特許第6783159号(P6783159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783159
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】複合シリカガラス製光拡散部材
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/04 20060101AFI20201102BHJP
   C03C 3/06 20060101ALI20201102BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20201102BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C03C17/04 Z
   C03C3/06
   G02B1/00
   G02B5/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-16833(P2017-16833)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-165643(P2017-165643A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年12月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-46569(P2016-46569)
(32)【優先日】2016年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 由希
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 武士
(72)【発明者】
【氏名】菅野 晃
(72)【発明者】
【氏名】武田 創太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−114186(JP,A)
【文献】 特開2013−227206(JP,A)
【文献】 特開2004−142996(JP,A)
【文献】 特開平07−300326(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/009054(WO,A1)
【文献】 特開2013−033188(JP,A)
【文献】 特開平11−160505(JP,A)
【文献】 特開平11−292568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
C03C 1/00−14/00
G02B 1/00− 1/08
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緻密質シリカガラス及びこの表面に形成された多孔質シリカガラスからなる複合シリカガラス製光拡散部材であって、
前記多孔質シリカガラスが、複数の球状シリカガラスからなる骨格を有し、その間隙により連通気孔部を形成した、中心気孔径が10〜20μmで気孔率が25〜40%の多孔体であり、
前記球状シリカガラスの平均径が30〜100μmであり、外表面に露出する各球状シリカガラスにおける測定長1μmの算術平均粗さRaを10回測定した平均値が0.8〜4.0nmであり、かつ、
前記多孔質シリカガラスは、前記緻密質シリカガラスとの界面から外表面まで均質な気孔分布を有することを特徴とする複合シリカガラス製光拡散部材。
【請求項2】
前記球状シリカガラスの断面真円度が0.80以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合シリカガラス製光拡散部材。
【請求項3】
前記多孔質シリカガラス中のNa、Mg、Al、K、及びFeの含有量がいずれも0.2ppm以下であり、Cuの含有量が0.05ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合シリカガラス製光拡散部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に紫外線又は紫外線を含む光源光の拡散に用いられる複合シリカガラス製光拡散部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光拡散部材には、光透過性の基材中に、基材と屈折率の異なる微細な粒子や気泡を存在させた光拡散部材や、すりガラスのように光透過性の基材表面にサンドブラスト又はエッチングなどの処理によって微細な凹凸を設けた光拡散部材等がある。これらの光拡散部材は、基材内部の微細な粒子や、表面の微細な凹凸形状によって紫外線などの光を散乱又は拡散させる。
【0003】
