(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の潤滑構造が用いられたオイル循環機構を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
<1.オイル循環機構の構成>
実施の形態におけるオイル循環機構の構成について説明する。
図1は、車両100の内部に配置されたオイル循環機構及び関連する部分の構成の一例を示した図である。
【0016】
変速機構1は、エンジン2から得られる動力を車輪に伝達するにあたり、変速比の変化を可能とするための機構であり、燃費や乗り心地を向上させるためにオイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)を用いた円滑な動作が必要である。従って、変速機構1には、変速機構1の各部に必要なオイルを供給するためのオイル循環機構3が併設されている。
変速機構1は油圧を用いて変速比の変化を行う。油圧は、オイル循環機構3によって供給される。
変速機構1の各部に与える油圧の制御は、ECU(Electronic Control Unit)などの制御ユニット4が行う。
【0017】
変速機構1、オイル循環機構3及び制御ユニット4について模式的に表した図が
図2である。
オイル循環機構3は、オイルが貯留され変速機構1の下方に配置されているオイルパン5と、例えばトルクコンバータにおけるインペラ軸に連結されているポンプギヤを介してエンジン2からの動力に基づき駆動されてオイルパン5に集められたオイルを吸い上げるオイルポンプ6と、オイルを吸い上げる際にオイルに含まれる不純物を除去するためのオイルフィルタ7が内部に配設されたオイルストレーナ8を備えている。
【0018】
また、オイル循環機構3は、変速機構1を動作させるための各部に油圧を選択的に供給するためのバルブユニット9を備えている。
バルブユニット9は、オイルポンプ6から吐出されたオイルを変速機構1に供給する際の元圧としてのライン圧を調圧するためのライン圧制御バルブ10と、ライン圧制御バルブ10から供給されるオイルを変速機構1の各部に供給するために配設された複数の油路を切り換えるための油路切替機構11を備えている。
制御ユニット4は、バルブユニット9を制御することにより、変速機構1の各部に与える油圧を制御する。
尚、
図2には示していないが、オイル循環機構3は、変速機構1を構成する外壁の一部や内部に配置された壁なども含んで構成されていてもよい。
【0019】
変速機構1の各部に供給されたオイルは、オイルパン5に還流する。オイルパン5に還流されたオイルは、オイルポンプ6によって再び吸い上げられて、変速機構1の各部に供給される。このようにして、オイルはオイル循環機構3によって変速機構1に継続的に供給可能とされる。
【0020】
オイル循環機構3によってオイルが供給される変速機構1の各部には、所定の動作を行うための回転体12が配置されている。回転体12としては、例えば、変速ギヤなどの各種ギヤやメインシャフトなどがある。また、変速機構1が無段変速を行う機構(CVT:Continuously Variable Transmission)である場合に用いられるプーリなども回転体12の一例である。
【0021】
回転体12には、動作の円滑化や冷却等のためにオイルが供給される。オイルの供給方法としては、例えば、回転体12の上方からオイルを滴下することによって供給する方法や、オイル貯留部13を形成し、オイル貯留部13に溜まった貯留オイルに回転体12の下端部を浸し回転体12の回転を利用して貯留オイルを掻き上げて供給する方法などがある。
【0022】
オイル貯留部13は、回転体12がオイルを掻き上げやすくするために設けられるが、オイル貯留部13の貯留オイルの量が多くなると、撹拌抵抗が大きくなってしまう。
そこで、一つの対策としては、オイル貯留部13の内面形状を回転体12の外形に沿うように形成することが考えられる。例えば、出力軸19の軸方向から見たオイル貯留部13の断面形状は、回転体12の外形に沿った略円弧状とされている。
また、回転体12とオイル貯留部13のクリアランスを小さくすることも有効である。
【0023】
本実施の形態では、更に、オイル貯留部13に貯留オイルをオイルストレーナ8に戻すための排出油路14を接続する構成とすることにより、更なる撹拌抵抗の低減効果を得る。
【0024】
図3を参照して、より具体的にオイル循環機構3の各部について説明する。
オイル潤滑機構3の中で下方に位置するオイルパン5には、変速機1の各所から滴下してきたオイルが流れ込み貯留されている。尚、図中に梨地で示す部分は、オイルを示している。
