特許第6783655号(P6783655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6783655(R)−レチクリンおよびその前駆体を製造するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783655
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】(R)−レチクリンおよびその前駆体を製造するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/12 20060101AFI20201102BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20201102BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20201102BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20201102BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20201102BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C12P17/12ZNA
   C12N9/02
   C12N15/29
   C12N15/53
   C12N15/62 Z
   C12N1/19
【請求項の数】16
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2016-536954(P2016-536954)
(86)(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公表番号】特表2017-500024(P2017-500024A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】CA2014051164
(87)【国際公開番号】WO2015081437
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】61/911,759
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/050,399
(32)【優先日】2014年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516162571
【氏名又は名称】エピメロン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Epimeron Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ファッチーニ,ペーター ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ファロー,スコット キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ボードイン,ギヨーム アーサー ウェルチ
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/058333(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/067070(WO,A2)
【文献】 BMC Plant Biol., 2010, Vol.10, 252 (p.1-17)
【文献】 化学と生物, 1998, Vol.36, No.6, p.393-398
【文献】 化学と生物, 1998, Vol.36, No.8, p.530-533
【文献】 Biochem. Pharmacol., 1997, Vol.54, p.639-647
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を調製するための方法であって、
(a)宿主細胞に、
(i)作動可能に連結される成分として、配列番号325と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むシトクロムP450(CYP450)ポリペプチドをコードする第1の核酸配列と、細胞における第1の核酸配列の発現を制御する第2の核酸配列とを含む第1のキメラ核酸配列と、
(ii)作動可能に連結される成分として、配列番号327または配列番号329と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルド・ケト還元酵素(AKR)ポリペプチドをコードする第3の核酸配列と、細胞における前記第3の核酸配列の発現を制御する第4の核酸配列とを含む第2のキメラ核酸配列と、
を導入するステップと、
(b)前記宿主細胞を増殖させて(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を産生させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記CYP450ポリペプチドが、配列番号325のアミノ酸配列を含み、前記AKRポリペプチドが、配列番号327または配列番号329のアミノ酸配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を調製するための方法であって、
(a)作動可能に連結される成分として、
(i)シトクロムP450(CYP450)ポリペプチドをコードする第1の核酸配列と、
(ii)アルド・ケト還元酵素(AKR)ポリペプチドをコードする第2の核酸配列と、
(iii)宿主細胞における発現を制御することができる1つまたは複数の核酸配列と
を含むキメラ核酸配列を導入するステップと、
(b)前記宿主細胞を増殖させて、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を産生させるステップと
を含み、前記(R)−レチクリン前駆体が、化学式:

[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基であり;
は、水素原子またはメチル基である]
を有するが、(R)−レチクリンが前記式から除外されており、
前記第1の核酸配列が、配列番号325と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、かつ、前記第2の核酸配列が、配列番号327または配列番号329と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、または、
前記キメラ核酸配列が、配列番号323と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記第1の核酸配列が、配列番号325のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、かつ、前記第2の核酸配列が、配列番号327または配列番号329のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、または、前記キメラ核酸配列が、配列番号323のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、前記第1および第2の核酸配列が、CYP450ポリペプチドおよびAKRポリペプチドを含む融合ポリペプチドを産生させるために作動可能に連結されており、前記融合ポリペプチドが配列番号323のアミノ酸配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記方法が、(R)−レチクリンを産生することを特徴とする方法。
【請求項7】
シトクロムP450(CYP450)ポリペプチドおよびアルド・ケト還元酵素(AKR)ポリペプチドを含む単離された組成物であって、
前記CYP450ポリペプチドが、配列番号325と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、
前記AKRポリペプチドが、配列番号327または配列番号329と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
または、
前記CYP450ポリペプチドおよび前記AKRポリペプチドが、配列番号323と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドを形成することを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物において、前記CYP450ポリペプチドが、配列番号325のアミノ酸配列を含み、かつ、前記AKRポリペプチドが、配列番号327または配列番号329のアミノ酸配列を含む、または、前記融合ポリペプチドが、配列番号323のアミノ酸配列を含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の組成物において、前記融合ポリペプチドが、配列番号323のアミノ酸配列を含むことを特徴とする組成物。
【請求項10】
作動可能に連結される成分として、
(a)宿主細胞における発現を制御することができる核酸配列と、
(b)(i)配列番号325と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むシトクロムP450(CYP450)ポリペプチド、および、配列番号327または配列番号329と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルド・ケト還元酵素(AKR)ポリペプチド、または、
(ii)配列番号323と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドと、
をコードする核酸配列とを含む組換え発現ベクターであって、前記発現ベクターが、宿主細胞における発現に適していることを特徴とする組換え発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載のベクターにおいて、前記CYP450ポリペプチドが、配列番号325のアミノ酸配列を含み、かつ、前記AKRポリペプチドが、配列番号327または配列番号329のアミノ酸配列を含む、または、前記融合ポリペプチドが、配列番号323のアミノ酸配列を含むことを特徴とするベクター。
【請求項12】
植物の外で(R)−レチクリンを製造する方法であって、
最適な条件下で、(S)−レチクリンを(R)−レチクリンに変換することができる1つまたは複数の酵素と(S)−レチクリンを接触させるステップと
を含み、
前記1つまたは複数の酵素が、
(a)配列番号325のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むシトクロムP450(CYP450)ポリペプチド、および、配列番号327または配列番号329と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルド・ケト還元酵素(AKR)である、または、
(b)CYP450およびAKRポリペプチドを含み、かつ配列番号323と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する融合ポリペプチドであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記CYP450ポリペプチドが配列番号325のアミノ酸配列を含み、かつ、前記AKRポリペプチドが、配列番号327または配列番号329のアミノ酸配列を含む、または前記融合ポリペプチドが、配列番号323のアミノ酸配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
a)(S)−レチクリンを1,2−デヒドロレチクリンへと酸化することができる第1のポリペプチド;および/または
b)1,2−デヒドロレチクリンを(R)−レチクリンへと還元することができる第2のポリペプチド
を発現するキメラ核酸を含む微生物であって、
前記第1のポリペプチドが配列番号325と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、前記第2のポリペプチドが配列番号327または配列番号329と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、または、
前記第1および第2のポリペプチドが、配列番号323と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドを形成することを特徴とする微生物。
【請求項15】
請求項14に記載の微生物において、前記第1のポリペプチドが配列番号325のアミノ酸配列を含み、かつ、前記第2のポリペプチドが配列番号327または配列番号329のアミノ酸配列を含む、または、前記融合ポリペプチドが配列番号323のアミノ酸配列を含むことを特徴とする微生物。
【請求項16】
請求項14または15に記載の微生物において、前記微生物が酵母であることを特徴とする微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許協力条約出願は、米国特許法第119(e)項に基づいて、2013年12月04日に出願された米国の仮特許出願第61/911,759号明細書および2014年9月15日に出願された米国仮特許出願第62/050,399号明細書の利益を主張するものであり、これらは両方とも、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に開示する組成物および方法は、二次代謝産物およびそれを製造するための方法に関する。さらに詳細には、本開示は、(R)−レチクリンおよびその特定の前駆体、ならびに(R)−レチクリンおよび上記前駆体を製造するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の段落では、本開示の背景について提示する。しかしながら、ここで論じるいかなることも従来技術または当業者の知識の一部であると認めるものではない。
【0004】
生体の生化学経路は一般に、一次代謝部分または二次代謝部分のいずれかとして分類される。生細胞の一次代謝部分である経路は、エネルギー産生のための異化作用または細胞の構成要素を産生するための同化作用に関与する。一方、二次代謝産物は、生細胞により産生されるが、何ら明白な同化機能も異化機能も示さない。しかしながら、多くの二次代謝産物は、例えば治療剤または天然阻害物質としてなど、多くの点で有用であると長い間認識されてきた。
【0005】
二次代謝産物(R)−レチクリンは、ケシ(パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum))ならびに植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、およびクワ科(Moraceae)の他のメンバーにより産生され、モルヒネおよびコデインを含む、医薬として活性な化合物を製造するための原料物質として使用することができる。
【0006】
植物中の(R)−レチクリンは、(S)−レチクリンから生成することが知られている。しかしながら、どの遺伝子およびポリペプチドがこの転換反応を触媒することに関与しているかは明らかではない。
【発明の概要】
【0007】
現在、(R)−レチクリンは、ケシなどの天然供給源から採取することができる。あるいは、(R)−レチクリンは合成的に調製することができる。しかしながら、(R)−レチクリンの既存の製造方法は、(R)−レチクリンの低収率および/または高コストが問題となっている。(S)−レチクリンから(R)−レチクリンを生合成的に製造するための方法は存在しない。したがって、当技術分野では、(R)−レチクリンを合成するための方法の改善が求められている。
【0008】
以下の段落は、その後のより詳細な説明に読者を案内することを意図するものであり、本開示の請求内容を定義するものでも限定するものでもない。
【0009】
本開示は、二次代謝産物(R)−レチクリンおよびその特定の前駆体に関し、また(R)−レチクリンおよびその特定の前駆体の製造方法に関する。
【0010】
したがって、本開示は、少なくとも1つの態様において、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリンの前駆体を製造する方法であって、
(a)ベンジルイソキノリン誘導体を準備するステップと、
(b)(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体へのベンジルイソキノリン誘導体の変換を可能にする条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体に変換することができる酵素混合物とベンジルイソキノリン誘導体を接触させるステップと
を含む方法の少なくとも1つの実施形態を提供する。
【0011】
本開示はさらに、少なくとも1つの態様において、(R)−レチクリンまたはその前駆体を製造する方法であって、
(a)ベンジルイソキノリン誘導体を準備するステップと、
(b)(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体へのベンジルイソキノリン誘導体の変換を可能にする条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体に変換することができる酵素混合物とベンジルイソキノリン誘導体を接触させるステップと
を含み、
ベンジルイソキノリン誘導体は、化学式(I):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
を有し;かつ(R)−レチクリン前駆体は、化学式(II):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
を有するが、化学式(II)は(R)−レチクリンを除外する方法の少なくとも1つの実施形態を提供する。
【0012】
好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体において、Rはメトキシ基であり;Rはヒドロキシル基であり;Rはヒドロキシル基であり;Rはメトキシ基であり、Rはメチル基であり、(S)−レチクリンとしても知られる化学式:
で示される。
【0013】
さらに好ましい実施形態では、酵素混合物は、ベンジルイソキノリン誘導体を酸化して、化学式(IV):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
を有する酸化ベンジルイソキノリン誘導体を形成させることができる第1のポリペプチドと、酸化ベンジルイソキノリン誘導体(IV)を還元して、(R)−レチクリンまたは化学式(II):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
(ただし、化学式(II)は(R)−レチクリンを除外する)を有する(R)−レチクリン前駆体を形成させることができる第2のポリペプチドとを含む。
【0014】
