提示することできる。所与の時間の後、警告をもたらしたイベントがクリアされない場合、より強調された可聴プロンプトを提示することができる。さらなる時間の後、警告をもたらすイベントがクリアされなかった場合には、警告は、「ユーザ警告」にエスカレートされる。ユーザ警告の1つの例示的な実施態様によれば、視覚的なプロンプトは、警告がクリアされ、可聴プロンプト(消音することができる)が提示されるまで、表示される。UIサブシステムは、エスカレート警告からユーザ警告への移行を処理しない。むしろ、元のイベントをトリガさせたサブシステムが、ユーザ警告に関連づけられた新たなイベントをトリガする。
図165は、エスカレート警告に関する情報を表示する画面ビューを示す。この例示的な警告は、画面上の警告メッセージ400と、排液ラインにキンクおよびクランプの閉鎖がないか確認するようにユーザに指示するプロンプト402とともに、可聴プロンプトを含む。可聴プロンプトは、ユーザによって消音されるまで継続することができる。
図166は、可聴プロンプトを消音するために選択することができる「音声オフ」オプション404を含む画面ビューを示す。この警告は、直接的に、またはエスカレート警告方式の一部として使用することができる。
【0743】
各警告/警報は、以下のものによって指定される。すなわち、警告/警報用の一意の識別子である警告/警報コード、警告/警報の記述的な名称である警告/警報名、警告のタイプまたは警報のレベルを含む警告/警報タイプ、可聴プロンプトが警告/警報に関連づけられているか否かの指示、警告および関連するイベントをユーザが回避(または無視)することができるか否かの指示、および警告/警報をトリガする1つまたは複数のイベントのイベントコードである。
【0744】
警報、エスカレート警告およびユーザ警告中、イベントコード(上述したように、警報または警報コードとは異なる可能性がある)は、必要な場合にユーザがサービススタッフに対してコードを読むことができるように画面上に表示することができる。別法としてまたはさらに、音声ガイダンスシステムを使用することができ、それにより、遠隔のコールセンタに接続されると、システム構成、状態およびエラーコードに関する関連情報を声に出すことができる。システムは、ネットワーク、電話接続または他の何らかの手段を介し
て遠隔のコールセンタに接続することができる。
【0745】
治療サブシステムによって検出される状態の一例を、
図167に関連して後述する。この状態は、APDシステムが、空気管理に対して重要である水平な面に配置されていないときにもたらされる。より詳細には、この状態は、傾きセンサが、APDシステムが水平面に対して35°等の所定閾値を超えて傾けられたことを検出したときに、もたらされる。後述するように、復帰可能なユーザ警告は、傾きセンサが所定閾値よりも大きな絶対値の角度を検出した場合に、治療サブシステムによって生成され得る。不快な警報を回避するために、ユーザに対して、治療が始まる前に、APDシステムを水平にするように指示することができる。傾き閾値は、この治療前時間中には低い可能性がある(たとえば、35°)。ユーザに対して、その問題が修正されたか否かに関するフィードバックを与えられることも可能である。
【0746】
傾きセンサが、治療中に傾きの角度が閾値を超えたことを検出した場合、透析機サブシステム342は、ポンプチャンバ内の空気を検出するのと同様の方法でポンプを停止することによって応答する。治療サブシステム340は、ステータスを要求し、透析機層342が傾きのために圧送を休止したと判断する。治療サブシステム340はまた、透析機の角度に関するステータス情報も受け取る。この時点で、治療サブシステム340は、傾き状態を生成し、治療を休止し、圧送を休止するように透析機サブシステム342にコマンドを送る。このコマンドは、流体測定システム(FMS)の測定を行い、患者弁を閉鎖する等の、クリーンアップをトリガする。治療サブシステム340はまた、タイマを始動させ、UIモデル360に自動復帰可能傾き状態を送り、UIモデル360は、その状態をUIビュー338に送る。UIビュー338は、その状態をエスカレート警告にマッピングする。治療サブシステム340は、傾きセンサ測定値をモニタリングし続け、それが閾値未満に低下した場合に、状態をクリアして治療を再開させる。タイマが終了する前に条件がクリアしない場合には、治療サブシステム340は、自動復帰可能傾き状態に取って代わるユーザ復帰可能「傾きタイムアウト」状態をトリガする。治療サブシステム340は、この状態をUIモデル360に送り、UIモデル360は、その状態をUIビュー338に送る。UIビュー338は、その状態をユーザ警告にマッピングする。この状態は、治療再開コマンドがUIサブシステムから受け取られる(たとえば、ユーザが復旧ボタンを押す)まで、クリアすることができない。傾斜センサ測定値が閾値未満である場合、治療が再開する。それが閾値未満でない場合、治療層は、自動復帰可能傾き状態をトリガし、タイマを始動させる。
優先順位が付けられた可聴信号
サイクラは、可聴信号および音声ガイダンスをユーザに提供して、限定されないが、数字選択、音声効果(ボタン選択、動作選択)、透析機状態、動作方向、警告および警報を含む広範囲の情報を伝えることができる。サイクラコントローラ16は、制御システム16のコンピュータ300、302の一方または両方のメモリに格納された格納済み音声ファイルからの可聴信号および発声を、スピーカが報知することができるようにすることができる。別法として、特殊なボイスチップによって発声を格納し生成することができる。
【0747】
場合によっては、サイクラは、非常に短い間に同時にまたは逐次、報知するべき複数の可聴信号がある可能性がある。短い時間にいくつかの信号を報知することは、ユーザを圧倒し、その結果、不快感がもたらされるか、または臨界安全情報が失われる。サイクラコントローラ16は、各可聴信号に優先順位を割り当て、優先順位の低い方の信号を抑制して、優先順位の高い方の可聴信号を明瞭に伝えることができるようにすることができる。一例では、可聴信号は、以下のように、優先順位の最も高い警報信号から優先順位の最も低い連続した数の報知まで優先順位が付けられる。
1.警報
2.警告
3.音の効果
4.音声ガイダンス
5.連続した数に対する報知。
【0748】
警報および警告については上述した。音の効果は、ボタンまたは選択肢が選択されたことを示す音を確認させることができる。音の効果は、サイクラによって特定の措置が講じられていることを報知しまたは確認させることも可能である。音声ガイダンスは、特定の手続きを実行し、ヘルプにアクセスし、コールセンタおよび他の案内指示にコンタクトをとる、音声指示を含むことができる。連続した数に対する報知は、ユーザがキー入力したばかりの数をユーザまたはコールセンタに復唱することを含むことができ、または、報知は、要求された入力に対するユーザ許容値を読むことができる。
可聴睡眠補助
サイクラ14は、夜に癒し音を再生して睡眠を補助するオプションを含むことができる。雨、海洋波等の音の再生は音療法と呼ばれる。睡眠のための音療法は、ユーザによっては、夜間のノイズに対するより高い許容性、および睡眠障害を最小限にするよりリズミカルな癒し音での、夜間のノイズのマスキングまたは置き換えを提供することができる。音療法は、聴覚過敏および耳鳴り等の聴覚疾患を患っている人に役立つことができる。ユーザインタフェース324は、ユーザに、音のタイプ、音量レベルおよび持続時間を選択しするためのメニューを提供することができ、それにより、音療法は、睡眠の初期期間
および/またはその前に再生することができる。音ファイルはコンピュータ300、302のメモリに格納することができ、サイクラ14中のスピーカによって再生することができる。別の例では、サイクラは外部スピーカを駆動するための出力ジャックを含むことができる。別の例では、音ファイルおよび/またはスピーカドライバ電子回路は、自動化コンピュータ300またはユーザインタフェースコンピュータ302いずれかとは別個であり得る。音ファイルは、限定されないが、雨音、雷を伴う豪雨、海洋波、雷、森の音、コオロギ、白色雑音、および桃色雑音(振幅が変動し低音域がより豊か)を含むことができる。バッテリ動作
サイクラは、バックアップ電源として用いられる充電式リチウムイオンバッテリを含むことができる。最低限、このバッテリは、ユーザに警告しかつ治療の現状態を保存するこ
となくサイクラの電源が切られないことを確実にするのに役立つ。バッテリに残っている電荷の量次第であるバッテリ電源時に、サイクラによって電源管理システムを実施することができる。バッテリが十分に充電されている場合、サイクラは電力使用制限または短い停電が治療の完了を妨げないようにすることができる。サイクラ制御回路は、バッテリの充電の状態を測定することができ、バッテリ充電レベルを動作可能な状態と相関させることができる。この情報は、試験を通じて経験的に得ることができ、バッテリ充電レベルとさまざまなサブシステムを動作させることができることとの間の相関を、メモリに格納することができる。以下の機能を、バッテリ充電レベルと関連づけられることができる。
レベル4:治療の1サイクルを行うのに十分な電力。たとえば、バッテリの充電レベルがおよそ1100ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実施される。
レベル3:ユーザ排液を行うのに十分な電力。たとえば、バッテリの充電レベルがおよそ500ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実施される。
レベル2:治療を終了し、警告を表示し、治療後分析を通じてユーザを案内するのに十分な電力。たとえば、バッテリの充電レベルがおよそ300ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実施される。
レベル1:治療を終了し、警告を表示するのに十分な電力。たとえば、バッテリの充電レベルがおよそ200ミリアンペア−時間と等しいか、またはそれよりも大きい場合に実施される。
レベル0:動作するのに十分でない電力。
【0749】
バッテリに十分な電荷がある場合(レベル4)、サイクラは、現サイクルが終了するまで治療を続ける。これは、ヒータバッグを補充すること、または溶液を加熱することを含まない場合がある。したがって、既に充填段階である場合、サイクラは、ヒータバッグ内の溶液が適切な温度範囲にあり、かつヒータバッグ内に十分な溶液がある場合、治療を続けることができる。バッテリが20分間の排液を行うのに十分な容量しか有していない場合(レベル3)、サイクラはユーザに警告し、ユーザに対して、排液するか、または排液なしに治療を終了するオプションを与える。バッテリがユーザに警告するのに十分な電力をしか有していない場合(レベル2)、サイクラは、ユーザに対して排液するオプションを与えず、ユーザは、治療後分析を通じて案内される。分析を通じてユーザを案内するのに十分な電力が無い場合(レベル1)、ユーザは接続を切るように促され、次いで、サイクラは電源が切られる。このバッテリレベルでは、サイクラはドアを解放するのに十分な電力を有していない場合があり、そのため、ユーザは治療を分析することができない場合がある。起動中、サイクラは、バッテリの状態にアクセスして、バッテリに障害がある場合、または、主電源が失われた場合に少なくとも患者に警告するために十分な電荷を有していない場合、ユーザに警告する。警告を提供しかつ治療後分析を通じてユーザを案内するのに十分な容量を有するバッテリなしには、ユーザが治療を開始することができないように、サイクラをプログラムすることができる。(バッテリレベル2)。
【0750】
バッテリ充電レベルおよび利用可能な治療選択肢または透析機動作の別の例は、以下のように、4つのバッテリ充電レベルおよび利用可能な治療選択肢または透析機動作を設定する。
レベル4:
充填プロセスが開始されなかった場合、AC電力が回復するまで動作を停止する。停止は30分に限られる。
【0751】
充填プロセスが開始された場合、充填プロセス、滞留プロセスおよび排液プロセスを含むサイクルを完了する。
バッテリ動作中に加熱がないため、ヒータバッグは再充填されない。
【0752】
治療を終了し、サイクラ14から透析液供給セット12aを取り外すことを含む治療後分析を通じてユーザを案内する。
レベル3:
充填プロセスまたは排液プロセスにある場合、AC電力が回復するまで動作を停止する。停止は30分に限られる。
【0753】
排液プロセスが開始されている場合、サイクルを完了する。
バッテリ動作中に加熱がないため、ヒータバッグは再充填されない。
治療を終了し、サイクラ14から透析液供給セット12aを取り外すことを含む治療後分析を通じてユーザを案内する。
レベル2:
治療を終了し、サイクラ14から透析液供給セット12aを取り外すことを含む治療後分析を通じてユーザを案内する。
レベル1:
治療を終了する。
レベル0:
動作するのに十分でない電力。
【0754】
警告は、レベル1〜4でユーザまたは患者に表示される。制御システム16は、最終の画面タッチから所与の時間の後に表示画面324の輝度を低下させることによって、バッテリ電力に対してサイクラ動作を延長することが可能である。別の例では、最近のメッセ
ージ、警告または警報が現れてから所与の後に、表示画面324は輝度を低下させることができる。一例では、表示画面324は、より最近の画面タッチまたは最後の画面タッチから2分後に輝度を低下させる。表示画面324は、バッテリ電力に対する動作を示すメッセージまたはシンボルを含むことができる。
【0755】
バッテリを空気圧弁に接続する電気回路は、供給された可変バッテリ電圧を一貫した電圧まで上昇させる、調節された電圧ブーストコンバータを含むことができる。供給されたバッテリ電圧は、バッテリが放電されるに従って低下する可能性がり、一例では、完全充電時のLi−イオンバッテリは12.3Vを供給することができる。バッテリが、十分に放電された時に9V程度まで使い尽くされるに従い、供給電圧は低下する可能性がある。空気圧弁は、確実に十分に開放するために最低限の電圧を必要とする可能性がある。一例では、弁を確実に開放するための最低限の電圧は12Vであり得る。
【0756】
調節された電圧ブーストコンバータは、供給バッテリと弁との間に配置されて、バッテリが放電するに従い弁を確実に開放するのに十分な電圧を確保することができる。調節された電圧ブーストコンバータは、可変バッテリ電圧入力より高い値において調節された電圧を出力する。一例では、調節された電圧ブーストコンバータは、Texas Instruments製のTPS61175等の集積チップであり得る。バッテリと弁との間で、調節された電圧降圧型/ブーストコンバータを使用することも可能である。降圧型/ブーストコンバータは、入力電圧より高い、それと等しい、またはそれよりも低い供給電圧から調節された電圧出力を供給することができる。
【0757】
一実施形態では、弁駆動装置のPWMデューティサイクルは、測定されたバッテリ電圧によって変化する可能性がある。弁をピック・アンド・ホールド式で作動させることができ、最初に相対的に高い電圧が印可されて弁を開放し、次いで、それより低い電圧が印可されて、弁を所望の状態で保持する。保持機能に対するPWMデューティサイクルは、測定されたバッテリ電圧とは反比例してスケーリングされて、一貫した平均電圧または電流を弁に提供することできる。PWMデューティサイクルは、より高い電圧の開放動作またはピック動作に対して、測定されたバッテリ電圧とは反比例してスケーリングされ得る。画面表示
上述したように、UIビューサブシステム338(
図158)には、ユーザに対してインタフェースを提示する責務がある。UIビューサブシステムは、自動化コンピュータ上で実行しているUIモデルサブシステム360(
図158)のクライアントであり、UIモデルサブシステム360とインタフェースする。たとえば、UIビューサブシステムは、所与の時点でいずれの画面がユーザに表示されるべきかを判断するように、UIモデルサブシステムと通信する。UIビューは、画面ビュー用のテンプレートを含むことができ、表示言語、スキン、音声言語、および文化的な配慮がなされたアニメーション等、場所特有の設定を処理することができる。
【0758】
UIビューサブシステムにおいて発生する3つの基本的なタイプのイベントがある。これらは、個々の画面によって処理されるローカル画面イベント、画面イベントがUIモデルサブシステムにまで伝播させなければならないモデルイベント、およびタイマで発生し、ステータスについてUIモデルサブシステムに問い合わせるポーリングイベントである。ローカル画面イベントは、UIビューレベルにのみ影響を与える。これらのイベントは、ローカル画面移行(たとえば、単一モデル状態に対する複数画面の場合)、設定を見るため更新(たとえば、地域および言語オプション)、所与の画面からメディアクリップの再生する要求(たとえば、指示アニメーションまたは音声プロンプト)であり得る。モデルイベントは、UIビューサブシステムが、イベントをいかに処理するかを判断するためにUIモデルサブシステムと相談しなければならないときに発生する。このカテゴリに該当する例は、治療パラメータの確認、または「治療開始」ボタンの押下である。これらの
イベントは、UIビューサブシステムによって開始されるが、UIモデルサブシステムにおいて処理される。UIモデルサブシステムは、このイベントを処理し、UIビューサブシステムに結果を返す。この結果は、UIビューサブシステムの内部状態を決定する。ポーリングイベントは、タイマがタイミング信号を生成し、UIモデルサブシステムがポーリングされるときに発生する。ポーリングイベントの場合、UIビューサブシステムの現状態は、評価のためにUIモデルサブシステムに送られる。UIモデルサブシステムは、状態情報を評価し、UIビューサブシステムの所望の状態で応答する。これは、以下を構成することができる。すなわち、(1)状態変化、たとえば、UIモデルサブシステムおよびUIビューサブシステムの主な状態が異なる場合、(2)画面更新、たとえば、UIモデルサブシステムからの値が画面上に表示された値を変更する場合、または、(3)状態変化なし、たとえば、UIモデルサブシステムおよびUIビューサブシステムの状態が同一である場合、である。
図168は、上述した機能を実行するUIビューサブシステム338の例示的なモジュールを示す。
【0759】
図168に示すように、UIモデルにイベントを通信するためにUIモデルクライアントモジュール406が使用される。このモジュール406は、現ステータス用のUIモデルをポーリングするためにも使用される。応答ステータスメッセージ内に、UIモデルサブシステムは、自動化コンピュータおよびユーザインタフェースコンピュータのクロックを同期させるために使用される時間を埋め込むことができる。
【0760】
グローバルスロットモジュール408は、複数のコールバックルーチン(スロット)が、所与のイベント(信号)が発生するときに通知されるされるように申し込むことができる機構を提供する。これは、スロットを多くの信号に結び付けることができるため、「多対多」関係であり、同様に、1つの信号を、その起動の際に呼び出される多くのスロットに結び付けることができる。グローバルスロットモジュール408は、UIモデルポーリングまたは画面の外側で発生するボタン(たとえば、音声プロンプトボタン)の押下に対するアプリケーションレベルのタイマ等の非画面の所定スロットを処理する。
【0761】
画面リストクラス410は、すべての画面のリストをテンプレートおよびデータテーブルの形式で含む。画面は、テンプレートと、その画面を埋めるために使用される関連するデータテーブルと構成される。テンプレートは、包括的な方法でウィジェットが配置されたウィンドウであり、ウィジェットにはいかなるコンテンツも割り当てられていない。データテーブルは、ウィジェットを埋めるために使用されるコンテンツと、ウィジェットの状態とを記述するレコードを含む。ウィジェット状態は、確認済みであるかあるいは未確認であり(チェックボックス型のウィジェットの場合)、可視であるかあるいは隠されており、または有効もしくは無効であり得る。データテーブルは、ボタン押下の結果として発生する行為についても記述することができる。たとえば、テンプレート「l」に由来するウィンドウ「A」上のボタンは、UIモデルにイベントを送ることができるが、同様にテンプレート「l」に由来するウィンドウ「B」上の同じボタンは、UIモデルにイベントを伝播させることなく単にローカル画面移行をもたらすことができる。データテーブルは、コンテキストに応じたヘルプシステムへのインデックスをも含むことができる。
【0762】
画面リストクラス410は、UIモデルから意図された画面にデータを転送し、UIモデルから適切な画面に基づくデータを選択し、画面を表示させる。画面リストクラス410は、以下の2つの要素に基づいていずれの画面を表示させるかを選択する。すなわち、UIモデルによって報告される状態、およびUIビューの内部状態である。場合によっては、UIモデルは、UIビューに対して、それがカテゴリ内の任意の画面を表示することができることを単に通知することができるのみである。たとえば、そのモデルは、透析機がアイドル状態である(たとえば、治療が始められていない、または、セットアップ段階がまだ発生していない)と報告することができる。この場合、ユーザがメニューからその
サブメニューに進むとき、UIモデルに相談する必要はない。変更を追跡するために、UIビューは、現画面をローカルに格納する。この画面のローカルシーケンスは、上述したテーブルエントリによって処理される。テーブルエントリは、それぞれのボタンが押下されたときに開始する動作を列挙している。
【0763】
言語マネージャクラス412には、翻訳に関するインベントリの作成を行い、翻訳を管理する責務がある。インストールされた言語のリストに対して、翻訳のいずれかが破損されており、かつ/または欠落している場合にUIビューに警告を発するように、チェックサムを実行することができる。ストリングの翻訳を望むいかなるクラスも、それを行うように言語マネージャクラス412に要求する。翻訳は、ライブラリ(たとえば、Qt(登録商標))によって処理することができる。好ましくは、翻訳は、レンダリングの時点に可能な限り接近して要求される。この目的のために、大部分の画面テンプレートメンバアクセス方法は、レンダリング用のウィジェットにそれを渡す直前に翻訳を要求する。
【0764】
スキンは、ユーザインタフェースの「外観および操作感」を決定するスタイルシートおよび画像を含む。スタイルシートは、フォント、色、およびウィジェットがそのさまざまな状態(正常、押された、無効にされた等)を表示するためにいずれの画像を使用するか等の事項を制御する。いかなる表示されたウィジェットも、スキン変化によってその外観を変更することができる。スキンマネージャモジュール414には、画面リスト、さらには画面ウィジェットに、いずれのスタイルシートおよびスキングラフィックスを表示すべきかを通知する責務がある。スキンマネージャモジュール414は、アプリケーションが表示することを望む可能性がある任意のアニメーション化したファイルも含む。スキン変更イベント時、スキンマネージャは、作業セットディレクトリ内の画像およびスタイルシートを、アーカイブから取り出された適切なセットで更新する。
【0765】
映像マネージャモジュール416には、特定の映像を表示する要求を与えられると場所に適切な映像を再生する責務がある。場所変更イベント時、映像マネージャは、作業セットディレクトリ内の映像およびアニメーションをアーカイブからの適切なセットで更新する。映像マネージャは、音声マネージャモジュール418における音声を伴う映像も再生する。これらの映像の再時、映像マネージャモジュール416は、最初に要求された映像クリップに属する録画を再生するように、音声マネージャモジュール418に適切な要求を行う。
【0766】
同様に、音声マネージャモジュール418には、特定の音声クリップを再生する要求が与えられと、場所に適した音声を再生する責務がある。場所変更イベント時、音声マネージャは、作業セットディレクトリ内の音声クリップをアーカイブからの適切なセットで更新する。音声マネージャモジュール418は、UIビューによって開始された音声をすべて処理する。これには、音声プロンプト用のアニメーションおよび音声クリップのダビングも含まれる。
【0767】
データベースクライアントモジュール420は、データベースマネージャプロセスと通信するために使用され、それは、UIビューサブシステムとデータベースサーバ366(
図158)との間のインタフェースを処理する。UIビューは、このインタフェースを用いて、設定を格納しかつ取り出し、変数(たとえば、体重および血圧)に関する質問に対するユーザ提供の回答によって治療ログを補足する。
【0768】
ヘルプマネージャモジュール422は、コンテキストに応じたヘルプシステムを管理するために使用される。ヘルプボタンを提示する画面リストにおける各ページ、コンテキストに応じたヘルプシステムへのインデックスを含むことができる。このインデックスは、ヘルプマネージャがページに関連づけられたヘルプ画面を表示することができるように使
用される。ヘルプ画面は、テキスト、画像、音声および映像を含むことができる。
【0769】
自動IDマネージャ424は、治療前セットアップ中に呼び出される。このモジュールには、溶液バッグコード(たとえば、データ行列コード)の画像(たとえば、写真画像)を取り込む責務がある。そして、画像から取り出されたデータは、透析機制御サブシステムに送られ、治療サブシステムによって、溶液バッグの中身とともにコードに含まれる他の任意の情報(たとえば、製造元)を識別するために使用される。
【0770】
上述したモジュールを使用して、UIビューサブシステム338は、ユーザインタフェース(たとえば、
図127のディスプレイ324)を介してユーザに表示される画面ビューをレンダリングする。
図169〜
図175は、UIビューサブシステムによってレンダリングすることができる例示的な画面ビューを示す。これらの画面ビューは、たとえば、例示的な入力機構、ディスプレイフォーマット、画面移行、アイコンおよびレイアウトを例示している。図示する画面は、一般に治療中または治療前に表示されるが、図示するものとは異なる入出力機能に対して、画面ビューの態様を使用することができる。
【0771】
図169に示す画面は、指定された治療428を開始するための「治療開始」426と、設定を変更するための「設定」430との間で選択するオプションをユーザに提供する初期画面である。アイコン432および434は、それぞれ、明るさおよび音声レベルを調整するために提供され、情報アイコン436は、ユーザがより情報を求めることを可能にするために提供される。これらのアイコンは、他の画面にも同様に現れることができる。
【0772】
図170は、治療のステータスの情報を提供するステータス画面を示す。特に、画面は、行われている治療のタイプ438、完了予定時刻440、ならびに現充填サイクル数および充填サイクルの総数442を示す。現充填サイクルの完了パーセンテージ444および治療全体の完了パーセンテージ446は、数値的かつグラフィカルに表示される。ユーザは、治療を休止するために「休止」オプション448を選択することができる。
【0773】
図171は、さまざまな快適さ設定を含むメニュー画面を示す。メニューは、明るさ矢印450、音量矢印452、および温度矢印454を含む。各それぞれの対の上向き矢印または下向き矢印のいずれかを選択することによって、ユーザは、画面の明るさ、音量および流体温度を増減させることができる。現明るさパーセンテージ、音量パーセンテージおよび温度も表示される。設定が要求通りであるときに、ユーザは、「OK」ボタン456を選択することができる。
【0774】
図172は、ヘルプメニューを示し、それは、たとえば、前の画面上でヘルプボタンまたは情報ボタンを押すことによって到達することができる。ヘルプメニューは、ユーザを支援するためのテキスト458および/またはイラスト460を含むことができる。テキストおよび/またはイラストは「コンテキストに応じた」ものであるか、または、前の画面のコンテキストに基づいたものであり得る。ユーザに提供される情報を1つの画面中で好都合に提供することができない場合、たとえば、マルチステッププロセスの場合、ユーザが一連の画面間で前後に移動することを可能にするように、矢印462を提供することができる。ユーザは、所望の情報を得ると、「戻る」ボタン464を選択することができる。追加の支援が必要な場合には、ユーザは、「コールサービスセンタ」オプション466を選択して、システムにコールサービスセンタに連絡を取らせることができる。
【0775】
図173は、ユーザがパラメータのセットを設定することを可能にする画面を例示する。たとえば、画面は、現治療モード468および最小排液体積470を表示し、ユーザがこれらのパラメータを変更するために選択することができるようにする。パラメータは、
現画面上のラウンドロビン(ダイヤル)式メニューから所望のオプションを選択することによる等、複数の方法で変更することができる。別法として、ユーザが変更するパラメータを選択すると、
図174に示すもの等、新たな画面が現れることができる。
図174の画面は、ユーザが、キーパッド474を使用して数値472を入力することにより、最低排液体積を調整することを可能にする。入力すると、ユーザは、ボタン476および478を使用して値を確認するかまたは取り消すことができる。再び
図173を参照すると、ユーザは、その後、「戻る」の矢印480および「次へ」の矢印482を使用して、各々が異なるパラメータのセットを含む、一連のパラメータ画面を通じて移動することができる。
【0776】
所望のパラメータがすべて設定されるかまたは変更されると(たとえば、ユーザが一連のパラメータ画面を通じて移動したとき)、ユーザが設定を見直しかつ確認することを可能にするように、
図175に示すもの等の画面を提示することができる。変更されたパラメータは、ユーザの注意を引くために、何らかの方法で任意選択的に強調表示することができる。設定が要求通りであると、ユーザは、「確認」ボタン486を選択することができる。
自動腹膜透析治療制御
持続携帯式腹膜透析(「CAPD」)は、従来、手動で行われ、患者またはユーザは透析液をバッグから自身の腹膜腔内に移送し、3時間〜6時間、腹部において流体を滞留させ、その後、流体を収集バッグまたは排液バッグに空けることができる。これは、通常、1日当たり3回または4回行われる。自動腹膜透析(「APD」)は、APDが、(たとえば、眠っているかまたは夜に)数時間の時間、一連の注入−滞留−排液サイクルを行う腹膜透析機(「サイクラ」)を用いて達成される点で、CAPDとは異なる。APDでは、サイクルの注入段階中に導入された流体に任意の限外ろ過流体を足したものは、サイクルの続くは排液段階中に完全には排液されない場合がある。これはベッドにおけるユーザの姿勢の結果である場合があり、たとえば、腹膜腔内の凹所で流体が隔離することになり、体内留置カテーテルが、存在する流体のすべてにアクセスするのが妨げられる。持続的周期的腹膜透析(「CCPD」)では、サイクラは、各連続サイクルにて保持された流体(残留腹腔内容積)の蓄積を防止するために、注入段階および滞留段階後に十分な排液を行うように試みる。APDは、概して、ユーザはサイクラに接続されて眠っている間に、透析液の複数の短い夜間の交換を含む。夜間治療の最後に、ある体積の透析流体(場合によっては、組成が異なる)が、溶質の継続した交換、廃棄化合物の移送、および限外ろ過のために、日中、腹膜腔に残る場合がある。間欠式腹膜透析(「IPD」)では、延長された残留(または日中)滞留サイクルなしに、透析液の複数回の交換がある期間にわたって(たとえば、夜間に)行われる。
【0777】
サイクラでの治療は、概して、初期排液段階で開始して、腹膜腔の流体が空になるのを確実にするよう試みる。透析液の特徴は、通常、患者の組織から腹膜腔内空間、すなわち限外ろ過に対する流体の幾分かの移送をもたらす。一連のサイクルを通じて治療が進行するに従い、排液段階が、充填段階中に注入された流体の体積に、透析液が腹膜腔中にある期間に生じた限外ろ過された流体の体積をたしたものを排液しない場合、流体は腹膜内腔に蓄積する可能性がある。モードによっては、排液体積が注入された流体の体積に予測された限外ろ過(「UF」)体積を足したものに一致しない場合、ユーザに警報を発するようにサイクラをプログラムすることができる。予測されるUF体積は、特に、個々の患者の生理学、透析液の化学的組成、および透析液が腹膜腔に存在すると予測される時間の関数である。
【0778】
他のモードでは、所定量の排液時間が経過し、かつ先の充填体積の所定の最小パーセンテージ(たとえば、85%)が排液された場合、サイクラは次の充填−滞留−排液サイクルに進むことが可能である。この場合、最短排液時間後にかつ最小排液パーセンテージに
