特許第6783654号(P6783654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783654ヒアルロン酸をベースとする化粧品組成物,その調製法及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783654
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸をベースとする化粧品組成物,その調製法及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20201102BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20201102BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20201102BHJP
   D01F 6/34 20060101ALI20201102BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20201102BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20201102BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20201102BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20201102BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/73
   A61K8/86
   A61K8/81
   A61Q19/00
   D01F6/34 Z
   D01F1/10
   D01D5/04
   B82Y5/00
   B82Y40/00
【請求項の数】37
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-526046(P2016-526046)
(86)(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公表番号】特表2016-536305(P2016-536305A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】CZ2014000120
(87)【国際公開番号】WO2015058734
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】PV2013-820
(32)【優先日】2013年10月25日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100103414
【弁理士】
【氏名又は名称】戸村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】クノトコヴァ,カテリナ
(72)【発明者】
【氏名】サルヴェトヴァ,エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ルージツィコヴァ,ヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−041117(JP,A)
【文献】 特開2013−049927(JP,A)
【文献】 特開2008−179629(JP,A)
【文献】 特開2013−119676(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/031620(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0216211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
D04H 1/00−18/04
D01D 1/00−13/02
D01F 1/00− 6/96
D01F 9/00− 9/04
B82Y 5/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー形態の化粧品組成物であって,50〜80wt%のヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩,及び少なくとも一種の担体ポリマーを含むナノファイバーからなることを特徴とする化粧品組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容可能な塩はアルカリ金属イオンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記担体ポリマーはポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコールから成る群より選択されることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記ナノファイバーの直径は1〜400nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノファイバーは,
− アセチルヘキサペプチド−8,sh−ヘキサペプチド−1,乳清タンパク質又は大豆タンパク質を含む群より選択される水溶性ペプチド,
− シゾフィラン,カルボキシメチルベータグルカンナトリウム,カプロイルヒアルロン酸ナトリウム又はグルコマンナンを含む群より選択される水溶性多糖類,
− ヤナギラン(Epilobium angustifolium)地上部のエキス,コーヒーノキ(Coffea arabica)の緑色種子エキス,チャノキ(Camellia Sinensis)の葉エキス,チョウセンニンジン(Panax Ginseng)の根エキス,アロエベラ(Aloe barbadensis)エキス,プランクトン抽出物を含む群より選択される水溶性植物エキス,
− プロピレングリコール,ブチレングリコール,グリセロールを含む群より選択される水溶性ポリオール;
− D−パンテノール,アスコルビン酸のエチルエステルを含む群より選択される水溶性ビタミン,
− ミクロコッカス溶菌液,クレアチン,1−メチルヒダントイン−2−イミド,乳酸ナトリウム,グリシン,ピログルタミン酸のナトリウム塩,果糖,尿素,ナイアシンアミド,イノシトール,安息香酸ナトリウム又は乳酸
を含む群より選択される美容上活性的な物質を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記ナノファイバーは更に補助剤としてのカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノファイバーは更にミセルの形態の親油性の美容活性的な物質を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記親油性の美容活性的な物質は,グッグル(Commiphora Mukul)の木の樹脂エキス,オクタン酸及びデカン酸のトリグリセリド中のフレンチラベンダー(Lavandula stoechas)エキス,コエンザイムQ10,アスコルビン酸パルミテート,ジパルミチン酸ピリドキシン,酢酸トコフェロール,グリシルレチン酸,コレステロールを含む群より選択されることを特徴とする請求項7記載の組成物。
【請求項9】
ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩及び担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシドを含むナノファイバーを含むことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩の前記ポリエチレンオキシドに対する重量比は50/50〜80/20であることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩,担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコール,並びに補助剤としてのカルボキシメチルセルロースの混合物を含むナノファイバーを含むことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
前記混合物中のカルボキシメチルセルロース,ポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコールの重量比は1/1/0.01〜1/1/1であることを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩の分子量は1×10〜3×10g/molの範囲内であることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
前記担体ポリマーの分子量は1×10〜9×10の範囲内であり,前記分子量は,該担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシドで3×10〜9×10g/molの範囲内であり,該担体ポリマーとしてのポリビニルアルコールでは1×10〜4×10g/molの範囲内であることを特徴とする請求項1〜13いずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
ポリビニルアルコールの含有量が5〜25wt%の範囲内であることを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項16】
前記補助剤としての前記カルボキシメチルセルロースの分子量は1×10〜4×10g/molの範囲内であることを特徴とする請求項6〜15いずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
ナノファイバーの乾燥物中での前記カルボキシメチルセルロースの含有量は0.001〜50wt%の範囲内であることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項18】
ナノファイバーの乾燥物中での前記美容上活性的な物質の含有量は
水溶性ペプチドでは0.001〜10wt%の範囲内であり,又は,
