(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の複数のナノ粒子を形成する前記ナノ粒子は、非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムをさらに含んでなり、および/または、前記第2の複数のナノ粒子を形成する前記ナノ粒子は、非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムをさらに含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光素子。
前記第1の複数のナノ粒子は、最大フォトルミネッセンス発光が400nmから800nm、好ましくは500nmから700nmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発光素子。
前記1または複数のマトリックス材料は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネートまたはポリイミドから選択されるポリマーマトリックス材料である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の発光素子。
前記第1の複数のナノ粒子が、第1の層を形成し、前記第2の複数のナノ粒子が、第2の層を形成する、または前記第1の複数のナノ粒子および前記第2の複数のナノ粒子は、マトリックス材料中に互いに分散する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の発光素子。
前記第1の複数のナノ粒子の最大フォトルミネッセンス発光の波長と前記第2の複数のナノ粒子の最大フォトルミネッセンス発光の波長とは、その差異が50nm以上である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の発光素子。
前記発光素子は、前記マトリックス材料に配置される、第3の結晶化合物を含んでなる第3の複数のナノ粒子をさらに含んでなるものであって、前記第3の結晶化合物は、前記第1の結晶化合物および前記第2の結晶化合物と異なるものであり、かつ、式[A][M][X]3であるペロブスカイト化合物であり、ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の発光素子。
前記発光素子は、前記マトリックス材料に配置される、第4の結晶化合物を含んでなる第4の複数のナノ粒子をさらに含んでなるものであって、前記第4の結晶化合物は、前記第1の結晶化合物、前記第2の結晶化合物および前記第3の結晶化合物と異なるものであり、かつ、式[A][M][X]3であるペロブスカイト化合物であり、ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである、請求項16に記載の発光素子。
発光材料の製造方法であって、該方法は、第1の結晶化合物を含んでなる第1の複数のナノ粒子と、第2の結晶化合物を含んでなる第2の複数のナノ粒子と、1または複数のマトリックス材料とを合わせることを含んでなり、
前記第1の結晶化合物および前記第2の結晶化合物は、式[A][M][X]3である異なるペロブスカイト化合物であって、ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである、発光材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書で用いる場合、用語「ペロブスカイト」は、CaTiO
3構造のような結晶構造をもつ材料、またはCaTiO
3構造のような構造を有する層である、材料の層を含んでなる材料を指す。CaTiO
3構造は、式ABX
3で表すことができ、ここでAおよびBは異なるサイズのカチオンであり、Xはアニオンである。単位胞において、Aカチオンは(0,0,0)にあり、Bカチオンは(1/2,1/2,1/2)にあり、Xアニオンは(1/2,1/2,0)にある。Aカチオンは通常、Bカチオンより大きい。A、BおよびXを変えると、イオンサイズが異なることが、ペロブスカイト材料の構造を、CaTiO
3でとっていた構造から対称性が低い歪んだ構造へと歪ませ得る、ということが当業者にはわかるであろう。材料がCaTiO
3構造のような構造を有する層を含んでなるものであれば、対称性はまた低くなることとなる。ペロブスカイト材料の層を含んでなる材料は、周知である。例えば、K
2NiF
4型構造をとる材料の構造が、ペロブスカイト材料の層を含んでなる。ペロブスカイト材料は、式[A][B][X]
3で表すことができ、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[B]は少なくとも1つのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンである、ということが当業者にはわかるであろう。ペロブスカイトが複数のAカチオンを含んでなる場合、異なるAカチオンは、規則正しくまたは不規則に、Aのサイトに分布し得る。ペロブスカイトが複数のBカチオンを含んでなる場合、異なるBカチオンは、規則正しくまたは不規則に、Bのサイトに分布し得る。ペロブスカイトが複数のXアニオンを含んでなる場合、異なるXアニオンは、規則正しくまたは不規則に、Xのサイトに分布し得る。複数のAカチオン、複数のBカチオンまたは複数のXカチオンを含んでなるペロブスカイトの対称性は、CaTiO
3の対称性よりも低くなることとなる。
【0018】
本明細書で用いる場合、用語「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」は、その式に、少なくとも1つの金属カチオンおよび少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含有するペロブスカイトを指す。本明細書で用いる場合、用語「有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト」は、その式に、少なくとも1つの有機カチオンを含有する金属ハロゲン化物ペロブスカイトを指す。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「ヘキサハロゲン化金属酸塩(hexahalometallate)」は、式[MX
6]
n−のアニオンを含んでなる化合物を指し、ここでMは金属原子であり、各Xは独立にハロゲン化物アニオンであり、nは1から4の整数である。
【0020】
用語「カルコゲナイド」は、16族元素のアニオン、例えばO
2−、S
2−、Se
2−またはTe
2−を指す。典型的には、カルコゲナイドはS
2−、Se
2−およびTe
2−とする。
【0021】
本明細書で用いる場合、用語「モノカチオン」は、1価の正電荷をもつ任意のカチオン、すなわち式A
+のカチオンを指し、ここでAは任意の部分、例えば金属原子または有機基の部分となる。本明細書で用いる場合、用語「ジカチオン」は、2価の正電荷をもつ任意のカチオン、すなわち式A
2+のカチオンを指し、ここでAは任意の部分、例えば金属原子または有機基の部分となる。本明細書で用いる場合、用語「テトラカチオン」は、4価の正電荷をもつ任意のカチオン、すなわち式A
4+のカチオンを指し、ここでAは任意の部分、例えば金属原子または有機基の部分となる。
【0022】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル基」は、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基を指す。アルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜4のアルキル基であり得る。炭素数1〜10のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基またはデシル基である。炭素数1〜6のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基である。炭素数1〜4のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基またはn−ブチル基である。本明細書のいずれの箇所においても、予め炭素数を特定することなく用語「アルキル基」を用いる場合には、炭素数は1から6である(またこれは本明細書で参照するその他の有機基にも適用する)。典型的に、アルキル基は非置換とする。
【0023】
本明細書で用いる場合、用語「アリール基」は、環内に6から14の炭素原子、典型的には6から10の炭素原子を含有する、単環式、二環式または多環式の芳香環を指す。例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、インダニル基、アントラセニル基およびピレニル基が挙げられる。
【0024】
置換された有機基の文脈において本明細書で用いる場合、用語「置換」は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基(本明細書で規定されたもの)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数1〜10のジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、炭素数1〜10のアリールアルキルアミノ基、アミド基、アシルアミド基、ヒドロキシ基、オキソ基、ハロゲノ基、カルボキシ基、エステル基、アシル基、アシルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜10のハロアルキル基、スルホン酸基、チオール基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、リン酸、リン酸エステル基、ホスホン酸およびホスホン酸エステル基から選択される1つまたは複数の置換基をもつ有機基を指す。置換アルキル基には、例えばハロアルキル基、過ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基およびアルカリル基が含まれる。置換されると、各基は、1、2または3の置換基をもつことができる。例えば、置換された基は、1または2の置換基を有し得る。
発光素子
【0025】
この発明は、光源および発光材料を備えた発光素子を提供するものであって、該発光材料は1または複数のマトリックス材料と、前記1または複数のマトリックス材料に配置される、第1の結晶化合物を含んでなる第1の複数のナノ粒子と、第2の結晶化合物を含んでなる第2の複数のナノ粒子とを含んでなり、上記第1の結晶化合物および上記第2の結晶化合物は、式[A]
a[M]
b[X]
cである異なる化合物であり、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンであり、aは1から6の整数であり、bは1から6の整数であり、cは1から18の整数である。
【0026】
[X]は典型的に、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンまたはS
2−、Se
2−およびTe
2−から選択されるカルコゲナイドイオンである。好ましくは、[X]は典型的に、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0027】
発光素子は、光を発する電子素子である。発光素子には、例えば発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル、白熱電球、ハロゲン電球、希ガスライト(例えば、ネオン、アルゴンまたはクリプトンライト)、陰極線管、カーボンアーク灯およびレーザが含まれる。発光素子は典型的に、発光ダイオードである。
【0028】
光源は、300nmから800nmのピーク発光波長を有し得る。上記で述べたように、この発明の発光材料は、青色光から白色光を生成するのに有用である。このため、多くの場合、光源は350nmから600nm、または400nmから500nmのピーク発光波長を有する。例えば、光源は、450nmから500nmのピーク発光波長を有し得る。光源のピーク発光波長は、当業者であれば容易に得ることができる。
【0029】
光源は、発光素子から放射されるものである光を発する材料または物体である。典型的に、光源は発光ダイオードである。このため、発光素子は、光源として前記発光ダイオードを含んでなる発光ダイオードと、発光材料とを備え得る。光源は、例えば無機LEDまたは有機LEDであり得る。LEDは、半導体として、窒化ガリウム(III)(GaN)、リン化ガリウム(III)(GaP)、リン化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInP)、リン化アルミニウムガリウム(AlGaP)、窒化インジウムガリウム(InGaN)またはケイ素(Si)を含んでなり得る。通常用いる青色LEDは、窒化ガリウム(GaN)である。典型的に、光源は、窒化ガリウムを含んでなる発光ダイオードである。
【0030】
