(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.粘着シートの概要
図1は、本発明の好ましい実施形態による粘着シートの概略断面図である。粘着シート100は、伸長性基材10と、該伸長性基材の片側または両側(図示例では片側)に配置された粘着剤層30と、伸長性基材10と粘着剤層30との間に配置された中間層20を備える。粘着剤層30は粘着剤31と熱膨張性微小球32とを含む。上記粘着シートは、任意の適切なその他の層をさらに備えていてもよい。また、粘着シートが実用に供されるまでの間、粘着剤層30上に剥離紙が配置されて粘着剤層30が保護されていてもよい。なお、図示例においては、粘着剤層30と中間層20との界面を明確に図示しているが、界面は目視、顕微鏡等で判別し難い界面であってもよい。目視、顕微鏡等で判別し難い界面は、例えば、各層の組成を分析して判別することができる(詳細は後述する)。
【0012】
上記のとおり、本発明の粘着シートに備えられる粘着剤層は、熱膨張性微小球を含む。該熱膨張性微小球は所定温度で発泡し得る。このような熱膨張性微小球を含む粘着剤層は、加熱によって熱膨張性微小球が発泡することにより、粘着面(すなわち粘着剤層表面)に凹凸が生じて、粘着力が低下または消失する。本発明の粘着シートを、例えば、電子部品(例えば、セラミックコンデンサ)の加工時、加工物の仮固定用シートとして用いた場合、該加工物に所定の加工を施す際には仮固定に必要な粘着性が発現され、加工後に加工物から粘着シートを剥離する際には、加熱により粘着力が低下または消失して、良好な剥離性が発現される。
【0013】
上記熱膨張性微小球は、その少なくとも一部が、粘着剤層から中間層に向けて突出していてもよい。この場合、熱膨張性微小球の突出部分は、中間層に埋め込まれ覆われるようにして存在する。
【0014】
本発明においては、中間層を設けることにより、熱膨張性微小球が粘着剤層から突出することを許容して、粘着剤層を薄くすることができる。その結果、粘着シート上(実質的には粘着剤層上)に被加工物を密着させて該被加工物を切断した際、切断後のチップの再付着を防止することができる。本発明の作用は以下のように推測される。従来の粘着シートにおいては、切断時、被加工物に挿入された切断刃が粘着剤層に到達した後、粘着剤層、次いで、被加工物から切断刃が引き抜かれる際、切断刃の移動により粘着剤が引きずれられ、該粘着剤がチップの切断面に付着する。さらに、チップを粘着シートから剥離する際にも、粘着剤のチップ断面への移動が生じる。このような現象の結果、チップが再付着しやすくなると考えられる。一方、本発明においては、粘着剤層の厚みが薄いため、粘着剤層の流動量が少なく、チップの切断面に粘着剤が付着しがたくなり、チップの再付着を防止することができる。本発明によれば、より微少なチップ(例えば、0.1mm×0.05mm〜6.4mm×3.2mmサイズのチップ)であっても、再付着が防止され得る。なお、中間層を設けずに、単に粘着剤層を薄くした場合、粘着剤層から突出した熱膨張性微小球の突出部が伸長性基材に接触し、その影響により、粘着剤層の伸長性基材とは反対側の面(すなわち、粘着面)に凹凸が生じる。このような粘着シートは、接着性が十分ではなく、また、該粘着シート上で被着体を加工する際の加工不良の原因となる。
【0015】
さらに、本発明においては、中間層を設けることにより、伸長性基材を備える粘着シートの熱剥離性を向上させることができる。通常、非伸長性基材上に粘着剤層を設けた場合、粘着剤層の拘束面(基材と接する内側面)近傍と非拘束面(拘束面とは反対側の面、すなわち外表面)近傍とで、粘着剤層の変形しやすさが異なり、外表面近傍の方が変形しやすい。そのため、粘着剤層中の熱膨張性微小球が発泡した際に生じた応力は、主に外表面を変形させる。その結果、非伸長性基材を用いた粘着シートは、良好な剥離性を示す。しかしながら、伸長性基材上に粘着剤層を設けた場合、粘着剤層は、内側面近傍でも変形しやすくなり、熱膨張性微小球が発泡した際に生じた応力が分散してしまう。そのため、従来の伸長性基材を用いた粘着シートにおいては、熱膨張性微小球を添加した効果を十分に得ることができない。一方、本願発明の粘着シートにおいては、比較的高弾性な中間層を設けることにより、粘着剤層内側面への拘束力が高まり、伸長性基材を備えながらも、良好な熱剥離性を発現することができる。
【0016】
上記熱膨張性微小球の粘着剤層から突出している部分の高さHは、好ましくは0.4μm以上であり、より好ましくは0.4μm〜80μmであり、さらに好ましくは0.6μm〜80μmである。
【0017】
本発明の粘着シートのポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、厚さ25μm)に対する粘着力は、好ましくは0.1N/20mm以上であり、より好ましくは1.0N/20mm〜50N/20mmであり、さらに好ましくは2.0N/20mm〜20N/20mmである。このような範囲であれば、例えば、電子部品の製造に用いられる仮固定用シートとして有用な粘着シートを得ることができる。また、粘着力が0.1N/20mm未満であると、粘着シート上で被着体を切断する場合に、切断工程、チップ同士の引き離し工程等で、不要な被着体の剥離が生じるおそれがある。一方、上記粘着力が50N/20mmを超えると、加熱による熱膨張性微小球の発泡が不十分となり、粘着力低下が粘着面内で不均一となるおそれがある。本明細書において粘着力とは、熱膨張性微小球が発泡する前の粘着剤層について、23℃の環境下で、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。
【0018】
1つの実施形態においては、粘着剤層が硬化性の粘着剤を含み、該粘着剤を硬化(例えば、活性エネルギー線、好ましくは紫外線による硬化)させた後に、該粘着剤層のSUS304BAに対する粘着力が上記範囲となることが好ましい。粘着剤を硬化させる方法としては、例えば、粘着シートをSUS304BAに貼り付けた後、紫外線照射機「UM810(高圧水銀灯光源)」(日東精機社製)を用いて、粘着シート側から積算光量600mJ/cm
2の紫外線を照射する方法が挙げられる。
【0019】
本発明の粘着シートの厚さは、好ましくは30μm〜500μmであり、より好ましくは40μm〜300μmであり、さらに好ましくは50μm〜200μmである。
【0020】
本発明の粘着シートの23℃における破断伸度は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは250%以上であり、さらに好ましくは250%〜1000%であり、特に好ましくは250%〜800%である。上記破断伸度は、JIS K7113に準じて測定され得る。
【0021】
本発明の粘着シートの90℃における破断伸度は、好ましくは130%〜1500%であり、より好ましくは150%〜1400%であり、さらに好ましくは200%〜1300%である。このような範囲であれば、熱膨張性微小球を発泡させる加熱処理時における作業性に優れる粘着シートを得ることができる。
【0022】
本発明の粘着シートの23℃における25%モジュラスは、好ましくは1N/10mm〜100N/10mmであり、より好ましくは2N/10mm〜60N/10mmであり、さらに好ましくは3N/10mm〜30N/10mmである。1つの実施形態においては、本発明の粘着シートの23℃における25%モジュラスは、30N/10mm以下である。このような範囲であれば、良好なエキスパンド性が得られる。25%モジュラスの測定方法は後述する。
【0023】
B.粘着剤層
上記粘着剤層は、粘着性を付与するための粘着剤と、熱膨張性微小球とを含む。
【0024】
上記粘着剤層の厚さは、好ましくは1μm〜25μmであり、より好ましくは1μm〜15μmであり、さらに好ましくは2μm〜10μmである。このような範囲であれば、切断後のチップの再付着を防止する効果が顕著となる。なお、本明細書において、粘着剤層の厚みとは、
