(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783164
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20201102BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20201102BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20201102BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
F01N3/20 C
F01N3/24 E
F01N3/035 E
F01N3/025 101
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-35105(P2017-35105)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-141386(P2018-141386A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西澤 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 高之
(72)【発明者】
【氏名】寺門 貴芳
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−245952(JP,A)
【文献】
特開2013−245951(JP,A)
【文献】
特開平03−152446(JP,A)
【文献】
特開2009−053159(JP,A)
【文献】
特開平06−136678(JP,A)
【文献】
特開2011−179439(JP,A)
【文献】
特開平07−098254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
B01D 53/73
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94−53/96
B01J 21/00−38/74
C01G 49/00−49/08
B01D 46/00−46/54
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/74
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが流通する排気管に設けられ、炭化水素の酸化作用を促進する酸化触媒を有し、前記排ガスが流通する触媒部と、
前記排気管において前記触媒部よりも排ガス流れの下流側に設けられたフィルター部と、
前記触媒部と前記フィルター部との間、又は、前記触媒部よりも排ガス流れの上流側において、前記排気管内の前記排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の炭化水素の濃度分布を測定する濃度測定部と、
を備える排ガス処理装置。
【請求項2】
前記濃度測定部は、第1光ファイバと、前記第1光ファイバと並列に配置され、炭化水素の酸化作用を促進する酸化触媒が被覆された第2光ファイバを有し、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバが、前記排気管内の前記排ガスの流通方向に対して垂直方向断面に面状に配置される請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記排ガスを排出するエンジンの運転条件と、前記排気管内の濃度分布との関係に関するデータが予め記録されている記憶部と、
前記記憶部に記録されている前記データと、前記エンジンの運転時に前記濃度測定部で測定された前記排気管内の濃度分布に基づいて、前記エンジンの運転時における前記排気管内の炭化水素の濃度の高低を判断する判断部と、
を更に備える請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記濃度測定部で測定された前記排気管内の炭化水素の濃度分布に基づいて、未燃燃料の供給量を調整する調整部を更に備える請求項1から3のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記判断部は、前記エンジンの運転時における前記排気管内の炭化水素の濃度の高低に関する判断結果に基づいて、前記触媒部が閉塞しているか否か又は閉塞が起こり始めているか否かを判断する請求項3に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記排気管内の炭化水素の濃度分布に基づいて、前記フィルター部の再生処理のため、前記触媒部に対して未燃燃料の供給を開始する、又は、前記未燃燃料の供給を停止する調整部を更に備える請求項1から3のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記触媒部と前記フィルター部との間、又は、前記触媒部よりも排ガス流れの上流側において、前記排気管内の前記排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の温度分布を測定する温度測定部を更に備える請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記排ガスを排出するエンジンの運転条件と、前記排気管内の温度分布との関係に関するデータが予め記録されている記憶部と、
