特許第6783611号(P6783611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783611
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】螺旋管形成用帯状部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20201102BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20201102BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20201102BHJP
【FI】
   B29C63/32
   F16L1/00 J
   B29L23:00
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-192618(P2016-192618)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-52014(P2018-52014A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 政浩
(72)【発明者】
【氏名】吉野 克則
(72)【発明者】
【氏名】長束 順一
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−307784(JP,A)
【文献】 特開2011−104777(JP,A)
【文献】 特開2008−173929(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3143303(JP,U)
【文献】 特開2007−196666(JP,A)
【文献】 特開平11−034165(JP,A)
【文献】 特開2015−112834(JP,A)
【文献】 特開平10−016051(JP,A)
【文献】 特開2009−149049(JP,A)
【文献】 特開2000−254970(JP,A)
【文献】 特開2014−014959(JP,A)
【文献】 特開2015−182254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/32
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回されて螺旋管を形成する螺旋管形成用帯状部材であって、
前記螺旋管の内周面となる平板部を有する帯状部材本体と、
弾性変形により当該螺旋管形成用帯状部材の幅方向に伸長または圧縮が可能な伸縮部と、
前記伸縮部に外力が加えられて弾性変形が生じたときに塑性変形し、前記外力が除かれた後に前記伸縮部に生じた幅方向の変形を保持する変形保持部材とを有することを特徴とする螺旋管形成用帯状部材。
【請求項2】
螺旋状に巻回されて螺旋管を形成する螺旋管形成用帯状部材であって、
前記螺旋管の内周面となる平板部を有する帯状部材本体と、
弾性変形により当該螺旋管形成用帯状部材の幅方向に伸長または圧縮が可能な伸縮部と、
前記帯状部材本体に比べて弾性範囲が小さい材料からなり、前記伸縮部を跨ぐように配置され、その両端部が前記伸縮部の両側で前記帯状部材本体に対して固定される変形保持部材とを有することを特徴とする螺旋管形成用帯状部材。
【請求項3】
請求項2に記載の螺旋管形成用帯状部材であって、
前記帯状部材本体は、前記伸縮部の両側に本体側係合部を有しており、
前記変形保持部材は、その両端部に保持部材側係合部を有しており、
前記変形保持部材は、前記本体側係合部との前記保持部材側係合部との係合によって、前記帯状部材本体に対して固定されることを特徴とする螺旋管形成用帯状部材。
【請求項4】
螺旋状に巻回されて螺旋管を形成する螺旋管形成用帯状部材であって、
前記螺旋管の内周面となる平板部を有する帯状部材本体と、
弾性変形により当該螺旋管形成用帯状部材の幅方向に伸長または圧縮が可能な伸縮部と、
前記帯状部材本体に比べて弾性範囲が小さい材料からなり、前記伸縮部の少なくとも一部に接着もしくは内包される変形保持部材とを有することを特徴とする螺旋管形成用帯状部材。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の螺旋管形成用帯状部材であって、
前記伸縮部は、前記帯状部材本体の一部として形成されていることを特徴とする螺旋管形成用帯状部材。
【請求項6】
請求項1から4の何れか一つに記載の螺旋管形成用帯状部材であって、
前記帯状部材本体が複数に分離して設けられており、
