【文献】
Yamawaki, K., et al.,A novel series of parenteral cephalosporins exhibiting potent activities against Pseudomonas aeruginosa and other Gram-negative pathogens: Synthesis and structure-activity relationships,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2007年,vol.15,pp. 6716-6732
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は以下のスキームで示される。
なお、本明細書中、化合物と化合物の反応させることには、その塩またはそれらの溶媒和物を反応させることを含む。また、以下の反応は単離を伴わず「工程を連続して」行ってもよい。「工程を連続して」行うとは、前工程の反応により生成した化合物を単離することなく、次工程を行うことを包含する。例えば、ワンポットで2つの工程を行うことが挙げられる。
【化24】
(式中、各記号は前記と同意義)
【0012】
(第1’工程)
化合物(VII)に、所望により塩基存在下、メシルクロライドを反応させることにより化合物(VIII)が得られる。
塩基としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。有機塩基または無機炭酸塩等の無機塩基を用いることができる。好ましくは、有機塩基を用いることができる。例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルイミダゾール、N−メチルモルホリン等が挙げられる。好ましくはトリエチルアミンである。
塩基は、化合物(VII)に対して、約1〜2モル当量を用いて反応させればよい。
反応溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。例えば、アミド系溶媒(例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン等)、酢酸エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸プロピル等)、炭化水素系溶媒(例:トルエン、ベンゼン、ヘキサン等)、エーテル系溶媒(例:シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、ケトン系溶媒(例:アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド等から選ばれる1以上を用いることができる。好ましくはアミド系溶媒であり、より好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミドである。
反応温度は、特に制限されないが通常、約−20〜100度、好ましくは約−10〜0度である。
反応時間は、特に制限されないが、通常、0.5〜20時間、好ましくは約0.5〜2時間である。
メシルクロライドの使用比率は、化合物(VII)に対して、好ましくは約1〜5モル当量、より好ましくは約1〜1.5モル当量である。メシルクロライドは一気に添加しても滴下により添加してもよい。
得られた化合物(VIII)は単離せずに、次工程に使用してもよい。
【0013】
(第1工程)
化合物(VI)に、所望により塩基存在下、化合物(VIII)を反応させることにより化合物(V)が得られる。
当該反応は、通常のアミド化反応の条件に従って行えばよい。
塩基としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。有機塩基または無機炭酸塩等の無機塩基を用いることができる。好ましくは、有機塩基を用いることができる。例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルイミダゾール、N−メチルモルホリン等が挙げられる。好ましくはN−メチルモルホリンである。
塩基は、化合物(VII)に対して、約1〜5モル当量を用いて反応させればよい。好ましくは、約1〜2モル当量である。
反応溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。例えば、アミド系溶媒(例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン等)、酢酸エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸プロピル等)、炭化水素系溶媒(例:トルエン、ベンゼン、ヘキサン等)、エーテル系溶媒(例:シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、ケトン系溶媒(例:アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド等から選ばれる1以上を用いることができる。好ましくはアミド系溶媒、酢酸エステル系溶媒またはニトリル系溶媒であり、中でもN,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチルまたはアセトニトリルが好ましい。より好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミドとアセトニトリルの混合溶媒である。
反応温度は、特に制限されないが通常、約−20〜100度、好ましくは約−10〜0度である。
反応時間は、特に制限されないが、通常、0.5〜20時間、好ましくは約0.5〜2時間である。
化合物(VIII)の使用比率は、化合物(VI)に対して、好ましくは約0.8〜5モル当量、より好ましくは約0.8〜1.5モル当量である。
得られた化合物(V)は単離せずに、次工程に使用してもよい。
【0014】
(第2工程)
化合物(V)に過酸を反応させることにより、1−スルホキシドのS体である化合物(IV)が得られる。
反応溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。例えば、アルコール系溶媒(例:メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、アミド系溶媒(例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン等)、酢酸エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸プロピル等)、炭化水素系溶媒(例:トルエン、ベンゼン、ヘキサン等)、エーテル系溶媒(例:シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、ケトン系溶媒(例:アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、水等から選ばれる1以上を用いることができる。溶媒は、必要に応じて水との2層溶媒や含水溶媒として用いることができる。好ましくはハロゲン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒またはニトリル系溶媒およびアミド系溶媒の混合溶媒である。より好ましくは、ジクロロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドンまたはN,N−ジメチルアセトアミドである。さらに好ましくは、アセトニトリル、またはアセトニトリルおよびN,N−ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドンの混合溶媒である。該混合溶媒の割合(アセトニトリル:N,N−ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドン)は、好ましくは5:1〜5:5、より好ましくは5:4〜5:5である。溶媒としてアセトニトリルを用いる場合、S体選択性を向上させることができる。
