(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記集約データは、時間区間が1時間の時報、時間区間が1日の日報、時間区間が1週間の週報、時間区間が1ヶ月間の月報及び時間区間が1年間の年報であること、
を特徴とする請求項1記載のログ収集装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るログ収集装置ついて図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すログ収集装置1は、産業機器100に搭載され、当該産業機器100のイベントログ生成部101が生成するイベントログ11を収集する。
【0025】
イベントログ11は、産業機器100で発生したイベントの内容を示す。イベントログ11はイベントIDとタイムスタンプを構成要素とする。イベントIDはイベントの種類を示す。イベントの種類によっては、成否等のイベントの結果に応じてイベントIDが細分化される。タイムスタンプはイベントの発生時刻を示す。イベントの種類によっては、イベントログ11はイベントで観測された観測値を含む。
【0026】
ログ収集装置1は、産業機器100を制御すると共にイベントログ生成部101となるコンピュータ又はマイコンに兼ね備えられるものであり、CPU又はMPU等の演算制御装置2、揮発性メモリ3及び不揮発性メモリ4を備える。また演算制御装置2は集約処理部21及びメモリ制御部22を備える。
【0027】
揮発性メモリ3は、例えばSRAMやNVSRAMであり、電力供給により記憶情報を維持する。不揮発性メモリ4は、例えばフラッシュメモリであり、電力供給不要で記憶情報を維持する。揮発性メモリ3は、不揮発性メモリ4と比べて容量単価が高単価であるが、書き込み回数が無制限である。不揮発性メモリ4は、揮発性メモリ3と比べて容量単価が低単価であるが、書き込み回数が制限される。
【0028】
集約処理部21は集約データ12を生成する。集約データ12は、イベントログ11を纏めた統計情報であり、産業機器100の稼動状況を示す。典型的には、集約データ12は度数分布表であり、特定のイベントの発生回数が時間区間ごとにカウントされて成る。各時間区間を階級と呼び、各階級のカウント値を度数と呼ぶ。但し、産業機器100の稼動状況を浮き彫りにできれば、集約データ12は度数分布表に限られない。
【0029】
この集約処理部21は、等間隔の時間区間ごとに、予め定められたイベントログ11が発生した回数をカウントし、カウント結果で集約データ12を更新する。より詳細には、集約処理部21は、イベントIDを参照してイベントログ11が集約対象か判定し、またタイムスタンプを参照してイベントログ11が属する階級を決定し、決定した階級の度数をカウントアップする。
【0030】
メモリ制御部22は、イベントログ11及び集約データ12の記憶及び削除を制御する。第1に、メモリ制御部22は、イベントログ11を揮発性メモリ3に記録させる。第2に、集約データ12を最初に揮発性メモリ3に記録させる。第3に、集約データ12に纏められたイベントログ11を揮発性メモリ3から消去する。第4に、揮発性メモリ3に記憶された集約データ12を所定タイミングで不揮発性メモリ4にバックアップさせる。
【0031】
バックアップの手法は、集約データ12の移動又はコピーの何れでも良く、揮発性メモリ3に集約データ12を残してもよい。また、不揮発性メモリ4では、集約データ12を更新しても、別に記憶させてもよい。
【0032】
図2は、このログ収集装置1の動作例を示すフローチャートである。産業機器100でイベントが発生すると(ステップS01)、イベントログ生成部101はイベントログ11を生成する(ステップS02)。メモリ制御部22はイベントログ11を揮発性メモリ3に記録する(ステップS03)。
【0033】
集約処理部21はイベントログ11に含まれるイベントIDと集約対象を示す特定IDを比較する(ステップS04)。イベントIDが特定IDであると(ステップS04,Yes)、集約処理部21は、イベントログ11に含まれるタイムスタンプが属する階級を判定する(ステップS05)。階級の決定後、集約処理部21は、決定された階級の度数を1つ増加させるように、揮発性メモリ3の集約データ12を書き換える(ステップS06)。
【0034】
ステップS04において、集約処理部21は、集約対象を示す特定IDを予め記憶している。ステップS05において、階級の判定において、集約処理部21は、集約データ12を構成する各階級が示す時間区間と、イベントログ11のタイムスタンプを比較し、タイムスタンプが示す時刻が時間区間に収まるか判定すればよい。
【0035】
