特許第6783237号(P6783237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783237
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ケーブル被覆用ポリオレフィン化合物
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20201102BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20201102BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20201102BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20201102BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20201102BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H01B7/02 Z
   C08L23/06
   C08L23/08
   C08K5/00
   H01B3/44 F
   H01B3/44 G
   H01B3/44 P
   H01B3/44 M
   G02B6/44 381
   G02B6/44 301A
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-541324(P2017-541324)
(86)(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公表番号】特表2018-514051(P2018-514051A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】US2016016264
(87)【国際公開番号】WO2016137695
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】62/120,407
(32)【優先日】2015年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591123001
【氏名又は名称】ユニオン カーバイド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デイ−チュアン・リー
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−084373(JP,A)
【文献】 特開平05−247278(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/099360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
C08K 5/00
C08L 23/06
C08L 23/08
G02B 6/44
H01B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆導体であって、
(a)導体と、
(b)前記導体の少なくとも一部分を包囲するポリマー組成物と、を備え、
前記ポリマー組成物が、高密度ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニルを含み、
前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.5〜8重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、
前記ポリマー組成物が、1.3〜1.9g/10分のメルトインデックス(I)を有する、被覆導体。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.9〜6.0重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有する、請求項1に記載の被覆導体。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、1.4〜1.88g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、請求項1または請求項2に記載の被覆導体。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の高剪断粘度よりも少なくとも1%低い高剪断粘度(100秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物はエチレン酢酸ビニルを含有せず、前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の低剪断粘度よりも少なくとも1%高い低剪断粘度(0.1秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物は、エチレン酢酸ビニルを含有しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項5】
前記エチレン酢酸ビニルが、前記エチレン酢酸ビニルの総重量を基準として、18〜28重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、前記エチレン酢酸ビニルが、0.7〜6g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項6】
前記高密度ポリエチレンが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、70〜95重量パーセントの範囲の量で前記ポリマー組成物中に存在し、前記エチレン酢酸ビニルが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、5〜30重量パーセントの範囲の量で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項7】
前記高密度ポリエチレンが、二峰性高密度ポリエチレンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項8】
