特許第6783228号(P6783228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783228
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20201102BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20201102BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   E05F11/48 F
   E05F15/689
   E05F11/48 E
   B60J1/17 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-512553(P2017-512553)
(86)(22)【出願日】2016年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2016061887
(87)【国際公開番号】WO2016167274
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-82437(P2015-82437)
(32)【優先日】2015年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】村松 厚志
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
(72)【発明者】
【氏名】木下 公宏
(72)【発明者】
【氏名】杉田 良樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】生駒 徹
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−185475(JP,A)
【文献】 特開2011−157703(JP,A)
【文献】 実公平05−001590(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースを昇降させるループ状に配策された駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤが巻回される駆動ドラムと、前記駆動ドラムを回転可能に支持するドラムハウジングと、を有するウインドレギュレータの製造方法であって、
前記駆動ワイヤの他端部を前記駆動ドラムに取り付けるステップと、
前記駆動ワイヤの一端部を前記ドラムハウジングに設けた仮配置部に配置するステップと、
前記仮配置部への配置状態で、前記駆動ワイヤの他端部側を前記駆動ドラムで巻き取ることにより、前記駆動ワイヤの一端部側を引っ張り、前記駆動ワイヤの一端部の前記仮配置部への配置状態を解除して、前記駆動ワイヤの一端部を、前記駆動ドラムに設けた係止部に移動することで、前記駆動ワイヤに張力を与えるステップと、
を有し、
前記仮配置部は、前記ドラムハウジングのドラム収容部の周縁部に形成されており、
前記駆動ドラムの係止部は、該駆動ドラムの外周面に形成されており、
前記ドラムハウジングの仮配置部と前記駆動ドラムの係止部の周方向位置が一致したときに、前記駆動ワイヤの一端部が前記ドラムハウジングの仮配置部から前記駆動ドラムの係止部に移動して、前記駆動ワイヤの一端部が前記駆動ドラムの係止部に係止される、
ことを特徴とするウインドレギュレータの製造方法。
【請求項2】
上下方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースを昇降させるループ状に配策された駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤが巻回される駆動ドラムと、前記駆動ドラムを回転可能に支持するドラムハウジングと、を有するウインドレギュレータの製造方法であって、
前記駆動ワイヤの他端部を前記駆動ドラムに取り付けるステップと、
前記駆動ワイヤの一端部を前記ドラムハウジングに設けた仮配置部に配置するステップと、
前記仮配置部への配置状態で、前記駆動ワイヤの他端部側を前記駆動ドラムで巻き取ることにより、前記駆動ワイヤの一端部側を引っ張り、前記駆動ワイヤの一端部の前記仮配置部への配置状態を解除して、前記駆動ワイヤの一端部を、前記駆動ドラムに設けた係止部に移動することで、前記駆動ワイヤに張力を与えるステップと、
を有し、
前記ドラムハウジングの仮配置部と前記駆動ドラムの係止部は、前記駆動ドラムの回転軸と直交する平面内で互いに対向する開口部からなる、
