特許第6783441号(P6783441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783441
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】スロット付きALOHAの電信分割
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/14 20090101AFI20201102BHJP
   H04W 28/26 20090101ALI20201102BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20201102BHJP
【FI】
   H04W16/14
   H04W28/26
   H04W72/04 131
   H04W72/04 132
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-548910(P2018-548910)
(86)(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公表番号】特表2019-513325(P2019-513325A)
(43)【公表日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2017056013
(87)【国際公開番号】WO2017157949
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】16160485.5
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(73)【特許権者】
【識別番号】515130991
【氏名又は名称】フリードリッヒ−アレキサンデル−ウニベルジテート・エルランゲン−ヌエルンベルグ
【氏名又は名称原語表記】Friedrich−Alexander−Universitaet Erlangen−Nuernberg
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・ホイベルガー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ブライリング
(72)【発明者】
【氏名】ヨエルグ・ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ・クニッセル
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト・キリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヨセフ・ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ヴェヒシュラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・エレス
【審査官】 青木 健
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0289292(US,A1)
【文献】 特表2015−521425(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0271841(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信規格に準拠する移動通信システム(126)において動作するように構成される送信機(100)であって、前記移動通信システム(126)のリソースは、リソースエレメント(104)に分割され、
前記送信機(100)は、規格準拠の電信に追加する追加の電信(106)の送信を、前記追加の電信(106)を各々が前記追加の電信(106)より短い複数のデータパケット(108)に分離し、かつ前記データパケット(108)の各々を前記リソースエレメント(104)のうちの1つにおいて個別に送信することにより行うように構成され、
前記送信機(100)は、前記追加の電信の前記複数のデータパケット(108)を、前記移動通信システム(126)の前記リソースエレメント(104)のうち非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント(104’)において送信するように構成され、
前記送信機は、前記データパケット(108)を送信するための前記リソースエレメント(104)を、非規格準拠の通信用に予約される前記リソースエレメント(104’)から選択し、かつ選択された前記リソースエレメント(104)における前記データパケット(108)の送信を、これらのリソースエレメント(104)が空いているかどうかを事前に聴取することなく開始するように構成される、送信機(100)。
【請求項2】
前記送信機(100)は、規格準拠通信を、前記移動通信システム(126)の前記リソースエレメント(104)のうち規格準拠通信用に予約されるリソースエレメントを用いて実行するように構成される、請求項1に記載の送信機(100)。
【請求項3】
前記送信機(100)は、前記移動通信システム(126)または別の通信システムの同期信号へ同期するように構成される、請求項1〜2の一項に記載の送信機(100)。
【請求項4】
非規格準拠の通信用に予約される前記リソースエレメント(104’)は、前記移動通信システム(126)の移動局(128)から基地局(130)への通信に使用されるアップリンクのリソースエレメントの適切なサブセットである、請求項1〜3の一項に記載の送信機(100)。
【請求項5】
前記リソースエレメント(104)は、特定のタイムスロットおよび特定の周波数の少なくとも一方に関連づけられる、請求項1〜4の一項に記載の送信機(100)。
【請求項6】
非規格準拠の通信用に予約される前記リソースエレメント(104’)は、前記移動通信システム(126)の管理エンティティ(130)によって割り当てられる、請求項1〜5の一項に記載の送信機(100)。
【請求項7】
非規格準拠の通信用に予約される前記リソースエレメント(104’)は、前記移動通信システムの前記管理エンティティ(130)により、パフォーマンス基準に依存して動的に割り当てられる、請求項に記載の送信機(100)。
【請求項8】
前記リソースエレメント(104)のうちの幾つかは、非規格準拠の通信用および規格準拠通信用の双方に割り当てられる、請求項1および2〜7の一項に記載の送信機(100)。
【請求項9】
前記送信機(100)は、前記複数のデータパケット(108)のうちの少なくとも1つをガード・リソース・エレメントにおいて送信するように構成される、請求項1〜8の一項に記載の送信機(100)。
【請求項10】
前記送信機(100)は、前記複数のデータパケット(108)のうちの一部のみで前記追加の電信(106)を復号できるように、前記複数のデータパケット(108)をチャネル符号化するように構成される、請求項1〜9の一項に記載の送信機(100)。
【請求項11】
前記送信機(100)は、衝突を低減するために、前記複数のデータパケット(108)を、前記リソースエレメント(104)からユーザシーケンスに基づいて選択される選択されたリソースエレメント(104’)において送信するように構成される、請求項10に記載の送信機(100)。
【請求項12】
移動体通信規格に準拠する移動通信システム(126)において動作するように構成される受信機(120)であって、前記移動通信システム(126)のリソースは、リソースエレメント(104)に分割され、
前記受信機(120)は、規格準拠電信に追加する追加の電信(106)であって前記追加の電信(106)より各々が短い複数のデータパケット(108)に分割されて送信される前記追加の電信(106)の受信を、前記データパケット(108)の各々を前記リソースエレメントのうちの1つにおいて個別に受信することにより行なうように構成され、