さらに好ましい実施形態では、酵素混合物は、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができる第1のポリペプチドと、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドとを含む。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体を酸化して酸化ベンジルイソキノリン誘導体を形成させることができる第1のポリペプチドは、シトクロムP450であり、酸化ベンジルイソキノリン誘導体を還元して(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を形成させることができる第2のポリペプチドは、アルド・ケト還元酵素(AKR)である。
【0016】
本開示によれば、本方法は、以下に限定されるものではないが、植物、植物細胞培養物、微生物、および無細胞系を含む、in vitroまたはin vivoで行うことができる。
【0017】
本明細書ではさらに、CYP450およびAKRまたはそれらの混合物からなる群から選択される酵素を調製するための方法であって、
(a)作動可能に連結される成分として、
(i)CYP450およびAKRからなる群から選択されるポリペプチドの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列と、
(ii)宿主細胞における発現を制御することができる1つまたは複数の核酸配列と
を含むキメラ核酸配列を準備するステップと、
(b)キメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、宿主細胞を増殖させて、CYP450およびAKRからなる群から選択されるポリペプチドを産生させるステップと、
(c)CYP450およびAKRからなる群から選択されるポリペプチドを宿主細胞から回収するステップと
を含む方法を提供する。
【0018】
本明細書ではまたさらに、(R)−レチクリンまたは化学式(II)を有する(R)−レチクリン前駆体を調製するための方法であって、
(a)作動可能に連結される成分として、
(i)CYP450ポリペプチドをコードする第1の核酸配列と、
(ii)AKRポリペプチドをコードする第2の核酸配列と、
(iii)宿主細胞における発現を制御することができる1つまたは複数の核酸配列と
を含むキメラ核酸配列を準備するステップと、
(b)キメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、宿主細胞を増殖させて、CYP450およびAKRを産生させ、かつ(R)−レチクリンまたは化学式(II)を有する(R)−レチクリン前駆体を産生させるステップと、
(c)(R)−レチクリンまたは化学式(II)を有する(R)−レチクリン前駆体を回収するステップと
を含む方法を提供する。
【0019】
好ましい実施形態では、第1および第2の核酸配列は、CYP450およびAKRを含む融合ポリペプチドを産生させるために作動可能に連結される。
【0020】
本明細書ではさらに、(R)−レチクリンまたは化学式(II)を有する(R)−レチクリン前駆体を調製するための方法であって、
(a)作動可能に連結される成分として、CYP450ポリペプチドをコードする第1の核酸配列と、細胞におけるこの第1の核酸配列の発現を制御する第1の核酸配列とを含む第1のキメラ核酸配列を準備するステップと、
(b)作動可能に連結される成分として、AKRポリペプチドをコードする第2の核酸配列と、細胞におけるこの第2の核酸配列の発現を制御する第2の核酸配列とを含む第2のキメラ核酸配列を準備するステップと、
(c)第1および第2のキメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、宿主細胞を増殖させて、CYP450およびAKRを産生させ、かつ(R)−レチクリンまたは化学式(II)を有する(R)−レチクリン前駆体を産生させるステップと、
(d)(R)−レチクリンまたは化学式(II)を有する(R)−レチクリン前駆体を回収するステップと
を含む方法を提供する。
【0021】
本開示はさらに、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができる第1のポリペプチドと、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドとを含む酵素混合物を含む、(R)−レチクリンを製造するための組成物を提供する。
【0022】
好ましい実施形態では、酵素混合物は、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができる第1のポリペプチドと、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドとを含む。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができる第1のポリペプチドは、シトクロムP450であり、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドは、アルド・ケト還元酵素である。
【0024】
本発明はまたさらに、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができる第1のポリペプチドと、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドとをコードする核酸配列を含む組成物を提供する。好ましい実施形態では、核酸配列は、一緒になって(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができるシトクロムP450およびアルド・ケト還元酵素と、2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドとをコードする核酸配列である。
【0025】
本開示はさらに、試料、例えば植物細胞を含む試料中のAKRおよび/またはCYP450の有無を検出するために、植物細胞および他の細胞におけるAKRおよび/またはCYP450の発現を調節するために、また植物集団における、AKRおよび/またはCYP450に遺伝学的に連鎖した遺伝子の分離を評価するためのマーカーとして、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列を使用する方法を含む。
【0026】
さらなる実施形態では、本開示は、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列の有無を検出する方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列を含むと推測される試料を準備するステップと、
(b)AKRおよび/またはCYP450をコードするヌクレオチド配列の存在について試料を分析するステップと
を含む方法を提供する。
【0027】
さらなる実施形態では、本開示は、AKRおよび/またはCYP450を天然に発現する細胞における核酸配列の発現を調節するための方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450を天然に発現する細胞を準備するステップと、
(b)細胞を突然変異誘発させるステップと、
(c)細胞を増殖させて複数の細胞を得るステップと、
(d)この複数の細胞が、レベル調節されたAKRおよび/またはCYP450を含む細胞を含むか否かを判定するステップと
を含む方法を提供する。
【0028】
またさらなる実施形態では、本開示は、細胞におけるAKRおよび/またはCYP450の発現を低減する方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450を発現する細胞を準備するステップと、
(b)細胞におけるAKRおよび/またはCYP450の発現をサイレンシングするステップと
を含む方法を提供する。
【0029】
本開示の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明は、本開示の好ましい実行形態を示すものであるが、本開示の精神および範囲に入る種々の変更形態および修正形態が詳細な説明から当業者には明らかになる以上、例示のみを目的としてなされるものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の本開示において、図に関して説明する段落を提示する。本明細書に提供する図は、例示目的のために提供されるものであり、本開示を限定することを意図するものではない。
【0031】
図1図1は、種々のベンジルイソキノリン前駆体の(R)−レチクリン、(R)−レチクリン前駆体、モルヒネ、およびサルタリジンへの合成経路を示す図である。記載化合物の化学構造が含まれる。
図2図2は、(S)−レチクリンおよびその合成中間体から(R)−レチクリンを製造するための合成経路を示す図である。合成中間体の化学構造および合成中間体の化学変換を触媒することができる酵素が含まれる。
図3図3は、実施例1にさらに詳細に記載される、(S)−レチクリンの(R)−レチクリンへの変換を提供する本開示の実施形態の一連のHPLCトレースを示す図である。
図4図4は、実施例2にさらに詳細に記載される、(S)−レチクリンの1,2−デヒドロレチクリンへの変換を提供する本開示の実施形態の一連のHPLCトレースを示す図である。
図5図5は、実施例3にさらに詳細に記載される、1,2−デヒドロレチクリンの(R)−レチクリンへの変換を提供する本開示の実施形態の一連のHPLCトレースを示す図である。
図6図6は、実施例4にさらに詳細に記載される、(S)−N−メチルコクラウリンの(R)−N−メチルコクラウリンへの変換を提供する本開示の実施形態の一連のHPLCトレースを示す図である。
図7図7は、実施例5にさらに詳細に記載される、遺伝子サイレンシング実験に関して得られた結果を示す図である。図7Aおよび図7Cは、REPI遺伝子の2つの異なる領域を標的にし、図7Bは、COR1.3遺伝子の1つの領域を標的にしている。図7A〜7Cのそれぞれにおいて、異なるパネルは以下のことを表す。(パネルA)pTRV2コンストラクトを構築するために使用したREPIまたはCOR1.3のcDNAのフラグメント(灰色ボックス)。黒色ボックスはコード領域を表し、一方黒線は隣接する非翻訳領域である。矢印は、qRT−PCR分析に使用したプライマーのアニーリング部位を示す。(パネルB)pTRV2−REPI−a、pTRV2−REPI−5’、もしくはpTRV2COR1.3のコンストラクト、またはpTRV2空ベクター対照を保持するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が浸潤した個々の植物から抽出した全RNAを使用するRT−PCRによるpTRV2ベクターの検出を示す臭化エチジウム染色アガロースゲル。PCRプライマー(TRV2−MCS)を、pTRV2のマルチクローニングサイト(MCS)に隣接する領域にアニールするように設計した。(パネルC)対照(pTRV2)と比較した、REPIサイレンシング(pTRV2−REPI−a;pRTV2−REPI−5’)またはCORl.3サイレンシング(pRTV2−COR1.3)植物における茎および根の相対的なREPIまたはCOR1.3転写物レベル。(パネルD)対照(pTRV2)と比較した、REPIサイレンシング(pTRV2−REPI−a;pRTV2−REPI−5’)またはCORl、3サイレンシング(pRTV2−COR1.3)植物における主要なアルカロイドのプロファイルを示す全イオンクロマトグラム。(パネルE)対照(pTRV2)と比較して、REPIサイレンシング(pTRV2−REPI−a;pRTV2−REPI−5’)またはCORl.3サイレンシング(pRTV2−COR1.3)植物において抑制されたレベルを示す主要なラテックスアルカロイドおよび他のアルカロイドの相対的存在量。(パネルF)対照(pTRV2)と比較した、REPIサイレンシング(pTRV2−REPI−a;pRTV2−REPI−5’)またはCORl、3サイレンシング(pRTV2−COR1.3)植物における(S)−レチクリンと(R)−レチクリンとの比。アスタリスクは、不対両側スチューデントt検定(p<0.05)を使用して判定された有意差を示す。バーは、6つの個々に浸潤された植物のそれぞれについて、3つの技術的レプリケートから得られた値の平均±標準偏差を表す。
図8図8は、実施例6にさらに詳細に記載される、還元剤および酸化剤の存在下でAKRポリペプチドの活性を評価すると得られた結果を示す図である。図8Aは、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)のレチクリンエピメラーゼ(REPI)の1,2−デヒドロレチクリンレダクターゼ(PsDRR)成分の活性を示す。NADHまたはNADPHの存在下で、PsDRRは、1,2−デヒドロレチクリン[1]を(R)−レチクリン[2]に変換する(図8A、パネルA)。NADまたはNADPの存在下で、PsDRRは、(R)−レチクリン[2]を1,2−デヒドロレチクリン[1]に変換する(図8A、パネルB)。図8Bは、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)由来の1,2−デヒドロレチクリンレダクターゼ(PrDRR)の活性を示す。NADHまたはNADPHの存在下で、PrDRRは、1,2−デヒドロレチクリン[1]を(R)−レチクリン[2]に変換する(図8B、パネルA)。NADまたはNADPの存在下で、PrDRRは、(R)−レチクリン[2]を1,2−デヒドロレチクリン[1]に変換する(図8B、パネルB)。
図9図9は、実施例7にさらに詳細に記載される、CYP450およびAKRポリペプチドのpH依存性を評価すると得られた結果を示す図である。NADPH(PsDRS順方向)の存在下およびNADP(PsDRS逆方向)の存在下で、パヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)のCYP450(PsDRS)およびAKRを使用して得られた結果を示す(パネルA)。さらに、NADPH(PrDRS順方向)の存在下およびNADP(PrDRS逆方向)の存在下で、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)のCYP450(PrDRS)およびAKRを使用して得られた結果を示す(パネルB)。
図10図10は、実施例8にさらに詳細に記載される、ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)を受けたケシ植物におけるREPIおよびCORの転写物レベルの同時抑制を示す図である。CORのサイレンシングが標的にされた植物(pTRV2−COR1.3)は、CORの有意な抑制を示し(図10−下部パネル)、さらにREPIの抑制も示した(図10−上部パネル)。REPIおよびCORの両方に見出される保存領域を使用して、REPIのサイレンシングが標的にされた植物(pTRV2−REPIa)も、COR(図10−下部パネル)およびREPI(図10−上部パネル)の有意な抑制を示した。REPIのユニークな領域であって、CORには見出されない領域を使用して、REPIのサイレンシングが標的にされた植物(pTRV2−REPIb)は、CORの同時サイレンシングを示さなかった(図10−下部パネル)。pTRV2は空ベクトル対照である。アスタリスクは、不対スチューデントt検定(P<0.05)を使用すると、対照と比較して有意に差がある値を示す。エラーバーは平均±標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
各請求内容の実施形態の例を提供するために、種々の組成物および方法を以下に記載する。以下に記載の実施形態は、請求内容を何ら限定するものではなく、いずれの請求内容も、以下に記載のものと異なる方法、工程、組成物、またはシステムを包含することができる。請求内容は、以下に記載のいずれか1つの組成物、方法、システム、または工程の特徴のすべてを有する組成物または方法、あるいは以下に記載の組成物、システム、または方法の複数またはすべてに共通の特徴に限定されるものではない。以下に記載の組成物、システム、方法、または工程がいずれの請求内容の実施形態でもないことはあり得る。本文書に請求されていない、以下に記載の組成物、システム、方法、または工程において開示されるいずれの内容も、別の保護文書、例えば継続特許出願の内容であり得るものであり、出願人、発明者、または所有者は、本文書における開示によって、何らそのような内容を放棄、否認、または公開する意図はない。
【0033】
本明細書に使用する「実質的に」、「本質的に」、「約」、および「およそ」などの程度に関する用語は、最終結果があまり変化しないような、修飾された用語の妥当な量の偏差を意味する。程度に関するこのような用語は、この偏差によりそれが修飾する用語の意味が打ち消されない場合に、修飾された用語の偏差を含むものとして解釈されるべきである。
【0034】
本明細書で使用する場合、「および/または」という語法は、包含的論理和を表すことを意図する。すなわち、「Xおよび/またはY」は、例えば、XもしくはYまたはその両方を意味することを意図する。さらなる例として、「X、Y、および/またはZ」は、XもしくはYもしくはZまたはそれらの組合せを意味することを意図する。
【0035】
刊行物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の刊行物それぞれであるように、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
本明細書で上述するように、本開示は、二次代謝産物(R)−レチクリンおよびその前駆体に関し、また(R)−レチクリンおよびその前駆体の製造方法に関する。本開示はさらに、(S)−レチクリンを変換して(R)−レチクリンを形成させる反応を触媒することができる特定の酵素に関する。本明細書に提供する方法は、(R)−レチクリンおよびその前駆体を製造する新規で効率的な手段を表す。本明細書に提供する方法は、化学合成に依存せず、工業規模で行うことができる。本発明者らが知る限りでは、本開示は、通常は(R)−レチクリンおよびその前駆体を合成することができない生細胞を使用して、(R)−レチクリンおよびその前駆体を製造する方法論を初めて提供する。(R)−レチクリンおよびその前駆体を経済的に抽出することができる供給源として、そのような細胞を使用することができる。本開示に従って産生される(R)−レチクリンおよびその前駆体は、モルヒネおよびコデインを含む医薬組成物の製造にとりわけ有用である。
【0037】
したがって、本開示は、少なくとも1つの態様において、(R)−レチクリンまたはその前駆体を製造する方法であって、
(a)ベンジルイソキノリン誘導体を準備するステップと、
(b)(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体へのベンジルイソキノリン誘導体の変換を可能にする条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体に変換することができる酵素混合物とベンジルイソキノリン誘導体を接触させるステップと
を含む方法の少なくとも1つの実施形態を提供する。
【0038】
本開示はさらに、少なくとも1つの態様において、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリンの前駆体を製造する方法であって、
(a)ベンジルイソキノリン誘導体を準備するステップと、