発光材料は、光子を吸収して光を発する材料、すなわち燐光材料または蛍光材料である。この発明の素子に用いる発光材料は、蛍光材料、燐光材料またはその両方であり得る。発光材料は、層またはコーティングの形態をとり得る。発光材料は、光源が発した光を吸収し、該光を異なる波長で再発光することによって、蛍光体として機能する。このため、発光材料は典型的に、光源と、発光素子の外側表面との間に配置される。例えば、発光素子が発光ダイオードであれば、発光材料は典型的に、発光ダイオードの透明な筐体上のコーティングとして存在する。
【0031】
発光材料は、100nmから4mmの厚さであって、例えば1μmから1000μm、または50μmから500μmの厚さを有する層として存在し得る。いくつかの場合、この層は、例えば自立型の層が構築されようとしている場合、1mmから4mmの厚さを有し得る。発光材料が、各層が異なるナノ粒子をそれぞれ含んでなる2以上の層を含んでなる場合、各層の厚さは、100nmから4mmであって、例えば1μmから1000μm、または50μmから500μmであり得る。
【0032】
発光材料中の第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、任意の好適な発光結晶化合物であり得る。結晶化合物は、拡張三次元結晶構造を有する化合物である。結晶化合物は典型的に、結晶またはクリスタリット(すなわち、1μm以下の粒径を有する複数の結晶)の形態をとる。本明細書で規定する場合、ナノ粒子とは、典型的に、1nmから1000nmであって、例えば1nmから500nm、または5nmから100nmの粒径を有する粒子である。粒径は、当該粒子と同じ体積を有する球状粒子の直径とする。
【0033】
第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は典型的に、式[A]
a[M]
b[X]
cである化合物であって、ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンまたはジカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンであり、aは1から3の整数であり、bは1から3の整数であり、cは1から8の整数である。aは、多くの場合、1または2である。bは、多くの場合、1または2である。cは、多くの場合、3から6である。
【0034】
例えば、[A]が1つのカチオン(A)であり、[M]が2つのカチオン(M
1およびM
2)であり、[X]が1つのアニオン(X)であれば、結晶材料は、式A
a(M
1,M
2)
bX
cの化合物を含んでなり得る。例えば、[A]が1つのカチオン(A)であり、[M]が1つのカチオン(M)であり、[X]が2つのアニオン(X
1およびX
2)であれば、結晶材料は、式A
aM
b(X
1,X
2)
cの化合物を含んでなり得る。[X]は、1つ、2つまたはそれ以上のXイオンを表すことができる。[A]、[M]または[X]が複数のイオンであれば、それらイオンは任意の割合で存在し得る。例えば、A
a(M
1,M
2)
bX
cは、式A
aM
1byM
2b(1−y)X
cの化合物を全て含むものであって、ここでyは0から1の間、例えば0.05から0.95である。こうした材料を、混合イオン材料と呼び得る。
【0035】
第1の結晶化合物は、例えば式
[A]
a[M]
b[X]
c
を有し得、
ここで、
[A]は、本明細書に記載したような1つまたは複数のカチオンであって、例えば1つまたは複数の有機モノカチオンであり、
[M]は、Pd
4+、W
4+、Re
4+、Os
4+、Ir
4+、Pt
4+、Sn
4+、Pb
4+、Ge
4+、Te
4+、Bi
3+、Sb
3+、Sn
2+、Pb
2+、Cu
2+、Ge
2+およびNi
2+から選択される金属またはメタロイドのカチオンである、1つまたは複数の第1のカチオンであり、
[X]は、Cl
−、Br
−、I
−、S
2−、Se
2−およびTe
2−から選択される1つまたは複数の第2のアニオンであり、
aは1から3の整数であり、
bは1から3の整数であり、
cは1から8の整数である。
【0036】
典型的には、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、少なくとも1つのモノカチオンと、少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンと、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンとを含んでなるペロブスカイト化合物である。第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、多くの場合、金属ハロゲン化物ペロブスカイトであり、好ましくは有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。例えば、発光材料は、(第1の)金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含んでなる第1の複数のナノ粒子と、(第2の)金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含んでなる第2の複数のナノ粒子とを含んでなり得る。好ましくは、第1の結晶化合物は、以下の式(I)であるペロブスカイト化合物であって、
[A][M][X]
3 (I)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。第2の結晶化合物もまた、好ましくは、以下の式(I)である異なるペロブスカイト化合物であって、
[A][M][X]
3 (I)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、多くの場合、以下の式(II)であるペロブスカイト化合物であって、
[A]M[X]
3 (II)
ここで[A]は2つ以上のモノカチオンであり、Mは単一の金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0037】
多くの場合、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、以下の式(IIa)である層状のペロブスカイト化合物であって、
[A]
2[M][X]
4 (IIa)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。例えば、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、以下の式(IIb)である層状のペロブスカイト化合物であり得、
[A]
2M[X]
4 (IIb)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、Mは単一の金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。例えば、第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、式(IIb)である異なる層状のペロブスカイト化合物であり得る。
【0038】
典型的には、各モノカチオンは、Rb
+、Cs
+、(NR
1R
2R
3R
4)
+、(R
1R
2N=CR
3R
4)
+、(R
1R
2N−C(R
5)=NR
3R
4)
+および(R
1R
2N−C(NR
5R
6)=NR
3R
4)
+から独立に選択されるものであって、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、Hか、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基か、または置換もしくは非置換のアリール基である。典型的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、Hか、非置換の炭素数1〜10のアルキル基か、またはフェニル基である。
【0039】
このため、[A]は無機カチオンから選択される1つもしくは複数のカチオン(例えばRb
+およびCs
+)および/または無機カチオンから選択される1つもしくは複数のカチオン(例えば(NR
1R
2R
3R
4)
+、(R
1R
2N=CR
3R
4)
+、(R
1R
2N−C(R
5)=NR
3R
4)
+および(R
1R
2N−C(NR
5R
6)=NR
3R
4)
+)であり得る。[A]は、多くの場合、(CH
3NH
3)
+、(CH
3(CH
2)
7NH
3)
+、(H
2N−CH=NH
2)
+および(H
2N−C(NH
2)=NH
2)
+から選択される1つまたは複数の有機カチオンである。
【0040】
例えば、各モノカチオンは、式(R
1NH
3)
+のカチオンから独立に選択されるものであり得、ここでR
1は置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基またはフェニルエチル基である。好ましくは、各モノカチオンは、式(R
1NH
3)
+のカチオンから独立に選択されるものであり、R
1は非置換の炭素数1〜10のアルキル基である。より好ましくは、各モノカチオンは、式(R
1NH
3)
+のカチオンから独立に選択されるものであり、R
1は非置換のメチル基またはエチル基である。層状のペロブスカイトにおいては、各モノカチオンは、多くの場合、式(R
1NH
3)
+のカチオンから独立に選択されるものであり、R
1は非置換の炭素数4〜20のアルキル基、例えば非置換の炭素数10〜18のアルキル基である。
【0041】
第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、例えば以下の式(II)である混合カチオンのペロブスカイト化合物であり得、
[A]M[X]
3 (II)
ここで[A]は式(R
1NH
3)
+の2つ以上の有機カチオンであって、R
1は置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、Mは単一の金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。R
1はメチル基、エチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基から選択され得る。
【0042】
あるいは、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、以下の式(II)である無機ペロブスカイト化合物であり得、
[A]M[X]
3 (II)
ここで[A]は1つまたは複数の無機カチオン(例えばCs
+またはRb
+)であり、Mは単一の金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0043】
典型的には、各金属またはメタロイドのジカチオンは、Ca
2+、Sr
2+、Cd
2+、Cu
2+、Ni
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+、Pd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Yb
2+およびEu
2+から独立に選択される。好ましくは、各金属またはメタロイドのジカチオンは、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+およびCu
2+から独立に選択される。より好ましくは、金属またはメタロイドのカチオンは、Pb
2+である。
【0044】
典型的には、各ハロゲン化物アニオンは、F
−、Cl
−、Br
−およびI
−から独立に選択される。好ましくは、各ハロゲン化物アニオンは、Cl
−、Br
−およびI
−から独立に選択され、例えばCl
−またはBr
−である。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態では、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、式CH
3NH
3MX
3、CH
3NH
3MX
xX’
3−x、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yMX
3および(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yMX
xX’
3−xであるペロブスカイト化合物から選択されるものであり、
Mは、Cu
2+、Pb
2+、Ge
2+またはSn
2+であり、
Xは、F
−、Cl
−、Br
−またはI
−であるハロゲン化物アニオンであり、
X’はXとは異なり、F
−、Cl
−、Br
−またはI
−であるハロゲン化物アニオンであり、
xは0から3であり、
yは0から1である。
【0046】
yは例えば0.2から0.8である。xは典型的には、0、3、または0.5から2.5である。
例えば、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、式(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yMX