反応温度は、特に制限されないが好ましくは約−80〜10度、より好ましくは約−40〜0度、さらに好ましくは約−10〜0度である。反応温度は、S体の選択性の面からは低い方が好ましいが、例えば、溶媒の選択によって、工業的に制御可能な温度(例:約−10〜0度)に設定することができる。
反応時間は、特に制限されないが好ましくは約0.5〜10時間、より好ましくは約1〜3時間である。
【0015】
過酸としては、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、過安息香酸、過酢酸、過酸化水素水、モノペルオキシフタル酸マグネシウム6水和物などが挙げられる。好ましくは過酢酸である。また、過酸を加える際に、過酸を必要に応じて溶媒に溶解させ滴下することが好ましい。滴下することで、滴下と同時に化合物(V)に過酸を反応させることができ、安全に反応熱などをコントロールすることができるので、大量製造時における爆発等の危険を回避できる。
過酸の使用比率は、化合物(V)に対して、好ましくは約1〜2モル当量、より好ましくは約1〜1.2モル当量である。
反応効率や収率の向上のために、必要に応じて、過酸以外の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、硝酸、硫酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−メチル‐2−ブテン、レゾルシノール、スルファミン酸等が挙げられる。好ましい添加剤としては、硫酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
本反応によって、セフェム骨格の1位がS体のスルホキシドに選択的に変換される。S体の変換率は、好ましくは約80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約93%以上である。高比率のS体として得られた化合物(IV)は、単離せずに次工程に使用してもよいが、好ましくは塩、溶媒和物またはそれらの結晶として単離される。所望により、このような結晶化等の方法で精製することによって、非常に高純度のS体が得られる。
【0016】
結晶化方法(過飽和状態に移行する方法)としては、特に制限されず、例えば、蒸発法(晶析系から晶析溶媒を蒸発する方法)、冷却法(晶析系(又は化合物(IV)溶液を冷却する方法)、貧溶媒添加法(晶析系に化合物(IV)の貧溶媒を添加する方法)、種晶添加法(晶析系に化合物(IV)含有の種晶を添加する方法)などが例示できる。
例えば、蒸発法(化合物(IV)と晶析溶媒とを含む晶析系(又は溶液)から、晶析溶媒を蒸発して過飽和状態にし、この過飽和状態から結晶化する方法)や冷却法(化合物(IV)と晶析溶媒とを含む晶析系(又は溶液)を冷却して過飽和状態にし、この過飽和状態から結晶化する方法)などから得られた種晶を得た後、化合物(IV)と晶析溶媒および/または酸に溶解させた溶液に種晶を添加して結晶化する種晶添加法などにより結晶化することができる。
晶析溶媒としては、アルコール系溶媒(例:メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、またはアルコール系溶媒と水の混合溶媒を用いることができる。好ましくは、メタノール、エタノール、またはそれらと水の混合溶媒である。用いる溶媒に応じて、対応する溶媒和物の結晶を得ることもできる。得られた溶媒和物は、自然乾燥、通風乾燥または減圧乾燥をすることにより、無溶媒和物に変換することもできる。乾燥温度は、例えば、室温〜加温下、好ましくは20〜60度であってもよい。乾燥時間は、例えば、0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間(例えば、2〜18時間)程度であってもよい。1−スルホキシドのR体とS体は、各種溶媒に対する溶解度に差があるため、R体に比べてS体の方が結晶化等による1−スルホキシドの単離収率が向上する。また、R体に比べてS体の方が保存安定性等の安定性が高いため、S体の純度を上げておくことにより中間体としてより長期に安定に保存しておくことが可能となる。また、S体の非晶質体に比べてS体の結晶は、保存安定性、着色安定性等の安定性が高く、分解物の生成も抑制される。
さらに次工程の反応において、1−スルホキシドのR体よりもS体を使用することによって、化合物(III)の収率が、好ましくは約10%以上、向上する。
よって、本発明の1−スルホキシドのS体である化合物(IV)の結晶は、工業的中間体として非常に有用である。
【0017】
(第3工程)
化合物(IV)と化合物(X)を反応させることにより、化合物(III)が得られる。化合物(III)も1−スルホキシドのS体である。
反応溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。アミド系溶媒(例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン等)、酢酸エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸プロピル等)、炭化水素系溶媒(例:トルエン、ベンゼン、ヘキサン等)、エーテル系溶媒(例:シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、ケトン系溶媒(例:アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド等から選ばれる1以上を用いることができる。アミド系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましい。中でも、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンまたはテトラヒドロフランが好ましく、さらにN−メチルピロリドンが好ましい。
反応温度は、特に制限されないが通常、約0〜100度、好ましくは約−5〜15度である。
反応時間は、特に制限されないが通常、約0.5〜36時間、好ましくは約3〜24時間である。
【0018】
