(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783266
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】血糖値測定便座
(51)【国際特許分類】
G01N 33/64 20060101AFI20201102BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20201102BHJP
A47K 13/24 20060101ALI20201102BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
G01N33/64
E03D9/00 Z
A47K13/24
G01N33/66 D
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-83775(P2018-83775)
(22)【出願日】2018年4月25日
(65)【公開番号】特開2019-190983(P2019-190983A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2018年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】513261691
【氏名又は名称】土佐エンタープライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】甲藤 明徳
【審査官】
小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−040701(JP,A)
【文献】
特開2015−102381(JP,A)
【文献】
特開2012−213654(JP,A)
【文献】
特開2016−158700(JP,A)
【文献】
YAMANE, Norio et al.,Relationship between skin acetone and blood β-hydroxybutyrate concentrations in diabetes,Clinica Chimica Acta,2006年,Vol.365,p.325-329
【文献】
TURNER, Claire et al.,An exploratory comparative study of volatile compounds in exhaled breath and emitted by skin using selected ion flow tube mass spectrometry (SIFT-MS),Rapid communications in mass spectrometry,2008年,Vol.22, No.4,p.526-532
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/64
A47K 13/24
E03D 9/00
G01N 33/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の便座がO型便座であり、
該便座には、ガス計測センサが組み込まれ、便座に着座した使用者の身体から発する皮膚ガスを前記ガス計測センサが検知し、この検知した皮膚ガス中の揮発性有機化合物を計測し、この計測した値に基き血糖値を算出し、この算出結果を使用者に報知する報知手段を有する構成であって、
前記報知手段が、
便座の座面に配設され、着座した使用者に対して被服を介さず身体に直接的に刺激を加える刺激部と、
算出された血糖値の状態に基いて、刺激を加えるか否かの制御、及び/又は刺激の強弱の制御、を行う制御部と、
を有する構成であり、
更に、使用者が便座に着座した際の両腿間となる位置であるO型の前端部の便座上面に表示部が配設され、該表示部に血糖値の状態が表示される構成であり、意識することなく前記報知手段によって報知された血糖値の状態を前記表示部によって確認できる構成であること、
を特徴とする血糖値測定便座。
【請求項2】
算出された血糖値が要注意レベル乃至は危険レベルであった場合に、その悪化度合いに応じて刺激部の刺激が強くなる構成であることを特徴とする請求項1に記載の血糖値測定便座。
【請求項3】
前記刺激部が、座面の表面から突起部が突出して着座した使用者の身体を叩打する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値測定便座。
【請求項4】
前記刺激部が、座面の表面の一部が突出又は隆起して着座した使用者の身体を押圧する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値測定便座。
【請求項5】
前記刺激部が、座面の表面の少なくとも一部が振動して着座した使用者の身体に振動を伝達する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値測定便座。
【請求項6】
