(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一日を複数の時間帯に分割し、前記時間帯毎に電力の売買取引を行う電力市場を利用し、所定の場所に設置されて電力を蓄えることが可能な蓄電池システムに対し、前記時間帯毎に充放電計画を割り当てる充放電計画装置であって、
各前記時間帯について時系列的に設定された複数段階の充放電計画段階のうち、所定の条件を満たすまで、前記充放電計画の割り当てを禁止する時間帯をマスク時間帯として設定するマスク設定部と、
前記マスク時間帯が設定された充放電計画段階よりも後の各充放電計画段階において、前記マスク時間帯毎に前記所定の条件を満たしているか否かを判別する条件判別部と、
前記判別の結果に基づいて前記充放電計画段階において、未だ充放電割当がなされていない時間帯について充放電割当を行う充放電割当部と、
を備え、
前記マスク時間帯は、各前記時間帯のうちあらかじめ定められた一部の時間帯にのみ設定された充放電計画装置。
一日を複数の時間帯に分割し、前記時間帯毎に電力の売買取引を行う電力市場を利用し、所定の場所に設置されて電力を蓄えることが可能な蓄電池システムに対し、前記時間帯毎に充放電計画を割り当てる充放電計画装置であって、
各前記時間帯について時系列的に設定された複数段階の充放電計画段階のうち、所定の条件を満たすまで、前記充放電計画の割り当てを禁止する時間帯をマスク時間帯として設定するマスク設定部と、
各充放電計画段階において、前記マスク時間帯毎に前記所定の条件を満たしているか否かを判別する条件判別部と、
前記判別の結果に基づいて前記充放電計画段階において、未だ充放電割当がなされていない時間帯について充放電割当を行う充放電割当部と、を備え、
前記充放電割当部は、以前に充放電割当がなされている時間帯であって、当該時間帯に対応する前記電力市場の入札のゲートクローズ後において、前記判別の結果に基づいて、より有利な条件で前記所定の条件を満たす可能性がある時間帯について前記充放電割当を再度行う、
充放電計画装置。
一日を複数の時間帯に分割し、前記時間帯毎に電力の売買取引を行う電力市場を利用し、所定の場所に設置されて電力を蓄えることが可能な蓄電池システムに対し、前記時間帯毎に充放電計画を割り当てる充放電計画装置で実行される方法であって、
各前記時間帯について時系列的に設定された複数段階の充放電計画段階のうち、所定の条件を満たすまで、前記充放電計画の割り当てを禁止する時間帯をマスク時間帯として設定する過程と、
前記マスク時間帯が設定された充放電計画段階よりも後の各充放電計画段階において、前記マスク時間帯毎に前記所定の条件を満たしているか否かを判別する過程と、
前記判別の結果に基づいて前記充放電計画段階において、未だ充放電割当がなされていない時間帯について充放電割当を行う過程と、を備え、
前記マスク時間帯として設定する過程において、前記マスク時間帯を、各前記時間帯のうちあらかじめ定められた一部の時間帯にのみ設定させる、
方法。
一日を複数の時間帯に分割し、前記時間帯毎に電力の売買取引を行う電力市場を利用し、所定の場所に設置されて電力を蓄えることが可能な蓄電池システムに対し、前記時間帯毎に充放電計画を割り当てる充放電計画装置をコンピュータにより制御するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
各前記時間帯について時系列的に設定された複数段階の充放電計画段階のうち、所定の条件を満たすまで、前記充放電計画の割り当てを禁止する時間帯をマスク時間帯として設定する手段と、
前記マスク時間帯が設定された充放電計画段階よりも後の各充放電計画段階において、前記マスク時間帯毎に前記所定の条件を満たしているか否かを判別する手段と、
前記判別の結果に基づいて前記充放電計画段階において、未だ充放電割当がなされていない時間帯について充放電割当を行う手段と、
して機能させ、
前記マスク時間帯として設定する手段において、前記マスク時間帯を、各前記時間帯のうちあらかじめ定められた一部の時間帯にのみ設定させる、
ためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態の蓄電池制御システムを含む電力取引システムの概要構成ブロック図である。
電力取引システム100は、大別すると、発電事業者が運用を行い発電を行う発電事業者システム111と、系統事業者が運用を行い商用電力を供給する系統事業者システム112と、複数の需要家がそれぞれ運用を行う複数の需要家設備113に対応する需要家システム114に電力を小売りする小売事業者が運用を行う小売事業者システム115と、後述する電力取引市場125を運営する電力取引所が運用する電力取引所システム116と、を備えている。
【0010】
上記構成において、需要家システム114は、需要家設備113と、需要家設備113に供給する電力を一時的に蓄えることが可能な蓄電池システム117と、を備えている。
ここで、蓄電池システム117は、小売事業者により需要家システム114側に設置されており、この蓄電池システム117の充放電については、小売事業者システム115により制御されている。
【0011】
図2は、小売事業者を中心とする発電事業者、系統事業者、電力取引市場及び需要家の間の電力供給経路の説明図である。
ここで、電力供給経路の説明に先立ち、現在の電力取引市場125において行われている主な電力取引の種類について説明する。
【0012】
発電事業者121における発電量の計画と、小売事業者123における需要量の計画とが均衡(バランス)することが電力の安定供給のためには必要である。
この場合において、発電事業者121は、発電量を計画するとともに、既に契約がなされている発電量(売り先[小売事業者等]が決まっている発電量)を確認し、当該発電事業者における発電コストよりも安い電力が売っていれば電力取引市場125において買い取りを行おうとし、当該発電事業者121の発電コストよりも高く電力が売れるのであれば、電力取引市場125において売却を行おうとすることとなる。
【0013】
一方、小売事業者123は、需要家124等の顧客の需要を予測して調達量を設定することとなるが、既に契約がなされている調達量(買い取り先[発電事業者等]が決まっている調達量)を確認し、調達量に不足があれば電力取引市場125に対して買い取り(買電)を行おうとし、調達量に余剰があれば電力取引市場125に対して売却(売電)を行おうとすることとなる。
【0014】
このため、発電事業者121及び小売事業者123は、必要に応じて電力取引市場125において入札を行うこととなるので、発電事業者121と小売事業者123の入札を1日単位で全てまとめて突き合わせを行い、需要供給の関係で価格と量を均衡させる一日前市場(スポット市場)が設けられている。