本反応は、必要に応じて、ハロゲン化アルカリ金属(例えば、沃化アルカリ金属(例:NaI,KI等)、臭化アルカリ金属(例:NaBr、KBr等)など)の存在下に行ってもよい。好ましくは、沃化アルカリ金属である。ハロゲン化アルカリ金属の添加により反応効率が良くなるため、反応時間や使用する試薬の削減や収率の向上が可能となる。
ハロゲン化アルカリ金属の使用比率は、化合物(IV)に対して、好ましくは約1〜5モル当量、より好ましくは約1〜3モル当量である。
本反応は、好ましくは、ホウ酸またはその誘導体であるボロン酸(:R−B(OH)
2); Rはアルキル、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環等の置換基)の存在下で行うことにより、収率が例えば約5%以上向上する。
該炭素環または複素環は好ましくは3〜10員環であり、より好ましくは5〜6員環である。該炭素環または複素環は飽和環でも不飽和環であってもよい。該炭素環または複素環の置換基としては、低級アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル)、ハロ低級アルキル(例:トリフルオロメチル、クロロメチル)、ハロゲン(例:フッ素、塩素)、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、低級アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、t−ブトキシ)、シアノ、ニトロ、スルファモイル、イミノ、ヒドロキシイミノ、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル(例:メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル)、アシル(例:アセチル、ベンゾイル)が例示できる。
ホウ酸またはボロン酸の使用比率は、化合物(IV)に対して、好ましくは約0.1〜0.4モル当量、より好ましくは約0.1〜0.3モル当量である。
得られた化合物(III)は、単離せずに次工程に使用してもよい。
【0019】
(第4工程)
化合物(III)を還元することにより、化合物(II)が得られる。
反応溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。アミド系溶媒(例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン等)、酢酸エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸プロピル等)、炭化水素系溶媒(例:トルエン、ベンゼン、ヘキサン等)、エーテル系溶媒(例:シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等)、ニトリル系溶媒(例:アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、ケトン系溶媒(例:アセトン、メチルエチルケトン等)等から選ばれる1以上を用いることができる。アミド系溶媒が好ましい。中でも、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンが好ましく、さらにN−メチルピロリドンが好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、通常約−40度〜約30度、好ましくは約−10〜 10度である。
反応時間は、特に制限されないが、通常約1〜10時間、好ましくは約1〜5時間である。
還元剤としては、三塩化リン、三臭化リン、塩化アセチルおよび沃化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムならびにヨウ素等が例示されるが、好ましくは三塩化リンまたは三臭化リンである。還元剤は必要に応じて溶媒に溶解させ滴下することが好ましい。滴下することで、滴下と同時に化合物(III)に過酸を反応させることができ、安全に反応熱などをコントロールすることができるので、大量製造時における爆発等の危険を回避できる。
【0020】
(第5工程)
化合物(II)の各保護基を除去することにより、化合物(IA)、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物が得られる。
当該反応は、当業者に周知のアミノ基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基の各脱保護反応の条件に準じて行えばよい。各保護基は、順次、脱保護してよいが、好ましくはワンポット反応で単離工程を経ずに順次脱保護を行うか、または1反応ですべての保護基が除去すればよい。
反応溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。酢酸エステル系溶媒(例:酢酸エチル、酢酸プロピル等)、炭化水素系溶媒(例:トルエン、ベンゼン、ヘキサン等)、エーテル系溶媒(例:シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等)、ハロゲン系溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、ケトン系溶媒(例:アセトン、メチルエチルケトン等)等から選ばれる1以上を用いることができる。溶媒としては、必要に応じて水との2層溶媒や含水溶媒を用いることができる。ケトン系溶媒および/またはエーテル系溶媒が好ましい。中でも、アニソール、メチルエチルケトンが好ましく、さらにアニソールおよびメチルエチルケトンの混合溶媒が好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、通常約−10〜30度、好ましくは約10〜20度である。
反応時間は、特に制限されないが、通常約0.5〜5時間、好ましくは約0.5〜2時間である。
【0021】
脱保護試薬としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸などが例示される。好ましくは、硫酸である。
上記反応に使用できる保護基(アミノ保護基、ヒドロキシ保護基、カルボキシ保護基など)としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis、T.W.Greene著、John Wiley & Sons Inc.(1991年)などに記載されている保護基をあげることができる。保護基の導入および脱離は、有機合成化学で常用される方法(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis、T. W. Greene著、John Wiley & Sons Inc.(1991年)参照)やそれらに準じて行うことができる。