(b)(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体へのベンジルイソキノリン誘導体の変換を可能にする条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体に変換することができる酵素混合物とベンジルイソキノリン誘導体を接触させるステップと
を含み、
ベンジルイソキノリン誘導体は、化学式(I):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
を有し;かつR−レチクリン前駆体は、化学式:
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
を有する方法の少なくとも1つの実施形態を提供する。
【0039】
定義
「ベンジルイソキノリン誘導体」という用語は、化学式(VII):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ独立にまたは同時に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、C〜C10−アルキル)またはアルコキシ基(例えば、C〜C10−アルコキシ)であり、Rは水素原子またはアルキル基(例えば、C〜C10−アルキル)を表す]を有する化合物を指す。
【0040】
本明細書で使用する「(R)−レチクリン前駆体」という用語は、化学式(VIII):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ独立にまたは同時に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、C〜C10−アルキル)またはアルコキシ基(例えば、C〜C10−アルコキシ)であり、Rは、水素原子またはアルキル基(例えば、C〜C10−アルキル)を表す]を有する化合物を指すが、化学式(VIII)は(R)−レチクリンを除外する、すなわち、本明細書で使用する(R)−レチクリン前駆体という用語から具体的に除外されるのは、Rがメトキシ基、Rがヒドロキシル基、Rがヒドロキシル基、Rがメトキシ基、Rがメチル基である化合物である。
【0041】
本明細書で使用する「(S)−レチクリン」という用語は、レチクリンの(S)−エナンチオマーおよび化学構造(III):
を有する化合物を指す。
【0042】
「酸化ベンジルイソキノリン誘導体」という用語は、化学式(IX):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ独立にまたは同時に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、C〜C10−アルキル)またはアルコキシ基(例えばC〜C10−アルコキシ)であり、Rは、水素原子またはアルキル基(例えば、C〜C10−アルキル)を表す]を有する化合物を指す。
【0043】
本明細書で使用する「(R)−レチクリン」という用語は、レチクリンの(R)−エナンチオマーおよび化学構造(V):
を有する化合物を指す。
【0044】
「1,2−デヒドロレチクリン」という用語は、化学構造(VI):
を有する化合物を指す。
【0045】
本明細書で互換的に使用することができる、「(R)−レチクリン経路」または「(R)−レチクリン合成経路」という用語は、図1に示す(R)−レチクリンの合成のための代謝経路を指す。(R)−レチクリン経路内の第1の化合物が、この経路の第2の化合物の“”として参照される場合、第1の化合物の合成が第2の化合物の合成に先行することを本明細書では意味する。反対に、(R)−レチクリン経路において、第1の化合物が第2の化合物の「下流」として参照される場合、第2の化合物の合成が第1の化合物の合成に先行することを本明細書では意味する。
【0046】
本明細書で使用する「酵素混合物」という用語は、1つまたは2つ以上の酵素を含む混合物を指す。2つ以上の酵素を含有する混合物では、酵素は、相互作用または配位して混合物を形成することなく、独立して生物学的に活性であり得る。一実施形態では、酵素混合物に含有される酵素は、独立した不連続のポリペプチド鎖として結合または相互作用することができる。別の実施形態では、酵素混合物は、2つのポリペプチド間の融合ポリペプチドとして調製することができる。
【0047】
本明細書で互換的に使用することができる、「シトクロムP450」、「CYP450」、または「P450」という用語は、(i)例えば、配列番号219〜配列番号321;配列番号325;および配列番号338を含む、本明細書に示す任意のCYP450ポリペプチドを構成するアミノ酸配列に実質的に同一であるか、または(ii)同義コドンの使用を除いて、本明細書に示す任意のCYP450ポリペプチドをコードする任意の核酸配列に、少なくとも中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる核酸配列によりコードされるアミノ酸残基の配列を含むあらゆる酵素を指す。
【0048】
本明細書で互換的に使用することができる、「アルド・ケト還元酵素」または「AKR」という用語は、(i)例えば、配列番号59〜配列番号115;配列番号327;配列番号329;配列番号330;および配列番号340を含む、本明細書に示す任意のAKRポリペプチドを構成するアミノ酸配列に実質的に同一であるか、または(ii)同義コドンの使用を除いて、本明細書に示す任意のAKRポリペプチドをコードする任意の核酸配列に、少なくとも中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる核酸配列によりコードされるアミノ酸残基の配列を含むあらゆる酵素を指す。
【0049】
本明細書で使用する「核酸配列」という用語は、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)結合からなるヌクレオシドまたはヌクレオチドの単量体の配列を指す。この用語はまた、天然に存在しないモノマーまたはその一部を含む修飾または置換配列を含む。本開示の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)であってもリボ核酸配列(RNA)であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む天然に存在する塩基を含むことができる。配列はまた、修飾塩基を含有することができる。そのような修飾塩基の例としては、アザおよびデアザアデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシル、ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。
【0050】
本明細書で互換的に使用する「CYP450をコードする核酸配列」および「CYP450ポリペプチドをコードする核酸配列」という用語は、例えば、配列番号116〜配列番号218;配列番号324;および配列番号337を含む、CYP450ポリペプチドをコードするあらゆる核酸配列を指す。CYP450ポリペプチドをコードする核酸配列はさらに、(i)本明細書に示すCYP450ポリペプチド配列に実質的に同一であるポリペプチドをコードするか;または(ii)同義コドンの使用を除いて、少なくとも中程度のストリンジェントな条件下で、本明細書に示す任意のCYP450核酸配列にハイブリダイズするか、もしくは少なくとも中程度のストリンジェントな条件下で、それにハイブリダイズするであろうあらゆる核酸配列を含む。
【0051】
本明細書で互換的に使用する「AKRをコードする核酸配列」および「AKRポリペプチドをコードする核酸配列」という用語は、例えば、配列番号1〜配列番号58;配列番号326;配列番号328;および配列番号339を含む、AKRポリペプチドをコードするあらゆる核酸配列を指す。AKRポリペプチドをコードする核酸配列はさらに、(i)本明細書に示すAKRポリペプチド配列に実質的に同一であるポリペプチドをコードするか;または(ii)同義コドンの使用を除いて、少なくとも中程度のストリンジェントな条件下で、本明細書に示す任意のCYP450核酸配列にハイブリダイズするか、もしくは少なくとも中程度のストリンジェントな条件下で、それにハイブリダイズするであろうあらゆる核酸配列を含む。
【0052】
「実質的に同一の」という用語は、2つのポリペプチド配列が、好ましくは少なくとも70%同一であり、より好ましくは少なくとも85%同一であり、最も好ましくは少なくとも95%同一であり、例えば、96%、97%、98%、または99%同一であることを意味する。2つのポリペプチド配列間の同一性のパーセントを決定するために、そのような2つの配列のアミノ酸配列は、例えば、2つの配列間で最高位のマッチが得られ、かつ2つの配列間で同一アミノ酸の数が決定されるように、SmithおよびWaterman(Adv.Appl.Math.,1981,2:482)により修正された、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.,1970,48:443)のアライメント方法を使用して、アライメントされる。2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を算出する方法は、一般に当技術分野で認識されており、例えば、CarilloおよびLipton(SIAM J.Applied Math.,1988,48:1073)に記載のもの、およびComputational Molecular Biology,Lesk,e.d.Oxford University Press,New York,1988,Biocomputing:Informatics and Genomics Projectsに記載のものが含まれる。一般に、そのような計算のためにコンピュータプログラムが使用される。この点に関して使用することができるコンピュータプログラムとしては、以下に限定されるものではないが、GCG(Devereux et al.,Nucleic Acids Res.,1984,12:387)BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul et al.,J.Molec.Biol.,1990:215:403)が挙げられる。2つのポリペプチド間のパーセント同一性を決定するための特に好ましい方法には、2つの配列のうちの一方の全長の少なくとも50%がアライメントに含まれる2つの配列間で最高位マッチが得られるように、10のギャップ開始ペナルティおよび0.1のギャップ伸長ペナルティを使用して、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff S & Henikoff,J G,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919)と一緒に用いる、Clustal Wアルゴリズム(Thompson,J D,Higgines,D G and Gibson T J,1994,Nucleic Acid Res 22(22):4673−4680)が含まれる。
【0053】
「少なくとも中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、溶液中の2つの相補的な核酸分子間の選択的なハイブリダイゼーションを促進する条件が選択されていることを意味する。ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子のすべてに生じることも一部に生じることもある。ハイブリダイズする部分は、典型的には、少なくとも15(例えば、20、25、30、40、または50)ヌクレオチド長である。当業者ならば、核酸二本鎖またはハイブリッドの安定性は、ナトリウム含有緩衝液中では、ナトリウムイオン濃度および温度の関数であるTmにより判定される(Tm=81.5℃−16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)−600/l)、または同様の式)ことを認識していよう。したがって、ハイブリッド安定性を決定する洗浄条件のパラメーターは、ナトリウムイオン濃度および温度である。既知核酸分子に同様であるが同一ではない分子を同定するために、1%のミスマッチがTmの1℃の低下をもたらすと仮定することができ、例えば、95%超の同一性を有する核酸分子を求める場合、最終的な洗浄温度は約5℃低下させることになる。これらの考察に基づいて、当業者は、適切なハイブリダイゼーション条件を容易に選択することができる。好ましい実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例として、下記の条件を、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するために使用することができる:Tm(上記の式に基づいて)−5℃における5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハート液/1.0%SDSでのハイブリダイゼーション、次いで60℃での0.2×SSC/0.1%SDSの洗浄。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃で3×SSCの洗浄ステップを含む。しかしながら、代替のバッファー、塩、および温度を使用して、等価なストリンジェンシーを達成することができることは理解されている。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなる手引きは、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.,1989,6.3.1.−6.3.6、およびSambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,Vol.3に見出される。
【0054】
核酸配列の文脈では、本明細書で使用する「キメラ」という用語は、天然では連結していない少なくとも2つの連結した核酸配列を指す。キメラ核酸配列には、異なる天然起源からなる連結した核酸配列が含まれる。例えば、CORタンパク質をコードする核酸配列に酵母プロモーターを構成する核酸配列を連結すると、キメラであると見なされる。キメラ核酸配列はまた、同じ天然起源であるが、天然には連結していない核酸配列を含むこともある。例えば、特定の細胞型から得られたプロモーターを構成する核酸配列を、同じ細胞型から得られるが、プロモーターを構成する核酸配列に通常は連結していないポリペプチドをコードする核酸配列に連結してもよい。キメラ核酸配列にはまた、任意の天然に存在しない核酸配列に連結した任意の天然に存在する核酸配列を含む核酸配列が含まれる。
【0055】
本明細書で互換的に使用することができる「実質的に純粋な」および「単離された」という用語は、それに天然では付随する成分から分離されている化合物、例えば、経路合成中間体またはポリペプチドを記載する。典型的には、試料中の全物質の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、または98%、および最も好ましくは少なくとも99%(容積基準で、湿潤もしくは乾燥重量基準で、モルパーセントまたはモル分率基準で)が目的の化合物である場合に、化合物は実質的に純粋である。純度は、任意の適切な方法、例えば、ポリペプチドの場合には、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、またはHPLC分析により測定することができる。
【0056】
酵素またはタンパク質に関連して本明細書で使用する「回収された」という用語は、酵素またはタンパク質の多かれ少なかれ純粋な形態を指す。
【0057】
(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を製造する方法を記載するために、本明細書で使用する「in vivo」という用語は、例えば微生物細胞または植物細胞を含む生細胞内で、ベンジルイソキノリン誘導体の変換を触媒して(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を形成させることができる酵素とベンジルイソキノリン誘導体を接触させることを指す。
【0058】
(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を製造する方法を記載するために、本明細書で使用する「in vitro」という用語は、限定されるものではないが、例えばマイクロウェルプレート、チューブ、フラスコ、ビーカー、タンク、反応器等を含む、生細胞の外の環境で、ベンジルイソキノリン誘導体の変換を触媒して(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を形成させることができる酵素とベンジルイソキノリン誘導体を接触させることを指す。
【0059】
実施概要
(R)−レチクリンおよび(R)−レチクリン前駆体の合成
本開示は、少なくとも1つの態様において、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を製造する少なくとも1つの実施形態であって、
(a)ベンジルイソキノリン誘導体を準備するステップと、
(b)(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体へのベンジルイソキノリン誘導体の変換を可能にする条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体に変換することができる酵素混合物とベンジルイソキノリン誘導体を接触させるステップと
を含み、
ベンジルイソキノリン誘導体は、化学式(I):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
を有し;また(R)−レチクリン前駆体は、化学式(II):
[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;
は、水素原子またはメチル基を表す]
を有するが、化学式(II)は(R)−レチクリンを除外する実施形態を提供する。
【0060】
好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rが水素原子またはヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基またはメトキシ基であり、かつRが水素原子またはメチル基である誘導体である。
【0061】
さらに好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRが水素原子である誘導体である。この化合物は、(S)−コクラウリンとしても知られている(図1を参照のこと)。
【0062】
さらに好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体である。この化合物は、(S)−N−メチル−コクラウリンとしても知られている(図1を参照のこと)。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体である。この化合物は、(S)−3’−ヒドロキシ−N−メチルコクラウリンとしても知られている(図1を参照のこと)。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがメトキシ基であり、かつRがメチル基である誘導体である。この化合物は、(S)−レチクリンとしても知られている(図1;化合物(III)を参照のこと)。
【0065】
