(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783241
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】基板から金属を除去する方法及びワークピース処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20201102BHJP
H01L 21/302 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
H01L21/302 104C
H01L21/302 201A
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-547428(P2017-547428)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公表番号】特表2018-509765(P2018-509765A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】US2016020267
(87)【国際公開番号】WO2016148909
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年1月31日
(31)【優先権主張番号】14/657,170
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】ズン リアン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン シュミーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフェリー ダブリュー アンティス
(72)【発明者】
【氏名】グレン ギルクライスト
【審査官】
佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−006620(JP,A)
【文献】
特開平08−064606(JP,A)
【文献】
特開平10−068094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板から金属を除去する方法であって、該方法は、
1つ以上の処理ガスを、前記基板の表面の上に配置された金属と第1の温度で化学反応を起こさせ、除去できる化合物を形成するステップであって、該除去できる化合物は昇華温度で昇華し、前記第1の温度は前記昇華温度より低い、ステップと、
前記除去できる化合物がガス状になるように、前記除去できる化合物を昇華するステップであって、前記1つ以上の処理ガスと前記基板の上に配置された前記金属との間に更に化学反応は起きず、前記昇華するステップの温度は前記昇華温度より高い第2の温度である、ステップと、
前記基板の表面から前記ガス状の除去できる化合物を分離する、ステップと、
を有する方法。
【請求項2】
金属の所望の量を前記基板から除去するまで、前記化学反応を起こさせるステップと、前記昇華するステップと、前記分離するステップと、を、複数回、繰り返すステップを、更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属はプラチナを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の処理ガスは、塩素及び一酸化炭素を含み、前記除去できる化合物は、塩化カルボニルプラチナを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
基板から金属を除去する方法であって、該方法は、
前記基板の表面の上に配置された金属を、第1の処理ガスと第1の温度で化学反応を起こさせ、除去できる化合物の前駆体を形成するステップであって、前記除去できる化合物は昇華温度で昇華し、前記第1の温度は前記昇華温度より低い、ステップと、
前記前駆体を、第2の処理ガスと第2の温度で化学反応を起こさせ、除去できる化合物を形成するステップであって、前記第1の処理ガスと前記基板の上に配置された前記金属との間に更に化学反応は起きない、ステップと、
前記除去できる化合物がガス状になるように、前記除去できる化合物を昇華するステップと、
前記ガス状の除去できる化合物を前記基板の表面から分離するステップと、
を有する方法。
【請求項6】
