(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動用磁石を有するロータと、筒状に形成され前記ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータの径方向において前記駆動用磁石と前記ステータとの間に配置される円筒状の筒部と前記筒部の一端を塞ぐ底部とを有する略有底円筒状の隔壁と、回路基板と、前記回路基板に実装される発熱部品と、前記発熱部品で発生する熱を放散させるための板状の放熱板と、前記ステータ、前記回路基板および前記放熱板が収容されるモータケースとを備え、
前記ロータの軸方向の一方を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向とすると、
前記底部は、前記駆動用磁石よりも第1方向側に配置されるとともに前記筒部の第1方向端を塞ぎ、
前記回路基板は、前記回路基板の厚さ方向と前記軸方向とが一致するように配置されるとともに前記底部よりも第1方向側に配置され、
前記発熱部品は、前記回路基板の第1方向側の面に実装され、
前記放熱板は、平板状のベース部と、前記ベース部から第2方向側に突出して前記発熱部品の第1方向側の面に接触する突出部とを備え、
前記ベース部の外周側の端部の少なくとも一部分は、前記モータケースに固定される被固定部となっており、
前記被固定部は、前記ベース部と前記突出部との境界部よりも第2方向側に配置されていることを特徴とするモータ。
前記突出部は、前記ベース部から第2方向側に切り起こされた切り起こし部と、前記切り起こし部の第2方向端から前記軸方向に直交する方向に伸びるとともに前記発熱部品の第1方向側の面に接触する接触部とを備えることを特徴とする請求項1または2記載のモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のブラシレスモータでは、モータケースを構成するカバーによって平板状の放熱板を駆動用ICに押し付けることで、駆動用ICで発生した熱を放散することが可能になるため、駆動用ICで発生した熱を低コストで放散することが可能である。しかしながら、このブラシレスモータでは、平板状の放熱板が円板状のカバーによって駆動用ICに押し付けられているため、放熱板と駆動用ICとの密着性が低下する場合が生じうる。また、放熱板と駆動用ICとの密着性が低下すると、駆動用ICで発生した熱を効率的に放散できなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、回路基板に実装される発熱部品で発生した熱を低コストで、かつ、効率的に放散することが可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のモータは、駆動用磁石を有するロータと、筒状に形成されロータの外周側に配置されるステータと、ロータの径方向において駆動用磁石とステータとの間に配置される円筒状の筒部と筒部の一端を塞ぐ底部とを有する略有底円筒状の隔壁と、回路基板と、回路基板に実装される発熱部品と、発熱部品で発生する熱を放散させるための板状の放熱板と、ステータ、回路基板および放熱板が収容されるモータケースとを備え、ロータの軸方向の一方を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向とすると、底部は、駆動用磁石よりも第1方向側に配置されるとともに筒部の第1方向端を塞ぎ、回路基板は、回路基板の厚さ方向と軸方向とが一致するように配置されるとともに底部よりも第1方向側に配置され、発熱部品は、回路基板の第1方向側の面に実装され、放熱板は、平板状のベース部と、ベース部から第2方向側に突出して発熱部品の第1方向側の面に接触する突出部とを備え、ベース部の外周側の端部の少なくとも一部分は、モータケースに固定される被固定部となっており、被固定部は、ベース部と突出部との境界部よりも第2方向側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のモータでは、発熱部品で発生する熱を放散させるための放熱板は、平板状のベース部と、ベース部から第2方向側に突出する突出部とを備えており、突出部は、回路基板の第1方向側の面に実装された発熱部品の第1方向側の面に接触している。また、本発明では、平板状のベース部の外周側の端部の少なくとも一部分はモータケースに固定される被固定部となっており、この被固定部は、ベース部と突出部との境界部よりも第2方向側に配置されている。
【0009】
