特許第6783289号(P6783289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783289
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】合成石英粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   C01B33/18 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-230632(P2018-230632)
(22)【出願日】2018年12月10日
(65)【公開番号】特開2020-40868(P2020-40868A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0109098
(32)【優先日】2018年9月12日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515314731
【氏名又は名称】スリー・エス コリア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】3S Korea Co., Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】518438483
【氏名又は名称】スリーエス・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】3S MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン・ス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン・ラーク
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6141710(JP,B2)
【文献】 特開平10−245217(JP,A)
【文献】 特開2002−173314(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/124117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)親水性シリカと水溶性アルカリ金属水酸化物を超純水で加水分解させた後、1時間以上攪拌して二酸化ケイ素の濃度が15%以上のケイ酸アルカリ水溶液を製造するステップと、
(b)前記ケイ酸アルカリ水溶液を超純水で希釈して二酸化ケイ素の濃度を希釈させながら1次冷却を行った後、2次冷却を行い、0〜5℃の範囲のケイ酸アルカリ水溶液を製造するステップと、
(c)前記冷却されたケイ酸アルカリ水溶液をイオン交換塔に注入し、H型陽イオン交換処理してコロイドシリカゾル水溶液を製造するステップと、
(d)前記コロイドシリカゾル水溶液に塩酸、硝酸、硫酸および過酸化水素のうちいずれか1つである第1添加剤を添加し、これを攪拌して解離溶出およびイオン交換するステップと、
(e)前記コロイドシリカゾル水溶液にアンモニア水又はアミンのうちいずれか1つである第2添加剤を添加し、20〜80℃の範囲内で攪拌してコロイドシリカの粒径を成長させるステップと、
(f)濾過膜に前記コロイドシリカゾル水溶液を用いてこれを濃縮させ、アンモニア水をさらに添加して湿潤ゲルを製造するステップと、
(g)前記湿潤ゲルを蒸発させた後、乾燥させて湿潤ゲルに含まれている水分を除去し、乾燥シリカゲルを製造するステップと、
(h)前記乾燥シリカゲルを加工して合成石英粉を製造するステップと、を含み、
前記(g)ステップでは、水蒸気分圧の低い不活性ガス状態で赤外線ヒーターで前記湿潤ゲルを加熱して前記湿潤ゲルに含有された水分を蒸発させ、真空状態で乾燥させる合成石英粉の製造方法。
【請求項2】
前記(a)ステップの親水性シリカは、金属不純物の含有量が1ppm未満および比表面積の範囲が90〜300m/gであるヒュームドシリカ又は溶融シリカのうちいずれか1つである請求項1に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項3】
前記(a)ステップの親水性シリカ/アルカリ金属水酸化物のモル比は、1〜4.5であり、上記したモル比で前記親水性シリカおよびアルカリ金属水酸化物を反応させる請求項1に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項4】
前記(b)ステップは、超純水の温度が0〜15℃である請求項1に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項5】
前記(b)ステップで製造されるケイ酸アルカリ水溶液は、二酸化ケイ素(SiO)の濃度が1〜6.5%である請求項1に記載の合成石英粉の製造方法。