ことを特徴とするウインドレギュレータの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウインドレギュレータの製造方法において、
前記駆動ワイヤは、一対のワイヤから成り、前記スライダベースは、前記一対のワイヤの端部を収納するワイヤエンド収納部を有していて、
前記一対のワイヤの端部を前記スライダベースのワイヤエンド収納部に収納して結合することにより、前記ループ状に配策された駆動ワイヤを形成するステップをさらに有するウインドレギュレータの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のウインドレギュレータの製造方法において、
前記仮配置部と前記係止部が対面したときに、前記駆動ワイヤの一端部が前記仮配置部から前記係止部に移動するウインドレギュレータの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のウインドレギュレータの製造方法において、
前記ドラムハウジングに前記駆動ドラムを回転駆動するためのモータユニットを支持して該モータユニットを作動させるステップをさらに有し、
前記モータユニットの作動によって、前記駆動ワイヤの一端部が前記ドラムハウジングの仮配置部から前記駆動ドラムの係止部に移動して、前記駆動ワイヤの一端部が前記駆動ドラムの係止部に係止されるウインドレギュレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウインドレギュレータとして、例えば、上下方向に延びるガイドレールと、このガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、このスライダベースを昇降させるループ状に配策された駆動ワイヤと、この駆動ワイヤが巻回される駆動ドラムと、この駆動ドラムを支持するドラムハウジングと、を有するものが知られている。
【0003】
このようなウインドレギュレータを製造する(組み立てる)ときには、ウインドレギュレータの作動性と耐久性を担保するべく、ウインドレギュレータの各部品(上記の例では、ガイドレール、スライダベース、駆動ワイヤ、駆動ドラム、ドラムハウジング)を組み付けた状態で、駆動ワイヤにテンションを掛ける(張力を与える)工程が必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−93319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の製造現場(組立現場)では、駆動ワイヤにテンションを掛ける工程は、次のようなものであった。すなわち、駆動ドラムに駆動ワイヤを巻回した後に設備や手作業などによって、駆動ワイヤのワイヤエンドを駆動ドラムの第1の部分(ワイヤ仮置き場)から第2の部分(ワイヤ係止部)まで引っ張ることにより、駆動ワイヤにテンションを掛けていた。このため、製造工程(組立工程)が増えて効率が悪く、タイムロスの発生(タクトタイムの増大)を招いていた。
【0006】
この技術課題は、ウインドレギュレータの製造方法に限らず、駆動ワイヤの張力付与方法にも共通するものである。
【0007】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、一連の製造工程の中で優れた効率で駆動ワイヤにテンションを掛ける(張力を与える)ことができるウインドレギュレータの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウインドレギュレータの製造方法は、その一態様では、上下方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースを昇降させるループ状に配策された駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤが巻回される駆動ドラムと、前記駆動ドラムを回転可能に支持するドラムハウジングと、を有するウインドレギュレータの製造方法であって、前記駆動ワイヤの他端部を前記駆動ドラムに取り付けるステップと、前記駆動ワイヤの一端部を前記ドラムハウジングに設けた仮配置部に配置するステップと、前記仮配置部への配置状態で、前記駆動ワイヤの他端部側を前記駆動ドラムで巻き取ることにより、前記駆動ワイヤの一端部側を引っ張り、前記駆動ワイヤの一端部の前記仮配置部への配置状態を解除して、前記駆動ワイヤの一端部を、前記駆動ドラムに設けた係止部に移動することで、前記駆動ワイヤに張力を与えるステップと、を有し、前記仮配置部は、前記ドラムハウジングのドラム収容部の周縁部に形成されており、前記駆動ドラムの係止部は、該駆動ドラムの外周面に形成されており、前記ドラムハウジングの仮配置部と前記駆動ドラムの係止部の周方向位置が一致したときに、前記駆動ワイヤの一端部が前記ドラムハウジングの仮配置部から前記駆動ドラムの係止部に移動して、前記駆動ワイヤの一端部が前記駆動ドラムの係止部に係止される、ことを特徴としている。
