特許第6783644号(P6783644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783644
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】異物検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20201102BHJP
   G01N 21/3581 20140101ALI20201102BHJP
【FI】
   G01N21/89 Z
   G01N21/3581
   G01N21/89 H
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-239997(P2016-239997)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-96766(P2018-96766A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸修
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−066341(JP,A)
【文献】 特開2010−112803(JP,A)
【文献】 特開2006−349501(JP,A)
【文献】 特開平05−296937(JP,A)
【文献】 米国特許第05696589(US,A)
【文献】 特開平06−294750(JP,A)
【文献】 特開平10−206339(JP,A)
【文献】 特開2016−024042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17−21/61
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の中の異物または欠陥を検出する異物検査装置であって、
前記検査装置を制御する制御部と、
前記対象物に照射する光を発生する照射部と、
前記照射部から出射される光を集光する第一の対物レンズと、
前記対象物表面からの反射光を受光する第一の受光部と、
前記対象物からの透過光を受光する第二の受光部と、
前記第一の受光部で受光した反射光から前記対象物の表面位置と前記第一の対物レンズ位置との相対位置決め信号を生成する信号生成部と、を備え、
前記相対位置決め信号に基づき、前記制御部は前記第一の対物レンズの位置を制御し、
前記第二の受光部で受光した透過光に基づき、前記制御部は異物または欠陥を検出し
前記第二の受光部は、前記対象物を透過した透過光を受光する2つ以上のセンサから構成され、
前記第二の受光部の互いに隣り合うセンサは互いに受光偏光角が異なる配置とする、
ことを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異物検査装置であって、
前記相対位置決め信号に対して第一のしきい値が設定されており、
前記制御部は、前記相対位置決め信号の振幅値と前記第一のしきい値と比較することを特徴とする異物検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異物検査装置であって、
前記相対位置決め信号の振幅値が前記第一のしきい値以上の場合、前記制御部は、前記第一の対物レンズの位置を保持するよう制御することを特徴とする異物検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載の異物検査装置であって、
前記第二の受光部で透過光として受光し検出した信号に対して第二のしきい値が設定されており、
前記制御部は、前記第二の受光部で検出した信号の振幅値と前記第二のしきい値を比較することで異物の有無を判断することを特徴とする異物検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の異物検査装置であって、
前記照射部から出射される光の収束と発散を制御するリレーレンズと、を備え、
前記制御部は前記リレーレンズの位置を制御することを特徴とする異物検査装置。
【請求項6】
請求項2に記載の異物検査装置であって、
前記第一の対物レンズを駆動する第一の駆動部と、
前記対象物を透過した透過光を平行光にする第二の対物レンズと
前記第二の対物レンズを駆動する第二の駆動部と、
前記第一の駆動部および前記第二の駆動部の基準電圧を決める基準電圧生成部と、を備え、