【0015】
ところで、実際の需要供給の関係は、固定的なものではなく、発電設備の故障等による電力供給の変動や、気温の変動などによる電力需要の変動などが生じる。
そこで、この需要供給関係の変動を吸収し、調整するための場として、一日を電力の計量単位(毎時0分〜30分、30分〜60分)で分割した48個の取引時間帯でそれぞれ個別に需要供給の関係で価格と量を均衡させるザラ場取引を行う当日市場(1時間前市場)が設けられている。
【0016】
次に電力供給経路の説明を行う。
図2に示すように、小売事業者123は、発電事業者121から電力を調達し、需要家124の需要家設備113あるいは需要家124側に設置した蓄電池システム117に電力を供給する。そして小売事業者123は、発電事業者121からの調達電力に余裕がある場合には、一日前市場または当日市場を利用して電力取引市場125に対して電力の売却の入札を行い、売却取引が成立した場合には、電力取引市場125を介して買電者に対して電力を売却する。また、小売事業者123は、発電事業者121からの調達電力に不足がある場合には、一日前市場または当日市場を利用して電力取引市場125に対して電力の買い取りの入札を行い、買取取引が成立した場合には、電力取引市場125を介して売電者から電力を買い取り、需要家124に供給する。
【0017】
ところで、本実施形態においては、小売事業者123は、上述したように需要家124に対して蓄電池システム117を設置している。
以下、蓄電池システム117について説明する。
【0018】
図3は、実施形態の蓄電池システムの概要構成ブロック図である。
蓄電池システム117は、大別すると、電力を蓄える蓄電池装置11と、蓄電池装置11から供給された直流電力を所望の電力品質を有する交流電力に変換して需要家設備113あるいは小売事業者123に供給するとともに、小売事業者123を介して供給された交流電力を直流電力に変換して蓄電池装置11に供給する電力変換装置(PCS:Power Conditioning System)12と、を備えている。
【0019】
蓄電池装置11は、大別すると、複数の電池盤21−1〜21−N(Nは自然数)と、電池盤21−1〜21−Nが接続された電池端子盤22と、を備えている。
電池盤21−1〜21−Nは、互いに並列に接続された複数の電池ユニット23−1〜23−M(Mは自然数)と、ゲートウェイ装置24と、後述のBMU(Battery Management Unit:電池管理装置)及びCMU(Cell Monitoring Unit:セル監視装置)に動作用の直流電源を供給する直流電源装置25と、を備えている。
【0020】
ここで、電池ユニット23−1〜23−Mの構成について説明する。
電池ユニット23−1〜23−Mは、それぞれ、高電位側電源供給ライン(高電位側電源供給線)LH及び低電位側電源供給ライン(低電位側電源供給線)LLを介して、出力電源ライン(出力電源線;母線)LHO、LLOに接続され、主回路である電力変換装置12に電力を供給している。
【0021】
電池ユニット23−1〜23−Mは、同一構成であるので、電池ユニット23−1を例として説明する。
電池ユニット23−1は、大別すると、複数(
図2では、22個)のセルモジュール31−1〜31−22と、セルモジュール31−1〜31−22にそれぞれ設けられた複数(
図1では、24個)のCMU32−1〜32−22と、セルモジュール31−11とセルモジュール31−12との間に設けられたサービスディスコネクト33と、電流センサ34と、コンタクタ35と、を備え、複数のセルモジュール31−1〜31−22、サービスディスコネクト33、電流センサ34及びコンタクタ35は、直列に接続されている。
【0022】
上記構成において、セルモジュール31−1〜31−22のそれぞれと、対応するCMU32−1〜32−22と、を合わせた構成については、以下、電池モジュール37−1〜37−22と呼ぶものとする。例えば、セルモジュール31−1と対応するCMU32−1を合わせた構成を電池モジュール37−1と呼ぶものとする。
【0023】
ここで、セルモジュール31−1〜31−22は、電池セルが複数、直並列に接続されて組電池を構成している。そして、複数の直列接続されたセルモジュール31−1〜31−22で組電池群を構成している。
【0024】
上記構成において、セルモジュール31−1〜31−22に用いる電池セルとしては、例えば、リチウムイオン電池が用いられている。
以下、リチウムイオン電池の組成について具体的に説明する。
リチウムイオン電池の第1の態様としては、コバルト、ニッケルおよびマンガンよりなる群から選択される少なくとも一種類の金属元素を含有するリチウム金属化合物を含みリチウム金属化合物はLi
aNi
bCo
cMn
dO
2(但し、モル比a,b,c及びdは0≦a≦1.1、b+c+d=1)で表される正極活物質含有層を備えた正極と、チタン含有金属複合酸化物を含む負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えた非水電解質二次電池として構成される。
【0025】
また、リチウム電池の第2の態様としては、コバルト、ニッケルおよびマンガンよりなる群から選択される少なくとも一種類の金属元素を含有するリチウム金属化合物を含みリチウム金属化合物はLi
aNi
bCo
cMn
dO
4(但し、モル比a,b,c及びdは0≦a≦1.1、b+c+d=2)で表される正極活物質含有層を備えた正極と、チタン含有金属複合酸化物を含む負極と、非水溶媒を含む非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池として構成される。
【0026】
そして、上記構成のリチウムイオン電池を用いた蓄電池システム117によれば、一つの取引単位時間帯に相当する時間内で、SOC(State Of Charge)=0%の状態からSOC=100%の状態まで充電が可能であり、あるいは、SOC=100%の状態からSOC=0%の状態まで放電が可能となっている。
【0027】
以上の説明においては、電池セルとして、リチウムイオン電池の場合について説明したが、一の取引時間帯内で充電計画に対応する充電が可能であるとともに、一の取引時間帯内で放電計画に対応する放電が可能な蓄電池を構成可能な電池セルであれば、同様に適用が可能である。
例えば、蓄電池は、当該蓄電池システム117において、一の取引時間帯内で充電計画で設定可能な最大充電量まで充電可能であるとともに、一の取引時間帯内で放電計画で設定可能な最大放電量まで放電可能とされた電池セルを備えていれば、どのような種類の蓄電池を用いることも可能である。