本発明のウインドレギュレータの製造方法は、別の態様では、上下方向に延びるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースを昇降させるループ状に配策された駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤが巻回される駆動ドラムと、前記駆動ドラムを回転可能に支持するドラムハウジングと、を有するウインドレギュレータの製造方法であって、前記駆動ワイヤの他端部を前記駆動ドラムに取り付けるステップと、前記駆動ワイヤの一端部を前記ドラムハウジングに設けた仮配置部に配置するステップと、前記仮配置部への配置状態で、前記駆動ワイヤの他端部側を前記駆動ドラムで巻き取ることにより、前記駆動ワイヤの一端部側を引っ張り、前記駆動ワイヤの一端部の前記仮配置部への配置状態を解除して、前記駆動ワイヤの一端部を、前記駆動ドラムに設けた係止部に移動することで、前記駆動ワイヤに張力を与えるステップと、を有し、前記ドラムハウジングの仮配置部と前記駆動ドラムの係止部は、前記駆動ドラムの回転軸と直交する平面内で互いに対向する開口部からなる、ことを特徴としている。
【0009】
前記駆動ワイヤは、一対のワイヤから成り、前記スライダベースは、前記一対のワイヤの端部を収納するワイヤエンド収納部を有していて、前記一対のワイヤの端部を前記スライダベースのワイヤエンド収納部に収納して結合することにより、前記ループ状に配策された駆動ワイヤを形成するステップをさらに有することができる。
【0010】
前記仮配置部と前記係止部が対面したときに、前記駆動ワイヤの一端部が前記仮配置部から前記係止部に移動することができる。
【0011】
前記ドラムハウジングに前記駆動ドラムを回転駆動するためのモータユニットを支持して該モータユニットを作動させるステップをさらに有し、
前記モータユニットの作動によって、前記駆動ワイヤの一端部が前記ドラムハウジングの仮配置部から前記駆動ドラムの係止部に移動して、前記駆動ワイヤの一端部が前記駆動ドラムの係止部に係止されることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一連の製造工程の中で優れた効率で駆動ワイヤにテンションを掛ける(張力を与える)ことができるウインドレギュレータの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるウインドレギュレータの正面図である。
図2】本発明によるウインドレギュレータの背面図である。
図3】本発明によるウインドレギュレータの側面図である。
図4】一対の駆動ワイヤの構成を示す図である。
図5】ドラムハウジングの単体構造を示す斜視図である。
図6】ドラムハウジングの単体構造を示す平面図である。
図7A】駆動ドラムの単体構造を示す斜視図である。
図7B】駆動ドラムの単体構造を示す平面図である。
図7C】駆動ドラムの単体構造を示す側面図である。
図8】本発明によるウインドレギュレータの製造方法(組立方法)を示す第1の図である。
図9】本発明によるウインドレギュレータの製造方法(組立方法)を示す第2の図である。
図10】本発明によるウインドレギュレータの製造方法(組立方法)を示す第3の図である。
図11】本発明の別実施形態による駆動ドラムの単体構造を示す平面図である。
図12図11の駆動ドラムの抜け止めガイド壁部が形成された本係止用開口部に駆動ワイヤの先端係止頭部を挿入して係止する様子を示す平面図である。
図13図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。
図14】本発明のさらなる別実施形態によるウインドレギュレータを示す平面図である。
図15図14のXV−XV線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪ウインドレギュレータ10の構成≫
図1図7を参照して、本発明によるウインドレギュレータ10の構成について説明する。ウインドレギュレータ10は、車両のドアパネル(図示略)内に取り付けられてウインドガラス(図示略)を昇降させるものである。図1図3中に矢線で示す上方と下方が車両における上下方向に対応している。
【0018】