【請求項6】
前記(c)ステップのイオン交換塔は、空気遮断式密閉構造からなっており、前記ケイ酸アルカリ水溶液の二酸化炭素を吸収してケイ酸がゲルとして析出される現象を防止する請求項1に記載の合成石英粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成石英粉の製造方法に関する。より詳しくは、ゾル-ゲルの製造法を用いて合成石英ガラス粉を製造するための合成石英粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信分野、半導体産業分野などに用いられる石英ガラス製品の純度に対しては非常に厳しい管理が行われている。
【0003】
このような高純度の石英ガラスは、天然石英を粉砕して取得した砂状の天然石英粉(又はサンド(sand)という。)を原料として用いてガラス製品の材料を製造する方法と、四塩化ケイ素の酸水素炎の中での分解で発生した蒸気を基板に付着および成長させて得られた蒸気を用いてガラス製品の材料を製造する方法とがある。
【0004】
しかしながら、上記した四塩化ケイ素の酸水素炎を用いた合成石英の製造方法は、大量生産が可能であるが、微細な気泡などの不純物を含有しており、フォトマスク、単結晶成長用ルツボなどの半導体産業分野においては問題となっており、このような問題を解決するために特許文献1の発明が開発された。特許文献1の発明について具体的に説明すると次の通りである。
【0005】
特許文献1に開示されている発明は、高純度の合成シリカ粉末の製造方法に関するものであり、これによると、ヒュームドシリカと水酸化アルカリ金属水溶液を反応させてケイ酸アルカリ金属塩水溶液を生成させる第1工程、取得したケイ酸アルカリ金属塩水溶液を脱アルカリ処理してpHが9〜11の範囲内のシリカ水溶液を取得する第2工程、取得したシリカ水溶液を陽イオン交換処理し、当該水溶液のpHを2〜3にする第3工程、取得したシリカ水溶液を濃縮し、ゲル化させる第4工程、取得したゲル化物を乾燥させる第5工程、乾燥したゲル化物を粉砕して粉砕物を取得する第6工程、粉砕物を酸水溶液で処理する第7工程、および酸水溶液で処理された粉砕物を乾燥ガスを用いて1100〜1300℃で焼成する第8工程を含む。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1は、pHを調節することにより、シリカ水溶液がイオン交換樹脂を通過する際のイオン交換樹脂の粘度増加およびそれによるゲル化による詰まりを防止するが、その効果が低く、シリカ水溶液がイオン交換樹脂を使用してイオン交換が行われる際、イオン交換樹脂の耐久性が低くて頻繁にイオン交換樹脂を交換する必要があり、イオン交換樹脂を頻繁に交換することにより、合成石英粉の価格が上昇する問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6141710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ゾル-ゲルの製造法を用いて合成石英ガラス粉を製造するための合成石英粉の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、
本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法は、
(a)親水性シリカと水溶性アルカリ金属水酸化物を超純水に加水分解させた後、1時間以上攪拌して二酸化ケイ素の濃度が15%以上のケイ酸アルカリ水溶液を製造するステップと、
(b)前記ケイ酸アルカリ水溶液を超純水で希釈して二酸化ケイ素の濃度を希釈させながら1次冷却を行った後、2次冷却を行い、0〜5℃の範囲のケイ酸アルカリ水溶液を製造するステップと、
(c)前記冷却されたケイ酸アルカリ水溶液をイオン交換塔に注入し、H型陽イオン交換処理してコロイドシリカゾル水溶液を製造するステップと、
(d)前記コロイドシリカゾル水溶液に第1添加剤を添加し、これを攪拌して解離溶出およびイオン交換するステップと、
(e)前記コロイドシリカゾル水溶液に第2添加剤を添加し、20〜80℃の範囲内で攪拌させてコロイドシリカの粒径を成長させるステップと、
(f)濾過膜に前記コロイドシリカゾル水溶液を用いてこれを濃縮させ、アンモニア水をさらに添加して湿潤ゲルを製造するステップと、
(g)前記湿潤ゲルを蒸発させた後、乾燥させて湿潤ゲルに含まれている水分を除去し、乾燥シリカゲルを製造するステップと、
(h)前記乾燥シリカゲルを加工して合成石英粉を製造するステップと、を含むことができる。
【0010】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(a)ステップの親水性シリカは、金属不純物の含有量が1ppm未満および比表面積の範囲が90〜300m/gであるヒュームドシリカ又は溶融シリカのうちいずれか1つを選択することができる。