金属の所望の量を前記基板から除去するまで、前記第1の処理ガスと前記化学反応を起こさせるステップと、前記第2の処理ガスと前記化学反応を起こさせるステップと、前記昇華するステップと、前記分離するステップと、を、複数回、繰り返すステップを、更に有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記金属はプラチナを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記第1の処理ガスは塩素を含み、前記第2の処理ガスは一酸化炭素を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記除去できる化合物は、塩化カルボニルプラチナを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記前駆体は、塩化プラチナを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ワークピース処理システムであって、該システムは、
ガス注入口及び排気口を備えるチャンバと、
該チャンバと連通するヒーターと、
少なくとも1つの処理ガスを含むガス貯蔵コンテナと、
該ガス貯蔵コンテナと前記ガス注入口との間に配置されるバルブと、
前記排気口と連通する排気ポンプと、
前記バルブ、前記排気ポンプ及び前記ヒーターと連通するコントローラと、を備え、
該コントローラは、
前記バルブを作動させ、前記少なくとも1つの処理ガスを第1の温度の前記チャンバの中へ導入し、
前記バルブを作動させ、前記少なくとも1つの処理ガスの前記チャンバの中への流れを停止し、
前記チャンバの温度が前記第1の温度である第1の残存時間の後に、前記排気ポンプを作動させ、前記少なくとも1つの処理ガスを前記チャンバから排出し、
前記少なくとも1つの処理ガスを排出した後に、前記ヒーターを作動させ、前記チャンバの温度を第2の温度へ上げ、
前記少なくとも1つの処理ガスと、前記チャンバの中に配置された基板の表面の上に配置された金属と、の間の化学反応により製造された除去できる化合物を除去するために、前記排気ポンプを作動させ、
前記第1の温度は前記除去できる化合物が昇華する温度より低く、前記第2の温度は前記除去できる化合物が昇華する前記温度より高い、システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの処理ガスは、塩素及び一酸化炭素を含む、請求項11記載のワークピース処理システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの処理ガスは塩素を含み、
前記システムは、さらに、
第2のガス貯蔵コンテナと、
該第2のガス貯蔵コンテナと前記ガス注入口との間に配置される第2のバルブと、を備え、
一酸化炭素は、前記第2のガス貯蔵コンテナの中に配置される、請求項11記載のワークピース処理システム。
【請求項14】
前記コントローラは、
前記第2のバルブを作動させ、一酸化炭素を前記第1の温度の前記チャンバの中へ導入し、
前記ヒーターを作動させる前に、前記第2のバルブを作動させ、一酸化炭素の前記チャンバの中への流れを停止する、請求項13記載のワークピース処理システム。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記第2のバルブを作動させ、一酸化炭素を前記第2の温度の前記チャンバの中へ導入
する、請求項13記載のワークピース処理システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第1の処理ガスは塩素及び一酸化炭素を含み、前記金属はプラチナを含み、前記除去できる化合物は塩化カルボニルプラチナを含む、請求項11記載のワークピース処理システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は2015年3月13日に出願された米国特許出願第14/657,170号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照することにより本明細書にその全体が組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は基板から金属を除去するためのシステム及び方法、より詳しくは、制御される方法で基板から金属を除去するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの製造は、複数の離散的及び複雑なプロセスを含む。限定されないが、磁気RAM(MRAM)などの特定のデバイスの製造において、1つ以上の金属蒸着プロセスを実施することができる。金属はスパッタリングによるなどの様々な方法で、適用することができる。蒸着プロセスにおいて、スパッタリングのターゲットは、基板と共にチャンバ内に配置される。金属スパッタリングのターゲットは、次いで、エネルギー電子又はイオンによるなどで、エネルギーを与えられる。原子は金属ターゲットから離れ、基板の上に蒸着される。この金属スパッタリングのターゲットは、限定されないが、プラチナ、イリジウム、ロジウム、パラジウムその他を含む任意の適切な金属とすることができる。