前記刺激部が、座面の表面から先鋭部が突起して着座した使用者の身体に先鋭的な刺激を加える構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値測定便座。
【請求項7】
前記刺激部が、座面の表面の少なくとも一部に放電して着座した使用者の身体に電気的刺激を加える構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値測定便座。
【請求項8】
前記刺激部が、座面の表面の少なくとも一部を加温又は冷却して着座した使用者の身体に熱的刺激を加える構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値測定便座。
【請求項9】
便座のO型の座面表面であって、且つ着座した使用者の皮膚が密着する部分に皮膚ガスが通過可能な透孔から成る皮膚ガス取込孔が形成され、該皮膚ガス取込孔を通過する皮膚ガスが取り込まれる空間である皮膚ガス貯留部内にガス計測センサが配設された構成であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の血糖値測定便座。
【請求項10】
皮膚ガス取込孔から取り込んだ皮膚ガスを濃縮する多孔質材料を有することを特徴とする請求項9に記載の血糖値測定便座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血糖値測定便座に関し、詳しくは、便所使用時に皮膚ガスを検知測定及び報知し、日々の健康管理に有用な血糖値測定便座に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭において日々の健康管理を行うために、体調に関するデータとして体重・体脂肪率の測定が最も一般的であるが、これら以外にも種々の体調に関するデータを取得することが種々提案されている。
【0003】
健康管理のために取得する種々の体調に関するデータとしては、特に近年では、血糖値の計測が重要視されてきている。
【0004】
これは、食生活の欧米化、過食や運動不足による肥満から糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病が増加しているためである。中でも、糖尿病・腎臓病は自覚症状が乏しいため早期発見が困難であるが、常日頃チェックすることを習慣化することにより早期発見が可能である。
【0005】
しかし、毎日の血糖値の計測は採血した血液から測定する採血法が一般的であり、誰もが気軽に習慣的に行えるようなものではない。
【0006】
そこで特許文献1には、体の皮膚表面から放射される揮発性物質である皮膚ガスを測定することにより、この皮膚ガス成分から血糖値を推定することにより採血を不要とする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−151063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術は、アセトン等の生体皮膚ガスから血糖値を測定するものであり、例えば、ガスクロマトグラフィ等を使用して、アセトンなどの揮発性有機化合物を採取(採取工程)し、必要に応じ、濃縮工程を経て、測定工程及び推定工程によって血糖値等の代謝状態を推定し、推定された代謝状態に基づいて薬剤の投与量を決定できるよう開発されたものである。
【0009】
しかしながら、この特許文献1に記載の技術は、採血は不要であるが、皮膚ガスの測定等においては皮膚の特定部位を容器や袋等で一定時間覆うことにより皮膚ガスを採取した後、この採取した皮膚ガスの成分を計測するものであり、家庭において日々容易に血糖値の確認を行うことができるようなものとはなっていないのが実情である。
【0010】
そこで本発明の目的は、排尿や排便の際に便座に着座するだけで、特に意識することなく血糖値の計測を行うことができる血糖値測定便座を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0012】
1.便器の便座がO型便座であり、
該便座には、ガス計測センサが組み込まれ、便座に着座した使用者の身体から発する皮膚ガスを前記ガス計測センサが検知し、この検知した皮膚ガス中
の揮発性有機化合物を計測し、この計測した値に基き血糖値を算出し、この算出結果を使用者に報知する報知手段を有する構成であって、
前記報知手段が、
便座の座面に配設され、着座した使用者に対して被服を介さず身体に直接的に刺激を加える刺激部と、
算出された血糖値の状態に基いて、刺激を加えるか否かの制御、及び/又は刺激の強弱の制御、を行う制御部と、
を有する構成であり、
更に、使用者が便座に着座した際の両腿間となる位置であるO型の前端部の便座上面に表示部が配設され、該表示部に血糖値の状態が表示される構成であり、
意識することなく前記報知手段によって報知された血糖値の状態を前記表示部によって確認できる構成であること、
を特徴とする血糖値測定便座。
【0013】
