特許第6783206号(P6783206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783206宅内装置の制御装置、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783206
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】宅内装置の制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/923 20130101AFI20201102BHJP
【FI】
   H04L12/923
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-175779(P2017-175779)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2019-54339(P2019-54339A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2019年3月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】村本 孝之
(72)【発明者】
【氏名】中澤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸佑
【審査官】 中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−080394(JP,A)
【文献】 特開2005−110079(JP,A)
【文献】 特開2003−069644(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0094458(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/923
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の企業ネットワークの各企業ネットワークの複数の拠点に設置された宅内装置を制御する制御装置であって、
前記各企業ネットワークの各拠点それぞれに設置された制御対象の複数の宅内装置のうち、インターネットを介して拠点間を接続するリンクを終端する宅内装置それぞれから当該リンクの疎通状態を示す疎通情報を取得する第1取得手段と、
前記インターネットのサーバから所定のイベント情報を取得する第2取得手段と、
前記疎通情報及び前記イベント情報に基づき、前記インターネットの輻輳により輻輳が生じる、前記インターネットを介する第1リンクと、当該第1リンクに生じる輻輳期間を予測する予測手段と、
前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間、当該輻輳期間の前に前記第1リンクに流れていたトラフィックのうちの少なくとも1部のトラフィックを、前記第1リンクと同じ拠点間を接続する第2リンクに流す様に、前記第1リンク及び前記第2リンクを終端する第1宅内装置を制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第2リンクは、前記インターネットを介するリンクであり、
前記第1リンクと前記第2リンクは異なる通信事業者により前記インターネットへのアクセス回線が提供されていることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2リンクは、帯域保証型のリンクであり、
前記制御手段は、前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間、前記第2リンクに流れるトラフィックが前記第2リンクの保証帯域を超えない様に、当該輻輳期間の前に前記第1リンクに流れていたトラフィックから当該輻輳期間の間、前記第2リンクに流すトラフィックを決定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間に前記第2リンクに流すトラフィックを、アプリケーションを単位として決定することを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2リンクは、帯域保証型のリンクであり、
前記制御装置は、
前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の前に前記第1リンクに流れていたトラフィックのうち、前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間に前記第2リンクに流す第1トラフィックを示す情報を保持する保持手段と、
前記第1宅内装置から、前記第1宅内装置が前記第1リンク及び前記第2リンクに流したトラフィック量を示すトラフィック情報を取得する第3取得手段と、