そのため、本発明では、突出部が所定の接触圧で発熱部品に接触するように、放熱板を撓ませること(弾性変形させること)が可能になる。具体的には、突出部が所定の接触圧で発熱部品に接触するように、ベース部を撓ませることが可能になる。したがって、本発明では、放熱板の突出部と発熱部品の第1方向側の面との密着性を高めることが可能になる。その結果、本発明では、板状に形成される放熱板と、ステータ等が収容されるモータケースとを用いた簡易な構成で、回路基板に実装される発熱部品で発生した熱を効率的に放散することが可能になる。すなわち、本発明では、回路基板に実装される発熱部品で発生した熱を低コストで、かつ、効率的に放散することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、突出部を所定の接触圧で発熱部品に接触させることが可能になるため、モータが振動しても、発熱部品が実装される回路基板の振動を抑制することが可能になる。したがって、本発明では、回路基板の位置ずれや騒音の発生を抑制することが可能になる。さらに、本発明では、発熱部品に接触する突出部がベース部から第2方向側に突出しているため、回路基板の第1方向側の面に発熱部品以外の電子部品が実装されていても、この電子部品とベース部との接触(すなわち、この電子部品と放熱板との接触)を防止することが可能になる。
【0011】
本発明において、隔壁は、底部から第1方向側に突出して第2方向側から回路基板を支持する支持突起を備え、支持突起の第1方向の端面は、回路基板の第2方向側の面に接触しており、発熱部品は、軸方向から見たときに、支持突起の少なくとも一部と重なっていることが好ましい。このように構成すると、回路基板の、発熱部品が実装されている部分の第2方向側への撓みを支持突起によって抑制することが可能になる。したがって、放熱板の突出部と発熱部品の第1方向側の面との密着性を効果的に高めることが可能になり、その結果、発熱部品で発生した熱をより効率的に放散することが可能になる。また、このように構成すると、支持突起の第1方向の端面が回路基板の第2方向側の面に接触しているため、回路基板の振動を効果的に抑制することが可能になる。したがって、回路基板の位置ずれや騒音の発生を効果的に抑制することが可能になる。
【0012】
本発明において、突出部は、ベース部から第2方向側に切り起こされた切り起こし部と、切り起こし部の第2方向端から軸方向に直交する方向に伸びるとともに発熱部品の第1方向側の面に接触する接触部とを備えることが好ましい。このように構成すると、切り起こし部と接触部との境界部を支点にして第1方向側へ接触部を撓ませることが可能になるため、必要以上の接触圧で接触部が発熱部品に接触するのを防止することが可能になる。すなわち、発熱部品に対する接触部の接触圧を調整することが可能になり、その結果、接触部の接触圧に起因する発熱部品の損傷を防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、接触部は、四角形の平板状に形成され、接触部の一辺は、切り起こし部に繋がる接続部となっており、接続部とベース部の外周面との最短距離は、接続部を除いた接触部の残りの三辺のうちの少なくとも二辺のそれぞれとベース部の外周面との最短距離よりも長くなっていることが好ましい。ベース部の、撓む部分(弾性変形する部分)に、ベース部から第2方向側に切り起こされた切り起こし部が配置されていると、ベース部が撓みにくくなるが、このように構成すると、ベース部の外周面から切り起こし部を遠ざけることが可能になり、その結果、ベース部の、弾性変形する部分から外れた箇所に切り起こし部を配置することが可能になる。したがって、接触部が所定の接触圧で発熱部品に接触するように、ベース部を適切に撓ませることが可能になる。
【0014】
本発明において、ベース部は、略四角形状に形成され、ベース部の4個の角部のそれぞれが被固定部となっていることが好ましい。このように構成すると、ベース部を撓ませやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のモータでは、回路基板に実装される発熱部品で発生した熱を低コストで、かつ、効率的に放散することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(ポンプ装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ3が組み込まれるポンプ装置1の断面図である。以下の説明では、
図1のZ1方向側を「上」側とし、その反対側である
図1のZ2方向側を「下」側とする。
【0019】