オイルパン5内には、下端が油没した状態でオイルストレーナ8が配置されている。
【0025】
オイルストレーナ8の内部空間は、オイルで略満たされており、内部に配設されたオイルフィルタ7によって濾過前室15と濾過後室16に分離されている。
濾過前室15に位置する濾過前のオイルはオイルポンプ6のポンプ動作によって生じる負圧によってオイルフィルタ7を通過して濾過後室16へ移動する。オイルはオイルフィルタ7を通過する際に金属粉などの不純物が除去されて濾過される。
【0026】
オイルストレーナ8の下面には、オイルパン5に貯留されたオイルが流入するための流入口17が形成されている。
オイルストレーナ8の上面には、図示しない油路を介してオイルポンプ6の吸入ポートに接続される流出口18が形成されている。
即ち、オイルパン5に貯留されたオイルは、オイルポンプ6のポンプ動作によって生じる負圧によって流入口17からオイルストレーナ8に流入した後、オイルフィルタ7を通過して濾過されて流出口18からオイルポンプ6へ向けて流出する。
【0027】
オイルポンプ6のポンプ動作によってオイルポンプ6の吐出ポートから吐出されたオイルは、変速機1の各所へ供給される。
オイルが供給される変速機1の各所には、ギヤなどの回転体12も含まれる。
図3には、回転体12の一例として、CVTにおけるセカンダリプーリ12Aが図示されている。
セカンダリプーリ12Aは、車輪を回転させるための出力軸19に取り付けられており、エンジン2に接続された入力軸に取り付けられた図示しないプライマリプーリの回転に従動して出力軸19の軸回り方向に回転する。
【0028】
セカンダリプーリ12Aには、下部を覆うようにオイル貯留部13が設けられている。
オイル貯留部13には、上方や側方から流入したオイルが貯留される。
【0029】
オイル貯留部13の下方には、オイル貯留部13に溜まったオイルを排出するための排出孔20が設けられている。
排出孔20は、排出油路14に接続されている。排出油路14は、オイルストレーナ8の濾過前室15へと繋がっている。
オイルポンプ6のポンプ動作に応じて、オイル貯留部13に溜まったオイルは排出孔20から排出され、排出油路14を経由して濾過前室15へと流れ込む。
【0030】
排出孔20には、排出孔20を閉塞(閉弁)可能なフロート弁21が設けられている。
フロート弁21の構造について、一例を
図4に示す。
フロート弁21は、挿入部22と、Oリング23と、蓋部24を備えている。
【0031】
挿入部22は、一端が開放された開放端25、他端が閉塞された閉塞端26とされた円筒状とされ、挿入部22の径は排出孔20の径よりも小さくされている。
挿入部22の内壁に囲まれた空間は空室27とされている。
開放端25は、外周に沿って外縁部25aが形成され、内周に沿って内縁部25bが形成されている。
内縁部25bは外縁部25aよりも一段低くされている。
【0032】
閉塞端26には、挿入部22の軸回り方向に略90°ずつ離隔して径方向に突出された4本の規制凸部28が形成されている。
1本の規制凸部28の先端部28aと、反対方向に突出する1本の規制凸部28の先端部28aとの距離は、排出孔20の径よりも長くされている。
【0033】
蓋部24は、排出孔20の径よりも大径とされた円盤状の円盤部29と円盤部29の下面中央から軸方向に突出された筒状の突出部30を備えている。
【0034】
挿入部22とOリング23と蓋部24を組み立てた状態のフロート弁21の断面を
図5に示す。尚、
図5には、オイル循環機構3に配置されたフロート弁21を示すために、オイル貯留部13の一部と排出油路14の一部も示している。
図示するように、挿入部22の内周部25bと蓋部24の円盤部29の間には空間が設けられ、該空間にはOリング23が配置される。従って、空室27は密閉され、フロート弁21の外部と空室27は遮断された状態となる。尚、図示は省略したが、挿入部22の内周と突出部29の外周には互いに噛み合う螺旋状の凹凸が形成されており、挿入部22に対して蓋部24を回し入れることにより挿入部22と蓋部24が螺合される。
【0035】
円盤部29において挿入部22よりも外周側に突き出た部分は、フランジ部29aとされる。
規制凸部28とフランジ部29aは、請求項にいう規制部とされる。
フランジ部29aの下面と規制凸部28の上面の距離は、排出孔20の深さよりも長くされている。
【0036】
前述したように、挿入部22の径が排出孔20の径よりも小さくされることにより、挿入部22が排出孔20に挿入された状態において挿入部22と排出孔20の内壁の間に間隙部31が形成される。