前記ポリマー組成物が、カーボンブラック、担体樹脂、難燃剤、加工助剤、核形成剤、発泡剤、架橋剤、充填剤、顔料または着色剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、粘着付与剤、スコーチ抑制剤、静電気防止剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度制御剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダー油、酸捕捉剤、金属不活性化剤、及び加硫剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、前記導体を包囲するジャケットの形態で存在し、前記ジャケットが、0.254〜0.762mm(10〜30ミルの範囲の厚さを有する薄壁構成を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項10】
前記被覆導体が、光ファイバーケーブルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項11】
被覆導体であって、
(a)導体と、
(b)前記導体を少なくとも部分的に包囲するポリマー組成物であって、
(i)高密度ポリエチレン、
(ii)エチレン酢酸ビニル、ならびに
(iii)任意選択的に、カーボンブラック、担体樹脂、難燃剤、加工助剤、核形成剤、発泡剤、架橋剤、充填剤、顔料または着色剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、粘着付与剤、スコーチ抑制剤、静電気防止剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度制御剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダー油、酸捕捉剤、金属不活性化剤、及び加硫剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤からなる、ポリマー組成物と、を備え、
前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.5〜8重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、
前記ポリマー組成物が、1.3〜1.9g/10分のメルトインデックス(I)を有する、被覆導体。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.9〜6.0重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、前記ポリマー組成物が、1.4〜1.88g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、請求項11に記載の被覆導体。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の高剪断粘度よりも少なくとも1%低い高剪断粘度(100秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物はエチレン酢酸ビニルを含有せず、前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の低剪断粘度よりも少なくとも1%高い低剪断粘度(0.1秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物はエチレン酢酸ビニルを含有しない、請求項11または請求項12に記載の被覆導体。
【請求項14】
前記エチレン酢酸ビニルが、前記エチレン酢酸ビニルの総重量を基準として、18〜28重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、前記エチレン酢酸ビニルが、0.7〜6g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の被覆導体。
【請求項15】
前記高密度ポリエチレンが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、70〜90重量パーセントの範囲の量で前記ポリマー組成物中に存在し、前記エチレン酢酸ビニルが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、10〜30重量パーセントの範囲の量で存在し、前記高密度ポリエチレンが、二峰性高密度ポリエチレンである、請求項11〜14のいずれか一項に記載の被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年2月25日に出願された米国仮出願第62/120,407号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明の種々の実施形態は、ケーブル用のポリマー被覆に関する。本発明の他の態様は、ケーブルの製造において有用である高密度ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニルを含有するポリマー組成物に関する。
【0003】
光ファイバーケーブルの主な機能は、データ信号を高速で長距離送信することである。光ファイバーは典型的には、ファイバーを機械的損傷及び/または有害な環境条件(水分への曝露等)から保護する保護管(バッファー管等)に組み込まれる。光ケーブルは概して、ケーブル及びその構成要素に良好な破砕強度を提供するような高弾性材料を使用して製造される。外側ジャケット材料は、典型的にはポリエチレンで構成され、ケーブルの構成要素を包囲する。
【0004】
高密度ポリエチレン(「HDPE」)は、費用対効果の高いジャケット材料であり、その特性は概して、メルトインデックス及び密度を変動させることによって調節され得る。しかしながら従来的には、HDPEの溶融強度に対する改善は、その加工性を減少させ、その加工性の改善は、その溶融強度に悪影響を及ぼすことになる。したがって、導体(例えば、光ファイバー)用のHDPE被覆において利点が達成されてはいるが、改善が依然として望まれる。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態は、被覆導体であって、
(a)導体と、
(b)該導体の少なくとも一部分を包囲するポリマー組成物と、を含み、
該ポリマー組成物が、高密度ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニルを含み、
該ポリマー組成物が、該高密度ポリエチレン及び該エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.5〜8重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、
該ポリマー組成物が、2.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する、被覆導体である。