3または(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yMX
xX’
3−xであるペロブスカイト化合物であり得、
Mは、Cu
2+、Pb
2+、Ge
2+またはSn
2+であり、
Xは、F
−、Cl
−、Br
−またはI
−であるハロゲン化物アニオンであり、
X’はXとは異なり、F
−、Cl
−、Br
−またはI
−であるハロゲン化物アニオンであり、
xは0から3であり、
yは0.5から0.7であり、好ましくは0.55から0.65である。
【0047】
結晶化合物においては、典型的には、各ハロゲン化物アニオンは独立に、Br
−、I
−またはCl
−である。
【0048】
例えば、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、CH
3NH
3PbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CH
3NH
3PbCl
3、CH
3NH
3PbF
3、CH
3NH
3PbBr
xI
3−x、CH
3NH
3PbBr
xCl
3−x、CH
3NH
3PbI
xBr
3−x、CH
3NH
3PbI
xCl
3−x、CH
3NH
3PbCl
xBr
3−x、CH
3NH
3PbI
3−xCl
x、CH
3NH
3SnI
3、CH
3NH
3SnBr
3、CH
3NH
3SnCl
3、CH
3NH
3SnF
3、CH
3NH
3SnBrI
2、CH
3NH
3SnBr
xI
3−x、CH
3NH
3SnBr
xCl
3−x、CH
3NH
3SnF
3−xBr
x、CH
3NH
3SnI
xBr
3−x、CH
3NH
3SnI
xCl
3−x、CH
3NH
3SnF
3−xI
x、CH
3NH
3SnCl
xBr
3−x、CH
3NH
3SnI
3−xCl
xおよびCH
3NH
3SnF
3−xCl
x、CH
3NH
3CuI
3、CH
3NH
3CuBr
3、CH
3NH
3CuCl
3、CH
3NH
3CuF
3、CH
3NH
3CuBrI
2、CH
3NH
3CuBr
xI
3−x、CH
3NH
3CuBr
xCl
3−x、CH
3NH
3CuF
3−xBr
x、CH
3NH
3CuI
xBr
3−x、CH
3NH
3CuI
xCl
3−x、CH
3NH
3CuF
3−xI
x、CH
3NH
3CuCl
xBr
3−x、CH
3NH
3CuI
3−xCl
xおよびCH
3NH
3CuF
3−xCl
xから選択されるペロブスカイト化合物であり得、xは0から3である。xは、0.05から2.95であってもよい。例えば、xは、0.1から2.9であり得、または0.5から2.5であり得る。いくつかの場合、xは、0.75から2.25であり、または1から2である。第1の結晶化合物は例えば、CH
3NH
3PbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CH
3NH
3PbCl
3、CH
3NH
3PbF
3、CH
3NH
3PbBrI
2、CH
3NH
3PbBrCl
2、CH
3NH
3PbIBr
2、CH
3NH
3PbICl
2、CH
3NH
3PbClBr
2、CH
3NH
3PbI
2Cl、CH
3NH
3SnI
3、CH
3NH
3SnBr
3、CH
3NH
3SnCl
3、CH
3NH
3SnF
3、CH
3NH
3SnBrI
2、CH
3NH
3SnBrCl
2、CH
3NH
3SnF
2Br、CH
3NH
3SnIBr
2、CH
3NH
3SnICl
2、CH
3NH
3SnF
2I、CH
3NH
3SnClBr
2、CH
3NH
3SnI
2ClおよびCH
3NH
3SnF
2Clから選択されるペロブスカイト化合物であり得る。
【0049】
例えば、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbI
3、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbBr
3、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbCl
3、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbF
3、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbBr
xI
3−x、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbBr
xCl
3−x、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbI
xBr
3−x、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbI
xCl
3−x、(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbCl
xBr
3−xおよび(CH
3NH
3)
1−y(C
8H
17NH
3)
yPbI
3−xCl
xから選択されるペロブスカイト化合物であり得、yは0.01から0.9であって、例えば0.3から0.7である。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、ヘキサハロゲン化金属酸塩(hexahalometallate)化合物である。すなわち、第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、例えば少なくとも1つのモノカチオンと、少なくとも1つの金属またはメタロイドのテトラカチオンと、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンとを含んでなるヘキサハロゲン化金属酸塩化合物であり得る。
【0051】
第1の結晶化合物および/または第2の結晶化合物は、例えば以下の式(III)であるヘキサハロゲン化金属酸塩化合物であり得、
[A]
2[M][X]
6 (III)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのテトラカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0052】
典型的には、各モノカチオンは、Rb
+、Cs
+、(NR
1R
2R
3R
4)
+、(R
1R
2N=CR
3R
4)
+、(R
1R
2N−C(R
5)=NR
3R
4)
+および(R
1R
2N−C(NR
5R
6)=NR
3R
4)
+から独立に選択されるものであって、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、Hか、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基か、または置換もしくは非置換のアリール基である。典型的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、Hか、非置換の炭素数1〜10のアルキル基か、またはフェニル基である。好ましくは、各モノカチオンは、式(NR
14)
+および(R
1NH
3)
+のカチオンから独立に選択されるものであって、R
1は非置換の炭素数1〜10のアルキル基である。例えばヘキサハロゲン化金属酸塩では、[A]は、N(CH
3)
4+またはNH
3(CH
3)
+である単一のモノカチオンであり得る。
【0053】
典型的には、各金属またはメタロイドのテトラカチオンは、Ti
4+、V
4+、Mn
4+、Fe
4+、Co
4+、Zr
4+、Nb
4+、Mo
4+、Ru
4+、Rh
4+、Pd
4+、Hf
4+、Ta
4+、W
4+、Re
4+、Os
4+、Ir
4+、Pt
4+、Sn
4+、Pb
4+、Po
4+、Si
4+、Ge
4+およびTe
4+から選択される。より典型的には、各金属またはメタロイドのテトラカチオンは、Sn
4+、Pb
4+、Ge
4+およびTe
4+から独立に選択される。好ましくは、金属またはメタロイドのテトラカチオンは、Sn
4+またはPb
4+である。
【0054】
ヘキサハロゲン化金属酸塩では、各ハロゲン化物アニオンは、典型的に、Cl
−、Br
−およびI
−から独立に選択される。
【0055】
ナノ粒子の特性は、長鎖のアルキルアミンまたはハロゲン化アルキルアンモニウムを加えることによって向上させることが可能であるということが判明した。そのため、ナノ粒子は、炭素数4〜16のアルキルアミンまたは炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムをさらに含んでなり得る。いくつかの場合では、第1の複数のナノ粒子および/または第2の複数のナノ粒子を形成するナノ粒子は、非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムをさらに含んでなる。非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムは、多くの場合、ハロゲン化オクチルアンモニウムであって、例えばヨウ化オクチルアンモニウム、臭化オクチルアンモニウムまたは塩化オクチルアンモニウムである。炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムの量は、典型的に、結晶化合物中で、少なくとも1つのカチオン(例えば(CH
3NH
3)
+)に対して0.1から1.0モル%であって、例えば0.4から0.8モル%である。好ましくは、炭素数4〜16のアルキルアンモニウムの量は、結晶化合物中で、少なくとも1つのカチオンに対して10から90モル%であって、例えば30から90モル%、40から80モル%、または50から70モル%であり得る。長鎖のアルキルアミンまたはハロゲン化アルキルアンモニウムは、ナノ粒子中に分散し得、または好ましくはナノ粒子周囲で殻を形成し得る。
【0056】
第2の結晶化合物は、第1の結晶化合物に関して本明細書で規定したとおりであり得る。
したがって、第2の結晶化合物は、多くの場合、以下の式(I)であるペロブスカイト化合物であって、
[A][M][X]
3 (I)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0057】
第2の結晶化合物は、多くの場合、以下の式(II)であるペロブスカイト化合物であって、
[A]M[X]
3 (II)
ここで[A]は2つ以上のモノカチオンであり、Mは単一の金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0058】
多くの場合、第2の結晶化合物は、以下の式(IIa)である層状のペロブスカイト化合物であって、
[A]
2[M][X]
4 (IIa)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。例えば、第2の結晶化合物は、以下の式(IIb)である層状のペロブスカイト化合物であり得、
[A]
2M[X]
4 (IIb)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、Mは単一の金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0059】
例えば、第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、多くの場合、以下の式(II)である異なる混合カチオンのペロブスカイト化合物であって、
[A]M[X]
3 (II)
ここで[A]は式(R
1NH
3)
+の2つ以上の有機カチオンであって、R
1は置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、Mは単一の金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。R
1はメチル基、エチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基から選択され得る。
【0060】
好ましくは、第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、以下の式(I)である異なるペロブスカイト化合物であって、
[A][M][X]
3 (I)
ここで[A]は少なくとも1つの有機モノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンであり、また第1の結晶化合物および第2の結晶化合物のナノ粒子は、炭素数4〜16のアルキルアミンまたは炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムをさらに含んでなる。炭素数4〜16のアルキルアミンまたは炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムは典型的に、配位子として機能し、ナノ粒子に対して被覆を形成する。
【0061】