前記記憶部に記録されている前記データと、前記エンジンの運転時に前記温度測定部で測定された前記排気管内の温度分布に基づいて、前記エンジンの運転時における前記排気管内の前記排ガスの温度の高低を判断する判断部と、
を更に備える請求項7に記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
前記判断部は、前記エンジンの運転時における前記排気管内の前記排ガスの温度の高低に関する判断結果に基づいて、前記触媒部が閉塞しているか否か又は閉塞が起こり始めているか否かを判断する請求項8に記載の排ガス処理装置。
【請求項10】
前記排気管内の前記排ガスの温度分布に基づいて、前記フィルター部の再生処理のため、前記触媒部に対して未燃燃料の供給を開始する、又は、前記未燃燃料の供給を停止する調整部を更に備える請求項7に記載の排ガス処理装置。
【請求項11】
前記触媒部が閉塞している、又は、閉塞が起こり始めていると判断された場合、前記触媒部の閉塞に関する警報又は表示を実行する警報部を更に備える請求項5又は9に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排ガス処理装置として、排ガス中のPM(粒子状物質)を捕集し除去するため、酸化触媒部(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)とフィルター部(DPF:Diesel particulate filter)を有するDPFシステムが用いられている。DPFシステムは、排気管に設けられ、フィルター部は、酸化触媒部の下流側に設けられる。
【0003】
フィルター部で捕集された粒子状物質(PM)は、未燃燃料を酸化触媒へ供給し、酸化触媒における酸化発熱によって燃焼されて、フィルター部が再生される。フィルター部の再生処理は、捕集された粒子状物質が所定量に達したとき、又は、所定の時間間隔で、手動又は自動で行われる。
【0004】
下記の特許文献1では、DOC(酸化触媒部)とDPF(フィルター部)を有し、アーリーポスト噴射によるDOCの昇温排ガスとレイトポスト噴射による未燃成分の供給とを組み合わせたディーゼルエンジンの排気浄化装置において、炭化水素(HC)の大気中への放出を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−31833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DPFシステムでは、ディーゼルエンジンの運転負荷が低く、ディーゼルエンジンからの排ガス温度が低い状態が続くと、酸化触媒部の上流側の端面にすすが付着して堆積していき、酸化触媒部の閉塞が徐々に進行していく。また、酸化触媒部が閉塞した場合、背圧が増大し、通常運転時において燃費が悪化する。
【0007】
さらに、酸化触媒部が閉塞した場合、フィルター部の再生処理時において、酸化触媒部に供給された未燃燃料が十分に酸化されず、後流側へそのまま通り抜ける(スリップする)ため、フィルター部入口を十分に昇温させることができない。その結果、フィルター部入口の温度を上昇させる制御が継続して、酸化触媒部への未燃燃料の供給が更に継続するため、燃費が悪化する。また、レイトポスト噴射によって未燃燃料が供給される場合、ディーゼルエンジンの潤滑油が未燃燃料によって希釈されるオイルダイリューションの発生リスクも増大する。
【0008】
またさらに、酸化触媒部をスリップした未燃燃料は、フィルター部において酸化発熱し、フィルター部内部が所定温度以上に昇温されるため、フィルター部が焼損してしまうなどの問題が発生するおそれがある。
【0009】
酸化触媒部の閉塞を判断するため、レイトポスト噴射における未燃燃料の供給量、フィルター部の入口温度、フィルター部の出口温度、酸化触媒部の出入口の差圧などを測定することが行われているが、感度が低いため、閉塞判断が遅くなるという課題がある。
【0010】
また、ディーゼルエンジンの運転負荷が低い期間を計測して閉塞判断をする場合、直接的に閉塞を判断していないため、余裕を見て閉塞除去を行うことになる。その結果、閉塞除去の頻度が高くなり、燃費が悪化するという課題がある。
【0011】
