特許第6783194号(P6783194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783194
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/30 20060101AFI20201102BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B66B13/30 R
   B66B11/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-124343(P2017-124343)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-6563(P2019-6563A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】河村 陽右
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−159597(JP,U)
【文献】 特開平10−182039(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/121764(WO,A1)
【文献】 特開2011−143993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00─13/30
B66B 11/00─11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客が乗降する乗りかごと、
前記乗りかごの天井に設けられ、前記乗りかご内の気圧を制御する排気ブロアと、
対向配置した一対のパネル部材を有して構成され、前記乗りかごの乗降口を開閉するかご戸と、
前記乗りかごのかご床に設けられ、前記かご戸の移動をガイドするかごシルと、
前記パネル部材のうちの一方の下端部と前記かご床との間に形成される第1の対向隙間に配置され、前記かごシルに設けられたガイド溝に沿って前記かご戸の移動をガイドするドアシューブラケットと、
前記ドアシューブラケットを前記かご戸へ固定するブラケット固定板と、
前記乗りかごの内側に位置する前記パネル部材の他方の下端部と前記かご床との間に形成される第2の対向隙間に配置され、気圧変動に応じて弾性変形する可撓性部材により密閉する気密装置と、を備え、
前記ブラケット固定板の前記ドアシューブラケット近傍および前記かご戸の下部側に、前記可撓性部材の長手方向における変形をほぼ一様にする気流を前記乗りかごの外部から前記一対のパネル部材間に形成される空間および前記第2の対向隙間を介して前記排気ブロアに向かって形成する複数の開口を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター装置であって、
前記複数の開口は、前記ブラケット固定板の前記ドアシューブラケット近傍および前記かご戸の下部側に、前記第1の対向隙間の長手方向に沿って離散的に複数形成されることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベーター装置であって、
前記可撓性部材は、前記乗りかごの内側に折り返し部を配置した断面略くの字状の折り返し部を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
乗客が乗降する乗りかごと、
前記乗りかごの天井に設けられ、前記乗りかご内の気圧を制御する吸気ブロアと、
対向配置した一対のパネル部材を有して構成され、前記乗りかごの乗降口を開閉するかご戸と、
前記乗りかごのかご床に設けられ、前記かご戸の移動をガイドするかごシルと、
前記パネル部材のうちの一方の下端部と前記かご床との間に形成される第1の対向隙間に配置され、前記かごシルに設けられたガイド溝に沿って前記かご戸の移動をガイドするドアシューブラケットと、
前記ドアシューブラケットを前記かご戸へ固定するブラケット固定板と、
前記乗りかごの内側に位置する前記パネル部材の他方の下端部と前記かご床との間に形成される第2の対向隙間に配置され、気圧変動に応じて弾性変形する可撓性部材により密閉する気密装置と、を備え、
前記ブラケット固定板の前記ドアシューブラケット近傍および前記かご戸の下部側に、前記可撓性部材の長手方向における変形をほぼ一様にする気流を前記吸気ブロアから前記第2の対向隙間および前記一対のパネル部材間に形成される空間を介して前記乗りかごの外部に向かって形成する複数の開口を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項5】
