特許第6783361号(P6783361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783361
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】高親和性SIRP−アルファ試薬
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20201102BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20201102BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20201102BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20201102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 49/06 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 49/14 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201102BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C07K14/705ZNA
   C12N15/12
   C07K19/00
   C12N5/0786
   A61P43/00 121
   A61P43/00 105
   A61K38/17
   A61K51/08 200
   A61K39/395 T
   A61K49/04
   A61K49/06
   A61K49/14
   A61P35/00
   G01N33/574 D
【請求項の数】18
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2019-151758(P2019-151758)
(22)【出願日】2019年8月22日
(62)【分割の表示】特願2017-134728(P2017-134728)の分割
【原出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2020-7329(P2020-7329A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】61/587,247
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】リング,アーロン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ケナン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ワイスコフ,キップ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】レビン,アロン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン,アービング エル.
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/070047(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/130053(WO,A1)
【文献】 特表2011−500005(JP,A)
【文献】 Molecular Cell,2008年,Vol.31,p.266-277
【文献】 The Journal of Immunology,2007年,Vol.179,p.7741-7750
【文献】 Journal of Molecular Biology,2007年,Vol.365,p.680-693
【文献】 Journal of Biological Chemistry,2007年,Vol.282, No.19,p.14567-14575
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD47を発現する細胞の食作用を増加させるための組成物であって、
高親和性SIRPαポリペプチド変異体を含み、
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、野生型ヒトSIRPα d1ドメイン配列内に少なくとも5以上かつ15以下のアミノ酸置換を含み、前記5以上の置換は、4Vまたは4I;6Iまたは6L;21V;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;54Q;56Pまたは56R;63I;66Tまたは66G;68R;92I;94Lまたは94V;および103Vからなる群から選択され、前記アミノ酸の位置は配列番号1に示す野生型ヒトSIRPα d1ドメイン配列または配列番号2に示すヒトSIRPαの野生型d1ドメイン配列に対応し、前記SIRPαポリペプチド変異体は、野生型ヒトSIRPα d1ドメインに比べて、ヒトCD47に対する親和性が増加しており、ヒトCD47に対するKは279nM未満であり、前記SIRPαポリペプチド変異体は、d1ドメインを含み、かつSIRPα膜貫通ドメインを欠いている、組成物。
【請求項2】
癌の処置のための組成物であって、
高親和性SIRPαポリペプチド変異体を含み、
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、野生型ヒトSIRPα d1ドメイン配列内に少なくとも5以上かつ15以下のアミノ酸置換を含み、前記5以上の置換は、4Vまたは4I;6Iまたは6L;21V;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;54Q;56Pまたは56R;63I;66Tまたは66G;68R;92I;94Lまたは94V;および103Vからなる群から選択され、前記アミノ酸の位置は配列番号1に示す野生型ヒトSIRPα d1ドメイン配列または配列番号2に示すヒトSIRPαの野生型d1ドメイン配列に対応し、前記SIRPαポリペプチド変異体は、野生型ヒトSIRPαd1ドメインに比べて、ヒトCD47に対する親和性が増加しており、ヒトCD47に対するKは279nM未満であり、前記SIRPαポリペプチド変異体は、d1ドメインを含み、かつSIRPα膜貫通ドメインを欠いている、組成物。
【請求項3】
組成物は腫瘍特異的抗体と組み合わせて使用する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ヒトCD47を発現する細胞が癌細胞である、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項5】
腫瘍を画像化するための組成物であって、
高親和性SIRPαポリペプチド変異体を含み、
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、野生型ヒトSIRPα d1ドメイン配列内に少なくとも5以上かつ15以下のアミノ酸置換を含み、前期5以上の置換は、4Vまたは4I;6Iまたは6L;21V;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;54Q;56Pまたは56R;63I;66Tまたは66G;68R;92I;94Lまたは94V;および103Vからなる群から選択され、前記アミノ酸の位置は配列番号1に示す野生型ヒトSIRPα d1ドメイン配列または配列番号2に示すヒトSIRPαの野生型d1ドメイン配列に対応し、前記SIRPαポリペプチド変異体は、野生型ヒトSIRPα d1ドメインに比べて、ヒトCD47に対する親和性が増加しており、ヒトCD47に対するKは279nM未満であり、前記SIRPαポリペプチド変異体は、d1ドメインを含み、かつSIRPα膜貫通ドメインを欠いている、組成物。
【請求項6】
前記5以上の置換は、6I、27I、31F、47V、53R、54Q、56P、66T、および92Iからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、少なくとも6以上の置換を含み、当該6以上の置換は、4Vまたは4I;6Iまたは6L;21V;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;54Q;56Pまたは56R;63I;66Tまたは66G;68R;92I;94Lまたは94V;および103Vからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記6以上の置換が、6I、27I、31F、47V、53R、54Q、56P、66T、および92Iからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、
(i)27Iまたは27L;53R;66Tまたは66G;68R;および103V、
(ii)4Vまたは4I;27Iまたは27L;47Vまたは47L;53R;54Q;66Tまたは66G;68R;および92I、
(iii)4Vまたは4I;6Iまたは6L;21V;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;56Pまたは56R;66Tまたは66G;68R;および94Lまたは94V、
(iv)6Iまたは6L;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;54Q;56Pまたは56R;66Tまたは66G;92I;および94Lまたは94V、
(v)4Vまたは4I;21V;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;54Q;56Pまたは56R;66Tまたは66G;94Lまたは94V;および103V、
(vi)4Vまたは4I;6Iまたは6L;27Iまたは27L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;56Pまたは56R;66Tまたは66G;68R;92I;および94Lまたは94V、
(vii)4Vまたは4I;6Iまたは6L;31T、31S、または31F;47Vまたは47L;53R;56Pまたは56R;66Tまたは66G;92I;および103V、
(viii)6I;27I;31F;47L;53R;54Q;56P;および66T、
(ix)4V;6I;27I;31F;47V;53R;54Q;56P;63I;66T;68R;および92I、
(x)6I;27I;31T;47V;53R;54Q;56P;66G;68R;92I;および103V、または
(xi)6I;27I;31F;47V;53R;54Q;56P;66T;および92I
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、
(i)27I;53R;66T;68R;103V、
(ii)4V;27L;47V;53R;54Q;66G;68R;92I、
(iii)4V;6I;21V;27I;31T;47L;53R;56P;66T;68R;94L、
(iv)6I;27I;31S;47V;53R;54Q;56P;66G;92I;94L、
(v)4I;21V;27I;31F;47V;53R;54Q;56R;66G;94V;103V、
(vi)4V;6I;27I;31F;47V;53R;56R;66G;68R;92I;94L、
(vii)4V;6L;31F;47V;53R;56P;66G;92I;103V、
(viii)6I;27I;31F;47L;53R;54Q;56P;66T、
(ix)4V;6I;27I;31F;47V;53R;54Q;56P;63I;66T;68R;92I、
(x)6I;27I;31T;47V;53R;54Q;56P;66G;68R;92I;103V、または
(xi)6I;27I;31F;47V;53R;54Q;56P;66T;92I
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、配列番号3から10および37から39に示すアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、配列番号10に示すアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、d1ドメインの外のSIRPα由来のアミノ酸配列をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は多量体である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は単量体である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は、免疫グロブリンFc配列に連結している、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体はペグ化されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記高親和性SIRPαポリペプチド変異体は検出可能な標識を含む、請求項5から17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所により付与された契約CA086017、HL058770、およびCA139490の下での政府援助により成された。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
細胞の代謝回転は、アポトーシスプログラム、またはそれらを除去されるようにマークする他の細胞変化の誘導から開始し、その後マクロファージ、樹枝状細胞等の食細胞によりマーカーが認識される。このプロセスは、不要な細胞の特異的および選択的除去を必要とする。健康な細胞と不要な/老化した/死にかけた細胞との区別は、「被食(eat−me)」シグナル、すなわち「自己改変(altered self)」と呼ばれるマーカーまたはリガンドにより示され、これは一方で食細胞上の受容体により認識され得る。健康な細胞は、食作用を活発に阻害する「貪食拒否(don’t eat−me)」シグナルを示すことができ、これらの信号は、死にかけた細胞においては下方制御され、または改変された構造で存在する。健康な細胞上の細胞表面タンパク質CD47およびその食細胞受容体SIRPαとの結合は、アポトーシスによる細胞排除およびFcR媒介食作用を含む複数の様式により媒介される飲み込みを止めることができる、重要な「貪食拒否(don’t eat−me)」シグナルを構成する。食細胞上のSIRPαのCD47媒介結合の遮断、またはノックアウトマウスにおけるCD47発現の喪失は、生細胞および非老化赤血球の除去をもたらし得る。代替として、SIRPα認識の遮断もまた、通常は貪食されない標的の飲み込みを可能とする。
【0003】
CD47は、単一のIg様ドメインおよび5つの膜貫通領域を有する広範に発現された膜貫通糖タンパク質であり、SIRPαの細胞リガンドとして機能し、結合は、SIRPαのNH2末端V様ドメインにより媒介される。SIRPαは、主として、マクロファージ、顆粒球、骨髄樹状細胞(DC)、マスト細胞、および造血幹細胞を含むそれらの前駆体を含む骨髄性細胞上に発現する。CD47結合を媒介するSIRPα上の構造決定基は、Lee et al. (2007) J. Immunol. 179:7741−7750;Hatherley et al. 2007) J.B.C. 282:14567−75により議論されており、CD47結合におけるSIRPαシス二量体化の役割は、Lee et al. (2010) J.B.C. 285:37953−63により議論されている。
【0004】
正常細胞の食作用を阻害するCD47の役割に一致して、その移動段階の直前またはその間にそれが一時的に造血幹細胞(HSC)および前駆細胞上で上方制御され、これらの細胞上のCD47のレベルが、それらがインビボで飲み込まれる確率を決定するという証拠が存在する。CD47はまた、複数の癌において構造的に上方制御される。腫瘍細胞によるCD47の過剰発現は、細胞が食作用を回避するのを可能にすることにより、病原性を増加させ得る。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において高親和性SIRPα試薬と呼ばれる、高親和性SIRPαポリペプチドおよびその類似体が提供される。試薬は、天然ヒトSIRPαタンパク質の配列変異体であり、天然SIRPαタンパク質とその受容体CD47との間の相互作用を遮断するインビボおよびインビトロ法への実用性を有する。親和性の増加を提供するアミノ酸変化は、d1ドメイン内に局在し、したがって、本発明の高親和性SIRPα試薬は、ヒトSIRPαのd1ドメインを含み、野生型配列に比べて少なくとも1つのアミノ酸変化がd1ドメイン内に存在する。そのような高親和性SIRPα試薬は、任意に、追加的アミノ酸配列、例えば抗体Fc配列;天然タンパク質またはその断片の残基150から374を制限なく含む、d1ドメイン以外の野生型ヒトSIRPαタンパク質の一部(通常、断片はd1ドメインに隣接している)等を含む。高親和性SIRPα試薬は、単量体または多量体、すなわち二量体、三量体、四量体等であってもよい。
【0006】
一実施形態において、本発明は、SIRPα膜貫通ドメインを欠き、野生型ヒトSIRPαに比べてd1ドメインに少なくとも1つのアミノ酸変化を含む、可溶性高親和性SIRPα試薬を提供し、このアミノ酸変化は、CD47に結合するSIRPαポリペプチドの親和性を増加させる。高親和性SIRPαポリペプチドは、例えばグリコシル化、ペグ化等により、翻訳後に修飾されてもよい。いくつかの実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、Fcドメインを含む融合タンパク質である。
【0007】
本発明はまた、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた高親和性SIRPα試薬の薬学的製剤を含む。そのような製剤は、単位用量、例えば個体における標的化食作用を増加させるのに効果的な用量として提供され得る。また、薬学的製剤は、使用のために再構成され得る高親和性SIRPα試薬の凍結乾燥または他の調製物を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、例えばマクロファージまたは他の哺乳動物食細胞により細胞の標的化食作用を操作する方法が提供される。そのような方法において、CD47を発現する細胞は、本発明の高親和性SIRPα試薬と、内因性SIRPαとCD47との間の相互作用を遮断するのに効果的な用量で接触される。この相互作用を遮断することにより、通常は貪食されない標的の飲み込みが可能となる。接触は、例えば治療目的においてインビボで、および例えばスクリーニングアッセイ等のためにインビトロで行われてもよい。これらの目的のための高親和性SIRPα試薬は、多量体または単量体であってもよい。単量体試薬は、食作用に標的化される細胞に選択的に結合する抗体と組み合わせた投与のための特定の用途が見出される。
【0009】
関連した実施形態において、腫瘍細胞を、細胞表面上のCD47を遮断またはマスクするのに効果的な用量の高親和性SIRPαポリペプチドと接触させ、通常は貪食されない標的の飲み込みを可能にすることにより、腫瘍細胞、例えば、癌腫、肉腫、黒色腫等の固形腫瘍;白血病;リンパ腫等が食作用に標的化される。効果的な用量の高親和性SIRPαポリペプチドの患者への投与は、CD47とSIRPαとの間の相互作用を防止し、これによって食作用による腫瘍細胞の排除が増加する。これらの目的において、高親和性SIRPα変異体を、食作用促進シグナルを提供する、食作用に標的化された細胞に結合した免疫グロブリンFcの存在下で投与することが有利となり得る。これらの態様において、高親和性SIRPαポリペプチドは、1つ以上の追加的腫瘍細胞マーカーに対するモノクローナル抗体と組み合わされてもよく、この組成物は、単一薬剤の使用と比較して、食作用および腫瘍細胞の排除を向上させる上で相乗効果を有し得る。単量体高親和性SIRPα試薬は、赤血球毒性が低いため、この目的に有利である。代替として、免疫グロブリンFc領域を含むSIRPα融合コンストラクト、例えば食作用促進シグナルを提供するものが投与されてもよい。
【0010】
