(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材を備え、前記複数の部材で端末装置のタッチパネルが接触又は押下されることにより、前記端末装置に前記所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下を検出させる電子印章であって、
前記所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に、自動的に又は半自動的に変更可能に構成され、
前記所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材からなる第1印章及び前記別の所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材からなる第2印章を接触させる又は押下する面に対向して形成された凹部に、第1斜面と、前記第2印章と、を備える押下部品と、
前記第1印章及び前記第2印章を接触させる又は押下する面に垂直な面を挟んで、互いに逆方向に広がるように傾斜している第2斜面と第3斜面とを備える複数の伝達部品と、
前記第1印章が片面に形成され、前記第2印章の降下を妨げない板状の移動部品と、
を備え、
前記押下部品の凹部は、前記第1斜面と前記第2斜面とが面的に接触するように前記複数の伝達部品を取り囲み、
前記移動部品は、当該移動部品を取り囲む前記複数の伝達部品の前記第3斜面に、前記第1印章が形成された面が、当該第1印章を接触させる又は押下する面に対向するように載架され、
前記押下部品が押下されていない状態では、前記第1印章が前記タッチパネルに接触又は押下可能に露出し、
前記押下部品が印章を接触させる又は押下する面に向けて押下されると、前記第2印章が降下するとともに、前記第1斜面が前記第2斜面を摺動することにより前記複数の伝達部品が押されて移動し、前記複数の伝達部品の前記第3斜面が取り囲む部分の面積が狭まり、これにより前記移動部品が前記第3斜面を摺動しつつ上昇して、前記第2印章が前記タッチパネルに接触又は押下可能に露出する
ことを特徴とする電子印章。
前記移動部品は、前記第2印章の複数の部材の配置に応じた複数の穴を設け、当該複数の部材が当該複数の穴を通過するように構成することにより、前記第2印章の降下を妨げないことを特徴とする請求項1に記載の電子印章。
【背景技術】
【0002】
近年、端末装置、とりわけスマートフォンをはじめとする携帯端末においては、画面に指などを接触させることなどにより端末の操作や情報の入力を行うタッチパネル方式を採用するものが広く普及している。
【0003】
このような中、情報の入力をタッチパネルに指を接触させることなどにより行うという特徴を活かし、様々なシステムが考案されている。そのひとつとして、特許文献1に示される電子印章システムが挙げられる。これは、非導電部材の表面に取り付けられた複数の導電部材の相対的な位置関係を印章と観念し、この複数の導電部材を静電容量型のマルチタッチ対応のタッチパネルに接触させて、当該タッチパネルを備える端末装置に当該印章を電子的に認識させるものである。具体的には例えば
図13に示すように、端末装置1のマルチタッチ対応のタッチパネル2に、複数の導電部材が正しい相対的位置関係で配置された印章3aを接触させた場合には認証がOKとなって端末装置1は所定の制御を行い、複数の導電部材が正しい相対的位置関係で配置されていない印章3bを接触させた場合には認証がNGとなって端末装置1は所定の制御を行わない、というように利用することができる。
また、電子印章を用いた応用的サービスとして、例えば、特許文献2に示される電子チケットシステムが挙げられる。これは、コンサート等の会場の入場ゲートで、専用の電子チケットアプリケーションの起動により電子チケットが表示された端末装置を係員に提示し、係員が電子印章を接触させることによってチケット使用済の表示に遷移させた上で会場内への入場を認めるものである。このシステムにより、手間を要していた紙のチケットのもぎり作業がスタンプをタッチパネルに接触させるという簡易な作業で代替されるため、入場手続きの円滑化を図ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)背景技術として例示した電子印章は、タッチパネルに接触させる複数の導電部材の相対的な位置関係を印章と観念するが、印章が設けられる面の面積は、当該電子印章を押印するタッチパネルの面積により制約を受けるため、これにより、印章を構成する導電部材の数も制約を受ける。また、押印者の押印のしやすさを確保する観点から、タッチパネルの面積に対してある程度のマージンを持たせる必要があるため、これによっても印章面の面積の制約を受ける。
【0006】
例えば、略正方形の電子印章を適用する場合、多少回転して使用する場合を考慮し、対角線の長さが一般的なスマートフォン画面の横幅を超えないサイズ(例えば縦30mm×横30mm程度)にする必要がある。また、タッチパネルに接触させる導電部材は、一定面積がないと指として認識されない一方、隣接する導電部材同士が近すぎると1本の指であると誤検知されてしまう。そのため、当該略正方形内への導電部材の配置密度は、縦5個×横5個程度にするのが現実的である。5×5=25個の配置場所に2個から24個の導電部材を配置するパターンの総数は3000万通り以上あるが、実際には、誤検知を確実に防ぐために、導電部材同士が接近する配置パターンを除外したり回転対称である配置パターンを除外したりする必要から、3個から5個の導電部材を配置する数百通りの配置パターンに限定される。更に、端末装置の機種ごとのタッチパネルの検出精度のばらつきを考慮すると、市販の大部分の機種に対応させようとした場合、さらに配置パターンが限定されてしまうのが現状である。
