(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持構造は、ラック本体における重量配分を非対称とすることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させる請求項2に記載の核燃料貯蔵用ラック。
前記支持構造は、最も近い前記縦壁面寄りに近づくにつれてラック本体の重量配分を大きく変位させることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させる請求項2又は3に記載の核燃料貯蔵用ラック。
前記支持構造は、前記ラック本体のベースプレートの下側にウェイトを付けることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させる請求項3又は4に記載の核燃料貯蔵用ラック。
前記支持構造は、最も近い前記縦壁面寄りで前記ラック本体の外周板の重量を重くすることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させる請求項3又は4に記載の核燃料貯蔵用ラック。
前記支持構造は、最も近い前記縦壁面側に向けてロッキングする回転中心をラック本体の重心に近づけるように変位させる請求項1〜8の何れか一項に記載の核燃料貯蔵用ラック。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載のようなフリースタンディング方式の核燃料貯蔵用ラックは、高い耐震性を有するが、地震レベルが大きくなるほど滑り量が大きくなり、貯蔵ピットの縦壁面への衝突や接近を回避するために滑り量分を考慮して縦壁面から距離を大きくする必要があった。このため、核燃料の貯蔵スペースが貯蔵ピットの内側に向かって狭くなり貯蔵ピット内での核燃料の貯蔵体数が少なくなる問題がある。また、貯蔵ピット内での核燃料の貯蔵体数を確保するためには、貯蔵ピットの大きさが大きくなる問題がある。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、貯蔵ピットの縦壁面への衝突や接近を防ぐことのできる核燃料貯蔵用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックは、貯蔵ピット内の水中において縦壁面から距離を隔てた状態で床面に複数配置される核燃料貯蔵用ラックであって、最も近い前記縦壁面側に向けてロッキングを生じさせるように形成された支持構造を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させることが好ましい。
【0008】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、ラック本体における重量配分を非対称とすることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させることが好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、最も近い前記縦壁面寄りに近づくにつれてラック本体の重量配分を大きく変位させることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させることが好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、前記ラック本体のベースプレートの下側にウェイトを付けることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させることが好ましい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、最も近い前記縦壁面寄りで前記ラック本体の外周板の重量を重くすることで最も近い前記縦壁面寄りにラック本体の重心位置を変位させることが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、最も近い前記縦壁面に近づくにつれて前記床面との摩擦係数が大きくなるように形成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、ラック本体の底面に設けられた複数の支持脚を含み、前記支持脚の前記床面に接触する脚面部の面積が、最も近い前記縦壁面に近づくにつれて大きくなることで前記床面との摩擦係数が大きくなるように形成されることが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、最も近い前記縦壁面側に向けてロッキングする回転中心をラック本体の重心に近づけるように変位させることが好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、ラック本体の底面に設けられた複数の支持脚を含み、前記支持脚が、ラック本体の底面に非対称となるように配置されることで最も近い前記縦壁面側に向けてロッキングする回転中心をラック本体の重心に近づけるように変位させることが好ましい。
【0016】