間隙部31は、オイル貯留部13に貯留されたオイルが排出孔20を介して排出される際にオイルが通過する油路の一部とされる。
【0037】
<2.フロート弁の動作>
排出孔20に設置されたフロート弁21の動作について、
図6乃至
図8を参照して説明する。
図6は、オイル貯留部13にオイルが溜まっている状態を示している。この状態においては、空室27に空気が充填されていることによる浮力がフロート弁21に対して働くため、フロート弁21は上方へ移動する。
フロート弁21には挿入部22の下端(閉塞端26)に4本の規制凸部28が設けられているため、規制凸部28の上面がオイル貯留部13の下面に当接した状態でフロート弁21の上方への移動が規制される。
【0038】
規制凸部28によりフロート弁21の上方への移動が規制された状態においては、排出孔20の一部を規制凸部28が塞いでいるのみであるため、排出孔20の間隙部31を介してオイル貯留部13に溜まったオイルが排出油路14へ排出される。即ち、オイル貯留部13と間隙部31と排出油路14を繋ぐ油路Rが形成されている。
【0039】
オイル貯留部13に溜まったオイルが排出されることにより、オイル貯留部13のオイルが
図6に示す状態よりも少なくなった状態を
図7に示す。
図7に示す状態においては、間隙部31が上方及び下方に開放されている。従って、オイル貯留部13に溜まったオイルが排出油路14へ排出される。従って、
図6と同様に、オイル貯留部13と間隙部31と排出油路14を繋ぐ油路Rが形成されている。
【0040】
図7に示す状態から更にオイル貯留部13のオイルが排出された状態を
図8に示す。
図8に示す状態は、フロート弁21が下方へ移動し、蓋部24のフランジ部29aの下面がオイル貯留部13の内壁に当接した状態とされる。
この状態では、排出孔20がフロート弁21の円盤部29によって閉塞されるため、
図6や
図7に示した油路Rは形成されない。
従って、オイルポンプ6のポンプ動作によって排出油路14内の圧力が負圧となったとしても、オイル貯留部13のオイルが排出油路14内へ移動することがなく、空気がオイル貯留部13内から排出油路14へ移動することもない。従って、オイルポンプ6が空気を吸入してしまうことによる様々な弊害(騒音の発生や変速機1の各部の焼き付きや摩擦抵抗の増加による燃費性能の低下など)を防止することができる。
【0041】
また、排出油路14内の圧力がオイルポンプ6のポンプ動作により負圧になっている場合には、フロート弁21のフランジ部29aの下面がオイル貯留部13の内壁に押しつけられる力が強くなるため、オイル貯留部13内と排出油路14内の空間を遮断する効果が高くなり、オイルポンプ6の空気の吸い込みが更に起き難くされる。
そして、オイルポンプ6のオイル吸い上げ量が大きく低下し、排出油路14内の負圧が軽減(或いは負圧が解消)された場合には、フランジ部29aの下面がオイル貯留部13の内壁に押しつけられる力も低下して車両100の振動等によるフロート弁21のガタつきが生じるため、仮に排出油路14内に空気が入り込んだとしても該空気が間隙部31を介してオイル貯留部13へと抜けやすくされる。これにより、再度オイルポンプ6の吸い上げ量が増加した際に排出油路14内に存在する空気が略存在しない状態にすることが可能なため、この点からもオイルポンプ6のポンプ動作による空気の吸い込みが起き難くされる。
【0042】
<3.他の実施の形態>
一つのオイル貯留部13に対して複数の排出孔20及びフロート弁21が設けられた例を説明する。
図9に示す例では、オイル貯留部13の底面において、出力軸19の軸方向における両端に二つのフロート弁21が設けられている。
複数のフロート弁21が設けられていることにより、オイル貯留部13に溜まったオイルが排出される時間を短くすることができるため、撹拌抵抗の低減効果を高めることができる。
【0043】
また、車両100が上り坂や下り坂を走行しているときや、急制動時には、オイル貯留部13内のオイルが車両の前後方向や車幅方向に偏る。
図10に示す例では、出力軸19の軸方向(例えば車両前後方向)にオイルが偏った状態を例示している。
本構成によれば、オイル貯留部13に溜まったオイルが出力軸19の軸方向に偏ったとしても、オイル貯留部13に二つ設けられているフロート弁21の少なくとも何れか一方がオイルを排出孔20から排出する機能を果たすため、回転体12による撹拌抵抗を低減させることができる。
【0044】
水平方向且つ出力軸19の軸方向に直交する方向に貯留オイルが偏る場合も考えられる。これは、