到達する前に、排液流が所定の速度未満に減少する場合、警報を発するようにサイクラをプログラムすることができる。腹膜腔からの流体を圧送するときに所定の流量を維持しようと試みるが失敗した数分(たとえば、2分)後にユーザに警告するように、サイクラをプログラムすることができる。低流量状態は、ストローク終了がコントローラによって検出される前にポンプチャンバを充填するのに必要な時間が増大するため、サイクラによって検出可能であり得る。ゼロ流量または流れなし状態は、コントローラが時期尚早のストローク終了状態を検出するため、サイクラによって検出可能であり得る。ユーザに警告し、または新たな導入−滞留−排液サイクルを開始する前の時間遅延の時間は、低流量状態において数分間(たとえば、2分間)であるようにプログムすることができ、流れなし状態ではより短い(たとえば、30秒間)であり得る。流れなし状態の間のより短い待機時間は、たとえば、患者のより程度の高い不快感に関連づけられる可能性があり、または患者ラインもしくはカテーテルにおける曲がり等の迅速に修正可能な問題の結果である可能性があるため、好ましい可能性がある。この遅延時間は、サイクラ製造段階でプログラムすることができ、または処方パラメータとして臨床医によって選択可能であり得る。遅延の程度は、特に、ユーザまたは臨床医の(腹膜内体積(「IPV」)が低いかまたはゼロに近い場合に、透析はほとんど発生しない可能性があることに留意して)目標総治療時間を超えないようにしたいという反対に作用する欲求によって決まる可能性がある。完全排液が達成されない場合、サイクラは各サイクルで蓄積されていると推定される流体の量を追跡し、累積IPVが所定量を超える場合には警告または警報を発することも可能である。この最大IPVは、個々の患者/ユーザの特別な生理学的特徴を考慮し、臨床医によってサイクラにプログラムされた治療処方のパラメータであり得る。
【0779】
一連のCCPDサイクル中に流体の累積貯留を取り扱う一方法は、CCPD治療をタイダル腹膜透析(「TPD」)治療に変えることである。TPDは、一般に、排液体積が、意図的に(処方パラメータとして臨床医が最初に入力することも可能な)初期充填体積の指示された分率とされる、導入−滞留−排液サイクルを含む。注入流体の所定のパーセンテージ、または所定量の流体は、治療の間の後続する充填−滞留−排液サイクル中に腹膜腔に留まるように構成される。好ましくは、後続する充填体積もまた、比較的一定の残留腹膜内体積を維持するために、排液体積(予測されたUFを減じる)に一致するように減少する。たとえば、3000mlの初期充填体積は、治療の開始時に導入することができ、それに続いて、後続する排液体積および充填体積に予測されたUF体積を加えたものは、わずか1500ml、すなわち初期充填体積の50%になる。そして、腹膜腔内の保留または残留流体が、治療の最後に完全に排液される。代替モードでは、所定または規定数の充填−滞留−排液サイクル後に完全排液を試みることができる(たとえば、3サイクルのタイダル治療後に完全排液を試みることができ、このグループ分けは治療「クラスタ」を含む)。TPDは、ユーザが、繰り返される大きな充填体積、または腹膜腔を十分に空にしようとする繰り返される試みに関連する不快感をそれほど経験しない可能性がある点で、有益であり得る。小さい腹膜腔内流体体積に関連する低流量状態もまた、低減させることができ、したがって、全治療時間の延長を回避するのに役立つ。小さい残留体積を排液しようとする試みに関連する不快感を低減させるために、たとえば、タイダル排液体積を、初期注入体積の75%(±予測UF体積)に設定することができ、たとえば、治療の持続時間に、またはサイクルのクラスタの持続時間に、腹膜腔内の保留または残留体積としておよそ25%を残す。
【0780】
ユーザが、(たとえば、快適さの理由で)後続する排液段階の最後に腹膜腔内に残留体積の流体を維持するように選択する場合、治療の過程の間、治療のCCPDモードを治療のTPDモードに変えるように、サイクラをプログラムすることも可能である。この場合、サイクラは、治療に加えられる余分のサイクルの数および注入する残りの透析液の体積に基づいて、残留体積(または初期充填体積のあるパーセントとしての体積)の選択肢を計算するようにプログラムされる。たとえば、サイクラコントローラは、さらなる1つ、
2つまたはそれより多くのサイクルを含む残りのサイクルに基づいて、残りの充填体積を計算することができる。これらの可能性の各々に対して充填体積を求めることにより、サイクラコントローラは、IPVが最大規定IPV(最大IPV)未満のままであることを確実にしながら、残りの排液段階各々の最後にどれくらいの残留体積が残る可能性があるかを計算することができる。次いで、サイクラは、1つ、2つまたはそれより多くのサイクルによって延長された治療において残りのサイクルの各々に対して利用可能な(初期充填用体積のパーセンテージとして、または体積測定に関して)広範囲のあり得る残留体積をユーザに提示することができる。ユーザは、選択された余分のサイクルの数および排液後残留体積の所望の量に基づいて、選択を行うことができる。タイダル治療への切換えは、ユーザへの低排液流量警告の数を低減させるのに役立つことができ、これは、夜間の治療中に特に有利であり得る。
【0781】
タイダルモードへの切換えでは、保留または残留体積パーセンテージ(充填体積+予測されたUFのパーセントとしての腹膜腔に残留する体積)を選択するように、サイクラをプログラムすることができる。別法として、保留体積は、広範囲の値からユーザ選択可能または臨床医選択可能とすることができ、任意選択的に、臨床医は、ユーザよりより広い範囲のあり得る値を選択することができる。実施形態では、サイクラは、残りの充填体積および予測された残留IP体積のパーセンテージに対する1つ、2つまたは3つのさらなるサイクルを追加する影響を計算し、ユーザまたは臨床医にそれらの計算した値の中から選択するオプションを与えることができる。任意選択的に、残留IP体積パーセンテージを所定の最大値(たとえば、初期充填体積+予測されたUFのパーセンテージ、または最大許容IPVのパーセンテージ)未満に維持するように、サイクラを拘束することができる。
【0782】
CCPDがTPDに変えられる場合、治療セッションに対する規定体積の透析液のすべてを用いるために、治療に対して1つまたは複数の治療サイクル(充填−滞留−排液サイクル)を追加する必要がある場合がある。そして、後には注入される残りの体積は、サイクルの残りの数によって除算される。さらに、臨床医またはユーザが、さらなるサイクルに対応するように目標全治療時間を延長することを選択し(サイクルベースとする治療)、または必要な場合に後に充填−滞留−排液サイクル時間を短縮するように滞留時間を調整(すなわち、滞留時間を短縮)することにより、目標治療時間を維持しようと試みる(時間ベースの治療)ことを可能とするように、サイクラをプログラムすることができる。
【0783】
代替実施形態では、サイクラは、指定された排液時間間隔内でどれくらいの流体を排液することができるかに応じて、残留IP体積がサイクル毎に(任意選択的に所定限界内で)変動するのを可能にすることができる。事前に計画された時間内で治療を完了するようにサイクラがプログラムされている場合、排液段階で利用可能な時間は制限される可能性があり、または、サイクラが、低速で流体を長時間引き出そう試みることを防止するするように、排液段階を終了することができる。CCPDからTPDに切換える際、サイクラが、利用可能な透析液で完全な治療を行うように1つまたは複数のさらなるサイクルを追加する場合、計画された治療終了時間を満足させるには、滞留時間の短縮、または各排液段階の低減が必要である可能性があり、それにより、排液流状態に応じて、タイダルモードに対する残留体積が変化する可能性がある。サイクラが残留体積の量を推定し追跡する際、後続する全体積に予測UF体積を足したものが規定された最大IPVに達するかまたはそれを超えるか否かを計算するように、サイクラをプログラムすることができる。規定された最大IPVに達するかまたは超える場合、サイクラはユーザに警告し、ユーザに対して以下の2つ以上のオプションを提供することができる。すなわち、ユーザは治療を終え、残留腹膜腔内体積をより低下させようと試みて排液段階を繰り返すかもしくは延長し、または、後続する充填体積を低減させるようにサイクルを追加することができる。さらなる1つまたは複数のサイクルを追加することによる治療時間に対する影響(より低い体
積での充填および排液時間の短縮に対するサイクル数の増大)を計算した後、サイクラは、任意選択的に、さらなる1つまたは複数のサイクルによってもたらされる追加の治療時間を相殺するのに必要な時間の長さ分、後続する滞留時間を縮小することができる。
【0784】
サイクラに接続されていない間、同じかまたは異なる組成の新鮮な透析液を送達する任意選択的な最後の充填段階を、延長された滞留時間(たとえば、「昼間治療」のための延長された滞留段階、すなわち、夜間治療に続く日中)にユーザの腹膜腔に提供するように、サイクラをプログラムすることができる。ユーザの選択時、最後の充填体積は、夜間治療中に使用された充填体積より少ないように選択することができる。サイクラはまた、任意選択的に、(夜間治療の終了後の比較的長時間、ユーザによって運ぶことができる)最終充填体積の注入の前に、腹膜腔を完全に空にする機会をユーザに与えるように、任意選択的な余分の最終排液を選択するようにユーザを促すことができる。この機能が有効である場合、サイクラは、ユーザに対して、起き上がるかもしくは立つかまたは他の方法で動き回ってこの最終排液段階中に腹膜腔内のあらゆる閉じ込められた流体を動かすように、促すことができる。
【0785】
透析機をオンまたはオフにして滞留段階中に生成された限外ろ過(「UF」)流体の予測量を考慮し、注入された体積に加えてこの予測UFを含む最小排液体積が治療の開始時に最初に、または治療中の充填−滞留−排液サイクル中に排液されない場合、ユーザに警告するように、サイクラをプログラムすることも可能である。実施形態では、最小初期排液体積および最短初期排液時間に対して、測定された排液流量が所定の何分間かで所定の閾値未満まで低減した場合に、排液段階を休止しまたは終了ように、サイクラをプログラムすることができる。最小初期排液体積は、先行する夜間治療における最終充填段階の体積に、日中治療の滞留段階からの予測UF体積を足した分を含むことができる。最小(またはそれより多くの)初期排液体積が達成され、最短初期排液時間に達し、かつ/または排液流量が低減した場合、サイクラコントローラによって追跡されたIPVは、初期排液段階の最後にゼロに設定することができる。上記の場合でない場合、サイクラはユーザに警告することができる。サイクラは、ユーザが最小初期排液体積の要件をとばすのを可能にすることができる。たとえば、ユーザは、APDを開始する前のいずれかの時点で手動により排液されている場合がある。ユーザが最小初期排液体積に従わないように選択する場合、ユーザによって選択された治療のタイプに関わらず、第1サイクルの最後に完全排液を行うように、サイクラをプログラムすることができる。有効である場合、この特徴は、第2充填−滞留−排液サイクルが、可能な限りゼロに近いIPVで開始するのを確実にするのに役立ち、規定された最大IPVが治療の後続サイクルの間に超過されるべきでないことを確実とするのに役立つ。
【0786】
ユーザが治療を休止するのを可能にするように、サイクラをプログラムすることも可能である。休止中、ユーザには、充填体積を低減させ、治療時間を短縮し、計画された「日中治療」を終了し、または治療をすべて終了することによって治療を変更するオプションがあり得る。さらに、ユーザには、治療中の任意の時点においても即時の排液を行うオプションがあり得る。予定されていない排液の体積はユーザが選択することができ、その際、サイクラは、サイクルを、中断された段階で再開することができる。
【0787】
処方者または「臨床医」モードを有するように、サイクラをプログラムすることができる。臨床医が、特定の患者またはユーザのための治療処方箋を形成するとともに、ユーザがユーザアクセス可能パラメータを調整することができる範囲を設定するパラメータのセットを作成しまたは変更するのを可能する、ソフトウェアアプリケーションを有効にすることができる。臨床医モードは、臨床医が、本来ユーザがアクセス可能な1つまたは複数の治療パラメータを固定するとともに、ユーザが変更しないようにパラメータをロックするのを可能にすることができる。臨床医モードは、権限のないアクセスを防止するように
パスワードで保護することができる。臨床医モードアプリケーションは、データベースとインタフェースして、処方箋を構成するパラメータを読み出しかつ書き込むように構築することができる。好ましくは、「ユーザモード」により、ユーザは、治療の治療前始動段階の間にユーザアクセス可能パラメータにアクセスし、それを調整することができる。さらに、「能動治療モード」は、治療中にユーザが任意選択的に利用可能であり得るが、ユーザモードで利用可能なパラメータまたはパラメータ範囲のサブセットのみにアクセス可能である。実施形態では、能動治療モード中に現治療のみに影響を与えるようにパラメータの変更を可能にするように、サイクラコントローラをプログラムすることができ、パラメータ設定は、後続する治療の前に先に規定された値にリセットされる。いくつかのパラメータは、好ましくは、まったくユーザ調整可能ではなく、処方箋設定を通じて臨床医の同意を得てユーザが調整可能であるか、または処方箋をプログラムする際に臨床医が設定した値の範囲内においてのみユーザが調整可能である。ユーザによってのみ調整可能でない可能性があるパラメータの例としては、たとえば、最小初期排液体積または最短初期排液時間、最大初期充填体積、および最大IPVが挙げられる。ユーザ調整可能パラメータはとしては、たとえば、(たとえば、1サイクル〜5サイクルで調整可能な)クラスタにおけるタイダル排液頻度、および(たとえば、たとえば85%のデフォルト値から所定量だけ上下に調整可能な)排液すべきタイダル治療充填体積のパーセンテージを挙げることができる。代替実施形態では、臨床医モードにより、臨床医は、ユーザが、夜間充填−滞留−排液サイクルに割り当てられた初期充填体積の所定倍(たとえば、200%)を超えるように最大IPVをプログラムするのを、防止することができる。
【0788】
ルーチンとしてユーザに警告し、いつ、所定の範囲外であるユーザ調整可能パラメータが入力されたときに確認を要求するように、サイクラをプログラムすることも可能である。たとえば、最大IPVが、臨床医モードにおいてユーザ調整可能とされている場合、サイクラは、ユーザが、夜間治療に対するプログラムされた充填体積の割合の範囲(たとえば、130%〜160%)外にある最大IPV値を選択しようと試みる場合に、そのユーザに対して警告することができる。
【0789】
初期排液体積が、臨床医モードにおいてユーザ調整可能とされている場合、ユーザに警告し(かつ、場合によっては確認を求める)ように、サイクラをプログラムすることができ、ユーザは、最後の治療の充填体積の所定のパーセンテージ未満である初期排液体積を(たとえば、それが最終充填体積の70%未満であるように調整されている場合)選択する。別の例では、臨床医モードによって全予測UV体積がユーザ調整可能とされている場合、ユーザに警告し(かつ、場合によっては確認を求める)ようにサイクラをプログラムすることができ、ユーザは(たとえば、総予測UF体積が総夜間治療体積の7%未満に設定されている場合)夜間治療のために処理された総体積のあるパーセンテージ未満であるように、総予測UF体積を選択する。概して、予測UF体積は、腹膜透析でのユーザの以前の経験に基づいて、臨床医が経験的に判断することができる。さらなる実施形態では、治療の1つまたは複数の先行するサイクルにおける実際のUF体積に従って、予測UF体積値を調整するように、サイクラをプログラムすることができる。この体積は、CCPDモードにおいて、測定された全総排液体積とそれに先立つ測定された充填体積との差を計算することによって計算することができる。場合によっては、いつ腹膜腔から流体が十分に排液されるかを判断することが困難である場合があり、複数のサイクルにわたって、全排液体積と先行する充填体積との差の平均を取ることが好ましい場合がある。
【0790】
プログラム可能な治療設定のいくつかとしては、以下を挙げることができる。
−サイクラを使用する日中交換の回数、
−各日中交換に使用されるべき溶液の体積、
−夜間治療に対する総時間、
−(日中滞留段階が使用される場合、最終充填体積を含まない)夜間治療に対して使用さ
れるべき透析液の総体積、
−1サイクル当たりに注入されるべき透析液の体積、
−タイダル治療における、各サイクル中に排液されかつ再充填されるべき流体の体積(夜間治療での初期充填体積のパーセンテージ)、
−夜間治療中に生成されるべき推定限外ろ過体積、
−治療の最後に送達されるべきであり、かつ長い期間に腹膜腔に残るべき(たとえば、日中滞留)溶液の体積、
−治療を進めるのに必要な最小初期排液体積、
−(腹膜腔に導入された測定された体積、腹膜腔から取り出された測定された体積、および治療中に生成された限外ろ過の推定体積に基づく可能性がある)サイクラが患者の腹膜腔に存在するのを可能にする、存在することが既知であるかまたは予測された最大腹腔内体積である。
【0791】
サイクラに対するより高度なプログラム可能治療設定のうちのいくつかとしては、以下を挙げることができる。
−タイダル腹膜透析中に行われるべき全排液の頻度、
−後続する充填が可能になる前に排液されなければならない、日中治療の間に腹膜に送達体積の最小パーセンテージ、
−推定総UFの所定のパーセンテージが収集されない場合に、治療の最後に余分の排液段階を行うようにユーザを促すこと、
−治療が開始する前に初期排液を行うのに必要な時間の最短長さ、
−日中治療モードまたは夜間治療モードのいずれかにおいて、後続する排液を行うために必要な時間の最短長さ、
−充填時間または排液時間のいずれかが変更されたときに、一定の全治療時間を維持する(したがって、ユーザの計画が崩れるのを回避するのに役立つ)ように、サイクラコントローラによって調整された可変滞留時間である。
【0792】
サイクラは、ユーザに対して、推奨される値の範囲外で入力されたパラメータに関する警告または警報を提供することができる。たとえば、以下の場合に警報を発することができる。
−治療前の最小初期排液体積が、先行する治療の最後における現規定最終充填体積の所定のパーセンテージ未満である(たとえば、<70%)、
−最大IPVが、1サイクル当たりの充填体積の所定のパーセンテージ範囲外である(たとえば、<130%または>160%)、
−治療の最後に余分の排液を行うように警告をトリガするためのUV体積閾値が、1回の治療当たりの推定UF体積の所定のパーセンテージ未満である(たとえば、<60%)、−計算されたまたは入力された滞留時間が、所定の何分間か未満である(たとえば、<30分)、
−1回の治療当たりの推定UF体積が、1回の治療当たりの総透析液体積の所定のパーセンテージより大きい(たとえば、>25%)、
−流体ラインのプライミング、および空気緩和処置中に排液する流体の損失を考慮するために、治療のためのすべての透析液バッグ容積の和が、CCPD治療セッション中に使用される溶液の体積より幾分か大きくあるべきである。
【0793】
臨床医モードでは、選択可能な最大IPVがあることに加えて、初期排液、日中治療排液および夜間治療排液に対して別個の最短排液時間を許容するように、サイクラをプログラムすることができる。ユーザモードでは、または能動治療モードでは、治療の開始時にユーザが初期排液段階をスキップするかまたは短縮するのを防止するように、サイクラをプログラムすることができる。さらに、サイクラは、一連のエスカレートする低排液流量警告が発せられた後にのみ、初期排液段階の早期の終了を可能にすることができる。(初
期警告は、腹膜透析カテーテルの位置を変更するかまたはカテーテルを再配置するようにユーザに指示することができ、それに続いて、低流量状態が最大数の警告まで続く場合、さらなる代替指示を行うことができる。)サイクラは、段階をとばすことを含む、計画された治療に対してユーザが行ういかなる変更も確認するように、ユーザに要求することも可能である。臨床医は、処方箋設定において、ユーザが夜間治療中に排液段階をとばすのを防止するように指定することができる。治療中、(限外ろ過によって生成されるさらなるIPVを考慮するために)排液体積が先行する充填体積を超えない限り、IPVをゼロにリセットしないように、サイクラコントローラをプログラムすることができる。充填中に、ユーザに対して推定IPVを表示するように、サイクラをプログラムすることも可能であり、サイクラは、いずれかの排液体積が所定量だけ充填体積を超えた(たとえば、排液体積が充填体積+予測UF体積よりも大きい)場合、ユーザに通知することができる。
【0794】
ユーザ入力におけるエラーを特定し、明らかな入力エラーをユーザに通知するように、サイクラをプログラムすることも可能である。たとえば、臨床医またはユーザによって入力される処方パラメータに基づいて、サイクラによって計算される治療中のサイクルの数は、所定範囲内(たとえば、1〜10)にあるべきである。同様に、サイクラによって計算される滞留時間は、ゼロを超えるべきである。さらに、ユーザまたは臨床医によって入力される最大IPVは、1サイクル当たりの充填体積に予測UF体積を足した体積以上であるべきである。さらに、1サイクル当たりの充填体積に対して所定量大きい最大IPVに対する入力値(たとえば、最大IPV≦初期充填体積の200%)を拒絶するように、サイクラをプログラムすることができる。場合によっては、溶液が日中治療中等、長時間、腹膜腔内に残る場合、最大IPVを最終充填体積以下に設定するように、サイクラをプログラムすることが望ましい可能性がある。この場合、サイクラコントローラが、最終排液体積が完全な排液未満になると計算する場合、ユーザに警告するようにサイクラをプログラムすることができ、その際、サイクラは、ユーザに、治療を終了するか、または別の排液段階を行う選択肢を提供することができる。
警報を最小限にしながらIPVを増大させる管理
実施形態では、持続的周期的腹膜透析(「CCPD」)治療から標準タイダル腹膜透析(「TPD」)治療に変えることなく、治療中に増大するIPVを追跡し管理するように、サイクラをプログラムすることができ、これは、残留体積を初期充填体積のあるパーセンテージに固定するである。むしろ、適応的タイダル治療モードを始動することができ、そこでは、いずれかの排液段階中にもたらされる可能性があるいずれかの低速排液状態に応答して、残留体積が変動し、または「浮動する」。いずれかの後続する充填体積に予測UFを足した体積が規定された最大IPV(「最大IPV」)を超えない限り、このモードが動作するのを可能とするように、サイクラをプログラムすることができる。したがって、滞留段階IPVは、治療中に、好ましくは臨床医モードで臨床医によって設定され最大IPVまで、増減することができる。この適応的タイダル治療モードでは、治療中の各排液段階において、サイクラは、割り当てられた時間内で、または低流量状態もしくは流れなし状態が規定されたもしくは予め設定された何分間か検出されていない限り、完全排液を試み続ける。排液段階の最後における残留体積は、次の充填段階において、または次の滞留段階の間に、最大IPVを超えることになる量を超えない限り、変動し、または「浮動する」ことができる。好ましい実施形態では、サイクラが、後続する導入段階または滞留段階が最大IPVに達しないかまたはそれを超過しないと計算する限り、ユーザに警告または警報を発しないように、サイクラをプログラムすることができる。
【0795】
サイクラコントローラが、次の充填体積によってIPVが最大IPVを超過しない可能性があると計算するまで、治療の各サイクル中に全充填体積を送達するように、サイクラをプログラムすることができる。(たとえば、排液段階の最後等)好都合な時点で、次のサイクルが先にプログラムされた充填体積で進行するのを可能とするように、排液の最後に最大許容可能残留IP体積を表す、最大残留IP体積を計算するように、サイクラコン
トローラをプログラムすることができる。排液された流体の量により残留IPVが最大残留IPV未満となる限り、警報するかまたは警告を発することなく、サイクラによって部分的排液を可能とすることができる。排液段階の最後における推定または予測IPVが最大残留IPV未満である場合、サイクラは、最大IPVを超過する危険を冒すことなく、次のサイクルにおいて全充填段階に進むことができる。排液の最後における推定IPVが最大残留IPVを超える場合、サイクラコントローラは、後続する充填にUVを足した体積が最大IPVを超える可能性があるという警告をユーザにトリガすることができる。実施形態では、サイクラは、この警告に応答するいくつかのオプションをユーザに表示することができる。すなわち、それにより、ユーザが、治療を終了し、別の排液段階を試み、またはサイクル修正治療モードに入るように進むことができ、そこでは、後続する各充填容積は低減し、治療に1つまたは複数のサイクルが治療に追加される(それにより、その治療中に、新鮮な透析液の残りの体積が使用されることが確実になる)。実施形態では、臨床医またはユーザが、サイクラが治療の最初に、治療中にユーザに警告する必要なしにサイクル修正治療モードに自動的に入ることを可能にすることができる。
【0796】
状況によっては、さらなるサイクルの数は、計画された総治療時間によって制限される可能性がある。たとえば、夜間治療の時間は、ユーザが覚醒し、または起きて仕事に行くように予定されている時刻によって制限される可能性がある。夜間治療では、たとえば、予定された時刻で治療を終えるために治療に対して計画されたすべての透析液の使用を優先するように、サイクラコントローラをプログラムすることができる。臨床医またはユーザが、滞留時間を調整可能であるように選択した場合、サイクラコントローラは、(1)1つまたは複数のサイクルを追加して、充填体積に予測UFを足した体積が最大IPVを超えないことを確実にし、(2)透析液のすべてが治療で使用されることを確実にし、(3)残りのサイクルの滞留時間を短縮することによって、目標治療終了時刻に達するように試みる。ユーザに利用可能な代替オプションは、治療終了時刻を延ばすことである。好ましい実施形態では、治療に1つまたは2つのさらなるサイクルを追加して、最大IPVを超過しないために充填体積の低減を可能にするように、サイクラをプログラムすることができる。サイクラは、増加したサイクルによって引き起こされた、低減した充填体積を用いて、最大残留IPVを再計算するようにプログラムされる。したがって、排液中の低流量状態が同じIPVで発生する場合、新たなより高い最大残留IPVにより、透析が最大IPVを超過することなく進むことができる。最大許容数の余分のサイクル(たとえば、例示的な夜間治療シナリオにおいては2サイクル)を追加することによって充填体積を十分低減させることができない場合、サイクラは、ユーザに2つのオプション、すなわち排液段階を再度試みるか、または治療を終了するとうオプションを提示することができる。充填体積の調整後に充填体積を再びリセットし、排液の最後における低流量状態が、新しく再計算されかつリセットされた最大残留IPVを超えるIPVで再度もたらされる場合、場合によっては、さらなるサイクルを追加するように、サイクラをプログラムすることができる。したがって、時期尚早な低流量状態が繰り返しもたらされる場合、最大IPVを超えないように後続する充填体積を繰り返し調整するように、サイクラをプログラムすることができる。
滞留時間短縮に対する補充の制限
実施形態では、1つは複数のサイクルを追加することによってサイクラが充填体積を低減させる場合、それによって、総計画治療時間内で治療セッションを終わらせるように試みるために、滞留時間も短縮することができる。このモードは夜間治療に対して有用である可能性があり、それにより、患者に対して、朝の計画された覚醒時刻前に治療が終了していることを適度に保証することができる。しかしながら、治療中の必要に応じて、サイクラはヒータバッグを補充し続け、補充は、概して、滞留段階中(PDカセットが、本来患者との間で圧送を行っていないときに)起こる。したがって、状況によっては、残りの滞留時間における必要な低減により、残りの総滞留時間が、残りの新鮮な透析液でヒータバッグを補充するために必要な総推定時間未満となる場合、総治療時間を延長する必要が
ある可能性がある。したがって、サイクラコントローラは、残りの治療サイクルで利用可能な最大滞留時間低減を計算し、残りの新鮮な透析液が適切に加熱されることを確実とするように総治療時間を延長することができる。サイクラコントローラは、ヒータバッグ内の透析液の体積、ヒータバッグ内の透析液の温度、および注入されるように予定されている残りの新鮮な透析液の体積を追跡するため、(その固有の圧送能力を想定して)ヒータバッグを所定容積まで補充するために必要な時間、およびヒータバッグ内の透析液を、ユーザの体内に注入される前に規定された温度にするために必要な時間の長さの推定値を計算することができる。代替実施形態では、サイクラコントローラは、ヒータバッグを補充するようにポンプを作動させるために、いずれかの時点でユーザとの間の圧送動作を中断することができる。たとえば、ヒータバッグ内中の流体の体積が、最後のサイクルの間ではなく、治療中のいずれかの時点において所定体積未満に低下するのを防止するように、サイクラコントローラをプログラムすることができる。
【0797】
実施形態では、サイクラが流体をユーザにまたはユーザから移送しているときより大きい流量で、流体をヒータバッグに送達するように、サイクラをプログラムすることができる。バイナリ弁を用いて、正圧リザーバ/負圧リザーバとカセットポンプの制御チャンバまたは作動チャンバとの間の制御流体または気体の流れが調整される場合、コントローラは、ポンプの制御チャンバまたは作動チャンバ内で測定される種々の圧力レベルにおいて弁に対してオン−オフコマンドを発行することができる。したがって、コントローラがバイナリ弁に対して「オフ」コマンドをトリガする、ポンプ制御チャンバまたは作動チャンバ内の圧力閾値は、サイクラがユーザの腹膜腔に流体を送達しまたは腹膜腔から流体を引き出しているとき、対応する圧力閾値より、ヒータバッグとの間の送達中により大きい絶対値を有することができる。ポンプダイヤフラムに加えられる平均圧力が高いほど、圧送している流体の流量が大きくなることを予測することができる。可変オリフィス弁を用いて、圧力リザーバとカセットポンプの制御チャンバまたは動作チャンバとの間の制御流体または気体の流れを調節する場合、同様な手法を用いることができる。この場合、コントローラは可変オリフィス弁によって提供される流れ抵抗を調整して、ポンプダイヤフラムがそのストロークを通して移動する際、ポンプ制御室内の所望の圧力を所定の範囲内で維持することができる。
例示的な治療のモード
図176は、CCPDモードにあるときの、サイクラの適応的タイダルモードのグラフ表示(体積または時間のいずれも比例尺ではない)である。明瞭にするため、治療の開始時における初期排液は省略している。最大IPV(最大IPV)700は、好ましくは臨床医によって設定された処方パラメータである。初期充填体積702もまた、好ましくは処方パラメータとして臨床医によって設定される。予測UF体積は、滞留段階706の間のさらなるIPV増加704によって表される。治療全体に対する予測UF体積は、臨床医が処方箋に入力することができ、それにより、サイクラは、治療中のサイクルの数、および、したがって、1サイクル当たりの予測UF体積に基づいて、1サイクル当たりの滞留時間を計算することができる。限外ろ過は、充填−滞留−排液サイクル全体を通して行われることが予測されることに留意するべきであり、予測UF体積は、サイクル期間全体を通して限外ろ過された流体の体積を含むことができる。大部分の場合、滞留時間は、充填時間または排液時間よりはるかに長く、充填または排液中の限外ろ過体積は比較的わずかなものとなる。充填時間および排液時間は、圧力リザーバとポンプとの間の制御弁を調節するためにコントローラが用いる圧力設定値を変更することによって、調整可能であり得る。しかしながら、ユーザに対する流体供給流量および圧力の調整可能性は、好ましくは、ユーザの快適さを確保するために制限される。したがって、1サイクル当たりの予測UF体積704は、そのサイクルの間の限外ろ過を適度に表すことができる。この例におけるサイクルの排液段階708は、治療のCCPDモードで発生するような、完全排液である。
【0798】
最大IPV700、初期充填体積702および予測UF体積が、臨床医によって入力されると、サイクラコントローラによって最大残留体積710を計算することができる。最大残留体積710は、最大IPV700に達する前により多くの流体を収容するように腹膜腔内で利用可能な「上部空間」712を示すものである。治療のCCPDモード内の適応的タイダルモードでは、排液体積714、716が推定残留体積718、720を最大残留体積710未満のままにする限り、最大IPV700は突破されないことが予測されるために、後続充填体積722、724は変化しないままであり得る。
