特許第6783426号(P6783426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニュープロザイム・セラピューティクス・アンパルトセルスカブの特許一覧

特許6783426ジペプチジルペプチダーゼI阻害剤としてのペプチジルニトリル化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783426
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ジペプチジルペプチダーゼI阻害剤としてのペプチジルニトリル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/14 20060101AFI20201102BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20201102BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C07D309/14CSP
   A61K31/496
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P43/00 111
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P19/06
   A61P31/12
   A61P1/04
   A61P17/06
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P25/00
   A61P25/28
   A61P31/04
   A61P33/06
【請求項の数】17
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-545352(P2017-545352)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公表番号】特表2018-507223(P2018-507223A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】EP2016054674
(87)【国際公開番号】WO2016139351
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】15157811.9
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520324754
【氏名又は名称】ニュープロザイム・セラピューティクス・アンパルトセルスカブ
【氏名又は名称原語表記】Neuprozyme Therapeutics ApS
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】コニ・ラウリツェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン・ペダーセン
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−526093(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/119941(WO,A1)
【文献】 特許第6408008(JP,B2)
【文献】 国際公開第2012/130299(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/140075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(I)
[式中、
nは、0、1または2であり、mは、0、1または2である(ただし、mとnの両方が0である場合は除外され、したがって、mとnの合計は、1、2、3または4である);
Fは、フルオロである;
X1は、
(ここで、yは、0、1、2、3、4、5、6、7または8を表す;
Zは、O(酸素)を表す;
yが1または2である場合、R1は、独立して、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、オキソ(=O)、メルカプトまたはC1-3-アルキルを表し、ここで、C1-3-アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノおよびメルカプトから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される;または
yが3、4、5、6、7または8を表す場合、R1は、重水素を表す)
を表す;
R2は、-C3-6-シクロアルキル、-C1-3-アルキル-C3-6-シクロアルキルまたは-C1-6-アルキルを表し、ここで、-C1-6-アルキルは、ヒドロキシル、シアノまたはアミノから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される]
で示される化合物ならびにその医薬的に許容しうる塩、溶媒和物および水和物。
【請求項2】

または
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2が、-C1-6-アルキルであり、ここで、-C1-6-アルキルは、ヒドロキシル、シアノまたはアミノから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R2が、-C1-6-アルキルである、請求項1または3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
R2が、-C1-3-アルキルである、請求項1、3または4のいずれか1つに記載の化合物
【請求項6】
R2が、メチル-、エチル-またはプロピル-である、請求項1、3、4または5のいずれか1つに記載の化合物
【請求項7】
yが、0、1、2、3または4である、請求項1、3、4、5または6のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
yが、0または1である、請求項1、3、4、5、6または7のいずれか1つに記載の化合物
【請求項9】
yが、0である、請求項1、3、4、5、6、7または8のいずれか1つに記載の化合物
【請求項10】
m+n=1である、請求項1、3、4、5、6、8または9のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項11】
m=1である、請求項1、3、4、5、6、8、9または10のいずれか1つに記載の化合物
【請求項12】
m=2である、請求項1、3、4、5、6、8または9のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の式(I)で示される化合物またはその医薬的に許容しうる塩ならびに少なくとも1つの医薬的に許容しうるアジュバント、担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症を治療するための請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症を治療するための請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症の治療のための医薬の製造のための請求項1〜12のいずれか1つに記載の式(I)で示される化合物の使用。
【請求項17】
医薬が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症の治療のための医薬である、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフェニル部分が1つ以上のフッ素原子で置換されるペプチジルニトリル化合物、およびジペプチジルペプチダーゼIの阻害剤としてのその使用、該化合物を含む医薬組成物、およびジペプチジルペプチダーゼIが関与する炎症性疾患、特に、たとえば慢性閉塞性肺疾患および他の呼吸器疾患などのマスト細胞および好中球細胞によって媒介される炎症性疾患の治療および/または予防のための該作用剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテプシンCとしても知られているジペプチジルペプチダーゼI(DPPI; EC 3.4.14.1)は、パパインファミリーに属するリソソームシステインペプチダーゼである。この酵素は、多くの組織において構成的に発現され、肺、腎臓、肝臓および脾臓において高レベルで発現される。ラット、ヒトおよびマウスDPPIをコードするcDNAは、クローニングされ、配列決定されており、該酵素が高度に保存されていることが明らかにされている。DPPIは、不活性な前駆体(酵素前駆体)として合成され、N末端プロペプチド内の内部活性化ペプチドの非自己触媒的切除によって活性化される。DPPIは、4つの同一のサブユニットからなる四量体として機能するパパインファミリーの唯一のメンバーである。それぞれは、N末端フラグメント(残留特性(residual propart))、重鎖および軽鎖からなる。いったん活性化されると、DPPIは、広範な特異性で、ポリペプチド基質のN末端からのジペプチドの除去を触媒する。ヒトDPPIを用いる最適pHは、5-7の範囲である。リポソームタンパク質分解における重要な酵素であることに加えて、近年のデータは、DPPIが、好中球(カテプシンG、プロテイナーゼ3、好中球セリンプロテアーゼ4およびエラスターゼ)、マスト細胞(キマーゼおよびトリプターゼ)および細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞(グランザイムAおよびB)内の顆粒セリンペプチダーゼの活性化における重要な酵素としても機能することを示唆する。
【0003】
マスト細胞は、多くの組織において見い出されるが、皮膚、呼吸器官および消化管などの身体の内皮層により多くの数が存在する。マスト細胞は、小血管の周囲の血管周囲組織にも存在する。ヒトでは、2つのタイプのマスト細胞が、同定されている;トリプターゼのみを発現するT型およびトリプターゼとキマーゼの両方を発現するMC型。ヒトでは、T型マスト細胞は、主として肺胞組織および腸粘膜に存在し、TC型マスト細胞は、皮膚および結膜に多く存在する。マスト細胞は、サイトカイン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ヒスタミンおよびプロテオグリカンなどの広範な強力な炎症性メディエータを放出しうるが、マスト細胞活性化の最も豊富な産物は、キモトリプシンファミリーのセリンペプチダーゼである;トリプターゼおよびキマーゼ。これらのペプチダーゼは、完全活性酵素として、マスト細胞リソソーム中に存在する。酵素前駆体からのトリプターゼおよびキマーゼ活性化の正確な部位は、わかっていないが、ゴルジ装置が、その点において役割を演じる可能性がある。マスト細胞において特に豊富であるDPPIは、キマーゼおよびトリプターゼの活性化の原因となる重要な酵素であるように見える。さらに、トリプターゼおよびキマーゼは、喘息、炎症性腸疾患および乾癬などのアレルギー性疾患の重要なメディエータとして出現する。活性化マスト細胞から分泌された後、これらのペプチダーゼが、炎症、組織リモデリング、気管支収縮および粘液分泌の過程に大きく関与するという証拠があり、これらのペプチダーゼが治療的介入にとって魅力的なものになる。