水溶性多糖類では0.005〜0.5wt%の範囲内であり,又は,
水溶性植物エキスでは0.01〜10wt%の範囲内であり,又は,
水溶性ポリオールでは0.1〜45wt%の範囲内であり,又は,
水溶性ビタミンでは0.1〜5wt%の範囲内であることを特徴とする請求項5〜16いずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
層の形態であることを特徴とする請求項1〜18いずれか1項記載の組成物。
【請求項20】
前記層の単位面積重量は4〜20g/m2の範囲内であることを特徴とする請求項19記載の組成物。
【請求項21】
水溶性の乾燥形態であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
支持体上に形成された層の形態であることを特徴とする請求項1〜18いずれか1項記載の組成物。
【請求項23】
前記層の単位面積重量は1.5〜20g/m2であることを特徴とする請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記支持体は生地又は箔であることを特徴とする請求項22又は23記載の組成物。
【請求項25】
前記生地は織布,縦編み地,目積編み地,不織布を含む群より選択されることを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記生地の材料はポリエステル,セルロース,ポリウレタン,ポリプロピレン,ポリエチレン,ビスコース,ポリアミド又はこれらの混合物から成る群より選択されることを特徴とする請求項24又は25記載の組成物。
【請求項27】
前記箔の材料はアルミニウム,ポリアミド,ポリエステル,ポリプロピレン,ポリエチレン又はこれらの混合物から成る群より選択されることを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項28】
水中にヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の担体ポリマーを含む紡糸液を調製し,次いで静電気的に紡糸することを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項で定義した組成物の製造方法。
【請求項29】
請求項5で定義した美容上活性的な物質を紡糸液に添加することを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
請求項6で定義した補助剤としてのカルボキシメチルセルロースを紡糸液に添加することを特徴とする請求項28又は29記載の方法。
【請求項31】
請求項8記載の親油性の美容上活性的な物質またはその混合物を前記紡糸液に添加した後に生じる懸濁液から紡糸を行うことを特徴とする請求項28〜30いずれか1項記載の方法。
【請求項32】
ヒアルロン酸もしくはその薬学的に許容可能な塩及び担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシドを含むか,又はヒアルロン酸ならびに担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコール,並びに補助剤としてのカルボキシメチルセルロースの混合物を含む紡糸液を特徴とする請求項28〜31いずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記ヒアルロン酸またはその薬学的に許容可能な塩と前記担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシドの質量の合計,又は前記ヒアルロン酸またはその薬学的に許容可能な塩と前記担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコール並びに補助剤としてのカルボキシメチルセルロースの混合物の質量の合計が,前記紡糸液の総質量の2〜12wt%であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記化粧品組成物は請求項24〜27で定義された支持体に付着させることを特徴とする請求項22〜27いずれか1項記載の組成物の製造方法。
【請求項35】
化粧品における請求項1〜27いずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項36】
フェイスマスクまたは顔用美容液を製造するための請求項1〜21いずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項37】
フェイスマスクを製造するための請求項22〜27いずれか1項記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩及び少なくとも1種の担体ポリマー,好ましくはポリエチレンオキシド,ポリビニルアルコールを含む,ヒアルロン酸をベースとする化粧品組成物に関する。更に,水中での混合物の静電紡糸により実施する組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの場合,ナノファイバーは通常,直径100nm未満のナノ材料であるが(ナノ用語集,Nanotechnology Task Force,ベルリン:Federal Institute for Materials Research and Testing,2011年3月24日,「ISO/TS 27687:2008年,Nanotechnologies-Terminology and definitions FOR nano-objects-Nanoparticle, nanofibre and nanoplateより」),その寸法は50〜800nmの範囲内である。それらは様々な方法で調製することができる。今日,最も多く利用されている方法はおそらく静電紡糸法である。これは約5〜500nmの範囲で可変である直径の極細ポリマー繊維を調製する非常に簡単かつ効果的な方法である(J.M.Deitzelら,Polymer,42(2001年)261〜272を参照)。その構造のおかげで,前記ナノファイバー材料は,多くの分野での幅広い使用を可能にする独特な性質を有する。これらは例えばフィルタ,複合ブレース(例えばM.M.Bergshoefら,Adv.Mater.11(1999年),1362〜1365を参照),薬物担体(例えばE.R.Kenawyら,J.Control.Release 81(2002年)57〜64を参照),又は骨格(例えばP.Wutticharoenmongkolら,J.Nanosci.Nanotech.6(2006年)514〜522を参照)としての使用が見出される可能性がある。ナノファイバーは天然ポリマー及び合成ポリマーから調製する。多く使用される天然ポリマーには,ヒアルロン酸,セルロース又はキトサンなどの多糖類が挙げられ,合成ポリマーには,ポリビニルアルコール(PVA),ポリカプロラクトン(PCL),ポリ乳酸(PLA),ポリエチレンオキシド(PEO),セルロースアセテート(CA),ナイロン(NY)又はポリウレタン(PU)が挙げられる。
【0003】
現在,担体の形態でのナノ材料の使用は化粧品が一般的であり,主に,これらの材料を含む顔用クリーム又は美容液など多くの製品がすでに市販されている。より具体的には,これらは例えば,ナノソームの形態でプロレチノールAを含むRevitalift(L’Oreal)を初めとして,リポソームを含むAdvanced Night Repair Protective(Estee Lauder),ナノ粒子の形態でヒドロキシアパタイトを含むPlatineum(Lancome)等である。しかし,化粧品におけるナノファイバーの使用はまだ開発段階の新しい動向である。これまで市販の公知の化粧品でナノファイバーから形成されているものはなかった。現在,化粧品にナノファイバーを使用できる可能性の1つには,選択した互換性のあるポリマーと共に活性物質を紡糸する方法がある。したがってナノファイバーは皮膚の状態の改善,例えばその老化兆候の抑制に役立つ担体として使用することも可能である。これまでナノファイバーをベースとする市販の化粧品はなかったとしても,このような製品の組成及び調製の可能性はいくつか文献に記載されている。化粧品用途にナノファイバーの調合品を初めて扱ったのはTaepaiboonらであった。彼らは静電紡糸法によって調製したセルロースアセテートの繊維にビタミンA及びEを結合した。その後,彼らはインビトロの方法により,セルロースアセテートナノファイバー支持体から,ならびにセルロースアセテート溶液を注ぎ出すことによって調製したフィルムから,前記物質を放出する際の特性及び差異を観察した(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,67(2007年)387〜397を参照)。2010年,Fathi-Azarbayjaniらは,静電紡糸法によりPVA及びシクロデキストリン(RMベータ−CD)のナノファイバー抗しわフェイスマスクの調製を発表した。これはビタミンA及びC(レチノイン酸及びアスコルビン酸),金のナノ粒子ならびにコラーゲンを含むものである。それは乾燥状態のマスクであるため,その中に結合した物質は加水分解しない。そのマスクを顔に当てて湿潤させる場合,マスクが15分以内に溶解し,活性物質を放出してその最大限の浸透を確実にする(A.Fathi-Azarbayjaniら,AAPS PharmSciTech,11(2010年)1164〜1170)。この例では,マスクはどのような支持補助体にも沈着させていない。化粧品分野での可能な用途に関連して活性物質の担体としてナノファイバーを使用することも2013年,Madhaiyanら,及びShengらによって発表された。第1の例では,ナノファイバーはビタミンB12が結合した生体適合性ポリマーのポリカプロラクトン(PCL)から調製した(K.Madhaiyanら,International Journal of Pharmaceutics,444(2013年)70〜76)。第2の例では,繊維はビタミンEが結合したシルク由来フィブロインから調製した(X.Shengら,International Journal of Biological Macromolecules(2010年),doi:10.1016/j.ijbiomac.2013年,01.029)。現在まで,ビタミン,無機粒子又はコラーゲン以外の美容活性物質の紡糸を記述する出版物は公開されていない。ナノファイバーの調製のための上記出版物に使用されたポリマー物質(セルロースアセテート,ポリビニルアルコール,シクロデキストリン,ポリカプロラクトン及びフィブロイン)は化粧品に含有させることが可能であるが,頻繁に使用される基材には属さない。これらの物質は,皮膚の改善効果は有さず,調製物中では添加物としてのみ存在し,第1に膜形成又は粘度調整のために作用する。