図176に示すように、残留体積718および720での低流量状態の発生により、次の注入段階722および724を開始するようにサイクラがトリガされる。治療のこの形態の間、サイクラは、推定されたゼロIPVに達するまで低流量状態または流れなし状態はもたらされないと想定して、割り当てられた時間内で完全排液726を行うように試み続ける。したがって、たとえ完全排液が(低流量または流れなし状態のために)行われない場合であっても、この場合、完全な充填体積が導入され続け、残留IPVは所定範囲内で浮動することができ、ユーザは、好ましくは、何らかの警報または警告通知によって妨げられない。
【0799】
図177、最大残留IPV710に達しない不完全排液をサイクラがいかに扱うことができるかをグラフによって示すものである。この場合、第3サイクルの排液段階730に、サイクラが最大残留IPV710未満で腹膜腔から排液するのを妨げる低流量状態または流れなし状態がもたらされる。推定残留体積732(低流量状態の所定持続時間後の推定残留体積)を考慮すると、サイクラは、後続する充填段階体積734によって、規定された最大IPV700に達するかまたはそれを超過する736可能性があることを計算する。したがって、排液段階730の最後に、サイクラは、ユーザに対してこの問題を警告することができる。そして、ユーザには、治療を終了し、サイクラに対して(場合によっては、PDカテーテルの位置を変更するか、またはそれを再配置した後に)排液段階を再度試みるよう指示し、または後続する充填体積が低減し、透析液の計画された全体積で治療が完了するように、1つまたは複数のサイクルが追加される、サイクル修正治療モードに入るようにサイクラに指示するオプションがあり得る。割り当てられたまたは規定された総治療時間を超えないために、サイクラは、低減した充填体積および排液体積を考慮するように充填時間および排液時間を短縮し、次いで、治療セッションの指定された終了時刻を満足するために、滞留時間を短縮する必要があるか否かおよびどれぐらい短縮する必要があるかを判断することにより、変更されたサイクルの持続時間を計算することができる。
【0800】
ユーザは、任意選択的に、治療の開始時にCCPDのサイクル修正モードを有効にすることができ、それにより、治療中の低流量状態の発生が、警告または警報によってユーザを妨げることなく、サイクル修正モードをトリガすることができる。そうでない場合、ユーザは、最大残留IPVを超える低流量状態の発生時、サイクル修正モードを選択することができる。ユーザがサイクル修正モードに入ることを選択した場合、サイクラコントローラは、さらなる1つ、2つまたはそれより多くのサイクルの各々に対して必要な充填体積(残りの充填体積を、残りの計画されたサイクルにさらなる1つまたは複数のサイクルを足したもので割ったもの)を計算することができる。1つのさらなるサイクルによって、最大IPVに達するかまたはそれを超過するのを回避するのに十分に低い充填体積(予測UFを足す)がもたらされる場合、サイクラは(自動的に、またはユーザの選択時に)その新たな充填体積738でCCPDを再開させる。そうでない場合、サイクラコントローラは、治療のさらなる2つのサイクルに基づいて新たな充填体積を計算する。(まれには、残りの治療中に最大IPVが突破されないことを確実とするために、3つ以上のさらなるサイクルが必要である場合がある。さらなるサイクルが残りの滞留時間の実質的な短縮を必要とする場合、特に、最短滞留時間が規定されているか、またはヒータバッグ補充制限が総治療時間の延長を必要とする場合、サイクラはユーザに警告することできる。)このとき低減した充填体積738により、サイクラコントローラは、1サイクル当たりの
新たな充填体積と予測UF体積との和の関数である、修正された最大残留IPV740を再計算することができる。推定残留IP体積を修正された最大残留体積740未満のままにするいかなる後続する排液段階も、好ましくは、ユーザに対してそれ以上警告または警報をトリガせず、適応的タイダル治療モードを有効なままにすることができる。実施形態では、サイクラは、計画された総治療時間を超えないために、残りの滞留段階の持続時間を短縮した場合、予測UF体積を再計算することができる。予測UF体積において再計算されたいかなる低減も、修正された最大残留IPVをさらに増大させることができる。
図177に示す例では、サイクラは、CCPDモード治療を実行し続け、残りのサイクルにおいて十分排液させることが可能になる。ユーザにそれ以上不都合を感じさせないために、(特に、透析液の総体積および総治療時間が規定されたパラメータの範囲内で維持されている場合)、サイクラは、任意選択的に、治療に対するそれ以上の調整を行わないようにすることができる。
【0801】
図178は、サイクラコントローラが、治療中にユーザの最大IPV700に他するかまたはそれを超過する可能性があると計算した場合、計画された標準タイダル腹膜透析(TPD)治療はまた、TPD治療のサイクル修正モードになる可能性があることを示す。この例では、ユーザまたは臨床医は、標準的なタイダル治療を選択しており、そこでは、(実際体積測定に関する、または初期充填体積のパーセンテージとしての)計画された残留IP体積が選択されている。サイクラの任意選択的な特徴として、ユーザまたは臨床医は、治療セッション中のサイクルクラスタ構成する、3つのタイダル充填−滞留−排液サイクル毎の後に完全排液744を行うことも選択している。この例では、第3サイクル746の最後に、最大残留体積710未満の排液を妨げる低流量状態が発生する。ユーザまたは臨床医の選択時、サイクラは、ユーザに警告して、治療を終了し、排液段階を繰り返し、もしくはサイクル修正TPD治療を開始するように選択させ、または、サイクラは自動的にサイクル修正TPD治療を開始することができる。この場合、充填体積の結果としての低減を伴う第6サイクルをサイクル修正充填体積748に追加することが、本来発生していた750、最大IPV700の超過を、回避するのに十分である。この例では、サイクルは、続けてクラスタの最後に完全排液744を行うが、その後、標準TPD治療を再開する。計画された残留体積が、クラスタの初期充填体積のあるパーセンテージであるように指定されている場合、そのパーセンテージを、修正された残留IPV752に適用することができる。そして、サイクラは、修正された残留IPV752まで排液するために、修正された充填体積748の適切な割合に予測UF体積を足したものを計算することにより、後続する排液体積754を計算することができる。サイクラが、最大IPV700が突破されないと計算する限り、いかなる後続する充填体積758も、修正された充填体積748と同様なままであり得る。別法として、比較的一定の修正された滞留段階IPV756を維持するように設計されるように、後続する充填体積を低減させることができる。この場合、残りの透析溶液全体が、修正された充填体積748と、修正された滞留段階IPV756を維持するために低減した後の充填体積との間で適切に分割されることを確実にするために必要なさらなる計算を行うように、サイクラコントローラをプログラムすることができる。代替実施形態では、臨床医またはユーザは、規定された残留IP体積742が治療全体を通して体積的に比較的一定であるように選択することができる。この場合、サイクラコントローラは、残留IP体積742のパーセンテージ値を体積測定値(たとえば、ミリリットル単位)に変換し、サイクル修正モードが開始された後にその目標残留体積を使用し続けることができる。いずれの場合も、サイクラコントローラは、任意の修正された充填体積を計算する際、最大IPV700範囲を適用し続けることができる。
【0802】
図179は、標準タイダル治療中に、適応的タイダル治療モードをいかに採用することができるかを示す。この例では、最大残留体積710未満で低速排液状態760がもたらされる。サイクラの任意選択的な特徴として、ユーザまたは臨床医は、この例において、
治療セッション中のサイクルクラスタを構成する、4つのタイダル充填−滞留−排液サイクル毎の後に完全排液764を行うことも選択している。この場合、サイクラは、タイダル充填体積762が維持された場合に、最大IPV700に達しないと計算する。別の低速排液状態を回避するために、修正された残留IP体積760においてタイダル治療を継続するように、サイクラをプログラムすることができる。別法として、事前に規定された残留IP体積742に戻って排液するように試みるように、サイクラをプログラムすることができる。タイダル治療は、最大IPV700を破る危険なしに続けることができるため、ユーザに対して、適応的タイダル治療モードの修正されたまたは浮動する残留体積の開始について警告する必要はない。全排液764は規定されたように開始され、成功した場合、サイクラコントローラは、最初に規定されたタイダル治療パラメータを再度開始することができる。実施形態では、タイダル治療クラスタの最後に全排液を達成することができない場合、ユーザに警告するようにサイクラをプログラムすることができる。
適応的充填
いくつかのシナリオでは、プログラムされた治療からの変化または変更により、サイクラが、規定されたように治療を完了することができなくなる場合がある。たとえば、治療中に予期されたより多くの溶液体積が使用され、治療に対してプログラムされた数のサイクル「n」が維持される場合、治療において少なくとも1回の充填を完了するために十分な溶液が利用可能でないため、治療の最後の充填は、規定されたように完了しない可能性がある。(一般に、充填体積は、滞留段階中に最低体積の腹膜内流体をもたらすのに十分でなければならない。)一例では、各滞留段階の間に、最低量の流体体積が腹膜腔に存在することを確実にするように、各充填サイクル体積を調整するように、サイクラをプログラムすることができる。たとえば、先の流体排液体積が(たとえば、治療中のユーザの動作により)予測された量を超える場合、または、事前プログラムされた最大IPVもしくは新たに調整された最大IPVを超過するのを回避するために、コントローラが、先行するサイクルの間に、予期された排液体積を超える場合、充填体積は予期される量より大きい必要がある可能性がある。この場合、そのサイクルに対して所定の滞留体積を維持するために、後続する充填体積は、予期された量より大きい可能性がある。これにより、最後のサイクルに対して充填体積に利用可能な溶液の量が低減する可能性があり、それによって、最後のサイクル中に、要求された腹膜内滞留体積が提供されなくなる。
【0803】
これらのシナリオを回避するために、治療中、サイクラコントローラは、治療に対してプログラムされたサイクルの数から少なくとも1つのサイクルを切り捨てるように命令することができる。したがって、治療にわたって発生するサイクルの数は、「n」より1つまたは複数少なくなる。たとえば、治療の開始時にまたは治療中の任意の時点で、治療に対してサイクルの分数または非整数の回数が計算される場合、サイクルを切り捨てることができる。さらに、それは、ユーザが、タイダル治療中に、その治療に対してプログラムされたタイダルパーセンテージおよび/または率から逸脱する排液を行う場合、発生する可能性がある。たとえば、ユーザは、タイダル治療中、完全排液を行うように選択する場合がある。その場合、コントローラは、治療のすべてのプログラムされたサイクルを完了するために十分な透析液が溶液バッグ内にそれ以上残っていない可能性があるため、1つのサイクルを切り捨てることができる。
【0804】
治療から1つのサイクルが切り捨てられる場合、たとえば、予測滞留時間を延長するように、治療の残りの段階の予測時間を調整することができる。この予測滞留時間の延長により、腹膜腔内により大量のUFが蓄積する可能性がある。たとえば、ユーザがタイダル治療中に完全排液を行う場合、腹膜腔内への新鮮な溶液の注入により、限外ろ過が増大する可能性があり、腹膜腔は、その後、新鮮な溶液によって初期充填体積まで再充填される。いくつかの溶質に対する濃度勾配が高くなり、滞留段階の間、より多くの限外ろ過をもたらす可能性がある。さらに、コントローラが、治療にわたる事前プログラムされた予測総UFに基づいて1サイクル当たりの予測UFを計算する場合、サイクルを切り捨てるこ
とにより、コントローラは、1サイクル当たりのより大きいUF体積を再計算しかつ予測することができる。実施形態では、コントローラは、治療からサイクルが切り捨てられた後、総治療時間の任意の低減を考慮し、任意選択的に、治療の早期におけるより新鮮な溶液の使用からの増大した限外ろ過を考慮して、残りのサイクルに対する予測限外ろ過体積値を再計算することができる。
【0805】
いくつかのシナリオでは、この増大は、患者の解剖学的リザーバ体積、または具体的な例では腹膜内体積(IPV)が、サイクル中に事前プログラムされた最大体積を超えるのに十分である可能性がある。これは、最大IPVが異常に低く設定される場合に発生する可能性がより高い。いくつかの実施形態は、治療の開始時に1回、1サイクル毎にUFを計算することによってこうしたシナリオを回避することができるが、こうした治療の変更に応答する適応的充填体積を使用することが好ましい場合がある。いくつかの実施形態では、治療におけるサイクルの数を、プログラムされた数、「n」で維持することができる。そして、最大IPV閾値を超えないことを確実にするように、その治療に対するプログラムされた充填体積から残りのサイクルに対する充填体積が変更される。
【0806】
図180は、タイダル治療に対する経時的な腹膜リザーバ体積を示す例としてのプロット5390を示す。プロットは、例示的な目的で示されており、正確な縮尺ではない。タイル治療例は、2000mLの総治療体積と、1000mLの初期充填体積と、50%のタイダルパーセンテージとを有するようにプログラムされる。治療に対する総予測UFは、750mLに設定される。最大IPV体積5392は1400mLに設定される。治療は、合計3つのサイクルを有するようにプログラムされるかまたは計算される。
図180では、治療は、サイクルが切り捨てられることなく、プログラムされたように進む。
【0807】
初期排液5394が行われ、患者IPVが0mLまで低下する。そして、1000mLの初期充填5396が腹膜腔に送達される。図示するように、充填が完了した後、UF体積5398が患者の腹膜腔に蓄積しているために、IPVが上昇する。実施形態例では、1サイクル毎に250mLのUFが蓄積する。例としてのプロット5390はUFが滞留段階中に蓄積しているものとして示すように見えるが、これは、単に例示の目的である。現実には、このUFは、充填、滞留および排液にわたって連続的に蓄積する。
【0808】
第1滞留5400が完了すると、第1サイクルの排液5402において、患者から初期充填体積および予測UFの50%が排液される。これにより、患者IPVは500mLになる。そして、500mLの充填5404が患者に圧送されて、患者は、次のサイクルの滞留5406に対して1000mL IPVになる。滞留5406が完了すると、この排液および充填プロセスは、排液5408および充填5410によって繰り返される。最後のサイクルの滞留5412の後、患者は、排液5414において空になるように完全に排液される。治療にわたって送達された総体積は、プログラムされたように2000mLである。最大IPV閾値5392もまた、治療のいかなる時点においても突破されていない。
【0809】
図181は、タイダル治療に対する経時的な腹膜リザーバ体積を示す例としてのプロット5420を示す。この治療は、
図180に示すものと同じパラメータを有するようにプログラムされる。プロット5420は、実線および破線で示されている。実線は、治療が
図180と同じである、プロット5420の部分を示す。破線は、プロット5420が
図180に示すプロット5390から逸脱している場所を示す。
【0810】
最初に、初期排液5422が、患者を排液して空にし、その後、
図180におけるように、初期充填5424が患者に対して1000mLを送達する。これにより、治療の残りに対して、1000mLの総治療体積が残る。第1滞留5426が発生している間、25
0mLのUFが蓄積する。これにより、治療の残りの部分に対して500mLの予測UF体積が残る。
【0811】
図181の治療の間、ユーザは、第1滞留5426の後に完全排液5428を行うように選択する。完全排液5428の終了時、患者は空の状態にされている。そして、サイクラは、治療の第2充填5430において患者を充填する。この充填5430は、滞留体積をプログラムされた量で維持するために、患者に1000mLの溶液を送達する。第2充填5430の後、プログラムされた2000mL治療体積が使用されており、患者に送達する溶液はそれ以上残っていない可能性がある。その結果、実施形態例では、これにより、治療から1つのサイクルを切り捨てられ、治療を2サイクルに短縮される。そして、その後、好ましくは、500mLの残りの予測UF体積が、第2サイクルの残りの充填−滞留段階に対して再分配される。図示するように、これにより、最大IPV閾値5392(この例では1400mLに設定されている)を超える(充填体積+UF=1500mL)。
【0812】
いくつかの実施形態では、こうしたシナリオが発生する前に、それを認識しかつそれに適応するように、サイクラコントローラを構成することができる。これは、サイクルを切り捨てて充填を行う前に、コントローに対して、現患者体積に次の充填体積および1サイクル当たりの予測UFを足したものが最大IPV閾値5392を超過しないように計算させることによって、達成することができる。計算が、最大IPV閾値5392を超過することを示す場合、コントローラは、最大IPV閾値5392の突破が回避されるように充填体積を変更することができる。これにより、治療に対してプログラムされた「n」回の充填の「n」の数(この例では、3回の充填)を維持することができる。
【0813】
残りのサイクルにわたって残りの治療体積が分散されるように、充填体積を、最初にプログラムされた体積から適応させるかまたは変更することができる。これにより、充填体積とサイクル中に蓄積する予測UFとが、最大IPV閾値5392を超過しないことを確実にすることができる。全治療体積の透析液が使用されることも確実にすることができる。全治療体積を使用することにより、治療中に使用されるように計画された溶液の廃棄物が最小限になる。新たに計算された適応充填体積の受入を承認するかまたは確認するように、ユーザを促すことができる。他の実施形態では、ユーザに対して、治療を変更する1つまたは複数のオプションを提示することができ、それらの各々が、最大IPV閾値5392を超過するのを回避する。ユーザは、所望のオプションを選択することができる。オプションは、本明細書に記載するものに限定される必要はない。
【0814】
以下の式を用いて、サイクルに対する適応充填体積を求めることができる。
V
T=(V
NEW*残りの全充填)+((タイダル%*V
NEW)*残りのタイダル充填)
式中、V
Tは、残りの治療体積に等しく、V
NEWは、そのサイクルに対する新たな充填体積または適応充填体積に等しい。
【0815】
式を再配置して、適応充填体積を求めるためにV
NEWを解くことができる。
図181における治療例を用いて、非適応充填体積により最大IPV閾値5392を超過することが検出されるとき、以下のようにV
NEWを求めることができる。
【0816】
1000mL=(V
NEW*1)+((0.5*V
NEW)*1)
これを以下のように簡略化し、
1000mL=1.5V
NEW
それを再配置して、以下のようにV
NEWを解くことができる。
【0817】
V
NEW=1000mL/1.5=666.6mL
上記式は、治療体積の残りのサイクルにおいてタイダルパーセンテージが維持されていると想定する。任意選択的に、式により、治療の残りのサイクルにおいてタイダルパーセンテージを変更することができる。
【0818】
図182は、タイダル治療に対する経時的な腹膜内体積を示す例としてのプロット5350を示す。治療パラメータは、
図180および
図181においてプログラムされたものと同じである。図示するように、ユーザが完全排液5452を開始した後、充填体積を適応させる。適応充填体積により、治療中に最大IPV閾値5392を超過しないことと、プログラムされた治療体積の全体が消費されることが確実になる。サイクルは切り捨てられておらず、それは、サイクルを切り捨てることにより、最大IPV閾値5392を超えることなく全治療体積を使用することができないためである。さらに、
図182に示す例としてのプロット5350では、タイダルパーセンテージはプログラムされた値で維持される。
【0819】
いくつかの実施形態では、サイクルを切り捨てることができ、その後、最大IPV閾値5392が突破されるか否かを判断する計算を行うことができる。そして、切り捨てられたサイクルを戻して、治療に対するプログラムされたサイクルの数が維持されるようにすることができる。別法として、サイクルを切り捨てる前に事前に計算を行って、サイクルを切り捨てることにより最大IPV閾値5392を超過することになるか否かを判断することができる。
【0820】
再び
図182を参照すると、V
NEWとして上述したように計算して、第2充填5454は666mL(便宜上まるめている)である。そして、サイクル中に蓄積したUF5398の250mLにより、最大IPV5392は超過しない。第2排液5456の間、タイダルパーセンテージは50%で維持され、患者は333mLまで排液される。333mLの最後のサイクルの充填5458により、患者のIPVは計算された新たな充填体積、V
NEWに戻される。この場合もまた、最後のサイクルに対するUF5398は、最大IPV閾値を超過することなく蓄積することができる。そして、最後の排液5460において患者が排液されて空になり、治療が終了する。
【0821】
いくつかの実施形態では、コントローラは、患者のIPVを初期充填体積により近接して維持するように、タイダルパーセンテージを調整することができる。別法として、いくつかの実施形態では、第1適応充填体積が患者に送達された後、タイダル治療を非タイダル治療に変えることができる。たとえば、第1適応充填を送達することができ、滞留が経過することができる。続く排液において、サイクラは、そのサイクルに対する予測UFのみを排液することができ、治療はUF維持モードに入ることができる。いくつかの実施形態では、予測UFに流体の任意選択的な追加のマージンを足したものを排液することができる。これにより、次の充填によって、患者のIPVをおよそ初期充填体積に戻すことができる。この場合もまた、これにより、治療に対する最大IPV閾値5392を超過することなく、全治療体積を使用することができるはずである。別の実施形態では、残りの溶液体積が複数のサイクル間で分割されて、タイダル治療をCCPD治療に変えることができる。
【0822】
いくつかの実施形態では、治療から1サイクルを依然として切り捨てながら、充填体積を適応させることができる。こうしたシナリオでは、充填体積を低減させて、1サイクルが切り捨てられた後の1サイクル当たりの予測UFにより、最大IPV閾値5392を超過しないようにすることができる。いくつかの実施形態では、充填体積は、以下のように再計算することができる。
【0823】
V
NEW=最大IPV−(予測UF+任選択的なマージン)
この式を用いて、かつ
図181に示す治療例を参照すると、ユーザが完全排液を行うように選択した後、最後のサイクルが切り捨てられた後の新たな予測UFに基づいて、充填体積を再計算することができる。充填体積を、825mL(予測UFに対して15%マージン)に変更することができる。したがって、最大IPV閾値5392を突破することなく、治療を完了することができる。こうした実施形態では、治療の最後に、幾分かの溶液が再使用される。
【0824】
適応的充填体積を実施することに加えて、事前にプログラムされた充填体積未満の充填体積(「縮小充填」)を行うように、コントローラを任意選択的にプログラムすることができる。これは、たとえば、プログラムされた治療体積が複数の定義されたサイクルに均一に分割されない場合に発生する可能性がある、計算されたサイクルの数が非整数である場合に、有用であり得る。治療は、プログラムされた充填体積の所定パーセンテージ(たとえば、85%)が利用可能である場合、最後のサイクルに対して縮小充填を行うことができる。所定パーセンテージが利用可能でない場合、コントローラは、サイクルを切り捨て、余分な溶液を未使用のままにすることができる。
【0825】
場合によっては、治療の一部の間に、予測されるより多くの溶液が使用される場合、最後のサイクルに対する残りの溶液体積が、所定パーセンテージ閾値未満になる可能性がある。これは、体積目標設定の際の許容差等、複数の要素に応じて発生する可能性がある(たとえば、わずかな過剰送達があり得る可能性がある)。したがって、コントローラは、それに応じて最後のプログラムされたサイクルを切り捨てることができ、1サイクル当たりの予測UFを増大させるように、残りの滞留段階を再構成することができ、これにより、最大IPV閾値5392を超過する可能性がある。
【0826】
いくつかの実施形態では、この状況は、サイクラコントローラが治療の最後のサイクルを切り捨てないようにすることによって回避することができる。取り付けられたバッグ内の残りの体積は、プログラムされた充填体積の何パーセントが残っているかに関わらず、最後の充填に対して患者に送達することができる。別法として、治療がCCPD治療である場合、治療をタイダル治療に変えることができる。プログラムされた充填体積がサイクルを切り捨てることなく維持されるように、タイダルパーセンテージを選択することができる。
【0827】
いくつかの実施形態では、こうしたシナリオは、治療の開始時に(たとえば、第1充填中)縮小充填を行うことによって回避することができる。これにより、残りの治療体積を残りのサイクルで分割することができ、それにより、実質的にプログラムされた全充填体積を各サイクル中に患者に送達することができる。したがって、最後の充填体積は、所定パーセンテージ閾値により近接した体積の代わりに、プログラムされた充填体積のすべてまたは略すべてであるように予期される。これにより、バッファ体積が有効に生成される。最後の充填サイクルが依然として行われるか否かは、依然として、プログラムされた充填体積閾値の所定パーセンテージによって決まる可能性がある。しかしながら、バッファ充填体積を実施することにより、閾値が満足されない可能性を低減させることができる。
【0828】
プログラムされた充填体積のパーセンテージとして、閾値充填体積に対して範囲を割り当てるように、コントローラを任意選択的にプログラムすることができる。この範囲は、プログラムされた充填体積閾値の所定パーセンテージの周囲に配置されたヒステリシスバンドとして見ることができる。このヒステリシスバンドは、予測される使用済み体積と治療中に使用された実際の体積との小さい差に対応する際に有用であり得る。所定パーセント閾値の一方の側または両側におけるパーセンテージ値の範囲としてヒステリシスバンドを採用するように、コントローラをプログラムすることができる。いくつかの実施形態で
は、このヒステリシスバンドは、臨床医またはユーザがプログラム可能であり得る。
ポンプ動作同期
さまざまな実施形態において、圧送中、カセットのポンプチャンバを同期させることができる。ポンプ動作の以下の説明は、2つ以上のポンプを有するポンプカセットを動作させる任意の装置に適用することができる。実施形態では、こうした装置は、たとえば、腹膜透析サイクラであり得る。他の実施形態では、それは、ポンプカセットを用いる静脈内注入ポンプシステムもしくは体外循環圧送システム(たとえば、血液透析または心肺バイパスシステム等)、またはポンプカセットを用いる別のタイプの圧送システムであり得る。以下のポンプ同期化動作を実施することができる例示的なシステムは、たとえば、米国特許第5,350,357号明細書、同第5,431,626号明細書、同第5,438,510号明細書、同第5,474,683号明細書および同第5,628,908号明細書に開示されている腹膜透析システムを含む。それらはまた、たとえば、米国特許第8,246,826号明細書、同第8,357,298号明細書、同第8,409,441号明細書および同第8,393,690号明細書に開示されている血液透析システムも含むことができる。それらはまた、たとえば、米国特許第8,105,265号明細書に開示されている心肺バイパスシステムも含むことができる。以下の説明では、サイクラという用語は、ポンプカセットの使用を組み込むことができる他の圧送装置(上述したもの等)を包含するように意図されている。
【0829】
複数の異なる同期方式を使用することができる。こうした同期方式は、圧送動作のさまざまなステップ(すなわち、カセットポンピングチャンバの充填および送達、ならびに任意の関連する体積(容積)測定、通気等)が発生するときを時間的に指示する役割を果たすことができる。さらに、こうした同期方式は、カセットの複数のポンピングチャンバにわたって発生する圧送動作を時間的に構造化するのに役立つことができる。
【0830】
いくつかの実施形態では、圧送動作は、異なるタスクが実行されているときに異なる同期方式を使用することができる。たとえば、第1タイプのチャンバ同期方式は、患者から流体を排液しているときに使用することができ、第2タイプのチャンバ同期方式は、治療が終了した後に、ヒータバッグ(または他のリザーバ)から残りの透析液体積を空けるときに使用することができる。選択される同期方式は、流体体積の比較的大きいスループットを処理するように最適化することができる。同期方式はまた、患者の不快感を最小限にするようにも最適化することができる。実行されているタスクに応じて、適切であるように各異なる圧送動作に対して、複数の同期方式のうちの1つまたは複数を割り当てることができる。
【0831】
図183は、2チャンバポンプカセットにおいて圧送動作を同期させるために使用することができる複数のステップ例を詳述するフローチャートを示す。実施形態例に示すように、フローチャートは、2チャンバカセットに対する同期方式を示すが、手続は、多チャンバカセットに対して容易に一般化することができる。たとえば、追加のポンプチャンバを備えるカセット(たとえば、並列で動作するように編成されたチャンバのセット)に対して同様の方式を使用することができる。図示するように、ステップ4000において、コントローラにより、チャンバAが充填ステップを行うことができる。充填ステップは、カセットの目標チャンバを、そのチャンバが所望の供給源リザーバと流体連通している間に、負圧にさらすことを含む。いくつかの実施形態では、目標チャンバを実質的に充填するために十分な所定期間、負圧を加えることができる。部分充填体積のみが望ましい場合、サイクラコントローラは、充填サイクル中の周期的間隔での一連の体積測定を通して、充填体積とその充填体積に達するためにかかる時間との関係を計算することにより、任意の所望のポンプ充填体積を推定できる。
【0832】
ステップ4002において、次いで、装置またはサイクラは(装置コントローラを介し
て)、チャンバAに充填された体積の測定を行うことができる。たとえば、基準チャンバに関連する圧力測定(FMS)、音響式容積検出、ポンプ膜位置検出等を含む、任意のタイプの体積測定手段を用いて、このステップを行うことができる。
図183に示すように、本明細書に記載するFMS方法のうちの任意のものを含む、FMSタイプ測定を使用することができる。チャンバ内の現体積の測定値を、先行する測定値(たとえば、先行する送達の後に取得された体積測定値)と比較して、チャンバが充填された体積を求めることができる。さらに、いくつかの実施形態では、この測定値は、たとえば、完全な充填を表す基準時間のパーセンテージとしての測定前に充填モードで費やされる時間、膜が完全に後退するときの全液体体積のパーセンテージを示すものとしての、ポンピングチャンバ内のポンプダイヤフラムの関連部分の光学、超音波もしくは電気体積検出または推定値、または試験中に経験的に求められた基準変動に対してモデル化された、ポンプチャンバがその変位を通して移動する際に検出される、圧力波形の変動等、現体積を推断することができる間接的測定値であり得る。略この時点で、サイクラはまた、ステップ4004、すなわちチャンバBの充填も開始することができる。
【0833】
ステップ4006において、サイクラは、チャンバA内に収容されている体積を所望の宛先に送達することができる。送達ステップは、カセットの宛先チャンバを、そのチャンバが所望の宛先リザーバと流体連通している間に、正圧にさらすことを含むことができる。いくつかの実施形態では、指定されたチャンバの体積の大部分またはすべてを実質的に送達するために充分な所定期間、正圧を加えることができる。チャンバAを送達した後、ステップ4008において、サイクラは、ステップ4006の間にチャンバAに送達された体積の測定を行うことができる。いくつかの実施形態では、チャンバ内の現体積の測定値を、先行する測定値(たとえば、ステップ4002において取得された体積測定値)と比較して、チャンバAから送達された体積を求めることができる。ステップ4002、4006および4008が完了する際、チャンバBは充填し続けることができる。