【0004】
好中球は、多くの病的状態において著しい損傷を引き起こす。活性化されるとき、好中球は、エラスターゼ、プロテイナーゼ3およびカテプシンGなどの破壊的な顆粒酵素を分泌し、酸化的な破壊を受けて反応性酸素中間体を放出する。これらの活性化剤において、多くの研究が孤立して行われている。肺気腫、COPD、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、α-1抗トリプシン欠損症、乾癬、敗血症および関節リウマチは、強力な酵素エラスターゼ、プロテイナーゼ3およびカテプシンGに関連する病的状態の適当な例である。
【0005】
トリプターゼ、キマーゼ、エラスターゼ、カテプシンGおよび他の類似の炎症性ペプチダーゼを炎症性疾患と関連付ける強力な証拠は、これらのペプチダーゼを活性化することにおけるその中心的役割により、上述の疾患およびその他の類似の炎症性疾患に対する治療的介入にとっての魅力的な標的酵素としてDPPIを指摘する(Adkison et al. 2002、J. Clin. Invest、109、363-271; Pham. et al. 2004、J. Immunol、173,7277-7281)。
【0006】
PROZYMEXのWO2012130299 およびWO2012119941は、ニトリル化合物およびジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としてのその使用を開示する。AstrazenecaのWO 2009074829A1もまた、ペプチジルニトリルおよびジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としてのその使用を開示する。AstrazenecaのWO 2010128324A1、WO154677A1およびWO 2010142985A1は、さらなるニトリル化合物およびジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としてのその使用を開示する。 Boehringer Ingelheim International GMBHのWO2013041497A1は、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としてのニトリル化合物を開示する。Nathalie Methot、Daniel Guay、Joel Rubin、Diane Ethier、Karen Ortega、Simon Wong、Denis Normandin、Christian Beaulieu、T. Jagadeeswar Reddy、Denis Riendeau、and M. David Percival :In Vivo Inhibition of Serine protease Processing Requires a High Fractional Inhibition of Cathepsin C、Mol Pharmacol 73:1857-1865、2008は、ジペプチドニトリルカテプシンC阻害剤を開示する。Nathalie Methot、Joel Rubin、Daniel Guay、Christian Beaulieu、Diane Ethier T. Jagadeeswar Reddy、Denis Riendeau、and M. David Percival:Inhibition of the Activation of Multiple Serine proteases with a Cathepsin C Inhibitor Requires Sustained Exposure to Prevent Pro-enzyme Processing J. Biol. Chem.、Vol. 282、Issue 29、20836-20846、July 20、2007は、ジペプチドニトリルカテプシンC阻害剤を開示する。Jon Bondebjerg、Henrik Fuglsang、Kirsten Rosendal Valeur、John Pedersen and Lars Naerum、Dipeptidyl nitriles as human dipeptidyl peptidase I inhibitors、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 16(2006) 3614-3617は、ヒトジペプチジルペプチダーゼIの阻害剤としてのジペプチドニトリル骨格を有する化合物を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的
本発明の目的は、炎症性疾患、ガンおよび感染症の治療に適した、ジペプチジルペプチダーゼIの阻害剤である新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
本発明は、式(I):
(I)
[式中、
nは、0、1または2であり、mは、0、1または2である;したがって、mとnの合計は、1、2、3または4である;
Fは、フルオロである;
X1は、
(ここで、yは、0、1、2、3、4、5、6、7または8を表す;
Zは、O(酸素)を表す;
yが1または2である場合、R1は、独立して、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、オキソ(=O)、メルカプトまたはC1-3-アルキルを表し、ここで、C1-3-アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノおよびメルカプトから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される;または
yが3、4、5、6、7または8を表す場合、R1は、重水素を表す)
を表す;
R2は、-C3-6-シクロアルキル、-C1-3-アルキル-C3-6-シクロアルキルまたは-C1-6-アルキルを表し、ここで、-C1-6-アルキルは、ヒドロキシル、シアノまたはアミノから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される]
で示される化合物ならびにその医薬的に許容しうる塩、溶媒和物および水和物に関する。
【0009】
R2は、-C1-6-アルキルであってもよく、ここで、-C1-6-アルキルは、ヒドロキシル、シアノまたはアミノから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される。R2が、-C1-6-アルキル、好ましくは-C1-3-アルキル、より好ましくはメチル-、エチル-またはプロピル-であるのが適当である。y=0または1、好ましくは0であるのが適当である。
【0010】
式(I)で示される化合物の1つの態様において、m+n=1である。特に、mは、1であってもよい。もう1つの態様において、式(I)におけるmおよびnは、両方とも1である。もう1つの態様において、mは、2である。Fが、ビフェニル部分の2-位および2'-位に位置するのが適当である。
【0011】
以下の化合物が特に興味深い:

【0012】
以下の化合物も特に興味深い:


【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で用いる用語「DPPI」は、カテプシンC、カテプシンJ、ジペプチジルアミノペプチダーゼIおよびジペプチジルトランスフェラーゼとしても知られるジペプチジルペプチダーゼI(EC 3.4.14.1)を意味することを意図する。DPPIは、XaaがArgまたはLysであるか、またはXbbまたはXccがProである場合以外は、ポリペプチド鎖Xaa-Xbb-Xcc-[Xxx]nのN末端からジペプチドXaa-Xbbを切断する。
【0014】
上記式中、基:-CNは、ニトリル基
である。
【0015】
たとえば、
で示される置換基中の波線は、前述のコア分子(式(I))に接続する結合を示すために用いられる。
【0016】
本明細書の文脈において、他に特記しない限り、アルキル置換基または置換基中のアルキル部分は、直線または分枝である。
【0017】
用語「治療」は、疾患、身体状態または障害と闘うことを目的とする患者の管理および看護として定義され、症状もしくは合併症の発症を予防するため、または症状もしくは合併症を緩和するため、または疾患、身体状態もしくは障害を排除するための本発明化合物の投与を包含する。
【0018】
「半減期」は、インビトロまたはインビボで、基質の半量がもう1つの化学的に異なる種に変換されるために必要な時間を意味する。
【0019】
本明細書において、語句「医薬的に許容しうる」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答またはその他の問題もしくは合併症を引き起こさず、合理的な利益/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触に用いるのに適当な化合物、物質、組成物および/または投与剤形を意味するために用いられる。
【0020】
式(I)で示される化合物は、1つ以上の不斉中心(キラル中心とも称される)を含み、したがって、個別のエナンチオマー、ジアステレオマーもしくは他の立体異性体、またはその混合物として存在しうる。キラル中心は、アルキル基などの置換基中に存在してもよい。式(I)中または本明細書に記載の任意の化学構造中の立体化学が特定されない場合、構造は、任意の立体異性体およびそのすべての混合物を包含することを意図する。したがって、1つ以上のキラル中心を含む式(I)で示される化合物を、ラセミ混合物、エナンチオマーリッチな混合物またはエナンチオマー的に純粋な個々の立体異性体として用いてもよい。
【0021】
1つ以上の不斉中心を含む式(I)で示される化合物の個々の立体異性体を、当業者に周知の方法によって分割してもよい。たとえば、このような分割は、(1)ジアステレオ異性体塩、錯体またはその他の誘導体の形成によって;(2)酵素的酸化もしくは還元による立体異性体特異的試薬を用いる選択的反応によって;または(3)キラル環境下、たとえば、結合したキラルリガンドを有するシリカなどのキラル支持体上、あるいはキラル溶媒の存在下、気液クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーによって行われうる。当業者であれば、上述の分離手順の1つによって所望の立体異性体がもう1つの化学的実態に変換される場合、所望の形態を遊離させるためのさらなるステップが必要であることを理解するであろう。あるいは、光学的に活性な試薬、基質、触媒または溶媒を用いる不斉合成によって、または不斉転換により1つのエナンチオマーを他のものに変換することによって特定の立体異性体を合成することができる。シクロアルキル基が存在するならば、いくつかの置換基パターンは、アキシアルまたはエクアトリアル配置をもたらしうる。他に特記しない限り、両方の形態が包含される。
