特許第6783554号(P6783554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783554雨水貯留システム用防水シート及び雨水貯留システムの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783554
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】雨水貯留システム用防水シート及び雨水貯留システムの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03B 11/14 20060101AFI20201102BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   E03B11/14
   E03F1/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-108668(P2016-108668)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-214752(P2017-214752A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002923
【氏名又は名称】ダイワボウホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】寺田 泰昌
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−240593(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3153725(JP,U)
【文献】 特開2008−144412(JP,A)
【文献】 特開2005−179931(JP,A)
【文献】 特開平10−196295(JP,A)
【文献】 特開2013−147821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 11/14
E03B 3/02 − 3/03
E03F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水貯留システムからの雨水の流出を防ぐ雨水貯留システム用防水シートであって、前記雨水貯留システム用防水シートは、遮水シートと、前記遮水シートの一方又は両方の表面に配置されている保護シートで構成され、前記雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、前記遮水シートと前記保護シートは互いに離れており、その他の部位において、前記遮水シートと前記保護シートは点状接着及び/又は線状接着されており、その接着間隔が2〜70cmであることを特徴とする雨水貯留システム用防水シート。
【請求項2】
前記雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、前記遮水シートと前記保護シートの互いに離れている部分の幅は5cm以上である請求項1に記載の雨水貯留システム用防水シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の雨水貯留システム用防水シートを、掘削形成した貯留槽の掘削面に保護シート側が接するように敷設し、複数の防水シートの周縁部を熱融着して繋ぎ合わせる工程を含む雨水貯留システムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水貯留システム用防水シート及び雨水貯留システムの施工方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
都市部では短期間に多量の雨が降ると排水溝から雨水が溢れ水害が発生する。水害対策の一つとして、地下に貯留材又は浸透桝等を設置して、雨水を地下に誘導し、一時的に貯留することで、徐々に地下に浸透させる技術が知られている。この技術は、雨水貯留・浸透システムと呼ばれており、公園、運動場、駐車場等の地下に貯留材又は浸透桝等を設置することで、地上は有効活用しながら水害対策を行なえるようになっている。そのうちで、貯留材を用いた雨水貯留システムは、雨水を地下に貯めることができ、貯めた雨水を噴水、防火用水等に利用できるため、近年設置が進められている。雨水貯留システムの場合、例えば、特許文献1及び2に記載されているように、地中に設けられた貯留槽に、空間保持のための貯留材を設置するとともに、該貯留材を遮水シートで包む必要がある。また、特許文献2に記載されているように、遮水シートの片側又は両側には、保護シートを配置することが一般的に行われている。
【0003】