基材と屈折率の異なる微細な粒子による光拡散部材においては、粒子の屈折率、粒子形状又は濃度によって光拡散の程度を変えられるものの、通常は光透過率が40〜60%程度であり光の透過ロスが大きい。また、すりガラスのように基材表面に微細な凹凸を設けた光拡散部材においては、紫外線を拡散することはできても、拡散角度が狭く、十分な拡散性を得ることは難しい。
【0004】
このような光拡散部材として、例えば、特許文献1では、シリカ多孔体同士、又は、シリカ多孔体と、石英ガラス等のシリカ緻密体とがシリカ粉を介して接合されたシリカ接合体が開示されている。特許文献1では、シリカ多孔体とシリカ緻密体とを接着するのに、これらの材料と同質のシリカ粉を用いることで、多孔体の気孔全体を目詰まりさせることがなく、高い接合強度で接合されたシリカ接合体が得られることが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシリカ接合体では、石英ガラスとなるシリカ緻密体と、シリカ多孔体とをそれぞれ製造してから接合するため、加工のリードタイムが長く、コストも多大となり、生産性が十分といえるものではなかった。また、シリカ緻密体とシリカ多孔体との界面近傍にシリカ粉を用いた接着層が存在するため、シリカ接合体において、紫外線の透過効率が劣る傾向があり、また、シリカ粉が介在する接着層の厚さが不均一となる傾向があり、スポット光源から照射された紫外線強度の面内均一性が十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−114186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、緻密質シリカガラス及び多孔質シリカガラスからなる複合体で構成され、紫外線の透過率に優れ、紫外線強度の面内バラツキのない複合シリカガラス製光拡散部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材は、緻密質シリカガラス及びこの表面に形成された多孔質シリカガラスからなり、前記多孔質シリカガラスが、複数の球状シリカガラスからなる骨格を有し、その間隙により連通気孔部を形成した、中心気孔径が10〜20μmで気孔率が25〜40%の多孔体であり、前記球状シリカガラスは平均径が30〜100μmであり、外表面に露出する各球状シリカガラスにおける測定長1μmでの算術平均粗さRaを10回測定した平均値が0.8〜4.0nmであり、かつ、前記多孔質シリカガラスは、前記緻密質シリカガラスとの界面から外表面まで均質な気孔分布を有することを特徴とする。
【0009】
前記球状シリカガラスの断面真円度は0.80以上であることが好ましい。
前記多孔質シリカガラス中のNa、Mg、Al、K、及びFeの含有量はいずれも0.2ppm以下であり、Cuの含有量は0.05ppm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材は、上記構成を有することにより、紫外線の透過率に優れ、紫外線強度の面内均一性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、複合シリカガラス製光拡散部材を厚さ方向に切断した後の多孔質シリカガラス部分のSEM写真である。
図2図2は、複合シリカガラス製光拡散部材中の緻密質シリカガラスと多孔質シリカガラスとの界面近傍のSEM写真である。
図3図3は、複合シリカガラス製光拡散部材を構成する多孔質シリカガラスの細孔径粒子径分布を表すグラフである。
図4図4は、複合シリカガラス製光拡散部材を構成する多孔質シリカガラス中の受光角度(°)に対する相対透過率(%)の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材は、緻密質シリカガラス及びこの表面に形成された多孔質シリカガラスからなり、前記多孔質シリカガラスは、複数の球状シリカガラスからなる骨格を有し、その間隙により連通気孔部を形成した、中心気孔径が10〜20μmで気孔率が25〜40%の多孔体であり、前記球状シリカガラスの平均径が30〜100μmであり、外表面に露出する各球状シリカガラスにおける測定長1μmでの算術平均粗さRaを10回測定した平均値は0.8〜4.0nmであり、かつ、前記多孔質シリカガラスは、前記緻密質シリカガラスの界面から外表面まで均質な気孔分布を有する。
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材において、多孔質シリカガラスは、緻密質シリカガラス上に位置する。
【0013】
上記多孔質シリカガラスは、複数の球状シリカガラスからなる骨格構造を有している。シリカガラス破砕物を用いた非球状骨格からなる多孔体では、光源から照射される紫外線強度にバラツキが生じ易いことから、球状シリカガラスの骨格構造とすることが好ましい。本発明の複合シリカガラス製光拡散部材において、緻密質シリカガラスの表面に形成される多孔質シリカガラスは、その間隙により連通気孔部を形成した中心気孔径が10μm〜20μmで気孔率が25〜40%の多孔体である。前記中心気孔径が10μm未満、前記気孔率が25%未満では、出射される紫外線の透過率が不十分であり効率性が悪い。また前記中心気孔径が20μm超、前記気孔率が40%超では、上記多孔質シリカガラスの強度が低く、実用性に劣り、また紫外線の拡散性が不十分となる。