ナノ粒子は典型的に、1nmから500nmの粒径を有する。好ましくは、ナノ粒子は、2nmから150nmの粒径であって、より好ましくは4nmから50nmの粒径を有する。例えば、第1の複数のナノ粒子および第2の複数のナノ粒子は、5nmから30nmの粒径を有し得る。粒径は周知の用語であり、(i)球状粒子に関しては、その球状粒子の直径を指し、(ii)非球状粒子に関しては、その非球状粒子と同じ直径を有する球状粒子の直径を指す。
【0062】
第1の複数のナノ粒子および第2の複数のナノ粒子は、いくつかの異なる形状をとり得る。多くの場合、一部のナノ粒子(例えば全ナノ粒子のうち50重量%を超える)は、細長形状を有し、例えば扁平長方形または棒状のいずれかを表す形状を有する。すなわち、該一部の粒子は、その最小の幅よりも50%大きいものである最大長さを有し得る。例えば、第1の複数のナノ粒子および/または第2の複数のナノ粒子では、ナノ粒子は、長さ200nmから800nm、幅40nmから200nmを有し得る。例えば、第1の複数のナノ粒子および第2の複数のナノ粒子は、球形度が0.8以下または0.6以下であり得る。
【0063】
典型的に、第1の複数のナノ粒子は、最大フォトルミネッセンス発光が400nmから800nm、好ましくは500nmから700nmである。第1の複数のナノ粒子は、例えば最大フォトルミネッセンス発光が500nmから575nmであり得、第2の複数のナノ粒子は、最大フォトルミネッセンス発光が575nmから650nmであり得る。
【0064】
第1の(および第2の)複数のナノ粒子は、1または複数のマトリックス材料上に配置される。マトリックス材料は、複数のナノ粒子を懸濁させることができるような任意の好適な材料である。マトリックス材料は典型的に、固体である。マトリックス材料は典型的に、非反応性であり、ナノ粒子と、または発光素子のその他の部分(例えば金属成分)と化学反応しない。マトリックス材料は典型的に、大部分の可視スペクトルの全域にわたる光に対して高度に透明である。
【0065】
マトリックス材料は、無機材料または有機材料であり得る。マトリックス材料は通常、150℃まで、または100℃までの温度で安定である。典型的に、マトリックス材料は、ポリマーマトリックス材料を含んでなる。ポリマーマトリックス材料は、高分子を含んでなるマトリックス材料である。ポリマーマトリックス材料は典型的に、ポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリヒドロキシ酪酸またはポリエチレンアジペート)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド(例えばポリアミド6またはポリアミド66)またはエポキシ樹脂である高分子を含んでなる。好ましくは、ポリマーマトリックス材料は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネートおよびポリイミドから選択した高分子を含んでなる。
【0066】
マトリックス材料中の第1の(第2の)複数のナノ粒子の濃度は典型的に、マトリックス材料と第1の(第2の)複数のナノ粒子とを合計した重量に対して、0.1重量%から80重量%である。該濃度は、例えば1重量%から40重量%、または5重量%から30重量%であり得る。
【0067】
上述したように、結晶材料のナノ粒子の使用により、特に、複数の異なるタイプの結晶化合物を用いたときに、ブロードな発光スペクトルを有する発光材料を製造できる。例えば発光素子においては、発光材料は、本明細書で規定した2から10の異なる結晶化合物によるナノ粒子であって、例えば3、4または5の異なる結晶化合物のナノ粒子を含んでなり得る。
【0068】
1または複数のマトリックス材料は、同一かまたは異なるものであり得る。典型的に、1または複数のマトリックス材料は、1または複数のポリマーマトリックス材料を含んでなるものであって、任意に、上記1または複数のポリマーマトリックス材料は、上記で規定したものか、または、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドもしくはエポキシ樹脂から選択される。
【0069】
2つ以上の複数のナノ粒子を含有する発光材料は、2つ以上の複数のナノ粒子が相互に混合するように本質的に均一であるものか、または1つまたは複数のタイプのナノ粒子をその上に配置したマトリックス材料の層を含んでなる積層構造のいずれかとすることができる。
【0070】
典型的に、発光材料は、(a)第1の複数のナノ粒子を60重量%より多く含んでなる第1の層と、(b)第2の複数のナノ粒子を60重量%より多く含んでなる第2の層とを含んでなる。したがって、発光材料は、第1の層を画成する領域であって、発光材料中に存在する第1の複数のナノ粒子の全量のうちの60重量%を含んでなる領域と、第2の層を画成する領域であって、発光材料中に存在する第2の複数のナノ粒子の全量のうちの60重量%を含んでなる領域とを含んでなり得る。いくつかの場合では、発光材料は、(a)第1の複数のナノ粒子を80重量%より多く含んでなる第1の層と、(b)第2の複数のナノ粒子を80重量%より多く含んでなる第2の層とを含んでなる。
【0071】
そのため、第1の複数のナノ粒子の全質量(すなわち100重量%)のうち、60重量%の第1の複数のナノ粒子が、第1の層内に存在し得る。このことは、第1の層が60重量%以上のナノ粒子と40重量%以下のマトリックス材料とを含んでなるということを意味しているのではなく、むしろ、全体として発光材料中の全質量の第1の複数のナノ粒子のうち、少なくとも60重量%の第1のナノ粒子が第1の層内に存在している(また結果的に第2の層内には多くても、全質量の第1の複数のナノ粒子のうち40%の第1のナノ粒子が存在する)ということである。
【0072】
いくつかの実施形態では、発光材料は複数の層で形成される。したがって、第1の複数のナノ粒子が第1の層を形成し得、かつ、第2の複数のナノ粒子が第2の層を形成し得る。例えば、発光材料は、(a)マトリックス材料と、該マトリックス材料に配置される第1の複数のナノ粒子とを含んでなる第1の層および(b)マトリックス材料と、該マトリックス材料に配置される第2の複数のナノ粒子とを含んでなる第2の層を含んでなり得る。多くの場合、第1の層が、5重量%未満または2重量%未満の第2の複数のナノ粒子を含んでなり、第2の層が、5重量%未満または2重量%未満の第1の複数のナノ粒子を含んでなる。
【0073】
発光材料が第1の層および第2の層を含んでなる場合、第1の層および第2の層は、直接接触してもよく、またはそれらの間に、例えばマトリックス材料から本質的になる層や、接着剤を含んでなる層である補助層があってもよい。多くの場合、第1の層および第2の層は、直接接触するように形成する。
【0074】
あるいは、第1の複数のナノ粒子および第2の複数のナノ粒子は、マトリックス材料中で、互いに分散している。したがって、発光材料は、第1の複数のナノ粒子および第2の複数のナノ粒子を、1または複数のマトリックス材料に混合することによって形成することができる。
【0075】
第2の結晶化合物は、本明細書で第1の結晶化合物に関して規定したとおりであり得る。上記第1の結晶化合物と上記第2の結晶化合物とは、異なる結晶化合物である。
【0076】
好ましくは、上記第1の結晶化合物および上記第2の結晶化合物は、以下の式(I)であるそれぞれ異なるペロブスカイト化合物であって、
[A][M][X]
3 (I)
ここで[A]は少なくとも1つのモノカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのジカチオンであり、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0077】
[A]、[M]および[X]は、上記で規定したとおりであり得る。多くの場合、上記第1の結晶化合物および上記第2の結晶化合物は、式(I)であるそれぞれ異なる有機無機金属ハロゲン化物ペロブスカイト化合物である。
【0078】
例えば、第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、CH
3NH
3PbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CH
3NH
3PbCl
3、CH
3NH
3PbF
3、CH
3NH
3PbBr
xI
3−x、CH
3NH
3PbBr
xCl
3−x、CH
3NH
3PbI
xBr
3−x、CH
3NH
3PbI
xCl
3−x、CH
3NH
3PbCl
xBr
3−x、CH
3NH
3PbI
3−xCl
x、CH
3NH
3SnI
3、CH
3NH
3SnBr
3、CH
3NH
3SnCl
3、CH
3NH
3SnF
3、CH
3NH
3SnBrI
2、CH
3NH
3SnBr
xI
3−x、CH
3NH
3SnBr
xCl
3−x、CH
3NH
3SnF
3−xBr
x、CH
3NH
3SnI
xBr
3−x、CH
3NH
3SnI
xCl
3−x、CH
3NH
3SnF
3−xI
x、CH
3NH
3SnCl
xBr
3−x、CH
3NH
3SnI
3−xCl
xおよびCH
3NH
3SnF
3−xCl
x、CH
3NH
3CuI
3、CH
3NH
3CuBr
3、CH
3NH
3CuCl
3、CH
3NH
3CuF
3、CH
3NH
3CuBrI
2、CH
3NH
3CuBr
xI
3−x、CH
3NH
3CuBr
xCl
3−x、CH
3NH
3CuF
3−xBr
x、CH
3NH
3CuI
xBr
3−x、CH
3NH
3CuI
xCl
3−x、CH
3NH
3CuF
3−xI
x、CH
3NH
3CuCl
xBr
3−x、CH
3NH
3CuI
3−xCl
xおよびCH
3NH
3CuF
3−xCl
xから選択される異なるペロブスカイト化合物であり得、xは0から3である。xは、0.05から2.95であり得る。例えば、xは、0.1から2.9、または0.5から2.5であり得る。いくつかの場合、xは、0.75から2.25、または1から2である。
【0079】
多くの場合、第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、CH
3NH
3PbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CH
3NH
3PbCl
3、CH
3NH
3PbF
3、CH
3NH
3PbBrI
2、CH
3NH
3PbBrCl
2、CH
3NH
3PbIBr
2、CH
3NH
3PbICl
2、CH
3NH
3PbClBr
2、CH
3NH
3PbI
2Cl、CH
3NH
3SnI
3、CH
3NH
3SnBr
3、CH
3NH
3SnCl
3、CH
3NH
3SnF
3、CH
3NH
3SnBrI
2、CH
3NH
3SnBrCl
2、CH
3NH
3SnF
2Br、CH
3NH
3SnIBr
2、CH
3NH
3SnICl
2、CH
3NH
3SnF
2I、CH
3NH
3SnClBr
2、CH
3NH
3SnI
2ClおよびCH
3NH
3SnF
2Clから選択される異なるペロブスカイト化合物である。第1の複数のナノ粒子および/または第2の複数のナノ粒子は、非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムをさらに含んでなり得る。非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムは、多くの場合、ハロゲン化オクチルアンモニウムであって、例えばヨウ化オクチルアンモニウム、臭化オクチルアンモニウムまたは塩化オクチルアンモニウムである。ハロゲン化アルキルアンモニウムは、各ナノ粒子周囲の殻を形成する配位子として機能し得る。
【0080】
第1の結晶化合物はCH
3NH
3PbBr
3であり得、第2の結晶化合物はCH
3NH
3PbBrI
2またはCH
3NH
3PbI
3であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、式Cs[M][X]
3またはRb[M][X]
3である異なるペロブスカイト化合物であって、ここで[M]は、本明細書で規定した少なくとも1つの金属またメタロイドのジカチオンであり、[X]は、本明細書で規定した少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。例えば第1の結晶化合物および第2の結晶化合物は、式CsPbX
3またはRbPbX
3である異なるペロブスカイト化合物である。この場合、ナノ粒子は典型的に、さらなる有機カチオン、例えばホルムアミジニウム、グアニジウム、非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムまたはフェニルエチルアンモニウムをさらに含んでなる。非置換の炭素数4〜16のハロゲン化アルキルアンモニウムは、多くの場合、ハロゲン化オクチルアンモニウムであって、例えばヨウ化オクチルアンモニウム、臭化オクチルアンモニウムまたは塩化オクチルアンモニウムである。ハロゲン化アルキルアンモニウムは、各ナノ粒子周囲の殻を形成する配位子として機能し得る。
【0082】
ブロードな発光スペクトルを得るためには、典型的に、2つ以上の結晶化合物が、異なる最大フォトルミネッセンス発光波長を有する必要がある。多くの場合、第1の複数のナノ粒子の最大フォトルミネッセンス発光の波長と第2の複数のナノ粒子の最大フォトルミネッセンス発光の波長とは、その差異が50nm以上である。この差異は、100nm以上または150nm以上であってもよい。