ステップS05において、最新の階級が有する時間区間よりもタイムスタンプが新しい場合、集約処理部21は、新しい階級を集約データ12に追記する。または、集約処理部21は、集約データ12の生成に非同期で、最新の階級が有する時間区間が過去となると、新しい階級を生成しておく。集約データ12の更新タイミングと新しい階級の追記タイミングを同期させると、イベントログ11のタイムスタンプは、判定するまでもなく最新の階級に属するため、タイムスタンプの属する階級の判定は省くことができる。
【0036】
メモリ容量の観点から集約データ12のデータ量は不変とし、集約データ12はFIFO(First In, First Out)で処理されるようにしてもよく、新しい階級の追記とともに、最古の階級を削除してもよい。
【0037】
集約データ12の書き換えが終了すると、メモリ制御部22は、集約データ12に纏められたイベントログ11を揮発性メモリ3から削除する(ステップS07)。ログ収集装置1ではステップS01〜S07が繰り返される。メモリ制御部22は、この繰り返しの間、バックアップタイミングの到来を待機する(ステップS08)。メモリ制御部22は、バックアップタイミングが到来すると(ステップS08,Yes)、揮発性メモリ3の集約データ12を不揮発性メモリ4に記憶させる(ステップS09)。
【0038】
ステップS08において、バックアップタイミングは例えば定期的である。メモリ制御部22は一定時間を計時し、一定時間の経過時点をバックアップタイミングの到来と判定する。一定期間に特に限定はないが、階級が有する時間区間の整数倍の長さであるとよい。但し、一定期間は、揮発性メモリ3の容量と産業機器100の耐用年数とを考慮し、揮発性メモリ3がイベントログ11で飽和せず、且つ耐用年数未満で不揮発性メモリ4の書き込み回数の制限を超えないようにする。
【0039】
このログ収集装置1によって生成される集約データ12の具体例を示す。
図3に示すように、集約データ12は時報である。この集約データ12は、最新の階級に現時点を含み、各階級が1時間ごとに等分に区分けされて成る。そして、この収集データ12は、直近48時間分のイベントログ11が時間区間ごとにカウントされて成る。
【0040】
図4に示す集約データ12は日報である。この集約データ12は、最新の階級に現時点を含み、各階級を1日ごとに等分に区分けされて成る。そして、この集約データ12は、直近14日分のイベントログ11が時間区間ごとにカウントされて成る。
【0041】
図5に示す集約データ12は週報である。この集約データ12は、最新の階級に現時点を含み、各階級を1週間ごとに等分に区分けされて成る。そして、この集約データ12は、直近8週間分のイベントログ11が時間区間ごとにカウントされて成る。
【0042】
図6に示す集約データ12は月報である。この集約データ12は、最新の階級に現時点を含み、各階級を1月ごとに等分に区分けされて成る。そして、この集約データ12は、直近24月分のイベントログ11がカウントされて成る。
【0043】
図7に示す集約データ12は年報である。この集約データ12は、最新の階級に現時点を含み、各階級を1年ごとに等分に区分けされて成る。そして、この集約データ12は、直近20年分のイベントログ11がカウントされて成る。
【0044】
ログ収集装置1が搭載される産業機器100の第1の例を説明する。
図8に示すように、産業機器100は産業用ロボット200である。産業用ロボット200は、移動手段201とコントローラ202を備える。移動手段201には作業ツール203が装着される。産業用ロボット200は、移動手段201と作業ツール203により、所望位置での作業を実行する。
【0045】
移動手段201は、作業ツール203をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させ、所望位置に作業ツール203を位置させる。X軸方向は、水平面と平行な軸方向である。Y軸方向は、水平面と平行でX軸と直交する他軸方向である。Z軸方向は高さ方向である。作業ツール203は、電動のネジ締めドライバ、溶接機、塗装ガン、ハンドラ等である。
【0046】
コントローラ202は、演算制御装置2、揮発性メモリ3及び不揮発性メモリ4を有するコンピュータ又はマイコンである。またコントローラ202は、移動手段201に電力パルスを供給するモータドライバ、液晶ディスプレイ等の表示部、並びにマウス、キーボード及びティーチングペンダント等の操作手段を備える。
【0047】
コントローラ202は、移動手段2
01と作業ツール203を制御する。典型的には、コントローラ202は、移動手段2の制御により作業ツール203を所望位置に移動させ、作業ツール203を制御して所望位置で作業させる。コントローラ202は、所望位置への移動と所望位置での作業を、所望位置の変更又はワークの変更と共に繰り返す。
【0048】
