(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料は、4mm以上の製品の壁部厚を定義する、前記射出成形工具の少なくとも一区画において、200℃よりも高い温度TIMを有すること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
前記射出成形製品は、部分結晶性の熱可塑性樹脂を含み、該熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸(PLA)から成る群から選択されていること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
特殊なプラスチックのための添加物(添加物質)としてヒマワリ殻繊維の使用は、射出成形法も開示している上記特許文献2から既に公知である。
【0018】
上記特許文献1は、既にヒマワリ種子殻/ヒマワリ種子莢を基礎としたバイオ材料ないしバイオコンポジットを射出成形に使用することを開示している。この際、プラスチック素材は、前記のヒマワリ種子殻/ヒマワリ種子莢と混合することができる。また当該文献は、特殊なプラスチック素材の使用も開示している。
【0019】
上記特許文献1並びに上記特許文献2は、射出成形製品の収縮の問題に関するものではなく、収縮を回避する又は減少させるために、各々開示された射出成形材料との関連において講ずるべきであろう措置を提供するものでもない。
【0020】
独自の試験・研究において、驚くべきことに、ヒマワリ殻繊維は、適切な前処理により、これらのヒマワリ殻繊維が、機械的な射出成形において、結果として得られる射出成形製品の収縮が極めて僅かであり、従って許容可能な収縮であることをもたらすように、添加物としてプラスチック素材と混合可能であることが分かった。それ故、本質的であるとして、ヒマワリ殻繊維が200℃よりも低い温度でヒマワリ殻から製造されることが判明し、従って既に200℃を少しでも超える温度ではガス状の生成物を発生しながら分解するであろうヒマワリ殻繊維の構成成分は、処理プロセスにおいて無傷のまま(intakt)に留まる。
【0021】
本発明による方法のステップ(a)は、200℃よりも低い最大温度T
PFmaxで、ヒマワリ殻をヒマワリ殻繊維に処理することに関しており、この際、150℃の最大温度T
PFmaxが好ましく、100℃の最大温度T
PFmaxが特に好ましい。
【0022】
従って、本発明による方法のステップ(a)において得られるヒマワリ殻繊維(ヒマワリ殻の処理の結果として)は、200℃を少しでも超える温度ではガスを放出しながら分解するであろう構成成分を無傷の状態で含んでいる。本発明の本質的な成果は、ヒマワリ殻繊維のこの潜在能力(ガスを放出しながら構成成分を分解すること)が、対応のプラスチック製品の収縮を減少させるために利用可能であるということを認識したことである。
【0023】
独自の試験・研究において、ヒマワリ殻繊維は、200℃よりも低い温度で確かに良好に乾燥させることができる(頻繁に望まれていることである)が、ヒマワリ殻繊維の構成成分(おそらく特にリグニン含有の構成成分)は、200℃よりも低い温度で著しく分解されることはないことが判明した。更に独自の試験・研究において、驚くべきことに、200℃以上の温度では、相当の程度でガスの放出をもたらす、ヒマワリ殻繊維の構成成分の不可逆的な分解が行われることが判明した。
【0024】
本発明による方法のステップ(b)により、プラスチック素材と、ステップ(a)において製造されたヒマワリ殻繊維(即ち、既に200℃を少しでも超える温度では分解されてしまう構成成分を含む、損傷しないように製造されたヒマワリ殻繊維)とを混合することにより、射出成形可能なコンポジット材料が製造される。この際、本発明による方法のステップ(b)により、混合は、200℃よりも低い最大温度T
PCmaxで行われることが顧慮される。190℃の最大温度T
PCmaxが好ましく、170℃の最大温度T
PCmaxが特に好ましい。
【0025】
従ってステップ(a)に限らず、プラスチック素材とヒマワリ殻繊維との混合時においても、つまり射出成形可能なコンポジット材料の製造時においても、著しい程度でヒマワリ殻繊維の構成成分がガスを発生しながら分解されることが回避される。従ってガス状の分解生成物を放出するというヒマワリ殻繊維の潜在能力が、本発明により方法ステップ(b)においても保たれる。
【0026】