すべての互変形態もまた、式(I)で示される化合物に包含され、このような互変異性体は、平衡状態で、または1つの形態が優勢な状態で存在する。
【0022】
好ましい上記式(I)で示される化合物は、エナンチオマー的に純粋な形態の式(II):
(II)
[式中、X1、R2、m、nおよびFは、前記と同意義である]
で示される化合物である。
【0023】
当業者であれば、式(I)で示される化合物の医薬的に許容しうる塩を製造することができることを理解するであろう。実際に、本発明の特定の実施態様において、式(I)で示される化合物の医薬的に許容しうる塩は、分子により大きい安定性または溶解度を付与し、それによって投与剤形への製剤化を促進するので、非塩形態よりも好ましい。したがって、本発明は、さらに、式(I)で示される化合物の医薬的に許容しうる塩に関する。式(I)で示される化合物に関するすべての詳細は、医薬組成物にも関連する。
【0024】
本明細書で用いる用語「医薬的に許容しうる塩」は、化合物の所望の生物活性を保持し、最小の望ましくない毒性作用を示す塩を意味する。これらの医薬的に許容しうる塩は、化合物の最終単離および精製中にインサイチュで製造されるか、またはその遊離酸もしくは遊離塩基において精製された化合物を、それぞれ適当な塩基もしくは酸と別々に反応させることによって製造されうる。
【0025】
本明細書で用いる「医薬的に許容しうる塩」は、その酸または塩基塩を製造することによって親化合物が修飾される、開示された化合物の誘導体を意味する。医薬的に許容しうる塩の例として、アミンなどの塩基性残基の鉱物または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩;などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。たとえば、このような塩として、アンモニア、L-アルギニン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン(2,2'-イミノビス(エタノール))、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)-エタノール、2-アミノエタノール、エチルエチレンジアミン、N-エチル-グルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リシン、水酸化マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン(2,2',2”-ニトリロトリス(エタノール))、トロメタミン、水酸化亜鉛、酢酸、2.2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、(+)-ショウノウ酸、(+)-カンファー-10-スルホン酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、デカン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンジアミノ四酢酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、D-グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、グルタミン酸、グルタンチン酸(glutantic acid)、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリシン、グリコール酸、ヘキサン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸イソ酪酸、DL-乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、リジン、マレイン酸、(−)-L-リンゴ酸、マロン酸、DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ガラクタル酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オクタン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸(エンボン酸)、リン酸、プロピオン酸、(−)-L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸およびウンデシレン酸からの塩が挙げられる。さらに、さらなる医薬的に許容しうる塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの金属からのカチオンとともに形成されうる(Pharmaceutical salts、Berge、S. M. et al.、J. Pharm. Sci.、(1977)、66、1-19も参照)。
【0026】
本発明の医薬的に許容しうる塩を、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、水またはエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリル、あるいはその混合物などの有機希釈液中、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を十分な量の適当な塩基または酸と反応させることによって、このような塩を製造することができる。
【0027】
たとえば、本発明化合物を精製または単離するのに有用な、上述の塩以外の塩(たとえば、トリフルオロ酢酸塩)もまた、本発明の一部に包含される。
【0028】
固体状態において、本発明化合物は、結晶、半結晶および非晶質形態、ならびにその混合物で存在することができる。当業者であれば、溶媒分子が結晶形成中の固体構造に組み込まれる、本発明化合物の医薬的に許容しうる溶媒和物を形成してもよいことを理解するであろう。溶媒和物は、水または非水溶媒、あるいはその混合物を含んでもよい。さらに、環境および保管状態に応じて、このような溶媒和物の溶媒含量を変化させることができる。たとえば、相対湿度および温度に応じて、水を時間とともに別の溶媒と交換してもよい。水が、固体構造に組み込まれる溶媒である溶媒和物は、一般に、「水和物」と称される。1種以上の溶媒が固体構造に組み込まれる溶媒和物は、一般に、「混合溶媒和物」と称される。溶媒和物は、「化学量論的溶媒和物」ならびに可変量の溶媒を含む組成物(「非化学量論的溶媒和物」と称される)を包含する。水が、固体構造に組み込まれる溶媒である化学量論的溶媒和物は、一般に、「化学量論的水和物」と称され、水が、固体構造に組み込まれる溶媒である非化学量論的溶媒和物は、一般に、「非化学量論的水和物」と称される。本発明は、化学量論的溶媒和物および非化学量論的溶媒和物の両方を包含する。
【0029】
さらに、その溶媒和物を包含する本発明化合物の結晶形態は、固体構造に組み込まれない溶媒分子を含んでもよい。たとえば、単離する場合に、溶媒分子が結晶に捕捉されるようになってもよい。さらに、溶媒分子は、結晶の表面に保持されてもよい。本発明は、このような形態も包含する。
【0030】
全身投与および局所投与の両方などの任意の適当な投与経路によって、本発明化合物を投与することができる。全身投与として、経口投与、非経口投与、経皮投与、直腸投与および吸入による投与が挙げられる。非経口投与は、経腸、経皮または吸入による投与以外の投与経路を意味し、一般には、注射または点滴である。非経口投与として、静脈内、筋肉内および皮下注射または点滴が挙げられる。吸入は、口または鼻を通って吸入される、患者の肺への投与を意味する。局所投与として、皮膚への適用ならびに眼内、眼科的、膣内および鼻腔内投与が挙げられる。
【0031】
1回で、または所定期間の間、さまざまな間隔で複数回投与される投与計画にしたがって、本発明化合物を投与することができる。たとえば、用量を1日1、2、3または4回投与することができる。所望の治療効果が達成されるまで、または無期限に所望の治療効果を維持するために、用量を投与してもよい。本願発明化合物のための適当な投与計画は、吸収、分布および半減期などの化合物の薬物動態学的特性に応じて変化し、当業者によって決定されうる。さらに、本発明化合物のための、そのような計画で投与される投与される量および期間を包含する適当な投与計画は、治療される状態、治療される状態の重篤度、治療される患者の年齢および身体状態、治療される患者の病歴、併用療法の性質、選択された特定の投与経路、所望の治療効果および当業者の知識および経験の範囲内にある同様の因子に応じて変化する。投与計画に対する個々の患者の応答または経時の個々の患者の応答が変更を必要とする場合、適当な投与計画が調整を必要としうることが当業者にはさらに理解されるであろう。典型的な1日用量は、1 mg〜1000 mgである。
【0032】
本発明化合物を、プロドラッグとして投与してもよい。本明細書で用いる本発明化合物の「プロドラッグ」は、患者に投与されると、インビボで最終的に本発明化合物を遊離させる、本発明化合物の機能性誘導体である。プロドラッグとしての本発明化合物の投与は、当業者が以下の項目の1つ以上を行うのを可能にする:(a)インビボでの化合物の効果の発現を変更する;(b)インビボでの化合物の作用期間を変更する;(c)インビボでの化合物の輸送および分布を変更する;(d)インビボでの化合物の溶解度を変更する;および(e)本発明化合物が遭遇する副作用またはその他の困難を克服する。プロドラッグを製造するために用いられる典型的な機能性誘導体は、インビボで化学的または酵素的に切断される、化合物の修飾を包含する。リン酸塩、アミド、エステル、チオエステル、カーボネートおよびカルバメートの製造を包含するこのような修飾は、当業者には周知である。
【0033】
薬物の発見および薬物の開発の両方において、プロドラッグは、薬物の有用性に対する障壁を克服する、薬理学的活性剤の物理化学的、生物薬剤学的および薬物動態学的特性の改善のための確立されたツールになっている。
【0034】
治療薬の担体としてのショートペプチドまたはシングルアミノ酸のカップリングを、有効なタイプのプロドラッグアプローチとして用いることができる。このアプローチにおいて、アミノ酸またはジ(またはオリゴ)ペプチド部分を、たとえば、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV/CD26)、ジペプチジルペプチダーゼI(DPPI/カテプシンC)、アミノペプチダーゼN(APN/CD13)、ピログルタミルアミノペプチダーゼ、プロリンイミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼP、エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ3、トリプターゼまたはキマーゼなどの内因性ペプチダーゼによって特異的に切断されうるアミド結合を介して、薬物の遊離(第1級または第2級)アミノ基に連結させる。