前記受信機(120)は、前記追加の電信の前記データパケット(108)を、前記移動通信システム(126)の前記リソースエレメント(104)のうち非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント(104’)において受信するように構成され、
前記受信機(120)は、前記データパケット(108)を、非規格準拠の通信用に予約される前記リソースエレメント(104’)から送信機により選択されるリソースエレメントにおいて受信するように構成される、受信機(120)。
【請求項13】
前記複数のデータパケット(108)は、前記複数のデータパケット(108)のうちの一部のみで前記追加の電信(106)を復号できるようにチャネル符号化され、
前記チャネル符号化されたデータパケットのうちの1つが前記リソースエレメント(104)のうちの1つにおいて別のデータパケットと衝突する場合、前記受信機(120)は、衝突した前記チャネル符号化データパケットの元のバージョンを、復号された前記追加の電信(106)に基づいて再構成し、かつ衝突した前記チャネル符号化データパケットの前記元のバージョンを、前記リソースエレメントにおいて受信されたデータから減算して前記他のデータパケットを取得するように構成される、請求項12に記載の受信機(120)。
【請求項14】
移動通信システム(126)であって、
請求項1〜11いずれか一項に記載の送信機(100)と、
請求項12又は13に記載の受信機(120)と、を備えるシステム(126)。
【請求項15】
移動体通信規格に準拠する移動通信システム(126)において送信するための方法(200)であって、前記移動通信システム(126)のリソースは、リソースエレメントに分割され、前記方法は、
規格準拠の電信に追加する追加の電信を、前記追加の電信を各々が前記追加の電信より短い複数のデータパケットに分離し、かつ前記データパケットの各々を前記リソースエレメントのうちの1つにおいて個別に送信すること、によって送信すること(202)を含み、
前記送信すること(202)は、前記追加の電信の前記複数のデータパケット(108)を、前記移動通信システム(126)の前記リソースエレメント(104)のうち非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント(104’)において送信することを含み、
前記送信すること(202)は、前記データパケット(108)を送信するための前記リソースエレメント(104)を、非規格準拠の通信用に予約される前記リソースエレメント(104’)から選択することを含み、かつ、
前記送信すること(202)は、選択された前記リソースエレメント(104)における前記データパケット(108)の送信を、これらのリソースエレメント(104)が空いているかどうかを事前に聴取することなく開始することを含む、方法(200)。
【請求項16】
移動体通信規格に準拠する移動通信システム(126)において受信するための方法(210)であって、前記移動通信システム(126)のリソースは、リソースエレメントに分割され、前記方法は、
規格準拠の電信に追加する追加の電信であって、各々が前記追加の電信より短い複数のデータパケットに分離されて送信される前記追加の電信を、前記データパケットの各々を前記リソースエレメントのうちの1つにおいて個別に受信すること、によって受信すること(212)を含み、
前記受信すること(212)は、前記追加の電信の前記データパケットを、前記移動通信システム(126)の前記リソースエレメント(104)のうち非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメントにおいて受信することを含み、
前記受信すること(212)は、前記データパケットを、非規格準拠の通信用に予約される前記リソースエレメントから送信機により選択されるリソースエレメントにおいて受信することを含む、方法(210)。
【請求項17】
コンピュータまたはマイクロプロセッサ上で実行されると、請求項15又は16に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、送信機に関し、具体的には、3GPP等の通信規格に従って動作するように構成される通信システムにおいて追加の電信を送信するための電信分割を用いる送信機に関する。さらなる実施形態は、このような追加の電信を受信するための受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
マシン・ツー・マシン(M2M)通信の分野は、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト、電気通信団体グループ間のコラボレーション)規格ファミリに対する新たな課題に繋がる。これらの課題は、目下、現行の3GPP規格の使用によって最適には解決されておらず、その理由は、現行の3GPP規格が大量のデータを扱う高いデータ速度を重視していることにある。これに対して、M2Mは、典型的には、こうした高いデータ速度を必要とせず、データ量は、典型的には、デバイス当たりほんの数バイトである。一方で、M2Mの場合のデバイス数は、今日の3GPPネットワークの使用に比べてかなり高いことが予想される。その結果、シグナリングに必要なM2M通信のための現行3GPPシステムのオーバヘッドは、極めて高く、電力およびスペクトル効率の悪いシステムをもたらす。
【0003】
独国特許出願公開第102011082098(A1)号明細書は、電信分割を用いる一方向データ伝送による電池式固定センサ装置を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011082098(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、移動体通信規格に従って動作する通信システムが少量(すなわち、1デバイスあたりほんの数バイト)のデータ伝送に使用される場合の、その消費電力およびスペクトル効率のうちの少なくとも一方を改善する概念を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項によって解決される。
【0007】
実施形態は、移動体通信規格(例えば、3GPP)に準拠する移動通信システムにおいて動作するように構成される送信機を提供し、この場合、通信システムのリソースは、リソースエレメントに分割される。この送信機は、追加の電信の送信を、電信を各々が前記電信より短い複数のデータパケットに分離しかつ各データパケットを各々リソースエレメントのうちの1つにおいて送信することにより行うように構成される。
【0008】
本発明の考案は、通信システムのリソースエレメントの一部、例えば非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント、を用いて、電信を、その各々が電信より短い複数のデータパケット(例えば、少なくとも2つのデータパケット)に分離することにより追加の電信を送信し、かつ前記複数のデータパケットを各々リソースエレメントのうちの1つにおいて送信することにある。
【0009】
さらなる実施形態は、移動体通信規格(例えば、3GPP)に準拠する移動通信システムにおいて動作するように構成される受信機を提供し、この場合、通信システムのリソースは、リソースエレメントに分割される。この受信機は、その各々が電信より短い複数のデータパケットに分離されて送信される追加的な電信の受信を、各データパケットを各々、非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメントのうちの1つにおいて受信することにより行うように構成される。
【0010】
