(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る航空機着陸統合支援システム(以下「本統合支援システム」という。)Sの概略を示す図である。本図で示すように、本統合支援システムSは、補正GPS基準局1と、補正GPS移動局21を含む航空機着陸誘導支援システム2(本図ではこれを搭載した航空機を示している)と、航空機管制システム3と、を有するものである。本統合支援システムは、従来のILSに比べ強力な誘導電波を発する機器が不要であり、より簡便なシステムとなる。特に、着陸する航空機側(航空機着陸誘導支援システム側)としても、ILS誘導電波を受信するための高価な機器の購入が不要であり、補正GPS移動局とこれに接続される情報処理装置程度の装置を設置するだけで高性能な着陸支援を受けることが可能となる。以下、本統合支援システムの各構成要件について説明する。
【0022】
まず、本統合システムSでは、上記の通り、補正GPS基準局1を有する。補正GPS基準局1は、地球上における座標が判明している位置に固定され、その座標よりジオイド高補正が行われ正確な標高を得る。そして、その位置に関する情報を固定位置座標として記録しておくとともに、GPS衛星GからのGPS信号を別に受信してこれに基づきGPS位置座標を求め、固定位置座標データとGPS位置座標に基づき差分情報を作成し、この差分情報をRTK−GPS信号として出力することができる装置であることが好ましい態様である。また、補正GPS基準局1には、疑似GPS送信機が付加されており、電波高度計の代替機能を有しており、最低高度2500フィート以下で受信することが可能で正確な対地高度を得ることが可能となる。なお「標高」とは、当該位置のジオイド高からの距離を意味する。
【0023】
補正GPS基準局1の構成は、上記の機能を有するものである限りにおいて限定されない。具体的には、後述の図からも明らかであるがGPS受信機11と、RTK−GPS送信機12と、疑似GPS送信機13と、これらに接続されて所定のデータ処理を行うことができる情報処理装置14を備えて構成されていることが好ましい。更に、情報処理装置14には、上記の固定位置座標に関する情報を含む固定位置座標データを記録し、GPS衛星からのGPS信号を電子的に処理可能なデータ(GPS信号データ)に変換し、さらにこれに基づき求められる位置座標に関する情報を含むGPS位置座標データを作成及び記録し、この固定位置座標データとGPS位置座標データに基づき座標間の差分情報を含むRTK−GPS信号データ、更には、ジオイド高補正を行った後の固定位置座標の情報を含むデータ(疑似GPS信号データ)を記録することができる電子回路を備える又はプログラムが格納された記録媒体を備えるものであることが好ましい。もちろん、RTK−GPS信号データには、ジオイド高補正を行った後の座標(高度)の情報を含ませておくことが好ましい。
【0024】
補正GPS基準局1は、上記の構成によって、実際のGPS信号によって求められるGPS位置座標と、予め判明している固定位置座標との間の差分情報、ジオイド高補正が行われた正確な標高を含む情報、を随時発信し続けることが可能となる。一般に、GPS信号と実際の位置とのずれは様々な要因があるが、GPS信号自体によって生じるずれが非常に大きなものである。そのため、このGPS信号自体に含まれるずれは、補正GPS基準局を中心とする一定の範囲内において同じであると推定し、このずれを相殺することによってより正確な位置座標を求めることができる。また、GPS信号自体にはジオイド高に関する情報が含まれておらず、これを考慮しないことは航空機の安全な着陸において重大な結果をもたらしてしまう虞があるためこの補正を行うことが重要である。より具体的には、補正GPS基準局1は、GPS信号に基づく計算により取得されるGPS位置座標と、予めわかっている固定位置座標の間の差分を取るとともに、ジオイド高補正が行われ正確な標高を求め、この差分情報を発信してRTK−GPS送信機、疑似GPS信号送信機13により補正GPS移動局に出力する。一方、補正GPS移動局21は、この差分情報(RTK−GPS信号)と、自信が受信するGPS信号によって求められる計算によるGPS位置情報を考慮して少なくとも緯度及び経度の情報を得るとともに、疑似GPS信号に基づいて高度情報、少なくともジオイド高補正を行った後の情報を得ることで、自身の位置を正確に把握することができるようになる。特にRTK−GPS信号は差分情報であるためデータ量は少なく抑えることもでき、即時性を確保することができる。
