(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記適合度算出ステップでは、上記適合度を上記騒音レベルのスコアRAが大きいほど高くなるように設定され、当該スコアRAに対する上記騒音レベルの変化の割合は、当該騒音レベルが目標騒音レベル以下の領域が、当該騒音レベルが目標騒音レベルを超えると共に当該目標騒音レベルの近傍の領域と比較して、小さくなるように設定されていること
を特徴とする請求項2記載の遮音板の組み合わせ探索プログラム。
上記組み合わせ選択ステップは、上記適合度算出ステップにおいて求められた適合度がより高い順から2つの遮音壁の組み合わせを選択するか、又は上記適合度が高いほど選択確率が高くなるように2つの遮音壁の組み合わせを選択すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の遮音板の組み合わせ探索プログラム。
上記演算ステップでは、上記組み合わせ選択ステップにおいて選択された各段の遮音板毎に、騒音源からの音波が当該遮音板の上下端を回折することによるスリット回折減衰と、上記音波が当該遮音板を透過することによる透過損失とに基づいて、当該遮音板の透過減衰を求め、更に求めた各段の遮音板の透過減衰の合計に基づいて、上記選択した遮音板の組み合わせにおける上記遮音壁の透過減衰値を求めること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の遮音板の組み合わせ探索プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した遮音板の組み合わせ探索システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0023】
本発明を適用した組み合わせ探索プログラムは、
図1に示すような組み合わせ探索システム10を構成する電子機器11により実行される。
【0024】
組み合わせ探索システム10は、複数の電子機器11と、各電子機器11に接続された表示装置12と、電子機器11がそれぞれ接続されるサーバ13とを備えている。
【0025】
電子機器11は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話機、スマートフォン、タブレット型端末、その他あらゆるウェアラブル端末等である。このような電子機器11に対して、本発明を適用した組み合わせ探索プログラムがインストール可能とされている。ユーザは、インストールされた組み合わせ探索プログラムをこの電子機器11上で動作させることが可能となる。
【0026】
表示装置12は、電子機器11による制御の下、ユーザに対して各種情報を表示するためのディスプレイである。表示装置12は、ユーザに対して組み合わせ探索プログラムを動作させる上で必要な情報を表示し、またユーザに対して各種情報の入力を促し、更には組み合わせ探索プログラムにより探索された解を表示する。この表示装置12は、電子機器11に一体化されて組み込まれるものであってもよい。
【0027】
サーバ13は、本発明を適用した遮音板の組み合わせ探索システム10を実現する上で必要な組み合わせ探索プログラムが保存される記憶装置である。電子機器11を介してこのサーバ13にアクセスすることにより、サーバ13に保存されている組み合わせ探索プログラムを各電子機器11上にて動作させることが可能となる。
【0028】
なお、サーバ13は、公衆通信網20を介して他の電子機器21に接続されていてもよい。この公衆通信網20は、例えばインターネット等を初めとした、パーソナルコンピュータ(PC)や携帯端末からアクセス可能な通信網である。他の電子機器21のユーザは、公衆通信網20を介してサーバ13にアクセスすることにより、これに保存されている組み合わせ探索プログラムを動作させることが可能となる。
【0029】
このようにして、本発明を適用した組み合わせ探索プログラムは、電子機器11、サーバ13の何れかにおいてインストールされ、それぞれ電子機器11、21を介してそれぞれ動作させることが可能となる。この組み合わせ探索プログラムは、公衆通信網20を介して外部からダウンロード可能なものされていてもよいし、記録媒体において予め記録されているものをインストールするようにしてもよい。
【0030】
本発明を適用した組み合わせ探索プログラムは、例えば
図2、3に示すような遮音壁30を設計する際に使用される。この遮音壁30は、ベース42上において、所定間隔で立設された支柱31と、この支柱31間に取り付けられた遮音板32とを備えている。支柱31は、ウェブ部の両端に一対のフランジ部が連設されたH形鋼からなる場合を例に挙げているが、これに限定されるものではなく、他のいかなる構成が適用されるものであってもよい。
【0031】
遮音板32は、騒音源Sから直接伝わる騒音を遮音できるように遮音機能が施されたパネルである。この遮音板32は、支柱31間に配設されるが、騒音源Sの高さに応じて遮音壁をある程度高く設定する必要がある場合には、遮音板32を複数段に亘って段積みすることが通常行われる。遮音板32としては、騒音源Sから直接伝わる騒音を遮音できるように遮音機能が施されてなり、例えば薄板からなる断面長方形状の鋼管を配列させたパネルで構成されていてもよいし、周知の吸音材が配設されたものであってもよい。周知の吸音材としては、例えば合板、石膏ボード、珪酸カルシウム板等のような比較的薄手のボード系の材料や、RC板、PC板、コンクリートブロック等のコンクリート系の材料が用いられる場合が多い。これらの材料は比較的均質な単板として取り扱うことができる。このため、その遮音性能は、材料の面密度と周波数の積の対数に対してほぼ一次式の関係で表す質量則と、コインシデンス効果により推定できる。
【0032】
遮音板32は、透明板やルーバーパネル、ドア等の特殊部材が適用されるものであってもよい。また遮音板32は、貫通させる状態としたものも含まれる概念である。
【0033】
遮音板32の実際の支柱31への取り付け方法としては、例えば支柱31がH形鋼で構成される場合には、当該H形鋼の内側に取り付けられ、遮音板32が複数段に亘り積み上げられている場合が多いが、これに限定されるものではなく、他のいかなる取り付け方法が適用されていてもよい。
【0034】
この遮音板32は、下から順に、遮音板32−1、32−2、32−3、32−4、・・とされている。これら遮音板32−1、32−2、・・・は、
図3に示すように互いに異なる遮音性及び重量からなる異種の遮音板32が割り当てられていてもよい。また
図4(a)に示すように、これら遮音板32−1、32−2、・・・は、互いに同一の遮音性及び重量からなる同一種の遮音板32が割り当てられていてもよい。また、更に、これら遮音板32−1、32−2、・・・は、
図4(b)に示すように、互いに同一の遮音性及び重量からなる同一種の遮音板32がいずれか2以上の段に割り当てられ、またこれらと異なる異種の遮音板32が他の段に割り当てられていてもよい。この
図4(b)の例では、遮音板32−2、32−3について同種のものを使用し、遮音板32−1、32−4についてはこれらとは異種のものを使用した例である。なお、この
図3、4における遮音板32のハッチングは、遮音板32の種類を示すものであり、互いに同一のハッチングは同一種であり、互いに異なるハッチングは互いに異種であることを示している。
【0035】
また、遮音板32−1、32−2、・・・の何れか1以上について遮音板を設けない貫通状態としてもよい。
図5の例では、遮音板32−2、32−4について貫通状態としている。最上段の遮音板32−4について貫通状態する意味は、遮音板を4段ではなく3段で構成するという意味である。また遮音板32−2を貫通状態とすることにより、中段に穴を開けた遮音壁30を構成したことを意味している。このような貫通状態とすることにより、壁体として換気性を向上させることが可能となる。
