(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、グリチルレチン酸、トコフェロール、及びトコフェロール誘導体から選ばれる1種又は2種以上の油溶性薬効成分を0.02質量%以上2.5質量%以下含有する。これにより、抗炎症作用、歯槽骨吸収抑制作用、ヒスタミン遊離抑制作用、血行促進作用等をもたらすことができ、また歯周炎や歯周病等の予防改善作用をもたらすこともできる。
【0012】
グリチルレチン酸としては、α−グリチルレチン酸、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸等が挙げられる。なかでもβ−グリチルレチン酸が好ましい。トコフェロール及びその誘導体としては、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール及びニコチン酸トコフェロール等が挙げられる。なかでも、酢酸トコフェロールが好ましく、酢酸−DL−α−トコフェロールがより好ましい。本発明では、これらグリチルレチン酸、トコフェロール、及びトコフェロール誘導体から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
成分(A)の含有量は、所望の薬理作用を有効に発揮させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.02質量%以上であって、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、良好な香味を確保する等の観点から、本発明の口腔用組成物中に、2.5質量%以下であって、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.02質量%以上2.5質量%以下であって、好ましくは0.05〜1.5質量%であり、より好ましくは0.08〜1質量%であり、さらに好ましくは0.08〜0.5質量%以下である。
また、成分(A)として、なかでもグリチルレチン酸を含むことが好ましく、グリチルレチン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、またさらに好ましくは0.08質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0014】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、セタノール(b1)、並びにステアリルアルコール(b2)を含む炭素数12以上22以下の高級アルコールを4質量%以上30質量%以下含有する。すなわち、成分(B)は、成分(b1)のセタノール、及び成分(b2)のステアリルアルコールを必須成分とする炭素数12以上22以下の高級アルコールである。かかる成分(B)を含有することにより、上記成分(A)及び後述する成分(C)とともに、ラメラ層が重なり合った構造を有するα−ゲルを形成し、成分(A)を良好に包埋しつつ、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高めることができる。
【0015】
成分(B)の高級アルコールは、良好にα−ゲルを形成しつつ、口腔用組成物としての適度な粘度を保持する観点から、成分(b1)のセタノール、及び成分(b2)のステアリルアルコールを含む高級アルコールであり、かつ炭素数12以上22以下であって、成分(b1)の含有量及び成分(b2)の含有量の合計量と、成分(B)の含有量との質量比(((b1)+(b2))/(B))は、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.9以上であり、さらに好ましくは0.92以上であり、1以下である。
【0016】
成分(b1)及び成分(b2)以外の成分(B)としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、及びベヘニルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0017】
成分(b1)の含有量と成分(b2)の含有量との質量比((b1)/(b2))は、良好にα−ゲルを形成しつつ、口腔用組成物としての保存安定性を向上する観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下であり、よりさらに好ましくは1.7以下である。
また、成分(b1)及び成分(b2)以外の炭素数12以上22以下の高級アルコールである、ラウリルアルコール及びミリスチルアルコールは、味の観点から、ラウリルアルコールの含有量及びミリスチルアルコールの含有量の合計量と、成分(B)の含有量との質量比((ラウリルアルコール+ミリスチルアルコール)/(B))が、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。
【0018】
成分(b1)及び成分(b2)以外の炭素数12以上22以下の高級アルコールである、ベヘニルアルコールは、成分(B)の析出や分離を抑制する観点から、ベヘニルアルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(ベヘニルアルコール/(B))が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.05以下である。
【0019】
なお、炭素数10以下の高級アルコールは、保存安定性の観点から、炭素数10以下の高級アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(炭素数10以下の高級アルコール/(B))が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.01以下であり、さらに好ましくは0.005以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、炭素数10以下の高級アルコールを含有しないことがよりさらに好ましい。