【0035】
アミノ酸またはジもしくはオリゴペプチド部分は、タンパク質構成アミノ酸(すなわち、タンパク質中に天然で存在するアミノ酸)または非タンパク質構成アミノ酸(すなわち、天然に存在するか、または化学的に合成される非たんぱく質構成アミノ酸)からなりうる。
【0036】
1つの態様において、本明細書に開示される化合物は、遊離(第1級または第2級)アミノ基を介してアミノ酸またはジ(またはオリゴ)ペプチド部分に連結される。これらのプロドラッグは、ペプチダーゼ触媒反応によって所望の活性化合物に変換されてもよい。
【0037】
出発物質および試薬は、市販されているものであるか、または文献に記載の方法を用いて、当業者によって調製されてもよい。
【0038】
式(I)で示される本発明化合物、たとえば、
化合物PZ1101
は、基本的に、以下の合成反応工程式に記載のように製造されうる。
【0039】
m=2である式(I)で示される本発明化合物、たとえば、
化合物PZ1118
は、たとえば、基本的に、出発物質として
を用い、実施例1においてPZ1101の合成のために記載されたように合成されうる。
【0040】
本発明にしたがって、一般式(I)で示される化合物を、それ自体で、または式(I)で示される他の有効成分と組合わせて用いてもよい。一般式(I)で示される化合物を、任意に、他の薬理学的有効成分と組合わせて用いてもよい。これらとして、(短期および長期作用型)B2アドレナリン受容体アゴニスト、(短期および長期作用型)抗コリン薬、抗炎症ステロイド(経口および局所コルチコステロイド)、クロモグリク酸、メチルキサンチン、解離グルココルチコイド模倣体、PDE3阻害剤、PDE4-阻害剤、PDE7-阻害剤、LTD4アンタゴニスト、EGFR-阻害薬、ドーパミン作動薬、PAF拮抗剤、リポキシンA4誘導体、モジュレーターを、LTB4受容体(BLTL、BLT2)アンタゴニスト、ヒスタミンHI受容体アンタゴニスト、ヒスタミンH4受容体アンタゴニスト、デュアルヒスタミンH1/H3受容体の拮抗剤、PI3キナーゼ阻害剤、たとえばYN、LCK、SYK、ZAP-70、FYN、BTKまたはITKなどの非受容体チロシンキナーゼの阻害剤、たとえばp38、ERK1、ERK2、J K1、J K2、J K3またはSAPなどのMAPキナーゼの阻害剤、たとえばIKK2キナーゼ阻害剤などのNF-κβシグナル伝達経路の阻害剤、iNOS阻害剤、MRP4阻害剤またはロイコトリエン生合成阻害剤が挙げられる。
【0041】
本明細書に開示される化合物は、患者に投与する前に、必ずしも必要ではないが通常、医薬組成物に製剤される。したがって、もう1つの態様において、有効成分として本明細書に開示される化合物またはその医薬的に許容しうる塩ならびに医薬的に許容しうるアジュバント、担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
本明細書に開示される医薬組成物を、安全で有効な量の本明細書に開示される化合物が引き出され、次いで、散剤、シロップ剤および注射用液剤として患者に投与されうるバルク形態で製造し、パッケージングしてもよい。あるいは、本明細書に開示される医薬組成物を、各物理的に個別の単位が、安全で有効な量の本明細書に開示される化合物を含む単位投与剤形で製造し、パッケージングしてもよい。単位投与剤形で製造される場合、本明細書に開示される医薬組成物は、一般に、1 mg〜1000 mgを含む。
【0043】
本明細書に開示される医薬組成物は、一般に、本明細書に開示される1つの化合物を含む。しかしながら、本発明の医薬組成物は、任意に、1種以上の追加の医薬的活性化合物を含んでもよい。反対に、本発明の医薬組成物は、一般に、1つ以上の医薬的に許容しうる賦形剤を含む。しかしながら、特定の実施態様において、本発明の医薬組成物は、1つの医薬的に許容しうる賦形剤を含む。
【0044】
本明細書で用いる「医薬的に許容しうる賦形剤」は、医薬組成物に形態または堅さを付与することに関与する医薬的に許容しうる材料、組成物またはビヒクルを意味する。患者に投与されたときに本発明化合物の効能を実質的に減少させる相互作用および医薬組成物を医薬的に許容しえないようにする相互作用が回避されるように混合する場合、各賦形剤は、医薬組成物の他の成分と適合しなければならない。さらに、もちろん、各賦形剤は、医薬的に許容しうるものであるために、十分に高い純度でなければならない。本発明化合物および医薬的に許容しうる賦形剤(1つまたはそれ以上)は、一般に、所望の投与経路によって患者に投与するのに適した投与剤形に製剤される。たとえば、投与剤形として、(1)錠剤、カプセル剤、カプレット、ピル、トローチ、散剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、溶液剤、乳濁液剤、サシェ剤およびカシェ剤などの経口投与;(2)滅菌溶液剤、懸濁剤および再構成用粉末などの非経口投与;(3)経皮パッチなどの経皮投与;(4)座薬などの直腸投与;(5)エアロゾルおよび液剤などの吸入;および(6)クリーム剤、軟膏、ローション剤、液剤、ペースト、スプレー、泡剤およびゲル剤などの局所投与に適した剤形が挙げられる。
【0045】
適当な医薬的に許容しうる賦形剤は、選択された特定の投与剤形に応じて変わる。さらに、適当な医薬的に許容しうる賦形剤は、組成物中で役割を果たしうる特定の機能について選択されてもよい。たとえば、特定の医薬的に許容しうる賦形剤は、均一な投与剤形の生成を促進するその能力について選択されてもよい。特定の医薬的に許容しうる賦形剤は、安定な投与剤形の生成を促進するその能力について選択されてもよい。特定の医薬的に許容しうる賦形剤は、患者に投与された後に、1つの臓器または身体の一部からもう1つの臓器または身体の一部へ本発明化合物を運ぶか、または輸送するその能力について選択されてもよい。特定の医薬的に許容しうる賦形剤は、患者のコンプライアンスを強化するその能力について選択されてもよい。
【0046】
適当な医薬的に許容しうる賦形剤として、以下のタイプの賦形剤が挙げられる:希釈剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒剤、懸濁剤、乳化剤、甘味料、香味剤、香味マスキング剤、着色剤、抗ケーキング剤、湿潤剤、キレート剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤および緩衝剤。当業者は、特定の医薬的に許容しうる賦形剤が、1つ以上の機能を果たし、製剤中にどの程度の量で賦形剤が存在するか、および他の成分が何であるかに応じて、別の機能を果たしうることを理解するであろう。
【0047】
当業者は、本発明で用いるための適切な量で適当な医薬的に許容しうる賦形剤を選択しうる知識および技量を有する。さらに、医薬的に許容しうる賦形剤を記載し、適当な医薬的に許容しうる賦形剤を選択することにおいて有用でありうる、当業者が利用できる多数の情報源がある。例として、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)、The Handbook of Pharmaceutical Additives(Gower Publishing Limited)およびHandbook of Pharmaceutical Excipients(the American Pharmaceutical Association and the Pharmaceutical Press)が挙げられる。
【0048】
本発明の医薬組成物は、当業者に周知の技術および方法を用いて製造される。当技術分野において通例用いられる方法のいくつかは、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)に記載されている。1つの態様において、本発明は、安全で有効な量の本発明化合物および希釈剤または充填剤を含む錠剤またはカプセル剤などの固体経口投与剤形に関する。適当な希釈剤および充填剤として、ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン(たとえば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンおよびアルファ化デンプン)、セルロースおよびその誘導体(たとえば、微結晶セルロース)、硫酸カルシウムおよび二塩基性リン酸カルシウムが挙げられる。経口固体投与剤形は、結合剤をさらに含んでもよい。適当な結合剤として、デンプン(たとえば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンおよびアルファ化デンプン)、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカント、グアーガム、ポビドンならびにセルロースおよびその誘導体(たとえば、微結晶セルロース)が挙げられる。経口固体投与剤形は、崩壊剤をさらに含んでもよい。適当な崩壊剤として、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、アルギン酸およびナトリウムカルボキシメチルセルロースが挙げられる。経口固体投与剤形は、滑沢剤をさらに含んでもよい。適当な滑沢剤として、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクが挙げられる。もう1つの態様において、本発明は、吸入による患者への投与に適した投与剤形に関する。たとえば、本発明化合物は、乾燥粉末、エアロゾル、懸濁液または用益として肺に吸入されてもよい。
【0049】
吸入による肺へのデリバリー用乾燥粉末は、一般に、微粉末としての1種以上の医薬的に許容しうる賦形剤とともに微粉末としての本発明化合物を含む。乾燥粉末中での使用にとくに適した医薬的に許容しうる賦形剤は、当業者に周知であり、該賦形剤として、ラクトース、デンプン、マンニトールならびに単糖、二糖および多糖類が挙げられる。
【0050】
複数の薬剤(非定量用量)を乾燥粉末で貯蔵するのに適したリザーバーを有するリザーバー乾燥粉末吸入器(reservoir dry powder inhaler(RDPI))を介して、乾燥粉末を患者に投与してもよい。RDPIは、一般に、リザーバーからデリバリー位置へ各薬剤用量を定量するための手段を含む。たとえば、これらの定量手段は定量カップを含んでもよく、この定量カップは、カップがリザーバーからの薬剤で満たされ得る第一の位置から、定量された薬剤用量が吸入のために患者に利用可能となる第二の位置まで可動である。あるいは、乾燥粉末は多用量乾燥粉末吸入器(MDPI)に用いるためのカプセル(たとえば、ゼラチンまたはプラスチック)、カートリッジまたはブリスターパックで提供されてもよい。MDPIは、薬剤の複数の所定用量(またはその一部)を含有する(または担持する)多用量パックに薬剤が含まれている吸入器である。乾燥粉末がブリスターパックとして提供される場合、それは乾燥粉末状の薬剤を収容する複数のブリスターを含む。これらのブリスターは、一般に、薬剤の放出を容易にするために規則的に配置される。たとえば、これらのブリスターは一般に、円板型のブリスターパック上に円形に配置してもよいし、またはたとえばストリップまたはテープを含む細長い形状に配置してもよい。