【0834】
図示するように、ステップ4008が完了した後、サイクラは、チャンバAが再充填される前に所定期間経過するのを待機することができる。この期間は、ステップ4004を完了するために必要となる時間の長さに略等しいように選択することができ、それは、たとえば、治療の開始時における一連の圧送ステップを通して、経験的に求めることができる。
【0835】
チャンバBの充填が完了した後、ステップ4010において、サイクラは、ステップ4004の間にチャンバBに充填された体積の測定を行うことができる。いくつかの実施形態では、これは、チャンバAが、所定期間が経過するのを待機している間か、または別法としてその期間の最後に行うことができる。したがって、ステップ4010において測定が行われている間、チャンバAはステップ4000に戻り、再充填を開始することができる。
【0836】
そして、ステップ4012において、サイクラはチャンバB内の体積を送達することができる。ステップ4012は、チャンバAが再充填されている間に行うことができる。チャンバBからの送達の後、ステップ4014において、サイクラは、ステップ4012の間にチャンバBから送達された体積の測定を行うことができる。この場合もまた、チャンバAが再充填している際にこれを行うことができる。
【0837】
図示するように、ステップ4014が完了した後、装置は、チャンバBが再充填される前に所定期間が経過するのを待機することができる。この期間は、ステップ4000を完了するために必要となる時間の長さに略等しいように選択することができる。チャンバAが再充填を終了した後、装置は、上述したように、ステップ4002において再充填された体積を測定することができる。この時点で、装置は、ステップ4004に戻ることがで
き、チャンバBの再充填である。フローチャートにおけるステップ例は、所望のタスクが完了する(たとえば、患者が排液されて空になる)まで必要に応じて繰り返すことができる。
【0838】
図184は、2チャンバカセットにおいて圧送動作を同期させる別の実施形態を示す。実施形態例に示すように、フローチャートは、2チャンバポンプカセットに対する同期方式を示すが、手続は、追加のチャンバがあるカセット(たとえば、並列で動作するように編成されたチャンバのセット)で使用されるように容易に一般化することができる。図示するように、ステップ4020において、装置は、チャンバAに対して充填ステップを行わせることができる。ステップ4022において、装置は、ステップ4020の間にチャンバAに充填された体積の測定を行うことができる。上述したように、このステップを行うために、任意のタイプの好適なセンサまたは好適な測定手段を用いることができる。
図184に示すように、本明細書に記載するもののうちの任意のもの等、FMSタイプ測定を使用することができる。他の実施形態では、上述したように、音響式容積検出または他の好適な測定手段のうちの任意のものを使用することができる。
【0839】
そして、ステップ4024において、サイクラは、チャンバAに収容されている体積をその宛先に送達することができる。この時点で、サイクラは、ステップ4028、すなわちチャンバBの充填も開始することができる。チャンバAを送達した後、ステップ4026において、サイクラは、ステップ4024の間にチャンバAから送達された体積の測定を行うことができる。ステップ4024および4026が完了する際、チャンバBは充填し続けることができる。
【0840】
図示するように、ステップ4026が完了した後、サイクラは、チャンバA内の体積が適切に送達されたことを確認することができる。これは、たとえば、ステップ4022および4026からの測定値を比較することを含むことができる。サイクラは、この比較を用いて、充填体積の所定量または割合が送達されたか否かを判断することができる。充填体積の所定量または割合が送達されると、サイクラは、チャンバが十分に送達されたとみなすことができる。サイクラは、チャンバA体積が完全に送達されていないと判断する場合、再度ステップ4024および4026を行うことができる。これらのステップは、各試みからの累積体積がステップ4022からの測定値の所定量または割合の範囲内になるまで繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、サイクラが次のステップに進みチャンバBを送達しようと試みる前にステップを繰り返すことができる回数に対して制限があり得る。いくつかの実施形態では、この制限に達すると、所定量の流体が送達されていない場合、サイクラコントローラにより、閉塞警報等をトリガすることができる。
【0841】
チャンバAが完全に送達されたと判断された後、ステップ4030を行うことができる。ステップ4030において、サイクラは、ステップ4028中にチャンバB内に充填された体積の測定を行うことができる。さらに、チャンバAの充填体積が完全に送達された(または、再試行制限に達した)と判断された後、サイクラは、所定期間が経過したか否かを確認することができる。所定期間が経過していない場合、サイクラは、チャンバAが再充填される前に所定期間の残りが経過するのを待機することができる。この期間は、ステップ4028を完了するために必要となる時間の長さに略等しいように選択することができる。ステップ4032は、所定期間が経過した後にも行うことができる。チャンバAが再充填され始める前にステップ4032が開始することが望ましい場合がある。
【0842】
チャンバBを送達した後、ステップ4034において、サイクラは、ステップ4032の間にチャンバBから送達された体積の測定を行うことができる。ステップ4032および4034が完了する際、チャンバAは充填し続けることができる。
【0843】
図示するように、ステップ4034が完了した後、サイクラは、チャンバB内の体積が完全に送達されたことを確認することができる。これは、たとえば、ステップ4030および4034からの測定値を比較することを含むことができる。サイクラは、この比較を用いて、充填体積の所定量または割合が送達されたか否かを判断することができる。サイクラは、チャンバB体積が完全に送達されていないと判断した場合、再度ステップ4032および4034を行うことができる。各試みからの累積体積がステップ4030からの測定値の所定量または割合の範囲内になるまで、これらのステップを繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、装置が次のステップに進みチャンバAを送達しようと試みる前にこれらのステップが繰り返される回数に対して、制限があり得る。制限がある場合、その制限に達すると、システムコントローラによって、閉塞警報等をトリガすることができる。他の実施形態では、この制限に達すると、サイクラはトラブルシューティングモードに入り、さまざまな状態(たとえば、閉塞)について試験し、必要な場合は警告または警報を発することができる。
【0844】
チャンバBが完全に送達されたと判断された後、ステップ4022を行うことができる。ステップ4022において、サイクラは、ステップ4020の間にチャンバA内に充填された体積の測定を行うことができる。さらに、チャンバBの全体積が完全に送達された(または、試みの制限に達した)と判断された後、サイクラは、所定期間が経過したか否かを確認することができる。所定期間が経過していない場合、サイクラは、チャンバBが再充填される前に所定期間の残りが経過するのを待機することができる。この期間は、ステップ4020を完了するために必要となる時間の長さに略等しいように選択することができる。ステップ4024は、所定期間が経過した後も行うことができる。ステップ4024は、好ましくは、チャンバBの再充填が開始した後に開始することができる。所望のタスクが完了する(たとえば、患者が排液されて空になる)まで、必要に応じてフローチャートのステップ例を繰り返すことができる。
【0845】
図185は、2チャンバカセットにおいて圧送動作を同期させる別の実施形態を詳述するフローチャートを示す。具体的には、
図185に示すフローチャートは、2チャンバポンプカセットからの流体の送達を同期するために追うことができる複数のステップ例を示すが、この方式は、追加のチャンバがあるカセット(たとえば、並列に動作するように編成されたチャンバのセット)で使用されるように、容易に一般化することができる。
図185に示すフローチャートは、チャンバAおよびチャンバBの各々が充填され、充填体積の初期測定が行われた後に開始する。
【0846】
図示するように、送達同期方式例では、チャンバは、それらの体積を順々に逐次送達する。ステップ4040で開始して、チャンバAは、その体積を所望の宛先に送達することができる。そして、サイクラは、ステップ4042で送達された体積の測定を行うことができる。この測定値を初期充填体積測定値と比較して、どれくらいの体積が送達されたかまたは体積全体が送達されたか否かを判断することができる。
【0847】
フローチャート例では、ステップ4044、4046、4048、4050は破線輪郭形式で示されている。これらのステップは、任意選択的であり、すべての実施形態に含まれるとは限らない。いくつかの実施形態では、サイクラは、チャンバ内の体積を一度にすべては送達しない場合がある。代わりに、いくつかの実施形態では、体積全体がチャンバから送達される前に、複数回の送達ステップおよび測定ステップを行うことができる。この場合、ステップ4044、4046、4048、4050は、チャンバ体積全体を送達するために充分なさらなる送達ステップおよび測定ステップを提供する。いくつかの実施形態では、より多いかまたは少ない送達ステップおよび測定ステップを使用することができる。
【0848】
さらに、いくつかの実施形態では、4042において取得された測定値が所望の値未満であるか、またはチャンバが完全に送達されなかったことを示す場合、サイクラは、チャンバ体積を複数回送達しようと試みることができる。この場合、チャンバ体積全体が送達されるまで、必要に応じて、ステップ4044、4046、4048、4050を行うことができる。いくつかの実施形態では、サイクラがチャンバ体積全体を送達するのを可能にするように、さらなるステップを追加することができる。いくつかの実施形態では、サイクラが送達しようと試みるのを止め、次のチャンバに対して作用するように進む前に行うことができる送達ステップおよび測定ステップの数に対して制限があり得る。
【0849】
実施形態例では、チャンバAから送達を完了した後、サイクラはステップ4052に進むことができる。ステップ4052において、サイクラは、チャンバBからの送達を開始することができる。ステップ4052を完了した後、サイクラは、ステップ4054で送達された体積の測定を行うことができる。この測定値を初期充填体積測定値と比較して、どれくらいの体積が送達されたかまたは体積全体が送達されたか否かを判断することができる。
【0850】
フローチャート例では、ステップ4056、4058、4060および4062は破線輪郭形式で示されている。これらのステップは、任意選択的であり、すべての実施形態に含まれるとは限らない。いくつかの実施形態では、サイクラは、チャンバ内の体積を一度にすべては送達しない場合がある。代わりに、いくつかの実施形態では、体積全体がチャンバから送達される前に、複数回の送達ステップおよび測定ステップを行うことができる。さらに、いくつかの実施形態では、4052で取得された測定値が所望の測定値未満である場合、サイクラは、チャンバ体積を複数回送達しようと試みることができる。こうした実施形態では、サイクラは、ステップ4044、4046、4048、4050に関して上述したステップと同様に動作することができる。
【0851】
チャンバAおよびチャンバBの各々が空にされた後、サイクラは、チャンバの各々を再充填することができる。そして、サイクラは、各チャンバを占有する流体の体積を測定することができる。これらの測定を行った後、サイクラは、再度、上述したようにチャンバAおよびチャンバBを送達することができる。所望のタスクが完了する(たとえば、患者が排液されて空になる)まで、必要に応じてこのプロセスを繰り返すことができる。
【0852】
ポンプカセットのポンピングチャンバにおいて存在するいかなる圧力の大きさも、ポンピングチャンバの容積測定が試みられる前に、解放するかまたは低減させることが有利である可能性がある。実施形態では、FMSチャンバ容積測定が行われる前に、ポンプ制御チャンバを雰囲気に通気することができる。他の実施形態では、FMS測定の所定のまたは規定されたレベルの正確さを得ることができる限り、ポンピングチャンバ内の既存の圧力の大きさを、必ずしもそれが大気圧に達するようにすることなく、低減させることができる。以下の説明は、2ポンプカセットに対する通気処置を含むが、この通気処置は、単一ポンピングチャンバを有するポンプカセット、または複数のポンピングチャンバを有するポンプカセットに、等しく適用することができる。以下のポンプ通気動作を実施することができる例示的なシステムは、たとえば、米国特許第5,350,357号明細書、同第5,431,626号明細書、同第5,438,510号明細書、同第5,474,683号明細書および同第5,628,908号明細書に開示されている腹膜透析システムを含み、それらの特許の内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。それらはまた、たとえば、米国特許第8,246,826号明細書、同第8,357,298号明細書、同第8,409,441号明細書および同第8,393,690号明細書に開示されている血液透析システムも含むことができ、それらの特許の内容もまた、全体として参照により本明細書に組み込まれる。それらはまた、たとえば、米国特許第8,105,265明細書に開示されている心肺バイパスシステムも含むことができ、その特許の内容
もまた、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0853】
図186は、2チャンバカセットにおいて圧送動作を同期させる別の実施形態を詳述するフローチャートを示す。具体的には、
図186に示すフローチャートは、2チャンバポンプカセットからの流体の送達を同期させるために追うことができる複数のステップ例を示すが、この方式は、さらなるチャンバがあるカセット(たとえば、並列に動作するように編成されたチャンバのセット)で使用されるように容易に一般化することができる。
図186に示すフローチャートは、チャンバAおよびチャンバBの各々が充填され、充填体積の測定が行われた後に開始する。
【0854】
図示するように、フローチャート例は、
図186に示すものに類似している。
図185からのステップのすべてが含まれるが、追加のステップ4064が追加されていることが異なる。この追加されたステップでは、チャンバ内の圧力が、チャンバから、たとえばチャンバと連通している閉塞したまたは部分的に閉塞した流体ラインのために発生した可能性があるあらゆる背圧を軽減するように、変更される。実施形態では、チャンバは通気される。いくつかの実施形態では、チャンバを雰囲気に通気することができる。他の実施形態では、チャンバを、送達ストローク中またはその後にチャンバ内に存在する圧力未満の圧力である圧力源に通気することができる。代替実施形態では、ステップ4064においてチャンバを通気せず、負圧にさらすことができる。本技術分野において既知であるポンピングチャンバを通気する他の任意の手法を使用することも可能である。これは、体積(容積)測定および流体計算の全体的な正確さを向上させるのに役立つことができる。さらに、この通気は、(たとえば、閉塞したまたは部分的に閉塞したラインによる)背圧からのいかなるあり得る影響も軽減するのに役立つことができる。通気ステップは、本明細書では背圧軽減ステップと呼ぶことも可能である。
【0855】
図186に示すように、通気ステップ4064は、チャンバAがその体積の送達を終了した後に、かつチャンバBがその体積の送達を開始する前に行われる。代替実施形態では、追加の通気ステップ(
図186には示さず)がある場合があり、または通気ステップ4064は異なる時点で行うことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、チャンバのいずれかに対して各送達後体積測定が行われる前に、通気ステップ4064を行うことができる。別法として、チャンバのいずれかに対して充填後および送達後両方の体積測定が行われる前に、通気ステップ4064を行うことができる。さらに、限定されないが本明細書に記載したものを含む、他の任意の同期方式に、通気ステップを追加することができることが留意されるべきである。たとえば、
図184に示す同期方式に、1つまたは複数の通気または背圧軽減ステップを追加することができる。具体的な例では、
図184における各送達と送達後測定との間に、背圧軽減または通気ステップを追加することができる。
【0856】
図187Aは、2チャンバカセットにおいて圧送動作を同期させる別の実施形態を詳述するフローチャートを示す。具体的には、
図187Aに示すフローチャートは、2チャンバポンプカセットからの流体の送達を同期させるために追うことができる複数のステップ例を示すが、この方式は、さらなるチャンバがあるカセット(たとえば、並列に動作するように編成されたチャンバのセット)で使用されるように容易に一般化することができる。
図187Aに示すフローチャートは、チャンバAおよびチャンバBの各々が充填され、充填体積の測定が行われた後に開始する。
【0857】
図示するように、ステップ4070において、サイクラは、チャンバAから体積を送達することによって開始する。そして、ステップ4072において、サイクラは、チャンバAを通気する。チャンバAを通気した後、サイクラは、ステップ4074において、ステップ4070の間にチャンバAから送達された体積の測定を行う。サイクラは、ステップ
4074からの測定値を用いて、チャンバA内の体積が完全に送達されたことを確認することができる。これは、たとえば、初期充填測定値をステップ4074からの測定値と比較することを含むことができる。サイクラは、この比較を用いて、充填体積の所定量または割合が送達されたか否かを判断することができる。サイクラは、チャンバA体積が完全に送達されなかったと判断する場合、ステップ4070、4072および4074を再度行うことができる。各試みからの累積体積が、チャンバA内に充填された体積の初期測定値の所定量または割合の範囲内になるまで、これらのステップを繰り返すことができる。他の実施形態と同様に、サイクラが行うことができる再試行の回数を制限するように、サイクラ(すなわち、そのコントローラ)をプログラムすることができる。この制限に達すると、サイクラコントローラは、ユーザ警告または警報をトリガすることができる。
【0858】
チャンバA内の体積が所望の宛先に送達された後、サイクラは、ステップ4076においてチャンバAの充填を開始することができる。チャンバAが充填を開始した後、またはチャンバAが充填した後、ステップ4078において、サイクラはチャンバBの送達を開始する。チャンバBが送達された後、ステップ4080において、チャンバBを通気することができる。通気した後、ステップ4082において、サイクラは、ステップ4078の間にチャンバBから送達された体積の測定を行う。サイクラは、ステップ4082からの測定値を用いて、チャンバB内の体積が完全に送達されたことを確認することができる。これは、たとえば、初期充填測定値をステップ4082からの測定値と比較することを含むことができる。サイクラは、この比較を用いて、充填体積の所定量または割合が送達されたか否かを判断することができる。サイクラは、チャンバB体積が完全に送達されなかったと判断した場合、ステップ4078、4080および4082を再度行うことができる。各試みからの累積体積が、チャンバB内に充填された体積の初期測定値の所定量または割合の範囲内になるまで、これらのステップを繰り返すことができる。記載した他の実施形態と同様に、サイクラが行うことができる再試行の回数を制限するように、サイクラ(すなわち、そのコントローラ)をプログラムすることができる。この制限に達すると、サイクラコントローラは、ユーザ警告または警報をトリガすることができる。
【0859】
チャンバB内の体積が所望の宛先に送達された後、ステップ4084において、サイクラは、チャンバAの充填を開始する。チャンバBが充填を開始した後、またはチャンバBが充填した後、ステップ4070において、サイクラはチャンバAの送達を開始する。所望のタスクが完了する(たとえば、患者が排液されて空になる)まで、必要に応じて、フローチャートにおけるステップ例は繰り返すことができる。
【0860】
1つまたは複数の通気または背圧軽減ステップを含む圧送動作プロセスを実証する複数のフローチャートを、
図186、
図187Aおよび
図189に示す。背圧軽減ステップによる圧送動作中のポンプチャンバ内の加圧を示すグラフ例を、
図187Bに示す。
【0861】
図187Bは、送達ストローク、背圧軽減ステップおよび体積測定ステップにわたる制御チャンバ内の圧力をプロットする例としてのグラフ4071を示す。グラフ4071は、任意の同期方式においてこうしたステップを行う任意のポンプチャンバを例示するものであるが、
図187AにおけるチャンバAに対する参照数字が、例としての送達ストローク4070、背圧軽減ステップ4072および体積測定ステップ4074を示すように、グラフ4071に含まれている。
【0862】
図示するように、正圧で送達ストローク4070が行われる。流体が送達される際、制御チャンバの容積が増大し、コントローラは、チャンバに対して、その圧力が所望または所定範囲内にあり続けるように再加圧されるように命令する。送達ストローク4070の終了時、サイクラコントローラにより、背圧軽減ステップ4072が命令される。例としての背圧軽減ステップ4072において、
制御チャンバは周囲圧力に向かって通気される。これは、たとえば、チャンバを雰囲気と連通させるために、空気圧回路における任意の好適な弁または弁の組合せを作動させることによって行うことができる。本明細書の別の場所で記載したように、他の実施形態では、背圧軽減ステップは、雰囲気以外の通気リザーバ(たとえば、送達圧力または送達圧力範囲の圧力未満の圧力のリザーバ)にチャンバを接続することを含むことができる。
【0863】
背圧軽減ステップ4072が完了した後、(たとえば、FMS処置を介して)体積測定4074を行うことができるように、チャンバを再加圧することができる。例としてのグラフ4071において、この体積測定は、チャンバを既知の正圧に加圧し、その後、それを、既知のまたは測定された圧力で既知の容積を有する基準チャンバと均等化させることによって行われる。別の場所に記載したように、均等化後圧力が読み取られ、チャンバの容積が求められる。
【0864】
図188は、2チャンバカセットにおいて圧送動作を同期させる別の実施形態を詳述するフローチャートを示す。具体的には、
図188に示すフローチャートは、2チャンバポンプカセットからの流体の送達を同期させるために追うことができる複数のステップ例を示すが、この方式は、さらなるチャンバがあるカセット(たとえば、並列に動作するように編成されたチャンバのセット)で使用されるように容易に一般化することができる。
図188に示すフローチャートは、チャンバAおよびチャンバBの各々が充填され、充填体積の測定が行われた後に開始する。
【0865】
図188は、チャンバAおよびチャンバBからの送達を互いに交互配置または交差配置することができる同期方式を示す。図示するように、一方のチャンバは流体を送達している場合があり、一方で、他方のチャンバは体積測定を行っている場合がある。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のチャンバが送達ステップ中に完全に空にならない場合、こうした同期方式が使用される。他の実施形態では、サイクラは、全チャンバ容積を1つのステップで送達するようにプログラムされない場合がある。たとえば、こうした実施形態において、こうした同期方式を使用することができる。
【0866】
ステップ4090において、サイクラは、チャンバAから送達する。チャンバAから送達した後、ステップ4092において、サイクラは、ステップ4090の間チャンバAから送達された体積の測定を行う。図示するように、ステップ4102において、サイクラは、略同時に、チャンバBからの送達を開始する。したがって、サイクラは、送達と体積測定とを交互配置または交差配置することができる。図示するように、チャンバAに対するステップ4094、4096、4098および4100とステップ4104、4106、4108、4110および4112とは、同様に互いに交互配置または交差配置され得る。いくつかの実施形態では、または場合によっては、より多いかまたは少ないステップを含めることができる。たとえば、チャンバからの全体積が所望の宛先に送達されるまで、サイクラはさらなる交互配置されたステップを行うことができる。
【0867】
図189は、2チャンバカセットにおいて圧送動作を同期させる別の実施形態を詳述するフローチャートを示す。具体的には、
図189に示すフローチャートは、2チャンバカセットからの流体の送達を同期させるために追うことができる複数のステップ例を示すが、この方式は、さらなるチャンバがあるカセット(たとえば、並列に動作するように編成されたチャンバのセット)で使用されるように容易に一般化することができる。
図189に示すフローチャートは、チャンバAおよびチャンバBの各々が充填され、充填体積の測定が行われた後に開始する。
【0868】
図示するように、
図189におけるフローチャート例は、
図188に示すものに類似している。
図189からのステップのすべてが含まれるが、さらなるステップ4120、4
122、4124、4126、4128および4130が追加されている点が異なる。これらの追加されたステップにおいて、チャンバから、たとえばチャンバと連通している閉塞したまたは部分的に閉塞した流体ラインのために発生した可能性があるあらゆる背圧(正または負)を軽減するように、チャンバ内の圧力を変更することができる。実施形態では、チャンバは通気される。チャンバが通気されるいくつかの実施形態では、チャンバを、たとえば、雰囲気に、または大気圧を超える正圧源または大気圧未満の負圧源に通気することができる。通気は、所定期間行うことができる。さまざまな実施形態において、所定期間は、必ずしも、チャンバが通気源と、それが雰囲気であっても正圧源または負圧源であっても、実質的均等化することができるために充分な持続時間である必要はない。他の実施形態では、送達圧力より低い圧力の圧力源に、チャンバを通気することができる。代替実施形態では、チャンバを通気せずに、負圧にさらすことができる。ポンピングチャンバを通気する他の任意の好適な手段を使用することも可能である。この通気は、(たとえば、閉塞したまたは部分的に閉塞による)背圧からのいかなるあり得る影響も軽減するのに役立つことができる。さらに、これは、体積測定および流体計算の全体的な正確さを向上させるのに役立つことができる。
【0869】
図示するように、例示的な実施形態では、送達後体積測定の前に、背圧軽減ステップ4120、4122、4124、4126、4128および4130が行われる。これらのステップは、送達ステップおよび体積測定ステップのように、交互配置または交差配置されない。代わりに、これらのステップのタイミングは、背圧軽減を最適化するために、独立して行うことができる。
【0870】
さらに、いくつかの実施形態では、サイクラによってすべての体積測定が行われる前に、通気ステップを含めることができる。たとえば、いくつかの実施形態は、充填ステップ中に充填された体積を求めるために体積測定を行う前に通気ステップを含めることができる。こうしたさらなる通気ステップは、上述した同期方式のうちの任意のものに追加することができる。送達後通気ステップと同様に、充填後通気ステップは、独立して行うことができ、他のステップと交互配または交差配置されない可能性がある。
【0871】
いくつかの実施形態では、圧送動作の同期は、共有されたリソースシステムを使用し、独立した状態機械としてカセットの各ポンプチャンバを運転することによって達成することができる。独立した状態機械が動作を行うために、排他的なアクセストークンまたはリソースを所有している必要がある場合がある。すなわち、独立した状態機械(すなわち、ポンプチャンバ)がトークンを所有している場合、他方のチャンバは、そのトークンを同様に所有することができない。チャンバに対して動作(たとえば、FMS、充填または送達)が終了するとすぐに、チャンバは関連するトークンを解放することができる。これにより、トークンまたはリソースが別のチャンバが所有するために利用可能となる。そして、別のチャンバが取得する用意ができるとすぐに、解放されたトークンを別のチャンバが所有することができる。
【0872】
充填動作の具体的な例を用いて、充填バスリソースまたはトークンを所有するために、チャンバ独立状態機械が必要である場合がある。同様に、送達動作は、送達リソースまたはトークンを所有するために独立した状態機械を必要とする場合がある。充填バスおよび送達バスの各々を、排他的アクセスリソースとして処理することができる。
【0873】
こうした方式により、圧送動作およびポンプ同期を管理する別個のソフトウェア層を不要にすることができる。代わりに、この層の機能は、同期方式の創発挙動として具現化される。さらに、こうした方式は、
図184に示すもの等、他の同期方式と比較した場合、ポンピングカセットを通る流体のスループットを増大させるのに役立つことができる。このスループットの増大により、接続された患者の規定された充填または排液を完了するた
めにサイクラに必要な時間を短縮することができる。その結果、より大きいスループットは、各サイクルの滞留段階で費やされる治療の割合を増大させるのに役立つことができる。
【0874】
ポンピングカセットが並列して操作されるように構成された複数のポンプチャンバを含む実施形態では、互いに並列に動作するポンプチャンバを、単一の独立した状態機械に割り当てることができる。さらに、いくつかの実施形態では、非ポンプチャンバ独立状態機械を含めることも可能である。この独立した状態機械は、圧送動作を制御するために1つまたは複数のリソースを所有する能力を有することができる。
【0875】
上記説明では、トークンは、相互排他または相互排除トークンとして記載されている。しかしながら、任意の好適な種々の同期トークンも使用することができることが理解されるべきである。たとえば、いくつかの実施形態では、セマフォトークンを使用することができる。こうした実施形態では、セマフォトークンは、バイナリセマフォトークンであり得る。
【0876】
図190は、ポンプチャンバが排他的アクセストークンを取得する独立した状態機械として扱われる同期方式を概説するフローチャートを示す。実施形態例では、2つのポンプチャンバのみが含まれているが、当業者には理解されるように、こうした方式は、あらゆる数のポンプチャンバを備えたポンプカセットに対して、一般化することができる。フローチャート例では、いかなる圧送動作もこのように同期させることができるため、ポンプチャンバは、概して動作「X」と呼ぶ圧送動作を同期させている。動作「X」を行うために、ポンプチャンバは、その動作に対するバスの所有権を有していなければならない。この所有権は、トークン「X」によって制御される。
【0877】
フローチャート例は、ポンピングカセットのチャンバAが動作「X」を行う用意ができており、チャンバBはまだ動作「X」を行う用意ができていない状態で、開始する。図示するように、ステップ5090において、チャンバAは、トークン「X」を取得する。そして、ステップ5092において、チャンバAは動作「X」の実行を開始する。チャンバAが動作「X」を行っている間、チャンバBは、動作「X」を行う用意ができる。チャンバBは、動作「X」を行う用意ができているため、ステップ5094を実行し、トークン「X」を利用することができるか確認する。その時点でトークンはチャンバAによって保持されており、トークンは排他的なアクセスリソースとして処理されるため、チャンバBは、圧送動作を行うためにトークンを所有することができない。そして、チャンバBは、トークンを利用することができるか繰り返し確認することができる。別法として、チャンバBは、トークン「X」が利用可能となるとすぐに使用するために、トークン「X」を予約することができる。チャンバAは、動作「X」の実行を終了すると、ステップ5096においてトークン「X」の所有権を解放する。これにより、チャンバBはトークンを取得し保持することができる。図示するように、ステップ5098において、チャンバBは、トークン「X」を取得する。そして、ステップ5100において、チャンバBは、動作「X」の実行を開始する。いくつかの実施形態では、ポンプチャンバがリソースまたはトークンを解放する前に、追加のロジックを採用することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、コントローラは、ポンプチャンバが所定量より多い流体を移送したか否かを確認することができる。これは、部分ストロークのみが完了した場合にポンプチャンバがトークンを解放するのを防止するのに役立つことができる。部分ストロークに対する確認は、ポンピングカセットを通る流体のスループットを増大させるのに役立つことができる。さらに、部分ストロークに対する確認は、実施形態に応じて空気管理に役立つことができる。