【0036】
本発明を適用した組み合わせ探索プログラムでは、騒音源Sから発せられる騒音が遮音壁30を介して受音点Pに到達するまでの遮音性と、遮音壁30を構成する遮音板32の重量の観点から、遮音壁の各段を構成する複数の遮音板32につき、最適な組み合わせを探索するものである。
【0037】
この2つの観点のうち、後者である遮音壁30の重量は、単純にこれを構成する各遮音板32の重量の総和を求めることにより得られる。これに対して、前者の遮音壁30の遮音性については、以下に説明するアプローチ方法に基づいて算出する。
【0038】
遮音性は、騒音源Sから受音点Pに至るまでの伝播計算を各遮音板32毎に行うことにより導出する。
図6に示すように騒音源Sから受音点Pまでの音波の伝播を周波数f(Hz)毎に計算し、全周波数の騒音レベルのエネルギー和を受音点Pにおけるトータルの騒音レベルとする。周波数fは、例えば100Hz〜5000kHzの1/3オクターブバンド中心周波数、又は125Hz〜4000kHzの1/1オクターブバンド中心周波数とするようにしてもよいが、これに限定されるものではなく、他のいかなる周波数の範囲とされていてもよい。
【0039】
騒音源Sから発せられた騒音が受音点Pに到達した時の受音点Pの音圧レベルL
A,m(f)は、騒音の周波数をfとしたとき、以下の式(1)の伝搬計算式から算出することができる。
【0041】
ここでmは、
図7に示すような伝搬経路m=1からm=4に相当するものである。m=1は、騒音源Sから受音点Pまで遮音壁30の頂点を介して直接音波を受信する伝搬経路である。また、m=2は、騒音源Sから発せられて一度地面に反射した音波が遮音壁30の頂点を介してそのまま受音点Pまで到達する伝搬経路である。m=3は、騒音源Sから発せられて、遮音壁30の頂点を介して一度地面を反射し、その後に受音点Pまで到達する伝搬経路である。m=4は、騒音源Sから発せられて一度地面に反射し、遮音壁30の頂点を介してもう一度地面を反射し、その後に受音点Pまで到達する伝搬経路である。m=2〜4について実際に計算を行うためには、騒音源S又は受音点Pにつき地面を介して虚像の関係にあるS´、P´から音波が発せられたものと仮定して計算を行う。
図7において、実際の経路を点線で示し、計算上の経路を実線で示す。
【0042】
上述した(1)式は、地面の反射を考慮するパターン、即ちm=2〜4のパターンである。下記の式(2)は、地面の反射を考慮した、周波数fにおける受音点Pの予測音圧レベルである。
【0044】
ここで、地面の反射を無視するパターンは、m=1に示す伝搬経路の場合である。このとき、式(1)は下記の式(1)´に書き換えることができる。
【0045】
【数3】
・・・・・・・・・(1)´
【0046】
式(1)、(1)´において、L
WA(f)は、実際の騒音源Sから発せられた騒音のレベルであり、-11-20log
10r(地面の反射を考慮するパターン)は、騒音源Sから受音点Pまでの距離rに応じた距離減衰を示している。また、地面の反射を無視するパターンは、-11-20log
10r の代替として、-8-20log
10rを使用する。また、ΔL
dif,m(f)は、回折補正量であり、各遮音板32−1〜32−4の透過損失を考慮したものである。
【0047】
この回折補正量ΔL
dif,m(f)は、以下の(3)式から算出することができる。
【0049】
(3)式から示されるように、回折補正量ΔL
dif,m(f)は、遮音壁30の上端の回折減衰ΔL
d,top(f)と、遮音壁30の透過減衰値ΔL
dif,w(f)とのエネルギー和で表すことが可能となる。ここで遮音壁30の上端の回折減衰ΔL
d,top(f)とは、騒音源Sから発せられた騒音が遮音壁30の上端32aまで到達し、当該上端32aで音波が回り込むことにより回折した後、受音点Pに向けて伝搬する経路C1について、回折減衰量を求めたものである。
【0050】
遮音壁30の透過減衰値ΔL
dif,w(f)は、以下の(4)式から求めることができる。
【0052】
(4)式におけるiは遮音壁30における遮音板32の下から何段目かを示している。換言すれば、このiは、遮音壁30を構成する遮音壁30の段数がnであるとき、1〜nまでの整数である。
【0053】
ΔL
dif,slit,i(f)は、
図8(a)に示すように、遮音壁30における一の遮音板32−iに着目したとき、遮音板32−iの上端及び下端に仮想的にスリットが開口しているものと仮定したときにおける、そのスリット開口を通過する回折減衰(以下、スリット回折減衰という。)である。
図8(a)の例では、遮音板32−iの下端のスリット開口がO
(i)であり、その上端のスリット開口がO
(i+1)としている。また、この(4)式におけるTL
i(f)は、遮音板32−iの透過損失である。各遮音板32−iの透過減衰は、このスリット開口を通過するスリット回折減衰ΔL
dif,slit,i(f)と、遮音板32−iの透過損失TL
i(f)を負の値に変換した -TL
i(f)の和で表される。これら遮音壁30全体の透過減衰L
dif,w(f)は、各遮音板32−iにおけるiが1〜nまでの透過減衰の総和として表される。
【0054】
TL
i(f)は、音源室と受音室を用いた実験室における測定値(JIS A 1416「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」)や、質量則等で算出した計算値を用いる。JIS A 1416に基づく場合には、それぞれ遮音板32の各種類につき、周波数f毎に遮音性能を実験的に求めておき、遮音壁30を構成する遮音板32の種類の組み合わせや、実際の周波数fに応じて、事前に求めた実験値に基づいて、遮音壁30としての遮音性能から透過損失TL
i(f)を求める。
【0055】
また質量則等でTL
i(f)を算出する場合には、例えば以下の式に基づくものとしてもよい。
TL
i(f) = TL
ver,
i(f) - 10log
10(0.23×TL
ver,
i(f))
TL
ver,
i (f) = 20log
10(f×d)- 42.5ここで、TL
i(f): i段目の遮音板32の音響透過損失、TL
ver,
i (f): 音が垂直に入射した場合の音響透過損失
f:周波数
d: i段目の遮音板32の面密度(kg/m
2)
【0056】
それぞれのスリット回折減衰ΔL
dif,slit,i(f)は、以下の式(5)から算出される。
【0057】
【数6】
・・・・・・・・・・・(5)
【0058】
この(5)式では、
図8(b)に示すように、騒音源Sから発せられた音波が遮音板32−iの上端O
1から回り込んで回折して受音点Pに到達する経路(ベクトルSO
1+ベクトルO
1P)と、騒音源Sから発せられた音波が遮音板32−iの下端O
0から回り込んで回折して受音点P(ベクトルSO
0+ベクトルO
0P)に到達する経路との差分を求めている。(5)式の上段は、(ベクトルSO
1+ベクトルO
1P)の長さが、(ベクトルSO
0+ベクトルO
0P)の長さよりも長い場合の式であり、(5)式の下段は、(ベクトルSO
0+ベクトルO
0P)の長さが、(ベクトルSO
1+ベクトルO
1P)の長さよりも長い場合の式である。
【0059】
この(5)式においてΔL
d,0、ΔL
d,1は、以下の(6)式に示される前川チャートの実験式から求められる値である。
【0060】
【数7】
・・・・・・・・・・・・・(6)
【0061】
ΔL
d,0は、点S、O
1、Pにより囲まれる三角形について、フレネル数Nを代入したものである。フレネル数Nを求めるためには、先ず
図9に示すように、点Sから点O
1までの長さA、点O
1から点Pまでの長さB、点Pから点Sまでの長さdから経路差δを求める。経路差δは、δ=A+B−dで与えられる。この経路差δと音波の周波数fの波長λから、フレネル数Nは、N=2δ/λより求められる。波長λ=音速/周波数fで求められる。
