【実施例】
【0060】
序論
黄色ブドウ球菌は、米国で最も健康に関連する6つのESKAPEバクテリア病原菌の1つに指定されている。Rice LB. 2008を参照してください。Federal funding for the study of antimicrobial resistance in nosocomial pathogens:no ESKAPE.J Infect Dis 197:1079−1081。この生物は、院内及び地域社会に関連する細菌感染の主な原因であり、現在利用可能なすべての抗生物質に対する耐性を発生させている。Pendleton JN, Gorman SP, Gilmore BF. 2013;Clinical relevance of the ESKAPE pathogens.;Expert review of anti−infective therapy 11:297−308を参照されたい。黄色ブドウ球菌の年間死亡率は既にHIV/エイズの死亡率を上回っており、殆どの製薬企業が、他の生物を標的とする抗菌プログラムの完全削除、縮小、及び/または方向転換を考えると、更に悪化する可能性が高い。Klevens RM, Morrison MA, Nadle J, Petit S, Gershman K, Ray S, Harrison LH, Lynfield R, Dumyati G, Townes JM, Craig AS, Zell ER, Fosheim GE, McDougal LK, Carey RB, Fridkin SK. 2007;Invasive methicillin−resistant Staphylococcus aureus infections in the United States.; JAMA :the journal of the American Medical Association 298:1763−1771;Projan SJ, Shlaes DM. 2004;Antibacterial drug discovery: is it all downhill from here?;Clinical microbiology and infection :the official publication of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases 10 Suppl 4:18−22を参照されたい。簡単に言えば、ブドウ球菌感染症の予防及び治療のための新しい戦略が緊急に必要とされている。
【0061】
ヒトの前鼻孔は黄色ブドウ球菌の生態学的適所であり、鼻腔輸送はブドウ球菌疾患、特に外科手術、血液透析、または長期集中治療室滞在を必要とする患者集団の間で認識された危険因子である[Kluytmans J, van Belkum A, Verbrugh H. 1997;Nasal carriage of Staphylococcus aureus: epidemiology, underlying mechanisms, and associated risks.Clin Microbiol Rev 10:505−520において検討されている]。研究によれば、黄色ブドウ球菌の鼻内除菌は、他の身体部位でのコロニー形成、並びに伝染及びその後の感染のリスクを減少させることが示されている。その結果、感染制御の実務は、黄色ブドウ球菌感染を防止するための手段としての鼻内除菌処置を常態的に含み、また最終的にはブドウ球菌疾患の抗生物質介入に依存する。
【0062】
黄色ブドウ球菌RNasePは、RnpA及びリボザイムRnpBからなる必須のリボタンパク質複合体であり、これはトランスファーRNA成熟経路においてtRNAシンテターゼの上流に作用する。より詳細には、RNasePは、前駆体tRNA種からの5’リーダー配列の除去を触媒し、イソロイシルtRNAシンテターゼ(ムピロシンの細胞標的)を含むtRNAシンテターゼのための成熟したtRNA基質を生成する。同じ細菌代謝経路の独立した段階を標的とする2つの抗菌剤が組み合わされた抗菌効果を有し得ることを認識することにより、RNaseP阻害剤とムピロシンとの混合物を含む併用療法は、抗菌効力の増加及びムピロシン耐性克服の可能性を示すことが以前から仮定されてきた。その予測の支持において、RNPA2000、即ち、黄色ブドウ球菌RNaseP活性の小分子阻害剤は、実験室増殖条件で試験された際にムピロシンとの相乗的活性を発揮するが、他の抗生物質とでは相乗活性を発揮しないことが示された。残念ながら、以下に示すように、RNPA2000は宿主環境において抗菌特性を失い、コロニー形成及び感染の宿主モデルにおいてムピロシンとの相乗作用を発揮しない。このように、RNaseP阻害剤は実験室条件の際には相乗的な活性を付与することができるが、バクテリアが例えばコロニー形成、感染の際、または宿主環境においてRNaseP機能を必要としない場合には、何れのRNaseP阻害剤(存在する場合)が宿主において相乗効果を与えるかは明らかでない。
【0063】