得られた化合物(IA)を含む反応液は、当業者周知の方法に従って後処理や精製を行えばよい。好ましくは、化合物(IA)を含む粗製物に移動相(例えば、アセトニトリル‐水など、所望によりギ酸、酢酸、塩酸、硫酸などの酸を添加していてもよい)を用いてカラム処理することで得られる化合物(IA)を含む溶出液から、所望により、濃縮、結晶化などを行うことにより、酸付加塩(例:塩酸塩、硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、またはこれらの混合酸塩)を単離してもよい。該酸付加塩は水和物等の結晶であってもよい。また該酸付加塩を塩交換反応によってアルカリ金属塩(例:ナトリウム塩)に変換してもよい。すなわち、例えば、化合物(IA)の酸付加塩またはその水和物を含有する溶液に水酸化ナトリウム水溶液または重曹等のNaソースを加え、pHを約5〜6.5に調節し、減圧濃縮および/または凍結乾燥することにより、化合物(IA)のナトリウム塩を得ることができる。
【0022】
製薬上許容される塩としては、例えば、酸付加塩または金属塩などが挙げられる。酸付加塩の該酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはこれらの酸から選択される2種の混合酸などが挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
溶媒和物としては、水和物、アセトニトリル和物などが例示される。
【0023】
アミノ保護基としては、β‐ラクタム系抗菌剤の分野で一般に使用され得る種々のアミノ保護基が使用できる。その具体例としては、t−ブチルジメチルシリル基、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アリル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、ベンズヒドリル基、トリチル基等が例示される。R
1は好ましくはt−ブトキシカルボニル基またはベンジルオキシカルボニル基であり、より好ましくはt−ブトキシカルボニル基である。
【0024】
ヒドロキシ保護基としては、β‐ラクタム系抗菌剤の分野で一般に使用され得る種々のヒドロキシ保護基が使用できる。その具体例としては、ベンジル基、p−メトキシフェニルベンジル基、p−メトキシベンジル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、メチルカーボネート基、イソブチルカーボネート基、ベンジルカーボネート基、ビニルカーボネート基、フェニルカーボネート基、メシル基、トシル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、2−(トリメチルシリル)エトキリメチル基、プロペニル基、フェナシル基、テトラヒドロピラニル基、プレニル基等が例示される。R
4、R
5はそれぞれ独立して好ましくはp−メトキシベンジル基またはプレニル基であり、より好ましくは、p−メトキシベンジル基である。
【0025】
カルボキシ保護基としては、β‐ラクタム系抗菌剤の分野で一般に使用され得る種々のカルボキシ保護基が使用できる。その具体例としては、低級アルキル(例:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル)、低級アルカノイルオキシ(低級)アルキル、(例:アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、バレリルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、ヘキサノイルオキシメチル)、低級アルカンスルホニルオキシ(低級)アルキル(例:2−メシルエチル)、モノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルキル(例:2−ヨードエチル、2,2,2−トリクロロエチル)、低級アルコキシカルボニルオキシ(低級)アルキル(例:メトキシカルボニルオキシメチル、エトキシカルボニルオキシメチル、プロポキシカルボニルオキシメチル、t−ブトキシカルボニルオキシメチル、1−(または2−)メトキシカルボニルオキシエチル)、低級アルケニル(例:ビニル、アリル)、低級アルキニル(例:エチニル、プロピニル)、(置換)アリール(低級)アルキル(例:ベンジル、p−メトキシベンジル、p−ニトロベンジル、フェネチル、トリチル、ベンズヒドリル、ビス(メトキシフェニル)メチル、3,4−ジメトキシベンジル、4−ヒドロキシ‐3,5−ジt−ブチルベンジル)、(置換)アリール(例:フェニル、p−クロロフェニル、トリル、t−ブチルフェニル、キシリル)が例示される。R
2、R
3はそれぞれ独立して好ましくはt−ブチル基、p−メトキシベンジル基、ベンズヒドリル基である。より好ましくは、R
2はt−ブチル基、R
3はp−メトキシベンジル基、ベンズヒドリル基であり、さらに好ましくは、R
3はp−メトキシベンジル基である。
【0026】
さらに本発明は、R
1=t−ブトキシカルボニル、R
2=t−ブチル、R
3=p−メトキシベンジルである化合物(IV)の結晶を提供する。該結晶は、好ましくはメタノール和物、メタノール‐水和物、水和物または無溶媒和物である。該結晶は、好ましくは、以下に示す粉末X線パターンを示す。
回折角度(2θ):4.3±0.2°、10.9±0.2°、12.7±0.2°、14.5±0.2°、16.2±0.2°、18.0±0.2°、18.3±0.2°、21.2±0.2°、25.6±0.2°および26.5±0.2°から選択される少なくとも3本のピークを有する。
好ましくは、回折角度(2θ):4.3±0.2°、10.9±0.2°、14.5±0.2°、18.3±0.2°および21.2±0.2°から選択される少なくとも3本のピークである。
上記パターンを示す結晶は、好ましくはメタノール和物である。
または、回折角度(2θ):4.8±0.2°、14.1±0.2°、14.4±0.2°、14.9±0.2°、16.0±0.2°、17.1±0.2°、17.6±0.2°、20.5±0.2°、25.2±0.2°および33.1±0.2°から選択される少なくとも3本のピークを有する。
好ましくは、回折角度(2θ):4.8±0.2°、14.4±0.2°、14.9±0.2°、16.0±0.2°および20.5±0.2°から選択される少なくとも3本のピークである。
上記パターンを示す結晶は、好ましくは無溶媒和物である。
【0027】
以下に本発明の結晶を特定する方法につき説明する。
特に言及がなければ、本明細書中および特許請求の範囲の記載の数値は、おおよその値である。数値の変動は、装置キャリブレーション、装置エラー、物質の純度、結晶サイズ、サンプルサイズ、その他の因子に起因する。
【0028】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るため、上記の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0029】