図1に示すように、中間層20を構成する材料と粘着剤層30を構成する粘着剤32との界面から、粘着剤層の該界面とは反対側の面までの距離をいう。すなわち、粘着剤層30から熱膨張性微小球31が突出している場合、突出している部分については、粘着剤層の厚みの評価対象外とする。粘着シートを割断して割断面を目視した際に、中間層20を構成する材料と粘着剤層30を構成する粘着剤32との界面が明確である場合は、粘着剤層(および中間層)の厚みは、定規、ノギス、マイクロメータを用いて測定され得る。また、電子顕微鏡、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡等の顕微鏡を用いて粘着剤層の厚みを測定してもよい。さらに、中間層と粘着剤層との組成の相違により界面を判別して粘着剤層(および中間層)の厚みを測定してもよい。例えば、ラマン分光分析、赤外分光分析、X線電子分光分析等の分光分析;マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI―TOFMS)や飛行時間2次イオン質量分析計(TOF−SIMS)などの質量分析等により、中間層を構成する材料および粘着剤層を構成する粘着剤の組成を分析し、該組成の相違により界面を判別して粘着剤層(および中間層)の厚みを測定することができる。このように、分光分析または質量分析により界面を判別する方法は、目視あるいは顕微鏡を用いた観察では界面を判別し難い場合に有用である。
【0025】
上記粘着シートを被着体に密着させた際の粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは1500MPa以下であり、より好ましくは1MPa〜1200MPaであり、さらに好ましくは2MPa〜800MPaである。このような範囲であれば、切断後のチップの再付着を防止する効果が顕著となり、粘着性に優れ、かつ、熱膨張性微小球の発泡を阻害しない粘着剤層を形成することができる。上記弾性率は、例えば、粘着剤層に含まれる粘着剤の組成;粘着剤のベースポリマーとなる樹脂材料の種類、分子量、架橋度等により調整することができる。なお、ナノインデンテーション法による弾性率とは、圧子を試料(熱膨張性微小球が存在しない箇所)に押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さとを負荷時、除荷時にわたり連続的に測定し、得られた負荷荷重−押し込み深さ曲線から求められる。本明細書において、ナノインデンテーション法による弾性率とは、測定条件を荷重:1mN、負荷・除荷速度:0.1mN/s、保持時間:1s、環境温度:23℃として上記のように測定した弾性率をいう。
【0026】
上記粘着シートを被着体に密着させた際の上記粘着剤層の厚みと粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率との関係は、好ましくは0.05(MPa・μm
−1)≦(1/粘着剤層の厚み(μm))×粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率(MPa)≦40(MPa・μm
−1)であり、より好ましくは0.1(MPa・μm
−1)≦(1/粘着剤層の厚み(μm))×粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率(MPa)≦38(MPa・μm
−1)であり、さらに好ましくは0.5(MPa・μm
−1)≦(1/粘着剤層の厚み(μm))×粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率(MPa)≦35(MPa・μm
−1)である。なお、本明細書において、「粘着シートを被着体に密着させた」状態とは、粘着剤層が所定の粘着力(例えば、上記範囲の粘着力)を発現する状態を意味し、粘着剤層が硬化性の粘着剤を含む場合には、粘着剤を硬化して粘着力を調整した後の状態を意味する。また、熱膨張性微小球を発泡させる前の状態を意味する。このような状態は、被加工物である被着体を貼着し、固定された該被着体が加工に供される段階の状態でもある。
【0027】
粘着剤層の厚みとナノインデンテーション法による弾性率(以下、単に弾性率ともいう)との関係を上記範囲とすることにより、粘着剤層の流動量に加えて、流動性も適切に調整された粘着剤を形成することができる。その結果、粘着シート上(実質的には粘着剤層上)に被加工物を密着させて該被加工物を切断した際、切断後のチップの再付着を防止する効果がより顕著となる。さらに、粘着剤層の厚みと弾性率との関係が上記範囲に調整された粘着シートを用い、該粘着シート上で被加工物を切断すれば、切断面の平滑性に優れるチップを得ることができる。これは、粘着剤層の厚みと弾性率との関係を上記範囲とすることにより、切断時における被加工物の振動が抑えられるためであると考えられる。
【0028】
1つの実施形態においては、粘着剤層が硬化性の粘着剤を含み、該粘着剤を硬化(例えば、活性エネルギー線、好ましくは紫外線による硬化)させた後に、粘着剤層の厚みと弾性率との関係が上記範囲となる。このような実施形態においては、例えば、粘着剤としてUV硬化性粘着剤を用い、粘着剤層に気泡等がかみこまないようにして、粘着剤層と被着体とを貼り合わせ、該粘着剤層に紫外線を照射して該粘着剤層を硬化させた後、粘着剤層の厚みと弾性率との関係が上記範囲となることが好ましい。硬化性の粘着剤を含み、粘着剤硬化後に厚みと弾性率との関係が上記範囲となる粘着剤層を備える粘着シートは、貼り付け時(すなわち、粘着剤硬化前)の作業性に優れる。さらに、該粘着シートは、被着体を貼り付けた後に粘着剤を硬化した際、被着体が脱離しない程度の粘着性を発現し得、かつ、該粘着シートを用いて被着体を切断すれば、上記のように、切断後のチップの再付着が防止される。粘着剤を硬化させる方法としては、上記A項で説明した方法が採用され得る。
【0029】
25℃の環境温度下、上記熱膨張性微小球を発泡させる前における、上記粘着剤層の表面粗さRaは、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは400nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。このような範囲であれば、被着体の貼着面に生じる凹凸を低減し得る粘着シートを得ることができる。表面粗さRaは、JIS B 0601:1994に準じて測定することができる。
【0030】
本発明の粘着シートを加熱して、熱膨張性微小球を発泡させた後における、上記粘着剤層の表面粗さRaは、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。このような範囲であれば、加熱後に粘着力が低下または消失して、被着体を容易に剥離させ得る粘着シートを得ることができる。なお、ここで、粘着剤層の表面粗さRaとは、被着体のない状態で加熱した後の粘着剤層の表面粗さRaをいう。
【0031】
B−1.粘着剤
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。1つの実施形態においては、上記粘着剤として、硬化型粘着剤が用いられ、好ましくは活性エネルギー線硬化型粘着剤が用いられる。別の実施形態においては、上記粘着剤として、感圧型粘着剤が用いられる。感圧型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。好ましくは、硬化型粘着剤が用いられる。硬化型粘着剤を用いれば、被着体を貼着する際には作業性に優れ、かつ、粘着剤を硬化して被着体を粘着剤層に密着させた後は、上記弾性率を有する粘着剤層が形成され、チップの再付着を防止し得る粘着シートを提供することができる。被着体を貼着する際(すなわち、硬化前)の粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率は、例えば、0.01MPa〜50MPaである。
【0032】
(活性エネルギー線硬化型粘着剤)
上記活性エネルギー線硬化型粘着剤を構成する樹脂材料としては、例えば、紫外線硬化システム(加藤清視著、総合技術センター発行、(1989))、光硬化技術(技術情報協会編(2000))、特開2003−292916号公報、特許4151850号等に記載されている樹脂材料が挙げられる。より具体的には、母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む樹脂材料(R1)、活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)等が挙げられる。