【0028】
さらに電池ユニット23−1は、BMU36を備え、BMU36と各CMU32−1〜32−22とは、例えば、CAN通信規格に則った通信により接続されている。
BMU36は、ゲートウェイ装置24の制御下で、電池ユニット23−1全体を制御し、各CMU32−1〜32−22との通信結果(後述する電圧データ及び温度データ)及び電流センサ34の検出結果に基づいてコンタクタ35の開閉制御を行う。
【0029】
次に電池端子盤22の構成について説明する。
電池端子盤22は、電池盤21−1〜21−Nに対応させて設けられた複数の盤遮断器41−1〜41−Nと、蓄電池装置11全体を制御するマイクロコンピュータとして構成されたマスタ(Master)装置42と、を備えている。
【0030】
マスタ装置42には、電力変換装置12との間に、電力変換装置12のUPS(Uninterruptible Power System)12Aを介して供給される制御電源線71と、イーサネット(登録商標)として構成され、制御データのやりとりを行う制御通信線72と、が接続されている。
【0031】
次に小売事業者システム115の構成について説明する。
図4は、小売事業者システムの機能構成説明ブロック図である。
小売事業者システム115は、小売事業者本体システム115Aと、蓄電池充放電制御システム115Bと、を備えている。
【0032】
小売事業者本体システム115Aは、各需要家の契約、需要家自身の需要計画、需要履歴等に基づいて配下にある需要家システム114全体の電力需要予測を行う需要予測部51と、需要予測部51の電力需要予測及び蓄電池システム117に対応する後述の最新の充放電計画に従って配下にある需要家システム114全体の電力需要計画を作成する需要計画作成部52と、電源調達量を計算する電源調達量計算部53と、を備えている。
【0033】
さらに小売事業者本体システム115Aは、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び電源調達量計算部53の計算した電源調達量に基づいて各需要家システム114に対する供給計画を作成する供給計画作成部54と、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び供給計画作成部54が作成した供給計画に基づいて需給配分計画を作成し、計画書を電力広域的運営推進機関に提出するとともに、電力取引市場125に対して入札を行い、約定結果を取得する需給配分計画作成部55と、を備えている。
【0034】
蓄電池充放電制御システム115Bは、小売事業者本体システム115Aの需給配分計画作成部55が作成した需給配分計画に基づいて、所定の収益判断結果に基づいて充放電判断を行う充放電判断部61と、充放電判断部61の充放電判断結果に基づいて未だ充放電計画が作成されていない次回の取引時間帯に対応する充電計画あるいは放電計画を作成するとともに、最新の充放電計画を小売事業者本体システム115Aの需要計画作成部52に出力する充放電計画作成部62と、を備えている。
【0035】
また、蓄電池充放電制御システム115Bは、充放電計画作成部62が作成した充放電計画に基づいて実際の充電指示あるいは放電指示を行うとともに、充電指示あるいは放電時指示に対応する応答を取得し、指示が完了した充電指示あるいは放電指示を、充電あるいは放電の実行前の最新の実施情報として小売事業者本体システム115Aの需要計画作成部52に出力する充放電指示判断部63と、を備えている。
【0036】
さらに蓄電池充放電制御システム115Bは、充放電指示判断部63の充放電指示に従って、配下にある需要家システム114に属する複数の蓄電池システム117(蓄電池群)を制御する蓄電池群制御部64と、蓄電池システム117からSOC、出力電流、出力電圧などの蓄電池情報を取得する蓄電池情報取得部65と、蓄電池情報取得部65が取得した各種蓄電池情報を時系列的に格納(保存)する蓄電池情報データベース(DB)66と、充放電計画作成部62が出力した充放電計画を時系列的に格納(保存)する充放電計画データベース(DB)67と、を備えている。
上記構成において、蓄電池群制御部64あるいは蓄電池情報取得部65と、蓄電池システム117とは、インターネット等の通信ネットワークを介して通信を行っている。
【0037】
ここで、充放電判断部61における収益判断について詳細に説明する。
所定の収益判断結果を得るための収益判断対象としては、例えば、スポット市場差し替え、インバランス精算、1時間前市場差し替え、ネガワット(デマンドレスポンス)等の収益に大きな差が生じる可能性がある事象が挙げられる。
【0038】
また、収益判断を行うタイミングとしては、例えば、スポット市場の取引時間帯、インバランス精算時、当日市場(1時間前市場)の取引時間帯、ネガワット取引時等の収益に大きな差が生じる可能性があるタイミングが挙げられる。
【0039】
以下の説明において、本実施形態においては、3つ(m=3)の充放電計画が立てられるものとし、各充放電計画毎に収益判断結果を得るようにしている。
(1) 実際のスポット市場における電力取引の時間帯を含む日(以下、スポット市場充放電対象日という)の前日の所定時刻に充放電計画を提出するスポット市場向けの第1次充放電計画、
(2) 実際の電力取引の時間帯を含む日の前日から当日の当該電力取引の時間帯の1時間前である一時間前市場ゲートクローズ時刻までに充放電計画を提出する1時間前市場向けの第2次放電計画、
(3) 一時間前市場ゲートクローズ時刻から当該電力取引の時間帯の開始時刻までに充放電計画を作成する第3次充放電計画。
【0040】
上記第1次充放電計画〜第3次充放電計画においては、所定のタイミングで充放電判断部61は、収益判断を行う。
第1次充放電計画時においては、例えば、以下のタイミングで充放電判断部61は、収益判断を行うようにしてもよい。
・スポット市場計画差し替え時(優先順位高)
・インバランス精算時
・1時間前市場計画差し替え時
・ネガワット(デマンドレスポンス)時
【0041】
また、第2次充放電計画時においては、例えば、以下のタイミングで充放電判断部61は、収益判断を行うようにしてもよい。
・インバランス精算時(優先順位高)
・1時間前市場計画差し替え時(優先順位高)
・ネガワット(デマンドレスポンス)時
【0042】
また、第3次充放電計画時においては、例えば、以下のタイミングで充放電判断部61は、収益判断を行うようにしてもよい。
・インバランス精算時(優先順位高)
・ネガワット(デマンドレスポンス)時(優先順位高)
【0043】
さらに、第1次充放電計画の前段階の第0次充放電計画を行う場合には、例えば、以下のタイミングで充放電判断部61は、収益判断を行うようにしてもよい。