【0011】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(a)ステップの水溶性アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムのうちいずれか1つである。
【0012】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(a)ステップの親水性シリカアルカリ金属水酸化物のモル比は、1〜4.5であり、上記したモル比で前記親水性シリカおよびアルカリ金属水酸化物を反応させることができる。
【0013】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(b)ステップは、例えば、超純水の温度が0〜15℃の範囲内である。
【0014】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(b)ステップで製造されるケイ酸アルカリ水溶液は、二酸化ケイ素(SiO)の濃度が1〜6.5%の範囲内で製造することができる。
【0015】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(c)ステップのイオン交換塔は、空気遮断式密閉構造からなっており、前記ケイ酸アルカリ水溶液の二酸化炭素を吸収してケイ酸がゲルとして析出される現象を防止することができる。
【0016】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(c)ステップのイオン交換塔は、前記ケイ酸アルカリ水溶液を注入する前に、不活性ガスを真空置換又は圧入送風で注入して交換塔の内部空気を除去することができる。
【0017】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(d)ステップの第1添加剤は、塩酸、硝酸、硫酸および過酸化水素のうちいずれか1つを選択して添加することができる。
【0018】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(d)ステップは、ケイ酸の重合体粒子の内部に結合されたアルカリ金属および多価金属イオンを解離して溶出させることができる。
【0019】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(e)ステップの第2添加剤は、アンモニア水又はアミンのうちいずれか1つを選択して添加することができる。
【0020】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記第2添加剤は、電子グレード以上の薬液を用いて滴下速度を1分当たり1L未満に管理して前記コロイドシリカの局所ゲル化を防止することができる。
【0021】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(e)ステップで前記コロイドシリカの粒径を10nm以上に成長させることができる。
【0022】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(f)ステップの濾過膜は、空隙サイズが10〜15nmであり、耐薬品性の材料からなることができる。
【0023】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(f)ステップのアンモニア水は、電子グレード以上の薬液を用い、滴下速度を1分当たり1L未満で製造することができる。
【0024】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(f)ステップは、前記アンモニア水を添加した後、高周波、赤外線加熱、熱風加熱により湿潤ゲルを製造することができる。
【0025】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記高周波、赤外線加熱、熱風加熱は160℃未満に加熱して湿潤ゲルを製造することができる。
【0026】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(g)ステップは、水蒸気分圧の低い不活性ガス状態で赤外線ヒーターで前記湿潤ゲルを加熱させて前記湿潤ゲルに含有された水分を蒸発させ、真空状態で乾燥させることができる。
【0027】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記(h)ステップは、
(h)-1.前記乾燥シリカゲルを粉砕してシリカゲルの微粒子を生成するステップと、