【0004】
韓国特許公開KR2011110482号はヒアルロン酸から形成されたナノファイバーを記載しており,これは太陽光によって起こるビタミン分解の防止としてカプセル化されたビタミンを含んでいる。より具体的には,ビタミン及び水溶性ポリマーを含むヒアルロン酸から形成された繊維を開示している。ビタミンは例えばA又はE,水溶性ポリマーはヒアルロン酸である。ナノファイバーの調製方法は,ビタミン溶液と水溶性ポリマーとの混合液の調製,ならびに静電紡糸から構成される。ビタミンの溶液は,(Ceteth及びNikkolなどの)界面活性剤の存在下でビタミンをエタノール中に溶解することにより調製するが,化粧品用途での調製では界面活性剤の存在は望ましいとは言えない。国際特許公開WO2009/045042号は例えばポリウレタン,ポリアクリロニトリル,ナイロン,ポリマー乳酸,ポリカーボネート,ポリカプロラクトン等を含む様々なポリマーの混合物からのナノファイバーの調製を開示している。この例ではヒアルロン酸は使用しなかった。これらの繊維にエキス及び/又は天然精油を結合させた。化粧品に前記繊維を使用できる可能性が述べられている。
【0005】
上述した全ての合成ポリマーとは異なり,ヒアルロン酸は身体の先天的な物質であり,結合組織及び皮膚の一部であり,その主要な特性は水に結合し,それにより十分な水和作用を維持することである。しかし,老化に伴い,皮膚中のヒアルロン酸量は減少し,水和作用が低下し,これによりシワ及び他の老化の徴候が発生する。そのため,ヒアルロン酸は話題になっている様々な化粧品調合物に添加したり,また皮内投与している。
【0006】
乾燥化粧品に限れば,日本特許公開第2006−182750号がフリーズドライ(凍結乾燥)による化粧品の調製を開示している。それはコラーゲン,ヒアルロン酸及びアスコルビン酸誘導体の混合物を含む水溶液の乾燥を意味する。その後,使用前にこの混合物を水又は化粧水に再溶解する。前記化粧品の形態は長期安定性と防腐剤不使用を特徴とする。従って,それは乾燥化粧品のタイプではあるが,ナノファイバーにより形成されるようなものではない。その欠点は,本ナノファイバー化粧品と比較すると,時間及び操作を要し,凍結乾燥を伴うその調製が高額になるということである。凍結乾燥物を再溶解する工程は,その塗布前に製品を家庭で調製することから顧客が費やす時間が多くなる。
【0007】
別の日本特許公開第2004−51521号は不織布上に乾燥化粧粗製品を含む化粧品を扱っている。乾燥粗製品はコラーゲン,ビタミンA及びC又はヒアルロン酸であってもよい。更に当該製品は増粘剤を含んでおり,これは水溶性アルギン酸塩,セルロース誘導体,キトサン,キチン,PVA及びPVPであってもよい。繊維は天然絹糸で充填した不織絹糸で形成している。
【0008】
発明の概要
当技術水準の解決策に起因する短所は本発明に従ったヒアルロン酸をベースとする化粧品組成物により解消し,該化粧品組成物は,少なくとも1wt%のヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩,及び少なくとも1種の担体ポリマーを含有するナノファイバーを含む。
【0009】
本発明に従った化粧品組成物の利点は,ナノファイバー中の高いヒアルロン酸量,すなわち最大90重量%,更に最大99重量%であることにある。上述したように,ヒアルロン酸又はその塩は,ナノファイバー調製用に一般的に使用されている他のポリマーとは対照的に,それらより皮膚に適しており,皮膚に有意なプラス効果を示す。その濃度の増加はしわを伸ばす。また,本発明に従った乾燥組成物の使用時と比較すると,市販のクリームのHA濃度はその塗布時では最大24倍低く,市販の液状顔用美容液のHA濃度はその塗付時では最大13倍低い。
【0010】
更に,当技術水準のナノファイバー製品とは対照的に,本発明はビタミン又は無機粒子のみならず化粧品活性成分を含むことも可能である。
【0011】
また,本発明は防腐剤,安定剤又は溶剤残留物を全く含まないで長期的な安定性を有し,その水溶性は非常に良好であり,塗布前に更に改良を加えることを必要としない。
【0012】
前記薬学的に許容可能な塩は任意のアルカリ金属イオンを含む群より選択され,好ましくはNa,Kである。前記担体ポリマーはポリエチレンオキシド,ポリビニルアルコールから成る群より選択され,好ましくはポリエチレンオキシドである。本発明に従った担体ポリマーにより水中だけで紡糸することが可能となり,ナノファイバーに存在すると薬剤塗布時に皮膚を刺激して脱水させる可能性のある他の極性溶媒を使用せずに済む。
【0013】
本発明に従った化粧品組成物に含まれる前記ナノファイバーの直径は1〜400nm,好ましくは20〜300nm,より好ましくは50〜200nmの範囲内である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態に従えば,当該組成物に含まれるナノファイバーは美容上活性的な物質を更に含む。当該物質は,化粧品に使用するための様々な化学物質のあらゆる水溶性又は水不溶性物質及び起源物であり得る。好ましくは,本発明に従った前記美容上活性的な物質は,
− より好ましくはアセチルヘキサペプチド−8,sh−ヘキサペプチド−1,乳清タンパク質,大豆タンパク質,ルミトイルトリペプチド−5,パルミトイルヘキサペプチド又はトリペプチド−32を含む群より選択される水溶性ペプチド又は水溶性タンパク質,
− より好ましくはシゾフィラン,カルボキシメチルベータグルカンナトリウム,カプロイルヒアルロン酸ナトリウム又はグルコマンナンを含む群より選択されることがより好ましい水溶性多糖類,
− より好ましくは1,3−ブタンジオール中のヤナギラン(Epilobium angustifolium)地上部のエキス,1,3−ブタンジオール中のコーヒーノキ(Coffea arabica)の緑色種子エキス,1,2−プロパンジオール中のチャノキ(Camellia Sinensis)の葉エキス,1,2−プロパンジオール中のチョウセンニンジン(Panax Ginseng)の根エキス,水中のアロエベラ(Aloe barbadensis)エキス,水中のプランクトン抽出物を含む群より選択される水溶性植物エキス,
− より好ましくはプロピレングリコール,ブチレングリコール,グリセロールを含む群より選択される水溶性ポリオール;
− より好ましくはD−パンテノール,アスコルビン酸のエチルエステルを含む群より選択される水溶性ビタミン,
ミクロコッカスルテウスの溶解物であるミクロコッカス溶菌液,更にクレアチン,1−メチルヒダントイン−2−イミド,乳酸ナトリウム,グリシン,ピログルタミン酸のナトリウム塩,果糖,尿素,ナイアシンアミド,イノシトール,安息香酸ナトリウム,乳酸又はその他の物
含む群より選択される。
【0015】
本発明に従った化粧品組成物の前記ナノファイバーは,更に補助剤,好ましくはカルボキシメチルセルロースを含んでもよい。本発明に従った前記ナノファイバー組成物の別の成分は,ミセルの形態の親油性の美容活性的な物質でもよい。水不溶性物質は,疎水性物質が水溶性ポリマー中にカプセル封入された懸濁液又はポリマーミセルの形態で紡糸する。前記親油性の美容活性的な物質は好ましくは,グッグル(Commiphora Mukul)の木の樹脂エキス,オクタン酸及びデカン酸のトリグリセリド中のフレンチラベンダー(Lavandula stoechas)エキス,コエンザイムQ10,アスコルビン酸パルミテート,ジパルミチン酸ピリドキシン,酢酸トコフェロール,グリシルレチン酸,コレステロールを含む群より選択される。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態は,ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩及び担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシドを含有するナノファイバーを含む化粧品組成物であり,前記ヒアルロン酸又は前記その薬学的に許容可能な塩の前記ポリエチレンオキシドに対する重量比は好ましくは1/99〜99/1,より好ましくは5/95〜85/15,更に好ましくは50/50〜80/20である。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態は,ヒアルロン酸又はその塩及びポリビニルアルコールを含有するナノファイバーを含む組成物であり,前記ヒアルロン酸又はその塩の前記ポリビニルアルコールに対する重量比は2/98〜50/50,好ましくは5/95〜50/50,より好ましくは20/80〜50/50である。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態は,ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩,及び担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコール,ならびに補助剤としてのカルボキシメチルセルロースの混合物を含有するナノファイバーを含む化粧品組成物であり,前記ヒアルロン酸又は前記その薬学的に許容可能な塩の含有量は1〜80wt%,好ましくは1〜50wt%,より好ましくは4.4wt%である。前記混合物中のカルボキシメチルセルロース,ポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコールの重量比は1/1/0.01〜1/1/1,好ましくは1/1/0.5である。
【0019】
前記ヒアルロン酸又は前記その薬学的に許容可能な塩の分子量は1×10〜3×10g/mol,好ましくは5×10〜1.5×10g/molの範囲内であり,ナノファイバーの乾燥物中での前記ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は好ましくは少なくとも1wt%,より好ましくは少なくとも4.4wt%,更に好ましくは少なくとも50wt%である。