ウインドレギュレータ10は長尺部材であるガイドレール11を有し、ガイドレール11は長手方向に位置を異ならせて設けたブラケット12、13を介してドアパネル(インナパネル)に固定される。ウインドガラスが支持されるスライダベース14がガイドレール11の長手方向に沿って移動可能に支持されている。
【0019】
ウインドレギュレータ10は、スライダベース14を昇降させるための一対の駆動ワイヤ(下側(下死点側)の駆動ワイヤ)15と駆動ワイヤ(上側(上死点側)の駆動ワイヤ)16を有している。
【0020】
図4に示すように、駆動ワイヤ15は、その先端部に円柱状の先端係止頭部(駆動ワイヤの一端部)15Aを有しており、その基端部に円柱状の基端係止頭部15Bを有している。また駆動ワイヤ16は、その先端部に円柱状の先端係止頭部(駆動ワイヤの他端部)16Aを有しており、その基端部に円柱状の基端係止頭部16Bを有している。駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aと基端係止頭部15B、及び、駆動ワイヤ16の先端係止頭部16Aと基端係止頭部16Bの形状は、円柱状に限定されず、球状等の他の形状であってもよい。
【0021】
スライダベース14は、駆動ワイヤ15の基端係止頭部15Bと駆動ワイヤ16の基端係止頭部16Bがそれぞれ取り付けられる「ワイヤエンド収納部」を有している。この「ワイヤエンド収納部」は、例えば、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16を通過させる「ワイヤ溝」、及び、基端係止頭部15Bと基端係止頭部16Bを通過させずにこれらと係止される「係止部」を有する「ワイヤ溝付き係止部」から構成することができる。この「ワイヤ溝付き係止部」は、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16に掛かるテンションを吸収する「スプリング」を有することができる。
【0022】
駆動ワイヤ15の基端係止頭部15Bと駆動ワイヤ16の基端係止頭部16Bをスライダベース14の「ワイヤエンド収納部」に取り付けることで、「ループ状に配策された駆動ワイヤ」が構成される。
【0023】
駆動ワイヤ15は、スライダベース14からガイドレール11に沿って下方に延び、ガイドレール11の下端付近に設けたガイドピース(ワイヤガイド部材)17に案内される。ガイドピース17はガイドレール11に対して固定されており、ガイドピース17に形成したワイヤガイド溝に沿って進退可能に駆動ワイヤ15が支持される。
【0024】
駆動ワイヤ16は、スライダベース14からガイドレール11に沿って上方に延び、ガイドレール11の上端付近に設けたガイドプーリ(ワイヤガイド部材)18に案内される。ガイドプーリ18は回転軸18aを中心として回転可能であり、外周面上に形成したワイヤガイド溝によって駆動ワイヤ16が支持される。
【0025】
ガイドピース17から出た駆動ワイヤ15とガイドプーリ18から出た駆動ワイヤ16は、ガイドチューブ21とガイドチューブ22内に挿通され、ガイドチューブ21とガイドチューブ22が接続するドラムハウジング(静止部材、固定部材)30内に設けた駆動ドラム40(図7A図7B図7C)に巻回される。
【0026】
ドラムハウジング30はドアパネル(インナパネル)に固定される。ドラムハウジング30には、駆動ドラム40を回転駆動するためのモータ25を有するモータユニット26が支持される。モータ25(モータユニット26)によって駆動ドラム40を正逆に回転駆動すると、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16の一方が駆動ドラム40への巻回量を大きくし、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16の他方が駆動ドラム40から繰り出されて、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16の牽引と弛緩の関係によってスライダベース14がガイドレール11に沿って移動する。このスライダベース14の移動に応じてウインドガラスが昇降する。
【0027】
図5図6は、ドラムハウジング30の単体構造を示している。ドラムハウジング30は、略正三角形の頂点を描くように配置された3つの締結ボルト挿通孔31を有しており、この3つの締結ボルト挿通孔31に挿通された3つの締結ボルト(図示せず)によって、ドラムハウジング30がドアパネル(インナパネル)に固定される。
【0028】