さらなる実施形態は、移動体通信規格に準拠する移動通信システムにおいて送信するための方法を提供していて、前記通信システムのリソースは、リソースエレメントに分割され、本方法は、
− 追加的な電信の送信を、前記電信をその各々が前記電信より短い複数のデータパケットに分離し、かつ前記データパケットの各々を各々リソースエレメントのうちの1つにおいて送信することにより行うことを含む。
【0011】
さらなる実施形態は、移動体通信規格に準拠する移動通信システムにおいて受信するための方法を提供していて、前記通信システムのリソースは、リソースエレメントに分割され、本方法は、
− その各々が電信より短い複数のデータパケットに分離されて送信される追加的な電信の受信を、各データパケットを各々リソースエレメントのうちの1つにおいて受信することにより行うことを含む。
【0012】
効果的な実装は、従属請求項に記載されている。
【0013】
実施形態では、送信機を、追加的電信の複数のデータパケットを非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメントにおいて送信するように構成することができる。一部のリソースエレメントは、非規格準拠の通信用に(例えば、移動通信システムの基地局により)予約または割り当てられることが可能である。同様に、一部のリソースエレメントは、規格準拠通信のために供給される、または割り当てられることが可能である。送信機は、追加的電信の複数のデータパケットを、規格準拠通信用に予約されるリソースエレメントにおいて送信しないように構成されることが可能である。
【0014】
実施形態において、送信機は、規格準拠通信を、規格準拠通信用に予約されるリソースエレメントを用いて実行するように構成されることが可能である。例えば、送信機は、規格準拠のデータパケット(すなわち、移動体通信規格に従ったデータパケット)を、規格準拠通信用に(例えば、移動通信システムの基地局により)予約される、または割り当てられるリソースエレメントにおいて送信するように構成されてもよい。
【0015】
実施形態によっては、リソースエレメントのうちの幾つかは、非規格準拠の通信用および規格準拠通信用の双方に割り当てられてもよい。
【0016】
実施形態において、送信機は、移動通信システムまたは別の通信システムの同期信号へ同期するように構成されることが可能である。例えば、移動通信システムの基地局は、このような同期信号を送信してもよい。また、送信機は、送信機が自らを同期させる同期信号として、基地局により送信されるペイロードデータ、例えば1つまたは複数のデータパケット、を用いるように構成されることも可能である。当然ながら、送信機は、同期信号として、移動体デバイスにより送信される信号を用いることもできる。さらに、他の通信システムの信号も、同期信号として用いることができる。
【0017】
実施形態において、非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメントは、移動通信システムの移動局から基地局への通信に使用されるアップリンクのリソースエレメントの適切なサブセットであることが可能である。言い換えれば、移動通信システムのリソースエレメントのうちの幾つかは、アップリンクのリソースエレメント、すなわち、データを移動通信システムの移動局から1つまたは複数の基地局へ送信するために割り当てられる、または予約されるリソースエレメントであってもよく、アップリンクのリソースエレメントのうちの幾つかは、非規格準拠の通信用に割り当てられ、または予約される。移動通信システムの他のリソースエレメントは、ダウンリンクのリソースエレメント、すなわち、データを移動通信システムの1つまたは複数の基地局から移動局へ送信するために割り当てられる、または予約されるリソースエレメントであってもよい。
【0018】
実施形態において、リソースエレメントは、特定のタイムスロットおよび特定の周波数の少なくとも一方に関連づけられることが可能である。例えば、リソースエレメントは、特定の周波数または周波数帯域(周波数分割多元接続)であってもよい。リソースエレメントは、特定のタイムスロット(時分割多元接続)であってもよい。当然ながら、リソースエレメントは、特定のコード(符号分割多元接続)であることも可能である。
【0019】
実施形態において、非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメントは、移動通信システムの基地局により、パフォーマンス基準に依存して動的に割り当てられることが可能である。パフォーマンス基準は、例えば、移動通信システムの送信機(例えば、移動局)の数、非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメントにおいて通信する送信機の数、規格準拠通信用に予約されるリソースエレメントにおいて通信する送信機の数、同じリソースエレメントにおいて送信する移動局の数、移動通信システムの待ち時間(例えば、全体的待ち時間)またはパケット損失率であってもよい。
【0020】
実施形態において、送信機は、複数のデータパケットのうちの少なくとも1つを、ガード・リソース・エレメント、例えばガード・リソース・バンドまたは周波数において、またはガードインターバルまたはタイムスロットにおいて送信するように構成されることが可能である。
【0021】
実施形態において、送信機は、複数のデータパケットのうちの一部のみで追加の電信を復号できるように、複数のデータパケットをチャネル符号化するように構成されることが可能である。例えば、一部のデータパケットは、他のデータパケットまたは干渉源により送信されるデータと衝突することがある。しかしながら、複数のデータパケットに適用されるチャネルコードに起因して、追加の電信は、なおも、複数のデータパケットのうちの正しく送信されたデータパケットを用いて復号されることが可能である。
【0022】
実施形態において、送信機は、データパケットの送信が移動通信システムの別の送信機により送信される別のデータパケットと衝突することになる場合、複数のデータパケットのうちの1つのデータパケットを送信しないように、または後に送信するように構成されることが可能である。例えば、送信機は、リソースエレメントのうちのどれが他の送信機によってデータパケットの送信に使用されるかを知り得る。あるいは、送信機は、衝突検出能力を有してもよく、すなわち、送信機は、1つのデータパケットを送信する前に通信チャネルを聴取することによって衝突を検出するように構成されることが可能であり、この場合、送信機は、別の送信機による送信または干渉信号を検出するとその1つのデータパケットを送信しないように構成される。
【0023】
実施形態において、複数のデータパケットは、複数のデータパケットのうちの一部のみで追加の電信を復号できるようにチャネル符号化されることが可能である。チャネル符号化されたデータパケットのうちの1つがリソースエレメントのうちの1つにおいて別のデータパケットと衝突する場合、受信機は、衝突したチャネル符号化データパケットの元のバージョンを、復号された追加の電信に基づいて再構成し、かつこの衝突したチャネル符号化データパケットの元のバージョンを、リソースエレメントにおいて受信されたデータから減算して他のデータパケットを取得するように構成されることが可能である。
【0024】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による送信機を示す略ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による受信機を示す略ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による通信システムを示す略ブロック図である。
図4】ある実施形態による、通信システムの複数のリソースエレメントを有するリソースグリッドを示す略図である。