【0007】
しかし、例えば大規模チェーン店などで、複数の異なる店舗への来店により特典を与えるサービスを電子印章を用いて実現する場合、店舗ごとに印章を相違させる必要から、店舗の数が多くなると配置パターンが足りない場合が生じる。また、スタンプラリーにおいても、チェックポイントが多いと配置パターンが足りない場合が生じる。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、電子印章を適用可能な端末機種数を減らすことなく、電子印章の配置パターンを増加させることが可能な端末装置、電子印章及びプログラムを提供することにある。
【0009】
(2)背景技術として例示した電子印章は、単に複数の導電部材をタッチパネルに接触させるものであるため、複数本の指で指の配置を変えつつ何度か押印を試みることで押印が成功してしまう危険がある。このような不正は、電子チケット等の押印により単に消し込みを行う利用形態である場合にはさほど問題にならないが、スタンプカード等の押印により特典が付与される利用形態の場合には大きな問題となる。
【0010】
そこで、本発明の第2の目的は、不正押印が困難な端末装置、電子印章及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の端末装置は、複数の位置での接触又は押下を同時に検出可能なマルチタッチ方式のタッチパネルと、当該タッチパネルにおいて所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下が検出された後、別の所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下が検出されたことを条件に所定の制御を行う制御部と、を少なくとも備える。本発明においては、従来のようにタッチパネルが所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下を検出したことのみをもって制御実行の認証を行うのではなく、更にその後、別の所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下を検出したことを条件に制御実行の認証を行う。このように2段階の認証を行うことで、1段階につき例えば配置パターンが50通りであったとしても、2段階で50×50=2500通りの配置パターンの電子印章を用意することが可能となり、利用可能な端末機種数を減らすことなく配置パターンを飛躍的に増加させることができる。そのため、大規模チェーン店で複数の異なる店舗への来店により特典を与えるサービスを提供する場合にも店舗ごとに異なる配置パターンの電子印章を提供することができ、スタンプラリーにおいてもチェックポイント数の上限を事実上無くすことができる。
【0012】
(2)本発明の端末装置における二段階認証において、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通していることを認証の条件としてもよい。このような認証条件にすることで、指を用いた不正押印を防ぐことができる。
【0013】
(3)本発明の電子印章は、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材を備え、当該複数の部材で端末装置のタッチパネルが接触又は押下されることにより、端末装置に所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下を検出させる電子印章であって、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に、自動的に又は半自動的に変更可能に構成された電子印章である。
【0014】
(4)(3)の電子印章において、部材の配置を自動的に変更するには、例えば、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材が、タッチパネルに接触又はタッチパネルを押下したことを検出し、検出後、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を別の所定の相対的な位置関係の配置に変更する配置制御部を備えるとよい。これにより、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材がタッチパネルに接触した後、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に自動的にかつ速やかに変更することができる。また、不正押印防止のために、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通していることを端末装置での認証条件とした場合には、この条件を満たすように、複数の部材の配置を配置制御部が制御するように構成すればよい。これにより、電子印章によるタッチパネルへの押印を所定の時間継続することで認証条件を満たすことができる。
【0015】