本明細書には、ムピロシンの黄色ブドウ球菌に対する抗菌特性を増強する薬剤について、食品医薬品局(FDA)が認可した薬物ライブラリーのスクリーニング結果が記載されている。抗生物質であるネオマイシン硫酸塩は、局所使用について承認されており、以前には大腸菌RNasePを阻害することが示されていたが、これは同定された3つのヒット物質の中に存在した。インビトロアッセイにより、ネオマイシンが黄色ブドウ球菌のRNaseP機能をも阻害し、ムピロシンに相加的な抗菌効果を付与し、またこの組み合わせが局所様式で効果的に処方され得ることが明らかになった。動物研究により、ネオマイシン+ムピロシンの局所適用の組合せは、鼻内コロニー形成及び創傷部位感染のマウスモデルにおいて、黄色ブドウ球菌バクテリア負荷を減少させることが実証された。更に、併用療法は、何れかの薬剤単独の効果を改善し、現代のメチシリン感受性、メチシリン耐性及び高レベルムピロシン耐性の黄色ブドウ球菌株の治療において有効であった。
【0064】
実施例1:
材料及び方法
バクテリア株及び動物。全てのバクテリア研究は、黄色ブドウ球菌株UAMS−1、即ち、微生物のバイオフィルム形成及びコロニー形成特性を研究するために通常用いられる十分に特徴づけられたメチシリン感受性の臨床単離物、USA300、即ちメチシリン耐性のコミュニティー獲得型臨床単離株、またはBAA−1708、即ち、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(マナッサス、バージニア州)から入手したmupAを含む高レベルのムピロシン耐性株を用いて行われた。下記文献を参照されたい:Gillaspy AF, Hickmon SG, Skinner RA, Thomas JR, Nelson CL, Smeltzer MS. 1995、Role of the accessory gene regulator (agr) in pathogenesis of staphylococcal osteomyelitis.Infect Immun 63:3373−3380; McDougal LK, Steward CD, Killgore GE, Chaitram JM, McAllister SK, Tenover FC. 2003、Pulsed−field gel electrophoresis typing of oxacillin−resistant Staphylococcus aureus isolates from the United States: establishing a national database.J Clin Microbiol 41:5113−5120。別段の指示がない限り、菌株をトリプシン大豆ブロス(TSB)で一晩増殖させ、次いで新鮮な(1:100希釈)培地に接種し、初期指数期(1×10
8CFU/mL)まで増殖させ、以下に述べるよう処理した。4〜6週齢の雌Balb/CマウスをCharles River(Wilmington MA)から入手し、認可されたロチェスター大学メディカルセンター動物実験評議会(UCAR)のプロトコールに従って飼育した。
【0065】
試験品の調製:米国薬局方及び全国製剤(USP24−NF19)に記載されているようにして、PEG400(70%w/v)をPEG3350(30%w/v)と混合することにより、ポリエチレングリコール(PEG)軟膏基剤を調製した。ムピロシン(AppliChem, Chicago IL; A47180005)及びネオマイシン(Sigma、St. Louis MO; N6386)を、250μLのジメチルスルホキシド(DMSO)中に懸濁して、それぞれ100mg及び50mgの作業濃度を作成した。次いで、混合物を、60℃で30分間加熱して予め液化した5gのPEG軟膏に直接添加して、2%ムピクロシン、1%ネオマイシン懸濁液を作製し、次いで室温に冷却した。同じ手順を用いてDMSO賦形剤対照を作成し、また合計250μLのDMSO中に100mgのムピロシン及び50mgのネオマイシンの組み合わせを加えることにより、2%ムピロシン/1%ネオマイシンPEG混合物を作成した。
【0066】
シェレック・ライブラリーのスクリーニング:黄色ブドウ球菌株UAMS−1に対するムピロシンの抗菌活性を増強する薬剤について、食品医薬品局の承認薬物のシュレック・ライブラリー(Selleck Chemicals,Houston TX,L1300)のメンバーをスクリーニングした。これを行うために、1×10
5コロニー形成単位のUAMS−1を、96ウエルのマイクロタイタープレートの個々のウエルに加え、Mueller・Hintonブロス(MHB;合計100μLの総ウエル容積)中の0.03μg/mLのムピロシン(0.5×最小阻害濃度)及び50μMの試験薬剤と混合した。マイクロタイタープレートを37℃で16時間インキュベートし、個々のウエルを増殖について検査した。増殖を伴わないウエルは、ムピロシンの抗菌特性またはムピロシン非依存性の抗菌特性を増強する薬剤を表すと看做された。増殖をもたらさなかった全ての薬物は二重に確認され、それらの固有の抗菌活性を測定するためにムピロシンなしで培養された。
【0067】
