特許第6783418号(P6783418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6783418
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】電極を含む積層構造体
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/18 20060101AFI20201102BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20201102BHJP
   C25B 9/08 20060101ALI20201102BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20201102BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C25B9/18
   C25B9/00 Z
   C25B9/08
   C25B13/02 302
   H01M8/18
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-536822(P2020-536822)
(86)(22)【出願日】2019年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2019037496
【審査請求日】2020年7月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014579
【氏名又は名称】デノラ・ペルメレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大津 秀緒
(72)【発明者】
【氏名】黒木 向太
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/066093(WO,A1)
【文献】 実開昭59−076565(JP,U)
【文献】 実開平06−061970(JP,U)
【文献】 実開昭53−051440(JP,U)
【文献】 特公昭60−009109(JP,B2)
【文献】 特開昭57−108281(JP,A)
【文献】 特公昭62−021873(JP,B2)
【文献】 特公昭61−010555(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 − 15/08
H01M 8/00 − 8/24
B01D 61/42 − 61/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平なユニットを含む複数のユニットを積層し、緊締具で緊締した電極を含む積層構造体であって、
各ユニットは、両面外周部に枠状の緊締部を備え、各緊締部の表面が互いに押圧されることによって積層されており、一方のユニットの緊締部の幅が他方の緊締部の幅と異なるように形成されており、
前記緊締部は、その表面側に、弾性部材からなるガスケットを備えていることを特徴とし、
前記緊締部の幅の狭い側の外縁部が幅の広い側の外縁部よりも内側に位置するとともに、前記緊締部の幅の狭い側の内縁部が幅の広い側の内縁部よりも内側に位置していることを特徴とする電極を含む積層構造体。
【請求項2】
前期積層されるユニットの間には、隔膜が設けられ、これら各ユニットの緊締部間には前記隔膜が介在されていることを特徴とする請求項1に記載の電極を含む積層構造体。
【請求項3】
前記複数のユニットは、バイポーラエレメント、ミドルチャンバを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電極を含む積層構造体。
【請求項4】
前記複数のユニットは、バイポーラエレメント、ミドルチャンバおよびバイポーラエレメントをこの順に積層して構成された1組のユニット積層体を1単位として複数組積層されることを特徴とする請求項3に記載の電極を含む積層構造体。
【請求項5】
前記複数のユニットは、バイポーラエレメントであることを特徴とする請求項1または2に記載の電極を含む積層構造体。
【請求項6】
前記複数のユニットは、陰極ユニット、陽極ユニットを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電極を含む積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を含む積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分解のための電解槽やレドックスフロー電池などを構成するためには、電極を含むユニットを複数積層して、ユニット間を溶液で満たした積層構造体が用いられる。