他の実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、検出可能な標識を含む。そのような標識化試薬は、画像化目的においてインビトロまたはインビボで、例えば腫瘍の画像化において使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】高親和性SIRPα変異体の指向進化。A.可溶性高親和性SIRPαによるCD47遮断の概略図。(左)基礎的状態において、癌細胞上のCD47発現が、マクロファージ上のSIRPαを活性化し、SHP1および2チロシンホスファターゼによる阻害カスケードを開始し、癌細胞の食作用を防止する。(右)可溶性高親和性SIRPαタンパク質は、CD47に競合的に拮抗し、マクロファージ上のSIRPαとの結合を防止し、それにより食作用を脱阻害する。B.SIRPα VセットIgドメイン(ドメイン1、d1)の酵母表面ディスプレイの概略図。酵母クローン(灰色の細胞)は、SIRPα(色付きの突起)の異なる変異体を示す。挿入図は、Aga2との融合による酵母細胞表面へのSIRPαの連結、およびビオチン化CD47による選択を示す。C.改質されたSIRPα変異体の配列およびSPR親和性測定の概要。変異残基の位置および野生型対立遺伝子1におけるその対応する配列を、表の最上部に示す。赤色の文字は、コンセンサス変異を示し、青い網掛けは、コンセンサスにおける接触残基を示す。野生型SIRPαおよび高親和性変異体FD6結合固定CD47の代表的なSPRセンサグラムを、右側に示す。RU=反応単位。D.FD6(橙色)およびCD47(青色)のリボン型表現を含む透明表面として描画される、FD6:CD47複合体の結晶構造。E.野生型(赤紫色)および高親和性(緑色)SIRPα:CD47複合体の重ね合わせ。挿入図は、SIRPα C’Dループにおける変異接触残基(枝)およびCD47の結合界面(上部、空間充填;下部、枝)を示す。
図2】高親和性SIRPα変異体は、インビトロでCD47を遮断し、食作用を刺激する。A.野生型SIRPα対立遺伝子1(WTa1、ピンク色)、抗CD47クローンB6H12 Fab断片(橙色)、または2種の高親和性SIRPα変異体(FD6、CV1、緑色)を使用した、Rajiリンパ腫に対するCD47拮抗作用の用量−反応曲線。細胞は、100nM Alexa Fluor 647複合WT SIRPα四量体と競合する、滴定濃度のCD47遮断剤で染色された。B.ビヒクル対照(PBS)またはヒトIgG4に融合した高親和性SIRPα変異(CV1−hIgG4)と共に、CFSE標識化Rajiリンパ腫細胞およびRFP+マクロファージを用いて行った、食作用アッセイの代表的画像。挿入図は、複数の癌細胞を取り込んだマクロファージを示す。スケールバー=50μm。C.フローサイトメトリーにより分析された食作用アッセイを示す代表的プロット。ヒトマクロファージを、GFP+DLD−1細胞および示された処理と共に共培養した。ゲートを使用して、GFP+マクロファージ(赤色)を、全マクロファージ数(青色)のパーセンテージとして評価した。D.フローサイトメトリーにより評価されたドナー由来ヒトマクロファージによるGFP+腫瘍細胞の食作用。全てのタンパク質処理は、100nMで使用した。GFP+マクロファージのパーセンテージは、各細胞株に対する各ドナーによる最大反応に正規化された。E.様々な濃度のSIRPα−Fc変異体またはアイソタイプ適合抗CD47抗体(クローンB6H12)での、GFP+DLD−1細胞の食作用。F.非特異的アイソタイプ対照(mIgG1)、非遮断抗CD47(2D3)、または抗EpCam抗体での、GFP+DLD−1細胞の食作用。全ての抗体は、20μg/mLで使用した。WT SIRPαまたは高親和性SIRPα変異体FD6単量体を、1μMで使用し、示されるように組み合わせた。G.単独(赤色)またはWT SIRPα単量体(ピンク色)もしくは高親和性SIRPα単量体(緑色)と組み合わせた様々な濃度のセツキシマブ(抗EGFR)での、GFP+DLD−1細胞の食作用。全てのSIRPα変異体は、100nMで使用した。H.単独(赤色)またはWT SIRPα単量体(ピンク色)もしくは高親和性SIRPα単量体(緑色)の存在下での様々な濃度のリツキシマブ(抗CD20)での、GFP+Raji細胞の食作用。全てのSIRPα変異体は、100nMで使用した。D〜H 全てのヒトマクロファージ食作用アッセイは、最低3個体の独立した血液ドナーから得られたマクロファージを使用して行った。エラーバーは、標準偏差を示す。ns=有意ではない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001対WT SIRPα変異体(d、g、h)、対B6H12−hIgG4(e)、または別段に指定。
図3】高親和性SIRPα−Fc融合タンパク質は、癌の単一薬剤として効果的である。A.腹腔内にグラフトされ、周囲の腸ループの中に播種性腫瘍小結節を形成した、GFP−ルシフェラーゼ+DLD−1細胞の代表的画像。B.ビヒクル対照(PBS、赤色)または高親和性SIRPα−hIgG4融合タンパク質(CV1−hIgG4、青色)で処置された後の、GFP−ルシフェラーゼ+DLD−1細胞でグラフトされたマウスの生存率。C.bにおいて処置された動物からの全血細胞の表面に結合したヒトFcの代表的分析。D.経時的なコホート当たり4匹の動物からの平均および標準偏差を示すbにおける処置動物の血液分析。点線は、正常値の下限を示す。E.生物発光画像法により評価される、示された治療法による処置後のNSGマウスの背部皮下組織におけるGFP−ルシフェラーゼ+639−V膀胱癌細胞の増殖。バーは、中央値を示し、点は、個々のマウスからの値を示す。F.グラフト後37日目の各処置群からの639−Vグラフトマウスの代表的生物発光画像。G.グラフト後38日目の639−Vグラフトマウスの腫瘍体積。バーは、中央値を示し、点は、個々のマウスからの値を示す。H.GFP−ルシフェラーゼ+639−V細胞でグラフトされたマウスの生存率。A〜H.黒矢印は、毎日の処置の開始および終了を示している。ビヒクル対照処置対CV1−hIgG4において、ns=有意ではない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図4】高親和性SIRPα単量体は、インビボでモノクローナル抗体の有効性を向上させる。A.生物発光画像法により評価される、PBS(赤色)、CV1単量体(橙色)、リツキシマブ(緑色)、またはリツキシマブ+CV1単量体(青色)による毎日の処置後のGFP−ルシフェラーゼ+Rajiリンパ腫の腫瘍の増殖。バーは、中央値を示し、点は、個々のマウスからの値を示す。B.グラフト後29日目のマウスの代表的生物発光画像。赤丸は、原発腫瘍の部位を示し、赤矢印は、腋窩リンパ節への転位の部位を示す。C.Aからのマウスの平均腫瘍体積測定値。エラーバーは、標準偏差を示す。D.Aからのリンパ腫保有マウスの生存率。E.腫瘍体積測定により評価される、PBS(赤色)、CV1単量体(橙色)、アレムツズマブ(緑色)、またはアレムツズマブ+CV1単量体(青色)による週2回の処置後の、GFP−ルシフェラーゼ+Rajiリンパ腫の腫瘍の増殖。バーは、中央値を示し、点は、個々のマウスからの値を示す。F.Eからのリンパ腫保有マウスの生存率。A〜F 黒矢印は、処置の開始および終了を示している。全ての群対リツキシマブ+CV1単量体、またはアレムツズマブ単体対アレムツズマブ+CV1単量体において、ns=有意ではない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図5】第一世代選択からのライブラリ設計および配列。A.左:可能なアミノ酸変異体およびSIRPα内の無作為な位置の場所を含む、「接触残基」ライブラリの無作為な位置の表。右:非接触「コア残基」ライブラリの無作為な位置の場所および説明。SIRPαは、緑色で描かれ、CD47は、赤紫色で描かれ、無作為な位置は、空間充填側鎖として示されている。B.第一世代の選択後に得られたSIRPα変異体の配列の要約。変異残基の位置および野生型対立遺伝子1におけるその対応する配列を、表の最上部に示す。青の網掛けは、SIRPα:CD47界面において生じる「接触」変異を示す。イタリック体のフォントは、プールされたライブラリにおいて無作為化されていなかった位置での変異を示す(Glu47およびHis56)。
図6】第二世代選択のライブラリ設計。第二世代ライブラリの無作為な位置および可能なアミノ酸の表、ならびにSIRPαの構造内の可変残基の位置。SIRPαは、緑色で描かれ、CD47は、赤紫色で描かれ、無作為な位置は、空間充填側鎖として示されている。
図7】FD6:CD47複合体の代表的電子密度マップ。2mFo−DFc電子密度マップは、2.0σで輪郭化されている。モデルとなったアミノ酸残基は、枝として描かれ、FD6残基は黄色、およびCD47残基は緑色で示されている。CD47のピログルタミン酸残基1は、対応する残基および密度の上にPCA1として示されている。
図8】高親和性SIRPα変異体は、癌細胞上のCD47に強力に結合し、それを遮断する。A.Jurkat白血病細胞に結合する、野生型SIRPα対立遺伝子1単量体(WTa1単量体、ピンク色)、野生型SIRPα対立遺伝子1四量体(WTa1四量体、栗色)、または高親和性SIRPα変異体(FD6、FA4、緑色)の滴定曲線。エラーバーは、標準偏差を示す。B.Jurkat細胞に対するCD47遮断アッセイ。Alexa Fluor 647複合野生型SIRPα四量体に競合して、CD47拮抗薬を添加した。単量体としての第一世代SIRPα変異体(1A5単量体、ティール)、単量体としての第二世代SIRPα変異体(FD6単量体、緑色)、ヒトIgG4とのFc融合体としての第二世代SIRPα変異体(FD6−hIgG4、青色)、および抗CD47クローンB6H12(橙色)を用いて遮断を試験した。エラーバーは、標準偏差を示す。C.野生型SIRPα−Fcタンパク質(WTa1−hIgG4、ピンク色;WTa2−hIgG4、紫色)、高親和性SIRPα−Fcタンパク質(FD−hIgG4、CV1−hIgG4、緑色)、および抗CD47抗体クローン B6H12(B6H12−hIgG4、橙色)のDLD−1結腸癌細胞への結合。
図9】高親和性SIRPα−Fc変異体は、インビトロでDLD−1結腸癌細胞の増殖を制限する。処置されたマウスの腹腔の生物発光画像法により測定された、ビヒクル(PBS、赤色)または高親和性SIRPα−hIgG4融合タンパク質(CV1−hIgG4、青色)での処置後の腫瘍増殖曲線。点は、個々のマウスからの値を示し、線は、中央値を示す。**二元配置ANOVAおよびBonferroniの事後試験により、p<0.01。
図10】高親和性SIRPα−Fc変異体は、マクロファージ浸潤をもたらし、赤血球指数に影響する。A.CV1−hIgG4処置マウスからの切開された明確な皮下組織塊。左=白色光、右=GFP蛍光。点線の楕円は、2つの表在性腫瘍小結節を囲んだものであり、アスタリスクは、マクロファージに富む基質浸潤を示している。スケールバー=5mm。B.浸潤マクロファージの存在を実証する、CV1−hIgG4処置マウスからの明確な皮下組織塊のヘマトキシリンおよびエオシン染色。腫瘍小結節は、それを取り囲む炎症性浸潤物と共に画像の左上に見られる。挿入図は、点線の四角で囲まれた領域内の代表的なマクロファージを示す。C.CV1−hIgG4処置マウスからの明確な皮下組織塊内のマウスマクロファージマーカーF4/80の免疫組織化学的染色。腫瘍小結節は、画像の右部分に見られ、染色された浸潤マクロファージは、左側に見られる。挿入図は、点線の四角で囲まれた領域内の代表的なマクロファージを示し、食作用プロセス中のマクロファージ(黒矢印)および腫瘍細胞の飲み込みの成功(赤矢印)の証拠が見られる。D.グラフト後34日目のGFP−ルシフェラーゼ+639−V膀胱腫瘍を保有するマウスの血液分析。CV1−hIgG4処置は、赤血球指数の穏やかな減少をもたらした(黄色)。他の血統に対する毒性は観察されなかった。
図11】高親和性SIRPα単量体による処置は、赤血球毒性をもたらさない。A.示された治療法による処置の間中のヘマトクリット測定。B.示された治療法による処置の間中のマウスからのヘモグロビンレベル。C.示された治療法による処置の間中のマウスからの絶対赤血球数。A〜C.ns=有意ではない。黒矢印は、毎日の処置の開始および終了を示している。
図12】高親和性SIRPα変異体は、非ヒト霊長類において安全性を示す。カニクイザルを、高親和性SIRPα−Fc(FD6−hIgG4、赤色)、または用量漸増による一連の高親和性SIRPα単量体(FD6単量体、青色)の単回静脈注射で処置した。点線は、上でmg/kgで示された容量での処置の日数を示す。FD6−hIgG4による処置後、赤血球に対する中程度の毒性がヘマトクリットの低下として観察され、FD6単量体治療では、赤血球の損失は観察されなかった。他の臓器系に対する毒性は観察されなかった。
図13】放射性標識化高親和性SIRPα変異体は、癌に対する非侵襲的造影剤として効果的である。A.NSGマウスに、DLD−1ヒト結腸癌細胞を、右上部の脇腹に皮下グラフトした。腫瘍を保有するマウスに、Cu−64標識化FD6単量体を注射し、PETスキャンにより画像化した。赤い矢印は、腫瘍による取り込みを示し、黒い矢印は、腎臓による取り込みを示す。上のパネルは背側画像を、下のパネルは腫瘍を横切る断面図を示す。M2、M3は、2体の独立した動物からの画像を示す。B.経時的な動物からの信号の定量化。FD6は、少なくとも24時間腫瘍内に存続する。C.腫瘍および正常組織内の放射性標識化FD6の存在を示す表。T:N=示された組織に対する腫瘍内の取り込みの比。ID/g=組織のグラム当たりの注射用量。
図14】マクロファージの蛍光活性化細胞分類は、高親和性SIRPα変異体が癌細胞の食作用を誘導することを実証している。初代ヒトマクロファージおよびGFP+DLD−1結腸癌細胞を、100nM CV1−hIgG4の存在下で共培養した。食作用は、GFP+となったCD45+マクロファージのパーセンテージとして定量した。マクロファージ集団を、GFP陰性(青色)、GFP低(赤色)、またはGFP高(緑色)であるものに関して、フローサイトメトリーにより分類した。B 分類されたGFP高マクロファージは、明視野透過光下(上の画像)および蛍光下(下の画像;赤色=CD45、緑色=GFP)での顕微鏡法により可視化されるように、飲み込まれた腫瘍細胞を含有する。C DLD−1結腸癌細胞のWright−Giemsa染色。D 飲み込まれた物質を有さない分類されたGFP陰性マクロファージ集団のWright−Giemsa染色。E 飲み込まれた物質に関して濃縮された分類されたGFP低マクロファージ集団のWright−Giemsa染色。F 飲み込まれた腫瘍細胞を含有する分類されたGFP高マクロファージ集団のWright−Giemsa染色。B〜F スケールバーは100μmを表す。
図15】高親和性SIRPα変異体は、Her2+乳癌に対するトラスツズマブとの相乗効果を有する。初代ヒトマクロファージを、GFP+SK−BR−3乳癌細胞および示された処理と共に共培養した。食作用をフローサイトメトリーにより評価した。トラスツズマブへの高親和性SIRPα単量体FD6またはCV1の添加は、食作用を増強した。ns=有意ではない、***p<0.001、****p<0.0001対対照処理またはトラスツズマブと組み合わせた野生型SIRPα処理。
図16】高親和性SIRPα変異体は、腫瘍に結合した抗体Fc鎖の存在下で最大の有効性を誘導する。A 高親和性SIRPα変異体を示す概略図。B 高親和性SIRPα−Fc融合タンパク質が限定された凝集を伴って単一種(溶出体積=13.44)として精製されることを示す、分析ゲル濾過。C RFP+マウスマクロファージおよびGFP+ヒトリンパ腫Raji細胞を用いた食作用アッセイ。高親和性SIRPα変異体CV1単量体または抗CD47 Fab断片によるCD47遮断は、食作用の僅かな増加をもたらし、一方高親和性SIRPα−Fcまたは無傷抗CD47抗体による処置は、食作用の増大をもたらした。D CD47のオリゴマー化は食作用を誘導しない。初代ヒトマクロファージおよびGFP+DLD−1ヒト結腸癌細胞を用いて行った食作用アッセイ。食作用促進刺激を有さない高親和性SIRPα二量体での処置は、実質的なレベルの食作用を誘導しない。
図17】高親和性SIRPα変異体は、他の哺乳動物CD47相同分子種に結合し、それを遮断する。A.野生型対立遺伝子1ヒトSIRPαではなく、高親和性SIRPα変異体FD6のマウスCT26結腸癌細胞に対する結合。B.高親和性SIRPα変異体FD6−Fcは、野生型マウスSIRPα四量体の、酵母の表面上に提示されたマウスCD47に対する結合を遮断する。C.高親和性SIRPα変異体CV1は、酵母の表面上に提示されたマウスCD47に結合する。D.抗ヒトIgG二次抗体を用いたフローサイトメトリーにより検出された、100nM野生型対立遺伝子2 SIRPα−Fc、高親和性SIRPα−Fc、または抗CD47抗体(クローンB6H12および5F9)の、イヌMDCK細胞に対する結合。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
以下の説明において、細胞培養の分野において従来使用されるいくつかの用語が使用される。明細書および特許請求の範囲、ならびにそのような用語に与えられる範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0013】
SIRPαとそのリガンドCD47との間の相互作用の「阻害剤」、「遮断剤」および「マスキング剤」という用語は、SIRPαおよびCD47の結合を防止する分子を指す。開発目的のために、結合は、実験条件下で、例えば結合パートナーとしての単離タンパク質を使用して、結合パートナーとしてのタンパク質の一部を使用して、結合パートナーとしてのタンパク質またはタンパク質の一部の酵母ディスプレイを使用して等行われてもよい。
【0014】
生理学的に関連した目的のために、SIRPαおよびCD47の結合は、通常2つの細胞の間の事象であり、各細胞は、結合パートナーの1つを発現する。特に興味深いのは、マクロファージ等の食細胞上のSIRPαの発現;食作用の標的となり得る細胞、例えば腫瘍細胞、循環造血細胞等におけるCD47の発現等である。阻害剤は、受容体またはリガンド結合またはシグナリングに関するインビトロおよびインビボアッセイを使用して同定され得る。
【0015】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマーを指すように同義的に使用される。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学類似体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0016】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したアルファ炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾R基(例えばノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なるが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する構造を有する化学化合物を指す。
【0017】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書において、処置に関して評価されている、および/または処置されている哺乳動物を指すように同義的に使用される。一実施形態において、哺乳動物は人間である。「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、癌を有する個体を制限なく包含する。対象は、人間であってもよいが、他の哺乳動物、特に人間の疾患の実験モデルとして有用な哺乳動物、例えば、マウス、ラット等も含む。
【0018】
「癌」、「新生物」、および「腫瘍」という用語は、本明細書において、細胞増殖に対する制御の顕著な喪失を特徴とする異常増殖表現型を示すように自立的な無秩序増殖を示す細胞を指すように同義的に使用される。本出願における検出、分析、または処置の対象となる細胞は、前癌(例えば良性)、悪性、前転移、転移、および非転移細胞を含む。事実上全ての組織の癌が知られている。「癌の負荷」という用語は、対象における癌細胞の量または癌体積を指す。したがって、癌の負荷の低減は、対象における癌細胞の数または癌体積の低減を指す。「癌細胞」という用語は、本明細書において使用される場合、癌細胞である、または癌細胞のクローン等の癌細胞から得られる任意の細胞を指す。癌腫、肉腫、膠芽細胞腫、黒色腫等、リンパ腫、骨髄腫等の固形腫瘍、および白血病等の循環癌を含む、多くの種類の癌が当業者に知られている。癌の例は、卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、頭頸部癌、および脳腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0019】