RNaseP・ptRNAプロセシングアッセイ:黄色ブドウ球菌RNアーゼP活性アッセイを前述のようにして実施した。次の文献を参照されたい:Eidem TM, Lounsbury N,Emery JF,Bulger J,Smith A,Abou−Gharbia M,Childers W,Dunman PM.2015、Small−molecule inhibitors of Staphylococcus aureus RnpA−mediated RNA turnover and tRNA processing.Antimicrob Agents Chemother 59:2016−2028。簡単に言うと、先ず、等モル比の変性rnpB及びRnpAを37℃で15分間混合することによりRNアーゼPを再構成し、次いで10pmolのptRNA
Tyrに添加し(5pmol)、総容積20μLの中の指示された濃度のネオマイシンまたは既知のRNaseP阻害剤であるRNPA2000の濃度を増加させる。混合物を37℃で5分間インキュベートし、20μLの2×RNAローディング色素(95%ホルムアミド、0.025%SDS、0.025%ブロモフェノールブルー、0.025%キシレンシアノールFF、0.5mMのEDTA)を加えることにより停止させ、30μLの各試料を7M尿素−8%ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、臭化エチジウム(0.5μg/mL)で染色した。FluorChem5500イメージングシステムを用いてRNA産物を視覚化し、ImageJソフトウェア(National Institutes of Health、Bethesda MD)を用いて定量した。次いで、以下の式:[試験化合物tRNA
Tyrシグナル/モックtRNA
Tyrシグナル]を使用して、パーセントRNaseP活性を計算した。
【0068】
抗菌剤感受性試験:最小阻害濃度(MIC)は、クリニカル・アンド・ラボラトリー・スタンダード・インスティテュート(CLSI)ガイドラインに従って試験した。簡潔に述べると、1×10
5CFUの指示された黄色ブドウ球菌株を、88μLのMHB培地及び2倍増加濃度のムピロシンまたは試験薬剤(0〜128μg/mL
−1)を含むマイクロタイタープレートの個々のウエルに加えた。プレートを37℃で16時間インキュベートし、増殖についてウエルを視覚的に検査した。黄色ブドウ球菌の増殖を阻害するムピロシンまたは試験薬剤の最低濃度を、最小阻害濃度とみなした。以前に記載したようにして部分阻害濃度指数(FIC)試験を行い、ムピロシンとネオマイシンとの間の相互作用を測定した。Odds・FC.2003、Synergy, antagonism, and what the chequerboard puts between them.The Journal of antimicrobial chemotherapy 52:1を参照されたい。簡潔に言うと、チェッカーボード形式で、プレートの各列は増加する濃度のムピロシン(2倍増分;0〜0.5μg/mL)を含有するのに対して、各行には増加する濃度のネオマイシンを含有させた(2倍増分;0〜32μg/mL)。各ウェル(100μLの総容積)に、3×10
5CFUの黄色ブドウ球菌株UAMS−1を含有するMHBを添加し、該プレートを37℃で一晩(16〜20時間)インキュベートした。FICは、以下の式を使用して決定した:[(組合せにおける薬剤AのMIC/薬剤A単独のMIC)+(組み合わせにおける薬剤BのMIC/薬剤B単独のMIC)=FIC]。相乗的相互作用はFIC値≦0.5として、相加的相互作用はFIC値0.5〜1.0として、相互作用無しはFIC値1〜4として、または拮抗的相互作用FIC>4として定義された。
【0069】
インビトロ軟膏抗菌試験:指示された黄色ブドウ球菌株を使用して、PEG軟膏コンパイルについて測定された阻害の抗菌ゾーン。これを行うために、100μLの1×10
8CFU mL
−1の黄色ブドウ球菌をTSAプレート上に広げた。プレートを10分間乾燥させ、40μLの軟膏をプレートの中央にピペットで載せた。プレートを37℃で16時間インキュベートし、ImageJソフトウェア(NTH)を用いてバクテリアクリアランスのゾーンを測定した。
【0070】
マウスの鼻コロニー形成及び治療:軟膏は、以前に記載された黄色ブドウ球菌鼻コロニー形成モデルを変更して使用し、インビボの抗菌活性について軟膏を評価した。次の文献を参照されたい:Kiser KB,Cantey−Kiser JM,Lee JC.1999、Development and characterization of a Staphylococcus aureus nasal colonization model in mice.Infect Immun 67:5001−5006。覚醒したマウスの鼻孔に、1×10
7の指示された黄色ブドウ球菌株を10μLの培養液を鼻孔に直接ピペッティングすることにより、接種し、マウスの呼気及び吸気の時に現れる気泡の可視化によって確認した。次いで、接種の45分後に、賦形剤単独または指示された抗生物質の何れかを含む10μLのPEG軟膏(加熱ブロック中で55℃に加熱して液化させる)でマウスの鼻孔を処置し、この処理を8時間毎に3日間繰り返した。次いで、UCAR承認の方法論に従って、CO