(h)-2.前記シリカゲルの微粒子を酸水溶液又は超純水のうちいずれか1つで洗浄するステップと、
(h)-3.洗浄を完了したシリカゲルを乾燥するステップと、
(h)-4.乾燥シリカゲルを焼成するステップと、をさらに含むことができる。
【0028】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記粉砕は粉砕手段によって行われ、前記粉砕手段は、ロールミル、ボールミル、ディスクミル、ジェットミルのうちいずれか1つを選択して前記乾燥シリカゲルを粉砕し、ジルコニウム又は合成石英の材料からなることができる。
【0029】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記酸水溶液は、電子グレード以上の塩酸、硝酸、硫酸のうちいずれか1つを選択して用いられ、100℃以下の温度で加熱および攪拌を同時に行うことができる。
【0030】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記洗浄は、洗浄容器内で行われ、前記洗浄容器は、例えば、合成石英、フッ素樹脂、炭化ケイ素、窒化ケイ素のうちいずれか1つの材料からなる。
【0031】
本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記乾燥は、真空状態での不活性ガスを注入させた後、300℃未満の温度内で乾燥させることができる。
【0032】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記焼成は、真空状態で乾燥空気および不活性ガスを注入させることができる。
【0033】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム、水素、アルゴンのうちいずれか1つを選択して用いられ、露点が−40℃以下のガスを用いることができる。
【0034】
又、本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法において、前記焼成温度は、100〜300℃、600〜1000℃、1200〜1300℃の区間に区画して行い、前記乾燥シリカゲルの多孔質を閉孔して合成石英粉を製造することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一実施例によると、ケイ酸アルカリ水溶液の二酸化ケイ素の濃度および温度を調節することにより、ケイ酸アルカリ水溶液のゲル化を防止し、イオン交換樹脂の耐久性が低下することを防止し、イオン交換樹脂の交換周期を長くする効果がある。
又、本発明の一実施例によると、水蒸気分圧の低い不活性ガス状態で赤外線ヒーターで加熱して湿潤ゲルに含有された水分を蒸発させた後、真空状態で乾燥させることにより、凍結および解凍工程よりもエネルギーコストが低減する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法における全体工程の順序を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法における乾燥シリカゲルから合成石英粉を製造する工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施例を添付の図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0038】
本発明の一実施例に係る合成石英粉の製造方法は、ケイ酸アルカリ水溶液を製造するステップ(S100)と、ケイ酸アルカリ水溶液を冷却するステップ(S200)と、コロイドシリカゾル水溶液を製造するステップ(S300)と、解離溶出およびイオン交換するステップ(S400)と、シリカの粒径を成長させるステップ(S500)と、湿潤ゲルを製造するステップ(S600)と、湿潤ゲルに含有された水分を除去して乾燥シリカゲルを製造するステップ(S700)と、合成石英粉を製造するステップ(S800)とを含む。
【0039】
先ず、親水性シリカおよび水溶性アルカリ金属水酸化物を超純水で加水分解を行った後、これを攪拌して、二酸化ケイ素を15%以上の濃度で含有するケイ酸アルカリ水溶液を製造する(S100)。
【0040】
ここで、親水性シリカは、金属不純物の含有量が1ppm未満であり、比表面積の範囲が90〜300m/gであるヒュームドシリカ又は溶融シリカのうちいずれか1つを選択してアルカリ金属水酸化物と加水分解を行うことができる。
【0041】
水溶性アルカリ金属酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムのうちいずれか1つであり、二酸化ケイ素(SiO)の濃度が15%以上になるように親水性シリカを添加して加水分解を行い、アルカリ金属水酸化物と水が発熱反応することにより、40℃未満の熱が発生して溶解される。