【0062】
このようにして求めたフレネル数Nを(6)式に代入することにより、ΔL
d,0が算出されることとなる。ちなみに、この(6)式によれば、求められたフレネル数Nの値の条件に応じて、代入式が3通りに分かれることとなる。
【0063】
ΔL
d,1は、点S、O
0、Pにより囲まれる三角形について、フレネル数Nを代入したものである。このフレネル数Nの求め方は、上述したΔL
d,0と同様である。
【0064】
このようにして、(6)式からそれぞれ求められたΔL
d,0、ΔL
d,1を(5)式に代入することにより、スリット回折減衰ΔL
dif,slit,i(f)を求める。なお、上述したΔL
d,top(f)についても同様に、
図6で示すところの、騒音源S、遮音壁30の上端32a、受音点Pで結ばれる三角形の領域に基づいて同様にフレネル数Nを代入することにより求めることとなる。
【0065】
なお、本発明によれば、(6)式に示される前川チャートの実験式からΔL
d,0、ΔL
d,1を求める場合に限定されるものではない。以下に説明するように、エネルギー相補性を仮定した回折補正量に基づくものであってもよい。
【0066】
このエネルギー相補性を仮定した回折補正量の計算モデルは、福島昭則、山本貢平「エネルギーの相補性を仮定した回折補正量計算モデルとその応用」、(社)日本音響学会騒音振動研究会、N−2006−56、P1〜p10、2006年11月10日により提案されている。(6)式に示される前川チャートの実験式を使用するスリット法では、音源の反射面に対する鏡像からの伝搬が回折理論で計算できることに基づいており、回折現象において音響エネルギーの加減演算が成立することを仮定している。かかる仮定をおいていることを理解しているのであれば、本発明においては、上述した(6)式からΔL
d,0、ΔL
d,1を求めることで何ら問題は無い。
【0067】
しかしながら、上述した(6)式は、実際の回折現象においてエネルギーの相補性は、以下の理由により厳密に計算する必要がある。例えば
図10に示すように騒音点Sから仮想障壁51の上端に位置する回折点Oを回折して受音点Pに至るまでの経路を考える。この仮想障壁51は、遮音壁30に相当するものだが、理論的説明を行う上で仮に定義したパネルである。
図10(a)は、伝搬経路差が大きくフレネル数が大きい例であり、
図10(b)は、伝搬経路差が0に近いためフレネル数が限りなく0に近い状態を示している。このような
図10(b)の状態においては、1/2の空間を遮蔽したときにエネルギー相補性を考慮した場合には、回折補正量が−3dBになることが、上述した福島らの文献において明示されている。一方、(6)式に示される前川チャートの実験式では、フレネル数が0に近い状態において計算した場合に、回折補正量は−5dBになるため、エネルギーの相補性は成り立っていない。
【0068】
このため、エネルギー相補性についても考慮する場合には、フレネル数が0又は限りなく0に近い場合において、回折補正量が−3dBとなるように調整した式を使用する必要がある。以下の式(6)´は、上述した福島らの文献に開示されている式であり、フレネル数が0又は限りなく0に近い場合において、回折補正量が−3dBとなるように調整した式である。
【0069】
【数8】
・・・・・・・・・・・(6)´
【0070】
この式(6)´において、Nはフレネル数であり、αは調整値であり、本実施の形態においてはα=2/3としている。しかし、このαは、必要に応じてシステム側、又はユーザ側において自由に改変するようにしてもよい。
【0071】
このようなエネルギー相補性を仮定した回折補正量を考慮しつつ、スリット回折減衰ΔL
dif,slit,i(f)を求めるためには、同様に(5)式におけるΔL
d,0、ΔL
d,1を(6)´式を用いて求めていくこととなる。
図8(b)に示すように、ΔL
d,0は、点S、O
1、Pにより囲まれる三角形について、フレネル数Nを式(6)´に代入して得られるものであり、ΔL
d,1は、点S、O
0、Pにより囲まれる三角形について、フレネル数Nを代入することで得られるものである。それぞれ求めたΔL
d,0、ΔL
d,1を式(5)に代入して、スリット回折減衰ΔL
dif,slit,i(f)を求めていくこととなる。
【0072】
また、上述した式(3)に基づく回折補正量ΔL
dif,m(f)の算出は、
図3に示すように、騒音源Sから略鉛直方向に立ち上げられた一の遮音壁30を介して受音点Pに到達するモデルを例に挙げて説明をしている。
【0073】
以上、説明したように、(1)〜(6)、(6)´式に基づき騒音源Sから発せられた騒音が受音点Pに到達するまでの騒音レベルを計算により求めることが可能となる。計算に必要なパラメータとして、長さA、B、dは、騒音源S、受音点Pの位置情報と、実際の遮音板32−iの位置情報、高さ、設計寸法から求めることができる。λは、周波数fから求めることになるが、本発明では、音波の周波数fについて例えば100Hz〜5000kHzの間で、125Hz間隔で、f=f
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
Nと設定しておき、各f
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
Nについてそれぞれ上述した計算式に当てはめることにより騒音レベルを求めるようにしてもよい。そして、この各f
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
Nについて求めた騒音レベルの総和を求めて、最終的な遮音性のデータとするようにしてもよい。
【0074】
次に本発明を適用した組み合わせ探索プログラムの実際の処理動作フローについて説明をする。
図11は、遮音壁30の遮音性を伝搬計算により求めるフローチャートである。
【0075】
先ずステップS11において、周波数f
kを設定する。設定する周波数は、通常は、周波数の集合であるf
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
Nの中で低い方から順に選択していくがこれに限定されるものではなく、これらの周波数がいかなる順序で選択されるものであってもよい。また、これら周波数f
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
Nの集合のうち、例えば任意の周波数範囲のみ伝搬特性を解析したい場合には、その範囲の周波数のみ選択するようにしてもよい。設定する周波数の集合f
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
N自体も予めシステム側で設定されていてもよいし、ユーザ側において自由に設定してもよい。以下、このステップS11において上述した周波数の集合から選択された一の周波数をf
kとする。
【0076】
次にステップS12に移行し、遮音板32−iにおけるiを決定する。このiの決定は、
図5でいえば、遮音板32−1、32−2、32−3、32−4のうち、1〜4の何れかを選択することを意味する。そして選択された遮音板32を、遮音板32−iとし、これ以降のフローにおいてその遮音性を計算していくこととなる。
【0077】
次にステップS13へ移行し、ステップS12において選択した遮音板32−iについて、式(5)からスリット回折減衰ΔL
dif,slit,i(f)を求める。実際には、選択した遮音板32−iのサイズ、位置、高さと、騒音源S、受音点Pの各位置情報に基づいて式(6)に示される前川チャートの実験式からそれぞれΔL
d,0、ΔL
d,1を求め、(5)式に代入した上でスリット回折減衰ΔL
dif,slit,i(f)を求める
【0078】