【0878】
図191は、そのチャンバがトークンの所有権を解放する前に、圧送ストローク中に移
動した流体の量が確認される、フローチャート例を示す。
図191に示すフローチャートは、チャンバが、所定の圧送動作、動作「X」を行う用意ができた後に、かつチャンバがその動作に対してトークンが利用可能であるか確認した後に、開始する。図示するように、ステップ5110において、チャンバは、トークン「X」を取得する。チャンバがトークン「X」を所有することにより、他のいかなるチャンバも動作「X」を行うことができない。そして、ステップ5112において、チャンバは動作「X」を行うことができる。
【0879】
そして、コントローラは、ポンプチャンバが部分ストロークしか行っていないか否かを判断することができる。これは、たとえば、コントローラが、ステップ5112において行われた圧送動作に対するストロークの終了を検出した後に行うことができる。コントローラは、部分ストロークが発生したか否かを、たとえばポンプストローク中にチャンバによって送達された体積を推定することによって判断することができる。いくつかの実施形態では、これは、ポンプストロークが発生する際に瞬時の流量情報をモニタリングすることによって行うことができる。こうした瞬時の流量情報のモニタリングについては、本明細書の別の場所に記載されている。別法としてまたはさらに、コントローラは、部分ストロークが発生したか否かを判断するために、発生したストローク容積の量を推定することができる。こうしたストローク容積のモニタリングについてもまた、本明細書の別の場所に記載されている。
【0880】
推定値が、ストロークが部分ストロークではなかったことを示す場合、チャンバは、ステップ5114において所有していたトークンを解放することができる。トークンを解放した後、ステップ5116において、チャンバは、ストローク後FMS測定を行うことができる。そして、この測定値をストローク前FMS測定値と比較して、ストローク中に送達された総体積を比較的精密に求めることができる。
【0881】
体積推定値が、部分ストロークが発生したことを示す場合、ステップ5118において、チャンバによってトークンを保持することができ、コントローラは、ステップ5120においてにそのチャンバに対してFMS測定を行うことができる。このFMS測定値をストローク前FMS測定値と比較して、部分ストロークが実際に発生したか否かを判断することができる。ステップ5120からのFMS測定値が、ストロークが部分ストロークではなかったことを示す場合、ステップ5122においてチャンバはトークンを解放することができる。ステップ5120からのFMS測定値が、部分ストロークが発生したことを示す場合、チャンバは、ステップ5112に戻り、再度圧送動作を行うことができる。その動作に対するトークンが保持されていたため、別のチャンバが動作を終了しトークンを解放するのを待機する必要はない。
【0882】
サイクラは、所定量の流体が移動するか、または流量低減警告がトリガされるまで、圧送動作を繰り返すことができる。所定量の流体は、たとえば、90%ストローク容積によって移動するように予測される流体の量であり得る。別法として、圧送動作に対して可能な再試行の数に対する制限があり得る。この制限を超えた場合、警告または警報(たとえば、低流量、流れなし、閉塞等)をトリガすることができる。いくつかの実施形態では、制限を超えた場合、チャンバによってトークンを解放することができる。そして、別のチャンバがトークンを取得し、圧送動作を行うように試みることができる。その動作がまた許容された再試行の数を超過した場合、上述したもの等の警告または警報をトリガすることができる。
ポンプ動作を測定と同期
いくつかの実施形態では、1つのチャンバにおける圧力変化が、別のチャンバがFMS測定またはFMS測定の所定部分を行っている間(測定は、ポンプの制御チャンバ内の圧力の正確な確定に基づく)、発生しないかまたは制限されるように、多チャンバカセットの圧送動作を同期させることが望ましい場合がある。これは、ポンピングカセットのポン
ピングチャンバ間に加圧活動の何らかの伝達がある可能性があり、体積またはFMS測定中、別のポンピングチャンバに大きい圧力スイングを発生しているときに、圧力センサが受ける変動をもたらす実施形態において、望ましい可能性がある。チャンバがFMS測定を受けている間に、他のチャンバにおける圧力スイングまたは変化が発生しないことを確実にすることにより、圧力スイングによってもたらされるFMS測定に対するいかなる影響または妨害も回避することができる。たとえば、ポンピングチャンバ/制御チャンバの組合せにおいて、FMS測定またはFMS測定の一部が行われている間、コントローラは、他のポンピングチャンバが、大きい圧力変化(たとえば、約7kPa〜8kPaを超える圧力変化)を伴う動作を行うのを阻止することができる。たとえば、ポンピングチャンバに対して、カセットの別のポンピングチャンバにおいてFMS測定が行われている間、ポンプストローク、通気、FMSプリチャージの実行等を開始することを阻止することができる。
【0883】
いくつかの実施形態では、これは、
図190および
図191に関連して上述したトークンと同様に機能する1つまたは複数のトークンを生成することによって達成することができる。一般に、トークンは、コントローラによってコントローラのポンプ制御部分にまたは別個のポンプコントローラに、指定されたポンプを用いて動作を行うように与えられる認証タグとして見ることができる。認証タグまたはトークンは、その動作が完了すると、ポンプコントローラによって放棄することができ、その後、認証タグは、コントローラのポンプ制御部分にまたは別個のポンプコントローラに、別のポンプに割り当てるために利用可能となる。上述したように、ポンプ(すなわち、ポンピングチャンバおよび関連する制御チャンバを含むポンプ)は、独立した状態機械として扱うことができる。これらのトークンは、ポンプ/ポンプチャンバが所定動作を行うために、ポンプ/ポンプチャンバが「所有する」必要がある、排他的アクセストークンであり得る。一実施形態では、ポンプ状態機械によって取得されたとき、そのポンプおよび関連する制御チャンバがFMS測定を行うのを可能にする、FMSトークンがあり得る。さらに、FMSトークンは、ポンプチャンバがFMSトークンを所有しているとき、他のポンプ/ポンピングチャンバが充填または送達のリソースまたはトークンを取得するのを有効に阻止することができる。(ポンプ/ポンプチャンバによるリソーストークンの所有は、そのポンプのコントローラによる認証タグまたはトークンの所有を指すように意図される。)別法として、ポンプチャンバ状態機械がFMSトークンを所有するとき、他のポンピングチャンバは、依然として充填トークンまたは送達トークンを取得することができるが、そのストロークを直ちに開始することはできない。他のチャンバが同様に通気するのを阻止するように、FMSトークンを任意選択的に構成することができる。
【0884】
他の実施形態では、さらなるトークンを生成することができる。これは、個々のポンプの測定の正確さを維持しながら、ポンピングカセット流体スループットを増大させるのに役立つことができる。ダイヤフラムポンプの制御チャンバの測定(たとえば、圧力測定)中、ポンプカセットの他のダイヤフラムポンプにおける圧送動作を停止させるべきである臨界時間があり得る。測定トークンは、測定が必要であるポンプに割り当てるか、またはそうしたポンプが取得することができ、動作開始トークンは、圧送動作(たとえば、充填、送達、通気等)を行う用意ができている他の任意のポンプに割り当てるか、またはそうしたポンプが取得することができる。測定中に、別のポンプの動作が測定を妨げる可能性がある期間がある場合、動作開始トークンは、一時的に優先的に、臨界時間中に測定トークンを所有しているポンプに割り当てるか、またはそうしたポンプが取得することができる。実施形態では、測定が行われているポンプは、臨界測定時間より十分先の時点で動作開始トークンを取得することができ、それにより、動作中の圧力変化が測定中のポンプの臨界期間を侵害する可能性がある場合に、他のいかなるポンプも動作を開始することができないことを確実にすることができる。
【0885】
たとえば、いくつかの実施形態では、FMS(すなわち、測定)トークンと、ストローク開始(すなわち、動作開始)トークン(本明細書では、「SSトークン」と呼ぶ場合がある)とがあり得る。こうした実施形態では、FMSトークンがポンプチャンバによって所有されている(すなわち、コントローラが、ポンプチャンバにFMSトークンを割り当てているか、またはポンプチャンバの状態機械がトークンを取得した)場合、それにより、他のチャンバがFMS測定を行うのを阻止することができる。ストローク開始トークンがチャンバによって所有されているとき、それにより、他のチャンバが、充填または送達のリソースまたはトークンを取得するのを阻止するか、またはトークンが取得された後にストロークが開始するのを阻止することができる。これにより、他のチャンバがストロークを開始し、付随する圧力変化を受けるのを有効に抑制することができる。任意選択的に、ストローク開始トークンはまた、他のチャンバの通気も同様に阻止することができる。
【0886】
図192は、ポンプチャンバがFMS測定を行っているときに使用することができる複数のステップを概説するフローチャートを示す。フローチャート例では、FMSトークンおよびSSトークンを用いて、FMS測定の同期が促進される。図示するように、ステップ5130において、ポンプチャンバは圧送ストロークの実行を終了する。ストロークが終了すると、ストロークを終了したポンプチャンバが、ステップ5132においてFMSトークンが利用可能であるか否かを確認することができる。
【0887】
FMSトークンが利用可能でない場合、ポンプチャンバはステップ5134に進むことができる。これは、たとえば、別のチャンバがFMS測定を行っており、したがって、FMSトークンを所有している場合に発生する可能性がある。ステップ5134において、ポンプチャンバは、FMSトークンが利用可能になるのを待機する。FMSトークンが利用可能である場合、またはFMSトークンが利用可能となると、ステップ5136において、ポンプチャンバは、FMSトークンを取得しかつ保持する。チャンバは、FMSトークンを所有すると、ステップ5138においてFMS測定の実行を開始する。チャンバがFMSトークンを所有しているため、この時点では、他のいずれのチャンバもFMS測定を開始することができない。しかしながら、ストローク開始トークンは依然として所有されていないため、他のチャンバは依然としてストロークを開始することができる。
【0888】
チャンバは、FMS測定プロセスの所定点に達すると、ステップ5140に進み、SSトークンを取得しかつ保持することができる。この所定点は、たとえば、FMS測定が開始した所定期間後に、または臨界測定期間に達する所定時間前に、達することができる。たとえば、この所定点は、基準チャンバおよび制御チャンバの均等化が発生する所定時間前であるように設定することができる。SSトークンが保持されているため、他のチャンバは、ストローク(または、任意選択的に、それらの制御チャンバの通気)を開始することを阻止することができる。上述したように、これは、種々の方法で達成することができる。いくつかの実施形態では、他のチャンバが新たなリソースまたはトークンを取得するのを阻止することができる。別法として、チャンバは、新たなトークンまたはリソースを取得することができるが、ストロークを開始することはできない場合がある。
【0889】
ステップ5142において、FMS測定は終了する。FMS測定が終了した後、ステップ5144および5146それぞれにおいて、チャンバはSSトークンおよびFMSトークンを解放することができる。そして、ステップ5147において、チャンバは、ストローク開始チェック(本明細書では、SSCと呼ぶ場合がある)を行って、ストローク開始トークンが利用可能であるか否かを判断することができる。ストローク開始チェックは、たとえば、ストローク開始トークンを取得し、迅速にまたは即座に解放することによって行うことができる。チャンバはまた、この時点で、リソース(たとえば、充填バス)が利用可能であるか否かも確認することができる。SSトークンが利用可能でない場合、ステップ5148において、ポンプチャンバはSSトークンが利用可能になるのを待機する。
さらに、チャンバはまた、所望のリソースまたはトークンが利用可能となるのを待機しなければならない場合もある。SSトークンが利用可能である場合、またはSSトークンが利用可能となると、ポンプチャンバはステップ5150に進み、(要求したトークンを取得したと想定して)ストロークを開始するとことができる。
【0890】
図193は、FMSトークンのみを用いてFMS測定を同期させる実施形態例を示す。図示するように、フローチャートは、ステップ5160において、ポンピングチャンバがストロークを終了した状態で開始する。ストロークが終了すると、ポンピングチャンバは、FMSトークンが利用可能であるか確認することができる5162。FMSトークンが利用可能でない場合、ステップ5163において、チャンバは、FMSトークンが利用可能となるまで待機することができる。FMSトークンが利用可能である場合、またはFMSトークンが利用可能となると、ステップ5164において、チャンバはFMSトークンを取得することができる。FMSトークンが保持されているため、他のチャンバがFMS測定を開始するのを阻止することができる。さらに、他のチャンバがストロークを開始することを阻止することができる。チャンバによってFMSトークンが取得されると、ステップ5166において、チャンバは、FMS測定を行うことができる。FMS測定が完了すると、ステップ5168において、FMSトークンを解放することができる。
【0891】
ステップ5170において、コントローラは、その後、チャンバに対してFMSチェックを行って、FMS測定が目下進行中であるか否かを判断することができる。コントローラはまた、この時点でチャンバに対してリソース(たとえば、充填バス)が利用可能であるか否かも確認することができる。FMSトークンが利用可能でない場合、ステップ5172において、ポンプチャンバは、FMSトークンが利用可能になるのを待機する。さらに、チャンバはまた、所望のリソースが利用可能になるのを待機しなければならない場合もある。FMSトークンが利用可能である場合、またはFMSトークンが利用可能となると、ポンプチャンバは、ステップ5174に進み、(必要なトークンを取得したと想定して)ストロークを開始することができる。
【0892】
ここで
図194〜
図199を参照すると、複数のグラフ例が、経時的な2つのポンピングチャンバのトークン所有と制御チャンバ圧力との1つまたは複数の関係を示す。
図194〜
図197および
図199におけるグラフの下半分は、チャンバA圧力トレース5133およびチャンバB圧力トレース5135を示す。これらのグラフの各々の上部は、2つのチャンバによるトークンおよび/またはリソースの所有を示す。具体的には、これらのグラフ例は、充填バスフィールド5180、送達バスフィールド5182、FMSトークンフィールド5184、およびSSトークンフィールド5186を示し、これらのリソースまたはトークンの各々が所定チャンバによって所有されているときを示す。これらのグラフはまた、各ポンピングチャンバがストローク開始チェックを行うときを示すストローク開始検査(SSC)フィールド5188も有する。例示の目的で、
図194〜
図199に示すグラフは、2つのポンピングチャンバ(チャンバAおよびチャンバB)を備えたポンピングカセットに対するものである。図示するプロセスは、複数のダイヤフラムポンプを備えたカセットに対して同様に一般化することができる。2つのチャンバを識別するために、グラフ例では、チャンバAには明るい灰色が割り当てられ、チャンバBには暗い灰色が割り当てられている。
【0893】
ここで主に
図194を参照すると、ストローク開始トークンおよび体積測定トークンを用いる圧送同期をグラフで示す例としてのグラフ5131が示されている。これらのトークンの所有権ステータスは、それぞれ、SSトークンフィールド5186およびストローク開始チェックフィールド5188に示されている。例としてのグラフ5131に示す同期方式は、測定されているチャンバ(たとえば、チャンバA)における体積測定の臨界期間中に、他のチャンバ(たとえば、チャンバB)における大きい圧力スイングを防止する
ために、体積測定トークンおよびストローク開始トークンを採用する。同期方式は、
図192に関連して図示し記載したものと同様である。上述したように、この構成は、測定が行われているチャンバにおける体積測定に対する、別のチャンバにおける大きい圧力変化の、いかなる影響も低減させるのに役立つことができる。
【0894】
図示するように、グラフ5131は、チャンバAが充填ストロークを行うことで開始する。充填ストローク中、制御チャンバ(たとえば、チャンバA)は、負圧にあって、関連するポンプチャンバから流体を引き込む。この負圧を、チャンバAの圧力トレース5133に示す。充填バスフィールド5180に示すように、チャンバAは、充填ストロークの持続時間にわたって充填バストークンの制御5137を保持する。これにより、チャンバBが充填ストロークを開始することが阻止される。チャンバAは、充填ストロークを完了したとき5139、ポンピングチャンバ内に引き込まれた体積の量を測定するために、利用可能な場合はFMSまたは体積測定トークン5141を取得することができる。チャンバAはまた、任意選択的に、この時点で充填バストークンを解放することができる。例としてのグラフ5131の充填バスフィールド5180に示すように、チャンバAは、充填ストローク5139を完了した後の期間5143、充填バストークンを保持する。チャンバAに対する圧力トレース5133によって示すように、例としての期間5143は、チャンバAの圧力が負の充填圧力から略周囲圧力まで上昇するために充分である。
【0895】
チャンバAが充填トークン5145を解放すると、チャンバBはストローク開始チェックを行う5149。ストローク開始トークンが別のポンプチャンバによって所有されていないため(ストローク開始フィールド5186を参照)、チャンバBは充填バストークンを取得する5151。チャンバBによって充填バストークンが取得されると、チャンバB圧力トレース5135によって示すように、チャンバは充填を開始する5158。チャンバは、充填し続け、充填バストークンを保持し、例としてのグラフ5131の残りの間、負圧である。
【0896】
チャンバAに対する体積測定中、チャンバは、既知の正圧5152になる。これにより、たとえば、チャンバの容積を求めるために、隔離されたチャンバが、既知の圧力である既知の容積の基準チャンバと均等化することができる。基準チャンバに対する圧力トレースは、例としてのグラフ5131には含まれておらず、本明細書では、体積測定については別の場所でさらに詳述している。チャンバAの体積測定プロセス中、ストローク開始トークンフィールド5186に示すように、チャンバはストローク開始トークンを取得する5153。
【0897】
上述したように、体積測定を行っているチャンバによってストローク開始トークンを取得することができ、それにより、体積測定中の臨界時間に、他のチャンバにおける大きい圧力変化が阻止される。実施形態例では、ストローク開始トークンを取得し、臨界時間に所定の先行するマージン期間を足した時間にわたって保持することができる。
【0898】
いくつかの実施形態では、ストローク開始トークンを取得し、体積測定プロセスに対して必要な予測時間の後半の半分に近い期間、保持することができる。他の実施形態では、ストローク開始トークンを取得し、チャンバが基準チャンバ5154と均等化するために必要な時間と、任意選択的な所定の先行する期間5155と、チャンバが初期圧力からストロークのためのその調整範囲5157になるために必要な最長予測時間5156との和に等しい期間、保持することができる。チャンバがストローク開始トークンを保持することができる期間は、FMSまたは体積測定トークンが保持される期間より短い可能性があり、それは、FMS測定プロセスの必ずしもすべてが、近くのまたは隣接するチャンバの加圧の影響を受けやすいとは限らないためである。これにより、他のチャンバが、体積測定中に長期間待機する必要がない可能性があるため、流体スループットを増大させること
ができる。代わりに、チャンバは、別のチャンバに対する体積測定プロセスの大部分の間に、ストロークを開始することができる可能性がある。
【0899】
均等化プロセス5154は、行われている体積測定動作のタイプによって決まる可能性がある。均等化期間5154は、いくつかの実施形態では、具体的な体積測定動作に対して経験的に求めるかまたは事前設定することができる。いくつかの実施形態では、均等化期間5154は、臨界期間とみなすことができる。
【0900】
先行する期間5155は、均等化期間5154の直接の事前設定された期間であり得る。いくつかの実施形態では、先行する期間5155において収集されたデータを、後処理において、体積測定に関するさらなる情報を収集するために使用することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、先行する期間5155からの圧力データを後処理して、そのデータがシステムにおける漏れを示すか否かを判断することができる。こうした実施形態では、先行する期間5155および均等化期間は、まとめて臨界期間を構成することができる。他の実施形態では、先行する期間5155は、(たとえば、漏れ試験が行われる実施形態では)任意選択的とすることができ、臨界期間の一部として含まれない。
【0901】
最長予測期間5156もまた、経験的に求められた事前設定期間であり得る。期間5156は、チャンバの圧力が初期圧力(たとえば、通気されたまたは周囲圧力/大気圧)から圧送動作のための圧力調整範囲5157に変化するために必要な最長予測期間であり得る。圧力調整範囲5157は、コントローラが、圧送中、均一な圧送流を確実にするのに役立つように、チャンバを設定値で維持しようと試みる圧力範囲であり得る。
図194におけるグラフ例に示す圧力調整範囲5157は、コントローラが、充填ストローク中にチャンバを維持しようと試みる圧力範囲である。最長予測期間5156の少なくとも一部は、臨界期間に対する追加されたマージンとしての役割を果たすことができる。
【0902】
チャンバAに対する体積測定が完了すると5159、チャンバは、ストローク開始トークンを解放する5161。この時点で、チャンバAは、流体で満杯であり、送達ストロークを行う用意ができている。チャンバAは、ストローク開始チェック5165を行い、ストローク開始トークンが別のチャンバによって所有されていないため(ストローク開始トークンフィールド5186を参照)、チャンバAは、送達バストークン5167を取得し、送達ストローク5169を開始する。チャンバが送達ストロークを行っているとき、制御チャンバは正圧にさらされ、流体を関連するポンピングチャンバから押し出すことができる。これは、チャンバが送達バストークンを所有している期間(約4.3秒で開始する)の間におけるチャンバA5133に対する圧力トレースに示されている(送達バストークンフィールド5182を参照)。
【0903】
ここで主に
図195を参照すると、ストローク開始トークンおよび体積測定トークンを用いる圧送同期をグラフによって示す例としてのグラフ5171が示されている。これらのトークンの所有権ステータスは、それぞれ、SSトークンフィールド5186およびストローク開始チェックフィールド5188に示されている。例としてのグラフ5171に示す同期方式は、別の体積測定の臨界期間中に他のチャンバにおける大きい圧力スイングを防止するために、体積測定トークンおよびストローク開始トークンを採用する。さらに、グラフ5171に示す同期方式例は充填バストークンを使用し、その所有権は、充填バスフィールド5180において識別されている。例としてのグラフ5171は、両チャンバが空になり始めるときにこうした同期方式がいかに動作することができるかを示す。この状態のチャンバから開始するストロークは、開始ストロークと呼ぶことができる。このシナリオは、たとえば、サイクラ内に新たなカセットが存在するとき、またはチャンバのすべてが完全に送達された状態で先行する圧送手順が終了した後に発生する可能性がある。
【0904】
図示するように、例としてのグラフ5171は、チャンバAが体積測定5173を行うことで開始する。体積測定の前に、チャンバAは、FMSトークン5175を取得し、FMSまたは体積測定トークンを保持する。チャンバAが体積測定トークンを所有しているため、チャンバAの体積測定が完了するまで、チャンバBは待機しなければならない。チャンバAの体積測定中のある時点において、チャンバAは、ストローク開始トークン5176を取得し、ストローク開始トークンを保持する。これは、
図192および
図194に関連する上述した記載と同様である。
【0905】
チャンバAの体積測定が終了すると5177、チャンバは、FMSまたは体積測定トークン5179を解放し、ストローク開始トークン5181を解放する。そして、チャンバBは、FMSまたは体積測定トークンを取得し5183、体積測定を行う5185。チャンバBの体積測定は、チャンバAと同様に行うことができる。
【0906】
実施形態例では、チャンバAの体積測定が行われた後、チャンバは、任意選択的に周囲圧力に向かって、または実施形態例では、大気圧もしくは周囲圧力の範囲内に通気される5187。負圧ストロークの前にチャンバ圧力を周囲圧力に向かって低下させるために必要な作業の何らかを行うように、大気圧を利用することにより、空気圧ポンプに対する負荷を低減させるために、チャンバを通気することができる。別の場所で述べたように、チャンバ内の流体に対するまたは出口弁閉鎖に対する背圧の影響を軽減し、後続する体積測定の正確さを向上させるのに役立つために、正圧ストロークの後にかつFMS測定プリチャージの前にもまた、通気を行うことができる。
【0907】
チャンバAは、任意選択的に通気されると、ストローク開始チェック5189を行うことができる。チャンバBは、体積測定を行うプロセスにあるが、ストローク開始トークンをまだ受け取っていない(ストローク開始トークンフィールド5186を参照)。その結果、チャンバAによって行われるストローク開始チェック5189が成功する。チャンバAは、充填バス5191を取得し、充填ストロークを開始する。これは、充填バストークンがチャンバAによって保持されている間、チャンバA圧力トレース5133の負圧によって示される。
【0908】
チャンバBは、その体積測定5193を終了すると、任意選択的に、チャンバAと同様にチャンバを通気することができる5195。チャンバBが通気を完了した後、充填バストークン(充填バストークンフィールド5180を参照)がチャンバAに所有されているため、チャンバBは、充填バストークを取得することができない。その結果、チャンバBは、チャンバAによって充填バストークンが解放されるまで待機しなければならない5197。チャンバB圧力トレース5135によって示すように、チャンバが、充填バストークンが利用可能になるのを待機する間、圧力は一定のままである。チャンバAがその充填ストロークを終了し、充填バストークンを解放するとすぐに、チャンバBは、充填バストークンを取得し、充填ストロークを開始する。
【0909】
ここで主に
図196を参照すると、ストローク開始トークンおよび体積測定トークンを用いる圧送同期をグラフによって示す例としてのグラフ5199が示されている。これらのトークンの所有権ステータスは、それぞれ、SSトークンフィールド5186およびストローク開始チェックフィールド5188に示されている。例としてのグラフ5199に示す同期方式は、体積特定トークンおよびストローク開始トークンを採用して、対象となるポンプチャンバの別の体積測定の臨界期間中に他のチャンバにおける大きい圧力スイングを防止する。さらに、グラフ5198に示す同期方式例は、充填バストークンおよび送達バストークンを使用し、それらの所有権は、それぞれ充填バスフィールド5180および送達バスフィールド5182において識別される。例としてのグラフ5198は、一方
のチャンバが充填を終了し、別のチャンバが充填に移行する用意ができているときに、こうした同期方式がいかに動作するかを示す。このシナリオは、圧送手順全体を通して数回発生する可能性がある。送達ストロークを行っているチャンバ間の同様の移行もまた発生する可能性がある。例の目的で、グラフ5198は、チャンバAが(チャンバA圧力トレース5133によって示すように)充填ストロークを行っており、チャンバBが空であって(チャンバB圧力トレース5135に対して示すように)充填ストロークを行うのを待機している状態で、開始する。
【0910】
図示するように、チャンバAは、充填ストローク5201を完了すると、FMSまたは体積測定トークン5203を取得することができる。実施形態例では、チャンバAは、チャンバ圧力を周囲圧力の範囲内にする任意選択的な通気5205を行う前に、FMSまたは体積測定トークン5203を取得する。上述したように、たとえばポンプ実行時間を最小限にするように、任意選択的に通気を行うことができる。例としてのグラフ5198の充填バスフィールド5180に示すように、チャンバAは、充填ストローク5201を完了した後、期間5207にわたって充填バストークンを保持する。チャンバAに対する圧力トレース5133によって示すように、例としての期間5207は、チャンバAの圧力が周囲圧力の近くまたはその範囲内に通気されるために充分である。チャンバAは、十分に通気されると、充填バストークンを解放することができる5209。チャンバAの体積測定は、
図192および
図194に関連して上述したものと同様である。
【0911】
チャンバAによって充填バストークンが解放される5209と、チャンバBは、その後すぐに、ストローク開始チェック5211を行い、充填バストークン5213を取得することができる。チャンバB圧力トレース5135によって示すように、チャンバBは、充填バストークンを取得するとすぐに充填を開始する5215。チャンバBは、充填バストークンを保持し、例としてのグラフ5198の残りに対して充填ストロークを行い続ける。したがって、同期方式例では、充填バスは、一方のチャンバから、利用可能となるとすぐに別のチャンバに移行することができる。この迅速な移行により、バスがチャンバによって使用されていないときの時間の長さが最小限になるため、流体スループットを増大させることができる。送達バストークンに対する移行は同様に発生することができる。当業者には理解されるように、こうした同期方式は、送達バストークンがポンプチャンバによって所有されていない時間の長さを同様に最小限にする。これもまた、流体スロープットを増大させるのに役立つことができる。
【0912】
チャンバAに対する体積測定が完了すると5217、チャンバは、ストローク開始トークンを解放する5219。この時点で、チャンバAは、流体で満杯であり、送達スロトークを行う用意ができている。チャンバAは、ストローク開始チェック5221を行い、ストローク開始トークンが別のチャンバによって所有されていないため(ストローク開始トークンフィールド5186を参照)、チャンバAは、送達バストークン5223を取得し、送達ストローク5225を開始する。これは、チャンバが送達バストークンを所有している間、チャンバA圧力トレース5133の正圧によって示される。チャンバAは、送達バストークンを保持し5223、例としてのグラフ5199の残りに対して送達ストロークを行い続ける。
【0913】
ここで主に
図197を参照すると、ストローク開始トークンおよび体積測定トークンを用いる圧送同期をグラフによって示す例としてのグラフ5227が示されている。これらのトークンの所有権ステータスは、それぞれSSトークンフィールド5186およびストローク開始チェックフィールド5188に示されている。例としてのグラフ5227に示す同期方式は、体積測定トークンおよびストローク開始トークンを採用して、別の体積測定の臨界期間中のチャンバ内における大きい圧力スイングを防止する。さらに、グラフ5227に示す同期方式例は、充填バストークンおよび送達バストークンを使用し、それら