2窒息及び頚椎脱臼によりマウスを安楽死させた。軟口蓋の裏側から鼻孔の先端までの完全な鼻孔を総切開により集め、1mLの新たに作製したPBSを含むマイクロ遠心チューブに入れた。サンプルを5分間ホモジナイズし、逐次希釈し、マンニトール塩寒天(MSA、ThermoScientific、Waltham MA; R453902)上にプレーティングした。プレートを16時間インキュベートし、黄色ブドウ球菌の数を計数した。
【0071】
マウスの感染及び治療の皮膚創傷モデル:軟膏コンパイルの効果を、修飾された黄色ブドウ球菌皮膚創傷モデルを用い、インビボ抗菌活性について評価した。次の文献を参照されたい:Guthrie KM,Agarwal A,Tackes DS,Johnson KW,Abbott NL,Murphy CJ,Czuprynski CJ,Kierski PR,Schurr MJ,McAnulty JF.2012、Antibacterial efficacy of silver−impregnated polyelectrolyte multilayers immobilized on a biological dressing in a murine wound infection model.Annals of surgery 256:371−377。NaCl中の100mg/mL
−1のケタミン(Hospira Inc.,Lake Forest IL)と20mg/mLのキシラジン(Lloyd Laboratories,Shenandoah IA)の混合物を、体重1g当たり5μLで腹腔内注射することによりマウスを麻酔した。20μLの0.5%センサーカイン(APP Phamaceuticals,Schaumburg,IL)の形態での痛み軽減剤を皮膚創傷の前に投与した。マウスの背側中央部を剃り、ベタジンスクラブ(FisherScientific)、ポビドンヨードパッド(Professional Disposables International Inc; Orangeburg、NY)及びイソプロピルアルコールパッド(FisherScientfic)を一連で用い、総接触時間2分間で洗浄した。皮膚の層のみを除去し、且つ下層の筋肉組織を破壊しないように、6mmの生検パンチ(FisherScientific)を用いて、マウスのこの無菌領域に単一の創傷を作製した。該マウスの創傷上に10μLの培養液を直接ピペッティングすることにより、1×10
7の指示された黄色ブドウ球菌株を前記創傷に接種した。次いで、接種後45分に、賦形剤のみ、または指示された抗生物質を含む軟膏コンパイレーション(50μL)でマウスを処置した;処置を12時間ごとに3日間繰り返した。その後、マウスをCO
2窒息及び頚椎脱臼により安楽死させ、UCAR承認の方法論に従って、創傷及びその下の筋肉を8mm生検パンチ(PDI)で切除し、1mLの新たに作製したPBSを含むマイクロ遠心チューブに入れた。サンプルを5分間ホモジナイズし、逐次希釈し、MSA上にプレーティングした。プレートを16時間インキュベートし、黄色ブドウ球菌の数を計数した。
【0072】
インビボ毒性試験:軟膏の毒性を修飾された皮膚創傷モデルで試験した。指示された処置群当たり3匹のグループのマウスを、黄色ブドウ球菌の前記傷への接種なしで上記のように傷付けた。前記創傷を、賦形剤、2%ムピロシン、1%ネオマイシン、または2%ムピロシン+1%ネオマイシン併用の軟膏で1日2回14日間処置した。マウスを体重測定し、グルーミング及び覚醒について評価し、ImageJ(NIH)を用いて創傷の画像を毎日入手して創傷収縮を測定した。創傷収縮は、次式を用いて創傷面積の縮小率として計算した:WCd=(1−WAd/WA0)×100、ここで、WCは創傷収縮、WAは創傷面積、dは日、0は初日を示す。下記文献を参照されたい:Amegbor K,Metowogo K, Eklu−Gadegbeku K, Agbonon A, Aklikokou KA, Napo−Koura G, Gbeassor M. 2012、Preliminary evaluation of the wound healing effect of Vitex doniana sweet (Verbenaceae) in mice.African journal of traditional, complementary, and alternative medicines :AJTCAM / African Networks on Ethnomedicines 9:584−590。
【0073】
実施例2
ムピロシンの抗菌活性を増強する薬剤
FDA認可薬剤であるセレックライブラリーの853のメンバーを、ムピロシンの活性を増強する薬剤についてスクリーニングした。これを行うために、黄色ブドウ球菌株UAMS−1を、0.25×当該株のムピロシン最小阻止濃度(MIC;0.3μg/mL