特許文献1には、溶液の電気分解のための装置が開示されている。複数のバイポーラエレメントをロッドで連結した積層構造体が記載されている。
特許文献2には、陽極と陰極を含む電池セルを複数積層するレドックスフロー電池が開示されている。複数の電池セルを2枚のエンドプレートの間に配置し、ボルトとナットによって積層状態を保持することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4758322号
【特許文献2】国際公開第2018/092215号
【特許文献3】特開平9−49096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載のように、複数のユニットによる積層構造体を構成するためには、ロッドやボルトとナットのような、ユニット同士を物理的に押しつける部材(緊締具)が用いられる。積層される複数のユニットは、接着剤や溶接によって接合されているわけではなく、ユニット間の摩擦力によって保持されているので、このような保持機構では、ユニットにズレが生じる危険性を常にかかえている。また、特許文献3に示すような3室電解槽を積層構造体で構成する場合には、構成するユニットに中間室(ミドルチャンバ)がさらに加わるため、陰極室と陽極室で構成される2室電解槽に比べて、構成ユニットの数が約2倍に増える。構成するユニット数の増加は、ユニットのズレの可能性を高める。また、製造品のスループット向上や安定した動作を担保するためには電極面積をある程度大きくする必要があり、このことはユニットの面積を大きくし、保持しなければならない質量が増加するので、さらにユニットのズレ防止に対して悪影響を及ぼす。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ユニットのズレを効果的に防止することが可能な電極を含む積層構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明による積層構造体は、扁平なユニットを含む複数のユニットを積層し、緊締具で緊締した電極を含む積層構造体であって、各ユニットは、両面外周部に枠状の緊締部を備え、各緊締部の表面が互いに押圧されることによって積層されており、一方のユニットの緊締部の幅が他方の緊締部の幅と異なるように形成されている。
このような構成によれば、ユニット間のずれを防止することができる。
【0006】
本発明の一態様においては、前記緊締部は、その表面側に、弾性部材からなるガスケットを備えている。
このような構成によれば、本発明を、適切な部材で構成することができる。
【0007】
本発明の一態様においては、前期積層されるユニットの間には、隔膜が設けられ、これら各ユニットの緊締部間には前記隔膜が介在されている。
【0008】
本発明の一態様においては、前記複数のユニットは、バイポーラエレメント、ミドルチャンバを含む。
【0009】
本発明の一態様においては、前記複数のユニットは、バイポーラエレメント、ミドルチャンバおよびバイポーラエレメントをこの順に積層して構成された1組のユニット積層体を1単位として複数組積層される。
【0010】
本発明の一態様においては、前記複数のユニットは、バイポーラエレメントである。
【0011】
本発明の一態様においては、前記複数のユニットは、陰極ユニット、陽極ユニットを含む。
上記のような態様の構成によれば、本発明を適切に実施することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユニットのズレを効果的に防止することが可能な電極を含む積層構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る電極を含む積層構造体を備えた電解槽の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る積層構造体のユニット間の位置関係を説明するための模式図である。
図3】本発明の実施形態に係るユニット積層体の位置関係および構成を示す概略斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るユニット積層体の縦断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る緊締部の拡大図である。
図6】従来技術に係る緊締部の拡大図である。
図7】本発明の実施形態に係るユニット積層体の位置関係および構成を示す概略斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係るユニット積層体の縦断面図である。