請求項に記載のエレベーター装置であって、
前記複数の開口は、前記ブラケット固定板の前記ドアシューブラケット近傍および前記かご戸の下部側に、前記第1の対向隙間の長手方向に沿って離散的に複数形成されることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のエレベーター装置であって、
前記可撓性部材は、前記乗りかごの内側に折り返し部を配置した断面略くの字状の折り返し部を有することを特徴とするエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置の乗りかごの構造に係り、特に、乗りかご内の気圧を制御する気圧制御装置を備えたエレベーター装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは乗客が密閉された空間内で移動する移動手段であるため、乗客が不安を抱く原因となる振動や騒音をできるだけ小さくすることが要求される。また、周囲の快適性の観点からも、エレベーター走行時の振動や騒音はできるだけ小さいほうが望ましい。
【0003】
一方、超高層ビルの建設の増加に伴い、エレベーターにはさらなる高速化が求められている。高速エレベーターの特有の問題として、かごが昇降路内を高速で走行するときに引き起こされるかご周りの空気流の乱れや圧力差によって生じる音、いわゆる風音がある。風音のエネルギーはエレベーターの走行速度に対して指数関数的に増加することが知られており、特に超高層ビル向けの超高速エレベーターでは風音対策が重要な技術となる。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特開2003−81561号公報(特許文献1)がある。この公報には、「昇降路内を昇降する乗りかご及びつり合いおもりを吊持する主ロープと、前記主ロープを巻き上げる巻上機と、前記乗りかご内の気圧を制御する気圧制御装置を有するエレベーター装置であって、前記乗りかごは、出入口を開閉するかご戸と、かご床に設けられ前記かご戸の移動を案内するかごシルと、前記かご戸の下端に設けられ前記気圧制御装置による加圧及び/又は減圧に応じて弾性変形する可撓性部材により、前記かご戸の下端と前記かごシル間の間隙を密閉する気密装置と、を有することを特徴とするエレベーター装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−81561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的なエレベーター装置では、上記特許文献1のように、かご戸の下端とかごシル間の間隙を密閉するように可撓性部材を配置し、この可撓性部材を圧力差によって変形させることで、かご室内の気密性を高める構造を採用しているが、可撓性部材の長手方向全体で均一な変形を得ることができないことに起因して可撓性部材の振動によって振動音(異常音)が発生する場合があることが分かった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、かご戸とかご床との間に気密装置である可撓性部材が配置されるエレベーター装置において、可撓性部材の不均一な変形に起因する振動音を防止し、快適性に優れたエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、乗客が乗降する乗りかごと、前記乗りかごの天井に設けられ、前記乗りかご内の気圧を制御する排気ブロアと、対向配置した一対のパネル部材を有して構成され、前記乗りかごの乗降口を開閉するかご戸と、前記乗りかごのかご床に設けられ、前記かご戸の移動をガイドするかごシルと、前記パネル部材のうちの一方の下端部と前記かご床との間に形成される第1の対向隙間に配置され、前記かごシルに設けられたガイド溝に沿って前記かご戸の移動をガイドするドアシューブラケットと、前記ドアシューブラケットを前記かご戸へ固定するブラケット固定板と、前記乗りかごの内側に位置する前記パネル部材の他方の下端部と前記かご床との間に形成される第2の対向隙間に配置され、気圧変動に応じて弾性変形する可撓性部材により密閉する気密装置と、を備え、前記ブラケット固定板の前記ドアシューブラケット近傍および前記かご戸の下部側に、前記可撓性部材の長手方向における変形をほぼ一様にする気流を前記乗りかごの外部から前記一対のパネル部材間に形成される空間および前記第2の対向隙間を介して前記排気ブロアに向かって形成する複数の開口を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