【0025】
また、上記の記載からも明らかであるが、固定位置座標データは、より詳細には、緯度に関する情報を含む緯度データ、経度に関する情報を含む経度データ、及び高度に関する情報を含む高度データを含むことが好ましく、高度データには、ジオイド高補正が行われ正確な標高に関する情報が含まれていることが更に好ましい。
【0026】
ここで、「ジオイド高」とは、測量法によって平均海面を仮想的に陸地へ延長した面(ジオイド)からの高さをいい、標高を求める基準となる高さをいう。すなわち、標高は、その位置とジオイド高との差分をいう。また、ジオイド高については、日本国の国土地理院におけるデータベースに記録されており、緯度及び経度を定めればそのジオイド高及び標高に関する情報を得ることができる(例えばhttps://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/geoid/calcgh/calcframe.html)。
【0027】
一般に、GPS信号により取得される位置情報は、上記の通り、地球楕円体モデルGRS80の楕円体面を基準にしているため、このジオイド高における補正を行わなかった場合、最大で約85mの突出と約105mの凹みが存在することになる。そのため、本統合支援システムでは、上記ジオイド高補正を行うことでより正確な位置を求めることができるようになる。
【0028】
また、上記の記載のとおり、補正GPS基準局1は、GPS信号を受信したのち、計算によって自身の位置情報を含むGPS位置座標データを求める。このGPS位置座標データについても、上記固定座標データと同様、緯度に関する情報を含む緯度データ、経度に関する情報を含む経度データ、及び、高度に関する高度データを含むことが好ましく、より好ましくはジオイド高補正が行われ正確な標高高度に関する情報を含む高度データを含む。
【0029】
また、上記の記載から明らかであるが、補正GPS基準局1は、上記固定座標データと上記計算座標データに基づき座標の差分情報を含む差分データであるRTK−GPS信号データを作成する。このRKT−GPS信号データには、緯度の差に関する情報を含む緯度差データ、経度の差に関する情報を含む経度差データ、及び、高度の差に関す情報を含む高度差データを含むことが好ましい。なお、この高度データには、ジオイド高補正が行われ正確な標高高度との差に関する情報を含むものであることがより好ましい。このようにすることで、航空機はGPS信号を受信したのち、ジオイド高補正を含めた補正を行うことができ、正確な現在の標高を確認できる。
【0030】
なお、上記ジオイド高補正のほか、設置位置に対する設置高度情報の補正を行うことも好ましい。補正GPS基準局及び着陸接地点が地表に設置されている場合はそのままのジオイド高補正で十分な正確性を保つことが可能である一方、この補正GPS基準局又は着陸地点が地表から高い位置に設置されていた場合、この高さ補正を行うことでより正確な高さを把握することが可能となる。
【0031】
ところで、ジオイド高補正のジオイド高の値は、上記の通り、場所によって異なるため、理想的には基準局、着陸接地点、航空機等、その場所毎に異ならせて正確な補正を行うことが好ましい。しかしながら、例えば航空機等は時々刻々その位置を変化させるため、その航空機の場所のジオイド高を基準局側にて調べ、その補正を行いつつ所定のデータを送信することは極めて困難である。一方、航空機にとって極めて重要な高さが着陸接地点からの高さであり、この着陸接地点からどの程度の高さにいるのかということが重要である。そのため、この航空機に対するジオイド高補正は、着陸接地点における標高に関する補正データであることが好ましい。このようにすることで簡便かつ正確に補正を行うことができるようになる。この場合のイメージを
図2に示しておく。
【0032】
また、上記したとおり、補正GPS基準局1は、疑似GPS送信機13を備えており、航空機に対し、GPS信号と同様のフォーマットの疑似GPS信号を出力する。この疑似GPS信号にはその発信した座標情報及びその時刻情報が含まれており、この疑似GPS信号を受信した航空機は、その補正GPS基準局1と航空機との距離を把握することができる。そして、その距離を把握すれば、RTK−GPS信号により求めた正確な緯度情報及び経度情報からその補正GPS基準局1の標高との高度差に関する情報を得ることができるようになる。ここで「疑似GPS送信機」は、GPS受信機が受信するGPS信号と同様のフォーマットによる疑似的なGPS信号を送信することができる機器であり、出力する信号のフォーマットを整えるだけで通常の信号送信機を改良することで容易に実現可能である。この場合のイメージを