一般に、後述の表及び図において表示されるピークの絶対強度、及び相対強度は、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶の選択配向の効果、粗大粒子の影響、分析される物質の純度又はサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンも、本発明の範囲に含まれる。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観察された回折パターンから選択されるピークである。複数の結晶を区別する上では、ピークの大きさよりも、その結晶に見られ、他の結晶で見られないピークが、その結晶を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つ又は二つのピークでも、当該結晶を特徴付けることができる。
【0030】
なお、本明細書中、回折ピークは、1つの鋭いピーク(シングレット形)であってもよく、1つのなだらかなピーク(ブロード形)であってもよく、2〜5つ程度の多重ピーク(タブレット形、トリプレット形、カルテット形、クインテット形)などのマルチプレット形)であっても良いが、通常、1つの鋭いピークである場合が多い。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明する。これらは本発明を限定するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を保証する努力をしているが、いくらかの誤差および偏差は考慮されるべきである。特に示さなければ、%は成分の重量%および組成物の全重量の重量%であり、当量は成分のモル当量を意味する。圧力は大気圧かまたはそれに近い圧力である。本明細書で使用する他の略語は以下のように定義される。
(略号):
Boc:t−ブトキシカルボニル
DMA:N,N−ジメチルアセトアミド
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
NMP:N−メチルピロリドン
PMB:p−メトキシベンジル
【0032】
実施例で得られたNMR分析は300MHz若しくは400MHzで行い、DMSO−d
6、CDCl
3等を用いて測定した。
【0033】
(粉末X線回折パターンの測定)
各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定は、日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、以下の測定条件で行った。なお、試料フォルダとしてアルミ板を用いている。2−Theta (2θ)値が38°付近にあらわれているピークは、アルミのピークである。
(装置)
Rigaku社製RINT TTR III
(操作方法)
測定法:反射法,平行ビーム法
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:300mA
管電圧:50Kv
X線の入射角(2θ):4°〜40°
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:5°/min
【実施例1】
【0034】
<化合物4の合成>
【化25】
工程1:化合物10の合成
窒素雰囲気下、化合物9(25.0kg、164.3mol)をメタノール(125L)に溶解し、−7℃に冷却した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液(11〜12%)(135L、261.1mol)を−7℃で2時間30分かけて滴下し、−7℃で3時間撹拌した。反応液を硫酸水とメタノールの混合液に40℃で加え、1時間30分撹拌し、析出した固体をろ取することにより未乾の固体を得た。未乾の固体をメタノール−水で再結晶し、乾燥することで化合物10(46.0kg、含量57.3%、収率86.1%)を得た。
【0035】
工程2:化合物11の合成
窒素雰囲気下、化合物10(含量換算26.0kg、139.3mol)をDMA(130L)に溶解し、ピリジン(30.9kg、391.2mol)を加えて50℃に加熱した。塩化アルミニウム(26.0kg、195.0mol)のアニソール(78L)溶液を53℃で2時間かけて滴下し、53℃で2時間撹拌した。反応液に希塩酸とテトラヒドロフランを加え抽出し、水層をテトラヒドロフランで抽出した。有機層を合併し、減圧濃縮した。分離した水層を分液し除去することで化合物11(132.0kg、含量17.2%、収率94.4%)を得た。
工程3:化合物12の合成
窒素雰囲気下、化合物11(含量換算12.0kg、69.5mol)にp−メトキシベンジルクロライド(23.0kg、147.1mol)を加えた。この溶液を炭酸カリウム(22.1kg、159.8mol)、ヨウ化ナトリウム(0.516kg、3.4mol)、p−メトキシベンジルクロライド(1.1kg、6.8mol)のDMF(47L)の懸濁液に40℃で加え、40℃で2時間30分撹拌した。20℃に冷却し、水とテトラヒドロフランを加えて抽出し、水層をテトラヒドロフランで抽出した。有機層を合併し、食塩水で2回洗浄した後、減圧濃縮した。イソプロピルアルコールを加え、減圧濃縮し固体を析出させた後、5℃に冷却し、ろ取することで化合物12(25.0kg、収率86.9%)を得た。
【0036】
工程4:化合物13の合成
窒素雰囲気下、化合物12(32.0kg、77.5mol)をDMF(320L)に溶解し、リン酸二水素ナトリウム二水和物(3.0kg、19.3mol)と35%過酸化水素水(9.1kg、93.9mol)を27℃で加えた。20℃に冷却し、次亜塩素酸ナトリウム(10.5kg、116.4mol)水溶液を20℃で1時間45分かけて滴下し、2時間25分撹拌した。30℃に昇温し、水および希塩酸を加え、30℃で1時間25分撹拌した。析出した固体をろ取することで化合物13(32.8kg、収率97.6%)を得た。
1H NMR (DMSO-d
6) δ : 3.74 (s, 3 H) 3.78 (s, 3 H) 4.88 (s, 2 H) 5.17 (s, 2 H) 6.86 (d, J=8.59 Hz, 2 H) 6.99 (m, J=8.59 Hz, 2 H) 7.21 - 7.34 (m, 3 H) 7.44 (m, J=8.59 Hz, 2 H) 7.61 (d, J=8.59 Hz, 1 H) 13.00 (br. s., 1 H)
【0037】
工程5:化合物4の合成
窒素雰囲気下、化合物13(32.0kg、74.6mol)をテトラヒドロフラン(160L)に懸濁させ、27℃でトリエチルアミン(12.2kg、120.2mol)を30分かけて滴下し、溶解させた。この溶液を塩化メタンスルホニル(11.2kg、97.8mol)のテトラヒドロフラン溶液に−10℃で、4時間かけて滴下し、20分撹拌した。この反応液を化合物14(10.2kg、89.7mol)のテトラヒドロフラン溶液に、−5℃で2時間かけて滴下し、2時間撹拌した。水を加えて抽出し、有機層にアセトン(64L)を加えた後、10%水酸化ナトリウム水溶液(5.92kg)を加えてpHを10.0とした。30℃で水を加えて、固体を析出させた後、30℃で75分撹拌した。5℃に冷却し、30分撹拌した後、析出した固体をろ取することで化合物4(35.2kg、収率89.9%)を得た。
1H NMR(CDCl