図9】本発明の実施形態に係るユニット積層体の位置関係および構成を示す概略斜視図である。
図10】本発明の実施形態に係るユニット積層体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
以下に本発明の実施の形態の一例を示す。図1は、本発明の実施形態に係る電極を含む積層構造体を備えた電解槽1の斜視図である。電解槽1は、電極を含む積層構造体2、ミドルチャンバ供給マニフォールド3、ミドルチャンバ排出マニフォールド4、陰極室供給マニフォールド5、陰極室排出マニフォールド6、陽極室供給マニフォールド7、および陽極室排出マニフォールド8を備えている。
【0015】
積層構造体2は、緊締具25と一対の終端支持フレーム26、終端陰極エレメント21、終端陽極エレメント22と、それらの間に配置される、図1に2個だけ図示される複数のバイポーラエレメント23(電極を備えた扁平なユニット)と図1には図示しない複数のミドルチャンバとを備えている。一対の終端支持フレーム26の間には、終端陰極エレメント21、終端陽極エレメント22が配置されている。緊締具25は、ロッド251とナット252から構成される。
【0016】
終端支持フレーム26には、緊締具25のロッド251を支持するための支持部材261が設けられており、支持部材261に形成された孔にロッド251を通し、ロッド251の両端からナット252を螺着し、一対の終端支持フレーム26の間に配置された、終端陰極エレメント21、終端陽極エレメント22、複数のバイポーラエレメント23および複数のミドルチャンバを両端から締め付けた構成となっており、これら全体が積層構造体2を構成している。
【0017】
図2は、積層構造体2の、終端陰極エレメント21、終端陽極エレメント22と、それらの間に配置される、バイポーラエレメント23とミドルチャンバ24の位置関係を説明するための模式図である。積層構造体2は、バイポーラエレメント23、ミドルチャンバ24およびバイポーラエレメント23をこの順に積層して構成された1組のユニット積層体20を1単位として複数組積層されている。また、積層構造体2は、積層方向の終端部の構造を矛盾なく電解槽1として構成するために、終端陰極エレメント21と終端陽極エレメント22の積層方向の内側に、それぞれミドルチャンバ24が配置される。
【0018】
図3は、上述したバイポーラエレメント23、ミドルチャンバ24およびバイポーラエレメント23の1組のユニット積層体20の位置関係およびそれぞれの構成を示す斜視図である。図4は、このユニット積層体20が積層されたときの縦断面図である。
バイポーラエレメント23は、バイポーラエレメント本体231、陽極232、および陰極233から構成されている。バイポーラエレメント本体231は、その表裏面に凹所234a、234bが形成されており、これら凹所234a、234bの周縁部は枠状の凸部235a、235bとなっている。凹所234a内には陽極232が設けられており、凹所234b内には陰極233が設けられている。
【0019】
凸部235a、235bの表面には、それぞれ弾性部材からなるガスケット236a、236bが貼着されている。凸部235a、235bとガスケット236a、236bは緊締部237a、237bを構成している。
ミドルチャンバ24は、ミドルチャンバ本体241と、このミドルチャンバ本体241の表裏面に貼着されたガスケット246a、246bで構成されている。ミドルチャンバ本体241とガスケット246a、246bは、緊締部247a、247bを構成している。ミドルチャンバ本体241は、枠状に形成されており、その中心部分は空間をなしている。
【0020】
ミドルチャンバ24を中心に位置させて、その表裏面の両側に、隔膜201、202が配置され、さらにこれら隔膜201、202の外側に前記バイポーラエレメント23、23が配置され、これら各部が互いに接合されることによって1組のユニット積層体20が構成されている。
本実施形態では、隔膜201は、陽イオン交換膜であり、隔膜202は、陰イオン交換膜である。
【0021】
上記の構成において、隔膜201と図4の左側のバイポーラエレメント23の陰極233との間の空間は、陰極室27を構成し、隔膜201と隔膜202の間の空間は、ミドルチャンバ本体241の中心部分の空間を含んで中間室28を構成しており、隔膜202と図4の右側のバイポーラエレメントの陽極232との間の空間は陽極室29を構成している。
ミドルチャンバ24の緊締部247a、247bの幅Aは、バイポーラエレメントの緊締部237a、237bの幅Bより広く(幅Bと異なるように)形成されている。
【0022】