図3に示す。
【0033】
また、補正GPS基準局1は、RTK−GPS信号及び疑似GPS信号が、飛行場内の滑走路及び着陸のための動作を行う範囲をカバーすることができる位置に設置されていることが好ましい。具体的には、着陸対象となる滑走路全体及びその進入コース半径10km程の距離をカバーすることができる位置に固定接地されていることが好ましい。半径10km程度であれば十分効果的に航空機の着陸支援を行うことができる。
【0034】
また、補正GPS基準局1の数は限定されるものではない。1つの補正GPS基準局を配置することで十分な精度を確保することができるが複数存在してもよい。複数存在させることでより正確な座標測量が可能となる。補正GPS基準局1を3局以上設けられる場合、着陸態勢に入っている航空機は地上疑似GPS信号のみの測位によって、電離層・対流圏誤差、エフェメリスの誤差の影響を受けず、正確な測位にて誤差の少ない着陸誘導経路を得る事が可能となる。なお、補正GPS基準局同士の間隔は100m以上であることが好ましい。なお複数の補正GPS基準局を配置する場合、その補正GPS基準局の識別番号情報を含む識別番号データを記録しておくことが好ましい。
【0035】
また、上記RTK−GPSに加えて又は代えて、準天頂衛星システム「みちびき」を使って高精度に測位できる測位方式としてPPP−RTK方式を採用してもよい。これは、近接の基準局のデータを利用せずに、搬送波位相で数センチメートルの精度を達成する方式である。これは二重位相差などを使用せず、衛星の精密歴(軌道・時計)が与えられるものとして、2周波で電離層遅延量の影響のない観測値を作り出して、測位を行うことができる。これは、受信機側のソフトの比重が大きくなること、高速移動する航空機を測位する場合、L6(LEX)信号のデコードに時間を要するため、測位に遅延が発生するリスクはあるが、 PPPの利点は、近接基準局が必要ないという点にある。
【0036】
また、本統合システムSでは、航空機着陸誘導システム(以下「本誘導支援システム」という。)2を有する。本誘導支援システム2を含む本統合システムSの機能ブロック図について
図4に示しておく。
【0037】
上記図で示すように、本誘導支援システム2は、補正GPS移動局21と、表示部221を備え、補正GPS移動局21から受信したRTK−GPS信号、疑似GPS信号を処理して所定の表示を行う情報処理装置22と、を有している。具体的に本誘導支援システム2は、時々刻々と座標を変えて移動する航空機に搭載されるものである。
【0038】
本誘導支援システム2の支援対象となる航空機とは、浮遊可能であって目標地点に着陸することが可能な移動体である限りにおいて限定されるわけではなく、例えば飛行機、回転翼航空機、飛行船、滑空機、超軽量動力機、更にUAV(Unmanned aerial vehicle:無人航空機)であってもよい。
【0039】
本誘導支援システムは、補正GPS移動局21を含む。補正GPS移動局21は、上記補正GPS基準局1と同様の構成を採用することができるが、その座標(位置)が刻々と変化する移動体に設置される点が異なる。具体的に、補正GPS移動局21は、GPS衛星からのGPS信号を受信するためのGPS受信機211と、RTK−GPS信号を受信するためのRTK−GPS212受信機と、疑似GPS送信機からの疑似GPS信号を受信する疑似GPS受信機213、を備えていることが好ましい。なお、GPS受信機211、RTK−GPS受信機212、疑似GPS受信機213はこれらの信号を受信できる限りにおいて限定されず、両方の機能を備えて一体に構成されたものであってもよい。
【0040】
また、本誘導支援システムでは、航空機の進行方向や向きを把握するためにジャイロスコープ23、地球の中心に対する傾斜角を測定するために加速度センサー24、を設けている。このようにすることでGPS測位の精度を向上することが可能となる。特にジャイロスコープによると、機首方向データを得ることが容易となる。また、具体的に機首方向データには、機首の地表に対する角度の情報を含む機首角度データ、機首が向いている方向に関する情報を含む機首方向データを備えていることが好ましく、これらのデータの正確性を確保する観点から加速度センサーと一対で測定を行うことが好ましい。