前記伸縮部は、分離された前記帯状部材本体の間に配置されていることを特徴とする螺旋管形成用帯状部材。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の螺旋管形成用帯状部材であって、
前記伸縮部は、前記螺旋管の外周面となる側を前記螺旋管形成用帯状部材の背面とするとき、前記背面側に突出するように屈曲して形成されていることを特徴とする螺旋管形成用帯状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管を更生する際に使用される螺旋管形成用帯状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道や下水道として使用される既設管には、古くから金属管やヒューム管が使用されている。このような既設管は、長期の使用によって老朽化し、割れや腐食により漏水するおそれがある。このため、最近では、老朽化した埋設管等の既設管内に合成樹脂管を挿入してライニングすることが行われている。
【0003】
既設管のライニング工法の一つに合成樹脂製の帯状部材を螺旋状に巻回することにより形成される螺旋管によって既設管をライニングする方法が知られている。この方法では、既設管ライニング用の帯状部材を螺旋状に巻回して、螺旋状に巻回された帯状部材の隣接する側縁部同士を係合状態とすることにより螺旋管を製造し、製造された螺旋管を既設管内に挿入することにより既設管内面を螺旋管によってライニングするようになっている。
【0004】
上記帯状部材では、形成される螺旋管が軸方向に伸長しやすくなるように山形状の伸縮部を設けたものがある(特許文献1)。このように帯状部材に伸縮部を設けることで、地震時における外力を吸収して螺旋管の破損を防止したり、既設管の湾曲部において帯状部材の幅方向に作用する大きな引張力を吸収したりすることが可能となる。
【0005】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂を用いて形成された帯状部材に伸縮部を設け、螺旋管の製管時に伸縮部を変形させる時には、伸縮部に対して加熱処理を施して変形させる製管方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−034165号公報
【特許文献2】国際公開第2008/050750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のような、単に伸縮部を設けただけの帯状部材では、伸縮部の変形が弾性変形域である場合には、与えられた伸長量を保持することが困難である。例えば、螺旋管を既設管の湾曲部に沿わせるように製管する時には、それまでに製管された螺旋管の端部に管軸方向の引張力を与えることで、帯状部材に設けられた伸縮部を管軸方向に伸長させる。この場合、与えられた伸長量を保持することができなければ、引張力を与え続けながら製管を行う必要があり、製管時の作業効率が低下する。また、伸縮部に弾性変形域を超える伸長量を与えた場合には、帯状部材の白化といった性質の低下を引き起こすおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に開示された製管方法では、伸縮部に加熱を行って変形させるため、温度が下がるとその変形量は保持され、弾性変形域を超えて伸長させる場合のような大きな性質の低下も生じない。しかしながら、加熱工程が必要となるため、施工工程の増加が生じるといった問題がある。また、製管される螺旋管が水などの冷媒に接触している状況では加熱が困難であったり、加熱により危険を伴う雰囲気であったりする場合には、有効な手段ではなくなる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、伸縮部を有する帯状部材において、余分な工程を用いることなく伸縮部の変形を保持でき、かつ、帯状部材の性質の低下を引き起こすことのない帯状部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の螺旋管形成用帯状部材は、上記の課題を解決するために、螺旋状に巻回されて螺旋管を形成する螺旋管形成用帯状部材であって、前記螺旋管の内周面となる平板部を有する帯状部材本体と、弾性変形により当該螺旋管形成用帯状部材の幅方向に伸長または圧縮が可能な伸縮部と、前記伸縮部に外力が加えられて弾性変形が生じたときに前記伸縮部と共に塑性変形し、前記外力が除かれた後に前記伸縮部に生じた変形を保持する変形保持部材とを有することを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば螺旋管形成用帯状部材が伸縮部を有していることにより、伸縮部に外力を加えることで幅方向に伸長や収縮の変形を容易に与えることができる。また、伸縮部に変形が生じるときには、同時に変形保持部材にも変形が生じる。この時、伸縮部に生じる変形は弾性変形であるが、変形保持部材に生じる変形は塑性変形であるため、外力を取り除いても変形保持部材に生じた変形は維持され、伸縮部に生じた変形も変形保持部材によって保持することができる。