上記のように構成された電解槽1において硫酸ナトリウム(NaSO)を原料として電気分解する場合は、複数の陰極室27には、陰極室供給マニフォールド5を介して水酸化ナトリウム溶液(NaOH)が供給される。複数の中間室28には、ミドルチャンバ供給マニフォールド3を介して硫酸ナトリウム溶液(NaSO)が供給され、複数の陽極室29には、陽極室供給マニフォールド7を介して硫酸溶液(HSO)が供給されている。
【0023】
それぞれの薬液が供給された状態で、電解槽1が起動すると、陽極232にプラス、陰極233にマイナスの電圧が印可される。この電圧の印加によって、陽極232が陽分極、陰極233が陰分極する。陽極232表面では、水(HO)が酸化されて陽イオンのHと酸素(O)が生成され、陰極233表面では、水(HO)が還元されて陰イオンのOHと水素(H)が生成される。
この状態になると電気的中性を保つため、硫酸イオンSO2−が、陰イオン交換膜202を通過して中間室28から陽極室29へ移動し、ナトリウムイオンNaが、陽イオン交換膜201を通過して中間室28から陰極室27へそれぞれ移動する。
【0024】
上述の生成過程を経て、陽極室29に、酸素ガス(O)と硫酸(HSO)とが生成され、生成された酸素ガス(O)と硫酸(HSO)は、陽極室排出マニフォールド8を介して製品として回収される。陰極室27には、水素ガス(H)と水酸化ナトリウム(NaOH)とが生成され、生成された水素ガス(H)と水酸化ナトリウム(NaOH)は、陰極室排出マニフォールド6を介して製品として回収される。
原料として供給された中間室28の硫酸ナトリウム溶液(NaSO)はリサイクルのためミドルチャンバ排出マニフォールド4を介して回収される。
【0025】
上記生成過程中、陰極室27には、水酸化ナトリウム溶液(NaOH)が供給されているが、上記生成過程を経て、供給されたときの濃度より濃い水酸化ナトリウム溶液(NaOH)が陰極室27に得られる。この水酸化ナトリウム溶液(NaOH)を、一部製品として回収し、残りの溶液に純水(HO)を加え、濃度調節された水酸化ナトリウム溶液(NaOH)が陰極室27に再び供給され、上述の生成過程が繰り返される。
【0026】
次に、上記の電解槽1が備えている積層構造体2の作用、効果について説明する。
図5は、図4に点線の円Cで示す部分であって、バイポーラエレメント23の緊締部237bとミドルチャンバ24の緊締部247aの拡大図が示されている。図6は、従来技術の図5に相当する部分であって、バイポーラエレメント23の緊締部237bとミドルチャンバ240の緊締部247の拡大図が示されている。
【0027】
ここで、図4に示された隔膜201、202の厚さは、バイポーラエレメント23やミドルチャンバ24に比べて、かなり薄いので、バイポーラエレメント23とミドルチャンバ24のガスケット236a、236b、246a、246b同士を押圧したときに、ガスケット236a、236b、246a、246bの形状に追従して変形する。したがって、説明をわかりやすくするため、図5図6では、図4の隔膜201、202を省略して記載する。
【0028】
ここで従来技術の図6に示したように、バイポーラエレメント23の緊締部237bの幅Bと、ミドルチャンバ240の緊締部247の幅Bは、同じである。この構成においては、同じ幅同士のガスケット236b、240aを当接させるため、ガスケット236b、240aに加わる力が均等でない場合、これらガスケット236b、240a同士の位置にズレが生じ、各ユニットを適切に緊締することができないという問題があった。
【0029】
この点について、詳細に説明すると、ガスケット236bと240aは、弾性部材で形成されているので、わずかなズレが生じるとガスケットは、矢印uと矢印v、および矢印xと矢印yのように、その端部で互いに作用と反作用に相当する力が働く。これらの力を、図6紙面上下方向(ズレの生じる方向)の成分に分解すると、それぞれ矢印u1、v1、x1、y1のような向きに力が生じていることがわかる。このとき、バイポーラエレメント23に働く力u1とx1は同一方向であり、u1+x1としてバイポーラエレメント23に作用する。ミドルチャンバ240に働く力v1とy1はバイポーラエレメント23に働く力とは向きが反対の同一方向であり、v1+y1としてミドルチャンバ240に作用する。したがって、力u1+x1と力v1+y1の力の作用によって、バイポーラエレメント23は紙面の上に、ミドルチャンバ240は紙面の下に移動する力が増加され、ズレがどんどん拡大することになる。
【0030】