癌の「病変」は、患者の健康を悪化させる全ての現象を含む。これは、異常または制御不能な細胞増殖、転移、隣接細胞の正常機能への干渉、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、炎症または免疫反応の抑制または悪化、新生組織形成、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、周囲または離れた組織または臓器、例えばリンパ節への浸潤等を制限なく含む。
【0020】
本明細書において使用される場合、「癌の再発」および「腫瘍の再発」という用語、ならびにそれらの文法的な変化形は、癌の診断後の新生物または癌細胞のさらなる増殖を指す。具体的には、再発は、さらなる癌細胞増殖が癌組織内で生じた場合に生じ得る。同様に、「腫瘍の拡大」は、腫瘍の細胞が局所的または離れた組織および臓器に広がった場合に生じ、したがって、腫瘍の拡大は、腫瘍転移を包含する。「腫瘍浸潤」は、腫瘍増殖が局所的に拡大し、正常な臓器機能の圧迫、破綻、または阻止により関連組織の機能を悪化させた場合に生じる。
【0021】
本明細書において使用される場合、「転移」という用語は、元の癌腫瘍の臓器と直接繋がっていない臓器または身体部分における癌腫瘍の増殖を指す。転移は、元の癌腫瘍の臓器と直接繋がっていない臓器または身体部分における検出不可能な量の癌細胞の存在である微小転移を含むように理解される。転移はまた、元の腫瘍部位からの癌細胞の出発、ならびに身体の他の部位への癌細胞の移動および/または浸潤等の、プロセスのいくつかのステップとして定義され得る。
【0022】
患者に関する「試料」という用語は、血液および生物由来の他の液体試料、生検標本等の固形組織試料、または組織培養物もしくはそれから得られた細胞およびその後代を包含する。この定義はまた、その入手後に任意の手法で、例えば試薬による処理、洗浄、または癌細胞等のある特定の細胞集団の濃縮等により操作された試料を含む。この定義はまた、特定種類の分子、例えば核酸、ポリペプチド等が濃縮された試料を含む。「生体試料」という用語は、臨床試料を包含し、また、外科的切除により得られた組織、生検により得られた組織、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、組織試料、臓器、骨髄、血液、血漿、血清等も含む。「生体試料」は、患者の癌細胞から得られた試料、例えば、患者の癌細胞から得られたポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含む試料(例えば、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含む細胞溶解物または他の細胞抽出物)、ならびに患者からの癌細胞を含む試料を含む。患者からの癌細胞を含む生体試料はまた、非癌細胞を含んでもよい。
【0023】
「診断」という用語は、本明細書において、分子または病状、疾患もしくは状態の特定、例えば、乳癌、前立腺癌、または他の種類の癌の分子サブタイプの特定を指すように使用される。
【0024】
「予後」という用語は、本明細書において、卵巣癌等の腫瘍性疾患の再発、転移拡大、および薬物耐性を含む、癌を原因とし得る死亡または進行の可能性の予測を指すように使用される。「予測」という用語は、本明細書において、観察、経験、または科学的根拠に基づいて予想または推定する行為を指すように使用される。一例において、医者は、原発腫瘍の外科的除去および/またはある特定期間の化学療法の後に、患者が癌の再発なしに生存する可能性を予測することができる。
【0025】
本明細書において使用される場合、「処置」、「処置する」等の用語は、ある効果を得る目的で薬剤を投与する、または手順を実行することを指す。その効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという観点において予防的であり得、かつ/または疾患および/もしくはその疾患の症状の部分的または完全な治癒という観点において治療的であり得る。「処置」は、本明細書において使用される場合、哺乳動物、特に人間における腫瘍の処置を含み得、(a)その疾患にかかりやすいが、まだそれを有すると診断されていない対象における、疾患または疾患の症状の発生を予防すること(例えば、原発疾患に関連し得る、またはそれにより引き起こされ得る疾患を含む)、(b)その疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、および(c)その疾患を軽減すること、すなわち、その疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0026】
処置することは、軽減、沈静、症状の消失もしくは疾患状態を患者により耐性とすること、悪化もしくは低下の速度を遅速化すること、または悪化の最終点をより非衰弱性とすること等の、任意の客観的または主観的パラメータを含む、癌の処置または改善または予防の成功の任意の指標を指し得る。症状の処置または改善は、医者による実験の結果を含む、客観的または主観的パラメータに基づくことができる。したがって、「処置する」という用語は、癌または他の疾患に関連した症状または状態の発症を予防もしくは遅延する、軽減する、または阻止もしくは阻害するための、本発明の化合物または薬剤の投与を含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症状、または疾患の副作用の低減、排除、または予防を指す。
【0027】
「〜と組み合わせた」、「併用療法」および「複合製品」は、ある特定の実施形態において、患者への第一の治療薬および本明細書に記載の化合物の同時投与を指す。組み合わせて投与される場合、各成分は、同時に投与されてもよく、または、異なる時点で逐次的に任意の順番で投与されてもよい。したがって、各成分は、所望の治療効果を提供するように、別個ではあるが時間的に十分近接して投与され得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、処置は、本発明の高親和性SIRPα試薬と細胞毒性薬との組み合わせを投与することにより達成される。細胞毒性薬の1つの例示的クラスは、化学療法薬である。例示的な化学療法薬は、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、デカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、デュオカルマイシン、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンアルファ、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミゾール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキセート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(Taxol(商標))、ピロカルピン、プロクロルペラジン、リツキシマブ、サプロイン、タモキシフェン、タキソール、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンを含むが、これらに限定されない。
【0029】
他の実施形態において、本発明の高親和性SIRPα試薬の投与は、患者のヘマトクリットを増加させる効果的用量の薬剤、例えばエリスロポエチン刺激剤(ESA)と組み合わされる。そのような薬剤は、当該技術分野において知られており、例えば、Aranesp(登録商標)(ダーベポエチンアルファ)、Epogen(登録商標)NF/Procrit(登録商標)NF(エポエチンアルファ)、Omontys(登録商標)(ペギネサチド)、Procrit(登録商標)等を含む。
【0030】
他の併用療法は、細胞特異的抗体、例えば腫瘍細胞マーカーに選択的な抗体、放射線、手術、および/またはホルモン枯渇化との投与を含む(Kwon et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A.,96:15074−9,1999)。血管形成阻害薬もまた、本発明の方法と組み合わせることができる。
【0031】
いくつかの抗体が、現在癌の処置のために臨床的に使用されており、またいくつかは、様々な臨床開発段階にある。例えば、B細胞悪性腫瘍の処置のためのいくつかの抗原および対応するモノクローナル抗体が存在する。1つの標的抗原は、CD20である。リツキシマブは、CD20抗原に対するキメラ非複合モノクローナル抗体である。CD20は、B細胞活性化、増殖、および分化において重要な機能的役割を有する。CD52抗原は、慢性リンパ性白血病の処置に適応されるモノクローナル抗体アレムツズマブにより標的化される。CD22は、いくつかの抗体により標的化され、最近、化学療法耐性有毛細胞白血病における毒素と組み合わせて有効性を示した。CD20を標的化する2つの新たなモノクローナル抗体、トシツモマブおよびイブリツモマブが、食品医薬品局(FDA)に登録されている。これらの抗体は、放射性同位体と複合化している。アレムツズマブ(Campath)は、慢性リンパ性白血病の処置に使用され、ゲムツズマブ(Mylotarg)は、急性骨髄性白血病の処置における使用が見出されており、イブリツモマブ(Zevalin)は、非ホジキンリンパ腫の処置における使用が見出されており、パニツムマブ(Vectibix)は、結腸癌の処置における使用が見出されている。
【0032】
固形腫瘍において使用されている本発明の方法において有用なモノクローナル抗体は、エドレコロマブおよびトラスツズマブ(ハーセプチン)を制限なく含む。エドレコロマブは、結腸および直腸癌において見られる17−1A抗原を標的化し、欧州ではそれらの適応症に対する使用が認可されている。トラスツズマブは、HER−2/neu抗原を標的化する。この抗原は、乳癌の25%から35%に見られる。セツキシマブ(Erbitux)もまた、本発明の方法における使用の対象となる。抗体は、EGF受容体(EGFR)に結合し、結腸癌ならびに頭部および頚部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む固形腫瘍の処置において使用されている。
【0033】
癌治療に加えて、本発明のSIRPα試薬は、モノクローナル抗体が細胞の枯渇を目的として投与される他の治療において、例えば枯渇免疫細胞による炎症性疾患の処置において有用である。そのような目的のために、本発明のSIRPα試薬は、治療抗体、例えば、炎症性疾患および自己免疫状態におけるB細胞の枯渇のためのリツキシマブ、多発性硬化症のためのアレムツズマブ、免疫抑制のためのOKT3、骨髄移植の調整のためのその他の抗体等と組み合わせて投与される。
【0034】
癌治療薬剤、ESAまたは腫瘍に対する抗体の、本発明の薬学的組成物との「併用投与」は、薬物、ESAまたは抗体と本発明の組成物の両方が治療効果を有するような時点での、高親和性SIRPα試薬との投与を意味する。そのような併用投与は、本発明の化合物の投与と比較して、薬物、ESAまたは抗体の同時(すなわち同じ時点)、前、または後の投与を含み得る。当業者は、本発明の特定の薬物および組成物の投与の適切なタイミング、順序および用量を容易に決定する。
【0035】
本明細書において使用される場合、「無病生存率」という語句は、そのような腫瘍再発および/または拡大の欠如、および患者の寿命に対する癌の影響に関する診断後の患者の運命を指す。「全生存率」という語句は、患者の死因が癌の影響に直接起因しない可能性にもかかわらず、診断後の患者の運命を指す。「無病生存率の可能性」、「再発のリスク」という語句およびそれらの変化形は、癌の診断後の患者における腫瘍再発または拡大の確率を指し、この確率は、本発明の方法に従い決定される。
【0036】
本明細書において使用される場合、「相関する」または「〜と相関する」という用語、および同様の用語は、2つの事象の発生の間の統計的関連を指し、事象は、数、データセット等を含む。例えば、事象が数を含む場合、正の相関(本明細書において「直接的相関」とも呼ばれる)は、一方が増加すると、他方も同様に増加することを意味する。負の相関(本明細書において「逆相関」とも呼ばれる)は、一方が増加すると、他方は減少することを意味する。
【0037】
「用量単位」は、処置されるべき特定の個体に対する単位用量として適した物理的に個別の単位を指す。各単位は、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果(複数を含む)を生成するように計算される所定量の活性化合物(複数を含む)を含有し得る。単位剤形の仕様は、(a)活性化合物(複数を含む)の固有の特徴および達成されるべき特定の治療効果(複数を含む)、ならびに(b)そのような活性化合物(複数を含む)を調合する技術分野の本質的な限界によって決定付けられ得る。
【0038】
「薬学的に許容される賦形剤」は、一般的に安全で、非毒性で望ましい薬学的組成物を調製する上で有用である賦形剤を意味し、獣医学的用途および人間の薬学的用途に許容される賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、または、エアロゾル組成物の場合、気体であってもよい。
【0039】
「薬学的に許容される塩およびエステル」は、薬学的に許容され、所望の薬学的特性を有する塩およびエステルを意味する。そのような塩は、化合物中に存在する酸性プロトンが無機または有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩を含む。好適な無機塩は、アルカリ金属、例えばナトリウムおよびカリウム、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムで形成されるものを含む。好適な有機塩は、アミン塩基のような有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Nメチルグルカミン等で形成されるものを含む。そのような塩はまた、無機酸(例えば、塩酸および臭化水素酸)ならびに有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびにアルカンおよびアレーンスルホン酸、例えばメタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸)で形成される酸付加塩を含む。薬学的に許容されるエステルは、化合物中に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ、およびホスホンオキシ基から形成されるエステル、例えばC1−6アルキルエステルを含む。2つの酸性基が存在する場合、薬学的に許容される塩またはエステルは、モノ−酸−モノ−塩もしくはエステル、またはジ−塩もしくはエステルであってもよく、同様に、3つ以上の酸性基が存在する場合、そのような基のいくつかまたは全てが塩化またはエステル化されてもよい。本明細書において命名される化合物は、非塩化もしくは非エステル化形態、または塩化および/もしくはエステル化形態で存在してもよく、そのような化合物の命名は、元の(非塩化および非エステル化)化合物とその薬学的に許容される塩およびエステルの両方を含むように意図される。また、本発明において命名されるある特定の化合物は、2つ以上の立体異性体形態で存在してもよく、そのような化合物の命名は、全ての単一立体異性体およびそのような立体異性体の全ての混合物(ラセミ体またはその他に関わらず)を含むように意図される。
【0040】
「薬学的に許容される」、「生理学的に耐性である」という用語およびそれらの文法的な変化形は、組成物、担体、希釈剤および試薬を指す場合、同義的に使用され、材料が、組成物の投与が許容されない程度までの望ましくない生理学的効果を生成せずに、人間に、または人間に対して投与され得ることを表す。
【0041】
「治療上効果的な量」は、疾患の処置のために対象に投与された場合、その疾患の処置を達成するのに十分な量を意味する。
【0042】
実施形態の詳細な説明
一般に高親和性SIRPα試薬と呼ぶことができる高親和性SIRPαポリペプチドおよびその類似体が提供される。試薬は、天然ヒトSIRPαタンパク質の変異体である。一実施形態において、本発明は、可溶性SIRPα変異体ポリペプチドを提供し、ポリペプチドは、SIRPα膜貫通ドメインを欠き、野生型SIRPα配列に比べて少なくとも1つのアミノ酸変化を含み、アミノ酸変化は、例えばオフ速度を少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、またはそれ以上低下させることにより、CD47に結合するSIRPαポリペプチドの親和性を増加させる。
【0043】
本発明によれば、アミノ酸変化は、当該技術分野において知られている、または後に発見される、任意の天然に存在する、または人工のアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化は、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、追加、挿入等を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化は、既存のアミノ酸を別のアミノ酸で置き換えることを含む。関連した実施形態において、アミノ酸変化は、1つ以上の既存のアミノ酸を、天然に存在しないアミノ酸で置き換えること、または1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を挿入することを含む。アミノ酸変化は、天然配列に比べて少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれ以上のアミノ酸残基においてなされてもよい。1つ以上のアミノ酸変化は、SIRPαの特性を改変する、例えば、安定性、結合活性および/または特異性等に影響する。
【0044】
本発明の高親和性SIRPα試薬は、SIRPαのd1ドメイン内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、このドメインは、配列番号1に記載され、天然ヒト全長ヒトタンパク質の残基31から149に対応する。高親和性SIRPα試薬は、d1ドメインの全てまたは一部からなってもよく、またd1ドメインの外のSIRPαからの1つ以上のアミノ酸をさらに含んでもよく、または、免疫グロブリンFc領域配列を制限なく含むSIRPα以外のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0045】
高親和性SIRPαポリペプチドは、少なくとも約100アミノ酸の長さ、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約150、少なくとも約200アミノ酸の長さから、膜貫通ドメインにおける野生型タンパク質の全長まで、すなわち約343アミノ酸の長さまでであってもよく、任意に異種ポリペプチド、例えば免疫グロブリンFcに融合していてもよい。
【0046】
別の実施形態において、d1ドメイン内の、本明細書に記載の少なくとも1つのアミノ酸変化を含むより短いペプチドの使用が見出され、そのようなペプチドは、通常は、10アミノ酸以下の長さ、15アミノ酸以下の長さ、20以下、25以下、30アミノ酸以下、35アミノ酸以下、40アミノ酸以下、45アミノ酸以下、50アミノ酸以下、55アミノ酸以下、60アミノ酸以下、65アミノ酸以下、70アミノ酸以下、75アミノ酸以下、80アミノ酸以下、85アミノ酸以下、90アミノ酸以下、95アミノ酸以下、100アミノ酸以下の本明細書に記載の配列からのアミノ酸の連続的広がりを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、高親和性SIRPαポリペプチドにおけるアミノ酸変化は、残基(番号付けは、配列番号1として記載のd1ドメインの野生型配列により定義される)L4、V6、V27、I36、F39、L48、I49、Y50、F57、V60、M72、F74、I76、V92、F94およびF103を制限なく含む、SIRPαの疎水性コア残基のセット内のアミノ酸の1つ以上でなされる。代替の実施形態において、アミノ酸変化は、例えばCV1に対して示されるように、野生型対立遺伝子2配列においてなされる。
【0048】
他の実施形態において、アミノ酸変化は、A29、L30、I31、P32、V33、G34、P35、Q52、K53、E54、S66、T67、K68、R69、F74、K93、K96、G97、S98、およびD100(配列番号1)を制限なく含む、CD47と相互作用する接触残基のセット内のアミノ酸の1つ以上でなされる。
【0049】
他の実施形態において、アミノ酸変化は、上で定義された組み合わされた接触残基のセットおよび疎水性コア残基のセット内の2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、および14個以下のアミノ酸でなされる。