【0033】
上記母剤となるポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)等のゴム系ポリマー;シリコーン系ポリマー;アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記活性エネルギー線反応性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する官能基を複数有する光反応性のモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和官能基を有する化合物が好ましく用いられ、エチレン性不飽和官能基を有する(メタ)アクリル系化合物がより好ましく用いられる。エチレン性不飽和官能基を有する化合物は、紫外線によりラジカルを容易に生成するため、当該化合物を用いれば、短時間で硬化し得る粘着剤層を形成することができる。また、エチレン性不飽和官能基を有する(メタ)アクリル系化合物を用いれば、硬化後に適度な硬さ(具体的には、熱膨張性微小球が良好に発砲し得る硬さ)を有する粘着剤層を形成することができる。光反応性のモノマーまたはオリゴマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物等の(メタ)アクリロイル基含有化合物;該(メタ)アクリロイル基含有化合物の2〜5量体;等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、上記活性エネルギー線反応性化合物として、エポキシ化ブタジエン、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルシロキサン等のモノマー;または該モノマーから構成されるオリゴマーを用いてもよい。これらの化合物を含む樹脂材料(R1)は、紫外線、電子線等の高エネルギー線により硬化することができる。
【0036】
さらに、上記活性エネルギー線反応性化合物として、オニウム塩等の有機塩類と、分子内に複数の複素環を有する化合物との混合物を用いてもよい。該混合物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線)の照射により有機塩が開裂してイオンを生成し、これが開始種となって複素環の開環反応を引き起こして3次元網目構造を形成し得る。上記有機塩類としては、例えば、ヨードニウム塩、フォスフォニウム塩、アンチモニウム塩、スルホニウム塩、ボレート塩等が挙げられる。上記分子内に複数の複素環を有する化合物における複素環としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン、チイラン、アジリジン等が挙げられる。
【0037】
上記母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物とを含む樹脂材料(R1)において、活性エネルギー線反応性化合物の含有割合は、母剤となるポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜500重量部であり、より好ましくは1重量部〜300重量部であり、さらに好ましくは10重量部〜200重量部である。
【0038】
上記活性エネルギー線反応性ポリマーとしては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーが挙げられる。好ましくは、エチレン性不飽和官能基を有する化合物(ポリマー)が用いられ、より好ましくはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる。活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーの具体例としては、多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマー等が挙げられる。該多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマーは側鎖に、炭素数が4以上のアルキルエステルを有することが好ましく、炭素数が6以上のアルキルエステルを有することがより好ましく、炭素数が8以上のアルキルエステルを有することがさらに好ましく、炭素数が8〜20のアルキルエステルを有することが特に好ましく、炭素数が8〜18のアルキルエステルを有することが最も好ましい。側鎖に炭素数が4以上のアルキルエステルを有するポリマーを用いれば、粘着剤硬化後においても、被着体(例えば、セラミックコンデンサ)に対する濡れ性に優れる粘着剤層を形成することができる。その結果、被着体の不要な脱落(例えば、被着体加工時の脱落)を防止することができる。上記ポリマーにおいて、側鎖として炭素数が4以上のアルキルエステルを有する構成単位の含有割合は、該ポリマーを構成する全構成単位に対して、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは50重量%〜80重量%である。
【0039】
上記活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)は、上記活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)をさらに含んでいてもよい。
【0040】
上記活性エネルギー線硬化型粘着剤は、活性エネルギー線の照射により硬化し得る。本発明の粘着シートにおいては、粘着剤を硬化させる前に被着体を貼着した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤を硬化させることにより、該被着体を密着させることができる。活性エネルギー線としては、例えば、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、ラジオ波、アルファ線、ベータ線、電子線、プラズマ流、電離線、粒子線等が挙げられる。活性エネルギー線の波長、照射量等の条件は、用いる樹脂材料の種類等に応じて、任意の適切な条件に設定され得る。例えば、照射量10〜1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、粘着剤を硬化させることができる。
【0041】
(アクリル系粘着剤)
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステルが挙げられる。なかでも、炭素数が4〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。
【0042】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。
【0043】
(ゴム系粘着剤)
上記ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム;ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、これらの変性体等の合成ゴム;等をベースポリマーとするゴム系粘着剤が挙げられる。
【0044】
(添加剤)
上記粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、開始剤、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0045】
1つの実施形態においては、上記粘着剤は、粘着付与剤および/または可塑剤を含む。粘着剤に粘着付与剤および/または可塑剤を含有させれば、上記熱膨張性微小球が発砲しやすい粘着剤層を形成することができる。
【0046】