次にステップS14へ移行し、(4)式に基づいて遮音板32−iの透過減衰を求める。この遮音板32−iの透過減衰は、ΔL
dif,slit,i(f)+(-TL
i(f))で表される。ΔL
dif,slit,i(f)については、ステップS13において求めたスリット回折減衰を代入し、TL
i(f)は、上述したJIS A 1416に基づく実験値や質量則等を介して求めたものを代入する。
【0079】
次にステップS15へ移行し、遮音壁30を構成する全ての遮音板32について、それぞれ透過減衰ΔL
dif,slit,i(f)+(-TL
i(f))を求めたか否か判定を行う。その結果、未だΔL
dif,slit,i(f)+(-TL
i(f))を求めてない他の段を構成する遮音板32が存在する場合には、ステップS12に戻る。ステップS12に戻った場合には、ΔL
dif,slit,i(f)+(-TL
i(f))を求めていない他の段を構成する遮音板32を選択して、これを遮音板32−iとし、以降は同様のフローに従って処理を行う。これに対して、遮音壁30を構成する全ての遮音板32について透過減衰ΔL
dif,slit,i(f)+(-TL
i(f))を求めている場合には、遮音壁30全体の透過減衰値ΔL
dif,w(f)を、(4)式で示すところの、各遮音板32−iにおけるiが1〜nまでの透過減衰の総和として算出することができることを意味している。かかる場合には、ステップS16へと移行する。
【0080】
ステップS16では、遮音壁30の上端の回折減衰ΔL
d,top(f)と、遮音壁30の透過減衰値ΔL
dif,w(f)とを求める。遮音壁30の上端の回折減衰ΔL
d,top(f)は、上述したように、騒音源S、遮音壁30の上端32a、受音点Pで結ばれる三角形の領域に基づいて同様にフレネル数Nを代入することにより求める。また、遮音壁30の透過減衰値ΔL
dif,w(f)は、(4)式に基づいて算出する。
【0081】
次にステップS17に移行し、m=1のときを仮定した場合、距離減衰-8-20log
10rを求める。この距離減衰は、騒音源Sから受音点Pまでの距離rをかかる距離減衰の式に代入することにより、求めることができる。地面の反射を考慮するか否かに基づいて、上述のように使用する式を選択することとなる。
【0082】
次にステップS18へ移行し、(1)式に基づいて遮音レベルL
WA(f)を求める。このL
WA(f)を求める上で、先ずΔL
dif,m(f)については、ステップS16において求められたΔL
d,top(f)、ΔL
dif,w(f)を(2)式に代入することにより得ることができる。また距離減衰-11-20log
10rは、ステップS17において求めたものを代入する。L
WA(f)は、実際の騒音源Sから発せられた騒音のレベルを代入する。これにより、遮音板32を積み上げることにより構成された遮音壁30についてステップS11において選択した周波数f
kについて騒音レベルを求めることが可能となる。
【0083】
次にステップS19へ移行し、周波数の集合であるf
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
N全てについて、計算が終了したか否かを判別する。その結果、全ての周波数について計算が終了したものと判別した場合には、伝搬計算が終了となる。これに対して、未だ計算が終了していない周波数が存在する場合には、ステップS11に戻る。そして、未だ計算が終了していない周波数の何れかを選択し、これを周波数f
kとして、ステップS12以降のフローを同様に実行していく。このようにして、周波数の集合であるf
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
N全てについて計算が終了するまでステップS11から18までを繰り返し実行していくこととなる。そして、全ての周波数の集合であるf
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
N全てについて計算が終了した場合には、各周波数について求めた騒音レベルの総和を求めることにより、その遮音壁30の各周波数に対する騒音レベル、ひいては遮音性を求めることが可能となる。なお、本発明では、少なくとも1の周波数fについて騒音レベルを求めるものであってもよい。
【0084】
ちなみに、この
図11に示す遮音壁30の伝搬計算フローチャートは、
図12に示す探索プログラム全体のフローチャートにおけるステップS28を構成するものである。全体のフローチャートでは先ず、ステップS21において、GA(遺伝的アルゴリズム)空間の作成を行う。このGA空間の作成では、
図13に示すように、遮音壁30を構成する各種遮音板32を遺伝子と見立て、最適解の算出を行っていく。
【0085】
ステップS21では、遮音壁30を、遮音板32−1、32−2、32−3、32−4、32−5の5段で構成している場合を例にとり、GAに基づき、各遮音板32の種類をそれぞれこの遮音板32−1〜32−5に割り当てる。遮音板32の種類は、
図14に示す3種の中から選択される場合を例にとり説明をする。タイプ1は、遮音材のみで構成し内部に鋼板が無いものであり、タイプ2は、遮音材に加え、更に内部に板厚1.6mmの鋼板を挿入したものであり、タイプ3は、遮音材に加え、更に内部に板厚3.2mmの鋼板を挿入したものである。遮音性は、タイプ3が最も高く、タイプ2がその次に高く、タイプ1が最も低くなる。重量は、タイプ3が最も重く、タイプ2がその次に重く、タイプ1が最も軽くなる。コストは、タイプ3が最も高く、タイプ2がその次に高く、タイプ1が最も低くなる。なお遮音板32の遮音性及び重量のタイプの数、種類はいかなるものであってもよい。また、遮音板32を設けることなく、空洞にする場合も遮音板32の種類(タイプ)の一対として含めてもよい。また、周波数f
1、f
2、f
3、・・f
k・・、f
N全ての周波数についての透過損失を入力するようにしてもよいし、いずれかの周波数のものについて入力するようにしてもよい。
【0086】
ステップS21では、遮音性及び重量の異なる3つのタイプの遮音板の中から、遮音壁30の各段を構成する複数の遮音板32−1〜32−5の組み合わせを実際に選択する。この選択のルールはいかなるものであってもよく、ランダムな乱数に基づいて決めてもよいし、所定の規則的なルールに基づいて決めてもよい。
図13は、遮音板32−1から順に遮音板32−5まで、タイプ(3、3、3、3、3)、タイプ(1、1、3、2、1)、タイプ(3、2、1、2、2)、・・・・、タイプ(1、1、1、1、1)をGA空間として作成した例を示している。以下のフローでは、このステップS21において作成したGA空間を基調として各種処理動作を進めていくこととなる。
【0087】
次にステップS22に移行し、ステップS29からの世代ループが戻ってくることとなるが、GA空間を設定した当初は世代(Gen)=1であるため、そのままステップS23へと移行する。
【0088】
ステップS23では、条件分岐を行う。即ち、世代が1世代目の場合、換言すればGen=1の場合は、ステップS28へ移行する。これに対して世代が2世代目以降の場合、換言すればGen≧2の場合は、ステップS24、25へ移行する。
【0089】
当初は、Gen=1であるため、そのままステップS28へ移行し、評価を行う。ステップS28では、各遮音板32に割り当てられた各タイプの適合性を、適合度という関数を介して評価する。
【0090】
適合度は以下の式(14)に基づいて評価する。
適合度=(wA×RA)+(wB×RB)・・・・・・・・・・・・・(14)
ここでwAは遮音性の重み付け係数であり、wBは重量の重み付け係数である。wA+wB=1.0である。またRAは遮音性のスコアであり、RBは重量(コスト)のスコアである。RA、RBそれぞれ0≦RA≦1.0、0≦RB≦1.0の範囲にある。その結果、この適合度は、0≦適合度≦1.0となる。
