特許第6783612号(P6783612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783612
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】アルカリ二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20201102BHJP
   H01M 4/34 20060101ALI20201102BHJP
   H01M 4/54 20060101ALI20201102BHJP
   H01M 10/32 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H01M4/62 C
   H01M4/34
   H01M4/54
   H01M10/32 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-195366(P2016-195366)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2018-60610(P2018-60610A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】下岡 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光俊
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕志
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−524948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/24 − 10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質である銀酸化物と導電助剤とを含有する正極合剤層を有する正極、負極およびアルカリ電解質を有するアルカリ二次電池であって、
前記正極合剤層は、前記導電助剤として、カーボンブラックおよび炭素繊維より選択され、BET比表面積が85m/g以下である少なくとも1種の炭素材料Aを含有し、
前記正極合剤層中における前記炭素材料Aの含有量が、0.5〜8質量%であり、
前記導電助剤全体における前記炭素材料Aの割合が、30質量%以上であり、
前記銀酸化物の平均粒子径が、10μm以下であることを特徴とするアルカリ二次電池。
【請求項2】
前記正極合剤層は、前記導電助剤として、平均粒子径が1〜7μmの黒鉛粒子を更に含有している請求項1に記載のアルカリ二次電池。
【請求項3】
前記正極合剤層の厚みが0.4mm以下である請求項2に記載のアルカリ二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電効率が高く、充放電サイクル特性および貯蔵特性に優れたアルカリ二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀酸化物を含有する正極と、アルカリ電解質とを有するアルカリ電池(酸化銀電池)は、一次電池として広く一般に使用されている。
【0003】
この種の電池においては、特性向上を図るべく種々の検討がなされており、例えば、特許文献1には、BET法による比表面積が90〜150m/gのオイルファーネスブラックと黒鉛との混合物を正極の導電助剤に使用することで、重負荷放電特性を高めることが試みられている。
【0004】
他方、銀酸化物を正極に使用したアルカリ電池を、二次電池として利用することも検討されている(特許文献2)。この電池における充電時の正極の反応は、下記の式(1)あるいは式(2)の反応が考えられている。
2Ag + 2OH → AgO + HO + 2e (1)
AgO + 2OH → 2AgO + HO + 2e (2)
【0005】
前記二次電池の正極では、放電時に銀酸化物から銀が生成するが、引き続いて充電を行うと、銀粒子の周りに不導体である銀酸化物の結晶が生成する。そのため、正極内の導電性が充分に確保させていない場合、充電反応が阻害されて活物質の利用率が低下し、良好な充放電サイクル特性が得られないという問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−210756号公報
【特許文献2】特開昭58−131668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記課題に対し、特許文献1に記載されているような、BET比表面積が大きな炭素材料と黒鉛との混合物を、前記二次電池の正極の導電助剤として用いることが考えられる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、BET比表面積が大きな炭素材料を導電助剤として混合した場合、確かに正極の導電性を向上させ、充電効率や充放電サイクル特性を改善することが可能となるものの、黒鉛のみを用いた場合に比べて、充電時や高温貯蔵時に発生するガス量が増加し、電池の信頼性が損なわれてしまうことが明らかとなった。
【0008】