・スポット市場計画差し替え時
・インバランス精算時
・1時間前市場計画差し替え時
・ネガワット(デマンドレスポンス)時
【0044】
次に実施形態の具体的な動作について説明する。
以下の説明においては、実際のスポット市場における電力取引の時間帯を含む日(以下、スポット市場充放電対象日という)の前日の所定時刻(例えば、前日9時30分まで)に充放電計画を提出するスポット市場向けの第1次充放電計画、実際の電力取引の時間帯を含む日の前日から当日の当該電力取引の時間帯の1時間前である一時間前市場ゲートクローズ時刻までに充放電計画を提出する1時間前市場向けの第2次放電計画と、一時間前市場ゲートクローズ時刻から当該電力取引の時間帯の開始時刻までに充放電計画を作成する第3次充放電計画の三つ(m=3)の充放電計画があるものとして説明を行う。
【0045】
さらに本実施形態においては、第1次充電計画に先立って充放電計画の確定を抑制するためのマスク取引時間帯を設定する第0時充放電計画が設けられるものとする。
【0046】
図5は、スポット市場充放電対象日の前日の所定時刻までの期間であって、実際の放電計画を立てる前に行われる処理の処理フローチャートである。
また、
図6は、電力取引市場における電力のインバランス予測、電力取引市場価格推測値の一例及び実施形態の充放電計画の説明図である。
【0047】
図6において、インバランス予測は、取引時間帯毎にそれぞれ棒グラフとして示されており、計画値に対する余剰電力量及び不足電力量をイメージ的に表している。
【0048】
従って、概要的には、余剰電力量が多い場合には、電力取引市場125における価格は、需要供給の法則に従い低下する。一方、不足電力量が多い場合には、電力取引市場125における価格は上昇する。
【0049】
すなわち、電力取引市場価格推測値は、需要予測に基づく、電力取引市場価格を推定したものである。
ところで、事前計画段階においては、電力市場価格の変動がより大きいと推測される時間帯、より具体的には、
図6の例の場合、
図6(c)に示すように時刻t11〜時刻t12で示される取引時間帯にマスクMSK1を設定し、時刻t13〜時刻t14で示される取引時間帯にマスクMSK2を設定し、時刻t15〜時刻t6で示される取引時間帯にマスクMSK3を設定する。
【0050】
この場合において、マスクMSK1〜MSK3は、時系列的に設定された複数段階の充放電計画段階のうち、所定の条件を満たすまで、充放電計画の割り当てを禁止する時間帯を示すマスク時間帯に相当している。
【0051】
また、各マスクMSK1〜MSK3には各取引時間帯、かつ、制御種別(充電/放電)により後述のしきい値価格が設定されている。
【0052】
ここで、マスクMSK1〜MSK3を設定する理由は、実際の取引時間帯に対してより近い時間帯で取引価格を予測する方がより正確に電力取引市場125における価格を推測でき、より収益を得ることができる可能性が高いので、取引価格の入札を先送りするためである。
【0053】
図7は、マスクデータの一例の説明図である。
マスクデータ130は、マスク時間帯を特定するための時間帯IDを格納した時間帯IDデータ131と、当該時間帯に充電を行うのか、放電を行うのかを特定するための制御モードデータ132と、しきい値価格を格納したしきい値価格データ133と、を備えている。
ここで、時間帯IDとは、例えば、1日(0:00〜翌日0:00)を30分毎の48個の時間帯に区分した場合には、0:00〜0:30[時間帯ID=1]、0:31〜1:00[時間帯ID=2]、…、23:00〜23:30[時間帯ID=47]、23:31〜翌日0:00[時間帯ID=48]のように設定されている。
ここで、時間帯IDは、上記例の場合に限らず、適宜設定することが可能であるが、以下の説明においては、上述した30分毎の48個の時間帯に区分した場合を例として説明する。
【0054】
図7の例の場合、時間帯ID=25に相当する時間帯である12:00〜12:30の時間帯は、制御モード=充電であり、そのしきい値価格は23円となっている。
同様に時間帯ID=26に相当する時間帯である12:30〜13:00の時間帯は、制御モード=放電であり、そのしきい値価格は26円となっている。
なお、制御モードの設定は、一例であり、制御モードを充電あるいは放電のいずれかに設定済みの時間帯に対して、当該時間帯に連続する時間帯に対して、連続して、充電→充電など矛盾が生じないように設定されるものである。
【0055】
そして、設定された制御種別(制御モード)が充電である場合には、対応する充放電計画段階における電力市場推測価格が充電時のしきい値価格以下であれば充電計画設定を確定する。
また、設定された制御種別(制御モード)が放電である場合には、放電時のしきい値価格以上であれば放電計画設定を確定する。
【0056】
逆に設定された制御種別(制御モード)が充電であって、対応する充放電計画段階における電力市場推測価格が充電時のしきい値価格超過の場合、あるいは、設定された制御種別(制御モード)が放電であって、放電時のしきい値価格未満の場合は、マスクはそのまま維持される。すなわち、マスクが充放電対象時刻に至った場合には、当該マスクに対応する時間帯は、充電及び放電のいずれも行われることはない。
【0057】
以上の説明では、マスク処理時間帯を除く時間帯においては、既に制御種別(制御モード)が定まっているものとして、処理の容易のため、マスクデータ130に制御モードデータ132を含める構成としていた。しかしながら、実際にマスク時間帯の処理を行うマスク処理時に制御モードを充電あるいは放電のいずれかに設定済みの時間帯に対して、当該時間帯に連続する時間帯に対して、連続して、充電→充電などの設定がなされて矛盾が生じないようにするのであれば、制御モードデータ132を設けない構成とすることも可能である。
【0058】
次により詳細に説明する。
[第0次充放電計画]
ここで、再び
図5を参照して説明を行うものとする。
図5に示したように、小売事業者システム115の小売事業者本体システム115Aの需要予測部51は、需要家の契約、需要家自身の需要計画、需要履歴等に基づいて配下にある需要家システム114全体の電力需要予測を行う。これにより需要計画作成部52は、需要予測部51の電力需要予測に従って配下にある需要家システム114全体の電力需要計画を作成する(ステップS11)。
【0059】
この電力需要計画の作成と並行して、電源調達量計算部53は、電源調達量を計算し、供給計画作成部54は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び電源調達量計算部53の計算した電源調達量に基づいて各需要家システム114に対する供給計画を作成して、相対調達量を確認する(ステップS12)。
