【実施例1】
【0016】
図1は本発明のエレベーターの概略を示す模式図であり、
図2は
図1の乗りかごの外観を示す模式図である。
図1に示すように、エレベーター100は、乗りかご3と、釣り合いおもり4と、乗りかご3及び釣り合いおもり4を接続するロープ5と、ロープ5が巻きかけられた綱車60を有する巻き上げ機6を有する。昇降路において、巻き上げ機6がロープ5を昇降することで、乗りかご3及び釣り合いおもり4が昇降する。乗りかご3は、乗客や荷物を載せるかご室1と、かご室1を支持するかご枠2で構成される。
図2に示すように、かご室1は、天井7と側板8で構成される。
【0017】
図3は
図1のかご室の内部を示す模式図である。
図3に示すように、かご室1の天井7は、通電時にかご室1の内部を照らす照明装置9と、照明装置9を覆う天井遮蔽板10を有する。かご室1には、照明装置9とは別に、停電時にかご室1の内部を照らす停電灯装置11が設けられている。停電灯装置11は、かご室1の天井7に隣接して設けられた停電灯収納室12と、かご室1と停電灯収納室12とを仕切る天井カバー14と、停電灯13を有する。
【0018】
停電灯13は、通電時は、かご室1の天井に設けられた停電灯収納室12に収納され、天井7と一体になった天井カバー14によって隠されており、かご室1の内部の意匠性を損なわない構成となっている。一方、停電時は、停電灯13は停電灯収納室12を出てかご室1に向かって(
図3の矢印方向に)所定の距離降下し、かご室1の内部を照らす構成を有している。
【0019】
図4は従来のエレベーターのかご室の内部を示す模式図である。
図4に示す構成では、停電時でも停電灯41が停電灯収納室40に収納されているため、停電灯41の光の一部が天井遮蔽板10によって遮られてしまう。また、
図3に示す構成と比較して、停電灯41とかご室1の床面までの距離も長いため、床面(照明領域31)において十分な照度を確保することができない。
【0020】
これに対し、再び
図3を参照すると、本発明のエレベーターでは、停電灯13が下降するため、停電灯13の光が天井遮蔽板10によって遮られないようにすることができる。また、
図4に示す構成と比較して、停電灯13とかご室1の床面までの距離が短いため、床面(照明領域30)において十分な照度を確保することができる。この結果、前述した近年のエレベーターの規格(EN81−20/50)を満たすことができるエレベーターを提供することができる。
【0021】
次に、本発明のエレベーターの停電灯装置の構成について詳述する。
図5Aは実施例1の停電灯装置(通電時)の断面を示す模式図である。
図5Aに示すように、停電灯装置11は、前述した停電灯収納室12、停電灯13及び天井カバー14と、天井カバー14を開閉可能な電磁石16と、停電灯13を支持する停電灯支持部材17を有する。天井カバー14には、停電灯13と接触する面に緩衝材20が設けられている。このように緩衝材20を設けることで、エレベーター走行時の振動により、停電灯13と天井カバー14とが加振されて発生する騒音(異音)を防止することができる。緩衝材20としては、例えばフェルトやスポンジを用いることができる。
【0022】
電磁石16は、通電時は、磁力によって天井カバー14を吸引し、天井カバー14を「閉」状態とする。一方、停電時は、磁力が消失し、天井カバー14を吸引する力を失うことによって天井カバー14をヒンジ15を回転軸として回転し、「開」状態とする。停電時に天井カバー14が開くと、停電灯13は自重によって停電灯収納室12を出てかご室1に向かって所定の距離を降下する。停電灯支持部材17は、停電灯13に固定され、停電灯13が降下する距離を調整可能な構成を有する。停電灯13は、この停電灯支持部材17によって、自重で降下する際の距離が調整されるため、かご室1の内部に脱落することが無い。
【0023】
図5Bは実施例1の停電灯支持部材を模式的に示す分解斜視図であり、
図5Cは実施例1の停電灯収納室に設けられた貫通孔を示す模式図である。
図5Bに示すように、本実施例の停電灯支持部材17は、第1の部材17aと第2の部材17bで構成される。第1の部材17aは直角に連結された2つの板状部材170,171を有する。同様に、第2の部材17bは直角に連結された2つの板状部材172,173を有する。
【0024】
図5Aに示すように、第1の部材17aの一方の板状部材170に停電灯13が固定される。また、
図5Cに示すように、停電灯収納室12には、第1の部材17aの他方の板状部材171が貫通する貫通孔19が設けられている。
【0025】
第2の部材17bの一方の板状部材172は、貫通孔19を貫通した第1の部材17aの板状部材171に固定される。固定方法について特に限定はなく、例えばボルト締結によって固定することができる。
【0026】
図6は実施例1の停電灯装置(停電時)の断面を示す模式図である。第2の部材17bの他方の板状部材173は、停電時に停電灯13の降下とともに所定の距離(
図5Aの距離L)を降下し、停電灯収納室12に衝突して停電灯13の降下を停止する。すなわち、停電灯13は、通電時は、閉じた天井カバー14によって支持されて停電灯収納室12に収納されるが、天井カバー14が開くと、自重によって降下する。このとき、停電灯支持部材17を構成する第1の部材17aの板状部材171は貫通孔19に沿って(貫通孔19をガイドとして)停電灯13とともに降下する。そして、
図6に示すように停電灯支持部材17を構成する第2の部材17bの板状部材173(
図5Aの停電灯支持部材上面折り曲げ部18)が停電灯収納室12に衝突することで、停電灯13及び停電灯支持部材17の降下を停止することができる。
【0027】
本発明によれば、通電時には、停電灯13は、かご室1の天井7と一体となった天井カバー14によって隠されているため、かご室1の内部の意匠性を損なうことはない。また、停電時には、停電灯13が降下するため、かご室に必要な照度を確保することができる。本発明は、照明灯の数を増やさなくても十分な照度を得ることができるため、天井7の設計が制限されることが無く、かご室の意匠性を損なうことは無い。さらに、停電灯13は自重によって降下するため、停電灯13を駆動するための駆動装置を設ける必要がなく、コストを抑えることができる。
【0028】
本実施例の停電灯支持部材17は、バランスを保つために断面がコの字になるように構成されているが、このような形状に限定されることはなく、停電灯13を安定して支持することができ、停電灯13とともに降下することができるものであれば、どのような形状であってもよい。
【0029】
貫通孔19には、緩衝材が設けられていてもよい。貫通孔19に緩衝材を設けることで、停電灯支持部材17が貫通孔を滑りながら降下するときの振動や騒音を吸収して低減することができる。緩衝材としては、例えばフェルトやスポンジを用いることができる。