イベントログ生成部101及びログ収集装置1は、このコントローラ202に備えられる。産業用ロボット200で発生するイベントとして作業ツール203による作業がある。イベントログ生成部101は、作業ツール
203による所望位置での作業実行完了又は作業実行失敗を示すイベントログ11を、作業の度に生成する。ログ収集装置1は、時間区間ごとの作業実行完了数を示す時報、日報、週報、月報又は年報の集約データ12に、作業実行完了を示すイベントログ11を纏め、作業実行完了のイベントログ11を揮発性メモリ3から削除する。
【0049】
ログ収集装置1が搭載される産業機器100の第2の例を説明する。
図9に示すように、産業機器100は電動プレス300である。電動プレス300は、ラム301と電動機302を備え、ラム301の圧力によりワークを加工する。ワークの加工としては圧入や圧着が挙げられる。電動機302の駆動力はボールネジ303を通じてラム301に伝達される。ラム301の先端には起歪柱304が備えられる。電動プレス300は、起歪柱304を介してワークに荷重をかけ、ワークへの荷重値を起歪柱304で検出する。
【0050】
電動プレス300は、電動機302及び起歪柱304と信号線で接続されたコントローラ305を備える。コントローラ305は、ワークへの荷重値を起歪柱304から受信し、ワークへの荷重値が所望値となるように電動機302の駆動を制御する。
【0051】
イベントログ生成部101及びログ収集装置1は、このコントローラ305に備えられる。電動プレス300で発生するイベントとしてはプレスの実行及び荷重値の報告が挙げられる。イベントログ生成部101は、ワークをプレスするごとに、プレス実行完了又はプレス実行失敗のイベントログ11と荷重値報告のイベントログ11を生成する。ログ収集装置1は、プレス実行完了数を示す時報、日報、週報、月報又は年報の集約データ12に、プレス実行完了を示すイベントログ11を纏め、プレス実行完了のイベントログ11を揮発性メモリ3から削除する。
【0052】
ここで、産業機器100の保守要員は、イベントログ11を個々に分析するよりも、イベントログ11の集合が示す特徴から稼動状況を把握することが多い。例えば、土日祝日はイベントログ11の発生回数がゼロであるとか、数年前に1年間に亘ってイベントログ11の発生が無いとか、製造されてから数年が経過してからイベントログ11の発生が生じているという稼動状況の特徴を見い出し、例えば長期の停止期間の存在による劣化度合いの変化を評価する。
【0053】
そのため、保守要員にとっては、ログ収集装置1に集約データ12が存在すれば、例示したような稼働状況が把握可能である。そして、ログ収集装置1に集約データ12が存在すれば、メモリからイベントログ11の削除が可能であり、イベントログ11が削除できれば、ログ収集装置1に小容量の揮発性メモリ3を採用してもメモリ飽和の不都合は生じない。
【0054】
例えば、48時間分の階級で成る時報の集約データ12の場合、各階級の度数を4byteのデータで構成すると、192byteの記憶領域が揮発性メモリ3に確保されればよい。20種類のイベントログ11に対応する20種類の集約データ12を記憶させても、3840byteの記憶領域を揮発性メモリ3に確保すればよい。
【0055】
従って、このログ収集装置1は、イベントログ11を纏めた集約データ12を生成し、この集約データ12を揮発性メモリ3に記憶させると共に、イベントログ11は揮発性メモリ3から削除するようにした。これにより、産業機器100をネットワークに接続できなくとも、ヒアリングに頼ることなく、またメモリの容量や書き込み回数の制限がネックとなることなく、産業機器100の稼動状況を把握できる。更に、保守要員の作業から統計処理が排除でき、産業機器100の稼働状況の把握に迅速性が付与されるという副次的効果も奏する。
【0056】
また、このログ収集装置1は、揮発性メモリ3に加えて不揮発性メモリ4を備えるようにした。メモリ制御部22は、集約データ12を揮発性メモリ3に記憶させると共に、バックアップタイミングの到来により集約データ12を不揮発性メモリ4に記憶させるようにした。これにより、万一、電源喪失によって揮発性メモリ3から集約データ12が消失しても、集約データ12は不揮発性メモリ4に残っており、ログ収集装置1の信頼性が向上する。
【0057】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るログ収集装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
図10に示すように、ログ収集装置1は、複数の集約データ12を並行して生成し、複数の集約データ12を蓄積する。各集約データ12は、共に度数分布表である。各集約データ12は、FIFO処理に用いた階級の入れ替えにより、現時点を含む階級を有する。
【0059】