【0060】
ステップS11及びステップS12の処理の結果、需給配分計画作成部55は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び供給計画作成部54が作成した供給計画に基づいて需給配分計画を作成し、暫定充放電計画を立案する(ステップS13)。
【0061】
続いて需給配分計画作成部55は、配分計画を織り込んで(ステップS14)、暫定充放電指示(第0次充放電計画)を作成し、蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知する(ステップS15)。
【0062】
この結果、
図6(c)に示したように、第0次充放電計画では、時刻t11〜時刻t12で示される取引時間帯にマスクMSK1が設定され、時刻t13〜時刻t14で示される取引時間帯にマスクMSK2が設定され、時刻t15〜時刻t6で示される取引時間帯にマスクMSK3が設定され、蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知されることとなる。
【0063】
これにより、蓄電池充放電制御システム115Bは、暫定充放電指示(第0次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS16)。
【0064】
[第1次充放電計画]
図8は、充放電のスポット市場充放電対象日の前日の所定時刻までに、実際の充放電計画を立てる場合に行われる処理の処理フローチャートである。
小売事業者システム115の小売事業者本体システム115Aの需要予測部51は、実際の放電計画を立てる時点における需要家の契約、需要家自身の需要計画、需要履歴等に基づいて、配下にある需要家システム114全体の充放電の実施対象日における電力需要予測を行う。これにより需要計画作成部52は、需要予測部51の電力需要予測に従って配下にある需要家システム114全体の電力需要計画を作成する(ステップS21)。
【0065】
この電力需要計画の作成と並行して、電源調達量計算部53は、電源調達量を計算し、供給計画作成部54は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び電源調達量計算部53の計算した電源調達量に基づいて各需要家システム114に対する供給計画を作成して、相対調達量を確認する(ステップS22)。
【0066】
ステップS21及びステップS22の処理の結果、需給配分計画作成部55は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び供給計画作成部54が作成した供給計画に基づいて需給配分計画を作成し、第1次充放電計画を立案する(ステップS23)。
続いて需給配分計画作成部55は、ステップS15で送信した暫定充放電指示において、第1次充放電計画と同じタイミングで判断が必要なマスク時間帯については、ステップS15で送信した暫定充放電指示を確定し、第0次充放電計画とする(ステップS24)。
【0067】
したがって、需給配分計画作成部55は、第1次充放電計画と同じタイミングで判断が必要ではないマスク時間帯については、第2次充放電計画以降に確定判断を行い、必要に応じて確定がなされることとなる。
【0068】
続いて需給配分計画作成部55は、第1次充放電計画に対応する充放電に関し、スポット市場に入札を行う(ステップS25)。
ここで、スポット市場とは、発電事業者121と小売事業者123の入札を1日単位で全てまとめて突き合わせを行い、需要供給の関係で価格と量を均衡させるために、電力取引市場に設けられた一日前市場のことである。そして、発電事業者121及び小売事業者123は、必要に応じて電力取引市場125において入札を行うこととなる。
【0069】
次に需給配分計画作成部55は、ステップS23で作成した需給配分計画の計画書を電力広域的運営推進機関に提出する(ステップS26)。
この場合において、ステップS23で作成した需給配分計画の計画書の作成後にスポット市場で入札して約定できた充放電計画がある場合には、それらを反映させた後の需給配分計画の計画書を電力広域的運営推進機関に提出することとなる。
さらに需給配分計画作成部55は、配分計画を織り込んで(ステップS27)、第1次充放電指示(第1次充放電計画)を作成し、蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知する(ステップS28)。
【0070】
ここで、第1次充放電計画について、より具体的に説明する。
図6(d)に示すように、マスクMSK1に対応するマスク時間帯(t11〜t12)よりも前の時間帯には、充電計画C11および放電計画D11が第1次充放電指示(第1次充放電計画)として設定される。
また、マスクMSK1に対応する時間帯t11〜t12は、マスクデータ130において対応する時間帯t11〜t12のしきい値価格データ133に基づく判別の結果、何も行わないこととされたので、そのままの状態となっている。
【0071】
マスクMSK1に対応するマスク時間帯(t11〜t12)と、マスクMSK2に対応するマスク時間帯(t13〜t14)との間の時間帯には、充電計画C12〜C14および放電計画D12〜D14が第1次充放電指示(第1次充放電計画)として設定される。
【0072】
また、マスクMSK2に対応する時間帯t13〜t14は、マスクデータ130において対応する時間帯t13〜t14のしきい値価格データ133に基づく判別の結果、充電及び放電を行う方が、インバランス収益が高くなると予測されたので、マスクMSK2は、解除され、充電計画C15および放電計画D15が第1次充放電指示(第1次充放電計画)として設定される。
【0073】
マスクMSK2に対応するマスク時間帯(t13〜t14)と、マスクMSK3に対応するマスク時間帯t15〜t16との間の時間帯には、充電計画C16および放電計画D16が第1次充放電指示(第1次充放電計画)として設定される。
【0074】
また、マスクMSK3に対応する時間帯t15〜t16は、マスクデータ130において対応する時間帯t15〜t16のしきい値価格データ133に基づく判別の結果、マスクMSK1の時間帯と同様に何も行わないこととされたので、そのままの状態となっている。
さらにマスクMSK3に対応するマスク時間帯(t15〜t16)以後の時間帯には、充電計画C17および放電計画D17が第1次充放電指示(第1次充放電計画)として設定される。
【0075】
