(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明のポリエステル塗料硬化剤の(A)成分と(B)成分製造方法の一例を示す。
【0012】
(A)成分のレゾール樹脂は、メチルフェノールとメタナールを触媒の存在下反応した後、アルコール類で変性することにより得られる。
本発明方法に使用されるフェノール類は2−メチルフェノールである。
アルデヒド類としてはフェノール樹脂の製造に使用可能とされているアルデヒド類であれば使用可能である。
例えば、メタナール、パラホルムアルデヒド、トリオキサン(メタホルムアルデヒド)などを単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
上記アルデヒド類の使用量はフェノール類の合計量1モルに対して、0.3〜4.0モル、好ましくは0.5〜3.0モルの割合で用いるのが望ましい。
フェノール類とアルデヒド類とを反応させる際に用いる触媒としては、特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の塩基性触媒を適宜使用することができる。
フェノール類とアルデヒド類とを反応させる方法には、特に制限はなく、例えばフェノール類と、アルデヒド類、触媒を一括で仕込み反応させる方法、またはフェノール類と触媒を仕込んだ後、所定の反応温度にてアルデヒド類を添加する方法が挙げられる。
このとき、反応温度は30〜100℃の範囲で行うとよい。
30℃未満であると反応の進行が遅く、かつ未反応のフェノール類が残存するため好ましくない。また100℃を超える温度では高分子量成分の生成が促進されるため好ましくない。
反応時間は特に制限はなく、アルデヒド類および触媒の量、反応温度により調整することが出来る。
分子量の調整は、反応温度と反応時間の制御で行うことが出来る。
反応の際、有機溶剤を使用することももちろん可能である。
このような有機溶剤としては、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が単独で、若しくは二種以上を併用して使用できる。
前記有機溶剤は、フェノール類100重量部に対して、0〜1,000重量部、好ましくは10〜100重量部程度となるように使用することができる。
反応後は蒸留により縮合水を除去し、若しくは必要に応じて水洗して残存触媒を除去してもよい。
更に、減圧蒸留を行って未反応のフェノール類や未反応アルデヒド類、水分を除去してもよい。
アルコール変性も公知の方法で実施することができる。
【0013】
(A)成分のアルコール変性に用いられるアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール等が上げられるが、最適なアルコールは、1−ブタノールで有る。
【0014】
(B)成分は、公知の方法で作製できる。
メラミン樹脂は、必ずしもメラミン単独である必要はなく、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキサカルボグアナミンなどのグアナミン類、尿素、エチレン尿素、チオ尿素、ジシアンジアミドなどのメラミンと混合あるいは共縮合可能な化合物との混合物あるいは共縮合物であっても差し支えない。
アルデヒド類としてはフェノール樹脂の製造に使用可能とされているアルデヒド類であれば使用可能である。
例えば、メタナール、パラホルムアルデヒド、トリオキサン(メタホルムアルデヒド)などを単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
(B)成分のアルコール変性に用いられるアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール等が上げられる。
市販品としては、三木理研工業株式会社“リケンレヂン”(登録商標)MM−6、昭和電工株式会社“ミルベン”(登録商標)SM−512、SM−850等が上げられる。
【0015】
(A)成分と(B)成分の比率は、(A)成分が100重量部に対し、(B)成分が1〜100重量部、更には(A)成分が100重量部に対し、(B)成分が10〜70重量部で有ることがより好適である。
【0016】
ポリエステル塗料の(A)成分と(B)成分を合わせた組成物と、ポリエステル樹脂の比率は、組成物100重量部に対し、ポリエステル樹脂が100〜1000重量部、更には組成物100重量部に対し、300〜900重量%であるとより好適である。
【0017】
前述のポリエステル塗料は粘度調整のため、各種有機溶剤で希釈することが出来る。具体的には、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の有機溶剤が挙げられるが、特に制限はない。
また、水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤等の溶剤で希釈することが出来る。
【0018】
ポリエステル塗料は、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、含浸コーター、インクジェット等を用いて塗工できる。
【0019】
