【実施例】
【0029】
本発明の複合シリカガラス製光拡散部材の評価に用いた装置及び方法を以下に示す。
【0030】
〔実施例1〕
(シリカゾルの調製)
結合剤となるシリカゾルは、オルトケイ酸テトラメチル(TEOS;tetramethylorthosilicate)、超純水、0.1mol/L塩酸、及びプロピレングリコールを、TEOS:超純水:0.1mol/L塩酸:プロピレングリコール=11.7:9:1:3の重量比で、スターラーで2.5時間攪拌した後、0.1mol/LアンモニアでpH4.5〜5.0に調整した。
【0031】
(複合シリカガラス製光拡散部材の作製)
多孔質シリカガラスの原料粉として中実の透明シリカガラス球状粒子を湿式分級することで平均粒子径が75μmとなるようにし、十分な酸洗浄を行い、乾燥後、シリカゾルと該原料粉とを5:12の重量比で混合し、このスラリー状の混合物を超音波洗浄機を用いて分散させた後、樹脂型に石英ガラス板状体(外径20mm;厚さ2mm)を型内下部に配置し、その上方より鋳込み、50℃で3時間放置しゲル化させた。このゲルと前記石英ガラス板状体の一体物を離型し、焼成冶具に高純度アルミナ材料を用いて、昇温速度0.5℃/minで1300℃まで昇温し、12時間保持することで焼成し、多孔質シリカガラスの厚さが1mmとなるように加工した。得られた焼成体を純水洗浄した後、乾燥した。
得られた複合シリカガラス製光拡散部材は、剥がれ等もなく、良好に接合されていた。
【0032】
(評価)
(1)組織観察
得られた複合シリカガラス製光拡散部材を厚さ方向に切断した後の多孔体部分をSEM装置で観察したところ、
図1に示すように、中実の透明シリカガラス球状粒子が接合され、その隙間に連通孔が形成された骨格を有する多孔質構造が確認できた。
なお、SEM写真中に、球状粒子が一部融着したような構造が確認されたが、これは原料(中実の透明シリカガラス球状粒子)の製造段階で混入したものである。本発明においては、このような粒状体は存在しないほうがよいが、球状粒子の全個数の10%以下、好ましくは5%以下までは許容される。
【0033】
また、緻密質シリカガラスと多孔質シリカガラスとの界面近傍をSEMで観察したところ、
図2に示すように、従来のシリカ接合体において認められたような、界面近傍の多孔質シリカガラス部にシリカ粉などの接着剤の残留がなく、多孔質シリカガラスが界面近傍からその外表面まで均質な気孔分布を有していることが確認された。
【0034】
(2)多孔質シリカガラスの細孔径分布
得られた複合シリカガラス光拡散部材中の多孔質シリカガラスを厚さ約0.8mmに切り出し、細孔径分布を測定したところ、
図3に示すように、孔径は約5μmから約30μmの範囲に分布し、その中心気孔径は16.8μm、気孔率は37.7%であった。
なお、この測定は、JIS R 1634に基づき、以下の測定機器を用いて行った。
水銀ポロシメータ:AutoPore IV 9500((株)島津製作所製)
水銀表面張力:485.0dynes/cm
水銀接触角:130.0°
水銀密度:13.5335g/ml
【0035】
(3)多孔質シリカガラス中の球状シリカガラスの粒子径分布及び真円度
SEM写真から、粒子が結合した形状のものを除く、20個の粒子をランダムに選択し、その最長径(l
1)と最短径(l
2)を計測し、その平均値を各粒子の粒子径とした。球状シリカガラス粒子断面の真円度はl
2/l
1で算出した。
【0036】
この結果は、粒子径は約20μmから約100μmの範囲に分布し、その平均粒子径は39.2μmであった。
球状シリカガラス断面の真円度は0.93以上であった。
【0037】
(4)多孔質シリカガラス中の外表面に露出する測定長1μmの球状シリカガラスの表面粗さRa
算術平均粗さRaは、バネ定数3N/m、共振周波数75kHzのカンチレバー(シリコンカンチレバー)を用いて、ACモード(タッピングモード)で原子間力顕微鏡(Digital Instruments製)を使用し、各サンプルの表面形状をスキャンすることで測定した。測定は標準スキャナの最大範囲10μm四方で走査し、その後に、表面形状の特徴が反映されるように視野の絞込み(拡大)を行った。算術平均粗さRaの算出は1μm長さにて実施した。上記算術平均粗さRaを10回(n=10)測定し、平均値をとった。
【0038】
多孔質シリカガラス中の表面に露出する球状シリカガラス20個につき、各々10回、上記方法により算術表面粗さRaの測定を行った。その結果は、各々10回平均値で3.1〜3.9nmの範囲内にあった。
【0039】
(5)多孔質シリカガラスの光学特性
積分球式測定装置を用い、相対透過率の測定を行った。相対透過率は以下の式で定義され、各サンプルの出射角θ=0°の出射光量に対する角θの光量の割合を示す。
【数1】
【0040】
受光角0(θ=0)°における透過光量を100とした場合に相対透過率が50%の光量となる出射角度(分散度)は53°であり、広い拡散性が確認された。
【0041】
(6)緻密質シリカガラス及び多孔質シリカガラスの純度分析
得られた複合シリカガラス製光拡散部材の緻密質シリカガラス側から、加熱(130℃)したフッ化水素酸(50%)と硫酸(20%)との混酸で10μm厚さのエッチングを5回行い、5回目のエッチング液について、冷却後、純水で濃度調整し、ICP質量分析装置で測定した。また、多孔質シリカガラスを一部破砕し、この破砕粒につき、上記加熱混酸でエッチングを行い、このエッチング液について同様にして測定を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
〔比較例1〕
以下に示すように、特許文献1に記載の方法に従って、シリカ接合体を作製した。
(シリカ多孔体の作製)
粒径30〜60μm、平均粒子径50μmのシリカ粉末500gに、純水80g及び1%ポリビニルアルコール水溶液500gを添加してヘンシェルミキサーで混合し、シリカの造粒粉を得た。得られた造粒粉を直径200mm、高さ12mmの金型に入れ、0.5kN/cm
2の圧力で加圧成形し、成形体を得た。
この成形体を、120℃で2時間乾燥させた後、1250〜1500℃の焼成温度にて10時間保持してシリカ多孔体を得た。
なお、得られたシリカ多孔体は、焼結シリカ粒子の平均粒子径が50μm、粒子分布幅が該平均粒子径の±50%以内にあり、気孔径が20μm、気孔率が45%、及び見掛け密度が2.2g/cm
3であった。
【0044】
(シリカ接合体の作製)
得られたシリカ多孔体(10mm×10mm×30mm)の接合面(10mm×10mm)に、平均粒径15μmのシリカ粗粉と平均粒子径2μmのシリカ微粉とを6.5:3.5の重量比で混合したシリカ粉に対して、アクリルエマルジョン0.1重量%と、TEOS15重量%を添加した接合剤を塗布して、石英ガラス(10mm×10mm×30mm)の接合面(10mm×10mm)と合わせた。これを、大気中、1200℃で3時間熱処理して接合した。
【0045】
比較例1のシリカ接合体では、シリカ多孔体と石英ガラスとの界面近傍にシリカ粉が介在するため、実施例1に比べて、紫外線の透過効率が劣る、紫外線強度のシリカ接合体面内でのバラツキが大きくなる、といった結果となった。