前記相対位置決め信号が前記第一のしきい値より小さい場合、前記基準電圧生成部で生成した電圧に基づき、前記制御部は前記第一の対物レンズの位置及び前記第二の対物レンズの位置を制御することを特徴とする異物検査装置。
【請求項7】
請求項に記載の異物検査装置であって、
前記第二の受光部で円偏光の前記透過光を受光することを特徴とする異物検査装置。
【請求項8】
請求項6に記載の検査装置であって、
前記対象物表面からの反射光を平行光にする第三の対物レンズと、を備え、
前記相対位置決め信号に基づき、前記制御部は前記第三の対物レンズの位置を制御することを特徴とする異物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
約30GHz〜10THzの波長帯の電磁波は、ミリ波、テラヘルツ波、または、包含してマイクロ波と呼ばれている。本波長帯は、可視光などの高い周波数帯の電磁波と比べて布、紙、プラスティックなどの物質に対する透過性において優れている。又、低い周波数帯の電磁波と比べて光の性質を比較的強く示す波長帯であるため、電磁波を光学的に制御し易い特徴がある。これらの特徴を生かして、ミリ波、テラヘルツ波を検査対象に合わせて照射し、その透過波あるいは反射波を観測することで、検査対象内部の欠陥検査や、異物混入検査などを、非接触非破壊で実施する一つの方式として着目を浴びている。
検査対象物がベルトコンベア等で搬送される場合、振動等による焦点距離の変動を考慮するとビームウェストを広くする必要があるため、高分解能を得ることが難しい。そこで、対象物と焦点の関係を補償するように焦点距離を調整することで、ビームウェストを狭くし焦点を絞ることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2012/108306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、テラヘルツ波の反射波を利用して金属の腐食を防ぐための塗膜や半導体ウェーハのエピ層等の積層物中の欠陥(気泡)検査を行う際に測定対象物の位置合わせを容易に行えるテラヘルツ波を用いた検査装置及び検査方法が開示されている。
上記特許文献1によると「状態検出部(レーザ光源とレンズとナイフエッジと受光部と)を備えることにより、測定対象物の位置と角度とが所定の状態にあるか否かを検出することができるので、測定対象物の位置合わせを容易に行うことができ、気泡の有無の判別を正確に行うことができる。」と記載されている。
特許文献1よると、反射光をつかってオートフォーカスを行い異物を検出することが記載されている。しかし特許文献1の技術は、測定対象物表面に傷もしくは文字があった時でも異物として検出してしまうため、誤検出のおそれがある。
【0005】
そこで本発明の目的は、測定対象物表面に傷もしくは文字がある場合でも、異物の検出精度を上げることが可能な検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は対象物の中の異物または欠陥を検出する異物検査装置であって、前記検査装置を制御する制御部と、前記対象物に照射する光を発生する照射部と、前記照射部から出射される光を集光する第一の対物レンズと、前記対象物表面からの反射光を受光する第一
の受光部と、前記対象物からの透過光を受光する第二の受光部と、前記第一の受光部で受光した反射光から前記対象物の表面位置と前記第一の対物レンズ位置との相対位置決め信号を生成する信号生成部と、を備え、前記相対位置決め信号に基づき、前記制御部は、前記第一の対物レンズの位置を制御し、前記第二の受光部で受光した透過光に基づき、前記制御部は異物または欠陥を検出し、前記第二の受光部は、前記対象物を透過した透過光を受光する2つ以上のセンサから構成され、前記第二の受光部の互いに隣り合うセンサは互いに受光偏光角が異なる配置とすることを特徴とする異物検査装置により解決される。

【発明の効果】
【0007】
本発明によれば測定対象物の異物検出を全面で可能にし、検査装置の信頼性の向上を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る異物検査装置を示す構成図
図2】実施例1に係るデフォーカス信号の生成方法を表す概略図(a)位置ずれとビーム形状の関係(b)検査対象物に近づく方向にフォーカスずれした時のビーム形状(c)ジャストフォーカス時のビーム形状と演算回路(d)検査対象物に遠ざかる方向にフォーカスずれした時のビーム形状(e)フォーカス方向の位置とデフォーカス信号との関係
図3】実施例1に係るサーボ信号生成回路の構成図