【0020】
本発明の化粧品組成物の別の好ましい実施形態に従うと,前記ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は,2〜90wt%,好ましくは4.4〜80wt%,より好ましくは50〜80wt%である。
【0021】
本発明に従った化粧品組成物に含まれるナノファイバーに含有される担体ポリマーの分子量は1×10〜9×10の範囲内であり,前記分子量は,該担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシドで好ましくは3×10〜9×10g/molの範囲内であり,又,該担体ポリマーとしてのポリビニルアルコールでは1×10〜4×10g/molの範囲内である。
【0022】
本発明に従ったヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩,ならびにポリエチレンオキシド,ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースの混合物を含有するナノファイバーを含む化粧品組成物に含まれるナノファイバーの乾燥物中での前記担体ポリマーの含有量は0.001〜90wt%,好ましくは5〜65wt%の範囲内であり,ポリエチレンオキシドの含有量は好ましくは5〜90wt%,好ましくは10〜50wt%の範囲内であり,ポリビニルアルコールでは0.001〜30wt%,好ましくは5〜25wt%の範囲内である。
【0023】
更に,本発明に従った化粧品組成物に含まれるナノファイバーに含有される前記補助剤としてのカルボキシメチルセルロースの分子量は1×10〜4×10g/mol,好ましくは1.5×10〜3×10g/molの範囲内であり,その含有量は0.001〜50wt%,好ましくは10〜40wt%の範囲内であることが好ましい。
【0024】
更に,本発明に従った化粧品組成物に含まれるナノファイバーの乾燥物中での美容上活性的な物質の含有量は0.001〜50wt%の範囲内である場合,好ましくは,
水溶性ペプチドでは0.001〜10wt%の範囲内であり,又は,
水溶性多糖類では0.005〜0.5wt%の範囲内であり,又は,
水溶性植物エキスでは0.01〜10wt%の範囲内であり,又は,
水溶性ポリオールでは0.1〜45wt%の範囲内であり,又は,
水溶性ビタミンでは0.1〜5wt%の範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明に従った化粧品組成物は自己支持層,又は支持体に沈着させた層の形態である。支持体を用いる場合,本発明に従った化粧品組成物はフェイスマスクとして使用される。支持体を用いない場合,本発明に従った化粧品組成物は顔用美容液又は顔用クリームとして使用され,自己支持のフェイスマスクとして使用されてもよい。本発明に従った化粧品組成物は水溶性の乾燥形態である。
【0026】
支持体上の化粧品に使用するための本発明に従った化粧品組成物の層の単位面積重量は0.2〜50g/m2,好ましくは1.5〜20g/m2,より好ましくは1.0〜20g/m2,更に好ましくは1.3〜1.7g/m2の範囲内又は1.7g/m2である。本発明に従った自己支持組成物の層の単位面積重量は2〜50g/m2,好ましくは4〜20g/m2の範囲内にある。単位面積重量が小さい本発明の組成物の層は毎日のケアに使用可能であり,その物質の濃度は補充するだけでよい。それから,化粧品という観点から,集中ケアのためには単位面積重量が高めの本発明の組成物の層が必要である。本出願に従った組成物の層の単位面積重量は少量の試料を用いて測定した−規格:CSN EN12127(80 0849)。
【0027】
本発明に従った化粧品組成物が支持体に沈着している場合,前記支持体は生地又は箔であり,前記生地は織布,縦編み地,目積編み地,不織布を含む群より選択されることが好ましい。
【0028】
本発明に従った支持体の形態の前記生地の材料はポリエステル,セルロース,ポリウレタン,ポリプロピレン,ポリエチレン,ビスコース,ポリアミド又はこれらの混合物から成る群より選択される。
【0029】
本発明に従った支持体の形態の前記箔の材料はアルミ箔などのアルミニウム,ポリアミド,ポリエステル,ポリプロピレン,ポリエチレン又はこれらの混合物から成る群より選択される。
【0030】
本発明に従った別の好ましい実施形態は前述の化粧品組成物の製造方法であり,水中にヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩及び少なくとも1種の担体ポリマーを含む紡糸液を調製し,次いで静電気的に紡糸する。前述のように,美容上活性的な物質及び/又は補助剤を紡糸液の一部に任意で添加してもよい。
【0031】
本発明に従った化粧品組成物の製造方法の別の好ましい実施形態では,前述のように,親油性の美容上活性的な物質もしくはその混合物を含むミセルを紡糸液に添加する。紡糸は親油性の美容上活性的な物質単独もしくはその混合物を紡糸液に添加した後に生じる懸濁液から実施してもよい。
【0032】
前記紡糸液の成分は10〜16時間、好ましくは12時間まで均質化される。
【0033】
本発明による化粧品組成物の製造方法の更に別の好ましい実施形態では,前記ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩と前記担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシドの質量の合計,又は前記ヒアルロン酸又はその薬学的に許容可能な塩と前記担体ポリマーとしてのポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコールならびに補助剤としてのカルボキシメチルセルロースの混合物の質量の合計が,前記紡糸液の総質量の2〜12wt%,好ましくは4〜10wt%である
【0034】
本発明に従った組成物の調製方法により,ヒアルロン酸が広範囲の分子量かつ高濃度で使用することが可能になり,同時に個々の化粧粗製品の濃度が大幅に多様になる。本発明に従った製造方法は静電界で,18〜45℃,常圧で,水性媒体から進行させるものであり,ここでは支持体,すなわち布地又は箔で覆ったコレクタ上に収集される繊維の束は,静電気力により紡糸液から引き出される。このような構成により,生地又は箔と同時に繊維層を収集することが容易になり,得られた組成物は支持形態である。自己支持組成物は,本発明に従った同じ上記方法により,支持体を使用せずに得られる。
【0035】
プロセス全体が水を溶媒として実行できるため,プロセスに伴う装置,溶液調製又は操作安全性を強化する必要がない。
【0036】
このように調製した組成物は,化粧品の局所使用に適している。担持支持体上に沈着した繊維は乾燥フェイスマスクであり,本発明に従った自己支持組成物は乾燥形態の顔用美容液であるが,それと同時に,それは支持体上に沈着した組成物のように乾燥フェイスマスクとして使用できる。
【0037】
本発明に従った組成物の利点は,防腐剤を省略すると同時に製品安定性を確実にすることが可能な乾燥形態になることである。他の利点としては乳化剤の不使用も挙げられる。塗布後,皮膚に油状のフィルムは残らない。当該組成物は水に接触すると即時に溶解するという利点もある。いかなる場合でも皮膚に塗布する前に製品を溶解又は処理する必要はない。
【0038】
フェイスマスクとしての支持体上の本発明の乾燥組成物を塗布する方法にはいくつかの工程:顔を湿潤させ,その湿潤させた皮膚に製品を5〜30分間,好ましくは10分間当て,次いで顔から支持材料を皮膚から剥がし,水でマスクの乾燥フィルムを洗浄する工程が含まれる。塗布後は普段使いのクリームを塗付することを推奨する。
【0039】
フェイスマスクとして支持体を使用しない本発明の乾燥組成物を塗布する方法には以下の工程:拡散手段,任意でスポンジを用いて水で顔を湿潤させ;ピンセットや指で包装材から製品を取り出し;顔に製品を塗付し,顔及び首全体に製品をのばす工程が含まれる。マスクを5〜20分間相互作用させた後,水でマスクの乾燥フィルムを洗浄する。塗布後は普段使いのクリームを塗布することを推奨する。
【0040】
顔用美容液として支持体を使用しない本発明の乾燥組成物を塗布する方法には以下の工程:任意で拡散手段を用いて水で顔を湿潤させ,ピンセットを用いて包装材から製品を取り出し,皮膚に製品を塗布し,顔及び首全体,場合により首筋に製品をのばす工程が含まれる。製品は皮膚上に残留し,それは洗い流さない。しかし,十分量の水を使用し,完全に広げることが必要であり,それにより目に見えるフィルムは皮膚に残らない。
【0041】
用語の定義
用語「層」は,ポリマー混合物の紡糸後の集電極上に形成されている本発明の組成物の層を意味する。
用語「箔」は通常,合成ポリマー及び金属から工業的に生産された非常に薄いシートを意味する。
用語「sh−ヘキサペプチド−1」は,その配列が6個のアミノ酸を含むペプチドを意味する。前記配列は以下のとおり−H−GSPAGS−OH(グリシン−セリン−プロリン−アラニン−グリシン−セリン)である。
用語「担体ポリマー」は,静電気的に自身で紡糸することが可能で,化粧品用途に適しており,望ましくない毒性又は全身毒性を発生させることのない生体適合性の天然又は合成ポリマーを意味する。
用語「水溶性ペプチド」は,水溶性である最大10のアミノ酸を含むオリゴペプチド又は最大100のアミノ酸を含むポリペプチドを意味する。
用語「水溶性タンパク質」は,100を超えるアミノ酸を含むか,あるいは分子量が200〜180,000g/molの範囲内の水溶性高分子バイオポリマーを意味する。
用語「水溶性多糖類」は,分子量が200,000〜1,500,000g/molの範囲内の水溶性高分子多糖類を意味する。
用語「水溶性植物エキス」は,化粧品用途に適し,望ましくない毒性又は全身毒性を発生させず,水溶性である植物又はその一部に由来するアルコール性エキスを意味する。
用語「水溶性ポリオール」は,「水溶性である多価アルコール,好ましくはジオールを意味する。
用語「水溶性ビタミン」は,ビタミンB群,すなわちB1,B2,B3,B5,B6,H(B7),B9,B12もしくはビタミンC,又はこれらのエステル誘導体を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド及び乳清タンパク質から成るナノファイバー層。