前記トラフィック情報に基づき、前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間に前記第1トラフィックを前記第2リンクに流すことによる前記第2リンクの第2トラフィック量を予測する第2予測手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記第2トラフィック量が前記第2リンクの保証帯域を超えていると、前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間に必要な前記第2リンクの保証帯域を表示する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
複数の企業ネットワークの各企業ネットワークの複数の拠点に設置された宅内装置を制御する制御装置による制御方法であって、
前記各企業ネットワークの各拠点それぞれに設置された制御対象の複数の宅内装置のうち、インターネットを介して拠点間を接続するリンクを終端する宅内装置それぞれから当該リンクの疎通状態を示す疎通情報を取得する第1ステップと、
前記インターネットのサーバから所定のイベント情報を取得する第2ステップと、
前記疎通情報及び前記イベント情報に基づき、前記インターネットの輻輳により輻輳が生じる、前記インターネットを介する第1リンクと、当該第1リンクに生じる輻輳期間を予測する第3ステップと、
前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間、当該輻輳期間の前に前記第1リンクに流れていたトラフィックのうちの少なくとも1部のトラフィックを、前記第1リンクと同じ拠点間を接続する第2リンクに流す様に、前記第1リンク及び前記第2リンクを終端する第1宅内装置を制御する第4ステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、トラフィック変動に対して通信品質を維持するための制御技術を開示している。特許文献1によると、測定期間の間に到着したパケット数又はバイト数が所定の閾値を超えていると、パケットの送信先を変更することで輻輳を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−216961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成は、輻輳の検出をトリガとして輻輳回避制御を開始するものであり、輻輳検出から輻輳回避制御の効果が表れるまでの期間、通信品質が劣化する。
【0005】
本発明は、通信品質の劣化を抑える様に宅内装置を制御する制御装置、制御方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、複数の企業ネットワークの各企業ネットワークの複数の拠点に設置された宅内装置を制御する制御装置は、前記各企業ネットワークの各拠点それぞれに設置された制御対象の複数の宅内装置のうち、インターネットを介して拠点間を接続するリンクを終端する宅内装置それぞれから当該リンクの疎通状態を示す疎通情報を取得する第1取得手段と、前記インターネットのサーバから所定のイベント情報を取得する第2取得手段と、前記疎通情報及び前記イベント情報に基づき、前記インターネットの輻輳により輻輳が生じる、前記インターネットを介する第1リンクと、当該第1リンクに生じる輻輳期間を予測する予測手段と、前記第1リンクの前記予測された輻輳期間の間、当該輻輳期間の前に前記第1リンクに流れていたトラフィックのうちの少なくとも1部のトラフィックを、前記第1リンクと同じ拠点間を接続する第2リンクに流す様に、前記第1リンク及び前記第2リンクを終端する第1宅内装置を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、通信品質の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による企業ネットワークを示す図。
図2図1の拠点A内の一部の構成図。
図3】制御装置によるCPEの制御方法の説明図。
図4】一実施形態による制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0010】
図1は、本実施形態の説明のための企業Aの企業ネットワークの構成図である。図1によると、企業Aは、3つの拠点A、B及びCを有し、ある拠点が、他の拠点それぞれと3つの双方向のリンクで接続される様にネットワークを構築している。なお、拠点A、B及びC内の構成は同様であるため、以下では、拠点Aにおける、拠点Bへの3つのリンクについて図2を用いて説明する。
【0011】