一方、図5においては、ミドルチャンバ24の緊締部247aの幅Aは、バイポーラエレメント23の緊締部237bの幅Bより広く形成されている。このときに働く作用と反作用に相当する力が、矢印p、q、s、tで表されており、ズレ方向の成分として、p1、q1、s1、t1として分解して表されている。バイポーラエレメント23の緊締部237bに作用する力p1とs1は向きが反対なので相殺される。ミドルチャンバ24の緊締部247aに作用する力q1とt1も向きが逆なので相殺される。結果として、ズレ方向の力は生じないことになる。何らかのきっかけで、わずかなズレが生じたとしても、緊締部237bが、緊締部247aの幅Aの中にとどまっている限りにおいて、上述と同一の力の作用が働くので、ズレ方向の力は生じない。
【0031】
以上述べたように、本実施形態においては、ミドルチャンバ24の緊締部247a,247bの幅をバイポーラエレメント23の緊締部237a、237bよりも広く形成されるので、ズレ方向の力は相殺されて生じない。また、わずかなズレに対しても、バイポーラエレメント23の緊締部237bが、ミドルチャンバ24の緊締部247aの幅A内にとどまっている限りは、ズレ方向の力が生じない。したがって、ユニット(バイポーラエレメント23、ミドルチャンバ24)のズレを効果的に防止することが可能な電極を含む積層構造体2を提供することができる。
【0032】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係るユニット積層体30の斜視図である。図8は、本実施形態のユニット積層体30の断面図である。本実施形態については、第1実施形態と違う点について説明し、同等の構成のものについては、同じ符号を採用し、その説明を省略する。
本実施形態のユニット積層体30は、第1実施形態と同じ構造のバイポーラエレメント23と、緊締部337a、337bの幅がバイポーラエレメント23の緊締部237a、237bの幅と異なり他は同様の構造を持つバイポーラエレメント33とを備えており、バイポーラエレメント23、バイポーラエレメント33、およびバイポーラエレメント23の1組で、ユニット積層体30を構成している。
【0033】
バイポーラエレメント33は、バイポーラエレメント本体331、陽極332、および陰極333から構成されている。バイポーラエレメント本体331は、その表裏面に凹所334a、334bが形成されており、これら凹所334a、334bの周縁部は枠状の凸部335a、335bとなっている。凹所334a内には陽極332が設けられており、凹所334b内には陰極333が設けられている。
【0034】
凸部335a、335bの表面には、それぞれ弾性部材からなるガスケット336a、336bが貼着されている。凸部335a、335bとガスケット336a、336bは緊締部337a、337bを構成している。
バイポーラエレメント33の緊締部337a、337bの幅Aは、バイポーラエレメント23の緊締部237a、237bの幅Bより広く形成されている。
【0035】
バイポーラエレメント23とバイポーラエレメント33の間には、隔膜300が備えられており、本実施形態では、隔膜300は、陽イオン交換膜である。
図8の左側のバイポーラエレメント23の陰極233と隔膜300の間の空間は陰極室27を構成し、隔膜300とバイポーラエレメント33の陽極332の間の空間は陽極室29を構成している。
【0036】
本実施形態では、陰極室27には、水酸化ナトリウム溶液(NaOH)が供給され、陽極室29には、硫酸ナトリウム(NaSO)溶液が供給される。薬液が供給された状態で陽極にプラス、陰極にマイナスの電圧が印加されると、陽極332が陽分極、陰極233が陰分極する。陽極332表面では、水(HO)が酸化されて陽イオンのHと酸素(O)が生成され、陰極233表面では、水(HO)が還元されて陰イオンのOHと水素(H)が生成される。
この状態になると電気的中性を保つため、陽極室29の陽イオンNaが陽イオン交換膜(隔膜)300を通過して陰極室27に移動し、陽極室29では、酸素ガス(O)と硫酸(HSO)が生成され、原料の残りの硫酸ナトリウム(NaSO)とこれら生成物が混合状態にある、陰極室27では、水酸化ナトリウム(NaOH)と水素ガス(H)が生成される。それぞれの生成物は、図示しない排出マニフォールドを介して回収される。
【0037】
本実施形態においては、バイポーラエレメント33の緊締部337a、337bの幅Aは、バイポーラエレメント23の緊締部237a、237bの幅Bより広く形成されているので、第1実施形態と同様の作用効果が得られている。
【0038】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るユニット積層体40の斜視図である。図10は、本実施形態のユニット積層体40の断面図である。本実施形態については、第1実施形態と違う点について説明し、同等の構成のものについては、同じ符号を採用し、その説明を省略する。
本実施形態のユニット積層体40は、陽極ユニット41と陰極ユニット42とを備えており、陽極ユニット41、陰極ユニット42、および陽極ユニット41の1組で、ユニット積層体40を構成している。