図2】ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド,アセチルヘキサペプチド−8及び乳清タンパク質から成るナノファイバー層。
図3】ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド,アセチルヘキサペプチド−8,乳清タンパク質,ヤナギラン(Epilobium angustifolium)地上部のエキス,コーヒーノキ(Coffea arabica)の緑色種子エキス,チャノキ(Camellia Sinensis)の葉エキス,チョウセンニンジン(Panax Ginseng)の根エキスから成るナノファイバー層。
図4】ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド,アセチルヘキサペプチド−8,乳清タンパク質,ヤナギラン地上部のエキス,コーヒーノキの緑色種子エキス,チャノキの葉エキス,チョウセンニンジンの根エキスから成るナノファイバー層。
図5A】混合物を紡糸して得られたナノファイバー層:その組成物中の試料AはHA/PEO,及びA群から得た物質を含む−下記表2を参照。
図5B】混合物を紡糸して得られたナノファイバー層:その組成物中の試料BはHA/PEO,及びA+B群から得た物質を含む−下記表2を参照。
図5C】混合物を紡糸して得られたナノファイバー層:その組成物中の試料CはHA/PEO/CMC/PVA,及びA群から得た物質を含む−下記表2を参照。
図5D】その組成物中の試料DはHA/PEO/CMC/PVA,及びA+B群から得た物質を含む−下記表2を参照。
図6A】混合物を紡糸して得られたナノファイバー層:その組成物中の試料AはHA/PEO,及びA群から得た物質を含む−下記表3を参照。
図6B】混合物を紡糸して得られたナノファイバー層:その組成物中の試料BはHA/PEO,及びA+B群から得た物質を含む−下記表3を参照。
図6C】混合物を紡糸して得られたナノファイバー層:その組成物中の試料CはHA/PEO/CMC/PVA,及びA群から得た物質を含む−下記表3を参照。
図6D】その組成物中の試料DはHA/PEO/CMC/PVA,及びA+B群から得た物質を含む−下記表3を参照。
図7】様々な支持材料上のナノファイバー層,A)低密度PE(粗目),B)布地−セルロース,C)編地−セルロース。
図8】HA/PEOの混合物中のクレアチンのH NMRスペクトル。
図9】ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド及びクレアチンから成るナノファイバー層。
図10】HA/PEOの混合物中のクレアチンのH NMRスペクトル。
図11】ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド及びクレアチンから成るナノファイバー層。
図12】ジパルミチン酸ピリドキシン及びポリエチレンオキシドを含むポリマーミセルを有するヒアルロナンから成るナノファイバー層。
図13】ナノファイバー層における試料の重量(mg)に対する大豆タンパク質及び水(mg)の比率。
図14】大豆タンパク質との混合物を紡糸して得られたナノファイバー層。
図15】ナノファイバー層における試料の重量に対するアセチルヘキサペプチド−8(mg)の比率。
図16】アセチルヘキサペプチド−8及び水との混合物を紡糸して得られたナノファイバー層。
図17】ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド,乳清タンパク質,プロピレングリコール,ヤナギラン地上部のエキス,アロエベラ(Aloe barbadensis)及びカルボキシメチルベータグルカンナトリウムの混合物を紡糸して得られたナノファイバー層。
図18】塗布後3時間の,皮膚の弾力性に対する美容液及びクリーム状美容液形態の即席化粧品製品の効果。
図19】塗布後24時間の,皮膚の弾力性に対する美容液及びクリーム状美容液形態の即席化粧品製品の効果。
図20】4週間塗布している間の,皮膚の弾力性に対する美容液及びクリーム状美容液形態の即席化粧品製品の効果。
図21】塗布後2時間の,皮膚上の美容液の数値に対する美容液及びクリーム状美容液形態の即席化粧品製品の効果。
図22】4週間塗布している間の,TEWL値に対する美容液及びクリーム状美容液形態の即席化粧品製品の効果。
図23】塗布後3時間の,皮膚の弾力性に対するフェイスマスク形態の即席化粧品製品の効果。
図24】塗布後3時間の,TEWL値に対するフェイスマスク形態の即席化粧品製品の効果。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ナノファイバー即席化粧品は,一般的に20cmの電極間隔の装置4Spin 4SPIN(登録商標)C4SLAB上で,注入量150μl/分で調製した。 電圧は20〜60kVの範囲内であった。
【0044】
走査電子顕微鏡から得た画像は,最大解像度が3nmでタングステン陰極を備える装置Tescan VEGA II LSUで作成した。画像は高真空状態で作成した。加速電圧は5kVであった。
【0045】
添加剤のNMRスペクトルは重水中,BRUKER AVANCE500(500MHz)上で測定した。実験データを処理するため,Bruke社のソフトウエアTOPSPIN1.2及びソフトウエア25SpinWorks3.1を使用した。
【0046】
UV-Vis検出器を備えたHPLC Shimadzu Prominence LC-20を用い,抽出物の定性的及び定量的測定を行った。
【0047】
質量分析計MALDI-SYNAPT Q-TOFを備えたLC Waters Acquityを用い,活性物質としてのペプチドの定性的及び定量的測定を行った。
【0048】
800〜190nm,場合により400〜190nmの波長範囲内において,UV-Vis分光光度計Varian Cary100ConeでUV-Visスペクトルを測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を3.816g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.96g,乳清タンパク質を0.024g及び水を75.2g含む溶液を調製した。溶液を20℃で14時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。 図1は走査電子顕微鏡から得た写真を示す。ナノファイバー層の単位面積重量は11.023g/m2である。繊維径は105nmである。
【0051】
実施例2(HA/PEO=2/98)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.540g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを5.88g及び水を94g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で2%であった。溶液を45℃で10時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は15.59g/m2である。繊維径は144nmである。
【0052】
実施例3(HA/PEO=98/2)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を5.88g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.06g,分子量4,000,000g/molのポリエチレンオキシドを0.06g及び水を94g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で98%であった。溶液を18℃で12時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は12.3g/m2である。繊維径は179nmである。
【0053】
実施例4(HA/PEO=80/20)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.8g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g,及び水を94g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で80%であった。溶液を20℃で16時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は14.1g/m2である。繊維径は116nmである。
【0054】
実施例5
分子量300,000g/molのヒアルロナン(HA)を3.636g,分子量100,000g/molのポリエチレンオキシドを0.96g,乳清タンパク質を0.024g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g及び水を75.2g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で75.75%であった。溶液を23℃で12時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。図2は走査電子顕微鏡から得た写真を示す。ナノファイバー層の単位面積重量は10.08g/m2である。繊維径は131nmである。
【0055】
実施例6
分子量112,400g/molのヒアルロナン(HA)を2.746g,分子量600,000g/molのポリエチレンオキシドを0.72g,乳清タンパク質を0.018g,アセチルヘキサペプチド−8を0.108g,ヤナギラン地上部のエキスを0.6g,コーヒーノキの緑色種子エキスを0.6g,チャノキの緑葉エキスを0.006g,チョウセンニンジンの根エキスを0.006g及び水を55.2g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で57.15%であった。溶液を20℃で14時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。図3は走査電子顕微鏡から得た写真を示す。ナノファイバー層の単位面積重量は10.8g/mである。繊維径は148nmである。