−1)及び50μMのライブラリー物質を含むマイクロタイタープレートの個々のウエルに接種した。合計108のライブラリーメンバー(12.6%)が、ムピロシンの抗菌活性を増強するか、ムピロシン非依存性の抗菌活性を示すか、またはその両方を示す薬剤であることを示唆し、細菌増殖を抑制した。これらの可能性を識別するために、各化合物の濃度を増加させて、0.25×株のムピロシンMICを含有しない培地または含有する培地中において抗菌活性について再試験した。評価した108種の化合物のうち105種(97.2%)は、ムピロシンが存在するかどうかにかかわらず、同様の抗菌活性を示した。逆に、ニタゾキサニド(Nitazoxanide)、ニトロフラザン(Nitrofurazone)、及び硫酸ネオマイシンの抗菌活性は、ムピロシンの存在下で増加した。実際に、部分阻害濃度指数(FIC)尺度は、ムピロシンと組み合わせたときに、各薬剤との相加的効果を明らかにし(FIC’s=0.75)、それらが恐らくはRNasePを阻害することによって、ムピロシンの活性を増強する能力をも有する抗菌剤であることを示している(表1)。
【表1】
【0074】
実施例3
ネオマイシンは黄色ブドウ球菌RNasePのインビトロ活性を阻害する
ネオマイシンのようなアミノグリコシド系抗生物質は、アミノ糖修飾で修飾された中心のデオキシストレプタミン環を含み、16S・rRNAの主溝に結合することにより作用して、tRNA選択の忠実度を破壊し、且つタンパク質翻訳を阻止する。より最近の研究により、アミノグリコシドはmRNA、tRNA及び触媒性RNAに結合して、その機能に影響を与えることが明らかになった。下記の文献を参照されたい:Mikkelsen NE, Brannvall M, Virtanen A, Kirsebom LA. 1999、Inhibition of RNase P RNA cleavage by aminoglycosides.Proc Natl Acad Sci U S A 96:6155−6160;Mikkelsen NE, Johansson K, Virtanen A, Kirsebom LA. 2001、Aminoglycoside binding displaces a divalent metal ion in a tRNA−neomycin B complex.Nature structural biology 8:510−514;Tok JB, Cho J, Rando RR. 1999.Aminoglycoside antibiotics are able to specifically bind the 5’−untranslated region of thymidylate synthase messenger RNA.Biochemistry 38:199−206;von Ahsen U, Davies J, Schroeder R. 1992.Non−competitive inhibition of group I intron RNA self−splicing by aminoglycoside antibiotics.Journal of molecular biology 226:935−941。これに関して、ネオマイシンB及び/または誘導体は、大腸菌、淋菌、ポルフィロマス・ジンジバリス、ストレプトコッカス・ニューモニエ及びバチルス・ズブチリスRNaseP機能を阻害する様式で、RNaseP及び/または前駆体tRNA分子のrnpB成分に結合することが示されている。下記の文献を参照されたい:Eubank TD, Biswas R, Jovanovic M, Litovchick A, Lapidot A, Gopalan V. 2002.Inhibition of bacterial RNase P by aminoglycoside−arginine conjugates.FEBS letters 511:107−112;Liu X, Chen Y, Fierke CA.2014.A real−time fluorescence polarization activity assay to screen for inhibitors of bacterial ribonuclease P.Nucleic acids research 42:e159。従って、インビトロの前駆体tRNAプロセシングアッセイにおいて、ネオマイシンが黄色ブドウ球菌RNaseP活性をも阻害するか否かを評価した。その結果、
図1に示すように、高濃度(250μM)のネオマイシンがインビトロ条件下で前駆体tRNA
Tyrの成熟を触媒する黄色ブドウ球菌RNasePの能力を阻害することが明らかになり、それによって、ムピロシンを増強する薬剤の能力が部分的にはRNaseP活性を阻害する能力によって媒介されることが示唆された。
【0075】
実施例4
軟膏形成におけるムピロシンとネオマイシン併用の抗菌効果
先に述べたように、ムピロシン軟膏は、ムピロシン耐性の出現のためにブドウ球菌の除菌及び創傷治療剤として効力を失ており、黄色ブドウ球菌感染症の予防及び治療のための新しい選択肢が必要とされている。ネオマイシンがムピロシンの抗菌効力を改善し、また2つの抗生物質が異なる作用機序を有することを考慮して、両方の薬剤を含有する併用軟膏が、何れかの薬剤単独と比較して改善された抗菌特性を有し得るかどうかを試験した。更に、併用療法はムピロシン耐性を克服し、またグラム陰性種に主に影響を及ぼすネオマイシンをムピロシン軟膏に組み込むことにより、抗菌活性スペクトルが改善され、二次感染またはポリ微生物創感染の発生を減少させる点において有益であることを証明し得る可能性を提供するであろう。これらの可能性の第一の試験として、ポリエチレングリコール(PEG)ベースの軟膏中における各薬剤の抗菌性能を測定した。