但し、各データ12を構成する階級の時間区間は、他のデータ12を構成する階級の時間区間と異なる。ここで、時間区間がn番目に長い階級で構成される集約データ12をn番目の集約データ12といい、時間区間がn−1番目に長い階級で構成される集約データ12をn−1番目の集約データ12というと、n番目の集約データ12は、階級の時間区間がn−1番目の集約データ12と比べて整数倍長い。
【0060】
例えば、集約処理部21は、1時間区切りの時報により成る集約データ12、1日区切りの日報により成る集約データ12、1週間区切りの週報により成る集約データ12、1月区切りの月報により成る集約データ12、及び1年区切りの年報により成る集約データ12を生成し、これら集約データ12を全て蓄積する。
【0061】
集約処理部21は、時間区間が短い階級でイベントログ11を纏めた集約データ12(以下、本実施形態において短期集約データ12という)を参照して、時間区間が長い階級でイベントログ11を纏めた集約データ12(以下、本実施形態において長期集約データ12という)を生成する。
【0062】
図11は、この集約処理部21の動作を主とするログ収集装置1の動作を示すフローチャートである。産業機器100でイベントが発生すると(ステップS21)、イベントログ生成部101はイベントログ11を生成する(ステップS22)。メモリ制御部22は、イベントログ11を揮発性メモリ3に記憶させる(ステップS23)。
【0063】
集約処理部21はイベントログ11のイベントIDが集約対象を示す特定IDであるか判定する(ステップS24)。イベントIDが特定IDであると(ステップS24,Yes)、集約処理部21は、タイムスタンプが短期集約データ12の階級の何れに属するか決定する(ステップS25)。階級の決定後、集約処理部21は、決定された階級の度数を1つ増加させるように、短期集約データ12を書き換える(ステップS26)。メモリ制御部22は、短期集約データ12に纏められたイベントログ11を揮発性メモリ3から削除する(ステップS27)。
【0064】
集約処理部21は、一定期間を計時する(ステップS28)。一定期間は、少なくとも長期集約データ12を構成する階級の長さ以上である。一定期間が経過すると(ステップS28,Yes)、集約処理部21は長期集約データ12bに最新の階級を追加する(ステップS29)。そして、集約処理部21は、この最新の階級に収まる短期集約データ12の全階級の度数を合算し(ステップS30)、合算値を長期集約データ12bの新しい階級の度数として、長期集約データ12bに書き込む(ステップS31)。
【0065】
メモリ制御部22は、短期集約データ12から最新の階級と度数を残し、他の階級と度数を削除するように、短期集約データ12を書き換える(ステップS32)。
【0066】
このログ収集装置1による集約データ12の具体例を示す。例えば、短期集約データ12は日報であり、長期集約データ12は週報である。集約処理部21は、1日分のイベントログ11を纏めて日報の短期集約データ12を生成する。集約処理部21は、1週間ごとに長期集約データ12を更新する。集約処理部21は、短期集約データ12に書き込まれている最新7日分の階級の全度数を合算する。そして、集約処理部21は、長期集約データ12に最新週の階級を生成し、最新週の階級に合算値を書き込む。
【0067】
尚、短期集約データ12と長期集約データ12とは相対的であり、集約処理部21は、
図10に示すように、時報から日報を生成し、日報から週報を生成し、週報から月報を生成し、月報から年報を生成し、時報、日報、週報、月報及び年報の全てを蓄積するようにしてもよい。時報と日報の関係では、時報が短期集約データ12であり、日報が長期集約データ12である。週報と月報の関係では、週報が短期集約データ12であり、月報が長期集約データ12である。
【0068】
時間区間の異なる階級で成る複数の集約データ12は、総合すると、現在時点に近づくほど情報密度が高く、現時点から遡るほど情報密度が粗い統計情報となる。例えば、現時点から過去48時間は1時間ごとにイベントの発生回数が記され、過去48時間以前の2週間は、1日ごとにイベントの発生回数が記され、過去2週間以前の2ヶ月間は、1週間ごとにイベントの発生回数が記され、過去2ヶ月間以前の24ヶ月間は、1ヶ月ごとにイベントの発生回数が記され、過去24ヶ月以前の20年間は、1年ごとにイベントの発生回数が記された集約データ12の集合となる。
【0069】
異常原因の究明において、異常発生の直近における詳細な稼動状況と、異常発生までの稼動状況の傾向とを把握したい場合が多い。すなわち、異常原因の究明において、異常が発生した現時点に近いほど情報密度が高く、また現時点から遠ざかるほど情報密度が低いという特質を有する、これら集約データ12の集合は、異常原因の究明把握に過不足の無い情報量を有しつつ、小データ量で揮発性メモリ3を飽和させ難い。