【0050】
いくつかの実施形態において、アミノ酸変化は、残基L4、V6、A21、V27、I31、E47、K53、E54、H56、S66、V63、K68、V92、F94、およびF103、またはそれらの組み合わせを制限なく含むセット内のアミノ酸の1つ以上で、例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、および15個以下の残基でなされる。
【0051】
いくつかの実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、(1)L4V;L4I;(2)V6I;V6L;(3)A21V;(4)V27I;V27L;(5)I31T;I31S;I31F;(6)E47V;E47L;(7)K53R;(8)E54Q;(9)H56P;H56R;(10)S66T;S66G;(11)K68R;(12)V92I;(13)F94L;F94V;(14)V63I;および(15)F103Vから選択される少なくとも1つのアミノ酸変化を含む。いくつかの実施形態において、高親和性SIRPαポリペプチドは、残基の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個または15個全てにおける、上記(1)から(15)までから選択される修飾、ならびにそれらの組み合わせおよび保存的均等物を含む。
【0052】
アミノ酸変化のセットは、上記の組み合わせ、例えば以下を含み得る。
・ V27IまたはV27L;K53R;S66TまたはS66G;K68R;およびF103V、
・ L4VまたはL4I;V27IまたはV27L;E47VまたはE47L;K53R;E54Q;S66TまたはS66G;K68R;V92I;およびF103V、
・ L4VまたはL4I;V6IまたはV6L;A21V;V27IまたはV27L;I31T、I31SまたはI31F;E47VまたはE47L;K53R;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;K68R;およびF94LまたはF94V、
・ V6IまたはV6L;V27IまたはV27L;I31T、I31S、またはI31F;E47VまたはE47L;K53R;E54Q;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;V92I;およびF94LまたはF94V、
・ L4VまたはL4I;A21V;V27IまたはV27L;I31T、I31S、またはI31F;E47VまたはE47L;K53R;E54Q;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;F94LまたはF94V;およびF103V、
・ L4VまたはL4I;V6IまたはV6L;V27IまたはV27L;I31T、I31S、またはI31F;E47VまたはE47L;K53R;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;K68R;V92I;およびF94LまたはF94V、
・ L4VまたはL4I;V6IまたはV6L;I31T、I31S、またはI31F;E47V、またはE47L;K53R;H56PまたはH56R;S66T、またはS66G;V92I;およびF103V、
・ V6I;V27I;I31F;E47L;K53R;E54Q;H56P;およびS66T、
・ L4V;V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;V63I;S66T;K68R;およびV92I、
・ V6I;V27I;I31T;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66G;K68R;V92I;およびF103V、
・ V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66T;およびV92I。
【0053】
いくつかの実施形態において、高親和性SIRPαポリペプチドは、以下のアミノ酸変化のセットを含む。
・ 例えば(配列番号3)に示されるような{V27I;K53R;S66T;S66G;K68R;F103V};
・ 例えば(配列番号4)に示されるような{L4V;V27L;E47V;K53R;E54Q;S66G;K68R;V92I};
・ 例えば(配列番号5)に示されるような{L4V;V6I;A21V;V27I;I31T;E47L;K53R;H56P;S66T;K68R;F94L};
・ 例えば(配列番号6)に示されるような{V6I;V27I;I31S;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66G;V92I;F94L};
・ 例えば(配列番号7)に示されるような{L4I;A21V;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56R;S66G;F94V;F103V};
・ 例えば(配列番号8)に示されるような{L4V;V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;H56R;S66G;K68R;V92I;F94L};または
・ 例えば(配列番号9)に示されるような{L4V;V6L;I31F;E47V;K53R;H56P;S66G;V92I;F103V}
・ 例えば配列番号37に示されるような{V6I;V27I;I31F;E47L;K53R;E54Q;H56P;S66T}、
・ 例えば配列番号38に示されるような{L4V;V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;V63I;S66T;K68R;V92I}、
・ 例えば配列番号39に示されるような{V6I;V27I;I31T;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66G;K68R;V92I;F103V}、
・ 例えば配列番号10に示されるような{V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66T;V92I}。
【0054】
本発明の目的のために、本発明の試薬は、通常はシグナル配列と膜貫通ドメイン、または結合活性を保時するその断片との間に存在する、認識可能な親和性、例えば高い親和性でCD47に結合するのに十分なSIRPαの一部を含む。高親和性SIRPα試薬は、通常、上述のような修飾アミノ酸残基を有するSIRPαの少なくともd1ドメイン(配列番号1)を含む。高親和性SIRPαポリペプチドは、野生型SIRPαd1ポリペプチド(配列番号1)またはその対立遺伝子変異体、すなわち野生型対立遺伝子2の少なくともアミノ酸1〜3、7〜20、32〜46、69〜91、95〜102を含んでもよい。高親和性SIRPαポリペプチドは、さらに、天然タンパク質の残基150から374(配列番号2として記載)を制限なく含む、または、配列番号2に記載の配列の少なくとも10個の連続アミノ酸、少なくとも20個の連続アミノ酸、少なくとも50個の連続アミノ酸、少なくとも100個の連続アミノ酸、少なくとも125個の連続アミノ酸、少なくとも250個の連続アミノ酸、もしくはそれ以上を制限なく含む、d1ドメイン以外の天然ヒトSIRPαタンパク質の一部を含んでもよい。
【0055】
本発明の高親和性SIRPα試薬は、さらに修飾されてもよく、例えば、様々な目的のために、広範な他のオリゴペプチドまたはタンパク質に連結されてもよい。例として、例えばプレニル化、アセチル化、アミド化、カルボキシル化、グリコシル化、ペグ化等により翻訳後に修飾されてもよい。そのような修飾はまた、グリコシル化の変更、例えば、その合成および処理中に、またはさらなる処理ステップにおいて、ポリペプチドのグリコシル化パターンを変更することにより、例えば、ポリペプチドを、哺乳動物グリコシル化または脱グリコシル化酵素等のグリコシル化に影響する酵素に暴露することにより作製されたものを含んでもよい。いくつかの実施形態において、本発明のSIRPα変異体は、リン酸化アミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリン、またはホスホトレオニンを有するSIRPα変異体を含む。
【0056】
一実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、CD47に対して少なくとも約1×10−8Mの動力学的Kを有する。別の実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、CD47に対して少なくとも約1×10−9Mの動力学的Kを有する。さらに別の実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、CD47に対して少なくとも約1×10−10Mの動力学的Kを有する。本明細書に記載の様々な実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、配列番号1および2に例示されるように、天然ヒトSIRPαポリペプチドの動力学的Kよりも少なくとも約5倍大きい、CD47に対する動力学的Kを示す。いくつかの実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、天然SIRPαポリペプチドの動力学的Kよりも少なくとも約10倍、50倍、100倍、500倍、1000倍大きい、CD47に対する動力学的Kを有する。
【0057】
CD47への結合は、例えば、アッセイプレート上にコーティングされた;微生物細胞表面上に提示された;溶液中等のCD47に結合するSIRPα試薬の能力により決定され得る。本発明のSIRPα変異体のCD47に対する結合活性は、リガンド、例えばCD47、またはSIRPα変異体を、ビーズ、基板、細胞等に固定することにより分析され得る。適切な緩衝液に試薬を添加することができ、結合パートナーを所与の温度である期間インキュベートすることができる。洗浄して未結合物質を除去した後、結合したタンパク質を、例えばSDS、高pHの緩衝液等で放出させ、分析することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明のSIRPα変異体は、例えば、第2のポリペプチドとフレームで融合された融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、例えば、融合タンパク質が循環から急速に排除されないように、融合タンパク質のサイズを増加させることができる。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域の一部または全てである。他の実施形態において、第2のポリペプチドは、例えば、増加したサイズ、多量体化ドメイン、および/またはIg分子との追加的な結合もしくは相互作用を提供する、実質的にFcに類似した任意の好適なポリペプチドである。これらの融合タンパク質は、精製、多量体化を促進し、インビボで増加した半減期を示すことができる。また、ジスルフィド結合多量体構造を有する融合タンパク質が、単量体SIRPα以外の分子に結合およびそれを中性化する上で、より効率的となり得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、高親和性SIRPα結合ドメイン、すなわちCD47に対する高い親和性を提供するために本明細書に記載のように修飾されたSIRPαd1ドメインは、多量体タンパク質として提供され、すなわち、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のSIRPα結合ドメインは、例えば融合タンパク質として;ジスルフィド結合により;アビジン、ストレプトアビジン等に結合するビオチンを介して、共有結合的または非共有結合的に連結している。そのような多量体高親和性SIRPα結合タンパク質は、CD47を発現する細胞の食作用を増加させるための単一薬剤として、または他の結合物質、例えば細胞特異的モノクローナル抗体の組み合わせとして有用である。
【0060】
いくつかのそのような実施形態において、高親和性SIRPα結合ドメインは、免疫グロブリン配列に融合または別様に連結して、キメラタンパク質を形成する。免疫グロブリン配列は、好ましくは、免疫グロブリン定常ドメイン(複数を含む)であるが、必然的ではない。そのようなキメラにおける免疫グロブリン部分は、任意の種、通常は人間から得ることができ、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgDまたはIgMを含む。免疫グロブリン部分は、1つ以上のドメイン、例えば、CH1、CH2、CH3等を含んでもよい。
【0061】
適切な免疫グロブリン定常ドメイン配列に連結した配列から構築されたキメラが、当該技術分野において知られている。そのような融合において、コードされたキメラポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖の定常領域の少なくとも機能的に活性なヒンジ、CH2およびCH3ドメインを保時し得る。融合はまた、定常ドメインのFc部分のC末端に、または、重鎖のCH1もしくは軽鎖の対応する領域のすぐN末端側に形成される。融合が形成される正確な部位は重要ではなく、特定の部位が周知であり、SIRPαポリペプチド−免疫グロブリンキメラの生物活性、分泌または結合特性を最適化するために選択され得る。いくつかの実施形態において、SIRPαポリペプチド−免疫グロブリンキメラは、単量体、またはヘテロもしくはホモ多量体として、特に二量体または四量体として組み立てられる。
【0062】
免疫グロブリン軽鎖の存在は必要ではないが、免疫グロブリン軽鎖が含まれてもよく、SIRPαポリペプチド−免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドに共有結合的に会合しているか、またはSIRPαポリペプチドに直接融合している。重鎖および軽鎖定常領域の両方を提供するために、単鎖コンストラクトが使用されてもよい。
【0063】
他の融合タンパク質コンストラクトにおいて、第2のポリペプチドは、融合ポリペプチドの精製を容易化するペプチド等のマーカー配列である。例えば、マーカーアミノ酸配列は、ヘキサ−ヒスチジンペプチド、中でも例えばpQEベクター内に提供されたタグ等(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue,Chatsworth,Calif.,9131)であってもよく、その多くは市販されている。例えばGentz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824,1989に記載のように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な別のペプチドタグである「HA」タグは、インフルエンザ血球凝集素タンパク質から得られるエピトープに相当する。Wilson et al.,Cell 37:767,1984。ポリペプチドの取り扱いを容易化するためのペプチド部分の追加は、当該技術分野においてよく知られており、日常的な技術である。
【0064】
別の実施形態において、高親和性SIRPα結合ドメインは、単量体タンパク質として提供され、これは、単離されたd1ドメイン、またはSIRPαもしくはキメラ配列に融合したd1ドメインであってもよい。単量体SIRPα結合ドメインは、例えば、細胞特異的結合物質、例えば抗体、特に本明細書に記載の腫瘍細胞特異的抗体と組み合わされた場合、CD47を発現する細胞の食作用を増加させるためのアジュバントとして有用である。単量体SIRPα結合ドメインはまた、SIRPαを発現し、本発明のSIRPα試薬による遮断に反応する、マクロファージ、樹枝状細胞、好中球、顆粒球等のいくつかの免疫細胞による食作用および他の免疫機能、例えばADCC、抗原提示のための抗原の取り込み等を増加させるためのアジュバントとして有用である。単量体高親和性SIRPα結合ドメインはまた、例えば検出可能な標識に複合化した場合、造影剤として有用である。
【0065】
いくつかの他の実施形態において、本発明の高親和性SIRPα試薬は、タンパク質分解に対するその耐性を改善するために、または溶解特性を最適化するために、またはそれらを治療薬剤としてより好適とするためにさらに修飾された試薬を含む。例えば、本発明の変異体は、さらに、天然に存在するLアミノ酸以外、例えばDアミノ酸、または天然に存在しない合成アミノ酸の残基を含有する類似体を含む。Dアミノ酸は、アミノ酸残基の一部または全てにおいて置換されていてもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態において、高親和性SIRPα試薬は、1つ以上の画像化部分、すなわち検出可能な標識に結合または複合化される。本明細書において使用される場合、「細胞毒性部分」は、細胞に近接した、または細胞により吸収された場合に、細胞増殖を阻害する、または細胞死を促進する部分を指す。これに関して好適な細胞毒性部分は、放射性同位体(放射性核種)、化学毒性薬剤、例えば分化誘導剤および微小化学毒性薬、毒素タンパク、およびそれらの誘導体を含む。
【0067】
本明細書において使用される場合、「画像化部分」または検出可能な標識は、可視化技術、例えばX線造影法、ポジトロン放出型断層撮影法、磁気共鳴画像化法、直接的または間接的な目視検査等において腫瘍と周囲の健康組織との間のコントラストを増加させるために使用され得る部分を指す。したがって、好適な画像化部分は、X線造影部分、例えば重金属および放射線放出部分、ポジトロン放出部分、磁気共鳴コントラスト部分、ならびに光学的に視認可能な部分(例えば、蛍光または可視スペクトル染料、視認可能な粒子等)を含む。治療部分であるものと、画像化部分であるものとの間には、ある程度の重複が存在することが、当業者に認識される。
【0068】
一般に、治療または画像化薬剤は、薬物動態学的安定性、および患者に対する全体的毒性の低減の必要性を適切に考慮して、任意の好適な技術により高親和性SIRPα試薬部分に複合化され得る。薬剤とSIRPαとの間の直接的反応は、それぞれが互いに反応し得る官能基を有する場合可能である。例えば、アミノまたはスルフヒドリル基等の求核基は、無水物もしくは酸ハライド等のカルボニル含有基と、または、良好な脱離基(例えばハライド)を含有するアルキル基と反応可能となり得る。代替として、好適な化学的リンカー基が使用されてもよい。リンカー基は、結合能力への干渉を回避するためのスペーサとして機能し得る。
【0069】
ホモおよびヘテロ官能性の両方の(Pierce Chemical Co.,Rockford,IIIのカタログに記載のもの等)様々な二官能性または多官能性試薬が、リンカー基として使用可能であることが、当業者に明らかである。例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化炭水化物残基を介して、結合が達成されてもよい。そのような方法を説明した多くの参考文献がある。代替として、SIRPαは、非共有結合対、例えばストレプトアビジン/ビオチン、またはアビジン/ビオチンの使用により、細胞毒性または画像化部分に連結される。これらの実施形態において、対の一方の要素は、SIRPαに共有結合し、結合対の他方の要素は、細胞毒性または画像化部分に共有結合している。2つ以上の細胞毒性および/または画像化部分に結合することが望ましくなり得る。高親和性SIRPα試薬を多重誘導体化することにより、いくつかの戦略を同時に実行することができ、抗体をいくつかの可視化技術の造影剤として有用とすることができ、または、治療抗体を可視化技術による追跡のために標識化することができる。
【0070】
担体は、直接的またはリンカー基を介した共有結合、および非共有結合的会合を含む様々な様式で薬剤を保時することができる。好適な共有結合担体は、アルブミン等のタンパク質、ペプチド、およびアミノデキストラン等の多糖類を含み、そのそれぞれは、部分の結合のための複数の部位を有する。また、担体は、非共有結合的会合、例えば非共有結合またはカプセル化により薬剤を保持し得る。
【0071】
放射性各種薬剤に特異的な担体およびリンカーは、放射性ハロゲン化小分子およびキレート化合物を含む。放射性核種キレートは、金属または金属酸化物放射線各種の結合のためのドナー原子として窒素および硫黄原子を含有するものを含む、キレート化合物から形成され得る。
【0072】