また、炭素数24以上の高級アルコールは、保存安定性の観点から、炭素数24以上の高級アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(炭素数24以上の高級アルコール/(B))が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.01以下であり、さらに好ましくは0.005以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、炭素数24以上の高級アルコールを含有しないことがよりさらに好ましい。
【0020】
成分(B)の含有量は、良好にα−ゲルを形成させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、4質量%以上であって、好ましくは4.5質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、適度な粘度とする観点、及び組成物中における各成分の分散性を確保する等の観点から、本発明の口腔用組成物中に、30質量%以下であって、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは18質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、4質量%以上30質量%以下であって、好ましくは4.5〜25質量%であり、より好ましくは4.5〜20質量%であり、さらに好ましくは5〜18質量%である。
【0021】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、成分(A)の薬理作用を確保しつつ、形成されるα−ゲルによって成分(A)を良好に包埋させる観点から、好ましくは0.002以上であり、より好ましくは0.004以上であり、より好ましくは0.005以上である。また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、各成分の分散性を確保しつつ、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは0.2以下であり、より好ましくは0.15以下であり、さらに好ましくは0.1以下であり、成分(A)としてグリチルレチン酸を含む場合、グリチルレチン酸の含有量と成分(B)の含有量との質量比(グリチルレチン酸/(B))は、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.05以下である。そして、成分(A)含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、好ましくは0.002〜0.2であり、より好ましくは0.004〜0.15であり、さらに好ましくは0.005〜0.1であり、成分(A)としてグリチルレチン酸を含む場合、グリチルレチン酸の含有量と成分(B)の含有量との質量比(グリチルレチン酸/(B))は、好ましくは0.002〜0.1であり、より好ましくは0.004〜0.1であり、さらに好ましくは0.005〜0.05である。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)として、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれるノニオン界面活性剤を含有する。このように、成分(C)のノニオン界面活性剤を含有することにより、後述する成分(D)の脂肪酸又はその塩とも相まって、上記成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高めることができる。
【0023】
成分(C)のソルビタン脂肪酸エステルとしては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点から、好ましくは炭素数10以上の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数12以上の脂肪酸由来のものであり、好ましくは炭素数20以下の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数18以下の脂肪酸由来のものから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。具体的には、例えば、モノカプリン酸ソルビタン、モノウンデシル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノトリデシル酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、テトラオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、及びトリステアリン酸ソルビタン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、及びモノステアリン酸ソルビタンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0024】
成分(C)のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点から、好ましくは炭素数6以上の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数12以上の脂肪酸由来のものであり、好ましくは炭素数22以下の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数20以下の脂肪酸由来のものから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおけるエチレンオキシ基の平均付加モル数は、同様の観点から、好ましくは5〜40モルであり、より好ましくは10〜25モルであり、さらに好ましくは10〜20モルである。かかるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、優れた起泡性を発揮しつつ低温安定性を高める観点から、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0025】
成分(C)の含有量は、後述する成分(D)の脂肪酸又はその塩とも相まって、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、組成物の保存安定性を確保する観点、及び適度な粘度や風味とのバランスの観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0026】