【0014】
上記球状シリカガラスは中実で透明なガラス構造体であることが好ましい。これにより、紫外線の透過率をより高く、かつ、より均一化することができるからである。
ここで、上述の中心気孔径とは、多孔質シリカガラス中の粒子同士の間に形成される間隙、及び気孔同士が連結した連通気孔径の中央値をいう。
【0015】
また、上記球状シリカガラスは、平均径が30〜100μm、好ましくは50〜80μmの球状体とされる。前記平均径が30μm未満では、紫外線の透過率が不十分であり、また前記平均径を30μm未満とするために、30μm未満の粒子径を多量に含むシリカガラス粒子(原料)を用いると、焼結時の収縮率が高く、応力集中が生じ、多孔質シリカガラスが反りやクラックを有するものとなり、光拡散部材として用いることができない。また、前記平均径が100μmを超える場合、紫外線の拡散性が不十分となり、また、多孔体の強度不足により、粒子の脱落が生じるといった不具合が生じる。さらに、球状シリカガラスの粒子径の最小値は10μmであり、最大値は250μmであり、この範囲内に粒子径分布のピーク値を1つ有することがより好ましい。これにより、紫外線透過の面内均一性が得られ、安定した拡散光を実現することができる。
【0016】
また、上記多孔質シリカガラスにおいては、この骨格をなす球状シリカガラスの平均径が30〜100μmであり、この骨格の間隙に形成される連通気孔部の中心気孔径が10〜20μmであって、かつ、前記中心気孔径が前記平均径の20%±5%の関係にあることがより最適である。これによって、光源からの紫外線の出射効率をより高めることができ、また出射される紫外線の拡散性をより高めることができる。
【0017】
上記球状シリカガラスについて、外表面に露出する各球状シリカガラスにおける測定長1μmでの算術平均粗さRaを10回測定した平均値は0.8〜4.0nmであり、好ましくは2.0〜3.0nmである。これによって、光源からの紫外線の透過性が高く、紫外線の出射効率をより高めることができ、さらに出射される紫外線の散乱性をより向上させることができる。
【0018】
上記多孔質シリカガラスは、前記緻密質シリカガラスとの界面から外表面まで均質な気孔分布を有する。これによって、紫外線が入射され、前記多孔質シリカガラスから出射される紫外線強度の面内バラツキが低い複合シリカガラス製光拡散部材を提供することができる。
【0019】
前記均質な気孔分布とは、上述の従来技術の如く、前記界面近傍の多孔質ガラスの気孔部にシリカ粉が密に或いは分散されて介在することで、気孔径及び/又は気孔率が前記界面近傍と外表面近傍とで5%を超えて相違することがなく、5%以下の均質性があることを意味する。これによって、前記出射される紫外線強度の面内バラツキを極めて低減することができる。
【0020】
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材について、当該球状シリカガラスの任意の断面における、断面真円度が0.80以上であることが好ましい。前記断面真円度が0.80以上であると、複数の球状シリカガラスにより形成される気孔、又は、これらの球状シリカガラスの間隙により形成される連通気孔部の径バラツキが十分に小さく、光源からの紫外線の出射先での拡散性をより高めることができる。本発明の複合シリカガラス製光拡散部材においては、上記多孔質シリカガラス中のNa、Mg、Al、K、及びFeの含有量が、いずれも0ppm以上0.2ppm以下であり、Cuの含有量は0ppm以上0.05ppm以下であることが好ましい。これらの金属は、多孔質シリカガラスの原料であるシリカガラス球状粒子の製造時に混入し得るものである。これらの金属の含有量を上記のとおり0ppm以上0.2ppm以下又は0ppm以上0.05ppm以下とすることによって、紫外線照射を受けても、これらの成分が蛍光等を発することがなく、また紫外線による多孔体の局部的劣化を生じることもなく、複合シリカガラス製光拡散部材の耐用寿命をより長くすることができる。
【0021】
また、上記緻密質シリカガラスは、気孔率が0.1%以下であり、380〜450nmの波長の紫外線に対して90%以上の透過率を有することが好ましい。これにより、上記多孔質シリカガラスとの積層構造によって、十分な耐使用強度が確保され、上述の多孔質シリカガラス特性を有効に機能させた複合シリカガラス製光拡散部材を構成することができる。
【0022】
前記多孔質シリカガラスの厚さは0.5mm以上3mm以下であり、前記緻密質シリカガラスの暑さは0.5mm以上5mm以下である。この組み合わせによって、実用的な強度が確保されるとともに、より効率的な紫外線の出射及び十分な拡散性が得られる複合シリカガラス製光拡散部材とすることができる。
