特許第6783635号(P6783635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783635
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20201102BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20201102BHJP
   H02K 29/08 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H02K11/215
   G01D5/245 H
   G01D5/245 110C
   H02K29/08
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-225386(P2016-225386)
(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-104008(P2017-104008A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年1月13日
【審判番号】不服2019-7333(P2019-7333/J1)
【審判請求日】2019年6月4日
(31)【優先権主張番号】10 2015 120 563.7
(32)【優先日】2015年11月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503219640
【氏名又は名称】シュタビルス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】STABILUS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ライフェンハウザー
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン クロンズ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ボッヘン
【合議体】
【審判長】 柿崎 拓
【審判官】 松本 泰典
【審判官】 佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−139091(JP,A)
【文献】 特開2007−228736(JP,A)
【文献】 特表2014−523497(JP,A)
【文献】 特開2015−76999(JP,A)
【文献】 特開昭60−183959(JP,A)
【文献】 実開平6−36379(JP,U)
【文献】 特開2009−192081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/215
G01D 5/245
H02K 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における可動部材を電気モータで調整するための駆動装置であって、電気モータ(2)を内蔵したハウジングチューブ(1)を備え、該電気モータ(2)のロータが、半径方向に磁化された永久磁石を有し、電気モータ(2)におけるロータの回転運動を該電気モータ(2)の前記永久磁石の磁界を検出することで非接触検出するよう、該電気モータ(2)の前記永久磁石に対して所定間隔で配置されたセンサ装置を更に備え、該センサ装置が、キャリアボード(13)上に配置された少なくとも1個のホールセンサ(14)を含み、前記キャリアボード(13)が、電気モータ(2)により軸線方向に支持された状態でハウジングチューブ(1)内に配置される支持リング(6)に保持されている駆動装置において、前記支持リング(6)が、電気モータ(2)に対して形状係合的及び/又は摩擦係合的に結合されており、
前記支持リング(6)が、軸線方向に延びる少なくとも1本の保持アーム(7)と、該保持アーム(7)に隣接する領域に設けられ、前記電気モータ(2)に向けられた少なくとも1個のスペーサ(8)とを有し、該保持アーム(7)が前記電気モータ(2)の支持リング(6)側の端部領域(3)に係合し、該スペーサ(8)における自由端の端面が、前記電気モータ(2)の前記支持リング(6)側の端面に当接しているとともに、前記支持リング(6)が、前記弾性手段により前記電気モータ(2)に対して押圧され、
前記弾性手段が、弾性材料よりなる環状又はディスク状部材(17)として構成され、前記支持リング(6)を電気モータ(2)から離れた側にて押圧し、ハウジングチューブ(1)により、又は該ハウジングチューブ(1)に結合された部品により支持されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、支持リング(6)が、係合手段により、電気モータ(2)に結合されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動装置であって、前記支持リング(6)が、軸線方向に少なくとも1本の保持アーム(7)を含み、該保持アーム(7)が、電気モータ(2)の支持リング側(6)の端部領域に形成された保持溝(9)内に突入し、前記保持アーム(7)が、少なくとも1個の係合突起(10)を有し、該係合突起(10)が、保持溝(9)内における少なくとも1つの壁(11)に形成された係合凹部内にて形状係合的又は摩擦係合的に当接していることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置であって、前記保持アーム(7)が、支持リング(6)の外郭領域の周方向に配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の駆動装置であって、前記保持アーム(7)が、半径方向内方に向けて弾性を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の駆動装置であって、前記環状又はディスク状部材(17)における支持リング(6)から離れた側が、ハウジングチューブ(1)を閉鎖するための閉鎖キャップ(18)により支持されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜の何れか一項に記載の駆動装置であって、前記電気モータ(2)により、ねじ付きスピンドル及びスピンドルナットを含むスピンドル駆動部が回転駆動可能であることを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における可動部材を電気モータで調整するための駆動装置に関する。本発明に係る駆動装置は、電気モータが内蔵されたハウジングチューブを備え、該電気モータのロータが、半径方向に磁化された永久磁石を有し、更に、電気モータにおけるロータの回転運動を非接触式に検出するよう、電気モータに対して所定間隔で配置されたセンサ装置を備える。センサ装置は、キャリアボード上に配置された少なくとも1個のホールセンサを含み、キャリアボードは、支持リングに保持され、支持リングは、電気モータにより軸線方向に支持された状態でハウジングチューブ内に配置される。
【背景技術】
【0002】
このような駆動装置においては、支持リングにより、ロータに配置された永久磁石に対する1個以上のホールセンサの所定間隔が規定される。これにより、ロータの回転運動時に、ホールセンサに異なる程度で作用する永久磁石の磁界が最適に検出される。最適な検出を可能とするためには、ロータに対するホールセンサの位置が遠すぎても近すぎても望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の駆動装置において、構成を簡略化すると共に、組み付けを容易とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明に従って、支持リングが電気モータに対して形状係合的及び/又は摩擦係合的に結合されることにより解決される。
【0005】
上述した構成によれば、電気モータの組み付けに際して、電気モータに対して形状係合的及び/又は摩擦係合的に結合される支持リングが、ハウジングチューブ内に組み込まれるのみならず、電気モータに保持されるという利点が得られる。すなわち、支持リングは、その固定のために使用される他の部品がハウジングチューブ内に組み込まれる前に、所定位置で保持され、従ってハウジングチューブから外れて組み付け作業に支障を来すことがない。
【0006】
この場合、支持リングを係合手段により電気モータと結合されれば、支持リングを電気モータに取り付ける際に工具は特に必要なく、両者を単純に係合させるだけで結合可能である。
【0007】
係合のみによる結合を可能とするため、支持リングは、軸線方向に少なくとも1本の保持アームを含む。この場合、少なくとも1本の保持アームは、電気モータにおける支持リング側の端部領域に形成された保持溝内に突入する。少なくとも1本の保持アームは、少なくとも1個の係合突起を有しており、この係合突起が、保持溝内における少なくとも1つの壁に形成された係合凹部内にて形状係合的又は摩擦係合的に当接する。
【0008】
これにより、支持リング及び電気モータを互いに結合させる際に、他に取り付けを必要とする部品が必要なく、駆動装置の組み付けが大幅に容易になる。
【0009】
本発明の駆動装置は、例えば、車両におけるドア又はゲートを開閉する機能を有する。
【0010】
少なくとも1本の保持アームが支持リングの外郭領域の周方向に配置されれば、ホールセンサにより検出された磁界に影響が及ぶことはない。
【0011】
電気モータに対する支持リングの保持力は、保持アームが半径方向内方に向けて弾性を有する構成とすることにより、更に高めることが可能である。
【0012】
ロータに対するセンサ装置の所定間隔を容易に規定可能とするため、支持リングは、保持アームに隣接する領域に、電気モータに向けられた少なくとも1個のスペーサを有し、該スペーサにおける自由端の端面が、電気モータにおける支持リング側の端面に当接する。
【0013】
駆動装置の作動時に支持リングを所定位置に確実に保持可能とするため、支持リングは、弾性手段により電気モータに対して押圧することができる。
【0014】
簡略な構成を有すると共に容易に取り付け可能な実施形態において、上記弾性手段は、弾性材料よりなる環状又はディスク状部材(例えばゴム製)として構成され、支持リングを電気モータから離れた側にて負荷し、ハウジングチューブ又はこのハウジングチューブに結合された部品によって支持される。
【0015】
この場合、環状又はディスク状部材における支持リングから離れた側が、ハウジングチューブを閉鎖するための閉鎖キャップにより支持される構成とすれば、環状又はディスク状部材は、ハウジングチューブ内に組み込まれることにより容易に取り付け可能である。
【0016】
好適には、電気モータにより、ねじ付きスピンドル及びスピンドルナットを含むスピンドル駆動部が回転駆動可能である。