図2において、顧客宅内装置(CPE:Customer Premise Equipment)1は、通信事業者Aが設置し、拠点BのCPEと接続する3つの双方向リンク7、8及び9を終端している。このうち、双方向リンク7は、通信事業者Aが提供するマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS:Multi−Protocol Label Switching)ネットワーク2を介して設定されている。MPLSネットワーク2を介する双方向リンク7は、帯域保証又は確保されるリンクであるが、一般的に、高価である。なお、MPLSリンクは、例示であり、双方向リンク7は、帯域を保証又は確保する任意のネットワークを介するリンクとすることができる。一方、双方向リンク8は、インターネット3を介し、例えば、VPN技術を使用して設定されている。なお、双方向リンク8は、インターネット3へのアクセスに通信事業者Aが提供する回線を利用しているものとする。双方向リンク9も、インターネット3を介し、例えば、VPN技術を使用して設定されているが、双方向リンク9は、インターネット3へのアクセスに通信事業者Bが提供する回線を利用している。インターネット3を介した双方向リンク8及び9は、一般的に安価であるが、インターネット3を流れる他のトラフィックにより、その疎通状況が変動し得る。なお、双方向リンク7、8及び9のうち、拠点Aから拠点Bに向かう方向のリンクを、それぞれ、リンク71、81及び91とし、拠点Bから拠点Aに向かう方向のリンクを、それぞれ、リンク72、82及び92としている。
【0012】
本実施形態において、制御装置6は、通信事業者Aが運用するネットワーク内に、通信事業者Aが設置する装置であり、MPLSネットワーク2を介した双方向リンク4によりCPE1と通信可能な様に構成されている。なお、双方向リンク4のうち、CPE1から制御装置6への方向のリンクをリンク41とし、制御装置6からCPE1への方向のリンクをリンク42とする。なお、制御装置6は、インターネット3を介してCPE1と通信する構成であっても良い。CPE1は、企業Aの拠点Aのネットワークから拠点Bのネットワークに向かうトラフィックを設定情報に基づきリンク71、81及び91に振り分ける。設定情報は、例えば、送信先アドレス、送信元アドレス、送信先ポート番号、送信元ポート番号等の1つ以上の組み合わせと、振り分け先のリンクとの関係を示す情報である。この設定情報は、企業Aと通信事業者Aとの事前の合意に基づき、制御装置6に設定されており、制御装置6は、リンク42を介して、この設定情報をCPE1に設定する。なお、制御装置6は、企業Aの各拠点に設置されたCPEに接続されるのみならず、通信事業者Aと契約する複数の企業の企業ネットワークの各拠点に設置された各CPEに接続される。
【0013】
図3は、制御装置6の動作を説明するための図である。なお、上述した様に、制御装置6は、複数の企業ネットワークの各拠点に設置された各CPEと接続するものであるが、図の簡略化及び説明の簡略化のため、図3においては、企業Aの拠点Aに設置されたCPE1のみを示している。また、制御装置6は、以下に説明するCPE1に対する制御を、他の制御対象のCPEに対しても同様に行う。
【0014】
制御装置6は、制御対象のCPEが、インターネット3を介して設定されたリンクを介して受信するパケットの疎通情報を繰り返し収集する。なお、疎通情報は、リンク毎に個別に収集する。例えば、CPE1からは、リンク82及び92の疎通情報をそれぞれ繰り返し取得する。また、図示してはいないが、企業Aの拠点BのCPEからは、リンク81及び91の疎通情報をそれぞれ繰り返し取得する。ここで、疎通情報とは、リンクの疎通状態に関連する情報であり、例えば、パケットの損失率や、パケットの遅延(レイテンシ)や、パケットの遅延変動(ジッタ)に関する情報等を含む。また、制御装置6は、CPEが他の拠点に送信するデータのトラフィック量を示すトラフィック情報も繰り返し収集する。なお、トラフィック情報も、リンク毎に取得する。例えば、企業Aの拠点AのCPE1からは、リンク71、81及び91のトラフィック情報をそれぞれ繰り返し取得する。さらに、制御装置6は、インターネット3上の各サーバから、イベント情報を収集する。
【0015】
ここで、イベント情報とは、インターネット3のトラフィックに影響を与えるイベントを示す情報である。一例として、広く使用されているスマートフォン、タブレット、PCの更新ソフトウェアのインターネット3を介した配布は、インターネット3のトラフィックに影響を与えるイベントである。また、人気のあるゲームソフトウェアの新作のインターネット3を介したダウンロード開始は、インターネット3のトラフィックに影響を与えるイベントである。なお、制御装置6が、インターネット3のどのサーバにアクセスして、どの情報を取得するかについては、通信事業者Aの運用者が決定して、制御装置6に設定する。このとき、基本的には、通信事業者Aの運用者が、過去の経験等から、インターネット3のトラフィックに影響を与えるイベントを決定して制御装置6に設定する。しかしながら、このとき、通信事業者Aの運用者は、インターネット3のトラフィックに影響を与えるかどうかが不明なイベントや、その時点において、インターネット3のトラフィックに影響を与えるとは考えられていないイベントについても、イベント情報として、制御装置6に設定することができる。
【0016】