図5】ある実施形態による、一部のリソースエレメントが非規格準拠の通信用に予約されている、複数のリソースエレメントを有するリソースグリッドを示す略図である。
図6】ある実施形態による、複数のリソースエレメントを有するリソースグリッド、および送信に使用される異なるユーザシーケンスを示す略図である。
図7】本発明の一実施形態による、ある送信方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態による、ある受信方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明では、等しい、または同等のエレメント、または、等しい、または同等の機能を有するエレメントを等しい、または同等の参照数字で示す。
【0027】
以下の説明では、複数の詳細を記述して、本発明の実施形態をより完全に説明する。しかしながら、当業者には、本発明の実施形態がこれらの特定の詳細なしに実施され得ることが明らかであろう。他の例では、本発明の実施形態が不明瞭とならないように、周知の構造およびデバイスについては、詳細せずブロック図の形式で示している。さらに、以下で説明する異なる実施形態の特徴は、別段の指摘のない限り、互いに組み合わされてもよい。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による、送信機100を示す略ブロック図である。送信機100は、移動体通信規格(例えば、3GPP)に準拠する移動通信システムにおいて動作するように構成される。移動通信システムのリソースは、リソースエレメント(例えば、タイムスロットおよび/または周波数帯域)に分割されることが可能である。
【0029】
さらに、図1は、例示的に、複数のリソースエレメント104を有するリソースグリッド102を示す。リソースグリッド102は、異なる周波数帯域および/または異なるタイムスロットを含むことができる。したがって、複数のリソースエレメント104のリソースエレメントは各々、特定の周波数帯域および/または特定のタイムスロットを有してもよい。図1において、縦軸は、周波数を示し、横軸は、時間を示す。
【0030】
送信機100は、(例えば、規格準拠の電信に追加する)追加の電信106の送信を、追加の電信106を、その各々が電信106より短い複数のデータパケット108(例えば、n個のデータパケット、ここで、nは、2以上の自然数)に分離し、かつ各データパケット108を各々リソースエレメント104のうちの1つにおいて送信することによって行うように構成されることが可能である。
【0031】
例えば、送信機100は、(複数のデータパケットのうちの)第1のデータパケット104を、第1のリソースエレメント(例えば、第1のタイムスロットおよび/または第1の周波数帯域)104において送信し、かつ(複数のデータパケットのうちの)第2のデータパケット108を、第2のリソースエレメント(例えば、第1のタイムスロットに続く第2のタイムスロット、または第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域)104において送信するように構成されることが可能である。
【0032】
送信機100は、例えば、データパケット生成ユニット110と、送信ユニット112とを備えることができる。データパケット生成ユニット110は、追加の電信106を複数のデータパケット108に分離するように構成されることが可能である。送信ユニット112は、複数のデータパケット108を異なるリソースエレメント104において送信するように構成されることが可能である。
【0033】
追加の電信を複数のデータパケットに、複数のデータパケットの各々が追加の電信より短くなるように分離することを、本明細書では電信分割と称する。
【0034】
データパケット生成ユニット110および/または送信ユニット112は、ハードウェアにおいて、例えば、マイクロプロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイまたは中央処理ユニットを用いて実装されることが可能である。さらに、データパケット生成ユニット110および送信ユニット112は、同じデバイスにおいて実装されることが可能である。
【0035】
送信機100は、例えば、移動通信システムの移動体デバイスであってもよい。当然ながら、送信機100は、移動通信システムの基地局でもあってもよい。送信機100は、送信能力および受信能力の双方を有するトランシーバであってもよい。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態による受信機120を示す略ブロック図である。受信機120は、移動体通信規格(例えば、3GPP)に準拠する移動通信システムにおいて動作するように構成される。移動通信システムのリソースは、リソースエレメント(例えば、タイムスロットおよび/または周波数帯域)に分割されることが可能である。
【0037】
さらに、図2は、例示的に、複数のリソースエレメント104を有するリソースグリッド102を示す。リソースグリッド102は、異なる周波数帯域および/または異なるタイムスロットを含むことができる。したがって、複数のリソースエレメント104のリソースエレメントは各々、特定の周波数帯域および/または特定のタイムスロットを有してもよい。図1において、縦軸は、周波数を示し、横軸は、時間を示す。
【0038】
受信機120は、その各々が追加の電信106より短い複数のデータパケット108(例えば、n個のデータパケット、ここで、nは、2以上の自然数)に分離されて送信される(例えば、規格準拠の電信に追加する)追加の電信106の受信を、各データパケット108を各々リソースエレメント104のうちの1つにおいて受信することによって行うように構成される。
【0039】
例えば、送信機120は、(複数のデータパケットのうちの)第1のデータパケット104を、第1のリソースエレメント(例えば、第1のタイムスロットおよび/または第1の周波数帯域)104において受信し、かつ(複数のデータパケットのうちの)第2のデータパケット108を、第2のリソースエレメント(例えば、第1のタイムスロットに続く第2のタイムスロット、または第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域)104において受信するように構成されることが可能である。
【0040】
受信機120は、さらに、追加の電信を取得するために複数のデータパケット108を組み合わせるように構成されることが可能である。
【0041】
受信機120は、例えば、受信ユニット122と、(場合により)データパケット結合ユニット124とを備えてもよい。受信ユニット122は、複数のデータパケット108を異なるリソースエレメント104において受信するように構成されることが可能である。データパケット結合ユニット124は、追加の電信106を取得するために複数のデータパケット108を組み合わせるように構成されることが可能である。
【0042】
データパケット生成ユニット110、および送信ユニット112。データパケット生成ユニット110は、追加の電信106を複数のデータパケット108に分離するように構成されることが可能である。送信ユニット112は、複数のデータパケット108を異なるリソースエレメント104において送信するように構成されることが可能である。
【0043】
受信ユニット122および/またはデータパケット結合ユニット124は、ハードウェアにおいて、例えば、マイクロプロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイまたは中央処理ユニットを用いて実装されることが可能である。さらに、受信ユニット122およびデータパケット結合ユニット124は、同じデバイスにおいて実装されることが可能である。