本形態のモータ3は、ポンプ装置1に組み込まれて使用される。このポンプ装置1は、キャンドポンプ(キャンドモータポンプ)と呼ばれるタイプのポンプであり、モータ3の動力で回転する羽根車2を備えている。モータ3は、DCブラスレスモータであり、ロータ5と、ステータ6と、モータ3を制御するための回路基板7とを備えている。ロータ5は、ロータ5の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、ロータ5の軸方向となっている。
【0020】
本形態の上方向(Z1方向)は、ロータ5の軸方向の一方である第1方向となっており、下方向(Z2方向)は、第1方向の反対方向(すなわち、ロータ5の軸方向の他方)である第2方向となっている。なお、以下の説明では、ロータ5の径方向を「径方向」とし、ロータ5の周方向(円周方向)を「周方向」とする。
【0021】
羽根車2、ロータ5およびステータ6は、モータ3の一部を構成するハウジング8と、ハウジング8の下端部に固定されるケース体9とから構成されるポンプケースの内部に配置されている。ハウジング8とケース体9とは、図示を省略するネジによって互いに固定されている。ケース体9には、流体の吸入口9aと、流体の吐出口9bとが形成されている。
【0022】
ハウジング8とケース体9とに囲まれた領域は、吸入口9aから吸入された流体が吐出口9bに向かって通過するポンプ室10となっている。ハウジング8とケース体9との接合部分には、ポンプ室10の密閉性を確保するためのシール部材(図示省略)が配置されている。また、ハウジング8は、ポンプ室10とステータ6とを隔てるようにポンプ室10とステータ6との間に配置される隔壁11aを有する隔壁部材11と、隔壁部材11の上側を覆うカバー12とを備えている。
【0023】
隔壁11aは、略有底円筒状に形成されている。具体的には、隔壁11aは、鍔付きの略有底円筒状に形成されており、筒部11bと底部11cと鍔部11dとを備えている。筒部11bは、円筒状に形成されており、筒部11bの軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。底部11cは、筒部11bの上端を塞いでいる。筒部11bの下端は、開口している。鍔部11dは、筒部11bの下端から径方向の外側へ広がる円環状に形成されている。
【0024】
また、隔壁部材11は、筒部11bの外周側に配置される円筒状の外周壁部11eを備えている。外周壁部11eは、鍔部11dに繋がっている。具体的には、外周壁部11eの下端が、径方向における鍔部11dの外側端に繋がっている。隔壁部材11の具体的な構成については後述する。
【0025】
ロータ5は、回転軸13と、駆動用磁石14と、円筒状のスリーブ15とを備えている。回転軸13は、回転軸13の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。スリーブ15は、回転軸13の上端側部分の外周面に固定されている。駆動用磁石14は、スリーブ15の外周面に固定されている。駆動用磁石14の外周面には、N極とS極とが駆動用磁石14の周方向において交互に着磁されている。駆動用磁石14およびスリーブ15は、筒部11bの内周側に配置されている。また、駆動用磁石14およびスリーブ15は、底部11cの下側に配置されている。
【0026】
回転軸13の下端部には、羽根車2が固定されている。羽根車2は、ポンプ室10の内部に配置されており、ケース体9に覆われている。回転軸13は、スリーブ15を上下方向で挟むように配置される2個の軸受16、17に回転可能に支持されている。スリーブ15の上側に配置される軸受16は、隔壁11aに取り付けられている。スリーブ15の下側に配置される軸受17は、軸受保持部材18に保持されている。軸受保持部材18は、隔壁11aの筒部11bの内周側に配置されている。
【0027】
軸受17および軸受保持部材18の下側には、円環状のシール部材19が配置されている。シール部材19の内周面は、回転軸13の外周面に接触しており、シール部材19の外周面は、筒部11bの内周面に接触している。シール部材19の下側には、筒部11bの下端の開口を塞ぐカバー20が配置されている。カバー20は、筒部11bの内周側に嵌め込まれて固定されている。軸受保持部材18およびシール部材19は、カバー20によって筒部11bの内周側で保持されている。
【0028】