【0012】
伸縮部に生じる変形は弾性変形であるため、伸縮部において白化等の性質の低下は生じない。また、変形保持部材は外力を加えるだけで塑性変形するものであり、変形の際に加熱工程等の他の工程を必要としない。したがって、施工工程の増加が生じることもなく、また、施工現場の環境等によって施工が困難になることも生じにくい。
【0013】
本発明の他の螺旋管形成用帯状部材は、上記の課題を解決するために、螺旋状に巻回されて螺旋管を形成する螺旋管形成用帯状部材であって、前記螺旋管の内周面となる平板部を有する帯状部材本体と、弾性変形により当該螺旋管形成用帯状部材の幅方向に伸長または圧縮が可能な伸縮部と、前記帯状部材本体に比べて弾性範囲が小さい材料からなり、前記伸縮部を跨ぐように配置され、その両端部が前記伸縮部の両側で前記帯状部材本体に対して固定される変形保持部材とを有することを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、螺旋管形成用帯状部材が伸縮部を有していることにより、伸縮部に外力を加えることで幅方向に伸長や収縮の変形を容易に与えることができる。また、変形保持部材は、伸縮部を跨ぐように配置され、その両端部が伸縮部の両側で帯状部材本体に対して固定される。これにより、伸縮部において幅方向に伸長や収縮が生じた場合、その伸長量および収縮量を変形保持部材によって保持することが可能となる。
【0015】
また、上記螺旋管形成用帯状部材では、前記帯状部材本体は、前記伸縮部の両側に本体側係合部を有しており、前記変形保持部材は、その両端部に保持部材側係合部を有しており、前記変形保持部材は、前記本体側係合部との前記保持部材側係合部との係合によって、前記帯状部材本体に対して固定される構成とすることができる。
【0016】
本発明のさらに他の螺旋管形成用帯状部材は、上記の課題を解決するために、螺旋状に巻回されて螺旋管を形成する螺旋管形成用帯状部材であって、前記螺旋管の内周面となる平板部を有する帯状部材本体と、弾性変形により当該螺旋管形成用帯状部材の幅方向に伸長または圧縮が可能な伸縮部と、前記帯状部材本体に比べて弾性範囲が小さい材料からなり、前記伸縮部の少なくとも一部に接着もしくは内包される変形保持部材とを有することを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、螺旋管形成用帯状部材が伸縮部を有していることにより、伸縮部に外力を加えることで幅方向に伸長や収縮の変形を容易に与えることができる。また、変形保持部材は、伸縮部の少なくとも一部に接着もしくは内包されて配置される。これにより、伸縮部において幅方向に伸長や収縮が生じた場合、その伸長量および収縮量を変形保持部材によって保持することが可能となる。
【0018】
また、上記螺旋管形成用帯状部材では、前記伸縮部は、前記帯状部材本体の一部として形成されている構成とすることができる。
【0019】
また、上記螺旋管形成用帯状部材では、前記帯状部材本体が複数に分離して設けられており、前記伸縮部は、分離された前記帯状部材本体の間に配置されている構成とすることができる。この場合、伸縮部が帯状部材本体とは異なるよりヤング率が小さい素材(例えばゴム)でできているものが好ましい。
【0020】
また、上記螺旋管形成用帯状部材では、前記伸縮部は、前記螺旋管の外周面となる側を前記螺旋管形成用帯状部材の背面とするとき、前記背面側に突出するように屈曲して形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の螺旋管形成用帯状部材は、伸縮部に外力を加えることで幅方向の伸長や収縮変形を生じさせたとき、外力を取り除いた後も伸縮部に生じた変形を変形保持部材によって保持することができる。この時、伸縮部に生じる変形は弾性変形であるため、伸縮部において白化等の性質の低下を防止することができるといった効果を奏する。また、変形保持部材は外力を加えるだけで塑性変形するものであり、施工工程の増加が生じることもなく、また、施工現場の環境等によって施工が困難になることも生じにくいといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態における既設管の更生工法の一例を示す説明図である。