さらに好ましい実施形態では、(R)−レチクリン誘導体(II)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rが水素原子またはヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体である。
【0066】
さらに好ましい実施形態では、(R)−レチクリン誘導体(II)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体である。この化合物は、(R)−N−メチルコクラウリンとしても知られている(図1を参照のこと)。
【0067】
さらに好ましい実施形態では、(R)−レチクリン誘導体(II)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体である。この化合物は、(R)−3’−ヒドロキシ−N−メチルコクラウリンとしても知られている(図1を参照のこと)。
【0068】
さらに好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体であり;(R)−レチクリン誘導体(II)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rが水素原子であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体である。
【0069】
さらに好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体であり;(R)−レチクリン誘導体(II)は、Rがメトキシ基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、Rがヒドロキシル基であり、かつRがメチル基である誘導体である。
【0070】
本開示の好ましい実施形態では、(R)−レチクリンを製造する方法であって、
(a)(S)−レチクリンを準備するステップと、
(b)(S)−レチクリンの(R)−レチクリンへの変換を可能にする条件下で、(S)−レチクリンを(R)−レチクリンに変換することができる酵素混合物と(S)−レチクリンを接触させるステップと
を含む方法を提供する。
【0071】
好ましい実施形態では、酵素混合物は、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができる第1のポリペプチドと、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドとを含む(図2を参照のこと)。
【0072】
好ましい実施形態では、酵素混合物は、ベンジルイソキノリン誘導体(I)を酸化して、化学式IV:
[式中、好ましい実施形態では、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;Rは、好ましい実施形態では、水素原子またはメチル基を表す]を有する酸化ベンジルイソキノリン誘導体を形成させることができる第1のポリペプチドと、化学式(IV)を有する酸化ベンジルイソキノリン誘導体を還元して、(R)−レチクリンまたは化学式(II)[式中、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、またはメトキシ基を表し;Rは、水素原子またはメチル基を表す](ただし、化学式(II)は(R)−レチクリンを除外する)を有する(R)−レチクリン誘導体を形成させる第2のポリペプチドとを含む。
【0073】
好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体(I)を酸化して酸化ベンジルイソキノリン誘導体(IV)を形成させることができる第1のポリペプチドは、シトクロムP450であり、酸化ベンジルイソキノリン誘導体を還元して(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン誘導体を形成させることができる第2のポリペプチドは、アルド・ケト還元酵素(AKR)である。特に好ましい実施形態では、AKRポリペプチドは、P.ソムニフェルム(P.somniferum)、P.ブラクテアツム(P.bracteatum)、およびP.ロエアス(P.rhoeas)から得られるか、または得られ得る。
【0074】
特定の実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、2つの別々のポリペプチド、すなわち、共有結合により結合されていないポリペプチドの形態で提供される。特定の好ましい実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、CYP450ポリペプチドをコードする第1の部分と、AKRポリペプチドをコードする第2の部分とを含む融合ポリペプチドとして調製される。そのような融合ポリペプチドは、組換えにより調製してもよく、配列番号323に示すパパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)ポリペプチドなど、使用することができる天然に存在する融合ポリペプチドであってもよい。
【0075】
本開示に従って使用することができるCYP450ポリペプチドの例としては、配列番号219〜配列番号321;配列番号325;および配列番号338に示すポリペプチドが挙げられる。本開示に従って使用することができるAKRポリペプチドの例としては、配列番号59〜配列番号115;配列番号327;配列番号329;配列番号330;および配列番号340に示すポリペプチドが挙げられる。
【0076】
前述の反応は、ベンジルイソキノリン前駆体の(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体への変換を可能にする条件下で行なわれる。この条件は、以下にさらに詳細に記載される、in vivoまたはin vitroでの条件を含む。この条件はさらに典型的には、水および緩衝剤の存在を含む。さらに典型的には、酸化ベンジルイソキノリン前駆体の(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体への変換をもたらす還元反応を可能にするために、還元剤が含まれる。還元剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)であってもよく、他の実施形態では、還元剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)である。さらに典型的には、ベンジルイソキノリン誘導体を酸化ベンジルイソキノリンに変換する酵素を還元することができる還元酵素および還元剤が反応物に含まれる。好ましい実施形態では、還元酵素は、例えば、CYP450を還元することができるケシのシトクロムP450還元酵素などのシトクロムP450還元酵素であり、還元剤はNADHまたはより好ましくはNADPHである。さらに、反応は、種々のpH、例えば、約pH3、pH4、pH5、pH6、pH7、pH8、pH9、またはpH10で行うことができることに注目されたい。本明細書の実施例7に示すように、種々のpH範囲で反応を行い、反応速度を評価することによって、最適pHを同定することができることは、当業者には明らかである。最適pHは、例えば、本明細書に従って選択される基質および酵素に応じて変動する可能性がある。したがって、単なる例として、実施例7では、(S)−レチクリンの1,2−デヒドロレチクリンへの変換に対する最適pHを約pH8、1,2−デヒドロレチクリンの(R)−レチクリンへの変換に対する最適pHを約pH7、また(R)−レチクリンの1,2−デヒドロレチクリンへの変換に対する最適pHを約pH9と記述する。
【0077】
本明細書によると、選択される反応条件に応じて、1,2−デヒドロレチクリンの(R)−レチクリンへの変換を含む反応が逆転するかまたは部分的に逆転する可能性があることに注目されたい。したがって、実施例6に記述するように、(R)−レチクリンは、1,2−デヒドロレチクリンに変換されることがある。したがって、本開示はさらに、1,2−デヒドロレチクリンを製造する方法であって、
(a)(R)−レチクリンを準備するステップと、
(b)(R)−レチクリンの1,2−デヒドロレチクリンへの変換を可能にする条件下で、(R)−レチクリンを1,2−デヒドロレチクリンに変換することができるAKRポリペプチドと(R)−レチクリンを接触させるステップと
を含む方法を提供する。前述の反応を行なうために使用することができるAKRポリペプチドには、配列番号59〜配列番号115;配列番号327;配列番号329;配列番号330;および配列番号340に示す任意のポリペプチドが含まれる。この変換を可能にする反応条件には、反応混合物における、酸化剤、好ましくはNADまたはNADPの存在が含まれる。上記のように、反応のためのpHは、最適化することができる。前述の反応の可逆性についてさらに図2に示す。
【0078】
好ましい実施形態では、ベンジルイソキノリン誘導体を酸化して酸化ベンジルイソキノリン誘導体を形成させることができる第1のポリペプチドは、シトクロムP450であり、酸化ベンジルイソキノリン誘導体を還元して(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン誘導体を形成させることができる第2のポリペプチドは、アルド・ケト還元酵素(AKR)である。特に好ましい実施形態では、AKRは、P.ソムニフェルム(P.somniferum)、P.ブラクテアツム(P.bracteatum)、およびP.ロエアス(P.rhoeas)から得られるか、または得られ得る。
【0079】
特定の実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、2つの別々のポリペプチド、すなわち、共有結合により結合されていないポリペプチドの形態で提供される。特定の好ましい実施形態では、第1および第2のポリペプチドは、CYP450ポリペプチドをコードする第1の部分と、AKRポリペプチドをコードする第2の部分とを含む融合ポリペプチドとして調製される。そのような融合ポリペプチドは、組換えにより調製してもよく、配列番号323に示すパパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)ポリペプチドなど、使用することができる天然に存在する融合ポリペプチドであってもよい。
【0080】
本開示に従って使用することができるCYP450ポリペプチドの例としては、種々のケシ(Papaver)種、例えばパパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)、およびパパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum);アザミゲシ(Argemone)種、例えば、アルゲモネ・メキシカーナ(Argemone mexicana);メギ(Berberis)種、例えば、ベルベリス・ツンベルギイ(Berberis thunbergii);キケマン(Corydalis)種、例えば、コリダリス・セランティフォリア(Corydalis chelantifolia);クサノオウ(Chelidonium)種、例えば、チェリドニウム・マジョス(Chelidonium majus);アブータ(Cissampelos)種、例えば、シサンペロス・ムクロナタ(Cissampelos mucronata);コクラス(Cocculus)種、例えば、コクラス・トリロブス(Cocculus trilobus);キケマン(Corydalis)種、例えば、コリダリス・セランティフォリア(Corydalis chelantifolia);ツノゲシ(Glaucium)種、例えば、グラウシウム・フラヴム(Glaucium flavum);ヒドラスチス(Hydrastis)種、例えば、ヒドラスチス・カナデンシス(hydratis canadensis);タツタソウ(Jeffersonia)種、例えば、ジェファーソニア・ジフィラ(Jeffersonia diphylla);ヒイラギナンテン(Mahonia)種、例えば、マホニア・アクイフォリウム(Mahonia aquifolium);コウモリカズラ(Menispermum)種、例えば、メニスパーマム・カナデンス(Menispermum canadense);ナンテン(Nandina)種、例えば、ナンディナ・ドメスティカ(Nandina domestica);クロタネソウ(Nigella)種、例えば、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa);サングイナリア(Sanguinaria)種、サングイナリア・カナデンシス(Sanguinaria canadensis);スティロフォルム(Styplophorum)種、スティロフォルム・ディフィルム(Stylophorum diphyllum)、カラマツソウ(Thalictrum)種、タリクトルム・フラヴム(Thalictrum flavum);チノスポラ(Tinospora)種、例えば、チノスポラ・コルディフォリア(Tinospora cordifolia);およびザントリザ(Xanthoriza)種、例えば、ザントリザ・シンプリシッシマ(Xanthoriza simplicissima)から得られ得るCYP450ポリペプチドが挙げられる。前述のものには、具体的には、配列番号219〜配列番号321;配列番号325;および配列番号338で本明細書に示す、前述の種に由来するポリペプチドが含まれる。本開示に従って使用することができるAKRポリペプチドの例としては、種々のケシ(Papaver)種、例えばパパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)、およびパパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum);アザミゲシ(Argemone)種、例えば、アルゲモネ・メキシカーナ(Argemone mexicana);メギ(Berberis)種、例えば、ベルベリス・ツンベルギイ(Berberis thunbergii);キケマン(Corydalis)種、例えば、コリダリス・セランティフォリア(Corydalis chelantifolia);クサノオウ(Chelidonium)種、例えば、チェリドニウム・マジョス(Chelidonium majus);アブータ(Cissampelos)種、例えば、シサンペロス・ムクロナタ(Cissampelos mucronata);コクラス(Cocculus)種、例えば、コクラス・トリロブス(Cocculus trilobus);キケマン(Corydalis)種、例えば、コリダリス・セランティフォリア(Corydalis chelantifolia);ツノゲシ(Glaucium)種、例えば、グラウシウム・フラヴム(Glaucium flavum);ヒドラスチス(Hydrastis)種、例えば、ヒドラスチス・カナデンシス(hydratis canadensis);タツタソウ(Jeffersonia)種、例えば、ジェファーソニア・ジフィラ(Jeffersonia diphylla);ヒイラギナンテン(Mahonia)種、例えば、マホニア・アクイフォリウム(Mahonia aquifolium);コウモリカズラ(Menispermum)種、例えば、メニスパーマム・カナデンス(Menispermum canadense);ナンテン(Nandina)種、例えば、ナンディナ・ドメスティカ(Nandina domestica);クロタネソウ(Nigella)種、例えば、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa);サングイナリア(Sanguinaria)種、例えば、サングイナリア・カナデンシス(Sanguinaria canadensis);スティロフォルム(Styplophorum)種、スティロフォルム・ディフィルム(Stylophorum diphyllum)、カラマツソウ(Thalictrum)種、例えば、タリクトルム・フラヴム(Thalictrum flavum);チノスポラ(Tinospora)種、例えば、チノスポラ・コルディフォリア(Tinospora cordifolia);およびザントリザ(Xanthoriza)種、例えば、ザントリザ・シンプリシッシマ(Xanthoriza simplicissima)から得られ得るAKRポリペプチドが挙げられる。前述のものには、具体的には、配列番号59〜配列番号115;配列番号327;配列番号329;配列番号330;および配列番号340で本明細書に示す、前述の種に由来するポリペプチドが含まれる。
【0081】
前述の反応は、ベンジルイソキノリン前駆体の(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体への変換を可能にする条件下で行なわれる。この条件は、以下にさらに詳細に記載される、in vivoまたはin vitroでの条件を含む。この条件はさらに典型的には、水および緩衝剤の存在を含む。さらに典型的には、酸化ベンジルイソキノリン前駆体の(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体への変換をもたらす還元反応を可能にするために、還元剤が含まれる。還元剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)であってもよく、他の実施形態では、還元剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)である。さらに典型的には、ベンジルイソキノリン誘導体を酸化ベンジルイソキノリンに変換する酵素を還元することができる還元酵素および還元剤が反応物に含まれる。好ましい実施形態では、還元酵素は、CYP450を還元することができるシトクロムP450還元酵素であり、還元剤は、NADHまたはより好ましくはNADPHである。
【0082】
(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン誘導体のin vitro合成