現状、雨水貯留システムの施工においては、掘削形成した槽空間の掘削面(貯留槽)に、保護シートを敷設し、その上に遮水シートを敷設し、さらにその上に遮水シートを敷設するとともに、遮水シートと保護シートを貯留槽の大きさに合せて複数枚を繋ぎ合わせることが行われており、工程が煩雑である問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−83558号公報
【特許文献2】特開2015−224450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、雨水貯留システムの施工現場において、工程を短縮することができる雨水貯留システム用防水シート及び雨水貯留システムの施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、雨水貯留システムからの雨水の流出を防ぐ雨水貯留システム用防水シートであって、上記雨水貯留システム用防水シートは、遮水シートと、上記遮水シートの一方又は両方の表面に配置されている保護シートで構成され、上記雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、上記遮水シートと上記保護シートは互いに離れており、その他の部位において、上記遮水シートと上記保護シートは接着されていることを特徴とする雨水貯留システム用防水シートに関する。
【0007】
上記雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、上記遮水シートと上記保護シートの互いに離れている部分の幅は5cm以上であることが好ましい。
【0008】
本発明は、また、上記の雨水貯留システム用防水シートを、掘削形成した貯留槽の掘削面に保護シート側が接するように敷設し、複数の雨水貯留システム用防水シートの周縁部を熱融着して繋ぎ合わせる工程を含む雨水貯留システムの施工方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、雨水貯留システムの施工現場において、工程を短縮することができる雨水貯留システム用防水シート(以下、単に防水シートということもある。)及び雨水貯留システムの施工方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の一実施例の雨水貯留防水シートの模式的断面図である。
図2図2は本発明の一実施例の雨水貯留防水シートにおける接着点の配置を説明する模式的部分平面図である。
図3図3は本発明の一実施例の雨水貯留防水シートの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、雨水貯留システムの施工現場において、工程を短縮することを検討したところ、遮水シートと保護シートの敷設回数を減少させるためには、遮水シートと保護シートを一体化することが望ましいことに気付く一方、雨水貯留システムの施工現場において、遮水シートと保護シートは、貯留槽の大きさに合せて複数枚を繋ぎ合わせる必要があり、複数枚の防水シートの繋ぎ合わせを容易にすることも求められることに気付いた。そこで、遮水シートと保護シートを、周縁部は接合させず、その他の部分は接着させて防水シートとして用いると、雨水貯留システムの施工現場において、遮水シートと保護シートの敷設回数を減らせる上、複数枚の防水シートの融着も容易になり、工程を短縮することができることを見出し、本発明に至った。遮水シートと保護シートを一体化して用いることにより、遮水シートと保護シートの敷設回数を減らせることは勿論であるが、雨水貯留システムの施工現場は屋外であることから、中には強風下での施工もあり得る。その場合、当然のことながら、保護シート及び遮水シート上に土嚢等の重りを置きながらそれらがめくれ上がらないよう施工する必要があった。本発明の雨水貯留システム用防水シートを使用すると、例えば、工場等において、保護シートと遮水シートが接着されていることから、めくれ上がり等がなくなり、これまで施行現場に携行していた土嚢等の重りの準備が不要とすることができる。
【0012】
本発明の雨水貯留システム用防水シートは、遮水シートと、上記遮水シートの一方又は両方の表面に配置されている保護シートで構成されている。上記雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、上記遮水シートと上記保護シートは互いに離れて(即ち、接合しておらず)自由端部となっており、該自由端部により、他の防水シートの自由端部と必要箇所で熱融着などにて接合することができる。
【0013】