の所有権は、それぞれ充填バスフィールド5180および送達バスフィールド5182において識別される。例としてのグラフ5227は、圧送手順が完了し、圧送が停止したときに同期方式がいかに動作することができるかを示す。圧送が停止する前の最終ストロークを、終端ストロークと呼ぶことができる。こうしたシナリオは、たとえば、目標体積が圧送宛先に送達されたときに発生する可能性がある。例の目的で、グラフ5227は、チャンバAが(チャンバA圧力トレース5133によって示すように)送達ストロークを行っており、チャンバBが(チャンバB圧力トレース5135に対して示すように)充填ストロークを行っている状態で開始する。例としてのグラフ5227において、コントローラは、チャンバAからの現送達ストローク中に、目標体積に達成することを認識している。
【0914】
図示するように、チャンバBは、充填ストローク5229を完了すると、FMSまたは体積測定トークン5231を取得することができる。実施形態例では、チャンバBは、チャンバ圧力を周囲圧力の範囲内にする任意選択的な通気5233を行う前に、FMSまたは体積測定トークンを取得する5231。例としてのグラフ5227の充填バスフィールド5180に示すように、チャンバBは、充填ストロークを完了した5229後、期間5235にわたって充填バストークンを保持する。チャンバBに対する圧力トレース5133によって示すように、例としての期間5235は、チャンバBの圧力が周囲圧力の近くまたはその範囲内に通気されるのに十分である。チャンバBは、十分に通気されると、充填バストークン5237を解放することができる。チャンバBの体積測定は、
図192および
図194に関連して上述した体積測定と同様であり得る。チャンバBは、その体積測定を終了する5239と、圧送動作を停止し、所有するいかなるトークンも解放し、コントローラが圧送を再開するように命令するのを待機することができる。
【0915】
チャンバAは、その送達ストロークを続け、目標体積が圧送宛先に送達されるまで、送達バストークンを保持する(送達バストークンフィールド5180を参照)。例としてのグラフ5227において、コントローラは、目標体積に達したことを示す、送達ストローク中に維持される送達済み体積推定値に基づいて、送達ストロークを停止するように命令する5241。こうした体積推定値については、本明細書の別の場所に記載されている(たとえば、
図114〜
図121を参照)。他の実施形態では、コントローラは、単にストロークが終了するのを可能にすることができる。
【0916】
送達体積推定値が、目標送達体積に達したことを示す場合、チャンバからの送達ストロークは終了することができる5243。この時点で、チャンバは、FMSトークン5245を取得し、ポンピングチャンバ内に引き込まれた体積の量を測定することができる。チャンバAはまた、いくつかの実施形態では、この時点で送達バストークンもまた解放することができる。例としてのグラフ5227の送達バスフィールド5182に示すように、チャンバAは、送達ストローク5243を完了した後、期間5247にわたって送達バストークンを保持する。チャンバAに対する圧力トレース5133によって示すように、例としての期間5247は、チャンバAの圧力が周囲圧力の近くまで低下するのに十分である。任意選択的に、体積測定のために再加圧される前に、期間5247の間、周囲圧力に向かってチャンバを通気することができる。この通気手順により、正圧リザーバポンプの仕事量が増大する可能性があるが、それは、ポンピングチャンバおよびその出口弁に存在する可能性があるいかなる背圧も解放するという利益のために行う。そして、チャンバAにおいて体積測定5249を行うことができ、この測定が完了すると、チャンバは、圧送動作を停止し、所有するトークンを解放し、コントローラが圧送を再開するように命令するのを待機することができる。
【0917】
ここで主に
図198および
図199を参照すると、2つの例としてのグラフ5178(
図198)および5251(
図199)が示されている。例としてのグラフ5178は、
圧送チャンバの圧力(kPa)とともに、複数のポンプストロークにわたる複数のリソースおよびトークンの所有権ステータスを詳述する。複数の圧送ストロークは、空のポンピングチャンバに対して行われる(
図195に関して記載した)開始ストローク、送達および充填移行(
図196に関連して記載した充填移行)、および(
図197に示す)目標体積が送達されるときに行われる終端ストロークを含む。
【0918】
具体的には、例としてのグラフ5178は、充填バスフィールド5180、送達バスフィールド5182、FMSトークンフィールド5184、およびSSトークンフィールド5186を示し、これらのリソースまたはトークンの各々が所定のチャンバによって所有されるときを示す。グラフ5178はまた、各ポンピングチャンバがストローク開始チェックを行うときを示すストローク開始チェックフィールド5188も有する。例示の目的で、
図199に示すグラフ5178は、2つのポンピングチャンバを備えたポンピングカセットに対するものであり、このプロセスは、複数のダイヤフラムポンプを備えたカセットに同様に一般化することができる。ポンピングチャンバAの圧力は、グラフ5178の上部において線5190によって示されている。ポンピングチャンバBの圧力は、グラフ5178の下部において線5192によって示されている。例としてのグラフ5178において、ヒータバッグから患者に流体を圧送ポンピングチャンバがプロットされている。ポンピングチャンバを識別することを可能にするために、ポンプチャンバBによるトークン所有を示すグラフの要素は、ポンプチャンバAに関連づけられたものより太い線で示されている。
【0919】
図199に示すグラフ5251は、
図198に示すものと同じであるが、圧力トレース(線5190および5192)が互いに重なっているという点が異なる。以下の説明は、グラフ5178(
図198)を直接参照するが、その説明は、グラフ5178(
図198)および5251(
図199)の両方に適用される。グラフ5251(
図199)で使用する参照信号は、
図198に関連して使用し記載したものと同じである。
【0920】
グラフまたはプロット5178は、両ポンプチャンバが、初期FMS測定がいずれかに対して行われる前に空の状態で開始する。プロット5178のこの部分は、「圧送開始」と表記された破線ボックスによって示す。複数の開始ストロークを詳述する例としてのグラフについては、
図195に関連して詳細に記載している。図示するように、ポンプチャンバAは、FMS測定を行うことによって開始する。図示するように、チャンバは、FMS測定を行っている間にFMSトークンを制御する。チャンバAがFMSトークンの所有権を有するため、チャンバBは、FMS測定を行うために待機しなければならない。図示するように、チャンバAは、FMS測定の一部に対してSSトークンの所有権を取得する。例としてのプロット5178において、この部分は、FMS測定の平衡期間を含む。完了すると、チャンバAはFMSトークンを解放し、FMSトークンは、その後、チャンバBによって所有または取得され、チャンバBは、それ自体のFMS測定を行う。
【0921】
チャンバBがFMSを行っている間、ただしチャンバBがSSトークンの所有権を取得する前、チャンバAは、SSCフィールド5188に示すようにストローク開始チェックを行う。ストローク開始トークンが利用可能であるため、チャンバAは充填ストロークを開始する。この充填ストロークは、ストローク開始トークンがチャンバBによって保持された後に続けることができる。充填バスフィールド5180に示すように、チャンバAは、充填リソースまたはトークンの所有権を取得し、その充填ストロークを終了するまで充填バスの所有権を保持する。
【0922】
チャンバBは、そのFMS測定を完了すると、充填ストロークを開始する用意ができている。しかしながら、チャンバBは、充填トークンが利用不可能であるため、充填ストロークを開始することができない。チャンバBは、「充填移行」と表記された破線ボックス
に示すように、充填ストロークを開始するためにチャンバAによって充填リソースが解放されるまで、待機しなければならない。充填移行例については、
図196に関して詳細に上述している。充填バスが利用可能となるとすぐに、チャンバBは、ストローク開始チェックを行い、充填トークンの所有権を取得し、その充填ストロークを開始する。チャンバAは、この充填ストロークが行われている間、FMS測定を行う。FMS測定を完了した後、チャンバは、送達ストロークにおいて充填されたチャンバ体積を送達する用意ができている。チャンバBがその充填ストロークを依然として行っている間、チャンバAは、ストローク開始チェックを行い、送達バスフィールド5182に示すように送達トークンの所有権を取得し、送達ストロークを開始する。
【0923】
チャンバBは、その充填ストロークを終了し、FMS測定を行って充填された体積を求めた後、送達ストロークを開始する用意ができている。しかしながら、チャンバBは、送達トークンが利用可能でないため、送達ストロークを開始することができない。チャンバBは、送達ストロークを開始するためにチャンバAによって送達トークンが解放されるまで待機しなければならない。送達トークンが利用可能となるとすぐに、チャンバBは、ストローク開始チェックを行い、送達トークの所有権を取得し、その送達ストロークを開始する。この交互圧送プロセスは、所望の体積の流体を移動させるために必要な長さ続くことができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、(たとえば、ユーザインタフェースを通して)サイクラとの対話と介してこのプロセスを同様に停止または一時停止することができる。
【0924】
図示するように、
図198に示す圧送同期方式は、いかなる流体圧送も発生していない時間の長さを低減させる役割を果たすため、効率的である。送達バスフィールド5182に示すように、第1送達ストロークが開始した後、流体をポンプからその宛先に送達する送達バスが占有されていない時間が比較的わずかである。さらに、これは、各FMS測定の規定された部分の間に、大きい圧力スイングを回避すると同時に、達成される。
【0925】
上述したように、所望の体積の流体が移動すると、またはユーザが圧送を一時停止するかまたは停止すると、圧送動作は終了することができる。例としてのプロット5178において、これは、「圧送停止」と表記された破線ボックスに示されている。圧送手順の終端ストロークを詳述するグラフ例については、
図197に関して詳細に記載している。チャンバは、それらの現圧送ストロークを終了すると、FMS測定を行い、次のストロークに対してトークンを取得するように試みない。いくつかの実施形態では、チャンバは、それらの現ストロークが完了するまで、圧送を停止することができる。たとえば、チャンバは、ストロークの進行にわたって送達される体積を瞬時に推定することができる。所望の量の体積または目標体積が移動すると、FMSを行うことができ、圧送動作を停止することができる。
【0926】
別法として、移動した流体の体積が所望の体積に近くなると、チャンバは、FMS測定値が取得された後に部分ストロークを行うことができる。たとえば、サイクラによって流れが停止する前の短い期間、チャンバを、圧力源に接続するかまたは圧送圧力で維持することができる。そして、FMS測定を行うことができる。短い期間は、実質的にフルストローク容積を具現化するために必要である時間の一部であり得る。したがって、目標体積に達するまで、複数の部分ストロークとそれに続くFMS測定を行うことができる。
組込み正圧リザーバおよび負圧リザーバ
図200は、装置用のハウジングまたは筐体4200の一部の底面、正面、左斜視図例を示す。この実施形態では、ハウジング部分は装置のハウジングの底部を含む。装置は、いくつかの実施形態では、腹膜透析サイクラまたは他の透析機であり得る。装置は、血液透析機、心肺バイパス機、または機械または装置のさまざまな動作に対して正圧リザーバまたは負圧リザーバが必要である任意の流体送達機であり得る。圧力リザーバは、装置の
ハウジングの一部としてモールディングすることができ、空間のあり得る節約を可能にし、装置がより小さい設置場所を占有するのを可能にし、これは、携帯型装置に対して特に有利である。図示するように、ハウジング部分4200は、多目的構成要素として形成される。すなわち、ハウジング部分4200は、装置の構成要素を封入する構造としての役割を果たすことができるだけでなく、装置の構成要素または構成要素の一部を含むように構造化することができる。これらの構成要素または構成要素の一部は、ハウジング部分4200構造の組込み、一体化部分であり得る。たとえば、ハウジング部分4200は、圧力タンク、リザーバもしくは容器、手持ちもしくは把持構造、さまざまなベイ、コンパートメントおよび/または構成要素保持機構等を含むかまたはその一部を含むように、形成することができる。
【0927】
ハウジング部分4200は、任意の好適な方法で形成することができる。具体的な実施形態では、ハウジング部分4200は、射出成形することができる。こうした実施形態では、ハウジング部分4200に対する型(図示せず)は、ハウジング部分4200の一部として含まれる各所望の構成要素または各所望の構成要素の一部を形成するような形状とすることができる。ハウジング部分4200はまた、RIM成形し、圧縮成形し、3D印刷し、材料添加プロセスで作製し、ソリッドストックから機械加工し、真空もしくは圧力成形することも可能である。さらに、いくつかの実施形態では、ハウジング部分4200は、Noryl等の構造フォームから構成することができる。
【0928】
図200に示す実施形態例に示すように、ハウジング部分4200は、圧力リザーバ4201の一部を含む。完全に組み立てられると、封止部材または封止アセンブリ4204(
図201を参照)が、圧力リザーバ4201の一部を覆い、圧力リザーバ4201を完成することができる。実施形態例では、ハウジング部分4200は、単一圧力リザーバ4201の一部を含む。他の実施形態では、ハウジング部分4200は、任意の好適な数の圧力リザーバを可能にするように構成することができる。さまざな実施形態では、ハウジング部分4200は、ハウジング部分4202の任意の好適な位置に圧力リザーバ4201を配置することができるように形成することができる。装置が完全に組み立てられると筐体内に収容される他の構成用途に関連するあらゆる空間要件または要求に対応する位置に、圧力リザーバ4201を配置することが望ましい場合がある。
【0929】
図示するように、圧力リザーバ4201の一部は、例としてのハウジング部分4200の底面内に凹状に設けられている。他の実施形態では、圧力リザーバ4201の一部は、たとえば、ハウジング部分4200の表面から部分的にまたは全体的に盛り上がっている場合がある。さらに、ハウジング部分4200の一部として形成される圧力リザーバ4200の一部は、空間効率が高いような形状または寸法とすることができる。実施形態例では、圧力リザーバ4201は、およそ矩形の寸法を有している。さまざまな実施形態では、圧力リザーバは丸いか、または、圧力リザーバ4201の構造の頑強性を向上させるようにより劇的に丸い縁を含むことができる。これは、たとえば、圧力リザーバ4201が比較的高いかまたは低い圧力を収容するように意図されている場合、または圧力リザーバ4201が物理的応力、衝撃等を受ける可能性がある場合に望ましい場合がある。さらに、いくつかの実施形態では、圧力リザーバ4201構造は、限定されないが、支柱、丸天井、控え壁、逆控え壁、リブ等、1つまたは複数の支持構造を含むように形成することができる。
【0930】
図200に示す例としての圧力リザーバ4201は、ポート4205を含む。ポート4205は、ハウジング部分4200の壁を通して延在する空隙であり得る。ポート4205は、圧力リザーバ4201からの流体連通を可能にすることができる。さまざまな実施形態において、ハウジング部分4200の上側においてポート4205に管(図示せず)を(永久的にまたは継手により)封止することができる。したがって、圧力リザーバ42
01は、液圧系統または空気圧系統のための圧力源として使用することができる。さらに、圧力リザーバ4201の圧力を調整するように、圧力リザーバ4201内外に流体を圧送することができる。いくつかの実施形態では、ポート4205を使用して、圧力リザーバ4201の圧力を(たとえば、ポンプを使用して)調整し、かつ空気圧系統または液圧系統の構成要素の所望の圧力で流体を提供することができる。いくつかの実施形態では、圧力リザーバは、2つのポート4205を含むことができる。一方のポート4205は、圧力調整/維持に使用することができ、他方は、空気圧系統の構成要素に所望の圧力で流体を提供するために使用することができる。圧力リザーバ4201を空気圧系統の所望の構成要素と連通させるために必要な管の量および/または管の経路設定を最小限にするように、ポート4205を配置することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、ポート4205は、装置が完全に組み立てられたときに液圧式マニホールドまたは空気圧式マニホールドに空間的に近接するかまたは隣接するように、配置することができる。
【0931】
ここで
図201もまた参照すると、
図200に示す例としてのハウジング部分4200の別の底面、正面、左斜視図が示されている。図示するように、ハウジング部分4200は、組立状態にあり、ハウジング4200に封止部材4203が取り付けられて、圧力リザーバ4201を完成している。図示するように、封止部材4203は、実施形態例では、カバープレートとして示されている。他の実施形態では、封止部材4203は異なり得る。
【0932】
ハウジング部分4200に封止部材4203をあらゆる好適な方法で取り付けることができる。いくつかの実施形態では、封止部材4203は、ハウジング部分4200に取外し可能に取り付けることができ、またはハウジング部分4200に永久的に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の好適な締結具を用いて封止部材4203を取り付けることができる。こうした実施形態では、封止部材とハウジング部分4200との間にガスケット(図示せず)を配置することができる。こうした実施形態では、ガスケットは、種々の好適なガスケットのうちの任意のものであり得る。たとえば、ガスケットは、平形ガスケット、フォームインプレース(form−in−place)ガスケット、またはハウジング部分と封止部材との間の接触面に沿うように設計されたスケルトン(skeletal)ガスケットであり得る。ガスケットは、エラストマ材料、または、ハウジング部分の壁と封止部材との間に流体シールを形成するのに好適な他の圧縮性材料を含むことができる。ガスケットが含まれる実施形態では、封止部材4203は、ガスケットを保持しかつ圧縮する役割を果たすとともにシールを形成するのに役立つ1つまたは複数のリブ機構を含むことができる。さらに、ハウジング部分4200に、封止部材4203の1つまたは複数のリブと協働することができる、凹部またはチャネル等の協働する機構を含めることができる。別法として、いくつかの実施形態では、ハウジング部分4200にリブを含めることができる。こうした実施形態では、封止部材に、溝またはチャネル等の協働する機構を含めることができる。さまざまな実施形態では、ガスケットの代わりにOリングを用いることができる。封止部材4203を取り外し可能にすることは、装置のモジュール性を向上させることができるため、望ましい場合がある。すなわち、封止部材4203に障害が生じた場合に、封止部材4203を取り外して交換することができる。したがって、ハウジング部分4200全体を廃棄する必要がない。
【0933】
いくつかの実施形態では、封止部材4203をハウジング部分4200に接着剤または糊を介して取り付けることができる。いくつかの実施形態では、溶剤結合を用いることができる。いくつかの実施形態では、超音波溶接を介してハウジング部分4200に封止部材4203を取り付けることができる。こうした実施形態では、ハウジング部分4200および封止部材4203に使用される一方または両方の材料は、容易に超音波溶接されることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、振動溶接、ホットプレート溶接またはレーザ溶接を用いて、ハウジング部分4200に封止部材4203を取り付けること
ができる。レーザ溶接実施形態では、封止部材4203は、好ましくは、使用されるレーザの波長において光学的に透明である。ハウジング部分4200は、好ましくは、レーザの波長に対して吸収性である。別法として、レーザ溶接の前に、封止部材4203とハウジング部分4200との間に、レーザ波長に対して吸収性である材料を配置することができる。そして、この材料は、レーザによって溶融すると封止部材4203およびハウジング部分4200を合わせて溶接する役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、ハウジング部分4200に封止部材4203をオーバモールドすることができる。いくつかの実施形態では、ハウジング部分4200の適所に封止部材4203をスナップフィットまたは圧入することができる。こうした実施形態では、ガスケットを使用することができる。
【0934】
いくつかの実施形態では、封止部材4203は、堅いかまたは弾性率の高い材料から作製することができる。別法としてまたはさらに、封止部材4203は、圧力リザーバ4201がその最大または最小圧力にあるときに著しく変形しないように好適に厚い場合がある。封止部材2403は、アルミニウムまたは強化プラスチック材料から構成することができる。いくつかの実施形態では、封止部材4203は、不透明部分の上にオーバモールドされた透明な窓部分を含むことができる。別法として、封止部材4203全体を透明な材料から作製することができる。
【0935】
図202は、ハウジング部分4200の具体的な例の別の底面、正面、左側斜視図を示す。図示するように、ハウジング部分4200は、複数の圧力リザーバ区画4202a、4202bを含む。(圧力リザーバ区画4202aおよび4202bは、別法として、デュアル圧力リザーバ実施形態では、単に2つの別個の圧力リザーバ4204aおよび4204bとして示すことができる。)この例では、デュアル圧力リザーバは、ハウジング部分4200の一体構成要素として形成され、デュアル圧力リザーバは、正に加圧された空気を貯蔵する第1区画と負に加圧された空気を貯蔵する第2区画とを備え、2つの区画は、仕切り壁4204によって互いに隔離されている。他の実施形態では、圧力リザーバ区画は、2つの異なる正圧の空気、または2つの異なる負圧の空気を貯蔵するように構成することができる。他の実施形態では、3つ以上の区画がある場合があり、各々、異なる圧力、すなわち正圧または負圧で空気または別の気体を貯蔵するように構成される。実施形態例では、圧力リザーバ区画4202a、4202bは、バッフルまたは仕切り4204によって互いに分離されるかまたは隔離されている。実施形態例では、仕切り4204は、ハウジング部分4200の一体部として形成される。この例では、仕切り4204は、圧力リザーバ区画4202a、4202bが実質的に等しい容積であり、実質的に同じ全体形状を有するように配置されるが、それらは、各圧力リザーバに対する装置の動作要件に応じて異なるサイズまたは形状であり得る。
【0936】
仕切り4204は、圧力リザーバ区画4202a、4202bの壁の強度を増大させるのに役立つことができる。実施形態例では、仕切り4204は、ハウジング部分2400の底面に対して概して垂直な方向に延在するおよそ平面の突起である。他の実施形態では、仕切り4204は、圧力リザーバの剛性または頑強性を増大させるのに役立つように湾曲部または曲がり部を含むことができる。他の実施形態では、仕切り4204は、より多くの圧力リザーバを画定するのに役立つことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、仕切り4204は、「X」または「Y」の形状をとることができる。
【0937】
図示するように、
図202の実施形態例は、複数の支持部材または補強材4206をさらに含む。支持部材または補強材4206は、ハウジング部分4200の一体部分として形成することができる。他の実施形態では、異なる数の支持部材4206を含めることができる。実施形態例では、支持部材4206はリブとして示されている。上述したように、支持部材4206の他の変形を使用することができる。図示するように、支持部材42
06は、圧力リザーバ4202a、4202bの側壁または周囲壁から仕切り4204までわたることができる。他の実施形態、特にリブではない支持部材4206を含む実施形態では、支持部材4206は、圧力リザーバ4202a、4202bの側壁と仕切り4204との間の距離全体を延在しない場合がある。支持部材4206は、実質的に平面である場合があり、ハウジング部分4200の底面に対して概して垂直な方向に延在することができる。支持部材4206は、限定されないが以下を含む複数の機能を提供することができる。すなわち、圧力リザーバの剛性を増大させること、仕切り2404の剛性を増大させること、圧力下で圧力リザーバの壁または周囲壁が曲がらないようにすること、および圧力リザーバが圧力下にあるときにガスケットが変位しないようにすることである。補強材は、形状が平面である必要はなく、たとえば、リザーバ区画の側壁または周囲壁から対向する仕切り壁まで延在する棒形状であり得る。
【0938】
実施形態例では、支持部材4206は、対向する側または各支持部材4206における容積の間の流体連通を可能にするように構造化される。実施形態例では、支持部材4206は、仕切り4204の底部まで延在しない。これは、各支持部材4206の各側の容積が支持部材4206の反対側の容積と流体連通することを確実にするように行うことができる。いくつかの実施形態では、支持部材4206の一部は、仕切り2404の底面まで延在し、かつそれと実質的に同じ高さであり得る。他の実施形態では、支持部材4206は、支持部材4206の反対側の容積の間の流体連通を可能にする切取り部または開口部を含むことができる。実施形態例では、ハウジング部分4200の一部としてリップまたは棚状部4208も示されている。棚状部4208は、実施形態例では、圧力リザーバ4202a、4202bの一部を包囲する。棚状部4208は、封止部材に対する取付面としての役割を果たすことができる。実施形態例では、棚状部4208に複数のねじ穴が含まれる。組み立てられると、こうした孔に締結具をねじ込んで、ハウジング部4200に封止部材を結合することができる。または仕切り4204は、同じ目的で1つまたは複数のねじ穴を含むことができる。こうした実施形態では、図示するように、仕切り4204は、こうしたねじ穴の付近で厚化することができる。
【0939】
棚状部4208の外周部に沿って、隆起部4209を含めることができる。隆起部は、ハウジング部分4200の底面に対して実質的に垂直な方向にハウジング部分4200から突出する。隆起部4209は、組立中、封止部材の位置を決めるのに役立つような役割を果たすことができる。封止部材が取外し可能でない実施形態では、隆起部4209の表面に封止部材を接着、接合、溶接等を行うことができる。隆起部4209は、封止部材の厚さと実質的に同じかまたはそれより大きい高さを有することが望ましい場合がある。
【0940】
図203は、
図202に示す例としてのハウジング部分4200の組み立てられた、底面、正面、左斜視図を示す。図示するように、封止部材4207は、複数の締結具を介してハウジング部分4200に結合されている。実施形態例では、封止部材4207はカバープレートである。上述したように、いくつかの実施形態では、圧力リザーバの周囲にシールを形成するのに役立つように、封止部材とハウジング部分4200との間にガスケット、Oリング等を取り込むことができる。
【0941】
ここで
図202および
図204の両方を参照すると、各圧力リザーバ4202a、4202bは、1つまたは複数のポート4210a、4210bを含むことができる。ポート4210a、4210bは、実施形態例では、ハウジング部分4200の厚さ全体を通して延在する空隙である。ポート4210a、4210bにより、圧力リザーバ4202a、4202bを出入りする流体連通を可能にすることができる。さまざまな実施形態では、ハウジング部分4200の上側において、ポート4205に管(図示せず)を永久的に封止するかまたは可逆的に結合することができる。
図202および
図203に示すハウジング部分4200の上面図を
図205に示す。図示するように、こうした管の取付を容易
にするように、取付機構4211(たとえば、ニップル)を含めることができる。こうした機構はまた、ハウジング部分4200と一体的に形成することも可能である。実施形態例では、取付機構4211は、およそ円筒状または切頭円錐形である。他の実施形態では、取付機構4211は、かえし付き中空突起であり得る。また
図205に示すように、各ポート4210a、4210bに、それが接続されるチャンバまたはリザーバ4202a、4202bを示すしるしを関連づけることができる。実施形態例では、正圧リザーバおよびそれに対する負圧リザーバを示すために「+」および「−」が含められる。いくつかの実施形態では、しるしは、高圧チャンバまたはリザーバへの接続およびそれに対する低圧リザーバへの接続を示すために、「高」および「低」を示すことができる。
【0942】
管が取付機構4211に取り付けられた状態で、圧力リザーバ4202a、4202bを、空気圧系統または液圧系統用の圧力源として使用することができる。さらに、圧力リザーバ4202a、4202bの圧力を調整するように、圧力リザーバ4202a、4202b内外に流体を圧送することができる。いくつかの実施形態では、同じポート4210a、4210bを使用して、各圧力リザーバ4202a、4202bの圧力を(たとえば、ポンプを使用して)調整するとともに、空気圧系統または液圧系統の構成要素に所望の圧力で流体を提供することができる。いくつかの実施形態では、圧力リザーバは、2つのポートを含むことができる。一方のポートは、圧力調整/維持に使用することができ、他方は、空気圧系統または液圧系統の構成要素に所望の圧力で流体を提供するために使用することができる。ポート4210a、4210bは、圧力リザーバ4202a、4202bを空気圧系統の所望の構成要素と連通させるために必要な管の量および/または管の経路設定を最小限にするように配置することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、ポート4210a、4210bは、空気圧マニホールドまたは液圧マニホールドと空間的に近接するかまたは連続するように配置することができる。
【0943】
いくつかの実施形態では、装置の他の構成要素を、ハウジングまたはハウジング部分4200を一体的に形成することができる。図示するように、
図202における実施形態例では、手掛け4214a、4214bがハウジング部分4200の一体部分として含まれる。手掛け4214a、4214bは、ハウジング部分4200の底面に凹状に形成されている。手掛け4214a、4214bは、装置を支持するのに役立つことができる。さらに、1つまたは複数の格納コンパートメント4212を、ハウジング部分4200の一体部分として形成することができる。こうした格納コンパートメント4212は、たとえば、装置に電力を供給するように使用することができるオンボード電源(たとえば、バッテリ)を収容するために使用することができる。ここで
図203も参照すると、格納コンパートメント内に格納された任意のものを保持するために格納コンパートメント4212の上にカバー4213を結合することができる。いくつかの実施形態では、格納コンパートメント4212は、組み立てられた装置の内部にアクセスできるようにする空隙4215(
図204を参照)等を有することができる。
【0944】
図205に示すハウジング部分4200の上面、正面、右斜視図を参照すると、ハウジング部分4200と一体的に形成された複数の追加の機構が示されている。たとえば、ポンプ保持機構4220が、ハウジング部分4200の一体形成部分として示されている。ポンプ保持機構4220は、実施形態例では、ハウジング部分4200の上面に対して実質的に垂直な角度でハウジング部分4200の上面から延在する、四方が壁のおよそ矩形の構造である。ポンプ保持機構4220は、装置のポンプ構成要素を保持機構4220内に格納することができるような寸法とすることができる。いくつかの実施形態では、ポンプ保持機構4220を、フォーム、弾性材料および/または消音材料で裏打ちすることができる。これは、ポンプ構成要素を運転するときに発生するノイズを低減させるのに役立つことができる。
【0945】