【0070】
例えば、産業機器100に使用中断期間が存在していたり、産業機器100の販売から稼働開始に長い間が存在すると、経年劣化が加味されるために、継続使用と比べて使用可能回数が減ることがある。これら集約データ12は、そのような稼動状況の把握にも過不足が無い。また、各階級の度数が4byteのデータ量で構成される場合、時報の集約データ12は192byte、日報の集約データ12は56byte、週報の集約データ12は32byte、月報の集約データ12は96byte、年報の集約データ12は80byteとなり、合計で456byteの揮発性メモリ3であれば十分である。
【0071】
従って、現時点を含む階級を含み、他の集約データ12と異なる長さの時間区間を有する階級で構成される複数の集約データ12を生成するようにすれば、集約データ12は小データ量で過不足無い情報量を維持する。そのため、産業機器100の稼動状況を詳細に把握できるようにしても、メモリがネックとなることを抑制できる。
【0072】
尚、蓄積せずとも、把握すべき稼動状況によっては、時報、日報、週報、月報及び年報の全てを生成及び一部の組み合わせを生成及び蓄積しておけばよい。また、集約データ12を構成する階級の時間区間は、必ずしも1時間単位、1日単位、1週間単位、1月単位、1年単位である必要はない。例えば、24時間3交代制で稼働する産業機器100にあっては、8時間の時間区間を有する階級で成る集約データ12を生成及び蓄積することもできる。
【0073】
また、短期集約データ12に関しては、最新の階級を残して他の階級を削除してもよい。この場合、他の階級は、長期集約データ12を生成するための情報としての性格を有する。短期集約データ12から削除された情報は長期集約データ12によって補うことができ、更なるメモリの削減が可能となるためである。
【0074】
例えば、時報、日報、週報、月報及び年報から成る集約データ12の場合、短期集約データ12を参照した長期集約データ12の生成が終了すると、年報以外の集約データ12が各々4byteであり、20年間分の年報が80byteであるため、合計で96byteの揮発性メモリ3があれば十分となる。
【0075】
また、本実施形態では、短期集約データ12を参照して長期集約データ12を生成した。これに限らず、特定のイベントが発生すると、短期集約データ12と長期集約データ12の両方が備える最新の階級の度数をカウントアップするようにしてもよい。
【0076】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るログ収集装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。第1又は第2の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
産業機器100の稼動状況を示すために適切であれば、集約データ12を構成する各階級の時間区間は等分する必要は無く、またイベントの発生回数をカウントするものに限られない。
図12に示すように、集約データ12の各階級は2のべき乗で増加する時間区間を有するようにしてもよい。各階級の時間区間は、イベントログ11の発生間隔を示す。例えば、2分間隔及び4分間隔の階級を含む集約データ12において、4分間隔の階級には、イベントログ11の発生間隔が2分超4分以内であった回数がカウントされる。
【0078】
図13は、この集約データ12を生成するログ収集装置1の動作を示すフローチャートである。産業機器100でn番目のイベントが発生すると(ステップS41)、イベントログ生成部101はn番目のイベントログ11を生成する(ステップS42)。メモリ制御部22はn番目のイベントログ11を揮発性メモリ3に記憶させる(ステップS43)。集約処理部21は、n番目のイベントログ11が生成されると、発生間隔の計時を開始する(ステップS44)。
【0079】
産業機器100でn+1番目のイベントが発生すると(ステップS45)、イベントログ生成部101はn+1番目のイベントログ11を生成する(ステップS46)。メモリ制御部22はn+1番目のイベントログ11を揮発性メモリ3に記憶させる(ステップS47)。集約処理部21は、発生間隔の計時を終了する(ステップS48)。
【0080】
集約処理部21は、計時した発生間隔が属する階級を判定する(ステップS49)。階級の決定後、集約処理部21は、決定された階級の度数が1つ増加するように、揮発性メモリ3の集約データ12を書き換える(ステップS50)。そして、メモリ制御部22は、集約データ12に纏めたn番目とn+1番目のイベントログ11を揮発性メモリ3から削除する(ステップS51)。尚、発生間隔の計時ができれば、イベントログ11の削除タイミングは任意である。
【0081】