、乗客が乗降する乗りかごと、前記乗りかごの天井に設けられ、前記乗りかご内の気圧を制御する吸気ブロアと、対向配置した一対のパネル部材を有して構成され、前記乗りかごの乗降口を開閉するかご戸と、前記乗りかごのかご床に設けられ、前記かご戸の移動をガイドするかごシルと、前記パネル部材のうちの一方の下端部と前記かご床との間に形成される第1の対向隙間に配置され、前記かごシルに設けられたガイド溝に沿って前記かご戸の移動をガイドするドアシューブラケットと、前記ドアシューブラケットを前記かご戸へ固定するブラケット固定板と、前記乗りかごの内側に位置する前記パネル部材の他方の下端部と前記かご床との間に形成される第2の対向隙間に配置され、気圧変動に応じて弾性変形する可撓性部材により密閉する気密装置と、を備え、前記ブラケット固定板の前記ドアシューブラケット近傍および前記かご戸の下部側に、前記可撓性部材の長手方向における変形をほぼ一様にする気流を前記吸気ブロアから前記第2の対向隙間および前記一対のパネル部材間に形成される空間を介して前記乗りかごの外部に向かって形成する複数の開口を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、かご戸とかご床との間に気密装置である可撓性部材が配置されるエレベーター装置において、可撓性部材の不均一な変形に起因する振動音を防止し、快適性に優れたエレベーター装置を実現できる。
【0011】
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーター装置の概略構成図である。
図2図1における乗りかご7の外観を示す斜視図である。
図3図1における乗りかご7のかご戸8の下部を示す一部断面図である。
図4図3における気密装置24周辺の拡大図である。
図5図3におけるパネル部材10aの正面図(A−A’方向矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において、同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0014】
先ず、図1を参照して、本発明の対象となるエレベーター装置について説明する。図1は、本実施例のエレベーター装置の概略構成図である。
【0015】
昇降路1の頂部部分に形成された機械室2内には、複数本の主ロープ4を巻き掛けたシーブを有した巻上機3が床面に固定されている。このシーブから延びた主ロープ4の一端は、反らせプーリ5を介してつり合いおもり6の上端に連結され、また主ロープ4の他端は乗りかご7の上部に連結されている。乗りかご7には開閉可能なかご戸8が設けられており、乗りかご7が停止階に停止した後、かご戸8および乗場ドア32が開き、乗客が乗りかご7に乗降する。かご戸8の下部側には後述する複数の開口23が配置されている。
【0016】
なお、本実施例では、図1に示すように、昇降路の上部に機械室が配置されるトラクション式のエレベーターの例を用いて説明するが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、制御盤等を昇降路内に配置する機械室レスタイプのトラクション式エレベーターや巻胴(ドラム)にロープを巻き付ける巻胴式エレベーター、リニアモーター式エレベーター等も発明の対象に含まれる。
【0017】
図2は、図1に示すエレベーター装置の要部である乗りかご7の外観を示す斜視図である。乗りかご7は、前面側に出入口用のかご戸8を有し、その天井外部には吸気ブロア及び排気ブロアなどを備えた気圧制御装置9が設けられている。この気圧制御装置9は、乗りかご7が昇降路1内を昇降する際に、吸気ブロア及び排気ブロアなどを制御して乗りかご7内の加圧及び減圧を行い、単位時間あたりの気圧の変化量を一定に保ち、乗りかご7内の乗客に対して気圧変化による不快感を与えないようにしている。
【0018】
乗りかご7には開閉可能なかご戸8が設けられ、このかご戸8は摺動しながら開閉移動する構造であるため、かご戸8が閉じられた状態でもその摺動部の近傍から乗りかご7の内外が連通し、気圧制御装置9による気圧制御効率を低下させてしまう。そこで、乗りかご7におけるかご戸8の近傍は、次に説明するような気密構造としている。なお、かご戸8の下部側には、かご戸8の短手方向に延在して設けられた複数の開口23が配置されている。
【0019】
図3は、図1に示す乗りかご7におけるかご戸8の下部を示す一部断面図である。所定の距離を隔てて対向配置された一対のパネル部材10a,10b間の下方部には、両パネル部材10a,10bの幅方向両端部にまで延びて形成された補強部材11と、補強部材11のさらに下方部にまで延びたブラケット固定板12とが挟み込まれて、ボルト13により固定されて、かご戸8が構成されている。