以上のように、小売事業者本体システム115Aにより第1次充放電計画が作成され、送信されると、蓄電池充放電制御システム115Bは、第1次充放電指示(第1次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS29)。
【0076】
続いて需給配分計画作成部55は、ステップS15で送信した暫定充放電指示において、第1次充放電計画と同じタイミングで判断が必要なマスク時間帯については、ステップS15で送信した暫定充放電指示を確定し、第0次充放電計画として蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知する(ステップS30)。
【0077】
したがって、需給配分計画作成部55は、第1次充放電計画と同じタイミングで判断が必要ではないマスク時間帯については、第2次充放電計画以降に確定判断を行い、必要に応じて確定がなされることとなる。
【0078】
図6(d)の例の場合には、第0次充放電計画で設定されたマスクMSK1〜MSK3のうち、マスクMSK1及びマスクMSK3は未だ有効な部分として残っているので、これを再び暫定充放電指示(第0次充放電計画)として蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知することとなる。
これにより、蓄電池充放電制御システム115Bは、新たな暫定充放電指示(第0次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS31)。
【0079】
続いて、蓄電池充放電制御システム115Bの充放電判断部61は、蓄電池情報取得部65を介して蓄電池システム117から取得したSOC、出力電流、出力電圧などの蓄電池情報及び小売事業者本体システム115Aの需給配分計画作成部55が作成した需給配分計画に基づいて、当日市場(1時間前市場)の取引時間帯毎に充放電判断を行う(ステップS32)。
【0080】
この結果、充放電計画作成部62は、充放電判断部61の充放電判断結果に基づいて未だ充放電計画が作成されていない次回の取引時間帯に対応する第1次充放電計画を作成するとともに、第1次充放電計画を充放電計画情報として充放電指示判断部63及び小売事業者本体システム115Aの需要計画作成部52に出力する。
【0081】
充放電指示判断部63は、充放電計画作成部62が作成した第1次充放電計画に対応する実際の充電指示あるいは放電指示である第1次充放電指示を蓄電池群制御部64を介して蓄電池システム117に送信する(ステップS33)。
これにより蓄電池システム117は、送信された第1次充放電指示を受信して記憶する(ステップS34)。
【0082】
続いて充放電指示判断部63は、充放電計画作成部62が作成した送信対象の暫定充放電指示(第0次充放電計画)がある場合には、蓄電池群制御部64を介して蓄電池システム117に送信する(ステップS35)。
これにより蓄電池システム117は、送信された暫定充放電指示(第0次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS36)。
【0083】
[第2次充放電計画]
図9は、充放電の実施対象日の前日〜当日の充放電実施時間帯の一時間前までの期間であって、第2次充放電計画を立てる場合に行われる処理の処理フローチャートである。
小売事業者システム115の小売事業者本体システム115Aの需要予測部51は、第2次充放電計画を立てる時点における需要家の契約、需要家自身の需要計画、需要履歴等に基づいて、配下にある需要家システム114全体の充放電の実施対象日における電力需要予測を行う。これにより需要計画作成部52は、需要予測部51の電力需要予測に従って配下にある需要家システム114全体の電力需要計画を作成する(ステップS41)。
【0084】
この電力需要計画の作成と並行して、電源調達量計算部53は、電源調達量を計算し、供給計画作成部54は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び電源調達量計算部53の計算した電源調達量に基づいて各需要家システム114に対する供給計画を作成して、相対調達量を確認する(ステップS42)。
【0085】
ステップS41及びステップS42の処理の結果、需給配分計画作成部55は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び供給計画作成部54が作成した供給計画に基づいて需給配分計画を作成し、第2次充放電計画を立案する(ステップS43)。
続いて需給配分計画作成部55は、ステップS15で送信した暫定充放電指示において、第2次充放電計画と同じタイミングで判断が必要なマスク時間帯については、ステップS15で送信した暫定充放電指示を確定し、第0次充放電計画とする(ステップS44)。
【0086】
したがって、需給配分計画作成部55は、第2次充放電計画と同じタイミングで判断が必要ではないマスク時間帯については、第3次充放電計画以降に確定判断を行い、必要に応じて確定がなされることとなる。
【0087】
続いて需給配分計画作成部55は、第2次充放電計画に対応する充放電に関し、1時間前市場(当日市場)に入札を行う(ステップS45)。
ここで、1時間前市場(当日市場)について説明する。
実際の電力の需要供給の関係は、固定的なものではなく、発電設備の故障等による電力供給の変動や、気温の変動などによる電力需要の変動などが生じる。
そこで、この需要供給関係の変動を吸収し、調整するための場として、一日を電力の計量単位(毎時0分〜30分、30分〜60分)で分割した48個の取引時間帯でそれぞれ個別に需要供給の関係で価格と量を均衡させるザラ場取引を行う1時間前市場(当日市場)が設けられている。
【0088】
小売事業者123は、発電事業者121から電力を調達し、需要家124の需要家設備113あるいは需要家124側に設置した蓄電池システム117に電力を供給する。そして小売事業者123は、発電事業者121からの調達電力に余裕がある場合には、一日前市場または1時間前市場(当日市場)を利用して電力取引市場125に対して電力の売却の入札を行い、売却取引が成立した場合には、電力取引市場125を介して買電者に対して電力を売却する。また、小売事業者123は、発電事業者121からの調達電力に不足がある場合には、一日前市場または1時間前市場(当日市場)を利用して電力取引市場125に対して電力の買い取りの入札を行い、買取取引が成立した場合には、電力取引市場125を介して売電者から電力を買い取り、需要家124に供給する。
【0089】
次に需給配分計画作成部55は、ステップS43で作成した需給配分計画の計画書を電力広域的運営推進機関に提出する(ステップS46)。