【0051】
エアロゾルは、本発明化合物を液化噴射剤に懸濁または溶解させることによって形成され得る。好適な噴射剤としては、ハロカーボン、炭化水素および他の液化ガスが含まれる。代表的な噴射剤としては、トリクロロフルオロメタン(噴射剤11)、ジクロロフルオロメタン(噴射剤12)、ジクロロテトラフルオロエタン(噴射剤114)、テトラフルオロエタン(HFA-134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)、ジフルオロメタン(HFA-32)、ペンタフルオロエタン(HFA-12)、ヘプタフルオロプロパン(HFA-227a)、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ブタン、イソブタンおよびペンタンが挙げられる。本発明化合物を含むエアロゾルは、一般に、定量吸入器(MDI)を介して患者に投与される。このような装置は当業者に周知である。
【0052】
エアロゾルは、MDIとともに一般に用いられるさらなる医薬的に許容しうる賦形剤、たとえば、界面活性剤、滑沢剤、共溶媒および製剤の物理的安定性を改善するため、バルブ性能を改善するため、溶解度を改良するため、または風味を改良するための他の賦形剤を含んでもよい。
【0053】
本発明化合物を含む懸濁剤および液剤はまた、ネブライザーを介して患者に投与されてもよい。噴霧に用いられる溶媒または懸濁液薬剤は、水、水性生理食塩水、アルコールまたはグリコールなどの任意の医薬的に許容しうる液体、たとえば、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど、またはその混合物であってもよい。生理食塩水は、投与後に薬理活性をほとんどまたは全く示さない塩を用いる。アルカリ金属塩またはアンモニウムハロゲン塩などの有機塩(たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム)、またはカリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩などの有機塩、またはアスコルビン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸などの有機酸が、この目的のために使用されうる。
【0054】
この懸濁剤および液剤に他の医薬的に許容しうる賦形剤を加えてもよい。本発明化合物は、無機酸、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸および/またはリン酸;有機酸、たとえば、アスコルビン酸、クエン酸、酢酸および酒石酸など;EDTAまたはクエン酸およびその塩などの錯体形成剤;またはビタミンEまたはアスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって安定化できる。これらは、本発明化合物を安定化させるために単独で用いても一緒に用いてもよい。塩化ベンザルコニウムまたは安息香酸およびその塩などの保存剤を加えてもよい。特に懸濁液の物理的安定性を改良するために界面活性剤を加えることができる。これらとして、レシチン、ジオクチルスルホコハク酸二ナトリウム、オレイン酸およびソルビタンエステルあ挙げられる。
【0055】
式(I)で示される化合物は、従来の有機合成を用いて製造される。適当な合成経路を、後記の一般的反応工程式に示す。一般的反応工程式に示した出発物質および試薬は、市販品であるか、または当業者に周知の方法を用いて市販の出発物質から作成されうる。
【0056】
本明細書に開示される化合物を、その医薬的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、臭化水素酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩などの酸付加塩に変換してもよい。式(I)で示される化合物およびその医薬的に許容しうる塩は、溶媒和されて、たとえば水和されて存在してもよく、ならびに非溶媒和形態で存在してもよく、本発明はこのような溶媒和形態をすべて包含する。さらなる態様において、本明細書に開示される化合物は、その医薬的に許容しうる塩の形態である。
【0057】
さらなる態様において、本明細書に開示された化合物は、ジペプチジルペプチダーゼI(DPPI)阻害剤としての使用などの医薬に使用するための化合物である。1つの態様において、それらは、医薬として、特にジペプチジルペプチダーゼI活性の阻害剤としての活性を有し、以下の疾患の治療に用いられうる:
間欠的かつ持続的で、すべて重篤な、気管支、アレルギー性、内因性、外因性、運動誘発性、薬剤誘発性(アスピリンおよびNSAID誘発を含む)および塵埃誘発性喘息などの喘息、および気道過敏性の他の原因などの気道の閉塞性疾患;慢性閉塞性肺疾患(COPD);急性肺損傷;急性呼吸窮迫症候群;感染性および好酸球性気管支炎を含む気管支炎;肺気腫;気管支拡張症;嚢胞性線維症;α-1アンチトリプシン欠損症;サルコイドーシス;農夫肺および関連疾患;過敏性肺炎;特発性線維化性肺胞炎、突発性肺繊維症、特発性間質性肺炎、抗腫瘍療法ならびに結核およびアスペルギルス症および他の真菌感染症などの慢性感染症を悪化させる線維症などの肺線維症;肺移植の合併症;肺血管系の血管炎および血栓障害、および肺高血圧症;気道の炎症性および分泌状態に関連した慢性の咳、および医原性咳の治療などの鎮咳作用;薬物性鼻炎および血管運動性鼻炎などの急性および慢性鼻炎;神経性鼻炎(花粉症)などの多年性および季節性アレルギー性鼻炎;鼻ポリープ;風邪および呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス(SARSを含む)およびアデノウイルスの感染などの急性ウイルス感染症;乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎または他の湿疹性皮膚疾患および遅延型過敏症反応;植物性および光線皮膚炎;脂漏性皮膚炎;疱疹状皮膚炎、扁平苔癬;硬化性萎縮性苔癬;壊疽性膿皮症;皮膚サルコイド;円板状エリテマトーデス;天疱瘡;類天疱瘡;表皮水疱症;蕁麻疹;血管浮腫;血管炎;毒性紅斑;皮膚好酸球増加;円形脱毛症;男性型脱毛症;スイート症候群;ウェーバー・クリスチャン症候群;多形性紅斑;感染性および非感染性蜂巣炎;脂肪織炎;皮膚リンパ腫、非黒色腫皮膚ガンおよび他の形成異常病変;固定薬疹などの薬物誘発障害;眼瞼炎;多年性および春季アレルギー性結膜炎などの結膜炎;虹彩炎;前部および後部ブドウ膜炎;脈絡膜炎;網膜に影響を与える自己免疫、変性または炎症性障害;交感神経眼炎などの眼炎;サルコイドーシス;ウイルス、真菌および細菌などの感染症;敗血症;間質性および糸球体腎炎などの腎炎;腎炎症候群;急性および慢性(間質)膀胱炎およびハンナー潰瘍などの膀胱炎;急性および慢性尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎、卵巣炎および卵管炎;外陰膣炎;ペイロニー病;勃起不全(男性と女性の両方);腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚もしくは角膜の移植後または輸血後などの急性および慢性の影響;または慢性移植片対宿主病;関節リウマチ;過敏性腸症候群;炎症性腸疾患;痛風;偽痛風;アルツハイマー病;全身性エリテマトーデス;多発性硬化症;橋本甲状腺炎;バセドウ病;アジソン病;1型糖尿病などの糖尿病;特発性血小板減少性紫斑病;好酸球性筋膜炎;過1gE症候群;抗リン脂質抗体症候群およびセザリー症候群;好中球が関与するガン;前立腺ガン、乳ガン、肺ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、腸ガンおよび結腸ガン、胃ガン、皮膚ガンおよび脳腫瘍などの一般的なガンの治療ならびに骨髄に影響を及ぼす悪性腫瘍(白血病など)およびホジキンおよび非ホジキンリンパ腫などのリンパ増殖系の治療;転移性疾患および腫瘍再発および腫瘍随伴症候群の予防および治療を含む;陰部疣贅、一般的ないぼ、足底いぼ、B型肝炎、C型肝炎、単純ヘルペスウイルス、伝染性軟属腫、痘瘡、ヒト免疫不全ウイルス(H1V)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ、パラインフルエンザなどのウイルス性疾患;結核およびマイコバクテリウム・アビウム、ハンセン病などの細菌性疾患;マラリア、真菌性疾患、クラミジア、カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス髄膜炎、ニューモニシスチス・カミイ、クリプトスポリジウム症、ヒストプラズマ症、トキソプラズマ症、トリパノソーマ感染およびリーシュマニア症などの他の感染性疾患;うっ血性心不全;アテローム性動脈硬化症;冠動脈疾患;心筋梗塞;再灌流傷害;腹部大動脈瘤(AAA);糖尿病性心筋症(DCM);高血圧症;末梢動脈疾患;心臓不整脈;脳卒中および心肥大。
【0058】
さらなる態様において、本明細書に開示される化合物は、ジペプチジルペプチダーゼI阻害剤としての使用のための化合物である。
【0059】
さらなる態様において、本明細書に開示される化合物または医薬組成物は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症の治療における使用のための化合物または医薬組成物である。
【0060】
さらなる態様において、本明細書に開示される化合物または医薬組成物は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症または敗血症の治療における使用のための化合物または医薬組成物である。
【0061】
またさらなる態様において、本明細書に開示される化合物または医薬組成物は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症の治療における使用のための化合物または医薬組成物である。
【0062】
上述の治療用途にとって、投与される用量は、もちろん、使用される化合物、投与モード、所望の治療および示される障害に応じて変わる。
【0063】
さらなる態様において、単位投与剤形中の医薬組成物は、約1 μg〜約1000 mg、約10 μg〜約500 mg、約0.05〜約100 mgまたは約0.1〜約50 mgの有効成分を含む。
【0064】
またさらなる態様において、本明細書は、10 μmol/kgの濃度での動物への単回皮下投与の24時間後に、250 nM以上、500 nM以上、750 nM以上または1000 nM以上の骨髄濃度を有する化合物を開示する。
【0065】