本発明による方法のステップ(c)においては、製造された射出成形可能なコンポジット材料を射出成形工具内へ機械的に射出成形することが行われ、従って成形されたコンポジット材料が得られる。この際、本発明により、ステップ(a)と(b)における処理手順とは意図的に異なり、より高い温度が設定され、従って射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料は、射出成形工具の少なくとも一区画(コンポジット材料が流れ込んでいく部分:Abschnitt)において(好ましくは複数区画において)200℃よりも高い温度T
IMを有し、好ましくは220℃よりも高い温度を有する。そのような温度は、本発明による方法において、多くの場合、射出成形工具内への射出中に、既に射出ユニット内で予備加熱されて可塑化されたコンポジット材料にせん断発熱が作用することにより達成される。方法ステップ(c)において射出成形工具の少なくとも一区画において設定された200℃よりも高い温度T
IM(好ましくは220℃よりも高い温度)に基づき、そこでは今やリグニン含有の構成成分が分解され、それにより分解ガスが発生し、該分解ガスは、気泡として、成形されるコンポジット材料内へ埋め込まれ、従って射出成形工具の内部体積の一部分を満たすことになる。成形されたコンポジット材料の冷却と固化により、気泡は、固化されたコンポジット材料内に規則的に閉じ込まれたままである。このようにして、成形されるコンポジット材料の上述の収縮の現象に対して対抗措置がとられる。所定の射出成形工具と所定のプラスチック素材に関し、当業者は、収縮を完全に防止するか又は所望の程度で防止するために、どのくらいの量の準備されたヒマワリ殻繊維が必要であるのかを、僅かな事前試験に基づいて検出するであろう。
【0027】
本発明による方法のステップ(d)においては、成形されたコンポジット材料が離型され(即ち射出成形型から取り外され)、従って射出成形製品が得られる。本発明による方式で製造された射出成形製品の収縮は、特に、200℃よりも高い最大温度でヒマワリ殻から獲得されたヒマワリ殻繊維を使用してその他では同一の方法形態において製造された射出成形製品と比べると、極めて僅かである。
【0028】
本発明による方法により製造された射出成形製品は、当該射出成形製品が厚壁部分の領域においてもヒケ(収縮窪み)をもたないか又はもったとしてもその際立ち方は弱いということにより傑出している。比較目的で200℃よりも高い温度でヒマワリ殻から獲得されたヒマワリ殻繊維を使用してその他では同一の方式において製造された射出成形製品と比べると、本発明による射出成形製品は、製品内に気泡がもたらされていることに基づき、より軽量の構成部材重量を有する。この際、本発明による方法により製造された射出成形製品の強度は、基本的に損なわれることはない。ヒマワリ殻繊維の分解可能な構成成分の分解は、温度に依存し、射出成形工具内の更なる措置を伴うことなく自動的に進行するので、本発明による方法より、射出成形製品は、比較的短いサイクル時間で製造可能である。つまり今までは特に厚壁部分の製造において通常であった、時間のかかる保圧時間又は残余冷却時間を維持する必要はなく、それは、ヒマワリ殻繊維の構成成分が分解することにより(自発的に)収縮に対抗する材料内圧が発生するためである。
【0029】
独自の試験・研究において、ヒマワリ殻から出発し、200℃を明確に超える温度と結び付いた粉砕と乾燥が実行される、乾燥したヒマワリ殻繊維を調製するための今まで通常の処理方式に対し、本発明による方法を用いることで上記の観点に関して明らかに良い結果が達成されることが示された。とりわけ、結果として得られる射出成形製品において収縮はより少なく、サイクル時間を減少することができ、構成部材重量も減少され、そしてこの際、強度は維持されている。本発明の発明者は、ヒマワリ殻繊維が射出成形法における使用のために製造されるべき場合には、比較的低い処理温度の選択が有利であることを認識した。従って発明者は、ヒマワリ殻繊維の(特に化学的な観点の)組成(Zusammensetzung)は後続の処理ステップのために重要ではないという、今まで支配的であった見解にとらわれなかった。
【0030】
好ましくは、本発明による方法において、温度T
IMと、両方の温度T
PFmaxとT
PCmaxのうち高い方の温度との間の差ΔTは、20℃よりも大きく、好ましくは40℃よりも大きい。
【0031】
この際、概念T
PFmaxは、ヒマワリ殻の処理を用いたヒマワリ殻繊維の製造時におけるヒマワリ殻繊維の最大温度を意味する(ステップ(a))。
【0032】
この際、概念T
PCmaxは、プラスチック素材と、ステップ(a)において製造されたヒマワリ殻繊維との混合時の混合物における最大温度を意味する(ステップ(b))。
【0033】
この際、概念T