3)δ: 1.76 (br. s., 4 H) 2.54 (br. s., 4 H) 2.69 (t, J=6.06 Hz, 2 H) 3.54 (q, J=5.81 Hz, 2 H) 3.79 (s, 3 H) 3.82 (s, 3 H) 4.95 (s, 2 H) 5.07 (s, 2 H) 6.83 (d, J=7.83 Hz, 2 H) 6.92 (dd, J=8.46, 4.67 Hz, 4 H) 7.34 (d, J=7.33 Hz, 4 H) 7.42 (d, J=8.59 Hz, 1 H)
【実施例2】
【0038】
第1工程
【化26】
工程1
窒素雰囲気下、化合物2(254.3g、592mmol)をDMA(600mL)に溶解し、−5℃に冷却した。塩化メタンスルホニル(67.83g、592mmol)を加え、トリエチルアミン(59.92g、592mol)を−5℃で25分かけて滴下し、−5℃で60分撹拌した。これを化合物1(200.0g、493mmol)の酢酸エチル(1L)の懸濁液に加え、N−メチルモルホリン(99.83g、987mmol)を−5℃で20分かけて滴下し、−5℃で60分撹拌した。
反応液を酢酸エチルと希塩酸の混合液に加え、抽出した。有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した後、減圧濃縮した。得られた残渣にn−ヘプタンを加え固体を析出させた後、ろ取することにより化合物6(373.1g、収率97.0%)を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δ: 1.41 (s, 9 H) 1.53 (s, 9 H) 1.59 (s, 3 H) 1.62 (s, 3 H) 3.47 (d, J=18.19 Hz, 1 H) 3.64 (d, J=18.19 Hz, 1 H) 3.81 (s, 3 H) 4.45 (d, J=11.87 Hz, 1 H) 4.54 (d, J=11.87 Hz, 1 H) 5.05 (d, J=5.05 Hz, 1 H) 5.17 - 5.29 (m, 2 H) 6.00 (dd, J=8.84, 5.05 Hz, 1 H) 6.90 (d, J=7.93 Hz, 2 H) 7.26 - 7.37 (m, 3 H) 8.21 (d, J=8.84 Hz, 1 H)
【実施例3】
【0039】
第2工程
<化合物3の無溶媒和物の種晶A合成>
【化27】
工程1:化合物3の無溶媒和物の種晶A合成
窒素雰囲気下、化合物6(120.00g、154mmol)をジクロロメタン(600mL)に溶解し、−20℃に冷却した。39%過酢酸(29.99g、154mmol)を50分かけて滴下し、−20℃で30分撹拌した。反応液を亜硫酸水素ナトリウム水溶液に加え、抽出した。有機層を水で洗浄した後、減圧濃縮した。得られた残渣にエタノールを加え結晶を析出させた後0℃に冷却し、結晶をろ取し、風乾することにより化合物3の無溶媒和物の種晶A(92.10g、収率75.2%)を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δ:1.41 (s, 9 H) 1.52 (s, 9 H) 1.58 (d, J=6.06 Hz, 6 H) 3.42 (d, J=18.69 Hz, 1 H) 3.78 - 3.86 (m, 4 H) 4.23 (d, J=12.63 Hz, 1 H) 4.58 (d, J=3.79 Hz, 1 H) 5.01 (d, J=12.38 Hz, 1 H) 5.21 - 5.32 (m, 2 H) 6.20 (dd, J=9.85, 4.80 Hz, 1 H) 6.91 (d, J=8.59 Hz, 2 H) 7.25 - 7.30 (m, 1 H) 7.36 (d, J=8.59 Hz, 2 H) 7.88 (d, J=9.85 Hz, 1 H) 8.23 - 8.66 (m, 1 H)
【0040】
第1工程および第2工程
<化合物3のメタノール和物結晶および無溶媒和物結晶の合成>
【化28】
窒素雰囲気下、化合物2(5.83g、13.6mmol)をDMA(15mL)に溶解し、−5℃に冷却した。塩化メタンスルホニル(1.70g、14.8mmol)を加え、トリエチルアミン(1.75g、17.3mmol)を−5℃で90分かけて滴下し、−5℃で5分撹拌した。これを化合物1(5.00g、12.3mmol)のDMA(5mL)とアセトニトリル(22.5mL)の懸濁液に加え、N−メチルモルホリン(2.50g、24.7mmol)を−5℃で90分かけて滴下し、−5℃で30分撹拌した。アセトニトリル(2.5mL)、75%精硫酸(0.81g)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(0.50g)加え、39%過酢酸(2.41g、12.4mmol)を−5℃で90分かけて滴下し、−5℃で30分撹拌した。
反応液をメチルエチルケトンと亜硫酸水素ナトリウムおよび食塩の水溶液の混合液に加え、抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液とアンモニア水の混合液で洗浄した後、食塩水で洗浄した。溶媒を減圧濃縮し、得られた残渣にメタノールを加え、種晶A(5.1mg)を加え、結晶を析出させた後、メタノール−水を加え、−10℃に冷却し、ろ取することにより化合物3のメタノール和物の結晶を得た。この結晶を終夜で風乾し,50℃で2時間減圧乾燥することにより化合物3の無溶媒和物の結晶(8.34g、収率85%)を得た。水分量は、カール・フィッシャー法の容量滴定より測定を行った。ただし,滴定剤として三菱化学製アクアミクロン(登録商標)滴定剤SS-Z3mgを用いた。
1H NMR (CDCl
3) δ : 1.36 - 1.48 (m, 9 H) 1.48 - 1.62 (m, 15 H) 3.42 (d, J=18.45 Hz, 1 H) 3.78 - 3.87 (m, 4 H) 4.23 (d, J=12.42 Hz, 1 H) 4.59 (d, J=4.77 Hz, 1 H) 5.01 (d, J=12.42 Hz, 1 H) 5.18 - 5.36 (m, 2 H) 6.20 (dd, J=9.72, 4.83 Hz, 1 H) 6.91 (m, J=8.28 Hz, 2 H) 7.26 - 7.31 (m, 1 H) 7.36 (m, J=8.41 Hz, 2 H) 7.90 (d, J=9.79 Hz, 1 H) 8.47 (br. s., 1 H)
水分量(KF法):0.6131%
【0041】
得られた化合物3のメタノール和物結晶の粉末X線回折の結果を
図1および表1に示す。
【表1】
【0042】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、4.3±0.2°、10.9±0.2°、12.7±0.2°、14.5±0.2°、16.2±0.2°、18.0±0.2°、18.3±0.2°、21.2±0.2°、25.6±0.2°および26.5±0.2°である。好ましくは、4.3±0.2°、10.9±0.2°、14.5±0.2°、18.3±0.2°および21.2±0.2°である。
【0043】