本発明における画像化部分としての使用のためのX線造影部分は、比較的大きな原子、例えば金、イリジウム、テクネチウム、バリウム、タリウム、ヨウ素、およびそれらの同位体等との化合物およびキレートを含む。より毒性の低いX線造影部分、例えばヨウ素またはヨウ素同位体が、本発明の組成物および方法において使用されることが好ましい。そのような部分は、許容され得る化学リンカーまたはキレート担体を介して、高親和性SIRPα試薬抗体部分に複合化され得る。本明細書における使用のためのポジトロン放出部分は、18Fを含み、これは、高親和性SIRPα試薬とのフッ素化反応により容易に複合化され得る。
【0073】
磁気共鳴コントラスト部分は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)およびイッテルビウム(III)イオンのキレートを含む。その非常に強い磁気モーメントにより、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、および鉄(III)イオンが特に好ましい。
【0074】
画像化部分としての使用のための光学的に視認可能な部分は、蛍光染料または可視スペクトル染料、視認可能な粒子、および他の視認可能な標識部分を含む。フルオレセイン、クマリン、ローダミン、ボディピーテキサスレッド、およびシアニン染料等の蛍光染料は、十分な励起エネルギーが視覚的に検査されるべき部位に提供され得る場合有用である。内視鏡可視化手順が、そのような標識の使用により適合し得る。許容され得る染料は、FDAに認可された非毒性の食用染料および色素を含むが、内服投与に認可されている薬学的に許容される染料が好ましい。
【0075】
特定の患者に与えられるべき画像化複合体組成物の効果的な量は、様々な因子に依存し、そのいくつかは患者毎に異なる。有能な臨床医学者は、腫瘍の可視化を促進するのに効果的な量を決定することができる。用量は、腫瘍の処置、投与経路、治療薬の性質、治療薬に対する腫瘍の感受性等に依存する。通常の技術を使用して、有能な臨床医学者は、日常的な臨床試験の間に、特定の治療薬または画像化組成物の用量を最適化することができる。
【0076】
典型的な用量は、対象の体重1キログラム当たり、0.001から100ミリグラムであってもよい。患者の体重1キログラム当たり0.1から10mgまでの範囲の比較的多量の用量が、比較的非毒性の画像化部分を用いて複合体を画像化するために使用され得る。使用される量は、画像化方法の感度、および画像化部分の相対的毒性に依存する。
【0077】
本発明のSIRPα変異体は、当該技術分野において知られている、または後に発見される任意の好適な手段により生成され得、例えば、真核細胞または原核細胞から生成され得る、インビトロで生成され得る、等である。タンパク質が原核細胞により生成される場合、アンフォールディング、例えば、熱変性、DTT還元等によりさらに処理されてもよく、またさらに当該技術分野において知られている方法を使用してリフォールディングされてもよい。
【0078】
ポリペプチドは、当該技術分野において知られている従来の方法を使用して、細胞不含翻訳系により、または人工的なインビトロ合成により調製され得る。様々な市販の合成装置、例えば、Applied Biosystems,Inc.、Foster City、CA、Beckman等による自動化合成装置が利用可能である。合成装置を使用することにより、天然に存在するアミノ酸を、非天然アミノ酸と置換することができる。具体的な配列および調製様式は、利便性、経済性、必要な純度等により決定される。
【0079】
ポリペプチドはまた、組み換え合成の従来の方法に従い単離および精製され得る。溶解物は、発現宿主から調製されてもよく、溶解物は、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、または他の精製技術を使用して精製され得る。大部分において、使用される組成物は、生成物の調製およびその精製の方法に関連した不純物に対して、少なくとも20重量%、より通常は少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、治療目的においては、通常は少なくとも約99.5重量%の所望の生成物を含む。通常、パーセンテージは、全タンパク質に依存する。
【0080】
当業者に周知である方法を使用して、コード配列、ならびに適切な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、例えば、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術およびインビボ組み換え/遺伝子組み換えを含む。代替として、対象となるポリペプチドをコードすることができるRNAは、商業的に合成され得る。当業者は、本発明のポリペプチドのいずれかのための好適なコード配列を提供するために、周知のコドン使用表および合成方法を容易に利用することができる。核酸は、実質的な純度で単離および獲得され得る。通常、DNAまたはRNAとしての核酸は、他の天然に存在する核酸配列を実質的に含まないで、一般に少なくとも約50%、通常は少なくとも約90%の純度で得られ、典型的には「組み換え」であり、例えば通常は天然に存在する染色体上に関連していない1つ以上のヌクレオチドが隣接している。本発明の核酸は、直鎖状分子として、または環状分子内に提供され得、また、自己複製分子(ベクター)内、または複製配列を有さない分子内に提供され得る。核酸の発現は、それら自身により、または当該技術分野において知られている他の調節配列により調節され得る。本発明の核酸は、当該技術分野において利用可能な様々な技術を使用して、好適な宿主細胞内に導入され得る。
【0081】
本発明によれば、SIRPα変異体は、治療用途、例えば人間の治療に好適な薬学的組成物中に提供され得る。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、本発明の1種以上の治療物質またはその薬学的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物を含む。いくつかの他の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、別の治療薬剤、例えば別の抗腫瘍薬剤と組み合わせて、本発明の1種以上の治療物質を含む。
【0082】
本発明の治療物質は、しばしば、活性治療薬剤および他の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物として投与される。好ましい形態は、意図される投与様式および治療用途に依存する。組成物はまた、所望の製剤に依存して、動物または人間に対する投与用の薬学的組成物を製剤化するために一般に使用されるビヒクルとして定義される、薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含んでもよい。希釈剤は、組み合わせの生物活性に影響しないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、薬学的組成物または製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性安定剤等を含んでもよい。
【0083】
さらなる他のいくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物はまた、粗大な徐々に代謝される巨大分子、例えばタンパク質;多糖類、例えばキトサン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えばラテックス官能化Sepharose(商標)、アガロース、セルロース等)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば油滴またはリポソーム)を含んでもよい。
【0084】
使用方法
SIRPαとCD47との間の相互作用を阻害し、それにより腫瘍細胞のインビボ食作用を増加させることにより、原発性または転移性癌としてのリンパ腫、白血病、癌腫、黒色腫、膠芽細胞腫、肉腫、骨髄腫等を制限なく含む癌を処置、低減または予防するための方法が提供される。そのような方法は、処置を必要とする対象に、試薬と化学療法薬、腫瘍特異的抗体、またはESAとの組み合わせを制限なく含む、治療上効果的な量または効果的な用量の本発明の高親和性SIRPα試薬を投与することを含む。
【0085】
例えば癌の処置のための本発明の治療物質の効果的用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者が人間であるかまたは動物であるか、投与される他の医薬品、および治療が予防的であるかまたは治療的であるかを含む、多くの異なる因子に依存して変動する。通常、患者は人間であるが、人間以外の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ等のペット用動物、ウサギ、マウス、ラット等の実験動物等もまた処置され得る。標的用量は、安全性および有効性を最適化するために滴定され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、治療用量は、約0.0001mg/kgから100mg/kg、より通常では0.01mg/kgから5mg/kg(ホストの体重)の範囲であってもよい。例えば、用量は、1mg/kg(体重)もしくは10mg/kg(体重)、または1〜10mg/kgの範囲内であってもよい。例示的処置計画は、2週間に1回、または1月に1回、または3ヶ月から6ヶ月に1回の投与を伴う。本発明の治療物質は、通常、複数の機会で投与される。単回投薬の間の間隔は、1週間、1ヶ月または1年であってもよい。間隔はまた、患者における治療物質の血中レベルを測定することにより示されるように、不定期的であってもよい。代替として、本発明の治療物質は、徐放製剤として投与されてもよく、その場合、より少ない頻度の投与が必要である。用量および頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期に依存して変動する。
【0087】
予防用途においては、長期間にわたり比較的低頻度の間隔で、比較的低い用量が投与され得る。一部の患者は、その生涯にわたり処置を受け続ける。他の治療用途においては、疾患の進行が低減または停止されるまで、および好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、時折、比較的短期間で比較的高い用量が必要である。その後、患者に予防計画が実施され得る。
【0088】
さらに他の実施形態において、本発明の方法は、リンパ腫、白血病、癌腫、黒色腫、膠芽細胞腫、肉腫、骨髄腫等を含む癌の腫瘍増殖、腫瘍転移または腫瘍浸潤Iを処置、低減または防止することを含む。予防用途においては、薬学的組成物または医薬品は、疾患に罹患しやすい、または別様にそのリスクがある患者に、疾患の生化学的、組織学的、および/または行動的症状、その合併症ならびに疾患の発達の間現れる中間的病理学的表現型を含む、疾患のリスクを排除もしくは低減する、重症度を低下させる、またはその発症を遅延させるのに十分な量で投与される。
【0089】
本発明の高親和性SIRPαポリペプチドは、CD47を発現する細胞、特にCD47を発現する癌細胞の数の増加または低下を測定することにより疾患治療の経過を監視するために、インビトロおよびインビボで使用され得、疾患の改善を目標とした特定の治療計画が効果的であるかどうかが決定され得る。そのような目的において、SIRPαポリペプチドは、検出可能に標識化され得る。
【0090】
本発明の高親和性SIRPαポリペプチドは、結合アッセイにおいてインビトロで使用されてもよく、それらは、液相で使用され得、または固相担体に結合され得る。さらに、これらの免疫測定法におけるポリペプチドは、様々な手法で検出可能に標識化され得る。本発明の高親和性SIRPαポリペプチドを使用し得るアッセイの種類の例は、フローサイトメトリー、例えばFACS、MACS、組織化学、直接または間接的形式の競合的または非競合的免疫測定法等である。高親和性SIRPαポリペプチドを使用したCD47の検出は、生理学的試料に対する組織化学的アッセイを含む、順方向、逆方向、または同時モードで行われるアッセイで行われ得る。当業者は、他のアッセイ形式を知っているか、または不必要な実験を行うことなく容易に確認することができる。
【0091】
高親和性SIRPαポリペプチドは、多くの異なる担体に結合することができ、CD47発現細胞の存在を検出するために使用され得る。周知の担体の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトを含む。担体の性質は、本発明の目的において、可溶性または不溶性となり得る。当業者は、タンパク質に結合するための他の好適な担体を知っているか、または日常的な実験を用いてそれらを確認することができる。
【0092】
当業者に知られた多くの異なる標識および標識化方法がある。本発明において使用され得る標識の種類の例は、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物、および生物発光化合部を含む。当業者は、本発明のポリペプチドに結合するための他の好適な標識を知っているか、または日常的な実験を用いてそのようにそれらを確認することができる。さらに、本発明のポリペプチドに対するこれらの標識の結合は、当業者には一般的な標準的技術を使用して行うことができる。
【0093】
CD47は、生物学的流体および組織内に存在する場合、本発明の高親和性SIRPαポリペプチドにより検出され得る。検出可能な量のCD47を含有する任意の試料が使用され得る。試料は、尿、唾液、脳脊髄液、血液、血清等の液体であってもよく、または、組織、便等の固体もしくは半固体であってもよく、または代替として、組織学的診断において一般に使用されるもの等の固形組織であってもよい。
【0094】
より高い感度をもたらし得る別の標識化技術は、ポリペプチドを低分子量ハプテンに結合させることからなる。これらのハプテンは、次いで、第2の反応を用いて特異的に検出され得る。例えば、アビジンと反応するビオチン等のハプテン、または特定の抗ハプテン抗体と反応し得るジニトロフェノール、ピリドキサール、もしくはフルオレセインを使用することが一般的である。
【0095】
高親和性SIRPα試薬の画像化複合体は、一連の2回以上の投与で対象に投与され得る。画像化複合体組成物は、可視化技術の前の適切な時点で投与され得る。例えば、直接的目視検査の1時間前以内の投与が適切となり得、または、MRI走査の12時間前以内の投与が適切となり得る。しかしながら、画像化化合物は最終的には患者の系から排出され得るため、投与と可視化との間で過度に長い時間を経過させないように注意を払うべきである。
【0096】
癌の処置のための組成物は、非経口、局所的、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内または筋肉内の手段により投与され得る。典型的な投与経路は、静脈内または腫瘍内であるが、他の経路も同等に効果的となり得る。
【0097】
典型的には、組成物は、溶液または懸濁液としての注射製剤として調製され、注射前の液体ビヒクル中の溶液または懸濁液に好適な固体形態もまた調製され得る。調製物はまた、乳化されてもよく、または、上述のような向上したアジュバント効果のために、リポソームもしくはマイクロ粒子、例えばポリ乳酸、ポリグリコリド、もしくはコポリマー等の中にカプセル化されてもよい。Langer,Science 249:1527,1900およびHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97−19,1997。本発明の薬剤は、活性成分の徐放またはパルス放出を可能とするような様式で製剤化され得る、蓄積注射製剤またはインプラント調製物の形態で投与され得る。薬学的組成物は、一般に、無菌の実質的に等張性のものとして、および米国食品医薬品局の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)の全てに完全に適合するように製剤化される。
【0098】
本明細書に記載の高親和性SIRPα試薬の毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順により、例えば、LD50(集団の50%に対し致死的である用量)またはLD100(集団の100%に対し致死的である用量)を決定することにより決定され得る。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、人間における使用には毒性ではない用量範囲を策定する上で使用され得る。本明細書に記載のタンパク質の用量は、好ましくは、毒性が僅かである、または毒性がない効果的用量を含む血中濃度の範囲内にある。用量は、用いられる剤形および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動し得る。厳密な製剤、投与経路および用量は、個々の医者により、患者の状態に照らして選択され得る。
【0099】
また、本発明の組成物(例えば高親和性SIRPα試薬およびその製剤)ならびに取扱説明書を含むキットも、本発明の範囲内である。キットは、さらに、少なくとも1種の追加的試薬、例えば、化学治療薬、抗腫瘍抗体、ESA等を含有し得る。キットは、典型的には、キットの内容物の使用目的を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上に、もしくはキットと共に供給される、または別様にキットに付随する任意の書面または記録資料を含む。
【0100】
ここで、本発明が十分に説明されているが、当業者には、本発明の精神または範囲から逸脱せずに、様々な変更および修正を行うことができることが明らかとなる。
【実施例】
【0101】
以下の実施例は、当業者に本発明をどのように作製および使用するかの完全なる開示および説明を提供するように提示され、本発明者が自身の発明とみなすものの範囲を限定するようには意図されておらず、以下の実験が全てまたは唯一の実行される実験であると示すようにも意図されていない。使用される数値(例えば、量、温度等)に対する正確さを確保する努力がなされているが、いくつかの実験によるエラーおよび偏差が計上されるはずである。別途示されない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、セ氏温度であり、圧力は、大気圧であるか、またはそれに近い。
【0102】
本明細書において引用される全ての出版物および特許出願は、各個別の出版物または特許出願が、明確かつ個別に参照により組み込まれることが示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
本発明は、本発明者により本発明の実践に好ましい様式を含むことが発見または提示された具体的実施形態に関して説明されている。当業者には、本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱せずに、例示された具体的実施形態に数々の修正および変更が行われてもよいことが理解される。例えば、コドンの冗長性により、タンパク質配列に影響を与えずに、基本となるDNA配列に変更を行うことができる。さらに、生物学的な機能的均等性の考慮により、種類または量において生物学的作用に影響を与えずに、タンパク質構造に変更が行われ得る。すべてのそのような修正は、添付される特許請求の範囲内であるよう意図されている。
【0104】
タンパク質発現および精製: ヒトCD47のIgSF ドメイン(残基19〜135)およびヒトSIRPαの第1のIgSF ドメインの変異体(残基31〜148)を、C末端8×ヒスチジンタグを有するpAcGP67にクローニングし、組み換えバキュロウイルスを使用してHi5細胞に発現させた。CD47 IgSF ドメイン上の遊離システインをグリシンに変異させた。タンパク質を、Ni−NTAクロマトグラフィーおよびSuperdex−75カラム上でのゲル濾過により、HBSに精製した(10mM Hepes pH7.4、150mM NaCl)。ビオチン化タンパク質を生成するために、C末端ビオチン受容体ペプチド(BAP)−LNDIFEAQKIEWHEタグを添加し、過剰のビオチン(100μm)を有するBirAリガーゼでタンパク質を共発現させた。結晶化のために、SIRPα変異体FD6を、N末端マルトース結合タンパク質(MBP)タグを有する大腸菌ペリプラズム内で発現させ、これを3Cプロテアーゼでの処置により除去した。CD47 IgSF ドメインを、キフネンシンの存在下でHi5細胞中でEndoFで共発現させ、グリコシル化を除去した。
【0105】
ヒトIgG4およびIgG2 Fc鎖への融合としての、SIRPα変異体タンパク質の発現のために、SIRPα変異体をpFUSE−hIgG4−Fc2およびpFUSE−hIgG2−Fc2ベクター(Invivogen)内に、IL2シグナル配列とのフレーム内でクローニングした。SIRPα変異体融合タンパク質を、293fectin(Invitrogen)によるトランスフェクション後に、Freestyle 293−F細胞(Invitrogen)内で発現させた。96時間のタンパク質発現後に上清を回収し、HiTrapタンパク質Aカラム(GE Healthcare)上で精製した。