図2】実施の形態1に示す帯状部材の断面図であり、(a)は伸縮部が伸長されていない状態を示す図、(b)は伸縮部が伸長された状態を示す図である。
図3】実施の形態1に示す帯状部材の変形例を示す断面図である。
図4】実施の形態1に示す帯状部材の他の変形例を示す断面図である。
図5】実施の形態2に示す帯状部材の断面図であり、(a)は伸縮部が伸長されていない状態を示す図、(b)は伸縮部が伸長された状態を示す図である。
図6】(a)〜(c)は、実施の形態2に示す帯状部材の変形例を示す断面図である。
図7】(a)〜(c)は、図6(a)〜(c)のそれぞれにおいて伸縮部が伸長された状態を示す断面図である。
図8】(a)〜(d)は、実施の形態2に示す帯状部材の他の変形例を示す断面図である。
図9】実施の形態3に示すストリップの断面図である。
図10】実施の形態3に示すジョイナーの断面図である。
図11】実施の形態3に示すジョイナーの変形例を示す断面図である。
図12】実施の形態4に示す伸縮部の一構成例を示す断面図である。
図13】(a),(b)は、実施の形態4に示す伸縮部の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
既設管の更生は、既設管内に管状の更生管を形成して、老朽化した既設管の内周面をこの新たな更生管でライニングすることによって行われる。この更生管には、帯状部材を螺旋状に巻回して形成される螺旋管が用いられる。
【0025】
図1は、既設管の更生工法の一例を示す説明図である。図1に示すように、既設管10の上部マンホール11、あるいは既設管10内には、あらかじめ帯状部材(螺旋管形成用帯状部材)2を巻き取ったドラム30を設置している。このドラム30は、既設管10内に配置した自走式の製管機40に帯状部材2を連続的に供給していくのに用いられる。製管機40は、帯状部材2を螺旋状に巻回させ、管状に形成していくことで更生管(螺旋管)20を形成する。
【0026】
図2(a),(b)は、本実施の形態1における帯状部材2の形状例を示す断面図である(尚、実施の形態で参照する図面において、断面図におけるハッチングは図示を省略している。)。帯状部材2は長尺帯状の部材であり、合成樹脂により形成される本体部(帯状部材本体)21と、塑性変形材料(例えば、鉄)により形成される変形保持部材22とから構成されている。尚、以下の説明では、帯状部材2を巻回して螺旋管を製管したときに、螺旋管の内周面となる側を帯状部材2の内面、螺旋管の外周面となる側を帯状部材2の背面とする。
【0027】
本体部21は、螺旋管に製管されたときに、螺旋管の内周面となる平板部211に対し、幅方向の一方の端部に第1嵌合部212が設けられ、他方の端部に第2嵌合部213が設けられている。第1嵌合部212および第2嵌合部213は、それぞれ本体部21の長手方向に沿って形成され、互いに嵌め合わされて接合しうる形状とされている。但し、第1嵌合部212および第2嵌合部213における具体的形状は、本発明において特に限定されるものではない。
【0028】
また、本体部21には、平板部211の中途に背面側に突出するように山形に屈曲させた伸縮部214が設けられている。この伸縮部214は、帯状部材2が、その幅方向に伸長しうるように設けられたものである。伸縮部214の断面形状は、図2に示す略U字形に限定されるものではなく、例えば略三角形や略矩形に屈曲させた形状であってもよい。また、伸縮部214の数は、図2に示される2つに限定されるものではなく、伸縮部214は少なくとも一つ形成されていればよい。
【0029】
また、本体部21においてそれぞれの伸縮部214の両側には、背面側に突出するリブ215が設けられている。リブ215は、支柱部215Aとフランジ部215Bとから構成されている。支柱部215Aは平板部211から背面側に突出するように形成されており、フランジ部215Bは支柱部215Aの側面から伸縮部214側に向かって突出するように設けられている。また、リブ215は、第1嵌合部212または第2嵌合部213の一部として形成されていてもよい。
【0030】
変形保持部材22は、伸縮部214に与えられた変形を保持するための部材であり、本体部21に比べて弾性変形域が小さく、塑性変形域が大きい材料からなる。これにより、本体部21と変形保持部材22とに同程度の変形量(ひずみ)を与えた場合に、本体部21では弾性変形をさせ、変形保持部材22では塑性変形をさせることが可能となる。また、変形保持部材22は、本体部21に比べて剛性も高いものとされる。具体的には、変形保持部材22は、鉄板等を折り曲げ成形して得られるものであり、屈曲部221、平板部222、および係合部223から構成されている。変形保持部材22は、本体部21と同様に長手方向に連続的に形成されていてもよく、あるいは、長手方向の長さを本体部21よりも短くし、本体部21の背面側に断続的に配置されるものであってもよい。