さらに需給配分計画作成部55は、配分計画を織り込んで(ステップ47)、第2次充放電指示(第2次充放電計画)を作成し、蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知する(ステップS48)。
【0090】
ここで、第2次充放電計画について、より具体的に説明する。
図6(e)に示すように、マスクMSK1に対応するマスク時間帯(t11〜t12)よりも前の時間帯は、第1次充放電計画に変更はないので、充電計画C11および放電計画D11が第2次充放電指示(第2次充放電計画)としてそのまま設定される。
また、マスクMSK1に対応する時間帯t11〜t12は、マスクデータ130において対応する時間帯t11〜t12のしきい値価格データ133に基づく判別の結果、何も行わないこととされたので、第2次充放電計画においても、再びそのままの状態となっている。
【0091】
マスクMSK1に対応するマスク時間帯(t11〜t12)と、マスクMSK3に対応するマスク時間帯(t15〜t16)との間の時間帯には、第1充放電計画として設定された充電計画C12〜C14および放電計画D12〜D14に加えて、放電計画D21及び充電計画C21が第2次充放電指示(第2次充放電計画)として設定される。
【0092】
また、マスクMSK3に対応する時間帯t15〜t16は、マスクデータ130において対応する時間帯t15〜t16のしきい値価格データ133に基づく判別の結果、充電及び放電を行う方が、インバランス精算による収益が高くなると予測されたので、マスクMSK3は、解除され、充電計画C22および放電計画D22が第2次充放電指示(第2次充放電計画)として新たに設定される。
さらにマスクMSK3に対応するマスク時間帯(t15〜t16)以後の時間帯は、第1次充放電計画において設定された充電計画C17および放電計画D17がそのまま第2次充放電指示(第2次充放電計画)として設定される。
【0093】
以上のように、小売事業者本体システム115Aにより第2次充放電計画が作成され、送信されると、蓄電池充放電制御システム115Bは、第2次充放電指示(第2次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS49)。
【0094】
続いて需給配分計画作成部55は、ステップS15で送信した暫定充放電指示において、第2次充放電計画と同じタイミングで判断が必要なマスク時間帯については、ステップS15で送信した暫定充放電指示を確定し、第0次充放電計画とする(ステップS50)。
したがって、需給配分計画作成部55は、第2次充放電計画と同じタイミングで判断が必要ではないマスク時間帯、すなわち、未だマスクとして有効なマスク時間帯については、第2次充放電計画以降に確定判断を行い、必要に応じて確定がなされることとなる。
【0095】
図6(e)の例の場合には、第0次充放電計画で設定されたマスクMSK1〜MSK3のうち、マスクMSK1は未だ有効な部分として残っているので、これを再び暫定充放電指示(第0次充放電計画)として蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知することとなる。
【0096】
これにより、蓄電池充放電制御システム115Bは、新たな暫定充放電指示(第0次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS51)。
【0097】
続いて、蓄電池充放電制御システム115Bの充放電判断部61は、蓄電池情報取得部65を介して蓄電池システム117から取得したSOC、出力電流、出力電圧などの蓄電池情報及び小売事業者本体システム115Aの需給配分計画作成部55が作成した需給配分計画に基づいて、当日市場(1時間前市場)の取引時間帯毎に充放電判断を行う(ステップS52)。
【0098】
この結果、充放電計画作成部62は、充放電判断部61の充放電判断結果に基づいて未だ充放電計画が作成されていない次回の取引時間帯に対応する第2次充放電計画を作成するとともに、第2次充放電計画を充放電計画情報として充放電指示判断部63及び小売事業者本体システム115Aの需要計画作成部52に出力する。
【0099】
充放電指示判断部63は、充放電計画作成部62が作成した第2次充放電計画に対応する実際の充電指示あるいは放電指示である第2次充放電指示を蓄電池群制御部64を介して蓄電池システム117に送信する(ステップS53)。
これにより蓄電池システム117は、送信された第2次充放電指示を受信して記憶する(ステップS54)。
【0100】
続いて充放電指示判断部63は、充放電計画作成部62が作成した送信対象の暫定充放電指示(第0次充放電計画)がある場合には、蓄電池群制御部64を介して蓄電池システム117に送信する(ステップS55)。
これにより蓄電池システム117は、送信された暫定充放電指示(第0次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS56)。
【0101】
[第3次充放電計画]
図10は、充放電の実施対象日の充放電実施時間帯に対応する1時間前市場のゲートクローズ後から当該充放電実施時間帯の開始までの期間であって、第3次充放電計画を立てる場合に行われる処理の処理フローチャートである。
小売事業者システム115の小売事業者本体システム115Aの需要予測部51は、第3次充放電計画を立てる時点における需要家の契約、需要家自身の需要計画、需要履歴等に基づいて、配下にある需要家システム114全体の充放電の実施対象日における当該時点で実際に充放電が既になされた時間帯以外の全ての時間帯について電力需要予測を行う。これにより需要計画作成部は、需要予測部51の電力需要予測に従って配下にある需要家システム114全体の当該時点で実際に充放電が既になされた時間帯以外の全ての時間帯についての電力需要計画を(再)作成する(ステップS61)。
【0102】
この電力需要計画の作成と並行して、電源調達量計算部53は、電源調達量を計算し、供給計画作成部54は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び電源調達量計算部53の計算した電源調達量に基づいて各需要家システム114に対する供給計画を作成して、相対調達量を確認する(ステップS62)。
【0103】
ステップS61及びステップS62の処理の結果、需給配分計画作成部55は、需要計画作成部52が作成した電力需要計画及び供給計画作成部54が作成した供給計画に基づいて需給配分計画を作成し、第3次充放電計画を立案する(ステップS63)。
【0104】
ここで、第3次充放電計画について、より具体的に説明する。