【0041】
また、本誘導支援システムでは、情報処理装置22を備えている。情報処理装置は、入力された情報に基づき、定められた一定の出力を行うことのできる回路が複数基板上に搭載されたいわゆる集積回路を含むものであってもよいが、いわゆるコンピュータであることが好ましい。情報処理装置22がいわゆるコンピュータである場合の例については後述する。
【0042】
なお、本誘導支援システム2の情報処理装置22では、表示部221を備えている。表示部221は、情報処理装置22の表示部221以外の他の構成によって作成された各種データの入力を受け付け、これに基づき画像として表示させるためのものである。
【0043】
表示部221としては、一般的に使用される画像表示装置を用いることができ、具体的には液晶ディスプレイ、有機LEDディスプレイ、無機LEDディスプレイ、等を用いることができるがこれに限定されない。
【0044】
また、本誘導支援システム2の情報処理装置22は、いわゆるコンピュータである場合、限定されるわけではないが、例えばCPU(中央演算装置)、ハードディスクやソリッドステートドライブ(SSD)等の記録媒体、メモリ等の一時的記録媒体、ディスプレイ等の表示装置、キーボードやマウス等の入力装置、これらを接続するバス等の接続配線を備えたものであることが好ましい。更に具体的に本方法は、上記ステップを実行するためのコンピュータプログラムを上記コンピュータの記録媒体に記録し、これをメモリ等の一時的記録媒体に読み込みCPUによって演算処理させることにより実現することができる。
【0045】
また、上記のコンピュータは、いわゆるノートパソコンやデスクトップパソコンであってもよいが、近年普及が進んでいる携帯情報端末(いわゆるスマートフォンやタブレット端末)であってもよい。携帯情報端末であれば、上記の通り、表示部と上記各種構成とが小型かつ一体に形成されており、入手が簡単であり、持ち運びや航空機への設置を容易にすることができる。更に、当該携帯情報端末において本方法を実行するプログラムをいわゆるアプリとして記録、表示させ、このアプリを起動することで上記各機能を実行させることもできる。
【0046】
また、情報処理装置22の物理的な構成は上記のとおりであるが、上記の記録媒体にプログラムを格納しておき、これを実行させることにより各種手段として機能させるものとしてもよい。具体的には、情報処理装置22の記録媒体に、(S21)着陸経路情報を含む着陸経路データを記録する手段、(S22)補正GPS移動局の信号に基づき現在位置情報を含む現在位置情報データを記録する手段、(S23)着陸経路データ及び現在位置情報を情報処理装置の表示部に表示する手段、として機能させるコンピュータプログラム(以下「本プログラム」という。)を記録し、使用者の要求に応じてプログラムを実行させることで各種手段として機能させることができる。
【0047】
本プログラムを実行することで、情報処理装置は、(S21)着陸経路情報を含む着陸経路データを記録する手段を有するものとなる。着陸経路情報とは、誘導支援システム2が搭載された航空機が着陸する経路をいい、より具体的には、着陸するために通過する理想的な座標が集合した情報をいう。すなわち、着陸経路データは、着陸するために通過する理想的な連続した座標情報を含むデータをいう。なお、着陸経路情報の形状としては、理想的な座標位置を一本の線で定めた三次元的な線(理想着陸経路線)であってもよいが、ある程度の幅を持って定めた立体的形状の三次元的な立体(許容着陸領域)で表現されていることが着陸操作に余裕を持たせることができる観点から好ましい。特に、三次元的な立体とする場合、理想着陸接地点の座標を頂点とする錐体であることは好ましい一例である。この場合における着陸経路のイメージについて
図5に示しておく。
【0048】
また本手段において、着陸経路データは、より具体的には、あらかじめ着陸対象となる飛行場及びその滑走路における着陸基準点の情報を含む着陸基準点データ、着陸基準点からの進入角度情報を含む進入角度データ、着陸基準点からの進入方向情報を含む進入方向データ、を記録しておき、これに基づき着陸経路データを計算して作成し、記録しておくことが好ましい。この場合における着陸経路のより具体的なイメージについて
図6に示しておく。またこの場合において、着陸基準点データは、上記固定座標データと同様、緯度に関する情報を含む緯度データ、経度に関する情報を含む経度データ、及び、高度に関する情報を含む高度データを含むことが好ましい。