上記粘着付与剤としては、任意の適切な粘着付与剤が用いられる。粘着付与剤としては、例えば、粘着付与樹脂が用いられる。粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、未変性ロジン、変性ロジン、ロジンフェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂など)、テルペン系粘着付与樹脂(例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂)、炭化水素系粘着付与樹脂(例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(例えば、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂など)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂など)、フェノール系粘着付与樹脂(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂、レゾール、ノボラックなど)、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。なかでも好ましくは、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂または炭化水素系粘着付与樹脂(スチレン系樹脂など)である。粘着付与剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
1つの実施形態においては、ロジン系粘着付与樹脂および/またはテルペン系粘着付与樹脂が用いられる。これらの粘着付与樹脂は、(メタ)アクリル系化合物を含む粘着剤((メタ)アクリル系の活性エネルギー線反応性化合物または活性エネルギー線反応性ポリマーから構成される上記活性エネルギー線硬化型粘着剤;上記アクリル系粘着剤等)と併用された場合に、特に有用である。より詳細には、上記粘着付与樹脂は、(メタ)アクリル系化合物を含む粘着剤に対する相溶性が良好であるため、該粘着付与樹脂を用いれば、粘着剤層表面の微小領域間での粘着力差異が生じがたく、小さな被着体(被加工物)を取り扱うのに好適な粘着シートを得ることができる。
【0048】
上記粘着付与剤の添加量は、上記母剤となるポリマーまたはベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部〜100重量部であり、より好ましくは2重量部〜60重量部であり、さらに好ましくは20重量部〜50重量部である。
【0049】
上記粘着付与剤の軟化点は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは60℃〜150℃である。このような範囲であれば、被着体加工時には硬く、上記熱膨張性微小球を発泡させるための加熱で柔らかくなる粘着剤層を形成することができる。
【0050】
上記粘着付与剤の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以上であり、より好ましくは40mgKOH/g〜400mgKOH/gである。水酸基価がこのような範囲の粘着付与剤は、(メタ)アクリル系化合物を含む粘着剤((メタ)アクリル系の活性エネルギー線反応性化合物または活性エネルギー線反応性ポリマーから構成される上記活性エネルギー線硬化型粘着剤;上記アクリル系粘着剤等)と併用された場合に、特に有用である。より詳細には、水酸基価が上記範囲の粘着付与剤は、(メタ)アクリル系化合物を含む粘着剤に対する相溶性が良好であるため、該粘着付与剤を用いれば、粘着剤層表面の微小領域間での粘着力差異が生じがたく、小さな被着体(被加工物)を取り扱うのに好適な粘着シートを得ることができる。また、水酸基価が上記範囲の粘着付与剤を用いれば、粘着剤硬化後においても、被着体(例えば、セラミックコンデンサ)に対する濡れ性に優れる粘着剤層を形成することができる。その結果、被着体の不要な脱落(例えば、被着体加工時の脱落)を防止することができる。
【0051】
上記可塑剤としては、任意の適切な可塑剤が用いられ得る。可塑剤の具体例としては、例えば、トリメット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等が挙げられる。なかでも好ましくは、トリメリット酸エステルエステル系可塑剤(例えば、トリメリット酸トリ(n−オクチル)、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)等)またはピロメリット酸エステル系可塑剤(例えば、ピロメリット酸テトラ(n−オクチル)、ピロメリット酸テトラ(2−エチルヘキシル)等)である。可塑剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。可塑剤の含有量は、上記母剤となるポリマーまたはベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部〜20重量部であり、より好ましくは1重量部〜5重量部である。
【0052】
B−2.熱膨張性微小球
熱膨張性微小球とは、加熱により膨張または発泡し得る微小球である。該熱膨張性微小球を含む粘着剤層を有する粘着シートは、加熱により、貼着面に凹凸が生じて粘着力が低下するため、粘着力を要する場面では十分な粘着力を有し、かつ、剥離を要する場面での剥離性に優れる。
【0053】
上記熱膨張性微小球の含有割合は、所望とする粘着力の低下性等に応じて適切に設定し得る。熱膨張性微小球の含有割合は、粘着剤中の上記母剤となるポリマーまたはベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部〜150重量部であり、より好ましくは10重量部〜100重量部であり、さらに好ましくは20重量部〜80重量部である。このような範囲であれば、熱膨張性微小球の発泡前においては、平滑な粘着剤層を形成することができ、熱膨張性微小球の発泡後においては、良好な凹凸面を有する粘着剤層を形成することができる。なお、熱膨張性微小球の母剤となるポリマーまたはベースポリマーに対する含有割合は、下記式により求められる。熱膨張性微小球の重量は、粘着剤層から抜き取られた熱膨張性微小球の重量を測定して求められる。
熱膨張性微小球の含有割合(重量%)=熱膨張性微小球の重量/粘着剤層の重量×100
【0054】
また、熱膨張性微小球の含有割合は、粘着剤層の断面から測定される熱膨張性微小球の面積割合で表すこともできる。所定断面における粘着剤層の断面積をAとし、該断面における熱膨張性微小球の断面積をBとした場合、熱膨張性微小球の断面積Bの割合は、粘着剤層の断面積Aに対して、好ましくは5%以上であり、より好ましくは7%以上であり、さらに好ましくは9%以上である。熱膨張性微小球の断面積Bの割合の上限は、粘着剤層の断面積Aに対して、好ましくは50%以下であり、より好ましくは45%以下であり、さらに好ましくは40%以下である。なお、熱膨張性微小球の断面積Bの割合は、例えば、粘着剤層の断面を電子顕微鏡(例えば、日立テクノロジーズ社製、商品名「S−3400N低真空走査電子顕微鏡」)により観察して得られた画像を、適切に処理して求めることができる。例えば、該画像を紙出力して、粘着剤層部分(すなわち、熱膨張性微小球を含む粘着剤層全体)の紙重量aと、熱膨張性微小球部分のみを切り出した紙の重量bとから、b/a×100の式により求めることができる。
【0055】
上記熱膨張性微小球としては、任意の適切な熱膨張性微小球を用いることができる。上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱により容易に膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球が用いられ得る。このような熱膨張性微小球は、任意の適切な方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法等により製造できる。
【0056】
加熱により容易に膨張する物質としては、例えば、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、メタンのハロゲン化物、テトラアルキルシラン等の低沸点液体;熱分解によりガス化するアゾジカルボンアミド;等が挙げられる。
【0057】