2.算出された血糖値が要注意レベル乃至は危険レベルであった場合に、その悪化度合いに応じて刺激部の刺激が強くなる構成であることを特徴とする上記1に記載の血糖値測定便座。
【0014】
3.前記刺激部が、座面の表面から突起部が突出して着座した使用者の身体を叩打する構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の血糖値測定便座。
【0015】
4.前記刺激部が、座面の表面の一部が突出又は隆起して着座した使用者の身体を押圧する構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の血糖値測定便座。
【0016】
5.前記刺激部が、座面の表面の少なくとも一部が振動して着座した使用者の身体に振動を伝達する構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の血糖値測定便座。
【0017】
6.前記刺激部が、座面の表面から先鋭部が突起して着座した使用者の身体に先鋭的な刺激を加える構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の血糖値測定便座。
【0018】
7.前記刺激部が、座面の表面の少なくとも一部に放電して着座した使用者の身体に電気的刺激を加える構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の血糖値測定便座。
【0019】
8.前記刺激部が、座面の表面の少なくとも一部を加温又は冷却して着座した使用者の身体に熱的刺激を加える構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の血糖値測定便座。
【0021】
9.便座のO型の座面表面であって、且つ着座した使用者の皮膚が密着する部分に皮膚ガスが通過可能な透孔から成る皮膚ガス取込孔が形成され、該皮膚ガス取込孔を通過する皮膚ガスが取り込まれる空間である皮膚ガス貯留部内にガス計測センサが配設された構成であることを特徴とする上記1〜
8のいずれかに記載の血糖値測定便座。
【0022】
10.皮膚ガス取込孔から取り込んだ皮膚ガ
スを濃縮する
多孔質材料を有することを特徴とする上記9に記載の血糖値測定便座。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に示す発明は、排尿や排便の際に便座に着座するだけで、特に意識することなく血糖値の計測を行うことができる血糖値測定便座を提供することすることができる。少なくとも毎日数回以上の機会がある排尿や排便の際に、血糖値の状態の確認を行うことができるので、意識して習慣付けることなく習慣的に健康管理が可能である。
【0024】
便座に着座して排尿・排便することによって着座した状態のまま血糖値に関する健康状態を意識することなく確実に認識することができる。計測した血糖値に基づく計測結果が着座した使用者に対して被服を介さずに身体に直接的に刺激を加えることによって報知する構成のため、便座に着座した状態のまま直感的に確実に認識することができる。
【0025】
そして、血糖値が測定されて、その結果が刺激によって報知されたが、より詳しく状態を確認したい場合や、刺激の差異を認識し損なった場合等に、便座に着座したそのままの状態で両腿間に位置する表示部を見るだけ、単に視線を下に落とすだけで、より具体的な数値や健康レベルの確認・再確認が可能である。例えば、朝、起き抜けの計測の際等には、寝ぼけていて刺激部の刺激の強弱等の差異を区別することができなかった場合、即ち、計測されて結果が知らされたことはわかったが、その結果が良かったのか悪かったのかが寝ぼけていてわからなかった等の場合であっても、視線を両腿間の表示部に落として表示部の表示を見れば直ぐに確認することができる。
【0026】
特に、血糖値の計測について無意識であったり忘れていた場合であっても、刺激部の刺激により血糖値の計測が行われていたことが報知されるので、健康レベルを特段の意識を有さずとも「刺激があったら表示部で確認すればよい」となり、意識してなくとも習慣化させやすい行動様式が得られる。そして、この報知手段による報知がなければ血糖値は確認する必要がないことでもあるので、日々の暮らしの中での排尿・排便において血糖値を確認する、或いは確認しない等と意識することが必要ないものである。
【0027】
請求項2に示す発明によれば、血糖値が、健康に注意しなければならないレベルであったり、病院に行って受診しなければならないレベルであったり、その悪化度合いに応じて報知の刺激が強くなるので、強い刺激であればある程、血糖危険度を容易に認識することができる。
【0028】
請求項3に示す発明によれば、便座に着座した状態のままトントンと或いはトトトトトンと叩打されることにより血糖値の状態を知ることができる。従って、種々の検知を行って様々な数値によって健康状態を知らせる健康器具等とは異なり、意識することなく確実に健康状態を認識することができる。
【0029】