また、本発明の一態様に係る核燃料貯蔵ラックでは、前記支持構造は、ラック本体の底面に設けられた複数の支持脚を含み、前記支持脚の前記床面に接触する脚面部が、最も近い前記縦壁面側において球面座で支持されていることで最も近い前記縦壁面側に向けてロッキングする回転中心をラック本体の重心に近づけるように変位させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の核燃料貯蔵用ラックは、地震発生時に水平力が作用した場合、貯蔵ピットの床面に沿って水平方向に摺動する。このとき、本発明の核燃料貯蔵用ラックによれば、最も近い縦壁面側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えているため、最も近い縦壁面側に近づく方向に水平力が作用した場合、当該方向(最も近い縦壁面側)に上部が傾くように回転するロッキングが生じ易くなり、その一方で、最も近い縦壁面側から離れる方向に水平力が作用した場合には、ロッキングが生じ難くなる。このため、核燃料貯蔵用ラックは、最も近い縦壁面側に向けたロッキングの反動を含み、最も近い縦壁面側から離れる方向に移動する。この結果、貯蔵ピットの縦壁面への衝突や接近を防ぐことができる。そして、縦壁面から余分に遠ざけて配置しなくてもよいことから貯蔵ピット内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピットが大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピットの大きさを小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
図1は、貯蔵ピットの側断面図である。
図2は、貯蔵ピットの平面図である。
【0021】
貯蔵ピット101は、原子力発電プラントにおいて原子炉にて使用された使用済みの燃料集合体や、未使用の燃料集合体が貯蔵される。燃料集合体は、複数の燃料棒である核燃料が束ねられた集合体である。したがって、燃料集合体は、いわゆる核燃料である。貯蔵ピット101は、矩形状で上部が開放されたコンクリート躯体のプールとして構成されている。貯蔵ピット101は、床面101aおよび周囲の側壁の縦壁面101bを有している。この貯蔵ピット101において、床面101aに核燃料貯蔵用ラック1が配置される。核燃料貯蔵用ラック1は、上部が開放されて格子状に区画された複数の燃料収納部1aが設けられている。そして、貯蔵ピット101は、内部に水Wが貯留された状態で、核燃料貯蔵用ラック1の各燃料収納部1aに燃料集合体が立てられた状態で収納されて貯蔵される。
【0022】
貯蔵ピット101は、その床面101aおよび縦壁面101bの内面であるコンクリート面にライニングが張り付けられている。ライニングは、厚さ6mm程度のオーステナイト系ステンレス鋼からなり、貯蔵ピット101の床面101aおよび縦壁面101bの内面を保護するものである。
【0023】
核燃料貯蔵用ラック1は、各燃料収納部1aを有するラック本体1bの底面に支持脚1cが設けられており、支持脚1cによりラック本体1bが床面101aに自立して支持されている。支持脚1cは、床面101aに対して摺動することが可能に設けられていることで、床面101aに対して相対移動が可能とされた、いわゆるフリースタンディング方式のラックである。そして、核燃料貯蔵用ラック1は、ラック本体1bが直方体形状の外形をなし、貯蔵ピット101の周りを矩形状に囲む4面の縦壁面101bから距離Lを隔てた状態で床面101aに複数(
図2では12個)が矩形状に整列して配置されている。また、各核燃料貯蔵用ラック1は、互いのラック本体1bが所定間隔を空けて設けられている。
【0024】
ところで、フリースタンディング方式の核燃料貯蔵用ラック1は、地震発生時に作用する水平力を水の流体抵抗と共に核燃料貯蔵用ラック1の摺動抵抗によって吸収することで高い耐震性を有する。その反面、地震レベルが大きくなるほど滑り量が大きくなるため、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近が課題となっている。核燃料貯蔵用ラック1が貯蔵ピット101の縦壁面101bに衝突すると、縦壁面101bのライニングが損傷して当該縦壁面101bの保護ができなくなる。また、核燃料貯蔵用ラック1が貯蔵ピット101の縦壁面101bに接近すると、貯蔵ピット101の壁の向こう側に存在する通路などに核燃料が近くなり放射線の影響が生じるおそれがある。一方、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を回避するために、核燃料貯蔵用ラック1の滑り量分を考慮して縦壁面101bからラック本体1bの距離Lを大きくすると、核燃料の貯蔵スペースが貯蔵ピット101の内側に向かって狭くなるため貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数が少なくなる課題が生じる。以下の各実施形態では、この課題を解決するための核燃料貯蔵用ラック1を提供する。
【0025】
[実施形態1]
図3は、実施形態1に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す側面図である。
図4は、実施形態1に係る核燃料貯蔵用ラックの動作を示す側面図である。
図5は、実施形態1に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す平面図である。
【0026】
本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えるものである。ここで、「最も近い縦壁面101b側」とは、上述したように、貯蔵ピット101の床面101aに配置された核燃料貯蔵用ラック1において、そのラック本体1bの側面が向く縦壁面101bに対して距離が最も短い側であることを意味する。なお、貯蔵ピット101において2つの縦壁面101bが角をなす角部に対し、ラック本体1bの2つの側面がなす角を向けるように核燃料貯蔵用ラック1が配置されている場合は、2つの側面の各縦壁面101bに向く側であって各縦壁面101bがなす角部側を「最も近い縦壁面101b側」とする。
【0027】
具体的に、支持構造は、核燃料貯蔵用ラック1(ラック本体1b)の重心Gを最も近い縦壁面101b寄りに変位させる。
図3から