従って、酸化銀二次電池の貯蔵特性などの信頼性を損なうことなく、充電効率が高く、優れた充放電サイクル特性を実現することのできる正極構成を検討する必要がある。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充電効率が高く、充放電サイクル特性および貯蔵特性に優れたアルカリ二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成し得た本発明のアルカリ二次電池は、正極活物質である銀酸化物と導電助剤とを含有する正極合剤層を有する正極、負極およびアルカリ電解質を有しており、前記正極合剤層は、前記導電助剤として、カーボンブラックおよび炭素繊維より選択され、BET比表面積が85m/g以下である少なくとも1種の炭素材料Aを含有し、前記正極合剤層中における前記炭素材料Aの含有量が、0.5〜8質量%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、充電効率が高く、充放電サイクル特性および貯蔵特性に優れたアルカリ二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のアルカリ二次電池の一例を模式的に表す側面図である。
図2図1に表すアルカリ二次電池の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアルカリ二次電池に係る正極は、正極活物質である銀酸化物と、導電助剤とを含有する正極合剤層を有するものである。正極は、正極合剤層のみで構成されたもの(正極合剤の成形体)であってもよく、正極合剤層が集電体上に形成された構造のものであってもよい。
【0014】
特許文献1に記載されているように、酸化銀電池(酸化銀一次電池)に係る正極の導電助剤には黒鉛が使用されることが多いが、黒鉛は鱗片状の構造を有しており、正極合剤層内において正極活物質と点接触しているために、正極合剤層内の電気抵抗の低減には限界がある。また、BET比表面積がおよそ100m/g以上となる炭素材料を導電助剤として用いる場合には、正極合剤層の電気抵抗の低減には有効であるものの、充電時や高温貯蔵時に発生するガス量が大幅に増加してしまうため、充放電サイクル特性および貯蔵特性が低下するという問題を生じる。
【0015】
一方、本発明のアルカリ二次電池では、正極に係る正極合剤層の導電助剤として、カーボンブラックおよび炭素繊維より選択され、BET比表面積が85m/g以下である少なくとも1種の炭素材料Aを使用する。
【0016】
カーボンブラックや炭素繊維であれば、合剤層中で良好な導電ネットワークを形成しやすいため、黒鉛粒子に比べ、正極活物質である銀酸化物の粒子との接点が多くなり、正極合剤層内の電気抵抗を効果的に低減することができる。これにより、充電時に活物質の反応効率を向上させることができ、また、電池の充放電サイクル特性を高めることができる。
【0017】
更に、前記炭素材料のBET比表面積を85m/g以下とすることにより、炭素材料表面の官能基や不純物などに起因するガスの発生を抑制することができ、貯蔵特性などの信頼性を良好に維持することができる。
【0018】
一方、前記炭素材料のBET比表面積が小さくなりすぎると、合剤層中で良好な導電ネットワークを形成し難くなり電気抵抗を低減する作用が低減する場合もあるため、前記炭素材料のBET比表面積は、カーボンブラックの場合には15m/g以上とすることが好ましく、20m/g以上とすることがより好ましく、25m/g以上とすることが最も好ましい。また、炭素繊維の場合には3m/g以上とすることが好ましく、5m/g以上とすることがより好ましく、7m/g以上とすることが最も好ましい。
【0019】
前記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが例示され、導電性が高く不純物が少ないアセチレンブラックが好ましく用いられる。
【0020】
また、前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの有機系カーボンファイバー;気相法炭素繊維;などが例示され、結晶性が高く導電性に優れた気相法炭素繊維が好ましく用いられる。
【0021】
前記炭素材料Aを用いることにより、正極活物質の結着に用いるフッ素樹脂などのバインダの量を低減またはバインダなしで正極合剤層を形成することができ、例えば、正極合剤層の厚みがおよそ0.4mm以上である場合には、バインダを用いなくとも正極合剤の成形体を維持することも可能となる。
【0022】
なお、導電助剤としては、前記炭素材料Aの他に、BET比表面積が85m/gよりも大きなカーボンブラック(たとえば、ケッチェンブラックなど)や、カーボンブラックと異なる形態の黒鉛粒子、すなわち微粒子がつながったストラクチャーを形成していない黒鉛粒子などの、前記炭素材料A以外の炭素材料を併用することもできる。特に、正極合剤の成形体や正極合剤層が薄くなると、その成形性を維持するためにバインダを含有させる必要が生じるが、前記炭素材料Aとともに粒子径が一定以上の黒鉛粒子を用いることにより、例えば正極合剤の成形体や正極合剤層が0.4mm以下、より好ましくは0.3mm以下と薄い場合であってもその成形性が向上し、バインダを用いなくとも製造不良の発生を防ぐことが容易になる。
【0023】
炭素材料Aと併用する前記黒鉛粒子の粒径としては、合剤の成形性の点から、平均粒子径が1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、導電性の向上の点から、7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。本明細書でいう黒鉛粒子の平均粒子径は、後記の銀酸化物の平均粒子径と同じ方法で求められる値である。