【0042】
さらに、親水性シリカおよび水溶性アルカリ金属酸化物のモル比は、1〜4.5の範囲内であり、上記したモル比で親水性シリカおよび水溶性アルカリ金属酸化物を反応させることができる。
【0043】
上述した方法で、ケイ酸アルカリ水溶液を製造した後、超純水を添加してケイ酸アルカリ水溶液を希釈させて二酸化ケイ素の濃度を1〜6.5%の範囲内に調節しながら、1次冷却を行い、チラーを用いて2次冷却を行うことにより、0〜5℃の範囲内のケイ酸アルカリ水溶液を製造することができる(S200)。
【0044】
具体的に、1次冷却は、ケイ酸アルカリ水溶液(二酸化ケイ素を15%以上の濃度で含有)の温度が40℃前後になり、0〜15℃の超純水を添加することにより、二酸化ケイ素が1〜6.5%の濃度に希釈され、ケイ酸アルカリ水溶液の温度が40℃から25〜30℃になる。
【0045】
即ち、1次冷却は、ケイ酸アルカリ水溶液に超純水を添加することにより、希釈および冷却を同時に行うことができる。
【0046】
1次冷却を完了したケイ酸アルカリ水溶液は、反応器に備えられたチラーを用いた冷却、又は別のチラーユニットを用いた冷却のうちいずれか1つを選択して2次冷却を行う。2次冷却を行った後のケイ酸アルカリ水溶液は、0〜5℃の温度になる。
【0047】
即ち、ケイ酸アルカリ水溶液は、二酸化ケイ素の濃度を希釈および冷却することにより、イオン交換塔に通過させる際にケイ酸アルカリ水溶液の粘度が増加することを防止およびゲル化を防止する効果がある。
【0048】
なお、ケイ酸アルカリ水溶液は、ゲル化を防止するために、二酸化ケイ素(シリカ)の濃度、pH、温度を調節する方法のうちいずれか1つを選択して行うが、pHで調節する場合は、イオン交換樹脂の耐久性が著しく低くなり、イオン交換樹脂を頻繁に交換しなければならないという欠点があり、二酸化ケイ素(シリカ)の濃度および温度を調節する方法を用いてイオン交換樹脂の耐久性を確保し、シリカのゲル化を防止することができる。
【0049】
0〜5℃の範囲のケイ酸アルカリ水溶液はイオン交換塔に注入し、H型陽イオン交換を行ってコロイドシリカゾル水溶液を製造することができる(S300)。
【0050】
ここで、イオン交換塔は、二酸化ケイ素の濃度を調節する際、空気に含有された二酸化炭素と接触するとシリカのゲル化が促進(ケイ酸がゲルとして析出する現象)されるので、空気遮断式密閉構造からなるイオン交換が行われる。
【0051】
又、ケイ酸アルカリ水溶液は、イオン交換塔に注入する前に、交換塔の内部に不活性ガスを真空置換又は圧入送風で注入して交換塔の内部に空気を除去することにより、コロイドゾルシリカ水溶液を製造する際、ゲル化現象を防止することができる。
【0052】
このような工程で製造されたコロイドシリカゾル水溶液はpH1〜3の範囲内で製造される。
【0053】
コロイドシリカゾル水溶液は、第1添加剤を添加し、これを攪拌して解離溶出およびイオン交換を行うことができる(S400)。
【0054】
第1添加剤は、塩酸、硝酸、硫酸および過酸化水素のうちいずれか1つであり、合成石英の粉末の高純度化のために電子グレード以上の薬液を用いる。
【0055】
第1添加剤をコロイドシリカゾル水溶液に添加した後、攪拌してケイ酸の重合体粒子の内部に結合されたアルカリ金属および多価金属イオンを解離させて溶出させる。
【0056】
解離させて溶出させた後、イオン交換を行う際、ケイ酸アルカリ水溶液をイオン交換塔に注入してコロイドゾルシリカ水溶液を製造する際と同様に、空気遮断式密閉構造のイオン交換塔を用い、不活性ガスを真空置換又は圧入送風でイオン交換塔の内部に注入して空気を除去した後、コロイドシリカゾル水溶液をイオン交換する。
【0057】
即ち、S300およびS400は、イオン交換塔に注入する溶液(ケイ酸アルカリ水溶液およびコロイドシリカゾル水溶液)のみ異なり、合成石英粉を製造する方法は同一である。
【0058】
解離溶出およびイオン交換が完了したコロイドシリカゾル水溶液は、さらに第2添加剤を添加した後、これを攪拌してシリカの粒径を成長させることができる(S500)。
【0059】
ここで、第2添加剤は、電子グレード以上の薬液のアンモニア水又はアミンのうちいずれか1つであり、pHの変化幅を最小化するために、滴下速度を1分当たり1Lに制御することにより、コロイドシリカゾル水溶液の局所ゲル化を防止することができる。
【0060】
このような第2添加剤は、コロイドシリカゾル水溶液に添加されて20〜80℃の範囲の温度で攪拌してシリカの粒径を10nm以上に成長させることができる。
【0061】
次に、コロイドシリカゾル水溶液は、濾過、濃縮、添加により湿潤ゲルを製造することができる(S600)。
【0062】
具体的に、コロイドシリカゾル水溶液は、別の濾過膜を介してコロイドシリカゾル水溶液を濾過した後、これを濃縮してシリカ粒子の濃度を増加させることができる。