【0004】
理想的に、金属原子は、基板の所望の領域の上に蒸着される。しかしながら、いくつかの金属原子は、意図しない又は望ましくない表面の上に蒸着されることになることがよくある。例えば、MRAMセルは磁気トンネル接合(MTJ)を含む。このMTJは、スタックの形であり、金属ピン止め層及び無金属層を備え、それらの間に配置される電気絶縁材料の薄い障壁層を有する。このスタックの側壁がスパッタリングプロセスから金属原子で被覆される場合、金属ピン止め層及び無金属層は共に電気的に短絡し得て、MTJを破壊する。
【0005】
これを防ぐために、MTJスタックの側壁などの意図しない表面の上に蒸着される金属は除去される。これは、エッチングプロセスを使用して行うことができる。しかしながら、いくつかの実施態様において、エッチングプロセスを制御すること、特に、エッチング速度を制御することは難しい。したがって、MTJスタックから除去される金属の量は、直ちに制御可能であり得ない。
【0006】
さらに、いくつかの実施態様において、これらの金属原子は、
チャンバから排出するために困難であり得る。例えば、プラチナは重金属であり、スパッタリングエッチングプロセスの間に、基板の表面の上に容易に再蒸着し、それ故に、基板から除去することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、制御される方法で基板から金属を除去するためのシステム及び方法があれば、有利であろう。さらに、除去されていた金属が、基板から直ちに排出することができる揮発性化合物を形成するならば、有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
制御される方法で基板から金属を除去するためのシステム及び方法が開示される。システムは、ガスのチャンバの中への流入を可能にする1つ以上のガス注入口を有するチャンバを含む。ガス注入口は、1つ以上のバルブと連通することができ、バルブは、各々、それぞれのガス貯蔵コンテナと連通する。チャンバは、また、チャンバからガスを排出するために、少なくとも1つの排気ポンプを含む。さらに、チャンバは、チャンバの温度を、所望のように、変更することができるヒーターを含む。いくつかの実施態様において、1つ以上のガスが第1の温度のチャンバの中へ導入される。これらのガスの原子は、基板の表面の上の金属と化学反応し、除去できる化合物を形成する。ガスは、次いで、チャンバから排出され、除去できる化合物を基板の表面の上に残す。チャンバの温度は、次いで、除去できる化合物の昇華温度より高い第2の温度に上昇させる。この上昇した温度は、除去できる化合物を昇華し、ガス状の除去できる化合物はチャンバから排出される。チャンバ内の温度は、次いで、除去できる化合物の昇華温度より低い第1の温度に低下させる。基板の表面から所望の金属の量を除去するために、このシーケンスは、任意の回数、繰り返すことができる。
【0009】
一実施形態において、制御される方法で基板から金属を除去するための方法が開示される。その方法は、基板から金属を除去する方法であって、1つ以上の処理ガスを第1の温度のチャンバの中に導入するステップであって、基板は前記チャンバの中に配置される、ステップと、前記1つ以上の処理ガスを、前記基板の上に配置された金属と化学反応を起こさせ、除去できる化合物を形成するステップであって、該除去できる化合物は
昇華温度で昇華し、前記第1の温度は前記
昇華温度より低い、ステップと、前記化学反応を起こさせるステップの後に、前記1つ以上の処理ガスを、前記チャンバから排出するステップと、該排出するステップの後に、前記除去できる化合物がガス状になるように、前記チャンバ内の温度を前記
昇華温度より高い第2の温度へ上昇させるステップと、前記ガス状の除去できる化合物を前記チャンバから除去するステップと、を有する。
【0010】
別の実施形態において、制御される方法で基板から金属を除去するための方法が開示される。その方法は、第1の処理ガスをチャンバの中に導入するステップであって、基板は第1の温度の前記チャンバの中に配置される、ステップと、前記第1の処理ガスを、前記基板の上に配置された金属と化学反応を起こさせ、除去できる化合物の前駆体を形成するステップであって、前記除去できる化合物は
昇華温度で昇華し、前記第1の温度は前記
昇華温度より低い、ステップと、前記化学反応を起こさせるステップの後に、前記第1の処理ガスを、前記チャンバから排出するステップと、該排出するステップの後に、前記チャンバ内の温度を前記
昇華温度より高い第2の温度へ上昇させるステップと、第2の処理ガスが前記前駆体と反応して前記除去できる化合物を形成するように、前記排出するステップの後に、前記第2の処理ガスを前記チャンバの中に導入するステップであって、前記除去できる化合物がガス状になるステップと、前記ガス状の除去できる化合物を前記チャンバから除去するステップと、