【0031】
屈曲部221は、その内部に本体部21における伸縮部214を格納する部分である。このため、屈曲部221の内面形状は、伸縮部214の外面形状とほぼ同じか、あるいは大きくなるように形成されている。平板部222は、屈曲部221の両側に形成されており、本体部21の平板部211と接触するように配置される。係合部223は、変形保持部材22の両端部において平板部222から背面側に立設するように形成されている。
【0032】
本発明の帯状部材2を構成するように変形保持部材22を本体部21に組み合わせた状態では、変形保持部材22が伸縮部214を跨ぐように配置され、変形保持部材22の係合部223が本体部21のリブ215に係合することによって変形保持部材22の両端が本体部21に対して係合固定される。この時、係合部223の先端がリブ215のフランジ部215Bによって背面側から押さえ込まれることにより、変形保持部材22が本体部21から離脱することが防止できる。
【0033】
ここで、図2(a)は伸縮部214が伸長されていない状態(デフォルト状態)を示す図、図2(b)は伸縮部214が伸長された状態(伸長状態)を示す図である。帯状部材2をデフォルト状態から伸長状態へと変形させる場合には、例えば、本体部21に対して幅方向の引張力を加えればよい。あるいは、変形保持部材22の両端の係合部223に対して、これらを両側に押し拡げるような力を加えてもよい。
【0034】
このようにして伸長状態に変形された帯状部材2において、その変形量が予め定められた規定量以内である場合には、本体部21における伸縮部214の変形は弾性変形となる。したがって、伸縮部214において白化等の性質の低下は生じない。
【0035】
一方、デフォルト状態から伸長状態への変形時には変形保持部材22の屈曲部221においても変形が生じるが、この変形は弾性変形ではなく塑性変形によるものとなる。したがって、帯状部材2を伸長状態へ変形させた力を除いた後も、その変形は変形保持部材22によって保持される。すなわち、伸縮部214において生じた変形は変形保持部材22によって保持される。
【0036】
上記説明では、伸縮部214によって帯状部材を幅方向に伸長させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、伸縮部214によって帯状部材を幅方向に収縮させることも可能である。例えば、図2(b)に示す状態をデフォルト状態とし、この状態から帯状部材2に幅方向の圧縮力を加えて図2(a)に示す状態とし、図2(a)に示す状態を収縮状態としてもよい。無論、この場合も、帯状部材2に生じる収縮変形は変形保持部材22によって保持することは可能である。さらに、この場合、図2(b)のデフォルト状態から帯状部材2に幅方向の引張力を加えて伸長状態にすることも可能である。
【0037】
本実施の形態1に係る帯状部材2では、変形保持部材22は、本体部21の背面側において伸縮部214を跨ぐように配置され、かつ、変形保持部材22の両端が本体部21に対して伸縮部214の両側で固定される。これにより、伸縮部214において幅方向に伸長や収縮が生じた場合、その伸長量および収縮量が変形保持部材22によって保持される。
【0038】
尚、図2の例では、変形保持部材22の係合部223を本体部21のリブ215に係合させることによって変形保持部材22の両端を本体部21に対して固定している。しかしながら、本発明において、変形保持部材22の両端を本体部21に対して固定する方法は、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、変形保持部材22の平板部222を本体部21の平板部211に接着固定するものであってもよい。この場合は、変形保持部材22において係合部223を省略してもよい。
【0039】
また、本実施の形態1に係る帯状部材2では、変形保持部材22の屈曲部221は、その内部に本体部21における伸縮部214を格納できればよく、その内面形状は伸縮部214の外面形状と一致しなくてもよい。このため、例えば図4に示すように、帯状部材2にさらに補強部材23を組み合わせ、変形保持部材22の形状を補強部材23と同一の形状としてもよい。すなわち、変形保持部材22に補強部材としての機能を兼ね備えさせてもよい。尚、変形保持部材22を補強部材としても用いる場合は、変形保持部材22は長手方向に連続的に形成されていることが好ましい。
【0040】
〔実施の形態2〕
上記実施の形態1では、伸縮部214において幅方向に伸長や収縮が生じた場合、その伸長量および収縮量を変形保持部材22によって保持している。これに対し、本実施の形態2では、伸縮部214において幅方向に伸長や収縮が生じた場合、伸縮部214における変形後の形そのものを変形保持部材22によって保持する。