【0083】
複数のナノ粒子の最大フォトルミネッセンス発光波長は、当業者であれば、例えばフォトルミネッセンス発光分光法を行うことによって容易に測定することができる。CH
3NH
3PbBr
3のナノ粒子は、最大発光が約520nmであり、CH
3NH
3PbBrI
2のナノ粒子は、最大発光が約678nmであり、CH
3NH
3PbI
3のナノ粒子は、最大発光が約775nmである。
【0084】
例えば、第1の複数のナノ粒子は、最大フォトルミネッセンス発光波長が500nmから600nmであってよく、また第2の複数のナノ粒子は、最大フォトルミネッセンス発光波長が600nmから800nmであって、例えば600nmから650nmであってよい。
【0085】
典型的に、第1の複数のナノ粒子および第2の複数のナノ粒子は、平均粒径が2nmから100nmであって、例えば5nmから50nmである。第1の複数のナノ粒子の平均粒径、また存在する場合には第2の複数のナノ粒子の平均粒径は、10nmから30nmであり得る。ナノ粒子の粒径は、ナノ粒子と同じ体積を有する球状粒子の直径とする。複数のナノ粒子の平均粒径は、典型的に、粒子の質量平均径であり、例えばレーザ回折により測定することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、発光材料は、マトリックス材料に配置される、第3の結晶化合物を含んでなる第3の複数のナノ粒子をさらに含んでなるものであって、第3の結晶化合物は、式[A]
a[M]
b[X]
cである化合物であり、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンであり、aは1から6の整数であり、bは1から6の整数であり、cは1から18の整数である。
【0087】
さらなる実施形態では、発光材料は、マトリックス材料に配置される、第4の結晶化合物を含んでなる第4の複数のナノ粒子をさらに含んでなるものであって、第4の結晶化合物は、式[A]
a[M]
b[X]
cである化合物であり、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンであり、aは1から6の整数であり、bは1から6の整数であり、cは1から18の整数である。
【0088】
第3の結晶化合物および/または第4の結晶化合物は、第1の結晶化合物に関して本明細書で規定したとおりであり得る。第1、第2、第3の結晶化合物および任意に第4の結晶化合物は、全て異なる結晶化合物である。
【0089】
例えば、第1、第2、第3の結晶化合物および任意に第4の結晶化合物は、CH
3NH
3PbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、CH
3NH
3PbCl
3、CH
3NH
3PbF
3、CH
3NH
3PbBrI
2、CH
3NH
3PbBrCl
2、CH
3NH
3PbIBr
2、CH
3NH
3PbICl
2、CH
3NH
3PbClBr
2、CH
3NH
3PbI
2Cl、CH
3NH
3SnI
3、CH
3NH
3SnBr
3、CH
3NH
3SnCl
3、CH
3NH
3SnF
3、CH
3NH
3SnBrI
2、CH
3NH
3SnBrCl
2、CH
3NH
3SnF
2Br、CH
3NH
3SnIBr
2、CH
3NH
3SnICl
2、CH
3NH
3SnF
2I、CH
3NH
3SnClBr
2、CH
3NH
3SnI
2ClおよびCH
3NH
3SnF
2Clから選択される異なるペロブスカイト化合物であり得る。
【0090】
例えば、第1の結晶化合物は、CH
3NH
3PbBr
3であり得、第2の結晶化合物は、CH
3NH
3PbBrI
2であり得、第3の結晶化合物は、CH
3NH
3PbI
3であり得る。
【0091】
第3の複数のナノ粒子、また存在する場合には第4の複数のナノ粒子は、発光材料内に追加層として存在してもよく、または他のナノ粒子と混合してもよい。
【0092】
典型的に、発光材料は、(c)第3の複数のナノ粒子を60%より多く含んでなる第3の層と、任意に(d)第4の複数のナノ粒子を60%より多く含んでなる第4の層とを含んでなる。第3の層は、第3の複数のナノ粒子を80%より多く含んでなることができる。第4の層は、第4の複数のナノ粒子を80%より多く含んでなることができる。第3の層および第4の層は、第1の層および第2の層に関して上記で規定したとおりであり得る。
【0093】
あるいは、いくつかの場合においては、第1の複数のナノ粒子、第2の複数のナノ粒子、第3の複数のナノ粒子、任意に第4の複数のナノ粒子は、マトリックス材料中に互いに分散する。
【0094】
この発明で有用なナノ粒子は、任意の好適な方法によって製造することができる。例えば、第1の前駆体化合物および第2の前駆体化合物を含んでなる前駆体溶液を、溶媒(すなわち、トルエンなどの非配位性溶媒)に注入すると、結晶材料のNCの沈殿を得ることができる。ペロブスカイトNCは、MACl、MABrまたはMAI(ここでMAはメチルアンモニウム)などの第1の前駆体化合物と、PbCl
2、PbBr
2またはPbI
2などの第2の前駆体とを用いることによって製造することができる。前駆体溶液は、激しく攪拌しながら、5分間隔で無水トルエンに注入し得る。前駆体溶液を非配位性溶媒(例えばトルエン)中に注入するとすぐに、ナノ結晶(NC)としてペロブスカイトが析出する。
【0095】
結晶化合物NCの安定性を向上させるために、溶媒(例えばトルエン)中にオレイン酸を添加することもできる。典型的には、前駆体溶液を注入する前に、20mgから60mgのオレイン酸を10mlの溶媒(例えばトルエン)に添加する。
【0096】
混合アルキルハロゲン化鉛のペロブスカイト(例えばMA(OA)PbX
3)のNCは、以下の方法によって製造することができる。より長い長鎖アルキル基を前駆体溶液中に添加する。これを、その後トルエンなどの溶媒に注入して、NCの沈殿を得る。
【0097】
前駆体溶液をトルエン−ポリマーマトリックスに注入することにより、コロイドNCの単分散および安定性が顕著に向上する。
【0098】
このNCは、固相反応で合成することもできる。第1の前駆体化合物および第2の前駆体化合物を混合し、該混合物を粉砕し、その後例えば100℃で20分間、アニールする。粉砕し、アニールする工程は、均一なNC混合物が得られるまで、5から6回繰り返してもよい。このように合成したNCを、その後トルエン/またはトルエン−ポリマー中に分散させ得る。
【0099】
溶媒/ポリマー混合物中のNCの分散を、表面上に配置し、加熱して、溶媒を除去すると、その上にNCを配置させたポリマーマトリックスを含んでなる発光材料を得ることができる。
使用
【0100】
この発明はまた、発光素子内の蛍光体としての発光材料の使用を提供するものであって、該発光材料は、1または複数のマトリックス材料と、前記1または複数のマトリックス材料に配置される、第1の結晶化合物を含んでなる第1の複数のナノ粒子と、第2の結晶化合物を含んでなる第2の複数のナノ粒子とを含んでなり、上記第1の結晶化合物および上記第2の結晶化合物は、式[A]
a[M]
b[X]
cである異なる化合物であり、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンであり、aは1から6の整数であり、bは1から6の整数であり、cは1から18の整数である。
【0101】
蛍光体は、発光素子内で用いて、発光素子が発した光の色のバランスをとる、または変化させる燐光材料または蛍光材料である。
【0102】
この発明の使用においては、発光素子は、本明細書でさらに規定したとおりであり得る。
発光材料
【0103】
この発明は、1または複数のマトリックス材料と、該マトリックス材料に配置される、
(i)第1の結晶化合物を含んでなる第1の複数のナノ粒子と、
(ii)第2の結晶化合物を含んでなる第2の複数のナノ粒子とを含んでなる発光材料を提供するものであって、
前記第1の結晶化合物および前記第2の結晶化合物は、式[A]
a[M]
b[X]
cである異なる化合物であり、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンであり、aは1から6の整数であり、bは1から6の整数であり、cは1から18の整数である。
【0104】
発光材料は、本明細書でさらに規定したとおりであり得る。典型的には、第1の複数のナノ粒子が第1の層を形成し、かつ、第2の複数のナノ粒子が第2の層を形成する。例えば、発光材料は、(a)マトリックス材料と、該マトリックス材料に配置される、第1の複数のナノ粒子を含んでなる第1の層および(b)マトリックス材料と、該マトリックス材料に配置される、第2の複数のナノ粒子を含んでなる第2の層を含んでなり得る。多くの場合、第1の層が、5重量%未満または2重量%未満の第2の複数のナノ粒子を含んでなり、第2の層が、5重量%未満または2重量%未満の第1の複数のナノ粒子を含んでなる。
発光素子の製造方法
【0105】
この発明は、蛍光体を含んでなる発光素子の製造方法を提供するものであって、該方法は、本明細書で規定する発光材料を、本明細書で規定する光源の上に配置することを含んでなる。したがって、発光材料は典型的に、蛍光体を形成する。
【0106】
発光材料を配置することは、発光材料を含んでなる前駆体溶液を配置すること、または前駆体材料の固体層を配置することを含んでなり得る。
【0107】
典型的には、上記方法は、第1の結晶化合物を含んでなる第1の複数のナノ粒子と、第2の結晶化合物を含んでなる第2の複数のナノ粒子と、1または複数のマトリックス材料とを合わせることを含んでなり、前記第1の結晶化合物および前記第2の結晶化合物は、式[A]
a[M]
b[X]
cである異なる化合物であって、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンであり、aは1から6の整数であり、bは1から6の整数であり、cは1から18の整数である。
【0108】
多くの場合、発光材料は、複数の層を含んでなる積層材料である。そのため上記方法は、典型的に、(a)第1のマトリックス材料と、第1の結晶化合物を含んでなる第1の複数のナノ粒子とを含んでなる第1の層を提供することと、(b)第1の層の上に、第2のマトリックス材料と第2の結晶化合物を含んでなる第2の複数のナノ粒子とを含んでなる第2の層を配置することとを含んでなる。
【0109】
第1のマトリックス材料および第2のマトリックス材料は、同一または異なるものであり得、かつ、本明細書で規定したとおりであり得る。
【0110】
マトリックス材料と結晶化合物を含んでなる複数のナノ粒子とを含んでなる層を配置することは、典型的に、溶媒、複数のナノ粒子およびマトリックス材料を含んでなる組成物を配置することと、該溶媒を除去することとを含んでなる。
【0111】
溶媒は、典型的に、例えばアセトニトリル、トルエン、DMSOまたはアセトンなどの有機溶媒である。溶媒を除去することは、典型的に、組成物を加熱して溶媒を除去することを含んでなる。マトリックス材料が、熱硬化性ポリマーまたは硬化性ポリマーであれば、層を配置することは、複数のナノ粒子および前駆体を含んでなる組成物をマトリックス材料に配置することと、該マトリックス材料に対して該前駆体を固定することとを単に含んでなり得る。マトリックス材料に対する上記前駆体は、モノマーまたはポリマーの架橋試薬との混合物であってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、上記方法は、(c)第2の層の上に、マトリックス材料と第3の結晶化合物を含んでなる第3の複数のナノ粒子とを含んでなる第3の層を配置することと、(d)任意に、第3の層の上に、マトリックス材料と第4の結晶化合物を含んでなる第4の複数のナノ粒子とを含んでなる第4の層を配置することとを含んでなり、前記第3の結晶化合物および前記第4の結晶化合物は、式[A]
a[M]
b[X]
cである異なる化合物であって、ここで[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[M]は少なくとも1つの金属またはメタロイドのカチオンであり、[X]は少なくとも1つのアニオンであり、aは1から6の整数であり、bは1から6の整数であり、cは1から18の整数である。
【0113】
発光材料は、本明細書でさらに規定したとおりであり得る。
【0114】
ここで、以下の実施例により、本発明をより詳細に説明する。実施例は、発明を限定するものと考えるべきではない。
【実施例】
【0115】
実施例1−調色可能な白色光の発光
前駆体材料:
市販の鉛原料化合物(すなわち、PbCl
2、PbBr
2およびPbI
2)およびハロゲン化水素の酸(HCl、HBrおよびHI)をシグマアルドリッチ社より購入した。メチルアミン(41%CH
3NH
2)およびオクチルアミン(C
8H
17NH
2)もまた、シグマアルドリッチ社より購入し、そのまま用いた。
【0116】
アルキルアンモニウムハライドの合成:ハロゲン化アルキルアンモニウムは、アルキルアミン(R=CH