図205における実施形態例には、マニホールド保持機構4222も示す。図示するように、マニホールド保持機構4222は、ハウジング部分4200の一体形成部分である。マニホールド保持機構4222は、ハウジング部分4200の上面に対して実質的に垂直な角度でハウジング部分4200の上面から延在する、四方が壁のおよそ矩形の構造である。マニホールド保持機構4222は、装置用のマニホールドをマニホールド保持機構4222の壁内に配置することができるような寸法とすることができる。また、図示するように、マニホールド保持機構4222は、複数のオーガナイザ機構4224を含む。これらのオーガナイザ機構4224は、マニホールドとの間の管を整理して適所に保持するのに役立つような役割を果たすことができる。実施形態例では、オーガナイザ機構4224は、マニホールド保持機構4222の上縁に凹状に形成されている。
【0946】
図206は、圧力リザーバの容積を封止するようにハウジング部分に取り付けることができる、封止部材、カバープレートまたは蓋4230の底面斜視図を示す。図示するように、封止部材、カバープレートまたは蓋4230は、1つまたは複数の支持部材または補強材4232を含むことができる。
図84における具体的な実施形態例では、6つの支持部材または補強材4232がある。実施形態例では、支持部材4232は、リブとして示されている。図示するように、封止部材4230の中間または中心面に沿って支持部材の間に間隙がある。この間隙は、
図202の仕切り4204等の仕切りが支持部材4232の間に嵌まることができるようなサイズとすることができる。カバープレートが単一圧力リザーバ用である実施形態では、こうした間隙を含める必要はない。支持部材4232は、封止部材4230に対して強度または剛性を提供するのに役立つことができる。さらに、支持部材4232は、圧力下にあるときに圧力リザーバの壁が変形しないようにすることができる。たとえば、支持部材4232は、圧力リザーバが負圧下にあるときに圧力リザーバの側壁が曲がらないようにすることができる。いくつかの実施形態では、支持部材4232は、少なくとも1つのあり継ぎ機構を含むことができる。こうした機構は、たとえば、支持部材4232の側縁に沿って位置することができ、圧力リザーバの一部として含まれる協働するあり継ぎ機構に挿入することができる。したがって、あり継ぎ機構は、たとえば、圧力リザーバが正圧下にあるときに圧力リザーバの側壁が外側に曲がらないようにする役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、溶剤結合、超音波、化学もしくはレーザ溶接、または他の任意の好適な手段を介して、圧力リザーバおよび/または仕切りの壁に指示部材4232を取り付けることができる。図示するように、支持部材4232は、封止部材4230の縁部までは延在していない。これにより、封止部材4230は、
図202に示す棚状部4208等のハウジング部分の棚状部の上に着座することができる。
【0947】
さらに、いくつかの実施形態では、支持部材は、組立中に圧力リザーバ内に配置することができる独立型構成要素として含めることができる。こうした実施形態では、組立中に圧力リザーバの表面に支持部材を取り付けることができる。
【0948】
いくつかの実施形態では、圧力リザーバが同心であるように圧力リザーバを配置することが望ましい場合がある。1つの包囲された圧力リザーバは、別の包囲する圧力リザーバの設置場所内にあり得る。さまざまな実施形態では、圧力リザーバは、別の設置場所内にあり得るが、必ずしも同心ではない。圧力リザーバは、実質的に等しい容積である場合もあればそうでない場合もある。さらに、いくつかの実施形態では、圧力リザーバを異なる寸法とすることができる。たとえば、一方の圧力リザーバは比較的浅くかつ広い場合があり、他方のリザーバは比較的薄くかつ深い場合があるが、両リザーバは実質的に等しい容積を有することができる。
【0949】
こうした圧力リザーバは、完全に組み立てられたときにリザーバを互いから流体的に隔離する仕切りによって分離することができる。仕切りは、任意の種々の閉鎖形状の形態を
とることができる。圧力リザーバの容積を封止するために、封止部材、いくつかの実施形態では、ガスケットおよび/またはOリングを使用することも可能である。封止部材はまた、圧力リザーバの1つまたは複数の壁を画定することも可能である。
【0950】
こうした圧力リザーバを異なる圧力(たとえば、正圧および負圧)に加圧することができる。包囲する圧力リザーバは負圧で維持することができ、包囲される圧力リザーバは正圧で維持することができる。さらに、包囲する圧力リザーバの上にある封止部材の部分の表面積は、包囲される圧力リザーバの表面積より大きい可能性がある。したがって、包囲する圧力リザーバ内の負圧は、封止部材を圧力リザーバと封止関係になるように吸引する役割を果たすことができる。
【0951】
図207は、複数の同心圧力リザーバ4242、4244の部分を含むハウジング構造4240の実施形態の底面斜視図を示す。例としての構造4240は、本技術分野において既知である任意の好適な方法で形成することができる。具体的な実施形態では、こうした構造4240は、射出成形、RIM成形、圧縮成形、3D印刷、材料添加プロセスでの作製、ソリッドストックからの機械加工、真空または圧力成形等を施すことができる。さらに、いくつかの実施形態では、構造4240は、Noryl等の構造フォームから構築することができる。上述したように、いくつかの実施形態では、筐体の一体形成部分または筐体の一部として構造を含めることができる。完全に組み立てられると、カバープレート等の封止部材または封止アセンブリが、圧力リザーバ4242、4244を完全に封止するように圧力リザーバ4242、4244の開放部分を覆うことができる。こうした封止部材を上述したように取り付けることができる。
【0952】
実施形態例では、圧力リザーバ4242、4244は、同心状に配置される。一方の圧力リザーバ4244は、圧力リザーバ4242の他方の設置場所内に配置される。圧力リザーバ4242、4244は、実施形態例では、およそ矩形の設置場所を有する。他の実施形態では、圧力リザーバ4242、4244は、他の任意の好適な形状をとることができる。いくつかの実施形態では、圧力リザーバ4242、4244は、構造4240の頑強性を増大させるように丸い、半球状等であり得る。複数の圧力リザーバを、一方を他方の中に同心状に配置することができ、各内部リザーバは、それをその隣接する外部リザーバから分離する仕切り壁を有している。また、さまざまな実施形態では、圧力リザーバは、構造4240の頑強性を増大させる支持部材を含むことができる。支持部材を含む実施形態では、支持部材は、限定されないが本明細書に記載するもの等、任意の好適なさまざまな支持部材であり得る。
【0953】
2つの圧力リザーバ4242、4244の間に、仕切り4246が含まれる。仕切り4246は、封止部材またはカバープレートが適所にあるときに2つの圧力リザーバ4242、4244を流体的に隔離する役割を果たす。図示するように、仕切り4246は、構造4240の底面に対して実質的に垂直な方向に延在する壁状突起であり得る。実施形態例では、仕切り4246は、競技場形状である。他の実施形態では、仕切り4246は、限定されないが卵形、円形、多角形等を含む他の任意の閉鎖形状であり得る。いくつかの実施形態では、仕切り4246の底面に溝4248を凹状に設けることができる。実施形態例に示すように、溝4248は、仕切り4246の底面のおよそ中心に配置される。こうした溝4248は、Oリング(図示せず)を収容するようなサイズとすることができる。Oリングは、封止部材が適所にあるときに圧力リザーバ4242、4244の間に流体シールを生成するのに役立つことができる。
【0954】
他の実施形態では、たとえば、Oリングの代わりに好適なガスケットを使用することができる。さらに他の実施形態では、構造に(たとえば、溶接、接着剤、溶接結合等を介して)封止部材を直接取り付けることができる。こうした場合、溝4248は必要ではない
可能性がある。
【0955】
図示するように、外側圧力リザーバ4242の設置場所の面積は、内側圧力リザーバ4244の面積より大きい場合がある。各圧力リザーバ4242、4244の深さは、各圧力リザーバ4242、4244がおよそ等しい容積であることを確実にするように選択することができる。実施形態例では、内側圧力リザーバ4244の設置場所の面積は比較的小さいため、内側圧力リザーバ4244は、圧力リザーバ4242より大きい深さを有する。これにより、圧力リザーバ4242、4244の各々は比較的等しい容積を有することができる。この構成は、装置が各圧力リザーバ容積に対して有することができる異なる動作要件に応じて変化する可能性がある。
【0956】
いくつかの実施形態では、圧力リザーバ4242、4244のうちの一方は正圧を保持するように構成することができ、他方は負圧を保持するように構成される。こうした実施形態では、外側圧力リザーバ4242は負圧にあり、内側圧力リザーバ4244より大きい面積の設置場所を有することが望ましい場合がある。これにより、封止部材に対して、装置が完全に組み立てられ加圧されるときに、構造4240の上に封止部材を吸引するように作用する吸引力を有効に提供することができる。これはまた、封止部材が構造4240に取り付けられるときに生成されるシールの頑強性を増大させる役割も果たすことができる。実施形態では、カバープレートにおける外側リザーバの表面積は、カバープレートにおける内側リザーバの表面積より大きい。したがって、外側リザーバに負圧を充填することは、2つのリザーバに対してカバープレートをより有効に封止し、(外側リザーバの周囲壁における)カバープレートの外周部から、内側リザーバから外側リザーバを分離する仕切り壁まで、カバープレートの外側領域全体に対して均一に封止吸引を提供することができる。2つのリザーバの容積をおよそ等しく維持することが望まれる場合、カバープレートにおける表面積の差を補うように、内側リザーバを外側リザーバより深く構築することができる。
【0957】
図示するように、
図207の実施形態例では、突起4250は、内側圧力リザーバ4244の内部容積内に延在する。突起4250は、実施形態例では、実質的に円筒状であり、構造4240の底面に対して実質的に垂直な方向に延在する。図示するように、いくつかの実施形態では、突起4250は、ねじ穴を含むことができる。構造4240に封止部材を結合するために、この穴に締結具をねじ込むことができる。いくつかの実施形態では、突起4250は、突起4250の底面に凹状に設けられた溝4251を含むことができる。こうした溝4248は、Oリング(図示せず)を収容するようなサイズとすることができる。Oリングは、封止部材が適所にあるときに締結具の周囲に流体シールを生成するのに役立つことができる。
【0958】
実施形態例では、構造4240の一部としてリップまたは棚状部4252も示されている。棚状部4252は、実施形態例では、圧力リザーバ4242、4244の一部を包囲している。棚状部4252は、封止部材に対する取付面としての役割を果たすことができる。実施形態例では、棚状部4252に複数のねじ穴が含まれる。組み立てられると、こうした穴に締結具をねじ込んで、封止部材を構造4240に結合することができる。いくつかの実施形態では、仕切り4246が、同じ目的で1つまたは複数のねじ穴を含むことができる。こうした実施形態では、こうしたねじ穴の付近で仕切り4246を厚化することができる。
【0959】
図示するように、棚状部4252は、溝4254も含むことができる。溝4254は、任意の好適な方法で棚状部4252に凹状に設けることができる。実施形態例では、溝4254は、外側圧力リザーバ4242の外周部に対して基端側の棚状部4252内に凹状に設けられる。こうした溝4248は、Oリング(図示せず)を収容するようなサイズと
することができる。Oリングは、封止部材が適所にあるときに外側圧力リザーバ4242の周囲に流体シールを生成するのに役立つことができる。
【0960】
構造4240の底部の外周部の周囲に、盛り上がった隆起部4256があり得る。実施形態例では、隆起部4256は、構造4240の底面に対して実質的に垂直な方向に延在している。隆起部4256は、組立中に封止部材の位置を決めるのに役立つような役割を果たすことができる。封止部材が取外し可能ではない実施形態では、封止部材に対して、隆起部4256の表面に接着、接合、溶接等を行うことができる。隆起部4256が、いくつかの実施形態では封止部材の厚さと実質的に同じかまたはそれより大きい高さを有することが望ましい場合がある。
【0961】
ここで
図208もまた参照すると、圧力リザーバ4242、4244の各々に対して1つまたは複数のポート4258a、4258bを含めることができる。ポート4258a、4258bは、構造4240の厚さ全体を通して延在する空隙であり得る。たとえば、上述したように、ポート4258a、4258bに、管(図示せず)を封止または結合することができる。管が取り付けられた状態で、圧力リザーバ4242、4244を、空気圧系統または液圧系統のための圧力源として使用することができる。さらに、圧力リザーバ4242、4244の圧力を調整するように、圧力リザーバ4242、4244内外に流体を圧送することができる。いくつかの実施形態では、同じポート4258a、4258bを用いて、各圧力リザーバ4242、4244の圧力を(たとえば、ポンプを用いて)調整するとともに、空気圧系統または液圧系統の構成要素に所望の圧力で流体を提供することができる。いくつかの実施形態では、圧力リザーバは2つのポートを含むことができる。一方のポートは圧力調整/維持に使用することができ、他方のポートは、空気圧系統または液圧系統の構成要素に所望の圧力で流体を提供するために使用することができる。
【0962】
図209は、
図207および
図208に示す構造例の上面斜視図を示す。図示するように、内側圧力リザーバ4244の深さは、外側圧力リザーバ4242の深さより大きい。さらに、
図209では、ポート4258a、4258bが見える。図示するように、管の取付を容易にするように、取付機構4260を含めることができる。こうした機構は、構造4240に対して一体的に形成することができる。実施形態例では、取付機構4260は、およそ円筒状または切頭円錐形である。他の実施形態では、取付機構4260は、かえし付き突起であり得る。また
図209に示すように、各ポート4258a、4258bに、ポート4258a、4258bが流体連通を提供する圧力リザーバ4242、4244に関連づけられた圧力のタイプを示すしるしを関連づけることができる。実施形態例では、正圧リザーバおよび負圧リザーバを示すように、「+」および「−」が含められる。いくつかの実施形態では、しるしは、異なる加圧を有するリザーバを示すことができる。
【0963】
図210は、
図209の線209−209における例としての構造4240の断面図を示す。図示するように、
図210には、両方の圧力リザーバ4242、4244が示されている。仕切り4246、および仕切り4246の底面の溝4248もまた、棚状部4252、盛り上がった隆起部4256、および棚状部4252の溝4254とともに示されている。
ヒータバッグ補充
患者に送達するべき流体の加熱により、実質的な量のエネルギーが消費される。患者の体腔内に、または静脈内に流体を注入するように構成されたいかなる医療装置にも、送達される流体を収容するヒータバッグに作用する加熱装置の効率を向上させるコントローラを備えることができる。以下の説明は、このシステムを例示するために腹膜透析サイクラを用いるが、それは、ヒータバッグ内への流体の補充、患者への加熱流体の送達、流体が患者の体内に残る時間、ならびに患者からの流体の回収および排液を制御する任意の医療
注入装置に同様に適用することができる。透析液の注入に関して、場合によっては、溶液が、患者の体内への注入を待機している間に高温(たとえば、体温)で維持される時間の長さを低減することが有利である場合もある。
【0964】
透析機で使用することができる透析液には多くの異なるタイプがある。これらの溶液は、たとえば、異なる濃度の浸透剤、異なるタイプの浸透剤、異なる電解質成分、異なるpH緩衝成分、さまざまな添加剤等を有することができる。これらの溶液の相違により、溶液は、さまざまな条件下で異なるように作用することができる。この理由で、サイクラ挙動は、好ましくは、透析機で使用することができるいかなる溶液の必要にも対応する。別法として、使用されている溶液のタイプに応じて異なる挙動を有するように、サイクラコントローラをプログラムすることができる。たとえば、透析液において溶質の沈殿を防止するように、溶液タイプによっては、高温になると使用可能期間が制限される場合がある。こうした透析液特性に対応するように、サイクラ挙動を設計することができる。
【0965】
上述したように、サイクラのさまざまな実施形態は、ヒータアセンブリを含むことができ、ヒータアセンブリは、そのアセンブリに載っているヒータバッグ内の透析液を患者に送達する前に加熱する。ヒータアセンブリは、任意の1回の充填動作において標準的な患者に送達される溶液の量より大きい容積を有する溶液バッグまたはヒータバッグを受け入れるようなサイズである、ヒータパンまたはトラフを備えることができる。標準的な実施では、ヒータバッグは通常、実質的に充填されて維持され、バッグ内に収容される溶液は、規定された温度範囲内で維持される。
【0966】
いくつかの実施形態では、ヒータバッグ容積全体を実質的に透析液で充填し、それをその満杯状態でまたはその近くで維持する代わりに、ヒータバッグを透析液で部分的にのみ充填する場合がある。これにより、いくつかの充填動作、滞留動作および排液動作に対して大量の透析液が加熱されたままであることが回避される。したがって、患者に送達される前に透析液が高温で維持される時間の長さを最小限にすることができる。
【0967】
たとえば、2回のプログラムされた充填の体積より少ない溶液の量をヒータバッグに圧送することができる。この量は、次サイクル充填体積(たとえば、
図178の充填段階758の体積)と呼ぶことができる。次サイクル充填体積は、患者の腹膜腔の次の充填を完了するために必要な溶液の量を含むことができる。いくつかの実施形態では、次サイクル充填体積に、溶液のマージンまたはマージン体積を追加することも可能である。したがって、ヒータバッグには、次の患者充填を完了するために必要な溶液体積よりわずかに多い容積まで補充される。この追加の溶液は、患者の充填中のヒータバッグからの流量が、動作全体を通して比較的高いままであることを確実にするのに役立つことができ、予想より多くの溶液が必要である場合に備えてマージンとしての役割を果たすことができる。マージン体積は、たとえば、プログラムされた一定体積であるか、または充填体積(もしくは、別のプログラムされた治療体積パラメータ)のパーセンテージとして指定することができる。このようにヒータバッグを補充することにより、溶液が患者に送達される前に高温で保持される時間の長さを最小限にすることができる。例示的な実施形態では、補充体積を以下のように求めることができる。
【0968】
V
R=V
F+任意選択的なマージン−V
H
式中、V
Rは、ヒータバッグに移送される所定の補充体積であり、V
Fは、プログラムされた次の充填体積であり、V
Hは、補充動作の開始時のヒータバッグの体積である。
【0969】
ヒータバッグが補充される時刻もまた、その中身が高温で維持される時間の長さを最小限にするように予定することができる。これは、次の充填動作が予定される直前にヒータバッグを補充することによって行うことができる。たとえば、サイクルの滞留段階(たと
えば、
図178の滞留段階756)の最後の近くで、ヒータバッグを再充填することができる。いくつかの実施形態では、サイクラは、ヒータバッグを補充しかつ次の充填のために溶液を加熱するために必要となる時間の長さを求めるかまたは推定することができる。
【0970】
移送された補充溶液の加熱は、ヒータバッグの補充動作が開始するとすぐに開始することができる。ヒータバッグ内の補充された溶液の温度を上昇させるために必要な推定加熱時間を計算するように、コントローラをプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、その計算は、移送が開始する際のヒータバッグの温度低下、および/またはヒータバッグに移送される補充溶液の体積に基づくことができる。計算は、たとえば、ヒータバッグ内の初期体積、その温度、および所定体積の補充流体がバッグ内に移送される際の温度低下の度合い等の変数を含むことができる。加熱時間がいかに計算されるかに関わらず、それが、補充体積移送時間を超えるようにコントローラによって推定される場合、コントローラは、残りの滞留時間が、補充体積を所定温度にするために必要な推定時間未満となる前に補充動作を開始するように、ポンプに命令することができる。
【0971】
任意選択的に、サイクラは、現滞留の後の後続する排液動作に対して必要となる時間の長さを推定することができる。そして、この時間推定値を、移送時間推定値に加え、それに、ヒータバッグ内の流体を加熱するためにどれくらいの時間が利用可能であるかを求める際のさらなる時間マージンを加えることができる。推定は、サイクラが補充を予定しているときを考慮することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、現サイクルの排液の開始前に計算された時間の長さが残っていると判断されるときに、補充が開始することができる。この時間の長さは、以下のように計算することができる。
【0972】
排液前の時間(補充開始時間)=任意のマージン+補充体積移送時間+(ゼロより大きい場合(補充体積加熱時間−排液時間))
任意選択的に、コントローラは、後続する排液段階(たとえば、
図178の排液段階754)が、ヒータバッグ流体をその目標温度まで上昇させるために提供する寄与を計算することができる。これにより、コントローラは、滞留段階(たとえば、滞留段階756)の間、排液段階(たとえば、排液段階754)の間に流体を加熱し続けるために利用可能な時間の長さだけ後にヒータバッグ充填を開始することができる。いくつかの実施形態では、溶液が、次のサイクルの開始までにプログラムされた温度未満でないことを確実にするのに役立つように、少なくとも1つの推定時間長さ(たとえば、補充/流体移送時間または加熱時間)は、追加の時間マージンを含むことができる。これは、補充における体積移送が予想より長くかかるために排液が延期されないことを確実にするのに役立つことができる。
【0973】
別法として、ヒータバッグの総容積は、比較的小さい(たとえば、約1回半の充填の体積未満である)場合がある。これは、ヒータバッグ内の溶液が、過剰に長い期間、高温で維持されないことを確実にするのに役立つことができる。代わりに、ヒータバッグ内の溶液は、数回のサイクル(たとえば、2回のサイクル)にわたって使用される。こうした実施形態では、ユーザに利用可能な複数のセットがある可能性があり、それらの各々は、異なるヒータバッグサイズを有する。これにより、ユーザは、自身の規定された充填に対して適切なヒータバッグで治療を行うことができる。いくつかの実施形態では、異なる材料から作製されたヒータバッグを備えるセットもまた利用可能とすることができる。たとえば、二酸化炭素等の気体に対して実質的に不透過性であるヒータバッグを備えたセットがあり得る。
【0974】
図211は、ヒータバッグを透析液で補充するために使用することができる複数のステップ例を概説するフローチャートを示す。
図211に示すステップは、ヒータバッグ内の溶液が患者に送達する前に加熱される時間の長さを最小限にするのに役立つことができる
。フローチャートは、ヒータバッグが最初に充填され、治療の開始時に加熱された後に開始する。図示するように、ステップ4900において、サイクラは、患者の腹膜腔をヒータバッグからの溶液で充填する。これにより、ヒータバッグを実質的に消費して略空にすることができる。そして、サイクルの滞留段階が開始することができる。サイクラコントローラは、残りの滞留時間が、次の充填のためにヒータバッグを補充し溶液を加熱するために必要な時間以上であることを確実にするように、残りの滞留時間をモニタリングする。残りの滞留時間が、次の充填のためにヒータバッグを補充し溶液を加熱するために必要な時間を超えなくなると、ステップ4904を行うことができる。別法として、サイクラは、ヒータバッグを補充し溶液を加熱するために充分な時間があるように、補充を予定することができる。そして、サイクラコントローラは、予定された時間まで待機し、ステップ4904に進む。
【0975】
ステップ4904において、サイクラは、次の充填動作に必要な体積でヒータバッグを補充する。上述したように、サイクラは、次の充填に必要である体積より多い体積までヒータバッグを充填することができる。たとえば、ヒータバッグは、次の充填に必要な体積に、充填体積の10%〜25%の追加のマージン体積を足した体積まで充填することができる。サイクラはまた、補充期間にヒータバッグに圧送される溶液を、所定温度設定値の所定範囲内まで加熱し始めることも可能である。この温度設定値は、一定であるか、または、ユーザによって、もしくは処方パラメータおよび腹膜透析サイクラの設定を変更する権限が与えられた臨床医によって、プログラム可能であり得る。
【0976】
滞留段階に対して割り当てられた時間が経過した後、サイクラは、ステップ4906に進み、患者の排液を開始する。任意選択的に、溶液の温度設定値の範囲内までの加熱は、ステップ4906が行われる際に続けることができる。排液動作が完了した後、サイクラはステップ4900に戻り、ヒータバッグからの溶液で患者を再充填する。溶液が温度設定値の範囲内にない場合、代わりに、サイクラは、溶液が所望の温度設定値の範囲内になるまで、ステップ4908において溶液を加熱し続けることができる。これは、所望の温度を著しく上回るかまたは下回る溶液が患者に送達されないことを確実にするのに役立つ。
溶液期限切れタイマ
いくつかの実施形態では、透析治療で使用されるように設定されるかまたは計画された溶液が期限切れになったと判断するように、サイクラをプログラムすることができる。さらに、溶液が期限切れになったときにユーザに通知するように、サイクラをプログラムすることができる。サイクラコントローラは、期限切れ溶液の使用を禁じることができ、いくつかの実施形態では、新鮮な溶液による新たな治療を設定することができるように、ユーザに対して治療を終了するかまたは中止するように要求することができる。これは、たとえば、非常に長い治療(たとえば、最大48時間)がプログラムされている場合があるサイクラにおいて、またはユーザが長い期間治療を一時停止することができるサイクラにおいて、望ましい場合がある。
【0977】
いくつかの実施形態では、サイクラは、治療の事前に規定された時点で開始するかまたは開始するようにトリガすることができる、1つまたは複数の溶液期限切れタイマを有することができる。溶液期限切れタイマの各々は、異なる溶液リザーバに対して使用することができる。たとえば、第1溶液期限切れタイマは、第1溶液リザーバに使用することができ、第2溶液期限切れタイマは、第2溶液リザーバに使用することができる。第1溶液期限切れタイマは、第1事前規定時点で開始するようにトリガすることができ、第2溶液期限切れタイマは、第2事前規定時点で開始するようにトリガすることができる。同じタイプの透析液を収容する複数の溶液リザーバに対して、単一の溶液期限切れタイマを使用することも可能である。溶液期限切れタイマは、治療に対して溶液を利用する所定期間を割り当てることができる。所定時間長は、使用されいる溶液のタイプによって変化する可
能性がある。複数の溶液期限切れタイマがある場合、所定時間長は各タイマによって異なる可能性がある。タイマが満了する前に治療が溶液を使用しない場合、サイクラは、溶液を期限切れになったとみなし、それに従って処理することができる。異なる期間が割り当てられた複数の溶液期限切れタイマがある場合、1つの溶液期限切れタイマの満了により、1つまたは複数の他の溶液期限切れタイマもまた満了する可能性がある。
【0978】
いくつかの実施形態では、溶液期限切れタイマに割り当てられた時間の長さは、溶液の温度によって変化する可能性がある。計画された溶液バッグに貯蔵された溶液は、第1溶液期限切れタイマに管理される可能性があり、その後、ヒータバッグに移送された後、異なる溶液期限切れタイマに管理される可能性がある。サイクラが溶液を、ユーザまたは処方者によって規定された温度設定値まで加熱する実施形態では、システムコントローラは、温度設定値の値に基づいてその溶液期限切れタイマに対する満了時間を計算することができる。
【0979】
いくつかの実施形態では、2つの溶液期限切れタイマを使用することができる。一方の溶液期限切れタイマは、計画された溶液バッグのセット用とすることができ、別の溶液期限切れタイマは、ヒータバッグ用とすることができる。溶液バッグ期限切れタイマは、サイクラコントローラが、溶液バッグがセットに接続されたと判断するときに開始するように、プログラムすることができる。ヒータバッグ期限切れタイマは、ヒータバッグが、新鮮な溶液で再充填される前に残留体積まで消耗される度に、開始することができる。たとえば、
図211に関連して上述したように補充を予定する実施形態では、タイマは、ヒータバッグの補充毎に再始動することができる。
【0980】
さまざまな実施形態では、サイクラと使用されるのに適合性がある各タイプの透析液に対して、1つまたは複数の溶液期限切れ時刻を確立することができる。サイクラコントローラは、治療で使用するためにいずれのタイプの溶液がプログラムされているかを判断することができる。治療に使用される溶液に関する情報は、溶液ラインにおけるバーコード等から読み取ることも可能であり、または、サイクラのユーザインタフェースを介してユーザが入力することができる。溶液期限切れタイマに対して割り当てられた所定期間は、治療で使用される透析液に整合させるように選択することができる。たとえば、サイクラコントローラは、所定溶液タイプを、ルックアップテーブルにおいてその溶液に対してプログラムされた所定期間に整合させることができる。治療に対して2種以上の溶液が使用される場合、使用期限が最も短い溶液を使用して、溶液期限切れタイマに割り当てられた所定期間を設定することができる。複数の溶液期限切れタイマを、治療中に使用される異なる溶液タイプの各々に対して1つのタイマがあるように設定することも可能である。
【0981】
別法として、1つまたは複数の溶液期限切れタイマは、溶液に特定でない場合がある。こうした実施形態では、この溶液期限切れタイマは、使用期限が短い溶液に対して適切であるように設定することができる。さまざまな溶液に対する溶液使用期限は、製造業者の推奨する値に基づいて判断することができる。
【0982】
溶液バッグの使用期限が切れると、サイクラは、たとえば、その溶液バッグからの流体を引き出さなくなる場合がある。セットに接続された溶液バッグはまだ期限が切れていない場合、治療を続けることができる場合がある。さらに、いくつかの実施形態では、サイクラのユーザインタフェースは、溶液バッグの期限切れをユーザに通知することができる。こうした実施形態では、ユーザは、溶液バッグを交換するオプションを有することができる。
【0983】
別法として、セットに取り付けられた溶液バッグの全てに対して単一の溶液バッグ期限切れタイマしかない場合がある。タイマが満了すると、ユーザに対して、現治療を中止し
、新鮮な供給物で新たな治療を開始するように要求することができる。溶液バッグ期限切れタイマが満了すると、それにより、ヒータバッグ期限切れタイマも満了する場合がある。
【0984】
ヒータバッグの使用期限が切れる場合、ユーザに対してヒータバッグ内の溶液を送達しないように、サイクラコントローラをプログラムすることができる。サイクラは、たとえば、ヒータバッグ内の溶液のすべてを排液ラインに圧送して廃棄することができる。そして、ヒータバッグを再充填することができ、ヒータバッグ期限切れタイマを再始動することができる。ユーザに対して、ヒータバッグの期限切れを通知することができる。別法として、ヒータバッグを再充填するのに十分な溶液がない場合、現治療を中止し、新鮮な供給物で新たな治療を開始するように、ユーザに要求することができる。いくつかの実施形態では、いかなる残りの溶液も、ヒータバッグに送達し加熱することができる。そして、この溶液は、新たな供給物が収集されている間、患者の体内に滞留することができるように、患者に送達することができる。これは、治療の損失を最小限にするように役立つことができる。
【0985】
図212は、サイクラによって溶液期限切れタイマを用いて採用することができる複数のステップ例を概説するフローチャートを示す。フローチャート例では、サイクラは、溶液バッグ期限切れタイマおよびヒータバッグ期限切れタイマを有する。図示するように、ステップ4920において、サイクラは、溶液バッグがセットに接続されていると判断する。そして、ステップ4922において、サイクラは、溶液バッグ期限切れタイマを開始することができる。そして、ステップ4924において、サイクラはヒータバッグを充填することができる。ヒータバッグが充填された後、ステップ4926において、サイクラは、ヒータバッグ期限切れタイマを始動することができる。
【0986】