【0041】
図5(a),(b)は、本実施の形態2における帯状部材2の形状例を示す断面図である。帯状部材2は長尺帯状の部材であり、本体部21と変形保持部材24とから構成されている。本体部21は、実施の形態1と同様の構成とすることができる。変形保持部材24は、実施の形態1における変形保持部材22と同様に、本体部21に比べて弾性変形域が小さく、塑性変形域が大きい材料からなる。また、変形保持部材24は、本体部21に比べて剛性も高いものとされる。
【0042】
変形保持部材24は、本体部21の背面側に配置され、その内面形状が伸縮部214の外面形状とほぼ同じとされ、変形保持部材24の内面が伸縮部214の外面に接着固定されている。
【0043】
ここで、図5(a)は伸縮部214が伸長されていない状態(デフォルト状態)を示す図、図5(b)は伸縮部214が伸長された状態(伸長状態)を示す図である。帯状部材2をデフォルト状態から伸長状態へと変形させた場合、変形保持部材24が伸縮部214に接着固定されているため、変形保持部材24と伸縮部214とは一体的に変形する。この時、与えられた変形量が予め定められた規定量以内である場合には、伸縮部214の変形は弾性変形となる。したがって、伸縮部214において白化等の性質の低下は生じない。一方、変形保持部材24に生じる変形は塑性変形によるものとなり、伸縮部214において生じた変形は、変形を生じさせた力を除いた後も変形保持部材24によって保持される。
【0044】
図5に示した例は、変形保持部材24を伸縮部214の全体に接着した構成となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものでなく、変形保持部材24を伸縮部214の少なくとも一部に接着した構成であってもよい。図6(a)〜(c)は、変形保持部材24を伸縮部214の一部に接着した構成例を示す断面図である。また、図7(a)〜(c)は、図6(a)〜(c)のそれぞれにおいて伸縮部214が伸長された状態を示す断面図である。
【0045】
図6(a)および図7(a)に示す構成は、伸縮部214の頂部の曲率を変化させ、その曲率変化を変形保持部材24にて保持するものである。図6(b)および図7(b)に示す構成は、伸縮部214の側壁の立ち上がり角度を変化させ、その角度変化を変形保持部材24にて保持するものである。そして、図6(c)および図7(c)に示す構成は、伸縮部214の側壁に曲げを生じさせ、その曲げ変化を変形保持部材24にて保持するものである。
【0046】
このように、変形保持部材24を伸縮部214の一部に接着した場合であっても、変形保持部材24の設けられた箇所に変形を生じさせれば、その変形を変形保持部材24にて保持することが可能であり、結果として伸縮部214に生じた変形量を保持することが可能である。無論、変形保持部材24は、伸縮部214に幅方向の収縮変形を与えたときにこれを保持することも可能である。
【0047】
また、上記説明では、変形保持部材24と伸縮部214とが一体的に変形するように、変形保持部材24を伸縮部214に接着固定した構成としているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図8(a)〜(d)に示すように、変形保持部材24を伸縮部214に内包した(埋め込んだ)構成であってもよい。このように、変形保持部材24を伸縮部214に内包した構成であっても、変形保持部材24と伸縮部214とを一体的に変形させることが可能である。この場合、変形保持部材24は伸縮部214の全体に内包(図8(a)参照)されていてもよく、伸縮部214の少なくとも一部に内包(図8(b)〜(d)参照)されていてもよい。
【0048】
以上のように、実施の形態1および2に記載の帯状部材2は、背面側に突出するように屈曲して形成された伸縮部214を有している本体部21と、伸縮部214に外力が加えられて弾性変形が生じたときに伸縮部214と共に塑性変形し、外力が除かれた後に伸縮部214に生じた変形を保持する変形保持部材22または24とを有する。
【0049】
これにより、伸縮部214に外力を加えることで幅方向に伸長や収縮の変形を容易に与えることができる。また、伸縮部214に変形が生じるときには、同時に変形保持部材22または24にも変形が生じる。この時、伸縮部214に生じる変形は弾性変形であるが、変形保持部材22または24に生じる変形は塑性変形であるため、外力を取り除いても変形保持部材22または24に生じた変形は維持され、伸縮部214に生じた変形も変形保持部材22または24によって保持することができる。