を有する。
【0011】
さらに別の実施形態において、ワークピース処理システムが開示される。そのワークピース処理システムは、ガス注入口と排気口とを備えるチャンバと、該チャンバと連通するヒーターと、少なくとも1つの処理ガスを含むガス貯蔵コンテナと、該ガス貯蔵コンテナと前記ガス注入口との間に配置されるバルブと、前記排気口と連通する排気ポンプと、コントローラと、を備え、該コントローラは、前記バルブを作動させ、前記少なくとも1つの処理ガスを第1の温度の前記チャンバの中へ導入し、前記バルブを作動させ、前記少なくとも1つの処理ガスの前記チャンバの中への流れを停止し、第1の残存時間の後に、前記排気ポンプを作動させ、前記少なくとも1つの処理ガスを前記チャンバから排出し、前記少なくとも1つの処理ガスを排出した後に、前記ヒーターを作動させ、前記チャンバの温度を第2の温度へ上げ、前記少なくとも1つの処理ガスと、前記チャンバの中に配置された基板の表面の上に配置された金属と、の間の化学反応により製造された除去できる化合物を除去するために、前記排気ポンプを作動させる。
【0012】
本発明のよりよい理解のために、参照することにより本明細書に組み込まれる添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態による、基板から金属を除去するためのシステムを示す。
【
図2】第1の実施形態による、基板から金属を除去するシーケンスを示す。
【
図3】第2の実施形態による、基板から金属を除去するシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述したように、プラチナ、イリジウム、ロジウム、その他などの金属は、イオンスパッタリングプロセスにより、基板の表面の上に蒸着することができる。このスパッタリングプロセスは、金属の原子に、スパッタリングターゲットから分離させ、基板の上に蒸着させる。しかしながら、いくつかの実施形態において、金属原子は意図しない又は望ましくない基板の領域の上に蒸着される。例えば、金属原子が基板の水平表面の上に蒸着されるように意図することができる。しかしながら、いくつかの金属原子は、基板の垂直表面又は側壁の上に蒸着され得る。この垂直表面の上の不注意な蒸着は有害であり得る。例えば、側壁に沿う金属原子は、2つの水平金属層に、電気的に接続させ、したがって、半導体デバイスを損傷する。
【0015】
エッチングプロセスは、これらの不必要な金属原子を除去するために、用いることができる。しかしながら、エッチングプロセスは、下層の基板に損傷を引き起こし得る。さらに、エッチングプロセスは、除去されるべきより、より多く又はより少なく除去し得る。
【0016】
したがって、上述のように、制御される方法で、基板から金属を除去することが、有益であり得る。これにより、材料の量を正確に除去することを可能にし、向上した製造量を可能にする。
【0017】
図1は、第1の実施形態による制御可能な方法で、基板から金属を除去するためのシステムを示す。
【0018】
システム100は、完全に包囲され得るチャンバ110を有する。チャンバ110内のガス及び温度が外部環境から独立に制御され得るように、チャンバ110は、外部環境に対し、密閉することができる。プラテン170がチャンバ110内に配置され、基板160をプラテン170の上に配置することができる。ガス注入口120は、チャンバ110の内部と連通することができる。ガス注入口120は、ガス貯蔵コンテナ125と連通することができる。ガス貯蔵コンテナ125は、1つ以上の処理ガスを備えることができる。ガス貯蔵コンテナ125からチャンバ110への1つ以上の処理ガスの流れを可能にし、かつ、停止するために、ガス貯蔵コンテナ125とガス注入口120との間にバルブ123が配置される。単一のバルブ123及びガス貯蔵コンテナ125を用いることができる一方で、これらのコンポーネントの多数のインスタンス化があり得ることが理解される。例えば、
図1に示すように、システム100により、2つの異なる処理ガスが用いられる場合、第2のガス貯蔵コンテナ125b及び第2のバルブ123bがあり得る。本実施形態において、バルブ123及び第2のバルブ123bは、共に、ガス注入口120と連通する。もちろん、他の実施形態において、バルブ123及び第2のバルブ123bは、各々、別個のガス注入口と連通することができる。さらに、ガスコンテナ及びバルブの数は本開示に限定されない。例えば、追加の処理ガスが用いられる場合、追加のガス貯蔵コンテナ及びバルブを追加することができる。
【0019】
チャンバ110は、また、排気口140と連通する。排気口140は、排気ポンプ150と連通することができる。排気ポンプ150は、チャンバ110から処理ガスを除去するために用いることができる。例えば、処理ガスはガス注入口120により導入することができる。残存時間の後、これらの処理ガスは、排気口140及び排気ポンプ150により除去することができる。