ステータ6は、複数の駆動用コイル23と、ステータコア24とを備えており、全体として筒状に形成されている。具体的には、ステータ6は、略円筒状に形成されている。ステータ6は、ステータ6の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、ステータ6は、隔壁11aを介して、ロータ5の外周側に配置されており、ロータ5とステータ6との間には隔壁11aが配置されている。具体的には、ステータ6は、筒部11bの外周側に配置されるとともに鍔部11dの上側に配置されている。また、ステータ6は、外周壁部11eの内周側に配置されており、ステータ6の外周面は、径方向の外側から外周壁部11eに覆われている。
【0029】
ステータコア24は、磁性材料からなる薄い磁性板が積層されて形成された積層コアである。このステータコア24は、円環状に形成される外周環部と、外周環部から径方向の内側に向かって突出する複数の突極部とを備えている。駆動用コイル23は、インシュレータ25を介して突極部に巻回されている。すなわち、複数の駆動用コイル23のそれぞれは、インシュレータ25を介して複数の突極部のそれぞれに巻回されている。駆動用コイル23の端部は、図示を省略する端子ピンを介して回路基板7に電気的に接続されており、駆動用コイル23には、回路基板7から電流が供給される。
【0030】
回路基板7は、モータ3の駆動回路等が形成されたプリント基板である。また、回路基板7は、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板であり、略円板状に形成されている。この回路基板7は、回路基板7の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。回路基板7は、隔壁11aの底部11c、および、ステータ6よりも上側に配置されている。また、回路基板7は、外周壁部11eの内周側に配置されており、回路基板7の外周面は、径方向の外側から外周壁部11eに覆われている。
【0031】
回路基板7には、駆動用コイル23に供給される電流を制御する駆動用IC27が実装されている。駆動用IC27は、回路基板7の上面に実装されている。この駆動用IC27は、上下方向の厚さが薄い扁平な直方体状に形成されており、駆動用IC27の上面は、上下方向に直交する平面となっている。本形態の駆動用IC27は、駆動用IC27の動作時に熱を発生させる発熱部品である。モータ3は、駆動用IC27で発生する熱を放散するための板状の放熱板28を備えている。放熱板28の具体的な構成については後述する。
【0032】
カバー12は、円筒状の筒部12aと、筒部12aの一端を塞ぐ円板状の底部12bとを有する有底円筒状に形成されている。このカバー12は、筒部12aの開口側が下側を向くように配置されており、底部12bは、筒部12aの上端を塞いでいる。また、カバー12は、外周壁部11eの上端の開口を塞ぐように、外周壁部11eの上端側に固定されている。カバー12は、ステータ6、回路基板7および放熱板28を上側から覆っている。また、ステータ6、回路基板7および放熱板28は、隔壁11a、外周壁部11eおよびカバー12によって画定される領域の中に配置されている。カバー12の具体的な構成については後述する。
【0033】
(隔壁部材およびカバー部材の構成)
図2は、
図1に示すモータ3の斜視図である。
図3は、
図1に示す隔壁部材11の斜視図である。
図4は、
図1のE部の拡大図である。
【0034】
隔壁部材11は、上述のように、隔壁11aと、隔壁11aの外周側に配置される外周壁部11eとを備えている。また、隔壁部材11は、外周壁部11eの外周面の下端側から径方向の外側へ広がる円環状の鍔部11fを備えている。鍔部11fの下面には、ケース体9の上端面が当接している。ケース体9は、鍔部11fの下面にケース体9の上端面が当接した状態で鍔部11fに固定されている。
【0035】
隔壁11aは、上述の筒部11b、底部11cおよび鍔部11dに加えて、底部11cの中心部分から上側に突出する有底円筒状の突出部11gと、底部11cの上面から上側に突出して下側から回路基板7を支持する支持突起11hとを備えている。筒部11bは、径方向において駆動用磁石14とステータ6との間に配置されており、駆動用磁石14の外周面を覆っている。上述のように、駆動用磁石14およびスリーブ15は、底部11cの下側に配置されており、底部11cは、駆動用磁石14およびスリーブ15よりも上側に配置されている。
【0036】
突出部11gの内周側には、軸受16が取り付けられている。また、突出部11gは、回路基板7の中心に形成される貫通穴7aに挿通されている(
図4参照)。突出部11gの外周面には、周方向において回路基板7を位置決めするための凸部11jが形成されている(