本発明の口腔用組成物において、成分(B)の含有量と、成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、良好にα−ゲルを形成して成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.2以上であり、さらに好ましくは1.4以上であり、よりさらに好ましくは2以上である。また、成分(B)の含有量と、成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、口腔用組成物としての適度な粘度を保持する観点、保存安定性の観点から、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8以下であり、よりさらに好ましくは5以下である。そして、成分(B)の含有量と、成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1.2〜10であり、さらに好ましくは1.4〜8であり、よりさらに好ましくは2〜5である。
【0027】
本発明の口腔用組成物は、成分(D)として、ステアリン酸、パルミチン酸、及びミリスチン酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸又はその塩を脂肪酸換算量で0.2質量%以上5質量%以下含有する。このように、成分(D)の脂肪酸又はその塩を特定の含有量で用いることにより、上記成分(C)とも相まって、上記成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高めることができる。また、高い保存安定性を発揮するとともに、良好な風味を保持することができる。
【0028】
成分(D)を構成する塩としては、ナトリウム及びカリウムから選ばれるアルカリ金属が挙げられ、なかでも組成物の保存安定性の観点から、ナトリウムが好ましい。また、成分(D)としては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点、及び良好な香味を確保する観点から、ステアリン酸及びパルミチン酸から選ばれる1種又は2種の脂肪酸又はその塩を含有することが好ましく、少なくともステアリン酸又はその塩を含有することが好ましい。
【0029】
成分(D)の含有量は、上記成分(C)とも相まって、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点、適度な粘度を付与する観点から、本発明の口腔用組成物中に、脂肪酸換算量で、0.2質量%以上であって、好ましくは0.4質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、組成物の保存安定性を確保する観点、適度な粘度、風味とのバランスの観点、口腔内粘膜への為害性を低減する観点から、本発明の口腔用組成物中に、脂肪酸換算量で、5質量%以下であって、より好ましくは4.5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下であり、よりさらに好ましくは3質量%以下である。
【0030】
成分(C)の含有量及び成分(D)の脂肪酸換算量の合計量は、これらの成分が相まって、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、組成物の保存安定性を確保する観点、及び適度な粘度や風味とのバランスの観点から、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0031】
本発明の口腔用組成物において、成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))は、良好にα−ゲルを形成して成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、1より大きく、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは2.5以上であり、よりさらに好ましくは3以上である。また、成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))は、口腔用組成物としての適度な粘度を保持しつつ保存安定性を確保する観点、及び良好な使用感を付与する観点から、好ましくは25以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは18以下であり、よりさらに好ましくは12以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(D)の含有量との質量比((B)/(D))は、1より大きく、好ましくは1.5〜25であり、より好ましくは2〜20であり、さらに好ましくは2.5〜18であり、よりさらに好ましくは3〜12である。
【0032】
本発明の口腔用組成物は、成分の(E)水を含有する。本発明における成分(E)の水とは、口腔用組成物に配合した精製水等だけでなく、例えば処方する際に用いる70%ソルビトール液(水溶液)や48%水酸化カリウム液(水溶液)のように、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。かかる成分(E)の水を含有することにより、口腔用組成物としての適度な粘度や良好な保形性を確保しつつ、形成されるα−ゲルを組成物中で良好に保持しながら各成分を良好に分散又は溶解させ、良好な使用感と成分(A)の歯茎は口腔内粘膜への吸着性を向上することができる。成分(E)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。そして、成分(E)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは55〜92質量%であり、さらに好ましくは60〜80質量%である。
【0033】
なお、本発明の口腔用組成物の成分(E)の含有量、すなわち水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業)を用いることができる。この装置では、口腔用組成物を5gとり、無水メタノール25gにより懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0034】