【0020】
ヒーター130は、また、チャンバ110と連通する。
図1は、ヒーター130がチャンバ110の外部に配置されることを示す一方で、他の実施形態において、ヒーター130がチャンバ110内に配置することができることが認められる。
【0021】
コントローラ180は様々な入力を受けることができる。例えば、コントローラ180はチャンバ110内の温度をモニターすることができる。コントローラ180は、また、チャンバ110内の圧力をモニターすることができる。コントローラ180は、また、内部タイマーを含むことができる。コントローラ180は、また、ヒーター130からの加熱、バルブ123及び第2のバルブ123bの作動、及び、排気ポンプ150の作動を制御することができる。コントローラ180は、処理装置及びメモリなどの持続性コンピュータ可読媒体を含むことができる。処理装置により実行される命令は、メモリに保存することができる。メモリに保存される命令は、コントローラ180に、本明細書で説明する方法を実行させることができる。
【0022】
特定の実施形態において、基板160はチャンバ110内で処理することができる。例えば、基板160はチャンバ110内に配置される一方で、金属蒸着プロセスを基板160の上で実行することができる。他の実施形態において、基板160は異なる処理チャンバで処理され、チャンバ110へ移される。
【0023】
制御可能な方法で基板160の表面から金属を除去するために、チャンバ110を用いることができる。
図2は、制御される方法で基板から金属を除去するためのシーケンスの第1の実施形態を示す。
【0024】
プロセスの初めに、プロセス200に示すように、金属層が基板160の上に蒸着される。前述のように、この金属蒸着層はこのチャンバ110の中で、又は、別の処理チャンバの中で、加えることができる。特定の実施形態において、蒸着される金属は、他の金属も用いることができるけれども、プラチナとすることができる。
【0025】
どちらの実施形態においても、基板は、次いで、プラテン170の上に配置され、プロセス210に示すように、処理ガスはチャンバ110の中へ導入される。上記のように、各処理ガスは、それぞれのガス貯蔵コンテナ125
及び第2のガス貯蔵コンテナ125bに格納することができ、対応するバルブ123
及び第2のバルブ123bの作動により、チャンバ110へ導入することができる。例えば、コントローラ180は、バルブ123及び第2のバルブ123bへ制御信号を発生することができ、バルブ123及び第2のバルブ123bに作動させ、ガス注入口120を通って、ガス貯蔵コンテナ125及び第2のガス貯蔵コンテナ125bから、チャンバ110への処理ガスの流れを可能にする。処理ガスは、任意の適切な流速で、チャンバ110へ導入することができる。特定の実施形態において、1つのガス貯蔵コンテナ125のみ及び1つのバルブ123のみが用いられる。本実施形態において、処理ガスの全てが1つのガス貯蔵コンテナ125に格納され、処理ガスの全てがバルブ123を通って流れる。したがって、多数の処理ガスの導入は、
図1に示すように、2つ以上のガス貯蔵コンテナ及びそれぞれのバルブの使用により、達成することができ、又は、単一のガス貯蔵コンテナ125に処理ガスの全てを格納することにより、達成することができる。特定の実施形態において、他の流速も可能であるけれども、200sccmの流速が用いられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、処理ガスは一酸化炭素及び塩素を含む。これらの2つの処理ガスは、1:1の比でチャンバ110の中へ導入することができる。チャンバ110内の圧力は、最大約20Torrなどの任意の適切な圧力とすることができる。特定の実施形態において、他の圧力も用いることができるけれども、3Torrの圧力がチャンバ110内に維持される。
【0027】
チャンバ110が第1の温度の時に、これらの処理ガスが導入される。これらの処理ガスは、次いで、プロセス220で示すように、第1の残存時間の間に、チャンバ110内に残存することができる。この第1の残存時間は、処理ガスに、基板の上に配置された金属層と反応させるのに十分に長くすることができる。特定の実施形態において、第1の残存時間は30秒以上にすることができる。バルブ123
及び第2のバルブ123bは、第1の残存時間の全体にわたって、開くことができ、又は、第1の残存時間の終了の前に、閉じることができる。処理ガスは、金属と反応し、除去できる化合物を形成する。一実施形態において、金属がプラチナであり、処理ガスが一酸化炭素及び塩素である場合、除去できる化合物は、塩化ジカルボニルプラチナ(Pt(CO)