得られた化合物3の無溶媒和物の結晶の粉末X線回折の結果を
図2および表2に示す。
【表2】
【0044】
特徴的な回折ピークを示す回折角度2θは、4.8±0.2°、14.1±0.2°、14.4±0.2°、14.9±0.2°、16.0±0.2°、17.1±0.2°、17.6±0.2°、20.5±0.2°、25.2±0.2°および33.1±0.2°である。好ましくは、4.8±0.2°、14.4±0.2°、14.9±0.2°、16.0±0.2°および20.5±0.2°である。
【実施例4】
【0045】
第3工程
【化29】
工程1 化合物7の合成
窒素雰囲気下、ホウ酸(46.0 mg、0.75mmol)、ヨウ化ナトリウム(1.13g、7.53mmol)をNMP(6mL)に溶解し、0℃に冷却した。化合物3(2.00g、2.51mmol)、化合物4(1.45g、2.76mmol)を加え、0℃で6時間撹拌、7℃で17時間静置した。
メチルエチルケトンと亜硫酸水素ナトリウム水溶液の混合液に加え、抽出した。有機層を硫酸と5%食塩水の混合液で2回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をODSカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル−硫酸)で精製して化合物7(2.60g、収率73.2%)を得た。
1H NMR (DMSO-D
6) δ: 1.38(s, 9 H) 1.47(s, 9 H) 1.48(s, 3 H) 1.49(s, 3 H) 1.91 - 2.07 (m, 4 H) 3.40 - 3.67 (m, 8 H) 3.75 (s, 3 H) 3.76 (s, 3 H) 3.77 (s, 3 H) 4.13 (d, J=20.01 Hz, 1 H) 4.33 (d, J=20.01 Hz, 1 H) 4.34 (d, J=12.00 Hz, 1 H) 4.71 (d, J=12.00 Hz, 1 H) 4.90 (s, 2 H) 5.17 (s, 2 H) 5.23 (d, J=4.00 Hz, 1 H) 5.28 (d, J=12.00 Hz, 1 H) 5.39 (d, J=12.00 Hz, 1 H) 6.16 (dd, J=8.00, 4.00 Hz, 1 H) 6.86 - 6.99 (m, 6 H) 7.23 - 7.45 (m, 9 H) 8.65 (d, J=8.00 Hz, 1 H) 8.75 (t, J=4.00 Hz, 1 H) 11.81 (br. s., 1 H)
【実施例5】
【0046】
工程1:種晶Bの合成
化合物(IA)は国際公開第2010/050468号に記載の方法に従って調製した。化合物(IA)(100mg)を1.0 mol/Lのp−トルエンスルホン酸水溶液(2mL)に室温で超音波を用いて溶解し、4℃で4日間静置した。析出物をろ過して種晶B(73mg)を得た。顕微鏡により、針状結晶であることを確認した。
工程2:種晶C
種晶B(50mg)を室温で6mol/L H
2SO
4(3mL)に超音波浴上で溶解させ、4℃で2日間静置する。析出した結晶性固体をろ過後、氷冷水で洗浄して種晶C(23mg)を得た。
【0047】
<化合物(IA)の合成>
【化30】
工程3:化合物3の合成
窒素雰囲気下、化合物2(35.0kg、81.42mol)をDMA(90L)に溶解し、−5℃に冷却した。塩化メタンスルホニル(10.2kg、88.82mol)を加え、トリエチルアミン(10.5kg、103.63mmol)を−5℃で80分かけて滴下し、−5℃で30分撹拌した。これを化合物1(30.00kg、74.02mol)のアセトニトリル(120L)とDMA(30L)の懸濁液に加え、N−メチルモルホリン(15.0kg、148.04mmol)を−5℃で70分かけて滴下し、−5℃で60分撹拌した。アセトニトリル(15L)、75%精硫酸(4.8kg)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(3.00kg)加え、過酢酸(39.8%)(14.14kg、74.02mol)を−5℃で70分かけて滴下し、−5℃で140分撹拌した。 反応液をメチルエチルケトンと亜硫酸水素ナトリウムおよび食塩の水溶液の混合液に加え、抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液とアンモニア水の混合液で洗浄した後、食塩水で洗浄した。75%精硫酸を加え、溶媒を減圧濃縮し、得られた残渣にメタノールを加え、種晶A(30g)を加え、結晶を析出させた後、メタノール−水を加え、−10℃に冷却し、ろ過、冷メタノール−水で結晶を洗浄、減圧乾燥することにより化合物3(収量53.32kg、収率90.5%)を得た((R):(S)=1.30:95.73)。
【0048】
工程4:化合物(IA)の合成
窒素雰囲気下、ホウ酸(0.4kg、6.78mol)をNMP(50L)に溶解し、ヨウ化ナトリウム(10.2kg、67.80mol)を加え、0℃に冷却した。化合物3(18.0kg、22.60mol)、化合物4(13.1kg、24.86mol)を加え、0℃で6時間撹拌した。7℃に昇温し、16時間撹拌した後、反応液をHPLCで化合物7の生成を確認した。反応液にNMP(18L)を加え、0℃に冷却した後、三塩化リン(4.0kg、29.38mol)を0℃で60分かけて滴下し、0℃で3時間撹拌した後、反応液をHPLCで化合物8の生成を確認した。
反応液にアニソール(36L)を加え、この液をメチルエチルケトンおよび亜硫酸水素ナトリウム水溶液の混合液に加え、抽出した。有機層を硫酸と食塩水の混合液で2回洗浄した。アニソール(180L)を加え、−5℃に冷却し75%精硫酸(72.0kg)を加え、15℃で90分撹拌した後、反応液をHPLCで化合物(IA)の生成を確認した。水(90L)とメチルエチルケトン(54L)を加え、抽出した。水層をメチルイソブチルケトンで洗浄した後、クロマト分離用小粒径合成吸着剤(ダイヤイオン
TMHP20SS)を用いた逆層カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル−硫酸水溶液)により精製した。得られた溶出液に75%精硫酸(33.3kg)とp−トルエンスルホン酸一水和物(16.7kg)の水溶液を加えた後、種晶C(180g)を加え、結晶を析出させた。5℃に冷却し、5℃で10時間撹拌し、析出した結晶をろ過した。その結晶を5℃に冷やした硫酸水で洗浄して化合物(IA)のp−トルエンスルホン酸および硫酸の混合酸塩の水和物結晶(16.68kg、含量換算収率63.7%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ:1.48 (d, J=6.02 Hz, 6 H) 1.80 - 2.20 (m, 5 H) 2.29 (s, 4 H) 3.21 - 3.85 (m, 9 H) 3.99 (d, J=17.07 Hz, 1 H) 4.29 (d, J=14.18 Hz, 1 H) 4.65 (d, J=14.18 Hz, 1 H) 5.32 (d, J=5.14 Hz, 1 H) 5.96 (dd, J=8.22, 5.08 Hz, 1 H) 6.74 - 6.83 (m, 3 H) 7.11 (m, J=7.91 Hz, 2 H) 7.48 (m, J=8.03 Hz, 2 H) 8.47 (t, J=5.40 Hz, 1 H) 9.59 (d, J=8.28 Hz, 1 H) 10.12 (Br s, 1 H)