3NH
2および/またはC
8H
17NH
2)とHX(すなわちHI、HBrおよびHCl)とを反応させることによって実験室で合成される。ヨウ化メチルアンモニウムは、典型的に、エタノール中33重量%のメチルアミン24mlを、100mlのC
2H
5OH中で、10mlのヨウ化水素酸(57%、H
2O中)と反応させることによって合成した。この反応は、激しく攪拌しながら、室温条件下で、30分から60分間行った。反応混合物は、その後60℃でロータリーエバポレーターにかけて、溶媒を除去し、白色/黄色がかったヨウ化メチルアンモニウム(MAI)粉末の沈殿を得た。得られた生成物を、その後ジエチルエーテルで数回洗浄し、未反応試薬を除去した。このように合成した化合物は、精製した白色のCH
3NH
3I(MAI)粉末を得るために、その後C
2H
5OHか、またはC
2H
5OH/CH
3OCH
3かいずれかの溶媒で再結晶し、真空炉内で、60℃で4時間乾燥させた。精製したMAIは吸湿性であることから、乾燥条件下で保存した。MABrおよびMAClを合成するため、ハロゲン化物アニオンの原料としてHBrおよびHClをそれぞれ用いたことを除き、同様の手順を続けた。OAI(オクチルアンモニウムヨージド)、OABr(オクチルアンモニウムブロミド)およびOACl(オクチルアンモニウムクロリド)は、アルキルアミン(すなわちオクチルアミン)およびハロゲン化水素の酸(すなわちHI、HBrおよびHCl)を、MAIに関して記載したのと同様の方法でそれぞれ反応させることによって合成した。
【0117】
ペロブスカイトナノ結晶の合成:
アルキルアンモニウムハロゲン化鉛のペロブスカイトは、以下の反応、RNH
3X+PbX
2→RNH
3PbX
3(R=アルキル基)により、アルキルアンモニウムハライドとハロゲン化鉛とを反応させることによって合成する。アルキル基の長さおよびハライド基を、それらの必要とする化学量論比を維持しながら変化させて、サイズおよび光物理的性質の異なる結晶を得ることができる。
【0118】
CH
3NH
3PbX
3(MAPbX
3)(ここでX=Br、IおよびCl):
MAPbX
3、すなわちメチルアンモニウムハロゲン化鉛(ここでX=Cl、BrまたはI)のペロブスカイト結晶は、メチルアンモニウムハライド(MACl、MABrおよびMAI)とハロゲン化鉛(PbCl
2、PbBr
2およびPbI
2)前駆体とを用いることによって合成した。MAPbBr
3を合成するために、MABrおよびPbBr
2を等モルで、典型的には0.0112グラムのMABrと0.0367グラムのPbBr
2とを、7mlの無水ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させた。このように調製した前駆体溶液10μlを、激しく攪拌しながら、10mlの無水トルエン中に5分間隔で注入した。前駆体溶液を非配位性溶媒(例えばトルエン)中に注入するとすぐに、ナノ結晶(NC)としてMAPbBr
3が析出する。MAPbCl
3を合成するために、MAPbBr
3と同様の方法を続けた。ただし、MAPbI
3のペロブスカイトナノ結晶は、同様な方法で調製したが、前駆体溶液の調製に用いた溶媒が異なり、純粋なDMFの代わりにDMFおよびACNの混合溶液を用いた。まず、等モル量のMAI(0.0159グラム)およびPbI
2(0.0416グラム)を200μlのDMF中に溶解させ、次いで6.8mlのACNを添加した。上記に記載したのと同様に、前駆体溶液を、トルエンに注入した。PbI
2は、アセトニトリル(ACN)に対して溶解度が極めて低いが、使用可能であることを記しておく。トルエン中でのペロブスカイト結晶の安定性を向上させるため、トルエン溶液中にオレイン酸を添加することもまた可能である。典型的には、前駆体溶液を注入する前に、約40mgのオレイン酸を10mlのトルエンに添加した。
【0119】
CH
3(C
8H
17)NH
3PbX
3(MA(OA)PbX
3)(ここでX=Br、IおよびCl):
ここで、混合アルキルハロゲン化鉛のペロブスカイト、すなわちMA(OA)PbX
3の合成について説明する。ナノ結晶の全体的な合成方法は、より長い長鎖アルキル基を前駆体溶液に加えたことを除き、MAPbX
3に関して記載したとおりである。ハロゲン化アルキルアンモニウムの全体のモル濃度を一定に保ちながら、ハロゲン化メチルアンモニウム(MAX)およびオクチルアンモニウムハライド(OAX)のモル比を、それぞれ1:0、0.7:0.3、および0.4:0.6で変化させた。典型的には、MA(OA)PbBr
3ナノ結晶を合成するために、適量のオクチルアンモニウムブロミド(OABr)、メチルアンモニウムブロミド(MABr)およびPbBr
2を7mlの無水DMF中に混合させて、ペロブスカイト前駆体溶液を調製したが、アルキルアンモニウムハライドの全体の濃度を、ハロゲン化鉛と等モルに維持しながら行った。次いで、各前駆体溶液200μlを、5分間隔で、10mlのトルエン/またはトルエン−ポリマーマトリックス溶液に注入した(各回5μlから10μl)。
【0120】
前駆体溶液をトルエン−ポリマーマトリックスに注入することにより、コロイドペロブスカイト結晶の単分散および安定性が顕著に向上するということを記しておく。この目的のためには、PMMA、ポリスチレンまたはポリカーボネートを用いることができる。この実施例においては、トルエン中に4重量%のポリマー(すなわちPMMA)を溶解させ、透明な溶液を作製した。その後、所望のペロブスカイト前駆体溶液を、ポリマー−トルエン溶液に、5分間隔で少量ずつ(5μlから10μl)注入し、安定なペロブスカイトを得た。
【0121】
固相合成経路(MAPbX
3、X=Br、IおよびCl):
有機無機ペロブスカイトは、固相反応で合成することもできる。等モル比のアルキルアンモニウムハライドおよびハロゲン化鉛の粉末を不活性雰囲気下で十分混合させた。混合物を粉砕し、その後100℃で20分間アニールした。粉砕し、アニールする工程は、5から6回繰り返して均一な混合物を得た。ペロブスカイトはもはや、アニール処理をせずとも、反応物を混合させることにより形成が始まる。しかしながら、アニール工程は、ペロブスカイト結晶の形成および安定性の向上を助ける。このように合成したペロブスカイト結晶を、その後トルエン/またはトルエン−ポリマー中に分散させる。
【0122】
ナノ結晶/ポリマーフィルムの作製
ナノ結晶(NC)をポリマー(すなわちPMMA)と混合することによる、ナノ結晶(NC)フィルムの作製について説明する。ペロブスカイトNC/ポリマーフィルムを作製するため、上記のように合成したペロブスカイトNC(溶液中)を、7000rpmで1時間遠心分離し(フィッシャーサイエンティフィック社、AccuSpin400)、所望の量のポリマーと混合させた。ナノ結晶およびポリマーの濃度は、所望のスペクトル領域および最終PL発光強度の調整において絶対的な柔軟性を提供する、特定のレベルの吸光度およびPLQEを得るように変更することができる。
【0123】
NCのキャラクタリゼーション:
NC/トルエンの光物理的特性(例えば紫外可視吸収、PL発光および量子収量)を、試料容器を用いて測定した。オートアブソーバー(auto-absorber)および2次ビームグラファイトモノクロメータと共に、位置敏感検出器(LynxEye)および標準検出器(SC)を備えたBruker D8 theta/theta分光器(すなわち固定サンプル)を用いて、ナノ結晶フィルムのX線回折を測定した(ブラッグブレンターノ(Bragg Brentano)光学系の平行集中法、反射モード)。Jeol4000EX(400kV)の高分解能顕微鏡を用いて、透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。紫外可視吸収は、市販の分光光度計(Varian Cary 300 UV−Vis、米国)を用いて、空気中でNC/トルエン分散を測定した。高分解能モノクロメータおよびハイブリッド・フォトマルチプライヤー検出器アセンブリ(PMA Hybrid 40、PicoQuant GmbH社)を用いて、定常状態のPLを得た。時間分解PL測定は、時間相関単一光子計数法(TCSPC(time correlated single photon counting))のセットアップ(FluoTime 300、PicoQuant GmbH社)を用いて行った。NC/トルエン分散を、117psのパルス持続時間および最大300nJ/cm
2のフルエンスで、周波数1MHzでパルス発振させた405nm(Br/IベースのペロブスカイトおよびClベースのペロブスカイトそれぞれに対して)のレーザヘッド(LDH−P−C−510、PicoQuant GmbH社)を用いて光励起した。フォトルミネッセンス量子効率(PLQE(photoluminescence quantum efficiency))測定は、405nm連続波レーザ励起光源(Suwtech社、LDC−800)を用いて行い、積分球(Oriel Instruments社、70682NS)中で希釈NCコロイドサンプルを発光させて、光ファイバー結合用検出器(Ocean Optics社、MayaPro)を用いてレーザ散乱およびPLを得た。また、希釈溶液は、ODを励起波長<0.1としたことにも言及しておく。光ファイバー結合用検出器セットアップの分光感度は、分光放射照度標準(Oriel Instruments社、63358)で較正した。励起強度は、光学濃度(optical density)フィルタを用いて調節した。
【0124】
結果と考察
短鎖アルキル鎖をもつペロブスカイトNCおよび長鎖アルキル鎖をもつペロブスカイトNC
Papavassiliou et al., (J. Mater. Chem. 2012, 22, 8271-8280)による経路に従い、非配位性溶媒(例えばトルエン)でのCH
3NH
3+、Pb
2+およびX
−の沈殿を制御することによって、CH
3NH
3PbX
3(X=Cl、BrおよびI)のペロブスカイトNCを合成した。CH
3NH
3+、Pb
2+およびX
−イオンを得るため、各イオン塩(すなわちハロゲン化メチルアンモニウム(I)およびハロゲン化鉛(II))を、ジメチルホルムアミド(DMF)および/またはアセトニトリル(ACN)などの極性溶媒中に溶解させ、次いでこの混合物を無水トルエンに注入し、CH
3NH
3PbX
3のNCの懸濁液を形成した。ゆっくり(例えば5分から10分間隔)かつ少量(すなわち0.2μmolから0.5μmol)で、前駆体をトルエンに注入することで、安定性の高いNCが得られるということを観察した。またトルエンにオレイン酸を添加することが、NCの安定化を助ける。CH
3NH
3PbBr
3(MAPbBr
3)のNCおよびCH
3NH
3PbCl
3(MAPbCl
3)のNCの前駆体溶液を調製するために、DMFを用いることができる。しかしながら、CH
3NH
3PbI
3(MAPbI
3)のNCの合成には、DMF/ACN混合液中で前駆体溶液を調製した。
【0125】
このように合成したNCの結晶構造を確認するために、それらを遠心分離し、ペロブスカイトNC粉末のX線回折を行った。X線回折パターンにより、室温におけるMAPbCl
3およびMAPbBr
3の空間群として、Pm−3m(No.221)の立方晶構造が確認された。しかしながら、MAPbI
3は、室温で空間群I4/mcm(No.140)をもつ正方晶の結晶対称性で結晶化する。我々の結晶観察は、より大きい結晶に関する文献とよく一致した。
【0126】
長アルキル鎖によって実質的に安定化されるペロブスカイトNCを製造するために、アルキルアンモニウムカチオンの全体のモル比を、無機成分に対して一定に保ちながら、長鎖アルキル基としてオクチルアンモニウムカチオン(OA
+)を、メチルアンモニウムカチオン(MA
+)と混合した。より長鎖であるアルキルアンモニウムカチオン(例えばOA
+)のNC格子への取り込みによる影響を調べるために、モル比(すなわちOA
+/MA
+)を0.0/1.0、0.3/0.7、0.6/0.4、および0.9/0.1にそれぞれ変化させて、(OA/MA)PbBr
3のNCを合成した。XRDスペクトルから、純粋なMA
+(すなわちMAPbBr
3)のNCが、格子パラメータa=b=cが5.9495Åの空間群Pm−3m(No.221)である立方晶構造で結晶化したことを確認した。また、純粋なOA
+ベースのペロブスカイトのNCが、層状結晶構造をもつ(OA)
2PbBr
4として結晶化した。
【0127】
興味深いことに、モル比0.6OA
+/0.4MA
+までの混合OA
+/MA
+の組成では、層状ペロブスカイト(OA)
2PbBr
4を特定できる痕跡は何も観察されず、純粋なMAPbBr
3と同様の格子パラメータをもつ単相立方晶構造のみが観察された。OA
+のモル比をさらに上げると、すなわち0.9OA
+/0.1MA
+とすると、
図2のX線回折パターンからわかるように、MAPbBr
3に加えて(OA)
2PbBr
4、OABrおよびPbBr
2からなる、異なる群のNCまたはコロイドの混合相または混合物の出現が観察された。モル比0.6OA
+/0.4MA
+まででは、NCは主として単相(すなわちMAPbBr
3の立方晶構造)であったことに注目することは興味深いことである。
【0128】