【0020】
かご戸8の下部には、かご床14およびかご床14に連結されたかごシル15が配置されている。このため、ブラケット固定板12とかごシル15間には対向隙間16が形成され、パネル部材10bとかご床14間には対向隙間17が形成されている。対向隙間16によって、両パネル部材10a,10b間に形成されている空間部18と、図3の左方側である乗りかご7の外部とが連通されている。これに対して対向隙間17によって、空間部18と、図3の右方側である乗りかごの内部とが連通されている。
【0021】
ブラケット固定板12の下端部には、ブラケット固定板12とほぼ同じ幅方向寸法を有するドアシューブラケット19の上端部が水平方向に設けられた複数本のボルト20によって固定されている。ドアシューブラケット19の下端部には、対向隙間16を通してかご戸8の下部に配置したドアシュー21が一体的に結合されている。このドアシュー21は、かごシル15に形成されているガイド溝22に沿って摺動しながら移動可能に嵌め込まれている。こうして、かご戸8は、ドアシュー21がかごシル15(ガイド溝22)によって案内されながら、開閉動作可能に構成されている。
【0022】
上述したブラケット固定板12において、対向隙間16の上部近傍に位置した部分には、詳細を後述するように複数の開口23が形成されている。各開口23によって空間部18は、図3の左方側である乗りかご7の外部と連通されている。またパネル部材10bの下部とかご床14間に形成された対向隙間17には、詳細を後述するが、かご戸8の閉状態において対向隙間17を密閉可能な気密装置24が配置されている。
【0023】
図4は、上述した気密装置24周辺の拡大図である。かご戸8の下方部には、上述したようにパネル部材10aのほぼ幅方向両端部にまで延びたブラケット固定板12の下方端部に、ほぼ水平方向に配置された複数本のボルト20によって取り付けられたドアシューブラケット19が固定されている。
【0024】
ブラケット固定板12におけるドアシューブラケット19の近傍には、ボルト20と同様にその長手方向であるほぼ水平方向に離散的な複数個の上述した開口23が形成されている。各開口23は、乗りかごの外部と、パネル材10a,10b間に形成されている空間部18間をより積極的に連通するためのものである。この開口23の形成によってブラケット固定板12の機械強度が大きく低下しないように、開口23の大きさ、形状、間隔などが決定されている。ブラケット固定板12において、各開口23を形成した全体的な幅方向の領域寸法は、気密装置24の長手方向寸法とほぼ等しくされている。なお、図4では、気密装置24を可撓性部材25および折り返し部31で示している。
【0025】
これらの各開口23は、望ましくはドアシューブラケット19の上端部付近またはその近傍に位置した部分のブラケット固定板12に、ドアシューブラケット19の上端部に沿ってほぼ等間隔で離散的に形成するのが望ましい。このような位置に各開口23を形成すると、対向隙間16を通してドアシューブラケット19の下方側が挿入されているために、対向隙間16を通る気流が影響を受けて、最終的には気密装置24の動作に悪影響を与えることがないように補うことができる。
【0026】
つまり、各開口23が存在しない場合、ドアシューブラケット19によって対向隙間16を通る気流が妨げられており、後述するように対向隙間17に構成した気密装置24が影響を受けることになる。各開口23が形成されていない場合、対向隙間16を通る風力または風速の影響によって気密装置24は、その長手方向で一様に変形しないために振動を起こし、同部近傍から振動音(異常音)を発生させてしまう。
【0027】
しかしながら、上述したように乗りかご7の外部と、パネル材10a,10b間に形成されている空間部18間を連通する開口23が形成されている。このため、対向隙間16にドアシューブラケット19が存在していても、対向隙間17に配置した気密装置24(折り返し部31)は、開口23を通る気流によってその幅方向全体で一様に動作するようになり、同部での振動が抑制され、振動音(異常音)の発生が防止される。
【0028】
かご戸8の下部構造について、図5も参照して、詳細に説明する。図5は、パネル部材10aの正面図(A−A’方向矢視図)である。気密装置24は、かご戸8における下端の幅方向全体に渡って延在すると共に、図2に示す気圧制御装置9による乗りかご7内の加圧及び減圧に応じて弾性変形して、対向隙間17を密閉することになる可撓性部材25と折り返し部31(図4参照)を備えている。また気密装置24は、L字状の断面形状を有してパネル部材10bの下端内側に固定されたブラケット26を介して、パネル部材10bにボルト固定等により固定されている。