【0106】
FD6:CD47複合体の結晶化および構造決定: 大腸菌由来FD6および脱グリコシル化昆虫由来CD47を、1:1の比で混合し、カルボキシペプチダーゼAおよびBで処置し、続いてSuperdex−75カラム上でHBAにゲル濾過した。複合体を22mg/mLに濃縮し、シッティングドロップにおける蒸気拡散により、0.1μLのタンパク質を等しい体積の2.0M硫酸アンモニウム、0.1MトリスpH7.3を添加することによって結晶化させた。回折試験は、Advanced Light Sourceで行われた。結晶構造を、PHASERによる分子置換で解き、PHENIXおよびCOOTを使用して精密化した。
【0107】
表面プラズモン共鳴: Biacore T100機器において、25℃でSPR実験を行った。実験は、Biacore SAセンサチップ(GE Healthcare)を使用し、ビオチン化CD47を約150RUの表面密度で捕捉した。非関連ビオチン化タンパク質を、一致するRUを有するSAセンサチップの参照表面として、実験表面に固定した。流通緩衝液[1×HBS−P(GE Healthcare)]中の非ビオチン化SIRPα変異体の一連の希釈物を、50μL/分の速度でチップ上に流動させた。2M MgClの3回の30秒注入を使用して、CD47を再生した。1:1ラングミュア結合モデルを用い、Biacore T100評価ソフトウェアバージョン2.0を使用してデータを分析した。
【0108】
癌細胞系統および培養条件: Jurkat細胞(ATCC)およびDLD−1細胞(ATCC)を、RPMI(Invitrogen)+10%ウシ胎仔血清(Omega Scientific)+1%GlutaMax(Invitrogen)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Invitrogen)中で維持した。Jurkat細胞を懸濁液中に維持し、一方DLD−1細胞を接着性単一層として維持した。両方の細胞系統を、コンフルエンスに達するまで、3〜4日の通常の間隔で継代した。GFP−ルシフェラーゼ+細胞系統を作製するために、JurkatおよびDLD−1細胞を、pCDH−CMV−MCS−EF1−puro HIV系レンチウイルスベクター(Systems Bioscience)から得られたルシフェラーゼ2(Promega)−eGFP発現レンチウイルスで形質導入した。BD FACSAria IIフローサイトメーターを使用して、細胞をGFP+細胞に関して分類し、親系統と同じ様式で培養物中に維持した。
【0109】
ヒト癌細胞に結合するSIRPα変異体の評価: GFP+Jurkat細胞をPBS中で洗浄し、次いで、滴定濃度のビオチン化SIRPα変異体と共に、氷上で30分間インキュベートした。4:1モル比のビオチン化野生型SIRPαおよびストレプトアビジンを氷上で15分間インキュベートすることにより、野生型SIRPα四量体を事前に形成した。細胞をFACS緩衝液(PBS+2%FBS)中で洗浄し、次いで、Alexa Fluor 647に複合化した50nMのストレプトアビジンと共に、氷上で20分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、次いで、Accuri C6フローサイトメーターを使用して、フローサイトメトリーによりSIRPα変異体結合に関して分析した。野生型SIRPαからCD47への遮断を評価するために、50nMの野生型SIRPα四量体を、滴定濃度のCD47遮断剤と共に、氷上で30分間インキュベートした。抗CD47クローンB6H12(eBioscience)を、遮断の陽性対照として使用した。データは、GraphPad Prism 5を使用して分析した。最大SIRPα変異体結合は、各変異体に対して測定された最大平均蛍光強度のパーセンテージを表す。
【0110】
マクロファージ誘導体化および培養: ヒトマクロファージの誘導体化のために、白血球減少系チャンバを、Stanford Blood Centerから、匿名のドナーから得た。遠心分離により、Ficoll Paque Premium(GE Healthcare)密度勾配で末梢血単核細胞を得た。CD14+マイクロビーズ(Miltenyi)およびAutoMACS Pro Separator(Miltenyi)を使用して、CD14+単球を精製した。IMDM+GlutaMax(Invitrogen)+10%ABヒト血清(Invitrogen)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン中での7日間の培養により、単球をマクロファージに分化させ、その時点でそれらを食作用アッセイに使用した。
【0111】
C57Bl/Ka Rosa26−mRFP1形質転換マウスから骨髄を単離し、10μg/mLマウスM−CSF(Peprotech)を添加したRPMI(Invitrogen)+10%FBS+1%GlutaMax+1%ペニシリン/ストレプトマイシン中で培養することにより、マウスマクロファージを得た。7日間の分化後、マクロファージを回収し、食作用アッセイに使用した。
【0112】
インビトロ食作用アッセイ: インビトロ食作用アッセイは、マウスおよびヒトマクロファージを使用して行った。フローサイトメトリーによる評価のために、96ウェル組織培養プレートにおいて、ウェル当たり約50,000マクロファージを添加した。200,000GFP+腫瘍細胞を、血清不含培地中で、抗体またはSIRPα変異体治療薬と共に30分間プレインキュベートし、次いでマクロファージを添加した。オプソニン化のために、抗CD47クローン2D3(eBioscience)およびセツキシマブ(Bristol−Myers Squibb)を、説明されるように使用した。マクロファージおよび標的細胞を、5%二酸化炭素を含有する加湿した37℃インキュベータ内で2時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、プレートから除去し、フローサイトメトリー用に調製した。DAPI(Invitrogen)での染色により、死細胞を分析から除外した。Alexa Fluor 647複合化抗ヒトCD14(BioLegend)での染色により、ヒトマクロファージを同定した。高スループットサンプラーを有するBD Biosciences LSRFortessaを使用して、試料を分析した。GFP+マクロファージにより表現される腫瘍細胞を貪食しているマクロファージのパーセンテージを、FlowJo 7.6.4(Treestar)を使用して決定した。
【0113】
インビトロでの食作用の可視化のために、50,000マクロファージを24ウェルプレートに播種した。腫瘍細胞を、5μM CFSE(Invitrogen)で、製造者のプロトコルに従い標識化した。200,000CFSE+腫瘍を、抗体またはSIRPα変異体処置で、血清不含培地中で30分間処置し、マクロファージに添加し、次いで、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、ウェルを広範囲に洗浄し、残留標的細胞を除去した。その後、倒立型蛍光顕微鏡(Leica DMI6000 B)を使用して、ウェルを可視化した。食作用指標は、マクロファージ当たりの標的細胞の数に100を乗じてスコア化した。
【0114】
結果。異種移植免疫不全マウスを処置するインビボ実験は、高親和性SIRPα−Fc試薬による処置が、腫瘍増殖を遮断したことを示している。ルシフェラーゼ発現HL60白血病細胞が移植されたマウスは、可溶性SIRP試薬で処置された。ルシフェラーゼ−HL60細胞から放出される放射輝度により測定される全身腫瘍組織量は、バックグラウンドレベルまで降下したが、これは腫瘍細胞の排除を示しており、一方、IgG対照処置マウスにおいては、放射輝度が増加し、腫瘍増殖の増加を反映している。結果は、hu5F9抗CD47abに関して観察される結果と同等であった。これらのデータは、高親和性可溶性SIRPα試薬が、HL60細胞上のCD47に結合し、細胞の食作用および排除を可能とすることにより、「貪食拒否(don’t eat−me)シグナル」の効果的な遮断において抗CD47抗体と同等であることを示している。
【0115】
実施例2
高親和性SIRPαは、癌細胞のマクロファージ食作用の閾値を低下させる
免疫系を回避する腫瘍の能力は、癌の新たな特徴であり、癌細胞に対する免疫反応を誘導する新たな治療戦略が、実験および臨床の場において有望である。マクロファージは一般に腫瘍に浸潤し、最近の研究では、CD47が、マクロファージ媒介破壊を回避するために多くの種類の癌において高度に発現する抗食作用的「貪食拒否(don’t eat me)シグナル」として特定されている。マクロファージ上の阻害受容体であるSIRPαに対するCD47の結合を遮断する抗体は、癌細胞の食作用を大きく増加させ、抗腫瘍免疫治療による操作に対する興味深い新たな軸を特定している。指向進化およびタンパク質改質を使用して、SIRPαの結合ドメインを修飾したが、その野生型親和性は、CD47の高親和性競合的拮抗剤として治療上有用となるには弱すぎる。
【0116】
我々は、野生型SIRPαに比べ約50,000倍の親和性の増加を伴ってCD47に結合する、SIRPα変異体を作製した。多量体高親和性SIRPα−Fc融合タンパク質として生成された場合、変異体は、インビトロで食作用を誘導し、インビボでヒト腫瘍の増殖を低減するための単一薬剤として機能する。単一ドメイン高親和性SIRPα単量体は、それ自身では最大食作用を誘導するのに十分ではないが、併用療法において与えられると、確立された治療モノクローナル抗体の有効性を大きく向上させる。CD47は、腫瘍細胞が免疫系を回避するために使用する波及メカニズムであるため、本研究において生成された分子は、単剤療法および他の標的生物製剤へのアジュバントの両方として、数多くの癌患者に有益である。
【0117】
理想的なCD47拮抗剤を生成するために、タンパク質改質を使用して、CD47に対する可溶性SIRPαの親和性を改善した(図1A)。我々は、酵母表面ディスプレイのために、Aga2pに複合化したSIRPαのN末端VセットIgドメインの変異ライブラリを作製した(図1B)。選択試薬としてCD47 IgSFドメインを使用して、我々は、2つの「世代」のインビトロ進化を行った。第1世代は、2つのクラスのSIRPα残基、すなわちCD47に接触するもの、または疎水性コア内に存在するものへの無作為化を含むプールされた変異ライブラリからの5ラウンドの選択を伴った(図5A)。得られた第1世代のSIRPα変異体は、表面プラズモン共鳴により測定されるように、野生型SIRPαよりも20〜100倍高い親和性でCD47に結合した。さらに高い親和性の変異体を得るために、我々は、第1世代の選択物において変異した13残基の完全適用を達成したライブラリを構築することにより、第2世代の指向進化を実行した。さらなる5ラウンドの選択の後、我々は、解離定数(K)が34.0pMまで低く、減衰半減期(t1/2)が44分まで長い(野生型SIRPαに対する0.3〜0.5μMのK および1.8秒のt1/2と比較して)、CD47に結合した変異体を得た(図1C)。興味深いことに、高親和性SIRPα変異体の配列は、変異のコンセンサスセットに収束した。我々がこれらの9つの保存的置換を主要な野生型SIRPα対立遺伝子(対立遺伝子2)にグラフトすると、得られる変異体(CV1、コンセンサス変異体1と呼ばれる)は、11.1pMの親和性でCD47に結合した(図1C)。
【0118】
CV1配列は、野生型対立遺伝子に比べ、以下のアミノ酸変化を有する:V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66T;V92I。CV1は、例えば、以下のようにd1ドメインアミノ酸配列を含んでもよい:
(配列番号10)EEELQIIQPD KSVLVAAGET ATLRCTITSL FPVGPIQWFR GAGPGRVLIY NQRQGPFPRV TTVSDTTKRN NMDFSIRIGN ITPADAGTYY CIKFRKGSPD DVEFKSGAGT ELSVRAKPS
【0119】
高親和性SIRPα変異体が野生型タンパク質と同様のCD47結合構造を保持するかを理解するために、我々は、高親和性変異体FD6とCD47 IgSF ドメインとの間の複合体の結晶構造を決定した(図1D)。FD6:CD47複合体は、僅か0.613Åの標準偏差で野生型SIRPα:CD47複合体と重なり、これは、高度な構造類似性を示し、野生型相互作用の構造を保存する我々の取り組みの正当性を実証している(図1E)。FD6および野生型SIRPαのCD47に対する重複した結合様式は、それらが、同じCD47エピトープに対して競合し、それにより最大の潜在的拮抗作用を提供することを示している。顕著な違いとして、FD6のC’Dループは、コンセンサス配列に存在する4つの接触変異のうち3つを含有する(図1E)。我々は、これらの変異がC’Dループを安定化し、これがArg53の正電荷をCD47上のグルタミン酸のクラスタ内に位置付けると推測している(図1E)。FD6とCD47との間の結合界面の残りは、野生型SIRPα:CD47界面と極めて類似しており、最も顕著な例外は、Ile31からPheへの変異である。これらの構造的試験は、高親和性SIRPα変異体が有効なCD47拮抗剤として作用し得ることを示している。
【0120】
高親和性SIRPα変異体の機能的特性を試験するために、我々は、まず、癌細胞の表面上のCD47に結合し拮抗するその能力を検査した。我々は、増加したCD47親和性を有するSIRPα変異体が、細胞表面CD47に結合し(図8a、c)、遮断する(図2aおよび図8b)上で、より大きな効力を示すことを発見した。単一ドメイン単量体として、FD6およびCV1変異体は両方とも、野生型SIRPαと比べて強力な拮抗作用を示した。重要なことに、両方の高親和性変異体は、インビトロおよびインビボにおいて治療有効性を示す十分特性決定されたCD47拮抗剤である抗CD47抗体クローンB6H12から生成されたFab断片より強力なCD47拮抗剤であった(図8a)。
【0121】
次に、我々は、CD47遮断剤の存在下でマクロファージおよび腫瘍細胞を共培養することにより、インビトロで食作用を増加させる高親和性SIRPα変異体の能力を評価した。ヒトIgG4(hIgG4)のFc断片への融合タンパク質として、高親和性SIRPα変異体は、顕微鏡法により可視化されるように、癌細胞の食作用の劇的な増加をもたらした(図2b)。食作用の定量的測定値を得るために、初代ヒトマクロファージおよびGFP腫瘍細胞を、CD47遮断剤と共培養し、次いでフローサイトメトリーにより分析した(図2c)。固形および血液悪性腫瘍の両方を発現する複数癌細胞系統を使用して、我々は、飽和濃度の高親和性SIRPα−hIgG4変異体による処置が、野生型SIRPα−hIgG4対照と比べて、食作用の劇的な増加をもたらすことを発見した(図2d)。高親和性SIRPα−hIgG4変異体およびアイソタイプ適合抗CD47抗体は、飽和濃度において同等レベルの食作用をもたらしたが(図2d)、高親和性SIRPα変異体は、用量反応曲線を生成するために滴定されると明確な利点を示した(図2e)。FD6−hIgG4およびCV1−hIgG4の高い親和性は、EC50の減少に対応していたが、これは、食作用のより強力な誘導を示している。
【0122】
興味深いことに、飽和濃度の高親和性SIRPα単量体による処置後には、食作用の実質的な増加は観察されなかった(図2d)が、これは、CD47の遮断だけでは、最大の食作用を誘導するのに不十分であることを示唆している。結果として、我々は、高親和性SIRPα単量体による処置が、腫瘍特異的モノクローナル抗体の存在下で食作用の閾値を低下させるという仮説を立てた。この仮説を調査するために、我々は、DLD−1細胞、すなわちヒト結腸癌細胞株を標的化する抗体を使用して食作用アッセイを行った。高親和性SIRPα単量体が、単独または非特異的アイソタイプ対照抗体と組み合わせて添加されると、基礎レベルの食作用が観察された(図2f)。
【0123】
CD47に結合するがSIRPαとの相互作用を遮断しない抗CD47クローン2D3、または抗EpCam抗体による処置は、中程度のレベルの食作用をもたらした。しかしながら、両方の抗体処置に高親和性SIRPα単量体FD6を添加すると、マクロファージは、食作用の顕著な増加を示した(図2f)。したがって、CD47の遮断は、他の活性化刺激、例えば抗体Fcの存在下で、マクロファージ食作用の閾値を低下させる。
【0124】
この原理の臨床的意義を実証するために、我々は、現在癌治療薬として使用されている確立されたモノクローナル抗体の有効性を向上させる、高親和性SIRPα単量体の能力を調査した。まず、抗EGFR抗体セツキシマブで処置されたDLD−1結腸癌細胞を使用して、食作用アッセイを行った。単独、野生型SIRPα単量体と組み合わせた、または高親和性SIRPα単量体と組み合わせた滴定濃度のセツキシマブに応じた食作用を評価した。単独または野生型SIRPα単量体と組み合わせたセツキシマブの両方と比べ、セツキシマブおよび高親和性SIRPα単量体の組み合わせは、セツキシマブの最大の有効性および効力の両方の大幅な増加をもたらした(図2g)。滴定濃度の抗CD20抗体リツキシマブで処置されたRajiリンパ腫細胞を用いて食作用を評価した際にも同様の効果が観察された(図2h)。この場合も、高親和性SIRPα単量体は、リツキシマブの最大の有効性および効力の両方を増加させた。臨床の場において、モノクローナル抗体は、しばしば、限定された反応を達成するのみであり、処置後にぶり返すことが一般的である。高親和性SIRPα単量体は、腫瘍特異的抗体に対する普遍的アジュバントとして作用することにより、これらの問題に対する解決策を提供する。
【0125】
次に、我々は、マウス腫瘍モデルを使用して、高親和性SIRPα変異体のインビボでの有効性を評価した。進行期のヒト結腸癌の侵攻性モデルとして、GFP−ルシフェラーゼDLD−1細胞を、NSGマウスの腹腔にグラフトした(図3a)。生物発光画像法によりグラフトを確認した後、単剤療法としてビヒクル対照または高親和性SIRPα変異体CV1−hIgG4による毎日の処置を開始した。全フラックスの生物発光監視により、CV1−hIgG4による処置の最初の週の間の腫瘍増殖速度の中程度の減少が明らかであり(図9)、これは、経時的に大幅な生存率の利点をもたらした(図3b)、赤血球喪失は、抗マウスCD47抗体による処置後に観察される主要な副作用であることから、我々は、同様の疾患に対して、CV1−hIgG4処置マウスの血液を検査した。フローサイトメトリーにより、CV1−hIgG4は、血液中の全ての細胞に結合し(図3c)、ヘマトクリットの中程度の減少をもたらした(図3d)ことが明らかとなった。しかしながら、以前に観察されたように、長期的処置は、さらなる毒性を引き起こさなかった。
【0126】
CV1−hIgG4は、単一薬剤として抗腫瘍有効性を示したため、我々は、次に、現在標的生物製剤が存在しない癌の種類であるヒト膀胱癌のモデルにおけるその有効性を評価した。GFP−ルシフェラーゼ639−V膀胱癌細胞を、NSGマウスの背側皮下組織に注射した。生物発光画像法によりグラフトを確認し、マウスをビヒクル対照またはCV1−hIgG4による毎日の処置の群に無作為化した。CV1−hIgG4による処置は、生物発光画像法により評価されるように、腫瘍増殖速度を実質的に低減した(図3e、f)。第1の対照処置マウスの死亡直前に腫瘍体積を評価したが、この時点で全ての対照マウスにおいて大きな腫瘍が測定可能であり、CV1−hIgG4処置マウスにおいては、識別可能な腫瘍は確認されなかった(図3g)。したがって、全ての対照マウスが死亡した時に処置を中止した後であっても、生存率における著しい利点が観察された(図3h)。
【0127】
以前に観察されたように、CV1−hIgG4による処置は、赤血球指数の減少をもたらした(図10a)。CV1−hIgG4処置マウスはまた、腫瘍グラフト部位の周囲に明確な間質組織を発達させた。この組織の組織病理学的検査では、マクロファージを含有する広範囲の炎症性浸潤物に埋没した微小な腫瘍小結節が明らかであった(図10b、c)。
【0128】