本開示の特定の態様によれば、in vitro反応条件下でベンジルイソキノリン誘導体の酵素触媒化学変換を可能にする反応条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を、触媒量の酵素CYP450およびAKRと接触させる。そのようなin vitro反応条件下で、開始反応成分は多かれ少なかれ純粋な形態で準備され、必要な化学反応が実質的に進行することを可能にする条件下で混合される。開始ベンジルイソキノリン誘導体の実質的に純粋な形態を購入することができる。(S)−レチクリンは、例えば、実質的に純粋な化合物として(例えば、Santa Cruz Biotechnology Inc.から)購入することも、前駆化合物から化学的に合成することも、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)および所望のそのような化合物を含む植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)の他のメンバーを含む天然供給源から単離することも可能である。適切なケシ科(Papaveraceae)メンバーとしては、以下に限定されるものではないが、ケシ(Papaver)属、キケマン(Corydalis)属;クサノオウ(Chelidonium)属;およびロメリア(Romeria)属に属する種が挙げられる。そのような種は、(S)−レチクリンを作ることができる可能性があり、そのような種としては、以下の限定されるものではないが、種チェリドニウム・マジョス(Chelidonium majus);コリダリス・ブルボサ(Corydalis bulbosa);コリダリス・カヴァ(Corydalis cava);コリダリス・オコテニス(Corydalis ochotenis);コリダリス・オフィオカルパ(Corydalis ophiocarpa);コリダリス・プラティカルパ(Corydalis platycarpa);コリダリス・ツベロサ(Corydalis tuberosa);パパヴェル・アルメニアクム(Papaver armeniacum);パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver Bracteatum);パパヴェル・シリンドリクム(Papaver cylindricum);パパヴェル・デカイスネイ(Papaver decaisnei);パパヴェル・フガクス(Papaver fugax);パパヴェル・オレオフィルム(Papaver oreophyllum);パパヴェル・オリエンタレ(Papaver orientale);パパヴェル・パエオニフォリウム(Papaver paeonifolium);パパヴェル・ペルシクム(Papaver persicum);パパヴェル・シュードオリエンタレ(Papaver pseudo−orientale);パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas);パパヴェル・ロパロテセ(Papaver rhopalothece);パパヴェル・セティゲルム(Papaver setigerum);パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum);パパヴェル・タウリコルム(Papaver tauricolum);パパヴェル・トリニアエフォリウム(Papaver triniaefolium);およびロメリア・カリカ(Romeria carica)から選択される植物種が挙げられる。(S)−レチクリンの化学合成は、例えば、S.Teitel and A.Bross,Journal of Heterocyclic Chemistry 5,825−829,1968に記載されるような標準的方法を使用して行うことができる。
【0083】
本明細書によると、多かれ少なかれ純粋な形態の酵素は、以下に限定されるものではないが、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)、およびパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)を含む、天然供給源から単離することができるか、または組換えによりもしくは合成的に調製することができる。したがって、本明細書ではさらに、CYP450およびAKRまたはそれらの混合物からなる群から選択される酵素を調製するための方法であって、
(a)作動可能に連結される成分として、
(i)CYP450およびAKRからなる群から選択されるポリペプチドの1つまたは複数をコードする1つまたは両方の核酸配列と、
(ii)宿主細胞における発現を制御することができる1つまたは複数の核酸配列と
を含むキメラ核酸配列を準備するステップと、
(b)キメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、宿主細胞を増殖させて、CYP450およびAKRからなる群から選択されるポリペプチドを産生させるステップと、
(c)CYP450およびAKRからなる群から選択されるポリペプチドを宿主細胞から回収するステップと
を含む方法を提供する。
【0084】
核酸配列は、上記の配列を含有する任意の天然供給源、例えば植物供給源から得ることができる。好ましい植物供給源としては、ケシ(Papaver)種、例えばパパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)、およびパパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum);アザミゲシ(Argemone)種、例えば、アルゲモネ・メキシカーナ(Argemone mexicana);メギ(Berberis)種、例えば、ベルベリス・ツンベルギイ(Berberis thunbergii);キケマン(Corydalis)種、例えば、コリダリス・セランティフォリア(Corydalis chelantifolia);クサノオウ(Chelidonium)種、例えば、チェリドニウム・マジョス(Chelidonium majus);アブータ(Cissampelos)種、例えば、シサンペロス・ムクロナタ(Cissampelos mucronata);コクラス(Cocculus)種、例えば、コクラス・トリロブス(Cocculus trilobus);キケマン(Corydalis)種、例えば、コリダリス・セランティフォリア(Corydalis chelantifolia);ツノゲシ(Glaucium)種、例えば、グラウシウム・フラヴム(Glaucium flavum);ヒドラスチス(Hydrastis)種、例えば、ヒドラスチス・カナデンシス(hydratis canadensis);タツタソウ(Jeffersonia)種、例えば、ジェファーソニア・ジフィラ(Jeffersonia diphylla);ヒイラギナンテン(Mahonia)種、例えば、マホニア・アクイフォリウム(Mahonia aquifolium);コウモリカズラ(Menispermum)種、例えば、メニスパーマム・カナデンス(Menispermum canadense);ナンテン(Nandina)種、例えば、ナンディナ・ドメスティカ(Nandina domestica);クロタネソウ(Nigella)種、例えば、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa);サングイナリア(Sanguinaria)種、例えば、サングイナリア・カナデンシス(Sanguinaria canadensis);スティロフォルム(Styplophorum)種、スティロフォルム・ディフィルム(Stylophorum diphyllum)、カラマツソウ(Thalictrum)種、例えば、タリクトルム・フラヴム(Thalictrum flavum);チノスポラ(Tinospora)種、例えば、チノスポラ・コルディフォリア(Tinospora cordifolia);およびザントリザ(Xanthoriza)種、例えば、ザントリザ・シンプリシッシマ(Xanthoriza simplicissima)が挙げられる。CYP450に関して、前述の植物種から得られ得るかまたは得られる核酸配列としては、配列番号116〜配列番号218;配列番号324;および配列番号337に示す核酸配列が挙げられる。AKRに関して、前述の植物種から得られ得るかまたは得られる核酸配列としては、配列番号1〜配列番号58;配列番号326;配列番号328;および配列番号339に示す核酸配列が挙げられる。さらに好ましい実施形態では、本明細書に配列番号322で示す核酸配列を含めて、CYP450とAKRとの間の天然融合ポリペプチドをコードする核酸配列を使用することができる。
【0085】
宿主細胞を増殖させると、CYP450および/またはAKRポリペプチドの産生がもたらされる。ポリペプチドは、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過等を含む、種々の異なるタンパク質精製手法により、宿主細胞成分から順次、回収、単離、および分離することができる。タンパク質精製に関してさらに一般的な手引きは、例えば、Cutler,P.Protein Purification Protocols,Humana Press,2004,Second Ed.に見出すことができる。したがって、CYP450および/またはAKRポリペプチドの実質的に純粋な調製物を得ることができる。
【0086】
本明細書によれば、ベンジルイソキノリン誘導体の酵素触媒化学変換を可能にする反応条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を、触媒量の酵素CYP450およびAKRの1つまたは複数と接触させる。好ましい実施形態では、薬剤を互いに接触させ、混合して混合物を形成させる。好ましい実施形態では、混合物は、水、さらに場合によっては、緩衝剤、塩、pH調整剤を含む、酵素触媒を促進するための追加の薬剤を含む水性混合物である。本明細書で上述するように、反応混合物がNADPHおよび還元酵素を含むことは特に好ましい。反応は、一連の異なる温度範囲で行うことができる。好ましい実施形態では、反応は、約18℃と約37℃との間の温度で行うことができる。in vitro反応が完了すると、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を、多かれ少なかれ純粋な形態で得ることができる。
【0087】
(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体のin vivo合成
本開示の特定の態様によれば、in vivo反応条件下でベンジルイソキノリン誘導体の酵素触媒化学変換を可能にする反応条件下で、ベンジルイソキノリン誘導体を、触媒量の酵素CYP450およびAKRの1つまたは複数と接触させる。そのようなin vivo反応条件下で、生細胞は、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を産生するように改変される。特定の実施形態では、生細胞は、細菌細胞および真菌細胞を含む微生物である。他の実施形態では、生細胞は、植物および植物細胞培養物を含む多細胞生物である。
【0088】
一実施形態では、生細胞は、ベンジルイソキノリン誘導体、(S)−レチクリン、(R)−レチクリン前駆体、または(R)−レチクリンを天然に産生することができない宿主細胞であるように選択される。別の実施形態では、宿主細胞は、(S)−レチクリンまたはベンジルイソキノリン誘導体を天然に産生することができるが、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体は産生できない、すなわち、細胞は、(S)−エナンチオマーから(R)−エナンチオマーへのエピマー化反応を天然に行なうことができない。別の実施形態では、細胞は、ベンジルイソキノリン誘導体または(S)−レチクリンおよび(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を産生することができるが、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体のレベルが所望のレベルよりも低く、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体のレベルが非改変細胞のレベルに調節されている。そのような細胞としては、限定されるものではないが、細菌、酵母、他の真菌細胞、植物細胞、または動物細胞が挙げられる。
【0089】
(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を産生させるために、本明細書ではさらに、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を調製するための方法であって、
(a)作動可能に連結される成分として、
(i)CYP450ポリペプチドをコードする第1の核酸配列と、
(ii)AKRポリペプチドをコードする第2の核酸配列と、
(iii)宿主細胞における発現を制御することができる1つまたは複数の核酸配列と
を含むキメラ核酸配列を準備するステップと、
(b)キメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、宿主細胞を増殖させて、CYP450およびAKRを産生させ、かつ(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を産生させるステップと、
(c)(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を回収するステップと
を含む方法を提供する。
【0090】
好ましい実施形態では、第1および第2の核酸配列は、CYP450およびAKRを含む融合ポリペプチドを産生させるために作動可能に連結される。
【0091】
さらに、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を調製するための方法であって、
(b)作動可能に連結される成分として、CYP450ポリペプチドをコードする第1の核酸配列と、細胞におけるこの第1の核酸配列の発現を制御する第1の核酸配列とを含む第1のキメラ核酸配列を準備するステップと、
(c)作動可能に連結される成分として、AKRポリペプチドをコードする第2の核酸配列と、細胞におけるこの第2の核酸配列の発現を制御する第2の核酸配列とを含む第2のキメラ核酸配列を準備するステップと、
(c)第1および第2のキメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、宿主細胞を増殖させて、CYP450およびAKRを産生させ、かつ(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を産生させるステップと、
(d)(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体を回収するステップと
を含む方法を提供する。
【0092】
好ましい実施形態では、CYP450およびAKRをコードする核酸配列は、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)および所望の上記の化合物を含む植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)の他のメンバーから得られ得るかまたは得られるCYP450およびAKRをコードする核酸配列から選択される。適切なケシ科(Papaveraceae)メンバーとしては、以下に限定されるものではないが、ケシ(Papaver)属、キケマン(Corydalis)属;クサノオウ(Chelidonium)属;およびロメリア(Romeria)属に属する種が挙げられる。そのような種は、(R)−レチクリンを作ることができる可能性があり、そのような種としては、以下の限定されるものではないが、種チェリドニウム・マジョス(Chelidonium majus);コリダリス・ブルボサ(Corydalis bulbosa);コリダリス・カヴァ(Corydalis cava);コリダリス・オコテニス(Corydalis ochotenis);コリダリス・オフィオカルパ(Corydalis ophiocarpa);コリダリス・プラティカルパ(Corydalis platycarpa);コリダリス・ツベロサ(Corydalis tuberosa);パパヴェル・アルメニアクム(Papaver armeniacum);パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver Bracteatum);パパヴェル・シリンドリクム(Papaver cylindricum);パパヴェル・デカイスネイ(Papaver decaisnei);パパヴェル・フガクス(Papaver fugax);パパヴェル・オレオフィルム(Papaver oreophyllum);パパヴェル・オリエンタレ(Papaver orientale);パパヴェル・パエオニフォリウム(Papaver paeonifolium);パパヴェル・ペルシクム(Papaver persicum);パパヴェル・シュードオリエンタレ(Papaver pseudo−orientale);パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas);パパヴェル・ロパロテセ(Papaver rhopalothece);パパヴェル・セティゲルム(Papaver setigerum);パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum);パパヴェル・タウリコルム(Papaver tauricolum);パパヴェル・トリニアエフォリウム(Papaver triniaefolium);およびロメリア・カリカ(Romeria carica)が挙げられる。特に好ましい実施形態では、CYP450およびAKRをコードする核酸配列は、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)、およびパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)から得られ得るかまたは得られる、CYP450およびAKRをコードする核酸配列から選択される核酸配列である。さらに好ましい実施形態では、配列番号116〜配列番号218;配列番号324;および配列番号337として本明細書に示されるCYP450をコードする核酸配列の1つ。好ましい実施形態では、AKRをコードする核酸配列は、配列番号1〜配列番号58;配列番号326;配列番号328;および配列番号339として本明細書に示される、AKRをコードする核酸配列の1つである。さらに特に好ましい実施形態では、CYP450およびAKRをコードする核酸配列は、限定されるものではないが、配列番号322に示す配列を含む、CYP450−AKR融合ポリペプチドを産生することができる核酸配列である。
【0093】
本明細書によれば、CYP450およびAKRをコードする核酸配列は、宿主細胞におけるCYP450およびAKRの発現を制御することができる核酸配列に連結される。したがって、本開示はまた、宿主細胞における発現を制御することができるプロモーターに連結されたCYP450およびAKRをコードする核酸配列を提供する。本明細書で使用することができる宿主細胞における発現を制御することができる核酸配列には、宿主細胞におけるポリペプチドの発現を制御することができる任意の転写プロモーターが含まれる。一般に、細菌細胞から得られるプロモーターは、細菌宿主が本明細書に従って選択される場合に使用され、一方、真菌プロモーターは、真菌宿主が選択される場合に使用されることになり、植物プロモーターは、植物細胞が選択される場合に使用されることになる等が挙げられる。さらに、宿主細胞における発現を制御することができる核酸エレメントには、転写ターミネーター、エンハンサー等が含まれ、これらのすべてを、本開示のキメラ核酸配列に含むことができる。核酸配列の作動可能な連結には、プロモーターと、コード配列に対して5’から3’の転写方向に発現を制御することができる配列との連結が含まれることは当業者には理解されよう。
【0094】
本開示によれば、CYP450およびAKRをコードする核酸配列に連結された、宿主細胞における発現を制御することができるプロモーターを含むキメラ核酸配列は、宿主細胞における良好な発現を保証する組換え発現ベクターに組み込むことができる。したがって、本開示は、作動可能に連結される成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御することができる核酸配列と、
(ii)CYP450をコードする核酸配列と
を含む組換え発現ベクターであって、宿主細胞における発現に適している発現ベクターを含む。
【0095】