【0049】
また、本手段において、着陸基準点データの高度データには、着陸接地点におけるジオイド高補正及び着陸接地点の設置高補正が行われていることが好ましい。GPS信号における高度データは、上記の通り、地球楕円体モデルGRS80の楕円体面を基準にしているため、このジオイド高における補正を行わなかった場合、最大で約85mの突出と約105mの凹みが存在することになる。すなわち、仮に、上記GRS80の楕円対面のみで設定すると、地中又は地表からかなり離れた上空が着陸接地点となってしまうことになるため、着陸地点におけるジオイド高さ、更には、その着陸地点の設置高さの補正を区分けることで、より正確な位置を求めることができるようになる。
【0050】
そして、上記したように、RTK−GPS信号データ及び疑似GPS信号データのそれぞれにも、上記着陸基準点におけるジオイド高補正及び着陸接地点の設置高度補正が行われていることが好ましい。本来であれば、補正GPS基準局から発せられるRTK−GPS信号及び疑似GPS信号には、航空機の位置における正確な標高を求めるため、当該航空機の位置におけるジオイド高補正を行うべきである。しかしながら、補正GPS基準局から航空機の正確な位置を判定することは困難である一方、着陸においては、着陸接地点との高度差が重要であるため、航空機に対しては、着陸基準点におけるジオイド高の補正を行っておくことが好ましい。
【0051】
また、本図で示すように、進入角度はある一定の許容範囲(許容角度)を定めておくことが好ましく、また、進入方向においても一定の許容範囲を定めておくことが好ましい。このように進入角度及び進入方向に範囲を(許容角度)設けておくことで錐体とすることができる。なおこの錐体に関しては、円錐形であっても、四角錐等の角錐形であってもよい。
【0052】
また、上記の記載から明らかなように、航空機は必ずしも一つの飛行場の一つの滑走路において離発着するわけではない。一般に、一つの都市において複数の飛行場が存在し、更には一つの飛行場であっても複数の滑走路が設けられている場合がある。そのため、本着陸経路データを記録する手段においては、あらかじめ、飛行場を区別するための飛行場の識別情報を含む飛行場識別データ、更にはその滑走路を識別するための情報を含む滑走路識別データを備えていることが好ましい。そして、このそれぞれに対応して、上記着陸基準点データ、進入角度データ、進入方向データ等を設定しておくことが好ましい。なお、上記補正GPS基準局の識別番号データを付している場合、この識別番号データと飛行場識別データは同じものであってもよい。
【0053】
また、(S22)補正GPS移動局の信号に基づき現在位置情報を含む現在位置情報データを記録する手段によって、本プログラムは数センチメートル程度の精度で現在位置情報を得ることができる。具体的には、GPS受信機によりGPS信号を受信して現在における自身の座標データを計算により求める一方、RTK−GPS受信機によってGPS信号との間の差分情報を受け取る。これにより、より正確な現在位置情報を現在位置情報データとして得ることができる。
【0054】
より具体的に説明すると、まず、GPS受信機によりGPS信号を受信して計算により、現在における自身の計算座標データを求める。この計算座標データについては、上記補正GPS基準局1の固定座標データと同様、緯度に関する情報を含む緯度データ、経度に関する情報を含む経度データ、及び、高度データを含むことが好ましく、高度データには、上記の通り、着陸接地点を基準としてジオイド高補正が行われ正確な標高高度に関する情報を含む高度データを含むことが更に好ましい。
【0055】
一方、補正GPS移動局は、上記RTK−GPS信号を受信してRTK−GPS信号データを取得する。この信号に含まれる情報は、上記のとおりである。
【0056】
そして、補正GPS移動局は、上記得た計算座標データと上記RTK−GPS信号データを計算して、正確な現在位置情報データを記録する。
【0057】
また、この場合において、上記ジャイロスコープ、加速度センサーなどにより得られる機首方向データを記録しておく。これにより、現在の機首角度、機首方向を情報として得ておくことで表示部に対する表示を正確に行うことができるとともに、横風などの影響を考慮することが可能となる。詳細については後述する。
【0058】