図3参照)。回路基板7の貫通穴7aには、凸部11jが係合する凹部(図示省略)が形成されている。
【0037】
支持突起11hは、円柱状に形成されている。本形態では、突出部11gの外周側の3箇所に支持突起11hが形成されている。3個の支持突起11hは、周方向において一定のピッチで配置されている。支持突起11hの上端面は、上下方向に直交する平面となっており、回路基板7の下面に接触している。上下方向から見たときに、駆動用IC27は、3個の支持突起11hのうちの1個の支持突起11hの一部と重なっている(
図5参照)。
【0038】
外周壁部11eは、径方向の外側からステータ6を覆う円筒状の第1壁部11kと、径方向の外側から回路基板7を覆う円筒状の第2壁部11nとから構成されている。第1壁部11kの下端は、鍔部11dの径方向の外側端に繋がっている。第2壁部11nの下端は、第1壁部11kの上端面に繋がっている。円筒状に形成される第1壁部11kと第2壁部11nとは同軸上に配置されている。第2壁部11nの内径は、第1壁部11kの内径よりも大きくなっており、第2壁部11nの外径は、第1壁部11kの外径よりも小さくなっている。
【0039】
第1壁部11kの外周面には、径方向の外側に突出する係合凸部11pが形成されている。本形態では、第1壁部11kの外周面の3箇所に係合凸部11pが形成されている。3個の係合凸部11pは、周方向において一定のピッチで配置されている。係合凸部11pは、略三角柱状に形成されており、径方向における係合凸部11pの外側には、下側に向かうにしたがって径方向の外側へ向かうように傾斜する四角形の傾斜面が形成されている。また、係合凸部11pの下面は、上下方向に直交する長方形の平面となっており、周方向における係合凸部11pの両端面は、周方向に直交する略三角形の平面となっている。
【0040】
カバー12は、筒部12aと、筒部12aの上端を塞ぐ底部12bとから構成されている。筒部12aは、筒部12aの上端部を構成する円筒状の第1筒部12cと、第1筒部12cの下端面から下側へ伸びる円筒状の第2筒部12dとから構成されている。第1筒部12cの上端は、底部12bの径方向の外側端に繋がっている。円筒状に形成される第1筒部12cと第2筒部12dとは同軸上に配置されている。
【0041】
第1筒部12cの外径と第2筒部12dの外径とは等しくなっている。すなわち、筒部12aの外径は一定になっている。また、筒部12aの外径は、第1壁部11kの外径とほぼ等しくなっている。第2筒部12dの内径は、第1筒部12cの内径よりも大きくなっている。第1筒部12cと第2筒部12dとの境界には、上下方向に直交する円環状の段差面12eが形成されている(
図4参照)。第2筒部12dの内径は、第2壁部11nの外径とほぼ等しくなっており、第1筒部12cの内径は、第2壁部11nの内径とほぼ等しくなっている。第2筒部12dは、第2壁部11nの外周側に配置されている。
【0042】
筒部12aの外周側には、外周壁部11eに形成される3個の係合凸部11pのそれぞれに係合する3個の係合片12fが形成されている。3個の係合片12fは、周方向において一定のピッチで配置されている。係合片12fは、上下方向に細長い四角柱状に形成され周方向に間隔をあけた状態で配置される2本の柱部12gと、柱部12gの下端同士を繋ぐ連結部12hとを備える門型に形成されている。
【0043】
柱部12gの上端側部分は、筒部12aの外周面に形成され、柱部12gの下側部分は、筒部12aの下端面よりも下側に突出している。周方向における2本の柱部12gの間隔は、周方向における係合凸部11pの幅よりも広くなっている。連結部12hの上面は、上下方向に直交する平面となっている。柱部12gの下側部分(すなわち、係合片12fの下側部分)は、係合凸部11pと係合片12fとがスナップフィットで係合可能となるように径方向へ弾性変形可能となっている。
【0044】
係合片12fは、径方向の外側から係合凸部11pに係合する。係合片12fと係合凸部11pとが係合しているときには、2本の柱部12gの間に係合凸部11pが配置されており、外周壁部11eに対するカバー12の周方向への移動が規制されている。また、係合片12fと係合凸部11pとが係合しているときには、連結部12hの上面は、係合凸部11pの下面に接触しており、外周壁部11eに対するカバー12の上側への移動が規制されている。また、係合片12fと係合凸部11pとが係合しているときには、第1壁部11kの上端面に第2筒部12dの下端面が接触しており、外周壁部11eに対するカバー12の下側への移動が規制されている。本形態では、係合片12fと係合凸部11pとが係合することで、カバー12が外周壁部11eに固定されている。