次に、我々は、高親和性SIRPα単量体のインビボでのアジュバント効果を調査した。ヒトリンパ腫の局在化モデルにおいて、GFP−ルシフェラーゼ+Raji細胞を、NSGマウスの脇腹に皮下グラフトした。生物発光画像法によりグラフトを確認した後、マウスを、ビヒクル、CV1単量体単独、リツキシマブ単独、またはリツキシマブおよびCV1単量体の組み合わせによる毎日の処置の3週間のコースの群に無作為化したCV1単量体またはリツキシマブ単独による処置は、腫瘍増殖を低減しただけであり、一方併用療法による処置は、大半のマウスにおいて 腫瘍を劇的に根絶した(図4a、b、c)。処置期間中、顕著な赤血球減少は観察されなかった。(図11a、b、c)。各治療の効果は、生存率曲線におけるそれぞれの傾向に変換された(図4d)。意外なことに、高親和性SIRPα単量体を腫瘍特異的モノクローナル抗体と組み合わせる相乗効果は、処置が中止された後であっても、大半の動物において長期持続的治癒をもたらした(図4d)。
【0129】
高親和性SIRPα変異体の開発は、タンパク質レベルでの分子工学から始まって、精製された免疫エフェクター細胞を使用したインビトロ検証、および最終的には動物モデルにおける治療評価に至るまでの、集学的な合理的薬物設計への取り組みである。以前の研究は、癌に対する免疫介入としてCD47−SIRPα相互作用を標的化することの価値を実証したが、我々はここで、治療薬として最適な特性を示す極めて有効で強力なCD47拮抗剤を生成するために、この系をさらに操作した。
【0130】
我々のインビトロおよびインビボでの所見は、癌に対するマクロファージの活性、および免疫調節治療に対するその反応への新たな洞察を提供する。高親和性SIRPα単量体において観察されたように、CD47単独の遮断は、最大の食作用を誘導するのに不十分である。同様に、CD47がマクロファージ上のSIRPαを介して自由に阻害シグナルを伝達する場合、モノクローナル抗体はその最大の有効性を達成しない。しかしながら、マクロファージは、表面結合抗体Fcの存在下でCD47が高親和性SIRPα単量体により遮断されると、強固に刺激される。高親和性SIRPα−Fc融合タンパク質および抗CD47抗体は、CD47遮断成分および食作用促進抗体Fcを単一分子に組み合わせ、したがってそれらは単一薬剤としての有効性を示すが、標的外毒性のより高い可能性を有する。一方、高親和性SIRPα単量体と別個の抗腫瘍モノクローナル抗体、例えばリツキシマブとの組み合わせは、特に抗腫瘍反応を向上させる。この戦略は、明確な利益、具体的には識別可能な毒性の欠如を提供するが、最大反応の達成は、臨床的に認可されたモノクローナル抗体の利用可能性および有効性に依存する。
【0131】
最近の報告は、野生型SIRPα−Fc融合タンパク質がヒト白血病を処置するために使用され得ることを示唆した。しかしながら、我々の研究は、野生型SIRPαとCD47との間の弱い親和性が、そのような治療の可能性を制限することを示している。他の者により観察された効果は、マクロファージが内毒素およびインターフェロン−γにより事前活性化された場合にのみ食作用が現れるため、CD47拮抗作用とは対照的に、主としてFcの食作用促進効果により媒介されると考えられる。インビボにおいて、野生型ヒトSIRPαとマウスCD47との間の交差反応性の欠如は、人間における処置および毒性を不十分にモデル化し、身体の全ての細胞上のCD47発現に起因して大きな「抗原シンク」が存在する。
【0132】
高親和性SIRPα試薬は、さらなる改質が可能な新規クラスの抗腫瘍生物製剤を構成する。修飾は、有効性、特異性、組織浸透度、クリアランス、および毒性を改変するように設計され得る。さらに、多くの腫瘍はCD47を過剰発現し、発現レベルは、低い患者予後と相関するため、高親和性SIRPα変異体は、癌用の非侵襲性造影剤として適合され得る。CD47は、免疫系を回避するために腫瘍細胞により一般的に使用され、したがって、高親和性SIRPα変異体は、様々な人間の癌に対する有益な治療薬となり得る。高親和性SIRPα−Fc融合タンパク質は、単一薬剤としての有効性を示し、したがって、現在標的療法が存在しない癌の治療薬として特に有用となり得る。さらに、高親和性SIRPα単量体は、従来のモノクローナル抗体治療に対する普遍的アジュバントとして使用され得る。全体として、本研究は、悪性細胞に対するマクロファージ反応の我々の知識を深め、高親和性SIRPα試薬の癌の免疫ベース治療薬としての使用を支持する。
【0133】
方法
タンパク質発現および精製。 C15G変異およびC末端8ヒスチジンタグを有するCD47 IgSFドメイン(残基1〜117)を、バキュロウイルスを使用してイラクサギンウワバ(Hi−5)細胞から分泌させ、Ni−NTAおよびSuperdex−75カラムを有するサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。結晶学のためのグリカン最小化CD47を生成するために、キフネンシンの存在下でCD47をエンドグリコシダーゼ−H(endoH)と共発現させた。MBPタグおよびC末端8ヒスチジンタグの後にライノウイルス3Cプロテアーゼ切断部位を含有する修飾pMal−p2X発現ベクター(New England Biolabs)を使用して、単量体SIRPα変異体(残基1〜118)をBL−21(DE3)大腸菌のペリプラズム内にMBP融合体として発現させた。細胞を、1mM IPTGで0.8のOD600で誘導し、振盪と共に22℃で24時間インキュベートした。浸透圧衝撃によりペリプラズムタンパク質を得、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)クロマトグラフィーを使用してMBP融合タンパク質を精製した。溶出したタンパク質は、3Cプロテアーゼにより4℃で12時間分解させてMBPを除去し、追加的なNi−NTAクロマトグラフィーステップにより、続いてSuperdex−S75カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製した。インビトロ食作用アッセイおよびインビボ実験のために、以前に説明されたようにTriton X−114を使用して内毒素を除去し、ToxinSensor Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit(Genscript)を使用して内毒素除去を確認した。SIRPα−Fc融合体は、SIRPα変異体をIL−2シグナル配列および改質されたSer228 Pro変異を有する修飾pFUSE−hIgG4−Fcベクター(Invivogen)にクローニングすることにより生成した。タンパク質は、Freestyle 293−F細胞(Invitrogen)における一時的トランスフェクションにより発現させ、HiTrap Protein Aカラム(GE Healthcare)上で精製した。キメラ抗CD47クローンB6H12−hIgG4は、CHO細胞(Lonza)における好適な発現により、組み換え生成した。
【0134】
ビオチン化CD47およびSIRPαを得るために、カルボキシ末端ビオチン受容体ペプチドタグ(GLNDIFEAQKIEWHE)でタンパク質を発現させ、上述のように精製した。精製されたタンパク質をBirAリガーゼでインビトロでビオチン化し、次いで、サイズ排除クロマトグラフィーにより反応混合物から再精製した。
【0135】
B6H12のFab断片の調製。 B6H12抗体を、20mMクエン酸ナトリウムpH6.0、25mMシステイン、5mM EDTAに脱塩し、4mg/mLの濃度に希釈した。次いで、抗体を、抗体1mL当たり250μLの固定フィシン樹脂(Thermo Scientific)と混合し、37℃で5時間回転させながらインキュベートした。反応混合物をmonoQカラムに通過させ(B6H12 Fabは通過物に存在した)、続いてSuperdex−20カラムを用いたゲル濾過により、分解された断片を精製した。
【0136】
酵母ディスプレイおよびSIRPα変異体のライブラリ生成。 以前に説明されたように、pCT302ベクターを使用して、Aga2へのC末端融合体として、SIRPαのN末端Vセットドメイン(残基1〜118)を、S.セレビシエ株EBY100の表面上に提示した。縮重コドンを有する以下のプライマーセットを使用して、プールされた第1世代のライブラリを、それぞれSIRPαのCD47−接触残基および疎水性「コア」残基を無作為化する2つの別個のアセンブリPCR反応により生成した:接触残基PCRプライマーセット、無作為化Ser29=RST、Leu30=NTT、Ile31=NTT、Pro32=CNT、Val33=NTT、Gly34=RST、Pro35=CNT、Gln52=SAW、Lys53=ARG、Glu54=SAW、Ser66=RST、Thr67=RST、Lys68=ARG、Arg69=ARG、Phe74=NTT、Lys93=ANG、Lys96=ANG、Gly97=RST、Ser98=RST、およびAsp100=RAS:
(配列番号11)5’GAGGAGGAGCTGCAGGTGATTCAGCCTGACAAGTCCGTATCAGTTGCAGCT3’;(配列番号12)5’GGTCACAGTGCAGTGCAGAATGGCCGACTCTCCAGCTGCAACTGATACGGA3’;(配列番号13)5’CTGCACTGCACTGTGACCRSTNTTNTTCNTNTTRSTCNTATCCAGTGGTTCAGAGGA3’;(配列番号14)5’ATTGTAGATTAATTCCCGGGCTGGTCCAGCTCCTCTGAACCACTGGAT3’;(配列番号15)5’CGGGAATTAATCTACAATSAWARGSAWGGCCACTTCCCCCGGGTAACAACTGTTTCAGAG3’;(配列番号16)5’GTTACTGATGCTGATGGAAANGTCCATGTTTTCCYTCYTASYASYCTCTGAAACAGTTGTTAC3’;(配列番号17)5’TCCATCAGCATCAGTAACATCACCCCAGCAGATGCCGGCACCTACTACTGTGTG3’;(配列番号18)5’TCCAGACTTAAACTCCGTWTYAGGASYASYCNTCCGGAACNTCACACAGTAGTA GGTGCC3’;(配列番号19)5’ACGGAGTTTAAGTCTGGAGCAGGCACTGAGCTGTCTGTGCGTGCCA AACCCTCT3’
【0137】
「コア」残基PCRプライマー、無作為化Leu4、Val6、Val27、Ile36、Phe38、Leu47、Ile49、Tyr50、Phe57、Val60、Met72、Phe74、Ile76、V92、Phe94、およびPhe103からNTT:
(配列番号20)5’GGATCCGAGGAGGAGNTTCAGNTTATTCAGCCTGACAAGTCCGTATCAGTTGCAGCT GGAGAG3’;(配列番号21)5’GGGCCCCACAGGGATCAGGGAGGTAANAGTGCAGTGCAGAATGGCCGA CTCTCCAGCTGCAAC3’;(配列番号22)5’CTGATCCCTGTGGGGCCCNTTCAGTGG NTTAGAGGAGCTGGACCAGCCCGGGAA3’;(配列番号23)5’GTGGCCTTCTTTTTGATTAANAANAA NTTCCCGGGCTGGTCCAGC3’;(配列番号24)5’AATCAAAAAGAAGGCCACNTTCCCC GGNTTACAACTGTTTCAGAGTCCACAAAGAGAGAAAAC3’;(配列番号25)5’GCCGGCATCTG CTGGGGTGATGTTACTGATGCTAANGGAAANGTCAANGTTTTCTCTCTTTGTGGA3’;(配列番号26)5’ACCCCAGCAGATGCCGGCACCTACTACTGTNTTAAGNTTCGGAAAGGGAGCCCTGACACGGAG3’,(配列番号27)5’AGAGGGTTTGGCACGCACAGACAGCTCAGTGCCTGCTCCAGACTTAANCTCCGTGTCAGGGCTCCC3’。
PCR産物を、pCT302ベクターとの相同性を含有するプライマーでさらに増幅し、線形化pCT302ベクターDNAと組み合わせ、EBY100酵母に共電気穿孔した。得られたライブラリは、4.0・10の形質転換体を含有した。
【0138】
第2世代のライブラリを、第1世代のライブラリと同一に生成および形質転換したが、以下のプライマー、無作為化Leu4=NTT、Val6=NTT、Val27=NTT、Ile31=WYT、Glu47=SWA、Lys53=ARG、Glu54=SAK、His56=CNT、Ser66=RST、Lys68=ARG、Val92=NTT、Phe94=NTT、Phe103=NTTを用いてアセンブルした:
(配列番号28)5’GGATCCGAGGAGGAGNTTCAGNTTATTCAGCCTGACAAGTCCGTATC3’;(配列番号29)5’GTGCAGTGCAGAATGGCCGACTCTCCAGCTGCAACTGATACGGACTTGTCAGGCTGAA3’;(配列番号30)5’CATTCTGCACTGCACTNTTACCTCCCTGWYTCCTGTGGGGCCCATCCAG3’;(配列番号31)5’CGGGCTGGTCCAGCTCCTCTGAACCACTGGATGGGCCCCACAGG3’;(配列番号32)5’GAGCTGGACCAGCCCGGSWATTAATCTACAATCAAARGSAKGGCCNTTTCCCCCGGGTAACAACTGTTTCAGAG3;(配列番号33)5’GAAAAGTCCATGTTTTCTCTCYTTGTASYCTCTGAAACAGTTGTTAC3’;(配列番号34)5’AGAGAAAACATGGACTTTTCCATCAGCATCAGTAACATCACCCCAGCAGATGCC GGCAC3’;(配列番号35)5’CTCCGTGTCAGGGCTCCCTTTCCGAANCTTAANACAGTAGTAGGTGCCGGCATC TGCTG3’、(配列番号36)5’GAGCCCTGACACGGAGNTTAAGTCTGGAGCAGGCACTGAGCTGTCTGTGCGTGCCAA ACCCTCT3’。得られたライブラリは、2×10の形質転換体を含有した。
【0139】
第1世代のライブラリの選択。 形質転換された酵母を、SDCAA液体培地中で30℃で増殖させ、SGCAA液体培地中で20℃で誘導した。全ての選択ステップは、4℃で行った。第1ラウンドの選択において、ライブラリ形質転換体の数の10倍の範囲を表す4×10の誘導酵母を、5mL PBE(0.5%ウシ血清アルブミンおよび0.5mM EDTAが添加されたリン酸緩衝生理食塩水)中に懸濁させた。酵母を、ビオチン化CD47で事前にコーティングされた500μLの常磁性ストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi)と混合し、混合物を回転させながら1時間インキュベートした。5,000gで5分間の遠心分離により、酵母をペレット化し、10mL PBEで2回洗浄した。磁気標識化酵母を、5mLのPBEに懸濁させ、製造者の指示に従い(Miltenyi)、LS MACSカラムで分離した。溶出した酵母をペレット化し、SDCAA培地に再懸濁させ、次のラウンドの選択のために増殖させた。第1のラウンドと同様に、以下の修正と共に4つの追加的な選択ラウンドを行った:1×10の酵母を、FITC標識化抗c−Myc抗体(Miltenyi)、または、1μmから100nMの連続低下濃度のビオチン化CD47タンパク質を含有する、500μLのPBEに再懸濁させた。1時間のインキュベーション後、酵母をPBEで洗浄し、CD47による選択のために、ストレプトアビジン−PE(Invitrogen)またはストレプトアビジン−Alexa Fluor 647(独自に生成)で15分間標識化した。酵母をさらに2回PBEで洗浄し、50μLの適切な抗フルオロフォアマイクロビーズ(抗FITC、抗PE、または抗Alexa Fluor 647;Miltenyi)で15分間、磁気標識化した。酵母を1回洗浄し、3mLのPBEに再懸濁させ、第1ラウンドと同様にLSカラムで分離した。
【0140】
第2世代のライブラリの選択。 第2世代のライブラリの最初の2ラウンドの選択においては、第1世代の選択のラウンド2から5の場合と同様に、単量体ビオチン化CD47で酵母を選択した。リガンド枯渇を避けるためにより大量の染料体積(10mL PBE)を使用して、第1ラウンドは、20nMのビオチン化CD47で選択し、第2ラウンドは、1nMのビオチン化CD47で選択した。全ての後続の選択ラウンドにおいては、動力学的選択を行った。簡潔に説明すると、20nMビオチン化CD47で1時間酵母を染色し、PBEで洗浄し、次いで1μMの非ビオチン化CD47を含有する500μLのPBE中に懸濁させた。細胞を25℃で90分間(ラウンド3)または300分間(ラウンド4および5)インキュベートし、その後それらを氷冷PBEで洗浄し、蛍光標識ストレプトアビジンで染色した。ラウンド1から4においては、第1世代ライブラリに関して説明したように、MACSを使用して酵母を分離した。第5ラウンドの選択においては、FITC標識化抗c−Mycおよびストレプトアビジン−Alexa Fluor 647で酵母を共標識化し、FACSAria細胞選別機(BD Biosciences)で選択した。
【0141】
表面プラズモン共鳴(SPR)。 Biacore T100を用いて25℃で実験を行った。Nanodrop2000分光計(Thermo Scientific)を用い、タンパク質濃度を280nMの吸光度により定量化した。Biacore SAセンサチップ(GE Healthcare)を使用して、ビオチン化CD47 (Rmax〜150RU)を捕捉した。非関連ビオチン化タンパク質を、基準表面のRU値と一致するRU値で固定し、非特異的結合を制御した。HBS−P+緩衝液(GE Healthcare)中のSIRPα変異体の連続希釈液により、測定を行った。CD47表面を、2M MgClの3回の60秒注入により再生した。1:1ラングミュア結合モデルを用い、Biacore T100評価ソフトウェアバージョン2.0を使用して、全てのデータを分析した。
【0142】
FD6:CD47複合体の結晶化および構造決定。 グリカン最小化CD47および大腸菌由来FD6を、1:1の比で混合し、カルボキシペプチダーゼAおよびBで分解し、そのC末端8×ヒスチジンタグを除去した。分解したFD6:CD47複合体を、Superdex−75カラムを用いてHEPES緩衝生理食塩水(HBS;10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl)へのゲル濾過により精製し、22mg/mLに濃縮した。等体積の2.0M硫酸アンモニウムおよび0.1MトリスpH7.3への0.1μLタンパク質の添加により結晶を得、パラフィン油中で凍結防止した。Advanced Light Source (Berkeley、CA、USA)において、ビームライン8−2で回折試験を行った。異方性1.9Åデータセットを得て、HKL−3000で処理した。FD6:CD47複合体を、Protein Data Bank受託コード2JJSからのCD47およびSIRPαの個々のモデルとの分子置換により解いた。PHENIXを用いて精密化を行い、COOTでモデル調整を行った。溶媒補正には、バルク溶媒平滑化(bulk solvent flattening)を使用した。最初の精密化は、剛体、座標、および実空間精密化と共に、個別の原子転移パラメータ精密化を使用した。その後の精密化の繰り返しにおいて、TLS精密化を追加した。
【0143】
細胞系統およびGFP−ルシフェラーゼ+形質導入。 DLD−1細胞(ATCC)、HT−29細胞(ATCC)、Raji細胞(ATCC)、Jurkat細胞(ATCC)、および639−V細胞(DSMZ)を、10%ウシ胎仔血清(Omega Scientific)、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したRPMI+GlutaMax(Invitrogen)中で培養した。GFP−ルシフェラーゼ系統を、eGFP−ルシフェラーゼ2(pgl4)融合タンパク質を発現するように改質されたpCDH−CMV−MCS−EF1 puro HIV系レンチウイルスベクター(Systems Biosciences)を使用した形質導入により生成した。FACSAria II細胞選別機(BD Biosciences)上でのGFP発現の選別により、安定な系統を形成した。
【0144】
細胞ベースCD47結合アッセイ。 様々な濃度のビオチン化SIRPα単量体、SIRPα−hIgG4融合タンパク質、または抗CD47抗体を、示されたように癌細胞と共にインキュベートした。ビオチン化単量体の結合は、2次染色試薬として100nM Alexa Fluor 647複合化ストレプトアビジンを使用して検出し、Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences)上で分析した。SIRPα−hIgG4融合タンパク質または抗CD47抗体の結合は、ヤギ抗ヒトIgG抗体(Invitrogen)で検出し、高スループットサンプラー(BD Biosciences)を有するLSRFortessa上で分析した。データは、各クラスの試薬の最大結合に正規化された平均傾向強度を表し、点は、Prism 5(Graphpad)を使用して、S字用量反応曲線にフィッティングされた。