上記殻を構成する物質としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボン酸単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンモノマー;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアミド単量体;等から構成されるポリマーが挙げられる。これらの単量体から構成されるポリマーは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。該コポリマーとしては、例えば、塩化ビニリデン−メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−メタクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−イタコン酸共重合体等が挙げられる。
【0058】
上記熱膨張性微小球として、無機系発泡剤または有機系発泡剤を用いてもよい。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。また、有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド;等のN−ニトロソ系化合物などが挙げられる。
【0059】
上記熱膨張性微小球は市販品を用いてもよい。市販品の熱膨張性微小球の具体例としては、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー」(グレード:F−30、F−30D、F−36D、F−36LV、F−50、F−50D、F−65、F−65D、FN−100SS、FN−100SSD、FN−180SS、FN−180SSD、F−190D、F−260D、F−2800D)、日本フィライト社製の商品名「エクスパンセル」(グレード:053−40、031−40、920−40、909−80、930−120)、呉羽化学工業社製「ダイフォーム」(グレード:H750、H850、H1100、S2320D、S2640D、M330、M430、M520)、積水化学工業社製「アドバンセル」(グレード:EML101、EMH204、EHM301、EHM302、EHM303、EM304、EHM401、EM403、EM501)等が挙げられる。
【0060】
上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子径は、好ましくは0.5μm〜80μmであり、より好ましくは5μm〜45μmであり、さらに好ましくは10μm〜20μmであり、特に好ましくは10μm〜15μmである。よって、上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子サイズを平均粒子径で言えば、好ましくは3μm〜40μmであり、より好ましくは5μm〜35μmである。このような範囲であれば、熱膨張性微小球の発泡前においては、平滑な粘着剤層を形成することができ、熱膨張性微小球の発泡後においては、良好な凹凸面を有する粘着剤層を形成することができる。熱膨張性微小球の平均粒子径は、粘着剤層中より不作為に抽出した50個の熱膨張性微小球について、顕微鏡で測定した粒子径から算術平均を計算して求めることができる。
【0061】
上記熱膨張性微小球は、体積膨張率が好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、さらに好ましくは10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有することが好ましい。このような熱膨張性微小球を用いる場合、加熱処理により粘着力を効率よく低下させることができる。
【0062】
C.中間層
上記粘着シートを被着体に密着させた際の上記中間層の厚みとナノインデンテーション法による弾性率との関係は、0.5(MPa・μm
−1)≦(1/中間層の厚み(μm))×中間層のナノインデンテーション法による弾性率(MPa)≦40(MPa・μm
−1)であり、好ましくは0.8(MPa・μm
−1)≦(1/中間層の厚み(μm))×中間層のナノインデンテーション法による弾性率(MPa)≦40(MPa・μm
−1)であり、より好ましくは1.0(MPa・μm
−1)≦(1/中間層の厚み(μm))×中間層のナノインデンテーション法による弾性率(MPa)≦40(MPa・μm
−1)である。B項に記載のとおり、「粘着シートを被着体に密着させた」状態とは、粘着剤層が所定の粘着力(例えば、上記範囲の粘着力)を発現する状態を意味する。したがって、中間層が硬化性の材料を含む場合には、所定の硬化処理(例えば、中間層を硬化させるための活性エネルギー線照射)後の状態を意味する。
【0063】
本発明においては、中間層の厚みとナノインデンテーション法による弾性率との関係を上記範囲とすることにより、適度な柔軟性を有しつつも、変形しがたい粘着シートを得ることができる。本発明の粘着シートは変形しがたいため、切断工程における仮固定用シートとして用いた場合、精度よく被加工物を切断でき、かつ、切断後のチップの再付着を防止し得る。
【0064】
上記中間層の厚さは、粘着剤層から突出した熱膨張性微小球を全て被覆し得る厚さであることが好ましい。中間層の厚みは、好ましくは1μm〜200μmであり、より好ましくは5μm〜50μmであり、さらに好ましくは10μm〜40μmである。このような範囲であれば、切断工程における仮固定用シートとして用いた場合に、加工精度の向上に寄与し得る粘着シートを得ることができる。なお、本明細書において、中間層の厚みとは、
図1に示すように、中間層20を構成する材料と粘着剤層30を構成する粘着剤32との界面から、中間層の該界面とは反対側の面までの距離をいう。すなわち、粘着剤層30から熱膨張性微小球31が突出している場合、突出部分については、中間層の厚みの評価対象外とする。
【0065】
上記粘着シートを被着体に密着させた際の中間層のナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは1000MPa以下であり、より好ましくは900MPa以下であり、さらに好ましくは10MPa〜800MPa以下であり、特に好ましくは50MPa〜500MPaである。このような範囲であれば、切断工程における仮固定用シートとして用いた場合に、加工精度の向上に寄与し得る粘着シートを得ることができる。粘着シートを被着体に密着させた際の中間層のナノインデンテーション法による弾性率は、粘着シートを被着体に密着させた際の粘着剤層のナノインデンテーション法による弾性率よりも、大きいことが好ましい。なお、被着体を貼着する際(すなわち、硬化前)の中間層のナノインデンテーション法による弾性率は、例えば、0.1MPa〜100MPaである。
【0066】
上記中間層を構成する材料としては、例えば、シリコーン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、不飽和炭化水素系ポリマー等のポリマー材料が挙げられる。これらのポリマー材料を用いれば、モノマー種、架橋剤、重合度等を適宜選択して、上記弾性率を有する中間層を容易に形成することができる。上記のポリマー材料は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
1つの実施形態においては、上記中間層を構成する材料として、活性エネルギー線の照射により硬化し得る樹脂材料が用いられる。活性エネルギー線の照射により硬化し得る樹脂材料を用いれば、適切なタイミングで活性エネルギー線を照射して中間層を高弾性率化させることができ、かつ、弾性率の調整も容易となる。このような材料により中間層を形成すれば、粘着シートの貼り付け時には低弾性で柔軟性が高く取り扱い性に優れ、貼り付け後には、活性エネルギー線を照射することにより、上記範囲の弾性率に調整し得る粘着シートを得ることができる。
【0068】
活性エネルギー線の照射により硬化し得る樹脂材料としては、例えば、上記B項で説明した母剤となるポリマーと活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む樹脂材料(R1)、活性エネルギー線反応性ポリマーを含む樹脂材料(R2)等が挙げられる。1つの実施形態においては、中間層の材料として用いられる樹脂材料(R1)中の活性エネルギー線反応性化合物として、エチレン性不飽和官能基を有する化合物が用いられ得る。また、1つの実施形態においては、樹脂材料(R2)中の活性エネルギー線反応性ポリマーとして、エチレン性不飽和官能基を有する化合物(ポリマー)が用いられ得る。