【0006】
別の実施形態は、被覆導体であって、
(a)導体と、
(b)該導体を少なくとも部分的に包囲するポリマー組成物であって、
(i)高密度ポリエチレン、
(ii)エチレン酢酸ビニル、ならびに
(iii)カーボンブラック、担体樹脂、難燃剤、加工助剤、核形成剤、発泡剤、ツリー遅延剤(tree retardant)、及び架橋剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤からなる、ポリマー組成物と、を含み、
該ポリマー組成物が、該高密度ポリエチレン及び該エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.5〜8重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、
該ポリマー組成物が、2.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する、被覆導体である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の種々の実施形態は、ケーブル被覆(例えば、ケーブルジャケット)における使用に好適なポリマー組成物に関し、本ポリマー組成物は、高密度ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニルを含む。かかるポリマー組成物は、カーボンブラック等の1つ以上の添加剤をさらに含み得る。本ポリマー組成物は、光ファイバーケーブル等の被覆導体を調製するために使用され得る。
【0008】
高密度ポリエチレン
前述の通り、本ポリマー組成物は、高密度ポリエチレン(「HDPE」)ポリマーを含む。本明細書で使用するとき、用語「高密度ポリエチレン」及び「HDPE」は、少なくとも0.940g/cmの密度を有するエチレンのホモポリマーまたはインターポリマーを指す。密度は、ASTM International(「ASTM」)D−792法に従って決定される。種々の実施形態において、HDPEは、0.940〜0.980g/cm、0.941〜0.980g/cm、0.945〜0.975g/cm、0.950〜0.970g/cm、または0.952〜0.958g/cmの範囲の密度を有し得る。
【0009】
1つ以上の実施形態において、HDPEは、10分間当たり0.01〜45グラム(「g/10分」)、0.1〜10g/10分、0.15〜5g/10分、0.5〜2.5g/10分、1.0〜2.0g/10分、または1.2〜1.8g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。メルトインデックスは、ASTM D−1238、条件190℃/2.16kgに従って決定される。
【0010】
1つ以上の実施形態において、HDPEは、ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)によって測定するときに、81,000〜160,000g/mol、または90,000〜120,000g/molの範囲の重量平均分子量(「Mw」)を有し得る。それに加えて、HDPEは、GPCによって測定するときに、4,400〜54,000g/mol、または5,000〜32,000g/molの数平均分子量(「Mn」)を有し得る。種々の実施形態において、分子量分布(「MWD」; Mw/Mn)は、1.6〜36、3〜18、または5〜16の範囲にわたり得る。
【0011】
種々の実施形態において、本明細書における使用に好適なHDPEは、完全にまたは実質的に完全にエチレンモノマー単位からなる、ホモポリマーであり得る。他の実施形態では、HDPEは、1つ以上のコモノマーの種類に由来するエチレンモノマー単位及びモノマー単位を含む、インターポリマーであり得る。
【0012】
HDPEがインターポリマーであるとき、HDPEは、少なくとも50、少なくとも60、または少なくとも80モルパーセント(mol%)のエチレンモノマー単位に由来する単位を含み得る。HDPEの他の単位は、典型的には、1つ以上のα−オレフィンに由来する。HDPEへの包含に好適なα−オレフィンは、C3−20直鎖、分岐、または環状α−オレフィンであり得る。C3−20α−オレフィンの例としては、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、及び1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンはまた、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンをもたらす、シクロヘキサンまたはシクロペンタン等の環状構造を含有し得る。本用語の古典的意味におけるα−オレフィンではないが、本発明の目的のため、特定の環状オレフィン、例えば、ノルボルネン及び関連オレフィン等、特に5−エチリデン−2−ノルボルネンは、α−オレフィンであり、上記に説明されるα−オレフィンの一部または全部の代わりに使用され得る。例証的なHDPEインターポリマーとしては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン等のコポリマーが挙げられる。1つ以上の実施形態において、HDPEは、エチレン及び1−ヘキセンのコポリマーであり得る。
【0013】
本発明の実践において使用されるHDPEは、非官能化ポリマーであり得、すなわち、それらはヒドロキシル、アミン、アミド等の官能基を含有しない。したがって、エチレン酢酸ビニル、エチレンメチル、またはアクリル酸エチル等のポリマーは、本発明の文脈内におけるHDPEポリマーとしてみなされない。
【0014】
1つ以上の実施形態において、HDPEは、多峰性(例えば、二峰性)HDPEであり得る。用語「多峰性」は、本明細書で使用するとき、GPC曲線におけるMWDが2つ以上の成分ポリマーを示し、1つの成分ポリマーが、該成分ポリマーのMWDに対してこぶ、肩、または尾としてさらに存在し得ることを意味する。多峰性HDPEは、概して、1つ、2つ以上の異なる触媒から、及び/または2つ以上の異なる重合条件下で調製される。多峰性HDPEは、少なくとも1つのより低い分子量の(「LMW」)成分と、少なくとも1つのより高い分子量の(「HMW」)成分とを含む。各成分は、異なる触媒を用いて、及び/または異なる重合条件下で調製される。「多(multi)」という接頭辞は、ポリマー中に存在する異なるポリマー成分の数に関する。HDPEポリマーの多峰性(または二峰性)は、既知の方法に従って決定され得る。
【0015】