【0044】
受信機120は、例えば、移動通信システムの基地局であってもよい。当然ながら、受信機120は、移動通信システムの移動体デバイスでもあってもよい。受信機120は、受信能力および送信能力の双方を有するトランシーバであってもよい。
【0045】
本特許出願の導入部において述べたように、マシン・ツー・マシン(M2M)通信の分野は、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト、電気通信団体グループ間のコラボレーション)規格ファミリに対する新たな課題に繋がる。
【0046】
未来のM2M通信システムのパフォーマンスを向上させる興味深いアプローチは、スロット付きALOHAを用いる電信分割である[G.Kilianら著:Improved coverage for low−power telemetry systems using telegram splitting, Proceedings of 2013 European Conference on Smart Objects, Systems and Technologies(SmartSysTech), 2013]。ネットワークの基地局は、特定の時間および周波数スロットを、単にこれらのスロット内でそのデータを送信できるデバイス(例えば、移動体デバイス)に割り当てる。すべてのスロットは、典型的には、同じ帯域幅および持続時間を有し、よって、これらのデバイスの時間および周波数をスロット構造にアラインされるように同期させるためには、ある種の同期手段が必要である。
【0047】
デバイスは、データの送信を希望する場合、単に1つまたは複数のスロットを選択して送信を開始する。事前に、特定のスロットが空いているかどうかを確認する必要はない。したがって、アップリンクリソース上で衝突が発生することがある。これらの衝突は、殆どの場合、信号処理(例えば、逐次干渉除去)および特定のユーザシーケンス(例えば、Masseyが提案しているようなもの[J.Massey、P.Mathys共著:The collision channel without feedback Information Theory, IEEE Transactions on, 1985,31,192−204])によって解決することができる。さらに、デバイスは、ネットワークへ完全に同期されることが可能であって、追加の最適化手段が許容される。
【0048】
システム構造
図3は、3つの移動体デバイス128_1〜128_3と、基地局130とを備える移動通信システム130を示す略ブロック図である。さらに、図3には、通信路としての可能性も示されている。
【0049】
詳細には、図3は、提案するシステムの原理を示すブロック図である。「移動局1」128_1および「移動局2」128_2は、リンク「BSリンク1」132_1およびリンク「BSリンク2」132_2を用いて基地局130と通信することを希望していて、この場合の焦点は、基地局130へアップリンクデータを送信することにある。さらに、「移動局1」128_1および「移動局2」128_2は、基地局による中継なしに、「D2Dリンク1」134_1および「D2Dリンク2」134_2(D2D=デバイス・ツー・デバイス)を用いて直に通信することもできる。(この場合、基地局の存在は、不要である。) しかしながら、この場合でも、基地局130は、D2Dリンクからデータを受信することに関心があることがある。さらに、「移動局3」128_3も、「D2Dリンク2」134_2および「D2Dリンク3」134_3により「D2Dリンク1」134_1からデータを受信することに関心があることがある。例としては、例えば車車間(C2C)通信がある。この場合、「移動局3」128_3が基地局130に接続されている必要はない。しかしながら、「移動局3」128_3は、基地局130または他の任意の適切な手段(同期の項目参照)によって提供され得る、何らかの同期情報136を有する。
【0050】
したがって、このシステム構造は、現在のセルラシステム(例えば、3GPP)または他の、例えばIEEE802.11(Wifi)またはIEEE802.15.4(例えば、ZigBee)に基づく送信スキームにも当てはまる。
【0051】
同期化
提案するシステムは、スロット付きALOHAを用いる。これは、時間および周波数のある種のフレーミング構造に関して、すべての移動局の同期を必要とすることがある。図4は、可能なフレーミング構造102を示す。
【0052】
詳細には、図4は、複数のリソースエレメント104を有するリソースグリッド102の略図を示す。縦軸は、周波数を示し、横軸は、時間を示す。
【0053】
図4に示すように、アップリンクデータのためのリソースは、時間および周波数で特定の割当てを有し得る、いわゆる「リソースエレメント」に分割されることが可能である。さらに、各リソースエレメントの物理リソース(例えば、帯域幅、持続時間)は、同一であり、よって、複数のリソースエレメント104は、例えば時間軸および周波数軸におけるリソースグリッド102を形成する。しかしながら、このようなグリッド102は、例えば、直交コードまたは非直交コードを用いて符号分割多元接続を適用することにより、他の次元に拡張される可能性もある。
【0054】
図4に示すグリッドの例は、例えばOFDM(直交波周波数分割多重)シンボルであって、この場合、周波数軸は、OFDM副搬送波であり、時間軸は、異なるOFDMシンボルである。さらに、3GPP規格ファミリで使用されるSC−FDMA(単一搬送波周波数分割多元接続)ベースのアップリンクスキームも、このようなアップリンク・リソース・グリッドを形成することがある。
【0055】
言い換えれば、図4は、リソースグリッドを用いるフレーミング構造の原理を示していて、同期ワードおよび/またはダウンリンクデータも、異なる周波数上で送信されてもよく、例えば、FDD(周波数分割複信)の場合、占有され得る最小数のリソースが1つのリソースエレメント104になる。
【0056】
移動局128がアップリンク・リソース・グリッド102との精密同期を有する場合は、有益である。例えば、OFDMの場合、これは、隣接チャネル干渉(ACI)および多元接続干渉(MAI)の影響を低減することになる。伝搬遅延を補償するために、移動局128は、タイミングアドバンス等のスキームも使用してもよく、すなわち、デバイスは、その個々の伝搬遅延を補償するために、リソースエレメント104の開始時間より早期にデータを送信する。したがって、全てのデバイスのアップリンクデータは、アップリンク・リソース・グリッドに完全にアラインされる。
【0057】
移動局128は、移動通信システム126または別の通信システムの同期信号に同期するように構成されることが可能である。
【0058】
移動局128は、基地局130により送信される特定の同期信号を用いて、アップリンク・リソース・グリッド上へ同期することができる。最先端の3GPP規格(例えば、リリース12)の場合、これは、基地局の同期信号(例えば、一次および二次同期信号、またはパイロット信号)である可能性もある。さらに、移動局128は、基地局130により送信されるペイロードデータ(他の移動局向けのデータも)を用いて、基地局130上へ同期してもよい。例としては、例えば、最先端の3GPPダウンリンク信号のダウンリンクにおけるOFDMシンボルのサイクリックプレフィックスがある。基地局130が存在していて、移動局128による基地局130との通信にTDD(時分割複信)が使用されれば、一部のリソースは、この同期信号をダウンリンクデータに加えて提供するために使用されてもよい。一例は、最先端の3GPP規格のTDD(時分割複信)モードである。
【0059】