さらに、フィルター部の再生処理の開始制御は、後処理装置の出口からの白煙排出を防止する観点から、酸化触媒部が十分な酸化活性を有するまで昇温した後に未燃燃料を噴射させる必要がある。そのため、酸化触媒部の入口温度のみで判断したり、レイトポストの噴射量を緩やかに増大させることを行っている。したがって、余裕を見て必要以上に再生処理が継続されるため、酸化触媒部への未燃燃料の供給が継続することによる燃費の悪化や、オイルダイリューションの発生、フィルター部の焼損が発生するおそれがある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排気管内における排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の炭化水素の濃度分布を測定することが可能な排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る排ガス処理装置は、排ガスが流通する排気管に設けられ、炭化水素の酸化作用を促進する酸化触媒を有し、前記排ガスが流通する触媒部と、前記排気管において前記触媒部よりも排ガス流れの下流側に設けられたフィルター部と、前記触媒部と前記フィルター部との間、又は、前記触媒部よりも排ガス流れの上流側において、前記排気管内の前記排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の炭化水素の濃度分布を測定する濃度測定部とを備える。
【0014】
この構成によれば、触媒部とフィルター部との間、又は、触媒部よりも排ガス流れの上流側における排気管内の排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の炭化水素の濃度分布を測定できる。
【0015】
上記態様において、前記濃度測定部は、第1光ファイバと、前記第1光ファイバと並列に配置され、炭化水素の酸化作用を促進する酸化触媒が被覆された第2光ファイバを有し、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバが、前記排気管内の前記排ガスの流通方向に対して垂直方向断面に面状に配置されてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1光ファイバの長さ方向に沿った温度分布が測定される。また、第2光ファイバには酸化触媒が被覆され、酸化触媒は炭化水素の酸化作用によって発熱する。第1光ファイバと第2光ファイバが、排気管内の排ガスの流通方向に対して垂直方向断面に沿って面状に配置されていることから、第2光ファイバの長さ方向に沿った温度分布が測定され、第1光ファイバの長さ方向に沿った温度分布と比較されることによって、排気管内の排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の濃度分布を測定できる。
【0017】
上記態様において、前記排ガスを排出するエンジンの運転条件と、前記排気管内の濃度分布との関係に関するデータが予め記録されている記憶部と、前記記憶部に記録されている前記データと、前記エンジンの運転時に前記濃度測定部で測定された前記排気管内の濃度分布に基づいて、前記エンジンの運転時における前記排気管内の炭化水素の濃度の高低を判断する判断部とを更に備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、エンジンの運転時に濃度測定部で測定された排気管内の炭化水素の濃度分布が、予め記憶部に記録されたデータと比較されることによって、エンジンの運転時に、排気管内を流通している炭化水素の濃度が高い領域又は低い領域を判断できる。
【0019】
上記態様において、前記濃度測定部で測定された前記排気管内の炭化水素の濃度分布に基づいて、未燃燃料の供給量を調整する調整部を更に備えてもよい。
【0020】
この構成によれば、濃度測定部で測定された排気管内の炭化水素の濃度分布に基づいて、未燃燃料の供給量が調整されることから、触媒部の閉塞を確実に防止することができる。
【0021】
上記態様において、前記判断部は、前記エンジンの運転時における前記排気管内の炭化水素の濃度の高低に関する判断結果に基づいて、前記触媒部が閉塞しているか否か又は閉塞が起こり始めているか否かを判断してもよい。
【0022】
この構成によれば、エンジンの運転時に、排気管内を流通している炭化水素の濃度の高低に関する判断結果に基づいて、触媒部が閉塞しているか否か又は閉塞が起こり始めているか否かを判断できる。
【0023】
上記発明において、前記排気管内の炭化水素の濃度分布に基づいて、前記フィルター部の再生処理のため、前記触媒部に対して未燃燃料の供給を開始する、又は、前記未燃燃料の供給を停止する調整部を更に備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、濃度測定部で測定された排気管内の炭化水素の濃度分布に基づいて、触媒部に対して未燃燃料の供給を開始して、フィルター部の再生処理を行うことができ、また、触媒部に対する未燃燃料の供給を停止して、フィルター部の再生処理を停止できる。
【0025】