ステップ4928において、治療が行われる。治療中、ヒータバッグが空になり補充される場合、ステップ4930において、ヒータバッグ期限切れタイマをリセットすることができる。一方、いかなる期限切れタイマも経過する前に治療が終了した場合、治療を正常に完了することができる。治療が終了する前に期限切れタイマが経過した場合、サイクラは、ステップ4932において溶液の使用期限が切れたことを示すことができる。満了したのがヒータバッグ期限切れタイマであり、溶液バッグ内に十分な溶液がある場合、ステップ4934において、サイクラは、ヒータバッグ内の溶液を廃棄し、ヒータバッグを、溶液バッグからの溶液で補充する。ヒータバッグを補充するために充分な溶液がない場合、サイクラはステップ4936に進み、ユーザに対して、治療を中止し新鮮な供給物で新たな治療を開始するように指示することができる。満了したのが溶液バッグ期限切れタイマである場合もまた、サイクラはステップ4936に進むことができる。
【0987】
図213は、サイクラのユーザインタフェースに表示するためにプロセッサが生成することができる例としての画面5610を示す。例としての画面5610は、ユーザに対し、溶液期限切れタイマが満了したことを示す。こうした画面は、たとえば、
図212のステップ4932において表示することができる。実施形態例では、満了した溶液期限切れタイマは、ヒータバッグ溶液タイマである。
【0988】
図示するように、例としての画面5610は、溶液の使用期限が切れたことを宣言しエラーコードを提供する、警告5612を含む。画面5610はまた、ユーザに対して、問題の解決方法を通知するテキストも含む。例としての画面5610では、テキストは、ユーザに対し、ヒータバッグ溶液を廃棄し交換することができるように、充填段階を延期するように指示する。ユーザがヒータバッグ内の溶液を確認するかまたは交換するように選択する別の画面に進むように、ユーザに対して要求することができる。実施形態例では、こうした画面には、画面5610上の治療オプションボタン5614と対話することによ
って進むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザが溶液を交換するまで、画面5610上の再開ボタン5516を無効にすることができる。
【0989】
例としての画面5610には、時間通知5518も示されている。時間通知5518は、ユーザに対し、溶液タイマが満了しようとしているときを通知することができる。時間通知5518は、溶液期限切れタイマが満了する前に所定の長さの時間が残っているとき、表示されるようにトリガすることができる。いくつかの実施形態では、たとえば、ユーザが治療中にサイクラから外れる可能性がある実施形態では、時間通知5518は、ユーザに対し、再接続して溶液タイマが満了しないように治療を続けなければならないときを通知することができる。実施形態例では、タイマ通知5518は、ユーザに対して、ヒータバッグ期限切れタイマが満了しないようにユーザが7:55PMまでに再接続しなければならないことを通知する、再接続期限である。クロック5620によって示すように、再接続期限は3分間過ぎている。
流量検査
患者の腹膜腔から溶液を排液するとき、患者が不快な引っ張られる感覚を知覚することは普通ではない。さらに、この引っ張られる感覚は、腹膜腔が空であるかまたは略空であるときに発生しやすい可能性がある。この理由で、サイクラが、患者が取り除く必要がある流体を収容していることを確実にするように流量検査を行うことが望ましい場合がある。こうした流量検査は、たとえば、すべての排液の前に行うことができ、またはいくつかのタイプの排液の前に行うことができる。たとえば、初期排液中に不快感がより頻繁に報告されるため、初期排液がサイクラによって行われる前に流量検査を行うことができる。流量検査は、コントローラが、排液を必要とする患者の腹膜腔内に何らかの流体体積があるか否かを判断するまで、患者から流体を取り除こうと徐々に試みることができる。サイクラは、たとえば、患者の体内に実際に取り除くべき流体があると示唆するように、所定閾値を超える流量に達する可能性があるか否かを確認することができる。これは、排液すべき流体が比較的わずかであるかまたは不十分な量である場合、知覚される引っ張られる感覚を最小限にするかまたは防止する役割を果たすことができる。サイクラコントローラは、流量検査中に求められる流量に基づいて、排液に対する圧送圧力を設定することができる。事前設定閾値を超える流量により、排液がより大きい力(より大きい負圧)を用いて進行することができる。
【0990】
従来の装置では、流量検査を行う代わりに、サイクラコントローラは、標準または公称事前設定圧力で腹膜腔から流体を引き出そうと試みる。サイクラは、最短排液経過時間または最小排液体積に達するまで排液段階を続けるようにプログラムされる。結果としての流量が所与の閾値(たとえば、45秒間にわたり、15ml/分)未満であった場合、サイクラは、ライン閉塞がなかったことを確認するために流体を押し戻すよう試みる。ライン閉塞が検出されなかった場合、圧送は低圧で再開することができる。流量が別の期間(たとえば、300秒間)閾値未満のままであった場合、サイクラは、ユーザに対して警告するか、または、ユーザが排液段階の残りを迂回するのを可能にする。この手順により、場合によっては、患者の不快感が発生する可能性があり、それは、ここでは、流量検査手続きによって軽減することができる。
【0991】
いくつかの実施形態では、サイクラは、流量検査圧力で患者から流体を引き出そうと試みることにより、流量検査を行うことができる。流量検査圧力は、通常排液動作中に使用されるものより正である(すなわち、大気圧に近い)ように選択することができる。たとえば、流量検査圧力と通常排液圧力との差は、およそ2kPa〜6kPaであり得る。一例では、流量検査圧力は約−6.5kPaに設定することができ、通常排液圧力は約−9.5kPaに設定することができる。他の圧力値を使用することができる。選択される圧力は、その圧力での圧送動作が行われている間に、選択される圧力から所定マージンだけ逸脱することができる公称値であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、異なる排液
に対して異なる流量検査圧力を使用することができる。たとえば、初期排液中に使用される流量検査圧力は、治療中排液の間に使用されるものより弱い(すなわち、負圧が小さくなる)可能性がある。通常の排液圧力より弱い真空をもたらすように流量検査圧力を選択することは、患者にとって穏やかに感じられる可能性がある。いくつかの実施形態では、ユーザまたは臨床医には、流量検査圧力を設定するオプションがあり得る。
【0992】
図214Aおよび
図214Bは、サイクラが流量検査で開始する初期排液を行うフローチャートを示す。上述したように、流量検査は、治療中の他の排液に対しても同様に行うことができる。図示するように、ステップ5530において排液は開始する。ステップ5532に示すように、排液は、流量検査圧力である第1圧力での流量検査で開始する。実施形態例では、排液は、−6.5kPaの排液圧力で開始する。
【0993】
流量検査中の流量が、流量閾値より大きいと判断される場合、サイクラは、閾値を超える流量が所定期間(たとえば、30秒間)維持されることを確認することができる。流量閾値は、たとえば、およそ35ml/分〜75ml/分の値であり得る。実施形態では、流量閾値は、およそ50ml/分であり得る。
【0994】
流量が閾値を超えて維持される場合、ステップ5544において、サイクラコントローラは、排液圧力を通常の排液圧力とみなされる第2圧力に設定することができる。この圧力は、流量検査圧力より概して大きい(すなわち、より負である)。実施形態例では、通常の排液圧力は、−9.5kPaとして示されている。排液中の流量は、流量が流量閾値未満に低減するか否かを判断するようにモニタリングし続けることができる。
【0995】
流量検査または通常圧力での排液中の流量が、流量閾値以下であると判断される場合、ステップ5534において、排液動作に対する圧力を流量低減圧力に設定することができる。実施形態例では、流量低減圧力は、流量検査圧力と同じであるが、これは常に当てはまるとは限らない。流量低減状態が、所定期間(たとえば、30秒間)続く場合、ステップ5536においてユーザに対して流量低減警告を通知することができる。いくつかの実施形態では、この警告は、無音警告であり、サイクラのユーザインタフェース上にテキスト通知として表示され得る。
【0996】
流量が流量なし未満である場合、いくつかの実施形態では、ステップ5538において、押戻し試行を行うことができる。押戻し試行では、サイクラは、わずかな体積の流体を患者の腹膜腔内に圧送するように試みることができる。これにより、サイクラコントローラは、ラインが閉塞されているか否かを判断することができ、それは、サイクラが、閉塞が存在する場合、流体を送達することができなくなるためである。低流量状態が表面に対してまたは組織凹部内にひっかかっている腹膜カテーテルチップに関連する場合、わずかな量の流体の押戻しは、カテーテルチップを分離するために十分であり得る。したがって、サイクラコントローラが必ずしもユーザに通知する必要なく、低流量状態を軽減することができる。この場合、コントローラは、流量検査手続きを再試行することができる。いくつかの実施形態では、規定された期間(たとえば、30秒間)、流量が低流量未満であった場合にのみ、ステップ5538を行うことができる。ステップ5538における押戻し試行が失敗した場合、ステップ5540において、サイクラは、ユーザに対して、閉塞が存在することを通知することができる。そして、ステップ5542において排液を一時停止することができ、ユーザには、排液を続けるかまたは迂回するオプションがあり得る。ユーザが排液を続けるように選択した場合、ステップ5532において、別の流量検査を行うことができ、フローチャートはやりなおすことができる。
【0997】
押戻し試行が成功し、または流量が流れなし閾値を超えるために押戻し試行が不要である場合、サイクラは、最短排液時間が満了または経過したか否かを確認することができる
。この時間は、たとえば、臨床医がプログラム可能なパラメータであり得る。最短排液時間が経過した場合、サイクラは、流量のモニタリングを続け、ステップ5534またはステップ5544に戻ってそれに従って排液圧力を設定することができる。
【0998】
最短排液時間が満了した場合、サイクラは、流量が、所定期間より長く流量閾値以下であったか否かを判断するように確認することができる。この期間もまた、臨床医等のユーザによって変更可能であり得る。実施形態例では、期間は、150秒として示されている。
【0999】
流量が、所定期間をより長く、流量閾値以下であった場合、ステップ5546において、ユーザに対して流量低減警告を通知することができる。この警告は、サイクラのユーザインタフェースに表示されるテキスト通知を含むことができ、可聴ノイズまたは音声が付随することができる。流量が流量閾値以下のままである場合、ステップ5548において、ユーザに対して別の流量低減警告を通知することができる。この警告は、ステップ5546において通知されたものよりレベルの高い警告であり得る。そして、ステップ5542において排液を一時停止することができ、上述したように、ユーザは、排液を迂回するかまたは続けるか選択することができる。
【1000】
ステップ5546が行われる前または行われた後、流量が流量閾値を超えるかまたは超えて上昇する場合、サイクラコントローラは、最小所定排液体積が患者から排液されたか否かを判断するように確認することができる。最小排液体積を満たさなかった場合、サイクラは、流量のモニタリングを続け、ステップ5534またはステップ5544に戻って、それに従って排液圧力を設定することができる。最小排液体積を満たした場合、サイクラは、流量が流量なしを超えるか否かを判断するように確認することができる。流量が流量なしを超える場合、ステップ5550において、サイクラは、排液を終了し、サイクルの次の段階に進むことができる。
図214Aおよび
図214Bに示すフローチャート例は初期排液に適用されるため、ステップ5550において、患者の腹膜内体積も同様にゼロに設定することができる。同様のロジックが他の治療排液で使用される実施形態では、患者体積は排液の後にゼロにリセットされない可能性がある。代替実施形態では、患者から最小排液体積が排液された場合、サイクラは直接ステップ5550に進むことができる。
【1001】
患者から最小排液体積が排液された後、流量が流量なし未満であると判断された場合、ステップ5552において、サイクラコントローラは、サイクラに対して押戻しを行うように命令することができる。いくつかの実施形態では、この押戻しは必ずしも行う必要はない場合がある。たとえば、いくつかの実施形態では、ステップ5544において押戻しが行われた場合、ステップ5552において、押戻しを行わない場合がある。押戻しが成功した場合、サイクラは、ステップ5550において、排液を終了し、サイクルの次の段階に進むことができる。押戻し試行が不成功である場合、ステップ5554において、ユーザに対して閉塞警告を通知することができる。そして、ステップ5542において排液を一時停止することができる。そして、ユーザは、排液を迂回し、問題の解決を試み、上述したように排液を続けるように選択することができる。
【1002】
いくつかの実施形態では、通常排液またはソフト排液のいずれかを行うようにサイクラを構成することができる。これは、サイクラのユーザインタフェースを介してユーザまたは介護者が選択可能であり得る。サイクラのプロセッサまたはコントローラは、ユーザインタフェースに表示する、ユーザが、圧送圧力を第1圧送圧力(たとえば、通常の圧送圧力)から第2圧送圧力(たとえば、ソフト圧送圧力またはより弱い圧送圧力)に変更するのを可能にする画面を生成することができる。この画面は、好ましくは、排液中にユーザに提示される。圧送圧力は、任意選択的に、ポンピングチャンバ充填ストロークに対してのみ変更することができる。ユーザが、ユーザインタフェースを介して圧送圧力を変更す
ることに応じて、プロセッサは、サイクラの空気圧回路を制御して、設置されたカセットのポンピングチャンバに異なる圧送圧力を加えることができる。
【1003】
いくつかの実施形態では、この特徴は、臨床医が有効または無効にすることができる。たとえば、臨床医は、排液中に引っ張りまたは不快感を報告する患者に対して、こうしたオプションを有効にすることができる。さまざまな実施形態において、このオプションは、いくつかのタイプの排液に対してのみ有効にすることができる。たとえば、臨床医は、初期排液中にユーザがソフト排液を行うことを可能にすることができる。
【1004】
こうしたオプションにより、ユーザは、通常の排液圧力での排液が不快感をもたらしている場合に、より穏やかな排液に切り替えることができる。ソフト排液または通常排液を選択するオプションが利用可能である場合、サイクラは、好ましくは、デフォルトで通常動作を実行するべきであり、それは、ソフト排液は、治療に対する滞留時間を短縮する可能性があるためである。オプションは、たとえば、サイクラコントローラによって流量低減状態が検出された後にのみ、利用可能とすることができる。他の実施形態では、ユーザに、治療を開始したときに通常排液とソフト排液とを選択するオプションがあり得る。いくつかの実施形態では、ユーザは、所定の排液をソフト排液として指定し、他の排液を通常排液として指定することができる場合がある。
【1005】
ソフト排液は、通常排液の圧力より弱い圧力とすることができ、事前設定され得るか、またはユーザインタフェースを介してユーザ定義可能であり得る。ソフト排液は、いくつかの実施形態では、流量検査中に使用される圧送圧力と同様の圧送圧力を使用することができ、または流量検査に対して定義された圧力設定値を使用することができる。ソフト排液圧送圧力は、たとえば、約2kPa〜6kPaだけ、通常の排液圧送圧力より弱い場合がある。いくつかの実施形態では、臨床医等のユーザが、通常排液およびソフト排液に対して圧力設定値を定義することができる。別法として、低減した圧送圧力は、広範囲の圧送圧力から選択することができる。任意選択的に、臨床医は、別の排液プロファイルを生成することができる。たとえば、臨床医は、通常排液、それよりソフトな排液、および最もソフトな排液の圧力を定義することができる。ユーザは、望ましい場合にこれらの事前定義された排液タイプのうちの任意のものを選択することができる場合がある。ユーザが、治療の過程に対して最大治療時間を設定している場合、コントローラは、流量低減状態が検出されない限り、排液圧力を変更することができない。
【1006】
図215は、排液中にサイクラのユーザインタフェースに表示することができるユーザインタフェース画面例を示す。具体的には、
図215に示す画面は、初期排液画面5000である。図示するように、初期排液画面5000は、排液および治療に関する種々の情報を含む。図示するように、画面は、ソフト排液オプション5002へのスイッチも含む。ソフト排液オプション5002へのスイッチは、いくつかの実施形態では、排液中の任意の時点で選択することができる。他の実施形態では、ソフト排液オプション5002へのスイッチは、ユーザが排液を一時停止する一時停止ボタン5004を押した後までは、有効にすることができず、またはグレーアウトさせることができる。これは、排液動作を不要に遅くする、ソフト排液オプション5002へのスイッチの偶発的なボタン押下を、回避するのに役立つことができる。他の実施形態では、ソフト排液オプション5002へのスイッチは、すべての排液画面に提示されるとは限らない。かわりに、ユーザが、ユーザインタフェースのメニューオプション5006を選択することにより、ソフト排液オプション5002へのスイッチに進む必要がある場合がある。ソフト排液オプション5002が選択され、排液圧力がソフト排液圧力まで低下すると、ユーザインタフェースを同様に使用して、望ましい場合、通常の排液に戻ることができる。当業者には理解されるように、他の実施形態は、たとえば、通常排液、よりソフトな排液および最もソフトな排液等、複数の異なるタイプの排液に対するオプションを有することができる。いくつかの実施
形態では、ボタンを提供する代わりに、ソフト排液オプション5002へのスイッチを、スライダバーの形態で実施することができる。バーの一端は、排液中に使用されるように定義することができる最も弱い圧力であり得る。バーの多端は、通常の排液圧力であり得る。ユーザは、バーの各端部の間の圧力の範囲における任意の場所から所望の圧力を選択することができる。任意選択的に、コントローラは、治療時間、圧送時間、または圧送圧力の変化に応答してある体積の流体を排液するために必要な時間を延長するかまたは短縮する別の基準に対する影響を計算し、ユーザインタフェースにこの影響に関する情報を表示することができる。実施形態では、圧送圧力の変化が依然として望まれることをユーザインタフェースにおいて確認するようにユーザに要求することができる。
【1007】
トリガする流量またはその低い流量での持続時間は、患者関連または臨床医関連の要素に応じて変化する可能性がある。さらに、サイクラが低圧で圧送を続ける時間の長さが変化する可能性がある。いくつかの実施形態では、治療の任意の時点における流量に基づいて、圧送圧力を調整することができる。たとえば、流量低減が存在すると判断される場合、患者の不快感を最小限にするように圧送圧力を低下させることができる。こうした流量低減状態は、たとえば、たとえば50mL/分の低流量状態であり得る。種々の流量状態に割り当てられる複数の圧送圧力があり得る。たとえば、通常流量状態(たとえば、50mL/分より高い流量)で使用される「通常の」圧送圧力があり得る。通常流量状態の流量より低い流量状態に対する低い流れ圧力があり得る。流量が非常に低い(たとえば、15mL/分以下)である場合に使用することができる流れなし圧送圧力もあり得る。
【1008】
圧送圧力は、別個に定義される流量状態(たとえば、通常流量、低流量、流れなし)に基づいて割り当てられる必要はない。代わりに、こうした実施形態では、圧送圧力は、勾配で調整することができる。すなわち、圧送圧力は、流量に対して比較的連続して大きさを増大または低減させることができる。勾配は、線形である場合もあれば非線形である場合もある。たとえば、圧力の上昇の大きさは、流量の増大の大きさに比例することができ、圧力の低下の大きさは、流量の低減の大きさに比例することができる。圧送圧力は、流量データが利用可能となると実質的に連続的に調整することができる。この連続的な調整は、各ストロークの後に行うことができ、または、ストロークの進行中に流量が推定される場合、各ストロークが進行するに従って行うことができる。ポンプ圧力変動を所定圧力範囲内に制限するように、コントローラをプログラムすることができる。使用される圧送圧力が、流量に対して大きさが増減する実施形態では、排液動作は、依然として流量検査で開始することができる。すなわち、排液動作は、排液段階に対する負圧が所定期間、初期流量検査圧力で設定されている状態で開始することができる。この圧力は、排液動作の開始時にユーザが経験するいかなる引っ張られる感覚も最小限にするために、流量低減状態(たとえば、−6.5kPa)に対して適切であるように、選択することができる。流量が、所定期間より長く、事前定義された閾値未満となる場合、サイクラコントローラは、圧送圧力の調整を停止することができる。排液動作中に排液される総体積が、その排液に対する目標体積未満である場合、押戻しを行って、閉塞があるか確認することができる。排液された総体積が、少なくとも、その排液動作に対する目標体積に達した場合、サイクラコントローラは、排液動作が完了したと判断して、治療の次の段階に移ることができる。
【1009】
いくつかの実施形態では、定義された流量状態の各々に対して複数の異なる圧力があり得る。これらの異なる圧力は、圧送ストローク中に移動している流体に対する供給源および宛先に基づいて割り当てることができる。たとえば、流体が、定義された流量または流量範囲で患者の腹膜腔内に充填されているとき、第1圧送圧力を使用することができる。流体が、定義された流量または流量範囲で患者から排液されているとき、第2圧力を使用することができる。患者にまたは患者から(たとえば、チャンバからドレイン、チャンバからヒータバッグ、ヒータバッグからチャンバへ等)いかなる流体も圧送されていない場
合、第3圧力(すなわち、圧力リザーバからの利用可能な最大圧力により近い)を選択することができ、その場合、流量に基づいて圧力を変更する必要はない可能性がある。
自動化排出物サンプリング
いくつかの実施形態では、治療をプログラムするとき、ユーザは、自動化サンプリングパラメータを有効/無効にするかまたはオン/オフにすることができる場合がある。自動化サンプリングパラメータにより、サイクラは、治療中、排出物サンプリングバッグを患者からの使用済み透析液で自動的に充填する。ユーザは、取得される自動化サンプルのさまざまな態様を指定するために使用することができる複数の追加のパラメータを定義することができる場合がある。たとえば、これらの追加のパラメータを用いて、取得すべきサンプル体積、および治療においてサンプルを取得すべきときを定義することができる。そうしたパラメータを用いて、どれくらいのサンプルを取得するべきであるか、またはどれくらいのサンプルバッグを充填するべきかを定義することも可能である。いくつかの実施形態では、自動化サンプリングパラメータが有効になった場合にのみ、これらの追加のパラメータを編集するために有効にするかまたはアンロックすることができる。いくつかの実施形態では、ユーザが選択することができる定義可能なパラメータを含む、種々の事前設定サンプリングレジメンがあり得る。たとえば、サンプリングレジメンは、腹膜炎検査に対して適切なパラメータを含むことができる。サンプリングレジメンはまた、腹膜平衡試験または腹膜輸送機能試験に適切であるパラメータも含むことができる。
【1010】
一実施形態では、サイクラ内に設置されたセットと流体連通するように、排出物サンプリングリザーバを配置することができる。サイクラは、治療プログラムによって規定されるように、接続された患者から使用済み流体を排出物サンプリングリザーバ内に圧送することができる。さまざまな実施形態では、ユーザに対して、排出物サンプリングリザーバが接続された透析液セットの流体ポートを特定するように要求することができ、または所定のポートにリザーバを取り付けるように指示することができる。別法として、自動化排出物サンプリングを伴う治療で使用されるように意図されたセットを提供することができる。こうした実施形態では、排出物サンプリングリザーバを、透析液セットの所定ポートに取り付けることができ、サイクラコントローラは、自動化サンプリング動作を行っているときにそのポートへの圧送を命令することができる。いくつかの実施形態では、セットは、自動化サンプリングリザーバに一意である自動化サンプリングリザーバ用のコネクタを含むことができ、それは、自動化サンプリングリザーバの対応する一意の嵌合コネクタにのみ結合することができる。
【1011】
他の実施形態では、サイクラに設置されたセットまたは流体ラインの特徴を用いて、サイクラが自動化排出物サンプルを取得するべきであると判断することができる。こうした実施形態では、特徴は、たとえば、サイクラにおいて1つまたは複数のセンサによって検知される所定の幾何学的形状であり得る。サイクラコントローラは、センサから、所定の形状が存在することを示すデータを受け取ると、治療中に流体を排出物サンプリングリザーバに圧送するようにサイクラに対して命令することができる。いくつかの実施形態では、センサが検出可能であり得る複数の異なる幾何学的形状があり得る。各幾何学的形状は、異なるサンプリングパラメータを含む排出物サンプルプログラムに対応することができる。センサは、限定されないが接触センサ(たとえば、マイクロスイッチ)等、任意の好適なセンサまたはセンサの組合せであり得る。
【1012】
別法として、セットまたは流体ラインの特徴は、カセットまたは流体ラインの一部として含まれる磁石または磁気特徴であり得る。サイクラに設置されると、サイクラ内のホール効果センサが、磁石または磁気特徴の存在を検出することができる。サイクラコントローラは、ホール効果センサから、磁石または磁気特徴が存在することを示すデータを受け取ると、治療中に排出物リザーバに流体を圧送するようにサイクラに対して命令することができる。
【1013】
別の実施形態では、サイクラは、光学センサを用いて、サイクラに設置されたセットまたは流体ラインの識別マークを読み取るかまたは復号することができる。識別マークは、治療中に自動化排出物サンプルを取得するべきであるという、コントローラによって解釈可能なコードを含むことができる。さらに、治療中に取得される排出物サンプルに関するさまざまなパラメータを指定するように、識別マークをさらに符号化することができる。こうした識別マークは、限定されないが、2次元しるし(たとえば、バーコード、データマトリックス等)、または他の任意の好適なしるし等のしるしを含むことができる。いくつかの実施形態では、セットまたは流体ラインの一部の上にスナップ式に嵌まることができる識別タグ1100(
図41を参照)にしるしを含めることができる。
【1014】
図216は、サイクラを用いてプログラムし自動化排出物サンプルを収集するために使用することができるステップを概説するフローチャートを示す。図示するように、ステップ5720において、ユーザは、治療のプログラミングを開始する。これは、サイクラのユーザインタフェースにおいて本技術分野において一般に定義されるもののうちの任意のもの等、さまざまな治療パラメータを指定することを含むことができる。ステップ5722において、ユーザは、自動化サンプリングオプションまたはパラメータを有効にする。これは、サイクラのユーザインタフェースを用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、その後、ユーザは、カスタマイズされたかまたはユーザが指定したサンプリングプログラムまたは事前設定サンプリングプログラムを選択することができる。これは、いくつかの実施形態では、サイクラのユーザインタフェースに表示されるプロンプトとのユーザによる対話によって達成することができる。
【1015】
ユーザが、事前設定されたサンプリングプログラムまたはレジメンを使用するように選択する場合、ステップ5724において、サイクラは、装置のユーザインタフェースに1つまたは複数の事前設定レジメンのリストを表示する。これらの事前設定レジメンは、たとえば、腹膜炎検査、腹膜平衡試験、単一サンプル等を含むことができる。いくつかの実施形態では、これらの事前設定値は、治療中にプログラムされた他のパラメータに結び付けることができる。たとえば、事前設定が選択されると、サンプリングリザーバ内に圧送されるべき流体の量は、患者充填体積によって決まる可能性がある。さらに、場合によっては、事前設定値が選択されると、ユーザは、1つまたは複数のさらなるパラメータを入力しなければならない場合がある。たとえば、ユーザが単一サンプルを収集すべきであると選択した場合、治療においてこれが発生するときを定義するように、ユーザに対して要求することができる。ステップ5726において、ユーザは、所望のサンプリングレジメンまたはプログラムをリストから選択することができる。これは、サイクラのユーザインタフェースとの任意の好適なタイプの対話を介して行うことができる。その後、ステップ5728において、ユーザは、治療のプログラミングを終了することができる。
【1016】
ユーザが、ユーザ指定またはカスタムサンプリングレジメンを定義するように選択した場合、ステップ5730において、サイクラは、サイクラのユーザインタフェースに、自動化サンプリングに関する1つまたは複数のパラメータを表示することができる。そして、ステップ5732において、ユーザは、サイクラが行うべき自動化サンプリングに関する1つまたは複数のパラメータを定義することができる。これは、サイクラのユーザインタフェースとの任意なタイプの対話を介して行うことができる。定義されるパラメータは、限定されないが、上述したもののうちの任意のものであり得る。そして、ステップ5734において、ユーザは、治療のプログラミングを終了することができる。
【1017】
ステップ5736において、治療を開始する。ステップ5738において、治療は、サイクラによって自動化サンプルが取得されるべきときまで、プログラムされているように継続する。サンプルを取得るべきときになると、ステップ5740において、サイクラは
、治療プログラムによって指定されているようにサンプルを取得する。治療中に、取得すべきさらなるサンプルがある場合、サイクラは、ステップ5738に戻り、別のサンプルを取得すべきときまで治療を続ける。治療において取得するべきさらなるサンプルがない場合、ステップ5742において、サイクラは治療を完了する。
【1018】
図217は、サイクラを用いてプログラムし自動化排出物サンプルを収集するために使用することができる複数のステップ例を詳述するフローチャートを示す。実施形態例では、サイクラは、セット上のしるしを読み取るように構成されたセンサを含む。セット上のしるしは、セットまたは行うべき治療に関する情報を含むことができる。しるしはまた、サイクラによって自動化排出物サンプルを取得するべきであるか否かおよびその方法も指定することができる。
【1019】
図示するように、ステップ5750において、ユーザは、サイクラにセットを設置する。そして、サイクラは、セット5752上のしるしを読み取ることができる。ステップ5754において治療を開始する。しるしが、治療中に自動化サンプルを取得するべきではないことを示す場合、ステップ5760において、サイクラは治療を行い完了する。
【1020】
しるしが、自動化サンプリングレジメンまたはプログラムを指定する場合、ステップ5756において、サイクラによって自動化サンプルを取得するべきときまで、治療は、プログラムされているように続く。サンプルを取得するべきときになると、ステップ5758において、サイクラは、しるしによって指定されるようにサンプルを取得する。代替実施形態では、しるしは、サンプルを取得するべきであるか否かを指定することができ、サイクラは、事前にプログラムされたサンプリング手続きを行う。治療中に取得するべきさらなるサンプルがある場合、サイクラは、ステップ5756に戻り、別のサンプルを取得するべきときまで治療を続ける。治療中に取得するべきさらなるサンプルがない場合、ステップ5760において、サイクラは治療を完了する。
【1021】
本発明の態様について、その具体的な実施形態とともに記載したが、当業者には、多くの代替形態、変更形態および変形形態が明らかとなるであろうということは明白である。したがって、本明細書に示す本発明の実施形態は、限定するものではなく例示的なものとして意図されている。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を行うことができる。