図11に示すように、出力軸19の軸方向から見たオイル貯留部13の内面の形状が回転体12の外形に沿った略円弧状とされていることにより、フロート弁21からオイルを排出することができる。
【0045】
尚、オイル貯留部13の底面の平坦な部分の面積が広い場合には、
図12のように排出孔20及びフロート弁21を配置することも可能である。
図12に示すようにオイル貯留部13の底面の平坦な部分において対角となる位置のそれぞれに排出孔20及びフロート弁21を配置することにより、車両の前後方向及び車幅方向の何れかにオイル貯留部13のオイルが偏ったとしても、何れかのフロート弁21がオイルを排出孔20から排出する機能を果たすことができる。
【0046】
<4.変形例、その他>
上述した例では、オイル貯留部13の中で最も低い位置に排出孔20及びフロート弁21が設けられる例を説明したが、オイル貯留部13の最も低い位置から所定以上の高さに設けられていてもよい。
これにより、オイル貯留部13に貯留されたオイルが全て排出される可能性が低くなり、少量のオイルが貯留された状態となりやすい。従って、回転体12が回転によって巻き上げるオイルが少なからずオイル貯留部13内に存在することになり、回転体12へのオイル供給が不足してしまうことを防止することができる。
【0047】
上述した例においては、フロート弁21の挿入部22に設けられた規制凸部28の長さは、所定以上の長さとされることが望ましい。
具体的に、
図13を参照して説明する。
排出孔20の径をD1とし、規制凸部28を除いた挿入部22の径をD2とすると、挿入部22の径方向における間隙部31の最大の幅D3は(D1−D2)とされる。
このとき、規制凸部28の長さD4をD3(=D1−D2)よりも長くすることにより、
図13のようにフロート弁21の挿入部22が排出孔20内の一方に偏ったとしても規制凸部28の上面の少なくとも一部がオイル貯留部13の下面に当接される。
これにより、排出孔20内からフロート弁21が上方へ外れてしまうことが防止される。
同様に、フロート弁21のフランジ部29aの長さD5をD3よりも長くすることにより、フロート弁21が排出孔20内から脱落してしまうことを防止することができる。
【0048】
また、排出孔20とフロート弁21の径方向の中心位置が一致するように構成してもよい。
図14を参照して説明する。
排出孔20は、径の異なる孔が軸方向に連続して設けられた構成とされる。具体的には、径の小さな小径部20aに連続して径の大きな大径部20bが設けられている。小径部20aと大径部20bの中心軸(
図14中に一点鎖線で示す)は一致している。
フロート弁21の挿入部22は、規制凸部28を除いた部分の径が小径部20aの径よりも小さくされている。また、1本の規制凸部28の先端部28aと、反対方向に突出する1本の規制凸部28の先端部28aとの距離は、排出孔20の大径部20bの径の長さと略同じとされている。
大径部20bの深さは、フロート弁21のフランジ部29aの下面がオイル貯留部13の内壁に当接した状態において規制凸部28が大径部20bの内部に位置するだけの深さが確保されている。
【0049】
この構成によれば、浮力や重力や慣性力等によってフロート弁21に排出孔20の軸方向とは異なる方向に移動させる力が作用しても、フロート弁21は排出孔20の軸方向にしか移動せず、フロート弁21と排出孔20(小径部20a及び大径部20b)の中心軸が略一致した状態が確保される。
これにより、フランジ部29aの下面がオイル貯留部13の内壁に当接していない状態、即ち、オイル貯留部13と間隙部31と排出油路14を繋ぐ油路Rが形成されている状態において、フロート弁21の挿入部22の外周略360°において間隙部31が形成される。
従って、挿入部22の周囲360°をオイルが通過するため、効率よくオイルを排出できると共に、オイルの偏りが生じてもオイルをオイル貯留部13から排出油路14へ排出できる可能性を高めることができる。
【0050】
尚、フロート弁21に空室27が設けられた例を説明してきたが、フロート弁21を構成する材質を選択することにより空室27を設けない構成としてもよい。
例えば、オイルよりも軽い材質且つオイルに溶融しない材質を用いてフロート弁21を形成することにより、本明細書に記載した各種の効果を得ることが可能となる。
【0051】
<5.まとめ>
上述した各構成例において記載したように、潤滑構造としてのオイル循環機構3は、車両100の動力伝達機構(例えば変速機1)に用いられる潤滑構造であって、不純物を除去するためのオイルフィルタ7が内部に配設され、オイルポンプ6の吸入動作(ポンプ動作)に応じてオイルパン5からオイルポンプ6にオイルを供給するオイルストレーナ8と、回転体12(回転体12A)の少なくとも下部を覆い内部に貯留されたオイルをオイルストレーナ8に排出するための排出孔20が下面に設けられたオイル貯留部13と、オイルに対して浮力を有するフロート弁21と、を備え、フロート弁21は、オイル貯留部13内のオイル量に応じて排出孔20の開弁(