(5)(3)の電子印章において、部材の配置を半自動的に変更するには、例えば次のように構成するとよい。本発明の電子印章は、押下部品、複数の伝達部品、及び移動部品を備える。押下部品は、第1印章及び第2印章を接触させる又は押下する面に対向して形成された凹部に、第1斜面と、別の所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材からなる第2印章と、を備える。伝達部品は、第1印章及び第2印章を接触させる又は押下する面に垂直な面を挟んで、互いに逆方向に広がるように傾斜している第2斜面と第3斜面とを備える。移動部品は、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材からなる第1印章が片面に形成され、第2印章の降下を妨げない板状の部品である。第2印章の降下を妨げない構成として、例えば、移動部品に第2印章の複数の部材の配置に応じた複数の穴を設け、第2印章の複数の部材を当該複数の穴232を通過させる構成が挙げられる。押下部品の凹部は、第1斜面と第2斜面とが面的に接触するように複数の伝達部品を取り囲み、移動部品は、当該移動部品を取り囲む複数の伝達部品の第3斜面に、第1印章が形成された面が、当該第1印章を接触させる又は押下する面に対向するように載架される。
【0016】
このように構成することで、押下部品が押下されていない状態では、第1印章がタッチパネルに接触又は押下可能に露出する。一方、印章を接触させる又は押下する面に向けて押下部品が押下されると、第2印章が降下するとともに、第1斜面が第2斜面を摺動することにより複数の伝達部品が押されて移動し、当該複数の伝達部品の第3斜面が取り囲む部分の面積が狭まる。この面積が狭まることにより、第1印章が設けられている移動部品が、より面積の広い上部へ第3斜面を摺動しつつ上昇する結果、降下した第2印章が第1印章に代わってタッチパネルに接触又は押下可能に露出する。これにより、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材がタッチパネルに接触した後、押下部品を押下することで、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に半自動的にかつ速やかに変更することができる。
【0017】
(6)不正押印防止のために、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下された前記タッチパネル上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通していることを端末装置での認証の条件とした場合に部材の配置を半自動的に変更する方法として、例えば、(5)の構成において、(I)押下部品の底面に1以上の部材からなる第3印章を設ける方法、(II)少なくとも1つの伝達部品の底面の全部又は一部を第3印章として利用する方法、が挙げられる。これらの方法を採ることで、押下部品が押下されていない状態では、第1印章と第3印章とがタッチパネルに接触又は押下可能に露出し、押下部品が印章を接触させる又は押下する面に向けて押下されると、第2印章と第3印章とがタッチパネルに接触又は押下可能に露出する。すなわち、第3印章は押下部品の押下の前後で共通してタッチパネルに接触又は押下可能に露出していることになる。そのため、第1印章と第3印章とを合わせた配置を所定の相対的な位置関係と観念し、第2印章と第3印章とを合わせた配置を別の所定の相対的な位置関係と観念すれば、押印によって所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通することになる。したがって、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材がタッチパネルに接触した後、押下部品を押下することで、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通するように、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、半自動的にかつ速やかに別の所定の相対的な位置関係の配置に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[端末装置]
図1は、本発明の端末装置10の構成を示す図である。端末装置10は、タッチパネル11と制御部12とを少なくとも備え、その他、端末装置10の用途に応じた各種機能が実装される。
【0020】
タッチパネル11は、複数の位置での接触又は押下を同時に検出可能なマルチタッチ方式のタッチパネルである。タッチパネルには、静電的な導電性を持つ物体を接触させることにより検知する方式(例えば、静電容量方式)やタッチパネルが押下されることにより検知する方式(例えば、抵抗膜方式)などがあるが、複数の位置での接触又は押下を同時に検出可能な方式であればいかなる方式であっても構わない。制御部12は、タッチパネル11において所定の相対的な位置関係(例えば
図2(a))を有する複数の位置での接触又は押下が検出された後、別の所定の相対的な位置関係(例えば