【0050】
伸縮部214に生じる変形は弾性変形であるため、伸縮部214において白化等の性質の低下は生じない。また、変形保持部材22または24は外力を加えるだけで塑性変形するものであり、変形の際に加熱工程等の他の工程を必要としない。したがって、施工工程の増加が生じることもなく、また、施工現場の環境等によって施工が困難になることも生じにくい。
【0051】
〔実施の形態3〕
上記実施の形態1,2では、一種類の帯状部材2を螺旋状に巻回して更生管(螺旋管)20を形成している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ダンビー工法のように二種類の帯状部材を螺旋状に巻回して螺旋管を形成する場合にも本発明は適用可能である。本実施の形態3では、ダンビー工法で用いられる帯状部材に本発明を適用する場合を例示する。
【0052】
ダンビー工法では、例えば図9および図10に示すストリップ5およびジョイナー6の二種類の帯状部材を螺旋状に巻回して螺旋管が形成される。ストリップ5は、図9に示すように、幅方向の両端に雌型嵌合部51,51が設けられている。ジョイナー6は、図10に示すように、幅方向の両端に雄型嵌合部612,612が設けられている。ダンビー工法における螺旋管は、ストリップ5を螺旋状に巻き立てながら、隣り合うストリップ5間にジョイナー6を嵌合することで連続的に形成される。この時、ストリップ5の一方の雌型嵌合部51とジョイナー6の一方の雄型嵌合部612とが互いに嵌め合わされて接合する。
【0053】
ダンビー工法においては、螺旋管の破損を防止したり、湾曲部において帯状部材の幅方向に作用する大きな引張力を吸収したりするための伸縮部は、通常、ジョイナー側において設けられる。このため、本実施の形態3では、ジョイナー6が特許請求の範囲に記載の螺旋管形成用帯状部材に該当するものであり、以下の説明ではジョイナー6の構成について説明を行う。
【0054】
図10に示すジョイナー6は、長尺帯状の部材であり、合成樹脂により形成される本体部(帯状部材本体)61と、塑性変形材料(例えば、鉄)により形成される変形保持部材22とから構成されている。
【0055】
本体部61は、螺旋管に製管されたときに、螺旋管の内周面となる平板部611に対し、幅方向の両方の端部に雄型嵌合部612,612が設けられている。また、本体部61には、平板部611の中途に背面側に突出するように山形に屈曲させた伸縮部613が設けられている。この伸縮部613は、ジョイナー6が、その幅方向に伸長しうるように設けられたものである。伸縮部613の断面形状や数は、実施の形態1および2における帯状部材2の伸縮部214と同様に、特に限定されるものではない。
【0056】
また、本体部61においてそれぞれの伸縮部613の両側には、背面側に突出するリブ614が設けられている。リブ614は、雄型嵌合部612の一部として形成されていてもよい。
【0057】
図10における変形保持部材22は、実施の形態1における変形保持部材22を適用したものである。すなわち、変形保持部材22が本体部61の伸縮部613を跨ぐように配置され、変形保持部材22の係合部223が本体部61のリブ614に係合することによって変形保持部材22の両端が本体部61に対して係合固定される。
【0058】
これにより、伸縮部613において幅方向に伸長や収縮が生じた場合、同時に変形保持部材22にも変形が生じる。この時、伸縮部613に生じる変形は弾性変形であるが、変形保持部材22に生じる変形は塑性変形であるため、外力を取り除いても変形保持部材22に生じた変形は維持され、伸縮部613の伸長量および収縮量を変形保持部材22によって保持することが可能となる。
【0059】
また、図10における変形保持部材22は、図3に示す変形保持部材22と同様に、変形保持部材22の平板部222を本体部61の平板部611に接着固定した構成に変形することも可能である。
【0060】
さらに、図10における変形保持部材22は、実施の形態1における変形保持部材22を適用した場合を例示しているが、本実施の形態3に係るジョイナー6は、図11に示すように実施の形態2における変形保持部材24を適用することも可能である。図11に示すジョイナー6は、本体部61の伸縮部613の全体に、伸縮部613と同一形状とされた変形保持部材24を内包した(埋め込んだ)構成である。
【0061】
これにより、伸縮部613において幅方向に伸長や収縮が生じた場合、同時に変形保持部材24にも変形が生じる。この時、伸縮部613に生じる変形は弾性変形であるが、変形保持部材24に生じる変形は塑性変形であるため、外力を取り除いても変形保持部材24に生じた変形は維持され、伸縮部613に生じた変形を変形保持部材24によって保持することが可能となる。