【0024】
正極合剤層に係る正極活物質は銀酸化物であり、AgOやAgOを使用することができる。
【0025】
銀酸化物は、その粒度について特に限定はされないが、平均粒子径が、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。このようなサイズの銀酸化物を用いた場合には、充電時の利用率が向上し、充電終止電圧を比較的低くしても大きな充電容量が得られるため、電池の充放電サイクル特性を更に高めることができ、また、例えば、充電終止電圧を高めることによって生じ得る電池の膨れを抑えることが可能となる。
【0026】
ただし、あまり粒径の小さい銀酸化物は製造やその後の取り扱いが困難となることから、銀酸化物の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。
【0027】
本明細書でいう銀酸化物の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
【0028】
正極合剤層(正極合剤の成形体や集電体上に形成された正極合剤塗布層など)の組成としては、容量を確保するために、正極活物質である銀酸化物の含有量は、正極合剤層を構成する固形分全体を100質量%として、例えば、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0029】
また、導電助剤として用いる炭素材料Aの含有量は、正極合剤層の成形性や導電性を確保する観点から、正極合剤層中で0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。一方、電池の容量低下や充電時のガス発生を防ぐ観点から、前記炭素材料の含有量は、正極合剤層中で8質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましく、4質量%以下であることが特に好ましい。炭素材料Aとして複数の炭素材料を用いる場合は、その総量が上記範囲内となるように調整すればよい。
【0030】
正極合剤層が、導電助剤として前記炭素材料A以外の炭素材料を更に含有する場合、前記炭素材料Aの作用を充分に発揮させるために、導電助剤全体における炭素材料Aの割合を30質量%以上とすることが好ましい。また、正極合剤層中でのそれぞれの導電助剤の含有量の合計は、10質量%以下とすることが好ましく、8質量%以下とすることがより好ましく、6質量%以下とすることが特に好ましい。
【0031】
また、正極合剤層にはマンガン酸化物を含有させることが好ましい。銀酸化物を正極に含有するアルカリ二次電池を放電すると銀酸化物から銀が生成するが、この電池を充電すると銀の周りに銀酸化物の結晶が生成し、その後の電池反応を阻害する虞がある。一方、正極合剤層中にマンガン酸化物も含有する正極の場合には、このマンガン酸化物が電池の充電時に溶解してマンガン酸イオンなどのMnのイオンが生成し、前記Mnのイオンが正極に吸着することにより、銀酸化物の結晶成長を抑えて、形成される銀酸化物の結晶を微細化する。そのため、電池の充電時に生成する銀酸化物の結晶が電池反応を阻害する問題の発生を抑制して、電池の充放電サイクル特性を更に高めることが可能となる。
【0032】
正極合剤層にマンガン酸化物を含有させる場合、正極合剤層中のマンガン酸化物の含有量は、マンガン酸化物による前記の作用を良好に発揮させる観点から、0.3質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。ただし、正極合剤層中のマンガン酸化物の量が多すぎると、例えば銀酸化物の量が少なくなりすぎてアルカリ二次電池の容量が小さくなる虞がある。よって、アルカリ二次電池の容量をより大きくする観点から、正極合剤層中のマンガン酸化物の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0033】
マンガン酸化物としては、Mn、Mn、MnOOH、MnO、ZnMn、LiMnなど、Mnを含有する酸化物または複酸化物を用いることができ、Mnの平均価数が3価以上であるものが好ましく、MnOがより好ましい。
【0034】
正極合剤層は、前記の通り、バインダを使用せずに形成することも可能であるが、強度を高める必要がある場合(導電助剤に黒鉛を使用しない場合など)にはバインダを用いてもよい。正極合剤層のバインダには、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂などが挙げられる。バインダを使用する場合、正極合剤層中のバインダの含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0035】
正極は、正極合剤の成形体の場合には、例えば、正極活物質および導電助剤、更には必要に応じてマンガン酸化物やアルカリ電解質(電池に注入するアルカリ電解質と同じものが使用できる)などを混合して調製した正極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
【0036】
また、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合には、例えば、正極活物質および導電助剤、更には必要に応じてマンガン酸化物などを水またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0037】