【0069】
また、上記中間層を構成する材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂から構成されるホットメル系樹脂を用いてもよい。
【0070】
上記中間層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。該添加剤としては、例えば、開始剤、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0071】
C.伸長性基材
上記伸長性基材は、粘着剤層を支持し、かつ、粘着シートに伸長性を付与する機能を有する。粘着剤層の支持体として伸長性基材を用いれば、上記粘着シート上で被着体を切断し、その後、チップをピックアップする際、粘着シートを引き延ばすことで、チップのペアリングを解消することができる。本発明においては、このような伸長性基材上に、上記特性の中間層および粘着剤層を形成することにより、より微少なチップに対してもペアリングの防止を図ることができる。
【0072】
上記伸長性基材としては、例えば、軟質塩化ビニル系樹脂、伸縮性ポリエステル系樹脂、軟質ポリオレフィン系樹脂、ゴム系ポリマー、これらの樹脂のブレンド等から形成される基材が挙げられる。伸長性基材は、複数の異種フィルムから構成された多層構造であってもよい。上記伸長性基材は、熱膨張性微小球を発泡させる加熱処理により、機械的物性を損なわない程度の耐熱性を有する材料で構成されることが好ましい。
【0073】
上記軟質塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)−塩化ビニルグラフト共重合体、ポリウレタン−塩化ビニルグラフト共重合体等が挙げられる。軟質塩化ビニル系樹脂から構成される伸長性基材は熱安定剤を含むことが好ましい。
【0074】
上記伸縮性ポリエステル系樹脂としては、例えば、飽和ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)と、変性ポリオレフィン(例えば、アクリル酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリオレフィン;エポキシ変性ポリオレフィンなど)またはゴム系ポリマー(例えば、エチレン−プロピレンゴム、ポリエステルエラストマー、エチレン−アクリルゴムなどの熱可塑性エラストマーなど)とのブレンド;ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0075】
上記軟質ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレンなどからなるハードセグメントと、エチレン−プロピレン共重合体などからなるソフトセグメントとを有する樹脂;軟質ポリエチレン等が挙げられる。
【0076】
上記ゴム系ポリマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、塩素化ポリエチレン、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、フッ素ポリマー系、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなど)等が挙げられる。
【0077】
上記伸長性基材の23℃における破断伸度は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは250%以上であり、さらに好ましくは250%〜1000%であり、特に好ましくは250%〜800%である。上記破断伸度は、JIS K7113に準じて測定され得る。
【0078】
上記伸長性基材の90℃における破断伸度は、好ましくは130%〜1500%であり、より好ましくは150%〜1400%であり、さらに好ましくは200%〜1300%である。このような範囲であれば、熱膨張性微小球を発泡させる加熱処理時における作業性に優れる粘着シートを得ることができる。
【0079】
上記伸長性基材の23℃における25%モジュラスは、好ましくは1N/10mm〜100N/10mmであり、より好ましくは2N/10mm〜60N/10mmであり、さらに好ましくは3N/10mm〜30N/10mmである。1つの実施形態においては、伸長性基材の23℃における25%モジュラスは、30N/10mm以下である。このような範囲であれば、良好なエキスパンド性が得られる。25%モジュラスの測定方法は後述する。
【0080】
上記伸長性基材のナノインデンテーション法による弾性率は、好ましくは1MPa〜100000MPaであり、より好ましくは5MPa〜10000MPaである。
【0081】
上記伸長性基材のナノインデンテーション法による弾性率は、上記中間層のナノインデンテーション法による弾性率に対して、好ましくは50%〜50000%であり、より好ましくは100%〜10000%である。このような範囲であれば、引き延ばした際に、中間層が伸長性基材から剥離しがたい粘着シートを得ることができる。
【0082】
上記伸長性基材の厚さは、所望とする強度または柔軟性、ならびに使用目的等に応じて、任意の適切な厚さに設定され得る。伸長性基材の厚さは、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは1μm〜1000μmであり、さらに好ましくは1μm〜500μmであり、特に好ましくは3μm〜300μmであり、最も好ましくは5μm〜250μmである。
【0083】
上記伸長性基材は、粘着剤層に対する投錨力の観点から、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、易接着処理、印刷処理、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、下塗り剤によるコーティング処理等が挙げられる。
【0084】
上記有機コーティング材料としては、例えば、プラスチックハードコート材料II(CMC出版、(2004))に記載される材料が挙げられる。好ましくはウレタン系ポリマー、より好ましくはポリアクリルウレタン、ポリエステルウレタンまたはこれらの前駆体が用いられる。伸長性基材への塗工・塗布が簡便であり、かつ、工業的に多種のものが選択でき安価に入手できるからである。該ウレタン系ポリマーは、例えば、イソシアナートモノマーとアルコール性水酸基含有モノマー(例えば、水酸基含有アクリル化合物又は水酸基含有エステル化合物)との反応混合物からなるポリマーである。有機コーティング材料は、任意の添加剤として、ポリアミンなどの鎖延長剤、老化防止剤、酸化安定剤等を含んでいてもよい。有機コーティング層の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1μm〜10μm程度が適しており、0.1μm〜5μm程度が好ましく、0.5μm〜5μm程度がより好ましい。
【0085】
D.粘着シートの製造方法
本発明の粘着シートは、任意の適切な方法により製造することができる。本発明の粘着シートは、伸縮性基材上に中間層を形成し、該中間層上に粘着剤層を形成して得られ得る。中間層の形成方法としては、例えば、伸長性基材上に直接、樹脂材料を含む中間層形成用組成物を塗工する方法、任意の適切な基体上に中間層形成用組成物を塗工して形成された塗工層を伸長性基材に転写する方法等が挙げられる。粘着剤層の形成方法としては、例えば、任意の適切な基体上に、粘着剤および熱膨張性微小球を含む粘着剤層形成用組成物を塗工し形成された塗工層を中間層に転写する方法等が挙げられる。また、粘着剤を含む組成物により粘着剤塗工層を形成した後、該粘着剤塗工層に熱膨張性微小球を振りかけた後、ラミネーター等を用いて、該熱膨張性微小球を該塗工層中に埋め込んで、熱膨張性微小球を含む粘着剤層を形成してもよい。上記中間層形成用組成物および粘着剤層形成用組成物は、任意の適切な溶媒を含み得る。また、熱膨張性微小球を含む粘着剤層形成用組成物において、該熱膨張性微小球の含有割合は、粘着剤と熱膨張性微小球の合計量100重量部に対して、好ましくは1重量部〜80重量部であり、より好ましくは5重量部〜60重量部である。
【0086】