移動体デバイス128の同期化は、基地局130へのデータ送信を必要としない。したがって、移動体デバイス128は、単に基地局130の信号を聴取して同期してもよい。さらに、移動体デバイス128は、同期するために、他の移動体デバイスからの信号も用いることができる。さらに、移動体デバイス128は、リソースグリッド上へ同期するために、同期を目的として送信されていない他の任意の種類の信号(例えば、ナビゲーションシステム(GPS、ガリレオ)、デジタルTV(DVB−T)またはデジタルラジオ(DAB))、いわゆる機会信号、も用いることができる。これは、基地局130が存在しない、または基地局信号を受信できない場合に、特に有用である。
【0060】
スロット付きALOHAリソースのリソース割当
マルチシステム周波数の使用法
送信機100(例えば、移動体デバイス128)は、追加の電信106の複数のデータパケット108を、非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント104において送信するように構成されることが可能である。非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント104は、移動通信システム126の移動局128から基地局130への通信に使用されるアップリンクのリソースエレメントの適切なサブセットであることが可能である。リソースエレメントは、特定のタイムスロットおよび特定の周波数の少なくとも一方に関連づけられる。
【0061】
最先端の3GPP規格の場合、リソースグリッド102は、アップリンクリソースに適用する。したがって、この場合は、移動局128の全ての送信データをアップリンクリソースにおいて送信することが有益である。アップリンクリソースは、特定の周波数(FDD=周波数分割複信の場合)であっても、特定の時間期間(TDD=時分割複信の場合)であってもよい。次いで、3GPP基地局130は、特定のリソースエレメント、例えば時間および/または周波数リソース、をスロット付きALOHA接続用のアップリンクリソース内に割り当ててもよい。他のリソースは、現行の3GPP仕様が規定する古典的な通信に使用されてもよい。
【0062】
事前に割り当てられるリソース
最新の管理された通信システム(例えば、3GPP規格)では、ユーザは、リコースを要求しなければならないことがある。ユーザ毎のこの動的な割当ての代わりに、リソースグリッドの一部のリソースは、スロット付きALOHA用に割り当てられてもよい。M2M通信のシナリオでは、多数のスモールメッセージが送信されなければならない。リソース割当て手順がなければ、デバイスにおける多くのトラフィックおよびエネルギーが節約される。別の利点は、これらのメッセージの遅延が短いことにある。D2D通信(例えば、車車間)において、イベントを他のデバイスにシグナリングする遅延が短いことの保証は、極めて重要である。
【0063】
動的なリソース割当て
リソースグリッド102のリソース104の割当ては、静的であっても、可変であってもよい。静的な構成は、管理エンティティがないシステム126において、例えば、基地局130が存在しない場合に、特に有益であり得る。これらのシステム126では、所定量のリソースを通信用に割り当てることができる。
【0064】
非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント104は、移動通信システムの管理エンティティ(例えば、基地局)によって割り当てられることが可能である。さらに、非規格準拠の通信用に予約されるリソースエレメント104は、移動通信システムの管理エンティティにより、パフォーマンス基準に依存して動的に割り当てられることが可能である。
【0065】
管理エンティティを有するシステムにおいて、スロット付きALOHA接続用のリソースは、経時的に変わってもよい。(管理エンティティは、基地局130であっても、管理エンティティとして作用する移動局であってもよい。) スロット付きALOHAにおいて移動局128により使用され得るリソースグリッド102内のリソースの数は、所定のパフォーマンス基準を達成するために必要なリソース数に調整されてもよい。このような基準は、リソースエレメントにおいて送信する移動体デバイス128の平均数、全体的なシステム待ち時間、パケット損失率または他の任意の適切なメトリックであってもよい。これにより、所与のシナリオにおけるリソースの最適な使用法が保証される。
【0066】
特定のパフォーマンス基準を満たすために必要なリソースに依存して、基地局130は、スロット付きALOHAへ割り当てられるリソースを経時的に変えてもよい。利用可能なリソースエレメント104のポジションは、移動局128へ、基地局130(典型的には、ダウンリンクリソースにおいて)または管理エンティティである移動局により送信される何らかの種類のシグナリング信号を用いてシグナリングされてもよい。
【0067】
スロット付きALOHAのリソースポジションは、経時変化する
図5は、一部のリソースエレメント104’が非規格準拠の通信用に予約されている、複数のリソースエレメント104を有するリソースグリッド102を示す略図である。縦軸は、周波数を示し、横軸は、時間を示す。
【0068】
スロット付きALOHAに割り当てられるリソースエレメント104’は、特定の周波数で固定されることもあれば(図5の下側の割り当てられたリソース)、それらのポジションが経時変化することもある(図5の上側の割り当てられたリソース)。変化する周波数は、多様性の向上に繋がることから、ポジションの変更は、フェーディングするチャネルの場合に特に有益である。さらに、リソースを特定の時間中に限って割り当てることも可能である。OFDMが使用される場合、全てのOFDMシンボルがスロット付きALOHAのためのリソースエレメントを運ぶわけではない。利用可能なタイムスロット、例えばOFDMシンボル、のパターンは、経時変化してもよい。3GPPのアップリンクにおいて使用されるSC−FDMAについても、同じことが言える。同様のスキームは、リソースエレメントを提供する他のスキームの場合、例えば、直交コード等を用いる符号分割多元接続の場合にも適用することができる。
【0069】
図5に示すように、スロット付きALOHA接続用に割り当てられるリソースエレメント104’は、経時変化してもよく、この通信タイプには、リソースのサブセットのみが割り当てられてもよい。
【0070】
リソースの二重使用
一部のリソースエレメント104は、非規格準拠の通信および規格準拠通信の双方に割り当てられることが可能である。
【0071】
3GPP等のシステムにおいて、リソースエレメント104は、古典的な通信用にも使用される場合でも、スロット付きALOHA用に割り当てられることがある。この場合、スロット付きALOHAのデータと通常のデータとが衝突する確率がある程度存在するが、これは、所定のアプリケーションでは許容され得る。一例は、極めて低いスロット付きALOHAのトラフィックが予想される場合である。このような場合、特定のリソースエレメントを純粋にスロット付きALOHA用に割り当てることは、高すぎるオーバヘッドを意味することになるが、一方で、スロット付きALOHAと通常データとが衝突する数は、許容可能なレベルであり得る。
【0072】
「ホワイトスペース」を用いるフラグメントの送信
送信機100(例えば、移動局128)は、複数のデータパケットのうちの少なくとも1つを、ガード・リソース・エレメント、例えばガード・リソース・バンドまたは周波数において、またはガードインターバルまたはタイムスロットにおいて送信するように構成されることが可能である。
【0073】
最先端の3GPP規格(例えば、LTE(ロング・ターム・エボリューション))のリソースグリッド102には、典型的には、幾つかの未使用のスペース、またはこのリソーススロット(例えば、ガードバンドまたはガードインターバル)上に干渉がある場合でもパフォーマンス劣化が少ないスペースが存在する。このリソースは、スロット付きALOHAメッセージを送信するために使用される可能性もある。この技術は、2つの結合されたシステムのデータレートを増加させる。