上記雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、上記遮水シートと上記保護シートの互いに離れている部分の幅は3cm以上であることが好ましく、5cm以上であることがより好ましい。上記遮水シートと上記保護シートの互いに離れている部分の幅が5cm以上であると、他の雨水貯留システム用防水シートとの融着が容易になる。また、上記雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、上記遮水シートと上記保護シートの互いに離れている部分の幅は10cm以下であることが好ましく、より好ましくは7cm以下である。上記遮水シートと上記保護シートの互いに離れている部分の幅が10cm以下であると、上記遮水シートと上記保護シートの一体性が良好であり、上記雨水貯留システム用防水シートが柔軟性に優れることで、敷設しやすい。本発明において、雨水貯留システム用防水シートの周縁部において、遮水シートと保護シートの互いに離れている部分の幅とは、周縁部の端部(4か所)と、該周縁部の端部から最も近い接着部までの距離をいう。
【0014】
(遮水シート)
上記遮水シートは、水を透過しないシートであればよく、特に限定されない。例えば、上記遮水シートは、遮水シートの全体質量に対して、エチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%〜80質量%含み、ポリエチレンを20質量%〜80質量%含むことが好ましい。遮水シート中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が20質量%以上であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂特性に起因して良好な遮水性を有する。かかる効果をより顕著に得る観点から、遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を30質量%以上含むことがより好ましく、40質量%以上含むことがさらに好ましい。さらには、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂特性に起因して、例えば10℃以下の低温環境下においても遮水シートが固くならず、敷設しやすい。遮水シート中のポリエチレンの含有量が20質量%以上であると、保護シートとの接着力に優れた遮水シートを得ることができる。また、遮水シートのしなやかさや引張強度を低下させない観点から、遮水シートは、ポリエチレンを60質量%以下含むことが好ましい。
【0015】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が、3mol%〜50mol%であることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量が3mol%以上であると、柔軟性に優れたシートを得ることができる。また、酢酸ビニル含有量が50mol%以下であると、防水シートを30℃以上の環境下で保管する場合であっても、遮水シート同士がくっついて一体化(ブロッキング)してしまうことが少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、酢酸ビニル含有量は、5mol%〜40mol%であることがより好ましく、10mol%〜30mol%であることがさらに好ましい。
【0016】
上記ポリエチレンは、高密度ポリエチレンであってもよく、低密度ポリエチレンであってもよい。高密度ポリエチレンを用いるとその樹脂特性に起因して、耐衝撃性に優れた遮水シートを得ることができる。また、低密度ポリエチレンを用いるとその樹脂特性に起因して、熱溶着性に優れた遮水シートを得ることができる。なかでもポリエチレンは、線状低密度ポリエチレンであることが好ましい。線状低密度ポリエチレンを含む遮水シートは、特に優れた引張強度を有する。遮水シートが引張強度に優れると、遮水シートが破断し難くなる。
【0017】
上記線状低密度ポリエチレンは、密度が0.86g/cm3〜0.93g/cm3であることが好ましい。かかる密度の線状低密度ポリエチレンは、低価格で加工性にも優れる。
【0018】
上記ポリエチレンは230℃におけるメルトフローレート(「MFR」とも称される。)が1g/10分〜10g/10分であることが好ましい。ポリエチレンのMFRが1g/10分以上であると、遮水シートを生産しやすい。ポリエチレンのMFRが10g/10分以下であると、遮水シートの強力が低下するおそれが少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、ポリエチレンのMFRは、1.5g/10分〜7g/10分であることがより好ましい。
【0019】
上記遮水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリエチレンに加えて、他の樹脂成分を含んでもよい。他の樹脂成分の含有量は、遮水シートの全体質量に対して、30質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下の範囲である。他の樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィン樹脂を用いることができる。また、遮水シートは、必要に応じて、遮水シートの全体質量に対して、酸化防止剤や熱安定剤などを10質量%以下の量で含んでもよい。