図2(b))を有する複数の位置での接触又は押下が検出されたことを条件に所定の制御を行う。位置関係を相対的に定義する意義は、タッチパネルへの電子印章による押印が人間により行われ、押印される向きが必ずしも一定でないため、相対的に定義することで押印される向きによらず認証を可能とすることにある。所定の相対的な位置関係及び別の相対的な位置関係は、互いに異なる配置であれば、それぞれをいかなる配置にするかは任意である。なお、相対的な位置関係及び別の相対的な位置関係の内容は、制御部12自身が保持していてもよいし、端末装置10の記憶手段が保持しそこから読み出してもよい。また、ネットワークを介したサーバ等の他の装置が保持しそこから読み出してもよい。不正入力防止の観点から、所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下が検出された後、別の所定の相対的な位置関係を検出するまでの時間を制限するとよい。この場合、時間を長く設定すると不正入力の危険性が高まるため、なるべく短い時間で設定するのが望ましい。認証に成功した場合の所定の制御の内容についても任意であり、例えば、画面表示を変更する、所定の情報を送受信するなどの制御が挙げられる。
【0021】
本発明においては、従来のようにタッチパネルが所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下が検出されたことのみをもって制御実行の認証を行うのではなく、更にその後、別の所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下が検出されたことを条件に制御実行の認証を行う。このように2段階の認証を行うことで、1段階につき配置パターンが50通りであったとしても、2段階で50×50=2500通りの配置パターンの電子印章を用意することが可能となり、利用可能な端末機種数を減らすことなく配置パターンを飛躍的に増加させることができる。そのため、大規模チェーン店で複数の異なる店舗への来店により特典を与えるサービスを提供する場合にも店舗ごとに異なる配置パターンの電子印章を提供することができ、スタンプラリーにおいてもチェックポイント数の上限を事実上無くすことができる。
【0022】
[端末装置(変形例)]
本発明の端末装置10における二段階認証において、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通していることを認証の条件としてもよい。例えば
図2(c)は、
図2(a)に示す所定の相対的な位置関係に対して、2つの位置(網掛け部分)について共通している別の所定の相対的な位置関係の一例を示したものである。
【0023】
複数本の指で、指の配置を変えつつ所定の相対的な位置関係と別の所定の相対的な位置関係を作ろうとした場合、一部の指をタッチパネルに接触させたまま別の所定の相対的な位置関係に指の配置を変えるのは正解の配置を知っていても容易ではない。また、指の配置を変えるために一旦すべての指をタッチパネルから離してしまうと、離す前の位置と全く同じ位置に再度指を接触させることも容易ではない。そこで、このような認証条件にすることで、指を用いた不正押印を防ぐことができる。
【0024】
[電子印章]
本発明の電子印章は、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材を備え、当該複数の部材で端末装置のタッチパネルが接触又は押下されることにより、端末装置に所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下を検出させる電子印章であって、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に、自動的に又は半自動的に変更可能に構成された電子印章である。
【0025】
複数の部材の配置を、所定の相対的な位置関係から別の所定の相対的な位置関係に変更する一般的な方法として、例えば、複数の部材の配置が異なる2つの電子印章を用意する方法や、1つの電子印章において印章を構成する部材を着脱可能にして部材の配置を手作業で変更する方法などが挙げられる。しかし、不正防止の観点から部材の配置の変更を短時間に行う必要があることを考えると、電子印章自体を交換したり、部材の配置を手作業で変更したりすることは事実上困難である。そこで、1つの電子印章における複数の部材の配置を自動的に又は半自動的に変更可能な構成にすることが望ましい。以下、複数の部材の配置を自動的に又は半自動的に変更可能にする構成について具体的に説明する。
【0026】
[電子印章(配置自動変更)]
図3(a)は、電子印章100の一例を示す断面図である。電子印章100は、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材101と配置制御部102を備える。
図3(b)は、電子印章100の底面、すなわち印章を構成する面103における複数の部材101の配置の一例を示す図である。複数の部材101の材質は、電子印章100を適用するタッチパネル11の検知方式が、静電的な導電性を持つ物体の接触を検知する方式である場合は静電的な導電性を持つ材質である必要があり、タッチパネルの押下を検知する方式である場合は材質を問わない。また、印章を構成する面103における複数の部材101の形状は任意であり、
図3(b)の例では円形としている。
【0027】