このように、ログ収集装置1において、集約処理部21は、一つの集約データ12を生成し、この集約データ12は、各階級が等分で無く、各階級が異なる長さの時間区間を有するようにした。各階級は、時間区間が2のべき乗で異なり、イベントの発生間隔別に度数がカウントされる。
【0082】
この例による集約データ12では、特異な発生間隔の抽出が容易となり、産業機器100の使用停止期間の存在が明確に浮き上がり、また土日祝日に稼働停止する等の事実が明確に浮き上がり、産業機器100の稼働状況の把握精度が高まる。時報、日報及び週報等を並列して生成することなく、一つの集約データ12で長期の傾向を表すため、ログ収集装置1に搭載されるメモリ容量が更に削減される。
【0083】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るログ収集装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。第3の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0084】
図14に示すように、一つの集約データ12を構成する各階級が他の階級と比べて長さを相違させており、例えば時間区間が2のべき乗で増加する各階級を有する。この時間区間はイベントログ11の発生間隔を示す。更に、各階級には、度数の他、イベントログ11の発生間隔の和、及びイベントログ11の発生間隔の2乗和が記録される。
【0085】
図15は、この集約データ12を生成するログ収集装置1の動作を示すフローチャートである。産業機器100でn番目のイベントが発生すると(ステップS61)、イベントログ生成部101は、イベントログ11を生成する(ステップS62)。メモリ制御部22は、イベントログ11を揮発性メモリ3に記憶させる(ステップS63)。集約処理部21は、n番目のイベントログ11が生成されると、発生間隔の計時を開始する(ステップS64)。
【0086】
また、産業機器100でn+1番目のイベントが発生すると(ステップS65)、イベントログ生成部101は、イベントログ11を生成する(ステップS66)。メモリ制御部22は、イベントログ11を揮発性メモリ3に記憶させる(ステップS67)。集約処理部21は、発生間隔の計時を終了する(ステップS68)。
【0087】
集約処理部21は、計時した発生間隔が属する階級を判定する(ステップS69)。階級が決定すると、集約処理部21は、決定された階級の度数が1つ増加するように、揮発性メモリ3の集約データ12を書き換える(ステップS70)。また、集約処理部21は、計時した発生間隔を階級の発生間隔の和に加算する(ステップS71)。更に、集約処理部21は、計時した発生間隔の2乗和を階級の発生間隔の2乗和に加算する(ステップS72)。メモリ制御部22は、集約データ12に纏めたn番目とn+1番目のイベントログ11を揮発性メモリ3から削除する(ステップS73)。
【0088】
すなわち、集約処理部21は、発生間隔を計時すると、その発生間隔が属する階級に記録されている発生間隔の和に新たに計時した発生間隔を加算する。また、集約処理部21は、発生間隔を計時すると、その発生間隔を2乗した値を、その発生間隔が属する階級に記録されている発生間隔の2乗和に加算する。
【0089】
この例による集約データ12からは、発生間隔別の度数と発生間隔の和と発生間隔の2乗和から発生間隔の平均値、分散値及び偏差を導くことができ、稼働状況の高度な分析が可能となる。このように、集約処理部21は、集約データ12は度数分布表に限らず、各種各様の統計手法により生成することができ、階級に度数を紐づけず、または階級に度数に加えて、イベントログ11に記録された各種数値をパラメータとする計算結果を紐づけるようにしてもよい。
【0090】
電動プレス300に搭載されるログ収集装置1において、集約処理部21は、各々現時点を含む階級を有し、階級の時間区間が異なる複数種類の集約データ12を生成するようにしてもよい。各階級にはボールネジ303の消耗値が記録される。消耗値は、ラム303の動作距離とワークへの荷重値を掛け合わせた乗算値の累積値である。これら集約データ12を参照すれば、ボールネジ303の交換時期を計算することもできる。
【0091】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係るログ収集装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。第1乃至第4の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0092】