本開示は、作動可能に連結される成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御することができる核酸配列と、
(ii)AKRをコードする核酸配列と
を含む組換え発現ベクターであって、宿主細胞における発現に適している発現ベクターを含む。
【0096】
本開示はさらに、作動可能に連結される成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御することができる核酸配列と、
(ii)CYP450およびAKRをコードする核酸配列と
を含む組換え発現ベクターであって、宿主細胞における発現に適している発現ベクターを含む。「宿主細胞における発現に適している」という用語は、組換え発現ベクターが宿主細胞における発現を達成するのに必要な遺伝エレメントに連結された本開示のキメラ核酸配列を含むことを意味する。この点に関して発現ベクターに含むことができる遺伝エレメントとしては、転写終結領域、マーカー遺伝子をコードする1つまたは複数の核酸配列、1つまたは複数の複製起点等が挙げられる。好ましい実施形態では、発現ベクターはさらに、宿主細胞ゲノムにおける、ベクターまたはその一部の組込みに必要な遺伝エレメント、例えば、植物宿主細胞が使用される場合、植物の核ゲノムへの組込みを促進する、T−DNAの左側および右側境界配列を含む。
【0097】
本開示に従えば、発現ベクターはさらにマーカー遺伝子を含有することができる。本開示に従って使用することができるマーカー遺伝子には、選択可能およびスクリーニング可能なマーカー遺伝子をすべて含めて、非形質転換細胞と形質転換細胞の識別を可能にする遺伝子すべてが含まれる。マーカー遺伝子は、例えばカナマイシンまたはアンピシリンに対する抗生物質抵抗性マーカーなどの抵抗性マーカーであってもよい。目視検査を通して形質転換細胞を同定するために使用することができるスクリーニング可能なマーカーとしては、β−グルクロニダーゼ(GUS)(米国特許第5,268,463号明細書および同第5,599,670号明細書)および緑色蛍光タンパク質(GFP)(Niedz et al.,1995,Plant Cell Rep.,14:403)が挙げられる。
【0098】
特に好都合に使用することができる宿主細胞の1つは、大腸菌(Escherichia coli)である。大腸菌(E.coli)ベクターの調製は、制限消化、ライゲーション、ゲル電気泳動、DNAシークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、およびその他の方法論などの一般に公知の手法を使用して行うことができる。組換え発現ベクターを調製するために必要とされる必須ステップを行うための多種多様のクローニングベクターが入手可能である。大腸菌(E.coli)で機能的な複製系を有するベクターには、例えば、pBR322、pUC系列のベクター、M13 mp系列のベクター、pBluescript等のベクターがある。典型的には、これらのクローニングベクターは、形質転換細胞の選択を可能にするマーカーを含有する。核酸配列はこれらのベクターに導入することができ、ベクターは、コンピテント細胞を調製し、エレクトロポレーションまたは当業者に周知の他の方法論を使用することにより、大腸菌(E.coli)に導入することができる。大腸菌(E.coli)は、これに限定されるものではないが、ルリア・ブロス培地を含む適切な培地中で増殖させることができる。組換え発現ベクターは、細胞を採取し溶解させると、細胞から容易に回収することができる。さらに、組換えベクターの調製および組換え生物の増殖に関する一般的な手引きは、例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001,Third Ed.に見出すことができる。
【0099】
さらに本開示には、作動可能に連結される成分として、CYP450およびAKRからなる群から選択されるポリペプチドの1つまたは複数をコードする、1つまたは複数の核酸配列を含むキメラ核酸配列を含む宿主細胞が含まれる。本明細書で上述するように、宿主細胞は、好ましくは、ベンジルイソキノリン誘導体、(S)−レチクリンも、(R)−レチクリンおよび(R)−レチクリン前駆体も天然に産生することができない宿主細胞である。別の実施形態では、宿主細胞は、(S)−レチクリン、ベンジルイソキノリン誘導体を天然に産生することができるが、(R)−レチクリンも(R)−レチクリン前駆体も産生することができない。別の実施形態では、宿主細胞は、ベンジルイソキノリン誘導体、(S)−レチクリン、または(R)−レチクリンもしくは(R)−レチクリン前駆体を産生することができるが、(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体のレベルが所望のレベルよりも低く、かつ(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体のレベルが天然の非改変細胞における(R)−レチクリンまたは(R)−レチクリン前駆体のレベルに調節されている。細胞が(S)−レチクリンまたはベンジルイソキノリン誘導体を天然に産生することができない実施形態では、(S)−レチクリンまたはベンジルイソキノリン誘導体を、細胞増殖培地の一部として細胞に提供することができる。細胞が(S)−レチクリンもベンジルイソキノリン誘導体も天然に産生することができない他の実施形態では、細胞により(S)−レチクリンまたはベンジルイソキノリン誘導体にそれぞれ変換され得る、(S)−レチクリンまたはベンジルイソキノリン誘導体の前駆化合物を提供することができる。細胞増殖培地の一部として細胞に提供することができる別の基質としては、以下に限定されるものではないが、(S)ノルコクラウリン、(S)−N−メチルノルコクラウリン、(S)−ノルラウダノサリン(Norlaudanosaline)、(S)−N−メチルノルラウダノサリン(Methylnorlaudanosaline)、(S)−コクラウリン、(S)−N−メチルコクラウリン、(S)−3’−ヒドロキシコクラウリン、(S)−3’−ヒドロキシ−N−メチルコクラウリン、(S)−ヒゲナミン、(S)−N−メチルヒゲナミン、(S)−ラウダノソリン(Laudanosoline)、(S)−ノルレチクリン、(S)−コレチン(Colletine)、および(S)−オリエンタリンが挙げられる。本明細書に従って使用することができる細胞としては、限定されるものではないが、細菌、酵母もしく他の真菌細胞、植物細胞、動物細胞、または合成細胞が挙げられる。
【0100】
本開示にはさらに、ベンジルイソキノリン誘導体を酸化ベンジルイソキノリン誘導体に酸化することができる第1のポリペプチドと、酸化ベンジルイソキノリン誘導体を(R)−レチクリン前駆体に還元することができる第2のポリペプチドとを含む酵素混合物を含む、またさらには、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させることができる第1のポリペプチドと、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる第2のポリペプチドとを含む酵素混合物を含む、(S)−エナンチオマーを(R)−エナンチオマーにエピマー化するための組成物が含まれる。好ましい実施形態では、第1のポリペプチドはシトクロムP450であり、第2のポリペプチドはAKRである。
【0101】
一部の実施形態では、AKRおよびCYP450のポリペプチドを作動可能に連結して融合ポリペプチドを形成させる。したがって、本開示にはさらに、配列番号323を含むかまたはそれからなるポリペプチドが含まれる。
【0102】
本発明はさらに、(S)−エナンチオマーを(R)−エナンチオマーにエピマー化することができるポリペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を含む。好ましい実施形態では、核酸配列は、一緒になって、(S)−エナンチオマーを(R)−エナンチオマーにエピマー化することができる、好ましくは、ベンジルイソキノリン誘導体を酸化ベンジルイソキノリン誘導体に酸化し、ベンジルイソキノリン誘導体を(R)−レチクリン前駆体に還元することができる、より好ましくは、(S)−レチクリンを酸化して1,2−デヒドロレチクリンを形成させ、1,2−デヒドロレチクリンを還元して(R)−レチクリンを形成させることができる、CYP450およびAKRをコードする核酸配列である。好ましい実施形態では、AKRおよびCYP450をコードする核酸配列を、作動可能に連結してCYP450−AKR融合ポリペプチドを作製する。したがって、本開示にはさらに、配列番号322が含まれる。
【0103】
宿主細胞に蓄積する(R)−レチクリンの量は変動し得る。宿主細胞が(R)−レチクリンおよび(S)−レチクリンを天然に産生する(例えば、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)細胞)本開示の実施形態では、本開示に従ってキメラ核酸配列を含むように調製されたそのような細胞により、in vivoで合成される(R)−レチクリン対(S)−レチクリンの比は、天然の宿主細胞(すなわち、キメラ核酸配列を含まない細胞)または宿主細胞抽出物中に存在する(R)−レチクリン対(S)−レチクリンの比を超える。好ましくは、宿主細胞または宿主細胞抽出物中の(R)−レチクリン対(S)−レチクリンの比は、21:79を超える、例えば、少なくとも0.3:1、少なくとも0.4:1、少なくとも0.5:1、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、または少なくとも4:1である。
【0104】
(R)−レチクリンおよび(R)−レチクリン前駆体の使用
本開示に従って得られる(R)−レチクリンは、薬剤、治療剤、または医薬品として使用するために製剤化することができる。したがって、本開示はさらに、本開示の方法に従って調製された(R)−レチクリンを含む医薬組成物を含む。本開示による(R)−レチクリンを含む医薬製剤は、好ましくはさらに、ビヒクル、賦形剤、希釈剤、および補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等を含む。これらのビヒクル、賦形剤、および補助物質は、一般に、過度の毒性を示すことなく投与することができる薬剤である。薬学的に許容される賦形剤としては、以下に限定されるものではないが、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセリン、およびエタノールなどの液体が挙げられる。薬学的に許容される塩として、例えば、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩もその中に含めることができる。安定剤として有用である薬学的に許容される賦形剤を製剤が含有することも、要求されるものではないが、好ましい。ペプチドに対する安定剤としても作用する適切な担体の例としては、限定されるものではないが、医薬品グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、イノシトール、デキストラン等が挙げられる。他の適切な担体としては、これも限定されるものではないが、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムまたはカルシウム、クエン酸、グリシン、ポリエチレングリコール(PEG)、およびそれらの組合せが挙げられる。医薬組成物は、経口および静脈内投与、ならびに所望される他の投与経路のために製剤化することができる。投薬は多様であり得るものであり、ルーチン的な実験を使用して最適化することができる。(R)−レチクリンを含む医薬組成物は、脱毛症または筋肉緊張を処置するために使用することができる。
【0105】
さらなる実施形態では、本開示は、本開示に従って調製された(R)−レチクリンを含む医薬組成物で患者を処置する方法を提供する。したがって、本開示はさらに、本開示の方法に従って調製された(R)−レチクリンで患者を処置する方法であって、前記方法が、(R)−レチクリンを含む組成物を患者に投与するステップであって、(R)−レチクリンが患者の病状を寛解させるのに十分な量で投与されるステップを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、病状は、脱毛症および筋肉緊張の解除からなる群から選択される。
【0106】
さらに、本明細書で提供する(R)−レチクリンは、限定するものではないが、サルタリジン、コデイン、およびモルヒネを含み、さらにテバイン、パパベリン、ノスカピン、コダミン、ラウジンおよびラウダノシン、(+)−パリジン、(−)−イソボルジン、ならびに(−)−コリツベリンを含む他の二次代謝産物または医薬組成物を製造するための薬剤として有用である。
【0107】
本明細書で提供する(R)−レチクリン前駆体は、他の二次代謝産物、特に(R)−レチクリンを製造するための薬剤として有用である。図1に示すように、(R)−N−メチルコクラウリンは、(R)−3’−ヒドロキシ−N−メチルコクラウリンを製造するための薬剤として使用することができる。(R)−3’−ヒドロキシ−N−メチルコクラウリンは、(R)−レチクリンを製造するための薬剤として使用することができる。
【0108】
AKRおよびCYP450のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の代替使用
さらなる態様では、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列は、試料中の遺伝子の有無を検出するために使用することができる。したがって、本開示の一実施形態では、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列の有無を検出する方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列を含むと推測される試料を準備するステップと、
(b)AKRおよび/またはCYP450をコードするヌクレオチド配列の存在について試料を分析するステップと
を含む方法を提供する。
【0109】
好ましい実施形態では、試料は、ゲノムDNAを含む細胞を含む。したがって、好ましい実施形態では、細胞におけるAKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列の有無を検出する方法であって、
(a)細胞を準備するステップと、
(b)細胞からゲノムDNAを抽出するステップと、
(c)AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列の存在についてゲノムDNAを分析するステップと
を含む方法を提供する。
【0110】
ゲノムDNAを分析する方法は、当技術分野で一般に知られており、例えば、AKRおよび/またはCYP450をコードするヌクレオチド配列の特定部分を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および特異的ポリヌクレオチドプライマーの使用を含む。さらに制限消化およびサザンブロット解析を使用することができる。この分析はさらに、AKRおよび/もしくはCYP450をコードする核酸配列のイントロン、エキソン、または上流もしくは下流領域を対象とすることができる。この分析はさらに、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列を含むゲノム遺伝子座の同定を対象とすることができるが、そのような遺伝子座はAKRおよび/またはCYP450の発現レベルの調節に連結している。
【0111】
好ましい実施形態では、細胞は植物細胞である。さらに好ましい実施形態では、細胞は、植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)に属する植物、より好ましくは、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)種、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)種、またはパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)種に属する植物から得られる植物細胞である。
【0112】
好ましい実施形態では、前述の分析を行なうために使用されるCYP450および/またはAKR配列は、配列番号116〜配列番号218;配列番号324;および配列番号337に示される配列;または配列番号1〜配列番号58;配列番号326;配列番号328;および配列番号339に示される配列;または配列番号322に示される配列である。
【0113】
さらなる態様では、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列は、AKRおよび/またはCYP450の発現レベルが調節されている細胞を作製するために使用することができる。そのような細胞は、好ましくは、AKRおよび/またはCYP450を天然に発現する植物細胞、より好ましくは、植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)に属する植物から得られる植物細胞、最も好ましくは、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)種、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)種、またはパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)種に属する植物から得られる植物細胞である。したがって、本開示はさらに、AKRおよび/またはCYP450を天然に発現する細胞における核酸配列の発現を調節するための方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450を天然に発現する細胞を準備するステップと、
(b)細胞を突然変異誘発させるステップと、
(c)細胞を増殖させて複数の細胞を得るステップと、
(d)この複数の細胞が、レベル調節されたAKRおよび/またはCYP450を含む細胞を含むか否かを判定するステップと
を含む方法を提供する。
【0114】
好ましい実施形態では、この方法はさらに、以下のようなステップ(e)を含む:
(e)レベル調節されたAKRおよび/またはCYP450を含む細胞を選択し、かつ複数の細胞を得るためにそのような細胞を増殖させるステップ。
【0115】
さらに好ましい実施形態では、植物種子細胞を使用して突然変異誘発を行なう。使用することができる突然変異誘発物質は、限定されるものではないが、塩基類似体、脱アミノ化剤、アルキル化剤、挿入剤、トランスポゾン、臭素、アジ化ナトリウム、エチルメタンスルホネート(EMS)を含む化学物質、ならびに限定されるものではないが、電離放射線およびUV照射などの放射線を含む物理作用である。したがって、本開示はさらに、AKRおよび/またはCYP450を天然に発現する細胞における核酸配列の調節された発現を含む結実植物を作製するための方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450を天然に発現する結実植物を準備するステップと、
(b)植物の種子を突然変異誘発して、突然変異誘発された種子を得るステップと、
(c)突然変異誘発された種子を生育して、次世代種子の実を結ばせることができる次世代突然変異誘発された植物にするステップと、