電子印章100は、当該電子印章100の複数の部材101で端末装置10のタッチパネル11が接触又は押下されることにより、端末装置10に所定の相対的な位置関係を有する複数の位置での接触又は押下を検出させる電子印章であって、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材101の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に自動的に変更可能に構成された電子印章である。具体的には配置制御部102が、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材101が、タッチパネル11に接触又はタッチパネル11を押下したことを当該複数の部材101を介して検出し、検出後、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材101の配置を別の所定の相対的な位置関係の配置に変更する。そのため、配置制御部102には、所定の相対的な位置関係と別の所定の相対的な位置関係が予め登録されている必要がある。相対的な位置関係の登録の方法は、電子印章100自体が登録手段を実装する、無線通信により外部から取得する、など任意である。また、複数の部材101の配置の変更方法についても任意である。例えば、
図3(a)に示すように、複数の部材101を印章面103に垂直な方向に上下させる方法が挙げられる。所定の相対的な位置関係を有する複数の位置への接触又は押下が検出された後、別の所定の相対的な位置関係に配置を変更するまでの時間は任意であるが、当該電子印章を適用する端末装置10で制限時間が設定されている場合にはその制限時間内で時間を設定する。
【0028】
これにより、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材101がタッチパネル11に接触した後、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材101の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に自動的にかつ速やかに変更することができる。また、不正押印防止のために、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通していることを端末装置10での認証条件とした場合には、この条件を満たすように、複数の部材101の配置を配置制御部102が制御するように構成すればよい。これにより、電子印章100によるタッチパネル11への押印を所定の時間継続することで認証条件を満たすことができる。
【0029】
[電子印章(配置半自動変更)]
図4は、電子印章200の一例を示す斜視図であり、(a)が通常の状態、(b)が押下した状態である。電子印章200は、押下部品210、複数の伝達部品220、及び移動部品230を備える。伝達部品220の個数は、第1印章231の押印安定性、移動部品230の移動安定性及び摺動性等を考慮し、任意に決定してよい。
【0030】
押下部品210は、第1印章231及び第2印章213を接触させる又は押下する面215(以下、「面215」という。)に対向して形成された凹部211に、第1斜面212と、別の所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材からなる第2印章213と、を備える。
図5は押下部品210の構成例であり、(a)に押下部品210の平面図を、(b)にA−A線断面図を、(c)に底面図をそれぞれ示す。ここで、押下部品210の平面形状は
図5では四角形としているが、任意の形状として構わない。凹部211の開口形状についても
図5(c)では四角形としているが、第1斜面212を伝達部品220の第2斜面221が摺動するのに支障がなければ、円形等任意の形状として構わない。また、第2印章213を構成する複数の部材の材質は、電子印章200を適用するタッチパネル11の検知方式が、静電的な導電性を持つ物体の接触を検知する方式である場合は静電的な導電性を持つ材質である必要があり、パネルの押下を検知する方式である場合は材質を問わない。第2印章213を構成する部材の数及び配置は任意であり、第2印章213の面215に対向する面における複数の部材の形状も任意である。
図5(b)(c)では部材は2つ、部材の形状は円形としている。
【0031】
伝達部品220は、面215に垂直な面225を挟んで、互いに逆方向に広がるように傾斜している第2斜面221と第3斜面222とを備える。
図6は伝達部品220の構成例であり、(a)に伝達部品220の平面図を、(b)にB−B線断面図を、それぞれ示す。ここで、第2斜面221と第3斜面222の形状は
図6では平面としているが、押下部品210の凹部211を円形とした場合、第1斜面212が曲面となるため、この場合には摺動性の観点から第2斜面221も曲面とするとよい。また、第3斜面222を摺動する移動部品230の平面形状が円形の場合にも、摺動性の観点から第3斜面222を曲面とするとよい。第1斜面221が面215となす角θ1と第2斜面222が面215となす角θ2は、それぞれ任意であるが、θ1とθ2の角度を相違させることで、押下部品210を押下した距離に対する移動部品230の上昇距離を制御することができる。例えば、θ2がθ1より大きいほど押下部品210を押下した距離に比べ移動部品230の上昇距離を大きくすることができる。ただし反面、θ1の角度を小さくすることで押下に必要な力も大きくなるため、実用性を考慮してバランスをとるとよい。
【0032】