図1に示すTEM画像は、OA
+/MA
+の組成を変化させた、NCの形状および寸法を強調している。純粋なMA
+(すなわちMAPbBr
3)のNCは、立方晶形状を形成した(
図1a)。興味深いことに、OA
+群(例えば0.6OA
+/0.4MA
+)の添加により、シート状または板状いずれかの形態(
図1b)よりなる細長形状が観察され、さらにOA
+の含有量を0.9OA
+/0.1MA
+に増加させると、より棒状の形状が観察された。板状体および棒状体の平均幅は、約50nmであり、長さは、0.6OA
+/0.4MA
+で約100nm、0.9OA
+/0.1MA
+で数100nmと異なる。これらTEM画像に基づけば、OA
+含有量の相対量を変化させることにより、最終的な結晶形状に影響を及ぼすような結晶の成長条件を変化させるということが明らかである。下段の画像(
図1)では、MA
+のNCおよび0.9OA
+/0.1MA
+のNCのHRTEM画像を示しているが、規則正しい結晶構造をはっきりと表している(高速フーリエ変換の挿入画像で確認される)。両結晶のFFTにおいて、晶帯軸近くに表示されている結晶格子が、立方晶構造(例えばPm−3m)との一致を見せており、NCのX線回折パターンにおいてなされた観察をさらに証拠付けている。
【0129】
XRDデータおよびTEM解析の両方を検討すると、結晶の大部分が、MAPbBr
3より形成されており、OA含有量が60%を超えている場合にのみ、層状ペロブスカイト相が存在することの証拠が観察されるということが明らかである。したがって、OAの存在が、ナノ結晶の形状に大きく影響することが明らかである。おそらくOA
+カチオンは、特定の結晶のファセットに対して優先的に吸着し、そのためその方向へ伸長する成長が阻害される。そのため、OA
+は、格子内に組み込まれるよりもむしろ、MAPbBr
3結晶の表面に付着すると仮定した。こうした意味では、OA
+は、III−V族のナノ結晶の成長におけるホスホン酸の機能に類似した、配位子として機能すると考えることができる。
【0130】
図1の上段の画像には、三次元球状体、ナノ板状体およびナノ棒状体のNCの異なる形態を示しており、それぞれの組成をMA
+、0.6OA
+/0.4MA
+、および0.9OA
+/0.1MA
+としている。ナノ板状体およびナノ棒状体の厚さは、≦10結晶の範囲である。下段の画像では、MA
+のみのNCおよび0.9OA
+/0.1MA
+をもつNCのHRTEM画像と、挿入として各NCの高速フーリエ変換の画像とを示す。両組成物のFFTでは、晶帯軸近くに見られる結晶格子が、対称性が低い立方晶構造(例えばPm−3m)に相当するものとなる。
【0131】
NCの光物理的特性のさらなる効果を調べるために、トルエン中に分散したNCについて、紫外可視吸収測定、定常状態かつ時間分解のフォトルミネッセンス(PL)の測定を行った。OA/MAPbBr
3のNC中のOA
+のモル比を増加させることにより、
図3に示すように、定常状態のPL発光ピーク(410nmで励起)の高エネルギー側へのシフト(すなわちブルーシフト)が観察された。PL発光の最大値を、531nm(純粋なMA
+のNC、すなわちMAPbBr
3)から、485nm(モル比0.9OA
+/0.1MA
+の結晶)に合わせることができる。興味深いことに、MAPbBr
3結晶のPLスペクトル(すなわち純粋なMA
+の結晶をもつ)は、大部分のMAPbBr
3フィルムに類似したPLピーク最大値を示し、その中心は約531nmである。PL発光ピークにおける系統的なブルーシフトは、結晶構造中にOA
+が組み込まれたナノ構造における量子閉じ込め効果で説明することができる。しかしながら、結晶寸法の最小サイズは、50nmオーダーである。先の実験では、MAPbBr
3の励起子のボーア半径を、2nmから6nmであると推定した。このように小さいボーア半径では、NCの形状変化に起因した量子閉じ込めが、PL発光で観察されたブルーシフトの原因であるという可能性は非常に低い。我々は、結晶の周囲にOAが存在することが、何らかの歪みの形成を引き起こし、MAPbBr
3から0.6OA/0.4MAPbBr
3へ移行する発光において小さいブルーシフトをもたらしていると仮定している。しかしながら、これら観察を完全に解明するためには、さらなる研究が必要であることを記しておかなければならない。OA
+のモル比をかなり増加させると(すなわち0.9OA
+/0.1MA
+)、発光スペクトルにおいてより高エネルギーの多重ピークが観察される。こうした高エネルギーのピークは、OAの面に分散している、異なる単位胞厚さをもつMAPbBr
3の面をもつ層状のペロブスカイトに相当する可能性が高い。
【0132】
我々は、高エネルギー側の吸収ピークを、単位胞の異なる層数n=1、3、4および∞の層状結晶である層状のペロブスカイトに先に帰属しており、それぞれ433、451、471および525nmで顕著な吸収ピークをもつということを記しておく。
図6に関して、継続時間を変化させて7000rpmで遠心分離することによって、90%OAで合成したNCを分離することができる。したがって、このことが、「ブルー」の溶液からの非常にブロードな発光が、結晶の不均質性に由来するということを証明している。
【0133】
図2で観察されるように、MA
+およびOA
+の混合カチオンで合成した結晶では、ストークスシフト(すなわち吸収波長と発光波長間とのエネルギーにおけるずれ)が増し、LED用途における発光光の自己再吸収の軽減に有用となることとなる。
【0134】
図5には、405nmでパルス状励起した以下のサンプルの時間分解PL測定を示している。(溶液サンプルは、パルス状励起で光励起し(405nm、繰り返し率1MHz、パルス長117ps、300nJ/cm
2/pulse)、発光はピーク波長で検出した。)OA/MAPbBr
3のNCのPL寿命は、モル比0.6OA
+/0.4MA
+まではOA
+含有量の増加に伴い徐々に増加することが判明した。しかしながら、モル比を0.9OA
+/0.1MA
+までさらに増加させると、PL寿命は事実上短くなる。
図4に示すように、NCの希釈コロイド溶液のPL量子収量(QY(quantum yield))においても同様の傾向が観察され、MA
+を0.3OA
+/0.7MA
+、0.6OA
+/0.4MA
+および0.9OA
+/0.1MA
+で含有するNCについて、それぞれ20%、35%、52%および18%が測定された。OA
+の含有量の増加によるPL寿命およびPLQEの増加は、より低密度の電子トラップが原因であるであろうNC中の無放射による損失の減少を示唆する。このことは、MA
+カチオンよりもより完全な形でNCの面に付着したOA
+に起因すると予想している。しかしながら、歪みが引き起こされれば、このことがまた結晶の発光特性に影響を及ぼすことになる。
【0135】
UV光により、NC中のOA
+含有量の増加により発光色が緑色から青色に段階的に変化することが、PL発光ピークのシフトで観察されたブルーシフトをさらに実証しているということが明らかである。ここで興味深い展望のひとつは、OA/MAPbCl
3に移行する必要なく、OA/MAPbBr
3ベースの結晶から青色発光を得ることができることである。このことは、Br塩がCl塩よりも低揮発性であることだけでなく、加えて層状のペロブスカイトが、太陽電池用途でのMAPbX
3のペロブスカイトよりも高い耐湿性を有することが証明されていることから、長期的に安定という大きな利点となるであろう。
【0136】
OA
+を組み込んだNCの優れた光学的特性に加えて、結晶周囲にあるより長いアルキル鎖が、該NCの凝集を防ぎ、かつ、該NCを長期的に安定なコロイド溶液にさせる。
【0137】
混合ハロゲン化物のペロブスカイトNCによるPL発光の調光
可能性のあるスペクトル幅および達成可能な分解能を調べるために、MAPbCl
3−xBr
xからMAPbBr
3−xI
xまで変化させて、一連の、純粋なハロゲン化物のペロブスカイトNCおよび混合ハロゲン化物のペロブスカイトNCを合成し、xは0から3の範囲とした。この実験に関して、OA
+/MA
+のカチオン比を0.7/0.3で固定したままにした。
図8に、単一のハロゲン化物および混合ハロゲン化物のペロブスカイトNCのX線回折パターンを示している。純粋な塩化物ベースのペロブスカイトNCにおいて、Br
−アニオンのドープ濃度が増加するにつれて、2θの値が減少する方へ、強調したピーク(101)、(040)および(141)が徐々にシフトすることが観察された。同様の傾向が、I
−アニオンを純粋な臭化物ベースのペロブスカイトに添加した場合に観察された。2θ位置のシフトおよび二次相が現れないことから、混合ハロゲン化物の格子をもつ単相のNCの形成が確認される。室温では、純粋なヨウ化物ベースのペロブスカイトが正方晶の対称性で結晶化するのに対し、純粋な塩化物および臭化物ベースのペロブスカイトは立方晶の対称性で結晶化する。
【0138】
図9に、コロイド状の混合ハロゲン化物のOA/MAPbX
3(x=Cl
−/Br
−/I
−)のNCの発光スペクトル(λ
exc=360nm)は、それらのハロゲン化物の組成(混合ハロゲン化物のNC中のハロゲン化物の割合)を調節することによって、可視スペクトル領域全体にわたって調光可能であるということを示している。OA/MAPbI
3、OA/MABr
3およびOA/MAPbCl
3のPL発光ピークは、それぞれ770nm、522nmおよび385nmである。中程度のPL発光は、I
−/Br
−およびBr
−/Cl
−のハロゲン化物をペロブスカイトNC中で混合することによって得ることができる。興味深いことに、シャープで単一のPL発光ピークは、混合ハロゲン化物ベースのNCであっても観察される。
【0139】
PL発光スペクトルで観察された傾向は、混合ハロゲン化物ペロブスカイトNCのX線回折データともよく一致した。予想したように、混合したI
−/Cl
−ハロゲン化物は、それらのイオン半径が大きく違うことに起因して、安定したペロブスカイトNCを形成しないということが判明した。
図10に、バンドギャップを示しており、我々が出発溶液の化学量論ごとにPL発光のピークから推定した。正方晶での若干の突出部分から立方晶の相へ遷移する領域は別にして、バンドギャップは組成とともに直線的に変化しており、この領域全体にわたって、ペロブスカイト結晶内で混合ハロゲン化物の固溶体を形成することを示唆している。
【0140】
アニオンが変化するにつれて、エネルギーバンドに寄与するものである、結晶格子パラメータ、八面体傾斜角(octahedral tilting angle)およびハロゲン化物の軌道が変化し、それが光物理的特性で観察される変動をもたらす。
【0141】
白色発光用ペロブスカイトNC/ポリマーの複合体フィルムの製造
ペロブスカイトナノ結晶のコロイド溶液は、異なるハロゲン化物アニオンをもつ他のNCと混合したときに、組成上の不安定性を見せる。したがって、幅広いPL発光を得るために、鮮明なPL発光(励起波長425nm)をもつNCと混合するようなあらゆる試みは、望まない結果を与え得る。
図5(上の図)に、純粋なBr(MApbBr
3)およびI(MAPbI
3)ベースのペロブスカイトコロイド溶液と、また2つの(すなわちMA(0.3OA)PbBr
3のNCおよびMA(0.3OA)PbI
3)のNCの混合コロイド溶液(V/V)のPL発光スペクトルを示している。2つのコロイド溶液は、適度に類似したPL強度が得られるような方法で混合した。純粋なBrおよびIベースのNCはそれぞれ、520および753nmに単一のPL発光ピークをもつ。しかしながら、混合コロイド溶液は、異なる最大値(それぞれ551および704nm)であるがそれぞれの親ピークの位置に、BrおよびIベースのNCの両方に帰属される2つのPL発光スペクトルを見せる。PL発光スペクトルにおけるそれらの変化による明らかな効果は、混合コロイド溶液の明らかな色変化に反映されている。
【0142】
混合コロイド溶液の組成上の安定性をさらに調べるために、一定の励起波長425nmで、PL発光を連続的に測定した。
図11は、MA/OAPbI
3(753nm)のNCおよびMA/OAPbBr
3(520nm)のNC(破線)のコロイド溶液と、それらそれぞれを混合した分散(551および704nm)におけるPL発光(λ
exc=425nm)を示している。混合コロイドの分散を数時間にわたって連続的に励起すると(λ
exc=425nm)、その発光スペクトルは、時間の経過と共に大幅なシフトを見せ、NCにおいて可能性のあるイオン交換を経由する組成上の不安定性を示唆する。
図12は、NC/ポリマーフィルムの発光スペクトルを示しており、(MA/OAPbI
3)および(MA/OAPbBr
3)のポリマーフィルムはそれぞれ753および520nm(破線)で発光する。ポリマーマトリックスに2つのNCを合わせても、それらの各発光ピークにおいていかなるシフトも見られない。数時間にわたって連続的に励起しても(λ
exc=425nm)、それらのPLピーク位置は時間が経過しても不変のままであり、イオン交換が生じているような兆候は何も見られない。
【0143】
混合コロイド溶液は、光励起により組成が変化することが明らかである(