ドラムハウジング30は、駆動ドラム40(図7A図7B図7C)を収容する有底筒状のドラム収容部32を有している。ドラムハウジング30は、駆動ワイヤ15をドラム収容部32に導くための駆動ワイヤ導入部33、及び、駆動ワイヤ16をドラム収容部32に導くための駆動ワイヤ導入部34を有している。ドラム収容部32と駆動ワイヤ導入部33の接続部(境界部)には、駆動ワイヤ15の弛みを防止するための弛み防止リブ35が形成されている。ドラム収容部32と駆動ワイヤ導入部34の接続部(境界部)には、駆動ワイヤ16の弛みを防止するための弛み防止リブ36が形成されている。ドラム収容部32の底部中央には、ドラムハウジング30とこれに支持される駆動ドラム40の強度を向上させるための強度リブ37が形成されている。
【0029】
ドラムハウジング30は、ドラム収容部32の周縁部に位置させて、駆動ワイヤ導入部33と弛み防止リブ35を経由してドラム収容部32に導かれた駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを仮係止(仮配置、配置)するための仮係止用開口部(仮配置用開口部、仮係止部、仮配置部、配置部)38を有している。
【0030】
仮係止用開口部38を囲む壁部は、その一部が切り欠かれており(穴が設けられており)、駆動ワイヤのワイヤエンドが通過できるようになっている。これにより、駆動ワイヤのワイヤエンドの仮係止用開口部38への組み付け性を向上させることができる。ドラムハウジング30の外部へ駆動ワイヤのワイヤエンドが出るように、上記切欠部(穴部)に駆動ワイヤを通し、駆動ドラム40により駆動ワイヤを巻回することにより、駆動ワイヤのワイヤエンドが仮係止用開口部38まで移動する。
【0031】
図7A図7B図7Cは、駆動ドラム40の単体構造を示している。駆動ドラム40は、ドラムハウジング30のドラム収容部32に収容されるドーナツ型の部材である。駆動ドラム40をドラムハウジング30のドラム収容部32に収容した状態では、駆動ドラム40の回転軸孔部41にドラムハウジング30の強度リブ37が挿入される。
【0032】
駆動ドラム40は、天板部42、底板部43、及び、天板部42と底板部43の間の外周面に位置するワイヤ巻回溝(ワイヤ巻回部)44を有している。ワイヤ巻回溝44には、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16が巻回される。
【0033】
駆動ドラム40は、ワイヤ巻回溝44の底板部43の側の端部に隣接(連続)させて、駆動ワイヤ16の先端係止頭部16Aを係止するための係止用開口部45を有している(図8図10)。
【0034】
駆動ドラム40は、ワイヤ巻回溝44の天板部42の側の端部に隣接(連続)させて、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを本係止(係止)するための本係止用開口部(係止用開口部、本係止部、係止部)46を有している。
【0035】
駆動ドラム40をドラムハウジング30のドラム収容部32に収容した状態では、ドラムハウジング30の仮係止用開口部38と駆動ドラム40の本係止用開口部46が、駆動ドラム40の回転軸孔部41と直交する平面内で互いに対向(対面)する。
【0036】
駆動ドラム40は、天板部42から底板部43に亘って貫通形成された平面視略矩形の貫通孔47を有している。この貫通孔47は、駆動ドラム40の係止用開口部45(図8図10)を形成するための抜き穴である。
【0037】
≪ウインドレギュレータ10の製造方法(組立方法)≫
図8図10を参照して、本発明によるウインドレギュレータ10の製造方法(組立方法)について説明する。ここでは車両ドアに組み込む前のサブアッシ状態のウインドレギュレータ10を対象とする。
【0038】
まず、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16(ループ状に配策された駆動ワイヤ)及びモータユニット26を除いたウインドレギュレータ10の各部品(ガイドレール11、ブラケット12、13、スライダベース14、ガイドピース17、ガイドプーリ18、ガイドチューブ21、22、ドラムハウジング30、駆動ドラム40)を組み付ける。
【0039】
この部品の組み付けは、以下の通りである。ガイドレール11にブラケット12、13を取り付ける。ガイドレール11にスライダベース14を取り付ける。ガイドレール11にガイドピース17とガイドプーリ18を取り付ける。駆動ドラム40をドラムハウジング30に収容する。
【0040】
この時点で、駆動ドラム40の回転駆動に伴って作動しないドラムハウジング30には、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを仮係止(仮配置、配置)するための仮係止用開口部(仮係止部)38が形成されている。また、駆動ドラム40には、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを本係止するための本係止用開口部(本係止部)46が形成されている。ここで仮係止用開口部38と本係止用開口部46を形成する順番には自由度がある。