図4】実施例1に係る検出器の受光部の構成図(a)入射波と反射波の伝播図(b)検出器の受光部の構成
図5】実施例1に係る異物検査装置の動作概要を示す(a)フローチャート(b)検査対象物側面図、(c)FODの波形、(d)FEの波形、(e)異物検出信号の波形、(f)異物検出フラグ
図6】実施例1に係る異物検査装置の動作概要を示す(a)フローチャート(b)検査対象物側面図、(c)FODの波形、(d)FEの波形、(e)異物検出信号の波形、(f)異物検出フラグ、(g)フラグによる異物検出信号波形
図7】実施例1に係る検出器の受光部の構成図(a)入射波と反射波の伝播図(b)検出器の受光部の構成
図8】実施例2に係る異物検査装置の構成図
図9】実施例2に係る光学ユニット部と検出器の受光部の構成図(a)入射波と反射波の伝播図(b)検出器の受光部の構成
図10】実施例2に係る光学ユニット部の構成図
図11】実施例3に係る異物検査装置の構成図
図12】実施例3に係るリレーレンズ位置と集光位置の関係図(a)入射波を略集束にした場合の集光位置変化(b)入射波を略発散にした場合の集光位置変化
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図を用いて説明する。また、ここで説明する構成は実施形態の一例を示すものであり、この実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明に従う異物検査装置の一実施例を示すブロック構成図である。なおここで言う異物とは単なる異物に限定されず、空隙といった欠陥等も含まれる。
異物検査装置はベルトコンベア等の搬送装置により検査測定対象物101は1001の矢印の方向に移動しながら、光発信部1201から出射された光ビームが照射され、検査測定対象物101を透過した光ビームの強度から異物の有無を検出し、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)などのインターフェースを通じてPC(Personal Computer)などのホスト200と通信を行う。
図1の異物検査装置は、光学ユニット部102と、信号処理部103と、サーボエラー信号生成回路105と、信号処理回路106と、アクチュエータ駆動回路109で構成され、検査測定対象物101は例えばベルトコンベア等の搬送装置により1001の矢印の方向に移動する。光発信部1201が発する電磁波の周波数は、例えば、非水素結合物質を透過する周波数であって、カーボン成分、有機溶媒成分に吸収され易い周波数、例えば0.1THzから3.0THzのテラヘルツ波である。テラヘルツ波は半導体、セラミック、紙等に対してはある程度透過し、水に対しては吸収し、金属に対しては反射する特性を持つ。
信号処理部103は異物検査装置の各種の信号処理を行う回路であり、電位Vrefを基準として動作する。この信号処理部103は、システム制御回路104と、フォーカス制御回路107と、スイッチ1216と、加算器1215と、フォーカス駆動電圧生成回路108で構成される。
【0011】
光学ユニット部102の光量制御回路1218は、システム制御回路104によって制御されており、光発信部1201を駆動する電圧を出力する。光発信部1201は、駆動電圧に応じた周波数の光ビームを出射する。出射された光ビームはコリメータレンズ1202にて平行光となり、ビームスプリッタ1203で一部が反射し、集光レンズ1204によってパワーモニタ1205に集光する。パワーモニタ1205は、光ビームの強度に応じた電流または電圧をシステム制御回路104にフィードバックする。これによって検査測定対象物101に集光する光ビームの強度が、たとえば50mWなど所望の値に保持される。一方、ビームスプリッタ1203を透過した光ビームは、偏光ビームスプリッタ1206で反射される。この反射された光ビームは、1/4波長板1209にて円偏光となり、対物レンズ1210によって検査測定対象物101の所望の位置に集光する。アクチュエータ駆動回路109の駆動量に応じて対物レンズ1210の位置をアクチュエータ110で制御する。検査測定対象物101の表面で反射した集光ビームは、1/4波長板1209にて直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ1206を透過し、シリンドリカル1207によって集光された光ビームを検出器1208で検出し、この信号をサーボエラー信号生成回路105に対して出力する。
【0012】