また、本情報処理装置は、本プログラムを実行することにより、(S23)着陸経路データ及び現在位置情報を情報処理装置の表示部に表示する手段として機能する。この画面の具体的な一例について
図7に示しておく。
【0059】
まず、本手段では、現在位置情報を表示部に表示させる。現在位置情報は、上記のように緯度情報、経度情報、高度、対地高度情報を数字として表現しておくことも好ましいが、現在の位置情報から確認できる前方景色の情報を含む表示を行うことが好ましい。具体的には、緯度、経度、高度、対地高度、機首方向、機首角度を考慮して、航空機から確認できる前方景色を描画する。より具体的に、表示部には、現在位置情報として、地表と空、更にはこれらを区分する地平線を表示させておくことが好ましいが、更に、滑走路が表示可能である場合は滑走路を遠近法に用いて表示させておくことが好ましい。
【0060】
またこの手段において、着陸経路情報は、上記表示された現在位置情報に表示される。着陸経路情報は、上記のような線または錐体を直接表示することとしてもよいが、航空機の操縦者により分かり易くするために、地表と空、更にはこれらを区分する地平線を表示しつつ、地表上に着陸地点(着陸基準点)を定め、当該着陸地点から遠近法により広がる理想的着陸経路を表示させる方法としておくことも好ましい。このようにすることで分かり易く容易に着陸経路情報を表示させることが可能となる。
【0061】
また、本統合システムSでは、航空機管制システム(以下「本管制システム」という。)3を有する。ただし、実際の着陸に関して航空機管制棟及びその人員は必要であるが、情報およびデータの授受を行う本統合システムSの構成要件として、航空機管制システムは必ずしも設けなくてもよい。
【0062】
本管制システム3の構成要件としては、限定されるわけではないが、補正GPS基準局から発せられるRTK−GPS信号及び補正GPS移動局から発せられる信号を受信し、これらの信号に基づきこれらの位置情報を含むデータを作成し、表示部に表示させることのできる情報処理装置、いわゆるコンピュータを設けておくことが好ましい。このようにしておくことで、実際に着陸を予定している航空機が把握している情報を管制側においても入手できるようになる。
【0063】
具体的には、補正GPS基準局からはどの程度のずれが生じているのかを示すRTK−GPS信号を受信し、補正GPS移動局からは、現在の移動体の位置情報、更に好ましくは着陸経路情報を取得することでどの程度の正確性をもって着陸を行うのかを判断することが容易となる。また、本管制システム3においては、この着陸経路情報と移動体の位置情報の差分データを取得することで、移動体の着陸動作に異常がないか確認を取りつつ必要であれば指示を出すことが可能となるといった利点がある。
【0064】
以上、本実施例によって、正確でより安価に導入することができる航空機着陸誘導支援システム及びこれを含む航空機着陸統合支援システムを提供することができる。
【0065】
また、本発明では、上記した通り航空機であれば適用可能であるところ、当然に回転翼航空機の着陸誘導支援も可能である。この場合における着陸経路のより具体的なイメージについて
図8に示しておく。このように回転翼航空機に対しても同様なシステムを構築することが可能である。
【0066】
また、本発明は、これを応用することで様々な場面に適用可能である。より具体的には、空港における滑走路が典型的に適用することが可能であるが、必ずしも空港には限られず、例えば上記回転翼航空機の例で考えると、いわゆるドクターヘリ等は着陸する位置が救護対象者のいる位置に応じて変動することとなるため、任意の位置を設定することでより確実に着陸を行うことが可能である。さらに、船上に着陸する航空機であれば、その船上の特定位置を着陸基準点と定めることでより安全に着陸することが可能となる。また、海上・湖上においても同様である。
【解決手段】本航空機着陸誘導支援システムは、補正GPS移動局21と、表示部を備え、補正GPS移動局から受信したRTK−GPS信号を処理して表示部に所定の表示を行う情報処理装置と、を有する。また本航空機着陸統合支援システムは、補正GPS基準局1と、疑似GPS信号送信機と、航空機着陸誘導支援システムと、を有し、航空機着陸誘導システムが有する情報処理装置は、情報処理装置に、着陸経路情報を含む着陸経路データを記録する手段、RTK−GPS信号に基づき現在位置情報を含む現在位置情報データを記録する手段、着陸経路データ及び現在位置情報を情報処理装置の表示部に表示する手段、として機能させるコンピュータプログラムが格納されている。