【0056】
実施例7
分子量97,700g/molのヒアルロナン(HA)を0.176g,分子量900,000g/molのポリエチレンオキシドを1.507g,分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを1.4g,分子量28,000g/molの16%ポリビニルアルコールを4.775g,乳清タンパク質(CLR,ベルリン)を0.02g,アセチルヘキサペプチド−8(Lipotec s.a.)を0.12g,ヤナギラン地上部のエキスを0.4g,コーヒーノキの緑色種子エキスを0.4g,チャノキの緑葉エキスを0.004g,チョウセンニンジンの根エキスを0.004g及び水を55.2g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で3.6%であった。溶液を40℃で16時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。図4は走査電子顕微鏡から得た写真を示す。ナノファイバー層の単位面積重量は11.58g/m2である。繊維径は88nmである。
【0057】
実施例8(HA/PVA=2/98)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.2g,分子量125,000g/molのポリビニルアルコールを9.8g及び水を90g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で2%であった。溶液を25℃で13時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は7.77g/m2である。繊維径は290nmである。
【0058】
実施例9(HA/PVA=50/50)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を5g,分子量125,000g/molのポリビニルアルコールを5g及び水を90g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で50%であった。溶液を45℃で15時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は1g/m2である。繊維径は180nmである。
【0059】
実施例10(HA/PEO/CMC/PVA=4.5/38.2/38.2/19.1)
分子量260,000g/molのヒアルロン酸(HA)を0.540g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを4.5840g,分子量395,000g/molのカルボキシメチルセルロースを4.5840g,分子量125,000g/molのポリビニルアルコールを2.2920g及び水を288g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で4.5%であった。溶液を25℃で12時間均質化した。溶液は支持体生地を使用せずに集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は11.023g/m2である。繊維径は105nmである。
【0060】
実施例11(HA/PEO/CMC/PVA=80/10/5/5)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を1.623g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.213g,分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを0.103g,分子量125,000g/molのポリビニルアルコールを0.998g及び水を48g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で80%であった。溶液を40℃で10時間均質化した。溶液は支持体生地(スパンボンドポリプロピレン18g/m2)を使用して集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は6.23g/m2である。繊維径は96nmである。
【0061】
実施例12(HA/PEO/CMC/PVA=1/40/40/19)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.023g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.821g,分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを0.804g,分子量125,000g/molのポリビニルアルコールを0.382g及び水を48g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で1%であった。溶液を22℃で15時間均質化した。溶液は支持体生地(スパンボンドポリプロピレン18g/m2)を使用して集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は13.82g/m2である。繊維径は62nmである。
【0062】
実施例13(HA/PEO/CMC/PVA=19.6/40/40/0.4)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.392g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.817g,分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを0.814g,分子量125,000g/molのポリビニルアルコールを0.008g及び水を48g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で19.6%であった。溶液を22℃で12時間均質化した。溶液は支持体生地(スパンボンドポリプロピレン18g/m2)を使用して集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は7.35g/m2である。繊維径は57nmである。
【0063】
実施例14(HA/PEO/CMC/PVA=10/30/30/30)
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.205g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.613g,分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを0.609g,分子量125,000g/molのポリビニルアルコールを0.598g及び水を48g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で10%であった。溶液を40℃で14時間均質化した。溶液は支持体生地(スパンボンドポリプロピレン18g/m2)を使用して集電極上で紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は9.09g/m2である。繊維径は54nmである。
【0064】
実施例15
分子量150,000g/molのヒアルロン酸及び分子量300,000g/molのポリエチレンオキシドの溶液;ならびにカルボキシメチルセルロース,ポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコールとのヒアルロン酸の混合物の溶液を調製した。ヒアルロン酸の分子量は150,000g/molであり,ポリエチレンオキシドの分子量は300,000g/molであり,カルボキシメチルセルロースの分子量は250,000g/molであり,16%ポリビニルアルコールの分子量は63,000g/molであった。下記の表2は物質及び物質群がどのように紡糸液に添加されたかを濃度と共に示している。
【0065】
【表2】
A − X/20の比率のHA/PEO
B − 4.5/X/Y/Zの比率のHA/PEO/CMC/PVA
8種の試料を調製した。
試料Aはその組成物中にHA/PEO及びA群の物質を含む − 上記表2を参照(図5Aも参照)。
試料Bはその組成物中にHA/PEO及びA+B群の物質を含む − 上記表2を参照(図5Bも参照)。
試料Cはその組成物中にHA/PEO/CMC/PVA及びA群の物質を含む − 上記表2を参照(図5Cも参照)。
試料Dはその組成物中にHA/PEO/CMC/PVA及びA+B群の物質を含む − 上記表2を参照(図5Dも参照)。
他の2つの試料は,HA/PEO及びA+B+C群の物質,又はA+B+C+D群の物質のいずれかを含んでいた − 上記表2を参照。
他の2つの試料は,HA/PEO/CMC/PVA及びA+B+C群の物質,又はA+B+C+D群の物質のいずれかを含んでいた − 上記表2を参照。
【0066】
美容上活性的な物質を紡糸する際,比率80/20のヒアルロン酸及びポリエチレンオキシドの6wt%原液から始めた。PEO画分の割合は乾燥物換算で20%のレベルで保持し,HA画分は個々の物質の割合に従って減少させた。すなわちヒアルロン酸の量を減少させた。成分全てを組み込む際は,ヒアルロン酸とポリエチレンオキシドの比は60/20とした。HAのパーセント量(4.5wt%)を維持している乾燥物を4wt%含む改変型の初期混合物及びPVAから溶液のパーセント量だけを差し引いた − (コーヒーノキの緑色種子エキス,グリセロール等)。CMCの初期濃度から液体のパーセント量を差し引き,最後に,PEOから固体のパーセント量を差し引いた。したがって,最終的に3種の担体ポリマーの含有量が減少した。これらの混合物の生産率は生産率Bとして表4に示している。図5は個々の化粧品混合物のナノファイバー層を示している。
【0067】
実施例16