【0145】
細胞ベースCD47遮断アッセイ。 ビオチン化WTa1d1 SIRPαを、Alex Fluor 647複合化ストレプトアビジンと共にインキュベートし、WTa1d1 SIRPα四量体を形成した。100nM WTa1d1 SIRPα四量体を、滴定濃度のCD47拮抗剤と組み合わせ、50,000GFP−ルシフェラーゼ+Raji細胞に同時に添加した。細胞を4℃で30分間インキュベートし、次いで洗浄して未結合四量体を除去した。試料をDAPI(Sigma)で染色して死細胞を除外し、高スループットサンプラーを有するLSRFortessa(BD Biosciences)を使用して蛍光を分析した。データは、最大四量体結合に正規化されたFlowJo v9.4.10(Tree Star)を使用して分析された幾何平均蛍光強度を表し、Prism 5(Graphpad)を使用して、S字用量反応曲線にフィッティングされた。
【0146】
マクロファージ誘導体化および食作用アッセイ。 白血球減少系(LRS)チャンバを、Stanford Blood Centerから、匿名のドナーから得て、末梢血単核細胞を、Ficoll−Paque Premium(GE Healthcare)上で密度勾配遠心分離により濃縮した。単球をAutoMACS (Miltenyi)上で抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi)を使用して精製し、10%AB−ヒト血清(Invitrogen)ならびに100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したIMDM+GlutaMax(Invitrogen)中での7〜10日間の培養により、マクロファージに分化させた。50,000マクロファージの100,000GFP+腫瘍細胞との2時間の共培養により食作用アッセイを行い、次いで、高スループットサンプラーを有するLSRFortessa細胞分析機(BD Biosciences)を使用して分析した。処置に使用された抗体は、IgG1アイソタイプ対照(eBioscience)、抗CD47クローン2D3(eBioscience)、抗EpCam(BioLegend)、セツキシマブ(Bristoll−Myers Squibb)、およびリツキシマブ(Genentech)を含んでいた。マクロファージは、抗CD14、抗CD45、または抗CD206抗体(BioLegend)を使用したフローサイトメトリーにより同定した。死細胞は、DAPI(Sigma)での染色により、分析から除外された。食作用は、FlowJo v9.4.10(Tree Star)を使用して、GFPマクロファージのパーセンテージとして評価し、各細胞系統に対するそれぞれの独立したドナーによる最大反応に正規化された。統計的有意性は、二元配置ANOVAおよびBonferroniの事後試験により決定し、示される場合には、データは、Prism 5(Graphpad)を使用して、S字用量反応曲線にフィッティングされた。
【0147】
食作用の生細胞画像化。 RFPマウスマクロファージを生成し、以前に説明したように、生細胞画像化アッセイにおいて評価した。簡潔に説明すると、骨髄細胞をC57BL/K Rosa26 mRFP1形質転換マウスから単離し、10ng/mLマウスM−CSF(Peprotech)中で分化させた。500,000Raji細胞を0.5?M CFSE(Invitrogen)で標識化し、50,000RFP+マクロファージと共培養し、37℃および5%二酸化炭素に平衡化されたBioStation IMQ(Nikon)を使用して画像化した。
【0148】
マウス。Nod.Cg−Prkdcscid IL2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスを、全てのインビボ実験に使用した。約6〜10週齢でマウスに腫瘍をグラフトし、8〜15のマウスの年齢および性別一致コホートで実験を行った。マウスは、Stanford Veterinary Services Centerのケアの下、バリア施設内に維持し、Stanford University Administrative Panel on Laboratory Animal Careにより認可されたプロトコルに従い取り扱った。
【0149】
腫瘍モデル。 ヒト結腸癌をモデル化するために、1・10GFP−ルシフェラーゼ+DLD−1細胞を、NSGマウスの腹腔内に注入した。腫瘍小結節を、DFC500カメラ(Leica)を備えるM205FA蛍光解剖顕微鏡(Leica)上で可視化した。25%Matrigel(BD Biosciences)中で1.25・10GFP−ルシフェラーゼ639−V細胞をNSGマウスの背側皮下組織内にグラフトすることにより、膀胱癌をモデル化した。ヒトリンパ腫の局在化モデルにおいて、1・10GFP−ルシフェラーゼRaji細胞を、下脇腹に皮下グラフトした。全てのモデルにおいて、処置は、グラフトの確認後に開始し、示されたように継続した。全ての処置において、200μgのSIRPα変異体または抗体を、毎日のスケジュールで腹腔内注射により投与した。生物発光画像法により腫瘍増殖を監視し、腫瘍寸法を測定して、楕円の式(π/6・長さ・幅)に従って体積を計算した。統計的有意性は、Mann−Whitney試験またはKruskal−WallisおよびDunnの事後試験により適宜決定した。生存率は、Mantel−Cox試験により分析した。
【0150】
血液学的分析。 後眼窩静脈叢(retro−orbital plexus)から血液を採取し、二カリウム−EDTA Microtainer管(BD Biosciences)内に収集した。HemaTrue分析機(Heska)を使用して、血液学的パラメータを評価した。統計的有意性は、二元配置ANOVAおよびBonferroniの事後試験により決定した。マウス全血に対するSIRPα−Fc変異体の結合は、Alexa Fluor 647ヤギ抗ヒトIgG抗体(Invitrogen)を使用したフローサイトメトリーにより決定した。
【0151】
生物発光画像法。 麻酔されたマウスに、無菌PBS中16.67mg/mLで再構成した200μLのD−ルシフェリン(蛍)カリウム塩(Biosynth)を注射した。生物発光画像法は、20分にわたりIVIS Spectrum(Caliper Life Sciences)を使用して行い、最大放射輝度を記録した。ピーク全フラックス値は、Living Image 4.0(Caliper Life Sciences)を使用して対象解剖領域から評価し、分析に使用した。
【0152】
タンパク質配列。 本明細書に記載の実施例において使用されたタンパク質の中には、以下が含まれる:
ヒトIgG4のCH2、CH3およびヒンジ領域、ならびに高親和性SIRPα FD6のd1ドメインを含む、FD6−hIgG4(FD6は下線付き、ヒトIgG4 S228Pは太字):
(配列番号40)
EEEVQIIQPDKSVSVAAGESAILHCTITSLFPVGPIQWFRGAGPARVLIYNQRQGPFPRVTTISETTRRENMDFSISISNITPADAGTYYCIKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSAAAPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

ヒトIgG4のCH2、CH3およびヒンジ領域、ならびに高親和性SIRPαCV1のd1 ドメインを含む、CV1−hIgG4(CV−1は下線付き、ヒトIgG4S228Pは太字)。CV1アミノ酸置換は、ヒト野生型対立遺伝子2上に「構築」されていることに留意されたい:
(配列番号41)
EEELQIIQPDKSVLVAAGETATLRCTITSLFPVGPIQWFRGAGPGRVLIYNQRQGPFPRVTTVSDTTKRNNMDFSIRIGNITPADAGTYYCIKFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPSAAAPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

ヒトIgG2のCH2、CH3およびヒンジ領域、ならびに高親和性SIRPα FD6のd1ドメインを含む、FD6−hIgG2(FD6は下線付き、ヒトIgG2は太字):
(配列番号42)
EEEVQIIQPDKSVSVAAGESAILHCTITSLFPVGPIQWFRGAGPARVLIYNQRQGPFPRVTTISETTRRENMDFSISISNITPADAGTYYCIKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSAAAVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGMEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

ヒトIgG2のCH2、CH3およびヒンジ領域、ならびに高親和性SIRPα CV−1のd1ドメインを含む、CV1−hIgG2(CV−1は下線付き、ヒトIgG2は太字):
(配列番号43)
EEELQIIQPDKSVLVAAGETATLRCTITSLFPVGPIQWFRGAGPGRVLIYNQRQGPFPRVTTVSDTTKRNNMDFSIRIGNITPADAGTYYCIKFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPSAAAVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGMEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

GCN4ロイジン(leuzine)ジッパー融合体:
GCN4に融合したFD6のd1ドメインを含み、ロイシンジッパー機能を使用して二量体化する、FD6−ジッパー(FD6は下線付き、GCN4ロイシンジッパーは太字):
(配列番号44)
EEEVQIIQPDKSVSVAAGESAILHCTITSLFPVGPIQWFRGAGPARVLIYNQRQGPFPRVTTISETTRRENMDFSISISNITPADAGTYYCIKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSAAARMKQLEDKVEELLSKNYHLENEVARLKKLVGAASGAD

コンカタマーコンストラクト:
FD6コンカタマー(FD6は下線付き、GGGGSGGGGSリンカー、FD6は下線付き)
(配列番号45)
EEEVQIIQPDKSVSVAAGESAILHCTITSLFPVGPIQWFRGAGPARVLIYNQRQGPFPRVTTISETTRRENMDFSISISNITPADAGTYYCIKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSGGGGSGGGGSEEEVQIIQPDKSVSVAAGESAILHCTITSLFPVGPIQWFRGAGPARVLIYNQRQGPFPRVTTISETTRRENMDFSISISNITPADAGTYYCIKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPS
【0153】
選択された配列の表
【表1】
【0154】
例示的な実施形態
1. 高親和性SIRPαポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、SIRPα膜貫通ドメインを欠き、野生型SIRPα配列に比べて少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記アミノ酸修飾は、CD47に結合するSIRPαポリペプチドの親和性を増加させる、高親和性SIRPαポリペプチド。
2. 前記高親和性SIRPαポリペプチドは、CD47に対し少なくとも1×10−9MのKを有する、実施形態1に記載のポリペプチド。
3. 前記高親和性SIRPαポリペプチドは、CD47に対し少なくとも1×10−10MのKを有する、実施形態1に記載のポリペプチド。
4. 前記ポリペプチドは、SIRPαのd1ドメイン内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、実施形態1に記載のポリペプチド。
5. 前記SIRPα d1ドメインの全てまたは一部からなる、実施形態4に記載のポリペプチド。
6. d1ドメインの外のSIRPαからのアミノ酸配列を含む、実施形態4に記載のポリペプチド。
7. アミノ酸修飾は、SIRPαの疎水性コア残基のセット内のアミノ酸の1つ以上でなされる、実施形態4に記載のポリペプチド。
8. 前記疎水性コア残基のセットは、配列番号1に比べて、L4、V6、V27、I36、F39、L48、I49、Y50、F57、V60、M72、F74、I76、V92、F94およびF103を含む、実施形態7に記載のポリペプチド。
9. アミノ酸修飾は、CD47と相互作用する接触残基のセット内のアミノ酸の1つ以上でなされる、実施形態4に記載のポリペプチド。
10. 前記接触残基のセットは、配列番号1に比べて、A29、L30、I31、P32、V33、G34、P35、Q52、K53、E54、S66、T67、K68、R69、F74、K93、K96、G97、S98、およびD100を含む、実施形態9に記載のポリペプチド。
11. アミノ酸残基は、組み合わされた接触残基のセットおよび疎水性コア残基のセット内の2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、および14個以下のアミノ酸で修飾される、実施形態4に記載のポリペプチド。
12. アミノ酸修飾は、残基L4、V6、A21、V27、I31、E47、K53、E54、H56、S66、K68、V92、F94、およびF103、またはそれらの組み合わせを制限なく含むセット内のアミノ酸の1つ以上でなされる、実施形態4に記載のポリペプチド。
13. (1)L4V;L4I;(2)V6I;V6L;(3)A21V;(4)V27I;V27L;(5)I31T;I31S;I31F;(6)E47V;E47L;(7)K53R;(8)E54Q;(9)H56P;H56R;(10)S66T;S66G;(11)K68R;(12)V92I;(13)F94L;F94V;(14)V63I;および(15)F103Vから選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、実施形態12に記載のポリペプチド。
14. ・V27IまたはV27L;K53R;S66TまたはS66G;K68R;およびF103V、
・L4VまたはL4I;V27IまたはV27L;E47VまたはE47L;K53R;E54Q;S66TまたはS66G;K68R;V92I;およびF103V、
・L4VまたはL4I;V6IまたはV6L;A21V;V27IまたはV27L;I31T、I31SまたはI31F;E47VまたはE47L;K53R;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;K68R;およびF94LまたはF94V、
・V6IまたはV6L;V27IまたはV27L;I31T、I31S、またはI31F;E47VまたはE47L;K53R;E54Q;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;V92I;およびF94LまたはF94V、
・L4VまたはL4I;A21V;V27IまたはV27L;I31T、I31S、またはI31F;E47VまたはE47L;K53R;E54Q;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;F94LまたはF94V;およびF103V、
・L4VまたはL4I;V6IまたはV6L;V27IまたはV27L;I31T、I31S、またはI31F;E47VまたはE47L;K53R;H56PまたはH56R;S66TまたはS66G;K68R;V92I;およびF94LまたはF94V、
・L4VまたはL4I;V6IまたはV6L;I31T、I31S、またはI31F;E47V、またはE47L;K53R;H56PまたはH56R;S66T、またはS66G;V92I;およびF103V、
・V6I;V27I;I31F;E47L;K53R;E54Q;H56P;およびS66T、
・L4V;V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;V63I;S66T;K68R;およびV92I、
・V6I;V27I;I31T;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66G;K68R;V92I;およびF103V、
・V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66T;およびV92I
から選択されるアミノ酸修飾を含む、実施形態13に記載のポリペプチド。
15. ・(配列番号3)に示されるような{V27I;K53R;S66T;S66G;K68R;F103V};
・(配列番号4)に示されるような{L4V;V27L;E47V;K53R;E54Q;S66G;K68R;V92I};
・(配列番号5)に示されるような{L4V;V6I;A21V;V27I;I31T;E47L;K53R;H56P;S66T;K68R;F94L};
・(配列番号6)に示されるような{V6I;V27I;I31S;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66G;V92I;F94L};
・(配列番号7)に示されるような{L4I;A21V;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56R;S66G;F94V;F103V};
・(配列番号8)に示されるような{L4V;V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;H56R;S66G;K68R;V92I;F94L};または
・(配列番号9)に示されるような{L4V;V6L;I31F;E47V;K53R;H56P;S66G;V92I;F103V
・例えば配列番号37に示されるような{V6I;V27I;I31F;E47L;K53R;E54Q;H56P;S66T}、
・例えば配列番号38に示されるような{L4V;V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;V63I;S66T;K68R;V92I}、
・例えば配列番号39に示されるような{V6I;V27I;I31T;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66G;K68R;V92I;F103V}、
・例えば配列番号10に示されるような{V6I;V27I;I31F;E47V;K53R;E54Q;H56P;S66T;V92I}
から選択されるアミノ酸修飾を含む、実施形態13に記載のポリペプチド.
16. 免疫グロブリンFc配列に融合した、実施形態1〜15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
17. 前記高親和性SIRPαポリペプチドは、多量体である、実施形態1〜16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
18. 前記高親和性SIRPαポリペプチドは、単量体である、実施形態1〜16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
19. 実施形態1〜18のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む治療製剤。
20. 検出可能な標識をさらに含む、実施形態1〜18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
21. CD47を発現する細胞の食作用を調節する方法であって、前記細胞を実施形態19の製剤と接触させることを含む方法。
22. 前記細胞を腫瘍特異的抗体と接触させることをさらに含む、実施形態21に記載の方法。
23. 前記接触させることは、インビトロである、実施形態21に記載の方法。
24. 前記接触させることは、インビボである、実施形態21に記載の方法。
25. CD47を発現する前記細胞は、癌細胞である、実施形態18に記載の方法。
26. 腫瘍を画像化する方法であって、がん細胞を実施形態20に記載のポリペプチドと接触させることを含む方法。
図1
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]