IMは、射出成形工具の所定の定義区画における、射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料の温度を意味する。
【0034】
既に上述したように、ヒマワリ殻繊維は、200℃よりも高い温度で分解する。この際、分解プロセスは、温度の上昇と共に、分解プロセスの速度に関して及び分解の量に関して増加する。射出成形工具の少なくとも一区画における温度T
IMと、両方の温度T
PFmaxとT
PCmaxのうち高い方の温度との間の差ΔTが大きいほど、射出成形工具のその少なくとも一区画において、損傷しないように製造されたヒマワリ殻繊維の使用によりもたらされる効果は、より一層際立っている。独自の試験において、特に収縮(特にヒケ)の減少に関し、ΔT>20℃の温度差が、当業者の視点から、多くの場合、既に驚くべき確かな効果をもたらすことが分かった。ΔT>40℃の温度差において、その効果は、特に際立っている。
【0035】
射出成形工具の少なくとも一区画に関する差ΔTは、T
PFmaxの値ないしT
PCmaxの値のいずれも180℃よりも高くない場合には、常に20℃よりも大きいことは自明であり、それは、温度T
IMは(上で定義したように)射出成形工具の少なくとも一区画において、200℃よりも高いためである。
【0036】
他方、射出成形工具の少なくとも一区画に関する差ΔTは、ステップ(c)で射出成形工具のこの少なくとも一区画において温度T
IMが(上で定義したように)220℃よりも高いところにある場合にも、常に20℃よりも大きい。
【0037】
対応する考察は、40℃よりも大きい好ましい差ΔTに当てはまる。
【0038】
特に有利には、本発明による方法のステップ(c)において、射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料は、射出成形工具の少なくとも一区画において220℃よりも高い温度T
IMを有し、好ましくは240℃よりも高い温度T
IMを有する。既に上述したように、当業者は、個々の場合において、求められる効果を、提供可能な手段を使用して簡単に達成させる温度を選択するであろう。多くの場合、使用されるヒマワリ殻繊維が比較的少量の場合には、射出成形工具の少なくとも一区画における特に高い温度T
IMにより、求められる効果を達成することが可能であり、このことは、ヒマワリ殻繊維を比較的大量に使用し、射出成形工具の正にこの区画における温度T
IMが比較的低い場合に、求められる効果を達成することが可能であることと同様である。
【0039】
射出成形工具(射出成形型)が、4mm以上の製品の壁厚を定義する(キャビティの)一区画又は複数区画を有するのであれば、射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料(ステップ(c))が、射出成形工具の当該区画の少なくとも一区画において200℃よりも高い温度T
IMを有すると、特に有利である。既に上述したように、特に4mm以上の壁厚を有する射出成形製品の領域は、収縮及びヒケ(収縮窪み)を起こしやすい。本発明による方法のステップ(c)において、好ましくは、正に製品の対応の壁厚を定義する射出成形工具の複数の区画において、少なくとも区画ごとに200℃よりも高い温度に達することが保証される。
【0040】
本発明による方法において、射出成形製品は、好ましくは部分結晶性(teilkristallin)の熱可塑性樹脂を含む。既に上述したように、硬化時に結晶性領域を形成するプラスチックの使用は、今までの実施において特に頻繁に、望まれない収縮及びヒケ(収縮窪み)をもたらしていた。本発明の枠内で、正に部分結晶性の熱可塑性樹脂を含んだ射出成形製品の製造において特に明らかな改善が達成される。本発明により、結果として得られる製品内の結晶性領域の形成を防止するために、成形されたコンポジット材料(本発明による方法のステップ(c)の製品として)を特に迅速に冷却することは不必要であるが、除外されているわけでもない。逆に、独自の試験・研究に基づき、結晶化の際に放出される結晶熱が、有利には、使用されたヒマワリ殻繊維から(追加的な)ガスの放出を促進するという評価が得られた。
【0041】
本発明による方法の射出成形製品が部分結晶性の熱可塑性樹脂を含むのであれば、特に良好な結果が達成されるが、固化時に結晶性領域を形成しないプラスチック素材の使用は、本発明による方法において完全に除外されているわけではない。むしろ本発明による方法の使用は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)のような所謂非晶質プラスチック(アモルファスプラスチック)においても実証された。