請求項4に示す発明によれば、便座に着座した状態のまま座面の一部によってクイクイと或いはグイグイと押圧されることにより血糖値の状態を知ることができる。従って、種々の検知を行って様々な数値によって健康状態を知らせる健康器具等とは異なり、意識することなく確実に健康状態を認識することができる。
【0030】
請求項5に示す発明によれば、便座に着座した状態のままプルプルと或いはブルブルとした振動により血糖値の状態を知ることができる。従って、種々の検知を行って様々な数値によって健康状態を知らせる健康器具等とは異なり、意識することなく確実に健康状態を認識することができる。
【0031】
請求項6に示す発明によれば、便座に着座した状態のままチクチクと或いはグリグリとした先鋭的な刺激により血糖値の状態を知ることができる。従って、種々の検知を行って様々な数値によって健康状態を知らせる健康器具等とは異なり、意識することなく確実に健康状態を認識することができる。
【0032】
請求項7に示す発明によれば、便座に着座した状態のままピリピリと或いはビリビリとした電気的な刺激により血糖値の状態を知ることができる。従って、種々の検知を行って様々な数値によって健康状態を知らせる健康器具等とは異なり、意識することなく確実に健康状態を認識することができる。
【0033】
請求項8に示す発明によれば、便座に着座した状態のまま座面の一部が熱くなる、又は冷たくなることにより血糖値の状態を知ることができる。従って、種々の検知を行って様々な数値によって健康状態を知らせる健康器具等とは異なり、意識することなく確実に健康状態を認識することができる。
【0035】
請求項
9に示す発明によれば、放出量が微小量の皮膚ガス成分をより確実に取り込むことができるため、より正確な測定が可能である。
【0036】
請求項1
0に示す発明によれば、検知した皮膚ガスの濃度が低い場合であっても正確な測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係る血糖値測定便座の一実施例の使用状態を示す概略平面図
【
図3】本発明に係る血糖値測定便座の他の実施例の使用状態を示す概略平面図
【
図7】本発明に係る血糖値測定便座の他の実施例の使用状態を示す概略平面図
【
図9】本発明に係る血糖値測定便座の他の実施例の使用状態を示す概略平面図
【
図11】ガス計測センサの組込構成の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、添付の図面に従って本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明における揮発性有機化合物の例としてはアセトンについて説明するものとする。
【0039】
本発明に係る血糖値測定便座(以下、単に便座ということもある。)は、便所使用時に血糖値を検知測定し、日々の健康管理に有用なものである。
【0040】
即ち、
図1、
図2、
図11に示すように、本発明の便座1はO型であり、
該便座1には、ガス計測サンサ2が組み込まれ、便座1に着座した使用者Mの身体から発する皮膚ガスを前記ガス計測センサ2が検知し、この検知した皮膚ガス中のアセトンを計測し、この計測した値に基き血糖値を算出し、この算出結果を使用者に報知する報知手段を有する構成であって、
前記報知手段が、
便座1の座面に配設され、着座した使用者Mに対して被服を介さず身体に直接的に刺激を加える刺激部3と、
算出された血糖値の状態に基いて、刺激を加えるか否かの制御、及び/又は刺激の強弱の制御、を行う制御部4と、
を有する構成であり、
更に、使用者Mが便座1に着座した際の両腿間となる位置であるO型の前端部の便座1上面に表示部6が配設され、該表示部6に血糖値の状態が表示される構成であり、
意識することなく前記報知手段によって報知された血糖値の状態を前記表示部6によって確認できる構成である。
図1において、符号5は便器蓋を示す。
【0041】
前記ガス計測センサ2は、体表面から放射される揮発性物質の一つであるアセトンを計測するセンサである。アセトンは脂質の代謝生成物であり、糖質の供給が不充分となった場合(絶食、減食、偏食等)や糖質の利用が充分にできない状態(糖尿病等)になると、体内の脂質の分解が促進され、肝臓においてケトン体(アセト酢酸、β−ヒドロキシ酪酸及びアセトン)が生成され、このケトン体の中でアセトンは揮発性が高いため、血中から直接揮発して体表面から放射されることになる。
【0042】
ガス計測センサ2としては、上記したような体表面から放射されるアセトンを検知することができる公知公用のガス計測センサを用いることができ、例えば、半導体ガスセンサ、電気化学式センサ、気体熱伝達式センサ、弾性表面波センサ、接触燃焼式センサ、光学式センサ、カーボンナノチューブ式センサ、グラフェン式センサ、光ファイバー型センサ、薄膜型センサ、MEMS熱伝導式センサ、マイクロ熱電式センサ、接触燃焼式センサ、起電力変化方式センサ、光学式センサ、ガスクトマトグラフィ測定センサ、VOC(揮発性有機化合物)センサ等を挙げることができる。