図6,
図7に示す状態)及び閉弁(
図8に示す状態)を行う。
オイル貯留部13の下面に排出孔20が設けられることにより、オイル貯留部13に溜まったオイルがオイルストレーナ8へと排出される。
これにより、オイル貯留部13に溜まったオイル量が低下するため、オイル貯留部13に配置された回転体12が回転する際に生じる撹拌抵抗を低減することができる。
また、オイル量に応じて排出孔20の開弁と閉弁を行うフロート弁21が設けられ、更にオイル貯留部13のオイルがほとんどオイルストレーナ8に排出された際に排出孔20の閉弁を行うことにより、オイルストレーナ8に空気が供給されてしまうことを防止することができる。
【0052】
図3,
図9,
図10などで示すように、オイル貯留部13内のオイルは、排出孔20を介してオイルフィルタ7の上流側に排出されるように構成してもよい。
オイル貯留部13からフロート弁21を介してオイルストレーナ8に排出されたオイルは、オイルフィルタ7で金属粉などの異物が除去された後にオイルポンプ6によって再び吸い上げられる。
これにより、オイルと共に異物がオイル循環機構3内を循環してしまうことによるオイル性能の低下してしまうことを防止できる。
【0053】
上記の各例で説明したように、フロート弁21は、空気が充填された内部空間として空室27を有するように構成してもよい。
空室27に空気が十分に充填されたフロート弁21は、オイルに対して浮力を有する。
また、オイルに対する浮力を得るためにフロート弁21の材料を選択する必要がないため、フロート弁21に用いる材料の選択幅を広げることができる。従って、安価な材料や成形容易な材料やオイルに溶けない材料の選択が容易となる。
【0054】
図3などで説明したように、フロート弁21は、排出孔20に対する垂直方向の移動を規制する規制部(規制凸部28及びフランジ部29a)を有するように構成してもよい。
これにより、オイル貯留部13に多量のオイルが存在する場合に、フロート弁21が排出孔20から脱落してしまうことや排出孔20から外れてしまうことを防止することが可能となる。
従って、オイル貯留部13に溜まったオイル量に応じて自動的に開弁と閉弁が行われるため、フロート弁21の開閉状態をコントロールするための制御機構が不要である。つまり、簡易な構造で実現することができる。
【0055】
図3などで説明したように、フロート弁21は、排出孔20よりも径が小さい円柱形状とされ少なくとも一部が排出孔20に挿入される挿入部22と、フロート弁21の下方への移動を規制する規制部として設けられ、挿入部22の上部に設けられ外形が排出孔20よりも大径とされたフランジ部29aと、フロート弁21の上方への移動を規制する規制部として設けられ、挿入部22の下端から径方向に延びる複数の規制凸部28とを備えるように構成されていてもよい。
フランジ部の外径が排出孔よりも大きくされることで、排出孔20の縁部(オイル貯留部13の内壁)とフランジ部29aの下面によって閉弁が確実に行われる。
また、フランジ部29aの下方の挿入部22が排出孔20よりも径が小さい円柱形状とされることにより、排出孔20の内壁と挿入部22の外面の間に空間(空隙部31)が形成され、オイル貯留部13からオイルを排出するための排出経路Rを確保することができる。
そして、挿入部22の下端から径方向に延びる規制凸部28が設けられることで、フロート弁21が排出孔20から抜け切ってしまうことが防止される。
【0056】
図9乃至
図12の各図で説明したように、一つのオイル貯留部13に対して排出孔20及びフロート弁21が複数設けられていてもよい。
これにより、オイル貯留部13に貯留されたオイルに偏りが生じた場合であっても、いずれかのフロート弁21を介してオイルがオイルストレーナ8に排出され易い。また、オイル貯留部13に貯留されたオイルに大きな偏りが生じたとしても、オイルが排出されやすい。
従って、オイル貯留部13に配置された回転体12が回転する際に生じる撹拌抵抗の更なる低減を図ることができる。
特に、オイル貯留部13の下面の中央を挟んだ対角に設けられた排出孔20にそれぞれフロート弁21が配置される構成とした場合には、車両100の前後方向及び車幅方向の何れにオイルが偏った場合にもオイルの排出を効率的に行うことが可能となる。
これにより、撹拌抵抗の低減効果をより高めることができる。