【0076】
黄色ブドウ球菌株UAMS−1、即ち、ネオマイシン及びムピロシン感受性の臨床単離物に対するDMSO(媒体)、2%ムピロシン、1%ネオマイシン、または組み合わせ(2%ムピクロン+1%ネオマイシン)のいずれかを含有するPEGベースの軟膏の抗菌効果をモニターするために、プレートアッセイが最初に用いられた。
図2Aに示すように、各治療領域の阻害の測定は、賦形剤単独では生物の成長に影響を与えなかったが、抗生物質の両者は、単独及び組み合わせの何れにおいても成長阻害ゾーンを生じることが明らかになり、前記軟膏製剤は何れの薬剤の抗菌性も減弱させないことを示唆した。2%のムピロシンは阻害ゾーン21.1(±2)cm
2を生成したのに対して、1%ネオマイシンは平均クリアランスゾーン9.7(±1)cm
2を示した。2%ムピロシンと1%ネオマイシンの組み合わせは、ムピロシン単独よりも統計学的に改善されたと考えられる最大阻害ゾーン(29.9(±0.25)cm
2)を示したが、これは特定の抗生物質の組合せの相加効果に起因し得るものであり、または単に活性抗菌成分の全体的な増加を反映するに過ぎないものである。しかし、抗菌クリアランスの同様の改善は、1%のバンコマイシン(
図2D)またはオキサシリン(
図2E)と組み合わせた2%ムピロシンの試験では、観察されなかったが、これは組合せに拮抗性があること、及び組合せによる改善がなないことをそれぞれ示している。これらの結果は、液体培養条件下で観察されたムピロシン+ネオマイシン組合せの相加的効果が特異的であり、また軟膏製剤でも存在することを示している。
【0077】
黄色ブドウ球菌株の広範なパネルに対する組み合わせ軟膏の性能を試験する予備的手段として、プレートアッセイは、現代のメチシリン耐性臨床単離物、ネオマイシン耐性(MIC=128μg/mL
−1、データは示さず)のUSA300、及び高レベルのムピロシン耐性(MIC>256μg/mL
−1、データは示さず)を付与するmupA遺伝子を含む株BAA−1708を包含するように拡大された。
図2Bに示すように、ムピロシンは、USA300−LAC増殖阻害の明確な領域(14.0(±4)cm
2)を誘発した。興味深いことに、1%のネオマイシン軟膏は、該薬剤に対する前記株の耐性にも拘わらず、小さな(3.6(±0.25)cm
2)ハロ様の阻害ゾーンを示し、試験した濃度が生物の耐性表現型をある程度克服できることを示した。更に、当該併用治療は、何れかの薬剤単独と比較して、有意に増加した阻害領域(24.0(±3)cm
2)を示した。
図2Cに示すように、高レベルのムピロシン耐性株BAA−1708の試験は、その株が、僅かな増殖阻害ゾーン(3.6(±1)cm
2)を生じるUAMS−1及びUSA300尺度の両方に比較して、2%のムピロシン軟膏に対して耐性であることを示した。逆に、1%ネオマイシン軟膏は明確な阻害ゾーン(4.8(±1.1)cm
2)を誘発し、これは併用治療によって有意に増大した(7.5(±0.2)cm
2)。
【0078】
総合すると、これらの結果は、ムピロシン及びネオマイシンが、ここで試験した軟膏のフォーマットにおいて適合性があることを示している。更に、2%ムピロシン+1%ネオマイシンの組合せは、何れかの薬剤単独と比較して有意に増加した抗菌活性を示し、それらの耐性プロファイルに関係なく、全ての株に対して活性を示した。これらの観点から、この組み合わせは、ブドウ球菌感染の予防及び/または治療的介入のためにムピロシン(単独)が典型的に使用される宿主環境において、同様に治療的に有益であろうと仮定された。しかし、上述し且つ以下で詳述するように、RNaseP阻害剤であるRNPA2000は、ムピロシンとの相乗作用におけるネオマイシンに対する優位性を含む印象的なインビトロ抗菌特性にもかかわらず、宿主環境においては効力を示さないことが認識された。従って、ネオマイシンは宿主環境の試験においては同様に失敗する可能性が高いと認識された。
【0079】
実施例5
黄色ブドウ球菌の鼻内除菌に対するムピロシン及びネオマイシンの効果
黄色ブドウ球菌の鼻内コロニー形成のマウスモデルを使用して、組み合わせて適用した場合のムピロシン、ネオマイシン及び2つの薬剤の抗菌効力を比較した。これを行うために、Balb−cマウスの鼻腔に、約1×10
7コロニー形成単位の黄色ブドウ球菌を接種し、次いで1日3回合計3日間処理し、その時点で細菌負荷を測定して、各動物からの10種の分離株の抗生物質感受性をMIC試験によって測定した。
【0080】
以前の報告と一致して、2%ムピロシン処置は、黄色ブドウ球菌株UAMS−1のコロニー形成
図3Aにおける1の対数減少をもたらした。しかし、2匹のマウスは、他の同齢集団メンバーに比較して特徴的でない高負荷を示し(赤で示す)、これら単離物の試験に際し、前記接種株並びに治療群内の他の動物からの単離物(0.125μg/mL
−1のMIC)に比較して、ムピロシン耐性における4倍の増加(0.5μg/mL