【0074】
スロット付きALOHAのパケットのためのリソース利用
スロット付きALOHAと電信分割
ある典型的な構成では、各リソースエレメントにおける利用可能な物理リソースは、完全なデータパケットの伝送にとって不十分である。このような構成に対する動機付けは、[2]に記述されているような電信分割を実現することであるとも言える。したがって、ある典型的な構成では、各データパケットが複数のフラグメントに分割される。次に、各フラグメントは、スロット付きALOHA接続用に割り当てられる1つのリソースエレメントにおいて送信される。この概念を実現する可能性のあるものは、[G.Kilianら著:Improved coverage for low−power telemetry systems using telegram splitting, Proceedings of 2013 European Conference on Smart Objects, Systems and Technologies(SmartSysTech), 2013]に提示されているような電信分割に類似するが、使用されるものは、純粋なALOHAではなくスロット付きALOHAである。
【0075】
FECに起因する重複からの回復
送信機100(例えば、移動局128)は、複数のデータパケット108のうちの一部のみで追加の電信106を復号できるように、複数のデータパケット108をチャネル符号化するように構成されることが可能である。
【0076】
ある典型的な構成において、データパケット108は、前方誤り訂正(FEC)を用いて保護される。これにより、ノイズの場合のパフォーマンスが向上する。さらに、(例えば、スロット付きALOHAを用いる他の移動局、または他の任意の干渉源との)衝突によって複数のフラグメントのうちの1つまたは複数のフラグメントが失われるとしても、干渉されるフラグメントは、受信機において、FECおよびおそらくは逐次干渉除去により、高い確率で回復されることが可能である。このような衝突は、例えば、基地局130または移動局3、128_3(図3参照)が移動局1、128_1および/または移動局2、128_2からのデータ受信を希望する場合に生じる。この意味における受信機は、基地局であっても、任意の移動局であってもよい。
【0077】
衝突を最小限に抑えるユーザシーケンス
送信機100(例えば、移動局128)は、衝突を低減するために、複数のデータパケット108を、リソースエレメントからユーザシーケンスに基づいて選択される選択されたリソースエレメントにおいて送信するように構成されることが可能である。
【0078】
ある単純な構成では、フラグメントは、スロット付きALOHA用に割り当てられている、次に利用可能なリソースエレメント上で、例えば同じ周波数スロット上で、送信される。これは、スロット付きALOHAのリソースが、完全な時間間隔に渡って占有されることを意味する。ある高度な構成では、結果的に生じるフラグメントが、特定のユーザシーケンスを用いてスロット付きALOHAのリソースエレメント上で送信される。これらのユーザシーケンスの例は、例えば、Masseyにより、[J.Massey、P.Mathys共著:The collision channel without feedback Information Theory, IEEE Transactions on, 1985,31,192−204]において提案されている。この場合、送信側である移動局は、幾つかのスロット付きALOHAのリソースを除外することができる。この概念は、複数の移動局のフラグメントが完全には重複しない確率を高める。干渉されるフラグメントは、次に、FECによって回復されることが可能である。 この概念は、特に、スロット付きALOHAのフラグメントの受信機が衝突を、すなわち、2つ以上の移動局が同じリソースエレメントにおいてデータを送信すること、を検出できる事例で興味深い。よって、これは、最適パフォーマンスをもたらす消失復号に相当する。
【0079】
BS−フレームにおける異なる開始時間
典型的には、データフローは、フレーム単位で編成される。1つのフレーム内に利用可能な複数のリソースブロックが存在すれば、スロット付きALOHAのユーザシーケンスを異なるタイムスロット上で開始することが可能である。したがって、別のメッセージに干渉する確率が低減され、サービス品質が向上する。
【0080】
図5は、複数のリソースエレメントを有するリソースグリッド102、および送信に使用される異なるユーザシーケンスを示す略図である。
【0081】
逐次干渉除去およびMIMO処理
既に述べたように、複数のデータパケット108は、複数のデータパケットのうちの一部のみで追加の電信を復号できるようにチャネル符号化されることが可能である。チャネル符号化されたデータパケットのうちの1つがリソースエレメントのうちの1つにおいて別のデータパケットと衝突する場合、受信機120(例えば、基地局130)は、衝突したチャネル符号化データパケットの元のバージョンを、復号された追加の電信に基づいて再構成し、かつこの衝突したチャネル符号化データパケットの元のバージョンを、リソースエレメントにおいて受信されたデータから減算して他のデータパケットを取得するように構成されることが可能である。
【0082】
言い換えれば、これについては、タイムおよび非タイムクリティカルなデータパケットの例で先に説明した。使用される接続スキームに起因して、タイムクリティカルなストリームのフラグメントのうちで、干渉されるものは、50%のみである。しかしながら、FECを用いれば、データを回復することが可能であり、よって、干渉されたリソースエレメントにおけるデータが知られる。その結果、この再符号化されたデータを、干渉されたリソースエレメントから減算することができる。次には、非タイムクリティカルなサービスを復号することができる。この原理は、逐次干渉除去(SIC)と称される。
【0083】
ユーザシーケンスおよび送信電力が最適化されたSIC
このSIC原理は、さらに最適化されたユーザシーケンスを用いれば、さらに良く機能することができる。また、SICのパフォーマンスをさらに向上させるために、追加のパラメータ、例えば移動局の送信電力、を適合化させることも可能である。
【0084】
SICの使用は、マルチユーザ(MU)シングル−イン−マルチプル−アウト(SIMO)(または、マルチプル−イン−マルチプル−アウト−MIMO)処理によってさらに拡張されることが可能である。MU−SIMO/MIMOの使用により、受信機は、受信機側ビーム形成等の技術を用いて複数の送信側移動局の干渉信号を分離することができる。
【0085】
SICおよびMIMO(ビーム形成)
概して、SICおよびMU−SIMO/MIMOの使用は、特に、最尤(ML)復号、または理論的パフォーマンスに近い他のスキームを使用する場合に有用である。さらに、SICおよびMU−SIMO/MIMOにより適する特別な波形も存在し得る。例としては、送信機電力増幅器において高い線形性で生成されることが可能な波形、すなわち、非線形歪みを僅かしか生じさせない波形、がある。これは、SICの場合、受信機は、波形を減算しなければならないという理由による。 波形が高い直線性で生成されなければ、受信機により推定され得ない成分のようなノイズが生じる。したがって、受信機は、対応する移動局の信号を完全には減算することができない。次に、残留するノイズレベルは、続く復号段階におけるパフォーマンスを低下させる。
【0086】
さらに、MU−SIMO/MIMOおよびSICの使用は、リソースエレメント内で衝突する2つの信号に限定されない。受信される信号品質および熱雑音レベルに依存して、任意数の信号が、MU−SIMO/MIMOおよびSICを用いて復号してもよい。
【0087】
さらなる実施形態