種々の実施形態において、LMW成分は、0.940〜0.980g/cm、または0.950〜0.975g/cmの範囲の密度、及び少なくとも50g/10分、または少なくとも80g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。HDPEのLMW成分は、HDPEの総重量を基準として、10〜90重量パーセント(「重量%」)または30〜70重量%の範囲の量で存在し得る。
【0016】
種々の実施形態において、HMW成分は、0.900〜0.940g/cm、または0.915〜0.935g/cmの範囲の密度、及び30g/10分以下、または10g/10分以下のメルトインデックス(I21)を有し得る。HDPEのHMW成分は、HDPEの総重量を基準として、10〜90重量%、または30〜70重量%の量で存在し得る。
【0017】
1つ以上の実施形態において、多峰性HDPEは、二峰性HDPEである。本明細書で使用するとき、用語「二峰性」HDPEは、1つのLMW成分と1つのHMW成分とを有する多峰性HDPEを意味する。
【0018】
多峰性HDPEは、溶液、スラリー、または気相プロセス等の従来的な重合プロセスを使用して、チーグラー・ナッタもしくはフィリップス型触媒または単一サイトメタロセン触媒などの好適な触媒を使用して生成され得る。多峰性HDPEの非限定的例は、EP2016128(B1)、USP7,714,072、及びUS2009/0068429に記載される。種々の実施形態において、多峰性HDPEは、気相重合プロセスを使用して生成される。
【0019】
好適な商業用二峰性HDPEの例は、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから入手可能なCONTINUUM(商標)DMDA−1250 NT 7である。
【0020】
エチレン酢酸ビニル
上述の通り、本ポリマー組成物は、エチレン酢酸ビニル(「EVA」)をさらに含む。当該技術分野において既知である通り、EVAは、エチレンの酢酸ビニルとのコポリマーである。本明細書における使用に好適なEVAは、任意の従来的な、または今後発見される重合プロセスを使用して調製され得る。
【0021】
種々の実施形態において、本ポリマー組成物の調製に用いられるEVAは、総EVA重量を基準として、5〜50重量%、10〜40重量%、12〜30重量%、または18〜28重量%の範囲の酢酸ビニル含量を有し得る。それに加えて、EVAは、0.1〜55g/10分、0.2〜25g/10分、0.35〜15g/10分、または0.7〜6g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。さらに、EVAは、0.930〜0.965g/cm、0.933〜0.960g/cm、または0.940〜0.950g/cmの範囲の密度を有し得る。EVAの酢酸ビニル含量及びメルトインデックスは、下記により詳細に述べられる通り、全体的なポリマー組成物の所望の酢酸ビニル含量及びメルトインデックスに従って選択され得ることに留意するべきである。
【0022】
好適な商業用EVAとしては、限定されるものではないが、ELVAX(商標)670、ELVAX(商標)3165、及びELVAX(商標)3175が挙げられ、全てE.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE,USAから入手可能である。
【0023】
添加剤
上述の通り、本ポリマー組成物は、1つ以上の添加剤を含有してもよい。かかる添加剤としては、限定されるものではないが、カーボンブラック(任意選択的に、担体樹脂をさらに含むマスターバッチの一部として)、難燃剤、加工助剤、核形成剤、発泡剤、架橋剤、充填剤、顔料または着色剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線安定剤(UV吸収剤を含む)、粘着付与剤、スコーチ抑制剤、静電気防止剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度制御剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダー油、酸捕捉剤、金属不活性化剤、加硫剤、及びそれらのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0024】
種々の実施形態において、本ポリマー組成物は、任意選択的に、ケーブルジャケットにおいて一般的に使用される非伝導性カーボンブラックを含有し得る。カーボンブラック成分は、未希釈で、または予備混合されたマスターバッチの一部としてのいずれかで、HDPE及びEVAと配合され得る。実施形態において、含まれる場合、組成物中のカーボンブラックの量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、0超〜5重量%、1〜4重量%、または2〜3重量%であり得る。カーボンブラックがマスターバッチの形態で存在する場合、マスターバッチは、エチレン系ポリマー担体樹脂(例えば、直鎖低密度ポリエチレン)をさらに含み得、カーボンブラックは、総マスターバッチ重量を基準として、30〜60重量%、40〜50重量%、または43〜47重量%の範囲を構成し得る。用いられる場合、カーボンブラックマスターバッチは、ポリマー組成物の総重量を基準として、1〜10重量%、3〜8重量%、または5〜7重量%の量でポリマー組成物中に存在し得る。
【0025】
種々の実施形態において、ポリマー組成物は、任意選択的に、半導体用途のために伝導性カーボンブラックを高レベルで含み得る。
【0026】
従来的なカーボンブラックの非限定的例としては、ASTM N550、N472、N351、N110、及びN660によって説明されるグレード、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ならびにアセチレンブラックが挙げられる。好適なカーボンブラックの他の非限定的例としては、Cabotから入手可能なBLACK PEARLS(登録商標)、CSX(登録商標)、ELFTEX(登録商標)、MOGUL(登録商標)、MONARCH(登録商標)、REGAL(登録商標)、及びVULCAN(登録商標)の商品名で販売されているものが挙げられる。商業用カーボンブラックマスターバッチの例は、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから入手可能なAXELERON(商標)GP C−0037 BKである。
【0027】
上記に列挙される残りの添加剤は、従来的な量で用いられ得、未希釈でまたはマスターバッチの一部として用いられてもよい。
【0028】
難燃剤の非限定的例としては、限定されるものではないが、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0029】