【0041】
次いで、スライダベース14の「ワイヤエンド収納部」に、駆動ワイヤ15の基端係止頭部15Bと駆動ワイヤ16の基端係止頭部16Bをそれぞれ取り付ける。これにより、「ループ状に配策された駆動ワイヤ」が構成される。
【0042】
次いで、駆動ワイヤ16をガイドレール11に沿って上方に導いた後にガイドプーリ18で折り返してガイドチューブ22に挿通し、ドラムハウジング30のドラム収容部32内に到達させる。そして、駆動ドラム40の係止用開口部45に、駆動ワイヤ16の先端係止頭部16Aを係止する。
【0043】
次いで、駆動ワイヤ15をガイドレール11に沿って下方に導いた後にガイドピース17で折り返してガイドチューブ21に挿通し、ドラムハウジング30のドラム収容部32内に到達させる。そして、ドラムハウジング30の仮係止用開口部38に、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを仮係止(仮配置、配置)する。図8はこの状態を「ドラムセット位置」として示している。
【0044】
次いで、ドラムハウジング30に駆動ドラム40を回転駆動するためのモータユニット26を支持して該モータユニット26の作動チェックを行うことにより、駆動ドラム40を図8の「ドラムセット位置」から同図の時計方向に回転駆動する。すると、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16が駆動ドラム40のワイヤ巻回溝44に巻回されていき、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16にテンションが掛けられていく。駆動ドラム40の回転駆動が進んで駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16がワイヤ巻回溝44に巻回されていくに連れて、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16に掛かるテンションが大きくなっていく。図9はこの状態を「エンド挿入位置」として示している。
【0045】
やがて、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16に掛かるテンションが所定値を超え、且つ、ドラムハウジング30の仮係止用開口部38と駆動ドラム40の本係止用開口部46の周方向位置が一致する(仮係止用開口部38と本係止用開口部46が対面する)。すると、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aがドラムハウジング30の仮係止用開口部38から駆動ドラム40の本係止用開口部46に移動して、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aが駆動ドラム40の本係止用開口部46に本係止される。図10はこの状態を「テンション完了位置」として示している。
【0046】
図9の「エンド挿入位置」から図10の「テンション完了位置」への移行時の動作をさらに詳細に説明すると、以下の通りである。すなわち、駆動ワイヤ16の先端部(駆動ワイヤの他端部)側を駆動ドラム40で巻き取ることにより、駆動ワイヤ15の先端部(駆動ワイヤの一端部)側が引っ張られる。駆動ワイヤ16の先端部(駆動ワイヤの他端部)側が駆動ドラム40で巻き取られると、スライダベース14に駆動ワイヤ16の基端部が当接してスライダベース14の「ワイヤエンド収納部」の「スプリング」(段落0022)が圧縮される。この「スプリング」の圧縮によりスライダベース14が下降して、駆動ワイヤ15の先端部(駆動ワイヤの一端部)側が引っ張られる。このとき、駆動ワイヤ15の先端部(駆動ワイヤの一端部)がドラムハウジング30の仮係止用開口部38で一端が固定されている。そして、ドラムハウジング30の仮係止用開口部38と駆動ドラム40の本係止用開口部46の周方向位置が一致した(仮係止用開口部38と本係止用開口部46が対面した)ときに、駆動ワイヤ15の先端部(駆動ワイヤの一端部)が本係止用開口部46に移動して、テンションが掛けられる(張力が与えられる)。
【0047】