【0023】
前記多孔質シリカガラスは、OH基含有量を550ppm以上1000ppm以下、Cl含有量を1ppm以下とするのがより好ましい。
これによって、紫外線照射に伴うシリカガラスの経時的劣化をより抑制することができる。
【0024】
また、上記緻密質シリカガラスは、多孔質シリカガラスと同等の純度にすることが好ましい。具体的には、上記したNa、Mg、Al、K、及びFeの含有量をいずれも0ppm以上0.2ppm以下、Cuの含有量を0ppm以上0.05ppm以下とし、かつ、多孔質シリカガラスと同等、すなわち、Na、Mg、Al、K、及びFeは差が0.04ppm以下、Cuは差が0.01ppm以下に近似させることがより好ましい。これによって、緻密質シリカガラスと多孔質シリカガラスとを一体化するに際して、上記金属のような不純物が多孔質シリカガラスに熱拡散し、蛍光等を発することがなく、また紫外線による多孔体の局部的劣化も防止することができ、複合シリカガラス製光拡散部材の耐用寿命をより長くすることができる。
【0025】
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材は、緻密質シリカガラスとして、例えば、石英ガラスを樹脂型に戴置し、ここに、結合材に分散させた中実の透明シリカガラス球状粒子を鋳込み、所定の温度下で一体化させることにより製造する。
【0026】
このような方法を用いることで、緻密質シリカガラス及び多孔質シリカガラスは、それぞれその表面のみが溶融状態となり、相互の接触点にいわゆるネック部が形成された状態となるため、シリカ粉などの接着剤を使用しなくても、高い接合強度が得られる。
【0027】
前記一体化させるときの温度は、通常1200〜1350℃である。1200℃未満であると、緻密質シリカガラスと多孔質シリカガラスとの接合が弱く、剥離し易い傾向がある。一方、1350℃を超えると、緻密質シリカガラスが失透することがある。
上記温度で一体化させることにより、得られる複合シリカガラス製光拡散部材において、多孔質シリカガラスは、緻密質シリカガラスとの界面近傍からその外表面まで均質な気孔分布を有することが可能となる。
上記結合材には、種々の汎用の材料を用いることができるが、例えば、シリカゾルが、高純度の複合シリカガラス製光拡散部材が得られる点から好ましい。
【0028】
このような方法で製造した複合シリカガラス製光拡散部材において、緻密質シリカガラスと多孔質シリカガラスとの界面における前記中実の透明シリカガラス球状粒子は略変形することなく、球状のまま、緻密質シリカガラスと接合していることがより好ましい。
【実施例】
【0029】
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材の評価に用いた装置及び方法を以下に示す。
【0030】
〔実施例1〕
(シリカゾルの調製)
結合剤となるシリカゾルは、オルトケイ酸テトラメチル(TEOS;tetramethylorthosilicate)、超純水、0.1mol/L塩酸、及びプロピレングリコールを、TEOS:超純水:0.1mol/L塩酸:プロピレングリコール=11.7:9:1:3の重量比で、スターラーで2.5時間攪拌した後、0.1mol/LアンモニアでpH4.5〜5.0に調整した。
【0031】
(複合シリカガラス製光拡散部材の作製)
多孔質シリカガラスの原料粉として中実の透明シリカガラス球状粒子を湿式分級することで平均粒子径が75μmとなるようにし、十分な酸洗浄を行い、乾燥後、シリカゾルと該原料粉とを5:12の重量比で混合し、このスラリー状の混合物を超音波洗浄機を用いて分散させた後、樹脂型に石英ガラス板状体(外径20mm;厚さ2mm)を型内下部に配置し、その上方より鋳込み、50℃で3時間放置しゲル化させた。このゲルと前記石英ガラス板状体の一体物を離型し、焼成冶具に高純度アルミナ材料を用いて、昇温速度0.5℃/minで1300℃まで昇温し、12時間保持することで焼成し、多孔質シリカガラスの厚さが1mmとなるように加工した。得られた焼成体を純水洗浄した後、乾燥した。
得られた複合シリカガラス製光拡散部材は、剥がれ等もなく、良好に接合されていた。
【0032】
(評価)
(1)組織観察
得られた複合シリカガラス製光拡散部材を厚さ方向に切断した後の多孔体部分をSEM装置で観察したところ、図1に示すように、中実の透明シリカガラス球状粒子が接合され、その隙間に連通孔が形成された骨格を有する多孔質構造が確認できた。
なお、SEM写真中に、球状粒子が一部融着したような構造が確認されたが、これは原料(中実の透明シリカガラス球状粒子)の製造段階で混入したものである。本発明においては、このような粒状体は存在しないほうがよいが、球状粒子の全個数の10%以下、好ましくは5%以下までは許容される。
【0033】