移動部品230は、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材からなる第1印章231が片面に形成された板状の部品である。本発明では電子印章200の最上部に設けられる押下部品210に第2印章213が設けられ、これを降下させることで第2印章213による押印を実現するため、下部に設けられる移動部品230は第2印章213の降下を妨げない形状にする必要がある。
図7は移動部品230の構成例であり、(a)に伝達部品220の平面図を、(b)にC−C線断面図を、それぞれ示す。ここで、移動部品230の形状は
図7(a)(c)では四角形としているが、第3斜面222を摺動するのに支障がなければ、円形等任意の形状として構わない。また、
図7(b)では第3斜面222との接触性を高める観点から側面230aを傾斜させているが、摺動性を制御するため傾斜の角度を適宜変更してもよい。第2印章213の降下を妨げない構成として、例えば、
図7に示すように、移動部品230に第2印章213の複数(ここでは2つ)の部材の配置に応じた複数の穴232を設け、第2印章213の複数の部材が当該複数の穴232を通過させる構成が挙げられる。また、図示は省略するが、移動部品230に切欠きを入れる構成にしてもよい。
【0033】
押下部品210、複数の伝達部品220、及び移動部品230を組み合わせて構成した電子印章200の一例を
図8に示す。
図8では、押下部品210、伝達部品220、及び移動部品230の形状が
図5から7に示したもので、伝達部品220が4つの場合を例示する。(a)は平面図、(b1)はD−D線断面図、(c1)は底面図である。また、
図9(a)は押下部品210を取り除いたときの平面図である。押下部品210の凹部211は、第1斜面212と第2斜面221とが面的に接触するように4つの伝達部品220を取り囲み、移動部品230は、当該移動部品230を取り囲む4つの伝達部品220の第3斜面222に、第1印章231が形成された面が面215に対向するように載架される。なお、押下部品210と伝達部品220は一体性の確保、及び押下部品210押下後の押下前の状態への復元のために、例えば、ばね等の弾性体により連結するとよい(図示省略)。移動部品230についても、必要に応じて押下部品210及び/又は伝達部品220と連結してよい。また、タッチパネル11が静電的な導電性を持つ物体を接触させることにより位置を検知する方式の場合に、伝達部品220が第1印章231及び第2印章213とともに面215に接触するように構成する場合は、伝達部品220の材質は静電的な導電性を持たないものにする必要がある。一方、タッチパネル11が押下されることにより位置を検知する方式の場合は、電子印章200による押印時に、伝達部品220がタッチパネル11を押下しないよう、伝達部品220より第1印章231及び第2印章213が突出するように各部品の形状等を設計する必要がある。ただし、伝達部品220の底面を第1印章231及び第2印章213の一部として利用する場合には、第1印章231及び第2印章213とともにタッチパネル11に接触するように構成しても構わない。
【0034】
以上のように構成することで、押下部品210が押下されていない状態では、
図8(b1)に示すように、第1印章231がタッチパネル11に接触又は押下可能に露出する。一方、面215に向けて押下部品210が押下されると、
図8(b2)に示すように、第2印章213が降下するとともに、第1斜面212が第2斜面221を摺動することにより4つの伝達部品220が凹部211の中心軸に向けて押されて移動し、4つの伝達部品220の第3斜面222が取り囲む部分の面積が狭まる。この面積が狭まることにより、第1印章231が設けられている移動部品230が、より面積の広い上部へ第3斜面222を摺動しつつ上昇する結果、降下した第2印章213が第1印章231に代わってタッチパネル11に接触又は押下可能に露出する。これにより、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材がタッチパネル11に接触した後、押下部品210を押下することで、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、別の所定の相対的な位置関係の配置に半自動的にかつ速やかに変更することができる。
【0035】
[電子印章(配置半自動変更の変形例)]
不正押印防止のために、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通していることを端末装置10における認証の条件とした場合に部材の配置を半自動的に変更する方法として、例えば、配置半自動変更を可能とする
図8に示す電子印章200において、(I)押下部品210の底面に1以上の部材からなる第3印章を設ける方法、(II)少なくとも1つの伝達部品220の底面の全部又は一部を第3印章として利用する方法、が挙げられる。
【0036】
図10は、(I)の方法による電子印章200の変形例である電子印章201を説明する図である。(a)は平面図、(b1)はE−E線断面図、(c1)は底面図である。この構成においては、押下部品210の底面に1以上の部材からなる第3印章241を設ける。各部材を設ける個数、及び各部材を設ける位置は任意である。各部材の面215と対向する面の形状も任意であり、