本発明の口腔用組成物において、上記成分(A)、(B)、(C)、(D)及び香料以外の油剤(F)の含有量と、成分(B)の含有量との質量比((F)/(B))は、1未満である。本発明の口腔用組成物中において、成分(B)の含有量に対し、かかる油剤(F)の含有を制限することにより、口腔用組成物に配合できる限られた界面活性剤の範囲での組成物の保存安定性を向上し、α−ゲルの形成が阻害されるのを有効に抑制することができ、また風味を良好なものとすることができる。かかる成分(F)としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、ミネラルオイル、軽質流動パラフィン、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ミツロウウ、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸プロピル、セバシン酸ジエチル、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル油;トリグリセライド及びこれを含むオリーブ油、ナタネ油、シア脂、米糠油の植物油;シリコーン油;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等の防腐剤;油溶性殺菌剤等が挙げられる。
【0035】
成分(F)の含有量と、成分(B)の含有量との質量比((F)/(B))は、1未満であって、好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下である。
【0036】
また、成分(F)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以下である。なお、成分(F)が25℃で液体の油剤である場合には、かかる成分(F)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0037】
本発明の口腔用組成物は、多価金属を含む研磨剤(G)(研磨性紛体)の含有量が5質量%以下である。これにより、上記成分により形成されたα−ゲルが崩壊するのを抑制することができ、また成分(D)と成分(G)の多価金属とが結合して金属塩が析出するのを防止することも可能となり、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を確保することができる。多価金属としては、例えばアルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンが挙げられ、これらを含む成分(G)としては、炭酸カルシウム等の水不溶性カルシウム化合物、リン酸水素カルシウム、不溶性メタリン酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。成分(G)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、5質量%以下であって、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、或いは不可避的に混入する場合を除き、本発明の口腔用組成物は成分(G)を含有しないのが好ましい。
また、本発明の口腔用組成物は、同様の観点から、ストロンチウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、鉄、銅、亜鉛、及びマンガンから選ばれる多価金属の含有量が、金属原子換算量で、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0038】
本発明の口腔用組成物は、形成されるα−ゲルによる口腔用組成物としての適度な粘度や保形性を維持し、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を確保する観点から、セルロース系粘結剤の含有を制限するのが好ましい。セルロース系粘結剤としては、具体的には、例えばヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース)、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種が挙げられる。かかるセルロース系粘結剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下であり、或いは不可避的に混入する場合を除き、本発明の口腔用組成物は、セルロース系粘結剤を含有しないことが好ましい。
【0039】
本発明の口腔用組成物は、セルロース系粘結剤以外の粘結剤を含有することができる。セルロース系粘結剤以外の粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ペクチン、寒天、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェラガム、タマリドガム、及びサイリウムシードガム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、カラギーナン、キサンタンガムから選ばれる1種又は2種の粘結剤が好ましい。これらのセルロース系粘結剤以外の粘結剤の含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点から、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0040】
本発明の口腔用組成物は、粘結剤による粘弾性を増強する観点から、さらに増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤としては、吸油量が180〜350mL/100gの増粘性シリカ、及び脂肪酸デキストリンから選ばれる1種又は2種が好ましい。かかる増粘性シリカの含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。また脂肪酸デキストリンの含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点、風味とのバランスの観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。なお、脂肪酸デキストリンとしては、パルミチン酸デキストリンが好ましい。