加工助剤の非限定的例としては、限定されるものではないが、例えば、ステアラミド、オレアミド、エルカミド、またはN,N’−エチレンビス−ステアラミド等の脂肪アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エチレンオキシドのポリマー、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、植物性ワックス、石油ワックス、非イオン性界面活性剤、シリコーン流体、ポリシロキサン、ならびに例えば、Du Pont Performance Elastomers LLCから入手可能なVITON(登録商標)、またはDyneon LLCから入手可能なDYNAMAR(商標)等のフルオロエラストマーが挙げられる。
【0030】
核形成剤の非限定的例は、Milliken Chemicals,Spartanburg,S.C.からのHYPERFORM(登録商標)HPN−20E(ステアリン酸亜鉛を伴う1,2−シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩)である。
【0031】
充填剤の非限定的例としては、限定されるものではないが、種々の難燃剤、粘土、沈降シリカ及びケイ酸塩、ヒュームドシリカ、例えば、二硫化モリブデン及び硫酸バリウム等の金属硫化物及び硫酸塩、例えば、ホウ酸バリウム及びホウ酸亜鉛等の金属ホウ酸塩、例えば、無水アルミニウム等の金属無水物、粉砕鉱物、ならびに例えば、エチレン−プロピレン−ジエン(「EPDM」)及びエチレン−プロピレンゴム(「EPR」)等のエラストマーポリマーが挙げられる。存在する場合、充填剤は概して、例えば、組成物の重量を基準として5重量%以下〜50重量%以上等の従来的な量で添加される。
【0032】
ポリマー組成物
本ポリマー組成物中のHDPE及びEVAの種類及び相対量は、特定の特徴を有する最終ポリマー組成物を生成するように選択され得る。例えば、高い酢酸ビニル含量を有するEVAが選択される場合、最終ポリマー組成物における特定の酢酸ビニル濃度を達成するために、低酢酸ビニル含量を有するEVAを使用する場合に対して相対的に低量のEVAが本ポリマー組成物中に使用されてもよい。それに加えて、HDPE及びEVAの両方のメルトインデックスは、本ポリマー組成物全体の所望のメルトインデックスの達成において考慮され得る。
【0033】
種々の実施形態において、用いられるHDPE及びEVAの相対量は、結果として得られるポリマー組成物が、HDPE及びEVAを合わせた重量を基準として1.5〜8重量%、または1.9〜6重量%の範囲の酢酸ビニル含量を有するように選択され得る。それに加えて、本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量を基準として、1.5〜8重量%または1.8〜5.6重量%の範囲の酢酸ビニル含量を有し得る。
【0034】
種々の実施形態において、本ポリマー組成物は、2.0g/10分以下の、または1.3〜1.9g/10分もしくは1.4〜1.88g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0035】
理論によって拘束されることを望みはしないが、前述に説明される酢酸ビニル含量及びメルトインデックスを有するポリマー組成物は、改善された溶融強度及び改善された加工性の驚くべき釣り合いを達成し得ると考えられる。具体的には、種々の実施形態において、本ポリマー組成物は、同一である比較ポリマー組成物の高剪断粘度よりも少なくとも1%、少なくとも2%、または少なくとも3%低い高剪断粘度(100秒−1)を有し得るが、但し、該比較ポリマー組成物はEVAを含有しない。1つ以上の実施形態において、高剪断粘度の減少は、1〜10%、1〜5%、または1〜3%の範囲であり得る。高剪断粘度の減少は、改善された加工性を示す。それに加えて、種々の実施形態において、本ポリマー組成物は、同一である比較ポリマー組成物の低剪断粘度よりも少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、または少なくとも4%高い低剪断粘度(0.1秒−1)を有し得るが、但し、該比較ポリマー組成物はEVAを含有しない。1つ以上の実施形態において、低剪断粘度の増加は、1〜10%、1〜6%、または1〜4%の範囲であり得る。低剪断粘度の増加は、改善された溶融強度を示す。高剪断粘度及び低剪断粘度は、下記の試験法の章に説明される手順に従って決定される。
【0036】
1つ以上の実施形態において、本ポリマー組成物中に存在するHDPEの量は、HDPE及びEVAを合わせた重量を基準として、70〜95重量%、または78〜90重量%の範囲であり得る。それに加えて、HDPEは、ポリマー組成物の全体重量を基準として、50〜90重量%または70〜85重量%の量で存在し得る。
【0037】
種々の実施形態において、本ポリマー組成物中に存在するEVAの量は、HDPE及びEVAを合わせた重量を基準として、5〜30重量%または10〜22重量%の範囲であり得る。それに加えて、EVAは、ポリマー組成物の全体重量を基準として、1〜30重量%または10〜20重量%の範囲の量で存在し得る。
【0038】
本ポリマー組成物は、任意の好適な方法によって調製され得る。例えば、EVA、任意選択的にカーボンブラック及び任意の添加剤(例えば、充填剤等)が、HDPEを含有する溶融物に添加され得る。成分のかかる配合は、例えば、BanburyまたはBolling内部ミキサ等の内部バッチミキサを使用して、ブレンドすることによって実施され得る。代替的に、例えば、Farrel連続ミキサ、Werner and Pfleiderer二軸ミキサ、またはBuss混錬連続押出機等の連続単一または二軸ミキサが使用され得る。
【0039】
カーボンブラック及び/または添加剤は、HDPEに単独で(未希釈で)または予備混合されたマスターバッチとして導入され得る。かかるマスターバッチは、一般的に、カーボンブラック及び/または添加剤を不活性担体樹脂(例えば、ポリエチレン)内に分散させることによって形成される。マスターバッチは、溶融配合法によって好都合に形成される。1つ以上の実施形態において、HDPEは、カーボンブラックを伴わずに、EVA成分及び任意の添加剤と配合され得る。他の実施形態では、HDPE、EVA、及びカーボンブラック(未希釈でまたは予備混合されたマスターバッチとして)は、1つ以上の添加剤と任意選択的に配合され得る。
【0040】
製造品