なお、適合度は、上述した(14)式に限定されるものではなく、(wA×RA)と(wB×RB)に基づいて算出されるものであればいかなるものであってもよい。即ち、(wA×RA)の項に対して更なる係数が加減乗除されていてもよいし、(wB×RB)の項に更なる係数が加減乗除されていてもよい。
【0091】
RAは、受音点Pの騒音レベルLA(=音圧レベルL
A,m(f))に基づいて算出される。実際にこの騒音レベルLAは、上述したステップS11〜S19の処理動作を通じて求められる。
【0092】
受音点Pの騒音レベルの目標値をLAtargetとしたとき、受音点Pの騒音レベルLA<目標値LAtargetの場合、換言すれば受音点Pの騒音レベルLAが目標をクリアしている場合には、RAは以下の式(15)に基づいて算出される。ここでC=騒音レベルLAが目標値LAtargetにあるときのRAである。
RA=1.0−{(1.0−C)×LA/LAtarget}・・・・・・・・・・・・(15)
【0093】
受音点Pの騒音レベルLA≧目標値LAtargetの場合、換言すれば受音点Pの騒音レベルLAが目標をオーバーしている場合には、RAは以下の式に基づいて算出される。
RA=C/10^[(LA−LAtarget)/10]・・・・・・・・・・・・(16)
【0094】
図15は、横軸を受音点Pの騒音レベルLA(dB)とし、縦軸を遮音性のスコアRAとした場合において、上述した式(15)、(16)のプロットを描いたものである。
【0095】
ちょうど騒音レベルLAが、LAtargetであるときの遮音性のスコアRAがCであることが示されている。また騒音レベルLA<目標値LAtargetである場合よりもLA≧目標値LAtargetの場合の方が傾きが急激であることが分かる。LA≧目標値LAtargetである場合は、受音点Pの騒音レベルLAが目標値LAtargetを超えてしまっていることから、この目標値LAtarget以内に抑えるべく傾きが急峻になる曲線とすることで、騒音レベルLAが下がることによるスコアの上昇率を高くし、より目標値LAtarget以内に近づくように設定し、ひいては適合度全体に与える騒音レベルLAの重み付けを上げている。一方、騒音レベルLA<目標値LAtargetである場合は、騒音レベルLAが目標値目標値LAtargetを既にクリアしているため、傾きを緩やかにすることで、騒音レベルLAが下がることによるスコアの上昇率を低くすることで、適合度全体に与える騒音レベルLAの重み付けを下げている。
【0096】
即ち、スコアRAに対する騒音レベルLAの変化の割合は、目標値LAtarget付近に着目した場合、ちょうど目標値LAtargetを介して低い側がより小さくなるように設定されている。換言すれば、騒音レベルLAの変化の割合は、当該騒音レベルが目標騒音レベル以下の領域が、当該騒音レベルが目標騒音レベル以下になる直前と比較して、小さくなるように設定されている。少なくとも騒音レベルLAの変化の割合は、当該騒音レベルが目標値LAtarget以下の領域が、当該騒音レベルが目標値LAtarget以下になる直前と比較して、小さくなる。換言すれば騒音レベルLAの変化の割合は、当該騒音レベルが目標値LAtarget以下の領域が、当該騒音レベルが目標値LAtargetを超えると共に当該目標値LAtargetの近傍の領域Pと比較して、小さくなるように設定されている。ここでいう、領域Pとは、例えば
図15に示すように、目標値LAtargetを超える直上の領域を示す。
【0097】
重量のスコアRBは、以下の式に基づいて算出される。
RB=1.0−(W−Wmin)/(Wmax−Wmin)・・・・・(17)
ここでWは実際に選択した遮音板32の総重量であり、Wmaxは、遮音壁30の各段を構成する全ての遮音板32−1〜32−5につき最も重いタイプ3を選択した場合の総重量であり、Wminは、遮音壁30の各段を構成する全ての遮音板32−1〜32−5につき最も軽いタイプ1を選択した場合の総重量である。仮に全ての遮音板32−1〜32−5につき最も軽いタイプ1を選択した場合にはW=Wminになるため、RB=1となる。一方、全ての遮音板32−1〜32−5につき最も重いタイプ3を選択した場合にはW=WmaxになるためRB=1.0となる。
【0098】
図16は、横軸を遮音板の総重量Wとし、縦軸を重量のスコアRBの関係を示している。RBとWは、上記式(17)の関係の下ではちょうど
図16に示すような線形関係となる。なお、この重量のスコアRBと遮音板の総重量Wの関係は、このような線形関係になることは必須ではない。
【0099】
この重量のスコアRBと遮音板の総重量Wの関係は、騒音レベルLAと遮音性のスコアRAとの関係において、更に以下の関係を有する。
【0100】
受音点Pの騒音レベルLA≧目標値LAtargetの場合、換言すれば受音点Pの騒音レベルLAが目標値LAtargetを超える場合には、当該騒音レベルが目標値LAtarget未満であって当該目標値LAtargetの近傍の領域と比較して、適合度を求める上で遮音板の総重量Wよりも騒音レベルLAの優先度を高くする。この優先度の高さは、RAの式(16)の傾きが、RBの式(17)の傾きよりも大きいことで実現できる。これに対して、受音点Pの騒音レベルLA<目標値LAtargetの場合、換言すれば受音点Pの騒音レベルLAが目標値LAtargetを下回る場合には、当該騒音レベルが目標値LAtargetを超え、かつ当該目標値LAtargetの近傍の領域と比較して、適合度を求める上で遮音板の総重量Wよりも騒音レベルLAの優先度を低くする。この優先度を低くすることは、RAの式(15)の傾きが、RBの式(17)の傾きよりも小さくすることで実現できる。
【0101】
その結果、この適合度は、受音点Pの騒音レベルLA≧目標値LAtargetの場合は、総重量Wよりも騒音レベルLAが下がるほど急激に増加することとなり、騒音レベルLA<目標値LAtargetの場合には、騒音レベルLAよりも総重量Wが下がるほど急激に上昇することとなる。このため、受音点Pの騒音レベルLA≧目標値LAtargetの領域においては、より騒音レベルLAが下がるような遮音板32の組み合わせが選択されやすくなり、騒音レベルLA<目標値LAtargetの領域においては、より総重量Wが小さくなるような遮音板32の組み合わせが選択されやすくなる。
【0102】
なお、このRAの式(15)、(16)、RBの式(17)は、上述に限定されるものではなく、適合度を求める上で遮音板の総重量Wと騒音レベルLAの優先度の関係が、目標値LAtargetを境界にして上述の如く異ならせてなるものであればいかなるものであってもよい。
【0103】
ステップS28では、上述の如く(14)式に基づいてそれぞれの遮音板32の組み合わせについてそれぞれ適合度を求める。このためには、ステップS21において生成したGA空間の各遮音板32の組み合わせに対して、それぞれステップS11〜S19の処理動作を通じて騒音レベルLAを求めると共に総重量Wと求め、更にこれらを式(14)〜(17)に代入して適合度を求めることとなる。その結果、GA空間において生成した一部又は全ての各遮音板32の組み合わせに対してそれぞれ適合度が求められた状態となる。このような状態まで完了した後、ステップS29へ移行する。
【0104】
ステップS29に移行した場合は、GAの世代ループを行う。即ち、今までのGenに対して1を加算した世代になる。ステップS21からGen=1の状態でステップS29に移行した場合には、これに世代を1加算することで2世代目(Gen=2)に移行し、ステップS22に戻る。
【0105】
ステップS22に戻った場合には、再びステップS23へ移行し、Gen≧2であるため、ステップS24、S25へ移行する。
【0106】