【0063】
又、コロイドシリカゾル水溶液を濾過させる濾過膜は、耐薬品性の材料からなり、シリカゾル水溶液の酸基による溶出を防止し、空隙のサイズが10〜15nmの範囲になり、当該空隙サイズ未満の水分のみを濾過させることができるように構成される。
【0064】
濾過および濃縮を行ったコロイドシリカゾル水溶液は、その後アンモニア水をさらに添加し、高周波、赤外線加熱、熱風加熱により湿潤ゲルを製造することができる。
【0065】
ここで、上述した加熱手段は、160℃未満に加熱することにより、ゲル化反応を促進することができ、コロイドシリカ粒子の急激な凝集による大きな空隙の生成を防止し、その後に製造する合成石英ガラスの気泡発生を抑制することができる。
【0066】
次に、湿潤ゲルは、蒸発および乾燥により湿潤ゲルに含有された水分を除去して乾燥シリカゲルを製造することができる(S700)。
【0067】
具体的に、湿潤ゲルから乾燥シリカゲルを製造できる方法には、蒸発および乾燥工程を介して乾燥シリカゲルを製造する方法、および、凍結および解凍工程を介して乾燥シリカゲルを製造する方法があり、水蒸気分圧の低い不活性ガス状態で赤外線ヒーターで加熱して湿潤ゲルに含有された水分を蒸発させた後、真空状態で乾燥させる工程が、凍結および解凍工程よりもエネルギーコストが低減する効果があるので、本発明では、蒸発および乾燥工程を介して湿潤ゲルに含有された水分を除去する。
【0068】
このような工程により、湿潤ゲルを乾燥シリカゲルとして製造することができ、その後、別の工程を介して合成石英粉を製造することができる(S800)。
【0069】
具体的に、乾燥シリカゲルを粉砕してシリカゲルの微粒子を生成し(S810)、生成されたシリカゲルの微粒子を酸水溶液および超純水で洗浄し(S820)、洗浄したシリカゲルの微粒子を乾燥(S830)および焼成(S840)の順に工程を行うことで合成石英粉を製造することができる。
【0070】
乾燥シリカゲルを粉砕するステップ(S810)は、粉砕手段を介して乾燥シリカゲルを粉砕し、粉砕手段は、ロールミル、ボールミル、ディスクミル、ジェットミルのうちいずれか1つを選択して構成することができる。
【0071】
粉砕手段は、乾燥シリカゲルに接触される部分がジルコニウム、合成石英の材料からなり、粉砕手段の酸化を防止し、耐久性を向上させる効果もある。
【0072】
このような粉砕手段によって粉砕された乾燥シリカゲルの粉砕物は、焼成時の体積の収縮を考慮して250〜500μmの範囲の粒径に粉砕する。
【0073】
上述した工程で粉砕された乾燥シリカゲルの粉砕物は、酸水溶液又は超純水のうちいずれか1つを選択して洗浄することができる(S820)。
【0074】
酸水溶液は、電子グレード以上の塩酸、硝酸、硫酸のうちいずれか1つであり、100℃以下の温度で加熱および攪拌を同時に行って粉砕物を洗浄する。
【0075】
ここで、洗浄を行う洗浄容器は、合成石英、フッ素樹脂、炭化ケイ素、窒化ケイ素のうちいずれか1つの材料からなり、洗浄容器からの不純物の溶出汚染を防止することができる。
【0076】
洗浄(S820)が完了した後、粉砕物は、洗浄の際に流し込んだ水分を除去するために乾燥する(S830)。
【0077】
粉砕物は、真空状態で不活性ガスを注入して高周波加熱などの加熱手段で粉砕物を300℃未満の温度範囲内で加熱して乾燥シリカゲルの粉砕物の細孔が閉孔されないようにする。
【0078】
又、粉砕物は、分級を行うことができる(S831)。
分級に用いられる粒度選別機の網の材料は、ナイロン、フッ素樹脂、ポリプロピレンを含むポリマープラスチックおよび前記プラスチック材料でコーティングされたステンレス(SUS)のうちいずれか1つを選択して乾燥シリカゲルの強い硬度(モース硬度5)によるスクラッチにより外部からの不純物が流れ込むことを防止することができる。
【0079】
ここで、分級が完了した乾燥シリカゲルの粒径は、焼成時の体積の収縮を考慮して250〜500μmの範囲内で製造することが望ましい。
【0080】
分級および乾燥ステップが完了した乾燥シリカゲルは、焼成して合成石英粉を製造することができる(S840)。
【0081】
具体的に、乾燥シリカゲルは、真空状態で乾燥空気および不活性ガスを注入して焼成を行い、シラノール基を除去するために露点が−40℃以下の不活性ガスを用いることが望ましい。
【0082】
又、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、水素、アルゴンのうちいずれか1つであり、この中で窒素は、窒化の可能性があるため、高温での使用時は注意が必要である。
【0083】
焼成温度は、100〜300℃、600〜1000℃、1200〜1300℃の区間に区画して焼成を行い、乾燥シリカゲルの多孔質を閉孔して合成石英ガラスの粉末を製造する。
図1
図2