分子量80,000g/molのヒアルロン酸及び分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドの溶液;ならびにカルボキシメチルセルロース,ポリエチレンオキシド及びポリビニルアルコールとのヒアルロン酸の混合物の溶液を調製した。ヒアルロン酸の分子量は80,000g/molであり,ポリエチレンオキシドの分子量は400,000g/molであり,カルボキシメチルセルロースの分子量は150,000g/molであり,16%ポリビニルアルコールの分子量は91,000g/molであった。下記の表3は物質及び物質群がどのように紡糸液に添加されたかを濃度と共に示している。
【0068】
【表3】
C − 80/20の初期比率のHA/PEO
D − 4.5/38.2/38.2/19.1の比率のHA/PEO/CMC/PVA
8種の試料を調製した。
試料Aはその組成物中にHA/PEO及びA群の物質を含む − 上記表3を参照(図6Aも参照)。
試料Bはその組成物中にHA/PEO及びA+B群の物質を含む 上記表3を参照(図6Bも参照)。
試料Cはその組成物中にHA/PEO/CMC/PVA及びA群の物質を含む − 上記表3を参照(図6Cも参照)。
試料Dはその組成物中にHA/PEO/CMC/PVA及びA+B群の物質を含む − 上記表3を参照(図6Dも参照)。
他の2つの試料は,HA/PEO及びA+B+C群の物質,又はA+B+C+D群の物質のいずれかを含んでいた − 上記表3を参照。
他の2つの試料は,HA/PEO/CMC/PVA及びA+B+C群の物質,又はA+B+C+D群の物質のいずれかを含んでいた − 上記表3を参照。
【0069】
全物質のパーセント量を総乾燥物から差し引いた後,残りの乾燥物を80/20の比に配分してから,混合物HA/PEOの比率80/20を保持した。2種の担体ポリマー,ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースの添加剤を含む製品に同様の手順を適用した。ここではパーセント量の総計を再び総乾燥物から差し引き,残留分は,HA/PEO/CMC/PVA比が4.5/38.2/38.2/19.1となるように配分した。これらの混合物の生産率は,生産率C(HA/PEO)及びD(HA/PEO/CMC/PVA)として表3に示す。
【0070】
実施例17
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を13.293g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.8g,乳清タンパク質を0.009g,プロピレングリコールを0.9g,ヤナギラン地上部のエキスを1.8g,アロエベラを0.18g,カルボキシメチルベータグルカンナトリウムを0.018g及び水を280g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で73.1%であった。溶液を20℃で14時間均質化した。溶液は多種の支持体生地に紡糸した。生産率を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例18
分子量83,200g/molのヒアルロナン(HA)を2.385g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.6g,クレアチンを0.015g及び水を47g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で79.5%であった。溶液を振とう装置中,25℃で12時間撹拌し,その後,紡糸した。10mgの試料を重水に溶解し,H NMRスペクトルを測定した(図8)。ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド及びクレアチンを含むナノファイバー層を図9に示す。
【0073】
実施例19
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を2.34g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを0.6g,クレアチンを0.06g及び水を47g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で78%であった。溶液を振とう装置中,20℃で16時間撹拌し,その後,紡糸した。10mgの試料を重水に溶解し,H NMRスペクトルを測定した(図10)。ヒアルロン酸,ポリエチレンオキシド及びクレアチンを含むナノファイバー層を図11に示す。
【0074】
実施例20
パルミチン酸ピリドキシンを含む高分子ミセルを含有する分子量10,000g/molのヒアルロン酸を0.4g,分子量600,000g/molのポリエチレンオキシドを0.1g及び水を4.5g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で80%であった。溶液を振とう装置中,25℃で16時間撹拌し,その後,紡糸した。ナノファイバー層の単位面積重量は10.71g/m2である。脂質成分を含むミセルを含有するナノファイバー層を図12に示す。繊維径は308nmである。
【0075】
実施例21
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.5g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g,大豆タンパク質を0.3g及び水を94g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で69.23%であった。溶液を振とう装置中,40℃で12時間撹拌し,その後,紡糸した。ナノファイバー層を円形に裁断し,大豆タンパク質及び水分の濃度をUV-Visにより測定した。初期濃度は試料の0.05mg/mgであった。紡糸後,濃度は試料の0.045mg/mgまで減少し,相対誤差は3%であった。このことは紡糸プロセスの均一性も証明していた(図13)。図14は,大豆タンパク質と水との混合物を紡糸して得られたナノファイバー層を示す。
【0076】
実施例22
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を8.4g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを2.4g,アセチルヘキサペプチド−8を1.2g及び水を188g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で70%であった。溶液を振とう装置中,25℃で14時間撹拌し,その後,紡糸した。ナノファイバー層を円形に裁断し,アセチルヘキサペプチド−8の濃度をLC-MSにより測定した。初期濃度は試料の0.1mg/mgであった。紡糸後,濃度は試料の0.08mg/mgまで減少し,相対誤差は3%であった。このことは紡糸プロセスの均一性も証明していた(図15)。ナノファイバー層を図16に示す。
【0077】
実施例23
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を5.196g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを6g,乳清タンパク質を0.06g,プロピレングリコールを0.6g,ヤナギラン地上部のエキスを1.2g,アロエベラを0.12g,カルボキシメチルベータグルカンを0.012g及び水を187g含む溶液を調製した。ヒアルロン酸は乾燥物換算で39.4%であった。溶液を20℃で12時間均質化した。溶液は時間を様々に変えて紡糸した(表5)。ナノファイバー層を図17に示す。繊維径は162nmであった。
【0078】
【表5】
【0079】
実施例24
製品塗布後3及び24時間の間の皮膚弾力性に対する化粧美容液及びクリーム美容液形態の即席化粧品の生体内効果に関する比較試験。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.02g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g及び大豆タンパク質を0.18g含む溶液1を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.8g及び分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g含む溶液2を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
オクタン酸及びデカン酸のトリグリセリドを12g,モノステアリン酸グリセリル及びPEG100ステアレートの混合物を5g,アクリル酸ナトリウム,アクリロイルジメチルタウレートの共重合体,イソヘキサデカン及びポリソルベート80の混合物を2g,ポリエチレンオキシドを1.2g,分子量83,200g/molのヒアルロン酸を4.02g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g,ベンジルアルコール及びデヒドロ酢酸の混合物を0.8g,ならびに蒸留水を74.38g含むクリーム美容液(o/wタイプの乳状液)を調製した。
皮膚弾力性に対する乾燥顔用美容液及びクリーム美容液の効果を観察するため,初めに製品の目的用途の部位において前記パラメータの初期値を測定した。次に,溶液1及び2の紡糸した試料ならびに5〜10mgの化粧品を前腕に塗布した。紡糸試料は規定量の水を用いて溶解し,次いで印を付けた領域に広げ,同時にクリーム美容液も広げた。試料は皮膚から除去しなかった。皮膚の即時弾力性に対する製品の効果は,0.5,1,2及び3時間目に観察し(図18),短期間弾力性については,製品の事前の塗布から24時間毎に4日間観察した(図19)。弾力性の測定はプローブCutometer(登録商標)MPA580を用いて行った。
【0080】
実施例25
製品塗布後4週間の間の皮膚弾力性に対する顔用美容液及びクリーム美容液形態の即席化粧品の生体内効果に関する比較試験。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.02g,分子量600,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g及び大豆タンパク質を0.18g含む溶液1を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.8g及び分子量600,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g含む溶液2を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