【0043】
便座1に組み込まれたガス計測センサ2による皮膚ガスを計測する構成としては、
図1及び
図11に示すように、便座1のO型の座面表面であって、且つ着座した使用者Mの皮膚が密着する部分に皮膚ガスが通過可能な透孔から成る皮膚ガス取込孔21が形成され、この皮膚ガス取込孔21を通過する皮膚ガスが取り込まれる空間である皮膚ガス貯留部22が便座1内に設けられ、この皮膚ガス貯留部22内に前記ガス計測センサ2が配設されることによって、便座1に着座した使用者Mの座面に密着する部分の体表面から放射される皮膚ガスの一部が皮膚ガス取込孔21を通って皮膚ガス貯留部22内に取り込まれてガス計測センサ2によって皮膚ガス内のアセトン量が計測され、この計測されたアセトン量から血糖値が算出される。
【0044】
アセトン量の計測後、皮膚ガス貯留部22内に貯留している皮膚ガスは、図示しないブロアー等の送風手段により皮膚ガス貯留部22の外へ図示しない排気通路を通って排気される。この皮膚ガスの排気によって、次なる皮膚ガスの計測を行うことができる。
【0045】
また、皮膚ガス取込孔21から取り込んだ皮膚ガスの濃度が低い場合など、皮膚ガス計測に支障がある場合や計測精度をより向上させるたい場合等に、取り込んだ皮膚ガスの濃度を濃縮する濃縮工程を付加することもできる。濃縮工程としては、例えば、特開2014−232051号に挙げられている濃縮工程、即ち、多孔質材料を用いて皮膚ガス成分を吸着させて濃縮し、多孔質材料を加熱することにより濃縮した皮膚ガス成分を脱離させる構成を挙げることができる。
【0046】
前記ガス計測センサによって検知し、計測されたアセトンから算出される血糖値は、例えば、下記するような基準に基いて健康状態が判断される。
【0047】
[日本糖尿病学会が定める血糖値の判定基準](単位:mg/dL)
空腹時血糖値 食後血糖値
正常値 100未満 140未満
正常高値 110未満 140未満
境界型 110〜126未満 140〜200未満
糖尿病 126以上 200以上
上記において「境界型」とは、正常にも糖尿病にも属さない値を言い、「境界型糖尿病」と呼ばれることもある。
【0048】
[日本人間ドック学会が定める血糖値の判定基準](単位:mg/dL)
空腹時血糖値(FPG)
正常値 99以下
要注意 100〜125
異常 126以上
【0049】
上記の判定基準を参考にした場合、血糖値が100mg/dL未満の場合は異常無しであり、100〜125mg/dLの範囲内の場合は注意を要するレベルであり、126mg/dL超の場合は異常有りの健康状態(危険レベル)である、と判断することができる。
【0050】
この算出された血糖値を上記の判定基準に当て嵌め、その結果に基づき制御部4が刺激部3の制御を行うことにより、刺激部3による刺激を加えるか否か、刺激の強弱が制御される。そして、この制御された刺激部3による刺激の有無(異常有りか、異常無しか。)と刺激の強さ(要注意レベルであるか、危険レベルであるか等)によって使用者Mは尿糖値の健康状態を認識することができる。特に、異常有りの場合には悪化度合いに応じて刺激部3による刺激が強くなる構成とすることが好ましい。
【0051】
ガス計測センサ2によって検知され、制御部4によって判断され制御され、刺激部3による刺激によって使用者Mに尿糖の値の健康状態について報知される報知手段の種類としては、例えば、下記するような種々の態様を挙げることができる。
【0052】
先ず、
図1及び
図2に示す実施例では、報知手段の刺激部3が便座1の座面の表面に突出して配設された突起部31が使用者Mを叩打することによって血糖値の計測結果を報知する構成である。この際、突起部31がトントンと軽く叩打することにより血糖値が要注意レベルであることを報知し、トトトトトンと速いリズムで強く叩打することにより血糖値が危険レベルであることが報知される。尚、突起部31の動作構成については、制御部4によって制御される動作指令に基づくモーター駆動や電磁石駆動によって往復動される公知公用の駆動機構等を採用することができる。
【0053】
次に、
図3〜
図5に示す実施例では、報知手段の刺激部3が便座1の座面の表面の一部が突出又は隆起する押圧部32が使用者Mを押圧することによって血糖値の計測結果を報知する構成である。この際、押圧部32がクイクイと軽く押圧することにより血糖値が要注意レベルであることを報知し、グイグイと強く押圧することにより血糖値が危険レベルであることが報知される。尚、押圧部32の動作構成については、制御部4によって制御される動作指令に基づくピストン駆動によって上下動される公知公用の駆動機構等を採用することができる。尚、本実施例の
図4に示す構成は、便座1の座面の表面の一部が伸縮可能なシート体等で形成されることによって該シート体の下方に配設された押圧部32の上下動に応じて隆起する構成になっている。尚また、本実施例の
図5に示す構成は、便座1の座面の表面の一部が押圧部32の上下動に応じて突出する構成になっている。
【0054】
次に、