上記態様において、前記触媒部と前記フィルター部との間、又は、前記触媒部よりも排ガス流れの上流側において、前記排気管内の前記排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の温度分布を測定する温度測定部を更に備えてもよい。
【0026】
この構成によれば、触媒部とフィルター部との間、又は、触媒部よりも排ガス流れの上流側における排気管内の排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の温度分布を測定できる。
【0027】
上記態様において、前記排ガスを排出するエンジンの運転条件と、前記排気管内の温度分布との関係に関するデータが予め記録されている記憶部と、前記記憶部に記録されている前記データと、前記エンジンの運転時に前記温度測定部で測定された前記排気管内の温度分布に基づいて、前記エンジンの運転時における前記排気管内の前記排ガスの温度の高低を判断する判断部とを更に備えてもよい。
【0028】
この構成によれば、エンジンの運転時に温度測定部で測定された排気管内の排ガスの温度分布が、予め記憶部に記録されたデータと比較されることによって、エンジンの運転時に、排気管内を流通している排ガスの温度が高い領域又は低い領域を判断できる。
【0029】
上記態様において、前記判断部は、前記エンジンの運転時における前記排気管内の前記排ガスの温度の高低に関する判断結果に基づいて、前記触媒部が閉塞しているか否か又は閉塞が起こり始めているか否かを判断してもよい。
【0030】
この構成によれば、エンジンの運転時に、排気管内を流通している排ガスの温度の高低に関する判断結果に基づいて、触媒部が閉塞しているか否か又は閉塞が起こり始めているか否かを判断できる。
【0031】
上記態様において、前記排気管内の前記排ガスの温度分布に基づいて、前記フィルター部の再生処理のため、前記触媒部に対して未燃燃料の供給を開始する、又は、前記未燃燃料の供給を停止する調整部を更に備えてもよい。
【0032】
この構成によれば、温度測定部で測定された排気管内の排ガスの温度分布に基づいて、触媒部に対して未燃燃料の供給を開始して、フィルター部の再生処理を行うことができ、また、触媒部に対する未燃燃料の供給を停止して、フィルター部の再生処理を停止できる。
【0033】
上記態様において、前記触媒部が閉塞している、又は、閉塞が起こり始めていると判断された場合、前記触媒部の閉塞に関する警報又は表示を実行する警報部を更に備えてもよい。
【0034】
この構成によれば、触媒部の閉塞に関する警報又は表示が実行されて、触媒部が閉塞している、又は、閉塞が起こり始めていることを知らせることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、排気管内における排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の炭化水素の濃度分布を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエンジン及び排ガス処理装置を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る温度・濃度測定部及び制御部を示す構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る光ファイバの配置例を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る光ファイバの配置例を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光ファイバの配置例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置10は、
図1に示すように、ディーゼルエンジン1(以下「エンジン1」という。)から排出される排ガスを浄化して大気へ放出する装置であり、排ガスが流通する排気管9に設けられる。
【0038】
エンジン1は、過給機2を備える。過給機2は、タービン3と、タービン3と同軸で接続されてタービン3によって駆動されるコンプレッサ4を備える。過給機2のコンプレッサ4から吐出された空気は、空気管5を通過して空気冷却器6に供給され、空気冷却器6で冷却される。
【0039】
空気冷却器6で冷却された空気は、スロットルバルブ7で開度を制御された後、吸気管8を通過して、シリンダ毎に設けられた吸気ポートからエンジン1に吸入される。
【0040】
エンジン1では、コモンレール(蓄圧器)で蓄圧された高圧燃料が、コモンレール制御装置25によって制御された噴射時期及び噴射量で、シリンダ毎に設けられた燃料噴射弁26から噴射される。噴射された高圧燃料は、吸気ポートから吸入された空気と混合して燃焼される。
【0041】
エンジン1において燃料が燃焼されて生じた燃焼ガス、すなわち、排ガスは、シリンダ毎に設けられた排気ポートが集合した排気集合管11を通過して、過給機2のタービン3へ供給される。排ガスは、タービン3を駆動してコンプレッサ4の動力源となった後、排気管9を通って排ガス処理装置10へ排出される。