水分量測定はカール・フィッシャー法により測定した。測定方法は、日本薬局方 一般試験法 水分(電量滴定)より試験を行った。ただし、陽極液として三菱化学製アクアミクロン(登録商標)AX,陰極液としてアクアミクロン(登録商標)CXUを用いた。カール・フィッシャー法による水分測定は±0.3%の範囲内で誤差が生じ得るので、水分含量の値は±0.3%程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。
【0049】
得られた結晶のp−トルエンスルホン酸および硫酸の含有量は以下の方法により定量した。
(p−トルエンスルホン酸含有量測定方法)
工程1:試料溶液の調製
試料約40 mgを精密に量り、試料希釈溶媒に溶かし、正確に25 mLとした。この液2 mLを正確に量り、試料希釈溶媒を加えて正確に20 mLとした。
工程2:標準溶液の調製
25 ℃/60%RHの環境で恒湿化したp−トルエンスルホン酸ナトリウム標準品 約25 mgを精密に量り、試料希釈溶媒に溶かし、正確に100 mLとした。この液5 mLを正確に量り、試料希釈溶媒を加えて正確に50 mLとした。
上記の試料希釈溶媒は5 mmol/Lリン酸塩緩衝液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル混液 (9:1)を用いた。ここでリン酸塩緩衝液は 水:0.05 mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液:0.05 mol/Lリン酸水素二ナトリウム試液混液 =18:1:1 (pHが約7.1)を用いた。
工程3:測定および定量
上記試料溶液および標準溶液を下記試験条件で液体クロマトグラフィーにより測定を行い、p-トルエンスルホン酸のピーク面積を自動積分法により測定した。なお、脱水物換算とは、全量から水分含量を除いたものを100%として計算した値である。
(試験条件)
カラム:Unison UK-C18, φ4.6 × 150 mm, 3 μm,Imtakt製
カラム温度:35 ℃付近の一定温度
流量:毎分1.0 mL (p-トルエンスルホン酸の保持時間 約7分)
検出器:紫外吸光光度計 (測定波長:218 nm)
移動相A:0.1%トリフルオロ酢酸溶液
移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエントプログラム
以下の計算式を用いて、試料中のp-トルエンスルホン酸の含有量を求めた。
p-トルエンスルホン酸の量 (%)
M
S:p−トルエンスルホン酸ナトリウム標準品の秤取量 (mg)
M
T:試料の秤取量 (mg)
P:p−トルエンスルホン酸ナトリウム標準品の純度 (%)
W
T:試料の水分 (%)
A
T:試料溶液から得られるp-トルエンスルホン酸のピーク面積
A
S:標準溶液から得られるp-トルエンスルホン酸のピーク面積
172.20:p-トルエンスルホン酸の分子量
194.18:p-トルエンスルホン酸ナトリウムの分子量
【0050】
(硫酸含有量測定方法)
工程1:標準溶液の調製
無水硫酸ナトリウム 約50 mgを精密に量り、移動相に溶かし正確に25 mLとした。この液2 mLを正確に量り,移動相を加えて正確に50 mLとした。さらにこの液2 mLを正確に量り、移動相を加えて正確に20 mLとした。
工程2:試料溶液の調製
試料 約30 mgを精密に量り、移動相に溶かし正確に25 mLとした。この液2 mLを正確に量り、移動相を加えて正確に20 mLとした。
工程3:測定および定量
上記試料溶液および標準溶液を下記試験条件で液体クロマトグラフィー(イオンクロマトグラフィー)により測定を行い、硫酸イオンのピーク面積を自動積分法により測定した。(試験条件)
カラム:Shim-pack IC-A3,φ4.6×150 mm,5 μm,島津製作所
カラム温度:40 ℃付近の一定温度
流量:毎分1.2 mL (硫酸イオンの保持時間 約15分)
検出器:電気伝導度検出器 (ノンサプレッサ方式)
移動相:Bis-Tris 約0.67 g,ホウ酸 約3.09 g,及び粉砕したp-ヒドロキシ安息香酸 約1.11 gを精密に量り、水に溶かし正確に1000 mLとした溶液
以下の計算式を用いて、試料中の硫酸の含有量を求めた。
硫酸の量 (%) = M
S / M
T × 100 / (100-W
T) × A
T / A
S × 98.08 / 142.04 × 1 / 25 × 100
M
S:無水硫酸ナトリウムの秤取量 (mg)
M
T:試料の秤取量 (mg)
W
T:試料の水分 (%)
A
S:標準溶液から得られる硫酸イオンのピーク面積
A
T:試料溶液から得られる硫酸イオンのピーク面積
98.08:硫酸の分子量
142.04:無水硫酸ナトリウムの分子量
1 / 25:希釈倍率
(結果)
水分量(KF法):13.3%
p−トルエンスルホン酸:21.5±0.2%(脱水物換算)
硫酸:4.9±0.1%(脱水物換算)
【実施例6】
【0051】
第4工程
【化31】
工程1 化合物10の合成
窒素雰囲気下、化合物9(1.00g、0.76mmol)をNMP(4mL)に溶解し、0℃に冷却した。三塩化リン(0.14g、1.02mol)を1時間かけて滴下し、0℃で2時間撹拌した。
酢酸エチルと塩化ナトリウム水溶液の混合液に加え、抽出した。有機層を5%食塩,0.75%硫酸水で2回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して化合物10(0.97g、収率98.2%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CHLOROFORM-d) δ : 1.38 - 1.42 (m, 9 H) 1.51 (s, 9 H) 1.57 (s, 3 H) 1.60 (s, 3 H) 1.92 - 2.04 (m, 4 H) 2.33 - 2.43 (m, 2 H) 2.84 (s, 2 H) 3.35 - 3.47 (m, 3 H) 3.76 - 3.80 (m, 7 H) 3.82 (s, 3 H) 3.87 (d, J=5.90 Hz, 2 H) 3.99 (d, J=17.94 Hz, 1 H) 4.61 (d, J=13.68 Hz, 1 H) 4.91 (s, 2 H) 4.95 (d, J=13.55 Hz, 1 H) 5.03 (s, 2 H) 5.14 - 5.21 (m, 1 H) 5.22 - 5.30 (m, 2 H) 5.95 (dd, J=8.60, 5.21 Hz, 1 H) 6.81 (d, J=7.79 Hz, 2 H) 6.86 - 6.94 (m, 5 H) 7.27 - 7.38 (m, 8 H) 8.29 (d, J=8.66 Hz, 1 H) 8.70 (s, 1 H)