また、緻密質シリカガラスと多孔質シリカガラスとの界面近傍をSEMで観察したところ、図2に示すように、従来のシリカ接合体において認められたような、界面近傍の多孔質シリカガラス部にシリカ粉などの接着剤の残留がなく、多孔質シリカガラスが界面近傍からその外表面まで均質な気孔分布を有していることが確認された。
【0034】
(2)多孔質シリカガラスの細孔径分布
得られた複合シリカガラス光拡散部材中の多孔質シリカガラスを厚さ約0.8mmに切り出し、細孔径分布を測定したところ、図3に示すように、孔径は約5μmから約30μmの範囲に分布し、その中心気孔径は16.8μm、気孔率は37.7%であった。
なお、この測定は、JIS R 1634に基づき、以下の測定機器を用いて行った。
水銀ポロシメータ:AutoPore IV 9500((株)島津製作所製)
水銀表面張力:485.0dynes/cm
水銀接触角:130.0°
水銀密度:13.5335g/ml
【0035】
(3)多孔質シリカガラス中の球状シリカガラスの粒子径分布及び真円度
SEM写真から、粒子が結合した形状のものを除く、20個の粒子をランダムに選択し、その最長径(l1)と最短径(l2)を計測し、その平均値を各粒子の粒子径とした。球状シリカガラス粒子断面の真円度はl2/l1で算出した。
【0036】
この結果は、粒子径は約20μmから約100μmの範囲に分布し、その平均粒子径は39.2μmであった。
球状シリカガラス断面の真円度は0.93以上であった。
【0037】
(4)多孔質シリカガラス中の外表面に露出する測定長1μmの球状シリカガラスの表面粗さRa
算術平均粗さRaは、バネ定数3N/m、共振周波数75kHzのカンチレバー(シリコンカンチレバー)を用いて、ACモード(タッピングモード)で原子間力顕微鏡(Digital Instruments製)を使用し、各サンプルの表面形状をスキャンすることで測定した。測定は標準スキャナの最大範囲10μm四方で走査し、その後に、表面形状の特徴が反映されるように視野の絞込み(拡大)を行った。算術平均粗さRaの算出は1μm長さにて実施した。上記算術平均粗さRaを10回(n=10)測定し、平均値をとった。
【0038】
多孔質シリカガラス中の表面に露出する球状シリカガラス20個につき、各々10回、上記方法により算術表面粗さRaの測定を行った。その結果は、各々10回平均値で3.1〜3.9nmの範囲内にあった。
【0039】
(5)多孔質シリカガラスの光学特性
積分球式測定装置を用い、相対透過率の測定を行った。相対透過率は以下の式で定義され、各サンプルの出射角θ=0°の出射光量に対する角θの光量の割合を示す。
【数1】
【0040】
受光角0(θ=0)°における透過光量を100とした場合に相対透過率が50%の光量となる出射角度(分散度)は53°であり、広い拡散性が確認された。
【0041】
(6)緻密質シリカガラス及び多孔質シリカガラスの純度分析
得られた複合シリカガラス製光拡散部材の緻密質シリカガラス側から、加熱(130℃)したフッ化水素酸(50%)と硫酸(20%)との混酸で10μm厚さのエッチングを5回行い、5回目のエッチング液について、冷却後、純水で濃度調整し、ICP質量分析装置で測定した。また、多孔質シリカガラスを一部破砕し、この破砕粒につき、上記加熱混酸でエッチングを行い、このエッチング液について同様にして測定を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
〔比較例1〕
以下に示すように、特許文献1に記載の方法に従って、シリカ接合体を作製した。
(シリカ多孔体の作製)
粒径30〜60μm、平均粒子径50μmのシリカ粉末500gに、純水80g及び1%ポリビニルアルコール水溶液500gを添加してヘンシェルミキサーで混合し、シリカの造粒粉を得た。得られた造粒粉を直径200mm、高さ12mmの金型に入れ、0.5kN/cm2の圧力で加圧成形し、成形体を得た。
この成形体を、120℃で2時間乾燥させた後、1250〜1500℃の焼成温度にて10時間保持してシリカ多孔体を得た。
なお、得られたシリカ多孔体は、焼結シリカ粒子の平均粒子径が50μm、粒子分布幅が該平均粒子径の±50%以内にあり、気孔径が20μm、気孔率が45%、及び見掛け密度が2.2g/cm3であった。
【0044】
(シリカ接合体の作製)
得られたシリカ多孔体(10mm×10mm×30mm)の接合面(10mm×10mm)に、平均粒径15μmのシリカ粗粉と平均粒子径2μmのシリカ微粉とを6.5:3.5の重量比で混合したシリカ粉に対して、アクリルエマルジョン0.1重量%と、TEOS15重量%を添加した接合剤を塗布して、石英ガラス(10mm×10mm×30mm)の接合面(10mm×10mm)と合わせた。これを、大気中、1200℃で3時間熱処理して接合した。
【0045】
比較例1のシリカ接合体では、シリカ多孔体と石英ガラスとの界面近傍にシリカ粉が介在するため、実施例1に比べて、紫外線の透過効率が劣る、紫外線強度のシリカ接合体面内でのバラツキが大きくなる、といった結果となった。
図1
図2
図3
図4