【0042】
また、排気集合管11の途中から、EGR(排ガス再循環)管22が分岐されて、排ガスの一部(EGRガス)が、EGR管22を通過し、EGRクーラ23で降温され、EGRガスは、EGR弁24で流量が制御される。EGR管22を通過したEGRガスは、吸気管8においてスロットルバルブ7よりも下流側で空気と合流される。
【0043】
排ガス処理装置10は、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)14及びフィルター(DPF:Diesel particulate filter)15を有するDPFシステム12などを備える。
【0044】
排気管9を通過して排ガス処理装置10へ排出された排ガスは、酸化触媒14へ供給される。そして、排ガスは、酸化触媒14によって、炭化水素成分(HC)や一酸化炭素(CO)が浄化された後、フィルター15へ供給されて、粒子状物質(PM)がフィルター15で捕集される。
【0045】
酸化触媒14及びフィルター15は、それぞれ、複数の孔が集合した形状(例えばハニカム構造)を有し、排ガスが通過可能である。フィルター15は、排ガス入口側の孔と出口側の孔が互い違いに目封じされており、孔と孔の間の壁部を排ガスが通過することで粒子状物質が捕集される。
【0046】
酸化触媒14は、排気管9に設けられ、触媒作用によって酸化触媒14を通過した排出ガス中の炭化水素成分を酸化する。酸化触媒14では、酸化発熱によって温度上昇が生じる。
【0047】
フィルター15は、排気管9に設けられ、排ガス中の粒子状物質を捕集する。フィルター15は、捕集された粒子状物質を燃焼することによって再生する。再生処理は、例えば、酸化触媒14の入口へレイトポスト噴射によって未燃燃料が供給され、酸化触媒14で炭化水素成分を酸化することで発生する反応熱(酸化発熱)によって、フィルター15に捕集された粒子状物質が燃焼されることによって行われる。粒子状物質が燃焼されて生じる水と二酸化炭素が、排気出口管21から外部に排出される。これにより、フィルター15に捕集された粒子状物質が除去されて、フィルター15が再生される。このような未燃燃料の供給(レイトポスト噴射)は、フィルター15の再生を行う際に、酸化触媒14の入口が250℃など所定温度以上となった時に開始される。
【0048】
温度・濃度測定部31は、酸化触媒14とフィルター15の間に設置される。温度・濃度測定部31は、
図2に示すように、光ファイバ32と、光源部33と、光検出部34と、温度算出部35と、濃度算出部36を有する。光ファイバ32には、光源部33からパルス光が入射される。光ファイバ32に入射した光は、光ファイバ32内部で散乱を起こしながら、進行する。散乱光のうちラマン散乱光(ストースク光とアンチストークス光)には、温度依存性がある。そこで、ラマン散乱光の強度を検出することによって、光ファイバ32の長さ方向に沿った温度分布を算出することができる。
【0049】
光ファイバ32は、2本の光ファイバ32a,32bが並列して設けられる。2本の光ファイバ32のうち1本の光ファイバ32aは、表面に酸化触媒がコーティングされず、他方残りの1本の光ファイバ32bは、表面に酸化触媒がコーティングされる。酸化触媒は、炭化水素が接触すると、酸化反応が生じて発熱する。
【0050】
温度算出部35は、光検出部34で検出されたラマン散乱光の強度に基づいて、酸化触媒がコーティングされていない光ファイバ32aの長さ方向に沿った温度分布を算出する。
【0051】
炭化水素濃度に応じて、酸化反応による発熱温度が変化することから、光ファイバ32bにコーティングされた酸化触媒が発熱する。したがって、ラマン散乱光の強度を検知して、光ファイバ32bの長さ方向に沿った温度分布を算出することで、炭化水素濃度の影響による温度分布を算出できる。酸化触媒がコーティングされた光ファイバ32bは、排気管9内の温度にも影響されることから、酸化触媒がコーティングされていない光ファイバ32aで検出される温度と、酸化触媒がコーティングされた光ファイバ32bで検出される温度とを比較することによって、炭化水素濃度を算出できる。濃度算出部36は、2本の光ファイバ32a,32bを介して光検出部34で検出されたラマン散乱光の強度に基づいて、光ファイバ32の長さ方向に沿った炭化水素の濃度分布を算出する。
【0052】
光ファイバ32は、酸化触媒14の出口とフィルター15の入口の間に設置され、酸化触媒14の出口側における排気管9内の排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の炭化水素の濃度分布を測定する。また、光ファイバ32は、酸化触媒14よりも排ガス流れの上流側に設置され、酸化触媒14の入口側における排気管9内の排ガスの流通方向に対して垂直方向断面の炭化水素の濃度分布を測定する。光ファイバ32は、排気管9内の排ガスの流通方向に対して垂直方向断面内に面状に配置される。