2Cl
2)としても知られる、塩化カルボニルプラチナである。除去できる化合物は、処理ガスにアクセスできるそれらの金属原子と共にのみ形成する。言い換えれば、処理ガスは、特定の深さまでの蒸着金属と反応するだけである。より深く配置される金属原子は、この化学反応に関与しない。
【0028】
コントローラ180は、処理ガスがチャンバ110の中にいる経過時間をモニターすることができる。第1の残存時間の終了後に、プロセス230に示すように、処理ガスはチャンバ110から排出することができる。コントローラ180は、制御信号を排出ポンプ150へ出力することができ、排出ポンプ150を作動し、処理ガスを、チャンバ110から除去させることができる。バルブ123
及び第2のバルブ123bは、排出ポンプ150の作動の前に、両方共閉じられる。
【0029】
処理ガスが排出された後に、プロセス240に示すように、チャンバ110内の温度は上げられる。これは、コントローラ180により実施することができる。コントローラ180は、制御信号をヒーター130へ出力することができ、ヒーター130を作動する。チャンバ110の中の温度は第1の温度より高い第2の温度へ上げられる。この第2の温度は、除去できる化合物の昇華温度より高い。対照的に、第1の温度は、除去できる化合物の昇華温度より低くなるように選択される。
【0030】
塩化カルボニルプラチナ(Pt(CO)
2Cl
2)の場合に、昇華温度は約210℃である。第1の温度は、150℃と190℃との間などであり、210℃より低い。第2の温度は、230℃と260℃との間などであり、210℃より高い。第2の温度は、除去できる化合物が昇華するように、十分に高い。チャンバ110は、プロセス250に示すように、第2の残存時間の間、第2の温度に維持される。この第2の残存時間は、除去できる化合物の全てが昇華することができるのに十分とすることができる。いくつかの実施形態において、この第2の残存時間は、20秒と40秒との間とすることができる。一旦、昇華されると、ガス状の除去できる化合物は、次いで、排出ポンプ150を用いて排出口140を通ってチャンバ110から排出される。コントローラ180は、第2の残存時間の全体にわたって、又は、第2の残存時間の一部のみで、排出ポンプ150を作動することができる。
【0031】
処理ガスの流れが終了し、過剰な処理ガスは、チャンバの温度の上昇の前に、既に、排出されたため、昇華した材料の排出後に、新たな除去できる化合物は形成されない。言い換えれば、金属の制御された量は、プロセスのこのシーケンスにより除去される。
【0032】
第2の残存時間の後に、プロセス260に示すように、チャンバ110の中の温度は、第1の温度に下げられる。
【0033】
必要に応じて、パスとも称される、プロセス210〜260のこのシーケンスは、基板160の表面から金属の所望の厚さを除去するために、任意の数の回を繰り返すことができる。
【0034】
各パスは、基板160から少量の金属を除去する。この量は処理ガスによりさらされる金属原子であり得る。処理ガスは、除去できる化合物の昇華温度より低い第1の温度で導入されるため、さらされる金属原子のみが化学反応に関与する。処理ガスは、さらされる金属原子と反応し、除去できる化合物を形成し、除去できる化合物は基板160の表面の上にとどまる。
図2に示すように、処理ガスは、温度を上昇する前に排出される。このように、全ての過剰な処理ガスは、チャンバ110から排出され、化学反応が基板160の上で更に生じないことを確実にする。チャンバ110内の温度を上げることにより、除去できる化合物を昇華し、これにより、除去できる化合物に、基板160の表面から分離させ、ガス状の除去できる化合物はチャンバ110から排出される。上述のように、チャンバ110が第2の温度にある間に、過剰な処理ガスは、チャンバ110の中に存在しないため、化学反応は更に起きない。さらに、除去できる化合物は昇華したため、除去できる化合物が基板160の別の表面に再蒸着することは、はるかに可能性が低い。
【0035】
図2は、2つの処理ガスが金属と反応し、除去できる化合物を形成する実施形態を示す。本実施形態において、除去できる化合物の昇華温度より低い第1の温度で、全ての処理ガスが導入される。しかしながら、他の実施形態も可能である。例えば、より多くの又はより少ない処理ガスを、除去できる化合物を形成するために、用いることができる。言い換えれば、本発明は、
図2に示すように、2つの特定の処理ガスの使用に限定されない。むしろ、本発明は、処理ガスが、除去できる化合物の昇華温度より低い第1の温度で、全て導入される、任意の実施形態も包含する。これらの処理ガスは、基板の表面の上に除去できる化合物を形成するように、第1の温度で残存することが可能となる。過剰な処理ガスは、次いで、チャンバ110の温度が、除去できる化合物の昇華温度の上に上昇する前に、排出される。