【0020】
上記遮水シートは、厚みが0.1mm〜3mmであることが好ましく、0.3mm〜2mmであることがより好ましい。遮水シートの厚みが0.1mm〜3mmであると、施工時の雨水貯留システム用防水シートの取り扱い性が良好になる。なお、遮水シートの厚みは、JIS K 6250 8.1(A法)に従って測定する。
【0021】
上記遮水シートは、JIS K 6773に準じて測定される20℃における引張強度が、10N/mm2以上であることが好ましく、16N/mm2以上であることがより好ましい。引張強度が10N/mm2以上であると、遮水シートが破断しにくい。引張強度の好ましい上限は、100N/mm2以下である。
【0022】
上記遮水シートは、JIS K 6773に準じて測定される20℃における伸度が、500%以上であることが好ましく、600%以上であることがより好ましい。伸度が500%以上であると、敷設が容易になる。伸度の好ましい上限は、1000%以下である。
【0023】
遮水シートは、JIS K 6301に準じて測定される引裂強度が、400N/cm以上であることが好ましく、500N/cm以上であることがより好ましい。引裂強度が400N/cm以上であると、遮水シートが裂けにくい。引裂強度の好ましい上限は、2000N/cm以下である。
【0024】
(保護シート)
保護シートとしては、不織布を用いることができる。上記不織布は、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの長繊維不織布であってもよく、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布などの短繊維不織布であってもよい。なかでも、安価である観点から、不織布はスパンボンド不織布をニードルパンチ処理で交絡させた不織布であることが好ましい。
【0025】
上記不織布は、1種の繊維から構成されていてもよく、2以上の繊維が混綿された不織布であってもよい。また、上記不織布は、1層のウェブからなる単層不織布であってもよく、2層以上のウェブが積層されてなる積層不織布であってもよい。さらに、上記不織布は単一成分の樹脂からなる繊維で構成されていてもよく、2以上の樹脂を用いた複合繊維で構成されていてもよい。上記繊維の断面形状は、特に限定されず、丸型断面であってもよく、同心円型、楔状分割型、スリット状分割型、中空型、三角型、Y型、四角型などの異型断面であってもよい。
【0026】
上記不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂などの合成樹脂で構成されている繊維が挙げられる。中でも、上記不織布を構成する繊維は、耐アルカリ性と耐候性に優れる観点からポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。また、アラミド繊維や炭素繊維からなる不織布を用いることで、雨水貯留システム用防水シートに引裂強度を与えることもできる。
【0027】
上記不織布は、目付が80g/m2〜500g/m2であることが好ましい。不織布の目付が80g/m2以上であると、引張強度が高く、破断しにくい。また、不織布の目付が500g/m2以下であると、重くなりすぎず、施工が容易である。より好ましくは不織布の目付は200g/m2〜400g/m2である。
【0028】
上記不織布は、厚みが0.5mm〜20mmであることが好ましい。不織布の厚みが0.5mm以上であると、遮水シートが損傷することを防止する効果が高い。不織布の厚みが20mm以下であると、不織布が厚み方向に破断又は剥離し難い。より好ましくは不織布の厚みは1mm〜10mmであり、さらに好ましくは2mm〜8mmである。なお、不織布の厚みは、JIS L 1096 8.5に準じて、1cm2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定する。
【0029】
上記不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、単繊維繊度が1dtex〜100dtexであってよい。繊度が1dtex〜100dtexである繊維を用いると、不織布の引張強度や引裂強度を高めることができる。
【0030】
上記不織布が短繊維不織布である場合、不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、繊維長が10mm〜200mmであることが好ましい。繊維長が10mm〜200mmであると、不織布の引張強度や引裂強度を高めることができる。
【0031】
上記不織布は、JIS L 1096に準じて測定される引張強度が、500N/5cm以上であることが好ましく、700N/5cm以上であることがより好ましい。引張強度が500N/5cm以上であると、不織布が破断しにくい。引張強度の好ましい上限は3000N/5cm以下である。