制御装置6は、過去の疎通情報の推移から、例えば、機械学習により、インターネット3を介するリンクそれぞれについて、インターネット3の輻輳による、将来の輻輳の発生を予測する。ここで、インターネット3の輻輳によるリンクの輻輳とは、インターネット3とは無関係に、あるリンクのみに生じる輻輳を除外したものである。制御装置6は、上述した様に、複数の企業ネットワークの複数の拠点のCPEからそれぞれ疎通情報を取得する。また、制御装置6には、制御対象の各CPEが接続するリンク、そのリンクが経由するネットワーク及び事業者等、制御装置6が管理するネットワークのトポロジ情報が予め格納されている。したがって、例えば、単一のリンク81の疎通状態のみが悪化し、企業A及びその他の企業の他の総てのリンクが正常である状態は、インターネット3の輻輳による、リンク81の輻輳ではないと判定できる。なお、この機械学習においては、イベント情報も使用する。したがって、機械学習により、制御装置6は、イベントに関係なく、インターネット3の輻輳により、リンク81及び91に発生する輻輳のタイミングや、将来のイベントの予定から、イベントに起因するインターネット3の輻輳によりリンク81及び91に発生する輻輳のタイミングを予測することができる。なお、イベント情報としては、インターネット3のトラフィックに影響を与えることが分かっているイベントのみならず、インターネット3のトラフィックに影響を与えるかどうかが不明なイベントや、インターネット3のトラフィックに影響を与えるとは考えられていないイベントについても設定できるとしたが、機械学習により、どのイベントが、実際にどのリンクに影響を与えるかについても明らかになる。
【0017】
なお、図2のリンク81及び91は、共にインターネット3を介するものであるが、その両端におけるアクセス区間の通信事業者は異なり、かつ、一般的に、インターネット3における輻輳の発生は局所的であるため、インターネット3に輻輳が生じても、リンク81及び91が常に同時に輻輳状態になるとは限らない。つまり、リンク81が輻輳状態であっても、リンク91は輻輳状態ではない場合があり、同様に、リンク91が輻輳状態であっても、リンク81は輻輳状態ではない場合がある。
【0018】
制御装置6は、機械学習に基づき、インターネット3を介する各リンクについて、輻輳が発生する期間を予測し、予測した輻輳発生期間(以後、輻輳予測期間と呼ぶ。)の前に、輻輳が発生すると予測したリンクにトラフィックを流すCPEに新たな設定情報を送信する。例えば、企業Aの拠点AのCPE1の制御に関して述べると、制御装置6は、リンク81及び91それぞれの輻輳予測期間の前に、CPE1に新たな設定情報を送信する。例えば、制御装置6が、リンク81の輻輳を予測すると、CPE1は、その輻輳予測期間の間、リンク81にそれまで流していた総てのトラフィックをリンク91に流すことを示す設定情報をCPE1に送信することができる。これにより、CPE1は、リンク81の輻輳予測期間の間、リンク81にそれまで流していた総てのトラフィックをリンク91に流す様に動作する。なお、設定情報は、リンク81にそれまで流していた総てのトラフィックをリンク91に流す様にするのではなく、リンク81にそれまで流していた一部のトラフィックをリンク91に流す様にするものであっても良い。なお、リンク81又は91の輻輳予測期間に他のリンクに切り替える一部のトラフィックは、ポート番号等のアプリケーションを単位として選択することができる。また、さらに細かく、送信先アドレス、送信元アドレス、送信先ポート番号、送信元ポート番号等の1つ以上の組み合わせにより選択することができる。なお、この他のリンクに切り替える一部のトラフィックを示す選択情報は、予め企業Aが指定し、通信事業者Aの運用者が制御装置6に設定しておく。そして、制御装置6は、例えば、リンク81の輻輳予測期間に、選択情報が示すトラフィックをリンク91に流す様に、設定情報をCPE1に送信する。
【0019】
なお、例えば、リンク81及びリンク91の輻輳予測期間が略同じ場合や、重複している場合等には、MPLSネットワーク2を介するリンク71に、リンク81及び91に流していたトラフィックを流す様にすることもできる。但し、リンク71は、帯域保証型のリンクであり、契約帯域を超えたトラフィックは廃棄される。したがって、制御装置6は、輻輳予測期間におけるリンク71、81及び91のトラフィック量を予測する。このため、制御装置6は、各リンクのトラフィック情報を各CPE1から繰り返し取得し、機械学習により輻輳予測期間におけるリンク71、81及び91の合計トラフィック量を予測して、リンク71の契約帯域と比較する。ここで、輻輳予測期間におけるリンク71、81及び91の合計トラフィック量が契約帯域以下であると、制御装置6は、輻輳予測期間の間、それまでリンク81及び91に流していたトラフィックがリンク71に流れる様にする設定情報をCPE1に通知する。一方、輻輳予測期間におけるリンク71、81及び91の合計トラフィック量が契約帯域を超えていると、制御装置6は、通信事業者Aの運用者に、輻輳予測期間の間のリンク71、81及び91の合計トラフィック量が契約帯域を超えていることと、輻輳予測期間の間のリンク71、81及び91の合計トラフィック量をリンク71で伝送するために必要な、リンク71の契約帯域を表示する。通信事業者Aの運用者は、例えば、企業Aの担当者から、契約帯域の一時的な変更の同意を得ると、MPLSネットワーク2を構成する通信装置に、一時的な契約帯域の変更を設定するとともに、制御装置6に処理続行を指示する。制御装置6は、処理続行の指示が入力されると、CPE1に設定情報を送信する。
【0020】