【0042】
射出成形製品が部分結晶性の熱可塑性樹脂を含み、該熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸(PLA)から成る群から構成されているという、本発明による方法は、特に有利である。
【0043】
部分結晶性の熱可塑性樹脂をもたらす他のプラスチックの使用は、同様に有利である。それ故、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのプラスチックが好ましい。
【0044】
射出成形製品が本発明による方法の有利な構成において(i)部分結晶性の熱可塑性樹脂を含むのであれば、当該射出成形製品は、通常、(ii)ヒマワリ殻繊維からステップ(c)において放出されたガスにより発生された気泡も含んでいる。対応する射出成形製品における試験において、それらの気泡の占める体積は、基本的に、本方法(ステップ(c))の実行時に(上で定義されたように)特に高い温度T
IMが支配していた射出成形工具の複数の区画に対応する射出成形製品の複数の区画において、特に大きいことが分かった。
【0045】
射出成形製品が部分結晶性の熱可塑性樹脂を含むという本発明による方法において、好ましくはそのような方法の有利な構成において、好ましくは、射出成形製品が、1.8%よりも少ない収縮、好ましくは1.5%よりも少ない収縮、特に有利には1.0%よりも少ない収縮を有するように、ステップ(a)においては、200℃よりも低い最大温度T
PFmaxが選択され、好ましくはステップ(b)においては、200℃よりも低い最大温度T
PCmaxが選択され、好ましくは更にステップ(b)においては、所定量のヒマワリ殻繊維が使用される。
【0046】
この際、収縮は、以下の式に従って計算することができる:
収縮 = 100% x(射出成形工具の寸法−射出成形製品の寸法)/
射出成形工具の寸法
【0047】
有利な本発明による方法において、ステップ(a)は、ヒマワリ殻及び/又はヒマワリ殻繊維の乾燥を含む。通常、ヒマワリ殻及び/又はヒマワリ殻繊維は、乾燥の目的で熱処理を受けるが、本発明においては、最大温度T
PFmaxが200℃よりも低い値を有することが更に有効である。有利な構成については、上記の実施形態が参照される。所望の水分量にもたらす乾燥の観点については、上記特許文献1並びに上記特許文献2が参照される。
【0048】
また本発明は、上述して定義されているように、本発明による製造方法により製造可能である射出成形製品にも関する。そのような射出成形製品は、基本的に特徴的な気泡の存在により識別することができ、これらの気泡は、特に埋設されたヒマワリ殻繊維の近傍や、本発明による方法のステップ(c)におけるコンポジット材料の温度が特に高かった区画に存在する。本発明による製造方法の上記の有利な構成を実行することにより、更に特徴的な製品特性を得ることができる。
【0049】
本発明による射出成形製品は、特に、家具、建造物、建物付属品の要素としての使用に適している。
【0050】
また本発明は、射出成形工具内へのコンポジット材料の機械的な射出成形時の収縮を減少させるために、射出成形可能なコンポジット材料内の添加物として、200℃よりも低い最大温度T
PFmaxでヒマワリ殻から調製されたヒマワリ殻繊維を使用することにも関する。そのような使用の有利な構成に関しては、本発明による方法について記載された説明が、対応して該当する。
【0051】
本発明による方法の方法ステップ(a)の製品は、本発明による使用の枠内で添加物として使用され、機械的な射出成形時の収縮を低減させるために用いられる。
【0052】
本発明のこの視点は、そのように調製されたヒマワリ殻繊維は極めて特殊な特性を伴っており、求められる製品特性を適切に設定することに寄与するという、驚くべき認識に基づいている。上述した詳細な実施形態が参照される。
【0053】
機械的な射出成形時に射出成形工具の少なくとも一区画においてコンポジット材料の温度T
IMを200℃よりも高くするという本発明による使用は、好ましい。これと結び付いた効果に関し、及び有利な構成に関しては、本発明による方法の上述の実施形態が参照される。
【0054】
200℃よりも高い温度でガスを放出するヒマワリ殻繊維を添加物として使用するという本発明による使用は、好ましい。このことは、使用されるヒマワリ殻繊維が、コンポジット材料の温度T
IMが200℃よりも高い射出成形工具内のいたるところで、ガスを放出し、気泡を形成するということを意味する。