次に、検査測定対象物101を透過した光ビームは対物レンズ1211、集光レンズ1213を経て検出器1214で光ビームの強度を検出し、これに応じた信号を信号処理回路106に対して出力する。アクチュエータ駆動回路109の駆動量に応じて対物レンズ1211の位置をアクチュエータ111で制御する。ここで、光学ユニット部102を構成する対物レンズ1210と対物レンズ1211の相対位置関係を維持するために、アクチュエータ駆動回路109からアクチュエータ110とアクチュエータ111に対する制御信号は同期した信号とする。
【0013】
信号処理回路106では、検出器1214で検出した信号に対してノイズ除去、増幅などの処理を行い、検出器1214で検出された信号をシステム制御回路104に出力する。この信号に対してシステム制御回路104で信号振幅に対して所定のしきい値(たとえば、異物がない場合に対して、振幅変化が20%変化)を設定し、この閾値に基づき異物の有無を判断する。あるいはテラヘルツ波の特徴である指紋スペクトルによる物質特有の波形カーブにより異物の有無を判断する。この結果をホスト200に出力する。
【0014】
図2は、検出器1208が4分割の受光部で構成された例を示す。検出器1208が受けた検査測定対象物101の表面で反射した光ビームから焦点ずれ量(デフォーカス)に相当する信号(図1のサーボエラー信号生成回路105の出力するFEに相当)の生成方法を表す概略図である。図2(a)は検査測定対象物101の表面がフォーカス方向に位置ずれした場合にシリンドリカルレンズ1207で集光されたビーム形状2201の変化を示した光線図である。検査測定対象物101の表面で反射した集光ビームに対してシリンドリカルレンズ1207を通過させることで、シリンドリカルレンズ1207の収束効果がある方向を通る光ビームは早く集光し、レンズ効果が無い方向を通る光ビームは遅く集光するため非点収差が発生する。この収差を利用して、4分割の受光面を持つ検出器1208で光を受光した図が図2(b)〜(d)であり、同図に示すようにフォーカス方向の位置に応じて集光ビーム形状が変化する。検出器1208の4分割した受光面を左上から時計回りにA、B、C、Dとすると、サーボエラー信号生成回路105で信号(A+C)−(B+D)を演算する。ここで、(A+C)と(B+D)の加算は2202と2204の加算演算器で行い、これらの差分は差動演算器2203で行う。この演算により図2(e)のようにフォーカス方向の位置に応じたデフォーカスに対応する信号(FE)が生成される。(A+C)−(B+D)>0の場合、フォーカスは図2(a)の+側に変位する。また(A+C)−(B+D)=0であればジャストフォーカス位置である。逆に(A+C)−(B+D)<0の場合は図2(a)のー側に変位しフォーカスがずれていることを示す。このFEに応じてフォーカス制御回路107は、システム制御回路104からの指令信号により、FEに対してゲインと位相の補償を行い、検査測定対象物101の表面にフォーカス制御を行うための駆動信号をアクチュエータ駆動回路109に出力する。アクチュエータ駆動回路109から印加された信号に基づきアクチュエータ110及びアクチュエータ111を介して対物レンズ1210と対物レンズ1211を駆動する。この結果、図1に示した異物検査装置は、上述した検査測定対象物101の表面に対するデフォーカス量に応じたFEに基づきアクチュエータ110とアクチュエータ111とをフィードバックすることで、デフォーカス方向の位置調整を行う。
【0015】
図3にサーボエラー信号生成回路105の構成を示す。検出器1208から出力された信号はフォーカスエラー信号生成回路1051及び総光量信号生成回路1052に入力される。フォーカスエラー信号生成回路1051では検査測定対象物101の表面に対するフォーカス制御に使用するためのFEを生成し、総光量信号生成回路1052では光量の総和信号であるSUMを出力する。ここで、各信号は、電位Vrefを基準として出力されるものとする。ここで、検査測定対象物101の表面の汚れ等による検出器1208での検出光量低下分を補うためにSUMでFEを除算することで、オートゲインコントロールを行う。
【0016】