【0032】
上記不織布は、JIS L 1096に準じて測定される伸度が、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。伸度が20%以上であると、遮水シートの伸度に追従しやすくなる。
【0033】
上記不織布は、JIS L 1096(シングルタンク法)に準じて測定される引裂強度が、80N以上であることが好ましく、140N以上であることがより好ましい。引裂強度が80N以上であると、不織布が裂けにくい。引裂強度の好ましい上限は、500N以下である。
【0034】
(防水シート)
上記遮水シートと上記保護シート(例えば、不織布)は、周縁部以上の他の部位においては、雨水貯留システム用防水シートの一体性及び柔軟性の両立という観点から、点状接着及び/又は線状接着されていることが好ましい。点状接着又は線状接着の接着間隔は、2〜70cmであることが好ましい。ここで、接着間隔とは、点状接着の場合、任意の接着点とそこから最も近い接着点間の距離をいい、線状接着の場合、任意の線状接着部と、該線状接着部と垂直な方向に最も近い他の線状接着部間の距離をいう。接着間隔が2cm以上であると、柔軟性が良好になる。接着間隔が70cm以下であると、一体性が良好になる。より好ましくは、上記遮水シートと上記保護シート(例えば、不織布)は、周縁部以上の他の部位において点状接着されており、接着間隔が10〜50cmである。
【0035】
上記遮水シートと上記保護シート(例えば、不織布)、周縁部以外の他の部位においては、接着剤を介して接着されていてもよく、又は上記遮水シート又は上記保護シート(例えば、不織布)を構成する成分の熱溶着により接着されていてもよい。上記遮水シートと上記保護シート(例えば、不織布)は、ホットメルト系接着剤を介して接着されていることが好ましい。或いは、上記遮水シート又は上記保護シート(例えば、不織布)を構成する成分の熱溶着により接着されていることが好ましい。或いは、上記遮水シートと上記保護シート、例えば不織布は、線状接着部分においては、上記遮水シート又は上記保護シート(例えば不織布)を構成する成分の熱溶着により接着されており、点状接着部分においては、ホットメルト系接着剤を介して接着されていることが好ましい。これらの構成であると、有機溶剤を含まず、雨水貯留システム用防水シートから有機溶剤に起因する物質が揮発することがない。
【0036】
上記遮水シートと上記保護シートが接着している箇所において、上記遮水シートと上記保護シートは、ホットメルト系接着剤を介して点状接着されていることが好ましい。接着点の大きさは、1cm2以上であることが好ましい。接着点の大きさが1cm2以上であると、上記保護シートと遮水シートとを強固に接着することができる。より好ましくは接着点の大きさは、5cm2〜50cm2である。
【0037】
上記防水シートは、単位面積当たりの質量が2kg/m2以下であることが好ましく、1.5kg/m2以下であることがより好ましい。防水シートの単位面積当たりの質量が2kg/m2以下であると、防水シートが軽く、施工が容易となる。特に限定されないが、好ましい下限は、0.5kg/m2である。
【0038】
次に図面により説明する。図1は本発明の一実施例の雨水貯留システム用防水シートの模式的断面図である。該実施例の雨水貯留システム用防水シート10は、遮水シート1と、遮水シート1の一方の表面に配置されている保護シート2で構成され、雨水貯留システム用防水シート10の周縁部において、遮水シート1と保護シート2は互いに離れており(即ち、接着されておらず)、その他の部位においては、遮水シート1と保護シート2は接着点3により点状接着されている。すなわち、雨水貯留システム用防水シート10は、遮水シート1と、遮水シート1の一方の表面に配置されている保護シート2で構成され、遮水シート1と保護シート2の非接着部分21aと21bと、点状接着部分22を有する。雨水貯留システム用防水シート10において、遮水シート1と保護シート2の互いに離れている部分、すなわち遮水シート1と保護シート2の非接着部分21aと21bは、自由末端となる。
【0039】
図2は本発明の一実施例の雨水貯留システム用防水シートにおける遮水シートと保護シートの接着点の配置を説明する模式的説明図である。遮水シートと保護シートの互いに離れてい幅、すなわち、遮水シート11と保護シート(図示なし)を接着している接着点13から周縁部の端部までの距離Laは、3〜10cmであることが好ましく、より好ましくは3〜7cmである。る部分のまた、点状接着の接着間隔、すなわち、最も近接する二つの接着点3(中心点)間の距離Lbは、10〜50cmであることが好ましく、より好ましくは10〜40cmである。
【0040】