【0055】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)本発明の第1の視点により、射出成形製品の製造方法が提供される。該製造方法は、以下のステップを含む:
(a)200℃よりも低い最大温度TPFmaxで、ヒマワリ殻をヒマワリ殻繊維に処理するステップ、
(b)200℃よりも低い最大温度TPCmaxで、プラスチック素材と、ステップ(a)において製造されたヒマワリ殻繊維とを混合することにより、射出成形可能なコンポジット材料を製造するステップ、
(c)成形されたコンポジット材料が得られるよう、製造された射出成形可能なコンポジット材料を射出成形工具内へ機械的に射出成形するステップ、但し、前記射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料は、前記射出成形工具の少なくとも一区画において200℃よりも高い温度TIMを有すること、
(d)射出成形製品が得られるよう、成形されたコンポジット材料を離型するステップ。
(形態2)形態1の製造方法において、前記射出成形工具の少なくとも一区画における前記温度TIMと、両方の前記温度TPFmaxとTPCmaxのうち高い方の温度との間の差ΔTが、20℃よりも大きいことが好ましい。
(形態3)形態1又は2の製造方法において、前記射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料は、4mm以上の製品の壁部厚を定義する、前記射出成形工具の少なくとも一区画において、200℃よりも高い温度TIMを有することが好ましい。
(形態4)形態1〜3の何れかの製造方法において、前記射出成形製品は、部分結晶性の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
(形態5)形態1〜4の何れかの製造方法において、前記射出成形製品は、部分結晶性の熱可塑性樹脂を含み、該熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸(PLA)から成る群から選択されていることが好ましい。
(形態6)形態4又は5の製造方法において、前記射出成形製品は、
(i)部分結晶性の熱可塑性樹脂を含むこと、並びに、
(ii)ヒマワリ殻繊維からステップ(c)において放出されたガスにより発生された気泡を含むことが好ましい。
(形態7)形態1〜6の何れかの製造方法において、ステップ(a)は、ヒマワリ殻及び/又はヒマワリ殻繊維の乾燥を含むことが好ましい。
(形態8)本発明の第2の視点により、ヒマワリ殻繊維の使用方法が提供される。該使用方法においては、射出成形工具内へのコンポジット材料の機械的な射出成形時の収縮を減少させるために、射出成形可能なコンポジット材料内の添加物として、200℃よりも低い最大温度TPFmaxでヒマワリ殻から調製されたヒマワリ殻繊維が使用される。
(形態9)形態8の使用方法において、機械的な射出成形時に前記射出成形工具の少なくとも一区画においてコンポジット材料の温度TIMが200℃よりも高いことが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0056】
2種類のコンポジット(コンポジット1とコンポジット2)が製造され、それらの各々の配合は、各々使用されたヒマワリ殻繊維の調製の仕方においてのみ異なっている。コンポジット1は、本発明による一例を実行するために決定されており、コンポジット2は、本発明によらない一例を実行するために決定されている。
【0057】
コンポジット1、2の配合を以下に記載する(重量パーセントデータは、混合物の全重量に関する):
63.7重量% ポリプロピレンコポリマー(ボレアリス社(Borealis)の市販製品)
35重量% ヒマワリ殻繊維(コンポジット1ないし2のために異なった調製、
下記参照)
1重量% 結合剤(リコセン(Licocene)PP MA 7452 GR TP)
0.2重量% プロセス安定剤(イルガホス(Irgafos)168)
0.1重量% 熱安定剤(イルガノックス(Irganox)1076)
【0058】
コンポジット1は、本発明による方法の方法ステップ(a)の要件と一致し、ヒマワリ殻から製造されたヒマワリ殻繊維を含み、即ち195℃の最大処理温度T
PFmaxで製造されたヒマワリ殻繊維を含む。
【0059】
コンポジット1は、本発明による方法の方法ステップ(b)と一致し、ステップ(a)において製造されたヒマワリ殻繊維を、コンポジットの上記の他の配合構成成分(ポリプロピレンコポリマー、結合剤、プロセス安定剤、熱安定剤)と混合することにより製造されたものである。この際、混合温度は、同様に195℃である。
【0060】