【0041】
本発明の口腔用組成物は、吸油量が50〜150mL/100gの研磨性シリカを含有することができる。なお、研磨性シリカは、前述の多価金属を含む研磨剤(研磨性紛体)以外の研磨剤である。研磨性シリカの含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、よりさらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、吸油量が50〜150mL/100gの研磨性シリカを含有しないものであってもよい。
なお、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)の方法により、吸収される煮あまに油の量により特定される値を意味する。
【0042】
本発明の口腔用組成物は、上記成分により形成されたα−ゲルが崩壊するのを有効に抑制して、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を保持する観点、適度な粘度を確保する観点、及び刺激の抑制の観点から、エタノールの含有を制限するのが好ましい。具体的には、エタノールの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、エタノールを含有しないのが好ましい。
【0043】
本発明の口腔用組成物は、風味の観点から、さらに糖アルコールを含有することが好ましい。かかる糖アルコールの含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性能を向上させる観点から、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、風味の観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。かかる糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、水への溶解性が高く、組成物をなめらかな感触にする観点から、ソルビトール、及びキシリトールから選ばれる1種又は2種がより好ましく、糖アルコールとして、少なくともソルビトールを含有することが好ましい。
【0044】
本発明の口腔用組成物は、上記成分(C)以外のノニオン界面活性剤として、さらにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるノニオン界面活性剤を含んでもよい。かかるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油におけるエチレンオキシ基の平均付加モル数は、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を良好に保持しつつ、組成物の保存安定性を確保する観点から、好ましくは20〜100モルであり、より好ましくは40〜80モルである。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を良好に保持する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有しないものであってもよい。
【0045】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンが2〜20個縮合したポリグリセリンに、炭素数8〜24の脂肪酸が1〜4個エステル結合したものが挙げられる。かかるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分としては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を良好に保持しつつ、組成物の保存安定性を確保する観点から、炭素数12〜20の脂肪酸由来のものが好ましく、炭素数12〜18の脂肪酸由来のものがより好ましく、炭素数12〜14の脂肪酸由来のものがさらに好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、これらの脂肪酸部分から構成されるモノエステルであることが好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるグリセリンの平均縮合度は、同様の観点から、好ましくは2〜20であり、より好ましくは5〜12である。
【0046】
上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜20の脂肪酸由来の脂肪酸部分から構成されるショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。なかでも、かかるショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分としては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を良好に保持しつつ、組成物の保存安定性を確保する観点、及び良好な使用感を付与する観点から、炭素数10〜18の脂肪酸由来のものが好ましく、炭素数12〜14の脂肪酸由来のものがより好ましい。
【0047】
これらポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるノニオン界面活性剤の含有量は、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を向上する観点、及び成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能と風味とのバランスを確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以下である。
【0048】