またさらなる態様において、本明細書は、10 μmol/kgの濃度での動物への単回皮下投与の12時間後に、1000 nM以上、1500 nM以上、2000 nM以上、3000 nM以上または5000 nM以上の骨髄濃度を有する化合物を開示する。
【0066】
さらなる態様において、本明細書に開示される医薬組成物は、経口、経鼻、経皮、経肺または非経口投与用である。
【0067】
1つの態様において、患者に治療有効量の式(I)で示される化合物またはその医薬的に許容しうる塩を投与することを含む、閉塞性気道疾患に苦しんでいるか、または該疾患のリスクを有する患者における該疾患の治療方法を提供する。
【0068】
1つの態様において、有効量の本明細書に開示される化合物または本明細書に開示される組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、病気の治療方法を提供する。
【0069】
さらなる態様において、有効量の本明細書に開示される化合物は、1日当り約1 μg〜約1000 mg、約10 μg〜約500 mg、m約0.05〜約100 mgまたは約0.1〜約50 mgの範囲である。
【0070】
1つの態様において、医薬の製造のための本明細書に開示される医薬組成物の使用を提供する。
【0071】
1つの態様において、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症を治療するための医薬の製造のための本明細書に開示される化合物、その医薬的に許容しうる塩または医薬組成物の使用を提供する。
【0072】
1つの態様において、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症または敗血症を治療するための医薬の製造における本明細書に開示される化合物、その医薬的に許容しうる塩または医薬組成物の使用を提供する。
【0073】
1つの態様において、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症を治療するための医薬の製造における本明細書に開示される化合物、その医薬的に許容しうる塩または医薬組成物の使用を提供する。
【0074】
1つの態様において、DPPIレベルを調節するための有効量で、本明細書に開示される化合物またはもしくはその医薬的に許容しうる塩または本明細書に開示される組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、それを必要とする患者におけるDPPIレベルを調節する方法を提供する。
【0075】
1つの態様において、該DPPIは、阻害される。
【0076】
1つの態様において、本明細書に開示される化合物またはその医薬的に許容しうる塩、および以下から独立して選択される1つ以上の作用剤の組合せを提供する:非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニスト;選択的β2アドレナリン受容体アゴニスト;ホスホジエステラーゼ阻害剤;ペプチダーゼ阻害剤;グルココルチコイド;抗コリン剤;ケモカイン受容体機能のモジュレーター;およびキナーゼ機能の阻害剤。
【0077】
もう1つの態様において、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症から選択される病状の治療方法であって、薬剤的有効量の本発明の式(I)で示される化合物または組成物の投与を含む方法を提供する。この方法において、病状が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症から選択されるのが適当である。
【0078】
本発明は、以下の番号付けされた態様に関する:
態様1:式(I):
(I)
[式中、
nは、0、1または2であり、mは、0、1または2である;したがって、mとnの合計は、1、2、3または4である;
Fは、フルオロである;
X1は、
(ここで、yは、0、1、2、3、4、5、6、7または8を表す;
Zは、O(酸素)を表す;
yが1または2である場合、R1は、独立して、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、オキソ(=O)、メルカプトまたはC1-3-アルキルを表し、ここで、C1-3-アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノおよびメルカプトから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される;または
yが3、4、5、6、7または8を表す場合、R1は、重水素を表す)
を表す;
R2は、-C3-6-シクロアルキル、-C1-3-アルキル-C3-6-シクロアルキルまたは-C1-6-アルキルを表し、ここで、-C1-6-アルキルは、ヒドロキシル、シアノまたはアミノから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される]
で示される化合物ならびにその医薬的に許容しうる塩、溶媒和物および水和物に関する。
【0079】
態様2:R2が、-C1-6-アルキルであり、ここで、-C1-6-アルキルは、ヒドロキシル、シアノまたはアミノから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換される、態様1に記載の化合物。
【0080】
態様3:R2が、-C1-6-アルキル、好ましくは-C1-3-アルキル、より好ましくはメチル-、エチル-またはプロピル-である、上記態様のいずれか1つに記載の化合物。
【0081】
態様4:
yが、0、1、2、3または4、たとえば、0または1、好ましくは0である、上記態様のいずれか1つに記載の化合物。
【0082】
態様5:
または
である、上記態様のいずれか1つに記載の化合物。
【0083】
態様6:エナンチオマー的に純粋な形態の式(II):
(II)
[式中、X1およびR2は、上記態様のいずれか1つに定義される]
で示される、上記態様のいずれか1つに記載の化合物。
【0084】
態様7:m+n=1、好ましくはm=1;またはmが2;あるいはmが2であり、nが好ましくは0である、上記態様のいずれか1つに記載の化合物。
【0085】
態様8:態様1〜7のいずれか1つに記載の式(I)で示される化合物またはその医薬的に許容しうる塩ならびに少なくとも1つの医薬的に許容しうるアジュバント、担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【0086】
態様9:医薬としての使用のための態様1〜7のいずれか1つに記載の化合物または態様8に記載の組成物。
【0087】
態様10:喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症を治療するための態様1〜7のいずれか1つに記載の化合物または態様8に記載の組成物。
【0088】
態様11:喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症を治療するための態様1〜7のいずれか1つに記載の化合物または態様8に記載の組成物。
【0089】
態様12:喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症から選択される病状の治療方法であって、薬剤的有効量の態様1〜7のいずれか1つに記載の式(I)で示される化合物または態様8に記載の組成物の投与を含む方法。
【0090】
態様13:病的状態が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症から選択される、態様12に記載の方法。
【0091】
態様14:喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、炎症性腸疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、マラリア、アルツハイマー病または敗血症の治療のための医薬の製造のための態様1〜7のいずれか1つに記載の式(I)で示される化合物または態様8に記載の組成物の使用。
【0092】
態様15:医薬が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠損症、突発性肺繊維症、鬱血性心不全、心筋梗塞、再灌流障害、腹部大動脈瘤、糖尿病性心筋症、痛風、偽痛風、呼吸器合胞体ウイルス感染症、関節リウマチまたは敗血症の治療のための医薬である、態様14に記載の使用。
【0093】
材料および方法
細胞ベースのDPPI阻害アッセイ1
本明細書に記載の化合物は、DPPI阻害剤であり、エラスターゼなどのDPPIによって活性化されるセリンペプチダーゼの活性を間接的に阻害する。下記の細胞ベースのアッセイを用いて、本発明化合物またはその他のDPPI阻害剤の生物活性を決定することができる。
【0094】
Methot N;Rubin J;Guay D;Beaulieu C;Ethier D;Reddy TJ;Riendeau D and Percival MD(2007) J Biol Chem、282、20836-20846に記載の方法の変法によって、DPPI阻害剤の存在下で培養したU937細胞中の好中球エラスターゼの酵素活性を測定した。
【0095】
培養培地中(RPMI 1640、supplemented with 10% FBS、10 mM Hepes、1 mM ピルビン酸ナトリウム、それぞれ100 単位/mlのペニシリンおよびストレプトマイシン)でU937細胞を増殖させた。DPPI阻害剤の不在下または濃度を増加させて、ウェル当りの1.5 ml体積で、0.4 x 106細胞/mlにて、12ウェルプレートに細胞を播種した。0.1 nM〜50 μM阻害剤の範囲において、重複で12ポイントを試験した。24時間後、細胞を採取し、PBSで洗浄し、20 mM Tris-HCl、pH 7.5、100 mM NaCl、0.2% トリトンX-100に溶解した。遠心分離によって破片を除去し、上清を保持した。抽出物を、基質(MetOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-pNA;Bachem;Cat. No. L-1335)を補足したアッセイ緩衝液50 mMトリス、0.1% トリトンX-100、0.5 M NaCl、pH 8.0)と混合して、最終濃度0.9 mMにした。
【0096】
405 nmにおける吸光度の増加をもたらす、基質MetOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-pNAからの発色性p-ニトロアニリンの酵素的放出を測定することによって、好中球エラスターゼの活性を決定した。37℃にて200 μLの最終体積での96ウェルプレートにてアッセイを行い、プレートリーダーを用いて21〜35分の間に吸光度を8回測定した。非線形カーブフィッティングルーチンにおいて4パラメーターロジスティック方程式を用いてIC50を決定した。