オクタン酸及びデカン酸のトリグリセリドを12g,モノステアリン酸グリセリル及びPEG100ステアレートの混合物を5g,アクリル酸ナトリウム,アクリロイルジメチルタウレートの共重合体,イソヘキサデカン及びポリソルベート80の混合物を2g,ポリエチレンオキシドを1.2g,分子量83,200g/molのヒアルロン酸を4.02g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g,ベンジルアルコール及びデヒドロ酢酸の混合物を0.8g,ならびに蒸留水を74.38g含むクリーム美容液(o/wタイプの乳状液)を調製した。
皮膚弾力性に対する乾燥顔用美容液及びクリーム美容液の効果を観察するため,初めに製品の目的用途の部位において前記パラメータの初期値を測定した。次に,溶液1及び2の紡糸した試料ならびに5〜10mgの化粧品を前腕に塗布した。紡糸試料は規定量の水を用いて溶解し,次いで印を付けた領域に広げ,同時にクリーム美容液も広げた。試料は皮膚から除去しなかった。皮膚の長期間弾力性に対する製品の効果は,4週間の塗布期間の間,7,14,21及び28日目に観察した(図20)。弾力性の測定はプローブCutometer(登録商標)MPA580を用いて行った。
【0081】
実施例26
製品塗布後2時間以内の皮膚の皮脂量に対する顔用美容液及びクリーム美容液形態の即席化粧品の生体内効果に関する比較試験。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.02g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g及び大豆タンパク質を0.18g含む溶液1を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.8g及び分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g含む溶液2を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
オクタン酸及びデカン酸のトリグリセリドを12g,モノステアリン酸グリセリル及びPEG100ステアレートの混合物を5g,アクリル酸ナトリウム,アクリロイルジメチルタウレートの共重合体,イソヘキサデカン及びポリソルベート80の混合物を2g,ポリエチレンオキシドを1.2g,分子量83,200g/molのヒアルロン酸を4.02g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g,ベンジルアルコール及びデヒドロ酢酸の混合物を0.8g,ならびに蒸留水を74.38g含む化粧品(o/wタイプの乳状液)を調製した。
皮膚の皮脂数値に対する乾燥顔用美容液及びクリーム美容液の効果を観察するため,初めに額領域において前記パラメータの初期値を測定した。次に,溶液1及び2の紡糸した試料ならびに5〜10mgの化粧品を額に塗布した。紡糸試料は規定量の水を用いて溶解し,次いで印を付けた領域に広げ,同時にクリーム美容液も広げた。試料は皮膚から除去しなかった。皮脂の数値は,製品塗布後15分,1及び2時間目に観察した(図21)。皮脂の測定はSebumeter(登録商標)のセットを用いて行った。
【0082】
実施例27
製品塗布後4週間の間の皮膚水分損失(TEWL-Trans Epidermal Water Loss)に対する顔用美容液及びクリーム美容液形態の即席化粧品の生体内効果に関する比較試験。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.02g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g及び大豆タンパク質を0.18g含む溶液1を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.8g及び分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g含む溶液2を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
オクタン酸及びデカン酸のトリグリセリドを12g,モノステアリン酸グリセリル及びPEG100ステアレートの混合物を5g,アクリル酸ナトリウム,アクリロイルジメチルタウレートの共重合体,イソヘキサデカン及びポリソルベート80の混合物を2g,ポリエチレンオキシドを1.2g,分子量83,200g/molのヒアルロン酸を4.02g,プランクトン抽出物を0.06g,アセチルヘキサペプチド−8を0.18g,チャノキの葉エキスを0.3g,アロエベラを0.06g,ベンジルアルコール及びデヒドロ酢酸の混合物を0.8g,ならびに蒸留水を74.38g含む化粧品(o/wタイプの乳状液)を調製した。
皮膚水分損失値(TEWL)に対する乾燥顔用美容液及びクリーム美容液の効果を観察するため,初めに目的の用途の部位において前記パラメータの初期値を測定した。次に,溶液1及び2の紡糸した試料ならびに5〜10mgの化粧品を皮膚に塗布した。紡糸試料は規定量の水を用いて溶解し,印を付けた領域に広げ,同時にクリーム美容液も広げた。試料は皮膚から除去しなかった。TEWL値は,4週間の製品塗布期間の間,7,14,21及び28日目に観察した(図22)。測定はプローブTewameter(登録商標)TM3を用いて行った。
【0083】
実施例28
製品塗布後3時間以内の皮膚弾力性に対するフェイスマスク形態の即席化粧品の生体内効果に関する比較試験。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.176g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.528g,ポリビニルアルコールを0.768g及び分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを1.528g含む溶液1を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,ポリプロピレン不織布上で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.176g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.528g,ポリビニルアルコールを0.768g及び分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを1.528g含む溶液2を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.8g,及び分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g含む溶液3を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
皮膚弾力性に対する乾燥フェイスマスクの効果を観察するため,初めに製品の目的用途の部位において前記パラメータの初期値を測定した。次に,5〜10mgの溶液1,2及び3の紡糸試料を前腕に塗布した。紡糸層によって紡糸液1の試料を湿潤している皮膚に15分間当て,その後,製品を水で除去した。紡糸液2及び3の試料を規定量の水に溶解し,印を付けた領域に広げ,10分間皮膚上に放置した。製品を水で除去した。皮膚の弾力性に対する製品の効果は,塗付後0.5,1,2及び3時間目に観察した(図23)。弾力性の測定はプローブCutometer(登録商標)MPA580を用いて行った。
【0084】
実施例29
製品塗布後3時間以内の皮膚水分損失(TEWL-Trans Epidermal Water Loss)に対するフェイスマスク形態の即席化粧品の生体内効果に関する比較試験。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.176g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.528g,ポリビニルアルコールを0.768g及び分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを1.528g含む溶液1を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,ポリプロピレン不織布上で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を0.176g,分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.528g,ポリビニルアルコールを0.768g及び分子量250,000g/molのカルボキシメチルセルロースを1.528g含む溶液2を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
分子量83,200g/molのヒアルロン酸(HA)を4.8g,及び分子量400,000g/molのポリエチレンオキシドを1.2g含む溶液3を調製した。溶液を振とう装置中で12時間均質化し,その後,自己支持方式で紡糸した。
TEWL値に対するフェイスマスクの効果を観察するため,初めに目的用途の部位において前記パラメータの初期値を測定した。次に,5〜10mgの溶液1,2及び3の紡糸試料を前腕に塗布した。このとき紡糸層によって紡糸液1の試料を湿潤している皮膚に15分間当て,その後,製品を生地と共に水で除去した。紡糸液2及び3の試料を皮膚に塗布し,規定量の水に溶解し,印を付けた領域に広げ,10分間皮膚上に放置した。試料を水で皮膚から除去した。TEWL値は,塗付後0.5,1,2及び3時間目に観察した(図24)。測定はプローブTewameter(登録商標)TM300を用いて行った。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24