図3は本発明の他の一実施例の雨水貯留システム用防水シートの模式的断面図である。該実施例の雨水貯留システム用防水シート100は、遮水シート101と、遮水シート101の両方の表面に配置されている保護シート102で構成され、雨水貯留システム用防水シート100の周縁部において、遮水シート101と保護シート102は互いに離れており(即ち、接着されておらず)、その他の部位においては、遮水シート101と保護シート102は接着点103により接着されている。すなわち、雨水貯留システム用防水シート100は、遮水シート101と、遮水シート1の両方の表面に配置されている保護シート102で構成され、遮水シート101と保護シート102の非接着部分121aと121bと、点状接着部分122を有する。雨水貯留システム用防水シート100において、遮水シート101と保護シート102の非接着部分121aと121bは、自由末端となる。
【0041】
雨水貯留システムの施工において、上記雨水貯留システム用防水シートを、掘削形成した貯留槽の掘削面に保護シート側が接するように敷設し、複数の防水シートの周縁部を熱融着して繋ぎ合わせることができる。周縁部が接合されておらず、その他の部分が接着され、好ましくは点状接着及び/又は線状接着されている本発明の雨水貯留システム用防水シートを用いることで、雨水貯留システムの施工現場において、遮水シートと保護シートの敷設回数を減らせる上、複数枚の防水シートの融着も容易になり、工程を短縮することができる。
【実施例】
【0042】
以下実施例により説明する。なお、本発明は下記の実施例によって限定されない。
【0043】
(遮水シートの引張強度、伸度及び引裂強度)
遮水シートの引張強度及び伸度は、JIS K 6773に準じて、測定温度20℃で測定した。遮水シートの引裂強度は、JIS K 6301に準じて、測定温度20℃で測定した。
【0044】
(EVA樹脂1)
エチレンー酢酸ビニル共重合体として、商品名:ウルトラセン626、東ソー社製を準備した。
【0045】
(EVA樹脂2)
エチレンー酢酸ビニル共重合体として、商品名:ウルトラセン751、東ソー社製を準備した。
【0046】
(LLDPE樹脂1)
線状低密度ポリエチレンとして、商品名:SP2040、プライムポリマー社製を準備した。
【0047】
EVA樹脂1〜2、及びLLDPE樹脂1の酢酸ビニル含有率、密度、230℃におけるメルトフローレート(MFR)を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
EVA樹脂1〜2、LLDPE樹脂1を表2に示す割合で、それぞれ混合し溶融させて、Tダイから押出し、金属ロールで所定の厚みに圧延して遮水シート1〜2を得た。遮水シート1〜2の厚み、引張強度、伸度、引裂強度を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例1)
ポリプロピレン繊維からなり、厚みが3.0mmのスパンボンド不織布の表面に、エチレンー酢酸ビニル共重合体からなるホットメルト接着剤を接着点の大きさを5cm2とした点状に、防水シートの幅方向(CD方向)に40cm間隔で、防水シートの長さ方向(MD方向)に30cm間隔で付着させ、不織布の全ての周辺部(周縁部)5cmを除いて不織布と遮水シート1とを接着して、実施例1の防水シートを得た。実施例1の防水シートの剥離強力は、JIS K 6854−3に準じて測定されるT形剥離試験における不織布と遮水シートの剥離強力が230Nであった。
【0052】
(実施例2)
ポリプロピレン繊維からなり、厚みが3.0mmのスパンボンド不織布の表面に、エチレンー酢酸ビニル共重合体からなるホットメルト接着剤を接着点の大きさを5cm2とした点状に、防水シートの幅方向(CD方向)に40cm間隔で、防水シートの長さ方向(MD方向)に30cm間隔で付着させ、不織布の全ての周辺部5cmを除いて遮水シート1の両面に不織布を接着して、実施例2の防水シートを得た。実施例2の防水シートの剥離強力は、実施例1の防水シートと同様であった。
【0053】
(実施例3)
ポリプロピレン繊維からなり、厚みが3.0mmのスパンボンド不織布の表面に、エチレンー酢酸ビニル共重合体からなるホットメルト接着剤を、防水シートの幅方向(CD方向)に50cm間隔で、防水シートの長さ方向(MD方向)に線状に付着させ、不織布の全ての周辺部10cmを除いて不織布と遮水シート2とを接着して、実施例3の防水シートを得た。実施例3の防水シートの剥離強力は、JIS K 6854−3に準じて測定されるT形剥離試験における不織布と遮水シートの剥離強力が250Nであった。
【0054】
(実施例4)
実施例2の防水シートを用いて、雨水貯留システムの施工現場にて、掘削形成した貯留槽の掘削面に不織布が接触するように敷設し、当該防水シートの周縁部を熱風ヒーターを使用して熱融着して繋ぎ合わせを実施した。
【符号の説明】
【0055】
1、101 遮水シート
2、102 保護シート
3、103 接着点
10、100 防水シート
21a、21b、121a、121b 非接着部分
図1
図2
図3