【0097】
細胞ベースのDPPI阻害アッセイ2
本明細書に記載の化合物は、DPPI阻害剤であり、エラスターゼなどのDPPIによって活性化されるセリンペプチダーゼの活性を間接的に阻害する。下記の細胞ベースのアッセイを用いて、本発明化合物またはその他のDPPI阻害剤の生物活性を決定することができる。
【0098】
Methot N;Rubin J;Guay D;Beaulieu C;Ethier D;Reddy TJ;Riendeau D and Percival MD(2007) J Biol Chem、282、20836-20846に記載の方法の変法によって、DPPI阻害剤の存在下で培養したU937細胞中の好中球エラスターゼの酵素活性を測定した。
【0099】
培養培地中(RPMI 1640、supplemented with 10% FBS、10 mM Hepes、1 mM ピルビン酸ナトリウム、それぞれ100 単位/mlのペニシリンおよびストレプトマイシン)でU937細胞を増殖させた。DPPI阻害剤の不在下または濃度を増加させて、ウェル当りの1.5 ml体積で、0.4 x 106細胞/mlにて、12ウェルプレートに細胞を播種した。0.1 nM〜50 μM阻害剤の範囲において、重複で12ポイントを試験した。24時間後、細胞を採取し、PBSで洗浄し、20 mM Tris-HCl、pH 7.5、100 mM NaCl、0.2% トリトンX-100に溶解した。遠心分離によって破片を除去し、上清を保持した。抽出物を、基質(MetOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-pNA;Bachem;Cat. No. L-1335)を補足したアッセイ緩衝液(50 mMトリス、0.5 M NaCl、pH 7.5)と混合して、最終濃度0.9 mMにした。
【0100】
405 nmにおける吸光度の増加をもたらす、基質MetOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-pNAからの発色性p-ニトロアニリンの酵素的放出を測定することによって、好中球エラスターゼの活性を決定した。37℃にて200 μLの最終体積での96ウェルプレートにてアッセイを行い、プレートリーダーを用いて21分の間に吸光度を8回測定した。非線形カーブフィッティングルーチンにおいて4パラメーターロジスティック方程式を用いてIC50を決定した。
【0101】
ヒトDPPI阻害アッセイ1
このアッセイにより、DPPI特異的基質としてGly-Phe-パラニトロアニリドを用いて、本発明化合物のIC50値を決定することができる。
【0102】
アッセイ緩衝液:20 mM クエン酸(2.1 g クエン酸)、150 mM NaCl(4.4 g NaCl)および2 mM EDTA(370 mg EDTA)を500 mL H2Oに溶解し、HClでpHを4.5に調節した。
【0103】
基質:IC50値の決定用基質として、Gly-Phe-パラニトロアニリド(Sigma Aldrich;Cat. No G0142)を用いた。Kmは2.2 mMであった。ジメチルホルムアミドに基質を可溶化して、0.2〜0.5 Mストック溶液を得、次いで、アッセイ緩衝液中で攪拌しながら希釈して、1 mMの最終濃度を得た。
【0104】
DPPI:ヒトDPPI(UNIZYME Laboratories A/S、DK-2970 Hoersholm、Denmarkから入手)を、2.5 mM リン酸ナトリウム、150 mM NaCl、2 mM システアミン、50% グリセロールを含むpH 7.0の緩衝液中、-20℃にて、1〜2 mg/mL(5-10 μM)の濃度で保管した。このストック溶液を、アッセイ緩衝液で500〜1000倍に希釈して、10〜20 nMの濃度にした。
【0105】
アッセイ条件:96ウェルプレートにてアッセイを行った。ウェルに、希釈された酵素(25 pL)、次いで、濃度を変化させて試験基質25 μLを加え、溶液を混合した。プレートを37℃にて5分間インキュベートし、次いで、予め37℃に暖めた1 mMの基質(アッセイにおいて、750 μMの基質濃度に対応)150 μLを加えた。90秒毎に12分間、または20秒ごとに4分間、37℃にて405 nmにおける吸光を測定した。各測定を2回繰り返した。非線形カーブフィッティングルーチンにおいて4パラメーターロジスティック方程式を用いてIC50を決定した。
【0106】
ヒトDPPI阻害アッセイ2
このアッセイにより、DPPI特異的基質としてGly-Phe-パラニトロアニリドを用いて、本発明化合物のIC50値を決定することができる。
【0107】
アッセイ緩衝液:20 mM クエン酸(2.1 g クエン酸)、150 mM NaCl(4.4 g NaCl)および2 mM EDTA(370 mg EDTA)を500 mL H2Oに溶解し、HClでpHを4.5に調節した。
【0108】
基質:IC50値の決定用基質として、Gly-Phe-パラニトロアニリド(Sigma Aldrich;Cat. No G0142)を用いた。Kmは2.2 mMであった。ジメチルホルムアミドに基質を可溶化して、0.2〜0.5 Mストック溶液を得、次いで、アッセイ緩衝液中で攪拌しながら希釈して、1 mMの最終濃度を得た。
【0109】
DPPI:ヒトDPPI(UNIZYME Laboratories A/S、DK-2970 Hoersholm、Denmarkから入手)を、2.5 mM リン酸ナトリウム、150 mM NaCl、2 mM システアミン、50% グリセロールを含むpH 7.0の緩衝液中、-20℃にて、2.2 mg/mL(≒12 μM)の濃度で保管した。このストック溶液を、アッセイ緩衝液で800〜3200倍に希釈して、4〜15 nMの濃度にした。
【0110】
アッセイ条件:96ウェルプレートにてアッセイを行った。ウェルに、希釈された酵素(25 μL)、次いで、濃度を変化させて試験基質25 pLを加え、溶液を混合した。プレートを37℃にて5分間インキュベートし、次いで、予め37℃に暖めた1 mMの基質(アッセイにおいて、750 μMの基質濃度に対応)150 μLを加えた。90秒毎に12分間、または20秒ごとに4分間、37℃にて405 nmにおける吸光を測定した。各測定を2回繰り返した。非線形カーブフィッティングルーチンにおいて4パラメーターロジスティック方程式を用いてIC50を決定した。
【0111】
代謝安定性試験
代謝安定性についての試験は、Absorption System、エクストン、ペンシルバニア 19341、USAによって行われた。
【0112】
試験化合物(DPPI阻害剤)を、10 mMの濃度で100% DMSOに溶解した。反応混合物は、マウスまたはヒト肝臓ミクロソーム(1.0 mg/mL)、1 mM NADPH、100 mM リン酸カルシウム、pH 7.4、10 mM 塩化マグネシウムおよび5 μMの試験化合物からなった。
【0113】
反応混合物(補因子なし)のアリコートを、振とう水浴中で37 ℃にて3分間インキュベートした。反応混合物の別のアリコートをネガティブコントロールとして調製した。反応混合物とネガティブコントロールの両方に、試験化合物を最終濃度5 μMにて加えた。
【0114】
NADPHを添加して1 mMにすることによって反応を開始し、次いで、振とう水浴中で37 ℃にてインキュベートした。0、10、20、30および60分または0、15、30および60分の時点でアリコート(100 μL)を引き上げ、900 μLの氷冷50/50 アセトニトリル/dH2Oと合わせて反応を停止させた。同時に、別の反応において、コントロール(テストステロン)を用いて試験化合物で試験を行った。LC/MS/MSを用いてピーク面積応答比(分析的内部標準で割った試験化合物またはコントロールに対応するピーク面積)を決定する。残留パーセントの自然対数を時間に対してプロットした。線形フィットを用いて速度定数を決定した。残留パーセントが10%未満であった場合に、フィットをトランケートした。試験化合物およびコントロール化合物の消失に関連する排出半減期を決定して、それらの相対代謝安定性を比較した。
【0115】
略語
PE/EA:石油エーテル/酢酸エチル
EA:酢酸エチル
CAN:アセトニトリル
THF:テトラヒドロフラン
DMF:ジメチルホルムアミド
MeOH:メタノール
TEA:トリエチルアミン
TFAA:無水トリフルオロ酢酸e
DCM:ジクロロメタン
Pd(dppf)Cl2:[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II) ジクロリド
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
TBTU:O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
Boc:t-ブチルオキシカルボニル
r.t:室温
【実施例1】
【0116】
(S)-4-アミノ-N-(1-シアノ-2-(3-フルオロ-4'-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)エチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボキサミド (PZ1101)
PZ1101
【0117】
合成反応工程式
【0118】
手順の記載
ステップ-1
(S)-3-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸 (2)
THF/水(200 mL/200 mL)中の化合物1(30 g、114.5 mmol、1.0当量)の溶液に、K2CO3(47.4 g、343.5 mmol、3.0当量)およびBoc2O(30 g、137.4 mmol、1.2当量)を加えた。反応物を室温にて2時間攪拌した。完了後、pHを2〜3に調節し、溶液をEAで2回抽出した。合わせた有機物を塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮して、化合物2(3ステップで45 g、50%)を白色個体で得た。粗固体を精製することなく次ステップに用いた。1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 9.81(br、2H)、7.24-7.22(d、J=7.6 Hz、4H)、7.05-7.10(m、2H)、6.97-6.98(m、1H)、5.03-5.05(d、J=8.0 Hz、1H)、4.44-4.61(m、2H)、3.23-3.32(m、2H)、2.84-3.06(m、2H)、1.40(s、9H)、1.27(s、9H);MS(ESI):m/z 360.22 [M-H]-。
【0119】
ステップ-2
(S)-メチル 3-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロパノエート(3)