図5では、最も近い縦壁面101b寄りで色彩を濃くした領域に重心Gを変位させた形態を示している。重心Gを変位させる位置は、核燃料貯蔵用ラック1の中心(中央)よりも最も近い縦壁面101b寄りである。支持構造は、例えば、ラック本体1bにおける重量配分を非対称とすることで最も近い縦壁面101b寄りにラック本体1bの重心位置を変位させるように構成される。また、支持構造は、例えば、最も近い前記縦壁面寄りに近づくにつれてラック本体の重量配分を大きく変位させるように構成される。支持構造による重心Gの変位は、例えば、核燃料貯蔵用ラック1において燃料集合体を最も近い縦壁面101b寄りに集めて燃料収納部1aに収納することで実現できる。また、支持構造による重心Gの変位は、例えば、燃料集合体が収納される前の核燃料貯蔵用ラック1においてダミーの燃料集合体を最も近い縦壁面101b寄りに集めて燃料収納部1aに収納することで実現できる。また、支持構造による重心Gの変位は、例えば、核燃料貯蔵用ラック1においてラック本体1bの周囲を構成する板材(外周板)を最も近い縦壁面101b寄りで重くなるように厚くしたり重い材料を用いたりして板材の重量を重くすることで実現できる。また、支持構造による重心Gの変位は、例えば、核燃料貯蔵用ラック1においてラック本体1bの底部(ベースプレート)の下側の最も近い縦壁面101b寄りに重り(ウェイト)を付けることで実現できる。
【0028】
そして、核燃料貯蔵用ラック1は、地震発生時に水平力が作用した場合、床面101aに沿って水平方向に摺動する。このとき、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1によれば、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えているため、
図4に実線で示すように、最も近い縦壁面101b側に近づく方向に水平力が作用した場合、重心Gを最も近い縦壁面101b寄りに変位させていることから、当該方向(最も近い縦壁面101b側)にラック本体1bの上部が傾くように回転するロッキングが生じ易くなり、その一方で、
図4に一点鎖線で示すように、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に水平力が作用した場合には、ロッキングが生じ難くなる。このため、核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けたロッキングの反動を含み、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に移動する。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができる。そして、縦壁面から余分に遠ざけて配置しなくてもよいことから、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。
【0029】
また、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、上述したように、ラック本体1bが直方体形状の外形をなし、貯蔵ピット101の周りを矩形状に囲む4面の縦壁面101bから距離Lを隔てた状態で床面101aに複数(
図2では12個)が整列して配置されている。したがって、支持構造である重心Gの変位は、
図5に示すように、貯蔵ピット101の2面の各縦壁面101bがなす角部にラック本体1bの角部が向く核燃料貯蔵用ラック11においては、最も近い各縦壁面101b側寄りであって各縦壁面101bがなす角部寄りに重心Gを変位させる。そして、貯蔵ピット101の1面の縦壁面101bにラック本体1bの1面が向く核燃料貯蔵用ラック12においては、最も近い縦壁面101b側寄りに重心Gを変位させる。また、縦壁面101bに面せず核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12に囲まれる中央の核燃料貯蔵用ラック13にあっては、支持構造である重心Gの変位は実施しない。このようにすることで、核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12は、最も近い縦壁面101b側から離れる方向であって、貯蔵ピット101の中央(中央の核燃料貯蔵用ラック13)に向けて移動することになる。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができ、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。
【0030】
なお、核燃料貯蔵用ラック11,12,13同士が衝突する事象については、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の強度を高めたり、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の間にダンパーなどの緩衝部材を介在したりすることにより、当該衝突により核燃料貯蔵用ラック11,12,13が損傷しないようにする。
【0031】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す側面図である。
図7は、実施形態2に係る核燃料貯蔵用ラックの動作を示す側面図である。
図8は、実施形態2に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す平面図である。
【0032】