このログ収集装置1は、特定のイベントログ11の発生時をバックアップタイミングとして、揮発性メモリ3の集約データ12を不揮発性メモリ4へ記録する。特定のイベントログ11は、産業機器100の稼働エラーを示し、又は異常値を観測値に含む。産業機器100がロボット200又は電動プレス300の場合、特定のイベントログ11は、作業ツール203による作業失敗又は作業不全を示し、若しくはラム301の稼働失敗又は稼働不全を示し、又は異常である荷重値を含む。
【0093】
図16は、本実施形態に係るメモリ制御部22の第1の動作例を示すフローチャートである。メモリ制御部22は、イベントログ11が生成されると(ステップS81)、イベントログ11のイベントIDがバックアップタイミングを特定するイベントIDであるか判定する(ステップS82)。バックアップタイミングを示すイベントIDがイベントログ11に含まれていると(ステップS82,Yes)、メモリ制御部22は、揮発性メモリ3に記憶されている集約データ12を不揮発性メモリ4に記憶させる(ステップS83)。
【0094】
図17は、本実施形態に係るメモリ制御部22の第2の動作例を示すフローチャートである。メモリ制御部22は、イベントログ11が生成されると(ステップS91)、イベントログ11に含まれる観測値が所定範囲内であるか判定する(ステップS92)。メモリ制御部22は、観測値と比較する所定範囲の上限値及び下限値の情報を予め記憶している。観測値が所定範囲から逸脱していると(ステップS92,Yes)、メモリ制御部22は、揮発性メモリ3に記憶されている集約データ12を不揮発性メモリ4に記憶させる(ステップS93)。
【0095】
異常発生原因の究明ためには、異常発生の直前から過去の稼動状況を示す情報を確定し、保全しておく必要がある。異常発生以降のイベントログ11が加味された集約データ12は、稼動状況を把握し難くするノイズを含むことになる。このログ収集装置1は、異常発生を示すイベントログ11を契機に集約データ12を不揮発性メモリ4に記録するので、不揮発性メモリ4に記憶された集約データ12は、異常発生原因の究明に過不足無く、異常発生原因を作出した稼動状況を精度良く表すものとなる。
【0096】
従って、異常発生を示すイベントの発生をバックアップタイミングとして、集約データ12を不揮発性メモリ4に記憶させることにより、産業機器101の稼動状況を精度よく把握できる集約データ12を不揮発性メモリ4に残しておくことができる。
【0097】
尚、特定のイベントの発生原因となった稼動状況を把握するために、特定のイベントの発生を契機に集約データ12の内容を確定させたい場合もある。そのため、異常発生のイベントに限らず、様々な特定のイベントを契機に不揮発性メモリ4へ集約データ12を記録するようにしてもよい。
【0098】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係るログ収集装置1について図面を参照しつつ詳細に説明する。第1乃至第5の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0099】
図18に示すように、ログ収集装置1はインターフェース5を備えている。インターフェース5は、USBメモリ、SDカード及びCD−RAM等の可搬記憶媒体の読み書き可能なポート又はドライブである。不揮発性メモリ4は、ログ収集装置1に常設されるものではなく、着脱可能な可搬記憶媒体である。メモリ制御部22は、可搬記憶媒体である不揮発性メモリ4のログ収集装置1への接続をバックアップタイミングとし、可搬記憶媒体である不揮発性メモリ4に集約データ12を記憶させる。
【0100】
図19は、本実施形態に係るメモリ制御部22の動作例を示すフローチャートである。インターフェース5に可搬記憶媒体である不揮発性メモリ4が接続されると(ステップS101,Yes)、メモリ制御部22は、揮発性メモリ3に記憶されている集約データ12をログ収集装置1に接続された不揮発性メモリ4に記憶させる(ステップS102)。
【0101】
産業機器100による異常検出前に、作業者が異常又は異常の予兆を検出する場合もある。例えば、作業完了失敗を示すイベントログ11は生成されていないが、または異常値を含むイベントログ11は生成されていないが、作業時に異音を聴取する場合がある。この場合、異常原因究明に真に有益な集約データ12は、作業者による異常検出直前までの稼動状況であり、作業者による可搬記憶媒体の接続という、作業者によるログ収集装置1への所定の操作によって、その集約データ12を確定及び保全できる。
【0102】
作業者による所定の操作は可搬記憶媒体の接続に限られない。但し、可搬記憶媒体の接続をバックアップタイミングとすると、保守要員へ渡す集約データ12のコピー作業が兼ねられ、労力の削減となる。
【0103】
(他の実施形態)
以上のように本発明の実施形態を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。