そのように製造された射出成形可能なコンポジット材料「コンポジット1」が、直方体形状の中空空間(キャビティ)を有する射出成形工具内へ機械的に射出され、それにより、成形された射出成形片が得られた。
【0061】
射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料「コンポジット1」は、少なくとも射出成形工具の個々の区画(直方体形状の中空空間)において、ほぼ220℃の温度T
IMを有した。
【0062】
成形されたコンポジット材料「コンポジット1」は、完成した射出成形製品として射出成形工具から取り外され、ほぼ直方体形状の射出成形製品のサイズ(高さ、幅、長さ)が決定された。
【0063】
対応する検査が5回繰り返された(例1.1から例1.5まで)。各々の測定の平均値と、個別測定値が、後続の表1に記載されている。
【0064】
対応して「コンポジット2」のための試験が実行された。試験の全パラメータは、「コンポジット1」のために上記したものと同様に選択されたが、幾つかの相違点を伴っている:
【0065】
コンポジット2は、本発明の方法の方法ステップ(a)の要件に反し、220℃の最大処理温度T
PFmaxでヒマワリ殻から製造されたヒマワリ殻繊維を含む。
【0066】
コンポジット2のためにも、コンポジット1に関して述べられた測定が実行され、平均値が決定された。それらの結果は、後続の表1に記載されている。
【0067】
後続の表1は「比較」の欄を含み、この欄では「コンポジット1」と「コンポジット2」のための平均値が記入されている。それらに追加された一列には「観察された空間次元内での収縮差」と記載されており、つまり、各々の「平均値 コンポジット1」と、各々の「平均値 コンポジット2」との間の差が記載されている。「コンポジット1」は、各空間方向において、より大きな平均値を有し、それと比べて「コンポジット2」は、各空間方向において、より小さい平均値を有することが分かった。このことは、「コンポジット2」からは、冷却時により強い収縮を受けた射出成形製品が得られたことを意味し、つまりコンポジット2の方法形態と、それにより得られた射出成形製品は、本発明によるものではないためである。
【0068】
「観察された空間次元内での収縮/%」の列が表1を締め括っており、そこでは「コンポジット1」と「コンポジット2」を比較して各々の収縮が記載されている。そこに記載されている収縮値は、以下の式により計算された値である:
【0069】
観察された空間次元内での収縮 = 100% x
(観察された空間次元内での平均値 コンポジット1 − 観察された空間次元内での平均値 コンポジット2)/観察された空間次元内での平均値 コンポジット2
【0070】
まとめとして、本発明による方法形態により、即ちコンポジット1を使用することにより、本発明によらない方法形態と比較し、即ちコンポジット2を使用した場合と比較し、より少ない収縮を受けた射出成形片が得られたことが確認された。
【0071】
【表1】
【0072】
本出願において壁部厚(ないし内壁厚)が話題となる場合には、それにより壁厚のことも意味しており、圧縮圧力との概念が使用される場合には、それにより保持圧力のことも意味しており、また圧縮時間との概念が使用される場合には、それにより保圧時間のことも意味している。
【0073】
既に本明細書の冒頭で説明したように、独自の試験において、驚くべきことに200℃以上の温度では、ヒマワリ殻繊維の構成成分の不可逆的な分解が行われ、この分解は、相当の量でガスの放出をもたらすということが示された。
【0074】
このことが、後続の表2において定量的に示されており、この際、この表2は、対応する温度値に対し、絶対放出量に関する値と、それより重要であるが、180℃に関する相対放出量を示しており、この際、相対放出量に関する値は、180℃での値に対して基準化されている(従って180℃での相対放出量が基準値1に設定されている):
【0075】
【表2】
【0076】
この試験を行うにあたり、以下の試験構造が使用された:
一方で、各々、ほぼ25mgの試料(ヒマワリバイオプラスチックコンポジット)が180℃、190℃、200℃、210℃、220℃において、TD100(登録商標)内で15分間、直接的に脱気(脱着 desorbiert)され、この際、放出物質が冷却面上で捕えられ、濃縮された。他方で、ほぼ1gの試料が、20mLのヘッドスペースバイアル内に提供され、当該ヘッドスペースバイアルが200℃において15分間、熱的に負荷され、引き続き、ヘッドスペース空間から、気密の注射器(150℃、250μL)を用いてサンプルが抽出された。そして両方のサンプル種類の放出物質が、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を用いて分析され、この際、システムに起因してヘッドスペース測定においては、比較的短いカラム(30m)が使用された。