【0036】
図3は、1つ以上の処理ガスを用いて、除去できる化合物を形成する、第2の実施形態を示す。第1の温度で、全ての処理ガスが導入され、ついで、排出される
図2と対照的に、以下にもっと詳細に説明するように、第2の温度で少なくとも1つの処理ガスが導入される。
【0037】
プロセスの始めにおいて、プロセス300で示すように、金属層が基板160の上に蒸着される。上述のように、この金属蒸着層はこのチャンバ110又は別の処理チャンバの中で加えることができる。特定の実施形態において、他の金属も用いることができるけれども、蒸着される金属はプラチナとすることができる。
【0038】
どちらのシナリオにおいても、プロセス310で示すように、基板160が、次いで、プラテン170の上に配置され、少なくとも第1の処理ガスがチャンバ110の中へ導入される。上記のように、第1の処理ガスはガス貯蔵コンテナ125に格納することができ、バルブ123の作動により、チャンバ110へ導入することができる。例えば、コントローラ180は、制御信号をバルブ123へ生成することができ、バルブ123に作動させ、ガス注入口120を通ってガス貯蔵コンテナ125からチャンバ110への第1の処理ガスの流れを可能にする。処理ガスは、任意の適切な流速で、チャンバ110へ導入することができる。特定の実施形態において、他の流速も可能であるけれども、200sccmの流速が用いられる。
【0039】
いくつかの実施形態において、処理ガスは一酸化炭素及び塩素を含む。チャンバ110内の圧力は、最大約20Torrなどの任意の適切な圧力とすることができる。特定の実施形態において、他の圧力も用いることができるけれども、3Torrの圧力がチャンバ110内に維持される。一実施形態において、プロセス310の間に、塩素ガスのみが導入される。
【0040】
チャンバ110が第1の温度の時に、この第1の処理ガスが導入される。この第1の処理ガスは、次いで、プロセス320で示すように、第1の残存時間の間に、チャンバ110内に残存することができる。この第1の残存時間は、第1の処理ガスに、基板の上に配置された金属層と反応させるのに十分に長くすることができる。特定の実施形態において、第1の残存時間は30秒以上にすることができる。第1の処理ガスは、金属と反応し、除去できる化合物の前駆体を形成する。一実施形態において、金属がプラチナであり、第1の処理ガスが塩素であり、第2の処理ガスが一酸化炭素である場合、除去できる化合物は、塩化ジカルボニルプラチナ(Pt(CO)
2Cl
2)としても知られる、塩化カルボニルプラチナである。除去できる化合物への前駆体は、第1の処理ガスにアクセスできるそれらの金属原子と反応してのみ形成する。言い換えれば、第1の処理ガスは、特定の深さまでの金属と反応するだけである。より深く配置される金属原子は、この化学反応に関与しない。
【0041】
コントローラ180は、第1の処理ガスがチャンバ110の中にいる経過時間をモニターすることができる。第1の残存時間の終了後に、プロセス330に示すように、第1の処理ガスはチャンバ110から排出することができる。コントローラ180は、制御信号を排出ポンプ150へ出力することができ、排出ポンプ150を作動し、第1の処理ガスを、チャンバ110から除去させることができる。コントローラ180は、また、バルブ123を作動し、ガス貯蔵コンテナ125からの第1の処理ガスの流れを停止する。バルブ123は、第1の残存時間の全体にわたって、開いたままにすることができ、又は、第1の残存時間の一部の間のみに、開くことができる。
【0042】
第1の処理ガスが排出された後に、プロセス340に示すように、チャンバ110内の温度は上げられる。これは、コントローラ180により実施することができる。コントローラ180は、制御信号をヒーター130へ出力することができ、ヒーター130を作動する。チャンバ110の中の温度は第1の温度より高い第2の温度へ上げられる。この第2の温度は、除去できる化合物の昇華温度より高い。対照的に、第1の温度は、除去できる化合物の昇華温度より低くなるように選択される。
【0043】
塩化カルボニルプラチナ(Pt(CO)
2Cl
2)の場合に、昇華温度は約210℃である。上記のように、第1の温度は、150℃と190℃との間などであり、210℃より低い。第2の温度は、230℃と260℃との間などであり、210℃より高い。第2の温度は、除去できる化合物が昇華するように、十分に高い。プロセス350に示すように、一酸化炭素にすることができる第2の処理ガスは、次いで、チャンバ110の中へ導入される。これをするために、コントローラ180は、制御信号を第2のバルブ123bへ送ることができ、第2のガス貯蔵コンテナ125bからチャンバ110の中への第2の処理ガスの流れを可能にする。いくつかの実施形態において、プロセス340及び350は逆順で実施することができる。他の実施形態において、プロセス340及び350は、少なくとも部分的に同時に実施することができる。