上記のように、任意の適切な基体上に粘着剤層形成用組成物を塗工し形成された塗工層を中間層に転写して、粘着剤層を形成すれば、粘着面が基体と接した状態で形成されるので、該粘着面は、熱膨張性微小球の突出がない平坦面とすることができる。一方、粘着剤層の粘着面とは反対側の面においては、熱膨張性微小球が突出し得る。本発明においては、上記中間層により、この突出した熱膨張性微小球が被覆され得る。
【0087】
上記組成物の塗工方法としては、任意の適切な塗工方法が採用され得る。例えば、塗布した後に乾燥して各層を形成することができる。塗布方法としては、例えば、例えば、マルチコーター、ダイコーター、グラビアコーター、アプリケーター等を用いた塗布方法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥する場合の加熱温度は、乾燥対象となる物質の特性に応じて、任意の適切な温度に設定され得る。
【0088】
E.用途
本発明の粘着シートは、電子部品を製造する際に、電子部品材料を仮固定するためのシートとして、好適に用いられ得る。1つの実施形態においては、本発明の粘着シートは、電子部品材料を切断する際の仮固定シートとして用いられる。該電子部品材料としては、例えば、セラミックコンデンサ材料が挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。なお、下記評価においては、セパレータを剥離した粘着シートを用いた。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0090】
(1)粘着力
粘着シートを幅:20mm、長さ:140mmのサイズに切断し、粘着面を被着体のSUS304BA板にJIS Z 0237:2009に準じ、2kgのローラーを1往復させて貼り合わせ、30分放置した後、紫外線(照射量600mJ/cm
2)を照射した。該測定試料を恒温槽付き引張試験機(島津製作所社製、商品名「島津オートグラフAG−120kN」)にセットした。その後、被着体を、剥離角度:180°、剥離速度(引張速度):300mm/minの条件で、長さ方向に粘着シートから引き剥がした時の荷重を測定し、その際の最大荷重(測定初期のピークトップを除いた荷重の最大値)を求め、この最大荷重をテープ幅で除したものを粘着力(N/20mm幅)とした。なお、上記操作は、温度:23±3℃および湿度:65±5%RHの雰囲気下で行った。
【0091】
(2)粘着シートを用いた場合における、被着体加工性の評価
(2−1)被着体(被加工物)の準備
トルエン溶媒にチタン酸バリウム粉末100重量部、ポリビニルブチラール樹脂30重量部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)3重量部を加えてボールミル分散機で混合及び分散することにより誘電体のトルエン溶液を得た。この溶液をMRF38(三菱ポリエステルフィルム株式会社製、シリコン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm))のシリコン離型剤処理面に溶剤揮発後の厚みが50μmになるようアプリケーターを用いて塗布し、溶剤が揮発するよう乾燥した。得られたシートを厚みが500μmになるように積層して、被着体(被加工物;グリーンシート)を得た。
(2−2)チップ分離性の評価
上記被着体を粘着シートに貼着した後、(照射量600mJ/cm
2)を照射して、粘着シート上に上記被着体を密着させた。
被着体を、0.8mm×0.4mmのチップとなるように賽の目状に切断した。切断条件は下記のとおりである。
さらに、拡張装置(ヒューグルエレクトロニクス社製、型式HS−1005;リングサイズ:5インチウエハリング、突き上げ量:70mm、ステージ温度:50℃、突き上げ時間:20秒)を用いて、粘着シートを引き延ばし、チップ同士の引き離しを試みた。
上記操作後に、チップ500個中、隣接するチップに付着したままのチップ数を測定した。
(2−3)加熱剥離性の評価
上記2−2の評価と同様にして、粘着シート(20mm×20mm)上に被着体を密着させた。このようにして得られた被着体付き粘着シートを、所定の発泡温度で加熱して、被着体の剥離性を評価した。表1中、被着体が剥離した場合を〇、剥離しなかった場合を×とする。
【0092】
(3)弾性率
粘着シートを、ミクロトームにて厚み方向に切断し、中間層の切断面についてナノインデンターで弾性率を測定した。粘着剤層表面から3μm程度離れた切断面表面を測定対象とした。測定対象に探針(圧子)を押し当てることで得られる変位―荷重ヒステリシス曲線を、測定装置付帯のソフトウェア(triboscan)で数値処理することで弾性率を得た(10回測定の平均値)。
ナノインデンター装置ならびに測定条件は下記のとおりである。
装置および測定条件
・装置:ナノインデンター;Hysitron Inc社製 Triboindenter
・測定方法:単一押し込み法
・測定温度:23℃
・押し込み速度:約1000nm/sec
・押し込み深さ:約800nm
・探針:ダイヤモンド製、Berkovich型(三角錐型)
【0093】
(4)モジュラス
粘着シートを測定試料とした。該測定試料を幅10mm、長さ100mmのサイズに切断し、恒温槽付き引張試験機(島津製作所社製、商品名「島津オートグラフAG−120kN」)にチャック間距離が50mmになるようにセットした。その後、試料を引張速度:50mm/minで長さ方向に引張り、25%伸びた際の応力をモジュラス(N/10mm)とした。なお、上記操作は、温度:23±3℃および湿度:65±5%RHの雰囲気下で行った。
【0094】
(5)23℃における破断伸度
粘着シートを測定試料とした。該測定試料を幅10mm、長さ100mmのサイズに切断し、恒温槽付き引張試験機(商品名「島津オートグラフAG−120kN」島津製作所社製)にチャック間距離が50mmになるようにセットした。その後、試料を引張速度:50mm/minで長さ方向に引張り、破断した際の伸度(%)を破断伸度とした。なお、上記操作は、温度:23±3℃および湿度:65±5%RHの雰囲気下で行った。
【0095】
(6)90℃における破断伸度
試験温度を90±3℃としたこと以外は、上記(5)と同様の方法で、伸長性基材の判断伸度を測定した。
【0096】
[製造例1]伸長性基材1の製造
Tダイ成形機(プラコー社製、設定温度:230℃)を用いて、オレフィン系熱可塑性エラストマー(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン成分86モル%/エチレン成分14%モル、三菱化学社製、商品名「ゼラス7053」)から伸縮性基材1(厚み:40μm)を作製した。なお、伸縮性基材1の一方の面にはコロナ処理を施した。
【0097】
[製造例2]伸長性基材2の製造
Tダイ成形機(プラコー社製、設定温度:230℃)を用いて、オレフィン系熱可塑性エラストマー(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン成分72.5モル%/エチレン成分17.5%モル、三菱化学社製、商品名「ゼラス5053」)から伸縮性基材2(厚み:45μm)を作製した。なお、伸縮性基材2の一方の面にはコロナ処理を施した。
【0098】
[製造例3]ポリマー1の製造
トルエン中に、ブチルアクリレート95部と、アクリル酸5部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.3部とを加えた後、60℃で加熱して、アクリル系共重合体(ポリマー1)のトルエン溶液を得た。
【0099】
[製造例4]ポリマー2の製造
トルエン中に、ブチルアクリレート50部と、2-エチルヘキシルアクリレート60部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート20部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル(ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートの合計100部に対して0.3部)とを加えた後、60℃で加熱して共重合体溶液を得た。この共重合体溶液に、該溶液中の2−ヒドロキシエチルアクリレート由来の水酸基の50重量%に相当する量の2−イソシアナトエチルアクリレートを加えた後、加熱して、該2−ヒドロキシエチルアクリレート由来の水酸基に2−イソシアナトエチルメタクリレートを付加することにより、側鎖にメタクリレート基を有するアクリル系共重合体(ポリマー2)のトルエン溶液を得た。