【0045】
(放熱部材の構成)
図5は、
図1に示す回路基板7、駆動用IC27および放熱板28を抜き出して示す平面図である。
図6は、
図1に示す放熱板28の斜視図である。
【0046】
放熱板28は、熱伝導率の高い金属で形成されている。本形態の放熱板28は、アルミニウム合金で形成されている。この放熱板28は、平板状に形成されるベース部28aと、ベース部28aから下側に突出して駆動用IC27の上面に接触する突出部28bとを備えている。なお、ベース部28aは、平板状に形成されているが、後述のように、撓んだ状態(弾性変形した状態)で外周壁部11eおよびカバー12に取り付けられており、
図5、
図6では、外周壁部11eおよびカバー12に取り付けられて撓んだ状態のベース部28aが図示されている。
【0047】
ベース部28aは、略四角形状に形成されている。具体的には、ベース部28aは、略正方形状に形成されている。本形態では、ベース部28aの形状は、正方形の4つの角が円弧状に面取りされた形状となっている。
図5に示すように、突出部28bは、ベース部28aの4個の角部のうちの1個の角部に偏った位置に形成されている。本形態の突出部28bは、ベース部28aに対して切り起こし加工を行うことで形成されており、ベース部28aの、突出部28bに対応する箇所には、上下方向に貫通する略正方形状の貫通穴28cが形成されている。
【0048】
突出部28bは、ベース部28aから下側に切り起こされた切り起こし部28dと、切り起こし部28dの下端に繋がるとともに駆動用IC27の上面に接触する接触部28eとから構成されている。接触部28eは、切り起こし部28dの下端から上下方向に直交する方向に伸びる平板状に形成されている。具体的には、接触部28eは、四角形の平板状に形成されている。より具体的には、接触部28eは、正方形の平板状に形成されている。本形態では、接触部28eの端面とベース部28aの端面とが互いに平行にならないように突出部28bが形成されている。
【0049】
正方形の平板状に形成される接触部28eの一辺は、切り起こし部28dに繋がる接続部28fとなっている。接触部28eの残りの三辺のうちの一辺は、接続部28fと平行な平行端面部28gとなっており、接続部28fおよび平行端面部28gを除いた残りの二辺は、接続部28fに直交する直交端面部28h、28jとなっている。
図5に示すように、直交端面部28hは、ベース部28aの中心側に配置され、直交端面部28jは、ベース部28aの角部側に配置されている。
【0050】
図5に示すように、接続部28fとベース部28aの外周面との最短距離(すなわち、接触部28eの四隅のうちの、接続部28fと直交端面部28jとが交わる角と、ベース部28aの外周面との最短距離)L1は、平行端面部28gとベース部28aの外周面との最短距離(すなわち、接触部28eの四隅のうちの、平行端面部28gと直交端面部28jとが交わる角と、ベース部28aの外周面との最短距離)L2、および、直交端面部28jとベース部28aの外周面との最短距離(すなわち、接触部28eの四隅のうちの、平行端面部28gと直交端面部28jとが交わる角と、ベース部28aの外周面との最短距離)L2よりも長くなっている。すなわち、接続部28fとベース部28aの外周面との最短距離L1は、接続部28fを除いた接触部28eの残りの三辺のうちの二辺のそれぞれとベース部28aの外周面との最短距離L2よりも長くなっている。
【0051】
ベース部28aは、外周壁部11eおよびカバー12に固定されている。具体的には、ベース部28aの4個の角部のそれぞれが、外周壁部11eの第2壁部11nの上端面とカバー12の段差面12eとの間に挟まれた状態で、外周壁部11eおよびカバー12に固定されている。すなわち、ベース部28aの4個の角部のそれぞれが第2壁部11nの上端面と段差面12eとの間に挟まれることで、ベース部28aが、外周壁部11eおよびカバー12に固定されている。
【0052】
ベース部28aの4個の角部のそれぞれは、外周壁部11eおよびカバー12に固定される被固定部28kとなっている。すなわち、ベース部28aの外周側の端部の一部分は、外周壁部11eおよびカバー12に固定される被固定部28kとなっている。本形態では、外周壁部11eとカバー12とによって、ステータ6、回路基板7および放熱板28が収容されるモータケース30が構成されており、被固定部28kは、モータケース30に固定されている。
【0053】