ただし、正極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
【0038】
正極合剤の成形体を正極とする場合、その厚みは、0.15〜4mmであることが好ましい。他方、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30〜300μmであることが好ましい。
【0039】
正極に集電体を用いる場合には、その集電体としては、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼;アルミニウムやアルミニウム合金;を素材とするものが挙げられ、その形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属発泡体、箔(板)などが例示できる。集電体の厚みは、例えば、0.05〜0.2mmであることが好ましい。このような集電体の表面には、カーボンペーストや銀ペーストなどのペースト状導電材を塗布しておくことも望ましい。
【0040】
アルカリ二次電池の負極には、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子(以下、両者を纏めて「亜鉛系粒子」という場合がある)を含有するものが使用される。このような負極では、前記粒子中の亜鉛が活物質として作用する。亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば含有量が質量基準で50〜500ppm)、ビスマス(例えば含有量が質量基準で50〜500ppm)などが挙げられる(残部は亜鉛および不可避不純物である)。負極の有する亜鉛系粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
【0041】
ただし、亜鉛系粒子には、合金成分として水銀を含有しないものを使用することが好ましい。このような亜鉛系粒子を使用している電池であれば、電池の廃棄による環境汚染を抑制できる。また、水銀の場合と同じ理由から、亜鉛系粒子には、合金成分として鉛を含有しないものを使用することが好ましい。
【0042】
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粉末中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100〜200μmの粉末の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。ここでいう亜鉛系粒子における粒度は、前記の銀酸化物の平均粒子径測定法と同じ測定方法により得られる値である。
【0043】
負極には、例えば、前記の亜鉛系粒子の他に、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)を含んでもよく、これにアルカリ電解質を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極)を使用してもよい。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5〜1.5質量%とすることが好ましい。
【0044】
また、負極は、前記のようなゲル化剤を実質的に含有しない非ゲル状の負極とすることもできる(なお、非ゲル状負極の場合、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解質が増粘しなければゲル化剤を含有しても構わないので、「ゲル化剤を実質的に含有しない」とは、アルカリ電解質の粘度への影響がない程度に含有していてもよい、という意味である)。ゲル状負極の場合には、亜鉛系粒子の近傍に、ゲル化剤と共にアルカリ電解質が存在しているが、ゲル化剤の作用によってこのアルカリ電解質が増粘しており、アルカリ電解質の移動、ひいては電解質中のイオンの移動が抑制されている。このため、負極での反応速度が抑えられ、これが電池の負荷特性(特に重負荷特性)の向上を阻害しているものと考えられる。これに対し、負極を非ゲル状として、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解質の粘度を増大させずにアルカリ電解質中のイオンの移動速度を高く保つことで、負極での反応速度を高めて、負荷特性(特に重負荷特性)をより高めることができる。
【0045】
負極に含有させるアルカリ電解質には、電池に注入するものと同じものを使用することができる。
【0046】
負極における亜鉛系粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
負極は、インジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、亜鉛系粒子とアルカリ電解質との腐食反応によるガス発生をより効果的に防ぐことができる。
【0048】
前記のインジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウムなどが挙げられる。
【0049】
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、亜鉛系粒子:100に対し、0.003〜1であることが好ましい。
【0050】