【0029】
上述した可撓性部材25は、乗りかご7の内側に折り返し部を配置した断面略くの字状の折り返し部31を有している。可撓性部材25における断面略くの字状の折り返し部31は、パネル部材10bの下部とかご床14間に形成された対向隙間17における図4の右方側である乗りかご7の内側に配置されている。この可撓性部材25の上端部は、必要な取り付け強度を有しているが、断面略くの字状の折り返し部31は、図2に示した気圧制御装置9による乗りかご7内の加圧及び減圧に応じて支障なく弾性変形可能な可撓性を有して形成されている。
【0030】
乗りかご7のかご戸8が閉じられた状態で、図2に示す気圧制御装置9によって乗りかご7内が加圧されると、可撓性部材25とかご床14間の対向隙間17では、乗りかご7の内側から外側に向かって流れる気流が形成される。このときの風圧および風速の影響を受けて、断面略くの字状の折り返し部31の開放側端部は広げられ、対向隙間17を塞いで同部が密閉状態となる。その後、乗りかご7の内側と外側の差圧により、断面略くの字状の折り返し部31は同状態が保持されて対向隙間17の気密性が保たれる。
【0031】
一方、図2に示す気圧制御装置9によって乗りかご7内を減圧すると、可撓性部材25における断面略くの字状の折り返し部31とかご床14間の対向隙間17では、外側から乗りかご7の内側に向かう気流が形成される。このとき、開口23が存在しない場合、乗りかご7の外部から流れ込む気流は、対向隙間16に配置されているドアシューブラケット19の存在によって影響を受けるため、可撓性部材25における断面略くの字状の折り返し部31の長手方向では変形にばらつきが発生する可能性がある。
【0032】
しかしながら、上述したようにブラケット固定板12には所定の間隔で複数の開口23が形成されており、開口23によって乗りかご7の外部と、パネル部材10a,10b間に形成されている空間部18が連通されている。このため、ドアシューブラケット19による悪影響を受けずに開口23から空間部18を通して対向隙間17を通過する気流が効果的に、かつ、断面略くの字状の折り返し部31の長手方向全体に形成される。
【0033】
従って、断面略くの字状の折り返し部31は、対向隙間17を通過して乗りかご7内に流入する気流の風速および風圧を受けて、可撓性部材25における断面略くの字状の折り返し部31の長手方向でばらつきが発生することなく、かつ、断面略くの字状の折り返し部31の開放側端部が広げられて対向隙間17を塞ぐことになり、気流が止められる。その後は、乗りかご7の内側と外側の差圧により、同状態が保持されて対向隙間17の気密性が保たれる。
【0034】
しかも、ブラケット固定板12は、その下方部で長手方向に沿って離散的な複数の開口23が形成された構成としているため、ブラケット固定板12の機械強度を下げることがない。また、ブラケット固定板12におけるドアシューブラケット19との近傍に開口23が形成されているため、対向隙間16から気流を引き込んだ場合と余り変わらない方向性を持って、対向隙間17に向かう気流を形成することができる。
【0035】
このため、気密装置24の可撓性部材25における断面略くの字状の折り返し部31は、乗りかご7内から外部に向かう気流による変形と同様に、乗りかご7の外部から内部に向かう気流によって効果的に変形させることができる。従って、気流の方向性に偏りがなく、いずれの場合でも、効果的に、かつ確実に断面略くの字状の折り返し部31を変形させて、信頼性の高い密閉構造を得ることができる。
【0036】
なお、開口23のサイズが小さ過ぎると、圧力損失が大きくなって気流が形成されにくくなり、一方、開口23のサイズが大き過ぎると、風は通るが風速が小さくなって気密装置24の可撓性部材25に加わる風力が小さくなってしまうので、これらを考慮して、開口23の大きさ、形状、間隔などを決定するのが望ましい。
【0037】
図2のような気圧制御装置付きエレベーター装置においては、走行時に乗りかご7を気密化して気圧制御を行うために気密装置24が設けられている。かご戸8が摺動しながら開閉動作する構成であるため、この気密装置24は、かご戸8の開閉動作時には密閉構造とすることはできず開放状態となり、一方、走行時には圧力差により発生する気流を利用して密閉状態としている。
【0038】