被固定部28kは、ベース部28aと突出部28bとの境界部(すなわち、ベース部28aと切り起こし部28dとの境界部)28rよりも下側に配置されており、平板状に形成されるベース部28aは、ベース部28aの外周側が下側に下がるように撓んでいる。すなわち、放熱板28は、接触部28eの下面が駆動用IC27の上面に所定の接触圧で接触するように撓んでいる。本形態では、被固定部28kは、接触部28eよりも上側に配置されている。すなわち、ベース部28aは、接触部28eよりも上側に配置されている。また、ベース部28aの中心部分の上面は、カバー12の底部12bの下面に接触している。なお、ベース部28aの中心部分の上面は、底部12bの下面に接触していなくても良い。
【0054】
上述のように、支持突起11hの上端面は、回路基板7の下面に接触している。また、接触部28eの下面が駆動用IC27の上面に所定の接触圧で接触している。そのため、回路基板7は、放熱板28によって支持突起11hの上端面に押し付けられている。回路基板7は、放熱板28によって支持突起11hの上端面に押し付けられることで固定されている。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、放熱板28の被固定部28kは、ベース部28aと突出部28bとの境界部28rよりも下側に配置されており、放熱板28は、接触部28eの下面が駆動用IC27の上面に所定の接触圧で接触するように撓んでいる。そのため、本形態では、接触部28eと駆動用IC27の上面との密着性を高めることが可能になる。したがって、本形態では、板状に形成される放熱板28と、ステータ6等が収容されるモータケース30とを用いた簡易な構成で、駆動用IC27で発生した熱を効率的に放散することが可能になる。すなわち、本形態では、駆動用IC27で発生した熱を低コストで、かつ、効率的に放散することが可能になる。
【0056】
本形態では、駆動用IC27は、上下方向から見たときに、回路基板7の下面に接触する3個の支持突起11hのうちの1個の支持突起11hの一部と重なっている。そのため、本形態では、回路基板7の、駆動用IC27が実装されている部分の下側への撓みを支持突起11hによって抑制することが可能になる。したがって、本形態では、接触部28eと駆動用IC27の上面との密着性を効果的に高めることが可能になり、その結果、駆動用IC27で発生した熱をより効率的に放散することが可能になる。
【0057】
本形態では、3個の支持突起11hの上端面が回路基板7の下面に接触しており、また、接触部28eの下面が駆動用IC27の上面に所定の接触圧で接触している。そのため、本形態では、ポンプ装置1が振動しても、駆動用IC27が実装される回路基板7の振動を抑制することが可能になる。したがって、本形態では、回路基板7の位置ずれや騒音の発生を抑制することが可能になる。
【0058】
本形態では、駆動用IC27に接触する突出部28bがベース部28aから下側に突出している。そのため、本形態では、回路基板7の上面に駆動用IC27以外の電子部品が実装されていても、この電子部品とベース部28aとの接触(すなわち、この電子部品と放熱板28との接触)を防止することが可能になる。
【0059】
本形態では、突出部28bは、ベース部28aから下側に切り起こされた切り起こし部28dと、切り起こし部28dの下端から上下方向に直交する方向に伸びる平板状の接触部28eとから構成されている。そのため、本形態では、切り起こし部28dと接触部28eとの境界部を支点にして上側に接触部28eを撓ませることが可能になる。したがって、本形態では、駆動用IC27の上面に接触する接触部28eが必要以上の接触圧で駆動用IC27に接触するのを防止することが可能になる。すなわち、本形態では、駆動用IC27に対する接触部28eの接触圧を調整することが可能になり、その結果、接触部28eの接触圧に起因する駆動用IC27の損傷を防止することが可能になる。
【0060】
本形態では、切り起こし部28dに繋がる接触部28eの接続部28fとベース部28aの外周面との最短距離L1は、接触部28eの平行端面部28gとベース部28aの外周面との最短距離L2および直交端面部28jとベース部28aの外周面との最短距離L2よりも長くなっている。そのため、本形態では、ベース部28aの外周面から切り起こし部28dを遠ざけることが可能になり、その結果、ベース部28aの撓む部分(弾性変形する部分)から外れた箇所に切り起こし部28dを配置することが可能になる。ベース部28aの撓む部分に切り起こし部28dが配置されていると、ベース部28aが撓みにくくなるが、本形態では、ベース部28aの撓む部分から外れた箇所に切り起こし部28dを配置することが可能になるため、接触部28eが所定の接触圧で駆動用IC27に接触するように、ベース部28aを適切に撓ませることが可能になる。