(d)次世代種子または突然変異誘発された植物の別の部分を得るステップと、次世代植物または次世代種子がAKRおよび/またはCYP450の調節された発現を示す場合、分析するステップと
を含む方法を提供する。
【0116】
好ましい実施形態では、複数世代の植物および/または種子を得ることができ、そのような世代のいずれかまたはすべてにおいて、植物および/または種子の一部を分析することができる。分析は、典型的には、突然変異誘発された植物または種子における発現と突然変異誘発されていない(野生型)植物における発現レベルを比較することによって行うことができる。さらに好ましい実施形態では、ステップ(d)の分析は、野生型DNAと突然変異型DNAとの間のヘテロ二本鎖形成を分析することにより行うことができる。したがって、好ましい実施形態では、ステップ(d)の分析は、
i.突然変異型植物からDNAを抽出するステップと、
ii.AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列を含むDNAの一部を増幅して、増幅した突然変異型DNAを得るステップと、
iii.野生型植物からDNAを抽出するステップと、
iv.増幅した突然変異型DNAと野生型植物由来のDNAを混合してヘテロ二本鎖ポリヌクレオチドを形成させるステップと、
v.ミスマッチしたヘテロ二本鎖ポリヌクレオチドの領域に制限することができる一本鎖制限ヌクレアーゼとヘテロ二本鎖ポリヌクレオチドとをインキュベートするステップと、
vi.ヘテロ二本鎖ポリヌクレオチドにおけるミスマッチの部位を決定するステップと
を含む。
【0117】
好ましい実施形態では、使用されるAKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列は、配列番号116〜配列番号218;配列番号324;および配列番号337に示される配列;または配列番号1〜配列番号58;配列番号326;配列番号328;および配列番号339に示される配列;または配列番号322に示される配列である。
【0118】
さらなる態様では、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列を使用して、遺伝子サイレンシングによりAKRおよび/またはCYP450の発現レベルが調節された細胞を作製することができる。したがって、本開示はさらに、細胞におけるAKRおよび/またはCYP450の発現を低減する方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450を発現する細胞を準備するステップと、
(b)細胞におけるAKRおよび/またはCYP450の発現をサイレンシングするステップと
を含む方法を含む。
【0119】
好ましい実施形態では、細胞は植物細胞である。好ましくは、植物は、植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)に属するメンバーであり、最も好ましくは、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)種、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)種、またはパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)種に属する植物である。AKRおよび/またはCYP450をサイレンシングする好ましい方法論は、ウイルス誘導遺伝子サイレンシングである(VIGSとして当技術分野で知られている)。一般に、非改変ウイルスに感染した植物では、ウイルスゲノムが標的になる。しかしながら、ウイルスベクターが宿主遺伝子に由来する挿入断片(例えば、AKRおよび/またはCYP450をコードする配列部分)を担持するように改変されている場合、この工程はさらに、それに対応するmRNAも標的にする。したがって、本開示はさらに、レベル低下したAKRおよび/またはCYP450を発現する植物を作製する方法であって、
(a)AKRおよび/またはCYP450を発現する植物を準備するステップと、
(b)ウイルス誘導遺伝子サイレンシングを使用して、植物におけるAKRおよび/またはCYP450の発現を低減するステップと
を含む方法を含む。
【0120】
本開示のこの態様は、実施例5においてさらに詳述される。
【0121】
AKRおよび/またはCYP450の発現レベルを調節する、本明細書で前述の方法により、限定されるものではないが、モルヒネ、コデイン、テバイン、パパベリン、ノスカピン、(S)−レチクリン、(R)−レチクリン、コダミン、ラウダニン、およびラウダノシンを含む、植物における植物アルカロイドのレベルを調節することができる。この方法によりさらに、(S)−レチクリン、(R)−レチクリンの比を調節することができる。好ましくは、そのような調節により、植物細胞または植物細胞抽出物における(R)−レチクリン対(S)−レチクリンの比が21:79未満、より好ましくは0.1未満、より好ましくは0.05未満、より好ましくは0.025未満、より好ましくは0.01未満になる。そのような調節は実施例5で示される。したがって、本開示は、植物アルカロイドを天然に産生することができる植物における植物アルカロイドのレベルを改変する方法論の使用を含む。好ましくは、そのような植物は、植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)に属し、より好ましくは、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)種、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)種、またはパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)種に属する。
【0122】
本開示のまたさらなる態様によれば、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列を使用して、植物の遺伝子型を同定することができる。好ましくは、植物は、植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)に属するメンバーであり、より好ましくは、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)種、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)種、またはパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)種に属する。一般に、遺伝子型同定は、染色体対のホモログを識別する手段を提供し、植物集団の後続世代における分離個体を同定するために使用することができる。分子マーカー方法論は、系統発生学研究、植物変種間の遺伝的関係の特徴づけ、交雑種または体細胞雑種の同定、一遺伝子性形質に影響を及ぼす染色体セグメントの局在、マップベースクローニング、および量的遺伝に関する研究のために使用することができる。例えば、Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual,Chapter 7,Clark,Ed.,Springer−Verlag,Berlin(1997)を参照されたい。分子マーカー方法論ついては、一般的に、The DNA Revolution by Andrew H.Paterson 1996(Chapter 2)in:Genome Mapping in Plants(ed.Andrew H.Paterson)by Academic Press/R.G.Landis Company,Austin,Tex.,pp.7−21を参照されたい。本開示による遺伝子型同定の特定の方法には、これに限定されるものではないが、制限断片長多型(RFLP)を含む任意の分子マーカー分析手法の使用が含まれることがある。RFLPは、ヌクレオチド配列の可変性により引き起こされるDNA制限断片間の対立遺伝子の差を反映する。当業者に公知のように、RFLPは、典型的には、植物ゲノムDNAの抽出、および1つまたは複数の制限酵素によるゲノムDNAの消化により検出される。典型的には、得られた断片を、サイズに従って分離し、核酸プローブとハイブリダイズさせる。相同染色体由来の制限断片が明らかになる。対立遺伝子間の断片サイズの差がRFLPを表す。したがって、本開示はさらに、RFLP分析のような手法を使用して、AKRおよび/またはCYP450をコードするゲノムDNA部分、ならびにこれらのAKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列に遺伝学的に連鎖された染色体の核酸配列の分離を追跡する手段を提供する。連鎖した染色体核酸配列は、AKRおよび/またはCYP450をコードするゲノム核酸配列の50センチモルガン(cM)以内、多くの場合40または30cM以内、好ましくは20または10cM以内、より好ましくは5、3、2、または1cM以内である。したがって、本開示によれば、植物集団において、本開示のAKRおよび/またはCYP450をコードする配列をマーカーとして使用して、それに遺伝学的に連鎖した核酸配列の分離を評価することができる。好ましくは、植物集団は、植物のケシ科(Papaveraceae)、クスノキ科(Lauraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、またはクワ科(Moraceae)に属する植物を含むかそれらからなり、より好ましくは、植物集団は、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)種、パパヴェル・ブラクテアツム(Papaver bracteatum)種、またはパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)種に属する植物を含むかそれらからなる。
【0123】
本開示によれば、植物核ゲノムの分子マーカーマッピングに使用される核酸プローブは、選択的なハイブリダイゼーション条件下で、AKRおよび/またはCYP450をコードするゲノム配列に選択的にハイブリダイズする。好ましい実施形態では、プローブは、本開示により提供されるAKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列から選択される。典型的には、これらのプローブはcDNAプローブである。典型的には、これらのプローブは、少なくとも15塩基長、より好ましくは、少なくとも20、25、30、35、40、または50塩基長である。しかしながら、一般に、プローブの長さは約1キロベース未満である。好ましくは、プローブは、半数体植物染色体組のユニークな遺伝子座にハイブリダイズする単一コピープローブである。RFLPマッピングで使用される例示的な制限酵素の一部は、EcoRI、EcoRv、およびSstIである。本明細書で使用する場合、「制限酵素」という用語は、特定のヌクレオチド配列でポリヌクレオチドを認識し、単独でまたは別の組成物と共同して切断する組成物を指すことを含む。
【0124】
本開示の核酸配列の多型(対立遺伝子)変異体を識別する他の方法は、限定されるものではないが、1)一本鎖配座解析(SSCP);2)変性勾配ゲル電気泳動(DGGE);3)RNアーゼプロテクションアッセイ;4)対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO);5)大腸菌(E.coli)mutSタンパク質など、ヌクレオチドミスマッチを認識するタンパク質の使用;および6)対立遺伝子特異的PCRを含む、当業者に周知の分子マーカー手法の利用により使用することができる。2つの相補DNA鎖間のミスマッチの検出に基づく他の手法としては、限定されるものではないが、クランプ変性ゲル電気泳動(CDGE);ヘテロ二本鎖分析(HA)、および化学的ミスマッチ切断(CMC)が挙げられる。したがって、本開示はさらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、AKRおよびCYP450をコードする核酸を含むと推測される試料を、それにハイブリダイズすることができる核酸プローブと接触させるステップを含む遺伝子型同定の方法を提供する。一般的に、試料は植物試料であり、好ましくは、AKRおよび/またはCYP450をコードするパパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)核酸配列(例えば、遺伝子、mRNA)を含むと推測される試料である。核酸プローブは、ストリンジェントな条件下で、多型マーカーを含むAKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列のサブ配列に選択的にハイブリダイズする。核酸プローブの多型マーカー核酸配列への選択的なハイブリダイゼーションにより、ハイブリダイゼーション複合体が生じる。ハイブリダイゼーション複合体を検出すると、その多型マーカーが試料中に存在することが示される。好ましい実施形態では、核酸プローブは、AKRおよび/またはCYP450をコードする核酸配列の一部を含む。
【実施例】
【0125】
以下の本明細書において、本開示の方法を行うための特定の実施形態および本開示の組成物を表す実施形態の実施例を提供する。実施例は、説明目的のためのみに提供されるものであり、本開示の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【0126】
実施例1−(S)−レチクリンの(R)−レチクリンへの変換
この実施例では、CYP450およびAKRの部分で構成される、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)の融合ポリペプチド(配列番号323)の形態の酵素混合物を使用する、(S)−レチクリンの(R)−レチクリンへのin vitro変換が示される。
【0127】
下記のように、pESC−leu2d::PsCPR/PsREPIを保持するサッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)株YPH499を増殖させ、ミクロソームを精製した。手短に言えば、2%グルコースを添加した、ロイシン不含合成完全(SC)培地中で、この酵母株を30℃で16時間、250rpmで増殖させた。1ミリリットルの培養物を、1.8%ガラクトース、0.2%グルコース、および1%ラフィノースを添加した、ロイシン不含SC培地50mLに加え、30℃で72時間、250rpmで増殖させた。次いで、培養物を4,000gで5分間遠心分離し、TEK緩衝液(50mM Tris−HCl pH8、1mM EDTA、100mM KG)5mLで洗浄した。ペレットを、TESB緩衝液(50mM Tris−HCl pH8、1mM EDTA、0.6Mソルビトール)lmLに再懸濁し、0.5mmのガラスビーズを等量加えた。チューブを10℃で4分間、手で振盪した。ビーズをTESBで洗浄し、洗浄液を集め、14,000gで10分間遠心分離した。上清を125,000gで1時間超遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、ミクロソームを50mM HEPES pH7.5に再懸濁した。
【0128】
酵素アッセイ液は、HEPES緩衝液(pH7.5)中に500μΜ NADPHおよび50μΜ (S)−レチクリンおよび上記のように調製したミクロソームを含有した。アッセイ液を、30℃で一晩インキュベートした。反応後、アッセイ試料を0.2ml/分の流量でAgilent 1260 HLPCに供し、LUXセルロース−1のキラルカラム(150mm×2.1mm内径;Phenomenex)を使用して、0.1%ジエチルアミンを添加した75%重炭酸アンモニウム(溶媒A)および0.1%ジエチルアミン含有25%アセトニトリル(溶媒B)により化合物を分離した。(R)−レチクリンおよび(S)−レチクリンを波長284nmでモニターした。
【0129】
結果を図3に示す。図3からわかるように、キラルカラムで標準試料の(R)−レチクリンおよび(S)−レチクリンの保持時間はそれぞれ、約13.5分(最上部パネル);および15分(最上部から2番目のパネル)である。最下部パネルは、酵素が混合物中にないアッセイの結果を示し、これらの反応条件下では、(S)−レチクリンが(R)−レチクリンにエピマー化されないことが示される。上から3番目のパネルでは、酵素混合物の存在下で、(S)−レチクリンが(R)−レチクリンにエピマー化されることが示される(矢印を参照のこと、約15分の保持時間にピークが出現)。
【0130】
実施例2−(S)−レチクリンの1,2−デヒドロレチクリンへの変換
この実施例では、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)のCYP450(配列番号325)を使用する、酵母における(S)−レチクリンの1,2−デヒドロレチクリンへのin vitro変換が示される。下記のように、pESC−leu2d::PsCPR/PrDRSを保持するサッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)株YPH499を増殖させ、ミクロソームを精製した。手短に言えば、2%グルコースを添加した、ロイシン不含合成完全(SC)培地中で、この酵母株を30℃で16時間、250rpmで増殖させた。この培養物の1ミリリットルを、1.8%ガラクトース、0.2%グルコース、および1%ラフィノースを添加した、ロイシン不含SC培地50mLに加え、30℃で72時間、250rpmで増殖させた。次いで、培養物を4,000gで5分間遠心分離し、TEK緩衝液(50mM Tris−HCl pH8、1mM EDTA、100mM KCl)5mLで洗浄した。次いで、ペレットを、TESB緩衝液(50mM Tris−HCl pH8、1mM EDTA、0.6Mソルビトール)1mLに再懸濁し、0.5mmのガラスビーズを等量加えた。チューブを10℃で4分間、手で振盪した。ビーズをTESBで洗浄し、洗浄液を集め、14,000gで10分間遠心分離した。次いで、上清を125,000gで1時間超遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、ミクロソームを50mM HEPES pH7.5に再懸濁した。
【0131】
酵素アッセイ液は、HEPES緩衝液(pH7.5)中に500μΜ NADPHおよび50μΜ (S)−レチクリンおよび上記のように調製したミクロソームを含有した。アッセイ液を、30℃で一晩インキュベートした。反応後、アッセイ試料を、ポジティブモードで作動するエレクトロンスプレーイオン化源を有する6400B質量分析計に連結したAgilent 1260 HLPCに供した。質量分析計は200〜400m/zの範囲を走査した。以前に記載された酵素アッセイに関するHLPC法を使用して、化合物を分離した(Farrow SC and Facchini,PJ,(2013),J.Biol.Chem.(288)pp28,997−29,012;dioxygenases catalyze O−demethylation and O,O−demethylation with widespread roles in benzylisoquinoline alkaloid metabolism in opium poppy)。
【0132】