−1のMIC)を示すことが見出され、ムピロシン(単独)の投与は低レベルの耐性誘導体を選択することが示唆された。1%のネオマイシン処置は除菌作用を誘発するように見えたが、その効果はムピロシン(単独)よりも少なかった。2%ムピロシン+1%ネオマイシンによる処置で最大の有意な除菌処理が達成され、低レベルの抗生物質耐性を選択するようには見えなかった。同様の結果が、USA300鼻内除菌に対しても観察された(
図3B)。より具体的に言えば、2%ムピロシン処理は細菌負荷における1の対数減少をもたらしたが、ムピロシン耐性誘導体を選択するようには見えなかった。1%ネオマイシン(単独)での処理は、USA300負担の約2対数減少をもたらしたが、ムピロシン(単独)群よりも大きな変動性を誘発したのに対して、その組み合わせは常に細菌負荷を最大限に減少させるようであった(1.8の対数減少)。同様の効果が黄色ブドウ球菌株BAA−1708の試験でも観察され、これは高レベルのムピロシン耐性表現型を示すにもかかわらず、負荷において、ムピロシン(単独)処置後の中等度の低下(0.54対数)、1%ネオマイシン処置動物での0.8の対数減少、及び組み合わせ処置後の1.2の対数減少を示した(
図3C)。
【0081】
総合すると、これらの結果は、2%ムピロシン+1%ネオマイシンの併用局所適用が、何れかの薬剤単独よりも、試験した3つの菌株について黄色ブドウ球菌の鼻内除菌を有意に改善したことを示す。その観察に基づき、利用可能な鼻モデルの評判の悪い低解像度と組み合わせて、黄色ブドウ球菌のマウス創傷モデルにおける組合せの特性を評価するために研究が拡張された。
【0082】
実施例6
黄色ブドウ球菌創傷クリアランスに対するムピロシン及びネオマイシンの効果
マウス皮膚傷害モデルを用いて、2%ムピロシン、1%ネオマイシン、及び2%ムピロシン+1%ネオマイシンの除菌特性を評価した。これを行うために、黄色ブドウ球菌株UAMS−1、USA300またはBAA−1708の何れかを接種したBalb−cマウスの背部に皮膚創傷を作製し、次いでPEGベースの軟膏に懸濁させた試験薬剤を用いて1日2回で合計3日間処置し、その時点で細菌の負荷を測定した。
【0083】
図4Aに示すように、賦形剤のみで処置した動物(病巣当たり7×10
7cfu)と比較して、2%ムピロシンによる3日間の処置の結果、創傷部位のUAMS−1コロニー形成において約6の対数減少が生じた(病変当たり1.8×10
1cfu)。1%のネオマイシン処置は、ムピロシン(単独)と比較して改善されたクリアランスを示して、病巣当たり1×10
1cfuを生じ、処置群内の10匹の動物のうち5匹(50%)からは細菌が回収されなかった。併用療法は最も大きな薬効を示した。2%ムピロシン+1%ネオマイシンで処置した10匹の動物のうち、9匹(90%)からは細菌が回収されなかったのに対して、残りの動物からは単一のUAMS−1コロニー(1×10
1cfu)が回収された。ネオマイシン耐性株USA300の試験では、2%のムピロシンが効果的であることが示され、細菌の創傷部位の負荷において5の対数減少をもたらし、治療群における10匹の動物のうち4匹(40%)からは細菌は回収されなかった(
図4B)。ネオマイシン処置(単独)は、恐らくネオマイシン耐性表現型に起因して除菌に最小限の影響しか及ぼさなかったが、組み合わせ処置群では最大有効性が観察され、ここでは治療された動物10匹のうち7匹(70%)からはUSA300細胞が回収されなかった。同様に、ムピロシン及びネオマイシンの組み合わせは、ムピロシン耐性株BAA−1708の試験において最大の有効性を示した(
図4C)。より具体的に言えば、予想通り、2%ムピロシン処置(単独)は、賦形剤処置細胞と比較して創傷部位のコロニー形成を減少させなかったが、ネオマイシン処理(単独)は回収可能な細菌数において約5の対数減少をもたらした。ムピロシン+ネオマイシンの組み合わせは、コロニー形成における最大の減少を生じ、試験した10匹のうち3匹(30%)の動物において、創傷部位の細菌における7の対数減少をもたらし、回復可能な細菌はなかった。総合すると、これらの結果は、ムピロシン+ネオマイシンの軟膏が、何れかの薬剤単独よりも創傷部位の黄色ブドウ球菌負荷を低減する上でより効果的であり、またその組み合わせが何れかの薬剤に対する耐性を克服できることを示す。
【0084】
実施例7
ムピロシン及びネオマイシン併用軟膏の他の細菌種に対する抗菌力
ムピロシン及びネオマイシンは、それぞれ、主にグラム陽性種及びグラム陰性種に対して活性である。その結果、この組み合わせは、何れか単独の薬剤と比較して活性の増加したスペクトルを示し、グラム陽性及び陰性の両方の生物の混合物からなるポリクローナル創傷部位感染の治療選択肢を改善すると予測された。
【0085】
その仮説の予備試験として、屡々創傷部位感染の原因となる2種類のグラム陰性菌であるアシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)及び緑膿菌(P.aeruginosa)用いて、2%ムピロシン、1%ネオマイシン、及び2%ムピロシン+1%ネオマイシンについて阻害ゾーンアッセイを行った。