【0100】
[製造例5]ポリマー3の製造
トルエン中に、メタクリレート70部と、2-エチルヘキシルアクリレート30部と、アクリル酸10部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.3部とを加えた後、60℃で加熱して、アクリル系共重合体(ポリマー3)のトルエン溶液を得た。
【0101】
[製造例6]ポリマー4の製造
トルエン中に、メタクリレート50部と、2-エチルヘキシルアクリレート50部と、アクリル酸10部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.3部とを加えた後、60℃で加熱して、アクリル系共重合体(ポリマー4)のトルエン溶液を得た。
【0102】
[製造例7]ポリマー5の製造
トルエン中に、2-エチルヘキシルアクリレート40部と、エチルアクリレート60部と、ヒドロキシエチルアクリレート3部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.3部とを加えた後、60℃で加熱して、アクリル系共重合体(ポリマー5)のトルエン溶液を得た。
【0103】
[製造例8]ポリマー6の製造
トルエン中に、2-エチルヘキシルアクリレート30部と、エチルアクリレート70部と、ヒドロキシエチルアクリレート4部と、メタクリル酸メチル5部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.3部とを加えた後、60℃で加熱して、アクリル系共重合体(ポリマー6)のトルエン溶液を得た。
【0104】
[製造例9]ポリマー7の製造
トルエン中に、ブチルアクリレート50部と、エチルアクリレート50部と、アクリル酸5部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.3部とを加えた後、60℃で加熱して、アクリル系共重合体(ポリマー7)のトルエン溶液を得た。
【0105】
[実施例1]
(伸縮性基材/中間層から構成される積層体の作製)
製造例1で調製したポリマー1のトルエン溶液(ポリマー1:100部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)0.5部と、活性エネルギー線反応性オリゴマー(日本合成化学社製、商品名「紫光 7620EA」、ウレタンアクリレート系オリゴマー)30部と、エネルギー線重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名「イルガキュア184」)6部とを混合して混合液を調製した。該混合液に、該混合液中の溶剤と同じ溶剤(トルエン)をさらに加えて塗布しやすい粘度にまで粘度調整を行った。この混合液を、伸長性基材1のコロナ処理面上に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが40μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、その後、乾燥して、伸長性基材上に中間層を形成した。
(粘着剤層の作製)
ポリマー1のトルエン溶液(ポリマー1:100部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)0.5部と、粘着付与剤としてテルペンフェノール系樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターU130」)30部と、熱膨張性微小球熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−30D」、発泡開始温度:70℃〜80℃、最大膨張温度:110℃〜120℃、平均粒径10μm〜18μm)50部とを混合して混合液を調製した。該混合液に、該混合液中の溶剤と同じ溶剤(トルエン)をさらに加えて塗布しやすい粘度にまで粘度調整を行った。シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「MRF38」、厚み:38μm)に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層を形成した。
(粘着シートの作製)
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された上記粘着剤層を、上記中間層に転写して、伸縮性基材、中間層および粘着剤層をこの順に備える粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例2〜5、比較例1〜3]
表1に示すポリマー(ポリマー2〜7)、架橋剤、粘着付与樹脂、熱膨張性微小球、活性エネルギー線反応性オリゴマー、開始剤および基材を、表1に示すように用いて中間層および粘着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを得た。得られた粘着シートを上記評価(1)〜(6)に供した。結果を表1に示す。
なお、比較例2においては、基材上に中間層を設けず、基材に直接、粘着剤層を転写して粘着シートを得た。
(架橋剤)
コロネートL:イソシアネート系架橋剤;日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」
(粘着付与樹脂)
YSポリスターU130:テルペンフェノール系粘着付与樹脂;ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターU130」
YSポリスターG125:テルペンフェノール系粘着付与樹脂;ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターG125」
YSポリスターU160:テルペンフェノール系粘着付与樹脂;ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターU160」
YSポリスターT160:テルペンフェノール系粘着付与樹脂;ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターT160」
スミライトレジンPR51732:テルペンフェノール系粘着付与樹脂;住友ベークライト社製、商品名「スミライトレジンPR51732」
(熱膨張性微小球)
F−50D:発泡開始温度:95℃〜105℃、最大膨張温度:125℃〜135℃、平均粒径10μm〜18μm;松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−50D」
F−48D:発泡開始温度:90℃〜100℃、最大膨張温度:125℃〜135℃、平均粒径9μm〜15μm;松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−48D」
F−35D:発泡開始温度:70℃〜80℃、最大膨張温度:110℃〜120℃、平均粒径10μm〜16μm;松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−35D」
F−30D:発泡開始温度:70℃〜80℃、最大膨張温度:110℃〜120℃、平均粒径10μm〜18μm;松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F−30D」
(活性エネルギー線反応性オリゴマー)
アロニックスM404:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;東亜合成社製、商品名「アロニックスM404」
UV−1700B:ウレタンアクリレート系オリゴマー;日本合成化学社製、商品名「紫光 UV−1700B」
UV−7630B:ウレタンアクリレート系オリゴマー;日本合成化学社製、商品名「紫光 UV−7630B」
(開始剤)
イルガキュア651、イルガキュア369:BASFジャパン社製
(基材)
ルミラーS10:非伸長性基材;PETフィルム;厚み:50μm;東レ社製、商品名「ルミラーS10」
【0107】
【表1】