【0017】
以下、本発明を図示の実施形態について更に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】駆動装置における端部領域の縦断面図である。
図2図1に係る駆動装置における端部領域の各部品を示す分解斜視図である。
図3図1に係る駆動装置における支持リングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図面に示す駆動装置は、ハウジングチューブ1を備え、その一方の端部領域に電気モータ2が配置されている。この電気モータ2が配置された端部領域から離れた側においては、例えば、変速機及び場合によっては過負荷クラッチを介して、スピンドル駆動部のねじ付きスピンドルが電気モータ2により回転可能に配置されている。この場合、ねじ付きスピンドル上には、回転不能ではあるが、軸線方向に変位可能なスピンドルナットが配置されている。電気モータ2により駆動可能なこれら部品は図示されていない。
【0020】
電気モータ2は、半径方向に磁化された永久磁石を有するロータ(図示せず)を含む回転モータ2として構成されている。ハウジングチューブ1側の端部においては、電気モータ2のハウジング4が端部キャップ5により閉じられている。半径方向に磁化された永久磁石は、電気モータ2の端面3(端部キャップ5により形成)に対して所定の軸線方向間隔で配置されている。
【0021】
電気モータ2の端面3には、支持リング6がハウジングチューブ1内に差し込まれている。この支持リング6の周方向には、電気モータ2に対して軸線方向に延びる4本の保持アーム7が均等に配置されている。これら保持アーム7の両側には、支持リング6のスペーサ8が配置されている。この場合、電気モータ2に向けられた保持アーム7の長さは、電気モータ2に向けられたスペーサ8の長さよりも大きい。
【0022】
支持リング6は、電気モータ2の端面3にスペーサ8が当接するまでハウジングチューブ1内に差し込まれている。
【0023】
この場合、保持アーム7は、端部キャップ5の外郭面の周方向に形成された保持溝9内に突入している。
【0024】
保持アーム7は、電気モータ2側の自由端に、周方向に突出した係合突起10を有する。これら係合突起10は、保持アーム7が保持溝9内に差し込まれた状態で、保持溝9の互いに対面する側壁11に対して摩擦係合的に当接している。
【0025】
この摩擦係合的な結合により、支持リング6が電気モータ2に保持され、駆動装置の更なる組み付けに際して電気モータ2から分離することがない。
【0026】
支持リング6は、電気モータ2から離れた側の端部領域に、半径方向に延びるキャリアプレート12を含み、そのプレート12にキャリアボード13が配置されている。キャリアボード13には、その電気モータ2側に、周方向に間隔を有する状態で2個のホールセンサ14が保持されている。
【0027】
電気モータ2の端面3に当接するスペーサ8により、ホールセンサ14は、電気モータ2に対して所定の軸線方向間隔を有し、従って電気モータ2のロータに配置された永久磁石に対しても所定の軸線方向間隔を有する。
【0028】
この所定間隔は、ホールセンサ14により、ロータと共に回転する永久磁石の磁界が少なくともほぼ最適に検出されるよう規定される。
【0029】
この場合、ホールセンサ14により生成される信号は、駆動装置から配線15を介して評価装置(図示せず)に伝達される。この評価装置により、電気モータ2における永久磁石の回転速度及び回転位置に関する情報が信号に基づいて得られる。更に、この情報に基づいて、スピンドル駆動部の位置及び/又は調整速度に関する情報も得られる。
【0030】
配線15は、キャリアプレート12の切り欠き16、ゴム製環状部材17の内部、並びにハウジングチューブ1を閉鎖するための閉鎖キャップ18の通路を通って外方にガイドされている。
【0031】
ゴム製環状部材17は、スリーブ部分19を含み、その外径はハウジングチューブ1の内径に対応している。スリーブ部分19の支持リング6から離れた側の端部領域には、半径方向内方に向けられたストッパ20が配置されている。スリーブ部分19の内径に対応する外径を有する支持リング6は、ストッパ20に当接するまでスリーブ部分19に組み込まれている。
【0032】
即ち、環状部材17及び支持リング6により、駆動装置の作動時における電気モータ2由来の振動が分離され、従って駆動装置の音響特性を向上させる騒音の分離も併せて実現される。
【0033】
環状部材17の一側は、ストッパ20により、キャリアプレート12における電気モータ2から離れた側に僅かな付勢状態で当接し、環状部材17の他側は、閉鎖キャップ18の円筒状部分21に支持されている。閉鎖キャップ18の円筒状部分21の外径は、ハウジングチューブ1の内径に対応しているため、円筒状部分21は、周方向に配置されたフランジ22がハウジングチューブ1に当接するまでハウジングチューブ1内に組み込まれ、その当接位置でフランジが半径方向に折り曲げられることにより固定される。
【符号の説明】
【0034】
1 ハウジングチューブ
2 電気モータ
3 端面
4 ハウジング
5 端部キャップ
6 支持リング
7 保持アーム
8 スペーサ
9 保持溝
10 係合突起
11 側壁
12 キャリアプレート
13 キャリアボード
14 ホールセンサ
15 配線
16 切り欠き
17 環状部材
18 閉鎖キャップ
19 スリーブ部分
20 ストッパ
21 円筒状部分
22 フランジ

図1
図2
図3