図6に示す実施例では、報知手段の刺激部3が便座1の座面の表面の一部が振動部33の駆動により振動することによって血糖値の計測結果を報知する構成である。この際、振動部33がプルプルと軽く振動することにより血糖値が要注意レベルであることを報知し、ブルブルと強く振動することにより血糖値が危険レベルであることが報知される。尚、振動部33の動作構成については、制御部4によって制御される動作指令に基づく偏芯モーター駆動や電磁石駆動によって振動する公知公用の振動機構等を採用することができる。
【0055】
次に、
図7及び
図8に示す実施例では、報知手段の刺激部3が便座1の座面の表面から突起する先鋭部34が使用者Mに先鋭的な刺激を加えることによって血糖値の計測結果を報知する構成である。この際、先鋭部34がチクチクと軽く刺激することにより血糖値が要注意レベルであることを報知し、グリグリと強く刺激することにより血糖値が危険レベルであることが報知される。尚、先鋭部34の動作構成については、制御部4によって制御される動作指令に基づくピストン駆動によって上下動される公知公用の駆動機構等を採用することができる。
【0056】
次に、
図9に示す実施例では、報知手段の刺激部3が便座1の座面の表面の一部に放電部35により放電して電気的刺激を加えることによって血糖値の計測結果を報知する構成である。この際、放電部35がピリピリと軽く放電することにより血糖値が要注意レベルであることを報知し、ビリビリと強く放電することにより血糖値が危険レベルであることが報知される。尚、放電部35の動作構成については、制御部4によって制御される動作指令に基づき放電する公知公用の放電電極等を採用することができる。
【0057】
次に、
図10に示す実施例では、報知手段の刺激部3が便座1の座面の表面の一部を加熱部又は冷却部36により加温又は冷却して熱的刺激を加えることによって血糖値の計測結果を報知する構成である。この際、加熱部又は冷却部36がじんわりと温かく加温、又はひんやりと冷たく冷却することにより血糖値が要注意レベルであることを報知し、急激に熱く加温、又は急冷することにより血糖値が危険レベルであることが報知される。尚、加熱部又は冷却部36の動作構成については、制御部4によって制御される動作指令に基づき加温するヒーターや熱媒、又は冷却するクーラーや冷媒等の公知公用の加熱機構又は冷却機構等を採用することができる。
【0058】
更に本発明の血糖値測定便座1では、
図1、
図3、
図7、
図9に示すように使用者Mが便座1に着座した際の両腿間となる位置であるO型の前端部の便座1の上面に血糖値の計測結果を表示する表示部6が配設されており、この表示部6に血糖値の状態を表示する構成となっている。
【0059】
表示部6に表示する内容としては、血糖値の具体的な数値の他、単に健康レベルにおける異常の有無を表す記号「○」(正常)と「△」(要注意)と「×」(異常)等や、健康レベルにおける異常の程度を表す棒グラフ等の表示を挙げることができる。尚、
図1、
図3、
図7、
図9に示す本実施例では血糖値の具体的な数値を表示している。
【0060】
更にまた、報知手段の刺激部として便座1の座面の表面の少なくとも一部に発光部を設け、この発光部が発光して光学的な刺激を加えることによって血糖値の計測結果を報知する構成とすることもできる。発光部としては、上記した
図11に示す表示部6の一部又は全部を発光させてもよいし、表示部6とは別の部分に別体でLED等の光学手段による発光部を付加したり、或いは表示部6に代えて座面にLED等の光学手段による発光部のみを配設する構成とすることもできる。この発光による報知は、例えば、ピカっと光ることにより血糖値が要注意レベルであることを報知し、ビカビカと強い光で光ることにより血糖値が危険レベルであることが報知される。この際、血糖値の悪化具合に応じて、悪い値であるほど速い点滅としたり、発光照度を上げたりしてもよいし、発光の色を正常値の場合には緑色系や青色系とし、要注意レベルでは黄色とし、悪い値になるほど橙色から赤色へと変化させてもよい。
【0061】
以上の構成を有する本発明の血糖値測定便座によれば、便座に着座して排尿することによって着座した状態のまま血糖値に関する健康状態を意識することなく確実に認識することができる。特に、計測したアセトン量から算出された血糖値が着座した使用者に直接的に刺激を加えることによって知らせる構成なので、便座に着座して排尿した状態のまま血糖値がどのような健康状態であるのかが直感的に確実に認識することができる。従って、自覚症状が乏しいため早期発見が困難である糖尿病・腎臓病について、排便や排尿の際に容易に習慣化されて早期発見が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 血糖値測定便座
2 ガス計測センサ
21 皮膚ガス取込部
22 皮膚ガス貯留部
3 刺激部
31 突起部
32 押圧部
33 振動部
34 先鋭部
35 放電部
36 加熱部又は冷却部
4 制御部
5 便器蓋
6 表示部
M 着座した使用者