なお、リンク81及びリンク91の輻輳予測期間が略同じ場合に、リンク81及びリンク91の総てのトラフィックをリンク71に流すのではなく、リンク81及び91の所定の一部のトラフィックのみをリンク71に流す構成とすることができる。また、上記では、インターネット3の輻輳によりリンク81又は91に輻輳が予測される場合、その輻輳予測期間の間、輻輳が予測されるリンクに流れていたトラフィックを、インターネット3を介する他のリンク流し、インターネット3の輻輳によりリンク81及び91が略同時に輻輳する場合、MPLSネットワーク2を介するリンク71に、リンク81及び91に流していたトラフィックを流す様にするものであった。
【0021】
しかしながら、インターネット3の輻輳によりリンク81又はリンク91に輻輳が予測される場合、その輻輳予測期間の間、MPLSネットワーク2を介するリンク71に、輻輳が予測されるリンクに流れていたトラフィックを流す構成とすることもできる。また、インターネット3の輻輳によりリンク81又はリンク91に輻輳が予測される場合、その輻輳予測期間の間、MPLSネットワーク2を介するリンク71の契約帯域を超えない範囲で、輻輳が予測されるリンクに流れていたトラフィックを流し、MPLSネットワーク2を介するリンク71の契約帯域を超える部分については、インターネット3を介する他のリンクに流す構成とすることもできる。この場合、制御装置6は、輻輳前にリンク81又はリンク91に流していたトラフィックのうち、リンク81又はリンク91の輻輳予測期間の間にリンク71に流すトラフィックを、リンク71の契約帯域を超えない範囲で決定する。
【0022】
なお、上記では、リンク71の契約帯域を一時的に変更、より詳しくは、増加させる必要がある場合、制御装置6は、一旦、通信事業者Aの運用者にその旨を表示し、企業Aの担当者から、契約帯域の一時的な変更の同意を得た後、その後の処理を行っていた。しかしながら、企業Aと通信事業者Aとの事前の合意により、リンク71の契約帯域を一時的に変更する必要がある場合、企業Aの担当者から個別に合意を得ることなくリンク71の契約帯域を一時的に変更する構成とすることができる。この場合、リンク81及び91の輻輳予測期間におけるリンク71、81及び91の合計トラフィック量が契約帯域を超えていると、制御装置6は、MPLSネットワーク2を構成する通信装置に、一時的な契約帯域の変更を設定し、CPE1に設定情報を送信する。
【0023】
また、輻輳が予測されるリンクの輻輳予測期間におけるトラフィック量に基づき、契約帯域の一時的な変更に関する処理を変えることもできる。例えば、輻輳予測期間におけるトラフィック量が大変大きく、一時的な契約帯域の変更が不可避である場合には、個別の同意なく契約帯域を一時的に変更し、そうでない場合には、企業側の担当者から個別に合意を得た後、契約帯域を一時的に変更する構成とすることもできる。また、個別の合意なく変更できる契約帯域の上限を事前に企業側の担当者と決めておき、この上限以内であれば、個別の合意なく契約帯域の一時的な変更を行い、この上限を超えている場合には、通信事業者Aの運用者にその旨の表示をおこなって、個別に企業側の担当者に合意を得る構成とすることもできる。具体的には、制御装置6は、リンク81又は91について予測した輻輳により、これらのトラフィックをリンク71に迂回させる場合、リンク71に必要な契約帯域を判定する。そして、この必要な契約帯域が、事前に決めた上限以内であれば、個別の合意なく契約帯域の一時的な変更を行う。一方、必要な契約帯域が、事前に決めた上限を超えていれば、通信事業者Aの運用者にその旨を表示する。
【0024】
また、制御装置6は、例えば、リンク81について予測した輻輳により、通常、リンク81に流すトラフィックの一部をリンク71に迂回させている間、リンク71に迂回させず、リンク81に流し続けているトラフィックを監視する。そしてリンク81の疎通状態、又は、リンク81の受信側である拠点Bと同地域に設置されているCPEであって、リンク81と同じ通信事業者Aがアクセス区間を提供する他のリンクの受信側のCPEの疎通状態から回線品質が劣化していないと判断できる場合、リンク71に迂回させているトラフィックの一部又は全部をリンク81に戻し、リンク71の一時的な契約帯域を元の契約帯域に戻す、或いは、一時的な契約帯域を小さくする構成とすることができる。また、制御装置6は、例えば、リンク81について予測した輻輳により、通常、リンク81に流すトラフィックをリンク71に迂回させている間、リンク71に迂回させているトラフィックを監視する。そしてリンク71に迂回させているトラフィックが予測結果より小さい場合、リンク71の一時的な契約帯域を元の契約帯域に戻す、或いは、一時的な契約帯域を小さくする構成とすることができる。
【0025】
なお、設定情報は、トラフィックの変更のタイミングで制御装置6がCPEに送信する構成とすることができる。例えば、リンク81の輻輳予測期間に、リンク81に流れていたトラフィックをリンク91に切り替える場合、制御装置6は、輻輳予測期間の開始タイミングにおいて、設定情報をCPE1に送信してリンク81に流れていたトラフィックをリンク91に切り替える。その後、制御装置6は、輻輳予測期間の終了タイミングにおいて、設定情報をCPE1に送信してトラフィックのパターンを元の状態に戻す様にする。また、設定情報に、トラフィックの一時的な変更期間を示す情報を追加することで、制御装置6は、事前に設定情報をCPE1に送信することができる。この場合、CPE1は、設定情報で示された期間の間のみ、当該設定情報に従い各リンクに流すトラフィックを振り分ける。