【0053】
光ファイバ32は、例えば、
図3に示すように、光ファイバ32の配置領域の中間部では一方向、例えば排気管9の軸方向に対して平行に配置されており、配置領域の端部では、中間部で光ファイバ32が平行に配置されるように折り返して配置される。また、光ファイバ32は、
図4に示すように、光ファイバ32の配置領域の中間部で一方向に対して平行に配置するだけでなく、一方向に直交する方向に対しても平行に配置して格子状に配置してもよい。このときも、端部では、光ファイバ32は折り返して配置される。さらに、光ファイバ32は、
図5に示すように、面内に螺旋状に配置されてもよい。
【0054】
光ファイバ32の配置形状は、メモリ42に予め記録されており、光ファイバ32の長さ方向の位置と、排気管9内の光ファイバ32の位置との対応関係が予め特定されている。これにより、光ファイバ32の長さ方向に沿った温度分布又は濃度分布に基づいて、排気管9内の温度分布又は濃度分布を算出できる。
【0055】
制御部41は、
図2に示すように、メモリ42と、判断部43と、調整部44と、警報部45などを有する。制御部41の動作は、予め記録されたプログラムを実行して、CPU等のハードウェア資源によって実現される。
【0056】
メモリ42は、記憶部の一例であり、メモリ42には、排ガスを排出するエンジン1の運転条件と、各運転条件の通常時における排気管9内の垂直方向断面における温度分布又は濃度分布との関係に関するデータが予め記録されている。
【0057】
判断部43は、メモリ42に記録されているデータと、エンジン1の実際の運転時に温度・濃度測定部31で測定された排気管9内の温度分布に基づいて、エンジン1の実際の運転時における排気管9内の温度の高低を判断する。
【0058】
また、判断部43は、メモリ42に記録されているデータと、エンジン1の実際の運転時に温度・濃度測定部31で測定された排気管9内の濃度分布に基づいて、エンジン1の実際の運転時における排気管9内の炭化水素の濃度の高低を判断する。
【0059】
例えば、酸化触媒14の出口側における温度分布を測定して、温度が低下している場合、酸化触媒14が閉塞して、酸化触媒14で酸化反応が生じていない可能性がある。また、酸化触媒14の出口側における未燃燃料の濃度分布を測定して、酸化触媒14から排出される未燃燃料の濃度が上昇している場合や濃度分布に偏りがある場合、酸化触媒14が閉塞しており、又は、閉塞が起こり始めており、酸化触媒14で酸化反応が生じていない可能性がある。これらの場合、酸化触媒14入口の閉塞除去処理を実行する。閉塞除去処理は、未燃燃料を供給せずに、筒内燃料噴射パターンを切り替えたり、スロットルバルブ7を閉鎖したりすること等によって、酸化触媒14の入口を例えば400℃に昇温する。また、このタイミングで、すなわち、酸化触媒14が閉塞しており、又は、閉塞が起こり始めていると判断されたとき、警報部45は、オペレータ等に対して酸化触媒14の閉塞発生に関する警報や表示などを行う。
【0060】
調整部44は、温度・濃度測定部31で測定された排気管9内の炭化水素の濃度分布に基づいて、レイトポスト噴射による未燃燃料の供給量を調整する。例えば、酸化触媒14の入口側における未燃燃料の濃度分布を測定して、酸化触媒14に対して、所定量の未燃燃料が供給されているか否かを確認できる。ここで、酸化触媒14に対して供給される未燃燃料の所定量とは、酸化触媒14を通り抜けた(スリップした)炭化水素が所定値以下となる値である。
また、調整部44は、温度・濃度測定部31で測定された酸化触媒14出口の炭化水素の濃度分布に基づいて、フィルター15の再生処理のため、酸化触媒14に対して未燃燃料の供給、すなわち、レイトポスト噴射を開始する。
【0061】
次に、本実施形態に係る排ガス処理装置10の動作及び作用効果について説明する。
【0062】
温度・濃度測定部31の光ファイバ32が酸化触媒14の出口側に設けられている場合、酸化触媒14の出口側の炭化水素濃度及び排ガス温度が測定される。酸化触媒14の出口側の炭化水素濃度は、酸化触媒がコーティングされていない光ファイバ32aで検出される温度と、酸化触媒がコーティングされた光ファイバ32bで検出される温度とを比較することによって算出される。また、酸化触媒14の出口側の温度は、酸化触媒がコーティングされていない光ファイバ32aで検出される。
【0063】
そして、メモリ42に記録されているデータと、エンジン1の運転時に温度・濃度測定部31で測定された排気管9内の濃度分布に基づいて、エンジン1の運転時における排気管9内の酸化触媒14の出口側の炭化水素濃度の高低が判断される。また、メモリ42に記録されているデータと、エンジン1の運転時に温度・濃度測定部31で測定された排気管9内の温度分布に基づいて、エンジン1の運転時における排気管9内の酸化触媒14の出口側の温度の高低が判断される。
【0064】