アルカリ二次電池に使用する使用するアルカリ電解質としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)の1種または複数種の水溶液などが好適に用いられ、水酸化カリウムが特に好ましい。アルカリ電解質の濃度は、例えば、水酸化カリウムの水溶液の場合、水酸化カリウムが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であって、好ましくは40質量%以下、より好ましくは38質量%以下である。水酸化カリウムの水溶液の濃度をこのような値に調整することで、導電性に優れたアルカリ電解質とすることができる。
【0051】
アルカリ電解質には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、アルカリ二次電池の負極に用いる亜鉛系粒子の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。なお、酸化亜鉛は、負極に添加することもできる。
【0052】
また、アルカリ電解質には、マンガン化合物、スズ化合物およびインジウム化合物よりなる群から選択される1種以上が溶解していることが好ましい。アルカリ電解質中にこれらの化合物が溶解している場合には、これらの化合物由来のイオン(マンガンイオン、スズイオン、インジウムイオン)が、正極合剤層中にマンガン酸化物を含有させた場合に溶出するMnのイオンと同じ効果を奏するため、電池の充放電サイクル特性がより向上する。
【0053】
アルカリ電解質に溶解させるマンガン化合物としては、塩化マンガン、酢酸マンガン、硫化マンガン、硫酸マンガン、水酸化マンガンなどが挙げられる。また、アルカリ電解質に溶解させるスズ化合物としては、塩化スズ、酢酸スズ、硫化スズ、臭化スズ、酸化スズ、水酸化スズ、硫酸スズなどが挙げられる。更に、アルカリ電解質液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
【0054】
アルカリ電解質中におけるインジウム化合物、マンガン化合物およびスズ化合物の濃度(これらのうちの1種のみを溶解させる場合は、その濃度であり、2種以上を溶解させる場合は、それらの合計濃度である)は、前記の効果をより良好に確保する観点から、質量基準で、50ppm以上であることが好ましく、500ppm以上であることがより好ましく、また、10000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましい。
【0055】
アルカリ二次電池において、正極と負極との間にはセパレータを介在させる。アルカリ二次電池に使用可能なセパレータとしては、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルムや微孔性ポリプロピレンフィルムなど)とセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解質保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。セパレータの厚みは、20〜500μmであることが好ましい。
【0056】
また、正極と負極との間には、ポリマーをマトリクスとし、かつ前記マトリクス中に金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の粒子を分散させたアニオン伝導性膜を配置することが好ましい。
【0057】
更に、アルカリ二次電池には、負極、アルカリ電解質およびセパレータの少なくとも1つにポリアルキレングリコール類やカルシウム化合物を含有させておくことが好ましい。その場合には、ポリアルキレングリコール類やカルシウム化合物の作用によって、負極での亜鉛デンドライトの成長を抑制できるため、アルカリ二次電池の充放電サイクル特性や貯蔵特性を更に高めることができる。
【0058】
前記ポリアルキレングリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのアルキレングリコールが重合または共重合した構造を有する化合物であり、架橋構造や分岐構造を持つものであってもよく、また末端が置換された構造の化合物であってもよく、重量平均分子量としては、およそ200以上の化合物が好ましく用いられる。重量平均分子量の上限は特に規定はされないが、添加による効果をより発揮させやすくするためには化合物が水溶性である方が好ましく、通常は20000以下のものが好ましく用いられ、5000以下のものがより好ましく用いられる。
【0059】
より具体的には、エチレングリコールが重合した構造をもつポリエチレングリコール類(ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドなど)や、プロピレングリコールが重合した構造をもつポリプロピレングリコール類(ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシドなど)などが好ましく用いられるほか、酸化エチレンユニットと酸化プロピレンユニットとを含むような共重合化合物(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなど)であってもよい。
【0060】
ポリアルキレングリコール類を使用する場合、その量は、亜鉛系粒子100質量部に対する前記ポリアルキレングリコール類の量で、0.01〜1.5質量部であることが好ましい。
【0061】