先ずステップS25に移行した場合について説明をする。ステップS25では、Nを2以上の整数としたときにN世代目(Gen=N)の場合において親世代(Gen=N−1)から親を選択する。親の選択は、親世代(Gen=N−1)から2つのペアとなる遮音板32の組み合わせを選択する。
【0107】
図17(a)は、ステップS25において選択した2つの遮音板の組み合わせを示している。遮音板32−1から順に遮音板32−5まで、タイプ(3、3、3、3、3)と、タイプ(1、1、3、2、1)の2つの組み合わせを選択するものとする。
【0108】
次にステップS26へ移行し、交叉させることで親世代(Gen=N−1)に対する子世代(Gen=N)を作成する。交叉させる場合には、親世代(Gen=N−1)に対して交叉位置をランダムに決める。
図17(a)の例では、この交叉位置を、遮音板32−2と遮音板32−3と間に設定することでいわゆる一点交叉としている。そして、
図17(b)に示すように交叉位置を基準に親世代(Gen=N−1)を構成する2つの組み合わせ間で遮音板32のタイプを交換する。その結果、子世代(Gen=N)は、ちょうど遮音板32−1、32−2が親世代と比較して互いに入れ替わった状態となり、それぞれタイプ(1、1、3、3、3)と、タイプ(3、3、3、2、1)の2つの組み合わせとなる。
【0109】
次にステップS27へ移行し、生成した子世代(Gen=N)の各組み合わせに対して、ある確率の下で突然変異を起こさせる。この突然変異を起こさせる確率は、世代ごとに変化するものであってもよいし、一定とされていてもよい。
図17(c)の例では、子世代(Gen=N)の一方の側のみに突然変異が生じ、遮音板32のタイプがランダムに変化したものとなっている。このステップS27の過程においては、ある確率の下で突然変異が生じない組み合わせも当然にありえる。このステップS27の処理動作を終了させた後、ステップS28に移行する。
【0110】
なお、上述したステップS26〜S27の処理動作は、他に選択した全ての親世代(Gen=N−1)につき実行する。その結果、子世代(Gen=N)は選択した親世代の数に応じたものとなる。
【0111】
次にステップS23からステップS24に移行した場合について説明をする。このステップS24では、いわゆるエリート保存という処理動作を行う。このエリート保存では、親世代(Gen=N−1)における遮音板32の組み合わせが特に適合度が高く理想解に近い場合には、これをそのまま子世代(Gen=N)として保存してステップS28へと移行する。
【0112】
ステップS28に移行した場合には、この生成した子世代(Gen=N)やエリート保存した子世代(Gen=N)について、同様に(14)式に基づいてそれぞれの遮音板32の組み合わせについてそれぞれ適合度を求める。このためには、子世代(Gen=N)の組み合わせに対して、それぞれステップS11〜S19の処理動作を通じて騒音レベルLAを求めると共に総重量Wと求め、更にこれらを式(14)〜(17)に代入して適合度を求めることとなる。その後、ステップS29へ移行し、同様に世代ループを行うことにより、Nに1を加算し、今まで子世代(Gen=N)とされてきた世代を親世代(Gen=N−1)とし、さらにその子世代(Gen=N)をステップS24、25以降において生成することとなる。そして、これらステップS23〜S29までの処理動作を繰り返し行っていく。
【0113】
特にこの処理動作を繰り返し行っていくことにより、子世代になるほど適合度が上昇してくる。その理由として、ステップS25において適合度がより高い親世代が選択されることとなり、そこから生まれてくる子世代はより優れた適合度となる可能性が高くなる。また適合度が高い親世代は、ステップS24におけるエリート保存を通じてそのまま残されるため、優れた適合度となる可能性が高くなる。このようにして生まれてくる子世代が親世代となったとき、ステップS25において更に適合度の高い親世代が選択されることになり、子世代は更に優れた適合度となる可能性が高くなる。世代ループを繰り返すことにより、最終的に生成される子世代の遮音板32の組み合わせは適合度が最大になる。この適合度が最大になる子世代の遮音板32の組み合わせを最適解とする。
【0114】
最適解が現れたときにステップS29における世代ループを終了させ、ステップS30に移行する。ステップS30では、この適合度が最大となる遮音板32の組み合わせの最適解を出力し、処理動作を終了させる。
【0115】
ちなみに、適合度が最大であるか否かの判断は、適合度が所望の閾値を超えた場合に最大と判断するようにしてもよいし、世代ループを規定回数繰り返しても、今までの中での適合度の最大値を超える遮音板32の組み合わせが現れない場合には、その適合度の最大値を最適解とみなしてもよい。
【0116】
なお、上述したステップS25では、親世代(Gen=N−1)の2つのペアの組み合わせを選択する上で、いかなる方法に基づくものであってもよい。例えば、適合度の高い順から2つの遮音壁30の組み合わせを選択するいわゆるランキング選択を行うようにしてもよいし、適合度が高いほど選択確率が高くなるように2つの遮音壁の組み合わせを選択する、いわゆるルーレット選択を行うようにしてもよい。仮に親世代としてU,V,W,Xが存在しており、Uの適合度が0.4、Vの適合度が0.3、Wの適合度が0.2、Xの適合度が0.1であったとき、ランキング選択は、上位のU、Vの2つを選択することとなる。またルーレット選択の場合には、例えばUが40%、Vが30%、Wが20%、Xが10%の確率で選ばれることとなる。これにより、適合度が低い親世代の中でも、僅かな確率で優れた子世代を作り出すケースを漏らすことなく反映させることが可能となる。
【0117】
またステップS26における交叉は、
図17(b)に示すような一点交叉に限定されるものではなく、
図18に示すような二点交叉で交叉させるようにしてもよい。
図18(a)に示すように、親世代(Gen=N−1)遮音板32−2と遮音板32−3の間にあるα線、並びに遮音板32−4と遮音板32−5の間にあるβ線の2点で区切り、2点交叉させる。その結果、
図18(b)に示すように、2点交叉された子世代(Gen=N)が新たに生まれることとなる。また、交叉点は三点以上を交叉させるものであってもよいことは勿論である。
【0118】
上述したステップS21〜S30のGAによるアルゴリズムにより遮音板32の組み合わせの最適解を少ない計算量で導き出すことが可能となる。特に遮音壁30を構成する遮音板32の段数が高い場合や、遮音板32の種類が多い場合には、想定しえる全ての組み合わせについてRAとRBを求め、更に適合度を求めることとなれば、計算量が膨大となり、最適解を得るまでに長時間を要してしまうが、本発明によれば、最適な組み合わせをより短時間で探索することが可能となる。
【0119】
なお、上述した実施形態によれば、
図3に示すように、騒音源Sと受音点Pとが遮音壁30を介して隔てられ、騒音源Sの片側のみに遮音壁30が立設されている場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば
図19に示すように騒音源Sの両側に遮音壁30a、30bが立設されており、騒音源Sと受音点Pとは、遮音壁30bを介して隔てられている場合においても同様に適用可能である。
【0120】
但し、この
図19に示す形態においては、騒音源Sから発せられた音波は、
図19中の実線のように遮音壁30bの上端を回折して受音点Pまで到達する場合もあれば、
図19中の点線に示すように遮音壁30aと遮音壁30bとを互いに反射した上で遮音壁30bの上端を回折して受音点Pまで到達する場合もある。この反射音の影響も騒音レベルLAの計算に含める必要がある。
【0121】
このような反射音を考慮した場合において、受音点Pの騒音レベルLAは、計算周波数fの特性音圧レベルL
A(f) のエネルギー和とし、以下の式(21)により算出する。なお、音源のスペクトルは任意に設定できるものとし、計算周波数fは、1/3オクターブバンド中心周波数もしくは、1/1オクターブバンド中心周波数を基本とする。