図4に検出器1214に複数の共鳴トンネルダイオードを用いた場合を示す。共鳴トンネルダイオードは光ビームの偏光方向に指向性を持つ半導体デバイスである。図4(a)に示すように検査測定対象物101の表面で反射した集光ビームは対物レンズ1210で平行光になり、1/4波長板1209にて直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ1206を透過する。一方、検査測定対象物101を透過した光ビームは円偏光の状態で対物レンズ1211、集光レンズ1213を経て検出器1214で光ビームの強度を検出する。この検出信号は信号処理回路106に対して出力される。検出器1214で共鳴トンネルダイオードに入射した円偏光の光ビームを検出する場合、例えば、図4(b)のように共鳴トンネルダイオード501と共鳴トンネルダイオード504とに隣接する共鳴トンネルダイオード502と共鳴トンネルダイオード503との偏光方向を90度変えて配置することで、1/4波長板1209で直線偏光にすることなく円偏光状態で複数の共鳴トンネルダイオードで検出することが可能となる。
【0017】
次に図1を使って検査測定対象物101の表面に追従するようにフォーカス制御について説明する。システム制御回路104は検査測定対象物101の表面電圧(すなわちフォーカスエラー信号が0になる電圧)を基準電位Vrefとして設定する。この基準電位は制御の基準となる電位である。スイッチ1216はシステム制御回路104の出力するFONに基づき、フォーカス制御回路107の出力信号もしくは基準電位Vrefを選択して、FOD(フォーカス駆動信号)としてアクチュエータ駆動回路109に出力する。FONとしてHighレベルが入力されると、スイッチ1216の端子はaが選択され、フォーカス制御回路107の出力信号がアクチュエータ駆動回路109に出力される。一方でFONとしてLowレベルが入力されると、スイッチ1216は端子bが選択され、基準電位Vrefを出力する。
【0018】
この結果、FONはフォーカス制御のオン・オフを指示する信号となる。またスイッチ1216は、フォーカス制御のオン、オフを切り替えるスイッチとして機能する。FONがLowからHighに切り替わることで検査測定対象物101の表面にフォーカス制御がオンされることになり、この動作をフォーカス引き込み動作と呼ぶ。
【0019】
フォーカス駆動電圧生成回路108は、システム制御回路104からの指令信号により、所定の電圧を出力する。フォーカス駆動電圧生成回路108は例えば、フォーカススイープ動作におけるスイープ電圧を出力する。フォーカス駆動電圧生成回路108の出力信号とスイッチ1216の出力信号を加算器1215により加算しFODとしてアクチュエータ駆動回路109に出力する。FODに従ってアクチュエータ110およびアクチュエータ111を検査測定対象物101に接近(あるいは遠ざける)方向に駆動するフォーカススイープ動作させるために、フォーカス駆動電圧生成回路108のスイープ電圧を、FODに対して加算することで対物レンズ1210および対物レンズ1211がフォーカス方向に駆動される。フォーカス制御がオンし、検査測定対象物101の表面にフォーカス引き込み動作が行われると、アクチュエータ駆動回路109はフォーカス制御回路107の出力信号に応じてアクチュエータ110およびアクチュエータ111を駆動することで光ビームが検査測定対象物101の表面に追従するようにフォーカス制御が行われる。
【0020】
図5(a)は本実施例の異物検査装置の動作概要を示すフローチャートである。図5(b)は表面に傷と異物或いは欠陥を有する検査測定対象物の側面図、(c)〜(f)は横軸を時間、縦軸を電圧として、(a)のフローチャートの各ステップと各種の信号との対応関係を示した図である。より具体的には図5(c)はFODの波形、(d)はFEの波形、(e)は検出器1214で検出された異物検出の波形、(f)は異物検出フラグの波形である。まず、ステップ500で異物検出したことを示す異物検出フラグを初期化(OFF)する。次にステップS501でフォーカス駆動電圧生成回路108からフォーカススイープ動作におけるスイープ電圧を出力しFODに加算すると、FODは図5(c)に示すような波形となりアクチュエータ110とアクチュエータ111を介して対物レンズ1210及び対物レンズ1211が検査測定対象物101に接近(あるいは遠ざける)方向に移動する。このとき、FODはスイープ電圧に応じて、FEは図5(d)に示すように基準電位Vrefから変化を開始し、検査測定対象物101の表面に対して接近するとFEは一度上に凸な信号となる(図2(e))。次にステップS502で、FEが上に凸な信号になった後、FEが基準電位Vrefを横切るときにFEに基づくフォーカス制御をオンしフィードバック制御を開始する(図5(d)のS502と図5(c)のS504)。図5(a)のステップS503VrefからのFEの変化量(FEの振幅)とした場合、FEの振幅の絶対値に対してしきい値(例えば、FEの振幅の最大値の60%)を設定する。