【0044】
チャンバ110は、プロセス360に示すように、第2の残存時間の間、第2の温度に維持される。この第2の残存時間は、第2の処理ガスが前駆体と反応して除去できる化合物を形成するのに十分とすることができる。いくつかの実施形態において、この第2の残存時間は、20秒と40秒との間とすることができる。高めた温度は、また、全ての除去できる化合物が昇華することを可能にする。一旦、昇華されると、ガス状の除去できる化合物は、次いで、排出ポンプ150を用いて排出口140を通ってチャンバ110から排出される。第2のバルブ123bは、第2の残存時間の全体にわたって、開いたままにすることができ、又は、第2の残存時間の一部の間のみに、開くことができる。
【0045】
チャンバ110が第2の温度にある間に、全ての処理ガスは、決して、チャンバ110の中に導入されないため、金属の除去の割合は制御することができる。第1の処理ガスは、第1の温度で、さらされる金属原子と反応して前駆体を形成する。過剰の第1の処理ガスは、次いで、第2の処理ガスが導入される前に排出される。このように、除去できる化合物は、前駆体が存在する場合に形成することができるだけである。さらに、第2の処理ガスとしての一酸化炭素の使用は、塩素により引き起こされ得る金属及び基板への不要な損傷を低減することができる。
【0046】
第2の残存時間の後に、プロセス370に示すように、チャンバ110の中の温度は、第1の温度に下げられる。第2の処理ガスは、また、チャンバ110から排出される。
【0047】
必要に応じて、パスとも称される、プロセス310〜370のこのシーケンスは、基板160の表面から金属の所望の厚さを除去するために、任意の数の回を繰り返すことができる。
【0048】
各パスは、基板160から少量の金属を除去する。この量は処理ガスによりさらされる金属原子であり得る。全ての処理ガスが、除去できる化合物の昇華温度より低い第1の温度で導入されるとは限らないため、さらされる金属原子のみが前駆体の形成に関与する。第1の処理ガスは、さらされる金属原子と反応し、除去できる化合物の前駆体を形成し、除去できる化合物の前駆体は基板160の表面の上にとどまる。
図3に示すように、第1の処理ガスは、温度を上昇する前に排出される。このように、全ての過剰な第1の処理ガスは、チャンバ110から排出され、化学反応が基板160の上で更に生じないことを確実にする。チャンバ110内の温度を上げ、第2の処理ガスを導入することにより、除去できる化合物の創生を可能にする。上昇した温度で、除去できる化合物は昇華し、これにより、除去できる化合物に、基板160の表面から分離させ、チャンバ110から排出させる。第2の処理ガスのみがチャンバ110の中に存在するため、化学反応は更に起きない。
【0049】
図2〜3に示すシーケンスは、コントローラ180を用いて実施することができる(
図1を参照)。コントローラ180は、これらのシーケンスを実行するように、バルブ123、第2のバルブ123b、ヒーター130及び排出ポンプ150と通信することができる。コントローラ180の処理装置と通信するメモリは、これらのシーケンスを実施するために用いる命令を含むことができる。
【0050】
本願の上記の実施形態は、多くの優位性を有することができる。例えば、温度及び処理ガスの導入の適切なシーケンスにより、基板からの金属の除去の量は、調整し制御することができる。1つ以上の処理ガスが、除去できる化合物の昇華温度より低い温度で導入されるため、単一のパスの間に除去される金属の量は、処理ガスに接触することができるそれらの金属の原子に限定することができる。さらに、本明細書で説明する実施形態は、昇華できる化合物を創生する。したがって、一旦、温度が昇華温度より上に上昇すると、除去できる化合物はガス状となり、直ちに、チャンバから排出することができる。したがって、除去できる化合物の再蒸着のリスクは、大幅に低減される。
【0051】
本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態に加えて、本開示の他の0様々な実施形態および変更は、前述の記載および添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および変更は、本開示の範囲内に含まれるものと意図している。さらに、本開示は、特定の環境における特定の目的のための特定実装の文脈にて本明細書中で説明したが、当業者は、その有用性はそれらに限定されるものでなく、本開示はいくつかの環境におけるいくつかの目的のために有益に実装し得ることを認識するであろう。従って、以下に記載する請求項は本明細書に記載された本開示の全範囲及び精神に鑑みて解釈されるべきである。