図6(f)に示すように、マスクMSK1に対応するマスク時間帯(t11〜t12)よりも前の時間帯は、第1次充放電計画に変更はないので、充電計画C11および放電計画D11が第3次充放電指示(第3次充放電計画)としてそのまま設定される。
【0105】
また、マスクMSK1に対応する時間帯t11〜t12は、マスクデータ130において対応する時間帯t11〜t12のしきい値価格データ133に基づく判別の結果、何も行わないこととされたので、第3次充放電計画においても、再びそのままの状態となっている。
【0106】
マスクMSK1に対応するマスク時間帯(t11〜t12)以降の時間帯においては、新たに充放電計画を立てるに際しては、既に計画を提出している充電計画C12〜C13、放電計画D12〜D13について再検討した結果、放電計画D31〜D32および充電計画C31〜C32に変更した方が、インバランス精算による収益が高くなると予測されたので、これらの変更を含めた第3次充放電指示(第3次充放電計画)として新たに設定される。
【0107】
さらに需給配分計画作成部55は、配分計画を織り込んで(ステップ64)、第3次充放電指示(第3次充放電計画)を作成し、蓄電池充放電制御システム115Bに送信して通知する(ステップS65)。
【0108】
これにより、蓄電池充放電制御システム115Bは、第3次充放電指示(第3次充放電計画)を受信して記憶する(ステップS66)。
【0109】
続いて、蓄電池充放電制御システム115Bの充放電判断部61は、蓄電池情報取得部65を介して蓄電池システム117から取得したSOC、出力電流、出力電圧などの蓄電池情報及び小売事業者本体システム115Aの需給配分計画作成部55が作成した需給配分計画に基づいて、当該時点で実際に充放電が既になされた時間帯以外の全ての時間帯のそれぞれについて充放電判断を行う(ステップS67)。
【0110】
この結果、充放電計画作成部62は、充放電判断部61の充放電判断結果に基づいて当該時点で実際に充放電が既になされた時間帯以外の全ての時間帯に対応する第3次充放電計画を作成するとともに、第3次充放電計画を充放電計画情報として充放電指示判断部63及び小売事業者本体システム115Aの需要計画作成部52に出力する。
【0111】
充放電指示判断部63は、充放電計画作成部62が作成した第3次充放電計画に対応する実際の充電指示あるいは放電指示である第3次充放電指示を蓄電池群制御部64を介して蓄電池システム117に送信する(ステップS68)。
これにより蓄電池システム117は、送信された第3次充放電指示を受信して記憶する(ステップS69)。
【0112】
図11は、充放電対象時間帯の経過後の処理フローチャートである。
小売事業者本体システム115Aは、充放電対象時間帯が経過すると、暫定的に充放電効果実績を精算する(ステップS71)。
そして、実際の充放電処理から所定の時間の経過後(現状では、およそ2ヶ月後)、インバランス精算結果を受信すると(ステップS72)、充放電効果実績を精算し確定する(ステップS73)。
【0113】
以上の説明のように、本実施形態によれば、電力取引システム100において、充放電計画と充放電実績とが一致せず、不足インバランスあるいは過剰インバランスが発生することにより市場価格に連動したインバランス料金が発生する場合でも、より需要予測精度が高くなる時間帯で充放電計画をより好適な充放電計画へと修正できる。
【0114】
したがって、小売事業者123等が自己のシステムの運用を行うに際してより精度の高い充放電制御が行なえ、不足インバランス及び過剰インバランスを相殺して、より一層の収益性を向上させることが可能となる。
【0115】
ここで、実施形態の変形例について説明する。
まず、以上の説明で用いていたマスクと充電計画及び放電計画について説明する。
図12は、実施形態のマスク設定の基本的な説明図である。
以上の説明においては、
図7に示したようなマスクデータ130を用いていたため、マスクMSKの設定を行う場合には、充電計画においては、充電量(充電可能容量)を100%マスクし、放電計画においては、放電量(放電可能容量)を100%マスクするものとなっていた。
【0116】
図13は、変形例のマスクデータの説明図である。
図13において、
図7と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
マスクデータ140は、マスク時間帯を特定するための時間帯IDを格納した時間帯IDデータ131と、当該時間帯に充電を行うのか、放電を行うのかを特定するための制御モードデータ132と、しきい値価格を格納したしきい値価格データ133と、マスク対象の充電容量あるいは放電容量を制限するためのマスクレベルデータ141と、を備えている。
【0117】
図14は、実施形態の変形例のマスク設定の基本的な説明図である。
図14に示すように、
図13に示したマスクデータ140のマスクレベルデータ141を用いることにより、マスクMSKXの設定を行う場合には、充電計画においては、充電量(充電可能容量)のうち任意の容量(
図14の例では、80%)をマスクし、放電計画においても、放電量(放電可能容量)のうち任意の容量(
図15の例では、50%)をマスクすることができ、所望の容量をインバランス収益を考慮した運用に用いることができ、より一層システムを柔軟に運営することができる。
【0118】
以上の説明においては、小売事業者123が運用する小売事業者システム115が、小売事業者本体システム115Aと、蓄電池充放電制御システム115Bと、を備えている構成を採っていたが、蓄電池充放電制御システム115Bを独立させてアグリゲータ事業者が運用するアグリゲータシステムとして機能するように構成することも可能である。
【0119】
本実施形態の充放電計画装置は、MPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶装置等を備えた通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0120】
本実施形態の充放電計画装置(具体的には、蓄電池充放電制御システム115B)で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるようにしてもよい。
【0121】
また、本実施形態の充放電計画装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の蓄電池制御システムで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0122】
また、本実施形態の充放電計画装置のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。