【0021】
ここで、例えば図5(b)に示した検査測定対象物の表面の傷などが原因で、FEの振幅の絶対値がしきい値以上変化した場合には(S503の判定でY)、FEの振幅は大きく変化しフォーカス制御が不安定になるため、例えば図5(d)のS503で設定したしきい値以上、FEの振幅の絶対値が変化した場合、FEに基づくフィードバック制御からFEに基づかないフォーカス位置を保持するフィードフォワード制御(図5(d)のS505からフィードフォワード制御に切替わる)に切換える。これによりFEが大きく変化した場合でも、アクチュエータ110およびアクチュエータ111はFEに依らないフィードフォワード制御により位置制御されるため、対物レンズ1210及び対物レンズ1211がFEの変化に追従することが無くなる。この結果、図5(e)に示すような安定した検査測定対象物の異物検出信号の波形が得られる。ここで、図5(e)では異物がある場合に正の電圧に変化が起きる場合を記載したが、逆に負の電圧に変化する場合もあるため、ステップS506では異物検出信号の振幅の絶対値をしきい値と比較している。一方、ステップS503でFEの振幅の絶対値がしきい値未満である場合(S503の判定でN)には、FEに基づくフィードバック制御を行う(図5(c)のS504ではフィードバック制御)。次に、ステップS506で検出器1214により検出された異物検出信号の振幅の絶対値に対してしきい値を設定する(異物検出信号の振幅が30%)。
【0022】
ここで、異物検出信号がしきい値以上変化した場合には(S507の判定でY)、異物を検出し、異物検出フラグをONに変化させる。一方、異物検出信号がしきい値未満の変化であれば(S506の判定でN)、異物は検知していないので異物検出フラグをOFFに変化させる。次に、ステップS509で検査測定対象物101の全面検査終了判定を行い、S509の判定でYの場合には、検査を終了する。この全面検査終了条件は、図示しないカメラや計測したデータ点数などに基づいてホスト200が判断する。一方、S509の判定でNの場合にはステップS503に移行し、例えば図5(d)に示すようにステップS503でFEの振幅がしきい値を超え無い場合(S503の判定でN)には、FEに基づくフィードバック制御を行う(図5(d)のS504でフィードバック制御に切替わる)。ここで、図5の(c)〜(f)の波形の縦軸を正の電圧値とした場合、図5(e)の異物検出の波形は電圧の正側に変化しているが、逆に負の電圧側に変化する波形でも良い。また、図5(c)ではS503のしきい値は電圧の正と負で同じ値のしきい値としたが、別々のしきい値を設定しても良い。
【0023】
このように本実施例に従ったフォーカス制御方法により検査測定対象物101の表面変動に対しても安定した異物の検出が可能となる。なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、図5の保持制御開始(S505)を行わない場合、図6に示すようにFEの振幅がしきい値を超えたことを示す異物検出フラグをマスクとすることで同様の機能を実現できる。例えば以下のようにして実現できる。図6(a)のステップS603でFEの振幅の絶対値に対してしきい値(例えば、FEの最大値の60%)を設定する。ここで、FEの振幅がしきい値以上変化した場合には(S603の判定でY)、図6(e)の異物検出信号の波形に示すように、FEが大きく変化することで、異物検出信号の波形に変化が生じる。これは、例えば、検査測定対象物には異物が無い場合でも、S604で設定したしきい値以上にを異物検出信号の振幅が変化すると異物と誤検出することになる。
【0024】
この対策として、ステップS603でFEの振幅の絶対値がしきい値以上に変化した場合には異物検出フラグをOFFにする(図6(f)のS606)。一方、ステップ603でFEの振幅の絶対値がしきい値未満の場合は(S603の判定でN)、ステップS604で設定した異物検出信号の振幅の絶対値に対するしきい値判定を行う。ここで、異物検出信号の振幅がしきい値以上変化した場合には(S604の判定でY)、異物検出フラグをONにする(図6(f)のS605)。一方、異物検出信号の振幅がしきい値未満の場合には(S604の判定でN)、異物検出フラグをOFFにする(図6(f)のS606)。このようにして得られた異物検出フラグ(図6(f))と異物検出信号(図6(e))との乗算をホスト200で行うことで図6(g)に示すような異物検出フラグによる異物検出信号の波形が得られる。この波形は異物検出フラグによりS603で設定したしきい値以上かつS604で設定したしきい値未満の信号を全てマスクした信号となっており、図6(b)に示すような検査測定対象物の内部の欠陥のみを検出することが可能となる。