【0061】
本形態では、略正方形状に形成されるベース部28aの4個の角部のそれぞれが外周壁部11eおよびカバー12に固定される被固定部28kとなっている。そのため、本形態では、ベース部28aを撓ませやすくなる。
【0062】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例であるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0063】
上述した形態では、放熱板28の突出部28bは、ベース部28aに対して切り起こし加工を行うことで形成されているが、
図7、
図8に示すように、ベース部28aに対して絞り加工を行うことで、駆動用IC27の上面に接触する突出部28tが放熱板28に形成されていても良い。突出部28tの下面は、上下方向に直交する平面となっている。この場合であっても、放熱板28の被固定部28kは、ベース部28aと突出部28tとの境界部28uよりも下側に配置されており、平板状に形成されるベース部28aは、ベース部28aの外周側が下側に下がるように撓んでいる。
【0064】
上述した形態において、直交端面部28hが形成される箇所で、接触部28eが切り起こし部28dに繋がっていても良い。すなわち、上述した形態の直交端面部28hが配置される箇所に切り起こし部28dが形成されるとともに、上述した形態の直交端面部28hが形成される箇所が切り起こし部28dに繋がる接続部となっていても良い。この場合には、この接続部とベース部28aの外周面との最短距離は、この接続部を除いた接触部28eの残りの三辺のそれぞれとベース部28aの外周面との最短距離よりも長くなっている。この場合には、ベース部28aの外周面から切り起こし部28dをより遠ざけることが可能になる。
【0065】
なお、上述した形態よりもベース部28aの中心側に突出部28bが形成されているのであれば、平行端面部28gが形成される箇所で、接触部28eが切り起こし部28dに繋がっていても良いし、直交端面部28jが形成される箇所で、接触部28eが切り起こし部28dに繋がっていても良い。
【0066】
上述した形態において、接触部28eは、四角形以外の多角形状に形成されていても良いし、円形状や楕円形状に形成されていても良い。また、上述した形態において、ベース部28aは、四角形以外の多角形状に形成されていても良いし、楕円形状や長円形状に形成されていても良い。また、上述した形態では、隔壁11aと外周壁部11eとが一体で形成されているが、隔壁11aと外周壁部11eとが別体で形成されていても良い。
【0067】
上述した形態において、ステータ6および回路基板7を覆う樹脂封止部材が外周壁部11eの内周側に充填されていても良い。この場合の樹脂封止部材は、たとえば、ポッティング樹脂であり、回路基板7の上側に放熱板28が配置される前に、隔壁部材11の上側から樹脂を注入して硬化させる。また、この場合には、駆動用IC27の上面が樹脂封止部材に覆われない位置まで樹脂封止部材が充填される。この場合には、ステータ6および回路基板7の防水性を高めることが可能になるとともに、樹脂封止部材を利用して、ステータ6や回路基板7で発生した熱を放散することが可能になる。
【0068】
上述した形態において、カバー12を外周壁部11eに固定する際に、第1壁部11kの上端面と第2筒部12dの下端面との間に接着剤が塗布されても良いし、第2壁部11nの外周面と第2筒部12dの内周面との間に接着剤が塗布されても良い。この場合には、外周壁部11eに対するカバー12の固定強度を高めることが可能になる。また、カバー12を外周壁部11eに固定する際に、第2壁部11nの上端面と放熱板28の被固定部28kの下面との間に接着剤が塗布されても良いし、カバー12の段差面12eと放熱板28の被固定部28kの下面との間に接着剤が塗布されても良い。この場合には、外周壁部11eやカバー12に対する放熱板28の固定強度を高めることが可能になる。
【0069】
上述した形態では、駆動用IC27は、上下方向から見たときに、3個の支持突起11hのうちの1個の支持突起11hの一部と重なっているが、駆動用IC27は、上下方向から見たときに、3個の支持突起11hのうちの1個の支持突起11hの全体と重なっていても良い。また、駆動用IC27は、上下方向から見たときに、支持突起11hと重なっていなくても良い。また、上述した形態では、モータ3は、ポンプ装置1に使用されているが、モータ3は、ポンプ装置1以外の装置に使用されても良い。