また、前記カルシウム化合物としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムなど、放電時に生成するZn(OH)2−と反応して、CaZn(OH)などの複合化合物を生成する化合物や、当該複合化合物自体を例示することができ、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを好ましく用いることができる。
【0062】
カルシウム化合物を使用する場合、その量は、亜鉛系粒子100質量部に対する前記カルシウム化合物の量で、5〜40質量部であることが好ましい。
【0063】
アルカリ二次電池の形態については特に制限はなく、外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する扁平形(コイン形、ボタン形を含む);金属ラミネートフィルムからなる外装体を有するラミネート形;有底筒形の外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する筒形〔円筒形、角形(角筒形)〕;など、いずれの形態とすることもできる。
【0064】
なお、カシメ封口を行う形態の外装体を使用する場合、外装缶と封口板との間に介在させるガスケットの素材には、ポリプロピレン、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
【0065】
また、充電時に外装缶を構成する鉄などの元素が溶出するのを防ぐため、外装缶の内面には、金などの耐食性の金属をメッキしておくことが望ましい。
【0066】
本発明のアルカリ二次電池は、アルカリ一次電池(酸化銀一次電池など)が採用されている用途に使用し得るほか、従来から知られているアルカリ二次電池や非水電解質二次電池が採用されている用途にも適用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0068】
実施例1
正極活物質として、平均粒子径:5μmの酸化銀(AgO)を用い、導電助剤として、BET比表面積が68m/gのアセチレンブラック(炭素材料A、一次粒子の平均粒子径:35nm)と、BET比表面積が20m/gで、平均粒子径が3.7μmである黒鉛粒子とを用い、添加剤として二酸化マンガンを用いて正極合剤層を形成した。
【0069】
酸化銀、アセチレンブラック、黒鉛粒子および二酸化マンガンを、それぞれ92.5質量%、2.5質量%、2.5質量%および2.5質量%となる割合で混合して正極合剤を構成し、この正極合剤110mgを金型に充填し、充填密度5.7g/cmで、直径9.05mm、高さ0.3mmの円板状に加圧成形することによって、正極合剤成形体(正極合剤層)を作製した。
【0070】
PTFEの水系分散液(固形分:60質量%):5gと、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(濃度:2質量%):2.5gと、ハイドロタルサイト粒子(平均粒子径:0.4μm):2.5gとを混練し、圧延して100μmの厚みの膜を作製し、更に直径9.2mmの円形に打ち抜いたものを、アニオン伝導性膜として電池の組み立てに用いた。
【0071】
負極活物質には、添加元素としてIn:500ppm、Bi:400ppmおよびAl:10ppmを含有する、アルカリ一次電池で汎用されている無水銀の亜鉛合金粒子を用いた。前述した方法により求めた前記亜鉛合金粒子の粒度は、平均粒子径(D50)が120μmであり、粒径が75μm以下の粒子の割合は25質量%以下であった。
【0072】
前記亜鉛合金粒子と、ZnOとを、97:3の割合(質量比)で混合し、負極を構成するための組成物(負極用組成物)を得た。この組成物:28mgを量り取って負極の作製に用いた。
【0073】
アルカリ電解液には、酸化亜鉛を3質量%の濃度で溶解させた水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウムの濃度:35質量%)を用いた。
【0074】
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(厚み:30μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置し、更にビニロン−レーヨン混抄紙(厚み:100μm)を積層したものを、直径9.2mmの円形に打ち抜いて用いた。
【0075】
前記の正極(正極合剤成形体)、負極(負極用組成物)、アルカリ電解液、アニオン伝導性膜およびセパレータを、内面に金メッキを施した鋼板よりなる外装缶と、銅−ステンレス鋼(SUS304)−ニッケルクラッド板よりなる封口板と、ナイロン66製の環状ガスケットとから構成された電池容器内に封止し、図1に示す外観で、図2に示す構造を有し、直径9.5mm、厚さ1.4mmのアルカリ二次電池を作製した。なお、前記アニオン伝導性膜は、負極に面するように配置し、前記セパレータを正極側に配置した。
【0076】
図1および図2に示すアルカリ二次電池1は、正極4、セパレータ6およびアニオン伝導性膜7を内填した外装缶2の開口部に、負極5を内填した封口板3が、断面L字状で環状のガスケット(樹脂製ガスケット)8を介して嵌合しており、外装缶2の開口端部が内方に締め付けられ、これにより樹脂製ガスケット8が封口板3に当接することで、外装缶2の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。すなわち、図1および図2に示す電池では、外装缶2、封口板3および樹脂製ガスケット8からなる電池容器内の空間(密閉空間)に、正極4、負極5、セパレータ6およびアニオン伝導性膜7を含む発電要素が装填されており、更にアルカリ電解液(図示しない)が注入され、セパレータに保持されている。そして、外装缶2は正極端子を兼ね、封口板3は負極端子を兼ねている。なお、正極4は、前記の通り、酸化銀と導電助剤(アセチレンブラックおよび黒鉛)と二酸化マンガンとを含有する正極合剤の成形体である。