【0077】
結果評価:
増加する脱気温度は、使用されたポリプロピレン(PP)に由来する炭化水素放出物質(ほぼ25分以上のピークグループ)に対し、極めて僅かな影響だけを示している。その濃度は、全ての試料において比較的一定であり、この際、より高い脱気温度では、より高分子の炭化水素が増加している。180℃と190℃では、少量の追加的な放出物質だけが検知可能であったが、200℃以上では、放出された物質の明らかな増加が認識可能であった。このことは、特にヒマワリ殻繊維構成成分の脱気に起因するものとみなされ、特にまだ殻繊維内に存在し、これらの温度において試料からガス放出(脱気)する比較的長い鎖状の脂肪酸に起因するものとみなされる。累積積分を用いて、0分と25分の間の範囲の部分を、測定された合計放出量について計算すると、180℃では0.34%であり、190℃では2.88%であり、200℃では4.29%であり、210℃では5.86%であり、最後に220℃では10.98%である。つまり揮発性の低分子の物質における放出量は、180℃と220℃の間において30倍よりも多く増加する。
【0078】
この際、放出物質は、高い確率でバイオマス(ヒマワリ殻繊維)の分解に由来する。酢酸、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラールのような、期待すべきヘミセルロースの分解生成物の他、210℃と220℃では、場合により解重合中にリグニンから構成される、バニリン、コニフェリルアルデヒド、コニフェリルアルコールのような物質も、検出可能であった。180℃から220℃への脱気温度の増加は、ほぼ15倍も多い酢酸放出量をもたらし、フルフラール放出量は、40倍も増加する。また硫黄含有の化合物とピロール誘導体の放出物質も少量ながら検出できた。
ここに、本発明の態様を付記する。
(態様1)射出成形製品の製造方法。該製造方法は、以下のステップを含む:
(a)200℃よりも低い最大温度TPFmaxで、ヒマワリ殻をヒマワリ殻繊維に処理するステップ、
(b)200℃よりも低い最大温度TPCmaxで、プラスチック素材と、ステップ(a)において製造されたヒマワリ殻繊維とを混合することにより、射出成形可能なコンポジット材料を製造するステップ、
(c)成形されたコンポジット材料が得られるよう、製造された射出成形可能なコンポジット材料を射出成形工具内へ機械的に射出成形するステップ、但し、前記射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料は、前記射出成形工具の少なくとも一区画において200℃よりも高い温度TIMを有すること、
(d)射出成形製品が得られるよう、成形されたコンポジット材料を離型するステップ。
(態様2)上記の製造方法において、前記射出成形工具の少なくとも一区画における前記温度TIMと、両方の前記温度TPFmaxとTPCmaxのうち高い方の温度との間の差ΔTが、20℃よりも大きい。
(態様3)上記の製造方法において、前記射出成形工具内へもたらされたコンポジット材料は、4mm以上の製品の壁部厚を定義する、前記射出成形工具の少なくとも一区画において、200℃よりも高い温度TIMを有する。
(態様4)上記の製造方法において、前記射出成形製品は、部分結晶性の熱可塑性樹脂を含む。
(態様5)上記の製造方法において、前記射出成形製品は、部分結晶性の熱可塑性樹脂を含み、該熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸(PLA)から成る群から選択されている。
(態様6)上記の製造方法において、前記射出成形製品は、
(i)部分結晶性の熱可塑性樹脂を含むこと、並びに、
(ii)ヒマワリ殻繊維からステップ(c)において放出されたガスにより発生された気泡を含む。
(態様7)上記の製造方法において、ステップ(a)は、ヒマワリ殻及び/又はヒマワリ殻繊維の乾燥を含む。
(態様8)態様1〜7の何れかの製造方法により製造可能な射出成形製品。
(態様9)射出成形工具内へのコンポジット材料の機械的な射出成形時の収縮を減少させるために、射出成形可能なコンポジット材料内の添加物としての、200℃よりも低い最大温度TPFmaxでヒマワリ殻から調製されたヒマワリ殻繊維の使用。
(態様10)上記の使用において、機械的な射出成形時に前記射出成形工具の少なくとも一区画においてコンポジット材料の温度TIMが200℃よりも高い。