【0039】
陽極ユニット41は、枠状の陽極ユニット本体411と、陽極412から構成されている。陽極ユニット本体411は、その内部に陽極412がはめ込まれている。
陽極ユニット本体411の表面には、それぞれ弾性部材からなるガスケット416a、416bが貼着されている。陽極ユニット本体411とガスケット416a、416bは緊締部417a、417bを構成している。
【0040】
陰極ユニット42は、枠状の陰極ユニット本体421と、陰極422から構成されている。陰極ユニット本体421は、その内部に陰極422がはめ込まれている。
陰極ユニット本体421の表面には、それぞれ弾性部材からなるガスケット426a、426bが貼着されている。陰極ユニット本体421とガスケット426a、426bは緊締部427a、427bを構成している。
陰極ユニット42の緊締部427a、427bの幅Aは、陽極ユニット41の緊締部417a、417bの幅Bより広く形成されている。
【0041】
陽極ユニット41陰極ユニット42の間には、隔膜400が備えられており、本実施形態では、隔膜400は、陽イオン交換膜である。
陰極ユニット42の陰極422と隔膜400の間の空間は陰極室27を構成し、隔膜400と陽極ユニット41の陽極412の間の空間は陽極室29を構成している。
陰極室27と陽極室29における電気分解による電解槽の動作は、第2実施形態と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0042】
本実施形態においては、陰極ユニット42の緊締部427a、427bの幅Aは、陽極ユニット41の緊締部417a、417bの幅Bより広く形成されているので、第1実施形態と同様の作用効果が得られている。
【0043】
上述した実施形態では、電解槽において水酸化ナトリウム(NaOH)を生成することについて説明したが、これに限定されない。例えば、第1実施形態の場合は、中間室28、第2、第3実施形態の場合は、陽極室29に、硫酸リチウム(LiSO)を、陰極室27に水酸化リチウム(LiOH)を供給し、電気分解によって陰極室27に水酸化リチウム(LiOH)と水素(H)を生成してもよい。すなわち生成物によらず、本発明の積層構造体を有するいかなる電解槽も本発明に含まれる。また、電解槽に限定することなく、本発明の積層構造体を有するものであれば、例えば、電池や電気透析等もまた本発明に含まれる。
また、上述した実施形態における緊締部の幅の違いは、上述の実施形態中の記載に限定されない。緊締部の幅は、積層される一方のユニットの緊締部の幅が他方と異なっていれば良い。例えば、第1実施形態においては、バイポーラエレメント33の緊締部の幅がミドルチャンバの幅より広くても良い。第3実施形態においては、陽極ユニット41の緊締部の幅が陰極ユニット42の緊締部の幅より広くても良い。
【符号の説明】
【0044】
2 積層構造体
20、30、40 ユニット積層体
23、33 バイポーラエレメント(ユニット)
232、332、412 陽極
233、333、422 陰極
236a、236b、336a、336b バイポーラエレメントのガスケット
237a、237b、337a、337b バイポーラエレメントの緊締部
24、240 ミドルチャンバ(ユニット)
247a、247b、247 ミドルチャンバの緊締部
25 緊締具
41 陽極ユニット(ユニット)
416a、416b 陽極ユニットのガスケット
417a、417b 陽極ユニットの緊締部
42 陰極ユニット(ユニット)
426a、426b 陰極ユニットのガスケット
427a、427b 陰極ユニットの緊締部
201、202、300、400 隔膜
【要約】
【課題】ユニットのズレを効果的に防止することが可能な電極を含む積層構造体を提供する。
【解決手段】扁平なユニットを含む複数のユニット23、33、24、41、42を積層し、緊締具25で緊締した電極232、332、412、233、333、422を含む積層構造体2であって、各ユニット23、33、24、41、42は、両面外周部に枠状の緊締部237a、237b、337a、337b、247a、247b、417a、417b、427a、427bを備え、各緊締部237a、237b、337a、337b、247a、247b、417a、417b、427a、427bの表面が互いに押圧されることによって積層されており、一方のユニットの緊締部247a、247b、337a、337b、427a、427bの幅が他方の緊締部237a、237b、417a、417bの幅と異なるように形成されている。
【選択図】図3
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