【0077】
実施例2
酸化銀、アセチレンブラック、黒鉛粒子および二酸化マンガンを、それぞれ92.5質量%、1質量%、4質量%および2.5質量%となる割合で混合して正極合剤を構成した以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0078】
実施例3
酸化銀、アセチレンブラック、黒鉛粒子および二酸化マンガンを、それぞれ92.5質量%、4質量%、1質量%および2.5質量%となる割合で混合して正極合剤を構成した以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0079】
実施例4
酸化銀、アセチレンブラックおよび二酸化マンガンを、それぞれ92.5質量%、5質量%および2.5質量%となる割合で混合して正極合剤を構成した以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0080】
実施例5
アセチレンブラックを、BET比表面積が39m/gのもの(一次粒子の平均粒子径:48nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0081】
実施例6
アセチレンブラックに代えて、BET比表面積が27m/gの黒鉛化カーボンブラック(炭素材料A、一次粒子の平均粒子径:70nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0082】
実施例7
アセチレンブラックに代えて、BET比表面積が13m/gの気相法炭素繊維(炭素材料A、繊維径:150nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0083】
比較例1
酸化銀、黒鉛粒子および二酸化マンガンを、それぞれ92.5質量%、5質量%および2.5質量%となる割合で混合して正極合剤を構成した以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0084】
比較例2
アセチレンブラックを、BET比表面積が133m/gのもの(一次粒子の平均粒子径:23nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製し、アルカリ二次電池を組み立てた。
【0085】
実施例および比較例のアルカリ二次電池に係る正極合剤層に含有させた導電助剤のBET比表面積、および正極合剤層中の導電助剤の含有量を、表1に示す。なお、比較例2で使用したアセチレンブラックは、BET比表面積が85m/gを超えているため、炭素材料Aには該当しないが、表1では、比較例2で使用したアセチレンブラックのBET比表面積および正極合剤層中の含有量を、「炭素材料A」の欄に記載している。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例および比較例のアルカリ二次電池について、下記の各評価を行った。これらの評価結果を表2に示す。
【0088】
<充電効率評価>
実施例1〜7、比較例1および比較例2の電池を、2mAで放電(終止電圧:1.0V)させ、次いで4mAで充電(終止電圧:1.85V)したときの放電容量および充電容量を測定し、前記放電容量に対する前記充電容量の割合から充電効率を評価した。
【0089】
<充放電サイクル特性評価>
実施例1〜7、比較例1および比較例2の電池に対し、充電(電流値:4mA、終止電圧:1.85V)および放電(電流値:2mA、終止電圧:1.2V)を1サイクルとする充放電サイクルを100サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合(容量維持率)により充放電サイクル特性を評価した。
【0090】
<高温貯蔵特性評価>
実施例1〜7、比較例1および比較例2の電池を、2mAで放電(終止電圧:1.2V)させ、次いで4mAで充電(終止電圧:1.85V)し、充電後の電池を60℃で30日間保持し、貯蔵前後での電池の厚みの変化量を測定して、電池の膨れの程度から高温貯蔵特性を評価した。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示す通り、正極合剤層の導電助剤として、カーボンブラックおよび炭素繊維より選択され、BET比表面積が85m/g以下である炭素材料Aを含有し、かつ前記正極合剤層中における前記炭素材料Aの含有量を0.5〜8質量%とした実施例1〜7のアルカリ二次電池は、黒鉛粒子のみを導電助剤として用いた比較例1のアルカリ二次電池よりも充電効率および充放電サイクル特性を向上させることができた。
【0093】
また、実施例1のアルカリ二次電池は、導電助剤であるアセチレンブラックのBET比表面積を85m/g以下としたことにより、BET比表面積が85m/gより大きいアセチレンブラックを用いた比較例2のアルカリ二次電池よりも、充電時や高温貯蔵時に発生するガス量を抑制することができ、高温貯蔵特性を向上させることができた。
【符号の説明】
【0094】
1 アルカリ二次電池
2 外装缶
3 封口板
4 正極(正極合剤の成形体)
5 負極
6 セパレータ
7 アニオン伝導性膜
8 ガスケット
図1
図2