【0062】
また、図11におけるジョイナー6は、図5に示す変形保持部材24と同様に、変形保持部材24を伸縮部613の外面に接着固定した構成に変形することも可能である。さらには、図6および図8に示す変形保持部材24と同様に、変形保持部材24を伸縮部613の一部に接着もしくは内包させた構成に変形することも可能である。
【0063】
〔実施の形態4〕
上記実施の形態1〜3では、帯状部材2(またはジョイナー6)の本体部21,61において、その一部を背面側に突出するように山形に屈曲させて伸縮部214,613を形成している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、伸縮部を本体部21,61と別部材にして設けたり、伸縮部を突出させない形状として設けたりすることも可能である。本実施の形態4では、そのような伸縮部の変形例について図12図13を参照して説明する。
【0064】
図12に示すジョイナー6では、本体部をジョイナー6の中央部分で分離させた2つの本体部61,61とし、その間に本体部61とは別部材にて形成した伸縮部62を配置している。伸縮部62は、蛇腹状に形成された長尺帯状の部材であり、本体部61,61に対して背面側に配置される。また、伸縮部62の幅方向の両端部は、2つの本体部61,61のそれぞれに対して、例えば接着等により接合されている。伸縮部62には、本体部61,61よりも低弾性率である材料(例えばゴム)が使用される。
【0065】
また、図12に示すジョイナー6では、実施の形態1における変形保持部材22を適用している。変形保持部材22は、伸縮部62のさらに背面側において、伸縮部62を跨ぐように(すなわち、2つの本体部61,61の分離箇所を跨ぐように)配置される。また、変形保持部材22の幅方向の両端部は、2つの本体部61,61のそれぞれに対して、係合固定もしくは接着固定される(図12では係合固定)。
【0066】
図12に示すジョイナー6において、幅方向の引張外力が作用した場合、本体部61,61には変形は殆ど生じず、中央部の分離箇所における間隔が拡がるように離間するのみである。一方で、伸縮部62では蛇腹を拡げるように変形が生じる。伸縮部62に生じた変形は、実施の形態1と同様に変形保持部材22によって保持することが可能となる。
【0067】
次に、図13(a),(b)に示すジョイナー6では、本体部をジョイナー6の中央部分で分離させた2つの本体部61,61とし、その間に本体部61とは別部材にて形成した伸縮部63を配置している。伸縮部63は、背面側へ突出することなく、本体部61の平板部611と同一平面に配置される。また、伸縮部63の幅方向の両端部は、2つの本体部61,61のそれぞれに対して、例えば接着等により接合されている。伸縮部63には、本体部61,61よりも低弾性率である材料が使用される。
【0068】
また、図13(a),(b)に示すジョイナー6では、実施の形態1における変形保持部材22を適用している。変形保持部材22は、伸縮部63の背面側において、伸縮部63を跨ぐように(すなわち、2つの本体部61,61の分離箇所を跨ぐように)配置される。また、変形保持部材22の幅方向の両端部は、2つの本体部61,61のそれぞれに対して、係合固定もしくは接着固定される(図13(a)では係合固定、図13(b)では接着固定)。
【0069】
図13(a),(b)に示すジョイナー6において、幅方向の引張外力が作用した場合、本体部61,61には変形は殆ど生じず、中央部の分離箇所における間隔が拡がるように離間するのみである。一方で、伸縮部63では幅方向に伸長するように変形が生じる。伸縮部63に生じた変形は、実施の形態1と同様に変形保持部材22によって保持することが可能となる。
【0070】
尚、上記説明では、本実施の形態4における伸縮部62,63をジョイナー6に適用した場合を例示したが、本実施の形態4における伸縮部は実施の形態1,2における帯状部材2に適用することも可能である。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
2 帯状部材(螺旋管形成用帯状部材)
10 既設管
20 更生管(螺旋管)
21 本体部(帯状部材本体)
22,24 変形保持部材
211 平板部
212 第1嵌合部
213 第2嵌合部
214 伸縮部
215 リブ
221 屈曲部
222 平板部
223 係合部
5 ストリップ
6 ジョイナー(螺旋管形成用帯状部材)
61 本体部(帯状部材本体)
62,63 伸縮部
611 平板部
612 雄型嵌合部
613 伸縮部
614 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13