本発明の口腔用組成物は、上記ノニオン界面活性剤以外の界面活性剤として、アルキル硫酸ナトリウム、アシルメチルタウリン塩、及びアシルサルコシン塩から選ばれるアニオン界面活性剤を含んでもよい。かかるアニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;N-ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−パルミトイルサルコシン、N−ステアロイルサルコシン、N−イソステアロイルサルコシン、N−オレオイルサルコシン等のアシルサルコシンのナトリウム塩又はカリウム塩;カプリルメチルタウリン、ラウリルメチルタウリン、ミリスチルメチルタウリン、パルミチルメチルタウリン、ステアリルメチルタウリン等のアシルメチルタウリンのナトリウム塩又はカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、ラウリル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン塩、N−ミリストイルサルコシン塩、ラウリルメチルタウリン塩、及びミリスチルメチルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウリル硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0049】
これらアルキル硫酸ナトリウム、アシルメチルタウリン塩、及びアシルサルコシン塩から選ばれるアニオン界面活性剤の含有量は、歯茎や口腔内粘膜への為害性、及び風味の観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0050】
本発明の口腔用組成物は、口腔内粘膜への為害性を防止する観点から、カチオン性殺菌剤以外のカチオン性界面活性剤の含有を制限するのが好ましい。かかるカチオン性殺菌剤以外のカチオン性界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、カチオン性殺菌剤以外のカチオン性界面活性剤を含有しないのが好ましい。なお、カチオン性殺菌剤としては、第4級アンモニウム化合物、及びビグアニド化合物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。第4級アンモニウム化合物としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。ビグアニド化合物としては、クロルヘキシジン及びその塩が挙げられ、かかる塩としては、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンが挙げられる。
【0051】
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分以外に、多価アルコール、甘味剤、湿潤剤、保存料、フッ化物、酵素、色素等を含有させることができる。
【0052】
本発明の口腔用組成物の25℃における粘度は、適度な粘度を保持して、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を発揮させる観点、及び良好な保形性や使用感を確保する観点から、好ましくは5000dPa・s以下であり、より好ましくは4000dPa・s以下であり、さらに好ましくは3800dPa・s以下であり、好ましくは1000dPa・s以上であり、より好ましくは1100dPa・s以上であり、さらに好ましくは1200dPa・s以上であり、よりさらに好ましくは1400dPa・s以上である。そして、本発明の口腔用組成物の25℃における粘度は、好ましくは1000dPa・s以上5000dPa・s以下であり、より好ましくは1100〜4000dPa・sであり、さらに好ましくは1200〜3800dPa・sであり、よりさらに好ましくは1400〜3800dPa・sである。かかる粘度は、粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、25℃の環境で、ヘリパス型粘度計(VISCOMETER TVB−10 東機産業)を用いて、ロータT−C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定することができる。
【0053】
本発明の口腔用組成物の形態としては、練歯磨剤、塗布剤、含嗽剤、液状歯磨剤等が挙げられる。なかでも、本発明の口腔用組成物を歯茎又は口腔内粘膜へ十分に行き渡らせ、成分(A)を効果的に吸着させる観点から、液状歯磨剤、練歯磨剤であるのが好ましい。本発明の口腔用組成物は、好ましくは口腔内に適用し、適用後に水を口腔内に含み嗽して用いる。適用後に水を口腔内に含嗽しても、歯茎又は口腔内粘膜に成分(A)を効果的に吸着させることができる。口腔内への適用方法は、塗布、歯ブラシによるブラッシング、又は含嗽のいずれであってもよく、塗布又は歯ブラシによるブラッシングが好ましい。
【0054】
本発明の口腔用組成物の製造方法は、成分(B)の融点以上90℃以下の温度で、成分(B)〜成分(D)を含有する混合液を混合する工程を備える。具体的には、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性能を有効に高める観点から、以下の工程(X)を備える製造方法であるのが好ましく、或いは成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性能を有効に高める観点、及び製造設備の簡便化の観点から、以下の工程(Y)を備える製造方法であるのが好ましい。
【0055】
工程(X)を備える製造方法とは、成分(B)の融点以上90℃以下の温度で、成分(B)〜成分(D)を含有する混合液1−1を混合した後、得られた混合液1−1に成分(E)を添加及び混合して混合液1−2を得る工程(X)を備える製造方法である。かかる製造方法においては、成分(A)は混合液1−1に含めて混合することが好ましいが、工程(X)を経た後に得られる混合液1−2に添加して混合してもよく、成分(E)とともに添加及び混合してもよい。また、成分(E)の一部を混合液1−1に含めて混合することが好ましい。この場合、成分(A)は残りの成分(E)に添加して、混合液1−1に添加及び混合して混合液1―2を得ることが好ましい。混合液1−1を混合する際の温度、及び混合液1-2を得る工程の温度は、成分(B)の融点以上90℃以下の温度であればよく、成分(B)の中で最も高い融点以上の温度であり、より好ましくは成分(B)の融点以上85℃以下の温度であり、さらに好ましくは80℃以上85℃以下の温度である。また、成分(A)〜成分(D)の混合順序は特に制限されない。成分(B)の融点以上の温度としては、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは75℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。