1つ以上の実施形態において、本ポリマー組成物は、例えば、USP5,246,783、USP6,714,707、USP6,496,629、及びUS2006/0045439に説明される、例えば、設備及び方法を用いて、既知の量で、既知の方法によって、シースまたは絶縁層として導体または伝導性コアに塗布されること等によって、ケーブルを調製するために使用され得る。典型的には、本ポリマー組成物は、ケーブル被覆ダイを備え付けた押出機で調製され、組成物の成分が調合された後、組成物は、それがダイを通って引かれるのに伴って導体または伝導性コアの上に押出される。したがって、本ポリマー組成物は、導体を少なくとも部分的に包囲し得る。本明細書で使用するとき、用語「包囲する(surround)」または「包囲する(surrounding)」は、ポリマー組成物が、被覆の形態で、導体と直接的に接しているか、または例えば、導体とポリマー組成物との間の1つ以上の仲介層の最上部上に被覆されること等によって、導体と間接的に接していることを意味する。
【0041】
種々の実施形態において、本ポリマー組成物は、薄壁構成を有するジャケットを調製するために使用され得る。かかる実施形態では、薄壁ジャケットは、10〜30ミル、15〜25ミル、または約20ミルの範囲の厚さを有し得る。
【0042】
1つ以上の実施形態において、本ポリマー組成物は、光ファイバーケーブルにおける被覆として使用され得る。かかる構成では、本ポリマー組成物は、バッファー管(光ファイバーの束を光ファイバーケーブル内部に保持するために使用される)または外側ジャケットを形成するために使用され得る。典型的な光ファイバーケーブル構成は、例えば、米国公開出願第2006/0045439号に見出され得る。
【0043】
定義
「ケーブル」は、例えば、絶縁カバーまたは保護外側ジャケット等のシース内部の少なくとも1つのワイヤまたは光ファイバーを意味する。典型的にはケーブルは、典型的には共通の絶縁カバー及び/または保護ジャケット内に一緒に固定された2つ以上のワイヤまたは光ファイバーである。シース内部の個々のワイヤまたはファイバーは、裸であるか、覆われるか、または絶縁されてもよい。組み合わせケーブルは、電気ワイヤ及び光ファイバーの両方を含有する。ケーブルは、低、中、及び/または高電圧用途用に設計され得る。典型的なケーブル設計は、USP5,246,783、同6,496,629、及び同6,714,707に例証されている。
【0044】
「導体」は、熱、光、及び/または電気を伝導するための1つ以上のワイヤ(複数可)またはファイバー(複数可)を意味する。導体は、シングルワイヤ/ファイバーまたはマルチワイヤ/ファイバーであってもよく、ストランド形態または管状形態であってもよい。好適な導体の非限定的例としては、銀、金、銅、炭素、及びアルミニウム等の金属が挙げられる。導体はまた、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作製される光ファイバーであってもよい。
【0045】
「ポリマー」は、同一のまたは異なる種類のモノマーを反応させる(すなわち、重合する)ことによって調製される高分子化合物を意味する。「ポリマー」は、ホモポリマー及びインターポリマー及びを含む。
【0046】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。この一般的用語は、コポリマーを含み、通常、2つの異なるモノマーから調製されるポリマー、及び例えば、ターポリマー(3つの異なるモノマー)、クォーターポリマー(4つの異なるモノマー)等の2つ超の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる。
【0047】
試験法
密度
密度は、ASTM D 792に従って決定する。
【0048】
メルトインデックス
メルトインデックス、またはIは、190℃/2.16kgの条件で、ASTM D 1238に従って測定し、10分間当たりに溶出したグラムで報告する。
【0049】
剪断粘度
レオロジー的測定を、TA Instrumentsを用いて遂行される動的振動剪断実験を介して行う。実験は、190℃にて窒素雰囲気下で、パラレルプレートモードで実行する。試料サイズは、50ミル厚さ及び1.6インチ直径である。周波数掃引実験は、0.25%歪みを伴い、1〜1000秒−1の周波数範囲を網羅する。トルク応答を、TA instrumentのARESレオメータ制御ソフトウェアによって、各周波数における動的モジュール及び動的粘度データに変換する。
【0050】
貯蔵弾性率(動的機械分析)
貯蔵弾性率は、TA Instruments Inc.製のDMA Q800を使用して圧縮成形プラークを試験することによって測定する。データを、単一カンチレバー設定を使用して、動的機械分析(「DMA」)曲げ試験手順の使用によって収集し、ここで試料は、一方の端部が固定クランプ上に装着され、もう一方の端部が可動クランプ上に装着される。次に、可動クランプは、試験中に0.025%の僅かな歪みのパーセントを適用することによって、正弦動作で試料を曲げる。曲げ動作の周波数は、1Hzである。試料が曲げられている間、それは、毎分5℃の増加率による−50℃〜+150℃の温度傾斜プログラムを経験する。結果として得られた測定値を、次に標準マシンソフトウェアによって処理し、貯蔵弾性率データを報告する。
【0051】
酢酸ビニル含量
商業用EVA(「cEVA」)の酢酸ビニル含量は、樹脂供給元によって公開され、次に、化合物中のその重量パーセンテージに基づいてこのcEVAを含有する最終化合物に関して算出される。
【0052】
分子量分布
ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)システムは、Polymer ChAR(Valencia,Spain)からのIR4赤外線検出器を装備したPolymer Char GPC−IR High Temperature Chromatographからなる。データ収集及び処理を、Polymer Charソフトウェアを使用して実施する。このシステムにはまた、オンライン溶媒脱気機器も装備されている。
【0053】
4つの30cm長のShodex HT803 13ミクロンカラム、または4つの30cmの13ミクロン混合孔径パッキングのPolymer Labsカラム(Olexis LS,Polymer Labs)等の好適な高温GPCカラムが使用され得る。試料カルーセル区画は140℃で動作させ、カラム区画は150℃で動作させる。試料を、50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマーの濃度で調製する。クロマトグラフ溶媒及び試料調製溶媒は、200ppmの2,6−ジ−tert−ブチル−4メチルフェノール(「BHT」)を含有する1,2,4−トリクロロベンゼン(「TCB」)である。溶媒を、窒素でスパージする。ポリマー試料を、160℃で4時間撹拌する。注入容積は、200マイクロリットルである。GPCを通る流速は、1mL/分に設定する。