【数9】
・・・・・・・・・・・(21)
【0122】
受音点Pにおける周波数毎の特性音源レベルL
A(f)は、実音源S
0と反射音によって生じる実音源の鏡像音源群S
1〜S
nより求められる。ここでいう実音源S
0とは、
図26(a)に示すように、実音源S
0から遮音壁30bの上端を介して直接受音点Pに到達する場合における騒音源を意味している。また、鏡像音源群S
1〜S
nについては、下付の数値1〜nが遮音壁30a、30b間における反射回数を示している。例えば鏡像音源S
1については
図26(b)に示すように実音源S
0から1回反射する場合に相当する。かかる場合には、ちょうど
図26(b)に示す経路のように先ず実音源S
0から遮音壁30aに反射し、遮音壁30bの上端を介して受音点Pに到達する場合が考えられる。この実音源S
0における遮音壁30aを介した鏡像音源S
1は、ちょうど実音源S
0に対して遮音壁30aを介した線対称となっている。例えば鏡像音源S
2については
図26(c)に示すように実音源S
0から2回反射する場合に相当する。かかる場合には、ちょうど
図26(c)に示す経路のように先ず実音源S
0から遮音壁30bに反射し、次に遮音壁30aに反射し、更に遮音壁30bの上端を介して受音点Pに到達する場合が考えられる。このときの鏡像音源S
2は、先ず実音源S
0に対して遮音壁30bを介した線対称となる鏡像音源S
1を特定し、更にこの鏡像音源S
1に対して遮音壁30aを介した線対称となる鏡像音源S
2となる。
【0123】
このような反射音を考慮した場合における、受音点Pにおける周波数毎の特性音源レベルL
A(f)は、実音源S
0と鏡像音源群S
1〜S
n、とに基づき、以下の(22)式により求められる。
【数10】
・・・・・・(22)
ここで、L
A,0(f)は実音源S
0に基づく受音点Pの音圧レベルを表している。またL
A,i(f)はi回反射時の鏡像音源S
iに寄与する受音点Pの音圧レベルである。αは側壁面の吸音率である。L
A,0(f)は、以下の(23)式に基づいて算出され、L
A,i(f)は、以下の(24)式に基づいて算出される。
【0124】
【数11】
・・・・・・・(23)
【数12】
・・・・・・・(24)
【0125】
(23)式は、
図20(a)に示すように実音源S
0から遮音壁30bの上端を介して直接受音点Pに到達する場合の特性音源レベルの式である。この(23)式では、実音源S
0に基づく受音点Pの音圧レベルであることから上述した式(1)´の予測音圧レベルの式と同様である。即ち、音源の特性音響パワーレベルL
WA(f)に、半自由音場の距離減衰−8−20log
10rと、遮音壁からの透過音と回折音を反映した補正量ΔL
dif,trans,0(f)が加えられてなる。この補正量ΔL
dif,trans,0(f)は、(3)式のΔL
dif,m(f)に相当する。
【0126】
これに対して、(24)式は、
図20(b)、(c)に示すように実音源S
0から遮音壁30を1回以上反射してから受音点Pに到達する場合の特性音源レベルの式である。この(24)式では、ΔL
dif,trans,i(f)は、受音点Pに対して反対側に立設している遮音壁30bを通り抜ける際の減衰量(回折補正量)を示している。ΔL
refl,slit,i (f)は、i回反射時の鏡像音源S
iに関するスリット法による反射補正量である。
【0127】
図20(b)に示すように1回反射の場合、即ちi=1の場合は、(24)は以下の(
24−1)式に変形できる。
L
A,1(f)= L
WA(f)−8−20log
10r
1+ΔL
dif,trans,1(f)+ΔL
refl,slit,1(f)・・・・・・・・・・・(24−1)
【0128】
ΔL
dif,trans,1(f)は、
図20(b)中の経路S
1OPの透過音を考慮した回折補正量である。ΔL
dif,trans,1(f)は、以下の(25)式により定義することができる。
ΔL
dif,trans,1(f)=10log
10(10Δ
Ldif,1/10+10Δ
Ltrans,1/10) ・・・・・・・・・(25)
ここでΔL
dif,1=(音源位置を鏡像音源とした場合の、遮音壁30の上端に対する回折減衰である)。またΔL
trans,1は、(音源位置を鏡像音源とした場合の、各遮音板32−iにおけるiが1〜nまでの透過減衰の総和であり、一例として下記(25−1)で表される。
【数13】
・・・・・・・(25−1)
回折補正量ΔL
dif,trans,1(f)は、遮音壁30の上端の回折減衰ΔL
d,dif1(f)と、遮音壁30の透過減衰値ΔL
dif,w(f)とのエネルギー和で表すことが可能となる。
【0129】
ΔL
refl,slit,1は、
図21に示すように受音点Pに対して反対側に立設している遮音壁30bの上下端を反射音計算におけるスリット開口と考える。このΔL
refl,slit,1の具体的な算出方法は、式(5)に基づくものとなる。
【0130】
また1回反射の場合、
図22(a)に示すように、鏡像音源S
1と遮音壁30bの上端Oとを結ぶ線分と、遮音壁30aとの交点ref1を特定し、このref1を含む遮音板32の吸音率α2を反射面の吸音率とする。
【0131】
図20(b)に示すように2回反射の場合、即ちi=2の場合は、(24)は以下の(
24−2)式に変形できる。
L
A,2(f)= L
WA(f)−8−20log
10r
2+ΔL
dif,trans,2(f)+ΔL
refl,slit,2(f)・・・・・・・・・・・(24−2)
【0132】
ΔL
dif,trans,2(f)は、
図20(b)中の経路S
2OPの透過音を考慮した回折補正量である。ΔL
dif,trans,2(f)は、以下の(26)式により定義することができる。
ΔL
dif,trans,2(f)=10log
10(10Δ
Ldif,2/10+10Δ
Ltrans,2/10) ・・・・・・・・・(26)
【0133】
ここでΔL
dif,2、ΔL
trans,2の算出方法は、上述したΔL
dif,1、ΔL
trans,1と同様である。ΔL
refl,slit,2も同様に、受音点Pに対して反対側に立設している遮音壁30bの上下端を反射音計算におけるスリット開口と考えて計算をする。
【0134】
また2回反射の場合、
図22(b)に示すように、鏡像音源S
2と遮音壁30bの上端Oとを結ぶ線分と、遮音壁30aとの交点ref2を特定し、また遮音板30bの鏡像との交点ref1を特定する。そして、このref1,ref2を含む遮音板32の吸音率α1、α3を反射面の吸音率とする。
【0135】
図22(c)に示すように3回反射の場合、即ちi=3の場合は、(24)は以下の(
24−3)式に変形できる。
L
A,3(f)= L
WA(f)−8−20log
10r
3+ΔL
dif,trans,3(f)+ΔL
refl,slit,3(f)・・・・・・・・・・・(24−3)
【0136】
ΔL
dif,trans,3(f)は、
図20(c)中の経路S
3OPの透過音を考慮した回折補正量である。ΔL
dif,trans,3(f)は、以下の(27)式により定義することができる。
ΔL
dif,trans,3(f)=10log
10(10Δ
Ldif,3/10+10Δ
Ltrans,3/10) ・・・・・・・・・(27)
【0137】
ここでΔL
dif,3、ΔL
trans,3の算出方法は、上述したΔL
dif,1、ΔL
trans,1と同様である。ΔL
refl,slit,3も同様に、受音点Pに対して反対側に立設している遮音壁30bの上下端を反射音計算におけるスリット開口と考えて計算をする。
【0138】
また3回反射の場合、
図22(c)に示すように、鏡像音源S