ここで、ドラムハウジング30の仮係止用開口部38と駆動ドラム40の本係止用開口部46が、駆動ドラム40の回転軸孔部41と直交する平面内で互いに対向しており、且つ、駆動ドラム40の本係止用開口部46が、駆動ドラム40の外周面の駆動ワイヤ巻回溝44に隣接(連続)して設けられている。このため、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aをドラムハウジング30の仮係止用開口部38から駆動ドラム40の本係止用開口部46にスムーズに移動させることができる。また、駆動ドラム40の直上に支持されたモータユニット26が、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aの移動の邪魔になることがない。
【0048】
以上のウインドレギュレータ10の製造方法によれば、作業者は、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aをドラムハウジング30の仮係止用開口部38に仮係止(仮配置、配置)するだけでよく、その後は、モータユニット26の作動チェックを行うだけで、駆動ワイヤ15(さらには駆動ワイヤ16)にテンションを掛けることができる。つまり、一連の製造工程の中で優れた効率で駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16にテンションを掛けることができる。
【0049】
従来の製造現場では、駆動ワイヤにテンションを掛けた後のタイミングで、ドラムハウジングに駆動ドラムを回転駆動するためのモータユニットを支持しなければならなかった。これは、モータユニットが駆動ドラムと駆動ワイヤ(の結合部)を塞ぐ形でドラムハウジングに支持されるためである。しかし、駆動ワイヤにテンションが掛かった状態でドラムハウジングにモータユニットを支持すると、ウインドレギュレータの部品(特にガイドレール)に曲げ方向の大きな力が加わって座屈するおそれがある。この点、本実施形態のウインドレギュレータ10の製造方法によれば、ドラムハウジング30にモータユニット26を支持する段階では、駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16にテンションが掛かっていないので、ウインドレギュレータ10の部品(特にガイドレール11)に曲げ方向の大きな力が加わってこれが座屈するのを防止することができる。
【0050】
図11図13は、本発明の別実施形態を示している。この別実施形態では、図11図12に示すように、駆動ドラム40の本係止用開口部46の内部に位置させて抜け止めガイド壁部46Xが突出形成されている。また、図12に示すように、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aが、駆動ドラム40の本係止用開口部46の内壁と抜け止めガイド壁部46Xに囲まれた係合空間に微小クリアランスで係合するような扁平形状となっている。
【0051】
抜け止めガイド壁部46Xは、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aをドラムハウジング30の仮係止用開口部38に仮係止(仮配置、配置)する際の妨げになることが無い。また、抜け止めガイド壁部46Xは、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aをガイドして駆動ドラム40のワイヤ巻回溝44に高精度に沿わせて巻回することを可能にする(段飛ばし巻回等の異常巻回を防止することができる)。さらに、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを駆動ドラム40の本係止用開口部46に本係止した状態では、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aが抜け止めガイド壁部46Xに当て付いて高い抜け止め効果を得ることができる。
【0052】
図13に示すように、駆動ドラム40に設けられたワイヤ入口部48の外径を駆動ワイヤ15の外径と同じかそれより若干小さくするべく、ワイヤ入口部48の近傍に、駆動ワイヤ15の反力方向への折り返し部48Aを設けている。これにより、ワイヤ入口部48に導入された駆動ワイヤ15の抜け止め効果を得ることができる。
【0053】
図14図15は、本発明のさらなる別実施形態を示している。このさらなる別実施形態では、ドラムハウジング30のドラム収容部32の側壁32Aに、駆動ワイヤ15の取り回し時に駆動ワイヤ15を引っ掛けることが可能な係合爪部32Bが形成されている。これにより、ドラムハウジング30にモータユニット26を固定するまでの間に駆動ワイヤ15が抜けるのを防止することができる。またドラムハウジング30と駆動ドラム40の結合体(仮組体)の上下を反転させる作業を行う場合であっても、駆動ワイヤ15が抜けるのを防止することができ、駆動ドラム40がドラムハウジング30から分離することなく両部材を確実に保持することができる。