結果を図4に示す。図4(最上部パネル)からわかるように、保持時間が約3.1分のピークが、酵素を含まない対照試料のHPLCカラム上で観察される。このピークは、m/z330の(S)−レチクリンの衝突誘起解離スペクトルの最大断片に対する3.13分の予想保持時間に対応する。最上部から2番目のパネルは、同じ対照試料中にm/z328のピークが観察されないことを示し、これにより、1,2−デヒドロレチクリンが対照試料中にないことが示される。最上部から3番目のパネルは、酵素を含む試料中において、約3.1分の保持時間にm/z330のピークが観察されることを示し、これにより、アッセイ試料中に(S)−レチクリンが存在することが示される。最下部パネルは、アッセイ試料において、保持時間が約3.0のピークがm/z328で観察されることを示す。このピークは、m/z328の1,2−デヒドロレチクリンの衝突誘起解離スペクトルの最大断片に対する3.02分の予想保持時間に対応し(表1を参照のこと)、酵素の存在下でアッセイ試料中に1,2−デヒドロレチクリンが存在することが示される。
【0133】
実施例3−1,2−デヒドロレチクリンの(R)−レチクリンへの変換
この実施例では、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)のAKR(配列番号327)を使用する、酵母における1,2−デヒドロレチクリンの(R)−レチクリンへのin vitro変換が示される。
【0134】
50μg/mLカナマイシン一硫酸塩および35μg/mLクロラムフェニコールを添加した50mLのLB中、pET47b::PrDRRを保持する大腸菌(Escherichia coli)株Rosetta(DE3)の16時間培養物を、同じ培地1Lに加え、37℃、180rpmで、OD600が0.6になるまで増殖させた。次いで、IPTGを最終濃度が1mMになるように加え、25℃で4時間、180rpmで増殖させ、細胞ペレットを遠心分離により集めた。2mMフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)を添加した緩衝液A(100mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0、300mM NaCl、10%(v/v)グリセロール)中で、フレンチプレスを用いて、細胞を溶解した。14,000gで15分間遠心分離して細胞デブリを除去した。全可溶性タンパク質抽出物を、緩衝液A−平衡化TALON(Clonetech)樹脂と4℃で45分間、65rpmで混合した。樹脂を緩衝液Aで2回洗浄し、緩衝液A中のイミダゾールの勾配(2.5、10、100、200mM)を使用して、タンパク質を段階的に溶出した。精製されたタンパク質は、100mMイミダゾールで溶出された。
【0135】
酵素アッセイ液は、リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中に500μΜ NADPH、50μΜ 1,2−デヒドロレチクリン、および上記のように調製したタンパク質を含有した。アッセイ液を、30℃で一晩放置した。反応後、アッセイ試料を、ポジティブモードで作動するエレクトロンスプレーイオン化源を有する6400B質量分析計に連結したAgilent 1260 HLPCに供した。質量分析計は200〜400m/zの範囲を走査した。以前に記載された酵素アッセイに関するHLPC法を使用して、化合物を分離した(Farrow SC and Facchini,PJ,(2013),J.Biol.Chem.(288)pp28,997−29,012;dioxygenases catalyze O−demethylation and O,O−demethylation with widespread roles in benzylisoquinoline alkaloid metabolism in opium poppy)。
【0136】
結果を図5に示す。図5(最上部パネル)からわかるように、保持時間が約3.0分のピークが、酵素を含まない対照試料のHPLCカラム上で観察される。このピークは、m/z328の1,2−デヒドロレチクリンの衝突誘起解離スペクトルの最大断片に対する3.02分の予想保持時間に対応する(表1を参照のこと)。最上部から2番目のパネルでは、約3.1分の保持時間にピークが観察されないため、(R)−レチクリンが試料中にないことが示される。同じ対照試料で小さなピークが約3.0分に観察される。このピークは、基質1,2−デヒドロレチクリンの同位体形態を表す。最上部から3番目のパネルは、酵素を含有する試料において、保持時間が約3.0分のピークがm/z328で観察されることを示し、これにより、このアッセイ試料中に未消費の1,2−デヒドロレチクリンが少量存在することが示される。最下部パネルは、アッセイ試料において、保持時間が約3.1のピークがm/z330で観察されることを示す。このピークは、m/z330の(R)−レチクリンの衝突誘起解離スペクトルの最大断片に対する3.13分の予想保持時間に対応し(表1を参照のこと)、酵素の存在下でアッセイ試料中に(R)−レチクリンが存在することが示される。
【0137】
実施例4−(S)−N−メチルコクラウリンの(R)−N−メチルコクラウリンへの変換
この実施例では、CYP450およびAKRの部分で構成される、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)の融合ポリペプチド(配列番号323)の形態の酵素混合物を使用する、酵母における(S)−N−メチルコクラウリンの(R)−N−メチルコクラウリンへのin vitro変換が示される。
【0138】
下記のように、pESC−leu2d::PsCPR/PsREPIを保持するサッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)株YPH499を増殖させ、ミクロソームを精製した。手短に言えば、2%グルコースを添加した、ロイシン不含合成完全(SC)培地中で、この酵母株を30℃で16時間、250rpmで増殖させた。1ミリリットルの培養物を、1.8%ガラクトース、0.2%グルコース、および1%ラフィノースを添加した、ロイシン不含SC培地50mLに加え、30℃で72時間、250rpmで増殖させた。次いで、培養物を4,000gで5分間遠心分離し、TEK緩衝液(50mM Tris−HCl pH8、1mM EDTA、100mM KG)5mLで洗浄した。ペレットを、TESB緩衝液(50mM Tris−HCl pH8、1mM EDTA、0.6Mソルビトール)lmLに再懸濁し、0.5mmのガラスビーズを等量加えた。チューブを10℃で4分間、手で振盪した。ビーズをTESBで洗浄し、洗浄液を集め、14,000gで10分間遠心分離した。上清を125,000gで1時間超遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、ミクロソームを50mM HEPES pH7.5に再懸濁した。
【0139】
酵素アッセイ液は、HEPES緩衝液(pH7.5)中に500μΜ NADPHおよび50μΜ (S)−N−メチルコクラウリンおよび上記のように調製したミクロソームを含有した。アッセイ液を、30℃で一晩インキュベートした。反応後、アッセイ試料を0.2ml/分の流量でAgilent 1260 HLPCに供し、LUXセルロース−1のキラルカラム(150mm×2.1mm内径;Phenomenex)を使用して、0.1%ジエチルアミンを添加した75%重炭酸アンモニウム(溶媒A)および0.1%ジエチルアミン含有25%アセトニトリル(溶媒B)により化合物を分離した。(R)および(S)−N−メチルコクラウリンを波長230nmでモニターした。
【0140】
結果を図6に示す。図6からわかるように、キラルカラムで標準試料の(S)−N−メチルコクラウリンの保持時間は約13.9分(最上部パネル)である。最下部パネルは、酵素が混合物中にないアッセイの結果を示し、これらの反応条件下では、(S)−N−メチルコクラウリンが(R)−N−メチルコクラウリンにエピマー化されないことが示される。中段のパネルは、酵素混合物の存在下では、(S)−N−メチルコクラウリンが(R)−N−メチルコクラウリンにエピマー化されることを示す(矢印を参照のこと、約16.3分の保持時間にピークが出現)。
【0141】
実施例5−AKRおよびAKR−CYP450融合遺伝子の遺伝子サイレンシング
この実施例では、ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)を使用する、AKRおよび/またはCYP450をコードする遺伝子のサイレンシングが示される。
【0142】
ケシ(パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum))のBea選択化学型の、ケシ(パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum))由来のREPIおよび/またはCOR1.3(コデイノン還元酵素をコードする)の転写物レベル(それぞれ配列番号322および配列番号328により転写される)は、タバコラットルウイルス(TRV)ベクター系を使用して抑制された。REPI cDNAの2つの領域(REPI−(図7A;パネルA)およびREPI−5’(図7C;パネルA))およびCOR1.3 cDNAの1つの領域(図7B;パネルA)を、以下のプライマー対を使用して増幅した:
【0143】
REPI−a領域およびCOR1.3領域はかなりの類似性を示し、それぞれの場合に、REPIおよびCOR1.3の相互同時サイレンシングが得られる。これに対して、REPI−5’領域はユニークであり、REPIのサイレンシングのみが得られ、COR1.3のサイレンシングは得られない。
【0144】
アンプリコンは、個々にpTRV2にクローニングし、ベクターは以前に記載のようにアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中に動員した。2〜3週齢の実生の頂端分裂組織に、pTRVlおよび遺伝子特異的断片を含有する構築されたpTRV2を保持するA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)の1:1混合物を浸潤させた。空pTRV2を陰性対照として使用し、フィトエンデサチュラーゼをコードするpTRV2−PDSコンストラクトを陽性浸潤対照として使用した。浸潤された植物を、8〜10週間温室で栽培した。以前に記載のように、A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)による浸潤、ならびにアルカロイドについて、ラテックス、茎、および根の試料の収集および処理、ならびに転写物分析を行った。典型的には、20〜30本の植物に、pTRVlおよび1つのpTRV2コンストラクトを保持するA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)を浸潤させた。浸潤された植物の約70〜80%において、pTRV2コンストラクトの動員された断片が、RT−PCRにより検出され(図7A(パネルB);図7B(パネルB);図7C、パネルB)、これらの植物への感染が成功したことが示された。メタノールを使用して、凍結乾燥したラテックスからアルカロイドを抽出した。相対的な転写物存在量を、qRT−PCRにより測定した(図7A(パネルC);図7B(パネルC);図7C、パネルC)。アルカロイド含量および相対的な転写物存在量のデータを、6本の個々に浸潤された植物から作成し、それぞれの試料について、3つの技術的レプリケートが使用された。浸潤された植物のラテックス試料をLC−MS/MSにより分析した。pTRVlおよび別々のコンストラクト中にREPIの2つの領域のそれぞれまたはCOR1.3を保持するA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)で浸潤されたケシ植物のアルカロイド含量に対する効果を、全イオンクロマトグラム(図7A(パネルD);図7B(パネルD);図7C、パネルD)を使用し、ラテックスおよび根の中の9つの異なるアルカロイド(モルヒネ、コデイン、テバイン、パパベリン、ノスカピン、コダミン、ラウジン、およびラウダノシン)の相対的存在量を測定することによって(図7A(パネルE);図7B(パネルE);図7C、パネルE)評価した。モルヒネ含量が低くなることに加えて、REPIまたはCOR1.3のサイレンシングにより、コデインおよびテバインのレベルが顕著に低下した。REPI(すなわち、AKR−CYP450遺伝子)のサイレンシングもCOR1.3(すなわち、AKR遺伝子)のサイレンシングも、レチクリン、コダミン、ラウダニン、ラウダノシン、ならびに一貫性は少ないがパパベリンおよびノスカピンの蓄積を顕著に増加させた。(R)−レチクリン対(S)−レチクリンの比は、対照(pTRV2)植物のラテックス中で約21:79であったが、pTRV2−REPI−a植物およびpTRV2−COR1.3植物(図7B(パネルF))のラテックス中では、(R)−レチクリン対(S)−レチクリンの比は約2:98に低下し(図7A(パネルF))、またラテックスおよび根の中でpTRV2−REPI−5’植物のラテックス中では、約5:95に低下した(図7C、パネルF)。
【0145】
実施例6−NADPH/NADHおよびNADP/NADの存在下でのAKRの触媒活性
この実施例では、還元剤NADHまたはNADPHの存在下でAKRポリペプチドにより触媒される1,2−デヒドロレチクリンの(R)−レチクリンへの変換が示される。この実施例ではさらに、酸化剤NADまたはNADPの存在下での前述の反応の可逆性が示される。
【0146】
パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)およびパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)から得られたAKRを使用して反応を行った点、および逆反応では(R)−レチクリンを基質として用意し、NADまたはNADPのいずれかを酸化剤として使用して酵素反応を行なった点を除いて、基本的に上記の実施例3に記載するように実験を行った。後半に述べた反応は、pH9で行った。図8に示すように、NADH存在下およびNADPH存在下の両方において、1,2−デヒドロレチクリンは、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)(PsDRR)(図8A、パネルA)およびパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)(PrDRR)(図8B、パネルA)のどちらに由来する触媒量のAKRポリペプチドを使用しても、(R)−レチクリンに変換される。さらに図8に示すように、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)AKRポリペプチドPsDRR(図8A、パネルB)およびパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)ポリペプチドPrDRR(図8B、パネルB)のどちらを使用しても、反応を逆転させることができ、NADまたはNADPの存在下で、(R)−レチクリンは1,2−デヒドロレチクリンに変換される。
【0147】
実施例7−AKR活性のpH依存性
この実施例では、還元剤存在下および酸化剤存在下の両方におけるAKRポリペプチドのpH依存性が示される。
【0148】
パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)およびパパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)の両方のCYP450およびAKRポリペプチドのpH依存性を検討した。酵素反応は、各反応でのpHをpH3.5からpH10に段階的に増加させた点を除いて、基本的に実施例3および実施例6に記載するように行った。各評価pHにおける酵素活性は、ポジティブモードで作動するエレクトロンスプレーイオン化源を有する6400B質量分析計に連結したAgilent 1260 HLPCで試料を分析することにより定量した。質量分析計は200〜400m/zの範囲を走査した。以前に記載された酵素アッセイに関するHLPC法を使用して、化合物を分離した(Farrow SC and Facchini,PJ,(2013),J.Biol.Chem.(288)pp28,997−29,012;dioxygenases catalyze O−demethylation and 0,0−demethylation with widespread roles in benzylisoquinoline alkaloid metabolism in opium poppy)。
【0149】
結果を図9に示す。NADPH(PsDRS、順方向)の存在下およびNADP(PsDRS、逆方向)の存在下、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver somniferum)のCYP450(PsDRS)およびAKRを使用して、pHの関数として酵素活性を示すグラフをパネルAに示す。NADPH(PrDRS、順方向)の存在下およびNADP(PrDRS、逆方向)の存在下、パパヴェル・ロエアス(Papaver rhoeas)のCYP450(PrDRS)およびAKRを使用して、pHの関数として酵素活性を示すグラフをパネルBに示す。図9からわかるように、PsDRSおよびPrDRSは、約pH8で最適に(S)−レチクリンを1,2−デヒドロレチクリンに変換する。NADPHの存在下で、PsDRRおよびPrDRRは、約pH7で最適に1,2−デヒドロレチクリンを(R)−レチクリンに変換する。NADPの存在下で、PsDRRおよびPrDRRは、約pH9で最適に(R)−レチクリンを1,2−デヒドロレチクリンに変換する。
【0150】
実施例8−AKRおよびAKR−CYP450融合遺伝子の遺伝子サイレンシング
この実施例ではさらに、ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)を使用する、AKRおよび/またはCYP450をコードする遺伝子のサイレンシングを示す。
【0151】
遺伝子サイレンシング実験は、COR(AKR)およびREPI(CYP450)遺伝子を以下のコンストラクト:REPIa、REPIb、およびCOR.1.3を使用して標的化したことを除いて、基本的に実施例5に記載するように行った。REPIaは、COR遺伝子およびREPI遺伝子の両方の保存配列を標的にするコンストラクトを表す。これに対して、REPIbは、REPIにユニークな領域を標的にする。COR1.3は、CORにユニークな領域を標的にする。REPIおよびCORの転写物レベルを、実施例5に記載するように測定した。空ベクターを対照として使用した(PTRV2)。図10からわかるように、REPIbによりREPIがユニークに標的にされた植物では、対照に比較してREPI転写物のレベルが低下することが示されるが(図10−上部パネル)、COR転写物レベルは実質的に同じままである(図10−下部パネル)。REPIaによりREPIおよびCORが両方とも標的にされた植物では、REPI(図10−上部パネル)およびCOR(図10−下部パネル)の転写物レベルが低下することが示される。COR1.3を使用してCORを標的にした場合には、COR転写物レベルが低下した(図10−下部パネル)。さらに、REPI転写物レベルも、COR1.3によるCOR転写物レベルのサイレンシングに呼応して、対照に対して低下した(図10−上部パネル)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]