【0025】
また、例えば、図7に示すように1/4波長板1212を図1に追加し、図4のように光ビームの偏光方向を円偏光ではなく直線偏光にした場合には、検出器1214は検出器1220のように直線偏光を検出できるように単一方向の共鳴トンネルダイオードを配置することも可能である。検査測定対象物101へのスポット径を全面で維持できないという課題に対して、本実施例で説明した構成により検査測定対象物101の表面から反射した光ビームから焦点ずれ量に相当するFEで、検査測定対象物101に集光しているスポット位置を検査測定対象物101の表面に基づいてフォーカス制御を行うことで、検査測定対象物101の全面に対してスポット径を維持することが可能となる。
【実施例2】
【0026】
実施例2は、実施例1が検出測定対象物101への入射波と表面からの反射波とが同一の対物レンズ1210を通過するのに対して、実施例2では異なる対物レンズを通過する(入射波は対物レンズ1210、反射波は対物レンズ1611)ため1/4波長板1212により偏光状態を変える必要がない。実施における効果としては、検査測定対象物101の表面から反射した光ビームから焦点ずれ量に相当するFEで、検査測定対象物101に集光しているスポット位置を検査測定対象物101の表面に基づいてフォーカス制御を行うことで、検査測定対象物101の全面に対してスポット径を維持することが可能な点にある。
【0027】
図8は、本発明に従う異物検査装置の一実施例を示すブロック構成図である。図1図8の違いは光学ユニット部602であり、この点以外の構成は同じであるため第1の実施例にて説明した内容と重複する部分については省略する。
【0028】
光学ユニット部602の光量制御回路1218は、システム制御回路104によって制御されており、光発信部1201を駆動する電圧を出力する。光発信部1201は、駆動電圧に応じた周波数の光ビームを出射し、コリメータレンズ1202にて平行光となる。ビームスプリッタ1203を透過した光ビームは、ミラー1606で反射される。この反射された光ビームは、対物レンズ1210によって検査測定対象物101の所望の位置に集光する。アクチュエータ駆動回路109の駆動量に応じて対物レンズ1210、対物レンズ1211及び対物レンズ1611の位置をアクチュエータ110、アクチュエータ111及びアクチュエータ612を制御する。ここで、光学ユニット部602を構成する対物レンズ1210、対物レンズ1211と対物レンズ1611の相対位置関係を維持するために、アクチュエータ駆動回路109からアクチュエータ110、アクチュエータ111及びアクチュエータ612に対する制御信号は同期した信号とする。
【0029】
図9(a)は図8の光学ユニット602の一部を拡大した図である。図9(a)に示すように検査測定対象物101の表面で反射した集光ビームは対物レンズ1611で平行光になり、シリンドリカルレンズ1207で集光されたビームを検出器1208で検出し、この検出信号をサーボエラー信号生成回路105に対して出力する。サーボエラー信号生成回路105は検出器1208で検出した信号からFEを生成し、このFEに応じてフォーカス制御回路107は、システム制御回路104からの指令信号により、FEに対してゲインと位相の補償を行い、検査測定対象物101の表面にフォーカス制御を行うための駆動信号をアクチュエータ駆動回路109に出力する。一方、検査測定対象物101を透過した光ビームは対物レンズ1211、集光レンズ1213を経て検出器1610で光ビームの強度を検出し、これに応じた信号を信号処理回路106に対して出力する。図9(b)に示す検出器1610は、例えば異物あるいは欠陥の検出サイズが光発信部1601の波長に比べて小さい場合には分解能を上げるために或いは感度を上げるために複数の共鳴トンネルダイオードを用いて構成して光ビームの強度を検出する例である。また、異物や欠陥による偏光変化を検出するために、本実施例に図4の検出器1214の構成を適用し、縦と横の偏光比を検出することも可能である。
【0030】