3と遮音壁30bの上端Oとを結ぶ線分と、遮音壁30aとの交点ref3を特定し、また遮音板30bの鏡像との交点ref2を特定し、遮音板30aの鏡像との交点ref1を特定する。そして、このref1〜ref3を含む遮音板32の吸音率α1、α2、α3を反射面の吸音率とする。
【0139】
4回以上の反射の場合も同様に計算を行っていくこととなる。このようにしてL
A,i(f)を各反射回数i毎に求めていき、式(22)のL
A(f)の式に、求めたL
A,0(f)、L
A,i(f)を代入する。
図22(a)〜(c)の場合には、以下の式(28)のように示すことができる。
【0140】
【数14】
・・・・・・・・・・・・・・・・(28)
このように本発明によれば、騒音源Sの両側に遮音壁30a、30bが立設されており、騒音源Sと受音点Pとは、遮音壁30bを介して隔てられている場合においても、上述した計算方法を導入することにより、同様に受音点の騒音レベルLAを求めることが可能となる。また、このような騒音源Sの両側に遮音壁30a、30bが立設されている場合においても
図12に示す探索プログラムに基づいたGA空間の下で計算を行ってもよいことは勿論である。
【0141】
このようにして、本発明によれば、鏡像音源と遮音壁30bの上端Oとを結ぶ線分と、遮音壁30aとの交点を特定し、また遮音板30bの鏡像との交点を特定し、遮音板30aの鏡像との交点を特定することにより、第1遮音壁30a及び/又は第2遮音壁30bを反射して受音点に音波が到達する過程で、その反射点となりえる遮音板21を特定する。そして、その反射点を含む遮音板32の吸音率α1、α2、α3に基づいて騒音レベルを求める。
【0142】
かかる場合には、
図19に示すように、遮音壁30aを構成する遮音板32−1〜32−5、及び遮音壁30bを構成する遮音板32−6〜32−10について、タイプ1〜3の探索を行っていくこととなる。その結果、遮音板32の各タイプ1〜3の組み合わせとしては、遮音板32−1〜32−10まで、順にタイプ(1、1、3、3、3、3、3、3、2、1)等のように10のマスに表示することができる。ステップS28では、遮音板32の組み合わせについてそれぞれ適合度を求めるが、この適合度は、ステップS21において生成したGA空間の各遮音板32の組み合わせに対して行う。適合度を求める過程では、総重量Wとともに騒音レベルLAが必要になるが、これは式(21)以降を利用することで実現することができる。
【0143】
特にこのような騒音源Sの両側に遮音壁30a、30bが立設されている形態においては、探索対象となる遮音板32の数が増加するため、その分において計算量が増加することとなる。かかる場合においても、このようなGA空間を利用することにより、最適な組み合わせをより短時間で探索することが可能となる。
【0144】
なお、本発明は、上述した組み合わせ探索プログラムとして具現化される場合に限定されるものではない。このような組み合わせ探索プログラムがサーバ13又は電子機器11、21にインストールされた遮音板の組み合わせ探索システム10として具現化されるものであってもよい。また、このような組み合わせ探索プログラムのアルゴリズムがそのまま反映された遮音板の組み合わせ設計方法として具現化されるものであってもよいことは勿論である。
【0145】
また、上述した例では、遮音性並びに重量の観点から最適な組み合わせを探索するパネル体の組み合わせ探索プログラムについて説明をしたが、これに限定されるものではなく、遮音性並びにコストの観点から最適な組み合わせを探索するものであってもよい。かかる場合には、上述した「重量」という記載を「コスト」に置換することにより具現化されることとなる。
【実施例1】
【0146】
以下、本発明を適用した遮音板の組み合わせ探索プログラムにおける実際の解析例について説明をする。
【0147】
解析例は、
図19に示すように点音源Sの両サイドに高さ5mの遮音壁30a、30bを設置する音場モデルを想定する。遮音壁30を構成する遮音板32の高さは1mであり、それぞれ5段の遮音板32が積み上げられるモデルとする。各遮音板32に対して割り当てられるタイプ1〜3の透過損失、吸音率、パネル重量のデータを以下の表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
表2は音圧レベルL
WAのデータであり、表3は、遮音板32の音響透過損失TLのデータであり、表3は遮音板32の吸音率のデータである。何れも周波数fに対してそれぞれデータが割り当てられている。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
最大反射回数は3回で、受音点Pの目標騒音レベルLAtarget=45(dB)とする。
【0154】
先ず、遮音板32につき、全組み合わせは、3^10=59049通りとなる。この中から適合度が最大となる組み合わせを事前に求め、これを模範解答として保存しておく。そして、実際に
図12に示す探索プログラムに基づいたGA空間の下で計算を行うことで最適解を求め、模範解答との整合性を確認する。
【0155】
表5は、かかる整合性の確認結果を示している。組み合わせは、
図19に示すように遮音板32−1〜32−10の順で各タイプ1〜3が記述されている。式(14)の適合度を算出する上での重み付けwA、wBは、0.5:0.5、0.7:0.3、0.3:0.7の3種類としている。
【0156】
式1は、音圧レベルが低くなるほど点数が高くなる式であるが、重量との関係において最適解を探索することを目的としたものではない。L
WAは、音源の特性音圧パワーレベルである。
RA=1.0−(LA/L
WA)・・・・・・・・・・・・・(式1)
【0157】
式2は、受音点Pの騒音レベルLAと目標値LAtargetとを比較し、上述した式(15)、(16)を使い分ける方法である。
【0158】
即ち、受音点Pの騒音レベルLA<目標値LAtargetの場合、以下の(15)式に基づく。
RA=1.0−{(1.0−C)×LA/LAtarget}・・・・・・・・・・・・(15)
【0159】
また、受音点Pの騒音レベルLA≧目標値LAtargetの場合、以下の(16)式に基づく。
RA=C/10^[(LA−LAtarget)/10]・・・・・・・・・・・・(16) 式3は、受音点Pの騒音レベルLA<目標値LAtargetの場合、換言すれば受音点Pの騒音レベルLAが目標をクリアしている場合には、RA=1.0であり、受音点Pの騒音レベルLA≧目標値LAtargetの場合、換言すれば受音点Pの騒音レベルLAが目標をクリアしていない場合には、RA=0.0としている。なお、2点交叉で交叉率=0.6、突然変異率=0.1とした。
【0160】
【表5】
【0161】
表5では、式1〜3によりGA空間の下でそれぞれ求められた遮音板32の組み合わせ、算出された音圧レベルL
WA(dB)、遮音板32の総重量W(kg)を表示している。また模範解答(1,1,1,1,1,1,3,3,2,1)との間での整合性を判定し、模範解答と一致した場合には○、模範解答と不一致の場合には×としている。
【0162】
表5に示すように、式2、式3の場合には、何れの重み付けwA、wBにおいても模範解答と一致していた。一方、式1の場合には、模範解答と不一致であった。
【0163】
次に式2、式3に焦点を当て、遮音板32の総数=20の集合体をGA空間の下で進化させて計算を行い、最大世代数=50とし、模範解答と同じ探索結果になった場合に計算を打ち切った。そして、この模範解答までに到達した世代、探索数をそれぞれ計測した。結果を以下の表6に示す。
【0164】
【表6】
【0165】
何れの式2、式3並びに何れの重み付けにおいても、探索数は全数検索と比較すると格段に向上していた。また探索時間は、全数検索が22分56秒であるのに対して、GA空間は何れも格段に高速化できており、最も遅いもので27秒であり、最速で9秒であった。