図7は、移動体通信規格に準拠する移動通信システムにおいて送信するための方法200を示すフローチャートである。通信システムのリソースは、リソースエレメントに分割される。本方法は、電信を各々が前記電信より短い複数のデータパケットに分離しかつ各データパケットを各々リソースエレメントのうちの1つにおいて送信することにより、追加の電信を送信すること、202、を含む。
【0088】
図8は、移動体通信規格に準拠する移動通信システムにおいて受信するための方法210を示すフローチャートである。通信システムのリソースは、リソースエレメントに分割される。本方法は、その各々が電信より短い複数のデータパケットに分離されて送信される追加の電信の受信を、各データパケットを各々リソースエレメントのうちの1つにおいて受信することによって行うこと、212、を含む。
【0089】
実施形態において、追加の電信の複数のデータパケットは、(例えば、通信チャネル上で)データパケット間に時間的距離を有して送信されることが可能である。
【0090】
実施形態は、スロット付きALOHAによる電信分割を用いて、未来のM2M通信システムのパフォーマンスを向上させるための新しいアプローチを提供する。ネットワークの基地局は、特定の時間および周波数スロットを、単にこれらのスロット内でそのデータを送信できるデバイスに割り当てる。デバイスは、データの送信を希望する場合、単に1つまたは複数のスロットを選択して送信を開始する。事前に、特定のスロットが空いているかどうかを確認する必要はない。したがって、アップリンクリソース上で衝突が発生する。これらの衝突は、殆どの場合、信号処理(例えば、逐次干渉除去)および特定の電信分割接続パターンによって解決することができる。
【0091】
実施形態は、いかなる種類のセルラ規格にも限定されない。これが、あらゆる種類の伝送規格で使用される可能性もある。
【0092】
幾つかの態様を装置のコンテキストで説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明をも表すことは明らかであって、ブロックまたはデバイスは、方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法ステップのコンテキストで説明されている態様も、対応する装置の対応するブロックまたはアイテムまたは特徴の説明を表す。方法ステップの一部または全ては、例えばマイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路のようなハードウェア装置によって(または、これを用いて)実行されてもよい。実施形態によっては、最も重要な方法ステップのうちの1つまたはそれ以上がこのような装置によって実行されてもよい。
【0093】
所定の実装要件に依存して、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアに実装することができる。実装は、個々の方法が実行されるようにプログラム可能コンピュータシステムと共働する(または共働することができる)、電子読取り可能制御信号を記憶しているデジタル記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリを用いて実行することができる。したがって、デジタル記憶媒体は、コンピュータ読取り可能であってもよい。
【0094】
本発明による幾つかの実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つが実行されるようにプログラム可能コンピュータシステムと共働できる、電子読取り可能制御信号を有するデータキャリアを含む。
【0095】
概して、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータ・プログラム・プロダクトとして実装することができ、プログラムコードは、コンピュータ・プログラム・プロダクトがコンピュータ上で実行されると前記方法のうちの1つを実行するように動作可能である。プログラムコードは、例えば、機械読取り可能キャリア上に記憶されてもよい。
【0096】
他の実施形態は、機械読取り可能キャリア上に記憶される、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを含む。
【0097】
したがって、言い換えれば、本発明方法の一実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0098】
したがって、本発明方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを記録して含むデータキャリア(またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ読取り可能媒体)である。データキャリア、デジタル記憶媒体または記録される媒体は、典型的には、有形かつ/または非移行型である。
【0099】
したがって、本発明方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは、例えば、データ通信接続を介して、例えばインターネットを介して転送されるように構成されてもよい。
【0100】
さらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するように構成または適応される処理手段、例えばコンピュータ、またはプログラマブル論理デバイスを含む。
【0101】
さらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムをインストールしているコンピュータを含む。
【0102】
本発明によるさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機へ(例えば、電子的にまたは光学的に)転送するように構成される装置またはシステムを含む。受信機は、例えば、コンピュータ、移動体デバイス、メモリデバイスまたはこれらに類似するものであってもよい。前記装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機へ転送するためのファイルサーバを備えてもよい。
【0103】
幾つかの実施形態において、プログラマブル論理デバイス(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)は、本明細書に記載の方法の機能のうちの一部または全てを実行するために使用されてもよい。幾つかの実施形態において、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためにマイクロプロセッサと共働してもよい。概して、前記方法は、好ましくは、任意のハードウェア装置によって実行される。
【0104】
本明細書に記載の装置は、ハードウェア装置を用いて、またはコンピュータを用いて、またはハードウェア装置とコンピュータとの組合せを用いて実装されてもよい。
【0105】
本明細書に記載の装置、または本明細書に記載の装置の任意のコンポーネントは、少なくとも部分的にハードウェアおよび/またはソフトウェアにおいて実装されてもよい。
【0106】
本明細書に記載の方法は、ハードウェア装置を用いて、またはコンピュータを用いて、またはハードウェア装置とコンピュータとの組合せを用いて実行されてもよい。
【0107】
本明細書に記載の方法、または本明細書に記載の装置の任意のコンポーネントは、少なくとも部分的にハードウェアおよび/またはソフトウェアによって実行されてもよい。
【0108】
上述の実施形態は、本発明の原理を単に例示するものである。他の当業者には、本明細書に記載の配置および詳細の変更および変形が明らかとなることは理解されたい。したがって、本発明は、本明細書における実施形態の記述および説明として提示された特定の詳細ではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8