このように本実施例に従ったフォーカス制御方法により検査測定対象物601の表面変動に対しても安定した異物の検出が可能となる。なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、図9に示すように対物レンズ1611のアクチュエータ612を削除して異物検査装置を構成する事も可能である。この場合、検査測定対象物101の表面変動に対するフォーカス制御は検査測定対象物101からの反射された光ビームを対物レンズ1611で受けられる範囲となるため、図8と比べてフォーカス制御可能な範囲は制限されるが、アクチュエータ612が減る分構成が簡単になる。
【実施例3】
【0031】
実施例3は、図11に示すように実施例1と実施例2には無いリレーレンズ900を追加している。このリレーレンズはシステム制御回路104からの指令信号によりアクチュエータ901を介して駆動される。このリレーレンズ900これにより、単に検査測定対象物101の表面から反射した光ビームから焦点ずれ量に相当するFEで、検査測定対象物101に集光しているスポット位置を検査測定対象物101の表面に基づいてフォーカス制御を行うだけではなく、検査測定対象物101に集光しているフォーカス方向のスポット位置の制御をリレーレンズ900によりすることが可能となる可能となる。
【0032】
図11は、本発明に従う異物検査装置の一実施例の一実施例を示すブロック構成図である。図1図11の違いは光学ユニット部2002に、光発信部1201から出射された光ビームの収束と発散を制御するリレーレンズ900とアクチュエータ901を追加した点であり、この点以外の構成は同じであるため第1の実施例にて説明した内容と重複する部分については省略する。
【0033】
図11に対物レンズ1210によって検査測定対象物101の所望の位置に集光する位置を、リレーレンズ900により制御する例を示す。図12(a)は検査測定対象物101の対物レンズ1210側に集光するスポット位置を変更する例であり、図12(b)は検査測定対象物101の対物レンズ1211側に集光するスポット位置を変更する例である。例えば、図12(a)のようにリレーレンズ900で略収束にすることで対物レンズ1210を通る光ビームは早く集光し、図12(b)のようにリレーレンズ900を略発散にすることで対物レンズ1210を通る光ビームは遅く集光する。このようにリレーレンズ900の位置でにより収束と発散を制御することで、検査測定対象物101の対物レンズ1210側に集光する位置を変更することが可能となる。本実施例の特徴は、本実施例の特徴は検査測定対象物101の表面に対してフォーカス制御することで、システム制御回路104からの指令信号によりアクチュエータ901を介してリレーレンズ900の位置制御することで、を検査測定対象物101の表面に対してフォーカス制御しながら、検査測定対象物101の表面を基準として検査測定対象物101の所望の集光位置(図12のD0〜D4と表記)に集光するように調整スポット位置の制御することが可能となるが可能な点である。例えば検査測定対象物101に異物があった場合に、検査測定対象物101のどの位置に異物が存在するのかを、リレーレンズ900を駆動することで探索できる。この結果、L4の位置に異物があると特定されれば、製造工程のどこで混入した異物であるかの判定をシステム制御回路104で行うことが可能となる。これにより単純なフィードフォワードで焦点位置を固定で変えるだけでは実現できない表面変動に追従しながら検査測定対象物101の厚み方向の異物検査が可能になる。
【0034】
上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0035】
101…検査測定対象物
102…光学ユニット部
103…信号処理部
104…システム制御回路
105…サーボエラー信号生成回路
106…信号処理回路
107…フォーカス制御回路
108…フォーカス駆動電圧生成回路
109…アクチュエータ駆動回路
110…アクチュエータ
111…アクチュエータ
1201…光発信部
1202…コリメータレンズ
1203…ビームスプリッタ
1204…集光レンズ
1205…パワーモニタ
1206…偏光ビームスプリッタ
1207…シリンドリカルレンズ
1208…検出器
1210…対物レンズ
1211…対物レンズ
1212…1/4波長板
1213…集光レンズ
1214…検出器
1215…加算器
1216…スイッチ
2201…非点収差によるビーム形状
2202…加算演算器
2203…差動演算器
2204…加算演算器
1051…フォーカスエラー信号生成回路
1052…総光量信号生成回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12