図5に示すように、2%ムピロシン軟膏は、A.バウマニ株株98−37−09または緑膿菌PA01株の増殖を制限しないように見えた。逆に、ネオマイシンは、単独またはムピロシンと組み合わせて、両方の生物の増殖を制限し、2%ムピロシン+1%ネオマイシンの組み合わせが複雑な創傷感染の予防及び/または治療に有用であり得ることを示した。両方の薬剤は、独立して及び組み合わせて、試験した表皮ブドウ球菌、大腸菌、及びストレプトコッカス・ピオゲネス株の増殖も同程度に制限した(データは示さず)。
【0086】
実施例8
創傷治癒に対するムピロシン及びネオマイシンの効果
上記の結果は、ムピロシン及びネオマイシンからなる組み合わせ軟膏が抗菌効力を改善し、ムピロシン耐性を克服し、ムピロシン(単独)と比較して他の細菌種に対する活性スペクトルの増加を示す可能性が高いことを示す。このような組み合わせ治療剤は、創傷設定の状況において最も価値がある可能性があると考えられる。この点に関して、ムピロシン及びネオマイシンは両者共にFDAが局所使用について認可した抗生物質であるが、両方の薬剤の混合物が創傷部位において明らかに有害な副作用を示すかどうかを評価する手段として、両薬剤の単独及び組合せを評価した。そのために、皮膚創傷を作製し、動物を賦形剤、2%ムピロシン、1%ネオマイシン、または前記組合せ(2%ムピロシン+1%ネオマイシン)で1日2回、合計14日間処置した。動物は毎日、警戒心及びグルーミング、体重、並びに創傷サイズについて評価された。
【0087】
ビヒクル含有軟膏と比較して、処置群(各処置についてN=3)の何れにおいても、創傷収縮の有意差は観察されなかった(
図6A及び6B)。使用した軟膏にかかわらず、創傷サイズは病変形成後3日で増加した後、創傷収縮は線形的に増加した結果、処置の14日後に創傷治癒は完了し、毛の成長が回復した。同様に、何れの処置群においても、体重の有意な相違は何れの動物についても記録されなかった(
図6C)。
【0088】
総合すると、これらの結果は、ムピロシンとネオマイシンの組み合わせが、抗菌効力、抗生物質耐性の克服、及び他の細菌種に対する活性の抗菌スペクトルに関して、何れかの薬剤単独よりも優れていることを実証している。当該組み合わせは、明らかな動物細胞毒性を示さない。
【0089】
実施例9
RNaseP阻害剤のRNPA2000は、鼻内除菌または創傷除菌のマウスモデルにおいて有効ではない。
上記のように、RNPA2000は、以前は素晴らく臨床的に有望なRNaseP阻害剤として同定されていた。事実、以前の研究により、この薬剤は現代の黄色ブドウ球菌臨床分離株及び他の問題のあるバクテリア病原体に対して抗菌活性を示すことが示されてきた。更に、RNPA2000は、ネオマイシンと比較してムピロシン(FIC測定値<0.5)との優れた相乗効果を示す。しかし、RNPA2000単独では、鼻内除菌または創傷除菌のマウスモデルにおいて、黄色ブドウ球菌株UAMS−1に対する抗菌活性を示さない(示さず)。同様に、ムピロシンと組み合わせて試験した何れの濃度のRNPA2000も、これらの何れのモデルにおいても相乗効果を及ぼさない。代表的なデータを
図7A及び
図7Bに示すが、ここでは2%ムピロシンが鼻及び傷モデルにおける除菌特性をそれぞれ示すが、軟膏製剤中で可溶性のまま残る最も高い濃度の混合物(2%ムピロシン及び2%RNPA2000)は如何なる相乗効果も示さない。
【0090】
これらの観点から、RNPA2000の失敗によって、インビボ環境における黄色ブドウ球菌のRNaseP機能依存性がないことを説明でき、その結果、化学的介入による該酵素活性の阻害は、前記宿主環境にあるときには当該生物に対して有害な効果がなく、結果的に治療上の価値はないことが予想された。RNPA2000の教示を拡張することにより、当初は同じことがムピロシン及びネオマイシンの組み合わせにも当てはまることが同様に予想された。それにも拘わらず、抗菌性パイプラインの重大な欠点及び現在の開発下での限定された治療法は、これらの予測に取って代わるものではなく、上記で詳述したネオマイシン+ムピロシンの組合せを特徴付けすることの進行を促した。
【0091】
実施例10
皮膚感染を伴うヒト臨床分離株中の黄色ブドウ球菌に対するムピロシン及びネオマイシン併用軟膏の抗菌特性
ヒト被験体が黄色ブドウ球菌の皮膚感染症を有する場合の臨床分離株において、プレートアッセイを実施した。前記臨床分離株からの細菌を寒天プレート上に広げ、40マイクロリットルの軟膏を中央に載せた。48時間のインキュベーション後、抗生物質に媒介された細胞増殖阻害の領域が見られる。1%ネオマイシンまたは2%ムピロシンは耐性コロニー形成を示すが、組み合わせの場合についてはそうではない(
図8A)。
【0092】
臨床分離株中のバクテリアもまた、ムピロシン、ネオマイシン及びこれら2つの組み合わせでの処理の前後で細胞生存性について試験した(殺傷曲線アッセイ)。黄色ブドウ球菌菌株BAA−1708をこの試験に使用した。
図8Bは、治療前(PT)、並びに賦形剤(DMSO;青色)、2%ムピロシン(赤色)、1%ネオマイシン(緑色)またはそれらの組み合わせ(紫色)による治療の1時間後における、黄色ブドウ球菌株BAA−1708の細胞生存数を示す。結果は、前記組み合わせが、何れかの薬剤単独よりも迅速な殺菌効果を表すことを示している。標準偏差が示されている。