酸化触媒14の出口側における未燃燃料である炭化水素の濃度分布を測定して、酸化触媒14から排出される炭化水素の濃度が上昇している場合、酸化触媒14が閉塞して、酸化触媒14で酸化反応が生じていない可能性がある。また、濃度分布に偏りがある場合は、閉塞が徐々に進行している可能性がある。この場合、酸化触媒14入口の閉塞除去処理を実行する。また、酸化触媒14の出口側における温度分布を測定して、酸化触媒14の出口側の温度が低下している場合、酸化触媒14が閉塞して、酸化触媒14で酸化反応が生じていない可能性がある。この場合、酸化触媒14入口の閉塞除去処理を実行する。
【0065】
さらに、閉塞除去処理を行った後、酸化触媒14から排出される未燃燃料である炭化水素の濃度が低下している場合、又は、濃度分布に偏りが無くなっている場合は、酸化触媒14の出口が閉塞されていないと判断できる。また、閉塞除去処理を行って、酸化触媒14の出口側の温度が上昇している場合は、酸化触媒14が閉塞されていないと判断できる。
【0066】
また、酸化触媒14の出口側において測定された未燃燃料である炭化水素の濃度に基づいて、酸化触媒14の閉塞除去処理が完了し、酸化触媒14の活性によって酸化触媒14をスリップする炭化水素成分が低減したことが確認された後、フィルター15の再生処理のため、酸化触媒14の入口へレイトポスト噴射を開始する。さらに、酸化触媒14の出口側において測定された未燃燃料である炭化水素の濃度に基づいて、所定値を超えないように、レイトポスト噴射における未燃燃料の噴射量を調節する。
【0067】
以上、本実施形態によれば、酸化触媒14の出口側の温度に加えて、酸化触媒14の出口側における未燃燃料の濃度を判断基準として、酸化触媒14の閉塞の有無を判断できることから、判断精度が上がり、短時間で確実に閉塞の有無を判断できる。したがって、閉塞している状態が継続したり、閉塞除去処理が必要以上に継続したりする状態を回避できる。そのため、酸化触媒14への未燃燃料の供給が継続することによる燃費の悪化や、オイルダイリューションの発生、フィルター15の焼損を防止できる。
【0068】
温度・濃度測定部31が酸化触媒14の入口側に設けられている場合、フィルター15の再生処理の際、酸化触媒14の入口側の炭化水素の濃度及び温度が測定される。酸化触媒14の入口側の炭化水素の濃度は、酸化触媒がコーティングされていない光ファイバ32aで検出される温度と、酸化触媒がコーティングされた光ファイバ32bで検出される温度とを比較することによって算出される。また、酸化触媒14の入口側の温度は、酸化触媒がコーティングされていない光ファイバ32aで検出される。
【0069】
そして、メモリ42に記録されているデータと、エンジン1の運転時に温度・濃度測定部31で測定された排気管9内の濃度分布に基づいて、エンジン1の運転時における排気管9内の酸化触媒14の入口側の炭化水素濃度の高低が判断される。また、メモリ42に記録されているデータと、エンジン1の運転時に温度・濃度測定部31で測定された排気管9内の温度分布に基づいて、エンジン1の運転時における排気管9内の酸化触媒14の入口側の温度の高低が判断される。
【0070】
酸化触媒14の入口側における温度分布を測定して、酸化触媒14の入口までの不具合を確認する。また、酸化触媒14の入口側における温度分布を測定して、所定温度(例えば250℃〜300℃)以上に上昇したとき、レイトポスト噴射による未燃燃料の供給を開始する。また、酸化触媒14の入口側における未燃燃料である炭化水素の濃度分布を測定して、酸化触媒14に対して所定量の未燃燃料が供給されていないと判断されたとき、オペレータ等に対して警報や表示などを行う。
【0071】
これにより、酸化触媒14の入口側の温度で再生処理に適した温度(例えば250℃〜300℃)に達した時、レイトポスト噴射による未燃燃料の供給を開始し、酸化触媒14に対して所定量の未燃燃料を供給し終えたと判断されたとき、未燃燃料の供給を停止する。その結果、フィルター15の再生処理において、昇温ステップの開始時期を判断できるだけでなく、再生処理の停止時期も判断できる。したがって、必要以上に再生処理が継続されることがないため、酸化触媒14への未燃燃料の供給が継続することによる燃費の悪化や、オイルダイリューションの発生、フィルター15の焼損を防止できる。
【符号の説明】
【0072】
1 :ディーゼルエンジン(エンジン)
2 :過給機
3 :タービン
4 :コンプレッサ
5 :空気管
6 :空気冷却器
7 :スロットルバルブ
8 :吸気管
9 :排気管
10 :排ガス処理装置
11 :排気集合管
12 :DPFシステム
14 :酸化触媒
15 :フィルター
21 :排気出口管
22 :EGR管
23 :EGRクーラ
24 :EGR弁
25 :コモンレール制御装置
26 :燃料噴射弁
31 :温度・濃度測定部
32 :光ファイバ
32a :光ファイバ
32b :光ファイバ
33 :光源部
34 :光検出部
35 :温度算出部
36 :濃度算出部
41 :制御部
42 :メモリ
43 :判断部
44 :調整部
45 :警報部