【0054】
GPCカラムセットを、21個の狭分子量分布ポリスチレン標準物質を流すことによって較正する。標準物質の分子量(「MW」)は、580g/mol〜8,400,000g/molの範囲にわたり、標準物質は、6つの「カクテル」混合物中に含有される。各標準物質混合物は、個々の分子量間に少なくとも10の間隔を有する。標準物質混合物は、Polymer Laboratoriesから購入する。ポリスチレン標準物質は、1,000,000g/mol以上の分子量については50mLの溶媒中0.025gで、1,000,000g/mol未満の分子量については50mLの溶媒中0.05gで調製する。ポリスチレン標準物質を、30分間撹拌しながら80℃で溶解する。劣化を最小限にするために、狭標準物質混合物を初めに、最も高い分子量成分から順に走らせる。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、以下の等式(1)を使用して(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Letters,6,621(1968)に説明されるように)ポリエチレン分子量に変換する:
【0055】
【数1】
【0056】
式中、Mは、ポリエチレンまたはポリスチレン(記される通り)の分子量であり、Bは、1.0に等しい。Aは約0.38〜約0.44の範囲であってもよく、また下記に述べられる通り、広ポリエチレン標準物質を使用して較正時に決定されることは、当業者には既知である。分子量分布(MWDまたはMw/Mn)等の分子量値、及び関連統計値を得るためのこのポリエチレン較正法の使用は、ここではWilliams and Wardの修正法と定義する。数平均分子量、重量平均分子量、及びz平均分子量は、以下の等式から算出する。
【0057】
【数2】
【0058】
【数3】
【0059】
【数4】
【0060】
材料
以下の材料を、下記の実施例に用いる。
【0061】
用いられるHDPEは、CONTINUUM(商標)DMDA−1250 NT 7であり、これは、1.5g/10分のメルトインデックス(I)及び0.955g/cmの密度を有する二峰性HDPEであり、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから市販されている。
【0062】
ELVAX(商標)670は、12重量%の酢酸ビニル(「VA」)含量、0.35g/10分のメルトインデックス(I)、0.933g/cmの密度を有するEVAであり、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE,USAから市販されている。
【0063】
ELVAX(商標)3165は、18重量%のVA含量、0.7g/10分のメルトインデックス(I)、0.940g/cmの密度を有するEVAであり、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE,USAから市販されている。
【0064】
ELVAX(商標)3175は、28重量%のVA含量、6.0g/10分のメルトインデックス(I)、0.950g/cmの密度を有するEVAであり、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE,USAから市販されている。
【0065】
カーボンブラック マスターバッチ(「CB MB」)は、AXELERON(商標)GP C−0037 BKであり、これは、直鎖低密度ポリエチレン担体樹脂中のカーボンブラックのブレンドである。CB MBは、45重量%のカーボンブラック含量、1.18g/cmの密度を有し、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから市販されている。
【実施例】
【0066】
下記の表1に提供される調合設計に従って、6つの比較試料(CS1−CS6)及び3つの試料(S1−S3)を調製する。CS1−CS6及びS1−S3は、以下の手順を使用して調製する。HDPEポリマー(複数可)、EVAコポリマー、及びカーボンブラックマスターバッチをBrabender混合ボウルに導入し、50RPM、185℃で5分間混合することによって、組成物ブレンドを調製する。混合した化合物を圧縮成形して、手動モードで動作させたWabash電気式プレス機を使用して8”×8”×50ミルのプラークを生成する。プレス機を179℃(±5℃)に予熱し、材料を予備計量し、離型処理したMylarで作製される成形型アセンブリとアルミニウムシートとの間で50ミルステンレス鋼プラークの中心に定置する。次に、充填した成形型を、500psiで7分間プレス機内に定置する。7分後、圧力を2,500psiに3分間増加させる。次に、プラークを毎分−15℃の速度でゆっくりと冷却し、温度が室温に達したときに除去する。
【0067】
【表1】
【0068】
CS1−CS6及びS1−S3を、上記に提供される試験法に従って分析する。結果は、下記の表2に提供される。
【0069】
【表2】
【0070】
表1に提供される結果から分かる通り、1.2重量%超(例えば、少なくとも約1.5重量%)〜8.4重量%未満(例えば、最大で約8重量%)の範囲の酢酸ビニル含量、及び約2.0g/10分以下のメルトインデックスを有する試料のみが、改善された加工性(すなわち、CS1に対してより低い高剪断粘度)及び改善された溶融強度(すなわち、CS1に対してより高い低剪断粘度)の両方を示す。

本出願は例えば以下の発明を提供する。
[1] 被覆導体であって、
(a)導体と、
(b)前記導体の少なくとも一部分を包囲するポリマー組成物と、を備え、
前記ポリマー組成物が、高密度ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニルを含み、
前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.5〜8重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、
前記ポリマー組成物が、2.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する、被覆導体。
[2] 前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.9〜6.0重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有する、[1]に記載の被覆導体。
[3] 前記ポリマー組成物が、1.4〜1.88g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、[1]または[2]に記載の被覆導体。