【0054】
以上の実施形態では、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aをドラムハウジング30の仮係止用開口部38に仮係止することで一旦静止させた後に、駆動ドラム40の本係止用開口部46に導く場合を例示して説明した。しかし、ドラムハウジング30の仮係止用開口部38に駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを通過させる形で(これを仮配置、配置と称する)、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを駆動ドラム40の本係止用開口部46に導く態様も可能である。この点で、「仮配置、配置」は、「仮係止」を含み且つ「仮係止」より広い概念の技術用語(文言)として使用している。
【0055】
以上の実施形態では、駆動ドラム40を支持するドラムハウジング30に、駆動ワイヤ15の先端係止頭部15Aを仮係止するための仮係止用開口部38を形成した場合を例示して説明した。しかし、ドラムハウジング30以外であっても、駆動ドラム40の回転駆動に伴って作動せずにこれと対面する静止部材(固定部材)であれば、仮係止用開口部(仮係止部)を形成することが可能である。静止部材(固定部材)は、例えばモータのギアハウジング等とすることができる。
【0056】
以上の実施形態では、スライダベース14に、駆動ワイヤ15の基端係止頭部15Bと駆動ワイヤ16の基端係止頭部16Bが取り付けられる「ワイヤエンド収納部」を設けた場合を例示して説明した。しかし、「ワイヤエンド収納部」は、スライダベース14の昇降に関与するものであれば、スライダベース14とは別の構成要素に設けることが可能である。
【0057】
以上の実施形態では、駆動ドラム40の外周面に本係止用開口部46を設けた場合を例示して説明した。しかし、駆動ドラム40の直上に位置するモータユニット26のレイアウト上の制約を受けない限りにおいて、駆動ドラム40の上端面に本係止用開口部を設けることが可能である。
【0058】
以上の実施形態では、モータユニット付きのウインドレギュレータサブアッシの製造時(組立時)のモータユニットの作動チェックにより、駆動ドラムを回転駆動して一対の駆動ワイヤにテンションを掛ける場合を例示して説明した。しかし、モータユニット無しのウインドレギュレータサブアッシにあっては、専用治具を用いた駆動ドラムの回転駆動によって一対の駆動ワイヤにテンションを掛けることが可能である。
【0059】
以上の実施形態では、一対の駆動ワイヤ15と駆動ワイヤ16を結合して「ループ状に配策された駆動ワイヤ」を構成したが、「ループ状に配策された駆動ワイヤ」を単一の構成要素とすることも可能である。
【0060】
以上の実施形態では、本発明を「ウインドレギュレータの製造方法」に適用した場合を例示して説明したが、本発明はそれ以外の「駆動ワイヤの張力付与方法」にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によるウインドレギュレータの製造方法は、例えば、車両用のウインドレギュレータの製造方法に適用して好適である。
【符号の説明】
【0062】
10 ウインドレギュレータ
11 ガイドレール
12 13 ブラケット
14 スライダベース(ワイヤエンド収納部)
15 駆動ワイヤ(下側(下死点側)の駆動ワイヤ)
15A 先端係止頭部(駆動ワイヤの一端部)
15B 基端係止頭部
16 駆動ワイヤ(上側(上死点側)の駆動ワイヤ)
16A 先端係止頭部(駆動ワイヤの他端部)
16B 基端係止頭部
17 ガイドピース(ワイヤガイド部材)
18 ガイドプーリ(ワイヤガイド部材)
18a 回転軸
21 22 ガイドチューブ
25 モータ
26 モータユニット
30 ドラムハウジング(静止部材)
31 締結ボルト挿通孔
32 ドラム収容部
32A 側壁
32B 係合爪部
33 34 駆動ワイヤ導入部
35 36 弛み防止リブ
37 強度リブ
38 仮係止用開口部(仮配置用開口部、仮係止部、仮配置部、配置部)
40 駆動ドラム
41 回転軸孔部
42 天板部
43 底板部
44 ワイヤ巻回溝(ワイヤ巻回部)
45 係止用開口部
46 本係止用開口部(係止用開口部、本係止部、係止部)
46X 抜け止めガイド壁部
47 貫通孔
48 ワイヤ入口部
48A 折り返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15