本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えるものである。「最も近い縦壁面101b側」の定義は実施形態1の記載と同じである。具体的に、支持構造は、核燃料貯蔵用ラック1の支持脚1cについて最も近い縦壁面101bに近づくにつれて支持脚1cの床面101aに接触する脚面部と床面101aとの摩擦係数が大きくなるように構成される。支持構造は、例えば、最も近い前記縦壁面寄りに近づくにつれて脚面部の面積が大きくなるように構成される。
図6から
図8では、最も近い縦壁面101b寄りで色彩を濃くした支持脚1cについて色彩のない支持脚1cよりも摩擦係数を大きくした形態を示している。摩擦係数を大きくするには、例えば、支持脚1cにおいて、支持脚1c全体または支持脚1cの床面101aに接触する部分の材質や表面粗さを変更することで実現できる。
【0033】
そして、核燃料貯蔵用ラック1は、地震発生時に水平力が作用した場合、床面101aに沿って水平方向に摺動する。このとき、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1によれば、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えているため、
図7に実線で示すように、最も近い縦壁面101b側に近づく方向に水平力が作用した場合、最も近い縦壁面101b寄りに床面101aとの摩擦係数を大きくしていることから、当該方向(最も近い縦壁面101b側)にラック本体1bの上部が傾くように回転するロッキングが生じ易くなり、その一方で、
図7に一点鎖線で示すように、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に水平力が作用した場合には、ロッキングが生じ難くなる。このため、核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けたロッキングの反動を含み、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に移動する。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができる。そして、縦壁面から余分に遠ざけて配置しなくてもよいことから、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。
【0034】
また、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、上述したように、ラック本体1bが直方体形状の外形をなし、貯蔵ピット101の周りを矩形状に囲む4面の縦壁面101bから距離Lを隔てた状態で床面101aに複数(
図2では12個)が整列して配置されている。したがって、支持構造である摩擦係数は、
図8に示すように、貯蔵ピット101の2面の各縦壁面101bがなす角部にラック本体1bの角部が向く核燃料貯蔵用ラック11においては、最も近い各縦壁面101b側寄りであって各縦壁面101bがなす角部寄りに床面101aとの摩擦係数を大きくする。そして、貯蔵ピット101の1面の縦壁面101bにラック本体1bの1面が向く核燃料貯蔵用ラック12においては、最も近い縦壁面101b側寄りに床面101aとの摩擦係数を大きくする。また、縦壁面101bに面せず核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12に囲まれる中央の核燃料貯蔵用ラック13にあっては、支持構造である摩擦係数の変更を実施しない。このようにすることで、核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12は、最も近い縦壁面101b側から離れる方向であって、貯蔵ピット101の中央(中央の核燃料貯蔵用ラック13)に向けて移動することになる。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができ、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。なお、
図8において、支持脚1cは、直方体形状のラック本体1bの底面の角部4箇所に設けた構成であるが、支持脚1cの数はラック本体1bが床面101aに安定して自立することができればよく限定されない。
【0035】
なお、核燃料貯蔵用ラック11,12,13同士が衝突する事象については、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の強度を高めたり、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の間にダンパーなどの緩衝部材を介在したりすることにより、当該衝突により核燃料貯蔵用ラック11,12,13が損傷しないようにする。
【0036】
[実施形態3]
図9は、実施形態3に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す側面図である。
図10は、実施形態3に係る核燃料貯蔵用ラックの動作を示す側面図である。
図11は、実施形態3に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す平面図である。
【0037】
本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えるものである。「最も近い縦壁面101b側」の定義は実施形態1の記載と同じである。具体的に、支持構造は、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1(ラック本体1b)の重心Gに近づけるように変位させる。支持構造によるロッキングの回転中心Cの変位は、例えば、
図9から