[4] 前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の高剪断粘度よりも少なくとも1%低い高剪断粘度(100秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物はエチレン酢酸ビニルを含有せず、前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の低剪断粘度よりも少なくとも1%高い低剪断粘度(0.1秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物は、エチレン酢酸ビニルを含有しない、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[5] 前記エチレン酢酸ビニルが、前記エチレン酢酸ビニルの総重量を基準として、18〜28重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、前記エチレン酢酸ビニルが、0.7〜6g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[6] 前記高密度ポリエチレンが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、70〜95重量パーセントの範囲の量で前記ポリマー組成物中に存在し、前記エチレン酢酸ビニルが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、5〜30重量パーセントの範囲の量で存在する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[7] 前記高密度ポリエチレンが、二峰性高密度ポリエチレンである、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[8] 前記ポリマー組成物が、カーボンブラック、担体樹脂、難燃剤、加工助剤、核形成剤、発泡剤、架橋剤、充填剤、顔料または着色剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、粘着付与剤、スコーチ抑制剤、静電気防止剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度制御剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダー油、酸捕捉剤、金属不活性化剤、及び加硫剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[9] 前記ポリマー組成物が、前記導体を包囲するジャケットの形態で存在し、前記ジャケットが、10〜30ミルの範囲の厚さを有する薄壁構成を有する、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[10] 前記被覆導体が、光ファイバーケーブルである、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[11] 被覆導体であって、
(a)導体と、
(b)前記導体を少なくとも部分的に包囲するポリマー組成物であって、
(i)高密度ポリエチレン、
(ii)エチレン酢酸ビニル、ならびに
(iii)任意選択的に、カーボンブラック、担体樹脂、難燃剤、加工助剤、核形成剤、発泡剤、架橋剤、充填剤、顔料または着色剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、粘着付与剤、スコーチ抑制剤、静電気防止剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度制御剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダー油、酸捕捉剤、金属不活性化剤、及び加硫剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤からなる、ポリマー組成物と、を備え、
前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.5〜8重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、
前記ポリマー組成物が、2.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する、被覆導体。
[12] 前記ポリマー組成物が、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、1.9〜6.0重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、前記ポリマー組成物が、1.4〜1.88g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、[11]に記載の被覆導体。
[13] 前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の高剪断粘度よりも少なくとも1%低い高剪断粘度(100秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物はエチレン酢酸ビニルを含有せず、前記ポリマー組成物が、同一である比較ポリマー組成物の低剪断粘度よりも少なくとも1%高い低剪断粘度(0.1秒−1)を有するが、但し、前記比較ポリマー組成物はエチレン酢酸ビニルを含有しない、[11]または[12]に記載の被覆導体。
[14] 前記エチレン酢酸ビニルが、前記エチレン酢酸ビニルの総重量を基準として、18〜28重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含量を有し、前記エチレン酢酸ビニルが、0.7〜6g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、[11]〜[13]のいずれか一項に記載の被覆導体。
[15] 前記高密度ポリエチレンが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、70〜90重量パーセントの範囲の量で前記ポリマー組成物中に存在し、前記エチレン酢酸ビニルが、前記高密度ポリエチレン及び前記エチレン酢酸ビニルを合わせた重量を基準として、10〜30重量パーセントの範囲の量で存在し、前記高密度ポリエチレンが、二峰性高密度ポリエチレンである、[11]〜[14]のいずれか一項に記載の被覆導体。