図12)。しかしながら、異なる結晶格子からのハロゲン化物アニオンは、互いと交換するのか、またはコロイド溶液中に既に存在していた不純物相のハロゲン化物アニオンと交換するのかはこれまでのところ明らかになっていない。このイオン交換については、実施例3でさらに論じる。
【0144】
NC/ポリマーの薄膜フィルムは、それらを絶縁性かつ透明なマトリックス(すなわちPMMA/ポリスチレン)中で合わせることによって調製し、
図12に示すように、純粋なハロゲン化物のフィルムと、またそれらの各混合物のフィルムについてもPL発光スペクトルを測定した。興味深いことに、純粋なハロゲン化物のペロブスカイトNCのPL発光最大値およびそれらそれぞれの混合物のPL発光最大値は、いかなる変化も観察されなかった。このことは、ポリマーマトリックス中でNCを混合することにより、NC間での、またはNC/ポリマーフィルム中の残渣不純物からの、可能性のあるイオンの移動を阻害することができるということを明らかに示唆している。
【0145】
混合NC/ポリマー組成物のフィルムを調整するか、またはそれら独自の選択的な発光をそれぞれ伴う異なるNCの分離膜を調製して、その後それらを共に積層化するかによって、選択的/ブロードな発光を実現することができる。
図13では、青色、緑色、赤色および中間を発光するNCをポリマーマトリックスに混合することによって調製したフィルムからの、410nmから770nmの可視スペクトル領域全体をカバーするブロードなPL発光について説明している。
図13において、フィルムに混合したペロブスカイトナノ結晶の組成は、(MA
0.7OA
0.3)PbCl
3=20%、(MA
0.7OA
0.3)Pb(Cl
0.4Br
0.6)
3=25%、(MA
0.7OA
0.3)Pb(Br)
3=10%、(MA
0.7OA
0.3)Pb(Br
0.5I
0.5)
3=25%、(MA
0.7OA
0.3)PbI
3=20%である。
【0146】
この幅広いPL発光は、完全な前駆体によるものであり、ペロブスカイトNC/ポリマーの複合体フィルムから有効かつ調光可能な白色光の発光を生じる。
図13の背景には、エアマス(AM)1.5の太陽光スペクトルを示している。加えて、青色、緑色および赤色を発光するフィルムを、それぞれCl
−、Br
−およびI
−のハロゲン化物基をもつペロブスカイトNCを用いることによって、個別に調製した。OA/MAPbI
3、OA/MAPbBr
3およびOA/MAPbCl
3フィルムのPLQEは、それぞれ15、25および10%であった。選択的なスペクトル領域で発光するこれら可撓性フィルムを合成することができるような簡便さは、それらの適用性の幅を広げる十分な機会をもたらす。上記に記載したように、固体発光である市販の白色LEDは典型的に、黄色発光するCe
3+ドープしたY
3Al
5O
12(YAG:Ce)の蛍光体をもつGaNの青色LEDに基づく。ここで、従来の蛍光体を、ポリマーマトリックス中に埋め込んだ青色/緑色/赤色発光ペロブスカイトのNCで置換可能であるということについて説明する。我々は、市販の青色GaN LEDよりも前に緑色および赤色発光のNC/ポリマーフィルムを配置した。我々は、GaN LEDからの青色光の一部が、青色発光(450nm)を与えるNCポリマーフィルムに透過させることができるほど十分に、ペロブスカイトNCの薄膜フィルムの光学濃度を低くする一方で、NCが吸収した青色光を、低波長化し、緑色および赤色のスペクトル領域で再発光して、所望の白色発光を生じさせることを確実にした。
図14では、GaNの青色LEDよりも前に、MAPbBr
3(520nmで発光)、MAPb(I
0.66Br
0.34)
3(678nm)およびMAPbI
3(775nm)のNC薄膜を分離して配置することによって、青色〜緑色、青色〜赤色および青色〜近赤外の発光を生じさせる、分離による方法を示している。これらNC薄膜を、青色LEDの上部において互いの上に重ねると、白色発光が観察され、そのスペクトルを
図15に示す。450nmの発光として、青色LEDに由来する可視光が未だあるが、その他はペロブスカイトNCに由来するものであることを記しておく。
【0147】
上記した特定の組み合わせのNCからの白色発光の選択的な実証が、約0.4120および0.4120のx−y座標に位置する色度座標(CIE)によりなされるものであり、
図16においては、破線の円の記号で示している。原則的に、これらペロブスカイトNCから任意の色相、色およびスペクトル構成を得ることが可能である。このことは、全てのPLスペクトルからの個々のNCの発光のCIE座標を示すことによって説明されるものであり、それらを
図16に示している。特に、適切な量のこれらNCを単一のフィルムまたは積層した層状フィルムに組み合わせることにより、ブロードなスペクトル範囲をもつチャート上のどこかにCIEが位置することとなる。異なるペロブスカイトナノ粒子を合わせることを含んでなる、この発明による他の発光材料のスペクトルを、
図17に示している。
【0148】
実施例2−ペロブスカイトナノ結晶におけるイオン交換
溶液中に分散したペロブスカイトナノ結晶(ナノ粒子)は、それらが、異なるハロゲン化物イオンを含有したペロブスカイトナノ結晶と混合されるか、または他の原料を介してハロゲン化物イオンが導入されることによって、組成上の不安定性を示す。ナノ結晶は、別のハロゲン化物イオンの存在下で、それらの元来の組成を保持せず、むしろ結晶中でイオン交換を経て、結果的に異なるハロゲン化物の組成物と共に完全に新しい組成物を形成するものとなる強い傾向を示す。したがって、異なるPL発光のナノ結晶を混合して幅広いPL発光を得ようとする試みは、どれも最終的に、親であるナノ結晶がもつ発光範囲の中間に、完全に新しいPL発光が形成されるということに至り得る。
【0149】
トルエン中で懸濁させたMAPbI
3およびMAPbBr
3(MA=メチルアンモニウム)のナノ結晶を、体積比50:50で混合する場合、それらは、それらの親のナノ結晶のものではない完全に新しいPL発光波長を与えるということが実証された。MAPbI
3およびMAPbBr
3は、混合すると、完全に新しい深赤色のペロブスカイト結晶を与えるということが判明した。各ナノ結晶のPL発光を
図18に示すが、そこでは、懸濁液中で異なるハロゲン化物成分をもつナノ結晶を混合すると、ハロゲン化物の交換が行われ、その期間にわたってそれらの親材料のものではない完全に異なるPL発光を見せるということが確認される。
【0150】
トルエン中におけるCH
3NH
3PbI
3(780nm)のナノ結晶およびCH
3NH
3PbBr
3(520nm)のナノ結晶のPL発光は、それらをトルエン中で50:50V/Vで混合した分散のPL発光とは大きく異なる(605および760nm)。異なるペロブスカイトナノ結晶(黒色および黄色)を混合すると、ハロゲン化物の交換により、可視領域に2つのピークをもつ完全に異なるPL発光(深赤色)を与えるということがはっきり見られる。ハロゲン化物の交換が行われ、2つの優勢な組成をもつ混合ハロゲン化物ナノ結晶が懸濁液中で形成されている可能性が高い。一方はヨウ化物の濃度が高く、760nmにPLピークをもち、他方はヨウ化物の濃度が低く、605nmにPLピークをもつ。
【0151】
実施例3−ペロブスカイトナノ結晶におけるイオン交換
上記で述べたように、
図11は、溶液中の純粋なMA
0.7OA
0.3PbBr
3のペロブスカイトナノ結晶およびMA
0.7OA
0.3PbI
3のペロブスカイトナノ結晶のPL発光スペクトルと、MA
0.7OA
0.3PbBr
3およびMA
0.7OA
0.3PbI
3の2つの溶液をそれぞれ概ね0.4:0.6の体積比にした混合物を含有する混合NC溶液からのPL発光についても示している。体積比は、2つのピークと適度に類似したPL強度が得られるように選択した。純粋なMA
0.7OA
0.3PbBr
3のNC溶液およびMA
0.7OA
0.3PbI
3のNC溶液は、それぞれ520nmおよび753nmに単一のPL発光ピークを有する。しかしながら、2つのNC溶液の混合物は、これらと同じ波長に2つのPL発光スペクトルを示すものの、異なるPLピーク位置、551nmおよび704nmで最大値を示している。この測定は、溶液の混合後の10分で行った。これら結果は、混合後の溶液中で行われる急速なBr/Iイオン交換が存在するということに当てはまる。混合溶液のPL発光ピークは、混合ハロゲン化物の組成であるNCと一致し、551nmで発光するNC中よりも、704nmで発光するNC中で、Iの相体濃度がより高いことを伴う。
図18に示す混合ハロゲン化物NCの個々の溶液のPL発光測定に基づけば、551nmで発光するNCおよび704nmで発光するNCのBr/I比は、それぞれBr/Iが、約0.8/0.2および0.2/0.8であるということが推定できる。混合溶液のPLピークのシフトに加えて、551nmピークの強度が、時間の経過と共に急速に減少している。このことは、緑色発光するNCの安定性が、混合溶液中で全体的に欠如していること示唆する。
【0152】
明らかに、この種のイオン交換は、安定かつ制御された、混合ペロブスカイトナノ結晶からの白色発光への展望に悪影響をもたらすこととなる。したがって、この観察により、研究者たちは、単一層中に複数のペロブスカイトNCを組み込むことを思いとどまることとなる。これにもかかわらず、発明者は、1つの絶縁性の埋め込みマトリックスに混合ペロブスカイトNCを埋め込むことを追求し、さらに調査した。発明者は、絶縁性で透明なポリスチレンマトリックス中に、体積比0.4:0.6でMA
0.7OA
0.3PbBr
3とMA
0.7OA
0.3PbI
3との混合物を合わせることにより、NC/ポリマー薄膜を調製した。ポリスチレンビーズ(Acros Organics社、178890250)を、濃度220mg/mlで、それぞれ独立したNC溶液中に直接添加し、その後2つの溶液を一緒に混合して、少量の混合液をガラス基板上に配置してスピン塗布することによってフィルムを鋳込み、乾燥フィルムを形成した。純粋なハロゲン化物のフィルムと、混合したNC混合物のフィルムについても、
図12にPL発光スペクトルを示している。驚くべきことに、525nmピークにおいても、750nmにおいても、波長位置の顕著なシフトは見られない。このことは、ポリマーマトリックス中にNCを埋め込んだことでBr/Iのイオン交換が阻害され、これにより発光波長が安定化していることを強く示唆している。発明者により、750nmにおけるMA
0.7OA
0.3PbI
3のピークの発光強度がゆっくりと減少していることが観察されたが、このことは、イオン交換以外の何らかの形状の変形を示唆する。このため、絶縁性のマトリックス中にNCを埋め込むことで、イオン交換の問題は解消されることが明らかであるが、長期間にわたる光出力のために全体的に安定した発光を得るためには、NCおよびマトリックスのさらなる開発が必要であり得る。
【0153】
図19には、混合コロイドNC溶液のPL発光スペクトルの、数ヵ月後のさらなるシフトを示している。これは、相当な期間にわたってイオン交換が継続していることを示している。
【0154】
実施例4−混合ハロゲン化物ペロブスカイトNCのフォトルミネッセンス発光スペクトル
他のペロブスカイトナノ粒子の広範囲のPL発光スペクトルを測定し、異なる発光波長の可能性が実証された。
【0155】
図20は、種々の混合ハロゲン化物MAPbX
3ペロブスカイトのPL強度((a)および(b))および吸光度((c)および(d))を示している。
図21は、種々の混合ハロゲン化物MAPbX
3ペロブスカイトのPL強度を示している。
図22は、OA/MA比を変化させた、MA(OA)PbI
3ペロブスカイトのPL強度を示している。
図23は、OA/MA比を変化させた、MA(OA)PbCl
3ペロブスカイトのPL強度を示している。
総括
【0156】
可視領域全体(390nmから775nm)にわたって強いブロードなフォトルミネッセンス発光をもつ、有機無機ペロブスカイトナノ結晶を合成する様々な合成経路について説明した。後に結晶サイズの量子閉じ込めを示し、また数ヶ月間トルエン中でNC懸濁液を安定化させることが可能であるような、3次元ペロブスカイトNCにおいて、特定の量のメチルアンモニウムカチオン(MA
+)を、より大きいオクチルアンモニウムカチオン(OA
+)と置き換えた場合の、2次元ナノ板状体の形成について示している。また、オクチルアンモニウム基を取り込むことにより、PL寿命および量子収量(PLQY(PL lifetime and quantum yield))を実質的に向上させることを示した。ハロゲン化物アニオン(X
−)を変えること、およびそれらを異なる割合で混合することによって、紫外可視スペクトル全体にわたって所望のPL発光が得られるような柔軟性がもたらされる。溶媒中に懸濁させたNCを混合することによって、ブロードなPL発光を得ようとする試みは、結果として組成上の不安定性およびそれらの別個のPL発光の損失を導く。それにもかかわらず、ポリマーマトリックス中に埋め込んだペロブスカイトNCにより、そうした組成上の不安定性を阻止し、それにより個々のNCの好ましい光物理的特性を維持する、NCの安定した混合物を与えることができることを我々は実証している。最後に、我々はまた、実証実験として、NC/ポリマーフィルムを市販の青色LEDの上部に用いることによる、白色光(および他の所望の色の混合)の発光も実証している。