図11に示すように、核燃料貯蔵用ラック1の支持脚1cについて最も近い縦壁面101b寄りのもの(最も近い縦壁面101b側に向くラック本体1bの側面の下に位置する支持脚1c)を当該縦壁面101bから遠ざけるようにラック本体1bの底面において非対称な配置とすることで、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位することを実現できる。支持脚1cがラック本体1bの底面において対称な配置の場合は、ロッキングの回転中心が各支持脚1cの外側端に均等に位置する。
図9から
図11では、最も近い縦壁面101b寄りで色彩を濃くした支持脚1cについて当該縦壁面101bから遠ざける配置とした形態を示している。
【0038】
そして、核燃料貯蔵用ラック1は、地震発生時に水平力が作用した場合、床面101aに沿って水平方向に摺動する。このとき、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1によれば、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えているため、
図10に実線で示すように、最も近い縦壁面101b側に近づく方向に水平力が作用した場合、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位させていることから、当該方向(最も近い縦壁面101b側)にラック本体1bの上部が傾くように回転するロッキングが生じ易くなり、その一方で、
図10に一点鎖線で示すように、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に水平力が作用した場合には、ロッキングが生じ難くなる。このため、核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けたロッキングの反動を含み、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に移動する。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができる。そして、縦壁面から余分に遠ざけて配置しなくてもよいことから、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。
【0039】
また、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、上述したように、ラック本体1bが直方体形状の外形をなし、貯蔵ピット101の周りを矩形状に囲む4面の縦壁面101bから距離Lを隔てた状態で床面101aに複数(
図2では12個)が整列して配置されている。したがって、支持構造である回転中心Cの変位は、
図11に示すように、貯蔵ピット101の2面の各縦壁面101bがなす角部にラック本体1bの角部が向く核燃料貯蔵用ラック11においては、最も近い各縦壁面101b側寄りであって各縦壁面101bがなす角部寄りの支持脚1cを当該角部から遠ざけて最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位させる。そして、貯蔵ピット101の1面の縦壁面101bにラック本体1bの1面が向く核燃料貯蔵用ラック12においては、最も近い縦壁面101b側寄りの支持脚1cを当該縦壁面101bから遠ざけて最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位させる。また、縦壁面101bに面せず核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12に囲まれる中央の核燃料貯蔵用ラック13にあっては、支持構造である回転中心Cの変位を実施しない。このようにすることで、核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12は、最も近い縦壁面101b側から離れる方向であって、貯蔵ピット101の中央(中央の核燃料貯蔵用ラック13)に向けて移動することになる。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができ、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。なお、
図11において、支持脚1cは、直方体形状のラック本体1bの底面の角部4箇所と四辺4箇所の計8箇所に設けた構成であるが、支持脚1cの数はラック本体1bが床面101aに安定して自立することができればよく限定されない。
【0040】
なお、核燃料貯蔵用ラック11,12,13同士が衝突する事象については、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の強度を高めたり、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の間にダンパーなどの緩衝部材を介在したりすることにより、当該衝突により核燃料貯蔵用ラック11,12,13が損傷しないようにする。
【0041】
[実施形態4]
図12は、実施形態4に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す側面図である。
図13は、実施形態4に係る核燃料貯蔵用ラックの動作を示す側面図である。
図14は、実施形態4に係る核燃料貯蔵用ラックにおける支持構造を示す平面図である。
【0042】
本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えるものである。「最も近い縦壁面101b側」の定義は実施形態1の記載と同じである。具体的に、支持構造は、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位させる。支持構造によるロッキングの回転中心Cの変位は、例えば、