ポリエステル塗料の硬化条件は、温度は150℃〜300℃、硬化時間は1分〜60分、硬化温度を制御することで、硬化時間を調整することが出来る。
【0020】
以下に、本発明について実施例、比較例および試験例等を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【0021】
<合成例1〜4>
表1に示す割合で2−メチルフェノール或いは3−メチルフェノール、メタナール、水酸化ナトリウムをフラスコに仕込み、表1に示す条件で反応させた。反応終了後、冷却しながら37.5%燐酸水溶液をゆっくりと添加し、pHを3.0に調整した。
ここで、この反応物を静置し、下層の樹脂部と上層水層部に分離させ、この上層液を除去した。次いで下層液に10モルの水を添加・混合して再度、静置・分離させ、上層液を除去した。この操作を3回繰り返し精製した後、減圧下で系内の水分が1%以下になるまで脱水を行った。
系内の脱水処理を行った後の内容液に、表1に示す割合で1−ブタノールを入れ、常圧で環流が開始されまで内温を上げて行き、115〜123℃でアルコキシ化反応を10時間行った。この間、本反応を完結させるため、反応中に生成する水をたえず除去しながら反応を継続させた後、内容液を減圧下で過剰な未反応の1−ブタノールを除去し、固形分を50重量%に調整する様にして合成を行った。
尚、合成例1、2、3、4で出来たフェノール樹脂をそれぞれ、フェノール樹脂1、2、3、4とする。
【0022】
<分子量測定方法>
「重量平均分子量」
重量平均分子量は、以下に示す装置を以下に示す条件で用いて測定し、ポリスチレン換算で算出した。
装置:ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーShodex GPC−101(昭和電工社製)
カラム:KF−801+KF−802(2本)+KF−803(いずれも商品名:昭和電工社製)
カラムの温度:40℃
試料:99.0重量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/min
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI検出器
【0023】
<混合液の調整>
表2、表3に示す配合比で、合成例フェノール樹脂とアルコール変性メラミン樹脂とポリエステル樹脂とを2−ブタノンで固形分50%に攪拌混合し、ポリエステル塗料を調整した。
尚、アルコール変性メラミン樹脂は、三木理研工業株式会社“リケンレヂン”(登録商標)MM−6(重量平均分子量:620)を使用した。
ポリエステル樹脂は、東洋紡績株式会社“バイロン”(登録商標)GK-360を使用した。
【0024】
<混合液外観確認方法>
混合液の外観を目視で確認し、相溶は○、若干の白濁は○〜△、白濁を△、非相溶は×として評価した。
【0025】
<試験片作製方法>
金属プライマーとしての特性評価を行うため、ポリエステル塗料を0.3mm厚・アルミ板にバーコーター#24で塗布し、220℃−20分の焼き付けを行い、塗膜の性能評価を行った。
【0026】
<2−ブタノンラビング性確認方法>
2ポンドのハンマーの先端を医療用ガーゼ16枚重ねで被覆し、充分に2−ブタノンで浸して塗膜を擦り、100回往復したところで基材が完全に露出しなかったものを○、100〜80往復で完全に露出したものを○〜△、80〜50往復で完全に露出したものを△、50往復以下で完全に露出したものを×とした。
【0027】
<煮沸試験確認方法>
塗膜を煮沸した水に1時間浸漬させ、外観に変化のなかったものを○、若干白化したものを△、白化したものを×とした。
【0028】
<実施例1〜7>
表2に示す配合比で、上記に示す試験片作製方法で試験片を作製し、混合液の外観確認、2−ブタノンラビング試験、煮沸試験を行った。
【0029】
<比較例1〜10>
表3に示す配合比で、実施例1〜7と同様の方法で、それぞれの評価を行った。
【0030】
硬化剤として、アルコール変性2−メチルフェノールのレゾール樹脂と、アルコール変性メラミン樹脂を併用した場合の実施例1〜8のみ、良好な、配合後外観、2−ブタノンラビング性、煮沸試験後外観を示した。
硬化剤として、アルコール変性2−メチルフェノールのレゾール樹脂、若しは特許文献1に示してあるアルコール変性3−メチルフェノールのレゾール樹脂を単独で使用した場合の比較例1〜8は、良好な2−ブタノンラビング性は得られなかった。アルコール変性3−メチルフェノールのレゾール樹脂を使用した比較例7、8は、アルコール変性2−メチルフェノールのレゾール樹脂を用いた比較例1〜6よりも2−ブタノンラビング性は良好な結果を示しているが、相溶性が悪く、安定的な密着性を得られないおそれがある。
また、硬化剤として、特許文献2に示してあるアルコール変性メラミン樹脂のみを使用した比較例10は、煮沸試験後、良好な外観を得ることは出来なかった。
硬化剤として、アルコール変性3−メチルフェノールのレゾール樹脂とアルコール変性メラミン樹脂を併用した比較例9は、塗料の相溶性が悪く、安定的な密着性を得られないおそれがある。
以上の様に、ポリエステル塗料の配合後外観、2−ブタノンラビング性、煮沸試験後外観を得る為には、
硬化剤として、アルコール変性2−メチルフェノールのレゾール樹脂と、アルコール変性メラミン樹脂を併用した場合のみで有る事が示された。