この種の気圧制御装置付きエレベーター装置では、エレベーター最高速度時に上述した気圧制御装置9による乗りかご7の内外圧力差が小さくなるように制御しているため、気密装置24の気密保持力が低下すると、同部に気流の流れが伴う対向隙間17が発生し、かご外騒音がその対向隙間17から進入して、乗りかご7内の騒音が増大してしまう。
【0039】
しかし、本実施例によれば上述したように、対向隙間16に配置されているドアシューブラケット19による影響を受けることなく開口23を通しての効果的に気流を形成することができる。このため、対向隙間17に配置した気密装置24は、乗りかご7内の気圧変動に対して応答性良く気密状態となり、乗りかご7内の密閉性を容易に確保することができる。従って、振動音(異常音)を発生させたり、外部からの騒音が進入したりするのを効果的に遮蔽することができる。
【0040】
また、望ましい実施例では、ブラケット固定板12におけるドアシューブラケット19側の下部に複数の開口23を形成した構成としているため、その大きさや数や間隔などを調整することによってブラケット固定板12の機械強度を下げることがない。しかも、開口23によって、対向隙間16から気流を引き込んだ場合と余り変わらない方向性を持って、対向隙間17に向かう気流を形成することができるため、気密装置24の可撓性部材25における断面略くの字状の折り返し部31を効果的に、かつ確実に変形させて密閉構造を得ることができる。
【0041】
一方、ドアシューブラケット19に開口を形成することも考えられるが、対向隙間16の狭い場所での使用となるためにドアシューブラケット19の機械強度を低下させたり、他の構成にまで影響を及ぼしたりすることになってしまう。これに対して、ブラケット固定板12の下方部に開口23を形成すると、ドアシューブラケット19としてはこれまでと同様のものを使用し、かご戸8の下端部のドアシュー21をかごシル15に形成されたガイド溝22に沿って良好かつ確実に移動させることができると共に、簡易な構成にて信頼性の高い気密型のエレベーター装置を得ることができる。
【0042】
なお、本実施例では気密装置24として、図3および図5に示す構成のものを例示したが、対向隙間17を流れる気流を利用して気密構造を得るようにした他の構成のものを使用することもできる。
【0043】
以上説明したように、本発明のエレベーター装置は、ブラケット固定板12に、可撓性部材25の長手方向における変形をほぼ一様にするような気流を乗りかご7の外部から気密装置24に向かって形成させるための開口23を形成している。
【0044】
このような構成によれば、対向隙間16にドアシューブラケット19が配置されていても開口23を通して安定した気流を形成することができ、可撓性部材25の長手方向における変形をほぼ一様にして、可撓性部材25の長手方向全体で均一な変形を得ることができないことに起因する可撓性部材25の振動によって振動音(異常音)が発生したり、また乗りかご7の外部から乗りかご7の内部への騒音を進入させたりすることを確実に防止することができる。
【0045】
また、本発明は上述の構成に加えて、開口23は、ブラケット固定板12におけるドアシューブラケット19側に、対向隙間16の長手方向(かご戸8の短手方向)に沿って離散的に複数個形成している。
【0046】
このような構成によれば、開口23を形成することによるブラケット固定板12の機械的強度を極端に下げることなく、対向隙間16の長手方向に沿って複数個の開口23を形成して、可撓性部材25の長手方向における変形をほぼ一様にすることができる。
【0047】
また、本発明は、上述の構成に加えて、可撓性部材25は、乗りかご7の内側に折り返し部を配置した断面略くの字状の折り返し部31を有したものとしている。
【0048】
このような構成によれば、乗りかご7内の気圧制御を行うエレベーター装置において、乗りかご7内の気圧制御を行うために発生する気流を効果的に捉えて、断面略くの字状の折り返し部31を確実に変形させて密閉状態を得ることができる。
【0049】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…昇降路、2…機械室、3…巻上機、4…主ロープ、5…反らせプーリ、6…つり合いおもり、7…乗りかご、8…かご戸、9…気圧制御装置、10a,10b…パネル部材、11…補強部材、12…ブラケット固定板、13…ボルト、14…かご床、15…かごシル、16…(第1の)対向隙間、17…(第2の)対向隙間、18…空間部、19…ドアシューブラケット、20…ボルト、21…ドアシュー、22…ガイド溝、23…開口、24…気密装置、25…可撓性部材、26…ブラケット、31…折り返し部、32…乗場ドア。
図1
図2
図3
図4
図5