図12から
図14に示すように、核燃料貯蔵用ラック1の支持脚1cについて最も近い縦壁面101b寄りのもの(最も近い縦壁面101b側に向くラック本体1bの側面の下に位置する支持脚1c)を、床面101aに接触する脚面部1cbを球面座1caで揺動可能に支持する構成とし、その他の支持脚1cについて球面座1caを用いず脚面部1cbを大形とすることで、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心C(球面座1caの揺動の支持部に相当)を核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位することを実現できる。支持脚1cがラック本体1bの底面において対称な配置の場合は、ロッキングの回転中心が各支持脚1cの外側端に均等に位置する。なお、その他の支持脚1cについて脚面部1cbを大形とせず球面座1caを用いないことでも、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心C(球面座1caの揺動の支持部に相当)を核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位することを実現できる。
図12から
図14では、最も近い縦壁面101b寄りで色彩を濃くした支持脚1cについて球面座1caを用いず脚面部1cbを大形とした形態を示している。
【0043】
そして、核燃料貯蔵用ラック1は、地震発生時に水平力が作用した場合、床面101aに沿って水平方向に摺動する。このとき、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1によれば、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングを生じさせる支持構造を備えているため、
図13に実線で示すように、最も近い縦壁面101b側に近づく方向に水平力が作用した場合、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位させていることから当該方向(最も近い縦壁面101b側)にラック本体1bの上部が傾くように回転するロッキングが生じ易くなり、その一方で、
図13に一点鎖線で示すように、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に水平力が作用した場合には、ロッキングが生じ難くなる。このため、核燃料貯蔵用ラック1は、最も近い縦壁面101b側に向けたロッキングの反動を含み、最も近い縦壁面101b側から離れる方向に移動する。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができる。そして、縦壁面から余分に遠ざけて配置しなくてもよいことから、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。
【0044】
また、本実施形態の核燃料貯蔵用ラック1は、上述したように、ラック本体1bが直方体形状の外形をなし、貯蔵ピット101の周りを矩形状に囲む4面の縦壁面101bから距離Lを隔てた状態で床面101aに複数(
図2では12個)が整列して配置されている。したがって、支持構造である回転中心Cの変位は、
図14に示すように、貯蔵ピット101の2面の各縦壁面101bがなす角部にラック本体1bの角部が向く核燃料貯蔵用ラック11においては、当該角部をなす各縦壁面101b寄りの支持脚1c(当該角部をなす各縦壁面101b側に向くラック本体1bの側面の下に位置する支持脚1c)に球面座1caを用いて、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位させる。そして、貯蔵ピット101の1面の縦壁面101bにラック本体1bの1面が向く核燃料貯蔵用ラック12においては、最も近い縦壁面101b側寄りの支持脚1c(最も近い縦壁面101b側に向くラック本体1bの側面の下に位置する支持脚1c)に球面座1caを用いて、最も近い縦壁面101b側に向けてロッキングする回転中心Cを核燃料貯蔵用ラック1の重心Gに近づけるように変位させる。また、縦壁面101bに面せず核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12に囲まれる中央の核燃料貯蔵用ラック13にあっては、支持構造である回転中心Cの変位を実施しない。このようにすることで、核燃料貯蔵用ラック11および核燃料貯蔵用ラック12は、最も近い縦壁面101b側から離れる方向であって、貯蔵ピット101の中央(中央の核燃料貯蔵用ラック13)に向けて移動することになる。この結果、貯蔵ピット101の縦壁面101bへの衝突や接近を防ぐことができ、貯蔵ピット101内での核燃料の貯蔵体数を確保することができ、かつ貯蔵ピット101が大きくなる事態を防ぎ貯蔵ピット101の大きさを小さくすることができる。なお、
図14において、支持脚1cは、直方体形状のラック本体1bの底面の角部4箇所と四辺4箇所の計8箇所に設けた構成であるが、支持脚1cの数はラック本体1bが床面101aに安定して自立することができればよく限定されない。
【0045】
なお、核燃料貯蔵用ラック11,12,13同士が衝突する事象については、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の強度を高めたり、核燃料貯蔵用ラック11,12,13の間にダンパーなどの緩衝部材を介在したりすることにより、当該衝突により核燃料貯蔵用ラック11,12,13が損傷しないようにする。
【0046】
なお、上述した実施形態1から実施形態4は、少なくとも2つを適宜組み合わせて実施することができる。