【0026】
なお、図1では、企業Aの3つの拠点をそれぞれ3つの総方向リンクで接続する構成を示したが、拠点数は2つ以上の任意の数であって良い。また、同じ拠点を接続するリンクについては、インターネットを介する1つのリンクと、インターネットを介するリンク又は帯域保証型のリンクの少なくとも2つのリンクがあれば、本発明を適用することができる。なお、インターネットを介する2つ以上のリンクを使用する場合、少なくとも1つのリンクについてはアクセス区間を提供する事業者を他のリンクとは異ならせる。
【0027】
図4は、本実施形態による制御装置6の構成図である。輻輳学習部61は、イベント情報及び疎通情報に基づき、機械学習により輻輳の予測用データを生成する。輻輳予測部62は、将来のイベント情報と輻輳の予測用データに基づき、インターネット3の輻輳により、インターネット3を介するリンクに生じる輻輳を予測し、輻輳予測結果を出力する。設定制御部63は、予め決められたポリシーに基づき、輻輳予測期間の間、輻輳が予測されるリンクに流していたトラフィックの振り分け先のリンクを決定して設定情報をCPE1に送信する。なお、予め決められたポリシーとは、あるリンクの輻輳予測時に、当該リンクのトラフィックを振り分ける他のリンクを示す情報と、当該他のリンクに振り分けるトラフィックを特定するための情報である。
【0028】
また、トラフィック学習部64は、トラフィック情報に基づき、機械学習によりトラフィックの予測用データを生成する。トラフィック予測部65は、トラフィックの予測用データに基づき輻輳予測期間におけるリンクのトラフィック量を予測する。設定制御部63は、インターネット3の輻輳により、リンク81又は91に流していたトラフィックを、MPLSネットワーク2を介するリンク71に振り分ける場合、トラフィック予測部65が出力するトラフィックの予測結果に基づきリンク71の契約帯域内にトラフィックが収まるか否かを判定する。リンク71の契約帯域内に収まらない場合、制御装置6は、上述した様に、リンク71の契約帯域の変更設定を行い、かつ、設定情報をCPE1に送信することができる。或いは、制御装置6は、リンク71の契約帯域内に収まらない場合、上述した様に、リンク71の契約帯域の変更が必要な旨と、必要な契約帯域を運用者に通知する構成とすることができる。なお、リンクの優先度を設定しておくこともできる。例えば、リンク81、91よりリンク71の優先度を低くする。そして、リンク81に輻輳が予測される場合、リンク81のトラフィックを、リンク71より優先度の高いリンク91に流しても、リンク91に輻輳が生じないか否かを制御装置6は判定する。そして、リンク91に輻輳が生じない場合、リンク81のトラフィックをリンク91に流し、リンク91に輻輳が生じる場合、リンク81のトラフィックをリンク71に流す構成とすることができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、1つのリンクについて、その方向別に独立して制御を行っていた。例えば、双方向リンク8のリンク81とリンク82については個別に制御を行っていた。しかしながら、双方向リンクを単位として制御する構成とすることもできる。例えば、リンク81に輻輳が予測され、リンク81のトラフィックをリンク91に流す場合、制御装置6は、拠点BのCPEにも設定情報を送信し、リンク82に流していたトラフィックをリンク92に流す様に制御することができる。また、制御装置6は、複数のリンクについて、同時に輻輳の発生が予測される場合、より多くのトラフィックを流しているリンクの送信元CPEほど優先して設定情報を送信する構成とすることができる。
【0030】
この様に、本実施形態において、通信事業者Aが設置する制御装置6は、通信事業者Aのみならず、通信事業者Bが提供するアクセス回線によりインターネットを介して設定されるリンクについてもCPEから情報を取得して予測に使用する。通信事業者Aが提供するアクセス回線を使用して設定されるインターネット経由のリンクは、主に、通信事業者Aのインターネット網(インターネットの一部)を介して設定される。同様に、通信事業者Bが提供するアクセス回線を使用して設定されるインターネット経由のリンクは、主に、通信事業者Bのインターネット網(インターネットの一部)を介して設定される。従来では、通信事業者Aは、自社のインターネット網の輻輳の予測しかできなかったが、本構成により、他の通信事業者のインターネット網を含めた輻輳を予測でき、よって、予測精度を向上させることができ、予測に基づき事前にリンクを流れるトラフィックを迂回させることができる。
【0031】
なお、本発明による制御装置6は、コンピュータを上記制御装置として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0032】
61:輻輳学習部、62:輻輳予測部、63:設定制御部
図1
図2
図3
図4