【0056】
また工程(Y)を備える製造方法とは、成分(B)〜(E)を含む混合液2を混合する工程(Y)を備える製造方法である。かかる製造方法においては、成分(A)は混合液2に含めて混合することが好ましいが、工程(Y)を得た後に得られる混合液2に添加して混合してもよいし、成分(E)に予め添加してもよい。
【0057】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)を歯茎又は口腔内粘膜へ効果的に吸着させることができることから、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着促進剤としても非常に有用である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0059】
[実施例1〜9、比較例1〜5]
表1に示す処方にしたがい、各口腔用組成物を製造した。具体的には、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)、並びに必要に応じて成分(F)を80℃(80〜82℃)に加温して混合し、約10分間撹拌した。次いで、成分(E)を添加して混合した後、その他の成分を添加して10分間混合することにより、口腔用組成物を得た。
得られた各口腔用組成物を用い、下記方法にしたがって粘度及びβ−グリチルレチン酸の吸着量を測定し、α−ゲルの形成の観察を行った。
結果を表1に示す。
【0060】
《α−ゲルの形成の観察》
得られた各口腔用組成物を用い、広角X線回折によりα−ゲルが形成されているか否かを確認した。具体的には、広角X線回折においてBragg角=21〜22°付近に鋭い1本の回折ピークが現れるか否かにより、α−ゲルの形成の有無を判断した。
具体的には、
図1にも示すように、Bragg角=21〜23°付近に鋭い1本の回折ピークが認められ、α−ゲル構造が形成されてなる組成物であることが確認された場合を「あり」と評価し、かかるピークが確認されなかった場合を「なし」と評価した。なお、実施例1の歯磨剤中に形成されたα−ゲルの広角X線回折による回折X線強度分布を
図1に示す一方、分離が確認された比較例2については広角X線回折による確認は行わなかった。
【0061】
《50℃における保存安定性の評価》
得られた各口腔用組成物を用い、50℃で1ヵ月(30日)間保存した後、外観変化を肉眼により観察し、分離が確認されなかった場合を「良好」、分離が認められた場合を「分離」と評価した。
【0062】
《β−グリチルレチン酸の吸着量の測定》
調製してから室温(25℃)で1ヵ月間保存後の各口腔用組成物5.0gを、シリコーンシート(30mm×30mm、厚さ0.1mm)の直径25mmのガラス製の筒の内部に添加し、30秒間接触させてから、精製水5mLを添加して精製水とともにピペットで吸い取った後、同様に再度精製水5mLを添加して、精製水とともにピペットで吸い取った。さらに精製水5mLで10回洗浄した。その後、シリコーンシートをメタノール2mLに浸漬し、ボルテックスミキサー(EYELA CUTE MIXER CM―1000、東京理化機器製)にて5分間振盪した後、超音波洗浄装置(ASU CLEANER ASU−3(AS ONE製))にて30分間処理を行った。メタノール中のβ−グリチルレチン酸の量を下記の条件によりHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて測定した。
【0063】
なお、グリチルレチン酸の標準液は、β−グリチルレチン酸0.1gを移動相(0.1w/v%リン酸含有メタノール(メタノール:水=8:2))を加えて100mLとし、さらに移動相により容量比で200倍に希釈したものを用いた。β-グリチルレチン酸の含有量は、HPLCにより測定されたβ−グリチルレチン酸の吸光度のピーク面積(X)、標準溶液のピーク面積(Y)との比(X/Y)と標準溶液のβ-グリチルレチン酸の濃度(Z)との積により((Z)×(X)/(Y))を求めた。
【0064】
(HPLCの測定条件)
装置:SHIMADZU Prominence(LC−20AD)(島津製作所)
カラム:LiChroCART 125−4.0 Superspher100 RP−18(e)(関東化学)
カラム温度:40℃
移動相:0.1w/v%リン酸含有メタノール(メタノール:水=8:2)
流量:1.0mL/min
サンプル注入量:20μL
測定波長:250nm
【0065】
《風味の評価》
得られた各口腔用組成物約1gを歯ブラシ(ディープクリーン超コンパクト 普通・花王(株)製)を用いてブラッシング2分間行ってから吐き出して口腔内を水で漱ぎ、下記基準にしたがって風味の評価を行った。
3:油臭さがなく、良好な風味であった。
2:わずかに油臭さが感じられ、少し異味も感じられた。
1:油臭さが感じられ、異味も感じられた。
0:強い異味が感じられた。
【0066】
《粘度の測定》
得られた各口腔用組成物を粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後に測定した。粘度は、25℃において、ヘリパス型粘度計(VISCOMETER TVB−10 東機産業)を用い、ロータT−C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定した。
【0067】
《製造性の評価》
上記方法にしたがって各口腔用組成物を製造中、一部の成分が分離してしまう等の問題が発生したか否かについて、確認した。
特に問題がなかった場合を「問題なし」とし、分離が認められた場合を「分離」と評価した。また、撹拌中に組成物の粘度が極端に上昇する等の理由により製造ができなくなった場合を「製造不可」と評価した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果より、実施例の歯磨剤は、α−ゲルが有効に形成されてなり、保存後においても成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高められることがわかる。また、良好な風味を保持するとともに、高温環境に晒された場合においても優れた保存安定性を示し、製造性にも優れることもわかる。