図10の例では円形としている。第3印章241を構成する各部材の材質は、電子印章201を適用するタッチパネル11の検知方式が、静電的な導電性を持つ物体の接触を検知する方式である場合は静電的な導電性を持つ材質である必要があり、パネルの押下を検知する方式である場合は材質を問わない。
【0037】
第3印章241は、通常は押下部品210の底面から第1印章231と同一平面で露出し、押印部材210の押下後も押下部品210の底面から第2印章213と同一平面で露出するように構成する。すなわち、第3印章は押下部品の押下の前後で共通してタッチパネルに接触又は押下可能に露出していることになる。例えば、第3印章241の各部材をばねなどの弾性体を介して押下部品210に固定することにより、押下部品210の押下による押下部品210と第3印章241との相対的な位置の変化を吸収する。具体的には、
図11(a)に示すように、押印部品210内に設けたばね固定部241aと第3印章241の部材とを長さLのばね241bを介して接続することで、押印部品210を長さd押下しても、
図11(b)に示すように、ばね241bが長さd短縮し短縮部分に第3印章の部材が長さdだけ押印部材210内に入り込む。これにより、押下部品210の押下による押下部品210と第3印章241との相対的な位置の変化が吸収されるため、第3印章241の露出状態を維持することができる。
【0038】
図12は、(II)の方法による電子印章200の変形例である電子印章202を説明する図である。これらの構成においては、少なくとも1つの伝達部品220の底面の全部又は一部を第3印章241として利用する。
【0039】
図12は、少なくとも1つの伝達手段220の底面の全部を第3印章241として利用する電子印章202の一例を説明する断面図であり、(a)は押下部品210の押下前の断面図、(b)は押下部品210の押下後の断面図である。少なくとも1つの伝達手段220の底面を第3印章241として利用する場合、電子印章202による押印時に、押下部品210の押下前は当該伝達手段220と第1印章231の双方が、また、押下部品210の押下後は当該伝達手段220と第2印章213の双方が、面215に接触可能に電子印章202が構成されている必要がある。すなわち、押下部品210の押下前には当該伝達手段220と第1印章231の面215に対向する面が同一平面で露出し、押下部品210の押下後には当該伝達手段220と第2印章213の面215に対向する面が同一平面で露出するように、各部品の形状等を設計する必要がある。なお、伝達手段220を第3印章241としてタッチパネル11に認識させることから、電子印章202を適用するタッチパネル11の検知方式が静電的な導電性を持つ物体の接触を検知する方式である場合は、伝達手段220の底面、すなわち第3印章241の材質は静電的な導電性を持つ材質である必要がある。
【0040】
複数の伝達手段220のうち、何個を第3印章として利用するかは任意である。また、電子印章202を適用するタッチパネル11の検知方式が静電的な導電性を持つ物体の接触を検知する方式である場合には、例えば、伝達手段220の底面の一部のみを静電的な導電性を持つ材質とすることで、底面の全部ではなく当該一部のみを第3印章として利用することができる。
【0041】
以上、(I)や(II)のような方法を採ることで、押下部品210が押下されていない状態では、第1印章231と第3印章241とがタッチパネル11に接触又は押下可能に露出し、押下部品が面215に向けて押下されると、第2印章213と第3印章241とがタッチパネル11に接触又は押下可能に露出する。すなわち、第3印章241は押下部品210の押下の前後で共通してタッチパネル11に接触又は押下可能に露出していることになる。そのため、第1印章231と第3印章213とを合わせた配置を所定の相対的な位置関係と観念し、第2印章213と第3印章241とを合わせた配置を別の所定の相対的な位置関係と観念すれば、押印によって所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通することになる。したがって、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材がタッチパネル11に接触した後、押下部品210を押下することで、所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置と、別の所定の相対的な位置関係で接触又は押下されたタッチパネル11上の複数の絶対的な位置とが、少なくとも1つの位置において共通するように、所定の相対的な位置関係で配置された複数の部材の配置を、半自動的にかつ速やかに別の所定の相対的な位置関係の配置に変更することができる。
【0042】
本発明の端末装置及び電子印章における各機能・処理は、必要に応じ併合・分割しても構わない。また、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが請求の範囲の記載から明らかである。
【0043】
コンピュータを本発明の端末装置として機能させる場合、各手段および各部での処理内容はプログラムによって記述される。そのプログラムは、例えば、ハードディスク装置に格納されており、実行時には、必要なプログラムやデータがRAM(Random Access Memory)に読み込まれて、そのプログラムがCPUにより実行されることにより、コンピュータ上で各処理内容が実現される。