DMF(400 mL)中の粗化合物2(45 g、124.3 mmol、1.0当量)の溶液に、K2CO3(51.5 g、372.9 mmol、3.0当量)およびヨウ化メチル(MeI)(15.5 mL、248.6 mmol、2.0当量)を加えた。反応物を室温にて30分間攪拌した。完了後、反応物をEAで希釈した。溶液を、水および塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮して、化合物3(48.5 g、100%)を明黄色油状物で得た。粗油状物を精製することなく次ステップに用いた。
【0120】
ステップ-3
(S)-tert-ブチル 1-アミノ-3-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-1-オキソプロパン-2-イルカルバメート (4)
MeOH(400 mL)中の化合物3(48.5 g)の溶液に、NH3(g)を-50℃にて20分間バブリングした。次いで、反応物を室温にて一夜攪拌した。完了後、反応物を濃縮して、白色固体を得た。粗生成物をPE/EA(10:1)に懸濁させ、ろ過して、化合物4(25g、53.7%)を白色個体で得た。
【0121】
ステップ-4
(S)-tert-ブチル 2-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-1-シアノエチルカルバメート (5)
DCM(600 mL)中の化合物4(25g、69.3 mmol、1.0当量)の懸濁液に、TEA(40.3 mL、290.9 mmol、4.2当量)およびTFAA(21.5 mL、152.4 mmol、2.2当量)を0℃にて加えた。反応物を室温にて2時間攪拌した。完了後、反応物を水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮して、明黄色固体を得た。粗固体をPE/EA(500 mL/50 mL)で再結晶し、ろ過した。ろ液を減圧乾燥し、化合物5(17 g、71.6%)を白色個体で得た。
【0122】
ステップ-5
1-(4-ブロモベンジル)-4-メチルピラジン(9)
DCM(80 mL)中の1-ブロモ-4-(ブロモメチル)ベンゼン(20 g、0.08 mol、1.0当量)の溶液を、DCM(160 mL)中の1-メチルピラジン(16 g、0.16 mol、2.0当量)の溶液にゆっくりと滴下し、反応物を室温にて2時間攪拌した。完了後、反応物に水を加えて反応を停止させ、ろ過した。ろ液を分離し、水層をDCMで1回以上抽出した。合わせた有機物を無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮して、化合物9(16.5 g、76.7%)を明黄色液で得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 7.72-7.74(d、J=8.4 Hz、1H)、7.54-7.56(d、J=8.4 Hz、1H)、7.49-7.51(d、J=8.4 Hz、1H)、7.26-7.28(d、J=8.4 Hz、1H)、4.61(s、1H)、3.59(s、1H)、3.29-3.50(m、2H)、2.94-2.97(m、2H)、2.63-2.85(m、2H)。
【0123】
ステップ-6
1-メチル-4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)ピペラジン(10)
1,4-ジオキサン(240 mL)中の化合物9(16.5 g、61.3 mmol、1.0当量)、ピナコラートジボロン(17.1 g、67.5 mmol、1.1当量)、KOAc(18.0 g、184 mmol、3.0当量)およびPd(dppf)Cl2(1.35 g、1.84 mmol、0.03当量)の混合物を、窒素雰囲気下、110℃にて3時間攪拌した。完了後、反応物を室温に冷却し、EAで希釈し、ろ過した。ろ液を塩水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物10(14.6 g、75.3%)を黄土色固体で得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 7.75-7.77(d、J=8.0 Hz、2H)、7.31-7.33(d、J=8.0 Hz、2H)、3.58(s、2H)、2.69-2.80(m、8H)、2.52(s、3H)、1.34(s、12H)。
【0124】
ステップ-7および8
(S)-tert-ブチル 1-シアノ-2-(3-フルオロ-4'-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)ビフェニル-4-イル)エチルカルバメート (6)
1,4-ジオキサン(150 mL)中の化合物5(8.36 g、24.4 mmol、1.1当量)および10(7 g、22.2 mmol、1.0当量)、Pd(dppf)Cl2(1.62 g、2.2 mmol、0.1当量)、KOAc(6.51 g、66.5 mmol、3.0当量)の混合物を、窒素雰囲気下、100℃にて4時間攪拌した。完了後、反応物を室温に冷却し、EAで希釈し、ろ過した。ろ液を1N NaOH(a.q.)で2回洗浄し、0.5N HCl(a.q.)で2回抽出した。合わせた酸性水相をpH=8〜9に調節し、EAで2回抽出した。合わせた有機物を塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮して、化合物6(7.8 g、77.9%)を黒色油状物で得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 7.49-7.51(d、J=8.4 Hz、2H)、7.38-7.41(d、J=8.4 Hz、2H)、7.29-7.38(m、3H)、4.86-5.09(m、2H)、3.55(s、2H)、3.13-3.22(m、2H)、2.50(br、7H),2.31(s、3H)、1.42(s、9H);MS(ESI):m/z 453.57 [M+H]+。
【0125】
(S)-2-アミノ-3-(3-フルオロ-4'-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)ビフェニル-4-イル)プロパンニトリル (7)
ギ酸(98%、40 mL)中の化合物6(7.8 g、17.3 mmol)の溶液を、室温にて一夜攪拌した。完了後、反応物を氷冷飽和水性NaHCO3に注いだ。溶液をpH=9〜10に調節し、EAで3回抽出した。合わせた有機物を塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、粗化合物7(4.5g、74.1%)を黄色油状物で得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 7.49-7.51(d、J=8.4 Hz、2H)、7.38-7.41(d、J=8.4 Hz、2H)、7.29-7.38(m、3H)、4.00-4.04(m、1H)、3.55(s、2H)、3.11-3.13(m、1H)、2.50(br、6H)、2.31(s、3H)、1.98(br、2H)、1.69-1.71(m、1H);MS(ESI):m/z 353.22 [M+H]+。
【0126】
ステップ-9および10
(S)-tert-ブチル 4-(1-シアノ-2-(3-フルオロ-4'-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)ビフェニル-4-イル)エチルカルバモイル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルカルバメート (8)
THF(10 mL)中の化合物7(500 mg、1.42 mmol、1.0当量)および4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボン酸(418 mg、1.7 mmol、1.2当量)の溶液を、0℃にて30分間攪拌した。次いで、TBTU(684 mg、2.13 mmol、1.5当量)およびDIEA(0.5 mL、2.84 mmol、2.0当量)を加えた。反応物を0℃にて1時間攪拌し、室温に暖め、さらに4時間攪拌した。完了後、反応物をEAおよび水で希釈し、分離した。有機層を飽和水性NaHCO3で2回、塩水で1回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮した。残渣をプレパラティブHPLCによって精製して、化合物8(445 mg、45%)を白色個体で得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 7.81(br、1H)、7.50-7.52(d、J=8.4 Hz、2H)、7.38-7.40(d、J=8.0 Hz、2H)、7.29-7.36(m、3H)、5.11-5.15(m、1H)、4.74(m、1H)、3.77-3.79(m、1H)、3.61-3.67(m、2H)、3.59(s、3H)、3.17-3.22(m、2H)、2.67(br、6H)、2.46(s、3H)、1.79-2.24(m、4H)、1.43(s、9H);MS(ESI):m/z 580.53 [M+H]+。
【0127】
(S)-4-アミノ-N-(1-シアノ-2-(3-フルオロ-4'-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)エチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボキサミド(PZ1101)
ギ酸(98%、5 mL)中の化合物8(445 mg)の溶液を20℃にて24時間攪拌した。完了後、反応溶液を氷冷飽和水性NaHCO3に滴下した。水性NaOHによって溶液をpH=9〜10に調節し、EAで5回抽出した。合わせた有機物を無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮した。残渣をプレパラティブHPLCによって精製して、PZ1101(230 mg、62.5%)を白色個体で得た。1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 8.29-8.31(d、J=8.8 HZ、1H)、7.49-7.51(d、J=8.0 Hz、2H)、7.39-7.41(d、J=8.0 Hz、2H)、7.28-7.41(m、3H)、5.14-5.16(m、1H)、3.82-3.88(m、2H)、3.55-3.61(m、4H)、3.17-3.25(m、2H)、2.52(br、8H)、2.00-2.45(m、7H);19F-NMR(376 MHz、CDCl3):δ -117.14;MS(ESI):m/z 480.4 [M+H]+;HPLC:RT=4.206、98.32%。
【0128】
PZ1101は、ヒトDPPI阻害アッセイ2において、約6 nMのIC50を有することが見出され、細胞ベースのDPPI阻害アッセイ2において、約2.5 nMのIC50を有することが見出された。さらに、PZ1101は、120分以上のヒト肝臓ミクロソームにおける半減期を有する。